説明

腎機能監視用の発光金属錯体

本発明のいくつかの実施態様は、式Iの金属錯体を対象とすると言い得る。式中、X、X、X、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、適切な電磁気シグナルを提供(例えば、吸収および/または放出)できるアンテナと特徴付け得るものである。本発明のいくつかの実施態様は、式Iの金属錯体に対応する配位子を対象とする。本発明のいくつかの実施態様は、少なくとも1つの式Iの金属錯体を使用する腎機能の測定方法を対象とする。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、蛍光ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)金属錯体、対応するDTPA配位子、およびかかる金属錯体を使用する腎機能の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
様々な刊行物は括弧内のアラビア数字により参照されることに留意すべきである。各参照番号に対応する完全な引用は、明細書の末尾に列挙されている。本発明が関係する分野の現状を詳細かつ明確に説明するために、これらの刊行物の開示を出典明示により全体的に本明細書に援用する。
【0003】
急性腎不全(ARF)は、外科を含む一般病院に受容れられる患者に一般的な病気である。さらに、ARFを発症する患者の約半数が死亡し、生存者は病状の顕著な増悪および入院の延長に直面する[1]。腎不全はしばしば無症候性であり、血液中の腎機能マーカーの注意深い追跡を必要とするので、早期診断が重大である。ベッド・サイドにおける患者の腎機能の動態監視は、様々な臨床的、生理的および病理的状態によりもたらされる急性腎不全のリスクを最小限にするために非常に望ましい[2−6]。これは、危機的な病気または怪我の患者の場合に特に重要である。なぜなら、これらの患者の大部分が、死亡に至る多臓器不全(MOF)のリスクに直面するからである[7、8]。MOFは、肺、肝臓および腎臓の連鎖的不全であり、急性肺障害(ALI)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、異化亢進、血圧低下、持続性炎症性症状(persistent inflammatory focus)または敗血症症候群などの1つまたはそれ以上の重篤な原因により誘発される。MOFに繋がる血圧低下およびショックの一般的な組織学的特徴には、組織の壊死、血管の鬱血、間質性および細胞性浮腫、出血および微小血栓が含まれる。これらの変化は、肺、肝臓、腎臓、腸、副腎、脳および膵臓に、降順の頻度で影響する[9]。外傷の初期段階から臨床的MOFへの移行は、肝臓および腎臓の不全の程度および約30%から約50%への死亡リスクの変化によりマークされる[10]。
【0004】
現在、腎機能は、尿排出量および血漿クレアチニンレベルなどの粗い測定により一般的に決定されている[11−13]。これらの値は、年齢、水分補給状況、腎灌流、筋肉量、食事の摂取および多くの他の臨床的および人体計測的変数により影響を受けるので、しばしば誤りを導くものである。加えて、サンプル採取から数時間後に得られる単一の値は、血圧、心拍出量、水分補給状態および他の特殊な臨床的事象(例えば、出血、菌血、人工呼吸器の設置など)などの他の重要な生理的事象に相関させるのが難しい。球体濾過率(GFR)の概算は、24時間の尿収集により成すことができるが、このプロセスは、収集に24時間、分析にさらに数時間、そして細心の注意を払う病床での収集技法を要する。不幸なことに、患者のGFRをこの時までに検出することは、患者を処置し、腎臓を救う希望を持つには遅すぎることがある。新規または反復的データも、得るのが同程度に厄介である。時には、血清クレアチニンの変化を、尿中の電解質、オスモル濃度、および「腎不全指数」や「ナトリウム分画排泄率」などの導かれる計算結果の値に基づいてさらに補正しなければならない。このことは、尿サンプルと同時に収集される血清サンプルをさらに必要とし、そして、遅延時間の後、正確な計算を必要とする。頻繁に、投薬は腎機能のために調整され、従って、それらが基礎とした値と同程度に不正確であり、同程度に遅れ、同じくらい再評価が難しい。最後に、致命的な病気の集団における臨床的決断は、多くの場合、その的確さと同程度に、その時機が重要である。故に、非電離放射線を使用してGFRを測定するための改善された装置と方法を開発する要望がある。特異的であるが変化する状況下で外来性マーカーを使用する、リアルタイムの、正確な、反復可能な腎排出率の測定が利用可能であることは、現在利用可能であるか、または広く実行されている方法のいずれに対しても、実質的な改善を意味するであろう。さらに、かかる方法は、外来性化学物質の腎排出に専ら依存するので、測定は絶対的であり、年齢、筋肉量、血圧などによる主観的解釈を必要としない。実際に、そのような方法が開発されたら、それは、その特定の患者の、特定の状況下の、まさにその時の腎機能の性質を表すであろう。
【0005】
親水性、陰イオン性の物質は、一般的に、腎臓により排出されると認識されている[14]。腎クリアランスは、糸球体濾過および尿細管分泌の2つの経路を介して起こる;後者は、能動輸送過程を必要とし、故に、この経路を介して排泄される物質は、大きさ、電荷および親油性に関して非常に特異的な特性を有すると予想される。GFRのレベルは、健康または病気の状態で、腎機能の最良の総合的測定を意味すると広く受け入れられている[15]。しかしながら、幸いにも、腎臓を通過する物質の殆どは、糸球体を通して濾過される。典型的な外来的腎臓検査化合物(exogeneous renal agent)の構造を、図1および2に示す。糸球体濾過により排出される物質(以後、「GFR物質」と呼ぶ)には、イヌリン(1)、クレアチニン(2)、イオタラメート(3)[16−18]、99mTc−DTPA(4)および51Cr−EDTA(5)が含まれ、尿細管分泌によるクリアランスを経るものには、99mTc−MAG3(6)およびo−ヨードヒプラン(iodohippuran)(7)が含まれる[16、19、20]。なかんずく、イヌリンは、GFR測定の「最高指標(gold standard)」と認識されている。図1および2に示す全ての化合物は、クレアチニンを除き、検出に放射性同位元素を必要とする。
【0006】
当業者には明らかな通り、構造1−7を一瞥しても、その分子を特定の腎臓の経路を介して排出されるように振り向けることを担う微妙な要因を確かめるための洞察は何も得られない。明らかに、電荷、分子量または親油性などの総体的物理化学的特徴は、クリアランスの様式を説明するのにさえ不適切である。イヌリン(1、MW〜5000)およびクレアチニン(2、MW113)は、両方とも糸球体を通して濾過される。他方、陰イオン性のクロム錯体5(MW362)およびテクネチウム錯体6(MW364)は、異なる経路で除去される。この非常に限定された化合物のセットの構造活性相関(SAR)データは、2つのクリアランス経路間の微妙な差異を確かめるには不十分である。従って、本発明の時点で、先行技術の刊行物は、新規GFR物質の合理的設計のための十分な教示または動機を提供するために頼りにできなかった。従って、クリアランス経路を確認するには、各々の新しい化合物を試験し、99mTc−DTPA(4)またはイヌリン(1)などの既知のGFR物質と比較しなければならない。
【0007】
先に言及した通り、現在知られている外来性腎臓検査化合物の殆どは、放射性である。現在、非放射性外来性GFR物質を使用して特定の腎機能を評価するための、信頼できる、継続的な、反復可能なベッド・サイドの方法は、商業的に利用可能ではない。非放射性の方法のなかで、蛍光測定は、最高の感度をもたらす。原則として、蛍光GFR物質の設計には2つの一般的アプローチがある。第1のアプローチは、本来的に弱いエミッターである既知の腎臓検査化合物(例えば、ランタニドまたは遷移金属錯体)の蛍光を増強することに関する;そして、2番目は、本来的に親油性である蛍光の高い従来の染料を、腎臓を介して排出されるようにするために、親水性、陰イオン性の種に変形することに関する。本発明は、前者のアプローチに焦点を合わせる。DTPA、DTPA−モノアミド類、DTPA−ビスアミド類および配位子のエチレン部分で置換されているDTPAの金属錯体は、生化学的応用に広く使用され、そして、腎臓を通って排出されると示されてきた。[21、22および23]に記載されている仕事は、腎臓クリアランスの測定のための、ポリアミノカルボキシレート配位子から誘導された発光金属錯体の使用を独立して示唆した。
【0008】
分子内エネルギー移動過程を通して蛍光を増強する方法は、十分に確立されており[24]、配位子−金属エネルギー移動を介する金属イオンの蛍光の増幅に応用されてきた[25−28]。その方法は、本質的に、「アンテナ」を有する金属錯体の設計を含む。本明細書で使用するとき、アンテナは、金属イオンからの最適距離(「フォスター」距離と呼ばれる)に位置する光子捕獲性の高い横断面を有する部分であり、その部分は、大きい表面積および分極性電子雲を有する。アンテナと金属イオンの間の距離は、約2−20Å、好ましくは約3−10Åの範囲にある。
【発明の開示】
【0009】
器官の機能に関連するデータを提供するための改善された方法において使用するための新規蛍光DTPA錯体が、以下に記載されている。これらの錯体は、リアルタイムの、正確な、反復可能な腎排出率の測定が可能なものであると言い得る。
【0010】
要旨
本発明の第1の態様は、下記式IのDTPA錯体を対象とする。この第1の態様に関して、Mは、一般的に、吸収および放出が可視および/またはNIR領域で起こる金属イオンであり、nは少なくとも1である。式I中のXないしXおよびRないしRの少なくとも1つの置換基は、一般的に、アンテナである。他の残りのRおよび/またはX基は、金属錯体の生物学的および/または物理化学的特性を最適化するために、場合により導入し得る。YおよびYの各々は、独立して、アンテナまたは他の置換基をDTPAに連結する単結合またはスペーサーの基である。
【0011】
本発明の第2の態様では、式Iの錯体に対応するDTPA配位子が提供される。この第2の態様のDTPA配位子は、とりわけ、式Iの金属錯体などの金属錯体の調製に有用であると考えられる。
【化1】

【0012】
また、本発明の第3の態様は、1種またはそれ以上の式Iの金属錯体などの少なくとも1種の金属錯体を使用する、腎機能の測定方法を対象としている。この第3の態様に関して、電磁気放射を異なる波長で吸収および放出できる金属錯体(例えば、式Iの金属錯体)の有効量を、患者の身体に投与する(例えば、ヒト患者などの哺乳動物、または他の動物の対象)。患者の身体の一部から出るシグナルを検出する(例えば、1つまたはそれ以上の時点で、または、リアルタイムで連続的に)。このシグナルは、検出の間に身体からまだ除去されていない金属錯体に由来する。シグナルの検出に基づいて腎機能を決定する。
【0013】
図面の簡単な説明
図1:糸球体濾過を介して排出される分子の構造。
図2:尿細管分泌を介して排出される分子の構造。
図3:DTPAのカルボキシル位におけるアンテナの結合。
図4:DTPAのエチレンユニットのβ−位におけるアンテナの結合。
図5:α−炭素でのDTPAの中央のアセテートへのアンテナの結合。
図6:DTPAのエチレンユニットのα−位でのアンテナの結合。
図7:正常なラットのTc−DTPAの生体分布の棒グラフ。
図8:正常なラットの111In−DTPA−モノ(クマリンアミド)錯体の生体分布の棒グラフ。
図9:正常なラットの111In−DTPA−モノ(サリチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフ。
図10:正常なラットの111In−DTPA−モノ(1−ナフチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフ。
図11:正常なラットの111In−HMDTPA−1−ナフチルウレタン錯体の生体分布の棒グラフ。
図12:正常なラットの111In−DTPA−ビス(サリチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフ。
図13:正常なラットの111In−DTPA−モノ(ピラジニルアミノ)エチルアミド錯体の生体分布の棒グラフ。
図14:正常なラットの111In−DTPA−モノ(キノキサニルアミノ)エチルアミド錯体の生体分布の棒グラフ。
【0014】
詳細な説明
本発明の例示的実施態様には、式Iの腎機能監視組成物が含まれる。これらの実施態様に関して、Mは、吸収および放出が可視および/またはNIR領域で起こる金属イオンであり、nは1ないし5で変動する。適する金属イオンMには、Eu、Tb、DyおよびSmなどのランタニド列の元素およびRh、Re、RuおよびCrなどの遷移金属、並びにGaおよびInなどのIIIb族の金属が含まれるがこれらに限定されない。例えば、いくつかの実施態様では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrおよびInから選択される。
【化2】

【0015】
例示的実施態様のさらなる説明として、X、XおよびXの各々は、独立して、アンテナ、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSO、−NH(CHOSO、−NH(CHNHSO、−O(CHSO、−O(CHOSO、−O(CHNHSO、−NH(CHPO、−NH(CHPO、−NH(CHOPO、−NH(CHOPO、−NH(CHNHPO、−NH(CHNHPO、−O(CHPO、−O(CHPO、O(CHOPO、−O(CHOPO、−O(CHNHPOおよび−O(CHNHPOであり;aは、1ないし6の範囲にある。RないしRの各々は、独立して、アンテナ、水素、C1−C10アルキル、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10ポリヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、−(CHSO、−(CHOSO、−(CHNHSO、−(CHCO(CHSO、−(CHOCO(CH)cSO、−(CHCONH(CHSO、−(CHNHCO(CHSO、−(CHNHCONH(CHSO、−(CHNHCSNH(CHSO、−(CHOCONH(CHSO、−(CHPO、−(CHPO、−(CHOPO、−(CHOPO、−(CHNHPO、−(CHNHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHOCONH(CHPOおよび−(CHOCONH(CHPOである。構成要素bおよびcは1ないし6の範囲にあり、X、X、XおよびRないしRの少なくとも1つは、アンテナである。
【0016】
およびYの各々は、独立して、単結合、または、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−および−(CHSONH−などのスペーサーの基である。いくつかの実施態様では、mは1ないし10で変動するが、他の実施態様では、mは1ないし6で変動する。
【0017】
【化3】

本発明のいくつかの実施態様には、式Iの金属錯体に対応する配位子が含まれる。かかる実施態様は、上記式IIにより表される。式II中のXないしX、YおよびY、並びにRないしRは、式Iで定義されたのと同じ置換基に対応する。陰イオン形態で示される置換基XないしXおよびRないしRについて、これらの置換基は、場合により対応する中性の形態であり得ることが留意される(例えば、−Oは、−Oまたは−OHのいずれかであり得る)。
【0018】
上記式Iの例示的実施態様に関し、RないしRが水素であるならば、そしてMn+がランタニドイオンであるならば、XないしXは、アニリン、ベンジルアミン、2−アミノメチル−ピリジン、1−アミノ−ナフタレン、2−アミノナフタレン、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、2−(2−アミノエチル)アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)−アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)アミノキノキサリン−2−カルボン酸または2−(2−アミノエチル)−アミノキノキサリン−2−カルボキサミドから誘導されたものではない。加えて、XないしXが−Oであるならば、そして、Mn+がランタニドイオンであるならば、RないしRは、フェニルまたはベンジルではない。
【0019】
上記式IIの配位子に関し、RないしRが水素であるならば、XないしXは、アニリン、ベンジルアミン、2−アミノメチル−ピリジン、1−アミノナフタレン、2−アミノ−ナフタレン、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、2−(2−アミノエチル)アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)−アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)アミノキノキサリン−2−カルボン酸または2−(2−アミノエチル)−アミノキノキサリン−2−カルボキサミドに由来するものではない。加えて、XないしXが−Oであるならば、RないしRは、フェニルまたはベンジルではない。
【0020】
「アンテナ」は、その吸収および放出が好ましくは可視および/またはNIR領域で起こる基を表す。適するアンテナは、典型的には、非置換または置換の芳香族または複素芳香族化合物から誘導される芳香族または複素芳香族の発色団である。芳香族または複素芳香族の化合物は、式Ar−Z(ここで、Zはリンカーの基である)により表すことができ、アンテナは式Ar−Z'−により表すことができる。元の芳香族または複素芳香族の環構造は、好ましくは、単環式または二環式であり、5個ないし10個の炭素原子を含有する。芳香族または複素芳香族の環構造は、場合により、Zの他に置換基(例えば、メチルなどのアルキル基)を含有できる。かかる置換Ar−Z化合物の例は、7−アミノ−4−メチルクマリンである。芳香族または複素芳香族の環構造は、場合により、1個またはそれ以上の親水性の基Wで置換されていてもよい。適するW基には、−COOH、−NH、−OH、−SOH、−POなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様の腎臓検査化合物の開発のために、芳香族または複素芳香族の環構造を、少なくとも1個のW基で置換する。
【0021】
適するアンテナには、置換または非置換のベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ナフタレン、キノリン、キノキサリン(2,3−ベンゾピラジンまたはキナジンとしても知られる)、クマリン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ピロロピリダジン、ピロロピラジンなどから誘導されるAr−Z'−基が含まれるが、これらに限定されない。アンテナはいかなる芳香族または複素芳香族の部分であってもよいが、配位子から金属へのエネルギー移動の効率を最大化するために、アンテナの少なくとも1つの電子吸収帯が、金属イオンの励起または吸収帯の少なくとも1つと実質的に適合するものを選択するのが好ましい。適するZ基には、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル(−COOH)、カルボキシレート(−COOHの塩)、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキルまたはスルホン酸アルキル、ハロゲン化スルホニル、塩化ホスホリル、N−スクシンイミドエステル、クロロホルメート、イソシアネート、アシルアジド、イソチオシアネートなど(ここで、好ましいハロゲン化物は塩化物である)が含まれるが、これらに限定されない。アンテナ中のスペーサーZ'の位置取りは、決定的ではない。アンテナと金属イオンの間の距離および吸収/放出波長がエネルギー移動に効果的である限り、スペーサー/リンカーを受け入れられる任意の適当な位置が適切であることが、当業者に容易に明らかであろう。アンテナと金属イオンの間の距離は、いくつかの実施態様では約2Åないし約20Åであり、他の実施態様では約3Åないし約10Åである。
【0022】
Ar−Zの化合物の例には、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、1−アミノナフタレン、アミノピラジン類、ジアミノピラジン類、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボキサミド、2,5−ジアミノ−3,6−ジシアノピラジン、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸エステル類、および3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボキサミド類が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の組成物および配位子は、好ましくは、少なくとも1個のアンテナを含有する。例えば、いくつかの実施態様は、1個ないし3個のアンテナを含むが、一方他の実施態様は、1個ないし2個のアンテナを含む。また他の実施態様は、他の適切な量および範囲のアンテナを含み得る。
【0024】
式Iにより表されるある群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrおよびInから選択される;nは、1ないし5で変動する;Xはアンテナである;XおよびXの各々は、独立して、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOまたは−O(CHSOである;aは、1ないし6の範囲にある;YおよびYの各々は、独立して、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−である;mは、1ないし10で変動する;RないしRの各々は、独立して、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOまたは−(CHNHCO(CHSOである;そして、bおよびcは、独立して1ないし6の範囲にある。
【0025】
式Iにより表される他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;Xは、アンテナであり;XおよびXの各々は−Oであり;YおよびYの少なくとも1つは、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−または−(CHNHSO−であり;YおよびYの他方(もしあれば)は、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−であり;mは、1ないし10で変動し;そして、RないしRの各々は水素である。
【0026】
式Iにより表されるまた他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;YおよびYの各々は、独立して、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−であり;mは、1ないし10で変動し;Rは、アンテナであり;XないしXの各々は、独立して−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOまたは−O(CHSOであり;aは1ないし6の範囲にあり;RないしRの各々は、独立して、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOまたは−(CHNHCO(CHSOであり;そして、bおよびcは、独立して1ないし6の範囲にある。
【0027】
式Iにより表されるなお他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;Rはアンテナであり;XないしXの各々は−Oであり;YおよびYの少なくとも1つは、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−または−(CHNHSO−であり;YおよびYの他方(もしあれば)は、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−であり;mは、1ないし10で変動し;そして、RないしRの各々は、水素である。
【0028】
式Iにより表されるまた他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;YおよびYの各々は、独立して、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−であり;mは、1ないし10で変動し;Rは、アンテナであり;XないしXの各々は、独立して、−O、−NH(CHOH、−H(CHCOH、−NH(CHSOまたは−O(CHSOであり;aは、1ないし6の範囲にあり;R、R、RおよびRの各々は、独立して、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOまたは−(CHNHCO(CHSOであり;そして、bおよびcは、独立して1ないし6の範囲にある。
【0029】
式Iにより表されるまた他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;Rはアンテナであり;XないしXの各々は、−Oであり;YおよびYの少なくとも1つは、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−および−(CHNHSO−であり;YおよびYの他方(もしあれば)は、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−または−(CHSONH−であり;mは、1ないし10で変動し;そして、R、R、RおよびRの各々は、水素である。
【0030】
式Iにより表されるなおまた他の群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;Rは、アンテナであり;XないしXの各々は、独立して−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOまたは−O(CHSOであり;aは、1ないし6の範囲にあり;YおよびYの少なくとも1つは、独立して、単結合またはスペーサーの基であり;mは、1ないし10で変動し;R、R、RおよびRは、独立して、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOまたは−(CHNHCO(CHSOであり;そして、bおよびcは、独立して1ないし6の範囲にある。
【0031】
式Iにより表されるなおさらなる群の化合物では、Mは、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrまたはInであり;nは、1ないし5で変動し;Rは、アンテナであり;XないしXの各々は、−Oであり;YおよびYの少なくとも1つは、独立して、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−または−(CHNHSO−であり;YおよびYの他方(もしあれば)は、スペーサーであり;mは、1ないし10で変動し;そして、R、R、RおよびRの各々は、水素である。
【0032】
本発明のアンテナは、式I中の5個のカルボキシル基または9個のメチレン位置で、当分野で周知の従来法により、DTPAに結合させることができる[28,29]。例えば、カルボキシル位置での結合は、最初に、DTPA二無水物(8)を、ヒドロキシルまたはアミノ基を有するアンテナと反応させ、対応するエステルおよびアミド配位子を得、続いて、金属錯体化により各々錯体9または10を得ることにより達成できる(図3)[30−32]。ポリアミノカルボキシレート配位子の金属錯体化は、典型的には、所望の酸化金属、炭酸金属、ハロゲン化金属または他の金属塩およびアセチルアセトナート(acetonate)などの弱い錯体を使用して、達成される。
【0033】
DTPAの中央の窒素に対してβ位の炭素上のエチレンユニットに対する、炭素原子へのアンテナの結合は、既知のヒドロキシメチル−DTPA誘導体11[33]を、Ar−Z、即ち、カルボキシル、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキルまたはスルホン酸アルキル、ハロゲン化スルホニル、塩化ホスホリル、N−スクシンイミドエステル、クロロホルメート、イソシアネート、アシルアジド、イソチオシアネートなどの反応性連結基を含有するアンテナ(「ハンドル」とも呼ばれる)と縮合させることにより達成できる(図4)。得られる配位子12の金属錯体化を上記と同様に実行し、錯体13を得ることができる。
【0034】
中央の窒素に結合しているアセテート残基のカルボキシル基に対してα位での炭素原子へのアンテナの結合は、図5に記載の通り、この位置でヒドロキシメチル基を導入することにより達成できる。セリンt−ブチルエステル(14)[34]のN−(2−ブロモ)エチルイミノジアセテート(15)[35]によるアルキル化、続いて、ヒドロキシル基と、先に言及した反応性連結基を含有するアンテナとの縮合により、配位子16を得る。配位子16の金属錯体化は、上記と同様に実行し、17を得ることができる。
【0035】
中央の窒素に対してα位にあるエチレンユニットの炭素原子へのアンテナの結合は、最初にN−ベンゾイルセリンアミド(18)からヒドロキシメチル中間体19を調製し、それをN−(2−ブロモ)エチルイミノジアセテート15でアルキル化し、続いて、得られるヒドロキシメチル誘導体をアンテナと縮合することにより実行できる(図6)。配位子20の金属錯体化は、上記と同様に実施でき、21を得る。少なくともいくつかの本発明の実施態様の利点の1つは、幅広く様々なDTPA−アンテナコンジュゲートの調製を簡潔かつ迅速なやり方で可能にするために、合成方法をモジュラー方式で実施し得ることである。ヒドロキシメチル−DTPA誘導体は、多用途の中間体である傾向があり、そこではヒドロキシル基を、アミノ、ホルミルまたはカルボキシルなどの様々な他の官能基に変形でき、それは、相補的な官能基を与えられたアンテナを連結するハンドルとしてさらに役立つことができる。
【0036】
本発明によると、身体の細胞の生理的機能を測定するためのあるプロトコールは、電磁気放射を異なる波長で吸収および放出できる式Iの組成物(以後、「トレーサー」と呼ぶ)から適するDTPA錯体を選択すること、有効量のトレーサーを患者の体内に投与すること、トレーサーから出るシグナルを、侵入的または非侵入的光学プローブで検出すること、臨床状態により必要とされる通りの時間にわたり、シグナル強度を測定すること、および、強度−時間のプロフィールを患者の生理または病理状態と相関させること、を含む。
【0037】
本発明のアンテナは、関心のある金属イオンによって、そして用いる検出装置によって、大幅に変動し得る。本発明のDTPA誘導体は、検出感度を高めるために、場合により、1個より多い光吸収または放出ユニットを含有してもよい。投与量は当業者により容易に決定され、企図する臨床操作により変動し得、一般的に1ナノモーラーないし100マイクロモーラーの範囲にある。トレーサーは、静脈内、腹腔内または皮下の注射または点滴、経口投与、皮膚を介する経皮吸収または吸入を含む任意の適する方法で患者に投与し得る。トレーサーの検出は、当分野で知られている光学的な蛍光、吸光または光散乱法により、内視鏡、カテーテル、耳クリップ、手のバンド、頭のバンド、表面コイル、指のプローブなどの侵入的または非侵入的なプローブを使用して、達成する[37]。生理的機能を、これらの物質の体液からのクリアランスのプロフィールおよび速度と相関させ得る[38]。
【0038】
正常な細胞と損なわれた細胞がトレーサーを血流から除去する挙動の差異を比較することにより、器官または組織におけるこれらのトレーサーのクリアランスまたは蓄積を測定することにより、および/または、器官または組織の断層撮影画像を得ることにより、器官の機能を評価できる。血液プールのクリアランスは、耳たぶまたは指に見出されるもののなどの好都合な表面毛細血管から非侵入的に測定し得るか、または、血管内カテーテルを使用して侵入的に測定できる。関心のある細胞内でのトレーサーの蓄積は、同様のやり方で評価できる。トレーサー化合物のクリアランスは、励起波長および放出された光子用のフィルターを選択することにより決定できる。マイクロプロセッサなどにより、濃度/時間曲線を分析し得る(好ましくは、必須ではないが、リアルタイムで)。
【0039】
非侵入的技法に加えて、所望の測定を行うのに使用できる改変型肺動脈カテーテルが開発された[39]。これは、血管内圧、心拍出量および他の派生する血流の測定値のみを測定する現行の肺動脈カテーテルに対する顕著な改善である。現在、危機的な病気の患者は、これらのパラメーターを使用して管理されているが、腎機能の評価のためには、断続的な血液サンプル採取および試験を頼みにしている。これらの臨床検査のパラメーターは、非連続的なデータを表し、多くの患者集団で頻繁に誤りを導くものである。しかし、重要なことに、それらは患者の評価、処置決断および投薬のために重く頼みにされている。
【0040】
改変された肺動脈カテーテルは、光学センサーを標準的肺動脈カテーテルの先端に組み込んでいる。この波長特異的光学センサーは、所望の光学的に検出できる化学物質の腎機能特異的排出をモニターできる。従って、色素希釈曲線と実質的に類似の方法で、光学的に検出される化合物の消失により、リアルタイムの腎機能を監視できる。標準的な肺動脈カテーテルの適切な改変は、一般的に、単に光ファイバーセンサーを波長特異的にすることのみを含む。混合静脈血酸素飽和度の測定のために光ファイバー技術を組み込んでいるカテーテルは、現在、存在する。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の特定の実施態様を例示説明する。当業者に明らかな通り、様々な変更および改変が可能であり、記載した本発明の範囲内で企図されている。
【0042】
実施例1
99mTc−DTPAの調製と生態分布
購入できるDTPAキット(Draximage Co., Ontario, Canada)を、キットと共に供給された添付文書に記載の標準的操作により、99mTcで標識し、Sprague-Dawley ラットに投与した(15分、60分、120分および24時間の各時点につき3匹のラット)。図7に示す通り、生体分布データは、本発明の新規化合物が糸球体濾過を介して排出されるか否かを決定するための、正の対照として役立つ。
【0043】
実施例2
が−Oであり;XおよびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり、そしてXが7−アミノ−4−メチルクマリンから誘導されたアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
群馬大学、日本(Ozaki, et. al. 参照文献30)から入手したDTPA−モノ(7−アミノ−4−メチルクマリン)アミド配位子(1mg/mL、0.5M酢酸ナトリウムバッファー中、100μL)の原液、酢酸ナトリウム溶液(0.5M、100μL)および購入できる111InCl溶液(0.1M HCl、100−200μCi/100μL)の混合物を、pH4.5に合わせ、周辺温度で30分間インキュベートした。得られるインジウム錯体を逆相HPLCにより精製し、Sprague-Dawley ラットに投与した。実施例1の99mTc−DTPAと同様に生体分布を実行した(図8)。このインジウム錯体は、99mTc−DTPAより僅かに高い肝胆道のクリアランスを示したが、実質的に腎臓を通って排出された。
【0044】
実施例3
、XおよびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり、そしてXが4−アミノサリチル酸から誘導されるアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
群馬大学、日本(Ozaki, et. al. 参照文献30)から、DTPA−モノ(4−アミノサリチル)アミド配位子を入手した。この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実施する。この錯体の生体分布(図9)は、99mTc−DTPAのものとほぼ同一である。
【0045】
実施例4
が−Oであり;XおよびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり;Xが1−アミノナフタレンから誘導されるアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
群馬大学、日本(Ozaki, et. al. 参照文献30)から、DTPA−モノ(1−アミノナフチル)アミド配位子を入手した。この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実施する。この錯体の生体分布(図10)は、99mTc−DTPAのものとほぼ同一である。
【0046】
実施例5
ないしXおよびRないしRが水素であり;Mn+がIn3+であり;Rが1−アミノナフタレンから誘導されるアンテナであり;Yが−CHO−であり;そしてYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
段階1. トルエン(20mL)中のヒドロキシメチル−DTPA(11)100mg(0.1mmol)および1−ナフチルイソシアネート(101mg、1.0mmol)の混合物を、還流下で16時間加熱した。溶媒を真空で蒸発させ、ヘキサン/酢酸エチルを溶離剤として用いて(直線勾配:40分間で酢酸エチル0%から75%へ)、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(Argonaut Flashmaster Solo)により精製し、ペンタ−t−ブチルエステルとしてDTPA−1−ナフチルウレタン誘導体を得た。
【0047】
段階2. 段階1からのペンタエステル(1.2g)を、96%蟻酸(10mL)に溶解し、沸騰するまで加熱し、その後周辺温度で16時間維持した。溶液をエーテル(500mL)に注ぎ、ゴム状の残渣をデカンタによりバルクの溶媒から分離し、逆相フラッシュクロマトグラフィー(Argonaut Flashmaster Solo)により精製し、所望の配位子を得た。
【0048】
段階3. この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実施する。この錯体の生体分布(図11)は、実施例2の111In−DTPA−クマリン誘導体のものと類似しており、肝胆道クリアランスがより高い。
【0049】
実施例6
およびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり;XおよびXが4−アミノサリチル酸から誘導されるアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
群馬大学、日本(Ozaki, et. al. 参照文献30)から、DTPA−ビス(4−アミノサリチル)アミド配位子を入手した。この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実施する。この錯体の生体分布(図12)は、99mTc−DTPAのものとほぼ同一である。
【0050】
実施例7
およびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり;XおよびXが2−(N−2−アミノエチル)−アミノピラジンから誘導されるアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
無水DMSO(8mL)中のDTPA−ビスアンヒドリド(bisanhydride)0.45g(1.3mmol)およびN,N'−ジメチル−N−ピラジン−2−イルエタン−1,2−ジアミン0.42g(2.5mmol)の混合物を、50−55℃で1時間加熱し、室温でさらに16時間撹拌した。粗生成物をアセトン(100mL)中で沈殿させ、溶離剤として脱イオン水を使用して、残渣を逆相フラッシュクロマトグラフィー(Argonaut Flashmaster Solo)により精製し、続いて水を蒸発させて、所望のビスアミド配位子を得た。
【0051】
この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実行した。この錯体の生体分布(図13)は、99mTc−DTPAのものとほぼ同一である。
【0052】
実施例8
が−Oであり;XおよびRないしRが水素であり;Mn+111In3+であり;Xが2−カルボキシ−3−(2−アミノエチル)アミノキノキサリンから誘導されるアンテナであり;そしてYおよびYが単結合である、式Iの化合物の調製および生体分布
トリエチルアミン(1.5mL)および無水DMSO(5mL)中のDTPA−ビスアンヒドリド0.20g(0.6mmol)および3−[(2−アミノエチル)アミノ]−キノキサリン−2−カルボン酸塩酸塩0.30g(1.1mmol)の混合物を、50−55℃で4時間加熱し、室温でさらに16時間撹拌した。粗生成物をアセトン(100mL)中で沈殿させ、残渣の溶液を希塩酸でpH3に酸性化し、脱イオン水/アセトニトリルの溶離剤勾配(30分間でアセトニトリル0%から20%へ)を使用して逆相フラッシュクロマトグラフィー(Argonaut Flashmaster Solo)により精製し、続いて溶媒を蒸発させて、所望のモノアミド配位子を得た。
【0053】
この配位子のインジウム標識および生体分布は、実施例2と同様に実行した。この錯体の生体分布(図14)は、実施例2のDTPA−クマリン誘導体のものとほぼ同一である。
【0054】
これらの実施例は、アンテナの基を適切に選択したポリアミノカルボキシレート金属錯体をベースとするGFR物質は、腎機能検査剤として有効であり、Tc−DTPAのものと類似のクリアランス特性を提供することを立証する。特に、実施例2で使用した配位子をベースとするEu−DTPA−クマリン錯体に関する以前のデータは、クマリンアンテナがユーロピウムの蛍光を約1000倍まで増強することを示した[30]。本発明のデータは、この錯体がTc−DTPAのものと類似のクリアランス特性を有するが、より肝胆道のクリアランスが高いことを示した。従って、クマリン環に適切な親水性官能基を導入することは、錯体をTc−DTPAと同様に排出させるであろう。さらに、クマリン部分と似た大きさの、ユーロピウム金属の励起波長と適合する親水性アンテナを、容易にDTPA部分に結合させ、最適な蛍光およびクリアランス特性を達成できる。
【0055】
実施例は、アンテナを有する本発明の化合物の少なくともいくつかが、GFRメカニズムにより腎臓を通って排出され、肝胆道クリアランスが99mTc−DTPAに匹敵する、即ち、肝胆道クリアランスが本質的に99mTc−DTPAと同程度であることをさらに立証する。加えて、GFRメカニズムにより腎臓を通って排出されるが、99mTc−DTPAよりも高い肝胆道クリアランスを有する化合物は、W置換基をアンテナに加えることにより、本質的に99mTc−DTPAと同様に排出できることが見出された。
【0056】
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【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、糸球体濾過を介して排出される分子の構造を示す。
【図2】図2は、尿細管分泌を介して排出される分子の構造を示す。
【図3】図3は、DTPAのカルボキシル位におけるアンテナの結合を示す。
【図4】図4は、DTPAのエチレンユニットのβ−位におけるアンテナの結合を示す。
【図5】図5は、α−炭素でのDTPAの中央のアセテートへのアンテナの結合を示す。
【図6】図6は、DTPAのエチレンユニットのα−位でのアンテナの結合を示す。
【図7】図7は、正常なラットのTc−DTPAの生体分布の棒グラフを示す。
【図8】図8は、正常なラットの111In−DTPA−モノ(クマリンアミド)錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図9】図9は、正常なラットの111In−DTPA−モノ(サリチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図10】図10は、正常なラットの111In−DTPA−モノ(1−ナフチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図11】図11は、正常なラットの111In−HMDTPA−1−ナフチルウレタン錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図12】図12は、正常なラットの111In−DTPA−ビス(サリチルアミド)錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図13】図13は、正常なラットの111In−DTPA−モノ(ピラジニルアミノ)エチルアミド錯体の生体分布の棒グラフを示す。
【図14】図14は、正常なラットの111In−DTPA−モノ(キノキサニルアミノ)エチルアミド錯体の生体分布の棒グラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
Mは、可視および/またはNIR領域でスペクトルの吸収および放出を示す金属イオンであり;
、XおよびXの各々は、アンテナ、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSO、−NH(CHOSO、−NH(CHNHSO、−O(CHSO、−O(CHOSO、−O(CHNHSO、−NH(CHPO、−NH(CHPO、−NH(CHOPO、−NH(CHOPO、−NH(CHNHPO、−NH(CHNHPO、−O(CHPO、−O(CHPO、O(CHOPO、−O(CHOPO、−O(CHNHPOおよび−O(CHNHPOから独立して選択され;
およびYの各々は、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−および−(CHSONH−から独立して選択され;
ないしRの各々は、アンテナ、水素、C1−C10アルキル、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10ポリヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、−(CHSO、−(CHOSO、−(CHNHSO、−(CHCO(CHSO、−(CHOCO(CH)cSO、−(CHCONH(CHSO、−(CHNHCO(CHSO、−(CHNHCONH(CHSO、−(CHNHCSNH(CHSO、−(CHOCONH(CHSO、−(CHPO、−(CHPO、−(CHOPO、−(CHOPO、−(CHNHPO、−(CHNHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHOCONH(CHPOまたは−(CHOCONH(CHPOから独立して選択され;
a、bおよびcは、独立して1ないし6であり;
mは1ないし10であり;そして、
nは1ないし5であり;
ここで、XないしXおよびRないしRの少なくとも1つはアンテナであり、各アンテナは、可視および/またはNIR領域でスペクトルの吸収および放出を示す芳香族または複素芳香族の基である]
の金属錯体、
但し:
(a)RないしRの各々が水素であるならば、そして、Mn+がランタニドイオンであるならばこの場合、XないしXの各々は、アニリン、ベンジルアミン、2−アミノメチルピリジン、1−アミノナフタレン、2−アミノナフタレン、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、2−(2−アミノエチル)アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)−アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)アミノキノキサリン−2−カルボン酸または2−(2−アミノエチル)−アミノキノキサリン−2−カルボキサミドから誘導されるものではない;そして、
(b)XないしXの各々が−Oであるならば、そして、Mn+がランタニドイオンであるならばこの場合、RないしRの各々は、フェニルまたはベンジルではない。
【請求項2】
少なくとも1つのアンテナが、非置換または置換の芳香族または複素芳香族化合物から誘導される芳香族または複素芳香族の発色団である、請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
芳香族または複素芳香族化合物が、式Ar−Zにより表され、ここで、Arは、5個ないし10個の炭素原子の単環式または二環式環構造であり、Zは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキル、スルホン酸アルキル、ハロゲン化スルホニル、塩化ホスホリル、N−スクシンイミドエステル、クロロホルメート、イソシアネート、アシルアジドおよびイソチオシアネートから選択される、請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
少なくとも1つのアンテナが少なくとも1つの親水性の基でさらに置換されており、芳香族または複素芳香族化合物が式W−Ar−Zにより表され、式中、Wは、−COOH、−NH、−OH、−SOHまたは−POである、請求項3に記載の錯体。
【請求項5】
Arが、ピラジン、キノリン、キノキサリンおよびクマリンの基から選択される、請求項3に記載の錯体。
【請求項6】
Ar−Zが、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、1−アミノナフタレン、アミノピラジン類、ジアミノピラジン類、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボキサミド、2,5−ジアミノ−3,6−ジシアノピラジン、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸エステル類および3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボキサミド類から選択される、請求項3に記載の錯体。
【請求項7】
アンテナの少なくとも1つの吸収帯が、実質的に少なくとも1つのMの励起帯と適合する、請求項1に記載の錯体。
【請求項8】
Mが、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrおよびInから選択される金属イオンである、請求項1に記載の錯体。
【請求項9】
がアンテナであり;XおよびXが、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOおよび−O(CHSOから独立して選択され;RないしRが、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOおよび−(CHNHCO(CHSOから独立して選択される、請求項8に記載の錯体。
【請求項10】
がアンテナであり;XないしXが、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOおよび−O(CHSOから独立して選択され;そして、RないしRが、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOおよび−(CHNHCO(CHSOから独立して選択される、請求項8に記載の錯体。
【請求項11】
がアンテナであり;XないしXが、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOおよび−O(CHSOから独立して選択され;そして、R、R、RおよびRが、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOおよび−(CHNHCO(CHSOから独立して選択される、請求項8に記載の錯体。
【請求項12】
がアンテナであり;XないしXが、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSOおよび−O(CHSOから独立して選択され;そして、R、R、RおよびRが、水素、C1−C10ヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、−(CHSO、−(CHNHSO、−(CHOCO(CHSO、−(CHCONH(CHSOおよび−(CHNHCO(CHSOから独立して選択される、請求項8に記載の錯体。
【請求項13】
およびXが−Oであり;YおよびYが、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−および−(CHNHSO−から独立して選択され;そして、RないしRが水素である、請求項9に記載の錯体。
【請求項14】
ないしXが−Oであり;RないしRが水素であり;そして、YおよびYが、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−および−(CHNHSO−から独立して選択される、請求項10に記載の錯体。
【請求項15】
ないしXが−Oであり;R、R、RおよびRが水素であり;そして、YおよびYが、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−および−(CHNHSO−から独立して選択される、請求項11に記載の錯体。
【請求項16】
ないしXが−Oであり;R、R、RおよびRが水素であり;そして、YおよびYが、−(CHO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHOSO−および−(CHNHSO−から独立して選択される、請求項12に記載の錯体。
【請求項17】
腎機能の測定方法であって、
(a)電磁気放射を異なる波長で吸収および放出できる金属錯体の有効量を、患者の体内に投与すること、
(b)患者の身体の一部から出るシグナルを検出すること、ここで、シグナルは、検出時に身体からまだ除去されていない金属錯体に由来する、
(c)シグナルの検出に基づいて患者の身体の腎機能を決定すること、
を含み、
ここで、金属錯体は、式I
【化2】

[式中、
Mは、可視および/またはNIR領域でスペクトルの吸収および放出を示す金属イオンであり;
、XおよびXは、アンテナ、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSO、−NH(CHOSO、−NH(CHNHSO、−O(CHSO、−O(CHOSO、−O(CHNHSO、−NH(CHPO、−NH(CHPO、−NH(CHOPO、−NH(CHOPO、−NH(CHNHPO、−NH(CHNHPO、−O(CHPO、−O(CHPO、O(CHOPO、−O(CHOPO、−O(CHNHPOおよび−O(CHNHPOから独立して選択され;
およびYは、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−および−(CHSONH−から独立して選択され;
ないしRは、アンテナ、水素、C1−C10アルキル、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10ポリヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、−(CHSO、−(CHOSO、−(CHNHSO、−(CHCO(CHSO、−(CHOCO(CH)cSO、−(CHCONH(CHSO、−(CHNHCO(CHSO、−(CHNHCONH(CHSO、−(CHNHCSNH(CHSO、−(CHOCONH(CHSO、−(CHPO、−(CHPO、−(CHOPO、−(CHOPO、−(CHNHPO、−(CHNHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHOCONH(CHPOおよび−(CHOCONH(CHPOから独立して選択され;
a、bおよびcは、独立して1ないし6であり;
mは1ないし10であり、そして、
nは1ないし5であり;
ここで、XないしXおよびRないしRの少なくとも1つはアンテナであり、各アンテナは、吸収および放出が可視および/またはNIR領域で起こる芳香族または複素芳香族の基である]、
により表される、
方法。
【請求項18】
少なくとも1つのアンテナが、非置換または置換の芳香族または複素芳香族化合物から誘導される芳香族または複素芳香族の発色団である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
芳香族または複素芳香族化合物が、式Ar−Zにより表され、ここで、Arは、5個ないし10個の炭素原子の単環式または二環式環構造であり、Zは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキルまたはスルホン酸アルキル、ハロゲン化スルホニル、塩化ホスホリル、N−スクシンイミドエステル、クロロホルメート、イソシアネート、アシルアジドおよびイソチオシアネートから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのアンテナが少なくとも1つの親水性の基でさらに置換されており、芳香族または複素芳香族の化合物が式W−Ar−Zにより表され、式中、Wは、−COOH、−NH、−OH、−SOHおよび−POから選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Arが、ピラジン、キノリン、キノキサリンおよびクマリンの基から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
Ar−Zが、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、1−アミノナフタレン、アミノピラジン類、ジアミノピラジン類、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボキサミド、2,5−ジアミノ−3,6−ジシアノピラジン、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸エステル類および3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボキサミド類から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
アンテナの少なくとも1つの吸収帯が、実質的に少なくとも1つのMの励起帯と適合する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
Mが、Eu、Tb、Dy、Sm、Rh、Re、Ru、CrおよびInから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
式II
【化3】

[式中、
、XおよびXは、アンテナ、−O、−NH(CHOH、−NH(CHCOH、−NH(CHSO、−NH(CHOSO、−NH(CHNHSO、−O(CHSO、−O(CHOSO、−O(CHNHSO、−NH(CHPO、−NH(CHPO、−NH(CHOPO、−NH(CHOPO、−NH(CHNHPO、−NH(CHNHPO、−O(CHPO、−O(CHPO、O(CHOPO、−O(CHOPO、−O(CHNHPOおよび−O(CHNHPOから独立して選択され;
およびYは、単結合、−(CH−、−(CHO−、−(CHOCO−、−(CHCO−、−(CHOCNH−、−(CHOCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONH−、−(CHNHCSNH−、−(CHOSO−、−(CHOSO−、−(CHSO−、−(CHNHSO−および−(CHSONH−から独立して選択され;
ないしRは、アンテナ、水素、C1−C10アルキル、C1−C10ヒドロキシアルキル、C1−C10ポリヒドロキシアルキル、カルボキシル、C1−C10カルボキシアルキル、C1−C10アルコキシアルキル、−(CHSO、−(CHOSO、−(CHNHSO、−(CHCO(CHSO、−(CHOCO(CH)cSO、−(CHCONH(CHSO、−(CHNHCO(CHSO、−(CHNHCONH(CHSO、−(CHNHCSNH(CHSO、−(CHOCONH(CHSO、−(CHPO、−(CHPO、−(CHOPO、−(CHOPO、−(CHNHPO、−(CHNHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHOCO(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHCONH(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCO(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCONH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHNHCSNH(CHPO、−(CHOCONH(CHPOおよび−(CHOCONH(CHPOから独立して選択され;
a、bおよびcは、独立して1ないし6であり;そして、
mは1ないし10であり;
ここで、XないしXおよびRないしRの少なくとも1つはアンテナであり、各アンテナは、吸収および放出が可視および/またはNIR領域で起こる芳香族または複素芳香族の基である]
の化合物、
但し:
(a)RないしRが水素であるならばこの場合、XないしXは、アニリン、ベンジルアミン、2−アミノメチルピリジン、1−アミノナフタレン、2−アミノナフタレン、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、2−(2−アミノエチル)アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)−アミノピラジン、2−(2−アミノエチル)アミノキノキサリン−2−カルボン酸または2−(2−アミノエチル)−アミノキノキサリン−2−カルボキサミドから誘導されるものではない;そして、
(b)XないしXが−Oであるならばその場合、RないしRは、フェニルまたはベンジルではない。
【請求項26】
各アンテナが、非置換または置換の芳香族または複素芳香族化合物から誘導される芳香族または複素芳香族発色団である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
芳香族または複素芳香族化合物が、式Ar−Zにより表され、ここで、Arは、5個ないし10個の炭素原子の単環式または二環式環構造であり、Zは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボキシレート、酸ハロゲン化物、ハロゲン化アルキルまたはスルホン酸アルキル、ハロゲン化スルホニル、塩化ホスホリル、N−スクシンイミドエステル、クロロホルメート、イソシアネート、アシルアジドおよびイソチオシアネートから選択される、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
少なくとも1つのアンテナが少なくとも1つの親水性の基でさらに置換されており、芳香族または複素芳香族の化合物が式W−Ar−Zにより表され、式中、Wは、−COOH、−NH、−OH、−SOHおよび−POから選択される、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
Arが、ピラジン、キノリン、キノキサリンおよびクマリンの基から選択される、請求項27に記載の化合物。
【請求項30】
Ar−Zが、7−アミノ−4−メチルクマリン、4−アミノサリチル酸、1−アミノナフタレン、アミノピラジン類、ジアミノピラジン類、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボキサミド、2,5−ジアミノ−3,6−ジシアノピラジン、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸、3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボン酸エステル類および3,6−ジアミノ−2,5−ピラジンジカルボキサミド類から選択される、請求項27に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−510806(P2008−510806A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529884(P2007−529884)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027486
【国際公開番号】WO2006/026038
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(595181003)マリンクロッド・インコーポレイテッド (203)
【氏名又は名称原語表記】Mallinckrodt INC.
【Fターム(参考)】