説明

腎臓結石疾患の予防のための希土類化合物の使用

【課題】オキサレートに結合し、それにより腎臓における結石の形成を阻害または予防する薬剤を提供すること。
【解決手段】腸管からのオキサレートの望ましくない吸収によって特徴付けられる、腎結石のような状態を、希土類金属イオンの非毒性塩を使用して、都合良く処理する。本発明は、腎臓におけるオキサレート沈着(腎臓結石)の危険性があるか、または、腎臓におけるオキサレート沈着の症状を示す被験体を、高親和性オキサレート結合特性を有する希土類塩(例えば、ランタン塩)を経口投与することによって、制御、予防、または処置する方法に関する。好ましい希土類塩は、イットリウム、ランタンおよびセリウムの塩である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、35U.S.C.§119(e)の下、仮出願60/285,901(2001年4月23日出願)の優先権を主張する。この出願の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、食餌性オキサレートに結合してそれが胃腸管に吸収されるのを防ぐ希土類塩(例えば、ランタン塩)を投与することによって、尿石症(腎臓結石疾患)を予防または処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
腎石症または尿石症は、腎臓結石疾患のような尿路内における結石の発生として定義される一般的な障害である。この障害は、重篤な健康問題となる。局所状態に依存して、人口の1%と14%との間が、この状態に罹患している。米国における尿石症の経済的影響は、1993年には18億3千万ドルであると見積もられた(Grasesら、International Urology and Nephrology,31(5)pp.591−600(1999))。尿石症のための現在の予防/処置(例えば、クエン酸カリウム錠剤)は、実施が簡単ではなく、そして有効というわけでもない。
【0004】
シュウ酸カルシウムは、腎臓結石における有力な成分である。尿に排出されるオキサレートの量は、シュウ酸カルシウムの過飽和および腎臓結石の形成に対して有意な影響を有する(R.Holmersら、Kidney International,59,pp.270−276(2001))。さらに、シュウ酸カルシウムはまた、関節炎に関連することが知られている(Reginato AJ.Kurnik BRC:「Calcium oxalate and other crystals associated with kidney disease and arthritis」、Semin Arthirtis Rheum 18:198,1989)。
【0005】
特許文献1は、消化管におけるオキサレートのレベルを減少するために脂肪族ポリアミンを使用することを示唆している。この刊行物は、必要に応じて、オキサレートを分解し得る酵素(例えば、シュウ酸デカルボキシラーゼまたはシュウ酸オキシダーゼ)の存在下で、ポリアミンを経口投与することを示唆している。種々の形態の経口投薬が、記載される。この刊行物の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0006】
高レベルのホスフェートを除去することによって、腎不全の患者におけるリン酸塩過剰血症を処置するための炭酸ランタン[La(CO]の水和物が、特許文献2および特許文献3に記載される。この処置は、腎臓透析を受けている患者において特に有用である。これらの化合物は、特に好ましい。
【0007】
上記の文献の引用は、上記のいずれかが適切な従来技術であるという自認として意図されない。日付に関する全ての記載またはこれらの文献の内容に関する説明は、本出願人に利用可能な情報に基づき、これらの文献の日付または内容の正確さについてのいずれの自認も構成しない。さらに、本願を通して参照される全ての文献は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第99/22744号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,968,976号明細書
【特許文献3】国際公開第96/30029号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オキサレートに結合し、それにより腎臓における結石の形成を阻害または予防する薬剤の必要性が存在する。本発明は、ヒトを含む動物におけるオキサレートのレベルを低下する希土類化合物を使用することによって、この必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、腎臓におけるオキサレート沈着(腎臓結石)の危険性があるか、または腎臓におけるオキサレート沈着の症状を示す被験体を、高親和性オキサレート結合特性を有する希土類塩(例えば、ランタン塩)を経口投与することによって、制御、予防または処置する方法に関する。
従って、1つの局面において、本発明は、被験体における腎臓結石の形成を阻害する方法に関し、この方法は、この被験体の胃腸管に、必要に応じて水和形態の有効量の非毒性希土類塩を投与する工程を包含する。代表的な実施形態において、この希土類塩は、以下の式である:
[RE][X]・cHO (1)
ここで、REは、希土類カチオンを表し、Xは、非毒性アニオンを表し、aおよびbは、中性の塩が形成されるような適切な相対値であり、そしてcは、0〜10の値を有する。
【0011】
別の局面において、本発明は、被験体の胃腸管からのオキサレートの吸収を調節する方法に関し、この方法は、式(1)の化合物をこのような処置を必要とする被験体に投与する工程を包含する。
【0012】
別の局面において、本発明は、オキサレートベースの腎臓結石の危険性があるかまたはこの症状を示す被験体の処置のための医薬を調製するための、必要に応じて水和された非毒性希土類塩の使用に関する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
被験体の胃腸管からのオキサレートの望ましくない吸収によって特徴付けられる状態を処置するための方法であって、該方法は、このような処置の必要な該被験体の胃腸管に、有効量の希土類金属の塩および1つ以上の非毒性対イオンを、該胃腸管からのオキサレートの吸収を阻害するのに有効な量で投与する工程を包含し、該塩が、必要に応じて水和している、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記状態が腎結石疾患である、方法。
(項目3)
項目1または2に記載の方法であって、前記被験体が、前記腎結石疾患の危険がある、方法。
(項目4)
項目1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記希土類金属が、イットリウム、セリウムまたはランタンである、方法。
(項目5)
項目1〜4のいずれかに記載の方法であって、前記対イオンが、アセテート、クロリドまたはカルボネートを含む、方法。
(項目6)
項目1〜5のいずれかに記載の方法であって、前記希土類金属が、イットリウム、セリウム、またはランタンである、方法。
(項目7)
項目1〜6のいずれかに記載の方法であって、前記塩が、ランタンカルボネートである、方法。
(項目8)
項目1〜7のいずれかに記載の方法であって、前記塩が、以下の式
[RE][X]・cHO (1)
であり、
ここで、REが、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびScから選択されるランタニド系列の3価イオンであり、Xが、CO、Cl、およびアセテートから選択された、負に荷電された対イオンであり、
ここで、aおよびbが、中性塩になるように選択され、
そしてここで、cが0〜10である、
方法。
(項目9)
項目1〜8のいずれかに記載の方法であって、前記投与が、経口投与による、方法。
(項目10)
胃腸管からのオキサレートの望ましくない吸収によって特徴付けられる状態を処置するための薬剤の調製のための、必要に応じて水和形態の非毒性希土類金属の使用。
(項目11)
胃腸管からのオキサレートの望ましくない吸収によって特徴付けられる状態の処置のための薬学的組成物であって、該組成物が、必要に応じて水和形態の、少なくとも一種の希土類金属イオンの非毒性塩、および薬学的に受容可能な賦形剤を含有する、薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aおよび1Bは、0.01Mのシュウ酸ナトリウムおよび8.5g/Lの塩化ナトリウムを含むオキサレート溶液を使用した、pH7における、0.1Mのランタンカルボネート水和物(すなわち、ランタンカルボネート四水和物(La(CO・4HO)(図1A)、およびランタン五水和物(La(CO・5HO)(図1B)によるオキサレートの除去を示す。
【図2】図2は、pH3〜pH7におけるランタンカルボネート四水和物によるオキサレート結合の比較を示す。
【図3】図3Aおよび3Bは、pH3(図3A)およびpH7(図3B)における、0.1Mのランタンカルボネートを使用した0.01Mのオキサレートおよび0.1Mのホスフェート溶液の競合結合を示す。
【図4】図4Aおよび4Bは、pH3およびpH7における炭酸イットリウム[Y(CO・3HO](図4A)および炭酸セリウム[Ce(CO・XHO](図4B)(Aldrichにより供給)によるオキサレート結合を示す。
【図5】図5は、pH7における塩化ランタンによるオキサレートの除去を示す。
【図6】図6は、pH3からpH7へのpHの変化として、ランタンカルボネートによるオキサレートおよびホスフェートの除去を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の実施様式)
本発明は、必要に応じて水和された形態の希土類元素の非毒性塩を使用して薬学的組成物を提供する。希土類カチオンは、代表的に、ランタニド系列の三価のアニオンであり、ランタニド系列としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、YおよびScが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、La、YおよびCeである。このカチオンは、炭酸イオン、塩化物イオン、ギ酸イオンおよび酢酸イオン(好ましくは、炭酸イオン)から選択される負に荷電した対イオンまたは対イオンの混合物により釣り合っている。上記の式(1)中の添え字aおよびbは、対イオンの性質に依存し、そして中性の塩が得られるように選択される。水和水が存在し得、存在する場合、10、好ましくは8未満、より好ましくは7未満程度の多さの水和水を含み得る。
好ましい希土類塩は、イットリウム、ランタンおよびセリウムの塩である。これらの希土類塩は、酢酸イオン、塩化物イオンまたは炭酸イオンのような対イオンにより釣り合いをとられ得、炭酸イオンが最も好ましい。これらの塩の水和形態もまた好ましく、特に、塩1モルあたり7モル未満、好ましくは3〜5の水和水との水和物が好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、胃腸管からのオキサレートの除去のために設計される。これらの組成物の投与は、好ましくは、上消化管に対してであり、最も簡便には経口投与によるものである。これらの化合物は、これらの位置で遭遇するpH範囲(胃におけるpH2から胃の下流の領域におけるpH7までの範囲)にわたって有効である。本発明の組成物は、高いpHにおける分解に供されず、従って、経口投与のための腸溶性コーティングの提供のような特別な注意をはらう必要がない。
【0016】
腎臓結石により特徴付けられる状態は、腸管からのオキサレートの不適切な吸収に関連すると考えられている;このような吸収の阻害は、この状態の制御において有用であると考えられる。いずれの理論にも束縛されることを意図しないが、出願人らは特に、胃腸管からのオキサレートの過剰な吸収により被る状態の中で腎臓結石を含める。さらに、胃腸管からのオキサレートの不適切な吸収自体が、治療を必要とする状態である。このような不適切な吸収の後遺症としては、腎臓結石の症状が挙げられるが、他のオキサレート沈着も同様に、他の器官において形成され得るか、または血流中のオキサレートのレベル自体が、有害であり得る。従って、正常なレベルよりも高い血液または血清中のオキサレートレベルを示す任意の被験体はまた、本発明の方法に従う処置の候補である。食餌中および血流または血清中のオキサレートレベルを決定するための方法は、当該分野で公知である。
【0017】
本発明に従う経口投与のための薬学的組成物は、当該分野で周知の方法を使用して処方および製造され得る。適切な希釈剤、キャリア、賦形剤および他の成分もまた、周知である。この組成物は、望ましくは、投薬形態であり、単一の一日用量、または多数の一日以下の投薬量を提供する。従来の薬理学的方法は、適切な用量レベルを確認するために使用され得る。任意の投与経路にふさわしい適切な処方物は、当該分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,最新版、Mack Publishing Co.,Easton,PAに見出される。経口投与に適切な形態としては、固体形態(例えば、錠剤、カプセル剤および糖剤)、および液体形態(例えば、懸濁液またはシロップ)が挙げられる。希釈剤およびキャリアに加えて、非活性成分(例えば、シックナー、風味向上成分および着色剤)を含めることは、経口調製物の処方において慣用的である。この薬学的組成物中の化合物はまた、遅延放出形態を提供するように被覆または処理され得る。好ましくは、必要な一日投薬量は、錠剤形態(例えば、咀嚼錠剤形態)で与えられる。
【0018】
「処置する」とは、すでに存在する状態を改善するか、またはまだ存在しないかもしくはより望ましくないレベルにまで進行する可能性を有する形態で存在する状態の獲得もしくはさらなる増大を阻害するかのいずれかを意味する。従って、「処置する」または「処置」は、治療的使用および予防的使用の両方を含む。
【0019】
本発明の方法によって処置され得る個体としては、腎臓結石の症状を示すか、腎臓結石の確認された診断を有するか、またはこの状態の代替の症状により疑わしい個体が挙げられる。本発明の方法に適切な被験体はまた、一般的に腸からのオキサレートの除去により恩恵を受ける被験体であり;例えば、高レベルのオキサレート取込みを有する食餌をとる個体もまた含まれる。さらに、家族歴が腸からのオキサレートの不適切な取込みの危険性を示す個体もまた、恩恵を受け得る。処置する医師は、この分野で利用可能な診断方法に基づいて、胃腸管からのオキサレートの吸収の調節により恩恵を受ける個体を同定することができる。
【0020】
投与される組成物は、さらなる活性成分(例えば、上記WO 99/22744において開示されるような脂肪族ポリアミン、および被験体がまた被る他の状態の処置を意図され得る希土類塩と適合性の任意の他の医薬)を含み得る。いずれの理論によっても束縛されることを意図しないが、本発明の希土類化合物は、食餌性オキサレートと不溶性の物質を形成し、そしてオキサレートが泌尿器系に侵入する機会を提供することなく、被験体からの不溶性のオキサレートの排泄を行うと考えられる。
【0021】
本発明をここで一般的に記載したが、本発明は、以下の実施例を参照してより容易に理解され、この実施例は、例示の目的で提供され、他に明記されなければ、本発明を限定することを意図しない。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
(オキサレート結合アッセイ)
ランタンカルボネートによって、ストック溶液からのオキサレートの除去を評価するために、オキサレート結合アッセイを開発した。このアッセイは、ランタンカルボネートによってストック溶液からのホスエフォートの除去を評価するために以前に開発されたホスフェート結合アッセイに基づいた(米国特許第5,968,976号)。さらに、緩衝液条件を、胃および小腸に存在する条件をまねるように設計した。簡単に述べると、50mLのストックシュウ酸ナトリウム溶液(8.5g/L塩化ナトリウムを含有する)を、5N HClおよびMettler−Toledo DL58オートタイトレーターを使用して所望のpHに調節した。オキサレート濃度およびランタンカルボネート濃度の種々の組み合わせを試験して、どの濃度がオキサレート除去を最大化するかを決定した。所望の量のランタンカルボネートの添加の前に、2mLサンプルを、ゼロ時点サンプルとしてふるまうようにとった。2mLのストックオキサレート緩衝液をpHを調節した緩衝液に添加して戻すことによって、再び、緩衝液の容量を50mLにし、そしてランタンカルボネートを添加した。タイマーを開始させ、そして2mLのサンプルを20分にわたって所定の間隔で除去し、そして0.02μmシリンジフィルター(Whatman Anotop 10 #6809 1002)を通して濾過した。濾過されたサンプルを、Sigma Diagnostics’ Oxalate Assay Kit(Sigma #591−D)の改変版およびオキサレート標準曲線を使用して、オキサレートについて分析した。オキサレートアッセイの改変は、50μLの代わりに、25μLの適切に希釈された濾過されたサンプルのみをアッセイし、そして0.5mLのオキサレート試薬A(Sigma#591−10)のみおよび50μLのオキサレート試薬B(Sigma#591−2)のみを使用することを包含した。さらに、サンプルを、Molecular Devices Spectramax 190 プレートリーダーを使用して、Falcon 96ウェルマイクロプレート中、590nmでアッセイした。
【0023】
このアッセイに関して、図1に示されるように、0.01Mシュウ酸ナトリウムおよび8.5g/L塩化ナトリウムを含有する50mLのオキサレート緩衝液がpH7に調節され、そしてランタンカルボネートが0.1M(2.74g La(CO・4HO(図1A)または2.65g LA(CO・5HO)(図1B)の濃度で添加された場合、オキサレート結合は、最強であった。この結果の正確性を最大にするために、濾過されたサンプルを、1/20の希釈でアッセイした。図1Aおよび1Bは、異なる水和形態のランタンカルボネート、ランタンカルボネート四水和物およびランタンカルボネート五水和物が、pH7.0で効果的にオキサレートに結合し得ることを示す。
【0024】
上記手順は、3〜7の範囲の種々のpHで繰り返された。結果を図2に示す。これらの結果は、ランタン四水和物がこのpH範囲(3〜7)でオキサレートを結合し、好ましい結合はpH6〜7であることを実証する。
【0025】
(実施例2)
(ランタンカルボネートを使用する、オキサレートおよびホスフェートの競合結合)
オキサレートおよびランタンカルボネートの適切な濃度の組み合わせを見出したので、ランタンカルボネートによるオキサレートおよびホスフェートの競合結合をまた検査した。競合結合アッセイは、ランタンカルボネートによるストック溶液からのホスフェートの除去を評価するために以前に開発されたホスフェート結合アッセイ(米国特許第5,968,976号)およびオキサレートを使用する現在の研究からの結果に基づいた。簡単に述べると、0.1M 無水リン酸二ナトリウム、0.01M シュウ酸ナトリウム、および8.5g/L塩化ナトリウムを含むストック溶液を調製した。次いで、50mlのこの溶液を、5NおよびMettler−Toledo DL58オートタイターを使用して、pH3またはpH7のいずれかに調整した。ランタンカルボネートの添加の直前に、2mlのサンプルを、ゼロ時点サンプルとしてふるまうようにとった。2mLのストックオキサレート/ホスフェート緩衝液をpHを調節した緩衝液に添加して戻すことによって、再び、緩衝液の容量を50mLにし、そしてランタンカルボネートを添加した。0.1Mの濃度が、50mLのpH3またはpH7のいずれかのホスフェート/オキサレート緩衝液に存在するように、ランタンカルボネートを添加した。タイマーを開始させ、そして2mLのサンプルを20分にわたって所定の間隔で除去し、そして0.02μmシリンジフィルター(Whatman Anotop 10 #6809 1002)を通して濾過した。図3に示されるように、次いで、濾過されたサンプルを、オキサレートおよびホスフェートの両方の除去について分析した。オキサレート除去を、Sigma Diagnostics’ Oxalate Assay Kit(Sigma #591−D)の改変版およびオキサレート標準曲線を使用して、各サンプルの1/20希釈物をアッセイすることによって、評価した。オキサレートアッセイの改変は、50μLの代わりに、25μLの適切に希釈された濾過されたサンプルのみをアッセイし、そして0.5mLのオキサレート試薬A(Sigma#591−10)のみおよび50μLのオキサレート試薬B(Sigma#591−2)のみを使用することを包含した。さらに、サンプルを、Molecular Devices Spectramax 190 プレートリーダーを使用して、Falcon 96ウェルマイクロプレート中、590nmでアッセイした。ホスフェート除去を、Sigma Diagnostics’ Inorganic Phosphorus Assay Kit(Sigma#670−C)および無機リン標準曲線を使用する各サンプルの1/500希釈物をアッセイすることによって評価した。リンアッセイを、Sigma Procedure#670に概説されるように、実行した。
【0026】
図3Aおよび3Bは、ホスフェート溶液と比較して、オキサレート溶液についての競合結合アッセイの結果を示す。オキサレートと競合し得る主要な食餌成分の1つは、ホスフェートである。食餌性ホスフェートレベルは、オキサレートの10倍のオーダーのレベルである。食餌性ホスフェート取り込みは、800〜1500mg/日の間および約300mg P/食餌である。食餌性オキサレート取り込みは、約100mg/日である。図3の結果は、ランタンカルボネートによるオキサレート結合に対するホスフェートの潜在的な競合的効果を調べた。10倍過剰のホスフェートの存在下で、ランタンカルボネート五水和物が、pH7.0で、ホスフェートよりもオキサレートに優先的に結合することが示され(図3B)、この最適のpHにおいて、ランタンカルボネートは、オキサレートに結合することが示された(図2)。ホスフェートの優先的な結合は、pH3.0で実証された(図3A)。従って、この結果は、10倍過剰のホスフェートの存在下においてさえ、ランタンカルボネートは、依然としてオキサレートに効果的に結合し得、そしてホスフェートおよびオキサレート結合についての異なるpH最適条件は、ホスフェートがオキサレート結合を妨害しないことをさらに示すことを実証する。
【0027】
(実施例3)
(追加の希土類化合物によるオキサレート結合)
これらのデータは、他のランタニド塩がオキサレートに効果的に結合し得ることを実証する。イットリウムカルボネートおよびセリウムカルボネートを、実施例1に記載したように、オキサレートに結合する能力について試験した。図4に示されるように、0.1M イットリウムカルボネート(図4A)および0.1M セリウムカルボネート(図4B)の両方は、pH7において、オキサレートを結合する際に0.1M ランタンカルボネートと同程度に効果的であるが、pH3においてあまり効果的でなかった。
【0028】
ランタン、イットリウムおよびセリウムの希土類の塩化物およびアセテートをまた、実施例1のアッセイ手順を使用して、オキサレート結合についてpH7でアッセイした。このアッセイは、オキサレート溶液が、5N HClを使用して所望のpHに調節された後に、pHが1N NaOHで維持されることを除いて、実施例1で概説されたアッセイと類似した。これは、必要であった。なぜなら、塩化物化合物およびアセテート化合物の両方が、それらの追加の際に有意に溶液のpHを落とすからである。図5に示されるように、pH7において、ランタンクロリドは、オキサレートに非常に迅速に結合する。
【0029】
類似の結果は、セリウムクロリドおよびイットリウムクロリドについて得られた。希土類アセテートはまた、pH3およびpH7の両方でアッセイされたが、どの希土類アセテートも、いずれのpHでも有意にオキサレートに結合しなかったことを示した。
【0030】
(実施例4)
(消化管におけるpH変移のシミュレーション)
消化系を通るランタンオキサレートの通過をシミュレートするために、pHを、pH3(すなわち、胃のpH)〜pH7(すなわち、ほぼ小腸のpH)に変化した場合のオキサレート除去とホスフェート除去の両方を研究する最後の実験を設計した。この実験を、消化管においてオキサレート結合剤としてランタンカルボネートの可能性に取り組むために実行した。以前の結果は、(1)オキサレート結合が約中性pHにおいて最適であり、(2)ランタンカルボネートは、pH7においてホスフェートと首尾良く競合し得、そして(3)結合能力は、pH3においてより低いことが示されている。
【0031】
開始するために、0.1Mランタンカルボネートを、0.1M ホスフェートおよび0.01Mオキサレートを含有する溶液に、pH3で添加した。オキサレートおよびホスフェートの除去の両方の除去を、10分間モニターした。10分後、pHを、pH7に次第に上昇させた。サンプルを、pH4、pH5、pH6、およびpH7でとり、この溶液中に存在するオキサレートおよびホスフェートの量の変化を評価した。図6に示されるように、pH7に達する際、溶液を、さらに10分間モニターした。この結果は、ランタンカルボネートが、胃から小腸への移行の間に見出されるpH条件下で、過剰のホスフェートの存在下でオキサレートに首尾良く結合し得ることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−173684(P2009−173684A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116718(P2009−116718)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【分割の表示】特願2002−582921(P2002−582921)の分割
【原出願日】平成14年4月22日(2002.4.22)
【出願人】(599084588)アノーメッド インコーポレイティド (8)
【Fターム(参考)】