説明

腫瘍の一掃のための方法および組成物

本発明は、癌の免疫療法のための組成物と方法に関する。詳細には、固形腫瘍と転移性腫瘍の両方を、たとえ固形腫瘍と転移性腫瘍の両方が体内においてどこへ存在しても、全身性の一掃をもたらす癌免疫療法の方法が記載されている。前記組成物は、適切に投与された場合には腫瘍の一掃につながる活性化同種異系Th1細胞を含む。前記方法は、前記治療用組成物のプライミング用量を投与すること、前記組成物を腫瘍内の注射とともに選別した腫瘍の病変のアブレーション、そして前記治療用組成物の注入、を含む。これらのステップは、免疫細胞浸潤に続発する腫瘍の全身性の一掃を可能にし、及び免疫を媒介とする腫瘍根絶につながる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、疾病の治療のための免疫療法的な手法に関する。さらに具体的には、腫瘍の一掃をもたらす疾病治療のための薬剤および方法に関する。
[背景技術]
既知の最も的確で強力で安全な疾病の予防と治療のメカニズムは、医療行為を施すことなしに、様々な外来性の病原体を取り除く先天性免疫および適応免疫の両要素を組合せた自然「滅菌」免疫応答である。免疫システムは、再感染に際して迅速に免疫応答を開始するために取り除かれた外来抗原を「記憶する」よう設計されている。免疫システムは、癌患者でさえ、ウイルスやバクテリアで見られるような外来抗原に対して、完全に破壊し身体から外来抗原を除去するのに十分な外来抗原に対する応答を認識して開始することができる。この滅菌する免疫応答の強烈性と特異性は、自己組織では控え目であるが、不完全に抑制された免疫システムでは腎臓、肝臓または心臓のような大きな移植器官を完全に破壊することができるということで実証することができる。外来抗原に対する免疫の破壊効果は、免疫の破壊効果が腫瘍にも転用できるならば、癌治療にとって有効なものとなるであろう。
【0002】
免疫療法は、疾病、特に癌に対する免疫応答を利用し、誘導し、制御する方法の開発に専念される。治療用癌ワクチンは、腫瘍細胞が外来のものであることを認識するために、癌の存在する患者の免疫システムの能力を導きだすために設計された免疫療法の一種である。もし腫瘍が免疫システムによって外来病原体として認識されると、免疫応答は理論的に誘発され、免疫応答は免疫細胞が大きな腫瘍を破壊することを引き起こすことが可能であり、体内のどこに存在するとしても転移性腫瘍細胞を探し出して破壊させることができる。有効な免疫治療を行った後は、除去された外来細胞を「記憶する」免疫システムの能力は、免疫システムが日和見的感染を防止するのと同様に、付加的な治療を施すことなくどんな再発性の癌細胞でも除去するための免疫システムを可能にするだろう。
【0003】
癌治療への免疫療法のアプローチは、現在の癌治療戦略においては極めて望ましい選択である。免疫介在抗腫瘍メカニズムとは異なり、現在の手術、放射線療法や化学療法の方法では、単一細胞レベルに対して抗腫瘍のために、抗腫瘍特異性を発揮することはできない。そのため、手術、放射線療法や化学療法のような現在の方法では、最後の腫瘍細胞まで全て除去することは技術的には不可能である。最後の腫瘍細胞まで全て除去されないと治療の後、よく癌の再発という結果になる。さらに現在の方法は、腫瘍除去の「メモリ」よりも、むしろ治療に対する腫瘍の抵抗性を招くものである。
【0004】
癌ワクチン研究の分野においては、多くは腫瘍特異性抗原(TSA)と称される(通常の細胞では見られない)腫瘍特有の抗原を見つけるか、または癌細胞に過剰発現される腫瘍関連抗原(TAA)を探す研究に焦点をおくことによる古典的なワクチン開発戦略に従ってきた。TAAは自己抗原なので外来抗原として腫瘍の認識をもたらさない、むしろ腫瘍対通常細胞の免疫学的な区別を可能にする。またTAAを含む癌ワクチンは、抗腫瘍免疫応答を刺激するために、TAAのような抗原の能力を増進させる方法を組み込む。
【0005】
癌ワクチンの開発は、治療用の免疫を刺激して使用されることができるようにこれらTAAの免疫原性増加に対するアプローチを模索する経路を辿っている。免疫アジュバント(例えば、MF59、不完全フロイント・アジュバント、サポニンQS−21およびカルメット・ゲラン菌(BCG)など)との混合、より多くの免疫原性誘導体の合成、免疫原性タンパク質との共役、および樹状細胞への直接パルス発生、などの方法が顕著な成功を収めることなく探求された。臨床における免疫療法の成功率は極めて低いままである。
【0006】
現在の免疫治療法のアプローチによって誘発される臨床的に重要な抗腫瘍反応をほぼ全く得られないのにも拘わらず、現在の免疫治療法のような方法を用いた多数の臨床試験が産業的及び学術的なスポンサーによって未だ現在行われている。臨床においてこれら免疫療法による治療に対する継続的な開発の理由の1つは、進行性癌患者に対して現在提供される高い罹病率治療への代替が要望されているためであり得る。免疫療法は画期的な治療効果を持つものとは言えないが、ほとんど毒性がないことが証明されているアプローチである。一方では、高い毒性を示す化学治療に対する応答率は、過去20年間で増大しているかもしれないが、全体として5年生存率への影響は少ない。化学療法レジメンに示される生存率の緩やかな上昇は、生活の質に関して厳しい犠牲を強いられる。
[発明の概要]
少なくとも1つの外来抗原、少なくとも1つのI型炎症性サイトカイン、および樹状細胞の成熟を引き起こすことができる少なくとも1つのエフェクター分子、を含む治療用組成物。
【0007】
また腫瘍を液化状態に形質転換する方法が開示されている。この方法は、外来抗原に対しTh1免疫を創出する外来抗原を含む治療用組成物でプライミング(priming)すること、選別された1つまたは複数の腫瘍をアブレーション(切除)し、アブレーションは少なくともある種の腫瘍の死滅をもたらす、ことを含む。
【0008】
また、死滅した腫瘍損傷に近接した炎症性微小環境を創出すること、適応免疫細胞および先天性免疫細胞を活性化すること、を含む方法を開示する。
また、少なくとも1つの外来抗原と、樹状細胞の成熟を引き起こすことができる少なくとも1つのエフェクター分子と、少なくとも1つのTh1サイトカインとを含む治療用組成物で患者をプライミングすること、定期的に患者に治療用組成物を投与すること、を含む、患者のTh1応答を刺激して維持する方法を開示する。
【0009】
少なくとも1つの外来抗原、樹状細胞の成熟を引き起こすことができる少なくとも1つのエフェクター分子、および少なくとも1つのTh1サイトカインを含む治療用組成物で患者をプライミングすること、腫瘍の壊死をもたらす方法を用いて腫瘍をアブレーションすること、腫瘍内に治療用組成物を投与すること、および適応免疫細胞または先天性免疫細胞が活性化するために治療用組成物を注入することを含む、患者の腫瘍を一掃する別の方法を開示する。
【0010】
患者のTh2応答を抑制しながらde novoTh1応答を創出すること、癌細胞の壊死によって生じる腫瘍抗原の発生源を提供すること、腫瘍抗原に応答する樹状細胞の成熟のためのTh1応答に呼応する炎症性環境を提供すること、およびTh1応答を維持することによって腫瘍の免疫回避メカニズムを不能にすること、を含む患者の腫瘍を一掃する別の方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は幾つかのCTスキャン画像である。
【図2】図2は生体組織検査(生検)の結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明の詳細な説明]
本発明は、癌患者ための治療用組成物および治療方法を開示するものである。本発明では癌患者に適切に投与することで、腫瘍の全身性の一掃をもたらす治療用薬剤を開示する。通常前記組成物は以下の主要成分を含んでいる:(1)外来抗原、(2)1型サイトカイン、および(3)樹状細胞(DC)の成熟を引き起こすことが可能なエフェクター分子、好ましくはCD40L。
【0013】
また本発明は、腫瘍を有する患者の効果的なTh1免疫応答を刺激すること、in−situでワクチン法を使用して抗腫瘍免疫素を開発すること、および患者の先天性免疫および適応免疫を活性化し同時に腫瘍の免疫回避メカニズムを不能にすること、によって腫瘍の一掃のための方法を開示する。また本発明の方法は、通常Th1応答を刺激することにより達成されることができるTh2の抑制を含む。さらに本発明の方法は、Treg細胞(調節性T細胞)を介して達成される免疫抑制メカニズムの逆調節を含む。
【0014】
腫瘍の「一掃」は、腫瘍が縮小するか血液供給が全くなくなることを意味し、CTスキャンにおいて病変は治療前のベースラインに比べて低密度または暗黒となり、生検試料は凝固壊死の形跡を示す。
【0015】
本明細書では「治療用組成物」、「薬剤(medicants)」および「薬物(medicaments)」の用語が言及されている。これらの用語は互換性があり患者に投与する組成物として言及される。
【0016】
通常治療用組成物は外来抗原を含む。外来抗原は同種抗原などの任意の非自己抗原であり得る。外来抗原は、抗原がプロフェッショナル抗原提示細胞によって貪食されるように提供されなければならず、また処理されてT細胞に提供されるために免疫システムに供与されなければならない。抗原は生きた細胞の天然部分であるが、分子生物学の技術を用いて変形もしくは生体工学処理されることができる。抗原は可溶であるか、または生体あるいは生きた細胞の無傷部分または弱毒化された生体の一部の表面に固定できる。
【0017】
また治療用組成物中には種々のサイトカインを含むことができる。サイトカインなる用語は、通常ナノモルからピコモルまでの濃度で調節剤として作用し、また通常状態または病的状況下では、個々の細胞や組織の機能的な活動を調節する可溶性タンパク質やペプチドの様々なグループに対する総称として使用される。またこれらのタンパク質は細胞間の相互作用を直接調節し、また細胞外環境で行われる作用を調節する。1型サイトカインは炎症性反応中に含まれ、2型サイトカインは体液の免疫応答中に含まれる。1型サイトカインは、例えばIL−2、IL−12、IL−15、IFNガンマ、TFNアルファ、TFNベータ、GM−CSF及びC−Cケモカインを含む。サイトカインの成分は、自然のまたは遺伝子組換えサイトカインであるか、サイトカインの受容体と相互作用をするように設計された生物工学で作られた分子であることができる。サイトカインは直接治療用組成物に含まれる。あるいは、治療用組成物は生きた細胞またはサイトカインを産出し分泌する他の成分を含む。ある例示的な実施の形態では、治療用組成物は、治療用組成物中でサイトカインを産出し分泌する活性状態でT細胞を含むので、それにより治療用組成物中でサイトカインの発生源として作用する。
【0018】
また、治療用組成物は、未熟DCsの成熟を引き起こす1つの因子または因子群も含むことができる。DCsの免疫調整能力はDCの成熟度に依存する。種々の因子はDCs内への取り込みと処理を伴った以下の抗原の成熟を誘発することができる:全バクテリアまたはバクテリア由来の抗原(たとえば、リポ多糖、LPS)、IFNガンマ、TNFアルファ、IL−1、GM−CSFなどの炎症性サイトカイン、細胞選択表面受容体(たとえば、CD40)のライゲーションおよびウイルス生成物(たとえば、2本鎖RNA)。未熟細胞から成熟細胞への変換に伴って、DCsは幾つかの形質転換と機能変換が行われる。通常DCの成熟過程では、細胞内の形質膜陥入コンパートメントからDC表面への主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子の再分配、抗原の内部化のダウンレギュレーション、共刺激分子の表面発現の増加、形態学的変化(たとえば、樹状結晶の形成)、細胞骨格の再編成、ケモカイン、サイトカインおよびプロテアーゼの分泌、および接着分子とケモカイン受容体の表面発現、が含まれる。ある好ましい実施の形態では、CD40Lは、DCs成熟のための因子として含まれる。
【0019】
他の実施の形態では、DC成熟を生じる物質は、トル様受容体(TLRs)を介して信号を発信する。TLRsはマクロファージおよび樹状細胞上に発現され、主に先天性免疫内に含まれる。現在、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6およびTLR9のような幾つかのTLRsのリガンドが確認されている。これらのリガンドの多くは病原体から得られ、宿主には発見されないことは、TLRsが微生物の侵入を感知するために重要であるとを示唆している。TLRsにより病原体が確認されると、炎症促進性サイトカインの創出と共刺激性分子のアップレギュレーションが誘発されることで、先天性免疫が速やかに活性化される。次に活性化先天性免疫は効果的な適応免疫につながる。実施例には、細菌性のリポタンパク質及びペプチドグリカンを含むTLR2へのリガンド、および2本鎖RNA、リポポリサッカライド、細菌性フラジェリン、イミキモドおよび細菌性DNAをそれぞれ認識するTLR−3、TLR−4、TLR−5、TLR−7およびTLR−9へのリガンドを含む。DCsの成熟を引き起こすTLRsのリガンドおよびその他の因子は、また本発明の範囲に含まれる。
【0020】
一般的には、本発明の組成物は上記の3つの主要な成分要素を含む。これらの成分、すなわち外来抗原、Th1サイトカインおよびDC成熟分子は組成物を形成するために相互に結合され得る。あるいは、これらの成分の一部または全部は、形成前または形成後のいずれであっても生きた細胞から生み出される可能性があり、それによりサイトカインおよび/またはエフェクター分子の発生源として作用する。
【0021】
本発明の例示的な一実施形態では、医療用組成物は、T細胞で発現される同種抗原を含む。T細胞はCD4+T細胞であることが好ましく、Th1細胞であることがさらに好ましい。Th1細胞はin vitroで通常の献血者から得られたナイーブCD4+先駆体細胞から分化、拡張、活性化されることが可能である。細胞は、ミクロビーズもしくはナノビーズに結合された抗CD3モノクローナル抗体または抗CD28モノクローナル抗体を投与されると同時に活性状態になることが好ましい。ビーズは生分解性のビーズであり得る。これらの細胞はIFNガンマ、TNFアルファ、およびGM−CSFのような炎症性サイトカインを多量に生み出すことができ、細胞表面にCD40Lのようなエフェクター分子を発現することができ、それらはTh1免疫の進展を促進するのに作用する。
【0022】
医療用組成物は、活性化された同種異系Th1細胞を含む。これらの活性化されたTh1細胞は強力な炎症性物質である。これらの活性化されたTh1細胞と活性化されたTh1細胞の製造方法は米国特許第7435592号、第7678572号、第7402431号および第7592431号に記載されており参照することにより明細書に援用される。活性化された同種異系Th1細胞は意図的に患者にミスマッチされる。
【0023】
好適な医療用組成物の腫瘍内投与は、1型抗腫瘍免疫の発生のための強力なアジュバント効果を与えることができ、腫瘍の免疫性回避メカニズムのダウンレギュレーションを与えることができる。組成物のアジュバント効果は細胞の3つの主要な特徴、すなわち、(1)1型サイトカインを大量に産出する能力、(2)CD40Lの表面発現、および(3)細胞の同種異系性に基づく。異種抗原、同種抗原又はウイルス抗原のような外来抗原も強力なアジュバント効果を与えることができる。
【0024】
組成物の同種異系Th1細胞は大量の1型サイトカイン、すなわちIFNガンマ(IFN−γ)、TNFアルファ(TNF−α)、およびGM−CSFを産出することが好ましい。IFNガンマは、1型抗腫瘍免疫を促進するために必要な重要な1型サイトカインである。IFNガンマは、直接腫瘍細胞の成長を妨げT細胞が媒介する抗腫瘍反応を誘発することで抗腫瘍効果を媒介することができる。IFNガンマの分泌は、個別にNK細胞応答に寄与して、IL−12によって活性化されたNK細胞応答を高めることができる。
【0025】
TNFアルファの重要性は、1型サイトカインのみの注入である種の確立された動物腫瘍が十分に治癒されたという事実によって立証することができる。TNFアルファは、1型サイトカインのファミリーの1つで、アポトーシスを誘導することで効果的に癌細胞を破壊することができるリガンドである。IFNガンマおよびTNFアルファは、抗腫瘍エフェクター細胞にアジュバント効果を有するのみならず、直接的に腫瘍のアポトーシスを誘発することもできる。
【0026】
GM−CSFもまた強力なアジュバント効果を与えることができる。GM−CSFは、ヒトPBMC、Tリンパ球およびAPCにより1型サイトカインの産出物を誘導することができる。GM−CSFは2型サイトカインの発現をダウンレギュレートすることができ、DC1(IL−12産生DC)の優先的な拡大を伴った単球のDCへの分化とNK活性の活性化を促進することができる。
【0027】
薬剤の未熟DCとの混合は、DCを成熟させる原因となりIL−12を産出することができる。IL−12は1型免疫応答の一次開始剤として知られており、NK細胞およびTh1細胞からのIFNガンマを産出するための上流の正の調節因子として作用する。IL−12は、細胞溶解性T細胞を活性化することができ、Th1表現型にCD4+リンパ球の分化を引き起こす原因となり、1型が有利になるように1型免疫応答および2型免疫応答間の平衡を傾ける。IL−12は1型免疫の促進において強いアジュバント効果があることが知られている。
【0028】
活性同種異系Th1細胞を含む1つの薬剤は、通常の選別された血液ドナーから純化された先駆体から得ることができる。細胞は、皮内注射や腫瘍内注射あるいは静脈内注入のいずれかのために配合された、無菌性の低エンドトキシン投与の形式で供給される。また細胞は、腹腔内注入、胸膜腔内注入、節内注入、膀胱腔内注入または硬膜外注入用に配合され得る。好ましくはドナーは、HIV1、HIV2、HTLV1、HTLV2、HBV、HCV、RPR(梅毒)に対し陰性であることをテストされ、また好ましくは細胞はマイコプラズマ、EBVおよびCMVに対し陰性であることがテストされる。好ましい実施の形態においては、活性同種異系細胞は患者に対してHLA不適格であった。
【0029】
本発明の方法は、一般的に本発明の組成物を、患者の免疫システムを設計して腫瘍を一掃するために投与することを含む。本明細書に記載される本発明の第1ステップは、Th2環境からTh1環境に平衡を移し、癌患者のTh1免疫細胞の循環数の増加を図るように通常設計される。第2ステップでは、抗腫瘍特異性Th1免疫を引き出すことができ、さらに第3ステップでは、腫瘍の免疫忌避をダウンレギュレートするために先天性および適応性免疫応答の成分を活性化することができ、持続的なTh1サイトカイン環境を発生させることができる。
【0030】
個々の免疫システムは、疾病生物に対する応答で産出され、及びTh1応答あるいはTh2応答であることができるサイトカインの平衡に基づいて評価されることができる。より一般的になっているこの分類方法は、Th1/Th2平衡と呼ばれる。インターロイキンおよびインターフェロンは「サイトカイン」と称され、これらはTh1型細胞により分泌されるものとTh2型細胞によって分泌されるものとにグループ化が可能である。Th1細胞は細胞媒介免疫を促進し、一方Th2細胞は体液性免疫を誘発する。細胞免疫(Th1)は感染部位において異常細胞や微生物を攻撃するようにナチュラルキラー細胞(NK)、T細胞およびマクロファージに指令する。体液性免疫(Th2)は外部侵入物質を中和するために用いられる抗体を産出する。一般的にCD4+T細胞のTh2分極化は、多くのヒトや動物の癌研究において、癌の進行との関連が示されており、一方Th1分極化は腫瘍縮小や抗腫瘍免疫と相関する。Th1細胞はIL−2およびIFNガンマを産出して1型免疫を媒介するのに対して、Th2細胞はIL−4、IL−5およびIL−10を産出して2型免疫を媒介する。Th1応答とTh2免疫応答は相互に逆調節を行うので、その結果増加した1型応答が2型応答をダウンレギュレートし、増加した2型応答が1型応答をダウンレギュレートする。
【0031】
この明細書に記載されている方法は、外来抗原に対して患者内にTh1免疫を創出するために外来抗原を含む組成物を投与することで患者をプライミングすることを含む。さらにこの明細書に記載されている方法は、少なくとも一部の腫瘍が壊死する結果をもたらす腫瘍の全てまたは一部の腫瘍の切除を含む。患者の腫瘍を壊死させるために、例えば冷凍アブレーション、放射線療法、化学治療、塞栓法および電気穿孔法のような様々な方法を用いることができる。またこの明細書に記載されている方法は、腫瘍壊死部位、すなわち腫瘍病巣部位に近接して炎症性微小環境を作り出すことを含んでいる。さらに、この明細書に記載されている方法は長期にTh1環境を維持するために患者の適応免疫細胞および先天性免疫細胞を活性化することを含む。好ましい実施の形態では、この明細書に記載されている方法の重要な構成要素は、上記のTh1サイトカインを産出する活性化同種異系免疫細胞を含む薬剤または組成物の使用を含む。
【0032】
多くのヒト癌の患者は分極化されたTh2免疫を示すことができるので、ヒト癌の治療方法の第1部分の目的は癌患者の循環性Th1細胞の量を増加させることである。癌患者において、患者の循環性Th1の数は、外来抗体を含む治療用組成物でプライミングするかワクチン接種を施すことで高められる。また治療用組成物は患者にTh1環境内で外来抗原に遭遇させることができるTh1サイトカインを含むことができる。例示的な実施の形態では、患者は皮内注射された活性化同種異性Th1細胞でプライミングされる。好ましい実施態様では、皮内注射は週1回3週間の週間スケジュールで行われる。しかし、皮内注射は2日に一度や数年に一度のような間隔でも投与することができる。注射スケジュールは循環時におけるTh1メモリ細胞のフットプリントを向上させるように設定されるべきである。外来細胞に発現された異種抗原は強力な免疫拒否反応を刺激することができる。さらに、組成物中におけるTh1サイトカインの存在もしくは同種異系の細胞によるTh1サイトカインの発現は、Th1メモリ免疫に向けて同種抗原の免疫応答を誘導するために必要な炎症性のアジュバント環境を提供することができる。炎症性のアジュバント環境を提供することができることにより同種異系Th1細胞内に含まれる同種抗原に特異的な循環性メモリTh1細胞の増加プールを創出できる。複数回の投与はブースタ注射として作用することができ、同種抗原に特異的な循環系でメモリTh1細胞の数を増加させる。一般的に、細胞1×106〜2×107個の用量より少ない用量で3日から7日離して各注射を投与することは好ましい。循環系でTh1記憶細胞の滴定量をさらに増加させるために、活性同種異系細胞の用量を静脈内に投与できる。好ましい実施の形態では、細胞1〜2×107個のスケジュールで2〜3週間は週に1度〜3度皮内に投与され、次に細胞3〜10×107個の静脈内注入が行われる。治療方法において次のステップは腫瘍を認識するために免疫システムの能力を導き出すことである。
【0033】
腫瘍がもたらす危険性に対し免疫システムの能力を導き出し、腫瘍の液化を引き起こすことができる抗腫瘍特異性免疫を開発するために、in−situワクチン法が用いられる。in−situワクチン法の戦略は、好ましくは同種異系細胞を含む治療用組成物の投与と腫瘍を切除する方法との組合せにより行われることができる。この明細書に記載される方法では、腫瘍抗原の発生源は、選別した腫瘍病変部の切除によりin−situで創出される。壊死により少なくとも一部で腫瘍が死滅する原因となる任意の切除法をも用いることができる。またアポト―シスにより腫瘍を死滅させる原因となる方法も用いられるが、壊死により少なくとも一部で腫瘍が死滅する原因となる任意の切除法や、アポト―シスにより腫瘍を死滅させる原因となる方法は壊死を誘発する方法と同様には効果的でない。腫瘍切除法には化学療法、放射線療法、冷凍アブレーション、高周波アブレーション、電気穿孔法、アルコールアブレーション法、生物学的療法、抗血管新生療法、その他の切除方法、またはこれらの組合せにより行われる方法を含む。腫瘍細胞を減少させる化学療法もまた使用することができる。
【0034】
低侵襲性の画像誘導経皮的な(皮膚を通した)冷凍アブレーションまたはアルコール切除法(触知できる病変部の切除に最もよく使用される)が用いられる。切除に望ましい腫瘍病変部は、例えば肝臓、皮膚、頭部または頸部、リンパ節、膵臓、骨、副腎、膀胱、胃腸管、または腎臓中に存在し、必要があればCTまたは超音波画像ガイダンスを使用して安全に経皮的アクセスを許すこれらの器官内の場所に位置する。
【0035】
切除手術は、腫瘍の微小環境内に多量の腫瘍残骸を放出させ、それが患者に特異的な腫瘍抗体の発生源として作用する。通常体内の細胞は、細胞交代(ターンオーバ)の継続的な副産物として生ずるアポトーシスとして知られる自然過程を経て死滅する。免疫システムは、アポトーシス細胞に応答しないようにプログラムされており、アポトーシス細胞に応答しないようにプログラムされていることによリ自己免疫が回避される。しかし、切除の結果として生じる壊死による細胞死は、腫瘍部位に免疫細胞を補充することができ、免疫細胞の内部コンテンツは応答する免疫細胞に対し「イート・ミー(eat me)」シグナルを発信する。しかしながら、活性化Th1細胞の強力なアジュバント効果は、免疫応答を刺激しないアポト―シス細胞死に打ち勝つことができる。従って、腫瘍細胞死を生じる任意の方法も好適な活性同種異系Th1細胞組成物と組み合わせて使用することができる。
【0036】
抗原は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APCs)または樹状細胞(DCs)として知られる特殊化細胞のネットワークによって免疫システム中に提示される。DCsはナイーブT細胞に抗原を提供することで病原体または腫瘍に対して免疫を誘発させる。その結果T細胞はその抗原に特異的なエフェクター細胞およびメモリT細胞に分化する。主にCD8+細胞溶解性T細胞(CTL)であるエフェクターT細胞は、抗原を発現する細胞を破壊することができる。メモリT細胞は再発生または再感染に対して免疫防御を提供する。強力なAPCsへのDCsの分化は組織障害および局部的炎症反応の結果として放出される分子刺激によって引き起こされる。
【0037】
貪食物質中に含まれる腫瘍抗原を処理するDCsは、貪食抗原に特異的なTh1免疫の発生を促進させることができる方法で、炎症性危険シグナルの存在、すなわちTh1条件下で成熟するようにプログラムされることができる。切除または、医療用組成物(好ましくは炎症性危険シグナルを生成する活性同種異系Th1細胞を含む)の腫瘍内投与を有する化学療法による腫瘍の病理的な死滅又は自然死との組合せによって、Th1腫瘍特異性免疫を創出することができる。体内の炎症危険シグナルの存在下に露出された腫瘍抗体の組合せは、in−situワクチン法と呼ばれる。
【0038】
本発明の範囲には、治療用組成物の主要な成分、すなわち、(a)外来抗原、(b)DCの成熟を引き起こす分子、および(c)炎症性サイトカイン、を埋め込まれたチップ又はウエハの開発も含まれる。例えばGM−CSF及び/またはIFNガンマなど、同種抗原に埋め込まれたウエハや、埋め込みまたは外因性サイトカインを埋め込まれたCD40Lなどは本発明の範囲に入る。
【0039】
腫瘍抗原を貪食する未熟なDCsは、炎症性シグナルの存在下で腫瘍抗原を処理することができ、次に成熟、分化、及び体内のどこにあっても明確に腫瘍を探知して破壊することができる細胞溶解性T細胞(CTL)を含む、Th1免疫における免疫T細胞を予備刺激することができる排出リンパ節に移動させることができる。このプロセスを正確に発生させるために、腫瘍抗原を取り込んだ未熟な樹状細胞は、高い炎症性環境内で抗原を処理しなければならない。Th1免疫を予備刺激するために樹状細胞の成熟を駆動するために必要な炎症性環境のタイプは、自然には発生せず、また切除手術のみでは発生しないので、アジュバントが必要となる。
【0040】
正確なDC成熟を駆動するためのアジュバントを提供するために、この明細書に記載される活性同種異系Th1細胞を好ましくは含む治療用組成物は、好ましくは切除手術後1時間以内に、切除された腫瘍病変の壊死中心部に投与することができる。同種異系免疫細胞は、CD3/CD28モノクローナル抗体で被覆されたミクロビーズと接触することで注射時に活性化されることができる。同種異系免疫細胞のような免疫細胞は、炎症性サイトカインを多量に産出し、樹状細胞の成熟を引き起こしTh1抗腫瘍免疫の発生を促進することで知られている分子(例えばCD40L)の表面に発現する。さらに患者は、前以ての皮内プライミング注射により同種抗原に免疫があるであろうから、腫瘍内投与は同種抗原のような同種異系細胞を拒絶するためのTh1細胞の強力なメモリ応答を誘導することができる。これら全ての要因は抗腫瘍特異Th1免疫を予備刺激するためにDCの成熟を促進することでアジュバントとして働く。腫瘍内注射のタイミングを、治療効果を高めるために変更することができる。活性メモリ同種異系Th1細胞が、樹状細胞が切除された腫瘍病変に進入すると同時に投与される場合には、活性メモリ同種異系Th1細胞のアジュバント効果は最適化される。切除手術後、破壊された組織に進入する樹状細胞の波(wave)はおよそ3日間生じることが知られているので、切除手術後3日間、同種異系細胞が投与されることが好ましい。この腫瘍内注射は、切除時の腫瘍内注射に加え、または切除時の腫瘍内注射の代わりになることができる。
【0041】
腫瘍はTh1免疫応答を回避することが可能であることが知られているので、この明細書に記載されている方法の追加のステップは、Th1免疫応答を回避するような腫瘍免疫回避メカニズムを不能にするように設計される。炎症が自己組織抗原に対する耐性を破壊して自己免疫を促進するのとほぼ同じ方法で、高い炎症性環境は腫瘍免疫回避を抑え腫瘍抗原に対する耐性を破壊する効果を有することができる。高い炎症性環境を創出して維持するために、本明細書で記載される活性同種異系Th1細胞を含む薬剤を患者の静脈に注入することができる。あるいは、本明細書で記載される活性同種異系Th1細胞を含む薬剤を動脈内に投与することができる。活性同種異系Th1細胞は、患者を最初に予備刺激するために使用された同種異系細胞と同じドナーからのものであると好ましい。
【0042】
薬剤の注入は、患者の予備刺激された免疫システムがTh1細胞を拒絶するように活性化するので高い炎症性環境をもたらす。さらに、同種異系細胞の拒絶は、全身性腫瘍を液状化して除去するのに必要な、またTh1細胞の免疫攻撃を回避するために腫瘍能力を抑制するのに必要な、免疫学的事象のカスケードを開始するホスト先天性免疫システム(NK細胞やマクロファージなど)の構成要素を活性化する二次的な効果を有する。同種異系細胞の拒絶反応は、同種異系移植設定において創出されたGVHD環境と同様の免疫学的環境を創出することができる。しかし、本発明の方法によれば、同種異系細胞の拒絶に関して毒性はない。
【0043】
この明細書で記載される方法は、樹状細胞成熟分子CD40L(CD154)を患者に提供することを含む。CD40Lは、ホスト造血前駆細胞、上皮細胞や内皮細胞、および全てのAPC、DC、活性単球、活性Bリンパ球、濾胞樹状細胞およびNK細胞上に構成的に発現されたCD40と相互作用することができる。CD40Lは、Th1応答の強力な誘導因子の1つであり、CD40L刺激はTreg細胞(調節性T細胞)の抑制効果を抑止する。またCD40Lは、先天性NK細胞を活性化しまたDCの最も有効な活性体の1つである。DCのCD40−CD40L活性は、共刺激分子の成熟、アップレギュレーション、及びIL−12の大量の産出につながり、共刺激分子の成熟、アップレギュレーション、及びIL−12の大量の産出は、強力な抗腫瘍とTh1のステアリング特性を有する。またCD40Lは、腫瘍の成長を抑制することと広範囲に腫瘍を死滅させることの両方において、直接的な抗腫瘍効果を有することが示されている。またCD40L活性化は、腫瘍のCTL媒介による溶解を高めることができる。CD40Lは、単独あるいは治療用組成物の一部として患者に投与可能である。CD40Lが、組成物内に存在する抗CD3/抗CD28架橋結合抗体で活性化される活性同種異系Th1細胞によりアップレギュレートされるので、CD40Lは、活性同種異系Th1細胞を含む治療用組成物として患者に提供可能である。
【0044】
また、組成物の同種異系Th1細胞により産生されるTh1サイトカインと、同種異系Th1細胞の細胞上でのCD40L発現により、CD40Lの発現をアップレギュレートするために本発明の方法のプライミングステップで生成される循環自己特異的なTh1細胞と他のホスト免疫細胞を活性化することができる。これは、組成物がホスト活性細胞上のCD40L発現を維持することで拒絶された後、持続的なCD40Lシグナルを提供する。持続的なホストCD40L発現は、腫瘍の免疫回避をダウンレギュレーションするのに必要な持続的な炎症性環境を提供し、抗腫瘍効果を媒介する本発明の第2のin stiuワクチン相を生成する腫瘍特異CTLを可能にする。
[実施例]
患者
試験において、少なくとも1ラウンドの化学療法では難治の進行性転移癌(ステージIV)の患者が適格であった。完全な病歴、精密検査、完全な血球数、臨床化学および胸部と腹部と骨盤のコンピュータ断層撮影(CT)を使って各患者の臨床病期が評定された。骨転移の病歴のある患者にはCT/PETスキャンも行われた。全ての患者の臨床病期は、改定された米国合同委員会(AJC)システムに基づき決定された。
【0045】
さらに適格となる要件は以下の通りであった。書面による自発的なインフォームド・コンセント、年齢が18歳以上、経皮的冷凍アブレーションのために安全に評価できると思われる場所にある少なくとも1つの転移性病変の大きさを測定できる疾患、東部共同腫瘍学グループ(ECOG)のパフォーマンスステータスが2以下、余命が2ヶ月以上、血液機能と腎機能と肝機能が適切であること、すなわち全ビリルビンが1.5mg/dLより小さく、AST/ALTが2.5ULN以下、クレアチニンが1.5mg/dL以下、アルカリホスファターゼが2.5ULN以下(肝臓が関与する場合は通常の5倍以下)、絶対顆粒球数が1,200mm3以上、血小板数が75,000mm3以上、PT/INRが1.5以下およびヘモグロビンが9g/dL以上。患者は、ベバシズマブを入症(accrual)から3週間以内(冷凍アブレーションの6週間前)に用いてはならないし、また入症から2週間以内は化学療法をおこなってはならない。
【0046】
臨床試験除外基準は、計画された治療を受けるための能力を損なうであろう先在の病歴であり、過去に同種異系骨髄/骨髄幹細胞移植または臓器移植、実験薬剤を投与した最初の日から30日以内に副腎皮質ステロイド剤を生理学的用量(用量はプレドニゾンを5mg/日より多く)を超えて連用(2週間より長く)し、活性自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺疾患、ぶどう膜炎)を付随し、過去の実験的癌ワクチン治療(例えば、樹状細胞療法、熱ショックワクチン)、試験開始から3ヶ月以内にシクロスポリン、抗胸腺細胞グロブリンまたはタクロリムスを含む免疫抑制治療、輸血反応歴、進行性細菌およびウイルス感染症、症候性心臓病または心駆出率が45%より小さく、症候性肺疾患またはFEV1、FVC及びDLCO予測値が50%以下、HIV陽性歴またはAIDS歴(HBVおよび/またはHCV陽性は許可)、があることであった。ほとんどの患者は入症時に不適切にカロリーと水分を摂取していたが、入症時に不適切にカロリーと水分を摂取していたという理由ではこれらの患者は除外されなかった。
【0047】
患者42名について評価した。平均年齢は60.2歳(範囲は50−89歳)で40%が男性で60%が女性であった。患者は1ライン平均7コースで平均2.7ラインの化学療法で前治療された。45%は前もって放射線治療され90%は腫瘍病変を外科的に切除した。また患者は全身腫瘍組織量が高く患者1人あたり平均22の転移性の病変があった。一般的な適応症として乳がん(42%)で次に結腸直腸がん(19%)であり、また卵巣癌、肉腫癌、扁平上皮癌、肺癌、前立腺と泌尿器癌、膵臓癌、メラノーマおよび転移性食道癌も含まれた。
皮内注射
CD3/CD28を被覆したミクロビーズと結合する同種異系Th1細胞を含む薬剤の皮下注射は、細胞1×107〜4×107個の用量で投与された。CD3/CD28を被覆したミクロビーズと結合する同種異系Th1細胞は1mLに1×107個の細胞密度となるプラズマライトA(PlasmaLyteA)と1%のヒト血清アルブミンを含む緩衝液中に浮遊させた。1〜4回1mL注射が、1度に異なる箇所(上腕、太もも上部と腹部)に投与された。皮内注射は、多くとも2日毎少なくとも9日毎に投与され、少なくとも3週間は毎週注射されるのが好ましい。
腫瘍内注射
薬剤の腫瘍内注射は、切除後1時間以内に切除された腫瘍の壊死中心部で行うが、切除の一週間以内であればよい。好適な薬剤の1×107〜6×107細胞の腫瘍内注射を投与した。複数の腫瘍がある場合には、1つの腫瘍のみを切除した。時として切除手術は繰り返された。
静脈内注入、腹腔内注入、胸腔内注入、静脈内注入、硬膜外注入
薬剤の静脈内注入、腹腔内注入、胸腔内注入、静脈内注入は、細胞1×107〜1×109個の範囲の用量で、通常では1×108個の用量で投与された。腹腔への薬剤の注入は、癌腫症と悪性の腹水症を治療するために用いることができる。同様に、胸腔内注入は悪性の胸水を治療することができ、硬膜外注射は脳脊髄腔の悪性腫瘍を治療することができる。これらの注入は腫瘍が完全に根絶するまで必要に応じて繰り返された。
【0048】
第1のステップのプロトコルは、「プライミング」ステップと呼ばれる。プライミングステップは、2日以上別々に、好ましくは8日を超えず別々に、細胞1×107〜4×107個の範囲の用量で薬剤の皮内注射を3回以上含む。患者は注射の後、いくつかの副作用のため少なくとも30分間観察された。
【0049】
方法の第2のステップは、「in−situ ワクチン接種」ステップと呼ばれる。このステップは前記プライミングステップ終了後2日間から8日間行われた。この処置は選別した腫瘍病変を切除してから一時間以内に細胞1×107〜6×107個の用量の薬剤の腫瘍内注射を含む。あるいは、悪性の腹水がある患者は、腫瘍冷凍アブレーションを行ってもまたは行わなくとも腹腔内注入するのに適しており、触知病変のある患者は、腫瘍冷凍アブレーションを行ってもまたは行わなくともアルコールアブレーションに適していた。腹膜癌症の患者は、細胞1×108〜1×109個の用量の好適な薬剤を腹腔内に投与された。
【0050】
冷凍アブレーションに使用される方法は、CryoCare−28経皮的プローブシステム(Endocare,米国カリフォルニア州)を使用した。このシステムは、ジュール・トムソン効果を使用して、閉システム中でクリオプローブの末端を冷却するものである。ガス係数とノズルの寸法により、前記ノズルに近接する場所では、異なる気体要素は異なる熱交換事象を生じる。アルゴンガスは冷却する(−187℃)ために使用され、ヘリウムは加熱する(67℃)ために使用される。
【0051】
必要に応じて、計画された標的腫瘍病変はCT画像ガイダンスにより特定され位置づけられた。滅菌野が生成され局所麻酔が計画されたプローブ挿入サイトに施された。ガイドプローブは、経皮的に挿入されCTにより前記標的腫瘍病変内にあることが確認された。凍結融解サイクルが1回または2回行われた。標的腫瘍の大きさにより2mmから5mmの1つのプローブが使用された。CTに現れる「アイスボール」の出来具合により凍結時間はおよそ15から20分であった。融解は第2の凍結プロセス(行った場合)が始まる前に凍結時間と同じ時間ヘリウムを注入することで達成された。この処置で唯一必要なのは前記腫瘍病変のサンプルを切除することであり、断端に腫瘍がない完全な腫瘍の切除は必要としない。
【0052】
切除された病変は、好適な薬剤の注射前に、冷却サイクルに続いて10分から1時間冷却することを許された。
免疫刺激ステップである方法の最後のステップは、冷凍アブレーションと同日から冷凍アブレーション処置後8日以内に行われた。このステップは、1×107〜1×108細胞の用量の薬剤を少なくとも2日以上別々に1回以上の静脈内注入を含む。ほとんどの患者はブースタ注射として毎月IV注入を受けた。
応答
本発明の方法で治療された患者は、最後の治療からほぼ30日後にCTで評価された。静脈造影がない場合のCTでは、腫瘍は通常中間密度である。腫瘍、血管、筋肉およびリンパ節は、全て同じ密度を有し得る。ヨウ化造影剤を静脈内に(IV)投与した後、腫瘍は変動の度合いが高まる。すなわち、まさに血管であるパラガングリオーマは非常に高められるが、存在しているより多くの細胞質である扁平上皮細胞は、ほとんど、または全く高められ得ない。壊死巣または以前の出血はCTでは暗黒(低密度)となる。血液供給が不足すると壊死巣は造影剤を投与した後でも高められない。
【0053】
治療が成功すると、30日間でCTスキャンに、ベースラインと比べて低密度(暗黒)となる全ての腫瘍の病変の膨張を示した(大きくなる)。CT上でより大きい腫瘍の外観には、均一な低密度嚢腫または中心壊死部分と生存する進行周縁部のある進行性腫瘍とは対照的に、低密度のドット状の異種斑点が現れる。低濃度で不均一な外観は腫瘍が液化したことを示す。
結果
図1は、2009年6月に肝臓に転移性疾患のある転移性結腸直腸癌の患者(89歳)、及びFOLFOXとFOLFIRI化学療法、及びアバスチンと共にFOLFIRIのラインで治療された、冠状断像を示す。2010年6月には、進行して化学療法では難治となり、2010年9月には肝臓に11の転移性病変を抱えた。患者に対しては、週3回にわたり細胞1×107個の用量の本明細書に記載される薬剤を皮内に投与し、次に1週間後に肝臓に転移した病変の1つを冷凍アブレーションにより処置し、21日目に腫瘍内に好適な薬剤を注入し、28日目に細胞1×109細胞の静脈内IV注入を行った。
【0054】
図1は、肝臓の転移性病変の選別された薄片のベースラインの所見を示す。60日後には、腫瘍はより大きくより低密度になり液状化反応と一致する。90日後には、腫瘍はその大きさを維持したが、恐らく水を再吸収したために低密度ではなくなった。次に患者は、95日目にブースタIV注入を投与され、120日目にさらにCT画像を撮影した。画像は低密度が戻り大きさが増加したことを示す。実際にこれは液状化を示すためで単に進行性腫瘍を示すためのものではなく、腫瘍は病理学者により生検され評価された。図2に示すように、生検では、免疫が介在した腫瘍液状化と一致する大きな凝固壊死と繊維症を示す。
【0055】
本発明は、好ましい実施の形態に関して記載されているが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく当業者は変更が形式上のおよび詳細で行われ得ることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用組成物であって、
少なくとも1つの外来抗原、
少なくとも1つの1型炎症性サイトカイン、および
樹状細胞の成熟を引き起こすことが可能な少なくとも1つのエフェクター分子
を含む治療用組成物。
【請求項2】
前記外来抗原は同種抗原である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記外来抗原はT細胞で発現される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記炎症性サイトカインは生体免疫細胞から生成される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エフェクター分子はCD40Lである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記炎症性サイトカインは、IFN−ガンマ、IL−2、TNF−アルファ、TNF−ベータ、GM−CSF、IL−12のうち1つ以上から選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記エフェクター分子は免疫細胞の表面で発現される請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記エフェクター分子はToll(トル)様受容体のリガンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記T細胞はCD4+T細胞である請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記CD4+T細胞はTh1細胞である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記Th1細胞は活性化される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記Th1細胞はCD3とCD28の表面分子が架橋結合されることによって活性化される請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記CD23とCD28の表面分子の架橋結合は、固定化された抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体で達成される請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体はナノ微粒子またはミクロ微粒子上に固定される請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ナノ微粒子またはミクロ微粒子は生分解性である請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
注入に適した媒体中に懸濁される請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は注入器に詰められる請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
ウエハまたはチップ上に埋め込まれる請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
腫瘍を液状に形質転換するための方法であって、
外来抗原に対するTh1免疫を創出するために外来抗原を含む治療用組成物でプライミングすること、
選別した1つまたは複数の腫瘍をアブレーションすることであって、該アブレーションは、少なくとも幾つかの前記腫瘍の死滅をもたらすこと、
前記死滅した腫瘍病変に近接して炎症性微小環境を形成すること、および
適応免疫細胞と先天性免疫細胞を活性化させること
を含む腫瘍を液状に形質転換するための方法。
【請求項20】
前記プライミングは、Th1免疫を刺激するために、外来抗原の複数回の投与を含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記治療用組成物は同種抗原を含む請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記同種抗原はCD4+T細胞に発現する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記CD4+T細胞はTh1細胞である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Th1細胞は、T細胞活性シグナルを伝達するために、架橋結合された抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体により活性化される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
T細胞活性シグナルを伝達するために、前記抗CD3モノクローナル抗体と抗CD28モノクローナル抗体は、ミクロビーズまたはナノビーズ上での前記抗体の固定によって架橋結合されるる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ビーズは生分解性である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍のアブレーションは、化学療法、放射線療法、冷凍アブレーション、高周波アブレーション、電気穿孔法、生物学的療法、抗血管新生療法またはこれらの組み合わせにより行われる請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記炎症性微小環境は、Th1サイトカインの放出をもたらす前記治療用組成物の腫瘍内投与によって形成される請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記活性化は前記治療用組成物の投与によって生じる請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記活性化は前記治療用組成物の静脈内注入によって生じる請求項16に記載の方法。
【請求項31】
患者にTh1応答を刺激して維持する方法であって、
少なくとも1つの外来抗原、樹状細胞の成熟を引き起こすことが可能な少なくとも1つのエフェクター分子、及び少なくとも1つのTh1サイトカインを含む治療用組成物で患者をプライミングすること、および
患者に定期的に治療用組成物を投与すること、を含む方法。
【請求項32】
前記プライミングは前記治療用組成物を皮内に投与することによって行われる請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記治療用組成物は定期的に静脈内に投与される請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記治療用組成物は少なくとも2日毎に投与される請求項31に記載の方法。
【請求項35】
患者における腫瘍の一掃のための方法であって、
少なくとも1つの外来抗原と、樹状細胞の成熟を引き起こすことが可能な少なくとも1つのエフェクター分子と、少なくとも1つのTh1サイトカインとを含む治療用組成物で患者をプライミングすること、
前記腫瘍の壊死をもたらす方法を使って前記腫瘍をアブレーションすること、
前記治療用組成物を投与すること、および
適応免疫細胞と先天性免疫細胞を活性化させるために前記治療用組成物を注入すること、を含む方法。
【請求項36】
前記エフェクター分子はCD40Lである請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記Th1サイトカインは、IFNガンマ、IL−2、TNFアルファ、TNFベータ、GM−CSF、IL−12のうちの1つ以上から選ばれる請求項35に記載の方法。
【請求項38】
患者における腫瘍の一掃のための方法であって、
Th2応答を抑制しながら患者においてde novo Th1応答を創出すること、
癌細胞の壊死によって生成される腫瘍抗原の発生源を提供すること、
前記腫瘍抗原に応答する樹状細胞の成熟のためにTh1応答と一致する炎症性環境を提供すること、および
Th1応答を維持することによって腫瘍免疫回避メカニズムを不能にすること、を含む方法。
【請求項39】
前記de novo Th1応答は治療用組成物で患者をプライミングすることによって創出される請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍抗原はin stiuで生成される請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記腫瘍抗原は腫瘍のアブレーションによって生成される請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記腫瘍抗原は冷凍アブレーションによって生成されることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項43】
炎症性環境における前記樹状細胞の成熟は前記治療用組成物を腫瘍内に投与することによって提供される請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍回避メカニズムは前記治療用組成物を注入することによって不能になる請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記注入は静脈内である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記治療用組成物は活性同種異系Th1細胞を含む請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514365(P2013−514365A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544736(P2012−544736)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060431
【国際公開番号】WO2011/084451
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510290555)イミュノバティブ セラピーズ, リミテッド (4)
【Fターム(参考)】