説明

腫瘍の治療に用いる漢方薬剤、その調製方法、および使用方法

本発明は抗腫瘍漢方薬剤とその調製方法を与える。該漢方薬剤はダイフウシ1重量部、モクベツシ0.8-1.4重量部、センザンコウ0.5-1.1重量部、ダイオウ0.8-1.3重量部、カンゾウ1-1.5重量部より調製される。本発明の薬剤は治療効果が高く、毒性が低い利点を有し、胃癌、腸癌、肝癌、食道癌等の消化管腫瘍および肺癌、子宮頸癌、乳腺癌、皮膚癌等に広範に抗腫瘍に応用することができ、胃癌と肝癌の治療効果は特に顕著である。

【発明の詳細な説明】
【技術領域】
【0001】
本発明は漢方薬(中医薬)の領域に属し、特に漢方薬剤、その調製方法、およびその抗腫瘍薬剤の調製に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は現在人類の健康に影響する重大な病気の一つである。統計によれば、目下全世界の癌患者数は既に1800万人を超えている。2020年には全世界の癌発症率は現在に比して50%増加し、新たに増える癌患者数の予想は1500万人に達し、発症年齢も50ないし60歳から40歳にまで早まると予測され、また胃癌は都市地区では既に35歳にまで早まっているとされている。これはまことに恐ろしいことである。
【0003】
しかして、癌の治療方面においては、各国の科学者や医務従事者は、手術を除き、放射線化学療法のほか、癌を根治できる手段や方法の探索発見に努力している。例えば、零下180℃での深冷療法,マイクロ波凝固熱療法、栄養を断絶する餓死療法、バイオ技術、壊死因子、遺伝子療法、その他多くの手段や方法を採用して抗癌対策を行っている。しかしながら、現在の国際国内の科学水準と医療の現状から云えば、上述の各種療法は将来性の研究が欠けており、いまだに科学的定説が得られず、中国における漢方薬中に癌の治療に効果的な新薬を発見することに希望が寄せられており、かかる研究が国際抗癌領域において注目を集める課題になっている。
【0004】
中国における漢方薬と漢方理論は、中国の最も貴重な文化遺産の一つであり、中国古代人民の繁殖生存の基本的保障であったのみならず、これと同時に形成された豊富な闘病の経験と理論は、現代文明社会においても重要な作用を発揮している。
【0005】
中国の漢方薬の抗癌作用は、既に中国の大衆と欧米社会において認められているが、臨床上使用されている抗癌漢方薬は全ての臨床用薬剤の3−5%に過ぎず、また、もっぱら胃癌の治療に用いられる漢方抗癌剤は存在しない。
【0006】
本発明の基本的指導理念は、安全かつ有効で制御可能な、臨床に広範に使用可能な漢方抗癌剤で非処方の薬剤を提供することにある。
【発明の内容】
【0007】
本発明は中国医学の癌に関する理論、即ち、「気が停滞し鬱血を生じ、これにより塊や腫瘍が成長するときは、血流を促進し、鬱血を除き、淤毒を攻めて塊を散らし、もって治癒させる」との理論に、現代医学の理論を結合し、現代製造加工技術を用い、製薬材料を精選して成り、その目的の一つは抗腫瘍漢方薬剤を提供することにある。本発明の別の目的は、その調製方法を提供することにある。本発明のさらに別の目的は抗腫瘍薬剤を調製するにあたっての応用を提供するにある。
【0008】
本発明の目的を実現する具体的な発明の内容は、抗腫瘍漢方薬で、重量比で示す次の材料、即ち、ダイフウシ1部、モクベツシ0.8−1.4部、センザンコウ0.5−1.1部、ダイオウ0.8−1.3部、カンゾウ1−1.5部の各材料により調製されるものである。
【0009】
以上のうち、ダイフウシを採用するのは、肝と脾の脈絡に入り、その脂肪酸グリセロ脂質は風を祓い、湿りを除去し、毒を祓い、痰を取り去り、水を集める効用があることにより、これを主たる薬材とする。
【0010】
モクベツシを採用するのは、脾と胃の脈絡に入り、そのモクベツシ酸は腫れを治し、毒を祓い、皮膚を再生する効用があることにより、これを従たる薬材とする。
【0011】
センザンコウを採用するのは、肝と胃の脈絡に入り、そのセンザンコウの塩基は腫れを治し、痛みを鎮め、風を除き、経絡を活性化し、瘰癧や潰瘍を治し、乳頭状癌細胞の活性に抗する作用を有する効用があることにより、これを補助薬材とする。
【0012】
ダイオウを採用するのは、胃と腸の脈絡に入り、そのエモジンおよび大黄タンニン酸は発熱性の毒を消し、消化不良を治し、鬱血を解消する効用があることにより、これを補佐薬材とする。
【0013】
カンゾウを採用するのは、脾と胃の脈絡に入り、そのグリチルリチン酸は抗癌作用、解毒、諸薬材を調和する等の効用があることにより、これを連絡薬材とする。
【0014】
本発明における各原料薬草の用量は、最適には1重量部とする。本発明の抗腫瘍漢方薬の調製方法は、以下の工程を含む。
【0015】
1) 各原料薬草の重さを計量し、粉砕して中程度の粉末にする。
【0016】
2) 原料薬草に重量/体積比1:2.5ないし1:3.5で62%エチルアルコールを加え、充分に浸漬する。
【0017】
3) 充分に加熱還流させる。
【0018】
4) 濾過する。得られた濾液は、即ち本発明の漢方薬の活性成分溶液である。
【0019】
以上の工程中において工程2における重量/体積比の最適比は1:3である。
【0020】
本発明の方法は、さらに、上記工程4の濾過後に得られる残渣中に、その重量/体積比1:0.8ないし1:1.5で62%エチルアルコールを加え、充分加熱還流させてもよい。濾過後に得られる濾液または以前の工程で得られた濾液と一緒にした濾液も本発明の漢方薬調製の活性成分溶液をなす。
【0021】
本方法における最適重量/体積比は1:1である。本発明の方法において加熱還流の時間は一般に0.5−1時間で充分である。本発明の漢方薬調製用活性成分溶液はエチルアルコールと水で調節する。エチルアルコールの体積百分率は6.0−8.0%で、pH値は4.0−5.0とする。これにより本発明の漢方薬調製の組成物が得られる。この漢方薬調製の組成物の相対密度は1.02−1.08とするのが最もよい。
【0022】
あるいは、本発明の漢方薬調製の活性成分溶液は、乾燥後顆粒とし、中空のカプセルに充填し、本発明の漢方薬のカプセル製品ができる。また、本発明の漢方薬の活性成分溶液は、乾燥後扁平円形状とし、本発明の漢方薬の錠剤とすることができる。
【0023】
本処方薬材中2種類の薬材、ダイフウシとモクベツシとは毒性があり、いずれも一日の投与の標準量と最高限度は15グラムであり、もしこの限度を超えると血圧降下、息切れ、心拍の加速、嘔吐、食欲不振、不眠、溶血性貧血、腎炎、蛋白尿、血尿等の毒副反応を引き起こすことがあり、もしこの限度より低いときには、抗癌効果が低減しまたはなくなる。本発明の漢方薬は、組成が巧みであり、配合が合理的であり、主要薬材、補助薬材、補佐薬材、連絡薬材が明確であり、薬材の分量が正確であり、安全かつ有効であり、過剰過少にわたることなく、分量を増加すれば毒性が増大し、分量を減少すれば抗癌効果が減少し、血流を増大して鬱血を除き、毒を攻めて病毒を除去する作用を有し、益となる気を補い、組織の活性化による抗病力の培養作用を有する。これは漢方医学の「毒をもって毒を制す」や「邪を排し正を扶く」の思想をもって癌治療の基本とする理論と符合する。また、現代医学のマクロファージの食菌効果を増大し、患者の免疫機能を高め、最後に癌細胞を抑制し死滅させるとの医学理論にも符合する。
【0024】
本発明は動物試験および人体臨床試験によりその安全性、有効性、制御可能性が証明されている。本発明は、現在、単に抗癌効果を助け、増大させ、あるいは癌の悪作用を減少させることのみを主要目的とする薬品を超越するのみならず、邪を除き、正を助け、効能を高め、毒性を減らす4種の治療効果を同時にもたらす斬新性を有する。本発明は、また治療性の抗癌薬として単独使用に適するのみならず、科学療法薬品との併用が可能であり、後者の場合の使用時には、本発明の漢方薬は明確に化学療法薬品の激烈な毒副反応を減少させるだけでなく、短期および長期の治療効果において化学療法に比較して大幅に抗癌治療効果を高める先進性を有する。本発明の漢方薬は、胃癌、腸癌、肝癌、食道癌等の消化器官の腫瘍や、肺癌、子宮頸癌、乳腺癌、皮膚癌等の腫瘍を治療する効果を有し、胃癌と肝癌に対する治療効果は顕著である。
【0025】
具体的実施方式
実施例1 本発明の漢方薬の調製
ダイフウシ150g、モクベツシ150g、センザンコウ150g、ダイオウ150g、カンゾウ150gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール2500mlを加えて12時間浸漬した後、加熱し強制還流を1時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコール800mlを加え、再度加熱強制還流1時間の後、濾過し、得られた2度の濾液を混合し、950mlになるまで減圧濃縮し、エチルアルコールと水で1000mlに調節し、エチルアルコールの量を6.0-8.0%とし、pH値を4.0-5.5、相対密度を1.05とし、均一に混合し、6-10℃の低温冷蔵で12時間静置し、遠心分離し、上澄液を取り出し、容器に移して組成物としての薬剤を得た。
【0026】
実施例2 本発明の漢方薬の調製
ダイフウシ150g、モクベツシ240g、センザンコウ120g、ダイオウ120g、カンゾウ225gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール2600mlを加え、18時間浸漬の後、加熱強制還流を1時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコールを900ml加え、再度1時間加熱強制還流し、濾過し、得られた2度の濾液を混合し、950mlになるまで減圧濃縮し、エチルアルコールと水で1000mlに調節し、エチルアルコールの量を6.0-8.0%、pH値を4.0-5.5、相対密度を1.02とし、均一に混合し、6-10℃の低温冷蔵で12時間静置し、遠心分離し、上澄液を取り出し、容器に移して組成物としての薬剤を得た。
【0027】
実施例3 本発明の漢方薬の調製
ダイフウシ80g、モクベツシ75g、センザンコウ50g、ダイオウ75g、カンゾウ100gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール950mlを加え、12時間浸漬の後、加熱強制還流を1時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコールを320ml加え、再度1時間加熱強制還流し、濾過し、2回得られた濾液を混合し、950mlになるまで減圧濃縮し、エチルアルコールと水で1000mlに調節し、エチルアルコールの量を6.0-8.0%、pH値を4.0-5.5、相対密度を1.06とし、均一に混合し、6-10℃の低温冷蔵で12時間静置し、遠心分離し、上澄液を取り出し、容器に移して組成物としての薬剤を得た。
【0028】
実施例4 本発明の漢方薬の調製
ダイフウシ120g、モクベツシ140g、センザンコウ100g、ダイオウ150g、カンゾウ180gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール2000mlを加え、12時間浸漬の後、加熱強制還流を1時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコールを700ml加え、再度1時間加熱強制還流し、濾過し、2回得られた濾液を混合し、950mlになるまで減圧濃縮し、エチルアルコールと水で1000mlに調節し、エチルアルコールの量を6.0-8.0%、pH値を4.0-5.5、相対密度を1.08とし、均一に混合し、6-10℃の低温冷蔵で12時間静置し、遠心分離し、上澄液を取り出し、容器に移して組成物としての薬剤を得た。
【0029】
実施例5 本発明の漢方薬のカプセル調製
ダイフウシ180g、モクベツシ180g、センザンコウ90g、ダイオウ150g、カンゾウ250gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール2500mlを加え、24時間浸漬の後、加熱強制還流を1時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコールを1000ml加え、再度1時間加熱強制還流し、濾過し、2回得られた濾液を混合し、乾燥後均一の顆粒に成形し、中空のカプセル中に充填し固形カプセルを形成した。
【0030】
実施例6 本発明の漢方薬の錠剤調製
ダイフウシ100g、モクベツシ80g、センザンコウ110g、ダイオウ130g、カンゾウ150gの5種類の薬材を粉砕して中程度の粉末にし、62%エチルアルコール1500mlを加え、18時間浸漬の後、加熱強制還流を0.5時間続け、濾過し、薬材の残渣に62%エチルアルコールを750ml加え、再度1時間加熱強制還流し、濾過し、2回得られた2濾液を混合し、乾燥後円形状に圧縮成形し、錠剤を得た。
【0031】
試験実施例1 本発明の漢方薬による悪性腫瘍治療の薬効学的検討
一 試験対象の薬剤
1. 薬剤の表示量: 生薬0.55gを含有する薬剤1ml
2. 溶剤: 0.5%CMC-Na
3. 調製方法: 原液を0.5%CMC-Naで希釈して所定の各濃度にし、各マウスにその都度投与する薬剤の体積を0.5mlとする。
【0032】
二 動物
1. 名称、出所、種族: BALB/cマウスまたはFI(ICR x BALB/c)マウスおよび昆明マウス、即ち当研究所の動物グループ。C57BL/6マウスおよびnu/BALB/cマウス。すべて上海実験動物中心より購入したもの。
【0033】
2. 体重: 19±1g、6−8週の年齢。
【0034】
3. 性別: メスオスのいずれでも可。各回の実験では同一の性別を用いる。
【0035】
4. 動物飼養および実験の条件: 昆明マウス、C57BL/6マウスおよびF1マウスを清潔級の動物実験室に入れ、nu/BALB/cを層流構造体内に入れ、SPF条件で飼養し実験する。実験投薬は全て層流構造体内で行う。
【0036】
5. 各グループの動物数: 実験を受けるグループには3回投与。陽性対照とブランク対照は2グループ。 nu/BALB/cマウスは各グループとも6匹。昆明グループのマウス、C57BL/6マウスおよびF1マウスは各グループとも10匹。
【0037】
三 試験方法の選択
「中薬新薬研究指南」の規定に従い、病原除去作用の研究および抵抗力の強化、毒素の低減、相乗効果に関する試験を行う。本発明の薬剤は漢方薬の複合処方製剤によるものであるので、全て全体動物試験を採用する。
【0038】
四 投与量
po(経口投与)高、中、低の3種類の投与量を、それぞれ25.0、12.5および6.25ml/kgまたは75、37.5および18.75ml/M2とする。
【0039】
ip(腹腔投与)高、中、低の3種類の投与量を10.0、5.0および2.5ml/kgとする。
【0040】
五 投与方法
病原除去、抵抗力の強化、相乗効果および毒素の低減の作用を検討するために、po×10qdおよびip×10qd。ここにpoは臨床用投薬ルートである。抵抗力強化作用の研究にはpoルートのみを用いる。抵抗力強化作用の研究には12.5、6.25、3.125ml/kgのpo×10を用いる。
【0041】
六 試験の対照
ブランク対照:相応する溶剤0.5%CMC-Na
陽性薬対照:適当な相応する陽性対照がないので、常用のシクロホスファミドを採用し、各回の実験の信頼性を証明する。
【0042】
七 試験の腫瘍工程および結果
1. 病原除去作用
人の胃癌細胞ラインMKNおよび人の肝癌細胞ラインQGYの異種移植マウス模型試験:無菌条件下、該当癌細胞をホモジェネイトとし、1−2×107腫瘍細胞/mlの均一な懸濁液を調製する。相応する受容体としてのマウスを選び、各マウスの腋皮下に0.2mlまたは足指の皮下に0.05mlの腫瘍細胞懸濁液を接種し、ランダムにグループ化し、次の日に投薬方法に従って治療を開始する。2週間後に各試験グループの腫瘍を解剖により摂取し、対照グループと比較し、抑制率を計算する。全ての実験は厳格な殺菌条件下で操作し投薬した。結果の詳細を表1ないし4に示す。
【0043】
マウス結腸癌C26およびルイス肺癌のような動物移植性腫瘍の抑制試験:方法は上記試験と同一。結果の詳細は表5ないし10に示す。以下の各表内の***の符号はP<0.01を示し、**の符号はP<0.05を示し、*の符号はP<0.1を示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0044】
経体内実験による抗腫瘍治療効果試験は、本発明の漢方薬剤が人体胃癌の異種移植マウス模型MKNに対して高投与量25ml/kg po×10および10ml/kg ip×10を投与したところ、均しく比較的高い腫瘍抑制率、平均79.75%および81.54%を示し、これは国家規定の30%の約2.7倍に達する。中投与量の12.5ml/kg pox1および05ml/kg ip×10も中程度の腫瘍抑制率、平均53.89%および58.80%を示した。その他、動物移植腫瘍C26およびルイス肺癌および人体肝癌の異種移植マウス模型QGY等に対しても、両種の投薬ルートの高投与量グループは中程度の治療効果を示した。このうちにおいて、腹腔ルートは経口ルートに比較して優れている。主要な薬効学の研究は、本発明の漢方薬剤が顕著な病原除去作用を有することを明らかにした。
【0045】
2 抵抗力強化作用
1) 本発明の漢方薬剤は正常の昆明種マウスの腹腔マクロファージ細胞が行う食細胞効能の影響: オスの昆明種マウスをランダムにグループ化し、各グループは10匹のマウスとする。毎日1回経口投与し、10日間続ける。最終回の投薬後、各グループのマウスの腹腔内に0.5%濃度の水溶性タンパク1.5ml/匹を注入し,24時間後1ミリリットル当たり1×106の濃度のニワトリの赤血球懸濁液0.2ml/匹を腹腔内に注入し、40分後に生理塩水でマウス腹腔内の液体を洗滌収集する。遠心分離し、細胞沈殿液を採取し、塗布剤とする。エチルアルコールで固定し、ギームザ染色法により染色し、塗抹標本とする。油鏡を用いて100個のマクロファージを計数し、100個のマクロファージ細胞中ニワトリの赤血球を取り込んだマクロファージ細胞の数、および取り込まれたニワトリの赤血球の総数を計数する。下記公式により食細胞百分比および食細胞指数を計算する。結果を表11に示す。
【0046】

100個のマクロファージ細胞中ニワトリの赤血球
を取り込んだマクロファージ細胞の数
食細胞百分比=――――――――――――――――――――――×100%
100個のマクロファージ細胞


100個のマクロファージ細胞中取り込んだ赤血球総数
食細胞指数=―――――――――――――――――――――――――
100個のマクロファージ細胞
【表11】

【0047】
2) ルイス肺癌の担癌マウスのNK活性に対する本発明漢方薬剤の影響:C57BL/6マウスの右足指皮下にルイス肺癌細胞の懸濁液(約1×106個)を接種した。次の日に本発明の薬剤12.5、6.25および3.125ml/kg pox7qdで治療した。薬剤投与後、各グループのマウスを殺し、無菌状態で脾臓を取り出し、秘蔵細胞を分離し、1×107/ml濃度の奏効体細胞とした。別に培養したYac-1細胞を標的細胞とし、濃度を1x106/mlとした。これら2種の細胞を別々に100ulずつ取り96孔板に注入した。さらにH-TdRを1.75×104Bq/孔に加えた後に、24時間培養し、細胞収集器で細胞を収集し、液体シンチレーション計数器で各孔のcpm値をを測定し、本発明のグループと対照グループの顕著な差異を測定した。
【表12】

【0048】
本発明の漢方薬剤は明らかにマウス腹腔のマクロファージ細胞の食細胞的効能を促進し、ルイス肺癌の担癌マウスに対し一定のNK細胞の活力を高める活力を有する。
【0049】
3 相乗効果作用: 昆明種マウスの腋皮下にS180肉腫の懸濁液を接種し、次の日にこれをグループ化し、本発明の漢方薬剤25.0、12.5、6.25ml/kg pox10の単独グループと、上記の各グループにそれぞれ15mg/kgのシクロホスファミドip×7を加えたグループとを作り、接種後12日して、各グループの腫瘍を切除し、各グループの腫瘍の平均重量と標準偏差値を測定し、本発明のグループと対照グループとを比較し、腫瘍抑制率を計算した。その結果、本発明の漢方薬剤の高投与量とシクロホスファミドの低投与量とを組み合わせたものとはS180肉腫に対して一定の相乗効果を有することが示される(表13に示す。)
【表13】

【0050】
4. 減毒作用:BALB/c×1CRのマウスにシクロホスファミド100mg/kg ip×2を与え、ランダムに再グループ化し、3種の試験グループを設け、各別に本発明の薬剤を25.0、12.5、6.25ml/kg po×10qdを加え、しかる後に、3日ごとに1回、白血球細胞数を測定する。各グループの平均値および標準偏差値を得る。各グループともゼロ日の白血球数を100%とする。各時点の白血球数の百分率を計算する。結果はシクロホスファミドの白血球数低減に対してこれを高める明確な効果がなく、他方、白血球数抑制を高める効果もないことをしめす。
【表14】

【0051】
試験実施例2 本発明の抗腫瘍漢方薬剤の体外抗腫瘍試験
一 試験薬物
1 含量効能:毎mlあたり原薬0.55g
2 調合方法:小牛(fetal bovine)血清を含む培養基中に溶解する。各使用時に調合する。
【0052】
二 細胞株
1 ヒト肺癌細胞株(Al)
2 ヒト子宮頸癌細胞株(Hela)
出所:上海細胞所細胞庫の提供。
【0053】
三 試験の腫瘍工程
1 腫瘍細胞を細胞培養瓶中に、各瓶当り13万単位で、接種する。
【0054】
2 上記培養瓶を異なった薬剤量のグループに分ける。
【0055】
3 各別に規定薬剤量の試験対象薬物と対照薬物の培養液を加える。
【0056】
4 規定時間内に書くグループの細胞数を計算する。
【0057】
四 規定の指標と時間
腫瘍細胞に対する異なった薬剤量の薬物の抑制率および薬物濃度対抑制濃度(IC50)の状況を観察する。
【0058】
五 薬剤量の設定
本発明の薬剤の量は、0.55、2.75、5.5、13.75、27.5mg/mlの5グループとする。
【0059】
六 薬物を加える方法
薬物は培養液内に加え、直接細胞培養に用いる。
【0060】
七 試験対照
対照薬は、平消(canelim)カプセルを選び、すりつぶして粉末とした後、殺菌し、培養基中に溶解し、遠心分離処理後、0.3、1.5、3、7.5、15mg/mlの薬剤量のグループに分ける。
【0061】
八 試験結果
培養した2種のヒト腫瘍細胞HelaとAlは本発明の薬剤の量に比例してその生長繁殖を抑制した。これに反し、本発明の薬剤を加えない腫瘍細胞は無限に繁殖し、対数生長期に入った。表15にその体外半数抑制濃度を示す。
【表15】

【0062】
本発明の薬剤は体外培養ヒト腫瘍細胞(HelaとAl)の生長に対して均しく抑制作用を有し、体外半数抑制濃度(IC50)は2-5mg/mlである。
【0063】
試験実施例3 本発明の抗腫瘍漢方薬剤の急性毒性試験
一 試験薬物
1 製剤表示量:各ミリリットル当り0.55gの生薬を含む。
【0064】
2 調合方法:滅菌蒸留水で希釈し各所要の濃度にする。
【0065】
3 溶剤:滅菌蒸留水。
【0066】
二 動物:マウス
1 昆明種マウス。上海医薬工業研究院動物組の提供による。
【0067】
2 体重:20±1g、週齢:6-7週。
【0068】
3 各回の体積:0.5ml/マウス
4 薬液調合の溶剤:無菌蒸留水
5 動物の異常反応:直ちに各グループの動物の腹部が激しく収縮し、身体を伸ばしたり捻ったり、飛び上がったり、呼吸が激しくなったり、次いで行動が緩慢になったり、毛がばらばらになったり、活動が減少したりし、投薬の1時間後には死亡が発生した。投薬後6時間内に死亡がピークに達した。ほとんどのマウスは投薬後3日以内に死亡した(表16参照)。死亡した動物の死体を解剖して肉眼で観察した。ただ腸間膜に充血が見られ、腹腔内に大量の薬液の残余があった。その他には異常が見られなかった。試験観察を3週続け、最後にBliss法によりLD50値を計算した。
【0069】
6 結果

本発明の漢方薬剤ipx1 LD50値を表16に示す。結果を見ると、本発明の薬剤を昆明種マウスの腹腔に一度投与したときのLD50値はマウスの性別により顕著な差異はない(P>0.05)(表17参照)。
【表16】

【表17】

【0070】
6 結論
本発明の漢方薬組成物をマウスの腹腔に投与したときの急性毒性LD50値は16.89ml/kgで、原生薬の9.29g/kgに相応する。
【0071】
応用実施例1 本発明の漢方薬剤の原発生性肝癌と胃癌の治療に関する臨床試験の総括
対象および方法
一 試験対象物の選択
1 漢方医学における症候群診断徴候である毒素の結滞
胃が膨満し、塊(包塊)が硬化し、切り傷や刺し傷のような痛みを生じ、食欲不振、無気力、日増しにつのるやつれ、嘔吐、吐血、血便などを生じ、舌が暗色、暗赤色、暗紫色、青紫色や鬱血斑を呈し、白色または黄色の舌苔を生じ、脈が細く、深くあるいはわかりにくい。
【0072】
2 西洋医学における診断基準
原発性肝癌
1) 病理診断
(1) 肝組織学検査による証明により原発性肝癌と診断する。
【0073】
(2) 肝外組織の組織学検査による証明により肝細胞癌と診断する。
【0074】
2) 臨床診断
(1) もしその他の肝癌の証拠がなければ、対流法検査でAFP陽性、または放射免疫法により>または=400ng/mlで、4週間以上持続するとき。ただし、妊娠、活動性肝障害、生殖腺胚胎源性腫瘍および転移性癌患者の場合を除く。
【0075】
(2) 臨床的所見の有無にかかわらず、B超音波検査、CT等の映像検査で肝臓内に実質的な病変が見られるとき。ただし、肝血管瘤と転移性肝癌で、下記のいずれかを有するものを除く。
【0076】
1)AFP>または=200ng/mlまたはν-GTが明らかに高い値を示すとき。
【0077】
2)典型的な原発性肝癌の影像学的表示があるとき。
【0078】
3)黄疸がなく、AKPまたはν-GT値が明らかに高いとき。
【0079】
4)離れた場所に明確な転移があるか、血性腹水があるか、腹水中に癌細胞があるとき。
【0080】
5)明らかにB型肝炎を示す陽性肝硬化があるとき。
【0081】

3) 臨床期別標準
I期:明確な肝癌の症状、身体的異変がなく、CTやB超音波で単一の結節があるが直径が5cmより小さい者。
【0082】
II期:症状が比較的軽く、一般的状況がなお良好で、まだIII期の証拠がない者。
【0083】
III期:明らかに病状が重く、黄疸、腹水または転移の一つがある者。
【0084】
胃癌
(1) 病気の経過と症状:早期には症状がなく、40歳以上で、特に男性に、原因不明な上腹部の膨満不快、疼痛、進行性貧血およびやつれ、または潰瘍症状の規律性に変化が生ずる状態などがあり、食欲不振、嘔吐、吐血または血便を生ずる。
【0085】
(2) 身体の徴候:上腹部の圧痛を感じるかまたは塊を感じる。病状が進行すると、体表近くのリンパ腫が大きく、比較的硬く、腹水、貧血症状がある。
【0086】
(3) 大便潜血反応:連続3日間持続性潜血試験が陽性である。
【0087】
(4) 胃液分析:胃液量が減少し、胃酸が欠乏する。
【0088】
(5) 上消化道の造影:蠕動障害、胃粘膜破壊、胃の排出時間の変化(滞留時間の短縮または延長)、胃の輪郭の異常、周辺の不規則な影像および充満の欠陥。
【0089】
(6) 胃繊維内視鏡検査:腫瘍や巨大な不規則な潰瘍等が見える。
【0090】
(7) 胃液脱落細胞学検査、典型的な癌細胞の発見。
【0091】
(8) 手術病理標本、表面付近のリンパ節の生体検査、胃カメラによる病理標本等、明確な胃癌病理学診断のある者。
【0092】
胃癌の期別標準
I期:リンパ節転移のない表層型胃癌および腫瘍で表層に侵入しているが1/2に達していない者。
【0093】
II期:第1のリンパ節への転移がある表層型胃癌、腫瘍が表層に侵入しており、病変範囲が表層の1区分部位を越えるもの、および近隣リンパ節に転移していないか、近隣リンパ節にのみ浅く転移しているT3腫瘍。
【0094】
III期:腫瘍の大きさを問わず、すべて遠隔部位のリンパ節に浅く転移しているか、または近隣部位のリンパ節に深く転移し、あるいは、たとえ近隣部位のリンパ節転移が浅いか、転移がないが、腫瘍の大きさが1区分部位を越えているか、または、既に周囲の組織に影響を及ぼしている者。
【0095】
IV期:腫瘍の大きさを問わず、およそ遠隔部位に転移しているか、または肝門、腹腔動脈付近、腹主動脈付近、結腸中動脈付近または腸間膜根部のリンパ節転移がある。
【0096】
3 受け入れ標準
(1) I、II期患者の場合は臨床試験に参加を望むが、その他の治療方法を受けることを望まない。
【0097】
(2) およそ既に抗癌治療を受けた者(全身化学療法、動脈カニューレ挿入化学療法および血栓症治療を含む)、局部放射線治療、手術を受けた者(手術が根治した後再発した者を除く)、冷凍療法または無水アルコール注射などを受けた者は、3ヶ月を経過するまでは治療を停止する。
【0098】
(3) 年齢は18歳以上。
【0099】
(4) 予想生存期間2ヶ月以上、生存質量はKarnofsky評価により>または=50。
【0100】
4 病例排除標準
(1) 年齢が18歳未満。
【0101】
(2) 妊娠または授乳中の女
(3) 食道狭窄、ポリープまたは腫瘍、胃十二指腸潰瘍、活動性胃炎、萎縮性胃炎、胆汁反流性胃炎、腸梗塞等を有する患者、肝臓、胆臓、結腸等の消化器性病変者、経口投与のできない患者。
【0102】
(4) 胃に穿孔を有する者または出血を有する者。
【0103】
(5) 心臓、肝臓、胃および造血系統、免疫系統等に重い原発性疾病の合併症を有する者、精神病患者。
【0104】
(6) 治療を拒む者。
【0105】
(7) 臨床試験に参加するのが不適当と研究者によって判定される者。
【0106】
二 臨床試験方法
1 試験の設計:
新薬臨床試験調査報告(Investigational New Drug Application)によると、本発明の組成物薬剤で原発性肝癌患者を治療した例は30例以上であり、胃癌患者も30例以上である。対照の臨床観察は行わなかった。その抗癌作用を確定するために対照グループを設けなかった。
【0107】
2 用薬方法と薬剤量
本発明の漢方薬組成物:経口服用、毎日2回、毎回15ml(1ml当りの生薬量は0.75g)、朝晩各1回、少量の温水を加えて服用する。
【0108】
3 治療期間:2ヶ月。
【0109】
4 観察項目と方法
(1)安全性の検測:血、尿、大便を日常的に検査する。肝臓、腎臓の機能検査、心電図等を試験の前後に各1回行う。臨床試験中、本発明の漢方薬剤が不良反応、たとえば消化、呼吸、循環、神経、血液等系統の症状、を生じていないかを充分注意して観察する必要がある。
【0110】
(2)治療効果の観察
1)癌の病巣:治療の前後にB超音波、CTまたはMRI等の影像学検査を行う必要がある。
【0111】
a 癌の病巣の大きさを測定する。2個の垂直に交わる最大直径の積を標準とする。
【0112】
b 多発性の癌の病巣はすべての腫瘍塊について直径の2個の垂直に交わる最大の積を出し、その和を表示する。
【0113】
c 拡大した結節を示す癌病巣は、別に説明を必要とする。
【0114】
d 門静脈癌塞栓症の有無について記録する。
【0115】
2)状観察
a 原発性肝癌と胃癌の主要症状:
癌区域での疼痛、上腹部でのしこり、疲労、やつれ、黄疸、発熱等。
【0116】
b 毒素停滞の主要症状:
右肋骨下の塊、不快または疼痛、または発熱、口が渇いたり苦味を感じたり、便が硬くなったり便秘したり、あるいは体や目が黄色くなったり、舌が暗赤色や暗紫色になったり、舌苔が黄色くなったり、脈が結滞したりする。
【0117】
c 生存質量: Karnofsky級
d その他の検査項目:AFP、AKP、ν-GT、CD3、CD4、CD8等。
【0118】
観察方法:
観察方法としては、定期的に症状、Karnofsky尺度、舌と脈の状況を観察し記録する。実験室項目には血液を日常的に検査し、出血、凝血の時間を診察時、治療後毎週1回、観察記録する。尿、大便を日常的に検査し、アルファ胎児タンパク、ν-GT、LDH、肝機能、腎機能を診察時、治療後2週間ごとに各1回、検査する。免疫学指標、心電図、心臓機能、胸部X線撮影を、診察時、治療後4週ごとに各1回検査する。癌の病巣の影像学検査を少なくとも診察時、治療後8週ごとに各1回行う。必要に応じ随時検査を行うことができる。
【0119】
三 治療効果判定基準
1 癌の病巣の治療効果判定基準:
(1) 完全緩解(CR):感知できる腫瘍が消失して1ヶ月以上持続していること。
【0120】
(2) 部分緩解(PR):腫瘍の2個の相互に垂直な最大直径の積が50%%以上縮小し、1ヶ月以上持続していること。
【0121】
(3) 安定(SD):腫瘍の2個の相互に垂直な最大直径の積が50%%に至らず、増大も25%を超えず、1ヶ月以上持続していること。
【0122】
(4) 進展(PD):腫瘍の2個の相互に垂直な最大直径の積が25%を超えていること。
【0123】
総緩解率=CR+PR
2 生存質量判定基準:
Karnofsky尺度標準により治療前後の比較を行う。
【0124】
Karnofsky尺度標準:
全て正常で、体調不良または病症がない 100
正常な活動を行うことができるが軽微な病症がある 90
正常な活動に努力が必要で、わずかな病状または病症がある 80
自分で生活できるが、正常な活動や仕事を維持できない 70
時に生活に助けが要るが、大部分の個人的要求を処理できる 60
頻繁な助けが必要で、経常的医療看護が必要である 50
活動能力が乏しく、特別な世話または助けが必要である 40
活動能力が非常に乏しく入院が必要だが、まだ死亡の危険がない 30
病状が重く、入院と積極的介助治療が必要である 20
危篤である 10
死亡 0。
【0125】
四 臨床試験の試料の処理と総括
資料を収集した後、病歴をコンピュータに入力し、EPI INF06統計ソフトウェアを用いてデータベースに入れ、統計学的処理と分析を行い、試験の総括を記載する。即ち、本発明の漢方薬組成物により原発性肝癌と胃癌の患者の臨床治療効果と安全性について客観的評価をする。
【0126】
結果
合格した治験者合計100例の全ては、単に本発明の漢方薬剤を用いる治療のためのグループであり、そのうち西洋医学により原発性肝癌とされたもの41例と胃癌とされたもの59例であり、漢方医学で毒素結滞症と考察されるものである。
【0127】
一 一般的状況
1 性別
【表18】

【0128】
2 年齢
【表19】

【0129】
3 病気の経過
【表20】

【0130】
4 既往治療方式
【表21】

【0131】
5 病巣の類型および病変位置
41例の患者の病巣は巨塊型、結節型および瀰漫型がそれぞれ17例(41.5%)、17例(41.5%)および7例(17.1%)で、肝癌の位置が肝左葉にあるもの3例(7.3%)、右葉にあるもの29例(70.7%)、左右両葉にあるもの9例(22%)があった。
【0132】
59例の胃癌患者の病変部位は上部、中部、下部およびその他の部分のそれぞれに4例(6.8%)、8例(13.6%)、18例(30.5%)、21(35.6%)例あり、複数部位にあるものが7例(11.9%)あった。
【0133】
6 臨床期別
【表22】

【0134】
7 治療前Karnofsky尺度評価状況
【表23】

【0135】
8 治療前の体重状況
【表24】

【0136】
9 治療前食欲量状況
【表25】

【0137】
10 原発性肝癌治療前AFP検査測定状況
【表26】

【0138】
11 原発性肝癌治療前γ-GT検査測定状況
【表27】

【0139】
二 治療効果
1 総治療効果
【表28】

【0140】
原発性肝癌治療後の患者の完全緩解率は0、部分緩解率は2.4%、安定率は82.9%、進展率は14.6%であった。
【0141】
胃癌治療後の患者の完全緩解率は0、部分緩解率は10.2%、安定率は83.0%、進展率は6.8%であった。
【0142】
2 治療後その寿命と生存率の追跡状況
【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

3 治療前後の癌病巣大小による治療効果の比較
【表33】

【0143】
原発性肝癌患者の治療前後病巣の大きさ比較では顕著な差異が認められなかった。
【0144】
胃癌患者の治療前後の病巣の大きさ比較では、差異が顕著であった。
【0145】
4 治療後のKarnofsky尺度による点数の変化状況
【表34】

【0146】
原発性肝癌患者の治療前後のKarnofsky尺度による比較では顕著な差異が認められた。
【0147】
胃癌患者の治療前後のKarnofsky尺度による比較でも顕著な差異が認められた。
【0148】
5 治療後体重変化状況
【表35】

【0149】
原発性肝癌患者の治療前後の体重比較では顕著な差異が認められた。
【0150】
胃癌患者の治療前後の体重比較でも顕著な差異が認められた。
【0151】
6 治療後食欲量変化状況
【表36】

【0152】
原発性肝癌患者の治療前後の食欲量比較では顕著な差異が認められた。
【0153】
胃癌患者の治療前後の食欲量比較でも顕著な差異が認められた。
【0154】
7 治療後の症状、体調改善程度
【表37】

【0155】
改善1級:治療後は治療前に比べて1級下がる。たとえば活動後疲労が容易に回復しなかったが、治療後は活動後容易に回復する程度に改善する。
【0156】
改善2級:治療後の疲労が治療前に比べて2級下がる。たとえば休憩時に感じる疲労感が治療後改善して活動後の疲労が容易に回復する。
【0157】
改善3級:治療後の疲労が治療前に比べて3級下がる。たとえば就床治療後改善し活動後の疲労が容易に回復する。
【0158】
原発性肝癌患者の治療後の疲労改善率は50%である。
【0159】
胃癌患者の治療後の疲労改善率は62.1%である。
【0160】
8 治療後の臨床状況、体調の改善程度
【表38】

【0161】
胃癌患者の治療後の胃膨満の改善率は69.1%である。
【表39】

【0162】
胃癌患者の治療後の食欲不振改善率は56.4%である。
【表40】

【0163】
改善1級:治療後の口の乾きと喉の渇きは治療前に比べて1級下がる。たとえば口の乾きと喉の渇きがあっても飲む欲望がなかったが、治療後は口の乾きが改善する。
【0164】
改善2級:治療後の口の乾きと喉の渇きは治療前に比べて2級下がる。たとえば口の乾きと喉の渇きがあって飲む欲望があったが、治療後は口の乾きが改善する。
【0165】
改善3級:治療後の口の乾きと喉の渇きは治療前に比べて3級下がる。たとえば口の乾きと喉に痛みがあったが、治療後は口の乾きが改善する。
【0166】
原発性肝癌患者の治療後、口の乾きと喉の渇きの改善率は35.5%である。
【0167】
胃癌患者の治療後、口の乾きと喉の渇きの改善率は22.4%である。
【表41】

【0168】
原発性肝癌患者の治療後口内苦味の改善率は35.5%である。
【0169】
胃癌患者の治療後口内苦味の改善率は21.1%である.
【表42】

【0170】
改善1級:治療後自然発汗(目覚めている時の汗)が治療前に比較して1級下がる。たとえば活動後直ちに汗をかいたのが、治療後活動後たまに発汗する低度に改善する。
【0171】
改善2級:治療後自然発汗(目覚めている時の汗)が治療前に比較して2級下がる。たとえば休息時にも汗をかいたが治療後は活動後たまに発汗する程度に改善する。
【0172】
改善3級:治療後自然発汗(目覚めている時の汗)が治療前に比較して3級下がる。たとえば汗を大量にかいていたが治療後は活動後たまに発汗する程度に改善する。
【0173】
原発性肝癌患者の治療後自然発汗の改善率は22.6%である。
【0174】
胃癌患者の治療後自然発汗の改善率は22.8%である..
【表43】

【0175】
改善1級:治療後寝汗(睡眠後発汗)が治療前に比較して1級下がる。たとえば睡眠後たびたび汗をかいたのが、治療後は睡眠後たまに発汗する程度に改善する。
【0176】
改善2級:治療後寝汗(睡眠後発汗)が治療前に比較して2級下がる。たとえば毎晩汗をかいたが治療後はたまに発汗する程度に改善する。
【0177】
改善3級:治療後寝汗(睡眠後発汗)が治療前に比較して3級下がる。たとえば汗で衣服がぬれていたのが治療後はたまに発汗する程度に改善する。
【0178】
原発性肝癌患者の治療後寝汗の改善率は22.6%である。
【0179】
胃癌患者の治療後寝汗の改善率は15.88%である..
【表44】

【0180】
改善1級:治療後イライラや怒り易さが治療前に比較して1級下がる。たとえばイライラが自主的に治療できなかったのが治療後には自主的に改善することができる。
【0181】
改善2級:治療後イライラや怒り易さが治療前に比較して2級下がる。たとえば五心の極度のイライラと怒り易さがあったが治療後には自主的にイライラを改善することができる。
【0182】
原発性肝癌患者の治療後のイライラと怒り易さの改善率は16.1%である。
【0183】
胃癌患者の治療後のイライラと怒り易さの改善率は31.6%である。
【表45】

【0184】
改善1級:治療後の目眩は治療前に比較して1級下がる。たとえば時々あったのが治療後はたまにある程度になる。
【0185】
改善2級:治療後の目眩は治療前に比較して2級下がる。たとえば持続的にあったのが治療後はたまにある程度になる。
【0186】
原発性肝癌患者の治療後の目眩の改善率は12.9%である。
【0187】
胃癌患者の治療後の目眩の改善率は31.6%である。
【表46】

【0188】
改善1級:治療後の黄疸は治療前に比較して1級下がる。たとえば強膜、皮膚の軽度の黄色化が治療後は強膜の軽度の黄色化の程度になる。
【0189】
原発性肝癌患者の治療後の黄疸の改善率は3.2%である。
【0190】
胃癌患者の治療後の黄疸の改善率は0%である。
【表47】

【0191】
改善1級:治療後疼痛(癌性)が治療前に比較して1級下がる。たとえば中度(まだ我慢ができ、不安がない)を治療後軽度(不快感があるが、不安はない)に改善する。
【0192】
改善2級:治療後の疼痛(癌性)が治療前に比較して2級下がる。たとえば重度(自由な体位をとるには服薬が必要)が治療後軽度(不快感があるが、不安はない)に改善する。
【0193】
改善3級:治療後の疼痛(癌性)が治療前に比較して3級下がる。たとえば制御困難な疼痛(疼痛で苛立ち、体位を動かすにも鎮痛剤を必要として初めて緩解する)が治療後軽度(不快感があるが、不安はない)に改善する。
【0194】
原発性肝癌患者の治療後の疼痛の改善率は51.6%である。
【0195】
胃癌患者の治療後の疼痛の改善率は36.8%である。
【表48】

【0196】
改善1級:治療後の腹部膨満が治療前に比較して1級下がる。たとえば腹部膨満、肛門排気後緩解せず、腹水はない状態が、治療後は腹部膨満あり、肛門排気後緩解あり、腹水なしの状態に改善する。
【0197】
改善2級:治療後の腹部膨満が治療前に比較して2級下がる。たとえば明確な腹部膨満、少量ないし中等量の腹水がある状態が、治療後は腹部膨満あり、肛門排気後緩解あり、腹水なしの状態に改善する。
【0198】
改善3級:治療後の腹部膨満が治療前に比較して2級下がる。たとえば明確な腹部膨満、少量ないし中等量の腹水がある状態が、治療後は腹部膨満あり、肛門排気後緩解あり、腹水なしの状態に改善する。
【0199】
原発性肝癌患者の治療後の腹部膨満の改善率は45.2%である。
【0200】
胃癌患者の治療後の腹部膨満の改善率は54.4%である。
【表49】

【0201】
改善1級:治療後は下痢が治療前に比較して1級下がる。たとえば2日以上我慢できる下痢が続くのが、治療後2日に達しない程度に短縮する。
【0202】
改善2級:治療後は下痢が治療前に比較して2級下がる。たとえば我慢できない下痢が続くのが、治療後2日に達しない程度に短縮する。
【0203】
原発性肝癌患者の治療後の下痢の改善率は16.1%である。
【0204】
胃癌患者の治療後の下痢の改善率は1.8%である。
【0205】
9 治療後の主要症状と身体不調の消失状況
【表50】

【0206】
10 治療後の白血球数の変化状況
【表51】

【0207】
悪化:治療前の白血球数に比べて治療後区分が1級以上増加する。
【0208】
増加1級:治療前の白血球数に比べて治療後区分が1級減少する。
【0209】
増加2級:治療前の白血球数に比べて治療後区分が2級減少する。
【0210】
増加3級:治療前の白血球数に比べて治療後区分が3級減少する。
【0211】
原発性肝癌患者の治療後の白血球数の改善率は3.5%であり、悪化率は10.3%である。
【0212】
胃癌患者の治療後の白血球数の改善率は5.5%で、悪化率は3.6%である。
【0213】
11 治療後顆粒性白血球数の変化状況
【表52】

【0214】
悪化:治療前の顆粒性白血球数に比べて治療後区分が1級以上増加する。
【0215】
増加1級:治療前の顆粒性白血球数に比べて治療後区分が1級減少する。
【0216】
増加2級:治療前の顆粒性白血球数に比べて治療後区分が2級減少する。
【0217】
増加3級:治療前の顆粒性白血球数に比べて治療後区分が3級減少する。
【0218】
原発性肝癌患者の治療後の顆粒性白血球数の改善率は11.8%であり、悪化率は0%である。
【0219】
胃癌患者の治療後の顆粒製白血球数の改善率は0%で、悪化率は1.9%である。
【0220】
12 治療後のヘモグロビン量の変化状況
【表53】

【0221】
悪化:治療前のヘモグロビン量に比べて治療後区分が1級以上増加する。
【0222】
増加1級:治療前のヘモグロビン量に比べて治療後区分が1級減少する。
【0223】
増加2級:治療前のヘモグロビン量に比べて治療後区分が2級減少する。
【0224】
増加3級:治療前のヘモグロビン量に比べて治療後区分が3級減少する。
【0225】

原発性肝癌患者の治療後のヘモグロビン量の改善率は6.5%であり、悪化率は16.1%である。
【0226】
胃癌患者の治療後のヘモグロビン量の改善率は18.2%で、悪化率は16.4%である。
【0227】
13 治療後の血小板数の変化状況
【表54】

【0228】
悪化:治療前の血小板数に比べて治療後区分が1級以上増加する。
【0229】
増加1級:治療前の血小板数に比べて治療後区分が1級減少する。
【0230】
増加2級:治療前の血小板数に比べて治療後区分が2級減少する。
【0231】
増加3級:治療前の血小板数に比べて治療後区分が3級減少する。
【0232】
原発性肝癌患者の治療後の血小板数の改善率は10.3%であり、悪化率は3.5%である。
【0233】
胃癌患者の治療後の血小板数の改善率は5.5%で、悪化率は1.8%である。
【0234】
14 免疫指標CD3の治療前後の比較
【表55】

【0235】
原発性肝癌患者の治療前後のCD3を比べると、差異に顕著な意義がある。
【0236】
胃癌患者の治療前後のCD3を比べると、差異に顕著な意義がない。
【0237】
15 免疫指標CD4の治療前後の比較
【表56】

【0238】
原発性肝癌患者の治療前後のCD4を比べると、差異に顕著な意義がある。
【0239】
胃癌患者の治療前後のCD4を比べると、差異に顕著な意義がある。
【0240】
16 免疫指標CD8の治療前後の比較
【表57】

【0241】
原発性肝癌患者の治療前後のCD8を比べると、差異に顕著な意義がない。
【0242】
胃癌患者の治療前後のCD8を比べると、差異に顕著な意義がある。
【0243】
17 免疫指標CD8の治療前後の比較
【表58】

【0244】
原発性肝癌患者の治療前後のCD4/CD8を比べると、差異に顕著な意義がある。
【0245】
胃癌患者の治療前後のCD4/CD8を比べると、差異に顕著な意義がない。
【0246】
18 原発性肝癌γ-GTの治療前後の比較
【表59】

【0247】
三 治療後の影像学検査結果
1 B超音波検査
原発性肝癌患者の36例がB型超音波検査を受け、全て異常とされた。治療後再度検査したがなお異常であった。胃癌患者の37例がB型超音波検査を受け、17例が正常であり、20例が異常とされた。治療後再び検査をしたが状況に変化はなかった。
【0248】
2 CTおよびMRI検査
原発性肝癌患者の14例がCTまたはMRI検査を受けた。4例は正常であり、10例は異常とされた。治療後再び検査したが依然として同様であった。胃癌患者の8例がCTまたはMRI検査を受けた。全てが異常であった。治療後再検査を受けたが、1例は正常で、7例は異常であった。
【0249】
四 安全性の検査測定
治療前の安全性指標の検査測定結果は正常であった。治療後出現した異常な安全検査測定結果は、綜合すると以下の表のとおりであった。
【表60】

【0250】
五 不良事件の観察
試験過程の観察において多くの病気が疑わしい不良反応を呈した。たとえば発熱、脱毛、胸苦しく呼吸が激しくなる、非癌性疼痛、吐き気、便秘、大便潜血等である。具体的状況は下表のとおりである。
【表61】

【0251】
治療過程中或る患者には発熱、脱毛、胸苦しく息切れの発生、非癌性疼痛、吐き気、便秘、出血等の疑わしい不良反応が生じた。各症状の発生率の詳細について上記の表に示す。少なくとも1件の疑わしい不良反応があった例は、合計36例あり、全ての疑わしい不良反応発生率は36.0%(36/100)であった。
【0252】
結論
本研究における合格試験対象者は合計100例で、そのうち原発性環体癌患者は41例、胃癌患者は59例である。これらは漢方医学によって毒素結滞証とされた。
【0253】
原発性肝癌患者の完全緩解率は0であり、部分緩解率は2.4%、安定率は82.9%、進展率は14.6%であった。
【0254】
治療後1年半の追跡調査の結果、原発性肝癌および胃癌患者の1年の生存率は、それぞれ16.5%および31.7%であった。原発性肝癌および胃癌患者の中位生存期間はそれぞれ5ヶ月と11ヶ月で、平均生存時間はそれぞれ7.7ヶ月と10.7ヶ月であった。
【0255】
本研究で受け入れた胃癌患者は主として後期の患者であり、そのうち臨床期別でIII期の者が19例(32.2%を占める)、IV期の者が37例(62.7%を占める)で、上記の胃癌治療臨床の治療効果の結果は、本発明の漢方薬剤による治療後の部分緩解率は10.2%、安定率は83.0%、1年生存率は31.7%、中位生存期間は11ヶ月であることを示す。これは本発明の漢方薬剤による胃癌の治療が毒素結滞証患者に対して比較的良好な臨床治療効果を有することを示す。
【0256】
実体腫瘍の病巣の大きさの評価の結果は次のとおりである。原発性肝癌患者の癌病巣サイズの比較では、差異に顕著な意義がなかった。胃癌患者の治療前の癌病巣サイズを比較すると、差異に顕著な意義があった。治療後の癌病巣を治療前と比較すると明確に縮小した。本発明の漢方薬剤で胃癌を治療すると毒素結滞証患者の癌病巣が明らかに縮小したことがわかる。
【0257】
主要な症状の治療効果の結果によると、本発明の漢方薬剤による治療後、原発性肝癌と胃癌の患者のKarnofsky評価、体重、食欲量が治療前に比して明確に増加し、差異は顕著な意義があった。
【0258】
本発明の漢方薬剤による治療後、原発性肝癌と胃癌の患者の疲労、口の乾き、目眩、胃の膨満、食欲不振、口内苦味、自然発汗、寝汗、イライラと怒り易さ、胸苦しさと呼吸促進、癌性疼痛、腹部膨満等の症状が治療前に比べて改善された。
【0259】
上述の結果は本発明の漢方薬剤による原発性肝癌と胃癌の治療で毒素結滞証患者がその生存質量を高め、患者の臨床症状を改善できることを示す。
【0260】
実験室指標の治療効果の結果によれば、免疫指標方面では治療前後の比較結果では原発性肝癌患者のCD3、CD4、CD4/CD8比の値の変化は全て顕著な意義を示した。胃癌患者の治療後のCD4、CD8はともに治療善意比べて低下し、CD4/CD8比の値は特に明確な変化がなかった。本発明の漢方薬剤による原発性肝癌の治療は患者の細胞免疫機能作用を一定の高さまで高めた。しかし胃癌患者の細胞免疫機能作用は高められていない。
【0261】
原発性肝癌と胃癌の患者を治療後、白血球、顆粒性赤血球、血小板数が治療前と比較して明らかに増加した。
【0262】
以上を綜合すると、本研究の100例についての無対照試験研究結果によれば、本発明の漢方薬剤による原発性肝癌患者に対する治療効果は明確ではなく、部分緩解率は2.4%である。しかし治療後の患者のKarnofsky評価、体重、食欲量は皆明確に高められている。また、疲労、口の乾き、癌性疼痛、目眩、腹部膨満等の臨床症状および細胞免疫機能も改善されている。本発明の漢方薬剤による胃癌患者の治療は比較的良好な臨床治療効果を示し、部分緩解率は10.2%で、治療後の患者のKarnofsky評価、体重、食欲量はそれぞれ明確に高められており、また疲労、胃の膨満、食欲不振、口の乾き、癌性疼痛、目眩、腹部膨満等の臨床症状もそれぞれ改善を示した。
【0263】
治療過程中、少数の患者は肝臓、腎臓の機能と血液系統に軽度の損害を生じ、部分的な病例では発熱、脱毛、胸苦しさと呼吸促進、非癌性疼痛、吐き気、便秘、出血等の疑わしい不良反応を生じたが、まだ試験薬の投与を受けている。
【0264】
応用実施例2 本発明の漢方薬剤が原発性肝癌の治療補助をする臨床試験の総括
対象と方法
一 試験対象病例の選択
1 漢方医学の証候診断基準:実施例1と同じ。
【0265】
2 西洋医学診断基準:応用実施例1中の原発性肝癌基準と同じ。
【0266】
3 受け入れの基準
(1) III期の患者で介入を受けられない者、化学療法禁忌症の者を除く。
【0267】
(2) その他は応用実施例1と同じ。
【0268】
4 排除病例基準
応用実施例1のうち、(4)の状況以外の部分を参照。その他は同じ。
【0269】
二 臨床試験方法
1 試験設計:
ランダム対照試験方法を採用する。病例のグループ化にはランダムな方法を用いる。具体的なランダム化分配方法は研究人員がCasio(fx-3600p)計算機のランダムキー(INV、RAN)の操作によりランダムな数字を得て、ランダム分配カードを作り、封筒に入れて密封し、封筒の番号をカードの番号と同じにし、試験に参加する者に試験証書を送る。合格した病例について試験を行うとき、前後の順序に従って、番号の等しい封筒を開き、封筒内のカードの記載に従ってグループ化し、治療を実施する。
【0270】
5 薬剤使用方法と薬剤量
治療グループ:
第1次肝動脈介入、化学治療および塞栓療法を行う1週間前に、本発明の漢方薬剤の経口服用を開始する。投与量は毎日2回、各回15ml(毎mlは生薬量0.75gを含有する。)、朝晩各1回、少量の温水で服用する。4週間の間隔を置いて第2次介入、化学治療、塞栓療法を行い、合わせて本発明の試験治療を行う。本発明の漢方薬剤の服用は2ヶ月連続して行う。
【0271】
対照グループ:
第1次肝動脈介入、化学治療および塞栓療法の4週間後、第2次肝動脈介入、化学治療および塞栓療法を行い、合計2回行う。
【0272】

6 化学治療方式:
DDP
ADM
5-Fu
7 塞栓療法:ヨード化油とゼラチンスポンジ
ヨード化油とゼラチンスポンジの用量は臨床観察表中に詳細に記載されている。
【0273】
8 治療過程:2ヶ月(将来のデータ統計分析のためにII期、III期患者の治療過程は2ヶ月とする。)
9 観察項目と方法
応用実施例1と同じ。
【0274】
三 治療効果判定基準
1 応用実施例1と同じ。
【0275】
2 寿命、生存率の評価
治療後の寿命とは治療日より死亡にいたるか、最後の追跡日までの期間をいう。
【0276】
治療後少なくとも1年の追跡を必要とする。
【0277】
四 臨床試験資料の処理と総括
収集した資料は照合確認後コンピュータに入力する。EPI Info統計ソフトを用いてデータベースに入れる。統計学的処理と分析を行い、臨床試験の総括を行う。これにより本発明の漢方薬剤が毒素結滞に対して原発性肝癌患者への介入、化学治療、塞栓療法の補助治療作用を有し、安全性があることの客観的評価を与える。
【0278】
統計方法:分類資料をX2試験で分析する。等級資料はWilcoxon試験(校正)により分析する。2サンプル手段はt試験によって比較する。Logistic回帰分析も分析資料の分析を用いて分析する。寿命、生存率は寿命表分析およびKaplan-Meier分析方法により分析する。
【0279】
結果
一 一般資料
試験対象として合格した者は合計183例、そのうち治療グループは124例、対照グループは59例である。西洋医学による診断はすべて原発性肝癌であり、漢方医学の弁証は毒素結滞証である。性別、年齢、病気経過等の状況は比較可能性分析を参照する。
【0280】
二 2グループの比較可能性検査
1 2グループの性別構成の比較
【表62】

【0281】
2 両グループの年齢別比較
【表63】

【0282】
3 両グループの病気経過の比較
【表64】

【0283】
4 両グループの既往治療方式の比較
【表65】

【0284】
5 両グループの肝癌病巣類型の比較
【表66】

【0285】
6 両グループの臨床期別の比較
【表67】

【0286】
7 両グループの治療前癌病巣状況の比較
【表68】

【表69】

【0287】
8 両グループのKarnofsky評価、体重および食欲量の比較
【表70】

【表71】

【表72】

【0288】
9 両グループの治療前主要症状、体調程度の比較*
【表73】

【表74】

【表75】

【表76】

【表77】

【表78】

【表79】

【表80】

【表81】

【表82】

【0289】
10 両グループの腹水、腹囲の大きさの比較*
【表83】

【表84】

【0290】
11 両グループの治療前における舌と脈の状況の比較
【表85】

【表86】

【表87】

【0291】
12 両グループの治療前AFP、γ-GT、LDH検査測定結果
【表88】

【表89】

【表90】

【0292】
上述の治療前比較可能性検査測定では、Karnofsky評価、体重、疲労、口内苦味、腹部膨満、舌質を除き、両グループの治療前性別、年齢、病気経過、既往治療方式、病巣類型、臨床期別、舌苔および脈象についての差異は全て顕著な有意性がなかった。両グループの治療前Karnofsky評価、疲労、口内苦味、腹部膨満等を比較すると、治療グループは対照グループに劣っているようだが、これらの因子が治療効果の比較に影響を与える可能性があるので、治療効果の比較を行うときには、Logistic回帰分析を行う必要がある。
【0293】
三 治療効果の比較
1 治療効果の総体的比較
【表91】

【表92】

【0294】
治療グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は15.3%、安定率は78.2%、進展率は6.5%であり、対照グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は6.8%、安定率は74.6$、進展率は18.6%であった。両グループを比較すると、差異に顕著な有意性を示した。
【0295】
Karnofsky評価を考慮すると、体重、疲労、腹部膨満症状、舌質の因子は治療効果に対し影響を与える可能性がある。Logistic回帰分析方法を用いた結果、グループ間の治療効果の差異に顕著な有意性が示された。対照グループの治療グループに対する相対的危険度(RR)は4.66であり、これは対照グループの病例の進展可能性は治療グループの4.66倍であることを示す。
【0296】
2 両グループの治療後における寿命と生存率の比較
【表93】

【表94】

【表95】

【表96】

【0297】
3 両グループの治療後癌の病巣の大きさについての治療効果比較
【表97】

【0298】
治療グループの治療前後における癌病巣の大きさ比較では差異に顕著な有意性があった。
【0299】
対照グループの治療前後における癌病巣の大きさ比較でも差異に顕著な有意性があった。しかし両グループの治療前後における癌病巣の大きさ比較(グループ間の比較)では差異に顕著な有意性があった。
【0300】
4 両グループの治療後のKarnofsky評価の比較
【表98】

【0301】
治療グループの治療前後におけるKarnofsky評価の比較では差異に顕著な有意性があった。
【0302】
対照グループの治療前後におけるKarnofsky評価の比較では差異に顕著な有意性がなかった。両グループの治療前後におけるKarnofsky評価の比較(グループ間の比較)では差異に顕著な有意性があった。
【0303】
5 治療後の体重の比較
【表99】

【0304】
治療グループおよび対照グループの治療前後における体重の比較では差異に顕著な有意性がなかった。しかし両グループの治療前後における差の比較では差異に顕著な有意性があった。
【0305】
6 治療後の食欲量の比較
【表100】

【0306】
治療グループおよび対照グループの治療前における食欲量の比較と治療前後の差では、差異にすべて顕著な有意性があった。
【0307】
7 両グループの治療後臨床症状、体調の改善程度の比較
【表101】

【0308】
両グループの治療後の疲労改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性があった。
【表102】

【0309】
両グループの治療後の口内乾きの改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性がなかった。
【表103】

【0310】
両グループの治療後の口内苦味の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性があった。
【表104】

【0311】
両グループの治療後の自然発汗(目覚め後の汗)の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性がなかった。
【表105】

【0312】
両グループの治療後の寝汗(睡眠時の汗)の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性はなかった。
【表106】

【0313】
両グループの治療後のイライラ、怒り易さの改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性はなかった。
【表107】

【0314】
両グループの治療後の目眩の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性はなかった。
【表108】

【0315】
両グループの治療後の黄疸の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性はなかった。
【表109】

【0316】
両グループの治療後の疼痛(癌性)の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性があった。
【表110】

【0317】
両グループの治療後の腹部膨満の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性があった。
【0318】
8 両グループの治療後の主要症状と身体徴候の消失率の比較
【表111】

【0319】
両グループの治療後、疲労、口の乾き、目眩、腹部膨満の症状消失率の比較では、差異両グループの治療後顆粒性白血球数の治療効果の比較について顕著な有意性がある。両グループの治療後、口内苦味、自然発汗、寝汗、イライラと怒り易さ、胸苦しさと呼吸促進、黄疸、疼痛(癌性)の症状消失率を比較すると、差異は顕著な有意性がない。
【0320】
9 両グループ治療後の白血球数に対する治療効果の比較
【表112】

【0321】
両グループ治療後の白血球数の治療効果を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。
【0322】
10 両グループの治療後顆粒性白血球数の治療効果の比較
【表113】

【0323】
両グループ治療後の顆粒性白血球数の治療効果を比較すると、その差異には顕著な有意性がある。
【0324】
11 両グループの治療後ヘモグロビン量の治療効果の比較
【表114】

【0325】
両グループの治療後のヘモグロビン量を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。
【0326】
12 両グループの治療後血小板数の治療効果の比較
【表115】

【0327】
両グループの治療後の血小板数の治療効果を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。
【0328】
13 両グループの治療後免疫機能の治療効果の比較
【表116】

【表117】

【表118】

【表119】

【表120】

【0329】
14 両グループの治療後γ-GT検査測定の結果の比較
【表121】

【0330】
15 両グループの治療後LDH検査測定の結果の比較
【表122】

【0331】
四 治療後の影像学的検査結果
1 B型超音波検査:
治療グループの116例が治療後B型超音波検査で再検査を受け、対照グループの55例が治療後B型超音波検査で再検査を受けた。
【0332】
2 CTおよびMRI検査:
治療グループの83例が治療後CT検査で再検査を受け、対照グループの33例が治療後CT検査で再検査を受けた。
【0333】
治療グループの18例が治療後MRI検査で再検査を受け、対象グループの7例がMRI検査で再検査を受けた。
【0334】
五 安全性検査測定
各項の安全性検査の結果を綜合し、治療前の検査結果が正常であり治療後に異常が発生した者を綜合すると、下表のとおりである。
【表123】

【0335】
両グループの治療後安全性検査測定の結果によれば、治療グループの治療後の顆粒性白血
球数の減少とビリルビン増加の発生率が対照グループより低いこと(P<0.05)を除いては、その他の検査項目について両グループの発生率、RR(相対危険度)、および統計学分析結果は、その差異について顕著な有意性がない(詳細は上の表を参照)。
【0336】
八 不良事件観察
両グループの薬剤投与後の不良事件について観察した結果を下記の表にまとめる。
【表124】

【0337】
両グループの治療過程中には一部の患者に脱毛、口腔潰瘍等疑わしい不良反応が発生する。各症状の発生率、RR(相対危険度)および両グループの統計学分析の結果を上の表に示す。
【0338】
両グループの治療過程中に生ずる胸苦しさや呼吸促進、気分のむかつきや吐き気、便秘等の症状の発生率を比較すると、その差異には顕著な有意性がある。疑わしい反応の発生率とその相対危険度(RR)から見ると、治療グループは対照グループより低い。両グループのその他の症状の発生率を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。
【0339】
少なくとも1項の疑わしい不良反応が発生した病例は、治療グループに90例あった。疑わしい不良反応発生率は合計で72.6%(90/124)であり、対照グループでは53例で、疑わしい不良反応発生率は89.8%(53/59)であった。治療グループの疑わしい不良反応相対危険度(RR)は0.808(95%信頼区間:0.704〜0.928)で、治療グループの疑わしい不良反応発生の危険性は対照グループに比較して低い。
【0340】
結論
本研究において試験対象として合格した者は183例で、治療グループは124例、対照グループは59例であった。すべて西洋医学による診断は原発性肝癌であり、漢方医学による弁証は毒素結滞証である。
【0341】
治療前の比較可能事項の検査測定の示すところによれば、両グループの治療前のKarnofsky評価、体重、疲労、口苦、腹部膨満、舌質の比較について差異が顕著な有意性を示す。両グループの治療前性別、年齢、病気経過、既往治療方式、病巣の類型、臨床期別、舌苔や脈状態の差異は顕著な有意性がない。両グループの治療前のKarnofsky評価、疲労、口苦、腹部膨満等を比較すると、治療グループは対照グループに劣る。これらの因子が治療効果に影響を与えることが比較的可能であるので、本研究で治療効果を比較するとき、Logistic回帰分析方法を採用し、これらの因子が両グループの治療効果の比較に与える影響を確定した。
【0342】
治療効果の総合的結果の示すところによれば、治療グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は15.3%、安定率は78.2%、進展率は6.5%で、対照グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は6.8%、安定率は74.6%、進展率は18.6%である。両グループを比較すると、差異には顕著な有意性がある。
【0343】
Karnofsky評価、体重、疲労、口苦、腹部膨満症状、舌質因子が治療効果に与える影響を考慮してLogistic回帰分析方法を用い、上述の変数を模型に導入し、後退法を採用して変数の篩い分けをした。篩い分けの結果、グループ分けとKarnofsky評価において顕著な有意性があった。グループ間の治療効果の差異に顕著な有意性を示す。対象グループの治療グループに対する相対危険度(RR)は4.66であり、これは対照グループの病例の進展する危険性は治療グループの4.66倍であることを示す。
【0344】
上述の結果は本発明の漢方薬剤が毒素結滞証、即ち原発性肝癌患者に対する介入、化学療法や塞栓療法の補助的治療法として比較的良好な臨床治療効果を有し、一定の相乗効果を有する。
【0345】
両グループの治療後1年半して、治療グループの1年生存率は40.3%、対照グループの1年生存率は45.8%であった。生存分析の示すところによれば、両グループの寿命の比較では、短期効果を示すBreslow試験でも、長期効果を示すLog-rank試験でも、差異は顕著な有意性を示していない。単純な介入、化学療法、塞栓療法と比較した場合、本発明の漢方薬剤は原発性肝癌患者に対する介入、化学療法、塞栓療法による寿命を延長するに至っていない。
【0346】
実体腫瘍の病巣の大きさを比較すると、次のことがわかる。両グループ治療前後における癌病巣の大きさの差(差=治療後の癌病巣の大きさから治療後の癌病巣の大きさを引いたもの)を比較すると、再は顕著な有意性を示す。治療グループの治療後の癌病巣の大きさは明らかに対照グループに比較して縮小している。治療グループの治療前後における癌病巣の大きさを比較すると、差異は顕著な有意性を示す。治療後の癌病巣の大きさは治療前より明らかに縮小している。対照グループの治療前後における癌病巣の大きさの比較でも、差異に顕著な有意性がある。治療後の癌病巣の大きさは治療前に比べて明らかに縮小している。本発明の漢方薬剤が原発性肝癌患者に対する介入、化学療法、塞栓療法の実施の補助をすれば、明らかに癌の病巣を縮小することができ、単純な介入、化学療法、塞栓療法を受けるグループより優れた効果を発揮する。
【0347】
主要症状の治療効果を観察したところ、次のことがわかる。治療グループの治療後、Karnofsky評価数値が治療前に比べて明らかに増加している。両グループの治療後患者の疲労症状は治療前に比べて均しく明らかに改善している。また、治療グループの疲労症状の改善程度および消失率は均しく対照グループより大きい。
【0348】
両グループ患者の治療後の食欲量は明らかに増加しており、口の乾き、口内苦味、自然発汗、寝汗、イライラと怒り易さ、目眩、黄疸、癌性疼痛、腹部膨満の症状はすべて改善されており、消失率も比較的高い。ただし、治療グループの口内苦味、癌性疼痛、目眩の症状改善程度は対照グループより高い。治療グループの口の乾き、目眩、腹部膨満の消失率が対照グループより高い点を除いては、両グループのその他の症状改善程度および消失率の比較では、差異は顕著な有意性を有しない。
【0349】
上述の結果から、本発明の漢方薬組成物は原発性肝癌に対する介入、化学療法、塞栓療法の適用を補助して患者の生存質量を高め、患者の臨床症状を改善するので、比較的良好な補助治療作用を有することがわかる。
【0350】
実験室の指標治療効果の結果から見ると、治療グループの治療後CD3、CD4CおよびD4C/D8比の値、NK細胞は均しく治療前より明らかに増加している(P<0.05)。また、治療グループCD3、NK細胞の治療前後の差は対照グループより高い(P<0.05)。また、単に介入、化学療法、塞栓療法を受けたグループの治療前後の変化は明確ではない。また、NK細胞は治療後には治療前より明らかに低下している。
【0351】
上述の結果は、本発明の漢方薬剤が原発性肝癌に対する介入、化学療法、塞栓療法の適用を補助し、患者の細胞免疫効能作用を一定程度高め、介入、化学療法、塞栓療法の主要細胞の治療抑制作用を補助することができることを示す。
【0352】
本研究の183例のランダムな対照試験の結果によれば、本発明の漢方薬剤が原発性肝癌ないし毒素結滞証患者の治療を補助するに当って、比較的良好な臨床治療効果を有し、比較的良好な相乗効果作用を有し、患者の生存質量を明らかに高め、患者の臨床症状を高め、患者の細胞免疫効能を高め、原発性肝癌に対して使用することができる。また、漢方医学で毒素結滞証と弁証される患者に対する介入、化学療法、塞栓療法の適用に際する補助治療、臨床応用において安全である。
【0353】
応用実施例3 本発明の漢方薬組成物が化学療法を補助して胃癌を治療する臨床試験総括
対象と方法
一 試験合格対象の選択
1 漢方医学の証候診断基準:応用実施例1と同じ。
【0354】
2 西洋医学診断基準:胃癌とその期分けの基準は応用実施例1と同じ。
【0355】
3 受け入れの基準
(1) 自ら臨床試験に参加することを希望する者
(2) II期、III期、IV期の胃癌患者で手術不能の者または手術を望まない者
(3)胃癌手術の研究者
(4)胃癌手術後再発した者で、手術不能の者または手術を望まない者
(5)既に抗癌治療を受けた者で、2ヶ月以上の治療停止を要する者
(6)年齢18歳以上の者
(7)予想される寿命が3ヶ月以上で、生存質量がKarnofsky評価で50点以上の者
4 排除病例基準
(1)食堂狭窄、噴門閉塞、幽門閉塞、ポリープ、腫瘍、腸閉塞、肝臓、胆嚢、膵臓、結腸等消化管器質性病変者、または胃癌が胃硬変症(皮革胃)状態を呈し、薬剤の経口服用ができない者
(2)その他は応用実施例1の(1)、(2)、(4)〜(7)と同じ。
【0356】
二 臨床試験方法
1 試験設計:応用実施例2と同じ。
【0357】
2 薬剤使用方法と薬剤量:
本発明の漢方薬剤で補助治療を受けるグループ:胃癌の化学療法と同時に、本発明の漢方薬組成物の経口投与を開始する。毎日2回、毎回15ml0.75g(毎mlは生薬0.75gを含有する)、朝夕各1回、少量の温水で飲む。本発明の漢方薬剤は連続して2ヶ月服用する必要がある。
【0358】
対照グループ:化学療法のみで胃癌の治療を受ける。
【0359】
3 化学療法による治療方式:MF方式
5-Fu 500mg/M2、 V.D. 第1-5日
MMC 80mg/M2、 i.v. 第1日
各28日を1周期とし、2周期連続して服用する。
【0360】
4 治療過程:2ヶ月、治療終了後1ヶ月間再観察する。
【0361】
5 観察の項目と方法
(1) 安全性の検査測定:応用実施例1と同じ。
【0362】
(2) 治療効果の観察:
1)癌の病巣:治療前後にB型超音波、X線バリウム粥または空気バリウム二重造影検査、胃カメラ検査、またはCT等影像学検査。
【0363】
a.癌の病巣の大きさ測定は二つの相互に垂直な最大直径の積を標準とする。
【0364】
b.多発性癌病巣はすべての腫瘍塊についてそれぞれ二つの相互に垂直な最大直径の積の和で表示する。
【0365】
c.弥漫性の結節の癌病巣については、別に説明が必要である。
【0366】
2)臨床症状の観察:
a.胃癌の主要症状:腫瘍塊、腹痛、無食症、血便、吐き気、疲労、腹水、浮腫、黄疸等
b.毒素結滞証の主要症状:
胃膨満、しこりの硬化、切り傷や刺し傷のような疼痛、食欲不振、疲労、日ごとに増すやつれ、嘔吐、吐血、血便、舌質が暗赤色、暗紫色、青紫色であったり、あるいは舌に毒斑、白や黄色の苔が生じたり、細脈、沈脈、渋脈を呈する。
【0367】
c.Karnofsky級分け
3)実験室検査項目:
a.X線バリウム粥または空気バリウム二重造影検査(必ず実施する)
b.胃カメラ検査(必ず実施する)
c.大便潜血検査(必ず実施する)
d.癌胚抗原(CEA)検査測定(部分的病例について行う)
e.B型超音波検査(必ず実施する)
f.CT検査(必要時に行う)
g,免疫学検査:CD3、CD4,CD8,NK細胞等。
【0368】
観察方法:
毎回1日おきに症状、舌と脈の状況を各1回観察し記録する。毎週Karnofsky評価と体重を各1回観察し記録する。
【0369】
実験室検査項目:血液の日常的検査を診察開始時、治療後毎週各1回。尿の日常的検査、大便の日常的検査、大便潜血試験、肝機能と腎機能の検査を診察開始時、治療2週ごとに各1回。免疫学指標、心電図、心機能検査を診察開始時、治療後4週ごとに各1回。X線バリウム粥または空気バリウム二重造影検査、胃カメラ検査、B型超音波検査、癌胚抗原(CEA)検査、出血凝血時間検査測定を少なくとも診察開始時、治療後それぞれ1回検査測定し、必要重量/体積比に随時検査測定を行うことができる。治療終了後毎1-2ヶ月に1回、少なくとも1年追跡検査する。
【0370】
三 治療効果判定基準
1 癌病巣の治療効果判定基準:
(2) 完全緩解(CR): 腫瘍病巣の完全消失
(3) 部分緩解(PR): 腫瘍の二つの相互に垂直な最大直径の積が50%以上縮小する。
【0371】
(4) 安定(SD): 腫瘍の二つの相互に垂直な最大直径の積の縮小が50%未満で、増大が25%を超えない。
【0372】
(5) 進展(PD): 腫瘍の二つの相互に垂直な最大直径の積の増大が25%を超える。
【0373】
総緩解率=CR+PR
2 寿命、生存率の評価:治療後の寿命は治療日から開始して死亡または最後の追跡検査日までを指す。治療後少なくとも1年応用実施例追跡検査を要する。
【0374】
3 健康状況の変化:Karnofsky評価基準により治療前後の比較を行う。
【0375】
Karnofsky評価基準:応用実施例1を参照。
【0376】
四 臨床試験の資料の処理と総括
資料収集後、病歴をコンピュータに入力し、EPI Info統計ソフトを用いてデータベースに入れ、統計学的処理と分析を行い、総括を行う。これにより、本発明の漢方薬剤の毒素結滞証ないし胃癌患者に対する化学療法の補助作用と安全性の客観的評価ができる。
【0377】
統計方法:分類資料をX2試験で分析する。等級資料はWilcoxon試験(校正)により分析する。2サンプル手段はt試験によって比較する。Logistic回帰分析も分析資料の分析を用いて分析する。寿命、生存率は寿命表分析およびKaplan-Meier分析方法により分析する。
【0378】
結果
一 一般資料
試験対象として合格した者は合計129例、そのうち治療グループは87例、対照グループは42例である。西洋医学による診断はすべて胃癌であり、中医(漢方医学)の弁証は毒素結滞証である。外来患者は15例であり、入院患者は114例である。
【0379】
二 2グループの比較可能性検査
1 2グループの性別構成の比較
【表125】

【0380】
2 両グループの年齢別比較
【表126】

【0381】
3 両グループの病気経過の比較
【表127】

【0382】
4 両グループの既往治療状況の比較*
【表128】

【0383】
5 両グループの既往治療効果の比較*
【表129】

【0384】
6 両グループの胃癌病理診断の比較
【表130】

【0385】
7 両グループの胃癌臨床期分けの比較
【表131】

【0386】
8 両グループの治療前癌病巣の大きさの比較*
【表132】

【表133】

【表134】

【表135】

【0387】
9 両グループの治療前におけるKarnofsky評価の比較
【表136】

【0388】
10 両グループの治療前における体重の比較
【表137】

【0389】
11 両グループの治療前における食欲量の比較
【表138】

【0390】
12 両グループの治療前における臨床症状、体徴の比較
【表139】

【表140】

【表141】

【表142】

【0391】
13 両グループの治療前における舌状況の比較
【表143】

【表144】

【0392】
14 両グループの治療前における脈象の比較
【表145】

【0393】
15 両グループの治療前の血液学検査状況
治療グループの治療前85例が白血球数検査を受けた。そのうち80例は正常範囲であり、3例は白血球数が3.0-3.9×105/Lで、2例は白血球数>10.0×109/Lであった。対照グループの治療前41例が白血球数検査を受けた。そのうち35例は正常範囲であり、4例は白血球数が3.0-3.9×105/Lで、2例は白血球数>10.0×109/Lであった。
【0394】
治療グループの治療前42例が顆粒性白血球数検査を受けた。そのうち41例は正常範囲であり、1例は2.0×105/Lより低かった。対照グループの治療前25例が顆粒性白血球数検査を受けた。そのうち23例は正常範囲であり、2例は2.0×105/Lより低かった。
【0395】
治療グループの治療前85例がヘモグロビン量検査を受けた。そのうち1例は60g/Lより少なく、5例は60-79g/Lで、31例は80-109g/Lで、48例は>または=110g/Lであった。対照グループの治療前42例がヘモグロビン量検査を受けた。そのうち4例は60-79g/Lで、18例は80-109g/Lで、20例は>または=110g/Lであった。
【0396】
治療グループの治療前84例が血小板数検査を受けた。そのうち81例は正常範囲であり、3例は血小板数が10.0×105/L以下であった。対照グループの治療前42例が血小板数検査を受けた。そのうち38例は正常範囲であり、4例は血小板数が10.0×105/L以下であった。
【0397】
16 両グループの治療前の影像学検査状況
治療グループの治療前72例が胃カメラ検査を受けた。50例はX線バリウム粥または二重造影検査を受け、65例はB型超音波検査を受け、18例はCT検査を受けた。対照グループの治療前26例が胃カメラ検査を受けた。23例はX線バリウム粥または二重造影検査を受け、28例はB型超音波検査を受け、12例はCT検査を受けた。
【0398】
上述の治療前比較可能性検査測定によれば、治療グループの治療前癌性疼痛程度は対照グループより重かったほかは、両グループの治療前性別、年齢、病気経過、既往治療状況、病理診断、癌病巣の部位、個数、大きさ、主要臨床症状、体徴、舌象等の比較において差異が顕著な有意性を示さなかった。このことは治療後の経過に影響を与える因子について、両グループ間に差異がないことを示す。
【0399】
三 治療効果の比較
1 治療効果の総合的比較
【表146】

【0400】
治療グループの完全緩解率は1.1%、部分緩解率は17.2%、安定率は72.4%、進展率は9.2%、総緩解率は18.3%であった。対照グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は2.4%、安定率は69.0%、進展率は28.6%、総緩解率は2.4%であった。両グループを比較すると、その差異には顕著な有意性がある。
【0401】
治療グループに1例の完全緩解者がいた。男性で、64歳、受け入れ試験前2年(1998年4月)の病理診断は胃癌(腺癌)で、直ちに胃の大部分の切除手術を行った。2000年3月、食後に閉塞感があり、それが次第にひどくなり、江蘇省常州市腫瘤医院で診察を受け、測定不能な病巣が発見された。病理診断では潰瘍壊死組織中に少量の癌細胞(腺癌の可能性あり)が見られるとされた。そこで化学療法の基礎の上に本発明の漢方薬組成物による治療を加えた試験方式により治療を行い、治療後の病理検査は中度の活性胃炎があるとした。7ヵ月後再度病理検査を行ったところ、粘膜の炎症に変化していた。治療効果の判定は完全緩解であった。この例の患者は治療効果判定は確定的なものということはできず、「譲歩保守法」を採用して、治療効果を「安定」とした。再度両グループの臨床治療効果の比較を行った。結果を表23に示す。
【表147】

【0402】
上記表の結果によれば、この1例の治療効果を完全緩解とされた患者は「譲歩保守法」により「安定」とされ、再び両グループの治療効果を比較し、u=3.445、P=0.001とされた。差異には顕著な有意性がある。
【0403】
2 無転移胃癌の治療効果比較
【表148】

【0404】
治療グループの完全緩解率は1.6%、部分緩解率は16.1%、安定率は72.6%、進展率は9.7%、総緩解率は17.7%であった。対照グループの完全緩解率は0%、部分緩解率は3.7%、安定率は66.7%、進展率は29.6%、総緩解率は3.7%であった。両グループを比較すると、その差異には顕著な有意性がある。
【0405】
2 転移胃癌の治療効果比較
【表149】

【0406】
治療グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は20.0%、安定率は72.0%、進展率は8.0%、総緩解率は20.0%であった。対照グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は0.0%、安定率は72.0%、進展率は26.7%、総緩解率は0.0%であった。両グループを比較すると、その差異には顕著な有意性がある。
【0407】
4 追跡寿命、生存率の比較
【表150】

【表151】

【表152】

【0408】
両グループ治療1年半後の寿命、生存率の比較では、治療グループの1年生存率は32.83%、対照グループの1年生存率は24.39%であり、両グループの短期効果の比較では、その差異には顕著な有意性があるが、両グループの長期効果の比較では顕著な有意差がない。治療グループの治療後短期効果は単に化学療法を受けた者よりも優れている。
【0409】
5 無転移胃癌の治療後追跡寿命と生存率の比較
【表153】

【表154】

【0410】
両グループ治療1年半後の寿命、生存率の比較では、治療グループの1年生存率は31.27%、対照グループの1年生存率は33.33%であり、両グループの短期効果の比較では、その差異には顕著な有意性がない。両グループの長期効果の比較でも顕著な有意差がない。無転移胃癌の治療グループの治療後短期、長期効果とも対照グループと同様であった。
【0411】
6 転移胃癌の治療後追跡寿命と生存率の比較
【表155】

【表156】

【0412】
両グループ治療1年半後の寿命、生存率の比較では、治療グループの1年生存率は36.0%、対照グループの1年生存率は7.14%であり、両グループの短期効果の比較では、その差異には顕著な有意性がある。両グループの長期効果の比較でも顕著な有意差がある。転移胃癌の治療グループの治療後、短期、長期効果とも単なる化学療法グループより良好であった。
【0413】
7 両グループの治療後癌病巣の大きさについての治療効果の比較
【表157】

【表158】

【0414】
9 両グループの治療後の体重の比較
【表159】

【0415】
10 両グループの治療後における食欲量の比較
【表160】

【0416】
11 両グループの治療後における疲労改善程度の比較
【表161】

【0417】
12 両グループの治療後臨床症状改善程度の比較
【表162】

【0418】
両グループの治療後胃の膨満、食欲不振、口内苦味、寝汗、イライラと怒り易さ、癌性疼痛、吐き気と嘔吐の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性がある。
【0419】
両グループの治療後の口乾口渇、自然発汗、目眩、腹部膨満等の症状の改善程度を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。
【0420】
13 両グループの治療後臨床症状消失率の比較
【表163】

【表164】

【表165】

【0421】
14 両グループの治療後における白血球数の治療効果の比較
【表166】

【0422】
15 両グループの治療後における顆粒性白血球数の治療効果の比較
【表167】

【0423】
16 両グループの治療後ヘモグロビン量の治療効果の比較
【表168】

【0424】
両グループの治療後のヘモグロビン量の治療効果を比較すると、その差異には顕著な有意性がない。ただし、P値=0.054。これは臨界値に接近している。治療グループの治療後ヘモグロビン量は対照グループより高くなる傾向にある。
【0425】
17 両グループの治療後血小板数の治療効果の比較
【表169】

【0426】
18 両グループの治療後免疫機能の治療効果の比較
【表170】

【表171】

【表172】

【表173】

【表174】

【0427】
19 両グループの癌胚抗原(CEA)の治療前後の比較
【表175】

【0428】
20 両グループの出血時間の治療前後比較
【表176】

【表177】

【0429】
四 安全性の検査測定
治療前の検査結果では正常であるのに、治療後に異常が発生する者の安全性検査結果を綜合すると、下表のとおりになる。
【表178】

【0430】
五 不良事件の観察
【表179】

【0431】
両グループの治療過程中には一部の患者に脱毛、口腔潰瘍等疑わしい不良反応が発生する。各症状の発生率および両グループの統計学比較の結果によると、治療グループの黄疸発生率が対照グループより低い点を除き、その他の症状を比較すると、その差異には顕著な有意性がない(詳細は上の表に示される)。治療グループの合計25例に疑わしい不良反応(少なくとも1件の疑わしい不良反応症状を発生した患者)があり、合計して疑わしい不良反応の発生率は28.7%(25/87)であった。対照グループでは合計17例の疑わしい反応の発生(少なくとも1件の疑わしい不良反応症状を発生した患者)があり、合計の疑わしい不良反応の発生率は40.5%(17/42)であった。両グループをひかくすると、RR(相対危険度)は0.71で、P=0.182であり、差異に顕著な有意性がない。
【0432】
結論
本発明の実施例のための試験に合格した者は合計129例、うち治療グループが87例、対照グループが42例であった。西洋医学で胃癌と診断され、漢方医学で毒素性結滞証と弁証されたものである。外来患者は15例、入院患者は114例であった。
【0433】
比較可能性検査測定によると、治療グループの治療前の癌性疼痛の程度が対照グループより重かった以外は、両グループの治療前の性別、年齢、病気経過、既往治療状況、病理診断、主要臨床症状と体徴、舌象、癌病巣の部位、個数と大きさ、癌病巣の転移等を比較すると、差異には顕著な有意性がない。このことは予後に影響を与える主要因子が両グループ間に均衡性を有すること、および両グループが比較可能性を有することを示す。
【0434】
臨床の総合的治療効果検討の結果は次のとおりである。
【0435】
治療グループの完全緩解率は1.1%、部分緩解率は17.2%、安定率は72.4%、進展率は9.2%、総緩解率は2.4%で、対照グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は2.4%、安定率は69.0%、進展率は28.6%、総緩解率は2.4%である。両グループを比較すると、差異には顕著な有意性がある。
【0436】
無転移胃癌の治療効果検討の結果を比較すれば、治療グループの完全緩解率は1.6%、部分緩解率は16.1%、安定率は72.6%、進展率は9.7%、総緩解率は17.7%で、対照グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は3.7%、安定率は66.7%、進展率は29.6%、総緩解率は3.7%である。両グループを比較すると、差異には顕著な有意性がある。
【0437】
転移胃癌の治療効果検討の結果を比較すれば、治療グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は20.0%、安定率は72.0%、進展率は8.0%、総緩解率は20.0%で、対照グループの完全緩解率は0.0%、部分緩解率は0.0%、安定率は73.3%、進展率は26.7%、総緩解率は0.0%である。両グループを比較すると、差異には顕著な有意性がある。
【0438】
治療グループのうちの1例で「完全緩解」とされた患者は、その治療効果の判定についてなお完全に肯定できない点があるので、「譲歩保守法」を採用して、この完全緩解と判定された患者を「安定」とし、再度両グループの臨床治療効果を比較した結果、u=3.445、P=0.001となった。その差異については依然として顕著な有意性がある(詳細については表23に示される)。
【0439】
上述の結果は本発明の漢方薬剤が化学療法と結合して胃癌ないし毒素結滞証の治療に対して比較的良好な臨床治療効果を有し、化学療法により胃癌を治療するに当って一定の相乗効果を有し、かつ比較的良好な補助治療作用を有することを示す。
【0440】
寿命と腺損率の評価の結果は次のことを示す。
【0441】
即ち、両グループの治療後の追跡1年半において、治療グループの1年の生存率は32.83%、対照グループの生存率は24.39%であった。両グループの短期効果の比較では、差異に顕著な有意性がある。両グループの長期効果の比較では、顕著な有意差がない。
【0442】
両グループの治療後1年半の追跡において、無転移胃癌治療グループの1年の生存率は31.27%、対照グループの生存率は33.33%であった。両グループの短期効果の比較では顕著な有意差がなく、両グループの長期効果の比較でも顕著な有意差がない。
【0443】
両グループの治療後1年半の追跡において、転移胃癌治療グループの1年の生存率は36.0%で、対照グループの生存率は7.14%であった。両グループの短期効果の比較では、顕著な有意差がある。両グループの長期効果の比較でも、顕著な有意差がある。
【0444】
これらのことは、本発明の漢方薬剤が化学療法による胃癌の治療に対して補助の作用をすることは毒素結滞患者に対する短期効果が単なる化学療法グループに対する効果より優れており、長期効果は単に化学療法を受けるグループと大差がないが、転移胃癌患者に対する短期効果と長期効果はともに単に化学療法を受けた者より優れていることを示す。
【0445】
実態腫瘍の病巣の大きさについて評価した結果によると、次のとおりである。
【0446】
両グループの治療前後における癌病巣の大きさの差(差=治療後の癌病巣の大きさ-治療前の癌病巣の大きさ)を比較すると、治療グループの治療後癌病巣の縮小程度は明らかに対照グループより高い。治療グループ治療前後の癌病巣の大きさを比較すると、差異に顕著な有意性がある。治療後の癌病巣の大きさは治療前より明らかに縮小している。しかして、対照グループ治療前後の癌病巣の大きさでは、差異に顕著な有意性がない。これらのことから、本発明の漢方薬剤は化学療法による胃癌ないし毒素結滞患者の治療に対して補助的作用を行い、明らかに癌病巣を縮小するので、その結果は単なる化学療法グループに対する効果より優れていることを示す。
【0447】
主要症状の治療効果の検討結果から次のことが明らかになる。
【0448】
両グループの治療後、患者のKarnofsky評価は治療前より均しく明らかに増加しており、かつ治療グループのKarnofsky評価の増加幅が対照グループより大きかった。両グループの治療後、患者の疲労症状は治療前より均しく明らかに改善された。また、治療グループの疲労症状の改善程度は対照グループより大きかった。
【0449】
両グループの治療後、患者の食欲量は明らかに増加し、胃の膨満、食欲不振、口乾口渇、口内苦味、自然発汗、寝汗、イライラと怒り易さ、目眩、癌性疼痛、吐き気と嘔吐、腹部膨満等の症状は全て改善しまたは比較的高い消失率を示した。そのうちにおいて、治療グループの胃の膨満、食欲不振、口内苦味、寝汗、イライラと怒り易さ、癌性疼痛、吐き気と嘔吐の症状の改善程度は対照グループより高かった。両グループのその他の臨床症状の改善程度と消失率を比較すると、差異には均しく顕著な有意性がない。
【0450】
上述の結果によると、本発明の漢方薬剤は化学療法による胃癌ないし毒素結滞患者の治療に対して補助的作用を行い、患者の生存質量を高め、患者の臨床症状を改善し、良好な治療補助作用を有することがわかる。
【0451】
実験室の指標治療効果の検討結果によると、次のことが示される。
【0452】
両グループの治療後の白血球数、顆粒性白血球数、血小板数は治療前より均しく明らかに増加しており、両グループの治療後ヘモグロビン量は治療前より均しく明らかに増加しており、また治療グループの治療後のヘモグロビン量は対照グループより高い増加傾向にあった(P値=0.054で、臨界値に接近している)。
【0453】
治療グループの治療後のCD3、CD4、CD4/CD8比の値、NK細胞は均しく治療前より明らかに高くなっている(P<0.05)。また、治療グループのCD3、CD4、NK細胞の治療前後の差は対照グループより高い(P<0.05)。単なる化学療法グループの治療前後には明確な変化がない。
【0454】
上述の結果によると、本発明の漢方薬剤は化学療法による胃癌の治療に対する補助的作用により患者の細胞免疫機能を高める作用を有し、化学療法による腫瘍細胞の抑制を補助することができる。
【0455】
安全性の指標検査測定の結果:
両グループの治療後同様に現れた事実は、患者のヘモグロビン量が低下し、白血球数が減少し、ビリルビンが増加し、ALPが増加し、ALTが増加し、BUNが増加する等である。(具体的な発生率は「安全性検査測定」の結果の該当部分に示す。)治療グループの治療後血流尿素窒素(BUN)が増加し、大便日常検査で発見される粘液の発生率が対照グループより低い点(P<0.05)を除き、その他の検査項目の発生率および両グループの統計学的比較の結果では、差異に顕著な有意性がない。治療グループは化学療法の基礎の上に本発明の漢方薬剤を用いるのに対し、対照グループは単に化学療法によるのみであり、また化学療法の治療過程中でも上述の指標変化が生じ得ることを示す資料があるので、上述の安全性検査測定結果は、まだ本発明の漢方薬剤が胃癌患者の血液系統や心臓、肝臓、腎臓の機能に有害であることを表明するものではない。単に本発明の漢方薬剤を用いて原発性肝癌、胃癌を治療する臨床試験と安全性検査測定の結果を結合して綜合的分析を行う必要がある(資料23-1)。
【0456】
不良事件の観察結果:
両グループの治療過程中、それぞれ若干の患者に脱毛、口腔潰瘍、皮膚炎症、無寝苦しさや呼吸促進、黄疸、過敏症等の疑わしい不良反応(具体的発生例数や発生率については、表54の観察結果に示される。)、各症状の発生率および両グループの統計学的比較の結果によると、治療グループの黄疸発生率が対照グループより低い点を除き、その他の症状の比較では、差異に顕著な有意性がない。治療グループでは合計25例の不良反応が発生した(1件以上の疑わしい不良反応症状の現れた患者と各症状の発生例数は表54に示される)。疑わしい不良反応の発生率は合計28.7%(25/87)である。対照グループのうち合計17例に疑わしい不良反応症状が発生した(1件以上の疑わしい不良反応症状の現れた患者と各症状の発生例数は表54に示される)。疑わしい不良反応の発生率は合計40.5%(17/42)である。両グループを比較すると、RR(相対的危険度)=0.71、P=0.182dで、差異に顕著な有意性がない。
【0457】
上述するところを綜合すると、本件の129例のランダム対照試験の結果によると、本発明の漢方薬剤は胃癌ないし毒素結滞証患者の治療において科学療法と併用して良好な臨床効果を与え、良好な相乗効果を生じ、明らかに患者の生存質量を高め、患者の臨床症状を間然し、患者の細胞免疫機能を高め、胃癌に適用でき、漢方医学により毒素結滞証と弁証される患者に対する化学療法の補助治療として有効であり、臨床に応用して安全である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍漢方薬剤であり、ダイフウシ1重量部、モクベツシ0.8-1.4重量部、センザンコウ0.5-1.1重量部、ダイオウ0.8-1.3重量部、カンゾウ1-1.5重量部より調製されるものである漢方薬剤。
【請求項2】
請求項1の漢方薬剤であって、各原料薬材の用量をそれぞれ1部とすることを特徴とする薬剤。
【請求項3】
請求項1の漢方薬剤の調製方法であり、
1) 各原料薬材を軽量し、中程度の粉末に粉砕し、
2) 原料薬材の1:2.5〜1:3.5の重量体積比で62%エチルアルコールを加えて充分浸漬し、
3) 充分加熱還流し、
4) 濾過し、得られた濾液を活性成分溶液とする
工程を含む方法。
【請求項4】
請求項3の薬剤調製方法であって、前記工程中の第2工程における重量体積比を1:3とすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3の薬剤調製方法であって、前記工程中の第4工程において、濾過後得られる残渣中に、重量体積比を1:0.8〜1:1.5として62%エチルアルコールを加え、再び充分に
加熱還流し、濾過後得られた濾液液を活性成分溶液とする方法。
【請求項6】
請求項5の薬剤調製方法であって、同項の工程における重量体積比を1:1とすることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項5の薬剤調製方法であって、同項の工程により得られる濾液と請求項3の工程において得られた濾液とあわせて一つの活性成分溶液とする方法。
【請求項8】
請求項3または5の薬剤調製方法であって、その加熱還流の時間を0.5-1時間とする方法。
【請求項9】
請求項3ないし7の薬剤調製方法であって、前記活性成分溶液をエチルアルコールと水で調節し、エチルアルコールの体積百分比を6.0-8.0%とし、pH値を4.0-5.0に調節することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9の薬剤調製方法であって、薬剤の相対的密度を1.02-1.08とすることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項3ないし7の薬剤調製方法であって、前記活性成分溶液を乾燥した後、顆粒状とし、中空のカプセルに充填し、カプセル製品とする方法。
【請求項12】
請求項3ないし7の薬剤調製方法であって、前記活性成分溶液を乾燥した後、扁平円形体状とし、錠剤とする方法。
【請求項13】
請求項1または2の薬剤を癌症の治療に用いる薬物中に使用する方法。
【請求項14】
請求項13の薬剤使用方法であって、前記癌症の治療に用いる薬物中に使用する以外に、消化管腫瘍、肺癌、子宮頸癌の治療に用いる薬物中に使用する方法。
【請求項15】
請求項14の薬剤使用方法であって、前記消化管腫瘍の治療に用いる薬物は胃癌、腸癌および肝癌の治療に用いる薬物である方法。

【公表番号】特表2007−513892(P2007−513892A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543348(P2006−543348)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/CN2004/001367
【国際公開番号】WO2005/056029
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506200681)
【Fターム(参考)】