説明

腫瘍壊死因子結合タンパク質の液体製剤

本発明は、TNF結合タンパク質、バッファー、及び等張化剤を含んで成る、TNF結合タンパク質の安定で医薬的に受容可能な水性製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の安定なTNF結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
強力なサイトカインである、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)は、生物応答の広範なスペクトルを誘発し、これは細胞表面レセプターに結合することにより媒介される。Stauber et al."Human tumor necrosis factor-alpha receptor: purification by immunoaffinity chromatography and initial characterization" (J. Biol. Chem. 263: 19098-19104,1988)は、ヒトTNF−アルファのレセプターをヒト組織球リンパ腫細胞株から単離した。Hohmann et al."Two different cell types have different major receptors for human tumor necrosis factor (TNF-alpha)"(J. Biol. Chem. 264: 14927-14934, 1989) は、TNF−アルファの主用なレセプターとして役立つ2つの異なるタンパク質が存在し、1つは骨髄細胞に結合し、1つは上皮細胞に結合することを結論付けた。
【0003】
モノクローナル抗体を使用して、Brockhaus et al."Identification of two types of tumor necrosis factor receptors on human cell lines by monoclonal antibodies" (Proc. Nat. Acad. Sci. 87: 3127-3131, 1990) は、ともにTNF−アルファ及びTNF−ベータと特異的に且つ高い親和性で結合する、2つの異なるTNF結合タンパク質の証拠を得た。Gray et al."Cloning of human tumor necrosis factor (TNF) receptor cDNA and expression of recombinant soluble TNF-binding protein" (Proc. Nat. Acad. Sci. 87: 7380-7384, 1990) は、当該レセプターの1つのためのcDNAを単離した。彼らは、それが171残基の細胞外ドメインと221残基の細胞質ドメインに分割される455のアミノ酸のタンパク質をコードすることを発見した。Aggarwal et al."Characterization of receptors for human tumour necrosis factor and their regulation by gamma- interferon" (Nature 318: 665-667, 1985) は、腫瘍壊死因子アルファ及びベータが、共通の細胞表面のレセプターに結合することにより、細胞の機能におけるこれらの影響を開始することを示した。TNFA及びTNFBレセプターは異なる大きさを有し、そして、異なる細胞株において別々に発現される(Hohmann et al., 1989; and Engelmann et al."Two tumor necrosis factor-binding proteins purified from human urine: evidence for immunological cross-reactivity with cell surface tumor necrosis factor receptors." (J. Biol. Chem. 265: 1531- 1536, 1990) を参照のこと)。
【0004】
人によってはTNFR55とも称されるTNF−α−Rは、2つのレセプターの小さい方である。両レセプターのcDNAはクローン化され、そしてこれらの核酸配列が決定されている(Loetscher et al."Molecular cloning and expression of the human 55 kd tumor necrosis factor receptor." (Cell 61 : 351-359, 1990) ; Nophar et al."Soluble forms of tumor necrosis factor receptors (TNF-Rs): the cDNA for the type I TNF-R, cloned using amino acid sequence data of its soluble form, encodes both the cell surface and a soluble form of the receptor" (EMBO J. 9: 3269-3278,1990) ; Schall et al."Molecular cloning and expression of a receptor for human tumor necrosis factor." (Cell 61: 361- 370, 1990) ; Smith et al."A receptor for tumor necrosis factor defines an unusual family of cellular and viral proteins." (Science 248: 1019-1023,1990)を参照のこと)。
【0005】
タンパク質は、いくつかの分解経路、特に、アミド分解、凝集、ペプチド主鎖のクリッピング及び酸化を行うことが知られている。これらの反応の多くは、タンパク質から水を除去することで有意に遅くすることができる。
【0006】
しかしながら、薬物タンパク質のための水性製剤の開発は、再構成のエラーを除くのに有利であり、これにより正確な投薬、並びに臨床的な生成物の使用の単純化を増大し、これにより患者のコンプライアンスを増大する。従って、本発明の目的は、分解生成物の受容可能な制御を供し、活発な撹拌(凝集を誘導する)に安定であり、そして微生物の混入に耐性である(「複数回使用」又は「複数回投与」の包装を許容する)TNF結合タンパク質の水性製剤を供することである。
【発明の開示】
【0007】
発明の説明
従って、本発明の主な目的は、安定で医薬的に受容可能なヒトTNF結合タンパク質、バッファー、及び等張化剤を含んで成るTNF結合タンパク質の水性製剤である。
【0008】
上記溶液の好ましいpHは、バッファーを使用して、6〜7に保持される。当該バッファーは、このようなpHを保つことが可能ないずれかの医薬的に受容可能なバッファーでよい。好ましくはリン酸バッファーである。
【0009】
上記等張化剤は、いずれかの中性の塩又は糖質を含むいずれかの医薬的に受容可能な薬剤でよい。例えば、塩化ナトリウム、又はマンニトールであってよい。
【0010】
微生物の成長を遅延させるために上記製剤中に防腐剤を含んでもよく、これにより、TNF結合タンパク質の「複数回使用」又は「複数回投与」の包装を許容する。防腐剤は、フェノール、ベンジルアルコール、メタ−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンゼトニウムを含む。好ましい防腐剤は、m−クレゾール及びベンジルアルコールを含む。
【0011】
また、本発明の液体製剤は、必要ならば、フリーズドライ又は凍結乾燥させることができる。
【0012】
本発明に従い、「TNF結合タンパク質」はTNF−アルファ若しくはTNF−ベータ、及び/又はTNFレセプターファミリーに属するタンパク質の細胞外可溶性フラグメントの全て又は一部中に含んで成るタンパク質と親和性を有するいずれかのタンパク質を意味する。
【0013】
TNFレセプターのメンバーのいくつかの例を以下に挙げる:
・腫瘍壊死因子レセプター1(TNFR1)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A(TNFRSF1A)、又は腫瘍壊死因子−アルファレセプター(TNFAR)、又はTNFR55−KD、又はTNFR60−KDとも呼ばれる(OMIM*191190 http ://www. ncbi. nlm. nih. gov/entrez/query. fcgi? db=OMIMにおける説明を参照のこと)。
・腫瘍壊死因子レセプター2(TNFR2)、また、腫瘍壊死因子サブファミリー、メンバー1B(TNFRSF1B)、又は腫瘍壊死因子−ベータレセプター(TNFBR)、又はTNFR75−KD、又はTNFR80−KDとも呼ばれる(OMIM*191191における説明を参照のこと);
・OX40抗原(OX40)、また、腫瘍壊死因子スーパーファミリー、メンバー4(TNFRSF4)、又はTax−転写活性化グリコプロテイン1レセプター(TXGP1L)、又はリンパ活性化抗原ACT35(ACT35)、又はCD134とも呼ばれる(OMIM*600315における説明を参照のこと);
・CD40Lレセプター(CD40)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー5(TNFRSF5)、又はB細胞表面抗原CD40、又はCDw40、又はBp50とも呼ばれる(Swiss−Prot Entry No.P25942における説明を参照のこと);
・FASLレセプター(FAS)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー6(TNFRSF6)、又はアポトーシス−媒介表面抗原FAS、又はApo−1抗原、又はCD95とも呼ばれる(Swiss−Prot Entry No.P25445における説明を参照のこと);
・デコイレセプター3(DcR3)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー6B(TNFRSF6B)、又はFASリガンドのためのデコイレセプター、又はM68とも呼ばれる(Swiss−Prot Entry No.095407における説明を参照のこと);
・CD27抗原(CD27)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー7(TNFRSF7)、又はT細胞活性化抗原S152(S152)とも呼ばれる(OMIM*602250における説明を参照のこと);
・リンパ活性化抗原CD30(CD30)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー8(TNFRSF8)とも呼ばれる(OMM*153243における説明を参照のこと);
・リンパ球活性化誘導物質(ILA)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー9(TNFRSF9)、又はCD137とも呼ばれる(OMIM*602250における説明を参照のこと);
・デスレセプター4(DR4)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー10A(TNFRSF10A)、又はTNF−関連アポトーシス−誘導リガンドレセプター1(TRAILR1)、又はAP02とも呼ばれる(OMIM*603611における説明を参照のこと);
・デスレセプター5(DR5)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー10B(TNFRSF10B)、又はTNF−関連アポトーシス−誘導リガンドレセプター2(TRAILR2)、又はキラー/DR5、又はTRICK2とも呼ばれる(seOMIM*603612における説明を参照のこと);
・デコイレセプター1(DCR1)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー10C(TNFRSF10C)、又はTNF−関連アポトーシス−誘導リガンドレセプター3(TRAILR3)、又は細胞内ドメインを有さないTRAILレセプター(TRID)とも呼ばれる(OMIM*603613における説明を参照のこと);
・デコイレセプター2(DCR2)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー10D(TNFRSF10D)、又はTNF−関連アポトーシス誘導リガンドレセプター4(TRAILS)、又は切頭デスドメインを伴うTRAILレセプター(TRUNDD)とも呼ばれる(OMIM*603014における説明を参照のこと);
・NF−KAPPA−Bのレセプター活性化因子(RANK)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー11A(TNFRSF11A)、又は破骨細胞分化因子レセプター(ODFR)、又はPDB2、又はTRANCERとも呼ばれる(OMIM*603499における説明を参照のこと);
オステオプロテジェリン(OPG)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー11B(TNFRSF11B)、又は破骨細胞形成阻害因子(OCIF)とも呼ばれる(OMIM*602643における説明を参照のこと);
・デスレセプター3(DR3)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー12(TNFRSF12)、又はAP03、又はデスのリンパ球−付随レセプター(LARD)とも呼ばれる(OMIM*603366における説明を参照のこと);
・膜貫通性活性化因子且つCAML相互作用子(TACI)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー13B(TNFRSF13B)とも呼ばれる(OMIM*604907における説明を参照のこと);
・BAFFレセプター(BAFFR)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー13C(TNFRSF13C)、又はB細胞−活性化因子レセプターとも呼ばれる(OMIM*606269における説明を参照のこと);
・ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー14(TNFRSF14)、又はヘルペスウイルスエントリーメディエーターA(HVEA)、又はTR2とも呼ばれる(OMIM*602746における説明を参照のこと);
・神経成長因子レセプター(NGFR)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー16(TNFRSF16)、又はp75(NTR)とも呼ばれる(OMIM*162010における説明を参照のこと);
・B細胞成熟化因子(BCMA)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー17(TNFRSF17)、又はBCMとも呼ばれる(OMIM*109545における説明を参照のこと);
・グルココルチコイド−誘導TNFR−関連遺伝子(GITR)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー18(TNFRSF18)、又は活性化−誘導性TNFRファミリーメンバー(AITR)とも呼ばれる(OMIM*603905における説明を参照のこと);
・TRADE、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー19(TNFRSF19)、又は毒性且つJNKインデューサー、又はTROY若しくはTAJとも呼ばれる(Swiss−Prot Entry No.Q9NS68における説明を参照のこと);
・X−結合エクトジプラジン(Ectodyplasin)−A2レセプター(XEDAR)、また、EDA−A2レセプターとも呼ばれる(Swiss−Prot Entry No.Q9HAV5における説明を参照のこと)及び;
・デスレセプター6(DR6)、また、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー21(TNFRSF21)とも呼ばれる(OMIM*605732における説明を参照のこと)。
【0014】
本発明の好ましい態様に従い、TNF結合タンパク質は、組み換えh−TBP−1(Nophar等の20〜218のアミノ酸フラグメントに対応するアミノ酸配列を含んで成る、ヒトTNFレセプター1の組み換え、細胞外、可溶性フラグメント)、ここでその国際一般名(INN)は「オネルセプト(onercept)」である、及び組み換えh−TBP−2(Smith等の23〜257に対応するアミノ酸配列を含んで成るTNFレセプター2の組み換え、細胞外、可溶性フラグメント)の間で選択される。最も好ましくは、hTBP−1(r−hTBP−1)である。全ての他のタンパク質のために、当該可溶な、細胞外ドメインは、対応するSwiss−Prot entryに示される。
【0015】
安定な液体製剤を発見する試みにおいて、pH/バッファー、イオン強度、及び賦形剤の影響が評価された。実験の報告に従う説明はTBP−1(オネルセプト(onercept))で行った。
【実施例】
【0016】
材料
オネルセプト(Onercept)原体(Istituto di Ricerca Cesare Serono, Ardea, ITより提供)
アセトニトリル(Merck)
氷酢酸(Merck)
硫酸アンモニウム(Merck)
クエン酸(Merck)
D(+)−グルコース一水和物(Merck)
D(+)−マンニトール(Merck)
オルトリン酸(Merck)
サッカロース(Merck)
ナトリウムアジド(Merck)
塩化ナトリウム(Merck)
水酸化ナトリウム(Merck)
硫酸ナトリウム無水物(Merck)
リン酸二水素ナトリウム一水和物(Merck)
リン酸水素二ナトリウム二水和物(Merck)
トリフルオロ酢酸(Baker)
【0017】
機器
HPLCシステム(Waters)
目盛り付きピペット(Gilson)
ステンレススチールホルダー(Sartorius)
pHメーター(mod. 713, Metrohm)
浸透圧計(Osmomat 030-D, Gonotec)
メンブランフィルター 0.45μm及び0.22μm(cod. HVLP04700 and GWVP04700, Millipore)
カラム TSK ゲル G2000 SWXL(cod. 08540, Toso Haas)
カラム TSK ゲル フェニル−5PW ガラス 0.8 IDx7.5cm(cod 08804, TosoHaas)
【0018】
主要な包装材料
ホウケイ酸I型ガラスバイアル(DIN 2R, Nuova Ompi)
フルロテックラバーストッパー(S2F452, D777-1, B2-40, Daikyo Seiko)
ホウケイ酸I型ガラスシリンジ(ニードル及びニードルシールド−SCFが付随したHYPAK SCFシリンジバレル 1.0mL long W7974 grey−Becton Dickinson)
フルロテックストッパー、1mL−1BG B2−40c FLT 4023/50 gr(Daykio)
ブルモブチルストッパー(HYPAK SCF プランジャーストッパー−BSCF 1.0mLL 4023/50 grey(Becton Dickinson)
【0019】
分析試験及び方法
以下の分析試験及び方法が使用された:
・pH(電位差測定)
・外観(色、透明性/乳光、粒子)(視覚的検査)
・SE−HPLCによる純度及びアッセイ(操作インストラクションTF08/01)
・HI−HPLCによる純度(操作インストラクションTF09/01)
・重量モル浸透圧濃度(凝固点降下測定)、ゼロ時間でのみ
・バイオアッセイ
【0020】
まず第一に、pH/バッファー、イオン強度、及び賦形剤の影響を評価した。ストッパーとの適合性(コート化及び非コート化)も同様に評価した。最良の条件を選択した後、前充填したシリンジ中で、以下の3つの強度を調査した:
・10mg/mL
・50mg/mL
・60mg/mL
【0021】
+5±3℃、+25±2℃、及び+40±2℃における保管後3ヶ月まで安定性の実験を行い、そして以下の試験を遂行した:
・pH
・外観(視覚的検査による色、透明性/乳光、粒子)
・アッセイ(SE−HPLCによる)
・純度(SE−HPLCによる)
・純度(HI−HPLCによる)
・重量モル浸透圧濃度(ゼロ時間でのみ)
・バイオアッセイ
【0022】
pHの影響
pH/バッファーの影響を試験するために、5mg/ml及び50mg/mlにおけるオネルセプト(onercept)の溶液を、以下の異なるpHにおける10mM中の当該原体の希釈により調製した:
1.pH4、5、及び6における酢酸ナトリウム
2.pH4、5、6及び7におけるクエン酸ナトリウム
3.pH、5、6、7及び8におけるリン酸ナトリウム
上記溶液(約20ml/バッチ)を3mlのガラスバイアル中に充填し(充填量1ml)、キャップし、栓をし、そして毎週、一ヶ月間分析するために+5±3℃、+25±2℃、及び+40±2℃において保管した。
結果は図1、2及び3のグラフ及び表1により示される:
【0023】
表1− 10mMのバッファー中における5mg/ml及び50mg/mlの量で処方されたオネルセプト(onercept)(+40±2℃でのSE−HPLCによる純度の減少)
【表1】

【0024】
上記表及びグラフにより示されたとおり、pH依存性は、5mg/ml及び50mg/mlの両方で観察される:純度%の微量な減少は両強度でのpH6.0及び7.0において観察された。また、pH4.0でのクエン酸及び酢酸バッファーは集計においてポジティブな影響を有し、一方リン酸バッファーにおけるpH8.0では速い分解が観察された。
【0025】
+40±2℃での一ヶ月の保管後、HI−HPLCによる酸化も、pH若しくは外観の変化も観察されなかった
【0026】
イオン強度の影響
多様なイオン強度の影響を試験するために、5mg/ml及び50mg/mlのオネルセプト(onercept)の溶液を、それぞれpH6.0、6.5及び7.0で3つの異なるモル濃度においてリン酸バッファー中で調製した(10mM、50mM、及び100mM)。当該溶液(約20mL/バッチ)を3mLのガラスバイアル中に充填し(充填容量1ml)、キャップし、栓をし、そして毎週、一ヶ月間分析するために+5±3℃、+25±2℃、及び+40±2℃で保管した。
【0027】
結果は図4及び5のグラフ及び表2により示される:
表2− 異なるイオン強度における5mg/ml及び50mg/mlの量で処方されたオネルセプト(onercept)(+40±2℃でのSE−HPLCによる純度の減少)
【表2】

【0028】
グラフ及び上記表により示されるとおり、集計の範囲は、バッファー濃度により影響されない:pH7.0は、各々のバッファー強度において純度%におけるネガティブな影響を有し、一方純度における微小な減少がpH6.0及び6.5において共に観察された。
+40±2℃での一ヶ月の保管後、HI−HPLCによる酸化も、pH又は外観の変化も観察されなかった。
【0029】
他の賦形剤(安定化剤)の影響
多様な賦形剤の影響を試験するために、5mg/ml及び50mg/mlのオネルセプト(onercept)の溶液を、pH6.0、及び6.5で40mMのリン酸バッファー中で調製し、塩化ナトリウム、マンニトール、グルコース及びサッカロースで等張性をもたらした。当該溶液(約20mL/バッチ)を3mLのガラスバイアル中に充填し(充填容量1ml)、キャップし、栓をし、そして毎週、一ヶ月間分析するために+5±3℃、+25±2℃、及び+40±2℃で保管した。
【0030】
結果は図6及び7のグラフ及び表3により示されるとおりである:
表3− 賦形剤を伴う5mg/ml及び50mg/mlの量で処方されたオネルセプト(onercept)(+40±2℃でのSE−HPLCによる純度の減少)
【表3】

【0031】
グラフ及び上記表により示されるとおり、塩化ナトリウム及びマンニトールは、等張化剤として、同様な行動を有した。結果として、原体溶液中にすでに存在していた塩化ナトリウムが選択された。更に、+40±2℃での一ヶ月の保管後にpHシフトは起こらず、一方、安定化剤としてグルコース及びサッカロースを含むオネルセプト(onercep)薬剤のHI−HPLCにより、クロマトグラフのプロフィールに変化したパターンが観察された。
【0032】
これらすべての結果から、最も安定な液体製剤が、通常安定化剤として使用されるこれらの賦形剤であるという驚くべき結論となる。従って、最も安定な製剤は、活性物質を希釈するための適当なバッファー及び等張化剤のみを含むこれらのものである。
【0033】
このような条件において、良好な安定結果のために適用できるpH範囲は、6.0〜7、好ましくは6〜6.5である。等張性は、適切な量の塩化ナトリウム又はマンニトール、好ましくは塩化ナトリウムの添加により得ることができる。
【0034】
更に、類似した実験は、170mg/mlまで、TBP−1並びにTBP−2の強度で実質的に同じ結果を確認した。
【0035】
医薬生成物の例
材料
r−hTBP−1原体;塩化ナトリウム(Merck);リン酸水素二ナトリウム二水和物(Merck);リン酸二水素ナトリウム一水和物(Merck);オルトリン酸85%(Merck);WFI。
容器/栓
主用な容器は、ステンレススチールニードル及びラバープランジャーを有するガラスシリンジであり、以下から成る:
【0036】
シリンジ
説明:
SCF 1.0 mL long W7974 grey(Becton Dickinson)
材料、組成物:
シリンジ:ホウケイ酸ガラスI型
ニードル:スチール
潤滑剤:DC360、シリコンオイル−ジメチコン
ニードルシールド:エラストマー
【0037】
プランジャーストッパー
説明:
HYPAK SCFプランジャーストッパー;BSCF 1.0 mLL 4023/50 grey(Becton Dickinson)
材料、組成物:
エラストマー:ブロモブチル、不活性ミネラル、特殊治療系潤滑剤:DC360、シリコンオイル−ジメチコン
【0038】
0.1Mリン酸ナトリウムバッファー中、pH=6.5;塩化ナトリウム0.025M
のr−hTBP−1溶液の調製の例
A)14.3mg/mLのr−hTBP−1溶液
1Lの最終生成物のバッチの調製のために、以下の量が使用される:
r−hTBP−1溶液 14.3g
塩化ナトリウム 1.46g
リン酸二ナトリウム二水和物 10.5g
リン酸二水素ナトリウム一水和物 5.68g
B)71.4mg/mLのr−hTBP−1溶液
1Lの最終生成物のバッチの調製のために、以下の量が使用される:
r−hTBP−1溶液 71.4g
塩化ナトリウム 1.46g
リン酸二ナトリウム二水和物 10.5g
リン酸二水素ナトリウム一水和物 5.68g
C)142.9mg/mLのr−hTBP−1溶液
1Lの最終生成物のバッチの調製のために、以下の量が使用される:
r−hTBP−1溶液 142.9g
塩化ナトリウム 1.46g
リン酸二ナトリウム二水和物 10.5g
リン酸二水素ナトリウム一水和物 5.68g
【0039】
調製方法
・r−hTBP−1溶液を含む液体原体を凍結乾燥し、そして生じた粉末を滴定するために収集する。
・必要量の塩化ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物及びリン酸二水素ナトリウム一水和物を約800gのWFIに溶解させる。これらの量を、凍結乾燥原体から生じる塩の寄与に注意しながら計算する。
・当該pHをチェックし、希釈した(1:10)オルトリン酸85%で6.5±0.2の値に調整する。
・必要量の凍結乾燥原体を撹拌しながら非常にゆっくりと添加し、そして最終重量(溶液の最終密度を考慮して計算する)とするためにWFIを添加する。当該pHをチェックし、そして、配合中の多様な工程において、希釈したオルトリン酸でpH6.5±0.2に調整する。
・1.0atm窒素圧下において、r−hTBP−1溶液を45μmのメンブランフィルターを通して最初に前ろ過し、続いて、0.22μmメンブランフィルター(DURAPORE)で無菌ろ過する(14.3mg/mLの溶液は前ろ過しない)。当該無菌溶液をガラスフラスコに収集する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
(原文記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNF結合タンパク質、バッファー、及び等張化剤を含んで成る、TNF結合タンパク質の安定で医薬的に受容可能な水性製剤。
【請求項2】
上記バッファーがリン酸バッファーである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
上記バッファーがpH6〜7を維持する、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項4】
上記等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項5】
上記等張化剤がマンニトールである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項6】
上記TNF結合タンパク質がTBP−1である、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
上記TNF結合タンパク質がTBP−2である、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
上記TNF結合タンパク質の濃度が5〜170mg/mlである、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
上記バッファーの濃度が5〜150mMである、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
上記等張化剤の濃度が5〜50mMである、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
TBP−1、pHが6.5の0.1Mのリン酸ナトリウムバッファー、及び0.025Mの塩化ナトリウムを含んで成る、上記請求項のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
TNF結合タンパク質を賦形剤溶液で希釈することを含んで成る、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体医薬製剤の調製方法。
【請求項13】
使用前の保管に適当な容器中で無菌状態において密封的に塞がれた、請求項1〜11のいずれか一項に記載の液体医薬製剤の提供形態。

【公表番号】特表2006−519210(P2006−519210A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502021(P2006−502021)
【出願日】平成16年2月11日(2004.2.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050118
【国際公開番号】WO2004/075918
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】