腫瘍形成を診断するための方法及びキット
血液、血奬、血清、唾液、尿、及び他の生物液中のGP88濃度を測定することによる腫瘍形成診断方法及びキット。該方法及びキットは、1ミリリットルあたり約0.1〜10ナノグラムの低さの濃度で生物液中のGP88を検出し、患者の血清又は他の生物液中のGP88濃度を測定することによって、患者が腫瘍形成状態を有するか、患者が抗腫瘍形成治療に反応性である可能性が高いか、治療した患者が抗腫瘍形成治療に反応するかの判定に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、現在は放棄されている1997年5月23日に出願された米国特許出願第08/863,079号の一部継続出願である1997年12月16日に出願された米国出願番08/991,862号の分割出願(現在、米国特許第6,309,826号)である1999年12月8日に出願された米国出願番号09/456,886号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、細胞生物学、生理学、及び薬剤に関し、88kDaの糖タンパク質成長因子(「GP88」)並びにGP88の発現及び生物活性に影響を及ぼす組成物及び方法に関する。本発明は、癌を含む疾患の診断及び治療に有用なキット製品、組成物、及び方法にも関する。
【0003】
参照
いくつかの公表物を括弧内のアラビア数字によって本明細書中で参照する。特許請求の範囲の直前の本明細書の最後にこれらの参照の全ての引用を見ることができる。
【0004】
背景技術
多細胞生物における細胞の増殖及び分化は、高度に調節されたプロセスを受ける。癌細胞を区別する特徴はこのプロセスに対する制御が無いことであって、増殖及び分化が調節されなくなり、結果として制御されない増殖が生じる。正常細胞及び腫瘍細胞の間のこの違いをより理解することに対して多大な研究努力が向けられてきた。焦点が当てられている研究の一領域は成長因子であり、より具体的にはオートクリン増殖刺激である。
【0005】
成長因子は、増殖、分化、移入、及び遺伝子発現に関するメッセージを細胞に運ぶポリペプチドである。典型的には、成長因子はある細胞中で産生され、別の細胞に対して増殖を刺激するように作用にする。しかしながら、培養物中のある種の悪性細胞では、オートクリン増殖機構により大きくあるいは完全に依存していることが実証される。このオートクリン挙動が見られる悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生調節を回避し、したがってその増殖が調節されない。
【0006】
オートクリン増殖制御の研究によって、細胞増殖機構の理解が進み、癌の診断及び治療における重要な発展がもたらされる。このような目的に対して、インスリン様成長因子(「IGF1」及び「IGF2」)、ガストリン放出ペプチド(「GRP」)、形質転換成長因子アルファ及びベータ(「TGF−a」及び「TGF−b」)、及び上皮成長因子(「EGF」)を含む多数の成長因子が研究されている。
【0007】
本発明は、最近発見された成長因子に関する。この成長因子は、腫瘍形成能の高い(highly tumorigenic)「PC細胞」(奇形腫由来の脂肪生成細胞系1246から単離されたインスリン非依存性変異体)の培地中に最初に発見された。この成長因子を本明細書中では「GP88」と称する。GP88は精製され、構造的に特性決定がなされている。GP88のアミノ酸配列決定により、GP88はマウスグラヌリン(granulin)/エピセリン(epithelin)前駆体とのアミノ酸配列の類似性を有していることが示される。
【0008】
グラヌリン/エピセリン(「grn/epi」)は6kDaのポリペプチドであり、二重システインに富むポリペプチド(double cysteine rich polypeptide)の新しいファミリーに属する。特許文献1(Shoyab et al.)は、6kDaのエピセリン、具体的にはエピセリン1及びエピセリン2に関する。Shoyabによれば、両方のエピセリンは共通の63.5kDaの前駆体によってコードされており、該前駆体は、合成されると直ぐ、生物試料中に見出される天然産物のみが6kDaの形態となるようにより小さな形態へとプロセシングされる。
【0009】
Shoyabらの教示に反して、本発明者らの研究室により、前駆体は合成されたら直ぐにプロセシングされることは常ではないことが実証された。本発明者によって一部なされた研究によって、前駆体(すなわち、GP88)が、実は、Nへ結合した20kDaの炭水化物部分を有する88kDaの糖タンパク質として分泌されることが実証された。GP88のN末端配列の分析によって、GP88はgrn/epi前駆体のアミノ酸17で始まることが示され、前駆体cDNAから推定されるタンパク質配列由来の最初の17個のアミノ酸は膜への局在化又は分泌の標的化に適合する(compatible)シグナルペプチドに対応することが実証されている。さらにShoyabの教示とは対照的に、GP88は生物活性であり、増殖促進活性、具体的には産生細胞のオートクリン成長因子としての増殖促進活性を有する。
【0010】
癌の診断では、腫瘍形成が疑われる組織の生検のサンプリング、腫瘍マーカーが存在するかを決定するための組織試料の試験、及び組織試料が腫瘍形成性であるかの決定がしばしば必要となる。生検手順は、組織の位置及び患者の状態に拠っては危険性を有し、かつ、痛いこともある。さらに、生検手順によって与えられた外傷が悪性の危険性を増大することもある。英国医学雑誌(British Medical Journal)で報告された研究によって、生検が精巣癌の最大の危険因子であると同定された(非特許文献1)。生検は、乳癌、肝癌、及びその他の癌における危険因子としても同定されている。さらに、ジョンズ・ホプキンス大学で行われた研究では、生検後の誤診は有意な率で起こると結論した(非特許文献2)。誤診は、一部には、針の生検及び小さな組織試料だけを得る他の手順から得られる小さな組織試料サイズに因ることもある。小さな生検試料サイズでは、患者の危険性が減じる。Id。しかしながら、小さな組織試料だけが利用される場合に誤診の危険性が増加する。Id。
【特許文献1】米国特許第5,416,192号
【非特許文献1】Swerdlow et al.,BMJ 1997 ;314:1507
【非特許文献2】Kronz et al., Cancer:Dec.1, 1999, vol.86, no.11 pp 2426-2435
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
癌の診断、治療、及び予防のための新規な方法及びキット、具体的には、組織の生検に関連する危険性を回避する方法及びキットが必要とされているものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要
本発明者は、正常細胞では厳格に調節された形式で発現される糖タンパク質(GP88)が正常な細胞由来の腫瘍形成能の高い細胞では過剰発現され、かつ、調節されないこと、腫瘍形成細胞に厳格に(stringently)必要とされる増殖刺激物質としてGP88が作用すること、及び腫瘍形成細胞でのGP88の発現又は作用を阻害することによって過剰産生細胞の腫瘍形成特性が阻害されることを今、予想外にも発見した。
【0013】
本発明者は、さらに、1ミリリットルあたりのGP88濃度約0.1ナノグラムの低さの濃度での生物液中のGP88の検出方法を発見した。本発明の実施態様は、生物液(例えば、全血、血奬、血清、リンパ、唾液、及び尿)中のGP88の非侵襲検出方法及びキットを提供する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、生物液中のGP88レベルを測定する工程及びGP88レベルが腫瘍形成を示すのに十分であるかを決定する工程を含む、腫瘍形成の診断方法及びキットを提供する。さらなる実施態様において、本発明は、方法及びキットを提供する。患者から採取した第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、同じ患者から採取した第2の又は後の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、及び第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが第1の生物液試料中のレベルよりも、腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法及びキットを提供する。
【0015】
さらに本発明の実施態様は、血清中のGP88レベルを測定することによって患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるかを決定するための方法及びキットを提供する。抗腫瘍形成治療を受けている患者におけるGP88血清濃度が特定の患者に帰する基準値より大きい場合(例えば、少なくとも約100ng/ml)、患者は抗腫瘍形成治療に反応していない。本発明の別の実施態様において、癌再発の治療又は予防方法を提供する。この実施態様によれば、患者から採取した生物液試料中のGP88濃度を決定する。生物液中のGP88濃度が特定の患者に帰する基準値より大きい場(例えば、少なくとも約50ng/ml)、GP88アンタゴニストを癌の再発を治療又は予防するのに十分な量で患者に投与する。
【0016】
本発明は、GP88の発現又は活性を阻害することが可能であるGP88拮抗組成物、限定するものではないが、例えば、血液、髄液、血清、血奬、尿、乳頭吸引液(nipple aspirate)、肝、腎、乳、骨、骨髄、精巣、脳、卵巣、皮膚、及び肺を含む組織における哺乳動物での癌など、GP88の量又は活性の欠陥に関連する疾患の治療方法、GP88の発現又は作用の欠陥に関連する疾患に対する被検体の感受性の決定方法、GP88拮抗治療に対する感受性の測定方法、並びに細胞中のGP88及び腫瘍形成活性のin vitro及びin vivo検出方法、試薬、及びキットも提供する。
【0017】
本発明の追加の目的及び利点は、一部には以下の詳細な説明中に説明され、一部には詳細な説明から明らかであり、あるいは本発明の実施例によって理解することができる。
【0018】
本発明の目的を達成するため、発明の目的によれば、本明細書中で実施態様が提供され、適切に記載される通り、本発明は、細胞が変化したGP88の発現又はGP88に対する変化した反応を示す乳癌などの疾患の診断及び治療用組成物を提供する。
【0019】
本明細書中の「変化した発現」という用語の使用は、対応する正常な細胞又は周囲末梢細胞と比較して、mRNA又はタンパク質のレベルに基づき、少なくとも2倍、時には10倍以上のGP88の増加した発現又は過剰発現を意味する。「変化した発現」との用語は、制御されなくなったか、あるいは必ずしも高くすることがなく構成的になった発現も意味する。GP88に対する増加した又は変化した「反応」という用語の使用は、GP88によって与えられる任意の生物機能(例えば、増殖、分化、ウイルス感染)の増加によってGP88の変化した発現と同じ又は同等の状態となる状態を意味する。
【0020】
本明細書中の「GP88」という用語の使用は、細胞抽出物及び細胞外液中のエピセリン/グラヌリン前駆体を意味し、マウス及びヒトを起源とする図8又は9中に含まれるアミノ酸配列によるGP88を含むだけでなく他の種を起源とするGP88も含むことを意図する。さらに、該用語には、糖タンパク質又は他の修飾構造を含む炭水化物部分などの追加成分を有するGP88の機能性誘導体が含まれる。
【0021】
GP88という用語は、上記の配列中に存在する少なくとも10個のアミノ酸を有する任意のポリペプチドフラグメントも意図する。この長さの配列は、抗原として有用であり、タンパク質全体の種々のエピトープに特異的な抗体の産生のための担体との免疫原性共役体の作製に有用である。そのようなポリペプチドは、そのような抗体のスクリーニング及び生物液中のGP88の検出に関する方法に有用である。ペプチドがより大きいタンパク質に対する抗体の生成に有用であることは当該技術分野で周知である(7)。本発明の一実施態様において、長さが12〜19個のアミノ酸のペプチドを用いて全長GP88を認識する抗体を生成することに成功したことが示されている。
【0022】
本発明のポリペプチドは、別の分子と共有結合してあるいは共有結合せずに存在してもよい。例えば、該ポリペプチドを、グルタチオントランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、又はmyc標識などの1つ以上のペプチド結合を介して1つ以上の他のポリペプチドに融合してもよい。
【0023】
本ポリペプチドは、GP88又はその機能性誘導体に対する抗体を再生産又は試験するための免疫原として用いることができる免疫原性が異なった(antigenetically distinct)決定基又はエピトープを含有する程に十分に大きい。
【0024】
一実施態様には、他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチドが含まれる。本発明のGP88は、細胞、組織、又は生物液から生物化学的に又は免疫化学的に精製することができる。あるいは、ポリペプチドは、原核生物又は真核生物の発現系及び宿主細胞中で組換え手段によって産生することができる。
【0025】
「他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチド」とは、原核生物中であるいは所望する場合には非哺乳動物若しくは哺乳動物の真核生物中でポリペプチドを合成することができる事実を反映している。あるいは、固相支持体上の化学合成及びその後の支持体からの分離による所望の配列のポリペプチドの合成方法が周知である。あるいは、少なくとも90%の純度(重量ベースで)あるいは所望する場合にはさらに99%の純度の他の哺乳動物のポリペプチドとなるように、天然に存在する哺乳動物の組織又は液からタンパク質を精製することができ、したがって実質的にそれらを有していないこととなる。タンパク質に対して反応性である抗体を保有する免疫吸着剤上などでの標準のタンパク質精製を組織抽出物又は液に施すことによって、これを成すことができる。本発明の一実施態様は、天然に存在するGP88及びバキュロウイルスが感染した昆虫細胞中で発現される組換えGP88の精製のための精製方法を記載する。あるいは、そのような組織又は液からの精製を、限定するものではないが参照(4)に記載のものなど、標準の方法の組み合わせによって成すことができる。
【0026】
野生型の精製糖タンパク質若しくはポリペプチド又は組換え糖タンパク質若しくはポリペプチドに対する代替として、「GP88」は機能性誘導体を含むことも意図している。機能性誘導体とは、後述のタンパク質又は糖タンパク質の「フラグメント」、「変異体」、「アナログ」、又は「化学誘導体」を意味する。機能性誘導体は、本発明による有用性を可能とする全長GP88の機能の少なくとも一部を保持する。
【0027】
GP88の「フラグメント」とは、GP88の腫瘍形成特性を保持する比較的短いペプチドである分子の任意のサブセットをいう。これは、限定するものではないが、例えば、マウスGP88のK19T及びS14R、及びヒトGP88のE19V及びA14R(それぞれマウスK19T及びS14Rに対応する)などの領域に対応する。
【0028】
GP88の「変異体」とは、ペプチド全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する分子をいう。変異体ペプチドは、変異体ペプチドの直接化学合成により、当該技術分野で既知の方法を用いて調製することができる。
【0029】
あるいは、ペプチドのアミノ酸配列変異体は、合成されたタンパク質又はペプチドをコードするDNAを修飾することによって調製することができる。そのような変異体には、例えば、GP88のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換が含まれる。最終構築体が所望の活性を有するという条件において、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って最終構築体に到達することもできる。変異体ペプチドをコードするDNAでなされる変異は、リーディング・フレームを変えてはならず、好ましくは、mRNA二次構造を作ることができる相補領域を作り出してはいけない。ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異(8)によってこれらの変異体を遺伝子レベルで調製することができ、それによって変異体をコードするDNAが産生され、続いて組換え細胞培養でDNAが発現される。変異体は、典型的には、非変異体ペプチドと同じ定性的な生物活性を示す。
【0030】
GP88のタンパク質の「アナログ」とは、分子全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する非天然分子をいう。
【0031】
「化学誘導体」は、通常はペプチド又はタンパク質の一部ではない追加の化学部分を含む。ペプチドの共有結合による修飾も本発明の範囲内に含まれる。選択した側鎖又は末端アミノ酸残基と反応することができる有機誘導体化剤とペプチドの標的アミノ酸残基を反応させることにより、そのような修飾を分子中に導入することができる。最もよく誘導体化する残基は、システイニル、ヒスチジル、リシニル、アルギニル、チロシル、グルタミニル、アスパラギニル、及びアミノ末端残基である。プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル及びスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、ヒスチジン、及びヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びにC末端カルボキシル基のアミド化。そのような誘導体化部分によって、溶解性、吸収性(absorption)、生物半減期などが向上する。該部分により、タンパク質などの任意の望ましくない副作用を取り除くあるいは弱めることもできる。さらに、二官能性剤による誘導体化は、水不溶性支持マトリクス又は他の高分子担体へのペプチドの架橋に有用である。通常用いられる架橋剤には、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ホモ二官能性(homobifunctional)イミドエステル、1,1−ビス(−ジアゾロアセチル)−2−フェニルエタン、及び二官能性マレイミドが含まれる。メチル−3−[9p−アジドフェニル)]ジチオプロピオイミデートなどの誘導体化剤により、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体が生ずる。臭化シアン活性化炭水化物などの反応性かつ水不溶性のマトリクス並びに米国特許第3,969,287号及び第3,691,016号に記載される反応性基質をタンパク質固定化に用いることができる。
【0032】
本明細書中のGP88「拮抗剤」いう用語の使用は、GP88の発現、産生、若しくは分泌を阻害若しくは遮断する任意の組成物、又はGP88の生物活性を阻害若しくは遮断する任意の組成物を意味する。これは、限定するものではなく、以下のものなど、任意の作用形式で成すことができる。
【0033】
(A)GP88拮抗剤には、以下のものを含むが限定するものではないGP88発現又は産生を阻害する任意の試薬又は分子が含まれる。
【0034】
(1)GP88翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害するアンチセンスGP88DNA又はRNA分子
【0035】
(2)GP88mRNA及び/又はタンパク質発現を転写、翻訳、又は翻訳後レベルで阻害する試薬(ホルモン、成長因子、小分子)
【0036】
(3)GP88分泌を阻害する因子、試薬、又はホルモン
【0037】
(B)GP88拮抗剤には、限定するものではないが、以下のものなどのGP88作用又は生物活性を阻害する任意の試薬又は分子も含まれる。
【0038】
(1)タンパク質を結合し、該タンパク質がその生物活性を発揮するのを妨げるGP88に対する中和抗体
【0039】
(2)GP88がその受容体に結合するのを妨げ、かつ、生物活性を発揮するのを妨げるGP88受容体に対する抗体
【0040】
(3)受容体に結合するGP88の競合阻害剤
【0041】
(4)GP88シグナル伝達経路の阻害剤
【0042】
本明細書中に示される具体例は、好ましい実施態様の記載、具体的にはGP88生物作用及び乳癌細胞を含むがそれに限定するものではない癌細胞の増殖を阻害するための中和抗体の使用、PC細胞の腫瘍形成特性の阻害をもたらすGP88発現を阻害するためのアンチセンスGP88cDNA及びアンチセンスGP88オリゴヌクレオチドの使用、乳房上皮細胞系C57MG、1246、及びPC細胞系、並びにミンク(mink)肺上皮細胞系CCL64を含むいくつかの細胞系の細胞表面上のGP88の受容体の特性決定を提供する。
【0043】
本発明の一実施態様において、GP88拮抗剤は、GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88タンパク質の翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害することが好ましい。
【0044】
あるいは、そのような組成物は、GP88遺伝子転写活性を調節することによってGP88発現を阻害する試薬、因子、又はホルモンを含有することができる。そのような組成物は、GP88翻訳後修飾及び分泌を阻害する試薬、因子、又はホルモンを含有することができる。そのような組成物は、GP88細胞表面受容体への結合をGP88と競合することによってGP88活性を遮断するGP88アンタゴニストとして作用する試薬を含有することができる。あるいは、そのような組成物は、一度患部細胞上の受容体に結合したらGP88によって変換される(transduced)シグナル伝達経路を阻害する因子又は試薬を含有することができる。
【0045】
あるいは、組成物は、GP88の生物活性を中和するGP88に特異的な抗体又はGP88の活性を遮断するGP88受容体に対する抗体などのGP88の作用を遮断する試薬を含有することができる。
【0046】
本発明の抗体(中和抗体など)は、乳癌、その他の癌、又はGP88の増加した発現を示す細胞での他の疾患の治療薬として用いることが好ましい。「中和」という用語は、抗体が実験動物及びヒトで細胞増殖を刺激するあるいは腫瘍増殖を誘発するGP88の能力を含むGP88の正常な生物活性を阻害又は遮断する能力を有すると理解しなければならない。有効量の抗GP88抗体をヒトを含む動物に種々の経路で投与する。代替の実施態様において、限定するものではないが癌(例えば、乳癌)などの疾患で生じるGP88の変化した(増加した)発現を示す細胞を検出するための診断薬として、さらに増殖がGP88に依存し、かつ、GP88拮抗治療に反応する患部細胞を同定するための診断薬として、抗GP88抗体を用いる。さらに別の実施態様において、抗GP88抗体を用いて、GP88を発現するあるいはGP88に反応性を有する細胞に細胞毒性因子又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの化合物を送達する。細胞毒性因子は、抗GP88抗体に付着、結合、又は会合することができる。
【0047】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88の増加した発現を示す細胞における癌の治療薬として用いることができる。有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトを含む動物に種々の経路で投与する。
【0048】
本発明は、生物液又は組織の試料を得る工程、及び液又は組織中のGP88の量を測定する工程又はGP88に反応する細胞の感受性を測定する工程を含む、GP88の発現又は作用の欠陥に関連する疾患に対する感受性の測定方法も提供する。癌(例えば、乳癌)の場合、GP88の量は癌に対する感受性と比例する。
【0049】
本発明は、生物液又は組織の試料を得る工程、及び液又は組織試料中のGP88の量を測定する工程を含む、癌(例えば、乳癌)の重篤度の測定方法も提供する。該GP88の量は癌の程度又は重篤度と比例する。本発明の一実施態様において、組織試料を血清、リンパ、又は尿から得る。
【0050】
本発明は、患部組織又は患部であると疑われる組織の試料を得る工程(生検)、試料由来の細胞を培養物中で維持する工程、培養物由来の細胞を抗GP88中和抗体で処理する工程、及び中和抗体が細胞増殖を阻害するかの測定工程を含む、GP88拮抗治療に対する感受性の測定方法も提供する。抗体の細胞増殖阻害能力によって、細胞がGP88に依存して増殖することが示され、GP88拮抗治療が有効であることが予測される。
【0051】
本発明は、組織試料を得る工程、及び組織中のGP88受容体タンパク質又はmRNAの量を測定する工程又は組織中の受容体のチロシンキナーゼ活性を測定する工程(GP88がその受容体に結合することによって、GP88の受容体を含む細胞タンパク質のチロシンリン酸化が誘発される)を含む、GP88受容体のレベル又は活性の異常に関連する癌に対する感受性の決定方法も提供する。
【0052】
本発明は、GP88拮抗試薬を抗GP88抗体又は抗GP88受容体抗体に共役することによる、患部部位へのGP88拮抗試薬の標的化方法も提供する。
【0053】
本明細書中に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成する付随の図面は、本発明の実施態様を例証し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
発明の詳細な説明
ここで、以下の実施例とともに本発明の要点を説明するのに役立つ現在好ましい本発明の実施態様について詳細に参照する。
【0055】
GP88の生物活性
本発明は、GP88の変化した(増加した)発現に関連した疾患の治療及び診断に有用なGP88並びに抗腫瘍及び抗ウイルス組成物に関する。あるいは、本発明は、GP88に対する増加した反応に関連した疾患の治療及び診断に用いられる。3つの細胞系からなるマウスモデル系を用いて、本発明者によって、GP88を過剰発現する細胞が腫瘍を形成することが示された。親細胞系1246は、合成(defined)培地中でインスリンによる厳格な調節下で増殖して脂肪細胞へと分化するC3Hマウス脂肪生成細胞系である。1246細胞は、高い細胞密度で注射したときでさえ、同系の動物(C3Hマウス)で腫瘍を形成することはできない。インスリン非依存性細胞系1246−3Aを、インスリンなしの培地で維持された1246細胞から単離した。106個を同系マウスに皮下注射したとき、1246−3A細胞は分化する能力を失って腫瘍を形成した。in vitro- in vivoシャトル技術により、腫瘍形成能の高い細胞系PCが1246−3A細胞から生成された。104個の細胞を同系マウスに注射したときに、PC細胞は腫瘍を形成した。
【0056】
GP88は、親非腫瘍形成インスリン依存性細胞系に関連するインスリン非依存性腫瘍形成細胞系で過剰発現する。さらに、GP88の過剰発現の程度はこれらの細胞の腫瘍形成の程度と正相関し、GP88が腫瘍形成に重要であることが初めて実証された(図1)。図1を参照して、GP88は細胞によって合成されるだけでなく培地中に分泌されるので、細胞溶解産物中及び培地(CM)中のGP88レベルを決定した。すべての細胞を2%ウシ胎児血清を補足したDME/F12栄養培地中で培養した。細胞がコンフルエンシー(confluency)に達したとき、培地(CM)を回収し、界面活性剤を含有する緩衝液中でのインキュベーションに続く10,000×gでの遠心分離によって細胞溶解産物を調製した。細胞溶解産物及び調整培地を細胞数で規格化した。以下に説明する通り、抗GP88抗体を用いたウエスタンブロット分析により、細胞溶解産物から得た試料及び調整培地を分析した。
【0057】
中和抗体の生成によって、腫瘍形成におけるGP88の重要な役割が確認された。マウスGP88のK19T領域に対して生じた(directed)抗GP88抗体を培地に添加したとき、腫瘍形成能の高いPC細胞の増殖は用量に依存した形式で阻害された(図2)。図2を参照して、96ウェルのプレート中のヒトフィブロネクチン(2μg/ml)及びヒトトランスフェリン(10μg/ml)を補足したDME/F12培地中で2×104個の細胞/ウェルの密度においてPC細胞を培養した。細胞付着後に、抗GP88IgG画分を、濃度を増加させつつウェルに添加した。対照細胞を等濃度の非免疫IgGで処理した。2日後、1ウェルあたり3H−チミジン0.25mCiを6時間加えた。次いで、細胞を回収し、細胞増殖の測度としてのDNAに組み込まれた3H−チミジンを計数した。
【0058】
さらに、GP88の発現がPC細胞中でアンチセンスGP88cDNAによって特に阻害されとき、GP88の産生は減少し、これらのPC細胞は同系C3Hマウスでは腫瘍をもはや形成できなかった。さらに、これらのPC細胞はインスリンに対する反応を回復した。図3及び表1及び2を参照して、106個のアンチセンスGP88でトランスフェクションしたPC細胞(以下で説明する通り)又は106個の空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞をC3H雌マウスに皮下注射した。腫瘍の様相についてマウスを毎日モニタリングした。細胞注射後45日目に写真を撮った。対照として用いた空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞を注射したマウスとは対照的に、アンチセンスGP88PC細胞を注射したマウスは腫瘍を発達しないことが結果により示される。
【0059】
【表1】
PC:対照非トランスフェクション細胞
P−14:空のベクターでトランスフェクションした対照PC細胞
ASGP88:GP88アンチセンスcDNAを含有する発現ベクターでトランスフェクションしたPC細胞
45日目に腫瘍を切除し、重量測定した。−−−は、腫瘍形成がなかったことを示す。
【0060】
【表2】
【0061】
GP88の発現を比較することによって、腫瘍でのin vivoGP88レベルは正常組織より劇的に高いことが示される(図4)。C3Hマウスに106個のPC細胞を注射した。腫瘍を有するマウスを安楽死させた。腫瘍、脂肪部分(fat pads)、及び結合組織を採取した。図1で記載した通り、界面活性剤を含有する緩衝液中でインキュベーションすることによって細胞溶解産物を調製した。組織抽出物のタンパク質濃度を決定し、各試料について等量のタンパク質をSDS−PAGEに続く抗GP88抗体を用いたウエスタンブロット分析により分析し、組織抽出物中のGP88含量を測定した。結果は、腫瘍抽出物中のGP88レベルは周囲結合組織及び脂肪組織中のレベルよりも少なくとも10倍高いことを示している。
【0062】
正常細胞(1246細胞、線維芽細胞)では、GP88の発現は、特にインスリンによって調節され、ウシ胎児血清によって阻害される。腫瘍形成細胞では、正常増殖の調節が失われることによって、GP88の増加した発現及び増殖のためのGP88依存性の獲得に至る。したがって、GP88発現及び/又は作用の阻害は、腫瘍形成の抑制の有効な手法である。生検中での高いGP88発現の検出によって、GP88阻害療法に反応性である腫瘍の診断用分析が提供される。
【0063】
GP88は、ヒト癌における腫瘍誘発因子でもある。1246−3A細胞系で見られる通り、限定するものではないが乳癌を含むいくつかのヒト癌において、インスリン(又はIGF−I)に対する反応がなくなると同時に悪性が増加することについては十分に証拠書類が提供されている。具体的には、乳癌は、上記のマウスモデル系での腫瘍形成特性の発達の出発点でもあるインスリン/IGF−Iオートクリンループの獲得を伴う。さらに、ヒト乳癌では、GP88発現が高い。より具体的には、図5を参照して、エストロゲン受容体陽性及びエストロゲン受容体陰性インスリン/IGF−I非依存性の悪性の高い細胞では、ヒトGP88が高発現する。さらに、GP88は、乳房上皮細胞の効力ある(potent)成長因子である(図6)。図5のデータは、10%ウシ胎児血清(FBS)を補足したDME/F12培地中でMCF7、MDA−MB−453、及びMDA−MB−468細胞を培養することによって得たものである。RNAzol方法によって各細胞系からRNAを抽出し、ポリ−A+RNAを調製した。32P−標識したGP88cDNAプローブを用い、各細胞系のポリA+RNA3μgを用いたノーザンブロット分析によって、GP88mRNA発現を検査した。
【0064】
齧歯類の細胞又は組織(マウス及びラット)中でGP88のmRNA発現のノーザンブロット分析をするため、ヌクレオチド551で始まり862までの(アミノ酸配列160から270に対応する)長さ311bpのマウスGP88cDNAプローブを用いた。当業者に周知の種々の方法(Sambrook, Molecular Biology manual:35)により、RNAを抽出することができる。選択した方法は、RNAzol(シンナバイオテック社(Cinnabiotech))又はグアニジニウムイソチオシアナート(guanidinium isothiocyanate)及びフェノール−クロロホルムによる単一工程の抽出からなるトリゾール(Trizol)(ギブコ−BRL社(Gibco−BRL))溶液を用いてRNAを抽出することであった。
【0065】
ヒト細胞系でGP88のmRNA発現をノーザンブロット分析するため、ヒトGP88のヌクレオチド1002〜1674(アミノ酸配列334〜558に対応する)に対応する672bpのヒトGP88cDNAプローブを開発した。
【0066】
図6に関して、PC細胞調整培地(上側パネル)から精製されたGP88及び昆虫細胞で発現された組換えGP88(下側パネル)の増加する濃度の存在下でC57MG細胞を培養して、マウス乳房上皮細胞系C57MGの増殖に対する増加する濃度のGP88の増殖刺激効果を実証した。
【0067】
IGF−1オートクリン産生及び増加した悪性の間の相関は、膠芽細胞腫、奇形癌、及び乳癌では十分に確立されている。これらの癌では、GP88発現も、非腫瘍形成ヒト線維芽細胞及び他のヒト細胞系と比較したときにヒト腫瘍中で高い。GP88は、乳癌細胞の増殖を促進する。
【0068】
抗GP88抗体
本発明は、GP88の増加した発現に関連する疾患の治療及び予防用組成物を提供する。これは、GP88の増加した反応に関連する疾患の治療及び診断にも適用される。本発明の組成物には、GP88の生物活性を中和する抗GP88抗体が含まれる。
【0069】
本発明は、GP88のエピトープに特異的な抗体、並びに細胞、細胞若しくは組織抽出物、培地、又は生物液(例えば、全血、血清、血奬、リンパ、及び尿)中におけるGP88分子、その機能性誘導体、又は異なる動物種由来の同族体の存在を検出するためあるいは量又は濃度を測定するためのそのような抗体の使用にも関する。さらに、抗GP88抗体を用いて、特定部位へ細胞毒性分子を標的化することができる。
【0070】
抗体生成のための抗原として使用するため、天然で産生されたあるいは組換え体又はその機能性誘導体中で発現された少なくとも9個のアミノ酸を有することが好ましいGP88タンパク質を得て、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の産生のため動物を免疫処置(immunize)に用いる。抗体が分子と反応することによって該分子が抗体と結合することが可能である場合、抗体は分子を結合できると言う。特異的反応とは、抗原がその対応する抗体と選択性の高い形式で反応し、他の抗原によって生じ得る多数の他の抗体と反応しないことを示すことを意味する。
【0071】
本明細書中の抗体との用語には、ヒト及び非ヒトポリクローナル抗体、ヒト及び非ヒトモノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)、並びにヒト化抗体が含まれるが、限定するものではない。ポリクローナル抗体は、抗原で免疫処置された動物の血清又は鶏卵由来の抗体分子の異種集団である。モノクローナル抗体(「mAbs」)は、特異的抗原に対する抗体の実質的に同種の集団である。mAbsは、当業者に既知の方法によって得ることができる(米国特許第4、376,110号)。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、及びそのサブクラスのいずれも含む免疫学的クラスのいずれであってもよい。GP88に対するヒト及び非ヒト抗体を産生するハイブリドーマをin vitro又はin vivoで培養することができる。多量のmAbsの産生のため、in vivoは現在好ましい産生方法である。簡単に言えば、個々のハイブリドーマから得られる細胞をプリスタンプライム化(primed)Balb/cマウス又はヌードマウスに腹腔内注射し、高濃度の所望のmAbsを含有する腹水液を産生させた。当業者に周知である標準のクロマトグラフィー方法を用いて、腹水液又は培養物上清からmAbsを精製することができる。
【0072】
ヒトGP88に対するヒトモノクローナルAbは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを免疫処置することによって調製することができる。トランスジェニック動物から得たリンパ球を用いることによって産生されるハイブリドーマは、マウス免疫グロブリンの代わりにヒト免疫グロブリンを産生する。
【0073】
ほとんどのモノクローナル抗体はマウス供給源及び他の非ヒト供給源由来であるので、それらの臨床的有効性は、ヒトに投与される齧歯類mAbsの免疫原性、エフェクター機能の動員が弱いこと、及び血清からの急速な排泄のため制限され得る。これらの問題を回避するため、マウス抗体の抗原結合特性をヒト化と呼ばれるプロセスによってヒト抗体に付与することができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体骨格に移植される(grafted)親マウスmAbの6個の相補性決定領域(CDR)についてのアミノ酸配列を含有する。ヒト化抗体中の非ヒト配列の含量が低いこと(約5%)は、ヒトにおける免疫原性の減少及び血清半減期の延長の双方に有効であることが証明された。モノクローナル抗体のヒト化のために一価ファージディスプレイ及びコンビナトリアルライブラリー戦略を用いたものなどの方法は、現在、種々の抗体のヒト化に広く適用され、当業者に既知である。上記のトランスジェニック動物により生成されたこれらのヒト化抗体及びヒト抗体は、限定するものではないが癌を含むいくつかの疾患にとって治療上非常に有用である。
【0074】
当該技術分野で周知であるドットブロット及び標準の免疫測定法(EIA又はELISA)を含む任意数の免疫測定法により、GP88の抗体の存在についてハイブリドーマ上清及び血清をスクリーニングする。一度、上清が対象の抗体を有すると同定された場合、それをウエスタンブロッティングによってさらにスクリーニングして、抗体が結合する抗原のサイズを同定する。当業者は、所望のポリクローナル又はmAbを得るために、如何にして過度の実験なしにそのようなハイブリドーマの調製及びスクリーニングをするかを理解するであろう。
【0075】
キメラ抗体は、異なる動物種由来の異なる部分を有している。例えば、キメラ抗体は、マウスmAbから得られる可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有していてもよい。キメラ抗体及びその作成方法は当業者に既知である。
【0076】
したがって、GP88に対して生じたmAbsを用いて、好適な動物でヒト及び非ヒト抗IdAbsを誘発することができる。そのような免疫処置マウスから得た脾臓細胞を用いて、ヒト又は非ヒト抗IdmAbsを分泌するハイブリドーマを産生することができる。さらに、抗IdmAbsをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はウシ血清アルブミン(BSA)などの担体とカップリングして、追加のマウスを免疫処置することができる。これらのマウスから得た血清は、GP88ポリペプチドエピトープに特異的な元来の(original)mAbの結合特性を有するヒト又は非ヒト抗抗IdAbを含有する。したがって、抗IdmAbsは、評価されるエピトープと構造的に類似した自身のイディオタイプエピトープ又はイディオタイプを有する。
【0077】
抗体との用語は、完全体の分子及び抗原に結合することができるそのフラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2など)の双方を含むことも意味する。Fab及びF(ab’)2フラグメントは、完全体の抗体のFcフラグメントを欠き、より速やかに循環から除かれ、完全体の抗体よりも少ない非特異的組織結合性を有することができる。そのようなフラグメントは、典型的には、パパイン(Fabフラグメントを生ずる)及びペプシン(F(ab’)2フラグメントを生ずる)などの酵素を用いたタンパク質分解性の切断によって産生される。完全体の抗体分子について本明細書中に記載された方法に従って、本発明に有用であるFab及びF(ab’)2並びに抗体の他のフラグメントをGP88の検出又は定量化及びGP88発現に関連する病理状態の治療に用いることができることは明らかである。
【0078】
本発明によれば、GP88活性をin vitroで中和する抗体を用いてGP88活性をin vivoで中和し、増加したGP88発現又はGP88に対する増加した反応に関連する疾患を治療することができる。増加したGP88発現に関連する疾患を患った被検体、好ましくはヒト被検体をGP88に対する抗体で治療する。そのような治療は、他の抗癌又は抗ウイルス療法と併用して行うことができる。典型的な処方計画は、1週間又は数週間にわたり及び約1〜6ヶ月の間を含む期間にわたりGP88に特異的な抗体を有効量投与することを含む。本発明の抗体は、その意図する目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、限定するものではないが皮下、静脈内、皮内、筋内、腹腔内、及び/又は経口を含む種々の経路によることができる。非経口投与は、ボーラス注射又は長期にわたる徐々の灌流(gradual perfusion)によることができる。非経口投与用製剤は、当該技術分野で既知の助剤又は賦形剤を含むことができる無菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物は、日常的な方法に従って調製することができる。投与量は、患者の年齢、性別、及び体重、在る場合には併用治療の種類、治療の頻度、並びに所望する効果の性質に拠ると理解される。以下に提供する有効用量の範囲は本発明を限定することを意図するものではなく、好ましい用量範囲を単に示しているだけである。しかしながら、最も好ましい投与量は、当業者によって理解され、かつ、決定される通り、個々の被検体に応じて合わせたものである。各治療に必要な全用量を多数回投与によりあるいは単回投与で投与することができる。有効量の抗体は、約0.01μg〜約100mg/kg体重であり、好ましくは約10μg〜約50mg/kgである。抗体を単独であるいは同じ疾患に関する他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0079】
本発明によれば、中和抗体に関して、たとえGP88発現の変化があることが必要ではなくても、GP88の細胞表面受容体の過剰発現があって今度はこのことが増加した生物活性を生ずる場合、又はシグナル伝達経路が常に「作動している(turned on)」であるとの事実に至るGP88シグナル伝達経路又は受容体の変化がある場合を含む、GP88生物活性を阻害することが必要となるすべての治療の場合において、GP88中和抗体を用いることができる。成長因子に対する及び成長因子受容体に対する中和抗体を用いて、増殖がこの成長因子に依存している細胞の増殖を阻害することに成功している。これは、ヒト乳癌細胞中のIGF−I受容体及び肺癌でのボンベシンの場合にそうであった。GP88に対する抗体を用いて、限定するものではないが、毒素、オンコトキシン(oncotoxins)、マイトトキシン(mitotoxins)、及び免疫毒素、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの細胞毒性試薬などの化合物を、GP88を発現する細胞又はGP88に反応性である細胞へそれらを特異的に標的化するために送達することもできる。
【0080】
抗原によるGP88に対する中和抗体の生成を可能とする一領域は、マウスGP88中のK19T、及び6kDaのエピセリン/グラヌリンの繰り返し内に位置せずこれらの繰り返しの間に位置している、具体的には可変(variant)領域(図10を参照のこと)とみなされるものの中のグラヌリンA(エピセリン1)及びグラヌリンCの間に位置しているヒトGP88中のE19Vとして定義される19個のアミノ酸領域である。理論に拘束されることを望むものではないが、GP88の生物活性に重要な領域はエピセリンの繰り返しの外部に在ると信じられている。
【0081】
本発明に有用である抗体又は抗体のフラグメントを用いて、定量的又は定性的にGP88タンパク質を発現する細胞の存在を検出することもできる。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光測定による検出を伴った蛍光標識抗体を用いた免疫蛍光法技術によって成すことができる(以下を参照のこと)。本発明の抗体及びポリペプチドの反応は、当該技術分野で周知の免疫測定法法によって検出することができる。
【0082】
本発明の抗体は、組織試料、生検、及び生物液中のGP88タンパク質のインサイチュー(in situ)検出のために、光学顕微鏡法、免疫蛍光法、又は免疫電子顕微鏡法などで組織学的に用いることができる。インサイチュー(in situ)検出は、患者から組織学的被検物を取り出し、適切に標識した本発明の抗体を適用することにより成すことができる。抗体(又はフラグメント)は、標識抗体(又はフラグメント)を生物試料に付与又はオーバーレイすることによって提供されることが好ましい。そのような手順を用いることにより、GP88タンパク質の存在のみならず検査組織でのその分布又は生物液中での濃度も決定することが可能である。本発明を用いるとき、そのようなインサイチュー(in situ)検出を行うために非常に種々の組織学的方法(染色手順など)を改変することができることを当業者は容易に理解することができる。
【0083】
GP88のアッセイは、典型的には、GP88タンパク質を同定することが可能な検出できるように標識した抗体の存在下で生物液、組織抽出物、新たに採取され若しくは培養された細胞、又はその培地などの生物試料をインキュベーションする工程、及び当該技術分野で周知の多数の技術で抗体を検出する工程を含む。
【0084】
生物試料をニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞若しくは細胞粒子若しくは可溶性タンパク質を固定化する他の固相支持体で処理することができる。次いで、支持体を洗浄し、続いて検出可能に標識した抗GP88抗体で処理する。これに続いて支持体を洗浄して未結合の抗体を除去する。次いで、該支持体上の結合標識の量を慣用の手段によって検出することができる。固相支持体とは、限定するものではないが、ガラス、ポリスチレンポリプロピレン、ナイロン、改質セルロース、又はポリアクリルアミドなどの抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体を意図する。
【0085】
GP88タンパク質に対する所与の多くの抗体の結合活性を周知の方法に従って決定することができる。当業者は、日常的な実験を用いることにより、各決定に対する有効な(operative)及び最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0086】
GP88タンパク質又はその機能性誘導体の検出及び該タンパク質に特異的な抗体の検出は、酵素結合免疫測定法(EIA)又は放射線免疫測定法(RIA)などの当該技術分野で周知である種々の免疫測定法によって成すことができる。そのようなアッセイは当該技術分野で周知であり、当業者は本発明の抗GP88抗体及びGP88タンパク質を用いてそのようなアッセイを如何にして実施するかを容易に理解することができる。
【0087】
そのような免疫測定法は、血清又は他の生物液中及び組織、細胞、細胞抽出物、又は生検中のGP88タンパク質の検出及び定量化に有用である。好ましい実施態様において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患を診断するための手段として、組織被検物中のGP88濃度を測定する。別の好ましい実施態様において、生物液試料中のGP88濃度を用いて、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかを決定する。
【0088】
ある種のタイプの癌(例えば、乳癌)の存在及び悪性度は、GP88タンパク質のレベルの増加に「比例する」と言う。本明細書中で用いる「比例する」との用語は、タンパク質のレベルと癌の悪性特性との間の、直線的な又は一定の関係に限定されることを意図しない。本明細書中に用いる「比例する」との用語は、増加したGP88タンパク質のレベルは、当業者が容易に決定することができるタンパク質の濃度範囲において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患の悪性特性の様相、再発、又は提示と関連することが示されることを意図している。
【0089】
本発明の別の実施態様は、薬物又は薬剤(agent)のGP88の発現又は産生を阻害する能力を測定することによる抗癌又は抗ウイルス薬物又は剤の効力の評価に関する。本発明の抗体は、該抗体を用いて上記の免疫測定法の1つでGP88タンパク質の量を決定することができるという点で、抗癌又は抗ウイルス薬物の評価方法に有用である。あるいは、産生されたGP88タンパク質の量を本明細書中で記載した生物アッセイ(細胞増殖アッセイ)によって測定する。より正確な評価のために生物アッセイ及び免疫測定法を組み合わせて用いることができる。
【0090】
追加の実施態様は、好ましくはRNA−DNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて、組織又は生物液中のGP88又はその機能性誘導体をコードする存在しているmRNA配列の量を測定することに基づいた、癌又はGP88発現の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。ある種の癌の存在及びその悪性度は、存在するそのようなmRNAの量に比例する。そのようなアッセイでは、mRNAの供給源は生検及び周囲組織であることができる。mRNAの量を測定するための好ましい技術は、相補性塩基配列のDNAを用いたハイブリダイゼーションアッセイである。
【0091】
別の関連する実施態様は、抗GP88中和抗体による治療によって増殖又は他の生物活性が阻害されるかを組織生検について測定することに基づいた、癌又はGP88反応の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。
【0092】
別の関連する実施態様は、GP88mのRNAの発現阻害に対する薬剤の効果を測定する工程を含む、抗癌又は抗ウイルス薬物又は薬剤の効力の測定方法である。同様に、そのような方法を用いて、GP88のmRNAの産生を阻害する該薬剤の能力を測定することによってGP88拮抗剤の効力を同定又は評価することができる。
【0093】
核酸検出アッセイ、特にハイブリダイゼーションアッセイは、サイズ、配列、又は制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性など、核酸分子の任意の特徴に基づくことができる。検出が観察者に報告又は信号伝達される形式を変えることによって、そのようなアッセイの感度を増加することができる。酵素標識、放射性同位体標識、蛍光標識、化学標識、及び修飾塩基を含む非常に種々の標識が多く開発され、当業者によって用いられている。
【0094】
核酸の検出感度の制限を克服する一方法は、アッセイを行なう前に核酸を選択的に増幅することである。この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」又はPCRと称されている(米国特許第4,683,202号及び4,582,788号)。PCR反応は、その配列が先に精製されてなく、かつ、特定の試料中で単に単一のコピーで存在していたとしても、特定の核酸配列の濃度を選択的に増加する方法を提供する。
【0095】
生物液中のGP88の検出
本発明の好ましい実施態様は、生物液中のGP88を検出する方法及びキットに関する。上記の通り、癌細胞は高いレベルのGP88を発現する。本発明は、GP88を約0.1ng/mlの低さの濃度において生物液中で検出することができることを実証している。上記の通り、GP88は癌細胞中で過剰発現し、高いレベルのGP88は腫瘍形成を示している。典型的には、腫瘍マーカーの存在を検出するためには組織試料又は生検が必要である。例えば、乳癌患者には、特定の腫瘍マーカーが存在しているかの決定の検査のために乳房組織試料を取り出すため、しばしば針生検手順が施される。生検手順は、任意の外科手術手順と同様に、患者への増加した危険性と関連している。生検手順は、特に、腫瘍形成の増加した危険性に関連している。
【0096】
組織生検手順と異なり、血液サンプリングは、必要な場合には患者が行なうことができる日常的かつ安全な手順である。例えば、小さな滅菌ランセットを用いて患者の指先を穿刺し、わずかな試料血液を得ることができる。血液試料を、血清又は血奬分画を単離するために任意の好適な手順によって処理することができる。あるいは、全血試料を用いることができる。抗GP88抗体を利用したアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて血清試料中のGP88の存在を検出し、その量を定量化することができる。血液サンプリングによって組織生検に関連する危険性が回避される。さらに、規則正しく(例えば、毎週の検査)同じ患者から血液試料を得ることにより、長期にわたり、患者のモニタリングによって血清中のGP88のレベルを検出することが可能となる。GP88のレベルが増加した場合、有意な腫瘍の増殖が起こる前に、医師はそれに応じて患者を治療することができる(例えば、GP88アンタゴニストを投与する)。
【0097】
生物液中のGP88濃度測定方法を実施する際には、生物液(例えば、全血、血奬、血清、リンパ、唾液、及び尿)を抗GP88抗体と接触させ、GP88の濃度を測定する。例えば、約0.1ng/mlの低さの濃度でGP88を検出することができる。本発明の別の実施態様において、少なくとも約10ng/mlの生物液の濃度でGP88を検出することができる。上記の通り、抗GP88抗体はGP88結合することができ、試料中のGP88の量を決定するのに用いることができる。生物液試料中のGP88の濃度の測定に用いることができる抗GP88抗体の例には、ATCC受託番号6B3PTA−5262及び6B2PTA−5261(10801 University Blvd.、マナッサス(Manassas)、VA20110)のハイブリドーマ細胞系から産生される抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
ELISAは、試料中の抗原量の定量化のための速やかで、高感度で、かつ再現性のあるアッセイである。「サンドイッチ」ELISAでは、抗原(例えば、タンパク質)に結合又は「捕捉」する一次抗体及び同様に抗原に結合する標識した二次抗体を利用する。検出部分に対する基質を添加することによって、試料中に存在する抗原の量に比例するシグナル(例えば、色の変化又は放射能)が生ずる。代表的なサンドイッチELISAにおいて、一次抗体をマイクロタイタープレートのウェルなどの支持体に吸着させる。抗原を含有する試料を付着した一次抗体とともにインキュベーションし、抗原を抗体に結合させる。次に、検出分子(例えば、酵素、放射性核種)で標識した二次抗体も抗原に結合させる。標識の例には、アルカリホスファターゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼが含まれる。あるいは、二次抗体は標識せずに、三次抗体(例えば、標識した抗IgG抗体)をアッセイで用いることもできる。標識した三次抗体は、免疫グロブリンG(IgG)の定常領域に結合する。酵素に対する基質(例えば、2,2−アゾ−ビス(3−エチルベンゼンチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、及び3,3,−5,5−テトラメチルベンジジン基剤(base)(TMB))を添加することによって、試料中に存在する抗原の量に比例して試料溶液中の色の変化が生ずる。色の変化は、分光光度計を用いて、酵素標識によって引き起こされる色の変化を検出するのに好適な波長で(例えば、TMBを基質として用いて624nm)検出することができる。
【0099】
あるいは、二次抗体又は三次抗体を放射能部分(例えば、l25I、35S、32P、12C)によって標識することができる。放射能検出器(例えば、ガンマ計数管)を用いて、抗原結合後に二次抗体より発せられる放射能を測定することができる。放射能レベルは、試料中に存在する抗原量に比例する。さらに別の代替例において、生物液試料中のGP88レベルをウエスタンブロット手順を用いて決定することができる。代表的なウエスタンブロット手順では、電流(例えば、20mA)が施されるSDSポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)に生物液試料をローディングして、生物液中試料のタンパク質を分子量に応じて分離する。タンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーし、標識した抗GP88抗体とともにインキュベーションする。抗GP88抗体を酵素で標識する場合、ニトロセルロースメンブレンをニトロセルロースメンブレン上に位置するGP88タンパク質バンドの変色を引き起こす酵素に対する基質に曝す。試料中のGP88量は、色の変化に比例する。
【0100】
本発明の一実施態様において、ハイブリドーマ細胞系(ATCC番号PTA−5262)によって産生されるGP88モノクローナル抗体6B3をサンドイッチELISAでの一次抗体として用いる。GP88に対して生じた種々の抗体をELISAで用いて、GP88(例えば、ATCC番号PTA−5262、ATCC番号PTA−5261、ATCC番号PTA−5589、ATCC番号PTA−5593、ATCC番号PTA−5259、ATCC番号PTA−5260、ATCC番号PTA−5591のハイブリドーマ細胞系からそれぞれ産生されるGP88モノクローナル抗体6B3、6B2、2A5、4D1、3F5、5B4、3F8)を検出することができる。セイヨウワサビペルオキシダーゼで標識したGP88抗体を二次抗体として用い、TMBを基質として用いることができる。あるいは、免疫グロブリンの定常領域に結合することができる標識した抗体をELISAでの二次抗体(例えば、抗IgG抗体)として用いることができる。既知量のGP88のタンパク質(0.1、2、5、10、20ナノグラム)を担体(例えば、緩衝溶液)中に含有する試料を用いて、ELISAの結果に基づいた標準曲線を作成することができる。試料の光学濃度を試料中の既知量のGP88に対してプロットし、標準曲線を作成することができる(例えば、図16)。未知試料中のGP88の濃度を、未知試料の光学濃度を測定し、GP88濃度を計算するために標準曲線を用いることによって決定できる。
【0101】
サンドイッチELISAの代表的なプロトコルには、以下の工程が含まれる。
【0102】
(1)一次抗体を含有する溶液をマイクロタイタープレートのウェルの底に添加する(例えば、20mg/mlの抗体を含有する50マイクロリッターの抗体溶液)。
【0103】
(2)マイクロタイタープレートを4℃で一晩インキュベーションして、抗体をウェルに完全に結合させる。
【0104】
(3)ウェルを緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄する。
【0105】
(4)ウェルを遮断用緩衝液(例えば、PBS中のウシ血清アルブミン(BSA))で飽和することによって非特異的タンパク質結合を遮断する。
【0106】
(5)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0107】
(6)抗原を含有する溶液を添加し、マイクロタイタープレートを室温で少なくとも2時間インキュベーションする。
【0108】
(7)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0109】
(8)標識した二次抗体を添加し、マイクロタイタープレートを室温で少なくとも2時間インキュベーションする。
【0110】
(9)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0111】
(10)緩衝溶液で希釈された所望の基質を添加して、反応が起こるのに十分な時間を許容する。
【0112】
(11)得られた基質溶液の光学濃度を基質に対して適切な波長においてELISA読み取り器で読み取る。
【0113】
図16は、血清生物液中のGP88の濃度の決定に用いることができる代表的な曲線を示している。既知量の組換えGP88タンパク質を含有する試料を調製して、ELISAアッセイを用いて測定した。試料の光学濃度を既知量GP88のタンパク質に対してプロットした。図16は、生物液試料のOD(光学濃度)(y軸)及びGP88の濃度(x軸)の間の直線的な関係を示している。上記の好適な検出技術(例えば、ELISA、RIA、ウエスタンブロット)において抗GP88抗体を用いて生物液試料中のGP88の濃度を決定することができる。一実施態様において、生物液試料の光学濃度を測定し、測定した光学濃度を標準曲線(例えば、図16)と比較することによって生物液試料中のGP88の濃度を決定する。例えば、図16の曲線を用いて、抗GP88抗体と接触させ、かつ、免疫測定法を施した生物液試料の光学濃度が0.6である場合、生物試料液中のGP88濃度は15ng/mlであろう。
【0114】
健康なヒトでのGP88の血清濃度は、健康なヒトでは約23ng/ml及び44ng/mlの間で変動する。健康なヒトボランティアから得た血奬中のGP88レベルの測定では、同様の結果が示された。ヒト乳癌患者では、血清中で高いレベルのGP88が示された。20人の乳癌患者のうち3人で、高いレベルのGP88(49、51、及び56ng/ml)が示された。しかしながら、治療に対して何ら反応を示さない進行性の疾患(例えば、転移性)を有する患者は、劇的に増加したGP88血清レベルを長期にわたって有していた(27〜233ng/ml、6ヶ月)。抗腫瘍形成治療に反応性でない進行した(advanced)疾患を有する別の患者は、2002年3月21日に158ng/mlのGP88血清濃度を有し、2002年5月23日に148ng/mlのGP88血清濃度を有していた。非転移性乳癌であると最初診断された患者及び寛解中の患者は、正常範囲内のGP88血清濃度を有していた。したがって、高いGP88血清濃度(例えば、約40〜50ng/ml)は腫瘍形成を示している。非常に高いGP88血清レベル(例えば、約100〜300ng/ml)は、進行性の疾患であり、かつ、抗腫瘍形成治療に抵抗性であることを示している。
【0115】
本発明の別の実施態様において、第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、第2の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルよりも腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法を提供する。最初の生物液試料は、癌又は細胞増殖に関連する疾患を有すると疑われる患者から採取することができる。最初の生物液試料中のGP88のレベルを測定し、異なる時間に採取した第2の生物液試料中のGP88のレベルと比較することができる。生物液試料を規則正しい間隔で採取し、後の試料中の測定されたGP88濃度を第1の試料中のGP88レベルと比較するすることができる。結果が長期にわたって生物液中のGP88のレベルの増加を示す場合、医師は腫瘍の増殖を減少又は排除するために患者の治療を開始又は改変することができる。
【0116】
本発明は、抗腫瘍形成治療を受けている患者から得た生物液試料中のGP88の濃度を測定する工程を含み、少なくとも約100ng/mlのGP88の濃度は患者が抗腫瘍形成治療に反応しないことを示す、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかの判定方法も提供する。「抗腫瘍形成治療」という用語は、癌又は増殖に関連する疾患を治療する目的のための任意の薬剤、薬物、治療、又は薬剤、薬物、若しくは治療薬の投与方法をいう。抗腫瘍形成治療の例には、抗エストロゲン治療、抗腫瘍抗体(例えば、抗GP88抗体)の使用、アンチセンス療法(例えば、抗GP88核酸)、化学療法、放射線療法、及び遺伝子治療が含まれる。抗腫瘍形成治療を受けている患者のGP88血清濃度を、規則正しい間隔で(例えば、毎日、毎週、毎月)血清試料を分析することによってモニタリングすることができる。少なくとも約100ng/mlのGP88血清レベルは、患者が抗腫瘍形成治療に反応性でないか又は反応していないことを示すであろう。
【0117】
ある種の抗腫瘍形成治療は、患者に対して望ましくない副作用又はさらなる危険性を有する。例えば、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン)による乳癌の治療又は予防は、卵巣癌の危険性の増加と関連している。高いGP88レベルは、患者が抗エストロゲンによる治療に反応しないことを示している。患者が高いGP88レベルを有する場合(例えば、約100ng/mlより大きい)、患者は抗エストロゲン治療に反応性でない可能性が高く、抗エストロゲン治療が有するさらなる危険性はいずれの利益よりも勝っているであろう。化学療法も、嘔気、衰弱、脱毛、食欲喪失などの多くの望ましくない副作用と関連している。患者が特定のタイプの化学療法に反応しない可能性が高い場合、より少ない副作用を有する抗腫瘍形成治療がより効果的であり、患者にさらなる外傷を与えない。本発明は、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかの判定に有用である。
【0118】
本発明の別の実施態様は、生物液試料中のGP88濃度を測定する工程、及び生物液試料中のGP88濃度が約40〜50ng/mlである場合に癌を治療又は予防するのに十分な量の抗腫瘍形成治療を投与する工程による、患者における癌再発の治療又は予防方法を提供する。先に記載して示した通り、約40ng/ml以上のGP88血清レベルを有する患者は癌であると診断されるか、有意に高い癌発達の危険性を有する。抗腫瘍形成治療(例えば、抗エストロゲン治療、抗腫瘍抗体療法、アンチセンス治療、化学療法、放射線療法、及び遺伝子治療)を癌であると診断されたか、高い癌発達の危険性があると診断された患者に疾患を予防又は治療するために投与することができる。
【0119】
抗エストロゲン治療は、腫瘍の成長を予防又は治療する目的での抗エストロゲン剤の投与に関する。抗エストロゲン剤の例には、タモキシフェン及びラロキシフェンが含まれる。クエン酸タモキシフェン(「タモキシフェン」)は、強力な抗エストロゲン及び抗新生物特性が実証された、乳癌を患った患者によく処方される非ステロイド抗エストロゲンである。米国特許第4,536,516号を参照されたい。タモキシフェンは、エストロゲン受容体への結合に関してエストロゲンと競合するエストロゲン受容体アンタゴニストである。他の抗エストロゲンには、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤(例えば、アリミデックス(Arimidex(登録商標)(アナストロゾール)、フェメラ(Femera)(登録商標))、及びエストロゲン受容体ダウンレギュレート調節剤(down-regulators)(例えば、ファスロデックス(Faslodex)(登録商標))が含まれる。タモキシフェンの抗エストロゲン効果は、標的組織中の結合部位に関してエストロゲンと競合する能力に関するものであってもよい。アロマターゼ阻害剤などの他の抗エストロゲンは、利用可能なエストロゲンの量を阻害又は減少させる。
【0120】
抗腫瘍抗体(例えば、抗GP88抗体、ヘルセプチン)を患者に投与して、腫瘍を起こす又は促進するタンパク質又はその他の分子の活性を阻害することができる。例えば、抗GP88抗体を投与してGP88の活性を阻害することができる。抗腫瘍抗体を上記の種々の経路(経口、注射、非経口)で患者に投与することができる。
【0121】
アンチセンス治療とは、腫瘍の複製を促進する遺伝子を阻害するため、あるいは腫瘍を促進するタンパク質の翻訳を阻害するため、患者へアンチセンス核酸を投与することをいう。アンチセンス治療の例には、抗GP88アンチセンス核酸の投与が含まれる。アンチセンス核酸は、組織に直接注射することによって投与することができ、あるいは静脈内又は非経口投与することができる。生体外(ex vivo)技術を用いてアンチセンス核酸を細胞に投与することができる。腫瘍形成細胞又は正常細胞を被検体(例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、又はニワトリ)から取り除いて、培養物中で増殖させることができる。細胞は、アンチセンス核酸をコードするDNA又はRNAでトランスフェクションされ、再び被検体に導入され、アンチセンス核酸を産生して、腫瘍細胞増殖を阻害することができる。
【0122】
「遺伝子治療」とは、腫瘍の増殖を予防又は治療するために、抗腫瘍タンパク質をコードする核酸を患者へ投与することをいう。アンチセンス核酸と同様に、直接注射することにより、あるいは上記のex vivo技術を用いて、遺伝子治療用の核酸を投与することができる。遺伝子治療用の核酸でトランスフェクションされた細胞は、抗腫瘍タンパク質を産生して、腫瘍の増殖を阻害又は予防する。
【0123】
化学療法とは、一般的に、化学化合物又は化学化合物の組み合わせ(例えば、メトトレキセート)を用いた癌の治療をいう。化学療法剤の特定の組み合わせは、特定の腫瘍タイプ及び疾患の段階に依存する。放射線療法とは、腫瘍細胞を直接的に殺すための放射線(例えば、ガンマ照射)の使用をいう。用いられる照射の量及びタイプも、特定の腫瘍タイプ及び疾患の段階に依存する。
【0124】
本発明は、腫瘍形成診断用及び患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかを決定するためのキットも提供する。そのようなキットは、容器及びGP88検出用の化合物(例えば、抗GP88抗体又は抗体フラグメント)を含有することが好ましい。抗GP88抗体又は抗体フラグメントを、好適な検出方法(例えば、ELISA、放射線免疫測定法)で用いるために標識することができる(例えば、酵素標識、放射性同位体標識、蛍光標識、及び化学標識)。一実施態様において、キットは、少なくとも1種の一次抗体(例えば、抗GP88モノクローナル抗体6B3)、少なくとも1種の標識した二次抗体(例えば、HRPなどの検出酵素で標識した抗ヒトGP88ポリクローナル抗体)、及び少なくとも1種の基質(例えば、TMB)を含有する。あるいは、キットは、酵素で標識した二次抗体の代わりに放射性標識した二次抗体を含有することができる。キットは、検出アッセイを行うための使い捨て型補給品(例えば、マイクロタイタープレート、ピペット)も含有することができる。
【0125】
GP88アンチセンス成分
本発明は、GP88アンチセンス成分も提供する。細胞中でのアンチセンスRNAの構成性発現は20種より多くの遺伝子の発現を阻害することが示され、列記は増え続けている。アンチセンス効果の可能な機構は翻訳の遮断又はスプライシングの妨害であり、双方ともin vitroで観察されている。スプライシングの妨害によって、保存性が低いイントロン配列が使用されることとなり、したがってより大きな特異性が生じ、ある種の遺伝子産物の発現は阻害されるが別の種ではそのホモログは阻害されないこととなる。
【0126】
アンチセンス成分との用語は、mRNAの翻訳が阻害されるようにアンチセンスRNA及びmRNAの間の分子ハイブリダイゼーションを生ずるのにアンチセンスRNAが特異的である特定のmRNA分子に十分に相補的である、RNA配列及び該RNA配列をコードするDNA配列に対応する。そのようなハイブリダイゼーションをin vivo条件下で行うことができる。アンチセンスRNAの作用によって、細胞中での遺伝子発現の特異的阻害が生ずる。
【0127】
本発明によれば、GP88cDNAに対するDNAアンチセンスで多発性骨髄腫細胞をトランスフェクションすることによって、内因性GP88の発現が阻害され、アンチセンスcDNAでトランスフェクションした細胞の腫瘍形成が阻害される。このアンチセンスDNAは、作用がスプライシング、転写、又は翻訳のレベルであるかに関わらず、アンチセンスRNAがGP88遺伝子(又はmRNA)とハイブリダイゼーションしてGP88遺伝子発現を阻害することができるように、GP88遺伝子に対して十分な相補性(長さ約18〜30ヌクレオチド)を有していなければならない。阻害の程度は、本明細書中の技術が与えられれば過度の実験なしに当業者に容易に認識でき、増殖がGP88の発現に依存した細胞の増殖を阻害するのに十分であることが好ましい。当業者は、アンチセンスRNA手法は特異的遺伝子発現を遮断するために用いられる多数の既知の機構の1つであることを十分に認識している。
【0128】
本発明のアンチセンス成分は、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88cDNAのいくつかの部分のいずれとも又はGP88のmRNAとハイブリダゼーションすることができる。当業者に容易に理解される通り、本発明に必要な最小量の相同性は、好ましくは他のmRNA分子の機能及び他の無関係な遺伝子の発現に影響を及ぼすことなしにGP88のDNA又はmRNAとのハイブリダイゼーションを生じ、かつ、DNAの転写又はmRNAの翻訳若しくは機能を阻害するのに十分なものである。
【0129】
プロモーターを含む適切な調節配列とともにアンチセンスRNAをコードするDNAが配置されたレトロウイルスベクター及びプラスミドを含むベクターによる形質転換又はトランスフェクションによってアンチセンスRNAが細胞に送達され、宿主細胞中でアンチセンスRNAの発現が生じる。GP88のcDNAフラグメントをアンチセンス方向で含有する種々のアンチセンス発現ベクターの安定的なトランスフェクションを行った。レトロウイルスベクターを用いてアンチセンス成分を細胞に送達することもできる。リポソームによって送達することもできる。
【0130】
in vivo治療用のアンチセンス技術の目的のために、現在好ましい方法は、発現ベクター中に構成されたアンチセンスcDNAフラグメントの安定的なトランスフェクションを行なうのに代えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることである。長さ15〜30個の塩基のサイズを有し、かつ、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88のcDNAのいくつかの部分のいずれか、又はGP88のmRNAとハイブリダイゼーション可能な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、最も効力があるアンチセンス効果を有するものとして選択されることが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の標的部位を律する要因は、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性、及び標的配列への到達容易性(accessibility)に関連する。GP88タンパク質翻訳及びGP88に関連する表現型の阻害、例えば培養物中の細胞増殖の阻害を測定することにより、配列をそのアンチセンス活性についてin vitroでスクリーニングすることができる。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、RNAのほとんどの領域(5’及び3’非翻訳領域、AUG開始部、コード領域、スプライス接合部、及びイントロン)を標的にすることができることは既知である。
【0131】
好ましいGP88アンチセンスオリゴヌクレオチドは安定であり、ヌクレアーゼ(オリゴヌクレオチドを潜在的に分解することができる酵素)に対して高い回復力(resilience)を有し、非毒性用量でそれらを疾患組織へ運搬することを可能とする好適な薬物動態を有し、かつ、形質膜を横切る能力を有するオリゴヌクレオチドである。
【0132】
ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができる。リン酸ジエステル結合の修飾及び複素環又は糖の修飾によって、効力を増加することができる。リン酸ジエステル結合の修飾に関して、ホスホロチオエートを用いることができる。N3’−P5’ホスホロアミデート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化し、RNAへの結合を増加すると記載されている。ペプチド核酸(PNA)結合は、リボース及びリン酸ジエステル骨格の完全な置換であり、ヌクレアーゼに安定であり、RNAに対する結合親和性を増加し、かつ、RNAseHによって開裂されない。その基本構造は、アンチセンス成分としてそれを最適化することを可能とする修飾を受け入れやすい(amenable)。複素環の修飾に関して、ある種の複素環修飾は、RNAseH活性を妨げることなしにアンチセンス効果を増大することが証明されている。そのような修飾の例は、C−5チアゾール修飾である。最後に、糖の修飾も考慮することができる。2’−O−プロピル及び2’−メトキシエトキシリボース修飾は、細胞培養物中及びin vivoにおいてヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化する。c−raf−1を標的としたこれらのタイプのオリゴヌクレオチドを用いた細胞培養物及びin vivo腫瘍実験では、効力が増大した。
【0133】
送達経路は、上記の基準に従って測定された最良のアンチセンス効果を提供するものである。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたin vitro細胞培養アッセイ及びin vivo腫瘍増殖アッセイによって、カチオン性リポソームによって仲介される送達、レトロウイルスベクターによって仲介される送達、及び直接的な送達が効果的であることが示された。別の可能性ある送達様式は、抗体を用いて腫瘍細胞の細胞表面マーカーを標的としたものである。GP88又はその受容体に対する抗体は、この目的に役立つことができる。
【0134】
組換えGP88
本発明は、他の哺乳動物DNA配列を実質的に有さない組換えGP88ポリペプチド又はその機能性誘導体を発現するためのDNA発現系にも関する。そのようなDNAは、二重鎖又は一本鎖であることができる。DNA配列は、好ましくは、別のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能とするために約20個以上のヌクレオチドを有しなければならない。GP88タンパク質又はその同族体若しくは機能性誘導体をコードする配列以外の配列とのハイブリダイゼーションが無いことによって特徴付けられるより高い特異性のハイブリダイゼーションを達成するためには、長さが少なくとも50個のヌクレオチドが好ましい。
【0135】
本発明は、上記のDNA分子、発現可能なベヒクル又はベクター、及びベヒクルでトランスフェクションされた又は形質転換された、かつ、ポリペプチドを発現することができる宿主にも関する。そのような宿主は、原核生物、好ましくは細菌、又は真核生物、好ましくは酵母若しくは哺乳動物細胞であることができる。好ましいベクター系には、昆虫細胞中で発現するバキュロウイルスが含まれる。形質転換、形質導入(transduction)、トランスフェクション、感染、又は当該技術分野で既知の関連するプロセスによって、DNAを宿主生物に組み込むことができる。GP88ポリペプチドをコードするDNA及びmRNA配列に加えて、本発明は核酸配列の発現方法も提供する。さらに、遺伝子配列及びオリゴヌクレオチドによって、本明細書中に記載されるポリペプチドGP88と配列相同性を有する追加のポリペプチドの同定及びクローニングが可能となる。
【0136】
発現ベクターは、(適切な転写及び/又は翻訳制御配列の存在ゆえに)ベクター中にクローニングされたDNA(又はcDNA)分子を発現することができ、それによってポリペプチド又はタンパク質を産生するベクターである。クローニングされた配列の発現は、発現ベクターが適切な宿主細胞に組み込まれたときに起こる。原核生物発現ベクターを用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の原核生物細胞であろう。同様に、真核生物発現系を用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の真核生物細胞であろう。例えば、バキュロウイルスベクターを用いて、GP88cDNAをクローニングし、続いて昆虫細胞中でcDNAを発現することができる。
【0137】
GP88ポリペプチド又はその機能性誘導体をコードするDNA配列を、連結のための平滑末端又は付着末端、適切な末端を与える制限酵素消化、必要に応じた付着末端の充填(filling)、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び的確な酵素リガーゼによる連結を含む慣用技術に従って、ベクターDNAと組み換えることができる。そのような操作のための技術は(35)で論じている。
【0138】
核酸分子は、該核酸分子が転写及び翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、かつ、そのような配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に動作可能に結合されている場合、ポリペプチドを発現することができる。動作可能な結合とは、調節DNA配列及び発現させたいDNA配列が遺伝子発現するような方法で結合される結合である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は生物ごとに変わってもよいが、一般には、原核生物ではプロモーター(RNA転写の開始を指示する)及びRNAに転写されたときにタンパク質合成の開始をシグナル伝達するDNA配列の双方を含有するプロモーター領域を含んでいなければならない。それらの領域は、通常、TATAボックス、キャップ形成配列(capping sequence)、CAAT配列などの転写及び翻訳の開始に関与するそれらの5’非コード配列などを含む。
【0139】
所望する場合、タンパク質をコードする遺伝子配列に対する3’非コード領域を記載の方法(適切なcDNAライブラリーのスクリーニング又はPCR増幅)によって得ることができる。この領域は、終結及びポリアデニル化などの転写終結調節配列が存在するために保持することができる。したがって、タンパク質をコードするDNA配列にもともと隣接している3’領域を保持することによって、転写終結シグナルを付与することができる。発現宿主細胞中で転写終結シグナルが与えられず、又は満足がいくほど機能的ではない場合、別の遺伝子由来の3’領域に置き換えることができる。
【0140】
配列間の結合の性質によって、フレームシフト変異の導入が生じず、かつ、ポリペプチド遺伝子配列の転写を指示するプロモーター配列の能力が妨げられない場合、プロモーター領域配列及びGP88コード配列などの2つのDNA配列が動作可能に結合していると言う。プロモーター配列は、原核生物性、真核生物性、又はウイルス性であることができる。好適なプロモーターは、誘導性、抑制性、又は構成的であることができる。
【0141】
真核生物プロモーターには、マウスメタロチオネインI遺伝子用プロモーター、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、遺伝子gal4プロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、及びサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターが含まれるが、限定するものではない。強力なプロモーターが好ましい。そのようなプロモーターの例は、T3、SP6、及びT7ポリメラーゼ、バクテリオファージラムダのPLプロモーター、recAプロモーター、マウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーター、SV40プロモーター、及びCMVプロモーターを認識するものである。
【0142】
本発明の教示を特定の問題又は環境へ適用することは、本明細書中に含まれる技術に照らして、当業者の能力の範囲内であると理解すべきである。以下の限定するものではない実施例によって本発明をより十分に例証する。
【実施例1】
【0143】
生物液試料中のGP88濃度の決定
17人の正常かつ健康なヒトボランティアから血清試料を得た。ヒト血清試料中のGP88濃度を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって3つ組で測定した。30%グリセロール及び1%ミルク−PBSの溶液に希釈した組換えGP88から0、0.1、0.25、0.5、1、3、10、及び20ng/mlの濃度で標準のGP88試料を調製した。マイクロタイタープレート上の100マイクロリットルのウェルを1ミリリットルあたり10マイクログラムの抗ヒトGP88モノクローナル抗体6B3(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.78mg/mlの6B3抗体)でコーティングし、4℃で一晩インキュベーションした。ウェルをPBSで洗浄し、続いて抗ヒトPCDGFポリクローナル(IgG分画)を各ウェルに3マイクログラム/mlの濃度で37℃で1.5時間添加した。各ウェルへの検出抗体(セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)−ヤギ−ウサギ−IgG)の添加前に、ウェルをPBS中で洗浄した。TMB(基質)を添加し、試料とともに1時間インキュベーションした。620ナノメートルの波長で設定したELISA分光計読み取り器を用いて試料の光学濃度を決定した。各試料中のGP88量(x軸)に対して標準のGP88試料の光学濃度(y軸)をプロットし、標準曲線を作成した(図16)。未知試料中のGP88の濃度は、光学濃度を測定し、標準曲線(図16)を用いてGP88濃度を決定することによって決定した。表3は、17人の健康なヒトボランティアの各人のGP88血清試料濃度を提供するものである。
【0144】
【表3】
【0145】
表4は、抗腫瘍形成治療に反応しない進行した(advanced)進行性の乳癌を有する患者から採取したGP88の血清試料濃度を示している。GP88血清濃度は、6ヶ月の期間中に27ng/mlから233ng/mlに増加した。
【0146】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】図1Aは、1246、1246−3A、及びPC細胞系中のGP88タンパク質発現レベルを比較する。2%ウシ胎児血清(FBS)を補足したDME−F12培地中で細胞を培養した。抗K19T抗体を用いた免疫沈降及びウエスタンブロット分析により、GP88発現レベルを測定した。
【図1B】図1Bは、1246、1246−3A、及びPC細胞系でのGP88mRNA発現レベルを比較する。RPL32のmRNAを等量のRNAローディングの内部対照として用いた。
【図1C】図1Cは、無血清及び血清含有培地中の1246細胞(左パネル)及びPC細胞(右パネル)中でのGP88mRNAの発現を比較する。結果により、1246細胞中でのGP88発現はウシ胎児血清の添加によって阻害されるのに対し、腫瘍形成能の高いPC細胞ではそのような阻害が観察されないことが示される。
【図2】図2は、抗GP88中和抗体の濃度の増加による、腫瘍形成能の高いPC細胞の治療効果を例証している。
【図3】図3は、106個のアンチセンスGP88をトランスフェクションしたPC細胞を皮下注射したC3Hマウス(下部)及び空のベクターをトランスフェクションした対照PC細胞を皮下注射したC3Hマウス(上部)を示している。
【図4】図4は、C3Hマウス腫瘍組織及び周囲正常組織中でのin vivoGP88発現レベルを示している。
【図5】図5は、エストロゲン受容体陽性及びエストロゲン受容体陰性ヒト乳癌細胞系中でのGP88mRNA発現レベルを示している。
【図6】図6は、マウス乳房上皮細胞系C57の増殖に対するGP88濃度の増加の効果を示している。
【図7】図7は、サイトメガロウィルスプロモーターで制御されかつアンチセンス方向でGP88を含有する発現ベクターでトランスフェクションしたPC細胞、及び空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞の増殖特性及び腫瘍形成能力を示している。
【図8A】図8Aは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。抗GP88抗体であるK19T及びS14Rを生じさせるための抗原として用いられるペプチド領域には下線を引いてある。pCMV4哺乳動物発現ベクターにアンチセンス方向でクローニングされた領域が括弧の間に示されている。
【図8B】図8Bは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。
【図8C】図8Cは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。
【図9A】図9Aは、ヒトGP88cDNAのヌクレオチド配列を示している。pcDNA3哺乳動物発現系にアンチセンス方向でクローニングされた領域が括弧の間に示されている。
【図9B】図9Bは、ヒトGP88の推定アミノ酸配列を示している。抗ヒトGP88中和抗体を生成するための抗原として用いるE19V領域に下線を引いてある。それは、マウスS14R領域に相当する領域A14Rも示している。
【図10】図10は、グラヌリンg、f、B、A、C、D、及びe(右側)として定義される7つと半分の繰り返しを示すように並べたマウスGP88のアミノ酸配列を示している。この図示により、抗GP88中和抗体を生成するためのGP88抗体を生じさせるのに用いる領域K19T及びS14Rが変異体領域とみなされるものの中の2つのエピセリン/グラヌリンの繰り返しの間に見出されることが示される。Batemanら(6)による繰り返しのグラヌリン分類を右側及び左側に示す。グラヌリンB及びグラヌリンAはそれぞれ、Plowmanら(1992)(5)によるエピセリン2及びエピセリン1としても定義される。
【図11】図11は、GP88アンチセンスcDNAを発現ベクターにクローニングするための制限部位を示すpCMV4及びGP88cDNAクローンを図示したものを示している。
【図12】図12は、CCL−64細胞上のGP88細胞表面受容体への135I−rGP88の架橋を示している。スベリン酸ジスクシンイミジル(disuccinimidyl suberate)(DSS)を用いて架橋反応を行なった。7%ポリアクリルアミドゲル上でのSDS−PAGEによって反応産物を分析した。
【図13】図13は、3T3線維芽細胞、PC細胞、及びC57MG乳房上皮細胞上のGP88細胞表面受容体への135I−rGP88の架橋を示している。結果は、これらの種々の細胞系がCCL64細胞上のものと類似した分子量のGP88細胞表面受容体を提示することを示している(図12)。
【図14】図14は、非腫瘍形成MCF10A及び悪性(MCF7、MDA−468)ヒト乳房上皮細胞中でのGP88発現レベルを示している。
【図15】図15は、ヒト乳癌MDA−468細胞中でアンチセンスGP88cDNAのトランスフェクションによってGP88発現が阻害されることを示している。
【図16】図16は、既知量のGP88(x軸)を含有する血清試料の光学濃度(y軸)を示すグラフである。血清などの生物液試料中のGP88濃度を決定するのための参照として、グラフを用いることができる。
【技術分野】
【0001】
本出願は、現在は放棄されている1997年5月23日に出願された米国特許出願第08/863,079号の一部継続出願である1997年12月16日に出願された米国出願番08/991,862号の分割出願(現在、米国特許第6,309,826号)である1999年12月8日に出願された米国出願番号09/456,886号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は、細胞生物学、生理学、及び薬剤に関し、88kDaの糖タンパク質成長因子(「GP88」)並びにGP88の発現及び生物活性に影響を及ぼす組成物及び方法に関する。本発明は、癌を含む疾患の診断及び治療に有用なキット製品、組成物、及び方法にも関する。
【0003】
参照
いくつかの公表物を括弧内のアラビア数字によって本明細書中で参照する。特許請求の範囲の直前の本明細書の最後にこれらの参照の全ての引用を見ることができる。
【0004】
背景技術
多細胞生物における細胞の増殖及び分化は、高度に調節されたプロセスを受ける。癌細胞を区別する特徴はこのプロセスに対する制御が無いことであって、増殖及び分化が調節されなくなり、結果として制御されない増殖が生じる。正常細胞及び腫瘍細胞の間のこの違いをより理解することに対して多大な研究努力が向けられてきた。焦点が当てられている研究の一領域は成長因子であり、より具体的にはオートクリン増殖刺激である。
【0005】
成長因子は、増殖、分化、移入、及び遺伝子発現に関するメッセージを細胞に運ぶポリペプチドである。典型的には、成長因子はある細胞中で産生され、別の細胞に対して増殖を刺激するように作用にする。しかしながら、培養物中のある種の悪性細胞では、オートクリン増殖機構により大きくあるいは完全に依存していることが実証される。このオートクリン挙動が見られる悪性細胞は、他の細胞による成長因子の産生調節を回避し、したがってその増殖が調節されない。
【0006】
オートクリン増殖制御の研究によって、細胞増殖機構の理解が進み、癌の診断及び治療における重要な発展がもたらされる。このような目的に対して、インスリン様成長因子(「IGF1」及び「IGF2」)、ガストリン放出ペプチド(「GRP」)、形質転換成長因子アルファ及びベータ(「TGF−a」及び「TGF−b」)、及び上皮成長因子(「EGF」)を含む多数の成長因子が研究されている。
【0007】
本発明は、最近発見された成長因子に関する。この成長因子は、腫瘍形成能の高い(highly tumorigenic)「PC細胞」(奇形腫由来の脂肪生成細胞系1246から単離されたインスリン非依存性変異体)の培地中に最初に発見された。この成長因子を本明細書中では「GP88」と称する。GP88は精製され、構造的に特性決定がなされている。GP88のアミノ酸配列決定により、GP88はマウスグラヌリン(granulin)/エピセリン(epithelin)前駆体とのアミノ酸配列の類似性を有していることが示される。
【0008】
グラヌリン/エピセリン(「grn/epi」)は6kDaのポリペプチドであり、二重システインに富むポリペプチド(double cysteine rich polypeptide)の新しいファミリーに属する。特許文献1(Shoyab et al.)は、6kDaのエピセリン、具体的にはエピセリン1及びエピセリン2に関する。Shoyabによれば、両方のエピセリンは共通の63.5kDaの前駆体によってコードされており、該前駆体は、合成されると直ぐ、生物試料中に見出される天然産物のみが6kDaの形態となるようにより小さな形態へとプロセシングされる。
【0009】
Shoyabらの教示に反して、本発明者らの研究室により、前駆体は合成されたら直ぐにプロセシングされることは常ではないことが実証された。本発明者によって一部なされた研究によって、前駆体(すなわち、GP88)が、実は、Nへ結合した20kDaの炭水化物部分を有する88kDaの糖タンパク質として分泌されることが実証された。GP88のN末端配列の分析によって、GP88はgrn/epi前駆体のアミノ酸17で始まることが示され、前駆体cDNAから推定されるタンパク質配列由来の最初の17個のアミノ酸は膜への局在化又は分泌の標的化に適合する(compatible)シグナルペプチドに対応することが実証されている。さらにShoyabの教示とは対照的に、GP88は生物活性であり、増殖促進活性、具体的には産生細胞のオートクリン成長因子としての増殖促進活性を有する。
【0010】
癌の診断では、腫瘍形成が疑われる組織の生検のサンプリング、腫瘍マーカーが存在するかを決定するための組織試料の試験、及び組織試料が腫瘍形成性であるかの決定がしばしば必要となる。生検手順は、組織の位置及び患者の状態に拠っては危険性を有し、かつ、痛いこともある。さらに、生検手順によって与えられた外傷が悪性の危険性を増大することもある。英国医学雑誌(British Medical Journal)で報告された研究によって、生検が精巣癌の最大の危険因子であると同定された(非特許文献1)。生検は、乳癌、肝癌、及びその他の癌における危険因子としても同定されている。さらに、ジョンズ・ホプキンス大学で行われた研究では、生検後の誤診は有意な率で起こると結論した(非特許文献2)。誤診は、一部には、針の生検及び小さな組織試料だけを得る他の手順から得られる小さな組織試料サイズに因ることもある。小さな生検試料サイズでは、患者の危険性が減じる。Id。しかしながら、小さな組織試料だけが利用される場合に誤診の危険性が増加する。Id。
【特許文献1】米国特許第5,416,192号
【非特許文献1】Swerdlow et al.,BMJ 1997 ;314:1507
【非特許文献2】Kronz et al., Cancer:Dec.1, 1999, vol.86, no.11 pp 2426-2435
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
癌の診断、治療、及び予防のための新規な方法及びキット、具体的には、組織の生検に関連する危険性を回避する方法及びキットが必要とされているものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の概要
本発明者は、正常細胞では厳格に調節された形式で発現される糖タンパク質(GP88)が正常な細胞由来の腫瘍形成能の高い細胞では過剰発現され、かつ、調節されないこと、腫瘍形成細胞に厳格に(stringently)必要とされる増殖刺激物質としてGP88が作用すること、及び腫瘍形成細胞でのGP88の発現又は作用を阻害することによって過剰産生細胞の腫瘍形成特性が阻害されることを今、予想外にも発見した。
【0013】
本発明者は、さらに、1ミリリットルあたりのGP88濃度約0.1ナノグラムの低さの濃度での生物液中のGP88の検出方法を発見した。本発明の実施態様は、生物液(例えば、全血、血奬、血清、リンパ、唾液、及び尿)中のGP88の非侵襲検出方法及びキットを提供する。
【0014】
本発明の別の実施態様は、生物液中のGP88レベルを測定する工程及びGP88レベルが腫瘍形成を示すのに十分であるかを決定する工程を含む、腫瘍形成の診断方法及びキットを提供する。さらなる実施態様において、本発明は、方法及びキットを提供する。患者から採取した第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、同じ患者から採取した第2の又は後の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、及び第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが第1の生物液試料中のレベルよりも、腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法及びキットを提供する。
【0015】
さらに本発明の実施態様は、血清中のGP88レベルを測定することによって患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるかを決定するための方法及びキットを提供する。抗腫瘍形成治療を受けている患者におけるGP88血清濃度が特定の患者に帰する基準値より大きい場合(例えば、少なくとも約100ng/ml)、患者は抗腫瘍形成治療に反応していない。本発明の別の実施態様において、癌再発の治療又は予防方法を提供する。この実施態様によれば、患者から採取した生物液試料中のGP88濃度を決定する。生物液中のGP88濃度が特定の患者に帰する基準値より大きい場(例えば、少なくとも約50ng/ml)、GP88アンタゴニストを癌の再発を治療又は予防するのに十分な量で患者に投与する。
【0016】
本発明は、GP88の発現又は活性を阻害することが可能であるGP88拮抗組成物、限定するものではないが、例えば、血液、髄液、血清、血奬、尿、乳頭吸引液(nipple aspirate)、肝、腎、乳、骨、骨髄、精巣、脳、卵巣、皮膚、及び肺を含む組織における哺乳動物での癌など、GP88の量又は活性の欠陥に関連する疾患の治療方法、GP88の発現又は作用の欠陥に関連する疾患に対する被検体の感受性の決定方法、GP88拮抗治療に対する感受性の測定方法、並びに細胞中のGP88及び腫瘍形成活性のin vitro及びin vivo検出方法、試薬、及びキットも提供する。
【0017】
本発明の追加の目的及び利点は、一部には以下の詳細な説明中に説明され、一部には詳細な説明から明らかであり、あるいは本発明の実施例によって理解することができる。
【0018】
本発明の目的を達成するため、発明の目的によれば、本明細書中で実施態様が提供され、適切に記載される通り、本発明は、細胞が変化したGP88の発現又はGP88に対する変化した反応を示す乳癌などの疾患の診断及び治療用組成物を提供する。
【0019】
本明細書中の「変化した発現」という用語の使用は、対応する正常な細胞又は周囲末梢細胞と比較して、mRNA又はタンパク質のレベルに基づき、少なくとも2倍、時には10倍以上のGP88の増加した発現又は過剰発現を意味する。「変化した発現」との用語は、制御されなくなったか、あるいは必ずしも高くすることがなく構成的になった発現も意味する。GP88に対する増加した又は変化した「反応」という用語の使用は、GP88によって与えられる任意の生物機能(例えば、増殖、分化、ウイルス感染)の増加によってGP88の変化した発現と同じ又は同等の状態となる状態を意味する。
【0020】
本明細書中の「GP88」という用語の使用は、細胞抽出物及び細胞外液中のエピセリン/グラヌリン前駆体を意味し、マウス及びヒトを起源とする図8又は9中に含まれるアミノ酸配列によるGP88を含むだけでなく他の種を起源とするGP88も含むことを意図する。さらに、該用語には、糖タンパク質又は他の修飾構造を含む炭水化物部分などの追加成分を有するGP88の機能性誘導体が含まれる。
【0021】
GP88という用語は、上記の配列中に存在する少なくとも10個のアミノ酸を有する任意のポリペプチドフラグメントも意図する。この長さの配列は、抗原として有用であり、タンパク質全体の種々のエピトープに特異的な抗体の産生のための担体との免疫原性共役体の作製に有用である。そのようなポリペプチドは、そのような抗体のスクリーニング及び生物液中のGP88の検出に関する方法に有用である。ペプチドがより大きいタンパク質に対する抗体の生成に有用であることは当該技術分野で周知である(7)。本発明の一実施態様において、長さが12〜19個のアミノ酸のペプチドを用いて全長GP88を認識する抗体を生成することに成功したことが示されている。
【0022】
本発明のポリペプチドは、別の分子と共有結合してあるいは共有結合せずに存在してもよい。例えば、該ポリペプチドを、グルタチオントランスフェラーゼ、ポリヒスチジン、又はmyc標識などの1つ以上のペプチド結合を介して1つ以上の他のポリペプチドに融合してもよい。
【0023】
本ポリペプチドは、GP88又はその機能性誘導体に対する抗体を再生産又は試験するための免疫原として用いることができる免疫原性が異なった(antigenetically distinct)決定基又はエピトープを含有する程に十分に大きい。
【0024】
一実施態様には、他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチドが含まれる。本発明のGP88は、細胞、組織、又は生物液から生物化学的に又は免疫化学的に精製することができる。あるいは、ポリペプチドは、原核生物又は真核生物の発現系及び宿主細胞中で組換え手段によって産生することができる。
【0025】
「他の哺乳動物ペプチドを実質的に有していないポリペプチド」とは、原核生物中であるいは所望する場合には非哺乳動物若しくは哺乳動物の真核生物中でポリペプチドを合成することができる事実を反映している。あるいは、固相支持体上の化学合成及びその後の支持体からの分離による所望の配列のポリペプチドの合成方法が周知である。あるいは、少なくとも90%の純度(重量ベースで)あるいは所望する場合にはさらに99%の純度の他の哺乳動物のポリペプチドとなるように、天然に存在する哺乳動物の組織又は液からタンパク質を精製することができ、したがって実質的にそれらを有していないこととなる。タンパク質に対して反応性である抗体を保有する免疫吸着剤上などでの標準のタンパク質精製を組織抽出物又は液に施すことによって、これを成すことができる。本発明の一実施態様は、天然に存在するGP88及びバキュロウイルスが感染した昆虫細胞中で発現される組換えGP88の精製のための精製方法を記載する。あるいは、そのような組織又は液からの精製を、限定するものではないが参照(4)に記載のものなど、標準の方法の組み合わせによって成すことができる。
【0026】
野生型の精製糖タンパク質若しくはポリペプチド又は組換え糖タンパク質若しくはポリペプチドに対する代替として、「GP88」は機能性誘導体を含むことも意図している。機能性誘導体とは、後述のタンパク質又は糖タンパク質の「フラグメント」、「変異体」、「アナログ」、又は「化学誘導体」を意味する。機能性誘導体は、本発明による有用性を可能とする全長GP88の機能の少なくとも一部を保持する。
【0027】
GP88の「フラグメント」とは、GP88の腫瘍形成特性を保持する比較的短いペプチドである分子の任意のサブセットをいう。これは、限定するものではないが、例えば、マウスGP88のK19T及びS14R、及びヒトGP88のE19V及びA14R(それぞれマウスK19T及びS14Rに対応する)などの領域に対応する。
【0028】
GP88の「変異体」とは、ペプチド全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する分子をいう。変異体ペプチドは、変異体ペプチドの直接化学合成により、当該技術分野で既知の方法を用いて調製することができる。
【0029】
あるいは、ペプチドのアミノ酸配列変異体は、合成されたタンパク質又はペプチドをコードするDNAを修飾することによって調製することができる。そのような変異体には、例えば、GP88のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、又は置換が含まれる。最終構築体が所望の活性を有するという条件において、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを行って最終構築体に到達することもできる。変異体ペプチドをコードするDNAでなされる変異は、リーディング・フレームを変えてはならず、好ましくは、mRNA二次構造を作ることができる相補領域を作り出してはいけない。ペプチド分子をコードするDNA中のヌクレオチドの部位特異的突然変異(8)によってこれらの変異体を遺伝子レベルで調製することができ、それによって変異体をコードするDNAが産生され、続いて組換え細胞培養でDNAが発現される。変異体は、典型的には、非変異体ペプチドと同じ定性的な生物活性を示す。
【0030】
GP88のタンパク質の「アナログ」とは、分子全体又はそのフラグメントのいずれかに実質的に類似する非天然分子をいう。
【0031】
「化学誘導体」は、通常はペプチド又はタンパク質の一部ではない追加の化学部分を含む。ペプチドの共有結合による修飾も本発明の範囲内に含まれる。選択した側鎖又は末端アミノ酸残基と反応することができる有機誘導体化剤とペプチドの標的アミノ酸残基を反応させることにより、そのような修飾を分子中に導入することができる。最もよく誘導体化する残基は、システイニル、ヒスチジル、リシニル、アルギニル、チロシル、グルタミニル、アスパラギニル、及びアミノ末端残基である。プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル及びスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン、ヒスチジン、及びヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びにC末端カルボキシル基のアミド化。そのような誘導体化部分によって、溶解性、吸収性(absorption)、生物半減期などが向上する。該部分により、タンパク質などの任意の望ましくない副作用を取り除くあるいは弱めることもできる。さらに、二官能性剤による誘導体化は、水不溶性支持マトリクス又は他の高分子担体へのペプチドの架橋に有用である。通常用いられる架橋剤には、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ホモ二官能性(homobifunctional)イミドエステル、1,1−ビス(−ジアゾロアセチル)−2−フェニルエタン、及び二官能性マレイミドが含まれる。メチル−3−[9p−アジドフェニル)]ジチオプロピオイミデートなどの誘導体化剤により、光の存在下で架橋を形成することができる光活性化可能な中間体が生ずる。臭化シアン活性化炭水化物などの反応性かつ水不溶性のマトリクス並びに米国特許第3,969,287号及び第3,691,016号に記載される反応性基質をタンパク質固定化に用いることができる。
【0032】
本明細書中のGP88「拮抗剤」いう用語の使用は、GP88の発現、産生、若しくは分泌を阻害若しくは遮断する任意の組成物、又はGP88の生物活性を阻害若しくは遮断する任意の組成物を意味する。これは、限定するものではなく、以下のものなど、任意の作用形式で成すことができる。
【0033】
(A)GP88拮抗剤には、以下のものを含むが限定するものではないGP88発現又は産生を阻害する任意の試薬又は分子が含まれる。
【0034】
(1)GP88翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害するアンチセンスGP88DNA又はRNA分子
【0035】
(2)GP88mRNA及び/又はタンパク質発現を転写、翻訳、又は翻訳後レベルで阻害する試薬(ホルモン、成長因子、小分子)
【0036】
(3)GP88分泌を阻害する因子、試薬、又はホルモン
【0037】
(B)GP88拮抗剤には、限定するものではないが、以下のものなどのGP88作用又は生物活性を阻害する任意の試薬又は分子も含まれる。
【0038】
(1)タンパク質を結合し、該タンパク質がその生物活性を発揮するのを妨げるGP88に対する中和抗体
【0039】
(2)GP88がその受容体に結合するのを妨げ、かつ、生物活性を発揮するのを妨げるGP88受容体に対する抗体
【0040】
(3)受容体に結合するGP88の競合阻害剤
【0041】
(4)GP88シグナル伝達経路の阻害剤
【0042】
本明細書中に示される具体例は、好ましい実施態様の記載、具体的にはGP88生物作用及び乳癌細胞を含むがそれに限定するものではない癌細胞の増殖を阻害するための中和抗体の使用、PC細胞の腫瘍形成特性の阻害をもたらすGP88発現を阻害するためのアンチセンスGP88cDNA及びアンチセンスGP88オリゴヌクレオチドの使用、乳房上皮細胞系C57MG、1246、及びPC細胞系、並びにミンク(mink)肺上皮細胞系CCL64を含むいくつかの細胞系の細胞表面上のGP88の受容体の特性決定を提供する。
【0043】
本発明の一実施態様において、GP88拮抗剤は、GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88タンパク質の翻訳を阻害することによってGP88発現を阻害することが好ましい。
【0044】
あるいは、そのような組成物は、GP88遺伝子転写活性を調節することによってGP88発現を阻害する試薬、因子、又はホルモンを含有することができる。そのような組成物は、GP88翻訳後修飾及び分泌を阻害する試薬、因子、又はホルモンを含有することができる。そのような組成物は、GP88細胞表面受容体への結合をGP88と競合することによってGP88活性を遮断するGP88アンタゴニストとして作用する試薬を含有することができる。あるいは、そのような組成物は、一度患部細胞上の受容体に結合したらGP88によって変換される(transduced)シグナル伝達経路を阻害する因子又は試薬を含有することができる。
【0045】
あるいは、組成物は、GP88の生物活性を中和するGP88に特異的な抗体又はGP88の活性を遮断するGP88受容体に対する抗体などのGP88の作用を遮断する試薬を含有することができる。
【0046】
本発明の抗体(中和抗体など)は、乳癌、その他の癌、又はGP88の増加した発現を示す細胞での他の疾患の治療薬として用いることが好ましい。「中和」という用語は、抗体が実験動物及びヒトで細胞増殖を刺激するあるいは腫瘍増殖を誘発するGP88の能力を含むGP88の正常な生物活性を阻害又は遮断する能力を有すると理解しなければならない。有効量の抗GP88抗体をヒトを含む動物に種々の経路で投与する。代替の実施態様において、限定するものではないが癌(例えば、乳癌)などの疾患で生じるGP88の変化した(増加した)発現を示す細胞を検出するための診断薬として、さらに増殖がGP88に依存し、かつ、GP88拮抗治療に反応する患部細胞を同定するための診断薬として、抗GP88抗体を用いる。さらに別の実施態様において、抗GP88抗体を用いて、GP88を発現するあるいはGP88に反応性を有する細胞に細胞毒性因子又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの化合物を送達する。細胞毒性因子は、抗GP88抗体に付着、結合、又は会合することができる。
【0047】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、GP88の増加した発現を示す細胞における癌の治療薬として用いることができる。有効量のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ヒトを含む動物に種々の経路で投与する。
【0048】
本発明は、生物液又は組織の試料を得る工程、及び液又は組織中のGP88の量を測定する工程又はGP88に反応する細胞の感受性を測定する工程を含む、GP88の発現又は作用の欠陥に関連する疾患に対する感受性の測定方法も提供する。癌(例えば、乳癌)の場合、GP88の量は癌に対する感受性と比例する。
【0049】
本発明は、生物液又は組織の試料を得る工程、及び液又は組織試料中のGP88の量を測定する工程を含む、癌(例えば、乳癌)の重篤度の測定方法も提供する。該GP88の量は癌の程度又は重篤度と比例する。本発明の一実施態様において、組織試料を血清、リンパ、又は尿から得る。
【0050】
本発明は、患部組織又は患部であると疑われる組織の試料を得る工程(生検)、試料由来の細胞を培養物中で維持する工程、培養物由来の細胞を抗GP88中和抗体で処理する工程、及び中和抗体が細胞増殖を阻害するかの測定工程を含む、GP88拮抗治療に対する感受性の測定方法も提供する。抗体の細胞増殖阻害能力によって、細胞がGP88に依存して増殖することが示され、GP88拮抗治療が有効であることが予測される。
【0051】
本発明は、組織試料を得る工程、及び組織中のGP88受容体タンパク質又はmRNAの量を測定する工程又は組織中の受容体のチロシンキナーゼ活性を測定する工程(GP88がその受容体に結合することによって、GP88の受容体を含む細胞タンパク質のチロシンリン酸化が誘発される)を含む、GP88受容体のレベル又は活性の異常に関連する癌に対する感受性の決定方法も提供する。
【0052】
本発明は、GP88拮抗試薬を抗GP88抗体又は抗GP88受容体抗体に共役することによる、患部部位へのGP88拮抗試薬の標的化方法も提供する。
【0053】
本明細書中に組み込まれ、かつ、本明細書の一部を構成する付随の図面は、本発明の実施態様を例証し、詳細な説明とともに本発明の原理を説明するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
発明の詳細な説明
ここで、以下の実施例とともに本発明の要点を説明するのに役立つ現在好ましい本発明の実施態様について詳細に参照する。
【0055】
GP88の生物活性
本発明は、GP88の変化した(増加した)発現に関連した疾患の治療及び診断に有用なGP88並びに抗腫瘍及び抗ウイルス組成物に関する。あるいは、本発明は、GP88に対する増加した反応に関連した疾患の治療及び診断に用いられる。3つの細胞系からなるマウスモデル系を用いて、本発明者によって、GP88を過剰発現する細胞が腫瘍を形成することが示された。親細胞系1246は、合成(defined)培地中でインスリンによる厳格な調節下で増殖して脂肪細胞へと分化するC3Hマウス脂肪生成細胞系である。1246細胞は、高い細胞密度で注射したときでさえ、同系の動物(C3Hマウス)で腫瘍を形成することはできない。インスリン非依存性細胞系1246−3Aを、インスリンなしの培地で維持された1246細胞から単離した。106個を同系マウスに皮下注射したとき、1246−3A細胞は分化する能力を失って腫瘍を形成した。in vitro- in vivoシャトル技術により、腫瘍形成能の高い細胞系PCが1246−3A細胞から生成された。104個の細胞を同系マウスに注射したときに、PC細胞は腫瘍を形成した。
【0056】
GP88は、親非腫瘍形成インスリン依存性細胞系に関連するインスリン非依存性腫瘍形成細胞系で過剰発現する。さらに、GP88の過剰発現の程度はこれらの細胞の腫瘍形成の程度と正相関し、GP88が腫瘍形成に重要であることが初めて実証された(図1)。図1を参照して、GP88は細胞によって合成されるだけでなく培地中に分泌されるので、細胞溶解産物中及び培地(CM)中のGP88レベルを決定した。すべての細胞を2%ウシ胎児血清を補足したDME/F12栄養培地中で培養した。細胞がコンフルエンシー(confluency)に達したとき、培地(CM)を回収し、界面活性剤を含有する緩衝液中でのインキュベーションに続く10,000×gでの遠心分離によって細胞溶解産物を調製した。細胞溶解産物及び調整培地を細胞数で規格化した。以下に説明する通り、抗GP88抗体を用いたウエスタンブロット分析により、細胞溶解産物から得た試料及び調整培地を分析した。
【0057】
中和抗体の生成によって、腫瘍形成におけるGP88の重要な役割が確認された。マウスGP88のK19T領域に対して生じた(directed)抗GP88抗体を培地に添加したとき、腫瘍形成能の高いPC細胞の増殖は用量に依存した形式で阻害された(図2)。図2を参照して、96ウェルのプレート中のヒトフィブロネクチン(2μg/ml)及びヒトトランスフェリン(10μg/ml)を補足したDME/F12培地中で2×104個の細胞/ウェルの密度においてPC細胞を培養した。細胞付着後に、抗GP88IgG画分を、濃度を増加させつつウェルに添加した。対照細胞を等濃度の非免疫IgGで処理した。2日後、1ウェルあたり3H−チミジン0.25mCiを6時間加えた。次いで、細胞を回収し、細胞増殖の測度としてのDNAに組み込まれた3H−チミジンを計数した。
【0058】
さらに、GP88の発現がPC細胞中でアンチセンスGP88cDNAによって特に阻害されとき、GP88の産生は減少し、これらのPC細胞は同系C3Hマウスでは腫瘍をもはや形成できなかった。さらに、これらのPC細胞はインスリンに対する反応を回復した。図3及び表1及び2を参照して、106個のアンチセンスGP88でトランスフェクションしたPC細胞(以下で説明する通り)又は106個の空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞をC3H雌マウスに皮下注射した。腫瘍の様相についてマウスを毎日モニタリングした。細胞注射後45日目に写真を撮った。対照として用いた空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞を注射したマウスとは対照的に、アンチセンスGP88PC細胞を注射したマウスは腫瘍を発達しないことが結果により示される。
【0059】
【表1】
PC:対照非トランスフェクション細胞
P−14:空のベクターでトランスフェクションした対照PC細胞
ASGP88:GP88アンチセンスcDNAを含有する発現ベクターでトランスフェクションしたPC細胞
45日目に腫瘍を切除し、重量測定した。−−−は、腫瘍形成がなかったことを示す。
【0060】
【表2】
【0061】
GP88の発現を比較することによって、腫瘍でのin vivoGP88レベルは正常組織より劇的に高いことが示される(図4)。C3Hマウスに106個のPC細胞を注射した。腫瘍を有するマウスを安楽死させた。腫瘍、脂肪部分(fat pads)、及び結合組織を採取した。図1で記載した通り、界面活性剤を含有する緩衝液中でインキュベーションすることによって細胞溶解産物を調製した。組織抽出物のタンパク質濃度を決定し、各試料について等量のタンパク質をSDS−PAGEに続く抗GP88抗体を用いたウエスタンブロット分析により分析し、組織抽出物中のGP88含量を測定した。結果は、腫瘍抽出物中のGP88レベルは周囲結合組織及び脂肪組織中のレベルよりも少なくとも10倍高いことを示している。
【0062】
正常細胞(1246細胞、線維芽細胞)では、GP88の発現は、特にインスリンによって調節され、ウシ胎児血清によって阻害される。腫瘍形成細胞では、正常増殖の調節が失われることによって、GP88の増加した発現及び増殖のためのGP88依存性の獲得に至る。したがって、GP88発現及び/又は作用の阻害は、腫瘍形成の抑制の有効な手法である。生検中での高いGP88発現の検出によって、GP88阻害療法に反応性である腫瘍の診断用分析が提供される。
【0063】
GP88は、ヒト癌における腫瘍誘発因子でもある。1246−3A細胞系で見られる通り、限定するものではないが乳癌を含むいくつかのヒト癌において、インスリン(又はIGF−I)に対する反応がなくなると同時に悪性が増加することについては十分に証拠書類が提供されている。具体的には、乳癌は、上記のマウスモデル系での腫瘍形成特性の発達の出発点でもあるインスリン/IGF−Iオートクリンループの獲得を伴う。さらに、ヒト乳癌では、GP88発現が高い。より具体的には、図5を参照して、エストロゲン受容体陽性及びエストロゲン受容体陰性インスリン/IGF−I非依存性の悪性の高い細胞では、ヒトGP88が高発現する。さらに、GP88は、乳房上皮細胞の効力ある(potent)成長因子である(図6)。図5のデータは、10%ウシ胎児血清(FBS)を補足したDME/F12培地中でMCF7、MDA−MB−453、及びMDA−MB−468細胞を培養することによって得たものである。RNAzol方法によって各細胞系からRNAを抽出し、ポリ−A+RNAを調製した。32P−標識したGP88cDNAプローブを用い、各細胞系のポリA+RNA3μgを用いたノーザンブロット分析によって、GP88mRNA発現を検査した。
【0064】
齧歯類の細胞又は組織(マウス及びラット)中でGP88のmRNA発現のノーザンブロット分析をするため、ヌクレオチド551で始まり862までの(アミノ酸配列160から270に対応する)長さ311bpのマウスGP88cDNAプローブを用いた。当業者に周知の種々の方法(Sambrook, Molecular Biology manual:35)により、RNAを抽出することができる。選択した方法は、RNAzol(シンナバイオテック社(Cinnabiotech))又はグアニジニウムイソチオシアナート(guanidinium isothiocyanate)及びフェノール−クロロホルムによる単一工程の抽出からなるトリゾール(Trizol)(ギブコ−BRL社(Gibco−BRL))溶液を用いてRNAを抽出することであった。
【0065】
ヒト細胞系でGP88のmRNA発現をノーザンブロット分析するため、ヒトGP88のヌクレオチド1002〜1674(アミノ酸配列334〜558に対応する)に対応する672bpのヒトGP88cDNAプローブを開発した。
【0066】
図6に関して、PC細胞調整培地(上側パネル)から精製されたGP88及び昆虫細胞で発現された組換えGP88(下側パネル)の増加する濃度の存在下でC57MG細胞を培養して、マウス乳房上皮細胞系C57MGの増殖に対する増加する濃度のGP88の増殖刺激効果を実証した。
【0067】
IGF−1オートクリン産生及び増加した悪性の間の相関は、膠芽細胞腫、奇形癌、及び乳癌では十分に確立されている。これらの癌では、GP88発現も、非腫瘍形成ヒト線維芽細胞及び他のヒト細胞系と比較したときにヒト腫瘍中で高い。GP88は、乳癌細胞の増殖を促進する。
【0068】
抗GP88抗体
本発明は、GP88の増加した発現に関連する疾患の治療及び予防用組成物を提供する。これは、GP88の増加した反応に関連する疾患の治療及び診断にも適用される。本発明の組成物には、GP88の生物活性を中和する抗GP88抗体が含まれる。
【0069】
本発明は、GP88のエピトープに特異的な抗体、並びに細胞、細胞若しくは組織抽出物、培地、又は生物液(例えば、全血、血清、血奬、リンパ、及び尿)中におけるGP88分子、その機能性誘導体、又は異なる動物種由来の同族体の存在を検出するためあるいは量又は濃度を測定するためのそのような抗体の使用にも関する。さらに、抗GP88抗体を用いて、特定部位へ細胞毒性分子を標的化することができる。
【0070】
抗体生成のための抗原として使用するため、天然で産生されたあるいは組換え体又はその機能性誘導体中で発現された少なくとも9個のアミノ酸を有することが好ましいGP88タンパク質を得て、ポリクローナル又はモノクローナル抗体の産生のため動物を免疫処置(immunize)に用いる。抗体が分子と反応することによって該分子が抗体と結合することが可能である場合、抗体は分子を結合できると言う。特異的反応とは、抗原がその対応する抗体と選択性の高い形式で反応し、他の抗原によって生じ得る多数の他の抗体と反応しないことを示すことを意味する。
【0071】
本明細書中の抗体との用語には、ヒト及び非ヒトポリクローナル抗体、ヒト及び非ヒトモノクローナル抗体(mAbs)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)、並びにヒト化抗体が含まれるが、限定するものではない。ポリクローナル抗体は、抗原で免疫処置された動物の血清又は鶏卵由来の抗体分子の異種集団である。モノクローナル抗体(「mAbs」)は、特異的抗原に対する抗体の実質的に同種の集団である。mAbsは、当業者に既知の方法によって得ることができる(米国特許第4、376,110号)。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgD、及びそのサブクラスのいずれも含む免疫学的クラスのいずれであってもよい。GP88に対するヒト及び非ヒト抗体を産生するハイブリドーマをin vitro又はin vivoで培養することができる。多量のmAbsの産生のため、in vivoは現在好ましい産生方法である。簡単に言えば、個々のハイブリドーマから得られる細胞をプリスタンプライム化(primed)Balb/cマウス又はヌードマウスに腹腔内注射し、高濃度の所望のmAbsを含有する腹水液を産生させた。当業者に周知である標準のクロマトグラフィー方法を用いて、腹水液又は培養物上清からmAbsを精製することができる。
【0072】
ヒトGP88に対するヒトモノクローナルAbは、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニックマウスを免疫処置することによって調製することができる。トランスジェニック動物から得たリンパ球を用いることによって産生されるハイブリドーマは、マウス免疫グロブリンの代わりにヒト免疫グロブリンを産生する。
【0073】
ほとんどのモノクローナル抗体はマウス供給源及び他の非ヒト供給源由来であるので、それらの臨床的有効性は、ヒトに投与される齧歯類mAbsの免疫原性、エフェクター機能の動員が弱いこと、及び血清からの急速な排泄のため制限され得る。これらの問題を回避するため、マウス抗体の抗原結合特性をヒト化と呼ばれるプロセスによってヒト抗体に付与することができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体骨格に移植される(grafted)親マウスmAbの6個の相補性決定領域(CDR)についてのアミノ酸配列を含有する。ヒト化抗体中の非ヒト配列の含量が低いこと(約5%)は、ヒトにおける免疫原性の減少及び血清半減期の延長の双方に有効であることが証明された。モノクローナル抗体のヒト化のために一価ファージディスプレイ及びコンビナトリアルライブラリー戦略を用いたものなどの方法は、現在、種々の抗体のヒト化に広く適用され、当業者に既知である。上記のトランスジェニック動物により生成されたこれらのヒト化抗体及びヒト抗体は、限定するものではないが癌を含むいくつかの疾患にとって治療上非常に有用である。
【0074】
当該技術分野で周知であるドットブロット及び標準の免疫測定法(EIA又はELISA)を含む任意数の免疫測定法により、GP88の抗体の存在についてハイブリドーマ上清及び血清をスクリーニングする。一度、上清が対象の抗体を有すると同定された場合、それをウエスタンブロッティングによってさらにスクリーニングして、抗体が結合する抗原のサイズを同定する。当業者は、所望のポリクローナル又はmAbを得るために、如何にして過度の実験なしにそのようなハイブリドーマの調製及びスクリーニングをするかを理解するであろう。
【0075】
キメラ抗体は、異なる動物種由来の異なる部分を有している。例えば、キメラ抗体は、マウスmAbから得られる可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有していてもよい。キメラ抗体及びその作成方法は当業者に既知である。
【0076】
したがって、GP88に対して生じたmAbsを用いて、好適な動物でヒト及び非ヒト抗IdAbsを誘発することができる。そのような免疫処置マウスから得た脾臓細胞を用いて、ヒト又は非ヒト抗IdmAbsを分泌するハイブリドーマを産生することができる。さらに、抗IdmAbsをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はウシ血清アルブミン(BSA)などの担体とカップリングして、追加のマウスを免疫処置することができる。これらのマウスから得た血清は、GP88ポリペプチドエピトープに特異的な元来の(original)mAbの結合特性を有するヒト又は非ヒト抗抗IdAbを含有する。したがって、抗IdmAbsは、評価されるエピトープと構造的に類似した自身のイディオタイプエピトープ又はイディオタイプを有する。
【0077】
抗体との用語は、完全体の分子及び抗原に結合することができるそのフラグメント(例えば、Fab及びF(ab’)2など)の双方を含むことも意味する。Fab及びF(ab’)2フラグメントは、完全体の抗体のFcフラグメントを欠き、より速やかに循環から除かれ、完全体の抗体よりも少ない非特異的組織結合性を有することができる。そのようなフラグメントは、典型的には、パパイン(Fabフラグメントを生ずる)及びペプシン(F(ab’)2フラグメントを生ずる)などの酵素を用いたタンパク質分解性の切断によって産生される。完全体の抗体分子について本明細書中に記載された方法に従って、本発明に有用であるFab及びF(ab’)2並びに抗体の他のフラグメントをGP88の検出又は定量化及びGP88発現に関連する病理状態の治療に用いることができることは明らかである。
【0078】
本発明によれば、GP88活性をin vitroで中和する抗体を用いてGP88活性をin vivoで中和し、増加したGP88発現又はGP88に対する増加した反応に関連する疾患を治療することができる。増加したGP88発現に関連する疾患を患った被検体、好ましくはヒト被検体をGP88に対する抗体で治療する。そのような治療は、他の抗癌又は抗ウイルス療法と併用して行うことができる。典型的な処方計画は、1週間又は数週間にわたり及び約1〜6ヶ月の間を含む期間にわたりGP88に特異的な抗体を有効量投与することを含む。本発明の抗体は、その意図する目的を達成する任意の手段によって投与することができる。例えば、投与は、限定するものではないが皮下、静脈内、皮内、筋内、腹腔内、及び/又は経口を含む種々の経路によることができる。非経口投与は、ボーラス注射又は長期にわたる徐々の灌流(gradual perfusion)によることができる。非経口投与用製剤は、当該技術分野で既知の助剤又は賦形剤を含むことができる無菌水溶液又は非水溶液、懸濁液、及び乳濁液を含む。錠剤又はカプセル剤などの医薬組成物は、日常的な方法に従って調製することができる。投与量は、患者の年齢、性別、及び体重、在る場合には併用治療の種類、治療の頻度、並びに所望する効果の性質に拠ると理解される。以下に提供する有効用量の範囲は本発明を限定することを意図するものではなく、好ましい用量範囲を単に示しているだけである。しかしながら、最も好ましい投与量は、当業者によって理解され、かつ、決定される通り、個々の被検体に応じて合わせたものである。各治療に必要な全用量を多数回投与によりあるいは単回投与で投与することができる。有効量の抗体は、約0.01μg〜約100mg/kg体重であり、好ましくは約10μg〜約50mg/kgである。抗体を単独であるいは同じ疾患に関する他の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0079】
本発明によれば、中和抗体に関して、たとえGP88発現の変化があることが必要ではなくても、GP88の細胞表面受容体の過剰発現があって今度はこのことが増加した生物活性を生ずる場合、又はシグナル伝達経路が常に「作動している(turned on)」であるとの事実に至るGP88シグナル伝達経路又は受容体の変化がある場合を含む、GP88生物活性を阻害することが必要となるすべての治療の場合において、GP88中和抗体を用いることができる。成長因子に対する及び成長因子受容体に対する中和抗体を用いて、増殖がこの成長因子に依存している細胞の増殖を阻害することに成功している。これは、ヒト乳癌細胞中のIGF−I受容体及び肺癌でのボンベシンの場合にそうであった。GP88に対する抗体を用いて、限定するものではないが、毒素、オンコトキシン(oncotoxins)、マイトトキシン(mitotoxins)、及び免疫毒素、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの細胞毒性試薬などの化合物を、GP88を発現する細胞又はGP88に反応性である細胞へそれらを特異的に標的化するために送達することもできる。
【0080】
抗原によるGP88に対する中和抗体の生成を可能とする一領域は、マウスGP88中のK19T、及び6kDaのエピセリン/グラヌリンの繰り返し内に位置せずこれらの繰り返しの間に位置している、具体的には可変(variant)領域(図10を参照のこと)とみなされるものの中のグラヌリンA(エピセリン1)及びグラヌリンCの間に位置しているヒトGP88中のE19Vとして定義される19個のアミノ酸領域である。理論に拘束されることを望むものではないが、GP88の生物活性に重要な領域はエピセリンの繰り返しの外部に在ると信じられている。
【0081】
本発明に有用である抗体又は抗体のフラグメントを用いて、定量的又は定性的にGP88タンパク質を発現する細胞の存在を検出することもできる。これは、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は蛍光測定による検出を伴った蛍光標識抗体を用いた免疫蛍光法技術によって成すことができる(以下を参照のこと)。本発明の抗体及びポリペプチドの反応は、当該技術分野で周知の免疫測定法法によって検出することができる。
【0082】
本発明の抗体は、組織試料、生検、及び生物液中のGP88タンパク質のインサイチュー(in situ)検出のために、光学顕微鏡法、免疫蛍光法、又は免疫電子顕微鏡法などで組織学的に用いることができる。インサイチュー(in situ)検出は、患者から組織学的被検物を取り出し、適切に標識した本発明の抗体を適用することにより成すことができる。抗体(又はフラグメント)は、標識抗体(又はフラグメント)を生物試料に付与又はオーバーレイすることによって提供されることが好ましい。そのような手順を用いることにより、GP88タンパク質の存在のみならず検査組織でのその分布又は生物液中での濃度も決定することが可能である。本発明を用いるとき、そのようなインサイチュー(in situ)検出を行うために非常に種々の組織学的方法(染色手順など)を改変することができることを当業者は容易に理解することができる。
【0083】
GP88のアッセイは、典型的には、GP88タンパク質を同定することが可能な検出できるように標識した抗体の存在下で生物液、組織抽出物、新たに採取され若しくは培養された細胞、又はその培地などの生物試料をインキュベーションする工程、及び当該技術分野で周知の多数の技術で抗体を検出する工程を含む。
【0084】
生物試料をニトロセルロースなどの固相支持体若しくは担体、又は細胞若しくは細胞粒子若しくは可溶性タンパク質を固定化する他の固相支持体で処理することができる。次いで、支持体を洗浄し、続いて検出可能に標識した抗GP88抗体で処理する。これに続いて支持体を洗浄して未結合の抗体を除去する。次いで、該支持体上の結合標識の量を慣用の手段によって検出することができる。固相支持体とは、限定するものではないが、ガラス、ポリスチレンポリプロピレン、ナイロン、改質セルロース、又はポリアクリルアミドなどの抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体を意図する。
【0085】
GP88タンパク質に対する所与の多くの抗体の結合活性を周知の方法に従って決定することができる。当業者は、日常的な実験を用いることにより、各決定に対する有効な(operative)及び最適なアッセイ条件を決定することができる。
【0086】
GP88タンパク質又はその機能性誘導体の検出及び該タンパク質に特異的な抗体の検出は、酵素結合免疫測定法(EIA)又は放射線免疫測定法(RIA)などの当該技術分野で周知である種々の免疫測定法によって成すことができる。そのようなアッセイは当該技術分野で周知であり、当業者は本発明の抗GP88抗体及びGP88タンパク質を用いてそのようなアッセイを如何にして実施するかを容易に理解することができる。
【0087】
そのような免疫測定法は、血清又は他の生物液中及び組織、細胞、細胞抽出物、又は生検中のGP88タンパク質の検出及び定量化に有用である。好ましい実施態様において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患を診断するための手段として、組織被検物中のGP88濃度を測定する。別の好ましい実施態様において、生物液試料中のGP88濃度を用いて、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかを決定する。
【0088】
ある種のタイプの癌(例えば、乳癌)の存在及び悪性度は、GP88タンパク質のレベルの増加に「比例する」と言う。本明細書中で用いる「比例する」との用語は、タンパク質のレベルと癌の悪性特性との間の、直線的な又は一定の関係に限定されることを意図しない。本明細書中に用いる「比例する」との用語は、増加したGP88タンパク質のレベルは、当業者が容易に決定することができるタンパク質の濃度範囲において、癌又はGP88の増加した発現に関連する他の疾患の悪性特性の様相、再発、又は提示と関連することが示されることを意図している。
【0089】
本発明の別の実施態様は、薬物又は薬剤(agent)のGP88の発現又は産生を阻害する能力を測定することによる抗癌又は抗ウイルス薬物又は剤の効力の評価に関する。本発明の抗体は、該抗体を用いて上記の免疫測定法の1つでGP88タンパク質の量を決定することができるという点で、抗癌又は抗ウイルス薬物の評価方法に有用である。あるいは、産生されたGP88タンパク質の量を本明細書中で記載した生物アッセイ(細胞増殖アッセイ)によって測定する。より正確な評価のために生物アッセイ及び免疫測定法を組み合わせて用いることができる。
【0090】
追加の実施態様は、好ましくはRNA−DNAハイブリダイゼーションアッセイを用いて、組織又は生物液中のGP88又はその機能性誘導体をコードする存在しているmRNA配列の量を測定することに基づいた、癌又はGP88発現の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。ある種の癌の存在及びその悪性度は、存在するそのようなmRNAの量に比例する。そのようなアッセイでは、mRNAの供給源は生検及び周囲組織であることができる。mRNAの量を測定するための好ましい技術は、相補性塩基配列のDNAを用いたハイブリダイゼーションアッセイである。
【0091】
別の関連する実施態様は、抗GP88中和抗体による治療によって増殖又は他の生物活性が阻害されるかを組織生検について測定することに基づいた、癌又はGP88反応の増加に関連する他の疾患の診断用アッセイに関する。
【0092】
別の関連する実施態様は、GP88mのRNAの発現阻害に対する薬剤の効果を測定する工程を含む、抗癌又は抗ウイルス薬物又は薬剤の効力の測定方法である。同様に、そのような方法を用いて、GP88のmRNAの産生を阻害する該薬剤の能力を測定することによってGP88拮抗剤の効力を同定又は評価することができる。
【0093】
核酸検出アッセイ、特にハイブリダイゼーションアッセイは、サイズ、配列、又は制限エンドヌクレアーゼによる消化に対する感受性など、核酸分子の任意の特徴に基づくことができる。検出が観察者に報告又は信号伝達される形式を変えることによって、そのようなアッセイの感度を増加することができる。酵素標識、放射性同位体標識、蛍光標識、化学標識、及び修飾塩基を含む非常に種々の標識が多く開発され、当業者によって用いられている。
【0094】
核酸の検出感度の制限を克服する一方法は、アッセイを行なう前に核酸を選択的に増幅することである。この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応」又はPCRと称されている(米国特許第4,683,202号及び4,582,788号)。PCR反応は、その配列が先に精製されてなく、かつ、特定の試料中で単に単一のコピーで存在していたとしても、特定の核酸配列の濃度を選択的に増加する方法を提供する。
【0095】
生物液中のGP88の検出
本発明の好ましい実施態様は、生物液中のGP88を検出する方法及びキットに関する。上記の通り、癌細胞は高いレベルのGP88を発現する。本発明は、GP88を約0.1ng/mlの低さの濃度において生物液中で検出することができることを実証している。上記の通り、GP88は癌細胞中で過剰発現し、高いレベルのGP88は腫瘍形成を示している。典型的には、腫瘍マーカーの存在を検出するためには組織試料又は生検が必要である。例えば、乳癌患者には、特定の腫瘍マーカーが存在しているかの決定の検査のために乳房組織試料を取り出すため、しばしば針生検手順が施される。生検手順は、任意の外科手術手順と同様に、患者への増加した危険性と関連している。生検手順は、特に、腫瘍形成の増加した危険性に関連している。
【0096】
組織生検手順と異なり、血液サンプリングは、必要な場合には患者が行なうことができる日常的かつ安全な手順である。例えば、小さな滅菌ランセットを用いて患者の指先を穿刺し、わずかな試料血液を得ることができる。血液試料を、血清又は血奬分画を単離するために任意の好適な手順によって処理することができる。あるいは、全血試料を用いることができる。抗GP88抗体を利用したアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて血清試料中のGP88の存在を検出し、その量を定量化することができる。血液サンプリングによって組織生検に関連する危険性が回避される。さらに、規則正しく(例えば、毎週の検査)同じ患者から血液試料を得ることにより、長期にわたり、患者のモニタリングによって血清中のGP88のレベルを検出することが可能となる。GP88のレベルが増加した場合、有意な腫瘍の増殖が起こる前に、医師はそれに応じて患者を治療することができる(例えば、GP88アンタゴニストを投与する)。
【0097】
生物液中のGP88濃度測定方法を実施する際には、生物液(例えば、全血、血奬、血清、リンパ、唾液、及び尿)を抗GP88抗体と接触させ、GP88の濃度を測定する。例えば、約0.1ng/mlの低さの濃度でGP88を検出することができる。本発明の別の実施態様において、少なくとも約10ng/mlの生物液の濃度でGP88を検出することができる。上記の通り、抗GP88抗体はGP88結合することができ、試料中のGP88の量を決定するのに用いることができる。生物液試料中のGP88の濃度の測定に用いることができる抗GP88抗体の例には、ATCC受託番号6B3PTA−5262及び6B2PTA−5261(10801 University Blvd.、マナッサス(Manassas)、VA20110)のハイブリドーマ細胞系から産生される抗体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
ELISAは、試料中の抗原量の定量化のための速やかで、高感度で、かつ再現性のあるアッセイである。「サンドイッチ」ELISAでは、抗原(例えば、タンパク質)に結合又は「捕捉」する一次抗体及び同様に抗原に結合する標識した二次抗体を利用する。検出部分に対する基質を添加することによって、試料中に存在する抗原の量に比例するシグナル(例えば、色の変化又は放射能)が生ずる。代表的なサンドイッチELISAにおいて、一次抗体をマイクロタイタープレートのウェルなどの支持体に吸着させる。抗原を含有する試料を付着した一次抗体とともにインキュベーションし、抗原を抗体に結合させる。次に、検出分子(例えば、酵素、放射性核種)で標識した二次抗体も抗原に結合させる。標識の例には、アルカリホスファターゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼが含まれる。あるいは、二次抗体は標識せずに、三次抗体(例えば、標識した抗IgG抗体)をアッセイで用いることもできる。標識した三次抗体は、免疫グロブリンG(IgG)の定常領域に結合する。酵素に対する基質(例えば、2,2−アゾ−ビス(3−エチルベンゼンチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、o−フェニレンジアミン(OPD)、及び3,3,−5,5−テトラメチルベンジジン基剤(base)(TMB))を添加することによって、試料中に存在する抗原の量に比例して試料溶液中の色の変化が生ずる。色の変化は、分光光度計を用いて、酵素標識によって引き起こされる色の変化を検出するのに好適な波長で(例えば、TMBを基質として用いて624nm)検出することができる。
【0099】
あるいは、二次抗体又は三次抗体を放射能部分(例えば、l25I、35S、32P、12C)によって標識することができる。放射能検出器(例えば、ガンマ計数管)を用いて、抗原結合後に二次抗体より発せられる放射能を測定することができる。放射能レベルは、試料中に存在する抗原量に比例する。さらに別の代替例において、生物液試料中のGP88レベルをウエスタンブロット手順を用いて決定することができる。代表的なウエスタンブロット手順では、電流(例えば、20mA)が施されるSDSポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)に生物液試料をローディングして、生物液中試料のタンパク質を分子量に応じて分離する。タンパク質をニトロセルロースメンブレンにトランスファーし、標識した抗GP88抗体とともにインキュベーションする。抗GP88抗体を酵素で標識する場合、ニトロセルロースメンブレンをニトロセルロースメンブレン上に位置するGP88タンパク質バンドの変色を引き起こす酵素に対する基質に曝す。試料中のGP88量は、色の変化に比例する。
【0100】
本発明の一実施態様において、ハイブリドーマ細胞系(ATCC番号PTA−5262)によって産生されるGP88モノクローナル抗体6B3をサンドイッチELISAでの一次抗体として用いる。GP88に対して生じた種々の抗体をELISAで用いて、GP88(例えば、ATCC番号PTA−5262、ATCC番号PTA−5261、ATCC番号PTA−5589、ATCC番号PTA−5593、ATCC番号PTA−5259、ATCC番号PTA−5260、ATCC番号PTA−5591のハイブリドーマ細胞系からそれぞれ産生されるGP88モノクローナル抗体6B3、6B2、2A5、4D1、3F5、5B4、3F8)を検出することができる。セイヨウワサビペルオキシダーゼで標識したGP88抗体を二次抗体として用い、TMBを基質として用いることができる。あるいは、免疫グロブリンの定常領域に結合することができる標識した抗体をELISAでの二次抗体(例えば、抗IgG抗体)として用いることができる。既知量のGP88のタンパク質(0.1、2、5、10、20ナノグラム)を担体(例えば、緩衝溶液)中に含有する試料を用いて、ELISAの結果に基づいた標準曲線を作成することができる。試料の光学濃度を試料中の既知量のGP88に対してプロットし、標準曲線を作成することができる(例えば、図16)。未知試料中のGP88の濃度を、未知試料の光学濃度を測定し、GP88濃度を計算するために標準曲線を用いることによって決定できる。
【0101】
サンドイッチELISAの代表的なプロトコルには、以下の工程が含まれる。
【0102】
(1)一次抗体を含有する溶液をマイクロタイタープレートのウェルの底に添加する(例えば、20mg/mlの抗体を含有する50マイクロリッターの抗体溶液)。
【0103】
(2)マイクロタイタープレートを4℃で一晩インキュベーションして、抗体をウェルに完全に結合させる。
【0104】
(3)ウェルを緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))で洗浄する。
【0105】
(4)ウェルを遮断用緩衝液(例えば、PBS中のウシ血清アルブミン(BSA))で飽和することによって非特異的タンパク質結合を遮断する。
【0106】
(5)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0107】
(6)抗原を含有する溶液を添加し、マイクロタイタープレートを室温で少なくとも2時間インキュベーションする。
【0108】
(7)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0109】
(8)標識した二次抗体を添加し、マイクロタイタープレートを室温で少なくとも2時間インキュベーションする。
【0110】
(9)緩衝溶液でウェルを洗浄する。
【0111】
(10)緩衝溶液で希釈された所望の基質を添加して、反応が起こるのに十分な時間を許容する。
【0112】
(11)得られた基質溶液の光学濃度を基質に対して適切な波長においてELISA読み取り器で読み取る。
【0113】
図16は、血清生物液中のGP88の濃度の決定に用いることができる代表的な曲線を示している。既知量の組換えGP88タンパク質を含有する試料を調製して、ELISAアッセイを用いて測定した。試料の光学濃度を既知量GP88のタンパク質に対してプロットした。図16は、生物液試料のOD(光学濃度)(y軸)及びGP88の濃度(x軸)の間の直線的な関係を示している。上記の好適な検出技術(例えば、ELISA、RIA、ウエスタンブロット)において抗GP88抗体を用いて生物液試料中のGP88の濃度を決定することができる。一実施態様において、生物液試料の光学濃度を測定し、測定した光学濃度を標準曲線(例えば、図16)と比較することによって生物液試料中のGP88の濃度を決定する。例えば、図16の曲線を用いて、抗GP88抗体と接触させ、かつ、免疫測定法を施した生物液試料の光学濃度が0.6である場合、生物試料液中のGP88濃度は15ng/mlであろう。
【0114】
健康なヒトでのGP88の血清濃度は、健康なヒトでは約23ng/ml及び44ng/mlの間で変動する。健康なヒトボランティアから得た血奬中のGP88レベルの測定では、同様の結果が示された。ヒト乳癌患者では、血清中で高いレベルのGP88が示された。20人の乳癌患者のうち3人で、高いレベルのGP88(49、51、及び56ng/ml)が示された。しかしながら、治療に対して何ら反応を示さない進行性の疾患(例えば、転移性)を有する患者は、劇的に増加したGP88血清レベルを長期にわたって有していた(27〜233ng/ml、6ヶ月)。抗腫瘍形成治療に反応性でない進行した(advanced)疾患を有する別の患者は、2002年3月21日に158ng/mlのGP88血清濃度を有し、2002年5月23日に148ng/mlのGP88血清濃度を有していた。非転移性乳癌であると最初診断された患者及び寛解中の患者は、正常範囲内のGP88血清濃度を有していた。したがって、高いGP88血清濃度(例えば、約40〜50ng/ml)は腫瘍形成を示している。非常に高いGP88血清レベル(例えば、約100〜300ng/ml)は、進行性の疾患であり、かつ、抗腫瘍形成治療に抵抗性であることを示している。
【0115】
本発明の別の実施態様において、第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、第2の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルよりも腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法を提供する。最初の生物液試料は、癌又は細胞増殖に関連する疾患を有すると疑われる患者から採取することができる。最初の生物液試料中のGP88のレベルを測定し、異なる時間に採取した第2の生物液試料中のGP88のレベルと比較することができる。生物液試料を規則正しい間隔で採取し、後の試料中の測定されたGP88濃度を第1の試料中のGP88レベルと比較するすることができる。結果が長期にわたって生物液中のGP88のレベルの増加を示す場合、医師は腫瘍の増殖を減少又は排除するために患者の治療を開始又は改変することができる。
【0116】
本発明は、抗腫瘍形成治療を受けている患者から得た生物液試料中のGP88の濃度を測定する工程を含み、少なくとも約100ng/mlのGP88の濃度は患者が抗腫瘍形成治療に反応しないことを示す、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかの判定方法も提供する。「抗腫瘍形成治療」という用語は、癌又は増殖に関連する疾患を治療する目的のための任意の薬剤、薬物、治療、又は薬剤、薬物、若しくは治療薬の投与方法をいう。抗腫瘍形成治療の例には、抗エストロゲン治療、抗腫瘍抗体(例えば、抗GP88抗体)の使用、アンチセンス療法(例えば、抗GP88核酸)、化学療法、放射線療法、及び遺伝子治療が含まれる。抗腫瘍形成治療を受けている患者のGP88血清濃度を、規則正しい間隔で(例えば、毎日、毎週、毎月)血清試料を分析することによってモニタリングすることができる。少なくとも約100ng/mlのGP88血清レベルは、患者が抗腫瘍形成治療に反応性でないか又は反応していないことを示すであろう。
【0117】
ある種の抗腫瘍形成治療は、患者に対して望ましくない副作用又はさらなる危険性を有する。例えば、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン)による乳癌の治療又は予防は、卵巣癌の危険性の増加と関連している。高いGP88レベルは、患者が抗エストロゲンによる治療に反応しないことを示している。患者が高いGP88レベルを有する場合(例えば、約100ng/mlより大きい)、患者は抗エストロゲン治療に反応性でない可能性が高く、抗エストロゲン治療が有するさらなる危険性はいずれの利益よりも勝っているであろう。化学療法も、嘔気、衰弱、脱毛、食欲喪失などの多くの望ましくない副作用と関連している。患者が特定のタイプの化学療法に反応しない可能性が高い場合、より少ない副作用を有する抗腫瘍形成治療がより効果的であり、患者にさらなる外傷を与えない。本発明は、患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかの判定に有用である。
【0118】
本発明の別の実施態様は、生物液試料中のGP88濃度を測定する工程、及び生物液試料中のGP88濃度が約40〜50ng/mlである場合に癌を治療又は予防するのに十分な量の抗腫瘍形成治療を投与する工程による、患者における癌再発の治療又は予防方法を提供する。先に記載して示した通り、約40ng/ml以上のGP88血清レベルを有する患者は癌であると診断されるか、有意に高い癌発達の危険性を有する。抗腫瘍形成治療(例えば、抗エストロゲン治療、抗腫瘍抗体療法、アンチセンス治療、化学療法、放射線療法、及び遺伝子治療)を癌であると診断されたか、高い癌発達の危険性があると診断された患者に疾患を予防又は治療するために投与することができる。
【0119】
抗エストロゲン治療は、腫瘍の成長を予防又は治療する目的での抗エストロゲン剤の投与に関する。抗エストロゲン剤の例には、タモキシフェン及びラロキシフェンが含まれる。クエン酸タモキシフェン(「タモキシフェン」)は、強力な抗エストロゲン及び抗新生物特性が実証された、乳癌を患った患者によく処方される非ステロイド抗エストロゲンである。米国特許第4,536,516号を参照されたい。タモキシフェンは、エストロゲン受容体への結合に関してエストロゲンと競合するエストロゲン受容体アンタゴニストである。他の抗エストロゲンには、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害剤(例えば、アリミデックス(Arimidex(登録商標)(アナストロゾール)、フェメラ(Femera)(登録商標))、及びエストロゲン受容体ダウンレギュレート調節剤(down-regulators)(例えば、ファスロデックス(Faslodex)(登録商標))が含まれる。タモキシフェンの抗エストロゲン効果は、標的組織中の結合部位に関してエストロゲンと競合する能力に関するものであってもよい。アロマターゼ阻害剤などの他の抗エストロゲンは、利用可能なエストロゲンの量を阻害又は減少させる。
【0120】
抗腫瘍抗体(例えば、抗GP88抗体、ヘルセプチン)を患者に投与して、腫瘍を起こす又は促進するタンパク質又はその他の分子の活性を阻害することができる。例えば、抗GP88抗体を投与してGP88の活性を阻害することができる。抗腫瘍抗体を上記の種々の経路(経口、注射、非経口)で患者に投与することができる。
【0121】
アンチセンス治療とは、腫瘍の複製を促進する遺伝子を阻害するため、あるいは腫瘍を促進するタンパク質の翻訳を阻害するため、患者へアンチセンス核酸を投与することをいう。アンチセンス治療の例には、抗GP88アンチセンス核酸の投与が含まれる。アンチセンス核酸は、組織に直接注射することによって投与することができ、あるいは静脈内又は非経口投与することができる。生体外(ex vivo)技術を用いてアンチセンス核酸を細胞に投与することができる。腫瘍形成細胞又は正常細胞を被検体(例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、又はニワトリ)から取り除いて、培養物中で増殖させることができる。細胞は、アンチセンス核酸をコードするDNA又はRNAでトランスフェクションされ、再び被検体に導入され、アンチセンス核酸を産生して、腫瘍細胞増殖を阻害することができる。
【0122】
「遺伝子治療」とは、腫瘍の増殖を予防又は治療するために、抗腫瘍タンパク質をコードする核酸を患者へ投与することをいう。アンチセンス核酸と同様に、直接注射することにより、あるいは上記のex vivo技術を用いて、遺伝子治療用の核酸を投与することができる。遺伝子治療用の核酸でトランスフェクションされた細胞は、抗腫瘍タンパク質を産生して、腫瘍の増殖を阻害又は予防する。
【0123】
化学療法とは、一般的に、化学化合物又は化学化合物の組み合わせ(例えば、メトトレキセート)を用いた癌の治療をいう。化学療法剤の特定の組み合わせは、特定の腫瘍タイプ及び疾患の段階に依存する。放射線療法とは、腫瘍細胞を直接的に殺すための放射線(例えば、ガンマ照射)の使用をいう。用いられる照射の量及びタイプも、特定の腫瘍タイプ及び疾患の段階に依存する。
【0124】
本発明は、腫瘍形成診断用及び患者が抗腫瘍形成治療に反応性であるか又は反応しているかを決定するためのキットも提供する。そのようなキットは、容器及びGP88検出用の化合物(例えば、抗GP88抗体又は抗体フラグメント)を含有することが好ましい。抗GP88抗体又は抗体フラグメントを、好適な検出方法(例えば、ELISA、放射線免疫測定法)で用いるために標識することができる(例えば、酵素標識、放射性同位体標識、蛍光標識、及び化学標識)。一実施態様において、キットは、少なくとも1種の一次抗体(例えば、抗GP88モノクローナル抗体6B3)、少なくとも1種の標識した二次抗体(例えば、HRPなどの検出酵素で標識した抗ヒトGP88ポリクローナル抗体)、及び少なくとも1種の基質(例えば、TMB)を含有する。あるいは、キットは、酵素で標識した二次抗体の代わりに放射性標識した二次抗体を含有することができる。キットは、検出アッセイを行うための使い捨て型補給品(例えば、マイクロタイタープレート、ピペット)も含有することができる。
【0125】
GP88アンチセンス成分
本発明は、GP88アンチセンス成分も提供する。細胞中でのアンチセンスRNAの構成性発現は20種より多くの遺伝子の発現を阻害することが示され、列記は増え続けている。アンチセンス効果の可能な機構は翻訳の遮断又はスプライシングの妨害であり、双方ともin vitroで観察されている。スプライシングの妨害によって、保存性が低いイントロン配列が使用されることとなり、したがってより大きな特異性が生じ、ある種の遺伝子産物の発現は阻害されるが別の種ではそのホモログは阻害されないこととなる。
【0126】
アンチセンス成分との用語は、mRNAの翻訳が阻害されるようにアンチセンスRNA及びmRNAの間の分子ハイブリダイゼーションを生ずるのにアンチセンスRNAが特異的である特定のmRNA分子に十分に相補的である、RNA配列及び該RNA配列をコードするDNA配列に対応する。そのようなハイブリダイゼーションをin vivo条件下で行うことができる。アンチセンスRNAの作用によって、細胞中での遺伝子発現の特異的阻害が生ずる。
【0127】
本発明によれば、GP88cDNAに対するDNAアンチセンスで多発性骨髄腫細胞をトランスフェクションすることによって、内因性GP88の発現が阻害され、アンチセンスcDNAでトランスフェクションした細胞の腫瘍形成が阻害される。このアンチセンスDNAは、作用がスプライシング、転写、又は翻訳のレベルであるかに関わらず、アンチセンスRNAがGP88遺伝子(又はmRNA)とハイブリダイゼーションしてGP88遺伝子発現を阻害することができるように、GP88遺伝子に対して十分な相補性(長さ約18〜30ヌクレオチド)を有していなければならない。阻害の程度は、本明細書中の技術が与えられれば過度の実験なしに当業者に容易に認識でき、増殖がGP88の発現に依存した細胞の増殖を阻害するのに十分であることが好ましい。当業者は、アンチセンスRNA手法は特異的遺伝子発現を遮断するために用いられる多数の既知の機構の1つであることを十分に認識している。
【0128】
本発明のアンチセンス成分は、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88cDNAのいくつかの部分のいずれとも又はGP88のmRNAとハイブリダゼーションすることができる。当業者に容易に理解される通り、本発明に必要な最小量の相同性は、好ましくは他のmRNA分子の機能及び他の無関係な遺伝子の発現に影響を及ぼすことなしにGP88のDNA又はmRNAとのハイブリダイゼーションを生じ、かつ、DNAの転写又はmRNAの翻訳若しくは機能を阻害するのに十分なものである。
【0129】
プロモーターを含む適切な調節配列とともにアンチセンスRNAをコードするDNAが配置されたレトロウイルスベクター及びプラスミドを含むベクターによる形質転換又はトランスフェクションによってアンチセンスRNAが細胞に送達され、宿主細胞中でアンチセンスRNAの発現が生じる。GP88のcDNAフラグメントをアンチセンス方向で含有する種々のアンチセンス発現ベクターの安定的なトランスフェクションを行った。レトロウイルスベクターを用いてアンチセンス成分を細胞に送達することもできる。リポソームによって送達することもできる。
【0130】
in vivo治療用のアンチセンス技術の目的のために、現在好ましい方法は、発現ベクター中に構成されたアンチセンスcDNAフラグメントの安定的なトランスフェクションを行なうのに代えて、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることである。長さ15〜30個の塩基のサイズを有し、かつ、コード配列、3’又は5’非翻訳領域、又は他のイントロン配列を含む標的GP88のcDNAのいくつかの部分のいずれか、又はGP88のmRNAとハイブリダイゼーション可能な配列を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが好ましい。GP88に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、最も効力があるアンチセンス効果を有するものとして選択されることが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチド配列の標的部位を律する要因は、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性、及び標的配列への到達容易性(accessibility)に関連する。GP88タンパク質翻訳及びGP88に関連する表現型の阻害、例えば培養物中の細胞増殖の阻害を測定することにより、配列をそのアンチセンス活性についてin vitroでスクリーニングすることができる。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、RNAのほとんどの領域(5’及び3’非翻訳領域、AUG開始部、コード領域、スプライス接合部、及びイントロン)を標的にすることができることは既知である。
【0131】
好ましいGP88アンチセンスオリゴヌクレオチドは安定であり、ヌクレアーゼ(オリゴヌクレオチドを潜在的に分解することができる酵素)に対して高い回復力(resilience)を有し、非毒性用量でそれらを疾患組織へ運搬することを可能とする好適な薬物動態を有し、かつ、形質膜を横切る能力を有するオリゴヌクレオチドである。
【0132】
ホスホロチオエートアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることができる。リン酸ジエステル結合の修飾及び複素環又は糖の修飾によって、効力を増加することができる。リン酸ジエステル結合の修飾に関して、ホスホロチオエートを用いることができる。N3’−P5’ホスホロアミデート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化し、RNAへの結合を増加すると記載されている。ペプチド核酸(PNA)結合は、リボース及びリン酸ジエステル骨格の完全な置換であり、ヌクレアーゼに安定であり、RNAに対する結合親和性を増加し、かつ、RNAseHによって開裂されない。その基本構造は、アンチセンス成分としてそれを最適化することを可能とする修飾を受け入れやすい(amenable)。複素環の修飾に関して、ある種の複素環修飾は、RNAseH活性を妨げることなしにアンチセンス効果を増大することが証明されている。そのような修飾の例は、C−5チアゾール修飾である。最後に、糖の修飾も考慮することができる。2’−O−プロピル及び2’−メトキシエトキシリボース修飾は、細胞培養物中及びin vivoにおいてヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化する。c−raf−1を標的としたこれらのタイプのオリゴヌクレオチドを用いた細胞培養物及びin vivo腫瘍実験では、効力が増大した。
【0133】
送達経路は、上記の基準に従って測定された最良のアンチセンス効果を提供するものである。アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いたin vitro細胞培養アッセイ及びin vivo腫瘍増殖アッセイによって、カチオン性リポソームによって仲介される送達、レトロウイルスベクターによって仲介される送達、及び直接的な送達が効果的であることが示された。別の可能性ある送達様式は、抗体を用いて腫瘍細胞の細胞表面マーカーを標的としたものである。GP88又はその受容体に対する抗体は、この目的に役立つことができる。
【0134】
組換えGP88
本発明は、他の哺乳動物DNA配列を実質的に有さない組換えGP88ポリペプチド又はその機能性誘導体を発現するためのDNA発現系にも関する。そのようなDNAは、二重鎖又は一本鎖であることができる。DNA配列は、好ましくは、別のポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを可能とするために約20個以上のヌクレオチドを有しなければならない。GP88タンパク質又はその同族体若しくは機能性誘導体をコードする配列以外の配列とのハイブリダイゼーションが無いことによって特徴付けられるより高い特異性のハイブリダイゼーションを達成するためには、長さが少なくとも50個のヌクレオチドが好ましい。
【0135】
本発明は、上記のDNA分子、発現可能なベヒクル又はベクター、及びベヒクルでトランスフェクションされた又は形質転換された、かつ、ポリペプチドを発現することができる宿主にも関する。そのような宿主は、原核生物、好ましくは細菌、又は真核生物、好ましくは酵母若しくは哺乳動物細胞であることができる。好ましいベクター系には、昆虫細胞中で発現するバキュロウイルスが含まれる。形質転換、形質導入(transduction)、トランスフェクション、感染、又は当該技術分野で既知の関連するプロセスによって、DNAを宿主生物に組み込むことができる。GP88ポリペプチドをコードするDNA及びmRNA配列に加えて、本発明は核酸配列の発現方法も提供する。さらに、遺伝子配列及びオリゴヌクレオチドによって、本明細書中に記載されるポリペプチドGP88と配列相同性を有する追加のポリペプチドの同定及びクローニングが可能となる。
【0136】
発現ベクターは、(適切な転写及び/又は翻訳制御配列の存在ゆえに)ベクター中にクローニングされたDNA(又はcDNA)分子を発現することができ、それによってポリペプチド又はタンパク質を産生するベクターである。クローニングされた配列の発現は、発現ベクターが適切な宿主細胞に組み込まれたときに起こる。原核生物発現ベクターを用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の原核生物細胞であろう。同様に、真核生物発現系を用いた場合、適切な宿主細胞はクローニングされた配列を発現することができる任意の真核生物細胞であろう。例えば、バキュロウイルスベクターを用いて、GP88cDNAをクローニングし、続いて昆虫細胞中でcDNAを発現することができる。
【0137】
GP88ポリペプチド又はその機能性誘導体をコードするDNA配列を、連結のための平滑末端又は付着末端、適切な末端を与える制限酵素消化、必要に応じた付着末端の充填(filling)、望ましくない接合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び的確な酵素リガーゼによる連結を含む慣用技術に従って、ベクターDNAと組み換えることができる。そのような操作のための技術は(35)で論じている。
【0138】
核酸分子は、該核酸分子が転写及び翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、かつ、そのような配列がポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に動作可能に結合されている場合、ポリペプチドを発現することができる。動作可能な結合とは、調節DNA配列及び発現させたいDNA配列が遺伝子発現するような方法で結合される結合である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は生物ごとに変わってもよいが、一般には、原核生物ではプロモーター(RNA転写の開始を指示する)及びRNAに転写されたときにタンパク質合成の開始をシグナル伝達するDNA配列の双方を含有するプロモーター領域を含んでいなければならない。それらの領域は、通常、TATAボックス、キャップ形成配列(capping sequence)、CAAT配列などの転写及び翻訳の開始に関与するそれらの5’非コード配列などを含む。
【0139】
所望する場合、タンパク質をコードする遺伝子配列に対する3’非コード領域を記載の方法(適切なcDNAライブラリーのスクリーニング又はPCR増幅)によって得ることができる。この領域は、終結及びポリアデニル化などの転写終結調節配列が存在するために保持することができる。したがって、タンパク質をコードするDNA配列にもともと隣接している3’領域を保持することによって、転写終結シグナルを付与することができる。発現宿主細胞中で転写終結シグナルが与えられず、又は満足がいくほど機能的ではない場合、別の遺伝子由来の3’領域に置き換えることができる。
【0140】
配列間の結合の性質によって、フレームシフト変異の導入が生じず、かつ、ポリペプチド遺伝子配列の転写を指示するプロモーター配列の能力が妨げられない場合、プロモーター領域配列及びGP88コード配列などの2つのDNA配列が動作可能に結合していると言う。プロモーター配列は、原核生物性、真核生物性、又はウイルス性であることができる。好適なプロモーターは、誘導性、抑制性、又は構成的であることができる。
【0141】
真核生物プロモーターには、マウスメタロチオネインI遺伝子用プロモーター、ヘルペスウイルスのTKプロモーター、遺伝子gal4プロモーター、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、及びサイトメガロウィルス(CMV)プロモーターが含まれるが、限定するものではない。強力なプロモーターが好ましい。そのようなプロモーターの例は、T3、SP6、及びT7ポリメラーゼ、バクテリオファージラムダのPLプロモーター、recAプロモーター、マウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーター、SV40プロモーター、及びCMVプロモーターを認識するものである。
【0142】
本発明の教示を特定の問題又は環境へ適用することは、本明細書中に含まれる技術に照らして、当業者の能力の範囲内であると理解すべきである。以下の限定するものではない実施例によって本発明をより十分に例証する。
【実施例1】
【0143】
生物液試料中のGP88濃度の決定
17人の正常かつ健康なヒトボランティアから血清試料を得た。ヒト血清試料中のGP88濃度を酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって3つ組で測定した。30%グリセロール及び1%ミルク−PBSの溶液に希釈した組換えGP88から0、0.1、0.25、0.5、1、3、10、及び20ng/mlの濃度で標準のGP88試料を調製した。マイクロタイタープレート上の100マイクロリットルのウェルを1ミリリットルあたり10マイクログラムの抗ヒトGP88モノクローナル抗体6B3(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の0.78mg/mlの6B3抗体)でコーティングし、4℃で一晩インキュベーションした。ウェルをPBSで洗浄し、続いて抗ヒトPCDGFポリクローナル(IgG分画)を各ウェルに3マイクログラム/mlの濃度で37℃で1.5時間添加した。各ウェルへの検出抗体(セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)−ヤギ−ウサギ−IgG)の添加前に、ウェルをPBS中で洗浄した。TMB(基質)を添加し、試料とともに1時間インキュベーションした。620ナノメートルの波長で設定したELISA分光計読み取り器を用いて試料の光学濃度を決定した。各試料中のGP88量(x軸)に対して標準のGP88試料の光学濃度(y軸)をプロットし、標準曲線を作成した(図16)。未知試料中のGP88の濃度は、光学濃度を測定し、標準曲線(図16)を用いてGP88濃度を決定することによって決定した。表3は、17人の健康なヒトボランティアの各人のGP88血清試料濃度を提供するものである。
【0144】
【表3】
【0145】
表4は、抗腫瘍形成治療に反応しない進行した(advanced)進行性の乳癌を有する患者から採取したGP88の血清試料濃度を示している。GP88血清濃度は、6ヶ月の期間中に27ng/mlから233ng/mlに増加した。
【0146】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1A】図1Aは、1246、1246−3A、及びPC細胞系中のGP88タンパク質発現レベルを比較する。2%ウシ胎児血清(FBS)を補足したDME−F12培地中で細胞を培養した。抗K19T抗体を用いた免疫沈降及びウエスタンブロット分析により、GP88発現レベルを測定した。
【図1B】図1Bは、1246、1246−3A、及びPC細胞系でのGP88mRNA発現レベルを比較する。RPL32のmRNAを等量のRNAローディングの内部対照として用いた。
【図1C】図1Cは、無血清及び血清含有培地中の1246細胞(左パネル)及びPC細胞(右パネル)中でのGP88mRNAの発現を比較する。結果により、1246細胞中でのGP88発現はウシ胎児血清の添加によって阻害されるのに対し、腫瘍形成能の高いPC細胞ではそのような阻害が観察されないことが示される。
【図2】図2は、抗GP88中和抗体の濃度の増加による、腫瘍形成能の高いPC細胞の治療効果を例証している。
【図3】図3は、106個のアンチセンスGP88をトランスフェクションしたPC細胞を皮下注射したC3Hマウス(下部)及び空のベクターをトランスフェクションした対照PC細胞を皮下注射したC3Hマウス(上部)を示している。
【図4】図4は、C3Hマウス腫瘍組織及び周囲正常組織中でのin vivoGP88発現レベルを示している。
【図5】図5は、エストロゲン受容体陽性及びエストロゲン受容体陰性ヒト乳癌細胞系中でのGP88mRNA発現レベルを示している。
【図6】図6は、マウス乳房上皮細胞系C57の増殖に対するGP88濃度の増加の効果を示している。
【図7】図7は、サイトメガロウィルスプロモーターで制御されかつアンチセンス方向でGP88を含有する発現ベクターでトランスフェクションしたPC細胞、及び空のベクターでトランスフェクションしたPC細胞の増殖特性及び腫瘍形成能力を示している。
【図8A】図8Aは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。抗GP88抗体であるK19T及びS14Rを生じさせるための抗原として用いられるペプチド領域には下線を引いてある。pCMV4哺乳動物発現ベクターにアンチセンス方向でクローニングされた領域が括弧の間に示されている。
【図8B】図8Bは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。
【図8C】図8Cは、マウスGP88のヌクレオチド及び推定アミノ酸配列を示している。
【図9A】図9Aは、ヒトGP88cDNAのヌクレオチド配列を示している。pcDNA3哺乳動物発現系にアンチセンス方向でクローニングされた領域が括弧の間に示されている。
【図9B】図9Bは、ヒトGP88の推定アミノ酸配列を示している。抗ヒトGP88中和抗体を生成するための抗原として用いるE19V領域に下線を引いてある。それは、マウスS14R領域に相当する領域A14Rも示している。
【図10】図10は、グラヌリンg、f、B、A、C、D、及びe(右側)として定義される7つと半分の繰り返しを示すように並べたマウスGP88のアミノ酸配列を示している。この図示により、抗GP88中和抗体を生成するためのGP88抗体を生じさせるのに用いる領域K19T及びS14Rが変異体領域とみなされるものの中の2つのエピセリン/グラヌリンの繰り返しの間に見出されることが示される。Batemanら(6)による繰り返しのグラヌリン分類を右側及び左側に示す。グラヌリンB及びグラヌリンAはそれぞれ、Plowmanら(1992)(5)によるエピセリン2及びエピセリン1としても定義される。
【図11】図11は、GP88アンチセンスcDNAを発現ベクターにクローニングするための制限部位を示すpCMV4及びGP88cDNAクローンを図示したものを示している。
【図12】図12は、CCL−64細胞上のGP88細胞表面受容体への135I−rGP88の架橋を示している。スベリン酸ジスクシンイミジル(disuccinimidyl suberate)(DSS)を用いて架橋反応を行なった。7%ポリアクリルアミドゲル上でのSDS−PAGEによって反応産物を分析した。
【図13】図13は、3T3線維芽細胞、PC細胞、及びC57MG乳房上皮細胞上のGP88細胞表面受容体への135I−rGP88の架橋を示している。結果は、これらの種々の細胞系がCCL64細胞上のものと類似した分子量のGP88細胞表面受容体を提示することを示している(図12)。
【図14】図14は、非腫瘍形成MCF10A及び悪性(MCF7、MDA−468)ヒト乳房上皮細胞中でのGP88発現レベルを示している。
【図15】図15は、ヒト乳癌MDA−468細胞中でアンチセンスGP88cDNAのトランスフェクションによってGP88発現が阻害されることを示している。
【図16】図16は、既知量のGP88(x軸)を含有する血清試料の光学濃度(y軸)を示すグラフである。血清などの生物液試料中のGP88濃度を決定するのための参照として、グラフを用いることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物液を抗GP88抗体又は抗体フラグメントと接触させる工程及びGP88の濃度を測定する工程を含み、ここで1ミリリットルあたりのGP88濃度が約0.1〜約10ナノグラムの低さでもGP88を検出することが可能である、生物液中のGP88濃度の高感度測定方法。
【請求項2】
前記GP88抗体が、ATCC受託番号6B3PTA−5262及びATCC受託番号6B2PTA−5261から成る群から選択されるハイブリドーマ細胞株から産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗GP88抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者から採取した第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、前記患者から採取した第2の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、及び前記第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが前記第1の生物液試料中のレベルよりも腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法。
【請求項5】
抗GP88抗体を用いて生物液試料中のGP88レベルを測定する工程、及び前記生物液試料中のGP88レベルが腫瘍形成を示すのに十分であるかを判定する工程を含む、腫瘍形成の診断方法。
【請求項6】
患者から得た生物液試料中のGP88濃度を測定する工程、及び前記生物液試料中のGP88濃度が、前記患者が抗腫瘍形成治療に反応していないか又は反応性でないかを示すのに十分であるかを判定する工程を含む、患者が抗腫瘍形成治療に反応しているか反応性であるかの判定方法。
【請求項7】
患者から得た生物液試料中のGP88濃度を決定する工程、及び前記生物液試料中のGP88濃度が腫瘍形成を示すのに十分である場合に、癌を治療又は予防するのに十分な量の抗腫瘍形成治療を投与する工程を含む、患者における癌再発の治療又は予防方法。
【請求項8】
容器及び抗ヒトGP88抗体又は抗体フラグメントを含有する、腫瘍形成診断のためのキット。
【請求項9】
容器及び抗ヒトGP88抗体を含有する、患者が抗腫瘍形成治療に反応しているか又は反応性であるかを判定するためのキット。
【請求項10】
ATCC受託番号PTA−5262、ATCC受託番号PTA−5261、ATCC番号PTA−5589、ATCC番号PTA−5593、ATCC番号PTA−5259、ATCC番号PTA−5260、及びATCC番号PTA−5591から成る群から選択されるハイブリドーマ細胞株から産生される抗GP88抗体。
【請求項1】
生物液を抗GP88抗体又は抗体フラグメントと接触させる工程及びGP88の濃度を測定する工程を含み、ここで1ミリリットルあたりのGP88濃度が約0.1〜約10ナノグラムの低さでもGP88を検出することが可能である、生物液中のGP88濃度の高感度測定方法。
【請求項2】
前記GP88抗体が、ATCC受託番号6B3PTA−5262及びATCC受託番号6B2PTA−5261から成る群から選択されるハイブリドーマ細胞株から産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗GP88抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者から採取した第1の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、前記患者から採取した第2の生物液試料中のGP88タンパク質レベルを測定する工程、及び前記第2の生物液試料中の測定されたGP88タンパク質レベルが前記第1の生物液試料中のレベルよりも腫瘍形成能を示すのに十分な程に高い量であるかを判定することによって腫瘍形成を診断する工程を含む、腫瘍形成の診断方法。
【請求項5】
抗GP88抗体を用いて生物液試料中のGP88レベルを測定する工程、及び前記生物液試料中のGP88レベルが腫瘍形成を示すのに十分であるかを判定する工程を含む、腫瘍形成の診断方法。
【請求項6】
患者から得た生物液試料中のGP88濃度を測定する工程、及び前記生物液試料中のGP88濃度が、前記患者が抗腫瘍形成治療に反応していないか又は反応性でないかを示すのに十分であるかを判定する工程を含む、患者が抗腫瘍形成治療に反応しているか反応性であるかの判定方法。
【請求項7】
患者から得た生物液試料中のGP88濃度を決定する工程、及び前記生物液試料中のGP88濃度が腫瘍形成を示すのに十分である場合に、癌を治療又は予防するのに十分な量の抗腫瘍形成治療を投与する工程を含む、患者における癌再発の治療又は予防方法。
【請求項8】
容器及び抗ヒトGP88抗体又は抗体フラグメントを含有する、腫瘍形成診断のためのキット。
【請求項9】
容器及び抗ヒトGP88抗体を含有する、患者が抗腫瘍形成治療に反応しているか又は反応性であるかを判定するためのキット。
【請求項10】
ATCC受託番号PTA−5262、ATCC受託番号PTA−5261、ATCC番号PTA−5589、ATCC番号PTA−5593、ATCC番号PTA−5259、ATCC番号PTA−5260、及びATCC番号PTA−5591から成る群から選択されるハイブリドーマ細胞株から産生される抗GP88抗体。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2006−504104(P2006−504104A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548520(P2004−548520)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/034146
【国際公開番号】WO2004/039244
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505161220)エイアンドジー ファーマスーティカル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/034146
【国際公開番号】WO2004/039244
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505161220)エイアンドジー ファーマスーティカル インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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