説明

腫瘍特異的抗体

【課題】ヒト腫瘍特異的結合タンパク質、特に癌細胞上の抗原または分子に特異的な抗体または抗体フラグメントを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された軽鎖相補性決定領域1であって、前記領域を含む腫瘍特異的抗体および毒素または標識に結合した腫瘍特異的抗体を含む免疫複合体は、特定の抗原と特異的に結合することができ、癌を治療または予防するための医薬に、また前記腫瘍特異的抗体は哺乳類の癌の診断に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒト腫瘍特異的結合タンパク質およびそれらの全ての使用に関する。特に、本発明は、癌細胞上の抗原または分子に特異的な抗体または抗体フラグメントおよび本発明の結合タンパク質を含む免疫複合体、およびそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
2000年には、推定2200万人の人が世界中で癌に罹患し、620万例の死亡はこのクラスの疾病に原因があった。毎年、1000万例を越える新たな症例が出現し、この推定値は次の15年で50%増加することが予想されている(WHO, World Cancer Report. Bernard W. Stewart and Paul Kleihues, eds. IARC Press, Lyon, 2003)。現在の癌治療は侵襲的手術、放射線療法および化学療法に限られており、それらは全て重症となる可能性のある副作用、非特異的毒性および/またはボディイメージおよび/または生活の質のトラウマ的変化を生ずる。癌は化学療法に不応性となり、さらなる治療の選択肢を狭め、成功の可能性を低くすることがある。一部の癌の予後は他の癌より不良であり、肺癌または膵臓癌のような一部の癌はほとんど常に致死的である。また、乳癌などの比較的治療成功率の高い一部の癌も非常に高い発現頻度を有し、従って主要な死因となっている。
【0003】
例えば、毎年世界中で100万例を超える新たな症例の乳癌が発症している。治療は、乳房組織およびリンパ節の最小から根治的外科的除去ならびに転移性疾患のための放射線および化学療法からなる。局所的な疾患の予後は比較的良好で、5年生存率は約50%であるが、癌が転移すると、不治となり、平均生存は約2年である。治療成功率の改善にもかかわらず、約400,000人の女性が毎年乳癌で死亡しており、肺癌での死亡を上回って、女性の癌による死亡数が最も大きい。短期および長期生存者のうち、ほとんどは侵襲的で外観を損なう外科的治療の生涯にわたるトラウマを被っている。
【0004】
別の例は肝臓癌であり、毎年50万例を超える新たな症例が発症しており、治療効率の不良によりほぼ同数が死亡している。肝細胞癌は全ての肝臓癌の約80%を占め、まれに治癒可能である。5年生存率はわずか約10%であり、診断後生存率は6ヶ月未満である。罹患組織の外科的切除が有効であることもあるが、肝硬変の存在のために、症例の大半の選択肢ではない。肝細胞癌は主に放射線抵抗性であり、化学療法への応答は不良である。
【0005】
さらに別の例は、膵臓癌であり、毎年約200,000例の新規症例が発症し、予後が非常に不良である。実際、患者の大半は診断から1年以内に死亡し、5年生存するのはわずか数パーセントの患者だけである。手術は利用可能な唯一の治療であるが、膵臓の少なくとも一部の切開だけでなく、十二指腸の全て、空腸、胆管および胆嚢の一部の切開ならびに遠位胃切除に関係するので、高い罹病率および合併率に関連する。一部の症例では、脾臓およびリンパ節も除去される。
【0006】
膀胱癌は世界で9番目に多い癌であり、毎年推定330,000例の新たな症例が発症し、130,000例が死亡している。欧州では、この疾病は毎年約50,000人の死因である。現在の治療は、化学療法の小胞内送達およびカルメットゲラン桿菌(bacille Calmette-Guerin)(BCG)ワクチンを用いる免疫療法を含み、結核菌の全身感染のさらなるリスクに関係する。この積極的な治療法にもかかわらず、これらの表在性乳頭腫瘍の70%は長期臨床経過中に再発し、一部は侵襲癌に進行する。この疾病は再発率が高く、治療コースの反復に関連することにより、この型の癌は患者の生涯にわたって治療するために最も費用のかかる癌の1つになっている。再発疾患が認められる患者にとって、唯一の選択肢は、麻酔を必要とする多数回の膀胱鏡手術または大規模で根治的で人生を変えるほどの手術(通常膀胱切除術)を受けることである。根治的膀胱切除術は、男性では膀胱、前立腺および精嚢の切除ならびに女性では卵巣、子宮、尿道および膣の一部の切除からなる。
【0007】
有効性がないためおよび/または罹病率が高く、重症の副作用があるために、現在の治療が患者のニーズに合わないさらに多くの癌の例がある。しかし、選択されたそのような統計および事実は、安全性および有効性プロファイルがさらに良好な癌治療の必要性を十分に例示している。
【0008】
現在の癌治療が不十分である原因の1つは、罹患組織および細胞の選択性の欠如である。外科的切除は、「安全域」として見かけ上正常な組織の切除に常に関係し、罹病率および合併症のリスクを増加する可能性がある。それはまた、腫瘍細胞が散在している可能性があり、罹患器官または組織の機能を維持または修復する可能性がある健康な組織の一部を常に切除する。放射線および化学療法は、非特異的な作用様式のために多くの正常細胞を死滅または損傷する。これにより、激しい悪心、体重低下およびスタミナ低下、抜け毛等などの重篤な副作用を生じることがあり、後に二次的な癌を発症するリスクを増加することがある。癌細胞に対する選択性の大きい治療は、正常細胞に損傷を与えず、アウトカム、副作用プロファイルおよび生活の質を改善すると思われる。
【0009】
癌治療の選択性は、癌細胞上にだけ存在するまたは癌細胞上にほとんど存在する分子に特異性の抗体を使用することによって改善することができる。このような抗体を使用して、免疫系を調節し、患者自身の免疫系による癌細胞の認識および破壊を増強することができる。それらは標的分子、従って癌細胞の機能を遮断または変更することもできる。それらはまた、薬剤、遺伝子、毒素または医学的に関連のある他の分子を癌細胞に標的化するために使用することもできる。このような抗体-薬剤複合体は、通常、免疫毒素または免疫抱合体と呼ばれ、数多くのこのような化合物がここ数年試験されている[Kreitman RJ (1999) Immunotoxins in cancer therapy. Curr Opin Immunol 11: 570-578; Kreitman RJ (2000) Immunotoxins. Expert Opin Pharmacother 1: 1117-1129; Wahl RL (1994) Experimental radioimmunotherapy. A brief overview. Cancer 73: 989-992; Grossbard ML, Fidias P (1995) Prospects for immunotoxin therapy of non-Hodgkin's lymphoma. Clin Immunol Immunopathol 76: 107-114; Jurcic JG, Caron PC, Scheinberg DA (1995) Monoclonal antibody therapy of leukemia and lymphoma. Adv Pharmacol 33: 287-314; Lewis JP, DeNardo GL, Denardo SJ(1995) Radioimmunotherapy of lymphoma: a UC Davis experience. Hyridoma 14: 115-120; Uckun FM, Reaman GH (1995) Immunotoxins for treatment of leukemia and lymphoma. Leuk Lymphoma 18: 195-201; Kreitman RJ, Wilson WH, Bergeron K, Raggio M, Stetler-Stevenson M, FitzGerald DJ, Pastan I (2001) Efficacy of the anti-CD22 recombinant immunotoxin BL22 in chemotherapy-resistant hairy-cell leukemia. N Engl J Med 345: 241-247]。これまでに試験されたほとんどの抗体は、分子工学によって「ヒト化されている」場合があるマウスモノクローナル抗体の形態の公知の癌マーカーに対して形成されている。残念なことに、それらの標的は正常細胞サブセットに大量に存在する場合もあり、従って非特異的毒性作用のリスクを生じることがある。さらに、これらの抗体は、基本的には、患者の免疫系によって外来タンパク質として見られるマウスタンパク質である。結果として生じる免疫反応および抗体応答は、効果の損失または副作用を生じることがある。
【0010】
本発明者らは、癌治療の抗体の開発に異なる方法を使用した。彼らは、癌細胞または単離癌細胞マーカーで実験動物を免疫化する代わりに、患者自身の免疫系によって認識されるまたは言い換えると、免疫系によって外来分子として見られるようなマーカーを検索した。このマーカーは、通常、正常細胞には実質的に存在しない、従って、非特異的な毒性のリスクはさらに低下することをこれは意味している。癌患者由来リンパ球からハイブリドーマライブラリーを作製し、正常細胞および腫瘍細胞への結合について、それらが分泌する抗体を試験する。癌細胞に対する高い選択性を示す抗体だけを、癌治療薬または診断薬としてさらなる評価および開発のために保持する。このような選択性の高い抗体の1つが本特許出願の主題である。選択性であること以外に、この抗体は、完全ヒトタンパク質であることによって患者の免疫系と十分に適合性である。本発明の抗体は、診断もしくは治療的使用のためにまたは標的抗原の他の結合分子を工作する基礎として使用することができる。
【0011】
抗体分子の基本構造は、4つのタンパク質鎖、2つの重鎖および2つの軽鎖からなる。これらの鎖はジスルフィド結合によって相互接続されている。軽鎖は各々軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含む。重鎖は各々重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。軽鎖および重鎖可変領域は、フレームワーク領域および相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができる。軽鎖および重鎖可変領域は各々3つのCDRおよび4つのフレームワーク領域を含む。
【0012】
CD44は、合計20のエクソンを含む単一遺伝子によってコードされる細胞表面糖タンパク質ファミリーを提示する。エクソン19および20は細胞質テイルとして一緒に発現され、従ってほとんどの研究グループによって「エクソン19」とグループ分けされる(Liao et al. J. Immunol 151:6490-99, 1993)。エクソン19という用語は、以降、ゲノムエクソン19および20を呼ぶために使用する。構造的および機能的多様性は、エクソン6〜15または極めてしばしば「可変エクソン」1〜10(v1〜v10)と同定される10の「可変」エクソンに関係するメッセンジャーRNAの別のスプライシングによって達成される。ヒトでは、可変エクソン1は停止コドンを含有し、通常発現されない。従って、最も長いと思われるCD44変種はCD44v2-10である(CD44の総説はNaor et al. Adv Cancer Res 71: 241-319, 1997参照)。
【0013】
エクソン1〜5および全ての可変エクソンは細胞外ドメインの一部であり、翻訳後修飾の部位と思われる多数の部位を含有する。膜貫通ドメインは種間で保存性が高いが、細胞内テイルは切断されて、別の種類の変種を生ずることがある。このような1つの変種は可変エクソン8〜10を含むが、エクソン19の一部を欠損する。細胞内ドメインの変更は、一部にはヒアルロン酸(HA)の結合および内部移行に関して、CD44の機能を変更することが示されている。CD44は、細胞外分子への結合に関与するだけでなく、細胞シグナリング特性も有する(総説はTurley et al. J Biol Chem 277(7): 4589-4592, 2002参照)。
【0014】
最も一般的に発現される形態のCD44である「標準的な」CD44(CD44s)は、エクソン1〜5および16〜19を含有し、可変エクソンはどれも含有しない。コアタンパク質の分子量は37〜38 kDaであるが、翻訳後修飾により、85〜95 kDa以上の分子を生ずることがある(Drillenburg et al., Blood 95(6): 1900, 2000)。それは、細胞外グリコサミノグリカンであるヒアルロン酸(HA)に結合し、CD44はしばしばHA受容体と呼ばれる。CD44変種はHAに構成的に結合するということができないのではなく、このような結合は誘導性となりうるように、可変エクソンの存在がCD44によるHAの結合を低下することがあることは興味深い(Naor et al. Adv. Cancer Res 71: 241-319, 1997に総説が示されている)。変種の一部の例は図17参照。
【0015】
CD44v8-10とも呼ばれるCD44Eは、エクソン1〜5および16〜19以外に可変エクソン8〜10を含有する。他の変種には、CD44v3-10、CD44v6、CD44v7-8および他の多数が挙げられる。変種エクソンは、CD44の細胞外ドメインの一部である。
【0016】
CD44Eは、ある種の正常な上皮細胞、特に重層扁平上皮および腺上皮の基底細胞の性細胞によって(Mackay et al. J. Cell Biol 124(1-2): 71-82, 1994)ならびにある種の発生段階の胎児に存在することがある。しかし重要なことには、それは種々の種類の癌細胞で過剰発現されていることが示されている。Iida & Bourguignon(J Cell Physiol 162(1): 127-133, 1995)およびKalish et al. (Frontiers Bioscience 4(a): 1-8, 1999)は、RT-PCRを使用して、CD44Eは正常な乳房組織に存在し、CD44sより豊富であることを示している。彼らはまた、CD44EおよびCD44sを含むCD44は過剰発現されており、主に転移乳癌組織に位置していることも示している。CD44v8-10 mRNAは尿路上皮癌において強く発現されており、侵襲性対表在性尿路上皮癌患者の尿路剥離細胞においても検出されることがあることをMiyakeら(J Urol 167(3): 1282-87, 2002)は報告した。CD44v10 mRNAに対するCD44v8-10の比は癌では増加しており、乳房、肺、喉頭および膀胱において診断価値を有することが示された。CD44v8-10の存在は、ポリクローナル抗体を用いる免疫組織化学によっても確認された(Okamoto et al. J Natl Cancer Inst 90(4): 307-15, 1997)。CD44v8-10は、胆嚢癌(Yamaguchi et al. Oncol Rep 7(3): 541-4, 2000)、腎細胞癌(Hara et al. Urology 54(3): 562-6, 1999)、精巣生殖細胞腫瘍(Miyake et al. Am J Pathol 152(5): 1157-60, 1998)、非小細胞肺癌(Sasaki et al. Int J Oncol 12(3): 525-33, 1998)、結腸直腸癌(Yamaguchi et al. J. Clin Oncol 14(4): 1122-27, 1996)および胃癌(Yamaguchi et al. Jpn J Cancer Res 86(12): 1166-71, 1995)においても過剰発現されることがある。CD44v8-10の過剰発現は、前立腺癌の診断価値を有することも示された(Martegani et al. Amer J Pathol 154(1): 291-300, 1999)。
【0017】
α-フェトプロテイン(AFP)は、胎児期に合成される主要な血清タンパク質である。その存在は、通常、癌、特に肝臓癌および奇形癌を示す。それは、血清アルブミンおよびαアルブミンならびにビタミンD-結合タンパク質も含むアルブミノイド遺伝子ファミリーの一部である。AFPは、約69〜70 kDaの分子量の590アミノ酸を含み、グリコシル化の1部位を有する(Morinaga et al., Proc Natl Acad Sci 80: 4604-08, 1983; Mizejewski Exp Biol Med 226(5): 377-408, 2002)。分子変種は齧歯類では検討され、同定されているが、ヒトでは、可変タンパク質が検出されるという報告はない。最近の報告は、発現される場合には、65kDaタンパク質をコードすると思われる変異mRNAを同定している。このタンパク質は細胞質に残存することが予想される(Fukusawa et al. J Soc Gynecol Investig May 20, e-publication, 2005)。
【発明の概要】
【0018】
発明の概要
本発明者らは、膀胱、乳房、卵巣、前立腺および子宮を含む数種類の腫瘍細胞に結合するヒト腫瘍特異的抗体を作製した。重要なことに、本発明の抗体は正常組織にあまり結合せず、それらは腫瘍治療の好適な候補となっている。本発明者らは本発明の抗体をクローニングし、配列決定し、抗体軽鎖および重鎖可変領域および相補性決定領域1、2および3の配列を決定した。従って、本発明は、それぞれ、アミノ酸配列


を含む単離軽鎖相補性決定領域1、2および3ならびにそれぞれ、アミノ酸配列

を含む単離重鎖相補性決定領域1、2および3を提供する。
【0019】
本発明はまた、それぞれ、アミノ酸配列

を含む、軽鎖相補性決定領域1、2および/または3をコードする単離核酸配列ならびにそれぞれ、アミノ酸配列

を含む、重鎖相補性決定領域1、2および/または3をコードする単離核酸配列も提供する。
【0020】
本発明のさらなる局面は、本発明の軽鎖相補性決定領域1、2および/または3(SEQ ID NO:1〜3)を含む単離軽鎖可変領域および本発明の重鎖相補性決定領域1、2および/または3(SEQ ID NO:4〜6)を含む単離重鎖可変領域である。一態様において、軽鎖可変領域は、図1(SEQ ID NO:7)に示すアミノ酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変領域は、図2(SEQ ID NO:9)に示すアミノ酸配列を含む。
【0021】
本発明はまた、本発明の軽鎖可変領域をコードする単離核酸配列および本発明の重鎖可変領域をコードする単離核酸配列を提供する。一態様において、軽鎖可変領域は図1(SEQ ID NO:8)に示す核酸配列を含む。別の態様において、重鎖可変領域は図2(SEQ ID NO:10)に示す核酸配列を含む。
【0022】
本発明の別の局面は、結合タンパク質、好ましくは本発明の少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:1〜3の1つ以上)および/または本発明の少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:4〜6の1つ以上)を含む抗体または抗体フラグメントである。本発明はまた、結合タンパク質、好ましくは本発明の軽鎖可変領域および/または本発明の重鎖可変領域を含む抗体または抗体フラグメントを提供する。
【0023】
本発明者らはまた、本発明の結合タンパク質に結合する抗原を同定した。従って、本発明は、CD44Eの5-v8インターフェース、CD44のv8エクソンまたはアミノ酸配列

を含むタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質を提供する。本発明はまた、CD44E;α-フェトプロテイン;47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有するタンパク質;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質;またはAFPのアミノ酸配列107〜487(SEQ ID NO:14)、AFPの107〜590(SEQ ID NO:15)またはAFPの107〜609(SEQ ID NO:16)を含むタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、抗体および抗体フラグメントなどの本発明の結合タンパク質ならびに薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤または安定剤を含む組成物を提供する。
【0025】
本発明の別の局面は、(2)エフェクター分子に結合している、(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは、癌細胞上または癌細胞内の抗原または分子に結合する抗体または抗体フラグメントを含む免疫抱合体である。本発明のさらに別の局面は、エフェクター分子に結合している、(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは癌細胞によって内部移行される抗原または分子に結合する抗体または抗体フラグメントを含む免疫抱合体である。好ましい態様において、エフェクター分子は、(i)検出可能なシグナルを直接もしくは間接的に形成することができるラベル、または(ii)細胞障害性、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞が分裂および/または転移する能力を阻害もしくは停止させる癌治療薬である。好ましくは、癌治療薬は毒素である。
【0026】
本発明はまた、本発明の免疫抱合体を含む組成物ならびに癌を治療または予防するためおよび診断目的のための医用製剤を製造するための免疫抱合体の使用を提供する。また、本発明は、本発明の免疫抱合体および関連するキットを使用して癌を治療または予防する方法を提供する。
【0027】
本発明のさらに別の局面は、哺乳類の癌を診断する方法であって:
(1) 結合タンパク質-抗原複合体の形成を可能にする条件下において、哺乳類から採取した試験試料と癌細胞上または癌細胞内の抗原に結合する本発明の結合タンパク質を接触させる段階;
(2)試験試料において結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する段階;および
(3)試験試料の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する段階
を含む方法である。
【0028】
本発明はまた、哺乳類の癌を診断する方法であって:
(1) 結合タンパク質-α-フェトプロテイン複合体の形成を可能にする条件下において、哺乳類から採取した試験試料とα-フェトプロテインまたはその変種に特異的に結合する本発明の結合タンパク質を接触させる段階;
(2)試験試料において結合タンパク質-α-フェトプロテイン複合体の量を測定する段階;および
(3)試験試料の結合タンパク質-α-フェトプロテイン複合体の量を対照と比較する段階
を含む方法である。
【0029】
本発明の別の局面は、エフェクター分子が、直接または間接的に検出可能なシグナルを形成することができるラベルである、本発明の免疫抱合体を含む診断薬である。
【0030】
本発明はまた、本発明の結合タンパク質の1つに特異的に結合することができる単離タンパク質、その核酸配列および使用を含む。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および具体的な例は、本発明の好ましい態様を示すが、本発明の精神および範囲内の種々の変更および改良は本発明の詳細な説明から当業者に明らかになるので、例としてだけ提供されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明は、図面に関連してここで説明される:
【図1】図1はVB1-008の軽鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列である。
【図2】図2はVB1-008の重鎖可変領域の核酸およびアミノ酸配列である。
【図3】図3はVB1-008で染色したSKBR-3(400X mag)固定-細胞ペレット(A)およびアイソタイプ対照抗体4B5(B)である。顕著な膜染色(矢印)に注目すべきである。
【図4】図4はVB1-008およびアイソタイプ対照抗体4B5による正常精巣の免疫組織化学染色の代表的な写真である。(A)VB1-008で染色した試料925精巣組織(400X mag)である。成熟精子細胞の膜染色を矢印で示す。(B)IgGアイソタイプ対照4B5で染色した試料925精巣組織(400X mag)である。染色が見られないことに注目すべきである。矢印は、(A)のVB1-008による染色と対比するための成熟精子細胞を指す。
【図5】図5はVB1-008およびIgGアイソタイプ対照4B5で染色した試料3427A1乳腺癌(400X)を示す。腫瘍細胞、特に細胞外基質と接触した細胞の細胞膜の染色に注目すべきである(白い矢印)。腫瘍の中心に近い細胞は、主に、細胞質染色を示す(黒い矢印)。矢印は染色されていない腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞はVB1-008で染色される。
【図6】図6はVB1-008(A)およびIgGアイソタイプ対照4B5(B)で染色した試料946 B1膀胱癌(400X)を示す。矢印は、VB1-008による腫瘍細胞の膜染色(A)を示すが、対照抗体(B)では染色しない。
【図7】図7はVB1-008およびIgG対照抗体4B5で染色した試料4036A2子宮癌(200X mag)を示す。膜はVB1-008で染色するが(A&C)(矢印)、対照抗体(B)で染色しないことに注目すべきである。子宮癌のさらに大きい拡大(600X)は膜染色(C)を示す。
【図8】図8はフローサイトメトリーによって決定される異なる温度におけるA-375のインキュベーション後の抗体細胞表面結合を示すものである。4℃における細胞懸濁液のインキュベーション後のA-375細胞の蛍光標識:4B5(1)およびVB1-008(2)。抗体結合細胞を37℃に加温後のA-375細胞の蛍光標識:VB1-008、60分(3)、120分(4)。
【図9】図9はVB1-008内部移行の共焦点顕微鏡評価を示す。A-375細胞を4℃において抗体と共にインキュベーションし、洗浄し、37℃までの温度で60分加温した。細胞を固定し、透過性にし、蛍光標識二次抗体で標識した。4℃において60分インキュベーション後、A-375細胞の蛍光標識であり、標識の周囲表面分布(60X x4)拡大(A)を示す。37℃において60分の抗体結合細胞のインキュベーション後、細胞は、内部移行した抗体による強い細胞内染色を示す、(60Xx4)拡大(B)。
【図10】図10A、B、およびCは、VB1-008を使用する免疫沈降反応のウェスタン分析を示す。図10Aは、非還元条件下における実験の結果を示すが、図10BおよびCは還元条件下における実験の結果を示す。
【図11】図11AおよびBは、分子量が非常に近い、精製抗原複合体の2つの別個のタンパク質スポットの存在を示す。タンパク質は、おそらく、タンパク質スタッキングのために1D-PAGEにおいて2つのバンドとして認められなかった。図11Aは2D-ゲルのウェスタンブロットプロファイルを示し、図11Bはクーマシー染色対応物を示す。
【図12】図12AおよびBは、得られるペプチドのマッピングおよび元のAFP分子、アクセッション#GI|4501989の配列範囲を示す。12Aは、2Dゲルから得られるペプチドのマッピングを示す。太字体のアミノ酸は、MS分析から同定されるアミノ酸の配列を示す。影をつけた領域はペプチド配列の相同性を示し、それによって配列範囲を図示する。図12Bは、1Dおよび2Dゲルから得られるペプチドの完全なマッピングを示す。太字体のアミノ酸は、MS分析からのアミノ酸の配列を示す。影をつけた領域はペプチド配列の相同性を示し、それによって配列範囲を図示する。下線をつけたアミノ酸は検出されなかった。(SEQ ID NO:76および77)
【図13】図13は1000μgのMDA-MB-435S膜を起源として使用するVB1-008抗原の免疫沈降を示す。精製抗原を、非還元試料条件下においてSDS-PAGEで分離した。結合抗原の天然の立体配座を保存するために、DTTまたはβ-メルカプトエタノールなどの還元剤は避けた。試料を2レーンのゲルで分離した。一方のレーン(A)はタンパク質を染色した;他方のレーン(B)はウェスタンブロット法に供し、VB1-008でプロービングして、特異的な抗原の存在を確実にした。ゲルのクーマシー染色部分のバンド「E」を切断して、MS分析に送った。
【図14】図14は得られるペプチドの完全なマッピングおよびCD44分子、アクセッション# GI|105583の配列範囲を示す。太字体のアミノ酸は、MS分析から同定されるアミノ酸の配列を示す。影をつけた領域はペプチド配列の相同性を示し、それによって配列範囲を図示する。下線をつけた領域のアミノ酸は、アイソフォーム3またはCD44Eに特徴的な可変領域(v8-v10)を構成する。(SEQ ID NO:78)
【図15】図15AはRDIシステムから購入した組換えAFPに対するVB1-008の反応性を示す。組換えAFPを電気泳動し、ニトロセルロース膜に移し、VB1-008でプロービングした。結果は、明らかに、AFPに対するVB1-008の反応性を示す。 図15BおよびCは、VB1-008を使用して得られた免疫沈降物である、「B」および「C」の2D-ゲルプロファイルである。ゲルをニトロセルロースに移し、それぞれ、マウス-モノクローナル抗体である抗CD44および抗AFPでプロービングした。
【図16】図16は非還元条件下におけるウェスタン分析である。抗CD44を使用して、MDA-MB-435S細胞からCD44タンパク質を免疫精製し、精製した分画を非還元条件下においてSDS-PAGEおよびWB分析に供した。実験は3セットで実施し、各セットは他と同一であった。セットを各々5μg/mLの抗CD44、抗AFPおよびVB1-008でプロービングした。抗CD44および抗AFPはマウスモノクローナル抗体であったが、VB1-008はVBIのヒトモノクローナル抗体である。
【図17】図17はヒトのCD44遺伝子の異なるエクソンの分布の概略図である。可変領域の別のスプライシングにより、数多くのアイソフォームが作製され、報告されているアイソフォームの少数を対応する図において略図で示す。
【図18】図18AはCD44Eのアミノ酸配列を図示する。強調部分は、ペプチド1〜3を作製するために使用した17アミノ酸鎖を示す。陰性対照ペプチドは、タンパク質のC末端領域を強調している。図18Bは、VB1-008を用いるペプチド1〜3への結合実験の結果を示す。(SEQ ID NO:79および80)
【図19】図19AはVB1-008の結合に対する、ペプチド1〜3を使用した競合検討の結果を示す。図19Bは、対照抗体(抗EGFR)に対する、ペプチド1〜3を使用した競合検討の結果を示す。
【図20】図20は免疫抱合体VB6-008(SEQ ID NO:11)のヌクレオチド配列を示す。PelBリーダー配列の配列は、下方のケースに存在し、開始コドンを太字で示す。停止コードは上方のケースに存在し、太字で示す。
【図21】図21は免疫抱合体VB6-0008の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を示す(SEQ ID NO:12および13)。
【図22−1】図22-1は完全なVB6-008構築物を示す。(SEQ ID NO:81)
【図22−2】図22-1の続きを示す図である。
【図22−3】図22-2の続きを示す図である。
【図22−4】図22-3の続きを示す図である。
【図23−1】図23-1はPelB-VH-CH-Furin-De-Bouganinを含む、VB6-008ユニット#1を示す。(SEQ ID NO:82)
【図23−2】図23-1の続きを示す図である。
【図23−3】図23-2の続きを示す図である。
【図24−1】図24-1はPelB-VL-CLからなるVB6-008#2ユニットを示す。(SEQ ID NO:83)
【図24−2】図24-1の続きを示す図である。
【図25】図25はVB6-008を使用するインビトロ細胞障害性実験の結果を示す。
【図26】図26はγカセットの図である。
【図27】図27はFab-bouganinの集合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の詳細な説明
(A)定義
本明細書において使用される「全身投与する」という用語は、免疫抱合体および/または他の癌治療薬を、注射(皮下、静脈内、筋肉内等)、経口投与、吸入、経皮投与または局所適用(局所クリームまたは軟膏等など)、坐薬適用またはインプラント手段などの従来の方法で全身投与することができることを意味する。インプラントは、シアラスティック(sialastic)膜または線維などの膜を含む多孔性、非多孔性またはゼラチン性材料であってもよい。座薬は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の作用成分を含有する。
【0034】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびキメラ抗体を含むことが意図されている。抗体は組換え起源であってもおよび/または遺伝子導入動物において作製してもよい。本明細書において使用される「抗体フラグメント」という用語は、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、それらのダイマー、ミニボディ(minobodies)、ダイアボディ(diabodies)、およびマルチマー、ならびに二重特異性抗体フラグメントを含むことが意図されている。抗体は、従来の技法を使用してフラグメント化することができる。例えば、F(ab')2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。得られたF(ab')2フラグメントは、ジスルフィド結合を少なくするように処理して、Fab'フラグメントを作製することができる。パパイン消化によりFabフラグメントを形成することができる。Fab、Fab'およびF(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ダイアボディ、二重特異性抗体フラグメントおよび他のフラグメントも組換え技法によって合成することができる。
【0035】
本明細書において使用される「本発明の抗体または抗体フラグメント」という用語は、本発明の少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:1〜3の1つ以上)および/または本発明の少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:4〜6の1つ以上)を含む。好ましくは、抗体または抗体フラグメントは、抗体または抗体フラグメントが、正常細胞に実質的に結合しないで、腫瘍細胞に結合することができるように、軽鎖CDR配列(SEQ ID NO:1〜3)および/または重鎖CDR配列(SEQ ID NO:4〜6)または配列の機能的変種を含む。本発明の抗体または抗体フラグメントはまた、CD44E;α-フェトプロテイン;47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有するタンパク質;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2を有するタンパク質;またはAFPのアミノ酸配列107〜487(SEQ ID NO:14)、AFPの107〜590(SEQ ID NO:15)またはAFPの107〜609(SEQ ID NO:16)を含むタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質に結合する抗体または抗体フラグメントを含む。また、本発明の抗体または抗体フラグメントは、CD44Eの5-v8インターフェース、CD44のv8エクソンまたはアミノ酸配列

を含むタンパク質に結合する抗体または抗体フラグメントを含む。
【0036】
「少なくとも中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、溶液中の2つの相補的な核酸分子間の選択的なハイブリダーゼーションを促進する条件を選択することを意味する。ハイブリダーゼーションは、核酸配列分子の全てまたは一部に生じてもよい。ハイブリダーゼーション部分は、典型的には、長さ少なくとも15(例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチドである。核酸2本鎖またはハイブリッドの安定性は、ナトリウム含有緩衝液において、ナトリウムイオン濃度と温度の関数であるTmによって決定されることを当業者は認識している(Tm = 81.5℃ - 16.6(Log10[Na+]) + 0.41(%(G+C)-600/l)または同様の等式)。従って、ハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件のパラメーターはナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似しているが、同一でない分子を同定するためには、例えば、>95%同一性の核酸分子を検索する場合には、1%ミスマッチによりTmが約1℃低下すると仮定することができ、最終洗浄温度は約5℃低下する。これらの条件に基づいて、当業者は、適当なハイブリダーゼーション条件を容易に選択することができる。好ましい態様において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が選択される。例として、ストリンジェントなハイブリダイゼーションを実施するために以下の条件を使用することができる:上記の等式に基づいてTm - 5℃において5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハルト液/1.0% SDSにおけるハイブリダーゼーション、次に60℃において0.2×SSC/0.1% SDSの洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、42℃における3×SSCにおける洗浄段階を含む。しかし、別の緩衝液、塩および温度を使用して等価なストリンジェンシーを達成することができることが理解される。ハイブリダーゼーション条件に関する追加のガイダンスは:分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y., 1989,6.3.1-6.3.6)およびSambrookら、分子クローニング(Molecular Cloning), a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, Vol.3)に見ることができる。
【0037】
本明細書において使用される「結合タンパク質」という用語は、別の物質に特異的に結合するタンパク質をいう。一態様において、結合タンパク質は抗体または抗体フラグメントである。
【0038】
本明細書において使用される「本発明の結合タンパク質」という用語は、本発明の抗体または抗体フラグメントを含む。
【0039】
「インビボにおいて投与するのに好適な生物学的適合可能な形態」は、任意の毒性作用より治療作用が上回る形態の物質が投与されることを意味する。
【0040】
本明細書において使用される「癌」という用語は、本発明の結合タンパク質、好ましくは本発明の抗体または抗体フラグメントが結合することができる任意の癌を含む。
【0041】
本明細書において使用される「CD44」という用語は、合計19エクソンを含む単一遺伝子によってコードされるCD44分子のファミリーをいう。可変エクソンは10存在する。可変領域の別のスプライシングにより、数多くの異なるCD44変種が作製される(図17参照)。CD44v8-10としても公知の「CD44E」という用語は、CD44の上皮変種をいう。CD44Eは、エクソン1〜5および16〜19に加え変種エクソン8〜10を含有する。「CD44のv8エクソン」という用語はCD44の可変エクソン8をいう。「CD44Eの5-v8インターフェース」という用語は、エクソン5がCD44Eの可変エクソン8で接続する領域をいう。それは、エクソン5の領域の一部およびCD44Eの可変エクソン8の一部を含む連続配列である。
【0042】
本明細書において使用される「保存アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸残基が、タンパク質の望ましい特性を無効にしないで別のアミノ酸残基と置換されたものである。
【0043】
使用される「放出制御システム」という用語は、本発明の免疫抱合体および/または他の癌治療薬を制御された様式で投与することができることを意味する。例えば、マイクロポンプは腫瘍領域に直接制御された用量を送達し、それによって薬学的組成物の時期および濃度を微細に調節することができる(例えば、Goodson, 1984, in Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115-138)参照)。
【0044】
本明細書において使用される「直接投与」という用語は、免疫抱合体および/または他の癌治療薬は、腫瘍内、血管内および腫瘍周辺であるが、これらに限定されない経路によって投与することができることを意味する。例えば、免疫抱合体は、腫瘍への1回以上の直接注射によって、腫瘍への連続または不連続灌流によって、免疫抱合体のリサーバーの導入によって、腫瘍への徐放性装置の導入によって、腫瘍への徐放性製剤の導入によっておよび/または腫瘍への直接適用によって投与することができる。「腫瘍内への」投与様式は、腫瘍領域または腫瘍領域内に実質的に直接流入する血管もしくはリンパ管への免疫抱合体および/または他の癌治療薬の導入を含む。
【0045】
本明細書において使用される「有効量」というフレーズは、望ましい結果を達成するのに必要な投与量および期間において有効な量を意味する。免疫抱合体の有効量は、疾病状態、動物の年齢、性別、体重などの因子により変わってもよい。用法用量は最適の治療応答を提供するように調節することができる。例えば、数回に分割した用量を毎日投与してもまたは治療状況の危急性によって示されるように用量を平均的に低下してもよい。
【0046】
本明細書において使用される「重鎖相補性決定領域」という用語は、抗体分子の重鎖可変領域内の超可変領域をいう。重鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端までの重鎖相補性決定領域1、重鎖相補性決定領域2および重鎖相補性決定領域3と名づけられる3つの相補性決定領域を有する。
【0047】
本明細書において使用される「重鎖可変領域」という用語は、重鎖の可変領域をいう。
【0048】
本明細書において使用される「本発明の免疫抱合体」という用語は、(2)エフェクター分子に結合している(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントを含む。エフェクター分子は、直接もしくは間接的に検出可能なシグナルを形成することができるラベルまたは(ii)細胞障害性、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞が分割および/もしくは転写する能力を阻害もしくは低下させる毒素などの癌治療薬を含むが、これに限定されない、癌細胞への送達を希望する任意の分子であってもよい。
【0049】
本明細書において使用される「単離核酸配列」という用語は、組換えDNA技法によって作製する場合には、細胞材料もしくは培養培地、または化学的に合成する場合には、化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含有しない核酸をいう。単離核酸はまた、核酸が誘導される核酸に天然に隣接する配列(すなわち、核酸の5'および3'末端に位置する配列)を実質的に含有しない。「核酸」という用語はDNAおよびRNAを含むことが意図されており、2本鎖または1本鎖であってもよい。
【0050】
本発明の軽鎖相補性領域1、2および3、重鎖相補性領域1、2および3、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、ならびに結合タンパク質などの「単離タンパク質」とは、組換えDNA技法によって作製する場合には細胞材料もしくは培養培地、または化学的に合成する場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含有しないタンパク質をいう。
【0051】
本明細書において使用される「軽鎖相補性決定領域」という用語は、抗体分子の軽鎖可変領域内の超可変領域をいう。軽鎖可変領域は、アミノ末端からカルボキシ末端までの軽鎖相補性決定領域1、軽鎖相補性決定領域2および軽鎖相補性決定領域3と名づけられる3つの相補性決定領域を有する。
【0052】
本明細書において使用される「軽鎖可変領域」という用語は、軽鎖の可変領域をいう。
【0053】
本明細書において使用される「修飾ボウガニン(bouganin)」という用語は、PCT/CA2005/000410および米国特許出願第11.084,080号に記載されている免疫応答を活性化する性向が低い修飾ボウガニンを意味する。一例において、修飾ボウガニンは、アミノ酸配列(SEQ ID NO:17):

を有する。
【0054】
本明細書において使用される「核酸配列」という用語は、天然型塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオシドまたはヌクレオチドモノマーの配列をいう。この用語はまた、非天然型モノマーまたはその一部を含む修飾または置換配列も含む。本発明の核酸配列はデオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシルを含む天然型塩基を含んでもよい。配列はまた修飾塩基も含有してもよい。このような修飾塩基の例には、アザおよびデアザアデニン、グアニン、シトシン、チミジンおよびウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。
【0055】
本明細書において使用される「配列の同一性」という用語は、2つのポリペプチド配列間の配列の同一性の割合をいう。2つのポリペプチド配列間の同一性の割合を求めるためには、2つの配列の間に最も大きい次数の一致が得られ、配列の一方の全体の長さの少なくとも50%が整列に関与するように、好ましくはClustal Wアルゴリズム(Thompson, JD, Higgins DG, Gibson TJ, 1994, Nucleic Acids Res. 22 (22) : 4673-4680)をBLOSUM 62スコアリング行列 (Henikoff S. and Henikoff J. G., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919)ならびにギャップオープニングペナルティ10およびギャップエクステンションペナルティ0.1を使用してこのような2つの配列のアミノ酸配列を整列させる。配列を整列するために使用することができる他の方法は、2つの配列の間に最も高い次数の一致が得られ、2つの配列間の同一アミノ酸の数が求められるようにSmithおよびWaterman (Adv. Appl. Math. , 1981, 2: 482)によって修正されたNeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol., 1970, 48: 443)の整列方法である。2つのアミノ酸配列間の同一性の割合を算出するための他の方法は、一般に、当技術分野において認識されており、例えば、CarilloおよびLipton (SIAM J. Applied Math., 1988, 48:1073)によって記載されているものならびにComputational Molecular Biology, Lesk, 編 Oxford University Press, New York, 1988, バイオコンピューティング:インフォマティクスおよびゲノミクスプロジェクト(Biocomputing: Informatics and Genomics Projects)が挙げられる。一般に、このような算出のためにコンピュータプログラムを使用する。これに関して使用することができるコンピュータプログラムには、GCG (Devereux et al., Nucleic Acids Res., 1984, 12: 387) BLASTP、BLASTNおよびFASTA (Altschul et al., J. Molec. Biol., 1990: 215: 403)が挙げられるが、これに限定されない。
【0056】
本明細書において使用される「癌を治療する」というフレーズは、癌細胞複製の阻害、癌細胞伝播(転移)の阻害、腫瘍増殖の阻害、癌細胞数の減少もしくは腫瘍増殖の低下、癌の悪性度の低下(例えば、分化の増加)または癌関連症状の改善をいう。
【0057】
本明細書において使用される「変種」という用語は、本発明のタンパク質または核酸分子と実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を発揮する本発明のアミノ酸およびヌクレオチド配列の修飾物または化学的等価物を含む。例えば、本発明のタンパク質の変種には、同類アミノ酸置換物が挙げられるが、これに限定されない。本発明のタンパク質の変種は、本発明のタンパク質の追加物および欠損物も含む。
【0058】
「α-フェトプロテインの変種」という用語は、SEQ ID NO:14、15もしくは16のアミノ酸配列を含むタンパク質またはα-フェトプロテインの切断型であり、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するなどのα-フェトプロテインの変種を含む。
【0059】
(B)本発明のタンパク質および核酸
(i)軽鎖および重鎖相補性決定領域ならびに軽鎖および重鎖可変領域
本発明は、アミノ酸配列

を含む単離軽鎖相補性決定領域1を提供する。本発明はまた、アミノ酸配列EDTKRPS(SEQ ID NO:2)を含むアミノ酸配列を含む単離軽鎖相補性決定領域2を提供する。また、本発明は、アミノ酸配列QAWDSRTEI(SEQ ID NO:3)を含む単離軽鎖相補性決定領域3を提供する。
【0060】
本発明は、アミノ酸配列

を含む単離軽鎖相補性決定領域1を提供する。本発明はまた、アミノ酸配列

を含む単離軽鎖相補性決定領域2を提供する。また、本発明は、アミノ酸配列

を含む単離軽鎖相補性決定領域3を提供する。
【0061】
本発明は、それぞれ、アミノ酸配列

を含む単離軽鎖相補性決定領域1、2および3
;ならびにそれぞれ、アミノ酸配列

を含む単離重鎖相補性決定領域1、2および3を提供する。
【0062】
本発明はまた、上記に開示されているCDR配列によって認識される同じエピトープまたは抗原に結合することができるCDR配列の変種を含む。
【0063】
本発明のさらなる局面は、本発明の軽鎖相補性決定領域1、2および/または3(SEQ ID NO:1〜3)を含む単離軽鎖可変領域;および本発明の重鎖相補性決定領域1、2および/または3(SEQ ID NO:4〜6)を含む重鎖可変領域である。一態様において、軽鎖可変領域は図1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:7)を含み、重鎖可変領域は図2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:9)を含む。
【0064】
本発明はまた、上記に開示されている単離軽鎖可変領域および単離重鎖可変領域によって認識される同じエピトープまたは抗原に結合することができる単離軽鎖可変領域および重鎖可変領域の変種を含む。
【0065】
本発明は、本発明によって開示されている配列の化学的等価物を含む、SEQ ID NO:1〜6、7および9のアミノ酸配列の変種を含むことを当業者は理解している。このような等価物は、本明細書に開示されている具体的なタンパク質と実質的に同じ方法で実質的に同じ機能を発揮するタンパク質を含む。CDR配列の機能的変種は、未変性のCDR配列によって認識される抗原またはエピトープに結合することができる。例えば、等価物には、同類アミノ酸置換が挙げられるが、これに限定されない。
【0066】
一態様において、軽鎖相補性決定領域1、2および3ならびに重鎖相補性決定領域1、2および3の変種アミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:1〜6と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、およびよりさらに好ましくは少なくとも90%の配列の同一性を有する。
【0067】
別の態様において、軽鎖可変領域および重鎖可変領域の変種アミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:7および9と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%、およびよりさらに好ましくは少なくとも90%の配列の同一性を有する。
【0068】
本発明はまた、本発明の軽鎖可変領域をコードする単離核酸配列および本発明の重鎖可変領域をコードする単離核酸配列を提供する。一態様において、軽鎖可変領域は、図1に示す核酸配列(SEQ ID NO:8)を含む。別の態様において、重鎖可変領域は、図2に示す核酸配列(SEQ ID NO:10)を含む。本発明はまた、本発明の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸配列の変種も含む。例えば、本発明の変種は、少なくとも中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において本発明の軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸配列にハイブリダーゼーションするヌクレオチド配列を含む。
【0069】
本発明はまた、それぞれ、アミノ酸配列

を含む軽鎖相補性決定領域1、2および/または3をコードする単離核酸配列ならびにそれぞれ、アミノ酸配列

を含む重鎖相補性決定領域1、2および/または3をコードする単離核酸配列を提供する。本発明はまた、上記に考察されているCDR配列の変種をコードする単離核酸配列を提供する。本発明のCDR配列の変種をコードする核酸配列は、少なくとも中程度ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、SEQ ID NO:1〜6に示すアミノ酸配列をコードするCDR配列にハイブリダーゼーションする核酸配列を含む。
【0070】
(ii)結合タンパク質
本発明の別の局面は、本発明の少なくとも1つの軽鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:1〜3の1つ以上)および/または本発明の少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(すなわち、SEQ ID NO:4〜6の1つ以上)を含む、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントである。このような結合タンパク質は、一般に、本発明の「結合タンパク質」または好ましくは「本発明の抗体もしくは抗体フラグメント」と本明細書においていうことができる。
【0071】
一態様において、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントは、それぞれ、アミノ酸配列

を含む、軽鎖相補性決定領域1、2および3ならびにそれぞれ、アミノ酸配列

を含む重鎖相補性決定領域1、2および3を含む。本発明はまた、本発明の軽鎖可変領域および/または本発明の重鎖可変領域を含む結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントを提供する。
【0072】
本発明は、上記に開示されている結合タンパク質と実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で発揮する上記に開示されている配列の化学的等価物を含む、上記に開示されている具体的な結合タンパク質の変種を含むことを当業者は理解している。結合タンパク質の機能的変種は、CD44Eの5-v8インターフェース、CD44のv8エクソン、アミノ酸配列

、アミノ酸SEQ ID NO:14、15もしくは16、または47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質、CD44Eまたはα-フェトプロテインもしくはその変種に結合することができる。
【0073】
上述のように、本発明者らは、本発明の結合タンパク質に結合する抗原を同定した。特に、本発明者らは、本発明の結合タンパク質がCD44Eの細胞外ドメインに結合することを示した。また、本発明者らは、本発明の結合タンパク質がAFPまたはその変種に結合することを示した。
【0074】
CD44分子は、N-およびO-グリコシル化ならびにコンドロイチン硫酸およびヘパラン硫酸付加の高い可能性を有することを認識することが重要である。しかし、しかし、これらの翻訳後修飾パターンは可変性で、細胞特異的であると思われ、CD44がHAまたは他の細胞外分子に結合する能力に影響する可能性がある。分子の一次構造が抗体を形成するために使用される抗原と同じであるにもかかわらず、抗体結合はこれらの修飾の存在によって影響されることが示されているので、翻訳後修飾の可変性のパターンは、抗CD44モノクローナル抗体の作製に特に関連する(Matzuki et al. Cancer Res 63:8278-83, 2003; Martegani et al. Amer J Pathol 154(1): 291-300, 1999)。そのグリコシル化パターンは腫瘍細胞と異なる可能性があると思われるので、これも組換えCD44の免疫原としての有用性を制限する。従って、本発明の結合タンパク質は、ヒト腫瘍細胞上に存在する形態のCD44を認識するので、特に独自である。
【0075】
従って、本発明は、CD44Eの5-v8インターフェース、CD44のv8エクソンまたはアミノ酸配列

を含むタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質を提供する。本発明はまた、CD44E;α-フェトプロテイン;47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有するタンパク質;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質;またはAFPのアミノ酸配列107〜487(SEQ ID NO:14)、AFPの107〜590(SEQ ID NO:15)またはAFPの107〜609(SEQ ID NO:16)を含むタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質を提供する。本発明はまた、SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44または45を含み、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質;またはSEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75を含み、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質に結合する本発明の結合タンパク質を提供する。
【0076】
本発明はまた、アミノ酸配列

に結合する結合タンパク質を含む。
【0077】
ある態様において、抗体または抗体フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgE、IgMまたはIgDなどの重鎖定常領域の全てまたは一部を含む。好ましくは、重鎖定常領域はIgG1重鎖定常領域である。さらに、抗体または抗体フラグメントは、κ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域の全てまたは一部を含んでもよい。好ましくは、軽鎖定常領域はλ軽鎖定常領域である。
【0078】
ヒト由来のモノクローナル抗体を作製するために、抗体産生細胞(リンパ球)を、癌を有するヒトから採取して、標準的な体細胞融合手法によって骨髄腫細胞と融合し、これらの細胞を不死化し、ハイブリドーマ細胞を生ずることができる。このような技法は当技術分野において周知である(例えば、KohlerおよびMilstein (Nature 256: 495-497 (1975))によって最初に開発されたハイブリドーマ技法ならびにヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al., Immunol. Today 4:72 (1983))、ヒトモノクローナル抗体を作製するためのEBV-ハイブリドーマ技法(Cole et al., Methods Enzymol, 121:140-67 (1986))およびコンビナトリアル抗体ライブラリーのスクリーニング(Huse et al., Science 246: 1275 (1989))などの他の技法)。ヒトモノクローナル抗体を作製する別の例はWO/9947929に記載されている。別の例では、Dan et al. (J Neurosurgery 76: 660-69, 1992)に記載されている骨髄腫様融合パートナーを使用することができる。癌細胞と特異的に反応する抗体の産生についてハイブリドーマ細胞を免疫化学的にスクリーニングすることができ、モノクローナル抗体を単離することができる。
【0079】
抗原または癌細胞上の分子などの特定の抗原または分子に対して反応性の特異的な抗体または抗体フラグメントも、細胞表面成分を有する細菌において発現される免疫グロブリンまたはその一部をコードする発現ライブラリーをスクリーニングすることによって作製することができる。例えば、ファージ発現ライブラリーを使用して、完全なFabフラグメント、VH領域およびFV領域を細菌において発現することができる(例えば、Ward et al., Nature 341: 544-546 (1989); Huse et al., Science 246: 1275-1281 (1989) およびMcCafferty et al., Nature 348: 552-554 (1990)参照)。
【0080】
本発明は、本発明の抗体または抗体フラグメントと同じ抗原に結合する全ての抗体および抗体フラグメントを含む。結合アッセイ法を使用して、本発明の抗体および抗体フラグメントと同じ結合特異性を有する他の抗体および抗体フラグメントを見つけることができることを当業者は理解している。以下に例示するように、競合結合アッセイ法を使用して、このような他の抗体を見つけることができる。
【0081】
フローサイトメトリーを使用して競合アッセイを実施する前に、一定数の腫瘍細胞(例えば、VB1-008はA-375細胞)に対して最大結合を提供する本発明の抗体の最小濃度を求める。合計106細胞を指数関数的に増殖する培養物から採取し、種々の抗体濃度で4℃において1時間インキュベーションする。細胞を洗浄し、好適な検出抗体と共に4℃においてさらに1時間インキュベーションする。洗浄後、細胞をフローサイトメトリーで分析する。各試験抗体について、抗体濃度に対して中央蛍光値をプロットすることによって、データから飽和曲線を作製する。
【0082】
競合アッセイ法については、腫瘍細胞を上記のように作製し、一定濃度の抗体(Ab1)を用いてデュープリケートで処理する。一定濃度は、上記のように求めた一定数の腫瘍細胞に対して最大結合を生ずる抗体の最小濃度である。Ab1の添加直後に、種々の濃度の抑制作用があると思われる抗体(Ab2)を各チューブに添加し、混合物を4℃において1時間インキュベーションする。各試験試料の中央蛍光読み値(Ab1+Ab2)からバックグラウンド蛍光(PBS-5%FCS)を引くことによって、最大中央蛍光値における阻害率および変化を算出する。次いで、結果を、Ab1単独の中央蛍光値(最大結合)マイナスバックグラウンドで割る(以下参照)。阻害率の結果は、100をかけることによって得られる。反復の平均およびそれぞれの標準誤差を抗体濃度に対してプロットする。以下の式を使用して阻害率を算出する:

(式中、PI=阻害率;MF(Ab1+Ab2)=Ab1+Ab2混合物の中央蛍光値;およびMFBgd=PBS-5%FCSのバックグラウンド中央蛍光値)。
【0083】
従って、本発明は、腫瘍細胞上の抗原に結合することができ、
(1)一定数の腫瘍細胞と、一定数の腫瘍細胞に最大結合を生じる本発明の最小濃度の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメント(Ab1)をインキュベーションして、Ab1の中央蛍光値(MFAb1)を測定する段階;
(2)Ab1および腫瘍細胞に試験結合タンパク質(Ab2)を添加することによって2つ以上の濃度のAb2を試験し、中央蛍光値(MF(Ab1+Ab2))を測定する段階;
(3)バックグラウンド中央蛍光値(MFbgd)を測定する段階;
(4)PI(ここで、PI=[(MF(Ab1+Ab2)-MFBgd)/(MFAb1-MFBgd)]×100)
を算出する段階;ならびに
(5)PIと対照PI値を比較する段階
を含み;
対照PIと統計学的に有意な差を有するPIは、試験結合タンパク質が腫瘍細胞の抗原に結合できることを示す方法によって同定することができる結合タンパク質を提供する。
【0084】
競合結合アッセイ法は、ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:28によって規定されるペプチドを用いても実施することができる。上記に記載される方法と同様に、競合アッセイ法を実施する前に、一定数の腫瘍細胞に対して最大結合を提供する試験結合タンパク質(Ab2)の最小濃度を求める。
【0085】
従って、本発明の態様は、腫瘍細胞上の抗原に結合することができ、
(1)一定数の腫瘍細胞と、一定数の腫瘍細胞に対する最大結合を生じる最小濃度の試験結合タンパク質(Ab2)をインキュベーションして、Ab2の中央蛍光値(MFAb2)を測定する段階;
(2)SEQ ID NO:28によって規定されるモル過剰量のペプチドと最小濃度の試験結合タンパク質(Ab2)をインキュベーションすることによって、ペプチドおよびAb2混合物を調製する段階;
(3)腫瘍細胞に混合物を添加して、中央蛍光値(MF(Ab2+ペプチド))を測定する段階;
(4)バックグラウンド中央蛍光値(MFbgd)を測定する段階;
(5) PI(ここで、PI=[(MF(Ab2+ペプチド)-MFBgd)/(MFAb2-MFBgd)]×100)
を算出する段階;および
(6) PIと対照PI値を比較する段階
を含み;
対照PIと統計学的に有意な差を有するPIは、試験結合タンパク質が腫瘍細胞の抗原に結合できることを示す方法によって同定することができる結合タンパク質を提供する。
【0086】
親和性成熟技法を使用して、CD44EおよびAFPに対する親和性を増加させることによってまたは1つの抗原に対する結合を選択することによって、本発明の結合タンパク質または免疫抱合体を改良してもよいことを当業者は理解している。後者によって、AFPまたはCD44Eに対する優先的な結合を有する2つの別個の抗体または免疫抱合体を開発することができる。
【0087】
抗体の結合親和性を増強するために通常2つの方法が使用される。一つの方法は、Ab-Ag複合体の結晶構造の解像度を使用して、抗原結合に関与するキー残基を同定する(Davies D. R., Cohen G. H. 1996. Interactions of protein antigens with antibodies. Proc Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93,7-12)。その後、相互作用を増強するようにそれらの残基を突然変異させることができる。もう一つの方法は、B細胞によって産生される免疫グロブリンの親和性成熟を誘導するインビボ抗原刺激を模倣している。免疫応答の成熟中、免疫グロブリンの可変領域は体細胞突然変異に供される(Mc Heyzer-Williams M. 2003. B-cell signaling mechanism and activation. Fundamental Immunology, Fifth edition, 195-225)。免疫系に特異性が高いこの方法は、非常に高い割合の点変異の導入によって特徴づけられる。それは、可変領域をコードするDNAフラグメント内でのみ生じ、保存ドメインを除外する。次いで、体細胞突然変異変種抗体を発現するB細胞を抗原媒介性選択に供し、高親和性免疫グロブリンを選択する。この現象をインビトロにおいて反復するために、数種の方法を使用して、ランダムまたは標的方法によって突然変異を導入した。エラー-プローンPCR、チェーンシャッフリング(chain shuffling)またはミューテーター大腸菌(E. coli)株を使用してランダム突然変異を導入することができる(Clackson T. Hoogenboom N. R., Griffiths A. D.およびWinter G. 1991 Making antibody fragments using phage display libraries. Nature 352,624-628, Hawkins R.E., Russell S. J.およびWinter G. 1992. Selection of phage antibodies by binding affinity. Mimicking affinity maturation. J. Mol. Biol. 226,889-896, Low N., Holliger P. およびWinter G. 1996. Mimicking somatic hypermutation: affinity maturation of antibodies displayed on bacteriophage using a bacterial mutator strain. J Mol. Biol. 260,359-368)。この方法により、リボソーム、ファージまたは酵母などのディスプレイ技術を用いて反応性クローンを選択する大きいライブラリーが作製される(Min L. (2000). Applications of display technology in protein analysis. Nat. Biotechnol. 18,1251-1256)。
【0088】
CDR、特に軽鎖および重鎖のCDR3の標的突然変異は、抗体親和性を増加するための効果的な技法であることが示されている。CDR3の3〜4アミノ酸のブロックまたは「ホット-スポット」と呼ばれる具体的な領域が突然変異の標的とされる。Yangらは、4つのCDR残基を突然変異することによって、抗HIV gp120 Fabフラグメントの420倍の増加を報告した(Yang W. P., Green K. , Pinz-Sweeney S., Briones A. T., Burton D.R.およびBarbas C. F. III. 1995. CDR walking mutagenesis for the affinity maturation of a potent human anti-HIV-1 antibody into picomolar range. J.Mol.Biol., 254,392-403)。VL CDR3の1つの突然変異をC6.5 scFvのVH CDR3の3つの突然変異と合わせることによって、親和性が1230倍増加した(Schier R., McCall A. , Adams G. P., Marshall K. W., Merrit H. , Yin M., Crawford R. S. Weiner L. M., Marks C. およびMarks J. D. 1996. Isolation of picomolar affinity anti-c-erbB-2 single-chain Fv by molecular evolution of the complementary determining regions in the center of the antibody binding site. J. Mol. Biol., 263,551-567)。
【0089】
「ホットスポット」は、体細胞高頻度変異がインビボにおいて生じる配列である(Neuberger M. S and Milstein C. 1995. Somatic hypermutation. Curr. Opin. Immunol. 7,248-254)。ホットスポット配列は、ある種のコドンにおけるコンセンサスヌクレオチド配列と規定することができる。コンセンサス配列は、RはAまたはGであってもよく、YはCまたはTであってもよく、WはAまたはTであってもよいテトラヌクレオチド、RGYWである(Neuberger M. S., and Milstein C. 1995. Somatic hypermutation. Curr. Opin. Immunol. 7,248-254)。また、ヌクレオチドAGYによってコードされるセリン残基は、ホット-スポットと思われる配列に対応するTCNによってコードされるものより可変ドメインのCDR領域に主に存在する(Wagner S. D., Milstein C. and Neuberger M. S. 1995. Codon bias targets mutation. Nature, 376,732)。構造解析は、CDRループ、特にCDR3ループは抗原結合に最も寄与していることを示している(Giudicelli V. , Chaume D. and Lefranc M. P. 2004. IMGT/V-QUEST, an integrated software program for immunoglobulin and T cell receptor V-J and V-D-J rearrangement analysis. Nucleis Acids Res. 32,435-440)。従って、本発明の各抗体の重鎖および軽鎖のCDRのヌクレオチド配列を、ホット-スポット配列およびAGYコドンの存在についてスキャンする。軽鎖および重鎖のCDR領域の同定されたホット-スポットを、International ImMunoGen Ticsデータベースを使用して、重鎖および軽鎖の胚配列と比較する(IMGT, http://imgt.cines.fr/textes/vquest/) (Davies D.R., Padlan E. A. and Sheriff S. 1990. Antibody-antigen complexes. Annu. Rev. Biochem. 59,439-473)。生殖細胞系と同一の配列は、体細胞突然変異は生じていないことを示唆している;従って、インビボにおいて生じる体細胞事象を模倣するランダム突然変異を導入する。一方、異なる配列は、一部の体細胞突然変異はすでに生じていることを示す。インビボにおける体細胞突然変異が最適であったかどうかは判定されていない。CDR内の埋設または保存アミノ酸をコードするホット-スポットは突然変異されない。これらの残基は、通常、全体の構造に重大であり、埋設されているので、抗原と相互作用する可能性はない。また、配列を、体細胞突然変異が主に生じた生殖系配列の予測される位置と比較することができる(Tomlinson I.M., Cox J. P.L., Gherardi E., Lesk A. M. and Chotia C. 1995. The structural repertoire of the human Vldomain. EMBO J. 14,4628-4638, Tomlinson I.M., Walter G., Jones P. T., Dear P. H., Sonnhammer E. L. L. and Winter G. 1996. The imprint of somatic hypermutation on the repertoire of human germline V genes. J. Mol. Biol. 256,813-817)。同様の方法を、BL22 scFvの親和性成熟に適用した。重鎖(heavy)のCDR3に点変異が導入されることにより、種々のCD22陽性細胞株に対する結合活性が5〜10倍増加した(Salvatore G. , Beers R., Margulies I., Kreitman R. J. and Pastan I. 2002. Improved cytotoxic activity toward cell lines and fresh leukemia cells of a mutant anti-CD22 immunotoxin obtained by antibody phage display. Clinical Cancer research, 8,995-1002)。また、CDR1およびCDR2ループの種々のアミノ酸の突然変異により、親和性が3倍〜7倍増加した突然変異体が作製された(Ho M., Kreitman J., Onda M. and Pastan I. 2005. In vitro antibody evolution targeting germline hot spots to increase activity of an anti-CD22 immunotoxin. J. Biol. Chem. , 280,607-617)。
【0090】
ランダムまたは標的方法によって突然変異を導入した後に、抗体を発現し、機能について評価する。例えば、機能的スクリーニングは結合に基づくことができる。機能が評価されたら、公知の方法を使用して、選択した抗体のDNAスクリーニングを実施することができる。
【0091】
別の態様において、Harvey, Bら(PNAS 2004 June 22;101 (25): 9193-8)によって記載されている固定周辺質発現(anchored periplasmic expression)(APEx)方法を、本発明の結合タンパク質または免疫抱合体の親和性成熟に使用する。
【0092】
従って、本発明は、CD44EおよびAFPもしくはその変種に対する結合タンパク質の親和性を増加するために、またはCD44EまたはAFPもしくはその変種に対する親和性を有する結合タンパク質を選択するために親和性成熟されている本発明の結合タンパク質を含む。
【0093】
本発明はまた、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体および抗体フラグメントおよび薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤または安定剤を含む組成物を提供する。
【0094】
(C)免疫抱合体
本発明はまた、(2)エフェクター分子に結合している、(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントを含む免疫抱合体を含む。一態様において、本発明の結合タンパク質は、癌細胞上または癌細胞内の抗原または分子に結合する。
【0095】
抗原は、CD44Eの5-v8インターフェースを含むタンパク質;CD44のv8エクソンを含むタンパク質;;CD44E;アミノ酸配列ATNMDSSHSITを含むタンパク質;α-フェトプロテインまたはその変種;47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有するタンパク質;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質;またはAFPのアミノ酸配列107〜487(SEQ ID NO:14)、AFPの107〜590(SEQ ID NO:15)またはAFPの107〜609(SEQ ID NO:16)を含むタンパク質であってもよい。別の態様において、抗原は、SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44または45を含み、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質;またはSEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75を含み、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質である。
【0096】
好ましい態様において、エフェクター分子は、(i)検出可能なシグナルを直接もしくは間接的に形成することができるラベル、または(ii)細胞障害性、細胞増殖抑制性であるか、または癌細胞が分裂および/もしくは転移する能力を阻害もしくは停止させる癌治療薬である。このような免疫抱合体は、一般に、本明細書において「本発明の免疫抱合体」ということができる。
【0097】
本発明の態様において、エフェクター分子は癌治療薬である。癌治療薬は、好ましくは、細胞障害性、細胞増殖抑制性または癌細胞が分裂および/または転移する能力を防止もしくは停止する。従って、本発明の一局面は、(2)毒素などの癌治療薬に結合した(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントである。
【0098】
別の態様において、免疫抱合体は内部移行され、癌治療薬は、細胞のタンパク質合成を遮断し、細胞死を生じる毒素である。重要なことに、ほとんどの正常な細胞は、癌細胞上に存在する抗原を広範に発現しないので、それらは免疫抱合体に結合して内部移行することができず、毒素または他の癌治療薬の死滅作用から保護される。
【0099】
種々のエフェクター分子を本発明の免疫抱合体に使用することができ、数多くのこのようなエフェクター分子は細胞内活性分子である。従って、本発明の一態様において、免疫抱合体は癌細胞によって内部移行される。
【0100】
好ましい態様において、エフェクター分子は、癌治療薬であり、さらに好ましくは、ゲロニン、ボウガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリオジン(bryodin)、ジフテリア毒素、レストリクトシン(restrictocin)およびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素Aおよびそれらの変種を含むが、これに限定されない、リボソーム不活性化作用を有するポリペプチドを含む毒素である。タンパク質がリボソーム不活性化タンパク質である場合には、毒素が細胞にとって細胞障害性であるためには、免疫抱合体は癌細胞に結合の結果内部移行されなければならない。従って、本発明の一態様において、エフェクター分子は毒素であり、免疫抱合体は癌細胞によって内部移行される。
【0101】
本発明の一態様において、毒素はボウガニンまたはシュードモナス外毒素Aおよびそれらの変種である。別の態様において、毒素は修飾ボウガニンまたはアミノ酸252〜608からなる切断型のシュードモナス外毒素Aである。
【0102】
本発明は、SEQ ID NO:11(図20)の核酸配列によってコードされるタンパク質を含む免疫抱合体を含む。本発明はまた、SEQ ID NO:12および13(図21)のアミノ酸配列を含む免疫抱合体を含む。
【0103】
他の限定するものではない態様において、癌治療薬は、DNAを破壊する作用をする薬剤を含む。従って、癌治療薬は、エンジイン(例えば、カリケアマイシンおよびエスペラマイシン)および非エンジイン小分子薬剤(例えば、ブレオマイシン、メチジウムプロピル-EDTA-Fe(II))から選択することができるが、これに限定されない。本発明により有用な他の癌治療薬には、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ジスタマイシンA、シスプラチン、マイトマイシンC、エクテナサイジン、デュオカルマイシン/CC-1065およびブレオマイシン/ペプレオマイシンが挙げられるが、これに限定されない。
【0104】
他の限定するものではない態様において、癌治療薬は、チューブリンを破壊する作用をする薬剤を含む。このような薬剤は、リゾキシン/メイタンシン、パクリタキセル、ビンクリスチンおよびビンブラスチン、コルヒチン、オーリスタチンドラスタチン10 MMAEおよびペロルシドAを含むが、これに限定されない。
【0105】
他の限定するものではない態様において、本発明の免疫抱合体の癌治療部分は、アサレイ(Asaley) NSC 167780、AZQ NSC 182986、BCNU NSC 409962、ブスルファン(Busulfan) NSC 750、カルボキシフタレート白金NSC 271674、CBDCA NSC 241240、CCNU NSC 79037、CHIP NSC 256927、クロラムブシル NSC 3088、クロロゾトシン NSC 178248、シス-プラチンNSC 119875、クロメゾン NSC 338947、シアノモルホリノドキソルビシンNSC 357704、シクロジソン NSC 348948、ジアンヒドロガラクチトール NSC 132313、フルオロドパン(fluorodopan) NSC 73754、ヘプスルファン(hepsulfam) NSC 329680、ヒカンソン(hycanthone) NSC 142982、メルファラン NSC 8806、メチル CCNU NSC 95441、マイトマイシン C NSC 26980、ミトゾラミド NSC 353451、ナイトロジェンマスタード NSC 762、PCNU NSC 95466、ピペラジン NSC 344007、ピペラジンジオン NSC 135758、ピポブロマン NSC 25154、ポルフィロマイシン NSC 56410、スピロヒダントインマスタード(spirohydantoin mustard) NSC 172112、テロキシロン(teroxirone) NSC 296934、テトラプラチン NSC 363812、チオテパ NSC 6396、トリエチレンメラミン NSC 9706、ウラシルナイトロジェンマスタード NSC 34462およびヨシ(Yoshi)-864 NSC 102627を含むが、これに限定されないアルキル化剤を含んでもよい。
【0106】
他の限定するものではない態様において、本発明の免疫抱合体の癌治療薬部分は、アロコルヒチン(allocolchicine) NSC 406042、ハリコンドリン B NSC 609395、コルヒチン NSC 757、コルヒチン誘導体 NSC 33410、ドラスタチン 10 NSC 376128 (NG - オーリスタチン由来)、メイタンシン NSC 153858、リゾキシン NSC 332598、タキソール NSC 125973、タキソール誘導体 NSC 608832、チオコルヒチン(thiocolchicine) NSC 361792、トリチルシステイン NSC 83265、硫酸ビンブラスチン NSC 49842および硫酸ビンクリスチン NSC 67574を含むが、これに限定されない有糸分裂阻害剤を含んでもよい。
【0107】
他の限定するものではない態様において、本発明の免疫抱合体の癌治療薬部分は、カンプトテシンNSC 94600、カンプトテシン、Na塩 NSC 100880、アミノカンプトテシン NSC 603071、カンプトテシン誘導体NSC 95382、カンプトテシン誘導体NSC 107124、カンプトテシン誘導体NSC 643833、カンプトテシン誘導体NSC 629971、カンプトテシン誘導体NSC 295500、カンプトテシン誘導体NSC 249910、カンプトテシン誘導体NSC 606985、カンプトテシン誘導体NSC 374028、カンプトテシン誘導体NSC 176323、カンプトテシン誘導体NSC 295501、カンプトテシン誘導体NSC 606172、カンプトテシン誘導体NSC 606173、カンプトテシン誘導体 NSC 610458、カンプトテシン誘導体 NSC 618939、カンプトテシン誘導体 NSC 610457、カンプトテシン誘導体 NSC 610459、カンプトテシン誘導体 NSC 606499、カンプトテシン誘導体 NSC 610456、カンプトテシン誘導体 NSC 364830、カンプトテシン誘導体 NSC 606497およびモルホリノドキソルビシンNSC 354646を含むが、これに限定されないトポイソメラーゼI阻害剤を含んでもよい。
【0108】
他の限定するものではない態様において、本発明の免疫抱合体の癌治療薬部分は、ドキソルビシン NSC 123127、アモナフィドNSC 308847、m-AMSA NSC 249992、アントラピラゾール誘導体 NSC 355644、ピラゾロアクリジン NSC 366140、ビサントレン HCL NSC 337766、ダウノルビシン NSC 82151、デオキシドキソルビシン NSC 267469、ミトキサントロン NSC 301739、メノガリル NSC 269148、N,N-ジベンジルダウノマイシン NSC 268242、オキサントラゾール(oxanthrazole) NSC 349174、ルビダゾン NSC 164011、VM-26 NSC 122819および VP-16 NSC 141540を含むが、これに限定されないトポイソメラーゼII阻害剤を含んでもよい。
【0109】
他の限定するものではない態様において、本発明の免疫抱合体の癌治療薬部分は、L-アラノシン NSC 153353、5-アザシチジン NSC 102816、5-フルオロウラシル NSC 19893、アシビシン NSC 163501、アミノプテリン誘導体 NSC 132483、アミノプテリン誘導体 NSC 184692、アミノプテリン誘導体 NSC 134033、アンチフォール(antifol) NSC 633713、アンチフォール(antifol) NSC 623017、Bakerの可溶性アンチフォール(soluble antifol) NSC 139105、ジクロロアリルローソン(dichlorallyl lawsone) NSC 126771、ブレキナール(brequinar) NSC 368390、フトラフル (プロドラッグ) NSC 148958、5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン NSC 264880、メトトレキセート NSC 740、メトトレキセート誘導体 NSC 174121、N- (ホスホノアセチル)-L-アスパルテート (PALA) NSC 224131、ピラゾフリン NSC 143095、トリメトレキセート NSC 352122、3-HP NSC 95678、2'-デオキシ-5-フルオロウリジン NSC 27640、5-HP NSC 107392、α-TGDR NSC 71851、アフィディコリングリシネート NSC 303812、アラ(ara)-C NSC 63878、5-アザ-2'- デオキシシチジン NSC 127716、β-TGDR NSC 71261、シクロシチジン NSC 145668、グアナゾール NSC 1895、ヒドロキシウレア NSC 32065、イノシングリコジアルデヒド NSC 118994、マクベシン(macbecin) II NSC 330500、ピラゾロイミダゾール NSC 51143、チオグアニン NSC 752およびチオプリンNSC 755を含むが、これに限定されないRNAまたはDNA代謝拮抗剤を含んでもよい。
【0110】
本発明は、さらに、(2)検出可能なシグナルを間接的もしくは直接形成することができるラベルであるエフェクター分子に結合している、(1)本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントを含む免疫抱合体を提供する。これらの免疫抱合体は、癌のインビボにおける検出などの研究または診断適用に使用することができる。ラベルは、好ましくは、検出可能なシグナルを直接または間接的に形成することができる。例えば、ラベルは、放射線不透過性であってももしくは3H、14C、32P、35S、123I、125I、131Iなどの放射性同位体;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンもしくはルシフェリンなどの蛍光(フルオロフォア)もしくは化学発光(クロモフォア)化合物;アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたは西洋わさびペルオキシダーゼ などの酵素;または金属イオンであってもよい。
【0111】
別の態様において、免疫抱合体は間接的に検出可能である。例えば、免疫抱合体に特異的であり、検出可能なラベルを含有する二次抗体を使用して免疫抱合体を検出することができる。
【0112】
本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントは、結合タンパク質をエフェクター分子に関連させるまたは結合することができる任意の手段によってエフェクター分子に「結合する」ことができる。例えば、結合タンパク質は、化学的または組換え手段によってエフェクター分子に結合することができる。融合物または結合物を作製するための化学的手段は当技術分野において公知であり、免疫抱合体を作製するために使用することができる。結合タンパク質とエフェクター分子を結合するために使用される方法は、結合タンパク質が癌細胞上の抗原に結合する能力を妨害しないで、結合タンパク質とエフェクター分子を接続することができなければならない。
【0113】
一態様において、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントは共にタンパク質であり、当技術分野において周知の技法を使用して結合することができる。2つのタンパク質を結合することができる数百の架橋剤が利用可能である。(例えば、「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」 1991, Shans Wong, CRC Press, Ann Arbor参照)。架橋剤は、一般に、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントおよび/またはエフェクター分子上で利用可能であるまたは挿入されている反応性官能基に基づいて選択される。また、反応性基がない場合には、光活性化架橋剤を使用することができる。ある種の例において、結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントとエフェクター分子の間にスペーサーを含むことが望ましい場合がある。当技術分野において公知の架橋剤には、ホモ二官能剤:グルタルアルデヒド、ジメチルアジピミデートおよびビス(ジアゾベンジジン)ならびにヘテロ二官能剤:mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドおよびスルホ-mマレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドが挙げられる。
【0114】
結合タンパク質-エフェクター分子タンパク質融合物は、組換えDNA技法を使用しても作製することができる。このような場合には、結合タンパク質をコードするDNA配列を、エフェクター分子をコードするDNA配列に融合して、キメラDNA分子を作製する。キメラDNA配列を、融合タンパク質を発現する宿主細胞にトランスフェクトする。当技術分野において公知の技法を使用して、融合タンパク質を細胞培養物から回収し、精製することができる。
【0115】
ラベルであるエフェクター分子を結合タンパク質に結合する例には、Hunterら、Nature 144: 945 (1962) ;Davidら、Biochemistry 13: 1014 (1974);Painら、J. Immunol. Meth. 40: 219 (1981);Nygren, J. Histochem.および Cytochem. 30:407 (1982);WenselおよびMeares、放射免疫画像法および放射免疫治療法(Radioimmunoimaging And Radioimmunotherapy)、Elsevier, N. Y. (1983)ならびにColcherら、「胸腺欠損マウスにおいてヒト癌異種移植片を局在化するための放射性医用製剤としてのモノクローナル抗体の使用(Use Of Monoclonal Antibodies As Radiopharmaceuticals For The Localization Of Human Carcinoma Xenografts In Athymic Mice)」"、Meth. Enzymol. , 121:802-16 (1986)に記載されている方法が挙げられる。
【0116】
(D)本発明のタンパク質の作製
軽鎖および重鎖相補性決定領域、軽鎖および重鎖可変領域、抗体および抗体フラグメントならびに免疫抱合体などの本発明のタンパク質は、いくつかの方法のいずれかにおいて作製することができるが、最も好ましくは、組換え方法を使用して作製することができることを当業者は理解している。
【0117】
従って、本発明の核酸分子は、公知の方法において、本発明のタンパク質の十分な発現を確実にする適当な発現ベクターに組み込むことができる。可能な発現ベクターには、ベクターが使用する宿主細胞と適合性である限り、コスミド、プラスミドまたは改変ウイルス(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)が挙げられるが、これに限定されない。発現ベクターは、「宿主細胞の形質転換に好適」であり、これは、発現ベクターが、本発明の核酸分子および核酸分子に機能的に結合しており、発現に使用する宿主細胞に基づいて選択される調節配列を含有することを意味している。機能的に結合しているは、核酸の発現を可能にする方法で、核酸が調節配列に結合することを意味することが意図されている。
【0118】
従って、本発明は、本発明の核酸分子またはそのフラグメントならびに挿入されたタンパク質-配列の転写および翻訳に必要な調節配列を含有する本発明の組換え発現ベクターを考慮している。
【0119】
好適な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳類または昆虫遺伝子を含む種々の起源から誘導することができる(例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている調節配列参照)。適当な調節配列の選択は、以下に考察されているように選択された宿主細胞に依存しており、当業者が容易に実施することができる。このような調節配列の例には、転写プロモーターおよびエンハンサーまたはRNAポリメラーゼ結合配列、リボソーム結合配列が挙げられ、翻訳開始シグナルを含む。さらに、選択される宿主細胞および使用されるベクターに依存して、複製開始点、追加のDNA制限部位、エンハンサーおよび転写誘導を与える配列などの他の配列を発現ベクターに組み込むことができる。
【0120】
本発明の組換え発現ベクターはまた、本発明の組換え分子が形質転換またはトランスフェクションされる宿主細胞の選択を促進する選択マーカー遺伝子も含有することができる。選択マーカー遺伝子の例は、ある種の薬剤に対する抵抗性を与えるG418およびヒグロマイシン、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、または免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン、好ましくはIgGのFc部分などの一部などのタンパク質をコードする遺伝子である。選択マーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼまたはホタルルシフェラーゼなどの選択マーカータンパク質の濃度の変化によってモニターされる。選択マーカー遺伝子が、ネオマイシン抵抗性などの抗生物質抵抗性を与えるタンパク質をコードするする場合には、形質転換細胞はG418で選択することができる。選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死滅する。これにより、本発明の組換えベクターの発現を可視化し、アッセイすることが可能になり、特に発現または表現型に対する突然変異の影響を判定することが可能になる。選択マーカーは、関心対象の核酸と別のベクターに組み込むことができることが理解されている。
【0121】
組換え発現ベクターはまた、組換えタンパク質の発現の増加;組換えタンパク質の溶解度の上昇;および親和性精製においてリガンドとして作用することによって標的組換えタンパク質の精製の助力となる融合部分をコードする遺伝子を含有することができる。例えば、タンパク質分解性切断部位を標的組換えタンパク質に付加して、融合タンパク質の精製後に融合部分から組換えタンパク質を分離することを可能にすることができる。典型的な融合発現ベクターには、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを組換えタンパク質に融合する、pGEX (Amrad Corp., Melbourne, Australia)、pMal (New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)が挙げられる。
【0122】
組換え発現ベクターを宿主細胞に組み込んで、形質転換宿主細胞を作製することができる。「で形質転換する」、「をトランスフェクトする」、「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、当技術分野において公知の多数の可能な技法の1つによって核酸(例えば、ベクター)を細胞に組み込むことを含むことが意図されている。本明細書において使用される「形質転換宿主細胞」という用語も、本発明の組換え発現ベクターが形質転換されている、グリコシル化することができる細胞を含むことが意図されている。原核細胞は、例えば、エレクトロポレーションまたは塩化カルシウム媒介形質転換によって核酸を形質転換することができる。例えば、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションなどの従来の技法によって核酸を哺乳類細胞に組み込むことができる。宿主細胞を形質転換およびトランスフェクトする好適な方法は、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press (1989))および他の教本において見出すことができる。
【0123】
好適な宿主細胞には、多種多様の真核宿主細胞および原核細胞が挙げられる。例えば、本発明のタンパク質は酵母細胞または哺乳類細胞において発現することができる。他の好適な宿主細胞は、Goeddel、遺伝子発現技術:酵素における方法(Gene Expression Technology: Methods in Enzymology)185, Academic Press, San Diego, CA (1991)において見出すことができる。また、本発明のタンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)などの原核細胞において発現することができる(Zhang et al., Science 303 (5656): 371-3 (2004))。
【0124】
本発明を実施するのに好適な酵母および真菌宿主細胞には、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピヒア(Pichia)属またはクリュイベロマイセス(Kluyveromyces)属およびアスペルギルス(Aspergillus)属の種々の種が挙げられるが、これに限定されない。酵母S. セレビシエ(S. cerevisiae)において発現するためのベクターの例には、pYepSec1 (Baldari. et al., Embo J. 6: 229-234 (1987))、pMFa (Kurjan and Herskowitz, Cell 30: 933-943 (1982))、pJRY88 (Schultz et al., Gene 54: 113-123 (1987))およびpYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)が挙げられる。酵母および真菌を形質転換するプロトコールは当業者に周知である(Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75: 1929 (1978) ; Itoh et al., J. Bacteriology 153: 163 (1983)およびCullen et al. (BiolTechnology 5: 369 (1987))参照)。
【0125】
本発明を実施するのに好適な哺乳類細胞には、特に、COS (例えば、ATCC No. CRL 1650または1651)、BHK (例えば、ATCC No. CRL 6281)、CHO (ATCC No. CCL 61)、HeLa (例えば、ATCC No. CCL 2)、293 (ATCC No. 1573)およびNS-1細胞が挙げられる。哺乳類細胞における発現を検出するのに好適な発現ベクターには、一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびサルウイルス40などのウイルス材料由来)ならびに他の転写および翻訳制御配列が挙げられる。哺乳類発現ベクターの例には、pCDM8 (Seed, B. , Nature 329: 840 (1987))およびpMT2PC (Kaufman et al., EMBO J. 6:187-195 (1987))が挙げられる。
【0126】
本明細書に提供されている教示内容を考慮すると、適当な種類の発現ベクターを植物、鳥類および昆虫細胞に組み込むためのプロモーター、ターミネーターおよび方法も容易に実施することができる。例えば、一態様において、本発明のタンパク質は植物細胞から発現することができる(アグロバクテリウム リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)ベクターの使用を総説しているSinkar et al., J. Biosci (Bangalore) 11:47-58 (1987)参照;また特に、PAPS2022、PAPS2023およびPAPS2034を含む植物細胞の発現ベクターの使用を記載している、Zambryski et al., Genetic Engineering, Principles and Methods, Hollaender and Setlow (eds.), Vol. VI, pp. 253-278, Plenum Press, New York (1984)も参照)。
【0127】
本発明を実施するのに好適な昆虫細胞には、カイコガ属(Bombyx)、トリコプルシア(Trichoplusia)またはスポドプテラ(Spodotera)種由来の細胞および細胞株が挙げられる。培養中の昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith et al., Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165 (1983))およびpVLシリーズ(Lucklow, V. A., and Summers, M. D., Virology 170:31-39 (1989))が挙げられる。本発明の組換えタンパク質の発現に好適な一部のバキュロウイルス-昆虫細胞発現システムはPCT/US/02442に記載されている。
【0128】
または、本発明のタンパク質は、ラット、ウサギ、ヤギおよびブタなどの非ヒト形質導入動物においても発現することができる(Hammer et al. Nature 315: 680-683 (1985); Palmiter et al. Science 222:809-814 (1983) ; Brinster et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438-4442 (1985); Palmiter and Brinster Cell 41:343-345 (1985)および米国特許第4,736,866号)。
【0129】
本発明のタンパク質はまた、固相合成(Merrifield, J. Am. Chem. Assoc. 85: 2149-2154 (1964); Frische et al., J. Pept. Sci. 2 (4): 212-22 (1996))または均一溶液における合成(Houbenweyl, Methods of Organic Chemistry, ed. E. Wansch, Vol. 15 I and II, Thieme, Stuttgart (1987))などのタンパク質の化学において周知の技法を使用する化学的合成によっても作製することができる。
【0130】
タンパク質などの他の分子が結合した本発明のタンパク質を含むN末端またはC末端融合タンパク質は、組換え技法による融合によって作製することができる。得られた融合タンパク質は、本明細書に記載する選択されたタンパク質またはマーカータンパク質に融合した本発明のタンパク質を含有する。本発明の組換えタンパク質は、公知の技法によって他のタンパク質に結合することもできる。例えば、タンパク質は、WO 90/10457に記載されているヘテロ二官能性チオール含有リンカー、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルチジオ-プロピオネート)またはN-スクシンイミジル-5チオアセテートを使用して結合することができる。融合タンパク質または結合物を作製するために使用することができるタンパク質の例には、免疫グロブリン、ホルモン、増殖因子、レクチン、インスリン、低密度リポタンパク質、グルカゴン、エンドルフィン、トランスフェリン、ボンベシン、アシアロ糖タンパク質グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ヘマグルチニン(HA)および切断型mycなどの細胞結合タンパク質が挙げられる。
【0131】
従って、本発明は、軽鎖および重鎖相補性決定領域、軽鎖および重鎖可変領域、抗体および抗体フラグメントなどの結合タンパク質ならびに本発明の免疫抱合体などの本発明のタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターを提供する。さらに、本発明は、本発明の組換え発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0132】
(E)治療方法および薬学的組成物
本発明者らは、本発明の結合タンパク質はCD44Eの細胞外ドメインに結合することおよび本発明の結合タンパク質は内部移行されることを示した。従って、本発明の結合タンパク質は、造影剤、放射性医用製剤または細胞障害剤などの生物活性剤または医学的関連剤の標的送達のために使用することができる。
【0133】
本発明者らはまた、本発明の結合タンパク質はAFPまたはその変種に結合することを示した。全長のAFPは遊離型で循環血中に見ることができ、受容体との結合の結果内部移行される。従って、本発明の結合タンパク質を用いる循環中のAFPの標的化も標的薬物送達に使用することができる。
【0134】
一態様において、本発明は、エフェクター分子が癌治療薬である、本発明の免疫抱合体の有効量を、癌を有することが疑われる患者に投与する段階を含む、癌を治療または予防する方法を提供する。別の態様において、本発明は、癌を治療または予防するための医用製剤を製造するための、エフェクター分子が癌治療薬である、本発明の免疫抱合体の有効量の使用を提供する。さらに、本発明は、癌の同時、別個または逐次的治療または予防のための医用製剤を製造するための、エフェクター分子が癌治療薬である、本発明の免疫抱合体の有効量の使用を提供する。
【0135】
本発明の一態様において、癌には、子宮頸癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平細胞癌、消化器癌、乳癌(乳管癌、小葉癌および乳頭癌など)、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍、神経芽細胞腫、肉腫、結腸癌、直腸癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、プラズマ細胞腫、リンパ腫および黒色腫が挙げられるが、これに限定されない。好ましい態様において、癌には、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌および頭頸部癌が挙げられるが、これに限定されない。
【0136】
本発明の免疫抱合体が癌細胞を選択的に阻害または破壊する能力は、癌細胞株を使用してインビトロにおいて用意に試験することができる。本発明の免疫抱合体の選択的阻害作用は、例えば、癌細胞の細胞増殖の選択的阻害を実証することによって判定することができる。
【0137】
毒性も細胞生存度に基づいて測定することができ、例えば、免疫抱合体に接触させた癌細胞および正常細胞培養物の生存度を比較することができる。細胞生存度は、トリパンブルー排除アッセイ法などの公知の技法によって評価することができる。
【0138】
別の例において、数多くのモデルを使用して、本発明の免疫抱合体の有効性を試験することができる。Thompson, E. W. ら(Breast Cancer Res. Treatment 31: 357-370 (1994))は、細胞外マトリックスの腫瘍細胞媒介性タンパク質分解および再構成された基底膜の腫瘍細胞浸潤を測定することによって(コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、マトリゲル、またはゼラチン)、インビトロにおいてヒト乳癌細胞の浸潤性を判定するためのモデルを記載している。他の適用可能な癌細胞モデルには、培養卵巣腺癌細胞(Young, T. N. et al. Gynecol. Oncol. 62: 89-99 (1996) ; Moore, D. H. et al. Gynecol. Oncol. 65: 78-82 (1997))、ヒト濾胞性甲状腺癌細胞(Demeure, M. J. et al., World J. Surg. 16:770-776 (1992))、ヒト黒色腫(A-2058)および線維肉腫(HT-1080)細胞株(Mackay, A. R. et al. Lab. Invest. 70: 781 783 (1994))ならびに肺扁平(HS-24)および腺癌(SB-3)細胞株(Spiess, E. et al. J. Histochem. Cytochem. 42: 917-929 (1994))が挙げられる。胸腺欠損ヌードマウスにおいて腫瘍の植え込みならびに腫瘍増殖および転移の測定に関係するインビボ試験システムも記載されている(Thompson, E. W. et al., Breast Cancer Res. Treatment 31: 357-370 (1994) ; Shi, Y. E. et al., Cancer Res. 53:1409-1415 (1993))。
【0139】
本発明の免疫抱合体は、インビボにおける投与に好適な生物学的に適合性の形態で被験者に投与するための薬学的組成物に製剤化することができる。物質は、ヒトおよび動物を含む、生きている生物に投与することができる。本発明の薬学的組成物の治療的に活性な量の投与は、望ましい結果を達成するのに必要な投与量および期間において有効な量と規定される。例えば、物質の治療的に活性な量は、疾病状態、個体の年齢、性別および体重ならびに本発明の組換えタンパク質が個体において望ましい応答を誘発する能力などの因子に応じて変わってもよい。用法用量は、最適の治療応答を提供するように調節することができる。例えば、数回に分割した用量を毎日投与してもまたは治療状況の危急性によって示されるように用量を平均的に低下してもよい。
【0140】
従って、本発明は、本発明の免疫抱合体および薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、癌を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。好ましい態様において、薬学的組成物中の免疫抱合体のエフェクター分子は、癌治療薬であり、さらに好ましくは毒素である。
【0141】
本発明の免疫抱合体を含む薬学的製剤を全身投与することができる。薬学的組成物は癌部位に直接投与してもよい。投与経路に応じて、化合物を不活性化する可能性のある酵素、酸および他の天然条件の作用から化合物を保護するための材料中でコーティングすることができる。
【0142】
本発明の一局面によると、免疫抱合体は直接投与によって患者に投与される。薬学的組成物は少なくともエンドポイントを達成するのに十分な量が投与され、必要な場合には、薬学的に許容される担体を含むことを本発明は考慮している。
【0143】
本発明はまた、癌を治療する手術の前、最中または後に本発明の免疫抱合体の有効量を投与する段階を含む術後合併症のリスクを低下する方法を提供する。
【0144】
本明細書に記載する組成物は、作用物質の有効量が混合物中で薬学的に許容される媒体と合わせられるように、被験者に投与することができる薬学的に許容される組成物を製造するためのそれ自体公知の方法によって製造することができる。好適な媒体は、例えば、Remingtonの薬科学(Pharmaceutical Sciences )(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa. , USA 1985)に記載されている。これに基づいて、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される媒体または希釈剤に関連し、生理液に好適なpHおよび等浸透圧の緩衝液に含有される物質の溶液を含むが、これに限らない。
【0145】
薬学的組成物には、凍結乾燥粉末または抗酸化剤、緩衝剤、抗菌剤および組成物を目的のレシピエントの組織または血液と実質的に適合性にする溶質をさらに含有してもよい水性もしくは非水性滅菌注射溶液もしくは懸濁液が挙げられるが、これに限定されない。このような組成物に存在してもよい他の成分には、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセリンおよび植物油が挙げられる。即時調製注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤または濃縮溶液もしくは懸濁液から調製することができる。免疫抱合体は、例えば、患者に投与する前に滅菌水または生理食塩液で再構成される凍結乾燥粉末として供給することができるが、これに限定されない。
【0146】
本発明の薬学的組成物は薬学的に許容される担体を含んでもよい。薬学的に許容される好適な担体には、薬学的組成物の生物作用の有効性を妨害しない本質的に化学的に不活性で、無毒性の組成物が挙げられる。好適な薬学的担体の例には、水、生理食塩液、グリセロール液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、ジオレシルホスホチジル(diolesylphosphotidyl)-エタノールアミン(DOPE)およびリポソームが挙げられるが、これに限定されない。このような組成物は、患者への直接投与のための剤形を提供するように、治療的に有効な量の化合物および好適な量の担体を含有するべきである。
【0147】
組成物は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等から誘導されるものなどの遊離アミノ基で形成されるものおよびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノ(ethylarnino)エタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導されるものなどの遊離カルボキシル基で形成されるものを含むが、これに限定されない薬学的に許容される塩の形態であってもよい。
【0148】
本発明の種々の態様において、薬学的組成物は、直接全身投与されるまたは腫瘍領域に直接投与される。
【0149】
薬学的組成物は、癌が認められる哺乳類を含む動物、好ましくはヒトを治療するための方法に使用することができる。投与される免疫抱合体の投与量および種類は、ヒト被験者において容易にモニターすることができる種々の因子に依存する。このような因子には、癌の病因および重症度(グレードおよび病期)が挙げられる。
【0150】
本発明の免疫抱合体を使用する癌治療の臨床成果は、医師などの関連分野の当業者によって容易に識別される。例えば、癌の臨床マーカーを測定する標準的な医学的試験は治療の有効性の強力な指標となる場合がある。このような試験には、身体検査、性能尺度、疾病マーカー、12-誘導ECG、腫瘍測定、組織生検、細胞検査、細胞診断、腫瘍計算の最長径、X線検査、腫瘍のデジタル画像化、バイタルサイン、体重、有害事象の記録、感染エピソードの評価、併用薬の評価、疼痛評価、血液および血清化学、尿検査、CTスキャンおよび薬物動態分析を挙げることができるが、これに限定されない。さらに、免疫抱合体および別の癌治療薬を含む併用療法の相乗作用は、単独療法を受けている患者との比較研究によって判定することができる。
【0151】
本発明の別の態様は、本発明の免疫抱合体の有効量および癌を治療するためにそれを使用するための取扱説明書を含む癌を治療または予防するためのキットである。
【0152】
承認されている抗癌療法の大半において、抗癌療法は他の抗癌療法と併用使用される。従って、本発明は、本発明の免疫抱合体を、少なくとも1つの追加の抗癌療法と併用使用して癌を予防または治療する方法を提供する。他の癌療法は、免疫抱合体の投与前、投与と重複して、投与と同時におよび/または投与後に投与することができる。同時投与する場合には、免疫抱合体および他の癌治療薬は1つの製剤または別個の製剤で投与することができ、別個に投与する場合には、任意に異なる投与様式で投与することができる。1つ以上の免疫抱合体と1つ以上の他の癌療法の併用は相乗的に作用して、腫瘍または癌に有効となる場合がある。他の癌療法には、放射線および他の抗癌治療剤が挙げられるが、これに限定されない。これらの他の癌治療薬には、2,2',2''トリクロロトリエチルアミン、6-アザウリジン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、6-メルカプトプリン、アセグラロン(aceglarone)、アクラシノマイシンアクチノマイシン、アルトレタミン、アミノグルテチミド、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アンシタビン、アンギオゲニンアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンスラマイシン、アザシチジン、アザセリン、アジリジン、バチマスター(batimastar)、bcl-2アンチセンスオリゴヌクレオチド、ベンゾデパ、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カルステロン、カルボプラチン、カルボコン、カルミノマイシン、カルモフール、カルムスチン、カルビシン(carbicin)、カルジノフィリン、クロラムブシル、クロルナファジン、酢酸クロルマジノン、クロロゾトシン、クロモマイシン、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デフォスファミド(defosfamide)、デメコルシン、デノプテリン(denopterin)、デトルビシン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドロロキシフェン、ドロモスタノロン、エダトレキセート、エフロミシン(eflomithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium)、エミテファー(emitefur)、エノシタブン(enocitabune)、エピルビシン、エピチオスタノール、エソルビシン(esorubicin)、エストラムスチン、エトグルシド、エトポシド、ファドゾロール、フェンレチニド、フロキシウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ホルメスタン、ホスフェストロール、ホテムスチン、硝酸ガリウム、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヘキセストロール、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イフォスファミド、インプロスルファン、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、L-アスパラギナーゼ、レンチナン、レトロゾール、ロイプロリド、ロムスチン、ロニダミン、マンノムスチン、マルセロマイシン(marcellomycin)、メクロメタミン、塩酸メクロレタミンオキサイド、メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メピチオスタン、メトトレキセート、メツレデパ、ミボプラチン、ミルテフォシン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モピダモール、ミコフェノール酸、ニルタミド、ニムスチン、ニトラシン、ノガラマイシン、ノベンビシン(novembicin)、オリボマイシン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、ペプロマイシン、パーフォスファミド(perfosfamide)、フェナメット(phenamet)、フェネステリン(phenesterine)、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、プリカマイシン、ポドフィリン酸(podophyllinic acid)2-エチル-ヒドラジド、リン酸ポリエストラジオール、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシンプレドニムスチン(prednimustine)、プロカバジン、プロパゲルマニウム、PSK、プテロプテリン、ピュロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ラニムスチンラゾキサン、ロドルビシン(rodorubicin)、ロキニメクス、シゾフィカン(sizofican)、ソブゾキサン、スピロゲルマニウム、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、タキソテレ、テガフア(tegafur)、テモゾロミド、テニポシド、テヌゾン酸(tenuzonic acid)、テストラコン(testolacone)、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、トムデックス、トポテカン、トレミフェン、トリアジクオン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド、トリロスタン、トリメトレキセート、トリプトレリン、トロフォスファミド、トロンテカン(trontecan)、ツベルシジン、ウベニメックス、ウラシルマスタード、ウレデパ、ウレタン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ジノスタチンおよびゾルビシン(zorubicin)、シトシンアラビノシド、ゲムツズマブ、チオテパ(thioepa)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、ゲムシタビン、デカルバジン、テモゾアミド)、ヘキサメチルメラミン、LYSODREN、ヌクレオシドアナログ、植物アルカロイド(例えば、タキソール、パクリタキセル、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(CAMPTOSTAR、CPT-11)、ビンクリスチン、ビンブラスチンなどのビンカアルカロイド)、ポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシン、VP-16(エトポシド)、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン)、ドキソルビシンリポソーム、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxyanthracindione)、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、アルデスロイキン、アルタミン、ビアオマイシン(biaomycin)、カペシタビン、カルボプラチン(carboplain)、クロラブシン(chlorabusin)、シクララビン(cyclarabine)、ダクリノマイシン(daclinomycin)、フロクスウリジン(floxuridhe)、酢酸ラウプロリド(lauprolide)、レバミソール、ロムスリン(lomusline)、メルカプトプリン(mercaptopurino)、メスナ、ミトランク(mitolanc)、ペガスペルガーゼ(pegaspergase)、ペントスラチン(pentoslatin)、ピカマイシン(picamycin)、リウキシルマブ(riuxlmab)、カンパス(campath)-1、ストラプロゾシン(Straplozocin)、トレチノイン、VEGFアンチセンスオリゴヌクレオチド、ビンデシンおよびビノレルビンを挙げることができるが、これに限定されない。1つ以上の癌治療薬を含む組成物(例えば、FLAG、CHOP)も本発明によって考慮される。FLAGはフルダラビン、シトシンアラビノシド(Ara-C)およびG-CSFを含む。CHOPはシクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシンおよびプレドニゾンを含む。当技術分野において公知の癌治療薬の全リストは、例えば、メルクインデックス(The Merck Index)およびフィジシャンズディスクリファレンス(Physician's Desk Reference)参照。
【0153】
併用療法のための薬学的組成物には、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アンスラマイシン)、アスパラギナーゼ、バシラス(Bacillus)およびゲラン(Gurin)、ジフテリア毒素、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、有糸分裂阻害剤、アブリン、リシンA、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、抗ヒスタミン剤、制吐剤等を挙げることもできるが、これに限定されない。
【0154】
実際、このような治療を必要としている患者に有効量の免疫抱合体を投与すると、臨床的に重要な効果を有する別の癌治療薬の用量を減少することができる。他の癌治療薬の用量の減少というこのような効果は、免疫抱合体の投与がない場合には観察することができない。従って、本発明は、1つ以上の他の癌治療薬の少ない用量を投与する段階を含む腫瘍または癌を治療するための方法を提供する。
【0155】
さらに、このような治療を必要としている患者への免疫抱合体を含む併用療法は、標準的な治療法の期間またはサイクル数と比較したとき、比較的短い治療期間を可能にすることができる。従って、本発明は、比較的短い期間にわたっておよび/または少ない投与サイクルで1つ以上の癌治療薬を投与する段階を含む腫瘍または癌を治療する方法を提供する。
【0156】
従って、本発明によると、免疫抱合体および別の癌治療薬を含む併用療法は癌治療全体の毒性(すなわち、副作用)を低下することができる。例えば、単独療法または別の併用療法と比較したとき、低い毒性は、少ない容量の免疫抱合体および/または他の癌治療薬を送達するとき、および/またはサイクルの期間(すなわち、単回投与の期間またはこのような投与シリーズの期間)を短くするとき、および/またはサイクル数を少なくするとき観察することができる。
【0157】
従って、本発明は、任意に薬学的に許容される担体に免疫抱合体および1つ以上の追加の抗癌治療薬を含む薬学的組成物を提供する。
【0158】
本発明はまた、任意に1つ以上の他の癌治療薬と併用した有効量の免疫抱合体および癌を治療するためにそれを使用するための取扱説明書を含むキットを提供する。
【0159】
上記に記載するように、免疫抱合体との併用療法は、追加の癌治療薬の投与に対して癌または腫瘍を感受性にすることができる。従って、本発明は、少ない量の癌治療薬の前、その後またはそれと同時に有効量の免疫抱合体を投与する段階を含む、癌を予防する、癌を治療するおよび/または癌の再発を予防する併用療法を考慮している。例えば、免疫抱合体による初期治療は、ある用量の癌治療薬によるその後のチャレンジに対する癌または腫瘍の感受性を増加することができる。この用量は、癌治療薬を単独または免疫抱合体が存在しない場合に投与する場合の低い範囲の標準的な投与量に近いかまたはそれ以下である。併用投与する場合には、免疫抱合体は癌治療薬と別個に、任意に異なる投与様式で投与することができる。
【0160】
従って、一態様において、追加の癌治療薬は、約5〜10、11〜20、21〜40または41〜75 mg/m2/cycleの範囲の用量のシスプラチン、例えば、PLATINOLまたはPLATINOL-AQ (Bristol Myers)を含む。
【0161】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約2〜3、4〜8、9〜16、17〜35または36〜75 mg/m2/cycleの範囲の用量のカルボプラチン、例えば、PARAPLATIN (Bristol Myers),を含む。
【0162】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.25〜0.5、0.6〜0.9、1〜2、3〜5、6〜10、11〜20または21〜40 mg/kg/cycleの範囲の用量のシクロホスファミド、例えば、CYTOXAN (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0163】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.5〜1、2〜4、5〜10、11〜25、26 〜50または51〜100 mg/m2/cycleの範囲の用量のシタラビン、例えば、CYTOSAR-U (Pharmacia & Upjohn)を含む。別の態様において、追加の癌治療薬は、約5〜50 mg/m2/cycleの範囲の用量のシタラビンリポソーム、例えば、DEPOCYT (Chiron Corp.)を含む。
【0164】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約15〜250 mg/m2/cycleの範囲または約0.2〜2 mg/kg/cycleの範囲の用量のダカルバジン、例えば、DTICまたはDTICDOME (Bayer Corp.)を含む。
【0165】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.1〜0.2、0.3〜0.4、0.5〜0.8または0.9〜1.5 mg/m2/Cycleの範囲の用量のトポテカン、例えば、HYCAMTIN (SmithKline Beecham)を含む。
【0166】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約5〜9、10〜25または26〜50 mg/m2/cycleの範囲の用量のイリノテカン、例えば、CAMPTOSAR (Pharmacia & Upjohn)を含む。
【0167】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約2.5〜5、6〜10、11〜15または16〜25 mg/m2/cycleの範囲の用量のフルダラビン、例えば、FLUDARA (Berlex Laboratories)を含む。
【0168】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約200〜2000 mg/m2/cycle、300〜1000 mg/m2/cycle、400〜800 mg/m2/cycleまたは500〜700 mg/m2/cycleの範囲の用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)を含む。
【0169】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約6〜10、11〜30または31〜60mg/m2/cycleの範囲の用量のドセタキセル、例えば、TAXOTERE (Rhone Poulenc Rorer)を含む。
【0170】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約10〜20、21〜40、41〜70または71〜135mg/kg/cycleの範囲の用量のパクリタキセル、TAXOL (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0171】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.5〜5 mg/kg/cycle、1〜4 mg/kg/cycleまたは2〜3 mg/kg/cycleの範囲の用量の5-フルオロウラシルを含む。
【0172】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約2〜4、5〜8、9〜15、16〜30または31〜60 mg/kg/cycleの範囲の用量のドキソルビシン、例えば、ADRIAMYCIN (Pharmacia & Upjohn)、DOXIL (Alza)、RUBEX (Bristol Myers Squibb)を含む。
【0173】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約3.5〜7、8〜15、16〜25または26〜50 mg/m2/cycleの範囲の用量のエトポシド、例えば、VEPESID (Pharmacia & Upjohn)を含む。
【0174】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.3〜0.5、0.6〜0.9、1〜2または3〜3.6 mg/m2/cycleの範囲の用量のビンブラスチン、例えば、VELBAN (Eli Lilly)を含む。
【0175】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6または0.7 mg/m2/cycleの範囲の用量のビンクリスチン、例えば、ONCOVIN (Eli Lilly)を含む。
【0176】
別の態様において、追加の癌治療薬は、約0.2〜0.9、1〜5、6〜10または11〜20 mg/m2/cycleの範囲の用量のメトトレキセートを含む。
【0177】
別の態様において、免疫抱合体は、リツキサン、リツキシマブ、カンパス(campath)-1、ゲムツズマブおよびトラスツズマブ(trastuzutmab)を含むが、これに限定されない少なくとも1つの他の免疫抱合体と併用投与される。
【0178】
別の態様において、免疫抱合体は、アンギオスタチン、サリドマイド、クリングル5、エンドスタチン、セルピン(Serine Protease Inhibitor)、抗トロンビン、フィブロネクチンの29 kDa N末端および40 kDa C末端タンパク質分解フラグメント、プロラクチンの16 kDaタンパク質分解フラグメント、血小板因子-4の7.8 kDaタンパク質分解フラグメント、血小板因子-4のフラグメントに対応する13アミノペプチド(Maione et al., 1990, Cancer Res. 51:2077-2083)、コラーゲンIのフラグメントに対応する14アミノ酸ペプチド(Tolma et al., 1993, J. Cell Biol. 122: 497-51 1)、トロンボスポンジンIのフラグメントに対応する19アミノ酸ペプチド(Tolsma et al., 1993, J. Cell Biol.122:497-511)、SPARCのフラグメントに対応する20アミノ酸ペプチド(Sage et al., 1995, J. Cell. Biochem. 57: 1329-1334)および薬学的に許容される塩を含むその変種を含むが、これに限定されない1つ以上の抗血管新生剤と併用して投与される。
【0179】
別の態様において、免疫抱合体は放射線療法の措置と併用して投与される。この療法は手術および/または化学療法も含んでもよい。例えば、免疫抱合体は、放射線療法およびシスプラチン(Platinol)、フルオロウラシル(5-FU、Adrucil)、カルボプラチン(Paraplatin)および/またはパクリタキセル(Taxol)と併用投与してもよい。免疫抱合体による治療は、低線量の放射線の使用および/または低頻度の放射線治療を可能にし、例えば、嚥下機能を妨害して、望ましくない体重低下または脱水を生じる可能性のある重症の咽頭炎の発現頻度を低下することができる。
【0180】
別の態様において、免疫抱合体は、リンホカイン、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子-様サイトカイン、リンホトキシン、インターフェロン、マクロファージ炎症性タンパク質、顆粒球単球コロニー刺激因子(granulocyte monocyte colony stimulating factor)、インターロイキン(インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-6、インターロイキン-12、インターロイキン-15、インターロイキン-18を含むが、これに限定されない)および薬学的に許容される塩を含む変種を含むが、これに限定されない1つ以上のサイトカインと併用投与される。
【0181】
さらに別の態様において、免疫抱合体は、自己細胞または組織、非自己細胞または組織、癌胎児性抗原、α-フェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、BCG生ワクチン、放線菌細胞壁-DNA複合体、メラノサイト系統タンパク質および突然変異型腫瘍特異的抗原を含むが、これに限定されない癌ワクチンまたは生物薬剤と併用投与される。
【0182】
さらに別の態様において、免疫抱合体はホルモン療法と関連して投与される。ホルモン治療薬には、ホルモンアゴニスト、ホルモンアンタゴニスト(例えば、フルタミド、タモキシフェン、酢酸ロイプロリド(LUPRON))およびステロイド(例えば、デキサメサゾン、レチノイド、ベタメタゾン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド、エストロゲン、テストステロン、プロゲスチン)が挙げられるが、これに限定されない。
【0183】
さらに別の態様において、免疫抱合体は、癌を治療または予防する遺伝子治療プログラムと関連して投与される。
【0184】
従って、併用療法は、投与される免疫抱合体および/または追加の癌治療薬に対する癌または腫瘍の感受性を増加することができる。この方法では、短い治療サイクルが可能になり、それによって毒性事象を減少することができる。サイクル期間は、使用中の具体的な癌治療薬に応じて変わってもよい。本発明はまた、連続もしくは不連続投与または1日量の数回の部分投与への分割も考慮する。具体的な癌治療薬の適当なサイクル期間は当業者によって理解されており、本発明は、各癌治療薬の最適な治療スケジュールの連続評価を考慮している。当業者の具体的なガイドラインは当技術分野において公知である。例えば、Therasseら、2000, 「固形癌において治療に対する応答を評価する新ガイドライン(New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors) European Organization for Research and Treatment of Cancer, National Cancer Institute of the United States, National Cancer Institute of Canada, 」 J Natl Cancer Inst. Feb 2;92(3):205-16参照。
【0185】
免疫抱合体は、注射、経口投与、吸入、経皮または腫瘍内などの任意の好適な方法によって投与することができるが、任意の他の癌治療薬は、同じまたは別の投与様式によって患者に送達することができることが考慮される。さらに、多数の癌治療薬を患者に送達することが意図されている場合には、免疫抱合体および他の癌治療薬の1つ以上を1つの方法によって送達することができるが、他の癌治療薬は別の投与様式によって送達することができる。
【0186】
(F)診断方法および診断薬
本発明の結合タンパク質は、癌細胞または癌細胞によって内部移行される分子に選択的に結合するが、正常細胞にはあまり結合しない。従って、結合タンパク質を癌の診断に使用することができる。上記に陳述するように、本発明者らは、本発明の結合タンパク質はCD44Eの細胞外ドメインに結合することを示した。本発明者らはまた、本発明の結合タンパク質はAFPまたはその変種に結合することも示した。AFPは、異常増殖、細胞形質転換および癌に関連する。従って、腫瘍抗原に対する結合タンパク質の特異性により、それは癌の診断において有用になる。
【0187】
好ましい態様において、結合タンパク質は本発明の抗体または抗体フラグメントである。また、癌細胞は、例えば、癌細胞試料を入手し、試料が本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントに結合する能力を判定することによって、本発明の治療方法に対する感受性を判定するために評価することができる。
【0188】
従って、本発明は、抗原を発現し、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体および抗体フラグメントに結合することができる癌細胞が存在するかどうかを判定するために、それら自体で使用することができるまたは本発明の治療方法の前、その最中もしくはその後に使用することができる診断方法、診断薬およびキットを含む。
【0189】
一態様において、本発明は、哺乳類の癌を診断する方法であって:
(1)結合タンパク質-抗原複合体の形成を可能にする条件下において、哺乳類から採取した試験試料と癌細胞上または癌細胞内の抗原に結合する本発明の結合タンパク質を接触させる段階;
(2)試験試料において結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する段階;および
(3)試験試料の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する段階
を含む方法を提供する。
【0190】
一態様において、抗原は、CD44E;47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有するタンパク質;またはCD44Eの5-v8インターフェースを含むタンパク質、CD44のv8エクソンまたはアミノ酸配列ATNMDSSHSITである。別の態様において、抗原はα-フェトプロテインまたはその変種;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質;またはアミノ酸SEQ ID NO:14、15もしくは16を含むタンパク質である。別の例において、抗原は、アミノ酸SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44または45を含み、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質;またはアミノ酸SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75を含み、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質である。
【0191】
本発明の別の態様は、哺乳類の癌を診断する方法であって:
(1) 抗体-α-フェトプロテイン複合体と、抗体-CD44E複合体の形成を可能にする条件下においてCD44Eに結合する抗体の形成を可能にする条件下において、哺乳類の試験試料とα-フェトプロテインまたはその変種に結合する抗体を接触させる段階;
(2)試験試料において抗体-α-フェトプロテイン複合体および抗体-CD44E複合体の量を測定する段階;および
(3)試験試料の抗体-α-フェトプロテイン複合体および抗体-CD44E複合体の量を対照と比較する段階
を含む方法である。
【0192】
本発明は、さらに、本発明の結合タンパク質のいずれか1つおよび癌を診断するためにそれを使用するための取扱説明書を含む、癌を診断するキットを含む。本発明はまた、α-フェトプロテインに結合する抗体およびCD44Eに結合する抗体ならびに癌を診断するためにそれらを使用するための取扱説明書を含む、癌を診断するためのキットも含む。
【0193】
診断適用に使用するために、本発明の結合タンパク質、好ましくは抗体または抗体フラグメントは、放射線不透過剤もしくは3H、14C、32P、35S、123I、125I、131Iなどの放射性同位体;フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンもしくはルシフェリンなどの蛍光(フルオロフォア)もしくは化学発光(クロモフォア)化合物;アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼまたは西洋わさびペルオキシダーゼなどの酵素;造影剤;または金属イオンなどの検出可能なマーカーで標識することができる。上記に記載するように、抗体または抗体フラグメントなどの結合タンパク質にラベルを結合する方法は当技術分野において公知である。
【0194】
本発明の別の局面は、哺乳類において癌を診断する方法であって
(1)哺乳類から採取した試験試料中で本発明の抗体量を測定する段階;および
(2)試験試料中の本発明の抗体の量を対照と比較する段階
を含む方法である。
【0195】
一態様において、本発明の抗体量は、試験試料中の抗体の量を、例えば、ELISAによって測定することによって測定される。別の態様において、本発明の抗体量は、試験試料中の、本発明の抗体をコードする核酸の発現レベルを、例えば、RT-PCRによって測定することによって測定される。
【0196】
(G)抗原
上記に記載するように、本発明者らは、本発明の結合タンパク質の抗原を同定した。従って、本発明は、本発明の結合タンパク質の1つに特異的に結合することができる単離タンパク質ならびにその核酸配列および使用を含む。
【0197】
一例において、単離タンパク質は、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5、好ましくは5.4の等電点を有する;48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質;またはAFPのアミノ酸配列107〜487(SEQ ID NO:14)、AFPの107〜590(SEQ ID NO:15)もしくはAFPの107〜609(SEQ ID NO:16)を含むタンパク質である。別の例において、単離タンパク質は、アミノ酸SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44または45を含み、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質を含み;またはアミノ酸SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75を含み、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4、好ましくは5.2の等電点を有するタンパク質を含む。
【0198】
(H)本発明の結合タンパク質の他の使用
CD44に対する抗体は、CD44H(標準型、CD44sとも呼ばれる)およびCD44Eのヒアルロン酸(HA)に対するPMA-誘導性結合を遮断することが示されている(Liao et al. J Immunol 151 (11):6490-99, 1993)。CD44変種、特に変種エクソン9を含有するもののクラスタリングはHAに結合するために重要であると思われ、PMAによって誘導することができる。下流細胞内シグナリングはこのクラスタリングに関連し、その妨害は細胞機能に影響することがある(Suzuki et al., JBC 277 (10):8022-32, 2002)。HA結合に対する抗体の遮断作用はクラスタリングの妨害によって媒介されると思われる。機序にかかわらず、本発明の結合タンパク質は、細胞外分子へのCD44の結合およびクラスタリングによって生じる下流細胞シグナリングまたはHAまたは/または他の細胞外分子への結合を調節するために使用できると思われる。
【0199】
従って、本発明は、CD44Eの活性を調節するための本発明の結合タンパク質の使用を含む。例えば、本発明の結合タンパク質を使用して、HAへのCD44Eの結合を妨害することができる。本発明の結合タンパク質は、CD44E活性を増強するためにも使用することができる。
【0200】
以下の限定するものではない実施例により本発明を例示する。
【実施例】
【0201】
実施例
実施例1:VB1-008モノクローナル抗体の作製
VB1-008モノクローナル抗体は、乳癌患者の抹消血リンパ球から作製した。TM-SH-P2は、モノクローナル抗体を作製するための融合パートナーとして使用した。VB1-008はIgG1、λモノクローナル抗体である。
【0202】
メッセンジャーRNA(mRNA)をハイブリドーマ細胞から単離し、第1鎖相補DNA(cDNA)を合成した。次いで、cDNAを使用して、PCRによって抗体HおよびL鎖遺伝子を単離した。PCRプライマーは、H(γ)およびL(λ)鎖アイソタイプのコンセンサスフレームワークにより命名した(注記参照)。PCR産物を個別にTOPO-pCR 2.1ベクターにクローニングし、大腸菌(E. coli)に形質転換した。TOPO-pCR 2.1に挿入物を含有する個々のクローンを単離し、増殖した。プラスミドDNAを精製し、配列決定した。
γプライマー:

λプライマー:

注記:1つのプライマーを使用してできるだけ多くの種類を単離するために、混合塩基をある種のコンセンサスプライマーに使用した:

【0203】
各PCR反応は、50μLの反応容積に以下の成分を含んだ。
10x PCR 緩衝液 5μL
2 mM dNTP 5μL
50 mM MgCl2 2μL
5' プライマー 20 pmoL
3' プライマー 20 pmoL
Taq DNA ポリメラーゼ 2.5 U
DNA 鋳型 50 ng
【0204】
PCRサイクル条件:94℃で1分、62℃で1分、72℃で1.5分を30サイクルおよび72℃で10分の最終伸張であった。増幅したPCR産物は1%アガロースゲルで電気泳動により分離し、切断し、Quaquickゲル抽出キットを使用して精製し、TOPO pCR 2.1クローニングベクターにクローニングし、次いで373 DNAシークエンサー鎖を使用してDNA配列決定した(Griffin G. H. and Griffin M. A.: PCR technology, Current innovations. CRC Press, Boca. Raton. Florida 3431.USA; Cloning vector pCR 2.1, Catalogue #205184. Invitrogen, Carlsbad, CA; Qiagen, Qiaquick gel extraction kit, Catalogue # 28706. Qiagen Inc., Mississauga, ONおよび 373 DNA Stretch. PE Applied Biosystems, Mississauga ON.)。
【0205】
VB1-008のCDR配列は表1に示す。
【0206】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、それぞれ、図1および2に示す。
【0207】
実施例2:腫瘍細胞反応性を測定することによる抗体プロファイリング
2つのパネルの細胞株に対する腫瘍細胞反応性についてVB1-008をフローサイトメトリーによって試験した。第1のパネルは15の異なる種類の上皮癌を含むが、第2のパネルは5種類の正常細胞からなる。VB1-008結果を表2に要約する。VB1-008は、試験した全ての癌種に対してMF>2.0であった。MF値は、各適応部位の全ての細胞株由来の対照抗体に対する中央蛍光値の平均倍増かの合計から算出した平均を示す。最も強い適応部位は、乳房、肺、メラノーマおよび前立腺であったが、これに限定されない。比較として、VB1-008は、正常細胞株より腫瘍細胞株のほとんどに反応性が大きかった。2つの例外は腎臓および肺細胞株であった;しかし、それらは対応する腫瘍細胞種よりはるかに低かった。表2参照。腫瘍:正常のVB1-008反応性の倍増加は〜2から7まで変化した。
【0208】
実施例3:正常組織マイクロアレイ
膜染色を実証するためおよび染色の最適条件を規定するために適当な組織フォーマットを評価するために、フロー陽性腫瘍細胞株SKBR-3に対してVB1-008を試験した。この抗体は、固定した包埋細胞を含む全ての実験グループにおける細胞質および細胞膜染色を実証した。VB1-008と共に終夜インキュベーションした固定細胞ペレットでは、細胞の80%は細胞質染色を示し、それらの10%は細胞膜染色を示した。ホルマリン固定細胞ペレットコアの細胞膜染色の代表的な写真を図3に示す。
【0209】
最適の染色条件が同定されたら、正常組織反応性のためのクリティカルノーマルの低密度(LD)アレイに対するアイソタイプ対照(4B5)との比較において試験した。VB1-008の結果を表3に要約する。ノーマルクリティカル組織のいずれの大幅は膜染色は観察されなかった。非クリティカルノーマル組織の高密度(HD)アレイ染色は、細胞表面染色は、生殖関連組織(精巣および輸卵管、図4、表4)に関連する上皮細胞に限定されることを示した。そのほかの点では、組織のいずれかの大幅な染色は観察されなかった。
【0210】
実施例4:腫瘍組織マイクロアレイ
腫瘍組織反応性についてVB1-008をHDホルマリン固定腫瘍TMAにおいて試験した。表5参照。VB1-008は、膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、卵巣、前立腺、直腸、胃および子宮を含む多種多様の適応部位に対して中程度の細胞表面反応性を示した。VB1-008細胞表面結合は、子宮頸部、肺、膵臓および皮膚の癌では低い程度で示され、低い反応性であった。細胞表面反応性VB1-008を例示するが、癌の一部に対するアイソタイプ一致の対照抗体ではない代表的な写真を図5〜7に示す。
【0211】
実施例5:フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡によるVB1-008結合および内部移行の評価:
腫瘍細胞株A-375に対して強力な反応性を実証するVB1-008および2つの対照抗体(5E9およびMA-103)を使用して、内部移行についてVB1-008を評価した。代表的な実験を表6に示す。異なる温度におけるVB1-008結合結果は内部移行する抗体5E9から異ならなかった。37℃において60分後、膜結合VB1-008は細胞表面から消失し、中央蛍光値は57.5%低下した。37℃におけるインキュベーション時間の延長は中央蛍光値のさらなる減少に関連した。120分までに、中央蛍光値は62.2%減少した。細胞表面結合を実証するフローヒストグラムを図8に例示する。細胞表面結合VB1-008がA-375細胞に内部移行したかまたは原形質膜から脱落したかどうかを確認するために、レーザー走査共焦点顕微鏡法の助けによる蛍光分布および細胞内染色の直接可視化によってさらに評価した。MA-103および5E9と同様に、4℃における60分間のA-375細胞のVB1-008とのインキュベーションは、蛍光ラベルの円周表面分布を実証した(図9A)。図9Bに示すように、VB1-008抗体結合細胞を37℃に加温すると、内部移行した抗体による細胞内染色の断続的なパターンを明らかにした。
【0212】
実施例6:結合親和性
フローサイトメトリーを使用して機能的親和性を評価した[Benedict, C.A., NacKrell, A. J. and Anderson, W. F. (1997) J. Immunol. Methods, 201:223- 231]。ある範囲の抗体濃度を一定数の腫瘍細胞(A-375)に対して2時間試験して、飽和曲線を作成した。シグマプロットを使用して、値およびグラフ分析を作成した(Jandel Scientific, San Rafael, CA)。求めた中央蛍光値の逆数を、抗体濃度の逆数の関数としてプロットして、Lineweaver-Burk方法によってKDを求めた。直線が作成され、曲線のスロープからKDを算出した。解離定数KD値を以下の等式:1/F=1/Fmax + (KD/Fmax)(1/IgGまたはIgMまたはscFv)(式中、F=バックグラウンドを引いた中央蛍光値である) によって求め、Fmaxをプロットから算出した。VB1-008の解離定数は5.88×10-8Mであることが示された。
【0213】
実施例7:VB1-008抗原同定
細胞
乳癌細胞株、MDA-MB 435S、MDA-MB-231;MCF-7;メラノーマ細胞株、A-375;膵臓腫瘍細胞株、PANC-1およびT細胞株、DaudiおよびRamosを研究に使用した(表7)。これらの細胞株は、フローサイトメトリーによる腫瘍細胞株プロファイリングの結果に基づいて選択した。
【0214】
腫瘍細胞株の増殖および維持
研究の細胞株はATCCから購入し、ATCCのガイドラインおよび推奨により培養した。細胞は、集密度90%、生存度>90%で回収した。
【0215】
VB1-008に対する抗原結合の予備実験による特徴づけ
予備実験による特徴データは、ドットブロットアッセイ法によるゲルに基づいた方法の実行可能性を評価するためにデザインした実験;および抗原と関連するエピトープの性質を判定するために実施した実験から得た。
【0216】
これらの実験のデータは、VB1-008抗原をペプチドエピトープにより「ブロット分析可能な」抗原と分類した、すなわち、抗原のVB1-008への結合に関与するエピトープはグリコシル化も脂質結合も受けなかった。抗原が、結合部位以外の部位がグリコシル化され得たことに注目すべきである。
【0217】
VB1-008 Ag濃縮および精製
免疫沈降
最小500μgの膜タンパク質をイムノアフィニティー精製に使用した。タンパク質-Gセファロース単独を使用する事前-クリーニング段階は、抗体の添加前の抗原の精製の第一段階であった。ある場合には、アッセイ法にさらにストリンジェンシーを加えるために、事前の洗浄(pre-clearing)を2回実施した。合計15〜20μgの抗体を混合物の沈殿剤として使用した。整理条件を模倣した緩衝条件を使用して、抗原-抗体混合物を4℃において終夜転頭混和した(nutated)。プロテアーゼインヒビターが抗原単離過程の全ての段階において確実に使用されるように注意を払った。
【0218】
免疫複合物を遠心分離し、RIP-A溶解緩衝液で洗浄し、0.2 MグリシンpH2.5で溶出した。未結合分画を示す上清を保存し、アフィニティー精製によって単離されないタンパク質を試験した。陽性の強い2つの細胞株、すなわち、A-375およびMDA-MB-435S、中程度に陽性の1つの細胞株、MDA-MB-231;弱い陽性の1つの細胞株、すなわち、MCF-7;ならびに陰性の3つの細胞株、すなわち、Panc-1;DaudiおよびRamosに免疫沈降を実施し、VB1-008および等量の4B5(アイソタイプ一致の対照)を同時に平行して処理した。
【0219】
ゲルに基づいた分析およびウェスタンブロット法
1D-PAGE
精製したタンパク質に還元および非還元条件の試料調製を供し、その後SDS-PAGE/ウェスタンブロット法によって分析した。還元条件を使用する場合には、単離抗原を、1%β-メルカプトエタノールを含有する試料緩衝液で65℃において15分処理し、非還元条件を使用する場合には、任意の還元剤を欠損している試料緩衝液と抗原を混合した。得られたブロットを必要な抗体およびHRPに結合した対応する二次抗体でプロービングして、化学発光によってイムノ精製タンパク質を可視化した。
【0220】
2D-PAGE
免疫沈降したタンパク質を2次元ゲル電気泳動で分離して、1D-PAGEで生じている可能性のある任意のタンパク質スタッキングの影響を解消した。2D-ゲル電気泳動は、第一の次元において等電点(Pi)により、第二の次元において分子量に基づいてタンパク質を分離した。このように分離されたタンパク質を終夜ニトロセルロース膜に移し、1D-PAGEの場合と同様に処理した。ウェスタンブロットを適宜VB1-008、抗CD44および抗AFPでプロービングして、反応したタンパク質を化学発光によって可視化した。
【0221】
ペプチド抽出および抗原ID
タンパク質を1D-ゲルおよび2D-ゲルから切断して、分析した。生データを入手し、受容されたペプチドの数に基づいてプロービング可能なタンパク質を予測した。Thermo Finnigan社製の「QSTAR-およびLCQ-ドデカLC-MS/MSでLC-MS/MS操作を実施した。同じ施設で同定されたタンパク質のデノボシーケンシングも実施した。
【0222】
実施例7(a) 1D-PAGE/ウェスタン分析
抗原陽性細胞株(A-375、MDA-MB-435S)において非還元条件下において(図10A)、1D-PAGEでの分離後に、〜110 kDaの1つの特定のバンドだけを検出した。同じバンドは弱い陽性の細胞株(MCF-7)において弱く検出され、抗原陰性細胞株(Daudi)において欠損していた。試料を還元試料調製条件下においてSDS-PAGEで分離した場合には、〜50 kDaの主要なバンドおよび弱い110 kDaバンドが抗原陽性細胞株、MDA-MB-435S、A-375、MDA-MB-231において強く発現され、MCF-7において弱く発現され、DaudiおよびPanc-1などの抗原陰性細胞株において欠損していることが観察された(図10B;図10C);Ramosは上記の観察の例外であった(図11Bおよび10C)。細胞株はどれも4B5では陽性の免疫沈降を示さなかった。ウェスタンデータを表8に要約する。
【0223】
IPおよびウェスタンブロット法によって検出される抗原の結合の特異性を判定するために、4つの細胞株を2回事前洗浄し、得られた溶液をVB1-008で免疫沈降した。図10Bにおいてわかるように、MCF-7ではバンドはまったく検出されなかったが、残りの細胞株は〜50 kDaおよび〜110 kDaの同じ2つの特異的なバンドを示した(弱い)。これらとは別に、図10Aにおいてもわかるように、4B5による免疫沈降はVB1-008による任意の検出可能な反応性タンパク質を生じず、使用した精製技法の特異性を示している。フローサイトメトリーによって測定した、これら7つの細胞株に対するVB1-008の結合プロファイルは、免疫精製実験において観察される結果に一致していた(表8)。
【0224】
実施例7(b)2D-PAGE分析
等電点(Pi)を求め、1D-PAGE分析におけるタンパク質スタッキングの可能性を評価するために、VB1-008の精製抗原を、第一の次元の分離がPiに基づいており、第二の次元の分離が分子量に基づいている2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)で分離した。次いで、ゲルをニトロセルロース膜に移し、標準的なウェスタンブロット処理に供した。2Dゲルにおけるタンパク質の検出に必要な量は、1Dゲルの必要量の〜4倍多いので、4回の免疫沈降反応により精製された抗原を1回の2D-PAGE分析のために一緒にしてプールした。2つの別個のゲルをウェスタンブロット分析のために同時に処理して、クーマシー染色ゲルで検出されるタンパク質がウェスタンブロットで観察されるものと同じであることを確実にした。2DウェスタンブロットをVB1-008でプロービングして、ECL(化学発光)で検出した。図11Aにおいてわかるように、2つのスポットが〜49 kDa/Pi=5.2〜5.6において検出された。
【0225】
図11Bは、2次元電気泳動によって分離したMDA-MB-435S由来の免疫沈降物のクーマシー染色プロファイルを示す。スポット「C」および「D」とラベルした、観察された2つのスポットをMS分析のために切断した。同定されたタンパク質の詳細は、それぞれ、表9Aおよび9Bに示す。
【0226】
ペプチド抽出およびタンパク質分析
A-375およびMDA-MB-435S膜を使用して、VB1-008に特異的に結合する抗原を免疫精製した。還元ゲル分離条件下において、〜50 kDaバンドが両方の細胞株において観察され、非還元条件下において、〜110kDaバンドが観察され、MDA-MB-435S細胞から「E」と呼ぶ。これらのタンパク質バンドは、MS分析のためにクーマシー染色ゲルから切断した。
【0227】
1D-ゲルバンドおよび2D-スポットからのタンパク質をトリプシン消化して、それらをゲルから遊離させて、逆相LC-MS/MSシステムで分離した。タンパク質の同定は、バイオインフォマティックツールを使用してデータベース解析によって明らかになった。生データは、得られたペプチドおよびケラチンなどの夾雑物を含む提案されたタンパク質のリストを含んだ。分析を得るために、MS/MSスペーサーを、www.Matrixscience.com.で利用可能なMascot サーチエンジンに直接提出した。
【0228】
ペプチド質量の分析およびそれらの同定
推定されるタンパク質候補の等電点(Pi)と分子量の関連は、タンパク質IDの重要なパラメーターである。同定されるペプチドの質量およびそれらのPiが、それぞれ、±3 kDa範囲以内および±0.2 Pi以内に確実になるように注意を払った。これは、ペプチドは異なる修飾状態で存在して、理論的に算出した質量およびPiから偏差する本質的な可能性のためである。許容される任意の偏差は先に規定された値を超えるべきではない。ペプチド数が非常に少なかった場合には、「デノボシーケンシング」として公知の方法によってさらなる情報を得るために追加のMS段階が必要とされた。「デノボシーケンシング」は、2回目のMS段階が、1回目のMSにおいて得られたペプチドの各々を、各々アミノ酸の電離型であるペプチドフラグメントイオン(yおよびbイオン)にフラグメントする方法である。次いで、各ペプチドの配列を得られた質量スペクトルから推定することができる。
【0229】
ペプチドは、MS/MSフラグメント化中に、メチオニンの酸化;酸性「R」基のエステル化、アミン基のアセトアミド形成ならびにプロリン、ヒドロキシプロリンおよびグリシン残基の水酸化などの修飾を受ける一般的な傾向を有する。これらの修飾が生じると、ペプチド質量は同じであるが、異なるペプチドと認められ、タンパク質IDのスコアリングパターンに偽の増加が生じ、同定された個々のペプチド全ての蓄積ユニットになる。ペプチドが適正に分析されないと、誤ったスコアが生じ、不正確なタンパク質同定が生じる可能性がある。従って、反復しないまたは別の場所で示されない「独自の」ペプチドを評価して選択し、これらの独自のペプチドに基づいてスコアを適正に与えることが重要であった。また、最終的な分析をイン-ハウスにおいて実施する前に、SEウィンドウ、切断ミスの数、準安定フラグメント化、1アミノ酸修飾等などのいくつかの他のパラメーターを考慮した。これらのストリンジェンシー段階の結果として、大多数のペプチドは少ない数に大幅に減少した。これらの編集したリストを使用したデータベース検索はタンパク質のマッピングを引き出した。ここで使用した手法は免疫精製であるので、残遺抗体の存在も、アクチン、ビメンチン、ケラチン、サイトケラチンおよびチューブリンなどの周知の夾雑物と共に夾雑物と考えた。得られた3〜4の最終タンパク質は正当なIDであり、2D-PAGEによって推定されるタンパク質のPiおよび分子量に基づいて選択または排除した。
【0230】
2Dスポット「C」の分析
2D-ゲルから切断したスポット「C」はα-フェトプロテイン(AFP)だけを同定したが、掲載されている他の2つのタンパク質は、研究中にタンパク質の完全性のために添加したプロテアーゼインヒビターであった。Piも、分子がAFPである可能性に一致する。MS分析は65ペプチドを明らかにしたが、ヒトAFPの54%配列範囲(sequence coverage)を構成する30の独自のペプチドだけが回収され、各ペプチドは元のタンパク質と100%相同性を示した。しかし、AFP分子は、N末端から最初の160 アミノ酸を欠損していた。ヒトAFP分子の配列分析はこれらの最初の106アミノ酸におけるリジンおよびアルギニン残基の明らかな存在を示しており、分子に存在する場合には、ペプチドとして切断されたと可能性がある。2Dスポット「C」のデノボシーケンシング情報は、N末端からの160アミノ酸の欠損を示しており、AFPのアイデンティティーを確立するとき、頻発する現象であった(図12A)。1Dゲルおよび2Dゲルからのデノボシーケンシングの合わせた結果を図12Bに示す。結果は、N末端からの106アミノ酸の欠損を示す。表11Aは同定されたペプチドを掲載する。
【0231】
2Dスポット「D」の分析
2D-ゲルのスポット「D」は、同時精製夾雑物、アクチンおよびアクチン結合タンパク質アクチニン以外に3つのタンパク質のアイデンティティーを明らかにした。しかし、CD44を除いて、他の2つのタンパク質のPiは2Dスポットについて観察されるものと明確に異なり、従ってタンパク質IDとして排除した。CD44アイソフォーム3の分子量は53.585±3 kDaであると求められ、スポット「D」の2D-PAGE分析で観察された分子量およびPiに完全に一致した。
【0232】
110 kDa抗原バンドの分析
先に記載するように、還元条件下において、〜110 kDaバンドをクーマシーおよびウェスタンブロット分析によって可視化した。2D-PAGE分析から、2つの成分が存在し、各々約〜50 kDaであり、CD44およびAFPと個別に同定され、非還元ゲル分離条件下において立体配座が保存されるとき、110 kDaバンドを形成するように寄与することが明らかであった。従って、立体配座について、110kDaバンドを切断し、分析してタンパク質成分を同定した。図13Aに見られる〜110 kDaバンドをMS分析のために切断した(E)。100 kDaバンドから同定されるタンパク質の詳細を表10に示す。
【0233】
タンパク質バンド「E」のMS分析
タンパク質バンド「E」のMS分析の結果を表10に示す。同時精製夾雑物、すなわち、アクチン、アクチニンおよびビメンチンとは別に、3つのタンパク質アイデンティティーが得られた。それらのうちには、CD44、AFPおよびヒートショックタンパク質90が存在した。ヒートショックタンパク質90は、同定された分子量が一致せず、従って可能性のある候補として排除した。CD44は膜結合型であるので、同族抗原の可能性がある。AFPはCD44と同時精製するが(図15A)、AFPは膜表面で検出されなかったことも実証された。
【0234】
トップ-ダウンプロテオミクス方法を使用すると、単離された抗原の分子量(50kDa)はCD44Eの予測された分子量に対応することが明らかであった。フロー実験および所定の細胞株に対する結合判定順もこの所見を立証している。表11Bおよび12のデータは、MS/MS分析によって同定されるペプチドのマッピングに関連する詳細を記載している。具体的には、8ペプチドセットを単離し、CD44分子の3つの異なる領域にマッピングした。特に、1つのペプチドは、親分子に存在する以外に、CD44Eに独自であるv8-v9領域にマッピングした。
【0235】
図14は、タンパク質データベースにおいて得られるペプチドのマッピングから得られる配列範囲(sequence coverage)を示す。8ペプチドのセットが、細胞外領域をマッピングした全てにおいて得られ、1つはCD44分子の可変領域であり、4つは細胞質領域である。相同性検索およびCD44変種へのペプチドのマッピングは、CD44R1およびCD44R2は可変領域においてv8-v10エクソンも発現することを示す。しかし、それらは、エクソン19から細胞質テイルの大部分を欠損している。従って、本発明者らの分析から同定された8つのうち4つのペプチドだけへの相同性を示し、従って免疫沈降によって精製された抗原から観察される分子量/Piの基準に適合しない。予測されるCD44Eの分子量53.8 kDaならびに観察される分子量およびPiは正確な一致を証明した。従って、VB1-008の考えられる抗原であるCD44アイソフォームは、アイソフォーム3とも呼ばれるCD44Eまたは上皮型である。
【0236】
実施例7(c)VB1-008抗原の検証
(1)フローサイトメトリーによる抗CD44および抗AFPの細胞表面反応性
CD44がVB1-008の同族抗原である可能性は、免疫精製、ゲルに基づいた分析およびMS分析によって明白に確立されている。膜調製は、VB1-008への抗原結合の膜局在化を明白に示唆した予備的な特徴づけ実験に基づいて、VB1-008を用いて実施した全ての研究において使用した。細胞表面の抗原の2つの成分の配向を求めるために、VB1-008、抗CD44、抗AFPおよび抗EGFRを用いて、細胞株パネルに対する反応性をフローサイトメトリーによって測定した。適当なアイソタイプ一致対照も研究に使用した。
【0237】
異なるレベルのVB1-008 Agを発現する細胞株のパネルを、比較細胞表面反応性実験のために選択した。各細胞株から約300,000細胞を使用し、VB1-008/抗CD44/抗AFPの中央蛍光値の倍増を測定し、それぞれのアイソタイプ一致対照と比較した。抗原強度カラムは、対応する抗体でプロービングした、各細胞株のWB分析で観察されたシグナル強度の編集であった。VB1-008のアイソタイプ一致対照は4B5-IgGであり、抗CD44、抗AFPおよび抗EGFRの対照はマウスIgGであった。その理由は後者の3つの抗体はマウスモノクローナル抗体だったからである。
【0238】
表13からわかるように、抗CD44の結合の判定順はVB1-008と類似していた。抗AFPは、アイソタイプ一致対照を上回る任意の検出可能な結合を示さなかった。抗CD44および抗AFPはマウスモノクローナル抗体、抗EGFRであったので、マウスモノクローナル抗体を陽性対照として使用した。抗CD44は、結合判定順がほぼ同じであっただけでなく、VB1-008の結合と比較して、48倍を超える膨大な増加を示し、同族抗原-抗体相互作用の存在を示唆している。ウェスタンブロットプロファイルから観察される抗原強度もフローによって得られるプロファイルとほぼ同じであった。
【0239】
(2)組換えAFPの1D-PAGE/ウェスタンブロット分析
AFPは、67 kDa組換え分子として購入することができる血清糖タンパク質である。この分子はRDI laboratoriesから購入し、0.3μgの純粋なタンパク質、AFPおよび0.3μgのBSAをSDS-PAGEで電気泳動し、ニトロセルロース膜に移し、VB1-008でプロービングした。図15Aからわかるように、陽性の反応が観察され、VB1-008によって認識されるAFPのエピトープの存在を示している。AFPは、VB1-008を用いる免疫沈降によって精製され、MS分析によって同定される2つの同定タンパク質分子の1つであったので、現在のウェスタンブロット実験は、VB1-008によって免疫精製した試料におけるAFPの存在を証明している。
【0240】
(3)VB1-008のウェスタンブロット分析ならびに抗AFPおよび抗CD44との反応性
MDA-MB-435S膜のVB1-008免疫沈降反応からの溶出液の2D-PAGE分離は、それぞれ、5.1〜5.4のPi範囲および51±3 kDaの分子量ならびに5.2〜5.5のPi範囲および50±3 kDaの分子量の2つの別個のスポット、「C」および「D」の存在を示した。VB1-008でプロービングすると、2つのスポットは可視化された。これら2つのスポットのLC-MS/MS分析はAFPおよびCD44のアイデンティティーを明らかにし、それらの存在は、非還元条件下において見られる110 kDaにおいても確認された。従って、次の段階として、同じ条件の免疫精製を反復し、2D-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に移し、ウェスタンブロットを抗AFPおよび抗CD44でプロービングした。結果を図15Bおよび図15Cに示す。
【0241】
市販の抗体の各々、抗AFPおよび抗CD44は、それぞれ、スポット「C」および「D」として図11Aおよび11BからのMS分析によって同定される同族スポットと特異的に反応した。図15BおよびCにおいて、おそらく副産物としての数アミノ酸の一部のランダムな損失によってまたは抗CD44が周囲のCD44エピトープの存在を認識する感受性によって、ほぼ同じPiであり、2〜3 kDa異なる2つのスポットが抗CD44と相互作用することが見られた。強調すべき点は、VB1-008と反応し、AFPおよびCD44であると同定された2つのスポットは、質量およびPiの適当な位置においてそれぞれの抗体で可視化されたことである。
【0242】
(4)CD44に対するAFPの交差反応性
CD44に対するAFPの関係を理解するために、抗CD44を使用して、全てのCD44アイソフォームを免疫沈降する実験をデザインした。選択的に精製したこれらのタンパク質をSDS-PAGEおよびWBに供した。3セットの同じ実験を同時に実施した。ウェスタンブロットを抗CD44でプロービングした。
【0243】
図16からわかるように、非還元条件下において実験したとき、AFPは、115〜200 kDa範囲のCD44と非常に強く反応する。VB1-008は、予想されるように、CD44と反応し、以前のケースにおいて見られたように、〜110 kDa範囲の明白な1つのバンドとして見られる。従って、AFPは、CD44と相互作用する本質的な能力を有するさらに別の同時精製タンパク質である可能性がある。CD44に結合する結果として、VB1-008で精製されると、プルダウンされる。
【0244】
考察
VB1-008を用いる免疫精製実験は、非還元条件下において〜110 kDaの1つの特異的なバンドおよび1D-PAGEの還元条件下において1つの50+3 kDaバンドを示した。タンパク質スタッキングを解消し、タンパク質の等電点を求めるために、2D-PAGE分析を実施した。2D-PAGE分析からの結果は、それぞれ、Pi=5.1〜5.4および5.2〜5.5ならびに51±3 kDaおよび50±3 kDaの分子量を有する2つのスポットの存在を示した。2DスポットのMS/MS分析は32および8ペプチドを回収し、それぞれ、同定された各タンパク質の54%および28%に及ぶ。同定された2つの抗原と推定されるものはCD44アイソフォーム3および低分子量型のα-フェトプロテインであった。
【0245】
示唆される抗原の存在を確認するために検証実験を実施した。VB1-008でプロービングした組換えAFP分子のSDS-PAGE/ウェスタンブロット分析は、1つの強力なシングルバンドとして67 kDa範囲に陽性の反応性を示し、従ってAFPの存在を確認した。CD44の存在を確認するために、同じパネルの細胞を、抗CD44を使用してフローによって試験した。CD44は、VB1-008と比較して、結合の劇的な増加を示し、同じ判定順位を保持した。AFPは、試験した細胞株のいずれにも結合できなかった。これらの結果は、CD44は、VB1-008によって認識される細胞表面抗原であることを示唆している。また、免疫精製およびその後のMS/MS分析は、AFPの関与を明らかに示している。
【0246】
VB1-008抗原としてのCD44E
タンパク質同定は、免疫沈降によって精製したVB1-008 Agのトリプシンペプチドのm/z測定により実施した。タンパク質データベースの十分な検索により、免疫精製したVB1-008 Agから同定した8つのペプチドセットに対応する1つの完璧なヒットを生じ、CD44Eまたは上皮型としても公知のCD44アイソフォームを指摘した。精製した抗原の分子量は、細胞株のVB1-008によって認識される抗原としての両方のアイソフォーム(1および2)の可能性を除外する。v1またはCD44v3、8〜10を除く全てのエクソンをコードするアイソフォーム2などの他のアイソフォームもVB1-008と反応することを予想することができるが、それらの分子量および/またはpIは、VB1-008細胞表面抗原について観察されるものと一致しない。
【0247】
本発明者らは、抗CD44でプロービングした2D-PAGEにおいておよび還元試料調製条件下の1D-PAGEにおいて50±3 kDaであり、非還元条件下では1D-PAGEおよびウェスタンブロット分析において110±10 kDaと観察された、CD44Eまたはアイソフォーム3の予測される分子量の出現の証拠を示している。タンパク質のLC-MS/MS分析はCD44Eの存在を確認している。
【0248】
実施例8:エピトープマッピング-結合実験
上記に記載するように、免疫沈降およびMS分析は、CD44E(アイソフォーム3)をVB1-008抗原と同定した。CD44Eは、保存配列、エクソン1〜5および16〜20の間にエクソンv8-v10を有する点において他のスプライス変種と異なる。次いで、VB1-008の反応性エピトープを同定するために、CD44Eの独自の領域(エクソン5-v8ジャンクションに及ぶアミノ酸配列)からペプチドを合成した。CD44EのC末端領域から取られる同じ長さのペプチドを陰性対照に使用した。
【0249】
方法および試薬
CD44Eの独自領域のペプチド:
CD44Eのエクソン5-v8ジャンクションに及ぶ合成ペプチドは、Globalペプチドサービス、LLCからオーダーした。CD44E由来のアミノ酸配列(17アミノ酸)は、エクソン5由来の6アミノ酸およびv8領域の独自のペプチド由来の11アミノ酸の長さにおよぶ。図18Aの強調部分は、3ペプチドに分割されている17アミノ酸鎖を示し、陰性対照ペプチド配列は、タンパク質のC末端領域に強調されているとおりである。
【0250】
各ペプチドのアミノ酸配列は以下のようである:

【0251】
可溶性ペプチド:
全てのペプチドはPBSに可溶性であった。溶解に困難さが観察された場合には、溶液のpHを0.01 N HClまたは0.01 N NaOHで調節した。ペプチドはストック溶液(1000 nM)で-20℃において保存した。
【0252】
ELISAプレートへのペプチドのコーティング:
ペプチド溶液は、0.5%ホルムアルデヒドを含有するHankの緩衝生理食塩液(HBSS)で100倍希釈した。希釈したペプチド溶液の100μLを96ウェルプレートの各ウェルに分配した。プレートを室温において1時間インキュベーションした。上清を除去し、プレートを37℃の恒温槽に16〜18時間カバーをしないで置いた。ペプチドコーティングしたプレートをプラスチックバッグに入れ、必要時まで2〜8℃において保存した。
【0253】
または、ペプチドを炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液pH 9.6で希釈し、プレートにコーティングした。コーティング緩衝液の変更を除いた他の段階は全て同じであった。
【0254】
ペプチドコーティングしたELISAプレートへのVB1-008の結合
固定したペプチドへのVB1-008の結合は、SOP 2.1.19およびSOP 2.2.7により実施した。
【0255】
ペプチドコーティングプレートを終夜インキュベーション後、300μLの洗浄緩衝液(0.5% Tween20を含有するPBS)を、8チャネルアダプターを装備したリピーターピペットの助けにより、各プレートに手動で添加した。プレートの内容物を破棄した;プレートを転倒させ、過剰の液体を除去するために3〜4インチのペーパータオルに軽くたたいた。上記の段階を2回以上反復した。
【0256】
ブロッキング:
ペプチドコーティングプレートを、ブロック緩衝液(1% BSAを含有するPBS)で300μL/ウェルでブロックした。プレートを室温において30〜60分インキュベーションした。インキュベーション後、ブロック緩衝液を破棄した。
【0257】
結合:
75μg/mLのVB1-008に等価な分量をウェルの各々に添加し、37℃において2時間インキュベーションした。先に記載したように、洗浄緩衝液(0.5%Tween20を含有するPBS)でプレートを洗浄した。プレートを、抗ヒトIgG-HRPの6000希釈液と共に室温において1時間インキュベーションした。先に記載したように、プレートを洗浄した。100μLのTMB基質(TMBペルオキシダーゼ基質KPL cat#50-76-00)を各ウェルに添加し、暗所で5〜10分インキュベーションした。各ウェルに1Mリン酸100μLを添加することによって反応を停止した。ELISAプレートリーダーを使用して、450 nmにおいて光学密度を測定した。
【0258】
または、SOP 2.1.111により、ELISAプレートに、100μg/mLのVB1-008をコーティングし、ビオチン化プローブを検出するために、SOP 2.1.41によりVB1-008へのビオチン化ペプチドの結合をアッセイした。
【0259】
結果
CD44Eの独自の領域(すなわち、エクソン5-v8ジャンクションに及ぶアミノ酸配列)由来の合成ペプチドのスクリーニングは、ペプチド3はもっとも強力な結合を示し、次にペプチド2は、ペプチド3で観察される結合の50〜60%を実証することを明らかにした。陰性対照として使用したCD44EのC末端領域から取られる同じ長さのペプチドは、ペプチド1に見られたような任意の反応性を示さなかった。VB1-008とペプチド3の反応性は、CD44Eのこの領域はVB1-008の反応性エピトープを含有することを実証した。図18B参照。
【0260】
実施例9:エピトープマッピング-競合実験
次いで、VB1-008結合のためのペプチドの競合効果をアッセイした。
【0261】
方法および試薬
腫瘍細胞株の増殖および維持:
VB1-008陽性細胞株、すなわち、MDA-MB-435Sを培養し、ATCCガイドラインにより維持した。
【0262】
合成ペプチド:
全てのペプチドをPBSに溶解し、1.428 mM(2 mg/mL)および100μM溶液として-20℃において保存した。
【0263】
競合アッセイ法:
VB1-008(75μg/mL)-0.5 μM濃度を非競合対照として使用した。モル過剰量、すなわち、20×、40×、100×および200×のペプチドをVB1-008との競合に使用した。フローによる結合前に、ペプチド/VB1-008混合物を氷上で10分インキュベーションした。4B5-IgGをアイソタイプ一致対照として使用し、抗EGFRを関連のない抗体として使用した。これら2つの抗体は、VB1-008と全く同じに処理した。
【0264】
VB1-008の結合:
MDA-MB435S細胞に対するVB1-008ならびに抗EGFRおよび4B5-IgG抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価し;先に記載した最適化したプロトコールにより実施した。ペプチドで処理した細胞および未処理の細胞は同様に処理した。
【0265】
結果
図19Aにおいてわかるように、ペプチド1はMDA-MB435S細胞に対するVB1-008の結合と競合せず、ペプチド2は、MDA-MB435S細胞に対するVB1-008の結合を60%の効率で競合し、ペプチド3は、MDA-MB435S細胞に対するVB1-008の結合を96%の効率で競合した。対照はVB1-008に対する競合を示さなかった。
【0266】
図19Bは、アイソタイプ一致対照の結果を示す。ペプチドまたは対照はどれも抗EGFRの結合と競合しない。
【0267】
実施例10:VB1-008イムノトキシンの細胞障害性
方法および試薬
PCT/CA2005/000410および米国特許出願第11/084,080号に開示されている方法を使用して、修飾ボウガニンに結合したVB1-008を含むVB6-008構築物を構築した。
【0268】
Furin感受性リンカーを使用して修飾ボウガニンに結合したVB1-008のVH-CHドメインおよびその直後のVB1-008ドメインのVL-CLを含む2シストロン性発現単位を作製した。VHおよびVLは共に前方にPelBリーダー配列が存在した(図26および27参照)。2シストロン性単位をpING3302Xomaベクターにクローニングし、アラビノース誘導性araBADプロモーターの制御下においた。VH-CH BouganinおよびVL-CLに隣接するPelBリーダー配列の存在により、タンパク質は細胞膜周辺空間に分泌され、還元環境により、2つの不変ドメイン間にジスルフィド結合の形成を可能にする。最終的には、Fab-bouganin融合タンパク質は培養上清に分泌される。VL-CLのN末端に位置するヒスチジンアフィニティータグは、Ni2+-キレート捕獲方法を使用したFab-bouganinタンパク質の精製を可能にする。VB6-008のVHフラグメント(395 bp)を以下のプライマーを用いて増幅し、PvuIIおよびNheI制限部位を使用してPelB-VB6-011-F-bougγカセットにクローニングした。
5'PvuII-QVQL

3'VB4-008-NheI

【0269】
VB1-008軽鎖はλであり、λCLドメインはSpeI制限部位を含有するので、異なる制限部位を使用して、VB6-008を集合させた。従って、VB6-008軽鎖フラグメントの5'末端において、HindIII制限部位(ボウガニンにおいて)を使用して、最終構築物をpSP73プラスミドに集合させた(図27参照)。VL-CLジャンクション付近に制限部位は見られなかったので、各クローンのVL-CLは、スプライスオーバーラッピングエクステンションPCR方法によって得た。以下のプライマーをD-bouganin 156、PelBシグナルおよびVB1-008ハイブリドーマのcDNAを鋳型として使用した:
【0270】
以下のプライマーを使用して、スプライスオーバーラッピングエクステンションポリメラーゼ連鎖反応方法によってHindIII-boug-PelB-VB6-008λを集合させた:
5'FurinリンカーD-bouganin

3'008-PelB

5'PelB-SalI

3'008-VL CL

5'008-VL CL

3'008 CL 停止

【0271】
増幅について上記に掲載する6つのプライマー全てを使用して3段階スプライスオーバーラッピングエクステンションPCR方法を行った。
【0272】
段階1
プライマー1および2を使用して、3'末端にPelBプロモーターの一部(820 bp)を含有するボウガニンを増幅した。第2のPCR反応において、プライマー3および4を使用して、3'末端にHisタグおよびVB6-008VLの一部(179 bp)を含有するPelBを増幅した。第3のPCR反応において、プライマー5および6を使用して、3'末端に2つの停止コドンおよびXhoI部位(666 bp)を有するVB6-008λ鎖を増幅した。
【0273】
段階2
第2のPCR反応において、プライマー1および6を、各PCR産物の1μlと共に使用して、HindIII-bouganin-PelB-VB6-008λ鎖(1591 bp)を作製した。
【0274】
1%アガロースゲルの電気泳動を使用して、増幅したPCR産物を分離した。関心対象のバンドを切断し、Qiaquickゲル抽出キットを使用して精製し、TOPO pCR 2.1クローニングベクターにクローニングし、373 DNAシークエンサーを使用して配列決定した。
【0275】
PCR産物を精製し、配列決定した。立証したクローンをHindIIIおよびXhoIで消化し、対応する酵素で事前に消化しておいたPelB-VB4-008-F-boug/pSP73にライゲーションした(図27)。次いで、VB6-008フラグメントをEcoRIおよびXhoIで消化して、pING3302発現ベクターにクローニングし、E104細胞に形質転換した。
【0276】
E104細胞は、最適密度(O. D. 600 nm)が2に達するまで、約5時間225 rpmで振とうしながら37℃において250 mLの振とうフラスコで30 mLのTB媒体(1%接種)中で増殖させた。この時点において、培養物は最終濃度0.1%L-(+)アラビノースで16時間誘導して、25℃においてインキュベーションした。その後、細胞ペレットおよび上清を14000 rpmにおいて5分間の遠心分離によって回収した。細胞ペレットおよび上清を、抗His(Amersham Bisciences 27-4710-01)および抗ヒトκ軽鎖(Sigma A-7164)または抗ヒトλ軽鎖(Sigma A-5175)を使用して、還元条件下および非還元条件下においてウェスタンブロットによって分析して、イムノトキシンの存在およびサイズを確認した。発現レベルが最も高いクローンのリサーチ細胞バンクを作製し、3つの独立したバイアルを、2Lの振とうフラスコにおいて500 mL TBのスケールで誘導について試験した。6時間ごとに、細胞ペレットおよび上清を単離し、ウェスタンブロット分析を使用して、回収のための最適な誘導後時間を示した。
【0277】
フローサイトメトリーを使用して、精製VB6イムノトキシンはそれぞれの親抗体の結合特異性を保持することを、抗原陽性および陰性細胞株を使用してことを実証した。結合は、マウス抗Hisモノクローナル抗体(Amersham Biosciences 27-4710-01)を使用して検出される。結合の特異性は競合アッセイ法によって評価した。簡単に説明すると、VB6-イムノトキシン(一定濃度)および対応するVB1抗体またはアイソタイプ一致対照抗体(種々の濃度)を抗原陽性細胞と同時にインキュベーションした。結合はマウス抗Hisモノクローナル抗体を使用して検出した。抗Hisモノクローナル抗体を使用したときの結合の減少は、VB6イムノトキシンおよび対応するVB1抗体は同じ抗原に結合することを示した。VB6イムノトキシンの結合レベルはアイソタイプ一致対照抗体の存在下において変更されないことが予想される。抗原陽性細胞株を使用した滴定曲線を用いてVB6イムノトキシンの機能的親和性を算出した。MTSアッセイ法を使用して、抗原陽性および陰性細胞株を使用して各VB6イムノトキシンのIC50を測定した。VB6-4B5は陰性対照として使用した。細胞障害性の特異性は、VB6イムノトキシンとVB6-4B5のIC50の差によって測定した。
【0278】
結果
修飾ボウガニンに結合したVB1-008を含む免疫抱合体(VB6-008)を構築した。免疫抱合体のヌクレオチド配列を図20に図示する(SEQ ID NO:11)。免疫抱合体のアミノ酸配列を図21に図示する(SEQ ID NO:12)。図22は、完全なVB6-008構築物を示す。図23は、PelB-VH-CH-Furin-De-Bouganinを含むVB6-008ユニット#1を示す。図24は、PelB-VL-CLからなるVB6-008ユニット#2を示す。
【0279】
VB6-008の細胞障害性を抗原陽性細胞、MB-435SCに対してインビトロにおいて評価した。Colo-320は陰性対照として使用した。細胞は、1000〜1 nmの範囲のVB8-008と共にインキュベーションし、5日のインキュベーション後可変性を測定した。図25においてわかるように、VB6-008免疫抱合体は、陰性対照と比較して、抗原陽性細胞を有意に死滅させた。
【0280】
本発明は、本発明において好ましい例であると考えられるものを参照して記載されているが、本発明は開示されている実施例に限定されないことが理解されるべきである。一方、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の改良および等価な調整を含むことが意図されている。
【0281】
全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願各々が全体の内容が参照により組み入れられていることが具体的および個別に示されているのと同じ程度で全体の内容が参照により本明細書に組み入れられる。
【0282】
(表1) CDR配列

【0283】
(表2) VB1-008との正常および腫瘍細胞表面結合の比較

1Nは適応部位あたり試験した細胞株の数を示す。2MF:値は、各適応部位の全ての細胞株由来の対照抗体を上回る中央蛍光値の平均倍増の合計から算出した平均を示す。ゼロの値は、対照抗体と比較して測定可能な反応がないことを示す。aはAntiCancer Inc提供の同所性モデルを示す。bはGFP(緑色蛍光タンパク質)-トランスフェクション体として利用可能な細胞株を示す。c Her2/neu-, ER+d Her2/neu-, ER-、p53wt、raswte Her2/neu-, ER-、p53mt、raswtf アンドロゲン反応性。g アンドロゲン非反応性。N/A、適用なし。平均-倍増(MF)を使用して腫瘍:正常比を算出する。
【0284】
(表3) VB1-008のクリティカルノーマル組織のLDアレイ

*スコアリングは0〜3+スケールで評価し、0=染色なしであり、トレースは1+未満であるが、0より大きい。グレード1+〜3+は染色の強い強度を示し、3+は強く、暗褐色の染色である。一般に、6人の異なる患者の1つの検体をスクリーニングした。6人未満の患者をスクリーニングした場合には、コアは欠損していたかまたは染色される組織を表していなかったことを示す。括弧内の値は、スコアリングした範囲において染色した細胞の割合を示す。
【0285】
(表4) VB1-008のHD正常TMA

*スコアリングは0〜3+スケールで評価し、0=染色なしであり、トレースは1+未満であるが、0より大きい。グレード1+〜3+は染色の強い強度を示し、3+は強く、暗褐色の染色である。一般に、8人の異なる患者の2つの検体をスクリーニングした。8人未満の患者をスクリーニングした場合には、コアは欠損していたかまたは染色される組織を表していなかったことを示す。括弧内の値は、スコアリングした範囲において染色した細胞の割合を示す。
【0286】
(表5) VB1-008のHD腫瘍TMA

*スコアリングは0〜3+スケールで評価し、0=染色なしであり、トレースは1+未満であるが、0より大きい。グレード1+〜3+は染色の強い強度を示し、3+は強く、暗褐色の染色である。一般に、8人の異なる患者の2つの検体をスクリーニングした。8人未満の患者をスクリーニングした場合には、コアは欠損していたかまたは染色される組織を表していなかったことを示す。頭頸部は咽頭、口唇、喉頭、口腔、扁桃腺および歯肉面の癌を含んだ。括弧内の値は、スコアリングした範囲において染色した細胞の割合を示す。
【0287】
(表6) 時間および温度の関数としての抗体結合のフローサイトメトリー評価

1代表的な実験を示す。2陰性対照、マウスミエローマIgGまたはヒトIgG(4B5)を上回るMF増加。3腫瘍細胞の細胞表面からのMFの減少率。4氷上で120分インキュベーションした(-)細胞。
【0288】
(表7) 研究に使用した各細胞株のアイソタイプ一致対照を上回るVB1-008の中央蛍光値の増加

【0289】
(表8) 精製した抗原の要約

【0290】
(表9A) 2Dスポット-「C」からLC-MS/MSによって同定したタンパク質の要約

C-同時精製夾雑物;
X-観察されるPiおよび/またはMwに一致しない
v=PiおよびMwに一致する
【0291】
(表9B) 2Dスポット-「D」からLC-MS/MSによって同定したタンパク質の要約

C-同時精製夾雑物;
X-観察されるPiおよび/またはMwに一致しない
v=許容される範囲内でPiおよびMwに一致する
【0292】
(表10) タンパク質バンド「E」からLC-MS/MSによって同定したタンパク質の要約

C-同時精製夾雑物;
X-観察されるPiおよび/またはMwに一致しない
v=許容される範囲内でPiおよびMwに一致する
【0293】
(表11A) AFPのMS/MSから回収されたペプチドのリスト

【0294】
(表11B) 免疫精製したCD44のMS分析から回収したペプチドのリスト

【0295】
(表12) 異なるCD44アイソフォーム間のペプチドの一致

【0296】
(表13) VB1-008、抗CD44、抗AFPおよび抗EGFRの比較結合プロファイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された軽鎖相補性決定領域1。
【請求項2】
請求項1記載の軽鎖相補性決定領域1をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項3】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配またはその変種を含む単離された軽鎖相補性決定領域2。
【請求項4】
請求項3記載の軽鎖相補性決定領域2をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項5】
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された軽鎖相補性決定領域3。
【請求項6】
請求項5記載の軽鎖相補性決定領域3をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項7】
SEQ ID NO:4のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された重鎖相補性決定領域1。
【請求項8】
請求項7記載の重鎖相補性決定領域1をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項9】
SEQ ID NO:5のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された重鎖相補性決定領域2。
【請求項10】
請求項9記載の重鎖相補性決定領域2をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項11】
SEQ ID NO:6のアミノ酸配列またはその変種を含む単離された重鎖相補性決定領域3。
【請求項12】
請求項11記載の重鎖相補性決定領域3をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項13】
請求項1、3および/または5記載の軽鎖相補性決定領域またはその変種を含む単離された軽鎖可変領域。
【請求項14】
請求項13記載の軽鎖可変領域をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項15】
請求項7、9および/または11記載の重鎖相補性決定領域を含む単離された重鎖可変領域、またはその変種。
【請求項16】
請求項15記載の重鎖可変領域をコードする単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項17】
SEQ ID NO:7(図1)のアミノ酸配列を含む単離された軽鎖可変領域、またはその変種。
【請求項18】
SEQ ID NO:6(図1)の軽鎖可変領域を含む単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項19】
SEQ ID NO:9(図2またはその変種)のアミノ酸配列を含む単離された重鎖可変領域。
【請求項20】
SEQ ID NO:10(図2)の重鎖可変領域を含む単離された核酸配列、またはその変種。
【請求項21】
請求項1、3および/または5記載の軽鎖相補性決定領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項22】
請求項7、9および/または11記載の重鎖相補性決定領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項23】
請求項1、3および/または5記載の軽鎖相補性決定領域ならびに請求項7、9および/または11記載の重鎖相補性決定領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項24】
請求項13もしくは17記載の軽鎖可変領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項25】
請求項15もしくは19記載の重鎖可変領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項26】
請求項13もしくは17記載の軽鎖可変領域および請求項15もしくは19記載の重鎖可変領域を含む結合タンパク質、またはその変種。
【請求項27】
抗体である、請求項21〜26のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項28】
抗体が抗体フラグメントである、請求項27記載の結合タンパク質。
【請求項29】
抗体フラグメントが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、それらのダイマー、ミニボディ(minobodies)、ダイアボディ(diabodies)、およびマルチマー、ならびに二重特異性抗体フラグメントである、請求項28記載の結合タンパク質。
【請求項30】
CD44Eの5-v8インターフェースを含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項31】
CD44のv8エクソンを含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項32】
CD44Eに結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項33】
アミノ酸配列

を含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項34】
アミノ酸配列

からなるペプチドに結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項35】
α-フェトプロテインまたはその変種に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項36】
47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項37】
SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44および/または45のアミノ酸配列をさらに含むタンパク質に結合する、請求項36記載の結合タンパク質。
【請求項38】
48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.5の等電点を有するタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項39】
SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74および/または75のアミノ酸配列をさらに含むタンパク質に結合する、請求項38記載の結合タンパク質。
【請求項40】
SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項41】
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項42】
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むタンパク質に結合する、請求項21〜29のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項43】
アミノ酸配列

に結合する結合タンパク質。
【請求項44】
抗体である、請求項21〜43のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項45】
抗体が抗体フラグメントである、請求項44記載の結合タンパク質。
【請求項46】
抗体フラグメントが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、それらのダイマー、ミニボディ、ダイアボディ、およびマルチマー、ならびに二重特異性抗体フラグメントである、請求項45記載の結合タンパク質。
【請求項47】
腫瘍細胞の抗原に結合することができ、競合的結合アッセイ法によって同定することができる結合タンパク質。
【請求項48】
競合的結合アッセイ法が:
(1)一定数の腫瘍細胞と、一定数の腫瘍細胞に最大結合を生じる請求項21〜46のいずれか一項記載の最小濃度の結合タンパク質(Ab1)をインキュベーションして、Ab1の中央蛍光値(MFAb1)を測定する段階;
(2)Ab1および腫瘍細胞に試験結合タンパク質(Ab2)を添加することによって2つ以上の濃度のAb2を試験し、中央蛍光値(MF(Ab1+Ab2))を測定する段階;
(3)バックグラウンド中央蛍光値(MFbgd)を測定する段階;
(4)PI(ここで、PI=[(MF(Ab1+Ab2)-MFBgd)/(MFAb1-MFBgd)]×100)
を算出する段階;ならびに
(5)PIと対照PI値を比較する段階
を含み;
対照PIと統計学的に有意な差を有するPIは、試験結合タンパク質が腫瘍細胞の抗原に結合できることを示す、請求項47記載の結合タンパク質。
【請求項49】
競合的結合アッセイ法が:
(1)一定数の腫瘍細胞と、一定数の腫瘍細胞に最大結合を生じる最小濃度の試験結合タンパク質(Ab2)をインキュベーションして、Ab2の中央蛍光値(MFAb2)を測定する段階;
(2)SEQ ID NO:28によって規定されるモル過剰量のペプチドと該最小濃度の試験結合タンパク質(Ab2)をインキュベーションすることによって、ペプチドおよびAb2混合物を調製する段階;
(3)腫瘍細胞に該混合物を添加して、中央蛍光値(MF(Ab2+ペプチド))を測定する段階;
(4)バックグラウンド中央蛍光値(MFbgd)を測定する段階;
(5) PI(ここで、PI=[(MF(Ab2+ペプチド)-MFBgd)/(MFAb2-MFBgd)]×100)
を算出する段階;および
(6) PIと対照PI値を比較する段階
を含み;
対照PIと統計学的に有意な差を有するPIは、試験結合タンパク質が腫瘍細胞の抗原に結合できることを示す、請求項47記載の結合タンパク質。
【請求項50】
親和性成熟を使用して、CD44Eおよび/もしくはAFPまたはその変種に対する結合タンパク質の親和性を増加させる、請求項21〜49のいずれか一項記載の結合タンパク質。
【請求項51】
請求項21〜50記載の結合タンパク質のいずれか1つを薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤または安定剤と共に含む組成物。
【請求項52】
(2)細胞障害性であるか、細胞分裂抑制性であるか、または他の様式で癌細胞が分裂および/もしくは転移する能力を阻害するもしくは低下させる癌治療薬に結合している、(1)癌細胞上または癌細胞内の抗原に結合する請求項21〜50のいずれか一項記載の結合タンパク質、を含む免疫抱合体。
【請求項53】
抗原が、CD44Eの5-v8インターフェースを含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項54】
抗原が、CD44のv8エクソンを含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項55】
抗原がCD44Eである、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項56】
抗原が、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項57】
抗原が、SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44および/または45のアミノ酸配列を含む、請求項56記載の免疫抱合体。
【請求項58】
抗原が、アミノ酸配列

を含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項59】
抗原がα-フェトプロテインまたはその変種である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項60】
抗原が、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項61】
抗原が、SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74および/または75のアミノ酸配列を含む、請求項60記載の免疫抱合体。
【請求項62】
抗原が、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項63】
抗原が、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項64】
抗原が、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項65】
癌治療薬が毒素である、請求項52〜64のいずれか一項記載の免疫抱合体。
【請求項66】
毒素がリボソーム不活性化ポリペプチドである、請求項65記載の免疫抱合体。
【請求項67】
毒素が、ゲロニン、ボウガニン(bouganin)、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリオジン(bryodin)、ジフテリア、レストリクトシン(restrictocin)、およびシュードモナス(Pseudomonas)外毒素A、またはそれらの変種からなる群より選択される、請求項66記載の免疫抱合体。
【請求項68】
毒素が修飾ボウガニンまたはその変種である、請求項66記載の免疫抱合体。
【請求項69】
毒素が、アミノ酸252〜608からなるシュードモナス(Pseudomonas)外毒素Aの切断型またはその変種である、請求項66記載の免疫抱合体。
【請求項70】
SEQ ID NO:11のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質を含む請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項71】
SEQ ID NO:12および13のアミノ酸配列を含む請求項52記載の免疫抱合体。
【請求項72】
免疫毒素が癌細胞によって内部移行される請求項52〜71のいずれか一項記載の免疫抱合体。
【請求項73】
請求項52〜72のいずれか一項記載の免疫抱合体を薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤または安定剤と共に含む組成物。
【請求項74】
癌を治療または予防するための医用製剤を製造するための請求項52〜72のいずれか一項記載の免疫抱合体の有効量の使用。
【請求項75】
癌を同時、別個または逐次的に治療または予防するための医用製剤を製造するための1つ以上のさらに別の癌治療薬の使用をさらに含む請求項74記載の使用。
【請求項76】
癌を有することが疑われる患者に、請求項52〜72のいずれか一項記載の免疫抱合体の有効量を投与する段階を含む、癌を治療または予防する方法。
【請求項77】
請求項52〜72のいずれか一項記載の免疫抱合体の有効量および癌を治療または予防するためにそれを使用するための取り扱い説明書を含む、癌を治療または予防するためのキット。
【請求項78】
下記の段階を含む、哺乳類の癌を診断する方法:
(1)結合タンパク質-抗原複合体の形成を可能にする条件下において、該哺乳類から採取した試験試料と、癌細胞上または癌細胞内の抗原に結合する請求項21〜50記載の結合タンパク質のいずれか1つを接触させる段階;
(2)試験試料において結合タンパク質-抗原複合体の量を測定する段階;および
(3)試験試料の結合タンパク質-抗原複合体の量を対照と比較する段階。
【請求項79】
抗原が、CD44Eの5-v8インターフェースを含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
抗原が、CD44のv8エクソンを含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
抗原がCD44Eである、請求項78記載の方法。
【請求項82】
抗原が、47〜53 kDaの分子量および5.2〜5.5の等電点を有するタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項83】
抗原が、SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44および/または45のアミノ酸配列を含む、請求項82記載の方法。
【請求項84】
抗原が、アミノ酸配列

を含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項85】
抗原が、α-フェトプロテインまたはその変種である、請求項78記載の方法。
【請求項86】
抗原が、48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有するタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項87】
抗原が、SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74および/または75のアミノ酸配列を含む、請求項86記載の方法。
【請求項88】
抗原が、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項89】
抗原が、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項90】
抗原が、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項78記載の方法。
【請求項91】
下記の段階を含む、哺乳類の癌を診断する方法:
(1) 抗体-α-フェトプロテイン複合体と、抗体-CD44E複合体の形成を可能にする条件下においてCD44Eに結合する抗体の形成を可能にする条件下において、該哺乳類の試験試料とα-フェトプロテインまたはその変種に結合する抗体を接触させる段階;
(2)試験試料において抗体-α-フェトプロテイン複合体および抗体-CD44E複合体の量を測定する段階;ならびに
(3)試験試料の抗体-α-フェトプロテイン複合体および抗体-CD44E複合体の量を対照と比較する段階。
【請求項92】
請求項21〜50記載の結合タンパク質のいずれか1つおよび癌を診断するためにそれを使用するための取り扱い説明書を含む、癌を診断するためのキット。
【請求項93】
α-フェトプロテインまたはその変種に結合する抗体、CD44Eに結合する抗体、および癌を診断するためにそれらを使用するための取り扱い説明書を含む、癌を診断するためのキット。
【請求項94】
(2)検出可能なシグナルを生成するラベルに直接または間接的に結合している(1)請求項21〜50のいずれか一項記載の結合タンパク質を含む診断薬。
【請求項95】
ラベルが放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、造影剤、または金属イオンである、請求項94記載の診断薬。
【請求項96】
請求項94または95記載の診断薬およびそれを使用するための取り扱い説明書を含むキット。
【請求項97】
請求項2、4、6、8、10、12、14、16、18および20のいずれか一項記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項98】
SEQ ID NO:11に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクター。
【請求項99】
請求項97〜98のいずれか一項記載の組換え発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項100】
請求項21〜50の結合タンパク質の1つに特異的に結合することができるアミノ酸配列を含む単離タンパク質。
【請求項101】
48〜54 kDaの分子量および5.1〜5.4の等電点を有する、請求項100記載の単離タンパク質。
【請求項102】
SEQ ID NO:46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74および/または75のアミノ酸配列を含む請求項101記載の単離タンパク質。
【請求項103】
47〜53 kDの分子量および5.2〜5.5の等電点を有する、請求項100記載の単離タンパク質。
【請求項104】
SEQ ID NO:38、39、40、41、42、43、44および/または45のアミノ酸配列を含む請求項103記載の単離タンパク質。
【請求項105】
SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、またはSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む、請求項100記載の単離タンパク質。
【請求項106】
請求項100〜105のいずれか一項記載のタンパク質をコードする単離核酸配列。
【請求項107】
癌を治療または予防するための医用製剤の製造における、請求項100〜105のいずれか一項記載の単離タンパク質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22−1】
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【図22−2】
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【図22−3】
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【図22−4】
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【図23−1】
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【図23−2】
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【図23−3】
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【図24−1】
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【図24−2】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−187104(P2012−187104A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78467(P2012−78467)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2007−526144(P2007−526144)の分割
【原出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(510242185)ヴィヴェンティア バイオテクノロジーズ インコーポレーティッド (4)
【Fターム(参考)】