説明

腫瘍等を治療するための装置ならびに腫瘍の治療のための装置を備えた製品

本発明においては、生体組織内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置が提供される。分裂細胞は、後期フェーズの後期または終期フェーズにおいては、分極可能な細胞内メンブランを有している。分裂細胞どうしは、分裂溝を介して互いに連結されている。本発明による装置は、電源に対して接続された絶縁電極を具備している。電源は、分裂細胞内に形成された非一様電界に応答して、分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を形成する。分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、分裂細胞が破壊され、分裂細胞の増殖を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月10日付けで出願された米国特許出願シリアル番号第10/315,576号明細書の優先権を主張するものである。この出願自体は、2002年10月31日付けで出願された米国特許出願シリアル番号第10/285,313号明細書の一部継続出願である。この出願自体は、2002年10月2日付けで出願された米国特許出願シリアル番号第10/263,329号明細書の一部継続出願である。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、局所的領域内において急速に分裂する細胞を選択的に破壊することに関するものである。より詳細には、身体の特定部位に対して相補的であるように構成された装置を使用して、ある種の所定の特性を有した電界を印加することによって、そのような分裂細胞を選択的に破壊するような装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
生きているすべての有機体は、細胞培養も含めた細胞分裂や、微生物(例えば、バクテリア、マイコプラズマ、イースト、原虫類、および、他の単細胞有機体)や、菌類や、藻類や、プラントセル、等によって増殖する。有機体の細胞分裂は、ある種の作用物質に対してのそれら有機体の細胞分裂の感度に基づいた手法によって、破壊することができる、あるいは、それらの増殖を、制御することができる。例えば、ある種の抗生物質は、バクテリアの繁殖プロセスを停止させる。
【0004】
真核細胞の分裂プロセスは、『有糸分裂』と称される。有糸分裂は、微細な個別フェーズを備えている(Darnell 氏他による、Molecular Cell Biology, New York: Scientific
American Books, 1986, p. 149、を参照されたい)。間期フェーズにおいては、細胞は、染色体DNAを複製する。染色体DNAは、初期フェーズの初期において凝集し始める。この時点においては、中心小体(各細胞が、2つのものを備えている)は、細胞の両端の極に向けて移動し始める。初期フェーズの中期においては、各染色体が、複製の染色分体から構成される。微小管スピンドルが、中心小体に隣接している極寄りの領域から放射される。初期フェーズの後期までに、中心小体は、極に既に到達している。また、いくつかのスピンドルファイバが、細胞の中心まで延出される。その一方で、他のスピンドルファイバは、極から染色分体までにわたって延在している。その後、細胞は、細胞分裂の中期フェーズへと移行する。この中期フェーズにおいては、染色体が、細胞の赤道に向けて移動し、赤道平面内において整列する。その次は、有糸分裂の後期フェーズの初期である。この初期においては、娘染色分体どうしが、赤道上において互いと離間し、両方の極に位置した中心小体に向けて、スピンドルファイバに沿って移動する。細胞は、極の軸に沿って延び始める。極から極へのスピンドルも、また延在している。後期フェーズの後期においては、娘染色体(それらがそう称されないときには)の各々が、それぞれ対応する極に対して到達する。この時点において、細胞の赤道のところにおいて分裂溝が形成され始めるにつれて、細胞質分裂が、始まる。言い換えれば、有糸分裂の後期フェーズの後期においては、細胞膜のピンチングが始まる。終期フェーズにおいては、細胞質分裂は、ほとんど完了しており、スピンドルが消滅する。比較的狭い細胞膜連結が、2つの細胞質を連結している。最後に、細胞膜が完全に分離し、細胞質分裂が、完了し、また、細胞は、間期フェーズへと戻る。
【0005】
減数分裂においては、細胞は、第2分裂を経験する。第2分裂においては、スピンドルファイバに沿って細胞の両極に向けて姉妹染色体どうしが分離し、その後、分裂溝が形成されて、細胞分裂が起こる。しかしながら、この分裂は、染色体の複製の後に起こるものではなく、半数体生殖細胞をもたらす。
【0006】
バクテリアは、また、染色体の複製によって分裂し、その後、細胞分離が起こる。しかしながら、娘染色体が、細胞膜部材に対する付着によって分離することのために、真核細胞の場合のようには、細胞分裂に関する可視装置は、存在しない。
【0007】
腫瘍が、特に悪性腫瘍または癌性腫瘍が、正常組織と比較して、制御不可能な態様で成長することは周知である。そのような促進された成長により、腫瘍は、常に増加するスペースを占領することができ、隣接した組織を損傷させたり破壊したりすることができる。さらに、ある種の癌は、単一細胞や小さな細胞クラスタを含めた癌の『シード』(あるいは、種)』を、新しい場所へと移送することができ(転移)、転移した癌細胞が、さらなる腫瘍として成長する、ことによって特徴づけられる。
【0008】
腫瘍の急速な成長は、一般的には、上述したような悪性腫瘍の急速な成長は、正常組織細胞と比較して、これら細胞の細胞分裂あるいは増殖が頻繁であることの結果である。癌細胞の明らかに頻繁な細胞分裂は、例えば放射線療法や様々な化学薬剤の使用といったような現存の癌治療の有効性の根拠である。そのような治療は、分裂を受けた細胞が、分裂を受けていない細胞と比較して、放射線や化学薬剤治療に対して、より敏感であるということを基礎としている。癌細胞が、正常細胞と比較して、非常に頻繁に分裂することにより、放射線治療および/または化学療法によって、ある程度までは、腫瘍細胞を選択的に損傷させたりあるいは破壊したりすることができる。放射線治療や化学薬剤等に対しての細胞の実際の感度は、また、様々なタイプの正常細胞または様々なタイプの悪性細胞の特定の特性に依存する。よって、うまくないことに、腫瘍細胞の感度は、多くのタイプの正常細胞と比較して、十分に大きなものではない。このことは、腫瘍細胞と正常細胞との間にわたっての識別能力を低減させる。したがって、既存の癌治療は、典型的には、正常組織に対して深刻な損傷をもたらす。そのため、そのような治療の治療効果が、制限されることとなる。さらに、他の組織に対しての避けられない損傷は、治療を、患者にとって非常に損傷性のものとする。多くの場合、患者は、成功したと思われる治療から回復することができない。さらに、あるタイプの腫瘍は、既存の治療方法に対して、全く感度を有していない。
【0009】
また、放射線治療や化学療法だけに依存することなく細胞を破壊するための、他の方法が存在する。例えば、腫瘍細胞を破壊するために、超音波手法および電気的手法を、追加的にあるいは代替的に、使用することができる。長年にわたって、医療用途のために、電界および電流が使用されてきた。最も一般的なものは、電位差が維持される一対をなす導電性電極を使用しての電界の印加によって、人間または動物の身体内に電流を生成することである。これら電流を使用することにより、特定の結果をもたらすことができるすなわち敏感な組織を刺激することができる、あるいは、組織を電気抵抗として作用させることによって、体内に電流を流すことにより、熱を生成することができる。第1タイプの適用の例には、以下のものがある。すなわち、振動の除細動器や、末梢神経および筋肉の刺激手段や、脳シミュレータ、等がある。電流は、加熱のために使用され、例えば、腫瘍蒸発装置内や、心臓や脳の機能不全組織の蒸発装置内や、焼灼装置内や、リューマチによる筋肉の苦痛や他の苦痛を緩和するため装置内、において使用される。
【0010】
医療目的での電界の他の使用には、例えばRF波やマイクロ波といったような電磁波の放出源から放出された高周波電界を、身体の中の対象をなす一部分(すなわち、ターゲット)に向けて、使用することである。これらの例においては、放出源と身体との間に電気的なエネルギー導通は、存在しない。そうではなく、エネルギーは、放射または誘導によって、身体に対して伝達される。より詳細には、放出源によって生成された電気的エネルギーは、導体を介して身体の近傍に到達し、エアあるいは他の何らかの電気的絶縁材料を介して、人体に対して伝達される。
【0011】
従来の電気的方法においては、電流は、患者の身体に接触して配置された電極を使用して、ターゲット組織の領域に対して搬送される。印加された電流は、ターゲット組織の近傍に位置した実質的にすべての細胞を破壊する。したがって、このタイプの電気的方法は、ターゲット組織内の様々なタイプの細胞を区別することができず、腫瘍細胞と正常細胞との双方を破壊してしまう。
【0012】
よって、医療応用において使用し得る電界は、一般に、2つの異なるモードに分類することができる。第1のモードにおいては、電界は、導電性電極を使用することによって身体または組織に対して印加される。これら電界は、2つのタイプに分類することができる。すなわち、(1)安定した電界つまり比較的遅い速度で変化するような電界、および、身体または組織に対して、対応する電流を誘起し得るような低周波の交流電界、(2)導電性電極によって身体に対して印加された高周波交流電界(1MHz以上)、に分類することができる。第2のモードにおいては、電界は、絶縁された電極によって身体に対して印加された高周波交流電界である。
【0013】
第1タイプの電界は、例えば、神経や筋肉を刺激するために、また、心臓のペースメーカとして、といったようにして使用される。実際、このような自然的電界を使用することにより、神経と筋繊維とにおいて、また、中枢神経系(CNS)において、また、心臓等において、信号を伝搬させることができる。このような自然的電界の記録は、ECGや、EEGや、EMGや、ERGなどの根拠である。これらの応用における電界の強さは、媒体の電気的特性が一様なものであると仮定すれば、単に、互いに離間して配置された刺激用/記録用電極に対して印加された電圧である。これら電流は、オームの法則によって計算することができ、心臓およびCNSとに対して危険な刺激効果をもたらし得るものであり、潜在的に有害なイオン集中変化を引き起こし得る。また、電流が十分に大きい場合には、それら電流は、組織内において過度の加熱を引き起こし得る。この加熱は、組織内で消費された電力(電圧と電流との積)によって、計算することができる。
【0014】
そのような電界および電流が交流である場合には、神経や筋肉等に対しての、これらによる刺激力は、周波数の逆関数である。1〜10kHzを超える周波数においては、電界の刺激力は、ゼロに接近する。この制限は、電気的刺激によって引き起こされた励起が、通常は、細胞膜の電位変化によって媒介されるという事実のためである。細胞膜の電位変化の速度は、細胞膜のRC特性(1msの程度の時定数)によって制限されている。
【0015】
周波数にかかわらず、電流によって誘起されたそのような電界が印加されている場合には、電界は、電流によって引き起こされる有害な副作用に関連している。例えば、1つの負の効果は、システム内における様々な『隔壁』内へのイオン濃度の変化であり、また、電極のところにおいて起こるあるいは組織中に介在している媒体内において起こる電気分解による有害な生成物である。システムが、有機体がイオン濃度差を維持している2つ以上の隔壁を有している場合には常に、イオン濃度の変化が起こる。例えば、大部分の組織においては、細胞外液中の[Ca++]は、約2×10−3Mである。一方、典型的な細胞の細胞質においては、その濃度は、10−7Mと同じくらいに小さなものとなることができる。一対をなす電極によってそのようなシステム内に誘起された電流は、部分的には、細胞外液から細胞内へとさらに再び細胞外液内へと、流れる。細胞内へと流入する電流の約2%は、Ca++イオンによって担われている。これに対し、細胞内のCa++の濃度が、はるかに小さいことにより、細胞から流出する電流に関しては、無視できる程度の量しか、これらイオンによって担われていない。したがって、Ca++イオンが、細胞内に集積し、細胞内におけるそれらの濃度が増大し、一方、細胞外隔壁内におけるそれらイオンの濃度は、減少することができる。このような結果は、DC電流の場合にも、および、交流(AC)電流の場合にも、観察される。イオンの蓄積速度は、電流強度や、イオンの可動度や、細胞膜のイオン導電性、などに依存する。[Ca++]の増大は、大部分の細胞にとって有害である。そして、十分に大きくなってしまうと、細胞の破壊につながることとなる。同様の考察は他のイオンについても、当てはまる。上記観察を考慮すれば、生きている有機体または組織に対して長期間にわたって電流を印加することにより、重大な損傷をもたらすこととなる。そのような電界に関連した他の重大な問題は、電極表面で起こる電気分解プロセスによるものである。ここで、電荷は、金属(電子)と、電解質溶液(イオン)と、の間にわたって搬送される。その際、帯電した活性ラジカルが形成される。これら活性ラジカルは、有機分子に対して、特に、巨大分子に対して、重大な損傷をもたらし、したがって、生きている細胞および組織を損傷する。
【0016】
対照的に、通常は1MHzを超えるようなまた実用的にはGHz範囲といったような高周波電界が、絶縁された電極によって組織内に誘起される場合には、状況は、全く異なるものとなる。このようなタイプの電界は、従来型の電荷伝導電流ではなく、単なる容量的な電流すなわち変位電流を生成する。このタイプの電界の影響下においては、生きている組織は、電気伝導特性に基づいてではなく、誘電特性に基づいて、振る舞う。したがって、支配的な電界効果は、誘電損失と加熱とに基づく。したがって、実用的には広く許容され得るものであり、生きている有機体に対するそのような電界の意味のある効果は、加熱効果のみによるものとなる、すなわち、誘電損失のみによるものとなる。
【0017】
Mangano 氏による米国特許第6,043,066号明細書(以下、「'066特許」と称す)においては、誘電性細胞膜によって囲まれておりかつ導電性内部コアを有した個別対象物を、誘電性細胞膜の不可逆的絶縁破壊を介して電界によって選択的に不活性化し得るような、方法および装置が開示されている。これに関する潜在的な1つの応用は、懸架されたある種の生物学的細胞を選択的にパージすることである。'066特許においては、電界は、対象をなす選択された細胞に対して印加される。これにより、これら腫瘍細胞の誘電性細胞膜の絶縁破壊を引き起こす。一方、この文献の主張によれば、他の所望の細胞サブ母集団に対しては、悪影響が及ぼされることはない。細胞は、固有の電気穿孔しきい値に関する本来的な差異または誘起された差異に基づいて、選択される。このしきい値に関する差異は、細胞サイズの差異も含めた多くのパラメータに依存するものとすることができる。
【0018】
したがって、'066特許による方法は、腫瘍細胞の電気穿孔しきい値が、細胞サイズの相違や細胞膜の誘電特性の相違に基づいて、正常細胞の電気穿孔しきい値と比較して十分に識別可能であるという前提条件を、ベースとするものである。この前提条件に基づいて、多くのタイプのサイズの大きな腫瘍細胞は、電気穿孔をより受けやすいものとなり、したがって、適切な電界を印加することにより、より大きなサイズの腫瘍細胞の細胞膜だけを選択的に損傷させることができる。この方法の1つの欠点は、識別能力が、細胞のタイプに大きく依存するということである。例えば、正常細胞と腫瘍細胞との間のサイズ差は、あるタイプの細胞の場合にしか、大きいものではない。この方法の他の欠点は、印加される電圧が、いくつかの正常細胞を損傷させ得るものであり、すべての腫瘍細胞を損傷させ得るものではない、ということである。それは、サイズの差および細胞膜の誘電特性の差が、かなり統計的なものであって、実際の細胞形状および誘電特性は、著しく変動するものであるからである。
【0019】
当該技術分野において要望されておりかつ現在までのところ利用可能ではないようなものは、分裂細胞を破壊するための装置であって、その場合、単一細胞有機体も含めて分裂細胞と、非分裂細胞と、の間の識別を、より良好に行い得るとともに、分裂細胞を選択的に破壊することができるような、すなわち、非分裂性の細胞または有機体に対しては実質的に影響を及ぼさないような、なおかつ、例えば末端部分といったような、身体の特定部位に対して適用し得るよう構成されておりこのため衣類製品内に組み込み得るような、装置である。
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号第10/315,576号明細書
【特許文献2】米国特許出願シリアル番号第10/285,313号明細書
【特許文献3】米国特許出願シリアル番号第10/263,329号明細書
【特許文献4】米国特許第6,043,066号明細書
【非特許文献1】Darnell 氏他による、Molecular Cell Biology, New York:Scientific American Books, 1986, p. 149
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明においては、成長と分裂とを経験する細胞を選択的に破壊し得るよう、様々な用途において使用可能な装置が提供される。対象は、生体組織内の細胞であり、特に腫瘍細胞であり、また、単一細胞有機体である。本発明による装置は、特定の身体部分に有効であるような様々な構成内に組み込むことができる。これにより、装置は、そのような生体組織あるいは有機体の成長を除去または制御し得るよう、局所的な領域を明確なターゲットとすることができる。例えば、詳細に後述するように、装置は、特に、腫瘍領域上に着用し得るような衣類製品内に組み込むことができる。装置の構成のうちの1つは、帽子(ハット)や、キャップや、あるいは、人の頭に装着し得るような他のタイプの構造、という形態とされる。これにより、頭蓋内腫瘍や、外部頭皮傷害や、あるいは他の傷害、を治療することができる。他の構成においては、装置は、乳房上に装着し得るよう、修正されたブラジャー等の形態とされる。これにより、乳癌あるいは他のタイプの腫瘍条件の治療を行うことができる。加えて、装置は、例えば睾丸や手や脚や腕や首などといったような身体の他の部分上に着用され得る衣類製品の中に組み込むことができる。これにより、これらの位置(身体部分)における局所的な腫瘍を治療することができる。例えば、大きな起立したカラー部材あるいはネックレスタイプ構造を使用することにより、甲状腺や上皮小体や喉頭の傷害などを治療することができる。この実施形態においては、装置(全部または一部)は、これら状況を治療し得るよう、首のまわりに装着される衣類製品内に配置される。他の見地においては、例えば尿道や膣腔などといったような天然通路を通して体内に挿入される内部部材(例えば、プローブまたはカテーテル)という形態とすることにより、局所的な治療を行うことができる。あるいは、部材が皮膚や他の組織を貫通することによって、内部ターゲットに到達させることができる。
【0021】
本発明による装置の主な使用は、腫瘍の治療であり、その場合、正常な組織細胞には実質的な影響をもたらすことなく、腫瘍細胞を選択的に破壊する。したがって、例示としての装置は、腫瘍細胞の選択的な破壊に関して、後述する。しかしながら、本発明の目的からすれば、『細胞』という用語は、また、単一細胞の有機体(eubacteria、バクテリア、イースト、原虫類)や、多細胞の有機体(菌類、藻類、かび)や、通常は『細胞』して分類されないような植物やその一部、とし得ることは、理解されるであろう。例示としての装置は、従来技術による方法と比較して、より有効でありかつより正確な態様でもって(例えば、特定のターゲットを対象とすることがより好適である)、分裂細胞を選択的に破壊することができる。さらに、本発明による装置は、正常組織に対して、もし存在するとしても、最小の損傷をもたらし、これにより、例えば放射線治療や化学療法といったような既存の選択的破壊方法に関連した多くの副作用を低減または排除する。本発明による装置を使用した場合の、分裂細胞の選択的な破壊は、化学物質や放射線に対しての細胞の感度に依存するものではない。そうではなく、分裂細胞の選択的な破壊は、治療対象をなす細胞の形状にかかわらず、非分裂細胞に対しての、分裂細胞の幾何学的形状の相違に基づくものである。
【0022】
1つの例示としての実施形態においては、形状に依存したような生体組織の選択的な破壊は、電子装置を使用して、細胞に非一様電界を引き起こすことにより、行われる。
【0023】
本発明者は、非分裂細胞が、例えば球状や楕円状や円柱状や『パンケーキ状』などといったような様々な形状をとり得るけれども、実際のすべての細胞の分裂プロセスが、後期フェーズの後期または終期フェーズにおいては、『分裂溝』の進展によって特徴づけられることを、観察した。この分裂溝は、細胞膜(2組をなす娘染色体の間において)のゆっくりとした圧縮であって、微視的には、2つの新しい細胞へと徐々に細胞を分裂させるような裂け目(例えば、グルーブまたはノッチ)の成長として、観測される。分裂プロセス時には、移行期間(終期)が存在する。この移行期間においては、細胞構造は、基本的に、2個の小細胞が、細胞材料から形成された狭い『ブリッジ』によって相互に連結されてなる構造である。分裂プロセスは、2つの小細胞間の『ブリッジ』が壊れたときに、完了する。本発明による電子装置を使用した場合の、腫瘍細胞の選択的な破壊は、分裂細胞のこの独特の幾何形状を利用したものである。
【0024】
1個の細胞あるいは一群をなす複数の細胞が、自然な条件下または環境下にある場合、すなわち、生体組織の一部として存在している場合、細胞は、電解的な細胞内流体と、電解的細胞内流体から大部分が構成された他の細胞と、から大部分が構成された導電性環境によって、囲まれて配置される。組織を横切って電圧を印加することによって、生体組織内に電界が引き起こされた場合、電界が、組織内に形成され、電気力線の分布および配置は、電荷の変位方向を規定する、あるいは、細胞内に実際に電流が誘起されたときには組織内の電流経路の方向を規定する。電界の分布および配置は、様々な組織構成要素の形状や電気的特性や組織構成要素の相対的導電率や電気容量や誘電率(これは周波数依存性であり得る)といったものも含めた、組織の様々なパラメータに依存する。
【0025】
分裂最中の細胞における電流流通パターンは、非分裂細胞と比較して、非常に異なるものであり、かつ、独特なものである。そのような分裂細胞は、第1および第2の小細胞を備えており、すなわち『オリジナルの』細胞と、新たに形成された細胞と、を備えており、これらが、細胞質『ブリッジ』あるいは『ネック』によって連結されている。電流は、細胞膜の一部(『電流のソースをなす極』)を通して、第1小細胞内に侵入する。しかしながら、電流は、反対側の極(『電流のドレインをなす極』)の近傍の細胞膜部分を通して第1小細胞から導出されない。代わりに、電流の流通ラインは、ネックまたは細胞質ブリッジのところに集中する。これにより、電流流通ラインの密度が、大幅に増大する。対応する『鏡像』プロセスが、第2小細胞内において引き起こされ、これにより、電流流通ラインは、ブリッジから離れるにつれて低密度状態へと分散し、最終的には、電流ドレインの近傍の細胞膜部分から、第2小細胞を出る。
【0026】
分極可能な対象物が、非一様な収束性または発散性の電界内に配置されたときには、電気的な力が、対象物に対して作用し、対象物を、電気力線が高密度である場所に向けて、引っ張る。分裂細胞の場合には、電気的な力が、2つの細胞間の細胞質ブリッジの方向に作用する。すべての細胞内顆粒および巨大分子が分極化可能であることにより、それらのすべては、2つの細胞の間のブリッジに向けて駆動される。電界極性は、力の方向とは無関係である。したがって、特定の特性を有した交流電界を使用することにより、実質的に同じ効果を引き起こすことができる。また、ブリッジまたはネック部分の中に存在するような、あるいは、その近傍に存在するような、集中した不均一な電界が、電荷および自然的双極子に対して、強力な力を及ぼし、これら部材に関連した構造の破壊を引き起こし得ることは、理解されるであろう。
【0027】
ブリッジに向けての細胞内顆粒の移動は、細胞構造を分裂させ、連結しているブリッジ膜の近傍に増大した圧力をもたらす。ブリッジ膜上における細胞内顆粒のこの圧力は、ブリッジ膜を壊すことが予想され、したがって、分裂細胞が、この圧力に応答して『爆発する』ことが予想される。細胞膜を破壊し得る能力、および、他の細胞構造を崩壊させ得る能力は、約50KHz〜約500KHzという周波数を有したパルス型交流電界の印加により増強することができる。このタイプの電界が組織に対して印加されたときには、細胞内顆粒に及ぼされる力は、『ハンマー』効果を有している。これにより、パルス的な力(あるいは、ビート)が、細胞内顆粒に対して、1秒あたりにつき数回にわたって、印加され、双方の小細胞からブリッジ(あるいはネック)部分に向けての様々なサイズおよび質量の細胞内顆粒の移動を増強し、これにより、ブリッジ部分における細胞膜の破壊可能性を増大させる。細胞内顆粒に及ぼされた力は、また、細胞内顆粒自体に影響し、細胞内顆粒を破壊することができる。
【0028】
1つの例示としての実施形態によれば、電界を印加するための装置は、波形形状とされたあるいは一連をなす複数のパルスという形態とされた所望の電気信号を生成する電子装置である。電子装置は、約50KHz〜や500KHzという範囲の周波数でもって交流電圧波形を生成するような電源を備えている。電源は、導電性リード線に対して動作可能に接続されている。導電性リード線は、他端において、絶縁導体/電極(また、isolectsとも称される)に対して接続されている。絶縁電極/電極に対しては、生成された交流波形が印加される。絶縁された電極は、導体と、この導体に対しておよび導電性組織に対して接触している誘電体(絶縁層)と、から構成され、これにより、キャパシタを形成している。本発明による装置によって生成される電界は、具体的な治療用途に応じて、様々なモードでもって印加することができる。
【0029】
1つの例示としての実施形態においては、電界は、衣類製品内に組み込まれた外付け絶縁電極によって印加される。絶縁電極は、印加された電界が、特定の局所的な組織領域(例えば腫瘍)をターゲットとした局所的なタイプのものであるように、構成することができる。この実施形態は、ターゲット組織上に衣類製品を着用することによって、皮膚表面に位置したあるいは皮膚表面の直下に位置した腫瘍および傷害を治療し得るよう構成することができる。この場合、絶縁電極によって生成された電界が、腫瘍(傷害など)に向けられる。
【0030】
他の実施形態においては、装置は、埋設タイプの用途において使用される。この場合には、絶縁電極は、プローブまたはカテーテル等の形態とされ、例えば尿道や膣腔といったような天然通路を通して体内に挿入される、あるいは、生体組織を貫通して挿入し得るように構成される。最終的には、絶縁電極は、体内のターゲット領域(例えば内部腫瘍)の近傍に配置される。
【0031】
したがって、本発明による装置は、従来技術における高周波応用や低周波応用とは異なり、特別の中間的カテゴリーに分類されるような電界を利用する。本発明による電界は、バイオ的に有効な電界であって、何らの刺激的な効果も熱的な効果も有していない。有利には、非分裂細胞がこのような電界を受けた場合、非分裂細胞には、影響はない。しかしながら、細胞分裂が本発明による電界を受けた場合には、状況は、非常に相違したものとなる。したがって、本発明による電子装置および生成された電界は、例えば腫瘍等といったような分裂細胞をターゲットとするものであり、ターゲット領域の周囲に位置した健全組織内の非分裂細胞をターゲットとはしない。さらに、本発明による装置が、絶縁電極を使用していることにより、導電性電極が使用された場合の上記負の効果、すなわち、細胞内におけるイオン濃度変化や電気分解による有害な物質の生成といったような負の効果は、本発明による装置を使用した場合には、発生しない。これは、一般に、電極と媒体とのの間において電荷の実際の転送が起こらないからであり、また、電流が容量性であって、媒体内を電荷が流れないからである。
【0032】
本発明による電子装置が、また、生体中の腫瘍の治療以外の用途においても使用可能であることは理解されるであろう。実際、本発明による装置を利用した選択的な破壊は、分裂によって増殖するようなすべての有機体に関連して使用することができる。例えば、組織培養や、バクテリアのような微生物や、マイコプラズマや、原虫類や、菌類や、藻類や、植物細胞など、といったような有機体に関連して使用することができる。このような有機体は、上述したように、グルーブまたは裂け目の形成によって分裂する。グルーブまたは裂け目が深くなるにつれて、2つの有機体の間には、動物細胞の分裂時に小細胞どうしの間に形成されるブリッジと同様の、狭いブリッジが形成される。このような有機体が、上述したような動物細胞の細胞膜の場合と同様に、比較的小さな導電率を有した細胞膜によってカバーされていることにより、分裂最中の有機体の中の電気力線は、分裂有機体の2つの部分を連結しているブリッジのところに、集中する。集中する電気力線は、分裂中の有機体の内部の分極化可能な要素および電荷を変位させるような電気的な力をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明による装置に関する上記のまたは他の目的や特徴点や利点は、添付図面を参照しつつ以下の説明を読むことにより、明瞭となるであろう。添付図面においては、同じ部材に対しては、同じ参照符号が付されている。
【0034】
図1A〜図1Eは、細胞分裂プロセスの様々なステージを概略的に示している。図1Aは、正常な形状とされた状態でもって、細胞(10)を示している。細胞(10)は、当該技術分野においては公知なように、全体的に、球形状や、楕円形状や、円柱形状や、『パンケーキ形状』や、あるいは他の任意の様々な形状、のものとすることができる。図1B〜図1Dは、分裂プロセスの様々なステージにおける細胞(10)を図示している。分裂によって、図1Eに示すように、2個の新たな細胞(18,20)が形成される。
【0035】
図1B〜図1Dに示すように、細胞(10)の分裂プロセスは、分裂溝(12)が、ゆっくりと成長することによって特徴づけられる。分裂溝(12)は、細胞(10)を、2つのユニットへと、すなわち小細胞(14,16)へと、徐々に分離し、最終的には、新たな細胞(18,20)(図1E)を生成する。特に図1Dに示すように、分裂プロセスは、過渡時期によって特徴づけられる。この過渡時期においては、細胞(10)の構造は、基本的に、細胞材料(細胞膜によって囲まれた細胞質)を含有した細い『ブリッジ』(22)によって相互連結された2つの小細胞(14,16)とされる。
【0036】
さて、図2Aおよび図2Bには、非分裂細胞(10)が概略的に図示されており、非分裂細胞(10)は、交流電位の印加により形成された電界を受けている。図2Aにおいては、交流電位は、比較的低周波とされており、図2Bにおいては、交流電位は、比較的高周波とされている。細胞(10)は、例えば核(30)といったような細胞内顆粒を備えている。交流電位は、例えば治療対象をなす腫瘍の近傍領域といったような所定領域のところにおいて、患者に対して外部から取り付け得る電極(28,32)の間にわたって、印加されている。細胞(10)が、正常な状態である場合には、すなわち、生きている組織の一部である場合には、細胞(10)は、大部分が電解的な細胞間液体からなる導電性環境(以下においては、『容積導体』と称す)の下に配置される。電位が電極(28,32)間にわたって印加される場合には、合成電界(あるいは、電界に応答して組織内に誘起される電流)の電気力線のうちのいくつかは、細胞(10)内に侵入する。一方、電気力線(あるいは、誘導電流)の残りは、周囲の媒体内を流れる。この例においては、電流の流れ方向と実質的に一致しているような、電気力線の特定の分布は、システム構成要素の形状に依存し、また、システム構成要素の、例えば相対的導電性や、周波数依存的なものとすることができる例えばシステム構成要素の誘電率、といったような電気的特性に依存する。例えば10KHz未満の周波数といったような低周波数においては、構成要素の導電特性が、完全に、電流の流れおよび電界の分布を支配する。電界分布は、一般に、図2Aに示すようなものとなる。としてある。例えば、10KHz〜1MHzの間の周波数といったような、より大きな周波数においては、構成要素の誘電特性が、より重要なものとなり、最終的には、電界分布を支配する。その結果、電気力線の分布は、一般に、図2Bに示すようなものとなる。
【0037】
一定の(すなわち、DCの)電界の場合には、また、例えば10KHz未満の周波数といったような比較的低周波数の交流電界の場合には、様々な構成要素の誘電特性は、電界分布の決定および計算に際して、重要ではない。したがって、第1近似としては、電界分布に関し、システムは、様々な構成要素の相対的インピーダンスによって、適切に表現することができる。この近似を使用すれば、細胞間の(すなわち、細胞外の)流体と、細胞内流体と、の各々は、比較的小さなインピーダンスを有しており、一方、細胞膜(11)は、比較的大きなインピーダンスを有している。よって、低周波数という条件下においては、電気力線(あるいは、電界によって誘起された電流)の一部だけしか、細胞(10)の細胞膜(11)内へと侵入しない。対照的に、比較的高周波数(例えば10KHz〜1MHz)においては、細胞間流体および細胞内流体に対しての、細胞膜(11)のインピーダンスが、減少し、このため、細胞内へと侵入する電流の割合が、かなり増大する。非常に大きな周波数においては、すなわち1MHzを超えるような周波数においては、細胞膜のキャパシタンスが、細胞膜の抵抗を短絡させることができ、その結果、合計での細胞膜抵抗が、無視できる程度のものとなり得ることに、注意されたい。
【0038】
上述したいずれの実施形態においても、電気力線(あるいは誘導電流)は、細胞膜(11)のうちの、電流生成用の電極のうちの1つに対して例えば正電極(28)(本明細書中においては、『ソース』とも称される)に対して最も接近している部分から、細胞(10)内へと、侵入する。細胞(10)を横切っての電流の流通パターンは、一般に、一様である。なぜなら、上記近似のもとにおいては、細胞内に誘起された電界が、実質的に一様であるからである。電流は、細胞膜(11)のうちの、対向電極に対して例えば負電極(32)(本明細書中においては、『ドレイン』とも称される)に対して最も接近している部分から、細胞(10)外へと、導出される。
【0039】
電気力線と電流流通との間の相違は、多くの要因に依存する。例えば、印加された電位の周波数に依存したり、また、どちらの電極(28,32)が電気的に絶縁されているかに依存したり、する。DC電圧または低周波交流電圧を印加するための、絶縁された電極については、電気力線に沿っての、実際の電流の流れは、存在しない。より大きな周波数においては、変位電流が、電極の絶縁物質および細胞膜(これらは、ある程度までは、キャパシタとして機能する)の充電および放電により、組織内に誘起される。また、そのような電流は、電気力線に追従する。対照的に、絶縁されていない電極によって生成された電界は、常に、電流の同じ形態を生成する。特に、DC電界や低周波交流電界は、電気力線に沿った電導電流を生成し、また、高周波交流電界は、電気力線に沿って、電導電流と変位電流との双方を生成する。しかしながら、本発明においては(後述)、分極可能な細胞内顆粒の移動が、実際の電流に依存しないこと、したがって、絶縁された電極と絶縁されていない電極との双方を効果的に使用し得ることは、理解されたい。絶縁された電極のいくつかの利点は、電力消費量が少ないこと、および、治療領域において引き起こす加熱量が少ないこと、である。
【0040】
本発明の例示としての一実施形態によれば、使用される電界は、約50KHz〜約500KHzという範囲の周波数を有しているような、好ましくは、約100KHz〜約300KHzという範囲の周波数を有しているような、交流電界である。説明を簡略化するために、このようなタイプの電界は、また、以下においては、『TC電界』と称される。これは、『Tumor Curing 電界』の略である。これら電界は、中程度(高周波数範囲と低周波範囲範囲との中間)のカテゴリーに分類されるものであって、生物学的に効果のある特性を有しており、さらに、実質的に刺激的効果も加熱効果も有していない。これら周波数は、システムの振舞いがシステムのオーム的(導電性)特性によって決定され得る程度に十分に小さなものであり、なおかつ、励起可能な組織に対して何らの刺激効果も有していない程度に十分に大きなものである。このようなシステムは、2つのタイプの構成要素から構成される。すなわち、細胞間流体あるいは細胞外流体あるいは媒体と、個々の細胞と、から構成される。組織間流体は、多くの場合、約40〜約100Ωcmという固有抵抗を有した電解質である。上述したように、細胞は、3つの構成要素によって特徴づけられる。すなわち、(1)細胞を被覆しているとともに、薄くかつ大きな電気抵抗値を有した細胞膜と;(2)多くの場合、多数の巨大分子と、核も含めたミクロ顆粒と、を有した電解質であるような、内部細胞質と;(3)細胞膜と同様に電気的特性を有しかつミクロ顆粒を被覆している、メンブランと;によって特徴づけられる。
【0041】
このタイプのシステムが、本発明によるTC電界(例えば、100KHz〜300KHzという周波数範囲の交流電界)を受けた場合には、電気力線と電流との大部分は、細胞膜の抵抗値が大きいことのために、細胞から離間する傾向がある。したがって、電気力線は、細胞外導電性媒体内に維持される。上記に例示された周波数範囲においては、細胞内へと侵入する電気力線または電流の実際の割合は、周波数に大いに依存する。
【0042】
図2Aおよび図2Bは、システム内において生じる電界分布を概略的に示している。図示のように、電気力線は、細胞容積を横切って流れ得るような潜在的な電流流通ラインを示すものであって、大部分が、歪んでいない平行な電気力線である(電界の主要方向に対して平行)。言い換えれば、細胞内での電界は、ほぼ一様である。実際には、細胞内に侵入する電界または電流の割合は、細胞外流体のインピーダンス値と比較しての細胞膜のインピーダンス値によって、決定される。細胞膜の電気的等価回路が、抵抗とキャパシタとの並列回路であることにより、インピーダンスは、周波数の関数である。周波数が大きくなればなるほど、インピーダンス値は、より小さなものとなり、侵入する電流の割合は、より大きなものとなり、電界の歪みは、より小さなものとなる(Rotshenker S. &
Y. Palti, Changes in fraction of current penetrating an axon as a function of
duration of stimulating pulse, J. Theor. Biol. 41; 401-407 (1973))。
【0043】
上述したように、細胞が、例えば50KHz〜500KHzという範囲の周波数を有した本発明によるTC電界といったような、高周波数の交流の比較的弱い電界および電流を受けた時には、非分裂細胞には、何らの効果も存在しない。本発明によるTC電界は、そのようなシステムにおいては検出可能な効果を有していないけれども、分裂細胞の存在下においては、状況が異なってくる。
【0044】
さて、図3A〜図3Cは、例示としての一実施形態に基づき、約100KHz〜約300KHzという周波数範囲の交流電界(TC電界)の影響下において、分裂プロセス最中の細胞(10)に関しての、電流の流通パターンを概略的に示している。電気力線あるいは誘導電流は、電極(28)に近い小細胞(16)の細胞膜の一部を通して、細胞(10)内へと侵入する。侵入した電気力線あるいは誘導電流は、新たに形成されなおも付着している小細胞(14)と小細胞(16)とを連結しているブリッジ(22)を通しては、また、細胞膜のうちの、ブリッジ(22)の近傍に位置した部分を通しては、導出されない。その代わりに、小細胞(16)内においては比較的広く分散している電気力線または電流経路は、ブリッジ(22)(『ネック』(22)とも称される)に接近するにつれて収束する。これにより、ネック(22)内においては、電流密度/電気力線密度が、劇的に増大する。『鏡像』プロセスが、小細胞(14)内においても引き起こされる。したがって、ブリッジ(22)内へと集中した電気力線は、小細胞(14)に向けての出口領域に接近するにつれて、発散する。
【0045】
当業者であれば、一様な電界が、電気的に中性の対象物に対しては、すなわち、正味の電荷が実質的にゼロであるような対象物に対しては、力を作用させないことは、理解されるであろう。ただし、そのような対象物は、分極することとなる。しかしながら、非一様であって集中する電界の下においては、図3A〜図Cに示すように、電気的な力は、分極した対象物に対して作用し、それらを、電気力線が高密度であるところに向けて移動させる。ネックまたはブリッジの領域内に実質的に存在している集中電界は、それ自体が、電荷および天然の双極子に対して大きな力を及ぼし、それらに関連した構造を破壊し得ることは、理解されるであろう。同様の正味の力が、この場合にも電界が高密度である方向に向けて、交流電界内の電荷に対しても作用することは、理解されるであろう。
【0046】
図3Aおよび図3Bの構成においては、分極し帯電した対象物の移動方向は、電気力線が高密度である方向へと向かう。すなわち、小細胞(14,16)の間の細胞質ブリッジ(22)へと向かう。例えば小細胞(14,16)の核(24,26)といったようなすべての細胞内顆粒が、分極可能であることは、当該技術分野においては公知である。したがって、そのような細胞内顆粒は、ブリッジ(22)に向けて電気的に付勢されて移動する。その移動は、電界極性にかかわらず、常に、電流密度がより小さなところから、電流密度がより大きなところへと、向かうことにより、例えば核(24,26)といったような細胞内顆粒に対して交流電界によって印加された力は、常に、ブリッジ(22)へと向かっている。そのような力や、細胞内顆粒の巨大分子に引き起こされる移動、すなわち、『誘電的電気泳動』と称される現象、に関する包括的な記述、例えば、C. L. Asbury &
G. van den Engh, Biophys. J. 74, 1024-1030, 1998 という文献に記載されている。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0047】
ブリッジ(22)に向けての細胞内顆粒(24,26)の移動は、分裂細胞の構造を破壊し、様々な細胞構成要素の濃度を変化させ、最終的には、ブリッジメンブラン(22)に対して集中する細胞内顆粒の圧力が、図3Cに概略的に示すように、ブリッジ(22)の近辺で、細胞膜(11)を破裂させる。ブリッジ(22)のところで細胞膜(11)を破壊する能力、あるいはそうでなければ、細胞構造および組織を崩壊させる能力は、安定したAC電界ではなく、パルス的なAC電界の印加により、より増強することができる。パルス型電界が印加される場合、細胞内顆粒(24,26)に作用する力は、『ハンマー』効果を有している。これにより、パルス的な力が、双方の小細胞(14,16)からネック(22)へと向かう細胞内顆粒を衝撃し、これにより、ネック(22)の近傍において細胞膜(11)を破壊する可能性を増大させる。
【0048】
分裂細胞内にを通過する特別の電界に対して非常に影響されやすいような、非常に重要な構成要素は、分裂プロセスにおいて主要な役割を果たす微小管スピンドルである。図4においては、分裂細胞(10)は、図3Aおよび図3Bの場合よりも初期のステージのものとして示されており、外部TC電界(例えば、100KHz〜300KHzという周波数範囲の交流電界)の影響を受けている。電気力線が、符号(100)によって示されており、対応するスピンドル機構が、符号(120)によって示されている。ライン(120)は、微小管であって、非常に強い双極子モーメントを有していることが公知である。この強い分極は、微小管と、他の分極可能な巨大分子と、特に、細胞内においておよび細胞周囲において特定の向きを有している微小管および分極可能な巨大分子とを、電界に対して影響を受けやすいものとする。2つの正電荷が、2つの中心小体のところに位置しており、一方、二組をなす負極が、分裂細胞の中心のところに位置しており、符号(130)によって全体的に示されているような他の対が、細胞膜に対しての微小管の付着場所に位置している。この構造は、二重の双極子の組を形成する。したがって、それらは、互いに向きが異なる電界の影響を受けやすい。双極子に対するTC電界の影響が、ブリッジ(ネック)の形成に依存しないことは理解されるであろう。したがって、双極子は、ブリッジ(ネック)の形成前において、TC電界によって影響を受ける。
【0049】
本発明による装置においては、(詳細に後述するように)絶縁された電極を使用することにより、導電性の電極が使用されるときに発生するような上記否定的効果、すなわち、細胞内におけるイオン濃度変化という問題点、および、電気分解による有害物質の生成という問題点は、本発明による装置が使用される場合には、発生しない。これは、一般に、電極と媒体との間において電荷の実際の転送が起こらないためであり、また、電流が容量的であるような媒体内において電流が流れないこと、すなわち、電荷などの回転等としてのみ表現されるような媒体内において電流が流れないこと、のためである。
【0050】
さて、図5においては、腫瘍細胞の破壊に有効であることが判明した上記TC電界が、電子装置(200)によって生成されている。図5は、電子装置(200)を単純化して概略的に示す図であって、主要な構成部材を示している。電子装置(200)は、波形形状でもって、あるいは、一連をなす複数のパルスという形態でもって、所望の電気信号(TC信号)を生成する。装置(200)は、電源(210)と、この電源(210)のそれぞれ対応する端子に対して接続された一対をなす導電性リード線(220)と、を備えている。リード線(220)の反対側の端部は、電気信号(例えば波形)によって活性化されるような、絶縁された導体(230)に対して接続される。絶縁された導体(230)は、また、以下においては、絶縁導体(あるいは、イソレクト、isolect )(230)とも称される。付加的には、例示としての他の実施形態においては、装置(200)は、温度センサ(240)および制御ボックス(250)を備えている。これら部材は、治療領域において過度の加熱を生成しないよう、生成された電界の振幅を制御するために設けられる。
【0051】
電源(210)は、約50KHz〜約500KHz(好ましくは、約100KHz〜約300KHz)という範囲の周波数の交流電圧波形(すなわち、TC電界)を生成する。必要な電圧は、治療対象をなす組織内における電界強度が約0.1V/cm〜約10V/cmという範囲にあるような、ものとされる。この電界を形成するため、絶縁導体(230)の2つの導体間における実際の電位差は、後述するように、システム構成要素の相対的なインピーダンスによって決定される。
【0052】
制御ボックス(250)が設けられている場合には、制御ボックス(250)が、電源(210)の出力を制御する。これにより、電源出力が、使用者によって予め設定された値に一定に維持される。あるいは、制御ボックス(250)が、過度の加熱を引き起こさないような最大出力値を設定する。あるいは、制御ボックス(250)は、温度(温度センサ(240)によって検出された)が、予め設定された限界値を超えた場合に、警告等を発する。
【0053】
リード線(220)は、フレキシブルな金属製シールドを有した標準的な絶縁された導体である。好ましくは、リード線(220)によって生成された電界の拡散を防止し得るよう、接地される。絶縁導体(230)は、ターゲット容積のところにおいて所望の分布や方向や強度を有した電界を生成し得るように、および、ターゲット容積のところにおいてのみ治療を行い得るように、特定の形状および配置を有している。
【0054】
全体に関し、また、個々の構成部材に関し、装置(200)の仕様は、本発明によるTC電界の周波数(50KHz〜500KHz)においては、生きているシステムが、誘電特性ではなく、『オーミック特性』に基づいて振る舞うという事実によって、大いに影響を受ける。様々に振る舞うような装置(200)における唯一の構成部材は、絶縁導体(230)の絶縁体である(図7〜図9を参照)。絶縁導体(230)は、導電性組織に接触している誘電体に対して接触した導体から構成され、よって、キャパシタを形成する。
【0055】
絶縁導体(230)の構成の詳細は、図6において一般的に示されるように、組織に対して接触している場合に関して単純化された電気回路から理解され得るような電気的な振舞いに基づいている。図示の構成においては、異なる構成要素間における電圧降下あるいは電界分布は、それらの相対的な電気的インピーダンスによって決定される、すなわち、各構成要素に関する電界の割合は、その構成要素のインピーダンス値を、回路インピーダンス値の合計によって割算することにより、与えられる。例えば、構成要素(A)に関する電圧降下に関しては、ΔV =A/(A+B+C+D+E)となる。したがって、DCの場合や低周波ACの場合には、実際のすべての電圧降下は、キャパシタ(キャパシタは、絶縁体として作用する)に関するものである。比較的大きな周波数の場合には、キャパシタは、実際には短絡的なものである。したがって、実際に、すべての電界は、組織に分布する。本発明によるTC電界における周波数(例えば、50KHz〜500KHz)においては、中間的な周波数であることのために、キャパシタのキャパシタンスのインピーダンス値が、支配的となり、電界分布を決定する。したがって、組織(電界強度)を横切っての実効的な電圧降下を増大させるために、キャパシタのインピーダンス値は、減少されるべきである(すなわち、それらのキャパシタンスを増大させるべきである)。これは、キャパシタをなす『プレート』の実効面積を増大させることにより、あるいは、誘電体の厚さを減少させることにより、あるいは、大きな誘電率を有した誘電体を使用することにより、実現することができる。
【0056】
電界分布を最適化するために、絶縁導体(230)は、絶縁導体(230)が使用されるべき用途に応じて、様々に構成される。本発明による電界(TC電界)を印加するためのモードとして、2つの主要なモードがある。第1に、TC電界を、外部の(あるいは、外付けの)絶縁導体によって印加することができる。第2に、TC電界を、内部の(あるいは、内在の)絶縁導体によって印加することができる。
【0057】
外部の絶縁導体によって印加される電界(TC電界)は、局所的なタイプのものとすることも、また、広く分散したタイプのものとすることも、できる。第1タイプとして、例えば、皮膚腫瘍の治療や、皮膚表面に近い傷害の治療、がある。図7は、絶縁導体(230)が皮膚パッチ(300)に組み込まれているような、例示としての実施形態を示している。皮膚パッチ(300)は、自己接着性のフレキシブルなパッチとすることができ、一対以上の絶縁導体(230)を備えることができる。皮膚パッチ(300)は、内側絶縁体(310)(誘電性材料から形成されている)と、外側絶縁体(260)と、を備えており、皮膚上に腫瘍(303)を有しているかあるいは皮膚のわずかに下方に腫瘍(303)を有しているような皮膚表面(301)に対して印加される。組織は、全体的に、符号(305)で示されている。システムを支配する内側絶縁体(310)を横切っての電圧降下を防ぐために、内側絶縁体(310)は、比較的大きな電気容量を有していなければならない。これは、大きな表面積によって得ることができる。しかしながら、その場合には、大面積(例えば、腫瘍を治療するために必要とされた面積よりも、大きな面積)にわたって電界を分散させることとなることのために、望ましくない。これに代えて、内側絶縁体(310)を、非常に薄いものとして形成することができる、および/または、内側絶縁体(310)を、大きな誘電率を有したものとすることができる。電極(図6において、符号(A,E)として示されている)間における皮膚の抵抗が、通常は、皮膚の直下に位置した組織(図6において、符号(C)として示されている)の抵抗よりも著しく大きいことのために(1〜10KΩ、対、0.1〜1KΩ)、絶縁導体を超えての電圧降下の大部分は、皮膚において起こる。このようなインピーダンス(Z)に適合するために、内側絶縁体(310)(図6において、符号(B,D)として示されている)の特性は、本発明によるTC電界(例えば、50KHz〜500KHz)の周波数において、好ましくは100KΩ以下のインピーダンスを有しているような、ものであるべきである。例えば、10mm という表面積を有した絶縁導体の場合に、200KHzという周波数において、組織に対して印加電圧の1%以上が印加し得るよう、約10KΩというイン
ピーダンスが所望されたときには、電気容量は、約10−10F の程度であるべきである。このことは、2〜3という誘電率を有しかつ絶縁層(310)の厚さが約50〜100μmというような標準的な絶縁体を使用することを意味する。10倍強い内部電界は、約20〜50という誘電率を有した絶縁体を使用すれば、得られるであろう。
【0058】
薄い絶縁層が非常に脆弱であり得ること等により、絶縁体は、二酸化チタン(例えば、rutil )といったような非常に大きな誘電率を有した絶縁材料によって置換することができる。その場合、誘電率は、約200という値に達することができる。意図した用途において使用するのに適しており、かつ、大きな誘電率を有しているような、多くの異なる材料が存在する。例えば、このような材料には、次のようなものがある。すなわち、強誘電性結晶であり、かつ、光学デバイスや焦電デバイスや圧電デバイスにおいて多くの応用を有しているような、ニオブ酸リチウム(LiNbO )や;フェリ磁性結晶であり、かつ、例えば光学的絶縁体といったような磁気光学デバイスを形成し得るような、イットリウム鉄ガーネット(YIG)や;強磁性結晶であり、かつ、大きな電気光学効果を有したチタン酸バリウム(BaTiO )や;誘電性結晶(低温では、強誘電体)であり、かつ、非常に小さなマイクロ波損失を有し、さらに、低温では調節可能な誘電率を有している、タンタル酸カリウム(KTaO )や;ニオブ酸リチウムと同様の特性を有した強誘電性結晶であり、かつ、電気光学デバイスや焦電デバイスや圧電デバイスに利用されているような、タンタル酸リチウム(LiTaO );がある。大きな誘電率を有した材料を使用することが要望された場合、本発明と組み合わせて、上記例示した材料を使用し得ることは、理解されるであろう。
【0059】
絶縁導体(230)の実効的電気容量に影響を与えるような他の要因を考慮しなければならない。特に、絶縁導体(230)と皮膚との間にエアが存在する場合に、絶縁導体(230)の実効的電気容量に影響を与えるような他の要因を考慮しなければならない。そのようなエアの存在は、容易には防ぐことができないものであるとともに、1.0という誘電率を絶縁層にもたらす。このことは、絶縁導体(230)の実効的電気容量を著しく低下させ、二酸化チタン(例えば、routil)等の利点を帳消しにする。この問題を克服するために、絶縁導体(230)を、身体構造に適合し得るような形状とすることができる。および/または、大きな導電性と大きな実効誘電率を有しているような、例えばゲルといったような、介在フィラー(270)(図10C’に示されている)を、構造に加えることができる。成形は、予め形成しておくことができる(図10A参照)。あるいは、絶縁導体(230)の成形を容易に行い得るように、システムを十分に融通性を有したものとしておくことができる。ゲルは、図10Cおよび図10C’に示されているように、高い縁を有したリムによって、所定位置に収容することができる。ゲルは、ヒドロゲルやゼラチンや天草などから形成することができ、導電性の増大化のために内部に塩類を溶かすことができる。図10A〜図10C’は、絶縁導体(230)の様々な構成例を示している。治療中にゲル層が乾いてしまわないような十分な厚さである限りにおいて、ゲルの正確な厚さは、重要ではない。1つの例示としての実施形態においては、ゲルの厚さは、約0.5mm〜約2mmである。
【0060】
絶縁導体(230)の望ましい特徴を達成するために、各々の誘電性コーティングは、非常に薄いものとすべきである。例えば、1〜50μmとすべきである。コーティングが非常に薄いことにより、絶縁導体(230)は、容易に機械的に損傷され得る。この問題点は、絶縁導体をなす構造に対して保護手段を加えることにより、克服することができる。これにより、そのような損傷に対しての所望の保護を提供することができる。例えば、絶縁導体(230)は、比較的疎なネット(340)によってコーティングすることができる。ネット(340)は、表面へのアクセスを防止するけれども、絶縁導体(230)の実効表面積にはわずかしか影響を与えない(すなわち、図12Bの断面図に示されているように、絶縁導体(230)の電気容量には、わずかしか影響を与えない。疎なネット(340)は、電気容量に影響を与えることなく、皮膚等に対しての良好な接触を保証する。疎なネット(340)は、多くの異なる材料から形成することができる。しかしながら、1つの例示としての実施形態においては、ネット(340)は、ナイロンや、ポリエステルや、綿、等から形成される。これに代えて、非常に薄い導電性コーティング(350)を、絶縁導体(230)の誘電性部分(絶縁層)に対して付加することができる。例示としての導電性コーティングは、金属から形成され、特に、金から形成される。コーティング(350)の厚さは、特定の用途に依存するものであって、コーティング(350)を形成するために使用されている材料のタイプにも、依存する。しかしながら、金が使用される場合には、コーティングは、約0.1μm〜約0.1mmという厚さを有している。さらに、図10に示すようなリムは、ある種の機械的な保護を提供することができる。
【0061】
しかしながら、電気容量は、考慮すべき唯一の要因ではない。次の2つの要因も、また、絶縁導体(230)をどのように構成するかに、影響を与える。すなわち、内側絶縁層(310)の絶縁耐力、および、TC電界が印加された場合にすなわち熱が生成された場合に生じる誘電損失。内側絶縁体(310)の絶縁耐力は、どの電界強度において絶縁が『短絡』し絶縁機能を消失するかによって、決定される。典型的には、例えばプラスチックといったような絶縁体は、1μmあたりにおいて約100Vあるいはそれ以上といったような絶縁耐力を有している。大きな誘電率が内側絶縁体(310)内における電界を低減するにつれて、大きな誘電率と、大きな絶縁耐力と、の組合せが、大きな利点をもたらす。これは、所望の特性を有している単一の材料の使用により得ることができる、あるいは、適切なパラメータおよび厚さを有した2重層によって得ることができる。加えて、絶縁層(310)が故障する可能性をさらに低減させ得るよう、従来の技術を使用して、図10Dに示されているように、コーナーを丸めるこのによって、絶縁層(310)のすべての尖鋭エッジを、除去すべきである。
【0062】
図8および図9は、絶縁導体(230)を使用した第2タイプの治療を示しており、特に、内在させた絶縁導体(230)によって電界が生成されている。絶縁導体(230)が埋設される身体は、全体的に符号(311)によって示されており、皮膚表面(313)と腫瘍(315)とを備えている。この実施形態においては、絶縁導体(230)は、皮下的に挿入し得るようなすなわち身体(311)内におけるより深い位置へと挿入し得るような、プレート形状やワイヤ形状やあるいは他の形状を有することができる。これにより、ターゲット領域(腫瘍315)において、適切な電界を生成することができる。
【0063】
絶縁導体の適用モードが、上記の記述に制限されないことは、理解されるであろう。例えば肝臓や肺等といったような内臓中の腫瘍の場合には、一対をなす絶縁導体(230)の各部材の間の距離を、より大きなものとすることができる。対をなす電極は、図11に示すように、胴体(410)の両サイドに配置することさえ、できる。図11における絶縁導体(230)の配置は、肺癌または胃癌または腸癌に関連した腫瘍(415)を治療するに際して、特に有効である。この実施形態においては、電界(TC電界)は、身体の広範囲にわたって広がる。
【0064】
治療対象をなす組織の過熱を回避するために、材料の選択および電界パラメータの選択が、必要である。絶縁導体の絶縁材料は、治療プロセス時に使用される周波数範囲において、誘電損失が最小であるべきである。この要因は、治療に際して特定の周波数を選択する場合に、考慮することができる。組織の直接加熱は、最もおそらく、電流の流れに基づく加熱(I×Rという積によって与えられる)により、支配されるであろう。加えて、絶縁導体(絶縁された電極)(230)およびその周囲は、熱の放散を容易とし得るような材料から形成されるべきであり、また、絶縁導体の全体的構造は、熱の放散を容易とし得るものであるべきである、すなわち、周囲環境(エア)への熱放出を阻止し得るような、かつ、大きな熱伝導率を有しているような、最小の構造であるべきである。
【0065】
治療の有効性は、所望ターゲットのところに電界を集中させ得るとともに他の敏感な領域(すなわち、保護領域)を小さな電界密度に維持し得るような絶縁導体(230)の配置によって、増強することができる。身体上にわたっての絶縁導体(230)の適切な配置は、絶縁導体を適切な位置に維持し得る適切な衣類を使用する手法も含めた任意の多様な手法を使用して、維持することができる。図13は、符号“P”によって示された領域が保護領域とされているような、そのような配置を示している。電界力線は、この保護領域内に侵入せず、保護領域内の電界は、ターゲット領域を配置して治療し得るような絶縁導体(230)の近傍領域と比較して、ずっと小さい。対照的に、4つの電極の近くの電界強度は、非常に大きなものである。
【0066】
以下の実施例は、本発明による装置の適用例、および、TC電界の適用例、を例示している。しかしながら、以下の実施例は、本発明の範囲を、何ら制限するものではない。
【0067】
『実施例』
上記特性を有した電界(例えば、50KHz〜500KHzという周波数)が、腫瘍細胞の破壊に際して、有効であることを実証するために、電界を、悪性黒色腫瘍を有したハツカネズミを治療するために印加した。2対をなす絶縁導体(230)を、対応する一対の悪性黒色腫上に配置した。一対の電極だけを、電源(210)に対して接続し、200KHzを交流電界(TC電界)を、6日間にわたって、腫瘍に対して印加した。1つの黒色腫瘍は、治療されていない。このため、治療した腫瘍と、治療していない腫瘍と、の間にわたって比較を行うことができる。6日間にわたる治療後に、マウスのうちの、治療されていない方の腫瘍に関しては、着色された黒色腫瘍が、明瞭に視認可能に残っていた。一方、対照的に、マウスのうちの、治療された方の腫瘍に関しては、一切の腫瘍を視認することができなかった。皮膚上で認識可能に視認された唯一の領域は、絶縁導体(230)の挿入ポイントを示す痕跡であった。治療した方の腫瘍が除去されたという事実は、皮膚をカットし、皮膚の内面を露出し得るように皮膚をひっくり返すことによって、さらに確認した。これにより、マウスのうちの治療した方の腫瘍に関しては、腫瘍が、完全ではないかもしれないが、実質的に除去されたことが、示された。治療の成功は、また、病理学的検査によっても、確認された。
【0068】
よって、本発明者は、格別の特性を有した電界を使用することによって、電子デバイスを使用して電界が印加されたときには、分裂細胞または腫瘍を破壊し得ることを、見出した。より詳細には、このような電界は、特別の中間的カテゴリーに分類される。すなわち、生物学的的に有効な電界に分類される。このような電界は、何らの刺激効果もまた何らの加熱効果も、有していない。したがって、従来技術によって身体に対して電界を印加する場合における欠点を、克服することができる。本発明による装置は、生きている組織に対してTC電界を回転させるための装置をさらに備えることができることは、理解されるであろう。例えば、一実施形態においては、治療対象をなす組織に対して印加される交流電位は、起動時には本発明によるシステム内の様々な構成部材を回転させ得る機械的装置といったような従来技術による装置を使用して、組織に対して回転される。
【0069】
さらに、他の実施形態においては、TC電界は、連続的な態様で、様々な対をなす絶縁電極(230)に対して印加される。言い換えれば、電源(210)およびその制御システムは、電極(230)対を選択するために信号を周期的な間隔で送出し得るように、構成される。これにより、複数対の絶縁電極(230)によって、様々な向きのTC電界が形成される。電源から絶縁電極(230)へと、選択されたタイミングで信号が送出されることにより、向きを変更するTC電界は、様々な絶縁電極(230)によって連続的に生成される。この構成は、多くの利点を有しているとともに、TC電界が細胞分裂の軸に対して平行である場合にTC電界が最大の効果を発揮するという観点に基づいている。細胞分裂の向きがほとんどの場合ランダムであることのために、与えられた電界によっては、多数の分裂細胞の一部しか、影響を受けない。したがって、2つ以上の向きを有した複数の電界の使用は、与えられたTC電界によって、より多くの分裂細胞に影響を与える機会を増大させることにより、有効性を増大させる。
【0070】
さて、図14には、1つの例示としての実施形態として、衣類製品(500)が示されている。より詳細には、衣類製品(500)は、帽子(ハット)やキャップやあるいは人の頭に装着し得るよう構成された他のタイプの衣類製品という形態とされる。例示の目的のために、頭(502)は、帽子(500)を着用している。帽子(500)は、頭に対して配置されていて、頭(502)の皮膚表面(504)に対して配置されている。頭蓋内の腫瘍(510)などは、皮膚表面(504)の直下において、頭(502)の内部に形成されたものとして示されている。したがって、帽子(500)は、腫瘍(510)または同種のものを有している人の頭(502)に配置することを意図している。
【0071】
皮膚表面上に配置されるかあるいは生体内に埋設されることのために絶縁電極(230)が多かれ少なかれプレーナ配置とされているような図1〜図13に示された様々な実施形態とは異なり、この実施形態における絶縁電極(230)は、特別な構成とされて、特定の用途において使用される。頭蓋内の腫瘍あるいは他の傷害の治療においては、典型的には、例えば数日間から数週間といったような比較的長期にわたる治療を必要とする。したがって、患者に対して、できるだけ快適さを提供することが望ましい。帽子(500)は、治療の有効性を妨害することなくかつ長い治療期間中に快適さを提供し得るように、特に構成されている。
【0072】
1つの例示としての実施形態によれば、帽子(500)は、所定数の絶縁電極(230)を備えている。これら絶縁電極(230)は、好ましくは、腫瘍(510)のところにおいて最適のTC電界を生成し得るように、配置されている。TC電界の電気力線は、全体的に符号(520)によって示されている。図14からわかるように、腫瘍(510)は、これら電気力線(520)の内部に位置している。詳細に後述するように、絶縁電極(230)は、帽子(500)内において、絶縁電極(230)の一部または表面が、頭(502)の皮膚表面(504)と自由に接触し得るように、配置されている。言い換えれば、患者が帽子(500)を着用した場合、絶縁電極(230)は、選択された位置において頭(502)の皮膚表面(504)に対して接触し得るようにして、配置されている。これにより、絶縁電極(230)によって生成されたTC電界を腫瘍(510)のところに集中させ得るとともに、周辺領域においては、電界を低密度に維持することができる。典型的には、頭(502)の毛髪は、絶縁電極(230)と皮膚表面(504)との間のより良好な接触を可能とし得るよう、選択された領域において剃られる。しかしながら、このことは、重要ではない。
【0073】
帽子(500)は、好ましくは、絶縁電極(230)を皮膚表面(504)に対して押圧され得るよう、絶縁電極(230)に対して付勢力を印加するための機構(530)を、備えている。例えば、機構(530)は、絶縁電極(230)に対してバイアス力を印加するような、バイアスタイプのものとすることができる。これにより、絶縁電極(230)は、帽子(500)から離間する向きに押圧される。したがって、患者が、頭(502)に帽子(500)を着用した場合には、絶縁電極(230)は、機構(530)によって皮膚表面(504)に対して押圧される。機構(530)は、絶縁電極(230)と頭(502)との間の快適な適合をもたらし得るよう、わずかに縮ませたものとすることができる。1つの例示としての実施形態においては、機構(530)は、帽子(500)内に配置されたスプリングベースの装置とされ、絶縁電極(230)に対して押圧力を印加し得るようにして連結された一部分を有している。
【0074】
先の実施形態の場合と同様に、絶縁電極(230)は、導体(220)によって電源(210)に対して接続される。電源(210)は、コンパクトでありかつ自立的でありかつ独立型のシステムを提供し得るよう帽子(500)内に配置することができる。あるいは、電源(210)は、帽子(500)に対して外付けすることができる。この場合には、開口等を通して帽子(500)から導出された導体(220)を使用することによって、電源(210)が接続される。電源(210)が、帽子(500)の外部に配置されていることにより、電源(210)を、任意の位置に配置し得ることは、理解されるであろう。そのような位置としては、帽子(500)に近い位置がある。あるいは他の位置としては、帽子(500)から離間した位置がある。例えば、電源(210)は、患者が使用している携行バッグ(例えば、患者のウエストまわりに配置されるバッグ)等の内部に配置することができる。あるいは、電源(210)は、患者の胴体まわりに縛り付けることができる。あるいは、電源(210)は、患者が着用している他の衣類製品に対して取り付けられた保護ケース内に配置することができる。例えば、保護ケースは、セーターなどのポケットに挿入することができる。図14は、電源(210)が、帽子(500)の中に直接的に組み込まれているような、実施形態を示している。
【0075】
さて、図15および図16に示すように、1つの例示としての実施形態においては、機構(530)が付設あれている複数の絶縁電極(230)が、好ましくは、独立したユニットとして形成されており、全体的に符号(540)によって示されている。このユニットは、帽子(500)に挿入することができ、導体(図示せず)を介して電源(図示せず)に対して電気的に接続されている。これら部材を独立ユニットの形態として提供することにより、患者は、クリーニングや修理や交換が必要とされたときには、帽子(500)からユニット(540)を容易に取り外したり、あるいは、帽子(500)に対してユニット(540)を容易に挿入したり、することができる。
【0076】
この実施形態においては、帽子(500)は、ユニット(540)を受領して保持し得るよう、帽子(500)内に形成された選択領域(550)を備えて構成されている。例えば、図15に示すように、各領域(550)は、帽子(500)内に形成された開口(ポア)の形態とされている。ユニット(540)は、ボディ(542)から構成されているとともに、機構(530)と、1つまたは複数の絶縁電極(230)と、を備えている。機構(530)は、ユニット(540)の内部において、機構の一部(例えば、機構の一端部)が各絶縁電極(230)の面に対して接触しておりこれにより機構(530)が絶縁電極(230)の面に対してバイアス力を印加し得るようにして、配置されている。ユニット(540)が開口(550)の内部に受領された後には、ユニット(540)は、接着材料の使用や機械的手段の使用といったようなものも含めた任意の多様な従来的手法を使用して、開口内において固定的に保持することができる。例えば、帽子(500)は、回転可能なクリップ部材を備えることができる。このクリップ部材は、開口(550)が自由とされた開状態と、クリップ部材が絶縁電極の一部(例えば、周縁エッジ)に対して係合しこれにより絶縁電極(230)を所定位置に保持するような閉状態と、の間にわたって回転可能とされている。絶縁電極(230)を取り外す際には、回転可能なクリップ部材を、開状態へと移行させる。図16に示す実施形態においては、絶縁電極(230)は、接着部材(560)によって開口(550)内に保持されている。接着部材(560)は、一実施形態においては、両面接着リム部材であって、絶縁電極(230)の周縁回りに延在している。言い換えれば、接着リム(560)の一方の面上に配置された保護カバーを取り外すことによって、接着リムは、絶縁電極(230)の露出面の周囲回りに適用される。これにより、接着リム(560)を帽子(500)に対して固定的に取り付けることができる。その後、接着リム(560)の反対側の面上に配置された保護カバーを取り外し、TC電界を最適に印加し得るよう腫瘍に対して位置決めされた位置でもって頭(502)に対して絶縁電極(230)を固定的に配置し得るような所望位置において、皮膚表面(504)に対して適用する。接着リム(560)の一方の面が皮膚表面(
540)に対して接触していることにより、頭(502)を剃ることが望ましい。これにより、接着リム(560)を、皮膚表面(540)に対して面一に配置することができる。
【0077】
接着リム(560)は、必要な場合には、帽子(500)に対してユニット(540)を容易に着脱可能であるようにして、開口(550)内にユニット(540)を固定的に取り付け得るように、構成される。その場合、ユニットは、他のユニット(540)または同じユニット(540)と、交換することができる。上述したように、ユニット(540)は、帽子(500)を着用している場合に、皮膚表面(504)に対して絶縁電極(230)を押圧し得るよう、バイアス機構(530)を備えている。ユニット(540)は、絶縁電極(230)に対向した面が例えばプラスチックといったような剛直な材料から形成された支持表面をなすように、構成することができる。これにより、バイアス機構(530)(例えば、スプリング)は、力の印加時には圧縮することができる。また、スプリング(530)が緩んだ状態であるときには、スプリング(530)は、支持表面に対して接触したままとされ、他端において、絶縁電極(230)に対してバイアス力を印加する。バイアス機構(530)(例えば、スプリング)は、好ましくは、皮膚表面(504)に対応した輪郭を有しており、これにより、絶縁電極(230)に対して力が印加された時に絶縁電極(230)が皮膚表面(504)に対応する輪郭を有することができる。これにより、絶縁電極(230)と皮膚表面(504)とを面一な状態で互いに維持することができる。機構(530)は、スプリングから形成し得るけれども、スプリングに代えて使用可能であるような他の多くの実施形態が存在する。例えば、機構(530)は、スポンジゴムや発泡プラスチックやあるいはエア気泡含有層といったような弾性材料の形態とすることができる。
【0078】
ユニット(540)は、電気コネクタ(570)を備えている。電気コネクタ(570)は、帽子(500)内に配置されたような例えば導体(220)といったような対応する電気コネクタに接続することができる。導体(220)は、その一端が、ユニット(540)に対して接続され、他端が、電源(210)に対して接続される。電源(210)は、帽子(500)の中に直接的に組み込むことができる。あるいは、電源(210)は、患者上にあるいはベッドそばの支持体等のところに、離間して(遠くに)置くことができる。
【0079】
上述したように、例えば導電性ゲルといったような接続材が、好ましくは使用され、これにより、絶縁電極(230)と皮膚表面(504)との間において、有効な導電性環境を確保することができる。適切なゲル材料は、最初の方の実施形態に関して上述したようなものとすることができる。接続材は、絶縁電極(230)上に配置されるものであって、好ましくは、一様な層とされた結合材が、電極(230)の表面に沿って提供される。ユニット(540)を定期的に交換する必要があるという1つの理由は、接続材を、交換する必要があるおよび/または補充する必要があるからである。言い換えれば、所定期間後には、あるいは、所定回数の使用後には、患者は、ユニット(540)を取り外し、接続材を、電極(230)に対して再び適用することができる。
【0080】
図17および図18は、絶縁電極(230)を一部として組み込んだような衣類製品の他の例を示している。より詳細には、ブラジャー(700)等が、示されている。ブラジャー(700)は、従来的なブラジャー材料から形成されたボディを備えている。ボディは、全体的に符号(705)によって示されている。ボディ(705)は、着用者に対して、形状と、支持と、快適さと、を提供する。ブラジャー(700)は、さらに、一方の面上に、織物支持層(710)を備えている。支持層(710)は、好ましくは、ブラジャー(700)に対して必要な所望の支持性能を付与し得るよう構成された適切な織物材料から形成される。
【0081】
他の実施形態と同様に、ブラジャー(700)は、ブラジャー材料(705)内に配置された1つ以上の絶縁電極(230)を備えている。1つ以上の絶縁電極は、支持層(710)とは反対側の面において、ブラジャー(700)の内面に沿って配置されている。絶縁電極は、乳房内に存在する腫瘍等の近傍に、あるいは、その周辺領域に、配置することが意図されている。先の実施形態と同様に、この実施形態における絶縁電極(230)は、乳房あるいは近傍領域への適用のために特に構成されている。したがって、この用途において使用されている絶縁電極(230)は、平面的な構成を有しておらず、乳房において典型的に見られるような一般的湾曲度合いに対して相補的な円弧形状を有している。
【0082】
ライニング(720)が、絶縁電極(230)を横切って配置されている。これにより、乳房自体に対して配置し得るよう、絶縁電極を、内表面に沿った所望位置に保持することを補助している。ライニング(720)は、皮膚に対して着用するのに快適であるような任意の数の薄い材料から形成することができる。また、1つの例示としての実施形態においては、ライニング(720)は、織物材料から形成される。
【0083】
ブラジャー(700)は、さらに、好ましくは、先のいくつかの実施形態と同様に、バイアス機構(800)を備えている。バイアス機構(800)は、ブラジャー材料(705)内に配置され、支持層(710)から絶縁電極(230)までにわたって延在している。バイアス機構(800)は、絶縁電極(230)に対してバイアス力を印加する。これにより、絶縁電極(230)は、乳房に対して押圧される。このことは、絶縁電極(230)が、皮膚表面から浮き上がってしまってギャップが形成されてしまいTC電界の効率を悪くしてしまって治療効果を低減させてしまうようなことなく、皮膚表面に対して接触することを保証する。バイアス機構(800)は、スプリング構成の形態とすることができる。あるいは、バイアス機構(800)は、絶縁電極(230)を乳房に向けて押圧し得るよう、絶縁電極(230)に対して所望のバイアス力を印加するような、弾性材料とすることができる。緩和状態においては、バイアス機構(800)は、絶縁電極(230)に対して力を印加し、患者が身体にブラジャー(700)を装着した場合には、絶縁電極(230)は、乳房に向けて配置され、電極は、バイアス力に抗する力を印加する。これにより、絶縁電極(230)は、患者の乳房に向けて押圧される。図示された例示としての実施形態においては、バイアス機構(800)は、ブラジャー材料(705)内に配置されたスプリングの形態とされている。
【0084】
導電性ゲル(810)は、電極とライニング(720)との間において、絶縁電極(230)上に適用することができる。導電性ゲル層(810)は、上述した機能を行い得るよう、上述した材料から形成される。
【0085】
電気コネクタ(820)は、絶縁電極(230)の一部として設けられ、導体(220)の一端に対して接続される。導体(220)の他端は、電源(210)に対して電気的に接続される。この実施形態においては、導体(220)は、ブラジャー(700)に形成された開口のところまで、ブラジャー材料(705)内にわたって延在している。導体(220)は、開口を通して延出されており、電源(210)のところにまで延出されている。この実施形態においては、電源(210)は、ブラジャー(700)から離間した位置に配置されている。他の実施形態においては、電源(210)を、ブラジャー(700)の内部に配置し得ることは、理解されるであろう。例えば、ブラジャー(700)は、内部に形成された隔壁を有することができる。この隔壁は、患者がブラジャー(700)を装着した際に、電源(210)を所定位置に受領して保持し得るよう構成されている。この構成においては、隔壁は、着脱可能なストラップで覆われることができる。ストラップは、開閉可能とされており、電源(210)を内部に収容したり、あるいは、電源(210)を内部から取り出したり、することを可能とする。ストラップは、ブラジャー(700)を形成するために使用されているのと同じ材料から形成することができる。あるいは、ストラップは、いくつかの他のタイプの材料から形成することができる。ストラップは、例えばフックとループとからなる材料といったような固定手段によって、ブラジャーボディの周囲に対して、着脱可能に取り付けることができる。これにより、患者は、フックとループとからなる材料を分離することにより、隔壁を容易に開くことができる。これにより、隔壁に対してのアクセスを行うことができ、電源(210)の出し入れを行うことができる。
【0086】
電源(210)は、さらに、導体(220)に対しての電気的な接続用のコネクタ(211)を有している。これにより、電源(210)を、絶縁電極(230)に対して電気的に接続することができる。
【0087】
他の実施形態の場合と同様に、所望のターゲット(例えば腫瘍)に対して電界(TC電界)を集中させ得るよう、絶縁電極(230)が、ブラジャー(700)内に配置されている。ブラジャー(700)内における絶縁電極(230)の位置を、腫瘍の位置に依存して変更し得ることは、理解されるであろう。言い換えれば、腫瘍が位置決めされた後に、外科医は、絶縁電極(230)の配置を決定し、ブラジャー(700)が、この決定に基づいて構成される。これにより、ターゲット領域(腫瘍)に対するTC電界の影響を最適化することができる。したがって、絶縁電極(230)の数および位置は、治療対象をなす腫瘍または他のターゲット領域の正確な位置に、依存する。ブラジャー(700)上における絶縁電極(230)の位置が、特定の用途に応じて変更し得るものであることにより、絶縁電極(230)の正確なサイズおよび形状も、同様に変更し得るものである。例えば、絶縁電極(230)が、より中央の位置とは異なり、ブラジャー(700)の底部に配置される場合には、絶縁電極(230)は、対象領域に応じて乳房(および、ブラジャー)の形状が相違することにより、異なる形状のものとなる。
【0088】
図19は、さらに他の実施形態を示している。この実施形態においては、絶縁電極(230)は、例えば尿道や膣腔などといったような天然通路を通して体内に進入させ得るよう構成されたプローブまたはカテーテル(600)という形態でもって組み込まれた内部電極という態様とされている。この実施形態においては、絶縁電極(230)は、プローブ(600)の長手方向に沿って、プローブ(600)の外表面上に配置されている。導体(220)は、電極(230)に対して電気的に接続されており、電源(210)のところにまで、プローブ(600)のボディの内部に延在している。電源(210)は、プローブボディの内部に配置することができる。あるいは、電源(210)は、プローブ(600)とは個別的に、遠隔位置に、配置することができる。例えば、患者上に配置したり、あるいは、患者の近くの他の位置に配置したり、することができる。
【0089】
これに代えて、プローブ(600)は、体内に位置する内部ターゲットへと到達し得るよう、皮膚表面あるいは他の組織を貫通し得るように構成することができる。例えば、プローブ(600)は、皮膚表面に侵入することができ、その後、体内に配置された腫瘍に隣接したあるいはその近傍に位置したところに、配置することができる。
【0090】
このような実施形態においては、プローブ(600)は、天然通路を通して挿入され、その後、絶縁電極(230)をターゲット領域(すなわち腫瘍)の近傍に位置させたような、所望位置に配置することができる。その後、電源(210)を起動することにより、絶縁電極(230)によって、所定時間長さにわたって腫瘍に対して印加されるTC電界を生成することができる。図示のプローブ(600)は、特性を単に例示するためのものであること、および、意図した機能を果たし得る限りにおいては、プローブ(600)を、他の形状や配置とし得ることは、理解されるであろう。好ましくは、絶縁電極(230)から電源(210)へと延在している導体(例えばワイヤ)は、軸方向に沿った電界を生成しないように、捻ったりあるいはシールドしたりされる。
【0091】
また、プローブが、ただ1つの絶縁電極を備えることができ、なおかつ、他方の電極を、生体表面上に配置し得ることは、理解されるであろう。この外部電極は、より大きいものであるべきである、あるいは、多数の電極から構成されているべきである。これにより、治療対象ではない領域における電気力線の密度や電流密度を小さなものとして、それら非治療領域に対して影響を与えないものとすることができる。実際、電極の配置は、潜在的に敏感な領域における電界を最小化し得るように、構成すべきである。
【0092】
図20は、甲状腺や上皮小体や喉頭などの傷害を治療するために、延ばされた状態での大きなカラー部材(900)(あるいは、ネックレスタイプ構造)を使用するような、さらに他の実施形態を示している。図20においては、カラー部材(900)を、開いた、実質的にフラットな状態で示している。この実施形態においては、絶縁電極(230)は、カラー部材(900)のボディ(910)内に組み込まれており、着用者の首の領域に対して配置され得るよう構成されている。絶縁電極(230)は、上述したいずれかの方法によって、電源(210)に対して接続される。また、電源(210)を、ボディ(910)の内部に配置し得ること、あるいは、電源(210)を、ボディ(910)の外部の位置に配置し得ることは、理解されるであろう。カラーボディ(910)は、人の首のまわりに配置されるカラー(900)を形成するために従来から使用されている任意の材料から形成することができる。そのため、カラー(900)は、好ましくは、首に対してカラー(900)を調節するための手段(920)を備えている。例えば、相補的なファスナー(フックとループとからなるファスナー、ボタン、等)を、カラーの直径を調節可能とし得るよう、カラー(900)の端部に配置することができる。
【0093】
したがって、本発明による装置の構成は、装置を衣類製品内に組み込むことによって患者が従来の衣類製品を容易に着用し得るとともに同時に患者が治療を受け得るような用途に対して、特に好適なものである。言い換えれば、患者に対して大いなる快適さを提供し得るとともに、装置の構成部材のうちのいくつかをあるいはすべてを、衣類製品内に組み込むことにより、治療の有効性を増大させることができる。構成部材が組み込まれることとなる衣類製品の種類が、生体組織のうちの、腫瘍や傷害等が存在しているターゲット領域に依存して変わり得ることは、明らかである。例えば、ターゲット領域が、男性の患者の精巣領域内にある場合には、ソックス状の構造またはラップ状構造という形態とされた衣類製品を、提供することができ、患者の精巣領域回りに着用し得るように構成することができる。その場合、絶縁電極は、TC電界がターゲット組織に向けられるようにして、腫瘍に対して位置決めされる。衣類製品の厳密な性質や形態は、大部分のタイプの衣類製品内に装置の構成部材を組み込み得ることのために、大いに変わり得るものであり、したがって、条件が存在し得るような患者の身体の多様な領域を治療するために使用することができる。
【0094】
さて、図21〜図22には、本発明による装置における他の見地が示されている。図21においては、ヒトの身体や動物の身体の任意の一部分といったような身体(1000)が、図示されている。先の実施形態と同様に、上記において詳細に説明したように、2つ以上の絶縁電極(230)が、TC電界を使用した腫瘍(図示せず)等の治療のために、身体(1000)の近傍に配置されている。絶縁電極(230)は、導電性の構成部材と、この導電性の構成部材を囲む外側絶縁体(260)と、を備えている。各絶縁電極(230)は、好ましくは、リード線(220)によって電源(図示せず)に対して接続される。各絶縁電極(230)と身体(1000)との間には、導電性フィラー材料(例えば、導電性ゲル部材270)が、配置されている。絶縁電極(230)は、互いに離間して配置されており、電源を起動したときには、絶縁電極(230)は、詳細に上述したようなTC電界を生成する。電界(TC電界)の電気力線は、全体的に符号(1010)によって示されている。図示のように、電気力線(1010)は、絶縁電極(230)どうしの間にわたって導電性ゲル部材(270)を通して延在している。
【0095】
経時的にあるいはある種の事象の結果として、絶縁電極(230)の外側絶縁体(260)は、任意の場所において、絶縁破壊を引き起こし得る。例示するならば、図22は、一方の絶縁電極(230)の外側絶縁体(260)が、導電性ゲル部材(270)に隣接したところにおいて、絶縁破壊(1020)を起こしている。外側絶縁体(260)の絶縁破壊(1020)が、この場所(すなわち、絶縁破壊(1020)を起こした場所)において、大きな電流密度をもたらすことは、理解されるであろう。電流密度が増大したことは、電気力線(1010)の数が増えていることと、電気力線(1010)の分布と、隣接する電気力線(1010)どうしの間の間隔と、によって図示されている。絶縁破壊(1020)の発生の副作用の1つは、電流の存在によって絶縁破壊場所において加熱が引き起こされることである。このため、抵抗値を有している組織/皮膚が燃焼することがあり得る。図22においては、過熱領域(1030)が、示されている。この過熱領域(1030)は、外側絶縁体(260)内の絶縁破壊(1020)に基づいて増大した電流が存在しているような、組織/皮膚領域である。患者は、この領域内に存在する大きな電流のために、また、過熱のために、また、領域(1030)における燃焼的感覚のために、この領域(1030)において、不快さと苦痛とを感じる。
【0096】
図23は、さらなる絶縁電極(230)が適用されたさらに他の実施形態を示している。この実施形態においては、絶縁電極(230)と身体(1000)との間に配置された導電性ゲル部材(270)は、導体(1100)を備えている。導体(1100)は、部材(270)を形成するゲル材料の中において浮遊している。ゲル材料は、導体(1100)を完全に囲んでいる。1つの例示としての実施形態においては、導体(1100)は、導体(1100)内に配置された薄い金属シートプレートである。理解されるように、例えばプレート(1100)といったような導体が、電気力線に対して垂直な態様で、一様な電界内に配置された場合には、導体(1100)は、実際には、電界に対して何らの影響はない(ただし、導体(1100)の2つの対向している面が等電位である場合には、対応する等電位は、わずかにシフトする)。反対に、導体(1100)が、電界に対して平行に配置された場合には、電界に、かなりの歪みが存在する。導体(1100)の近傍領域は、等電位ではない。この状況は、導体(1100)が存在しない状況とは対照的である。導体(1100)が、ゲル部材(270)内に配置された時には、導体(1100)は、典型的には、上述した理由のためにすなわち導体(1100)が電気力線に対して垂直であるという理由のために、電界(TC電界)に対して影響を与えることがない。
【0097】
絶縁電極(230)の外側絶縁体(260)が絶縁破壊を起こした場合、上述したように、絶縁破壊ポイントのところにおいて、大きな電流密度が発生する。しかしながら、導体(1100)の存在は、導体(1100)の全体にわたって電流を分散させ、その後、導体(1100)の表面全体から、電流を導出する。これにより、電流は、大きくも小さくもない電流密度でもって身体(1000)へと到達する。したがって、皮膚へと到達する電流は、絶縁電極(230)の外側絶縁体(260)に絶縁破壊が起こった場合であってさえ、患者に不快さをもたらさない。導体(1100)が接地されていないことは重要である。なぜなら、接地されたならば、導体(1100)を超えて電界が延出され得ないからである。したがって、導体(1100)は、ゲル部材(270)の内部において、『浮遊状態』とされている。
【0098】
導体(1100)が、身体組織(1000)の中へと導入され、電界に対して平行に配置されたならば、導体(1100)は、電界の歪みを引き起こす。歪みは、導入状況やその周囲状況に応じて、電界の電気力線を分散させたり(電界密度の低減化)、あるいは、電界の電気力線を集中させたり(電界密度の増大化)、することができる。したがって、導体(1100)は、例えば、スクリーニング効果を示すことができる。つまり、例えば、導体(1100)が、完全に器官(1101)を包囲すれば、器官自体の中の電界は、このタイプの配置がファラデーケージとなることから、ゼロとなるであろう。しかしながら、器官の周囲に完全に導体を配置されることが非実用的であることから、導電性ネットあるいは同様の構造を使用することによって、完全にまたは部分的に、器官をカバーすることができる。これにより、器官自体の中の電界が、ゼロとなる、あるいは、ほぼゼロとなる。例えば、ネットは、ネットを形成し得るように互いに編まれた様々な導電性ワイヤから形成することができる。あるいは、一組をなすワイヤを、実質的に器官(1101)を包囲するようにあるいは器官(1101)をカバーするように、配置することができる。反対に、治療対象をなす器官(1103)(ターゲット器官)は、ファラデーケージ効果を有する部材で覆われていないけれども、電界(1010)(TC電界)内に配置されている。
【0099】
図24は、導体(1100)が身体内に配置され(すなわち、皮膚の下に配置され)、導体(1100)が、ターゲット(例えば、ターゲット器官)の近傍に位置しているような、実施形態を示している。ターゲットの近くに導体(1100)を配置することによって、(TC電界の)大きな電界密度が、ターゲットのところにおいて実現されている。同時に、付近の他の器官に関しては、周囲が、上述した保護用導電性ネット等を配置することによって、保護することができる。これにより、付近の他の器官を、電界から保護することができる。ターゲットの近くに導体(1100)を配置することによって、大きな電界密度条件を、ターゲットの近くに、形成することができる。言い換えれば、導体(1100)は、TC電界を、特定の領域(すなわち、ターゲット)のところに集中させることができる。
【0100】
図24の実施形態においては、ゲル部材(270)の各々は、図23に関して説明したような導体を備えることができることは、理解されるであろう。このような構成においては、ゲル部材(270)内の導体は、絶縁電極(230)の絶縁体中に絶縁破壊が生じたとしても、起こり得るすべての副作用から皮膚表面(組織)を保護する。同時に、導体(1100)は、ターゲットの近くに大きな電界密度を形成する。
【0101】
電界の電界密度を調整するに際しては、電極を様々に構成することにより、および/または、電極を互いに対して意図的に配置することにより、多くの異なる方法がある。例えば、図25においては、第1の絶縁電極(1200)と、第2の絶縁電極(1210)と、が設けられており、身体(1300)の周囲に配置されている。各絶縁電極は、好ましくは絶縁材料によって囲まれているような導体を備えている。このような意味合いにおいて、『絶縁電極』という用語が使用されている。第1および第2電極(1200,1210)の各々と身体(1300)との間には、導電性ゲル部材(270)が設けられている。電気力線は、このタイプの構成において、全体的に符号(1220)によって示されている。この実施形態においては、第1絶縁電極(1200)は、第2絶縁電極(1210)と比較して、著しく大きな寸法を有している(第2絶縁電極(1210)用の導電性ゲル部材も、同様に小さなものとされている)。
【0102】
絶縁電極の寸法を変えることにより、電気力線(1220)のパターンを変更することができる。より詳細には、電界は、第2絶縁電極(1210)の寸法が小さいことのために、第2絶縁電極(1210)に向けて、内向きにテーパー形状となっている。全体的に符号(1230)によって示されているような、電界密度の大きな領域が、第2絶縁電極(1210)に関連したゲル部材(270)と皮膚表面との間の境界の近傍に形成されている。システムの様々な構成部材は、皮膚内のあるいは皮膚上の腫瘍が、この大きな電界密度内にあるように、操作される。これにより、治療対象をなす領域(ターゲット)を、より大きな電界密度の電気力線に対して曝すことができる。
【0103】
図26は、導体(1400)(例えば導電性プレート)が導電性ゲル部材(270)の各々の内部に配置されている場合の、テーパー形状のTC電界を示している。この実施形態においては、ゲル部材(270)のサイズと導体(1400)のサイズとは、絶縁電極(1200,1210)間において差があるにもかかわらず、同じであるかあるいはほぼ同じとされている。この場合にも、導体(1400)は、『浮遊プレート』であることを特徴とするものとすることができる。それは、各導体(1400)が、ゲル部材(270)を形成する材料によって囲まれているからである。図26に示すように、他方の絶縁電極(1200)よりも小さいものとされたなおかつ導体(1400)自体よりも小さいものとされた絶縁電極(1210)の近くに、1つの導体(1400)が配置されている。他方の絶縁電極(1200)は、導体から離間して配置されている。1つの導体(1400)は、1つの導体(1400)と他方の電極(1200)との間に配置された組織内における電界密度の減少を引き起こす。電界密度の減少は、全体的に符号(1410)によって示されている。同時に、全体的に符号(1420)によって示されているような非常に不均一なテーパー形状電界は、非常に低密度から非常に高密度へと変化するものであって、1つの導体(1400)と絶縁電極(1210)との間に形成されている。この例示としての構成の1つの利点は、絶縁電極のサイズを、近傍の電界密度の増大化を引き起こすことなく、低減し得ることである。これは、非常に大きな誘電率を有した絶縁体を備えた電極が非常に高価であることにより、重要なことである。例えば、1つの絶縁電極は、500.00ドル以上のコストとなり得る。また、価格は、特定の治療領域に敏感である。したがって、絶縁電極のサイズの低減は、直接的にコストの削減に結びつく。
【0104】
本発明につきその好ましい実施形態に関して特に説明し例示したけれども、当業者であれば、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、形態や細部において様々な変更を加え得ることは、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】細胞分裂プロセスの各段階を示す概略的な断面図である。
【図1B】細胞分裂プロセスの各段階を示す概略的な断面図である。
【図1C】細胞分裂プロセスの各段階を示す概略的な断面図である。
【図1D】細胞分裂プロセスの各段階を示す概略的な断面図である。
【図1E】細胞分裂プロセスの各段階を示す概略的な断面図である。
【図2A】電界が印加された非分裂細胞を示す概略的な図である。
【図2B】電界が印加された非分裂細胞を示す概略的な図である。
【図3A】例示としての一実施形態において、電界が印加された分裂細胞を示す概略的な図である。
【図3B】例示としての一実施形態において、電界が印加された分裂細胞を示す概略的な図である。
【図3C】例示としての一実施形態において、電界が印加されることによって、破壊された細胞を示す概略的な図である。
【図4】電界印加の一ステージにおいて分裂細胞を示す概略的な図である。
【図5】細胞を選択的に破壊し得るような、例示としての一実施形態に基づいた電界を印加するための装置を示す概略的なブロック図である。
【図6】図5の装置における絶縁された電極に関し、電気的な等価回路を示す概略的な図である。
【図7】図5の装置を備えた皮膚パッチを示す断面図であって、腫瘍等の治療のために皮膚表面上に配置された様子を示している。
【図8】腫瘍等の治療のために、体内に埋設された、絶縁された電極を示す断面図である。
【図9】腫瘍等の治療のために、体内に埋設された、絶縁された電極を示す断面図である。
【図10】図5の装置における絶縁された電極に関する様々な構成例を示す断面図である。
【図11】腫瘍罹患サイトの治療のために、例えば肺癌に関連した腫瘍の治療のために、人の胴体回りに配置された2つの絶縁された電極を示す、一部断面を含む正面図である。
【図12】構成上の一部材として形成された保護部材を備えたようなあるいは備えていないような、様々な絶縁された電極を示す断面図である。
【図13】所望のターゲット領域に電界を集中させ得るとともに他の領域(すなわち、保護領域)に関しては電界密度を小さなものとし得るよう構成された、絶縁された電極を示す概略的な図である。
【図14】頭蓋内腫瘍等の治療のために、第1実施形態に基づいて、頭に対して配置し得る帽子内に組み込まれたような、絶縁された電極を示す断面図である。
【図15】例示としての一実施形態による帽子の一部を示す断面図であって、1つまたは複数の絶縁された電極を受領するための凹所を備えている。
【図16】頭に対して配置された図15の帽子を示す断面図であって、絶縁された電極に対して力を印加するための付勢機構を示しており、絶縁された電極は、付勢機構によって、頭に対して確実に接触し得るものとされている。
【図17】腫瘍等の治療のために、絶縁された電極が内部に組み込まれた衣類製品を示す、一部断面を含む平面図である。
【図18】図17の衣類製品を示す断面図であって、治療が要望された皮膚表面の近傍位置に、絶縁された電極を確実に配置し得るような向きでもって、絶縁された電極を付勢するための付勢機構を示している。
【図19】腫瘍等の治療のために、身体の内部に配置可能とされた、一実施形態によるプローブを示す断面図である。
【図20】首の領域内における腫瘍等の治療のために、首の回りに巻き付けることによって首回りに配置可能とされた、一実施形態によるカラーを非巻付状態で示す図である。
【図21】2つの絶縁された電極を示す断面図であって、身体に対して導電性ゲル部材が配置されているとともに、電気力線が図示されている。
【図22】図21の構成を示す断面図であって、1つの絶縁された電極に関して、絶縁破壊ポイントが図示されている。
【図23】腫瘍等の治療のために、導電性ゲル部材を使用して、身体に対して配置された少なくとも2つの絶縁された電極からなる構成を示す断面図であって、各導電性ゲル部材は、絶縁された電極における絶縁破壊の影響を最小化し得るような特性を有している。
【図24】腫瘍等の治療のために、導電性ゲル部材を使用して、身体に対して配置された少なくとも2つの絶縁された電極からなる他の構成を示す断面図であって、1つの導電性部材が、腫瘍の近傍において体内に配置されており、これにより、電界密度が増大した領域が形成されている。
【図25】身体に対して配置された互いにサイズが異なる2つの絶縁された電極からなる構成を示す断面図である。
【図26】腫瘍等の治療のために、導電性ゲル部材を使用して、身体に対して配置された少なくとも2つの絶縁された電極からなる構成を示す断面図であって、各導電性ゲル部材は、絶縁された電極における絶縁破壊の影響を最小化し得るような特性を有している。
【符号の説明】
【0106】
10 細胞
12 分裂溝
18 細胞
20 細胞
22 ブリッジ(細胞内メンブラン)
28 電極
32 電極
200 電子装置
210 電源
220 導電性リード線
230 絶縁導体
270 介在フィラー、導電性ゲル部材
300 皮膚パッチ
340 疎なネット
350 薄い導電性コーティング
500 衣類製品、帽子
530 バイアス機構
540 ユニット
550 開口
560 接着部材
600 プローブ
700 ブラジャー
800 バイアス機構
900 カラー部材
1100 導体(第3導体)
1200 第1絶縁電極
1210 第2絶縁電極
1400 導体(第3導体)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加するための電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2誘電性部材が、二酸化チタン層から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2誘電性部材の各々が、誘電性コーティングを有し、
この誘電性コーティングの厚さが、5μm〜50μmとされていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
さらに、前記誘電性コーティングの周囲に配置された疎なネットを有し、
この疎なネットが、前記誘電性コーティングの表面に対するアクセスを制限するとともに、前記誘電性コーティングの表面積に関して最小の影響しか与えないことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
さらに、前記誘電性コーティング上に配置された薄い導電性コーティングを有し、
この薄い導電性コーティングが、生体組織に対して接触することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
さらに、前記導電性コーティングが、金から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1記載の装置において、
前記交流電圧が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1記載の装置において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記電圧波形が、治療対象をなす組織内における電界強度が0.1V/cm〜10.0V/cmという範囲となるように、選択されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2絶縁電極のうちの少なくとも一方が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、
前記介在フィラーが、ゼラチンおよび天草の少なくとも一方の材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13記載の装置において、
前記介在フィラーが、前記誘電性部材の一部を形成するリムによって、前記誘電性部材内に収容されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
生体組織の局所的領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊するための皮膚パッチであって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記皮膚パッチが、
前記分裂細胞が位置した前記局所的領域上にわたって生体組織上に配置するための皮膚パッチボディであるとともに、第1導体を有した第1絶縁電極と、第2導体を有した第2絶縁電極と、を備えているような、皮膚パッチボディと;
前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加するための電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して前記電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項17】
請求項16記載の皮膚パッチにおいて、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項18】
請求項16記載の皮膚パッチにおいて、
前記交流電界が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項19】
生体組織のターゲット領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊し得るという特性を有した衣類製品であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記衣類製品が、前記ターゲット領域上にわたって着用され得るよう構成され、
前記衣類製品が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされた、電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項20】
請求項19記載の衣類製品において、
前記衣類製品が、頭蓋内腫瘍または頭皮腫瘍を治療し得るよう、頭に対して装着し得るよう構成された帽子とされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項21】
請求項20記載の衣類製品において、
前記第1および第2絶縁電極が、頭に対して配置され得るよう、アーチ形状を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項22】
請求項19記載の衣類製品において、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする衣類製品。
【請求項23】
請求項19記載の衣類製品において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする衣類製品。
【請求項24】
請求項19記載の衣類製品において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項25】
請求項19記載の衣類製品において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項26】
請求項19記載の衣類製品において、
前記交流電圧が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項27】
請求項19記載の衣類製品において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする衣類製品。
【請求項28】
請求項27記載の衣類製品において、
前記電源が、前記衣類製品の内部に配置されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項29】
請求項19記載の衣類製品において、
さらに、前記衣類製品が着用されたときに、前記第1および第2絶縁電極の各々を生体組織に向けて付勢するバイアス機構を具備し、これにより、前記第1および第2絶縁電極が、生体組織に対して確実に着座し得るものとされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項30】
請求項29記載の衣類製品において、
前記バイアス機構が、スプリングを備え、
このスプリングが、前記第1および第2絶縁電極に対して、生体組織へと向かう付勢力を印加することを特徴とする衣類製品。
【請求項31】
請求項29記載の衣類製品において、
前記バイアス機構が、弾性材料から形成されたボディを備え、
このボディが、前記絶縁電極の近傍においてあるいは前記絶縁電極に接触した状態で、前記衣類製品の内部に配置されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項32】
請求項31記載の衣類製品において、
前記ボディが、発泡プロセスを受けた材料から形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項33】
請求項19記載の衣類製品において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有して構成され、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項34】
請求項33記載の衣類製品において、
前記絶縁電極が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項35】
請求項34記載の衣類製品において、
前記介在フィラーが、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする衣類製品。
【請求項36】
請求項19記載の衣類製品において、
前記衣類製品が、ブラジャーの形態とされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項37】
腫瘍の分裂細胞を選択的に破壊することによって頭蓋内腫瘍または頭蓋内障害を治療するための帽子であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記帽子が、
頭に対して装着し得るものとされ、かつ、所定数の開口が形成されている、帽子ボディと:
前記開口内に配置される少なくとも1つの絶縁電極ユニットであるとともに、各ユニットが、前記ユニットが前記開口内に挿入されて固定的に保持された際に前記帽子の一方の面に対して配置される絶縁電極と、この絶縁電極に対して前記帽子ボディから離間する向きの付勢力を印加するためのバイアス機構と、を備えてなる絶縁電極ユニットと;
少なくとも2つの前記絶縁電極の間にわたって交流電圧を印加し、これにより、前記分裂細胞の破壊を引き起こすような状況を形成するための、電界生成源と;
を具備していることを特徴とする帽子。
【請求項38】
請求項37記載の帽子において、
前記絶縁電極ユニットが、少なくとも一方の面に形成された接着層を有した接着部材によって、前記開口内に固定的に保持され、
前記接着部材が、前記絶縁電極の周縁エッジ回りに、なおかつ、前記帽子ボディの前記開口の周縁エッジ上に、配置され、これにより、前記絶縁電極を前記帽子ボディの一面に対して配置させた状態で、前記開口内に、前記絶縁電極ユニットを固定的に配置して保持し得るものとされていることを特徴とする帽子。
【請求項39】
請求項37記載の帽子において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする帽子。
【請求項40】
請求項39記載の帽子において、
前記電源が、前記帽子ボディの内部に配置されていることを特徴とする帽子。
【請求項41】
請求項37記載の帽子において、
前記バイアス機構が、スプリングを備え、
このスプリングが、前記第1および第2絶縁電極に対して、生体組織へと向かう付勢力を印加することを特徴とする帽子。
【請求項42】
請求項41記載の帽子において、
前記バイアス機構が、前記ユニット内に収容され、
前記ユニットが、前記帽子に対して着脱可能とされていて、取外しや交換が可能とされていることを特徴とする帽子。
【請求項43】
請求項37記載の帽子において、
前記バイアス機構が、弾性材料から形成されたボディを備え、
このボディが、前記絶縁電極の近傍においてあるいは前記絶縁電極に接触した状態で、前記帽子の内部に配置されていることを特徴とする帽子。
【請求項44】
請求項37記載の帽子において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有して構成され、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする帽子。
【請求項45】
請求項44記載の帽子において、
前記絶縁電極が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする帽子。
【請求項46】
組織のターゲット領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊することによって生体組織の一部を治療するためのプローブであって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記プローブが、
生体内に挿入可能とされたプローブボディと:
このプローブボディの外表面上に配置された少なくとも2つの絶縁電極と;
これら少なくとも2つの絶縁電極の間にわたって交流電圧を印加し、これにより、前記分裂細胞の破壊を誘起するような状況を形成するための、電界生成源と;
を具備していることを特徴とするプローブ。
【請求項47】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記プローブボディが、前記ターゲット領域に対して前記絶縁電極を位置決めし得るよう、生体の天然通路を通して挿入し得るよう構成されていることを特徴とするプローブ。
【請求項48】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記プローブボディが、前記絶縁電極を前記ターゲット領域の近傍に配置し得るよう、生体組織を貫通して配置し得るよう構成されていることを特徴とするプローブ。
【請求項49】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記第1および第2絶縁電極が、アーチ形状を有していることを特徴とするプローブ。
【請求項50】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、前記各絶縁電極に対して供給し得るよう、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とするプローブ。
【請求項51】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞の破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
前記第1および第2絶縁電極の一方と皮膚表面との間に配置されたフィラー材料から形成された介在部材であるとともに、前記フィラー材料が大きな導電率を有したものとされた、介在部材と;
この介在部材の内部に配置された第3導体であるとともに、前記介在部材の前記フィラー材料によって完全に囲まれた第3導体と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項51記載の装置において、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項51記載の装置において、
前記介在部材の内部に配置された前記第3導体が、フラットな導電性プレートを備えていることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項51記載の装置において、
前記第3導体の長さが、前記第1および第2導体の各長さと比較して、同じかあるいはほぼ同じとされていることを特徴とする装置。
【請求項55】
請求項51記載の装置において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項51記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項51記載の装置において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項51記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、第1サイズを有し、
前記第2絶縁電極が、前記第1サイズよりも大きな第2サイズを有し、
前記第1絶縁電極に関連した前記介在部材が、前記第2絶縁電極に関連した前記介在部材よりも小さなサイズのものとされていることを特徴とする装置。
【請求項59】
請求項58記載の装置において、
前記第1絶縁電極の近傍の電界が、前記第1絶縁電極と前記第2絶縁電極との間の他の場所における電界と比較して、より大きな電界密度を有していることを特徴とする装置。
【請求項60】
請求項59記載の装置において、
前記電界が、前記第1絶縁電極に向けて内向きのテーパー形状とされていることを特徴とする装置。
【請求項61】
請求項51記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項62】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞内に前記分裂細胞の破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
前記第1および第2絶縁電極の一方と皮膚表面との間に配置された介在部材であるとともに、大きな導電率と大きな誘電率とを有したフィラー材料から形成された、介在部材と;
を具備し、
前記第1絶縁電極が、第1サイズを有し、
前記第2絶縁電極が、前記第1サイズよりも大きな第2サイズを有し、
前記第1絶縁電極に関連した前記介在部材が、前記第2絶縁電極に関連した前記介在部材よりも小さなサイズのものとされ、
これにより、前記第1絶縁電極の近傍の電界が、前記第1絶縁電極と前記第2絶縁電極との間の他の場所における電界と比較して、より大きな電界密度を有していることを特徴とする装置。
【請求項63】
請求項62記載の装置において、
前記電界が、前記第1絶縁電極に向けて内向きのテーパー形状とされていることを特徴とする装置。
【請求項64】
請求項62記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項65】
請求項62記載の装置において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項66】
請求項62記載の装置において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする装置。
【請求項67】
請求項62記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項68】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞内に前記分裂細胞の破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
前記第1および第2絶縁電極の各々と皮膚表面との間に配置された介在部材であるとともに、大きな導電率と大きな誘電率とを有したフィラー材料から形成された、介在部材と;
前記ターゲット領域の近傍において生体組織の内部に配置された第3導体であるとともに、前記第1および第2絶縁電極の間に配置され、前記ターゲット領域における電界を増大させ得るものとされた、第3導体と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項69】
請求項68記載の装置において、
さらに、器官の周囲に配置された導電性保護部材を具備し、
この導電性保護部材が、前記電界生成源によって生成された電界の影響から前記器官をシールドして前記器官を保護することを特徴とする装置。
【請求項70】
請求項69記載の装置において、
前記導電性保護部材が、導電性部材から形成されたネットを有し、
このネットが、保護対象をなす前記器官の少なくとも一部の周囲に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項71】
請求項68記載の装置において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有し、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項72】
請求項68記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項73】
請求項72記載の装置において、
前記ゲルが、内部に溶解された塩を有し、
これにより、前記ゲルの導電率が増大されていることを特徴とする装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加するための電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1記載の装置において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2誘電性部材が、二酸化チタン層から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2誘電性部材の各々が、誘電性コーティングを有し、
この誘電性コーティングの厚さが、5μm〜50μmとされていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、
さらに、前記誘電性コーティングの周囲に配置された疎なネットを有し、
この疎なネットが、前記誘電性コーティングの表面に対するアクセスを制限するとともに、前記誘電性コーティングの表面積に関して最小の影響しか与えないことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項6記載の装置において、
さらに、前記誘電性コーティング上に配置された薄い導電性コーティングを有し、
この薄い導電性コーティングが、生体組織に対して接触することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8記載の装置において、
さらに、前記導電性コーティングが、金から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1記載の装置において、
前記交流電圧が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1記載の装置において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、
前記電圧波形が、治療対象をなす組織内における電界強度が0.1V/cm〜10.0V/cmという範囲となるように、選択されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項4記載の装置において、
前記第1および第2絶縁電極のうちの少なくとも一方が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、
前記介在フィラーが、ゼラチンおよび天草の少なくとも一方の材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13記載の装置において、
前記介在フィラーが、前記誘電性部材の一部を形成するリムによって、前記誘電性部材内に収容されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
生体組織の局所的領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊するための皮膚パッチであって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記皮膚パッチが、
前記分裂細胞が位置した前記局所的領域上にわたって生体組織上に配置するための皮膚パッチボディであるとともに、第1導体を有した第1絶縁電極と、第2導体を有した第2絶縁電極と、を備えているような、皮膚パッチボディと;
前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加するための電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して前記電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項17】
請求項16記載の皮膚パッチにおいて、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項18】
請求項16記載の皮膚パッチにおいて、
前記交流電界が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする皮膚パッチ。
【請求項19】
生体組織のターゲット領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊し得るという特性を有した衣類製品であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記衣類製品が、前記ターゲット領域上にわたって着用され得るよう構成され、
前記衣類製品が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされた、電界生成源と;
を具備し、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項20】
請求項19記載の衣類製品において、
前記衣類製品が、頭蓋内腫瘍または頭皮腫瘍を治療し得るよう、頭に対して装着し得るよう構成された帽子とされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項21】
請求項20記載の衣類製品において、
前記第1および第2絶縁電極が、頭に対して配置され得るよう、アーチ形状を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項22】
請求項19記載の衣類製品において、
前記電界が、前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が前記分裂溝の領域のところへと全体的に集中するような電気力線を形成し得るような十分な周波数を有し、これにより、電界強度を増大させ、前記分裂溝に向けて前記分極可能な細胞内成分が移動することの結果として、前記分裂細胞を破壊することを特徴とする衣類製品。
【請求項23】
請求項19記載の衣類製品において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする衣類製品。
【請求項24】
請求項19記載の衣類製品において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項25】
請求項19記載の衣類製品において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項26】
請求項19記載の衣類製品において、
前記交流電圧が、100KHz〜300KHzという周波数を有していることを特徴とする衣類製品。
【請求項27】
請求項19記載の衣類製品において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする衣類製品。
【請求項28】
請求項27記載の衣類製品において、
前記電源が、前記衣類製品の内部に配置されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項29】
請求項19記載の衣類製品において、
さらに、前記衣類製品が着用されたときに、前記第1および第2絶縁電極の各々を生体組織に向けて付勢するバイアス機構を具備し、これにより、前記第1および第2絶縁電極が、生体組織に対して確実に着座し得るものとされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項30】
請求項29記載の衣類製品において、
前記バイアス機構が、スプリングを備え、
このスプリングが、前記第1および第2絶縁電極に対して、生体組織へと向かう付勢力を印加することを特徴とする衣類製品。
【請求項31】
請求項29記載の衣類製品において、
前記バイアス機構が、弾性材料から形成されたボディを備え、
このボディが、前記絶縁電極の近傍においてあるいは前記絶縁電極に接触した状態で、前記衣類製品の内部に配置されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項32】
請求項31記載の衣類製品において、
前記ボディが、発泡プロセスを受けた材料から形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項33】
請求項19記載の衣類製品において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有して構成され、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項34】
請求項33記載の衣類製品において、
前記絶縁電極が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする衣類製品。
【請求項35】
請求項34記載の衣類製品において、
前記介在フィラーが、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする衣類製品。
【請求項36】
請求項19記載の衣類製品において、
前記衣類製品が、ブラジャーの形態とされていることを特徴とする衣類製品。
【請求項37】
腫瘍の分裂細胞を選択的に破壊することによって頭蓋内腫瘍または頭蓋内障害を治療するための帽子であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記帽子が、
頭に対して装着し得るものとされ、かつ、所定数の開口が形成されている、帽子ボディと:
前記開口内に配置される少なくとも1つの絶縁電極ユニットであるとともに、各ユニットが、前記ユニットが前記開口内に挿入されて固定的に保持された際に前記帽子の一方の面に対して配置される絶縁電極と、この絶縁電極に対して前記帽子ボディから離間する向きの付勢力を印加するためのバイアス機構と、を備えてなる絶縁電極ユニットと;
少なくとも2つの前記絶縁電極の間にわたって交流電圧を印加し、これにより、前記分裂細胞の破壊を引き起こすような状況を形成するための、電界生成源と;
を具備していることを特徴とする帽子。
【請求項38】
請求項37記載の帽子において、
前記絶縁電極ユニットが、少なくとも一方の面に形成された接着層を有した接着部材によって、前記開口内に固定的に保持され、
前記接着部材が、前記絶縁電極の周縁エッジ回りに、なおかつ、前記帽子ボディの前記開口の周縁エッジ上に、配置され、これにより、前記絶縁電極を前記帽子ボディの一面に対して配置させた状態で、前記開口内に、前記絶縁電極ユニットを固定的に配置して保持し得るものとされていることを特徴とする帽子。
【請求項39】
請求項37記載の帽子において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする帽子。
【請求項40】
請求項39記載の帽子において、
前記電源が、前記帽子ボディの内部に配置されていることを特徴とする帽子。
【請求項41】
請求項37記載の帽子において、
前記バイアス機構が、スプリングを備え、
このスプリングが、前記第1および第2絶縁電極に対して、生体組織へと向かう付勢力を印加することを特徴とする帽子。
【請求項42】
請求項41記載の帽子において、
前記バイアス機構が、前記ユニット内に収容され、
前記ユニットが、前記帽子に対して着脱可能とされていて、取外しや交換が可能とされていることを特徴とする帽子。
【請求項43】
請求項37記載の帽子において、
前記バイアス機構が、弾性材料から形成されたボディを備え、
このボディが、前記絶縁電極の近傍においてあるいは前記絶縁電極に接触した状態で、前記帽子の内部に配置されていることを特徴とする帽子。
【請求項44】
請求項37記載の帽子において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有して構成され、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする帽子。
【請求項45】
請求項44記載の帽子において、
前記絶縁電極が、前記誘電性部材上に配置された介在フィラーを有し、
この介在フィラーが、大きな導電率と大きな誘電率とを有した材料から形成されていることを特徴とする帽子。
【請求項46】
組織のターゲット領域内に位置した分裂細胞を選択的に破壊することによって生体組織の一部を治療するためのプローブであって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記プローブが、
生体内に挿入可能とされたプローブボディと:
このプローブボディの外表面上に配置された少なくとも2つの絶縁電極と;
これら少なくとも2つの絶縁電極の間にわたって交流電圧を印加し、これにより、前記分裂細胞の破壊を誘起するような状況を形成するための、電界生成源と;
を具備していることを特徴とするプローブ。
【請求項47】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記プローブボディが、前記ターゲット領域に対して前記絶縁電極を位置決めし得るよう、生体の天然通路を通して挿入し得るよう構成されていることを特徴とするプローブ。
【請求項48】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記プローブボディが、前記絶縁電極を前記ターゲット領域の近傍に配置し得るよう、生体組織を貫通して配置し得るよう構成されていることを特徴とするプローブ。
【請求項49】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記第1および第2絶縁電極が、アーチ形状を有していることを特徴とするプローブ。
【請求項50】
請求項46記載のプローブにおいて、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、前記各絶縁電極に対して供給し得るよう、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とするプローブ。
【請求項51】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞の破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
前記第1および第2絶縁電極の一方と皮膚表面との間に配置されたフィラー材料から形成された介在部材であるとともに、前記フィラー材料が大きな導電率を有したものとされた、介在部材と;
この介在部材の内部に配置された第3導体であるとともに、前記介在部材の前記フィラー材料によって完全に囲まれた第3導体と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項51記載の装置において、
後期フェーズの後期または終期フェーズの状態にある分裂細胞を通して電界を印加することにより、前記電界が、前記分裂細胞の分裂溝の領域のところに大きな電界強度を有した非一様電界へと、変換され、
前記分裂細胞内に形成された前記非一様電界が、前記分裂溝に向けて分極可能な細胞内成分を移動させ得るに十分な強度を有していることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項51記載の装置において、
前記介在部材の内部に配置された前記第3導体が、フラットな導電性プレートを備えていることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項51記載の装置において、
前記第3導体の長さが、前記第1および第2導体の各長さと比較して、同じかあるいはほぼ同じとされていることを特徴とする装置。
【請求項55】
請求項51記載の装置において、
さらに、
前記電界生成源に対して、前記第1絶縁電極を操作可能に接続する第1導電性リード線と;
前記電界生成源に対して、前記第2絶縁電極を操作可能に接続する第2導電性リード線と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項51記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項51記載の装置において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項51記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、第1サイズを有し、
前記第2絶縁電極が、前記第1サイズよりも大きな第2サイズを有し、
前記第1絶縁電極に関連した前記介在部材が、前記第2絶縁電極に関連した前記介在部材よりも小さなサイズのものとされていることを特徴とする装置。
【請求項59】
請求項58記載の装置において、
前記第1絶縁電極の近傍の電界が、前記第1絶縁電極と前記第2絶縁電極との間の他の場所における電界と比較して、より大きな電界密度を有していることを特徴とする装置。
【請求項60】
請求項59記載の装置において、
前記電界が、前記第1絶縁電極に向けて内向きのテーパー形状とされていることを特徴とする装置。
【請求項61】
請求項51記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項62】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞の選択的な破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
前記第1絶縁電極と皮膚表面との間に配置された第1介在部材であるとともに、大きな導電率を有した材料から形成された、第1介在部材と;
前記第2絶縁電極と皮膚表面との間に配置された第2介在部材であるとともに、大きな導電率を有した材料から形成された、第2介在部材と;
を具備し、
前記第1絶縁電極が、第1サイズを有し、
前記第2絶縁電極が、前記第1サイズよりも大きな第2サイズを有し、
前記第1介在部材が、前記第2介在部材よりも小さなサイズのものとされ、
これにより、前記第1絶縁電極の近傍の電界が、前記第1絶縁電極と前記第2絶縁電極との間の他の場所における電界と比較して、より大きな電界密度を有していることを特徴とする装置。
【請求項63】
請求項62記載の装置において、
前記電界が、前記第1絶縁電極に向けて内向きのテーパー形状とされていることを特徴とする装置。
【請求項64】
請求項62記載の装置において、
前記第1絶縁電極が、前記第1導体に対して接触した第1誘電性部材を有し、
この第1誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成され、
前記第2絶縁電極が、前記第2導体に対して接触した第2誘電性部材を有し、
この第2誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項65】
請求項62記載の装置において、
前記交流電圧が、50KHz〜500KHzという周波数を有していることを特徴とする装置。
【請求項66】
請求項62記載の装置において、
前記電界生成源が、電源を備え、
この電源が、50KHz〜500KHzという周波数の交流電圧波形を生成することを特徴とする装置。
【請求項67】
請求項62記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項68】
生体組織のターゲット領域内の分裂細胞を選択的に破壊するための装置であって、
前記分裂細胞が、分極可能なあるいは極性を有したあるいは帯電を有した細胞内メンブランを有している場合に、
前記装置が、
第1導体を有した第1絶縁電極と;
第2導体を有した第2絶縁電極と;
前記第1および第2絶縁電極に対して接続されていて、前記第1導体と前記第2導体との間にわたって交流電圧を印加し得るものとされ、これにより、前記分裂細胞の選択的な破壊を誘起する状況を形成する、電界生成源と;
記ターゲット領域の近傍において生体組織の内部に配置された第3導体であるとともに、前記第1および第2絶縁電極の間に配置され、前記ターゲット領域における電界を増大させ得るものとされた、第3導体と;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項69】
請求項68記載の装置において、
さらに、器官の周囲に配置された導電性保護部材を具備し、
この導電性保護部材が、前記電界生成源によって生成された電界の影響から前記器官をシールドして前記器官を保護することを特徴とする装置。
【請求項70】
請求項69記載の装置において、
前記導電性保護部材が、導電性部材から形成されたネットを有し、
このネットが、保護対象をなす前記器官の少なくとも一部の周囲に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項71】
請求項68記載の装置において、
前記各絶縁電極が、導体と、この導体に対して接触した誘電性部材と、を有し、
この誘電性部材が、生体組織に接触して配置され、これにより、キャパシタが形成されていることを特徴とする装置。
【請求項72】
請求項68記載の装置において、
前記フィラー材料が、ヒドロゲルとゼラチンと天草との中の少なくとも1つの材料から形成されたゲルを備えていることを特徴とする装置。
【請求項73】
請求項72記載の装置において、
前記ゲルが、内部に溶解された塩を有し、
これにより、前記ゲルの導電率が増大されていることを特徴とする装置。



【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2006−513739(P2006−513739A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541094(P2004−541094)
【出願日】平成15年10月1日(2003.10.1)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004321
【国際公開番号】WO2004/030760
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505121626)スタンデン・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】