説明

腸内状態報知装置及び方法

【課題】腸内状態をユーザにとって分かり易いように伝えることができる腸内状態報知装置を提供する。
【解決手段】 便器の便鉢に存在する排泄ガス中の所定ガス成分を検出するガスセンサから出力される信号値と、ユーザの腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す対応データを記憶する記憶部と、前記ガスセンサから出力された信号値に対応した前記腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出してユーザに報知する処理部とを備える腸内状態報知装置を提供する。さらには前記ガスセンサは、水素ガスを検出する水素ガスセンサである腸内状態報知装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの腸内状態を報知するための技術に関わる。
【背景技術】
【0002】
便器の便鉢に存在する排泄ガスを検出し、それの検出結果に基づいて、人間の健康状態
を判断する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガスセンサを用いて、排泄ガ
スに含まれる有臭ガスを検出し、そのガスセンサからの信号値を直接或いは匂い分析など
の適当な処理を行って表示することが開示されている。また、例えば、特許文献2には、
試薬を浸した試験紙により、臭気成分濃度を測定し、その試験紙の色の変化で、利用者の
腸内状態を知らせることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9-43182号公報。
【特許文献2】特開平8-211048号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1〜2に開示の技術では、検出された有臭ガスに基づく検出結果がユ
ーザに知らされるが、知らされる情報は、信号値それ自体や、それを適当に処理した結果
や、試験紙の色の変化であって、その検出結果から推測される腸内状態をユーザにとって
分かり易いように伝えることは行われていない。また精度が悪いという問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、ユーザに分かり易く腸内菌バランスを知らせることにある。
【0006】
本発明の別の目的は、ユーザの腸内菌バランスを精度良く判定することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、後の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に従う腸内状態報知装置は、便器の便鉢に存在する排泄ガス中の所
定ガス成分を検出するガスセンサから出力される信号値と、ユーザの腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す対応データを記憶する記憶部と、前記ガスセンサから出力
された信号値に対応した腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出してユーザに報知する処理部とを備える。
【0009】
ここで、「排泄ガス」とは、ユーザの体外に出たものに関わる様々なガスのうちの少な
くとも1つ、例えば、ユーザの体内から直接排出されるガス(典型的には屁)と、ユーザ
から排泄された排泄物から出たガスとのうちの少なくとも1つを含んだものである。なお
、この「排泄物」とは、典型的には糞である。
【0010】
また、「便器の便鉢に存在する排泄ガス」とは、例えば、便鉢内に存在する排泄ガス、
及び/又は、便鉢の外であってもその便鉢の開口部近傍に存在する排泄ガスのことである。
【0011】
この腸内状態報知装置は、種々の形態で提供することができる。具体的には、例えば、
腸内状態報知装置は、便座装置であっても良いし、便器であっても良いし、便座装置或い
は便器に取付けられるユニットであっても良い。
【0012】
また、処理部は、例えば、抽出された腸内菌バランスに関する情報を、音声でユーザに報知したり、ディスプレイ画面に表示したりしても良い。
【0013】
また、腸内菌バランスに関する情報は、例えば、健康状態が分かり易く表された情報を採用することができる。具体的には、腸内菌バランス(例えば、良い、悪いで表された情報)を採用することができる。このような腸内状態情報は、例えば、ガスセンサの信号値に対応した後述の腸内パラメータの値に基づいて定められた情報とすることができる。腸内パラメータとしては、例えば、腸内に存在する種々の菌(以下、「腸内菌」と総称する)の総数(或いは総量)のうちの日和見菌数(或いは菌量)の割合を採用することができる。
【0014】
また、別の実施態様として、例えば、前記対応データには、ユーザの腸内菌バランスを推定するための腸内パラメータと前記信号値との対応関係を表す第1のサブ対応データと、前記腸内パラメータと前記腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す第2のサブ対応データとが含まれていても良い。この場合、前記処理部は、前記ガスセンサからの信号値に対応した腸内パラメータを前記第1のサブ対応データから抽出し、前記抽出された腸内パラメータに対応した腸内菌バランスに関する情報を前記第2のサブ対応データから抽出しても良い。
【0015】
本発明の第1の観点に従う腸内状態報知装置の第2の実施態様では、前記対応データに
は、前記信号値とそれの閾値との比較の結果に応じた腸内菌バランスに関する情報が記録されている。前記処理部は、前記ガスセンサから出力された信号値と前記閾値との比較の結果に応じた腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出する。
【0016】
本発明の第2の観点に従う腸内状態報知方法は、便器の便鉢に存在する排泄ガス中の所
定ガス成分を検出するガスセンサから出力された信号値を取得するステップと、前記出力
される信号値と、腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す対応データから、前記取得された信号値に対応した腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出するステップと、前記抽出された前記腸内菌バランスに関する情報を出力するステップとを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ユーザに分かり易く腸内状態を知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る装置が適用された便座装置について
説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る便座装置の斜視図である。
【0020】
本実施形態に係る便座装置1には、便鉢3を有する便器5と、ユーザが着座する便座7
とが備えられている。便鉢3の後部には、脱臭装置9と、水素ガスセンサ13と、制御装
置11とが備えられている。
【0021】
脱臭装置9は、脱臭ダクト10を有し、脱臭ダクト10の気体吸入口10Aから、便鉢
内に存在する気体を吸入し、吸入された気体に含まれる有臭成分を除去する。気体吸入口
10Aは、例えば、便鉢3において排泄物が通常排泄される場所(換言すれば、排泄され
た排泄物の落下地点となる確率が高い場所)の上方に位置する。例えば、気体吸入口10
Aは、便鉢の上縁開口部付近(別の言い方をすれば、便鉢の開口周縁付近)に位置する。
【0022】
水素ガスセンサ13は、便鉢内に存在する水素ガスを検出し、検出した水素ガスの量に
応じた値の信号を出力するセンサである。水素ガスセンサ13は、便鉢3において排泄物
が通常排泄される場所の上方(例えば便鉢の上縁開口部近傍)に位置する。具体的には、
例えば、水素ガスセンサ13は、気体吸入口10A又はその近傍に配置される。なお、水
素ガスセンサ13は、どのような種類のセンサであっても良い。
【0023】
制御装置11は、便座装置1の各部の動作(例えば、ノズル15からの水の噴出や、脱
臭装置9の脱臭動作等)を制御したり、水素ガスセンサ13からの信号値(換言すれば水
素ガス濃度)に基づいて、ユーザの腸内状態を判断してユーザに報知したりする。
【0024】
図2は、制御装置11の構成例を示すブロック図である。図2には、特に、本実施形態
の主要部分に関わる部分を示す。
【0025】
制御装置11には、メモリ或いはハードディスク等の記憶部23と、記憶部23に記憶
された情報に基づく種々の処理を実行する処理部(例えばCPU)21とが備えられてい
る。
【0026】
記憶部23は、処理部21が行う処理に必要な制御情報を予め記憶している。また、記
憶部23は、水素ガスセンサ13から出力された各時点の信号値を時系列的に記憶したり
、その信号値に基づいてユーザの腸内状態を判断した処理部21の判断結果を記憶したり
する。
【0027】
処理部21は、記憶部23に記憶されている制御情報に基づいて、便座装置1の各部を
制御したり、記憶部23に記憶されている時系列的な信号値に基づいてユーザの腸内状態
を判断したり、それの判断結果を記憶部23に記憶したり、それの判断結果を、制御装置
11の操作部27のディスプレイ画面29に表示したりする。なお、処理部21は、水素
ガスセンサ13等の各部の電源のオン/オフを切替えられるようになっていても良い。ま
た、処理部21は、ユーザが便座7に着座及び離座したことを検出する着座センサ17か
ら着座を表す信号を受けた場合、或いは、操作部27に設けられた測定開始ボタン31C
が押下されたことが検出された場合に、水素ガスセンサ13に水素ガスの検出を開始させ
ても良い。また、処理部21は、着座センサ17から離座を表す信号を受けた場合、或い
は、操作部27に設けられた測定終了ボタン31Bが押下されたことが検出された場合に
、水素ガスセンサ13に水素ガスの検出を終了させても良い。また、処理部21は、操作
部27に設けられた検査ボタン31Aが押下されたことが検出された場合に、或いは、操
作部27に設けられた洗浄ボタン31Dが押下されて洗浄を開始した場合に、記憶部23
に記憶された時系列的な信号値に基づく腸内状態判断を実行しても良い。また、操作部2
7は、便座装置1に取り付けられたものであっても良いし、制御装置11のリモートコン
トローラであっても良い。
【0028】
以上が、本実施形態に係る便座装置1の概要である。以下、本実施形態について更に詳
細に説明する。なお、以下の説明で使用する「濃度」という言葉は、便鉢3の容積におけ
る濃度を意味するものである。
【0029】
図3は、水素ガス濃度の第1測定実験結果を示すグラフである。
【0030】
この第1測定実験では、被験者が便座装置1に着座してから排泄をして離座するまでの
便鉢3における水素ガス濃度を測定した。また、この第1実験では、排泄ガスに水素ガス
が多く含まれていることを理解し易くするため、便座装置1の水素ガスセンサ13の近傍
にアンモニアガスセンサを設け、被験者が便座装置1に着座してから排泄をして離座する
までのアンモニアガス濃度も測定した。
【0031】
この第1実験の被験者数は18人である。グラフの縦軸は、ガス濃度を表し、それの単
位はppm(parts per million)である。
【0032】
図3のグラフにおける右側の棒は、測定された水素ガス濃度のピーク値の被験者18人
の平均値を示す。一方、左側の棒は、測定されたアンモニアガス濃度のピーク値の被験者
18人の平均値を示す。
【0033】
この第1測定実験によれば、排泄ガスに含まれているアンモニアガス濃度は、10pp
m程度であるのに対し、水素ガス濃度は、1500〜1800ppm程度である。従って
、アンモニアガスに比べて水素ガスの濃度の方が大幅に高い、換言すれば、水素ガスに比
べてアンモニアガスの濃度の方が大幅に低いことがわかった。なお、図示しないが、従来
技術で利用されている有臭ガスは、アンモニアガスよりも濃度が低い。
【0034】
図4は、水素ガス濃度の第2測定実験結果を示すグラフである。以下、第1測定実験と
の違いを主に説明する。
【0035】
この第2測定実験でも、被験者数は18人であるが、そのうちの6人は、便秘の者(以
下、「便秘者」と言う)であり、他の12人は、便秘でない者(以下、「非便秘者」と言
う)である。
【0036】
図4のグラフにおける右側の(a)の棒は、測定された水素ガス濃度のピーク値の非便
秘者12人の平均値を示す。そして、それの右隣の(b)の棒は、それの便秘者6人の平
均値を示す。
【0037】
一方、図4のグラフにおける左側の(a)の棒は、測定されたアンモニアガス濃度のピ
ーク値の非便秘者12人の平均値を示す。そして、それの右隣の(b)の棒は、それの便
秘者6人の平均値を示す。
【0038】
この第2測定実験によれば、便秘者の排泄ガスの水素ガス濃度は、200ppm程度で
あるのに対し、非便秘者のそれは1500〜1800ppm程度と大幅に違う。
【0039】
また、この第2測定実験によれば、非便秘者の排泄ガスのアンモニアガス濃度は、9p
pm程度であるのに対し、便秘者のそれは、20ppm程度と違いはある。しかし、その
違いは、2倍程度であり、水素ガス濃度のそれと比べると大分違う。従って、腸内の健康
状態を精度良く判定するために、水素ガス濃度を測定することは有効であることが言える

【0040】
図5は、ユーザが便座装置1の便座7に着座してから便鉢3内に排泄し離座するまでの
水素ガス濃度のレベル変化の一例を示す。
【0041】
この図に示す直交座標系の横軸は、時間を表す。一方、縦軸は、水素ガスセンサ13か
ら出力された信号の電圧レベルを表し、水素ガス濃度に対応している。なお、縦軸は、水
素ガスセンサ13の種類に応じて、他の変数、例えば、抵抗値であっても良いし電流値で
あっても良い。
【0042】
この図に示すグラフによれば、ユーザが着座した時点(t1)から離座した時点(t2
)までの間に測定され続けた電圧レベルには、少なくとも一度のピークが来ることがわか
る。これは、便鉢3内に初めて排泄物が排泄されたことによって生じたものであると考え
られる。
【0043】
なお、この図には、電圧レベルのベースラインが示されているが、そのベースラインは
、例えば、予め制御装置11内の記憶部23に登録されたものであっても良いし、初めて
検出された(つまり時点t1で検出された)電圧レベルであっても良い。
【0044】
図6は、水素ガス濃度のレベル変化のバリエーション例を示す。
【0045】
基本的な水素ガス濃度変化のグラフを実線で示す。この濃度変化では、電圧レベルのピ
ークは一回である。また、ピーク時の電圧レベルの高さは、それのベースラインよりも大
幅に高い。
【0046】
それに対し、水素ガス濃度変化のバリエーションとしては、例えば、一点鎖線で示すグ
ラフのように、電圧レベルのピークが2回来るものや、二点鎖線で示すグラフのように、
ピーク時の電圧レベルの高さがそのベースラインに比べてあまり高くないものがある。
【0047】
いずれにしても、最初に検出されたピーク電圧レベルが最も高い電圧レベルであること
が多い。このため、最初に検出されたピーク電圧レベルを利用することが妥当であると考
えられる。
【0048】
以下、本実施形態に係る便座装置1において行われる処理流れを説明する。その前に、
まず、腸内菌バランスと水素ガス濃度との関係を説明する。
【0049】
図7は、腸内菌バランスと水素ガス濃度との関係を表す概念図を示す。
【0050】
この図に示す直交座標系の横軸は、電圧レベルの最高値(換言すれば、水素ガス濃度の
最高値)を表し、縦軸は、腸内菌バランスを推定するためのパラメータ(以下、「腸内パラメータ」と言う)として採用された腸内菌の総数のうちの日和見菌数の割合、詳細に言えばバクテロイデス菌数の割合(以下、「バクテロイデス割合」と言う)を表す。Y軸が上にいくことはバクテロイデス菌数の割合が高いことであり、腸内菌バランスが悪いということである。
【0051】
また、横軸の電圧レベル最高値の範囲は、縦軸のバクテロイデス割合の値に応じて、複数のサブ範囲に分けられている。そして、複数のサブ範囲の各々に、適合する腸内菌バランスの良し悪しが対応付けられている。例えば、Xが第1のセンサ信号閾値Va以上(換言すれば、バクテロイデス割合Yがバクテロイデス割合閾値Ba以下)の範囲を第1のサブ範囲とされ、Xが第1のセンサ信号閾値Va未満で(換言すれば、バクテロイデス割合Yがバクテロイデス割合閾値Ba以上)の範囲を第2のサブ範囲とされている。そして、第1のサブ範囲に、腸内菌バランスが良いことが対応付けられ、第2のサブ範囲に、腸内菌バランスが悪いことが対応付けられている。このような、複数のサブ範囲及び複数のサブ範囲の各々に対応した腸内菌バランスに関する情報は、腸内菌バランス判定用付属情報71として、記憶部23に格納されている。
【0052】
なお、図では、アルファベット「P」を含んだ信号値範囲が、第1のサブ範囲、換言す
れば、腸内菌バランスが良いと判定される範囲であり、アルファベット「Q」を含んだ信号値範囲が、第2のサブ範囲、換言すれば、腸内菌バランスが悪いと判定される範囲である。
【0053】
また、水素ガスセンサ信号値と腸内パラメーター対応関係は一次式や二次式であってもよい。
【0054】
図8は、ユーザの動作と、その動作に伴って行われる便座装置1の処理流れを示す。
【0055】
ユーザが便座7に着座した場合(ステップS1)、ユーザが着座したことを表す信号が
着座センサ17から制御装置11の処理部21に入力される(S2)。
【0056】
処理部21は、着座センサ17からの信号値から、ユーザに着座されたことを検出した
ならば、水素ガスセンサ13を起動し(例えば水素ガスセンサ13の電源をターンオンし
)、水素ガス濃度の測定、具体的には、水素ガスセンサ13から入力された信号値(以下
、「水素ガスセンサ信号値」と言う)V及びそれの検出時刻Tを記憶部23に書込むこと
を開始する(以下、測定開始時刻をt1とし、その時刻t1で検出された水素ガスセンサ
信号値をV1とする)(S3)。なお、水素ガスセンサ13の出力は電源を入れてすぐに
安定しない場合には(例えば、安定するまでに電源投入後から数分を要する場合には)、
ガスセンサの起動は、着座の検出と同時ではなくて良い。例えば、水素ガスセンサ13は
連続運転していて、ユーザの着座が検出された場合に、測定や、水素ガスセンサ信号値の
記憶部が開始されても良い。
【0057】
処理部21は、測定開始から終了までの期間(換言すれば、ユーザが着座して排便し離
座するまでの間(S5及びS6))、一定時間おきに(例えば1秒おきに)、水素ガスセ
ンサ信号値V及びそれの検出時刻Tを、記憶部23に記録していく(S4)。これにより
、記憶部23には、時間の経過に伴う水素ガスセンサ信号値の変化が記録される。記憶部
23に記憶された各検出時刻及び水素ガスセンサ信号値を、図5或いは図6に例示した直
交座標系の平面にプロットすれば、図5或いは図6に例示したようなグラフができる。な
お、検出時刻は、年月日時分秒で表されても良いし、測定開始時刻を0秒としたときの相
対的な時刻で表されても良い。
【0058】
ユーザが便座7から離座した場合(S6)、ユーザが離座したことを表す信号が着座セ
ンサ17から制御装置11の処理部21に入力される(S7)。
【0059】
処理部21は、着座センサ17からの信号値から、ユーザに離座されたことを検出した
ならば、水素ガスセンサ信号値の測定を終了する(以下、測定終了時刻をt2とし、その
時刻t2で検出された水素ガスセンサ信号値をV2とする)(S8)。その際、処理部2
1は、水素ガスセンサ13の電源をターンオフしても良い。
【0060】
処理部21は、記憶部23にアクセスし、検出時刻T=t1〜t2の範囲における複数
の水素ガスセンサ信号値の中から、水素ガスセンサ信号値の最大値Vmaxを検索する(
S9)。そして、処理部21は、検索されたVmax又はVmaxからベースラインを差
し引いた値を測定値Vrとし、その測定値Vrを記憶部23に記録する(S10)。
【0061】
次に、処理部21は、記憶部23に記憶されている腸内菌バランス判定用付属情報71を参照して、記憶部23に記録した測定値Vrが、第1〜第2のどちらのサブ範囲に属するかを判別する。換言すれば、処理部21は、腸内菌バランスの判定を行う(S11)。そして、処理部21は、その判定結果を記憶部23に書込み(S12)、その書き込まれた判定結果をユーザに報知する(S13)。具体的には、例えば、測定値Vrが第2のサブ範囲に属することが判別された場合、処理部21は、腸内菌バランスが悪いことを、音声で出力するか、或いは、操作部27のディスプレイ画面29に表示する。なお、ディスプレイ画面(例えば液晶画面)29に表示する際、処理部21は、例えば、判定結果の内容に応じて、ディスプレイ画面29の背景画面の色を違えても良い。
【0062】
以上が、便座装置1が行う処理の流れである。
【0063】
なお、処理部21は、S3の測定開始処理を、着座が検出されたことに代えて、例えば
、操作部27の測定開始ボタン31Cが押下されたことが検出された場合に行なっても良
い。また、処理部21は、S8の測定終了処理を、離座が検出されたことに代えて、例え
ば、操作部27に設けられた測定終了ボタン31Bが押下されたことが検出された場合、
或いは、洗浄ボタン31Dが押下されて洗浄を開始した場合に行なっても良い。また、処
理部21は、S9〜S13の処理を、S8の測定処理終了後に自動的に行うことに代えて
、検査ボタン31Aが押下されたことが検出された場合に行なっても良い。また、処理部
21は、S8〜S13の処理を、ユーザの着座中に行う、例えば、洗浄ボタン31Dが押
下されて洗浄を開始した場合に行なっても良い。
【0064】
また、処理部21は、S11の処理では、腸内菌バランス判定用付属情報71の関係式に、測定値Vrを代入することで、その測定値Vrに対応したバクテロイデス割合Y=Brを抽出し、第1〜第2のサブ範囲のうち、抽出されたBrが属するサブ範囲に対応した腸内菌バランスを、ユーザの腸内状態であると判定しても良い。また、処理部21は、上述した測定が行われる都度に、腸内菌バランスBrを算出し、算出されたBrを、それを算出した時の日時と共に、記憶部23に履歴として蓄積していくようにしても良い。また、処理部21は、履歴として蓄積された腸内菌バランスBrを、要求に応答して、所定の端末に出力しても良い(例えば、プリンタに転送して印刷しても良いし、所定の情報処理端末(例えば医療機関に設置されているパーソナルコンピュータ)に送信しても良い)。
【0065】
腸内の状態を反映する排泄ガスを精度良く測定して腸内状態を判定するためには、腸内
の状態によって差が出易く且つ便鉢内に拡散されても測定精度に影響を及ぼしにくい濃度
範囲で検出されるガス成分を測定することが望ましい。腸内では、肝不全や発ガン等を誘
発する有臭ガス成分以外に、腸内のバクテリアによって、食物繊維などの未消化の炭水化
物を利用して、短鎖脂肪酸、炭酸ガス、水素ガス及びメタンガスが生成される。上述した
第1の測定実験結果によれば、排泄ガス中の水素ガスを便鉢内で測定したところ、排泄ガ
ス中の水素ガスを便鉢内で測定したところ、10ppm程度から数パーセントの範囲で水素ガ
スが検出され、図3に示したように平均で1500〜1800ppm程度の水素ガスが検出された。
これは、0から数ppmの低濃度であり且つ狭い濃度範囲でしか測定できない有臭ガス成
分に比べ、精度良く検出することができることを意味する。さらに、上述した第2の測定
実験結果によれば、便秘の有無等の腸内状態により、水素ガスと有臭ガスとでは、排出量
に大幅な違い(例えば10倍程度の違い)があり、水素ガスを測定した方が腸内状態を判
定し易いことがわかった。すなわち、上述した実施形態によれば、測定対象が水素ガスな
ので安定して測定することができ、且つ、精度良く腸内状態を判定することができる。
【0066】
また、上述した実施形態によれば、水素ガスセンサ信号値と腸内パラメータ(上記例で
はバクテロイデス割合)との対応関係を表した腸内健康度判定用テーブル71に基づいて、腸内状態が判定される。これにより、ユーザは、排泄された便を採取して専門機関に送る等の手間をかけなくても腸内菌バランスの判定をしてもらうことができる。
【0067】
また、上述した実施形態によれば、ユーザが便座装置1の傍にいる間に(例えばユーザ
が離座した直後に)、便鉢3に存在する排泄ガスに含まれる水素ガスのセンサ信号値に基
づいて腸内状態が判定されてユーザに報知される。これにより、ユーザは、排便をして便
座装置1の傍にいる間に、自分の腸内菌バランスの判定結果を知ることができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態及び変形例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る装置が適用された便座装置の斜視図である。
【図2】図1に示した便座装置1が備える制御装置11の構成例を示すブロック図である。
【図3】水素ガス濃度の第1測定実験結果を示すグラフである。
【図4】水素ガス濃度の第2測定実験結果を示すグラフである。
【図5】ユーザが便座装置1の便座7に着座してから便鉢3内に排泄し離座するまでの水素ガス濃度のレベル変化の一例を示す。
【図6】水素ガス濃度のレベル変化のバリエーション例を示す。
【図7】腸内菌バランスと水素ガス濃度との関係を表す概念図を示す。
【図8】本発明の一実施形態におけるユーザの動作と、その動作に伴って行われる便座装置1の処理流れを示す。
【符号の説明】
【0070】
1…便座装置
3…便鉢
5…便器
7…便座
9…脱臭装置
10…脱臭ダクト
A…気体吸入口
11…制御装置
13…水素ガスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の便鉢に存在する排泄ガス中の所定ガス成分を検出するガスセンサから出力される
信号値と、ユーザの腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す対応データを記憶
する記憶部と、
前記ガスセンサから出力された信号値に対応した前記腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出してユーザに報知する処理部と
を備える腸内状態報知装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは、水素ガスを検出する水素ガスセンサである請求項1記載の腸内状態報知装置。
【請求項3】
前記対応データには、前記信号値とそれの閾値との比較の結果に応じた腸内菌バランスに関する情報が記録されており、
前記処理部は、前記ガスセンサから出力された信号値と前記閾値との比較の結果に応じ
た腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出する、
請求項1記載の腸内状態報知装置。
【請求項4】
便器の便鉢に存在する排泄ガス中の所定ガス成分を検出し、それの検出結果に応じた値
の信号を出力するガスセンサから出力された信号値を取得するステップと、
前記出力される信号値と、ユーザの腸内菌バランスに関する情報との対応関係を表す
対応データから、前記取得された信号値に対応した腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出するステップと、
前記抽出された腸内菌バランスに関する情報をユーザに報知するステップと
を有する腸内状態報知方法。
【請求項5】
前記対応データには、前記信号値とそれの閾値との比較の結果に応じた腸内菌バランスに関する情報が記録されており、
前記抽出するステップでは、前記ガスセンサから出力された信号値と前記閾値との比較
の結果に応じた腸内菌バランスに関する情報を前記対応データから抽出する、
請求項4記載の腸内状態報知方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−89857(P2007−89857A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283880(P2005−283880)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】