腹膜透析溶液の試験方法
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することを含む。試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分を第1のアッセイに加える。ろ液部分を第2のアッセイに加える。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々に試薬を加える。試薬は、炎症誘発性応答を起こさせる。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定する。第1のアッセイの炎症誘発性応答を第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が患者での使用に適するかどうか判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に透析溶液の試験法に関する。より詳細には、本開示は、腹膜透析溶液およびその成分を試験する方法、ならびにそれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非経口医薬品は、汚染性の物質、例えば腹膜炎を引き起こす可能性があり得る物質を含まないことが要求される。腹膜炎、すなわち腹膜の炎症は、腹膜透析の主な合併症である。腹膜炎は、腹腔内細菌感染によって起こり得る。あるいは、化学的刺激物または異物刺激物に起因する腹膜炎が、無菌性の腹膜炎(aseptic peritonitis)または無菌性腹膜炎(sterile peritonitis)として公知である。無菌性腹膜炎には、濁った透析物の発生が付随する。腹膜透析溶液の既存の検査にもかかわらず、無菌性の腹膜炎の発生がまだ出現する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、腹膜透析溶液成分を試験する方法、およびそれを用いる方法に関する。一実施形態では、本方法は、ろ過工程と組み合わせたサイトカイン検出試験などの炎症誘発性応答を用いて、透析溶液成分中の汚染物の存在について試験する。
【0004】
一実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することを含む。試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分を第1のアッセイに加える。ろ液部分を第2のアッセイに加える。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々に試薬を加える。試薬は、炎症誘発性応答を起こさせる。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定する。第1のアッセイの炎症誘発性応答を第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定する。
【0005】
一実施形態では、炎症誘発剤は、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される。サイトカインは、インターロイキン−6であってよい。
【0006】
一実施形態では、上記試料は第1の試料であり、上記方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供すること、第1の試料を第3のアッセイに加えること、試薬を第3のアッセイに加えること、および第3のアッセイの炎症誘発性応答を測定することをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、試薬は、末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む。
【0008】
一実施形態では、指定された分子量カットオフは、約30kDa以上かつ約100kDa以下である。指定された分子量カットオフは、約50kDa以上かつ約100kDa以下でよい。
【0009】
一実施形態では、pg/mLで表した、第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が許容される。pg/mLで表した、第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が拒絶される。
【0010】
一実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は、イコデキストリンである。
【0011】
別の実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第1の試料を提供することを含む。残留部分およびろ液部分の各々に試薬を加える。試薬は、インターロイキン−6応答を起こさせる。第1の試料によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定する。グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供する。第2の試料を約30kDa以上かつ約100kDa以下の分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分およびろ液部分の各々に試薬を加える。残留部分およびろ液部分の各々によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定する。残留部分によって誘導されるインターロイキン−6応答を、ろ液部分によって誘導されるインターロイキン−6応答と比較して、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうかを判定する。
【0012】
一実施形態では、pg/mLで表した、ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%以上である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が許容される。pg/mLで表した、ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%未満である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が拒絶される。
【0013】
一実施形態では、腹膜透析溶液を患者に提供する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適する場合、そのグルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を用いて腹膜透析溶液を作製すること、および患者でその腹膜透析溶液を用いることを含む。あるいは、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は、それが使用に適していない場合破棄してもよく、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料で試験工程を繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の利点は、改善された腹膜透析溶液を提供することである。
【0015】
本開示の別の利点は、腹膜透析溶液中の汚染物の存在を判定するための検出プロトコルを使用する、腹膜透析溶液の改善された製造および使用方法を提供することである。
【0016】
本開示のさらに別の利点は、腹膜透析療法を受ける患者で腹膜炎を予防するために使用することができる、改善された検査手順を提供することである。
【0017】
本開示のさらに別の利点は、ペプチドグリカンの存在を判定するための検出手順をその製造で利用する、改善されたイコデキストリン組成物を提供することである。
【0018】
本開示の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面に記載され、またそれらから明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1および2のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図2】図2は、実施例3、4および5のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図3】図3は、実施例3、4および5のインターロイキン−1a応答を例示するチャートである。
【図4】図4は、実施例3、4および5のインターロイキン−1b応答を例示するチャートである。
【図5】図5は、実施例3、4および5の腫瘍壊死因子−α応答を例示するチャートである。
【図6】図6は、実施例3、4および5のインターロイキン−10応答を例示するチャートである。
【図7】図7は、実施例3、4および5のマクロファージ炎症タンパク質1a応答を例示するチャートである。
【図8】図8は、実施例3、4および5のマクロファージ炎症タンパク質1b応答を例示するチャートである。
【図9】図9は、実施例3、4および5の顆粒球コロニー刺激因子応答を例示するチャートである。
【図10】図10は、実施例3、4および5の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子応答を例示するチャートである。
【図11】図11は、実施例6および7のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図12】図12は、実施例8および9のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図13】図13は、実施例10および11のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図14】図14は、実施例12および13のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、ろ過工程と組み合わせた炎症誘発性応答試験を用いて、透析溶液成分中の汚染物の存在について試験する方法に関する。試験は、任意の所望の物質で実施することができるが、一般的に透析液またはその成分で実施される。透析溶液は、患者から老廃物を除去するための様々な形態の透析で用いられる。透析溶液は、腹膜透析、血液透析または他の任意の透析療法用に特別に処方されて、それに適したものであり得る。透析溶液は、浸透圧剤、緩衝剤、電解質またはそれらの組合せなどの、1つまたは複数の適する透析成分(例えば透析溶液の成分または構成要素)を含むことができる。本明細書で開示される方法は、任意の種類の透析溶液と用いることができ、特に、イコデキストリンなどのグルコースポリマー、グルコースポリマー誘導体などを含む腹膜透析溶液のために有用である。
【0021】
細菌細胞壁の主要成分である様々な化合物は、透析溶液製品を汚染し得、従来の方法で検出されない。この点に関しては、腹膜透析溶液を用いる患者で無菌性腹膜炎を予防するために、細菌成分についての試験を用いることができる。炎症誘発性応答は、サイトカインなどのマーカーを用いて測定することができる。サイトカインの分泌は、細菌性および非細菌性の物質を含む多くの物質に対する一般的な細胞応答である。リポポリサッカライド(LPS)およびペプチドグリカン(PG)などの多くの公知の細菌性成分が、ヒト細胞でサイトカインの生成を刺激する。細菌成分への応答に通常関連するサイトカインには、インターロイキン−1a(IL−1a)、インターロイキン−1b(IL−1b)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、マクロファージ炎症タンパク質1aおよびマクロファージ炎症タンパク質1b(MIP−1a、MIP−1b)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が含まれる。サイトカインマーカーおよびその適切な選択は、当分野の技術者に公知である。
【0022】
細菌成分の存在を検出するために、物質のサイトカイン応答を測定する試験がすでに開発されている。先ず物質をろ過し、それを分子量に基づいて成分に分離し、次に、それらの成分によって誘導される炎症誘発性応答を測定することによって、より精確な結果を得ることができることが見い出されている。特に、患者で無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が高い汚染物を物質が含むかどうかに関して、試験はより良好な指標を提供する。
【0023】
一般に、試験は、透析溶液成分の試料、例えばグルコースポリマーもしくはグルコースポリマー誘導体、またはその溶液で実施される。試料は、それが炎症誘発性応答を開始するかどうかを判定するために先ず分析することができる。炎症誘発性応答があまり示されない場合、透析溶液成分は患者で使用することが安全であるとみなすことができる。かなりの炎症誘発性応答が示される場合、透析溶液成分が無菌性腹膜炎を誘発する可能性が高いかどうか判定するために、さらなる試験を行うことができる。透析溶液成分の第2の試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分およびろ液部分の各々の炎症誘発性応答を測定して、各部分の炎症誘発性試験結果を得る。次に、残留部分の炎症誘発性応答をろ液部分の炎症誘発性応答と比較して、透析溶液が使用に適するかどうかを判定する。
【0024】
炎症誘発性応答は、任意の適する試験を用いて測定することができる。物質によって誘導される炎症誘発性応答は、アッセイ系を用いて測定することができる。1つのタイプの試験では、サイトカイン応答を引き起こす試薬を、アッセイにおいて透析溶液試料に加える。試薬は、末梢血単核細胞(PBMC)または単核球細胞系細胞を含むことができる。特定の1つのタイプの適する試験は、アッセイに試験キットを含む。試験物質およびPBMCを、アッセイに加える。PBMCは、健康なドナーの新鮮なヒト血液から好ましくは単離される。次に、アッセイを細胞と一晩インキュベートする。培地を収集し、所望の種類の分泌されたサイトカインを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)技術を用いて定量化する。そのような試験の使用は、当技術分野で周知である。
【0025】
一実施形態では、インターロイキン−6応答を測定する試験を試料で実施することができる。試験キットは、R&D Systems,Inc.、Minneapolis、MN(USA)などの多数のベンダーから市販品を入手可能である。
【0026】
ろ過工程を実施するために、任意の適するろ過方法を用いることができる。ろ過を実施するために適する装置は、Amicon Ultra−4遠心ろ過器ユニット(Millipore(商標)から入手可能)である。ろ過器ユニットは、名目分子量限界(NMWL)と命名される分子量カットオフを含むことができる。分子量カットオフは、指定された分子量を超える分子を保持する装置の能力を示す。例えば、分子量カットオフが5KDaのろ過器は、5KDaより小さな分子種が、装置の遠心分離の後に膜を通過し、ろ液に存在することを可能にする。溶液が分子量カットオフに近い分子を含む場合、これらの分子は部分的にろ過器を通過することができる。試験試料をろ過器ユニットに加えて遠心分離し、ろ液および残留試料を得る。残留物はろ過器媒体に保持され、ろ液は遠心管に収集される。
【0027】
溶液は、約10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDaの分子量カットオフおよび他の適切な分子量カットオフで、上記のろ過工程にかけることができる。ろ過器の分子量カットオフは、可能な汚染物の大きさに基づいて、または他の要素に基づいて選択することができる。ろ液および残留物は、各レベルで炎症誘発性応答について試験する。透析溶液成分が使用に適するかどうか判定するために、試験結果を比較する。判定をするために、様々な標準を用いることができる。特定の分子量カットオフの試験結果が、ろ液および残留物で同じである(汚染物がろ過器によって優先的に保持されないことを示す)場合、透析溶液成分は患者で無菌性の腹膜炎を引き起こさないことがわかっている。特定の分子量カットオフでの残留物の炎症誘発性応答が、ろ液の炎症誘発性応答より十分に大きい(汚染物の大きさが分子量カットオフより大きいことを示す)場合、透析溶液成分は患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことがあり、したがって拒絶されなければならない。あるいは、大きな分子量を有する種類が残留物に存在するかどうかを判定するために、分子量カットオフろ過器による複数の洗浄またはリンス工程を用いることができる。そのような残留物の試験が高いIL−6応答または他の炎症誘発性応答を引き起こす場合、透析溶液は拒絶される。
【0028】
30kDa〜100kDaの範囲の汚染物が無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が特に高いと考えられているが、ろ過器によって優先的に保持されない汚染物は無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が低い。例えば、ペプチドグリカンは無菌性腹膜炎を引き起こすことが示されている。本明細書で開示される方法は、汚染された溶液の放出を予防するために、透析溶液またはその成分中のペプチドグリカンを検出することができる。
【0029】
サイトカイン応答は、一般的にpg/mLで表される。一実施形態では、物質の適合性を判定するために、以下の試験基準を用いることができる。物質の炎症誘発性応答が陰性である(約100〜200pg/mL未満、または陰性対照とほぼ同じ)場合、その物質は使用に適する。残留部分が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液部分が陰性の炎症誘発性応答を示す場合、その物質は拒絶される。ろ液および残留部分の両方が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液の炎症誘発性応答が残留物の炎症誘発性応答よりも大きい場合、その物質は使用が許容される。ろ液および残留部分の両方が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液の炎症誘発性応答が残留物の炎症誘発性応答未満である場合、残留物の炎症誘発性応答に対するろ液の炎症誘発性応答の比が調べられる。ろ液部分の炎症誘発性応答が残留部分の炎症誘発性応答の50%以上である場合、透析溶液成分は使用が許容されるとみなされる。ろ液部分の炎症誘発性応答が残留部分の炎症誘発性応答の50%未満である場合、透析溶液成分は使用者において無菌性腹膜炎を引き起こすことがあり、したがって拒絶され、破棄されなければならない。可能な汚染源によって、他の基準を用いることができる。
【0030】
物質が適するかどうかを判定する基準は、特定の実験パラメータによって変えてもよい。これは、ろ液および残留物中の分子の相対濃度が、サイズおよび容量、回転時間および適用遠心力などの特定の種類の分子量カットオフろ過器によって決まるからである。汚染物由来の用量依存性応答は、S字型関数を示すことができる。したがって、応答が飽和点に到達した場合、希釈試料を用いなければならないだろう。
【0031】
一実施形態では、本開示は、腹膜透析溶液の製造方法を提供する。本方法は、任意の適する数および種類の処理段階を含むことができる。例えば、上記処理は、イコデキストリンなどのグルコースポリマーを提供すること、グルコースポリマー試料をろ過して残留部分およびろ液部分を得ること、残留部分およびろ液部分の各々の炎症誘発性応答を測定すること、残留部分の炎症誘発性応答をろ液部分の炎症誘発性応答と比較すること、およびIL−6応答が所定の基準に従っていると判定される場合、グルコースポリマーを用いて腹膜透析溶液を作製することを含む。IL−6応答が所定の基準に従っていないと判定される場合、汚染物を除去するか、十分に低いレベルの汚染物を達成するためにグルコースポリマーをさらに処理することができる。グルコースポリマーは、任意の適する方法でさらに処理することができる。一実施形態では、グルコースポリマーは、任意の適する数および種類の分離装置、例えばペプチドグリカンおよび/または同様なものに特異的に結合する樹脂を有する親和性カラムで処理することができる。
【0032】
本開示に従って透析溶液を製造する方法は、他の適する透析原料または透析溶液試験手順と併用することもできる。適する手順の例示的な例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2006年10月10日に発行されたMETHODS AND COMPOSITIONS FOR DETECTION OF MICROBIAL CONTAMINANTS IN PERITONEAL DIALYSIS SOLUTIONSと題する米国特許第7,118,857号に見い出すことができる。例えば、そのような試験手順は、透析原料または透析溶液を試験するために一般に用いることができる。
【0033】
透析溶液は、腹膜透析、血液透析または他の任意の透析療法用に特別に処方されて、それに適したものであり得る。透析溶液は、例えば、単一容器中の単一の透析溶液として、または別々に収納された容器もしくは多室容器の透析パーツ(dialysis part)として用いることができる。透析溶液は、任意の適する滅菌技術、例えばオートクレーブ、蒸気、紫外線、高圧、ろ過またはそれらの組合せを用いて滅菌することができる。
【0034】
透析溶液の即時利用可能な製剤は、いくつかの適する方法で調製することができる。例えば、第1および第2の透析パーツは、混合されて混合溶液を形成するまで互いに別々に、例えば多室容器の油圧で連結された別々の室に保存することができる。この点に関しては、即時利用可能な製剤は、容器の1室内でその別々の透析パーツを混合することによって、容器の中で調製することができる。このことは、透析パーツのすべてまたは少なくとも一部を手動で容器に注入して、混合溶液を形成する必要性を効果的に排除することができ、このように、即時利用可能な製剤を滅菌条件下で容易に調製することができることを保証する。
【0035】
さらに、混合する前に透析パーツの1つを患者と直接流体連通させることができ、一方で、混合する前に他の透析パーツを患者と直接流体連通させることができないように、容器を構成することができる。物理的に患者と直接流体連通させることができない単一の溶液は、それが最初に他の成分と混合されない限り患者に供給することができないので、このことは、本開示の即時利用可能な製剤の調製および投与に関してさらなる安全レベルを提供することができる。この点に関しては、患者と物理的に直接流体連通させることができない単一の溶液が、カリウム、ナトリウムなどの構成要素の望ましくない濃度を偶然に有する場合、この構成は、望ましくないレベルの構成要素が患者に供給されないか投与されないことを必然的に保証するであろう。
【0036】
個々の透析パーツを効果的に調製し、投与することができるように、マルチパーツ透析溶液の別々の透析パーツを任意の適する様式で収容または含有させることができることを理解するべきである。2つのパーツを収容するために、適する流体連通機構によって連結される別々の容器(例えば、フラスコまたはバッグ)などの様々な容器を用いることができる。2つ以上の別々の透析パーツは、別々に滅菌および保存することができる。
【0037】
透析溶液は、浸透圧剤、緩衝剤、電解質またはそれらの組合せなどの、1つまたは複数の適する透析成分(例えば透析溶液の成分または構成要素)を含むことができる。多種多様の適する酸性および/または塩基性の剤を、浸透圧、緩衝および/または電解質の溶液または濃縮液のpHを調節するために利用することもできる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素、ヨウ化水素、水酸化ナトリウムなど、またはそれらの組合せを含む、様々な無機の酸および塩基を利用することができる。
【0038】
浸透圧剤の例には、グルコース、フルクトース、グルコースポリマー(例えばマルトデキストリン、イコデキストリン、シクロデキストリン、トレハロース)、グルコースポリマー誘導体(例えば改変デンプン、ヒドロキシエチルデンプン)、ポリオール、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、アミノ糖、N−アセチルグルコサミン(NAG)、グリセロールおよび/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。緩衝剤の例には、重炭酸塩、乳酸/乳酸塩、ピルビン酸/ピルビン酸塩、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、アミノ酸、ペプチド、クレブス回路の中間体および/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。
【0039】
電解質の例には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物および/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。例えば、透析溶液は、約100〜約140mEq/LのNa+、約70〜約130mEq/LのCl−、0.1〜約4.0mEq/LのCa2+、0.1〜約4.0mEq/LのMg2+および/または0.1〜約4.0mEq/LのK+の1つまたは複数の電解質を含むことができる。
【0040】
透析溶液は、溶液の浸透圧を生理的浸透圧より高く(例えば約285mOsmol/kgより高く)保つために、浸透圧剤などの透析成分を好ましくは含むことができる。例えば、グルコースは速やかな限外ろ過速度を提供するので、最も一般的に用いられる浸透圧剤である。アミノ酸などの他の適する種類の浸透圧剤は、グルコースに加えて、またはその代用品として用いることができる。
【0041】
腹膜透析溶液で浸透圧剤の役目を果たすことができる化合物の別のファミリーは、イコデキストリン、マルトデキストリン、ヒドロキシエチルデンプンなどの、グルコースポリマーまたはそれらの誘導体のファミリーである。これらの化合物は浸透圧剤としての使用に適するが、それらは、特に滅菌および長期保管の間、低pHおよび高pHに感受性であり得る。イコデキストリンなどのグルコースポリマーは、腹膜透析溶液でグルコースに加えて、またはその代わりに用いることができる。一般に、イコデキストリンは、トウモロコシデンプンの加水分解から誘導されるグルコースのポリマーである。それは、12〜20,000ダルトンの分子量を有する。イコデキストリン中の大多数のグルコース分子は、α(1−4)グルコシド結合(>90%)で直線状に連結されるが、小さな分画(<10%)はα(1−6)結合によって連結される。
【0042】
透析溶液または成分は、重炭酸塩および酸などの緩衝剤を含むこともできる。重炭酸塩は、ガスバリアオーバーパウチなどを使わずに安定なままであることができるように、アルカリ性溶液を含むことができる。個々の重炭酸塩溶液は、約8.6を超えるpH範囲、好ましくは約9を有することができる。重炭酸塩溶液部分のpHは、任意の適する種類の成分、例えば水酸化ナトリウムおよび/または同様なもので調節することができる。本開示の重炭酸塩溶液の例示的な例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2001年10月30日に公布されたBICARBONATE−BASED SOLUTION IN TWO PARTS FOR PERITONEAL DIALYSIS OR SUBSTITUTION IN CONTINUOUS RENAL REPLACEMENT THERAPYと題する米国特許第6,309,673号に見い出すことができる。
【0043】
酸は、乳酸、ピルビン酸、酢酸、クエン酸、塩酸などの1つまたは複数の生理的に許容される酸を含むことができる。酸は、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、約1以下および他の任意の適する酸性pHのpHを有する個々の溶液であることができる。酸性溶液における、乳酸などの有機酸の単独使用、または別の適する酸、例えば塩酸などの適する無機の酸、別の適する有機酸(例えば乳酸/乳酸塩、ピルビン酸/ピルビン酸塩、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩)および同様なものとの併用は、上記溶液をより生理的に許容できるものにすることができる。
【0044】
前に述べたように、本開示の透析溶液は、様々な適する用途で用いることができる。例えば、透析溶液は、自動化腹膜透析、連続的外来腹膜透析、連続流動腹膜透析などの腹膜透析の間用いることができる。本開示は、腎不全を治療するための多種多様の適する透析療法で用いることができることを理解すべきである。
【0045】
一実施形態では、慢性の腎不全または疾患を有する患者のために透析療法を提供する方法で本開示を利用することができるが、本開示は、急に透析が必要な場合、例えば緊急救命室の状況で用いることができることを理解するべきである。最後に、当業技術者が理解するように、間欠形態の療法(例えば、血液ろ過、血液透析、腹膜透析および血液透析ろ過)を、施設内、自己/限定看護ならびに家庭場面で用いることができる。
【実施例】
【0046】
限定ではなく例として、以下の実施例は本開示の様々な実施形態を例示するものであり、腹膜透析溶液で行われた実験的試験をさらに例示する。
【0047】
実験手順
物質がサイトカイン応答を誘発するかどうかを判定するために、標準のインターロイキン−6(IL−6)応答を実施した。一般的な実験のために、ドナーにつき合計約75mLの全血を収集した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、細胞濃度を測定した。
【0048】
PBMC細胞数は細胞カウンターを用いて測定し、約8×106細胞数/mLの濃度に調節した。細胞懸濁液の一定分量100μLを各ウェルに加え、対照品または試験品で作製した100μLの溶液を加えた。4体の血液ドナーによる各実験において、合計4反復の試験(試料または対照溶液につき4個のウェル)を実施した。細胞ならびに試験および対照溶液で調製した96ウェルプレートを、5%CO2のCO2インキュベータ内で一晩インキュベートした。
【0049】
インキュベーションの後、430×gで15分間プレートを遠心分離した。上清を収集した。上清中のIL−6の濃度は、QuantiGlo化学発光ELISAキットを用いて測定した。発光読み取りのために、SpectraMax M2プレートリーダーをセットした。
【0050】
ろ過工程を実施するために、Amicon Ultra−4ろ過装置を用いた。Amicon Ultra−4ろ過装置(Millipore(商標)から)は、生体試料の濃縮および高分子成分の精製のために設計されている。Amicon Ultra−4装置は、低タンパク質結合性再生セルロースで作られ、名目分子量限界(NMWL)によって特徴づけられる膜を含む。NMWL等級は、指定された分子量を超える分子を保持する装置の能力を示す。Ultra−4ろ過装置は、濃縮された残留物(ろ過器ユニットに収集されたもの)およびろ過器を通ったろ液(遠心管に収集されたもの)の単回遠心回収(single spin recovery)を可能にするように設計されている。
【0051】
約4mLの試験試料をろ過器ユニットに充填し、約2mLのろ液が得られるように所定時間遠心回転させた。ろ液および残留物の両方を収集し、0.2mの注射ろ過器でろ過してからPBMC−IL−6アッセイにかけた。30kDa、50kDaおよび100kDaでNMWLろ過器を用いて、各試料を別々に試験した。
【0052】
結果
上記の手順を用いて試験した試料には、陽性対照(比較例A)および陰性対照(比較例B)が含まれた。比較例Aは、0.5EU/mLのリポポリサッカライド溶液であった。比較例Bは、2%血漿を有するRPMIであった。試験は、異なるバッチのイコデキストリンに基づく腹膜透析溶液から調製された腹膜透析溶液試料でも実施した(実施例1および2)。
【0053】
実施例1および2で用いた試料は、腹膜透析のために治療した患者で前に用いたイコデキストリンベースの腹膜透析溶液のバッチからのものであった。実施例1の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた一部の患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことが見出されていた。実施例2で調製した腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた患者で無菌性の腹膜炎を引き起こしていなかった。
【0054】
各溶液の試料のIL−6応答は、上記の手順を用いて測定した。さらに、30kDa、50kDaおよび100kDaの分子量カットオフで前述の手順を用いて、実施例1および2の溶液をろ過工程にかけた。ろ液および残留物を、各カットオフレベルでIL−6応答について試験した。結果を、図1に例示する。図1の各バーは、試料のアイデンティティーにより標識されている。ろ過されてない試料のIL−6結果は、「ろ過なし」と表示する。残留物試料のIL−6結果は「R」と命名し、ろ液試料のものは「F」と命名した。標識の最後の数字は、試験で用いたろ過器のNMWLを示す。
【0055】
図1に例示するように、予想通り比較例Aが強いIL−6応答を示し、比較例Bが事実上IL−6応答を示さなかったことがわかる。実施例1および2の未ろ過溶液は、両方とも高いIL−6応答(それぞれ約24,000pg/mLおよび36,000pg/mL)を示した。したがって、試験結果は、実施例1および2の溶液の両方が、IL−6応答を引き起こしたあるものによって汚染されていたことを示す。実施例1で用いたイコデキストリンだけが無菌性の腹膜炎を引き起こしたので、溶液が無菌性の腹膜炎を引き起こすかどうかを判定するのに、IL−6試験単独では不十分であったことが明らかである。
【0056】
実施例1の残留物およびろ液の結果については、NMWLレベルに従い、残留物およびろ液のIL−6応答の間にかなりの差が存在することがわかる。30kDaおよび50kDaの試料については、残留物のIL−6応答は、ろ液のIL−6応答より数桁高い。100kDa試料については、IL−6応答の差はより小さい。分子量に基づく応答でのこの差は、無菌性の腹膜炎を引き起こした汚染物が30kDa〜100kDaの分子量をおそらく有することを示す。
【0057】
対照的に、実施例2については、NMWLレベルに関係なく、ろ液および残留物の試料についてのIL−6応答結果に小さな差が見られるだけである。これらの結果は、ろ過にもかかわらず残留物およびろ液の間に汚染物が比較的同等に分配されたままであり、この汚染物が30kDa未満の分子量を有することを示す。
【0058】
サイトカイン応答試験は、比較例C(陽性対照)、比較例D(陰性対照)、および異なるバッチのイコデキストリンに基づく腹膜透析溶液から調製された追加の透析溶液試料について実施した(実施例3、4および5)。実施例3、4および5で用いた試料は、腹膜透析のために患者で前に用いた、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液のバッチからのものであった。実施例3および4の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた一部の患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことが見出されていた。実施例5の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた患者で無菌性の腹膜炎を引き起こしていなかった。
【0059】
IL−6、IL−1a、IL−1b、TNF−a、IL−10、MIP−1a、MIP−1b、G−CSFおよびGM−CSFのサイトカイン応答は、それぞれ図2〜10に示す。各場合において、比較例Cおよび実施例3、4および5は各々かなりのサイトカイン応答を示し、比較例D(陰性対照)は非常に低い応答を示したことがわかる。
【0060】
実施例6および7は、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液の異なるバッチからの透析溶液試料であった。30kDa、50kDaおよび100kDaの分子量カットオフで前述の方法を用いて、実施例6および7の溶液をろ過工程にかけた。ろ液および残留物を、各カットオフレベルでIL−6応答について試験した。図11は、実施例6および7の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。
【0061】
実施例6については、NMWLレベルに関係なく、IL−6応答はろ液および残留物試料の両方について極小であった。これらの結果は、ろ過にもかかわらず、残留物およびろ液の間に汚染物が比較的同等に分配されたままであったことを示す。したがって、実施例6の試料は、使用に適していた。
【0062】
実施例7については、30kDaでろ過した試料については、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりもかなり大きかったことがわかる。このことは、30kDaを超える分子量の汚染物が、実施例7の溶液に存在したことを示す。したがって、実施例7の透析液は、使用に適していなかった。
【0063】
図12は、実施例8、実施例9、比較例D、比較例Eおよび比較例FのIL−6応答を例示する。実施例8および9は、イコデキストリンの異なる試料から調製された液体試料であった。比較例DはRPMIの陰性対照であって、比較例Eは汚染されていない腹膜透析液の陰性対照であって、比較例Fは汚染された腹膜透析液の陽性対照であった。試料は、10kDaおよび30kDaでろ過して試験した。実施例8および9の両方について、両方のろ過レベルで、ろ液のIL−6応答は残留物のIL−6応答よりも大きかったことがわかる。このことは、イコデキストリン中の汚染物がろ過器を通過したこと、したがって10kDa未満の分子量を有することを示す。したがって、イコデキストリンは使用に適した。
【0064】
図13は、比較例D、比較例E、比較例Fならびに実施例10および11の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。実施例10および11は、イコデキストリンの異なる試料から調製された液体試料であった。試料は、30kDa、50kDaおよび100kDaでろ過して試験した。実施例10については、IL−6応答は各分画で比較的低く(陰性対照、比較例DおよびEの応答に同等)、各分画は類似した応答を示した。したがって、イコデキストリンは使用に適した。実施例11については、30kDaおよび50kDaで、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりも大きかった。汚染物は30kDaを超える大きさであったので、イコデキストリンは使用に適していなかった。
【0065】
図14は、実施例12および13の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。実施例12および13は、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液の試料であった。試料は、30kDa、50kDaおよび100kDaでろ過して試験した。実施例12については、IL−6応答は各分画で比較的低く、各分画は類似した応答を示した。したがって、実施例12の腹膜透析液は、使用に適していた。実施例13については、30kDaで、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりも大きかった。汚染物は30kDaを超える大きさであったので、イコデキストリンは使用に適していなかった。
【0066】
これらの試験結果に基づいて、ろ過工程と一緒にサイトカイン応答試験を用いることは、透析溶液中の汚染物の存在について試験するための改善された方法を提供することがわかる。
【0067】
本明細書に記載される現在好ましい実施形態への様々な変更および改変が、当分野の技術者に明らかとなることを理解すべきである。そのような変更および改変は、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、およびその意図する利点を減らすことなくなされることができる。したがって、そのような変更および改変が、添付の請求項によってカバーされることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に透析溶液の試験法に関する。より詳細には、本開示は、腹膜透析溶液およびその成分を試験する方法、ならびにそれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非経口医薬品は、汚染性の物質、例えば腹膜炎を引き起こす可能性があり得る物質を含まないことが要求される。腹膜炎、すなわち腹膜の炎症は、腹膜透析の主な合併症である。腹膜炎は、腹腔内細菌感染によって起こり得る。あるいは、化学的刺激物または異物刺激物に起因する腹膜炎が、無菌性の腹膜炎(aseptic peritonitis)または無菌性腹膜炎(sterile peritonitis)として公知である。無菌性腹膜炎には、濁った透析物の発生が付随する。腹膜透析溶液の既存の検査にもかかわらず、無菌性の腹膜炎の発生がまだ出現する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、腹膜透析溶液成分を試験する方法、およびそれを用いる方法に関する。一実施形態では、本方法は、ろ過工程と組み合わせたサイトカイン検出試験などの炎症誘発性応答を用いて、透析溶液成分中の汚染物の存在について試験する。
【0004】
一実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することを含む。試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分を第1のアッセイに加える。ろ液部分を第2のアッセイに加える。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々に試薬を加える。試薬は、炎症誘発性応答を起こさせる。第1のアッセイおよび第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定する。第1のアッセイの炎症誘発性応答を第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定する。
【0005】
一実施形態では、炎症誘発剤は、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される。サイトカインは、インターロイキン−6であってよい。
【0006】
一実施形態では、上記試料は第1の試料であり、上記方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供すること、第1の試料を第3のアッセイに加えること、試薬を第3のアッセイに加えること、および第3のアッセイの炎症誘発性応答を測定することをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、試薬は、末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む。
【0008】
一実施形態では、指定された分子量カットオフは、約30kDa以上かつ約100kDa以下である。指定された分子量カットオフは、約50kDa以上かつ約100kDa以下でよい。
【0009】
一実施形態では、pg/mLで表した、第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が許容される。pg/mLで表した、第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が拒絶される。
【0010】
一実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は、イコデキストリンである。
【0011】
別の実施形態では、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第1の試料を提供することを含む。残留部分およびろ液部分の各々に試薬を加える。試薬は、インターロイキン−6応答を起こさせる。第1の試料によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定する。グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供する。第2の試料を約30kDa以上かつ約100kDa以下の分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分およびろ液部分の各々に試薬を加える。残留部分およびろ液部分の各々によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定する。残留部分によって誘導されるインターロイキン−6応答を、ろ液部分によって誘導されるインターロイキン−6応答と比較して、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうかを判定する。
【0012】
一実施形態では、pg/mLで表した、ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%以上である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が許容される。pg/mLで表した、ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%未満である場合、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は使用が拒絶される。
【0013】
一実施形態では、腹膜透析溶液を患者に提供する方法は、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適する場合、そのグルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を用いて腹膜透析溶液を作製すること、および患者でその腹膜透析溶液を用いることを含む。あるいは、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体は、それが使用に適していない場合破棄してもよく、グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料で試験工程を繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の利点は、改善された腹膜透析溶液を提供することである。
【0015】
本開示の別の利点は、腹膜透析溶液中の汚染物の存在を判定するための検出プロトコルを使用する、腹膜透析溶液の改善された製造および使用方法を提供することである。
【0016】
本開示のさらに別の利点は、腹膜透析療法を受ける患者で腹膜炎を予防するために使用することができる、改善された検査手順を提供することである。
【0017】
本開示のさらに別の利点は、ペプチドグリカンの存在を判定するための検出手順をその製造で利用する、改善されたイコデキストリン組成物を提供することである。
【0018】
本開示の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面に記載され、またそれらから明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1および2のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図2】図2は、実施例3、4および5のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図3】図3は、実施例3、4および5のインターロイキン−1a応答を例示するチャートである。
【図4】図4は、実施例3、4および5のインターロイキン−1b応答を例示するチャートである。
【図5】図5は、実施例3、4および5の腫瘍壊死因子−α応答を例示するチャートである。
【図6】図6は、実施例3、4および5のインターロイキン−10応答を例示するチャートである。
【図7】図7は、実施例3、4および5のマクロファージ炎症タンパク質1a応答を例示するチャートである。
【図8】図8は、実施例3、4および5のマクロファージ炎症タンパク質1b応答を例示するチャートである。
【図9】図9は、実施例3、4および5の顆粒球コロニー刺激因子応答を例示するチャートである。
【図10】図10は、実施例3、4および5の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子応答を例示するチャートである。
【図11】図11は、実施例6および7のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図12】図12は、実施例8および9のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図13】図13は、実施例10および11のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【図14】図14は、実施例12および13のインターロイキン−6応答を例示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、ろ過工程と組み合わせた炎症誘発性応答試験を用いて、透析溶液成分中の汚染物の存在について試験する方法に関する。試験は、任意の所望の物質で実施することができるが、一般的に透析液またはその成分で実施される。透析溶液は、患者から老廃物を除去するための様々な形態の透析で用いられる。透析溶液は、腹膜透析、血液透析または他の任意の透析療法用に特別に処方されて、それに適したものであり得る。透析溶液は、浸透圧剤、緩衝剤、電解質またはそれらの組合せなどの、1つまたは複数の適する透析成分(例えば透析溶液の成分または構成要素)を含むことができる。本明細書で開示される方法は、任意の種類の透析溶液と用いることができ、特に、イコデキストリンなどのグルコースポリマー、グルコースポリマー誘導体などを含む腹膜透析溶液のために有用である。
【0021】
細菌細胞壁の主要成分である様々な化合物は、透析溶液製品を汚染し得、従来の方法で検出されない。この点に関しては、腹膜透析溶液を用いる患者で無菌性腹膜炎を予防するために、細菌成分についての試験を用いることができる。炎症誘発性応答は、サイトカインなどのマーカーを用いて測定することができる。サイトカインの分泌は、細菌性および非細菌性の物質を含む多くの物質に対する一般的な細胞応答である。リポポリサッカライド(LPS)およびペプチドグリカン(PG)などの多くの公知の細菌性成分が、ヒト細胞でサイトカインの生成を刺激する。細菌成分への応答に通常関連するサイトカインには、インターロイキン−1a(IL−1a)、インターロイキン−1b(IL−1b)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、マクロファージ炎症タンパク質1aおよびマクロファージ炎症タンパク質1b(MIP−1a、MIP−1b)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)が含まれる。サイトカインマーカーおよびその適切な選択は、当分野の技術者に公知である。
【0022】
細菌成分の存在を検出するために、物質のサイトカイン応答を測定する試験がすでに開発されている。先ず物質をろ過し、それを分子量に基づいて成分に分離し、次に、それらの成分によって誘導される炎症誘発性応答を測定することによって、より精確な結果を得ることができることが見い出されている。特に、患者で無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が高い汚染物を物質が含むかどうかに関して、試験はより良好な指標を提供する。
【0023】
一般に、試験は、透析溶液成分の試料、例えばグルコースポリマーもしくはグルコースポリマー誘導体、またはその溶液で実施される。試料は、それが炎症誘発性応答を開始するかどうかを判定するために先ず分析することができる。炎症誘発性応答があまり示されない場合、透析溶液成分は患者で使用することが安全であるとみなすことができる。かなりの炎症誘発性応答が示される場合、透析溶液成分が無菌性腹膜炎を誘発する可能性が高いかどうか判定するために、さらなる試験を行うことができる。透析溶液成分の第2の試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得る。残留部分およびろ液部分の各々の炎症誘発性応答を測定して、各部分の炎症誘発性試験結果を得る。次に、残留部分の炎症誘発性応答をろ液部分の炎症誘発性応答と比較して、透析溶液が使用に適するかどうかを判定する。
【0024】
炎症誘発性応答は、任意の適する試験を用いて測定することができる。物質によって誘導される炎症誘発性応答は、アッセイ系を用いて測定することができる。1つのタイプの試験では、サイトカイン応答を引き起こす試薬を、アッセイにおいて透析溶液試料に加える。試薬は、末梢血単核細胞(PBMC)または単核球細胞系細胞を含むことができる。特定の1つのタイプの適する試験は、アッセイに試験キットを含む。試験物質およびPBMCを、アッセイに加える。PBMCは、健康なドナーの新鮮なヒト血液から好ましくは単離される。次に、アッセイを細胞と一晩インキュベートする。培地を収集し、所望の種類の分泌されたサイトカインを、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)技術を用いて定量化する。そのような試験の使用は、当技術分野で周知である。
【0025】
一実施形態では、インターロイキン−6応答を測定する試験を試料で実施することができる。試験キットは、R&D Systems,Inc.、Minneapolis、MN(USA)などの多数のベンダーから市販品を入手可能である。
【0026】
ろ過工程を実施するために、任意の適するろ過方法を用いることができる。ろ過を実施するために適する装置は、Amicon Ultra−4遠心ろ過器ユニット(Millipore(商標)から入手可能)である。ろ過器ユニットは、名目分子量限界(NMWL)と命名される分子量カットオフを含むことができる。分子量カットオフは、指定された分子量を超える分子を保持する装置の能力を示す。例えば、分子量カットオフが5KDaのろ過器は、5KDaより小さな分子種が、装置の遠心分離の後に膜を通過し、ろ液に存在することを可能にする。溶液が分子量カットオフに近い分子を含む場合、これらの分子は部分的にろ過器を通過することができる。試験試料をろ過器ユニットに加えて遠心分離し、ろ液および残留試料を得る。残留物はろ過器媒体に保持され、ろ液は遠心管に収集される。
【0027】
溶液は、約10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDaの分子量カットオフおよび他の適切な分子量カットオフで、上記のろ過工程にかけることができる。ろ過器の分子量カットオフは、可能な汚染物の大きさに基づいて、または他の要素に基づいて選択することができる。ろ液および残留物は、各レベルで炎症誘発性応答について試験する。透析溶液成分が使用に適するかどうか判定するために、試験結果を比較する。判定をするために、様々な標準を用いることができる。特定の分子量カットオフの試験結果が、ろ液および残留物で同じである(汚染物がろ過器によって優先的に保持されないことを示す)場合、透析溶液成分は患者で無菌性の腹膜炎を引き起こさないことがわかっている。特定の分子量カットオフでの残留物の炎症誘発性応答が、ろ液の炎症誘発性応答より十分に大きい(汚染物の大きさが分子量カットオフより大きいことを示す)場合、透析溶液成分は患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことがあり、したがって拒絶されなければならない。あるいは、大きな分子量を有する種類が残留物に存在するかどうかを判定するために、分子量カットオフろ過器による複数の洗浄またはリンス工程を用いることができる。そのような残留物の試験が高いIL−6応答または他の炎症誘発性応答を引き起こす場合、透析溶液は拒絶される。
【0028】
30kDa〜100kDaの範囲の汚染物が無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が特に高いと考えられているが、ろ過器によって優先的に保持されない汚染物は無菌性の腹膜炎を引き起こす可能性が低い。例えば、ペプチドグリカンは無菌性腹膜炎を引き起こすことが示されている。本明細書で開示される方法は、汚染された溶液の放出を予防するために、透析溶液またはその成分中のペプチドグリカンを検出することができる。
【0029】
サイトカイン応答は、一般的にpg/mLで表される。一実施形態では、物質の適合性を判定するために、以下の試験基準を用いることができる。物質の炎症誘発性応答が陰性である(約100〜200pg/mL未満、または陰性対照とほぼ同じ)場合、その物質は使用に適する。残留部分が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液部分が陰性の炎症誘発性応答を示す場合、その物質は拒絶される。ろ液および残留部分の両方が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液の炎症誘発性応答が残留物の炎症誘発性応答よりも大きい場合、その物質は使用が許容される。ろ液および残留部分の両方が陽性の炎症誘発性応答を示し、ろ液の炎症誘発性応答が残留物の炎症誘発性応答未満である場合、残留物の炎症誘発性応答に対するろ液の炎症誘発性応答の比が調べられる。ろ液部分の炎症誘発性応答が残留部分の炎症誘発性応答の50%以上である場合、透析溶液成分は使用が許容されるとみなされる。ろ液部分の炎症誘発性応答が残留部分の炎症誘発性応答の50%未満である場合、透析溶液成分は使用者において無菌性腹膜炎を引き起こすことがあり、したがって拒絶され、破棄されなければならない。可能な汚染源によって、他の基準を用いることができる。
【0030】
物質が適するかどうかを判定する基準は、特定の実験パラメータによって変えてもよい。これは、ろ液および残留物中の分子の相対濃度が、サイズおよび容量、回転時間および適用遠心力などの特定の種類の分子量カットオフろ過器によって決まるからである。汚染物由来の用量依存性応答は、S字型関数を示すことができる。したがって、応答が飽和点に到達した場合、希釈試料を用いなければならないだろう。
【0031】
一実施形態では、本開示は、腹膜透析溶液の製造方法を提供する。本方法は、任意の適する数および種類の処理段階を含むことができる。例えば、上記処理は、イコデキストリンなどのグルコースポリマーを提供すること、グルコースポリマー試料をろ過して残留部分およびろ液部分を得ること、残留部分およびろ液部分の各々の炎症誘発性応答を測定すること、残留部分の炎症誘発性応答をろ液部分の炎症誘発性応答と比較すること、およびIL−6応答が所定の基準に従っていると判定される場合、グルコースポリマーを用いて腹膜透析溶液を作製することを含む。IL−6応答が所定の基準に従っていないと判定される場合、汚染物を除去するか、十分に低いレベルの汚染物を達成するためにグルコースポリマーをさらに処理することができる。グルコースポリマーは、任意の適する方法でさらに処理することができる。一実施形態では、グルコースポリマーは、任意の適する数および種類の分離装置、例えばペプチドグリカンおよび/または同様なものに特異的に結合する樹脂を有する親和性カラムで処理することができる。
【0032】
本開示に従って透析溶液を製造する方法は、他の適する透析原料または透析溶液試験手順と併用することもできる。適する手順の例示的な例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2006年10月10日に発行されたMETHODS AND COMPOSITIONS FOR DETECTION OF MICROBIAL CONTAMINANTS IN PERITONEAL DIALYSIS SOLUTIONSと題する米国特許第7,118,857号に見い出すことができる。例えば、そのような試験手順は、透析原料または透析溶液を試験するために一般に用いることができる。
【0033】
透析溶液は、腹膜透析、血液透析または他の任意の透析療法用に特別に処方されて、それに適したものであり得る。透析溶液は、例えば、単一容器中の単一の透析溶液として、または別々に収納された容器もしくは多室容器の透析パーツ(dialysis part)として用いることができる。透析溶液は、任意の適する滅菌技術、例えばオートクレーブ、蒸気、紫外線、高圧、ろ過またはそれらの組合せを用いて滅菌することができる。
【0034】
透析溶液の即時利用可能な製剤は、いくつかの適する方法で調製することができる。例えば、第1および第2の透析パーツは、混合されて混合溶液を形成するまで互いに別々に、例えば多室容器の油圧で連結された別々の室に保存することができる。この点に関しては、即時利用可能な製剤は、容器の1室内でその別々の透析パーツを混合することによって、容器の中で調製することができる。このことは、透析パーツのすべてまたは少なくとも一部を手動で容器に注入して、混合溶液を形成する必要性を効果的に排除することができ、このように、即時利用可能な製剤を滅菌条件下で容易に調製することができることを保証する。
【0035】
さらに、混合する前に透析パーツの1つを患者と直接流体連通させることができ、一方で、混合する前に他の透析パーツを患者と直接流体連通させることができないように、容器を構成することができる。物理的に患者と直接流体連通させることができない単一の溶液は、それが最初に他の成分と混合されない限り患者に供給することができないので、このことは、本開示の即時利用可能な製剤の調製および投与に関してさらなる安全レベルを提供することができる。この点に関しては、患者と物理的に直接流体連通させることができない単一の溶液が、カリウム、ナトリウムなどの構成要素の望ましくない濃度を偶然に有する場合、この構成は、望ましくないレベルの構成要素が患者に供給されないか投与されないことを必然的に保証するであろう。
【0036】
個々の透析パーツを効果的に調製し、投与することができるように、マルチパーツ透析溶液の別々の透析パーツを任意の適する様式で収容または含有させることができることを理解するべきである。2つのパーツを収容するために、適する流体連通機構によって連結される別々の容器(例えば、フラスコまたはバッグ)などの様々な容器を用いることができる。2つ以上の別々の透析パーツは、別々に滅菌および保存することができる。
【0037】
透析溶液は、浸透圧剤、緩衝剤、電解質またはそれらの組合せなどの、1つまたは複数の適する透析成分(例えば透析溶液の成分または構成要素)を含むことができる。多種多様の適する酸性および/または塩基性の剤を、浸透圧、緩衝および/または電解質の溶液または濃縮液のpHを調節するために利用することもできる。例えば、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素、ヨウ化水素、水酸化ナトリウムなど、またはそれらの組合せを含む、様々な無機の酸および塩基を利用することができる。
【0038】
浸透圧剤の例には、グルコース、フルクトース、グルコースポリマー(例えばマルトデキストリン、イコデキストリン、シクロデキストリン、トレハロース)、グルコースポリマー誘導体(例えば改変デンプン、ヒドロキシエチルデンプン)、ポリオール、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、アミノ糖、N−アセチルグルコサミン(NAG)、グリセロールおよび/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。緩衝剤の例には、重炭酸塩、乳酸/乳酸塩、ピルビン酸/ピルビン酸塩、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、アミノ酸、ペプチド、クレブス回路の中間体および/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。
【0039】
電解質の例には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物および/または同様なもの、およびそれらの組合せが含まれる。例えば、透析溶液は、約100〜約140mEq/LのNa+、約70〜約130mEq/LのCl−、0.1〜約4.0mEq/LのCa2+、0.1〜約4.0mEq/LのMg2+および/または0.1〜約4.0mEq/LのK+の1つまたは複数の電解質を含むことができる。
【0040】
透析溶液は、溶液の浸透圧を生理的浸透圧より高く(例えば約285mOsmol/kgより高く)保つために、浸透圧剤などの透析成分を好ましくは含むことができる。例えば、グルコースは速やかな限外ろ過速度を提供するので、最も一般的に用いられる浸透圧剤である。アミノ酸などの他の適する種類の浸透圧剤は、グルコースに加えて、またはその代用品として用いることができる。
【0041】
腹膜透析溶液で浸透圧剤の役目を果たすことができる化合物の別のファミリーは、イコデキストリン、マルトデキストリン、ヒドロキシエチルデンプンなどの、グルコースポリマーまたはそれらの誘導体のファミリーである。これらの化合物は浸透圧剤としての使用に適するが、それらは、特に滅菌および長期保管の間、低pHおよび高pHに感受性であり得る。イコデキストリンなどのグルコースポリマーは、腹膜透析溶液でグルコースに加えて、またはその代わりに用いることができる。一般に、イコデキストリンは、トウモロコシデンプンの加水分解から誘導されるグルコースのポリマーである。それは、12〜20,000ダルトンの分子量を有する。イコデキストリン中の大多数のグルコース分子は、α(1−4)グルコシド結合(>90%)で直線状に連結されるが、小さな分画(<10%)はα(1−6)結合によって連結される。
【0042】
透析溶液または成分は、重炭酸塩および酸などの緩衝剤を含むこともできる。重炭酸塩は、ガスバリアオーバーパウチなどを使わずに安定なままであることができるように、アルカリ性溶液を含むことができる。個々の重炭酸塩溶液は、約8.6を超えるpH範囲、好ましくは約9を有することができる。重炭酸塩溶液部分のpHは、任意の適する種類の成分、例えば水酸化ナトリウムおよび/または同様なもので調節することができる。本開示の重炭酸塩溶液の例示的な例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2001年10月30日に公布されたBICARBONATE−BASED SOLUTION IN TWO PARTS FOR PERITONEAL DIALYSIS OR SUBSTITUTION IN CONTINUOUS RENAL REPLACEMENT THERAPYと題する米国特許第6,309,673号に見い出すことができる。
【0043】
酸は、乳酸、ピルビン酸、酢酸、クエン酸、塩酸などの1つまたは複数の生理的に許容される酸を含むことができる。酸は、約5以下、約4以下、約3以下、約2以下、約1以下および他の任意の適する酸性pHのpHを有する個々の溶液であることができる。酸性溶液における、乳酸などの有機酸の単独使用、または別の適する酸、例えば塩酸などの適する無機の酸、別の適する有機酸(例えば乳酸/乳酸塩、ピルビン酸/ピルビン酸塩、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩)および同様なものとの併用は、上記溶液をより生理的に許容できるものにすることができる。
【0044】
前に述べたように、本開示の透析溶液は、様々な適する用途で用いることができる。例えば、透析溶液は、自動化腹膜透析、連続的外来腹膜透析、連続流動腹膜透析などの腹膜透析の間用いることができる。本開示は、腎不全を治療するための多種多様の適する透析療法で用いることができることを理解すべきである。
【0045】
一実施形態では、慢性の腎不全または疾患を有する患者のために透析療法を提供する方法で本開示を利用することができるが、本開示は、急に透析が必要な場合、例えば緊急救命室の状況で用いることができることを理解するべきである。最後に、当業技術者が理解するように、間欠形態の療法(例えば、血液ろ過、血液透析、腹膜透析および血液透析ろ過)を、施設内、自己/限定看護ならびに家庭場面で用いることができる。
【実施例】
【0046】
限定ではなく例として、以下の実施例は本開示の様々な実施形態を例示するものであり、腹膜透析溶液で行われた実験的試験をさらに例示する。
【0047】
実験手順
物質がサイトカイン応答を誘発するかどうかを判定するために、標準のインターロイキン−6(IL−6)応答を実施した。一般的な実験のために、ドナーにつき合計約75mLの全血を収集した。末梢血単核細胞(PBMC)を単離し、細胞濃度を測定した。
【0048】
PBMC細胞数は細胞カウンターを用いて測定し、約8×106細胞数/mLの濃度に調節した。細胞懸濁液の一定分量100μLを各ウェルに加え、対照品または試験品で作製した100μLの溶液を加えた。4体の血液ドナーによる各実験において、合計4反復の試験(試料または対照溶液につき4個のウェル)を実施した。細胞ならびに試験および対照溶液で調製した96ウェルプレートを、5%CO2のCO2インキュベータ内で一晩インキュベートした。
【0049】
インキュベーションの後、430×gで15分間プレートを遠心分離した。上清を収集した。上清中のIL−6の濃度は、QuantiGlo化学発光ELISAキットを用いて測定した。発光読み取りのために、SpectraMax M2プレートリーダーをセットした。
【0050】
ろ過工程を実施するために、Amicon Ultra−4ろ過装置を用いた。Amicon Ultra−4ろ過装置(Millipore(商標)から)は、生体試料の濃縮および高分子成分の精製のために設計されている。Amicon Ultra−4装置は、低タンパク質結合性再生セルロースで作られ、名目分子量限界(NMWL)によって特徴づけられる膜を含む。NMWL等級は、指定された分子量を超える分子を保持する装置の能力を示す。Ultra−4ろ過装置は、濃縮された残留物(ろ過器ユニットに収集されたもの)およびろ過器を通ったろ液(遠心管に収集されたもの)の単回遠心回収(single spin recovery)を可能にするように設計されている。
【0051】
約4mLの試験試料をろ過器ユニットに充填し、約2mLのろ液が得られるように所定時間遠心回転させた。ろ液および残留物の両方を収集し、0.2mの注射ろ過器でろ過してからPBMC−IL−6アッセイにかけた。30kDa、50kDaおよび100kDaでNMWLろ過器を用いて、各試料を別々に試験した。
【0052】
結果
上記の手順を用いて試験した試料には、陽性対照(比較例A)および陰性対照(比較例B)が含まれた。比較例Aは、0.5EU/mLのリポポリサッカライド溶液であった。比較例Bは、2%血漿を有するRPMIであった。試験は、異なるバッチのイコデキストリンに基づく腹膜透析溶液から調製された腹膜透析溶液試料でも実施した(実施例1および2)。
【0053】
実施例1および2で用いた試料は、腹膜透析のために治療した患者で前に用いたイコデキストリンベースの腹膜透析溶液のバッチからのものであった。実施例1の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた一部の患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことが見出されていた。実施例2で調製した腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた患者で無菌性の腹膜炎を引き起こしていなかった。
【0054】
各溶液の試料のIL−6応答は、上記の手順を用いて測定した。さらに、30kDa、50kDaおよび100kDaの分子量カットオフで前述の手順を用いて、実施例1および2の溶液をろ過工程にかけた。ろ液および残留物を、各カットオフレベルでIL−6応答について試験した。結果を、図1に例示する。図1の各バーは、試料のアイデンティティーにより標識されている。ろ過されてない試料のIL−6結果は、「ろ過なし」と表示する。残留物試料のIL−6結果は「R」と命名し、ろ液試料のものは「F」と命名した。標識の最後の数字は、試験で用いたろ過器のNMWLを示す。
【0055】
図1に例示するように、予想通り比較例Aが強いIL−6応答を示し、比較例Bが事実上IL−6応答を示さなかったことがわかる。実施例1および2の未ろ過溶液は、両方とも高いIL−6応答(それぞれ約24,000pg/mLおよび36,000pg/mL)を示した。したがって、試験結果は、実施例1および2の溶液の両方が、IL−6応答を引き起こしたあるものによって汚染されていたことを示す。実施例1で用いたイコデキストリンだけが無菌性の腹膜炎を引き起こしたので、溶液が無菌性の腹膜炎を引き起こすかどうかを判定するのに、IL−6試験単独では不十分であったことが明らかである。
【0056】
実施例1の残留物およびろ液の結果については、NMWLレベルに従い、残留物およびろ液のIL−6応答の間にかなりの差が存在することがわかる。30kDaおよび50kDaの試料については、残留物のIL−6応答は、ろ液のIL−6応答より数桁高い。100kDa試料については、IL−6応答の差はより小さい。分子量に基づく応答でのこの差は、無菌性の腹膜炎を引き起こした汚染物が30kDa〜100kDaの分子量をおそらく有することを示す。
【0057】
対照的に、実施例2については、NMWLレベルに関係なく、ろ液および残留物の試料についてのIL−6応答結果に小さな差が見られるだけである。これらの結果は、ろ過にもかかわらず残留物およびろ液の間に汚染物が比較的同等に分配されたままであり、この汚染物が30kDa未満の分子量を有することを示す。
【0058】
サイトカイン応答試験は、比較例C(陽性対照)、比較例D(陰性対照)、および異なるバッチのイコデキストリンに基づく腹膜透析溶液から調製された追加の透析溶液試料について実施した(実施例3、4および5)。実施例3、4および5で用いた試料は、腹膜透析のために患者で前に用いた、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液のバッチからのものであった。実施例3および4の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた一部の患者で無菌性の腹膜炎を引き起こすことが見出されていた。実施例5の腹膜透析溶液は、腹膜透析溶液を用いた患者で無菌性の腹膜炎を引き起こしていなかった。
【0059】
IL−6、IL−1a、IL−1b、TNF−a、IL−10、MIP−1a、MIP−1b、G−CSFおよびGM−CSFのサイトカイン応答は、それぞれ図2〜10に示す。各場合において、比較例Cおよび実施例3、4および5は各々かなりのサイトカイン応答を示し、比較例D(陰性対照)は非常に低い応答を示したことがわかる。
【0060】
実施例6および7は、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液の異なるバッチからの透析溶液試料であった。30kDa、50kDaおよび100kDaの分子量カットオフで前述の方法を用いて、実施例6および7の溶液をろ過工程にかけた。ろ液および残留物を、各カットオフレベルでIL−6応答について試験した。図11は、実施例6および7の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。
【0061】
実施例6については、NMWLレベルに関係なく、IL−6応答はろ液および残留物試料の両方について極小であった。これらの結果は、ろ過にもかかわらず、残留物およびろ液の間に汚染物が比較的同等に分配されたままであったことを示す。したがって、実施例6の試料は、使用に適していた。
【0062】
実施例7については、30kDaでろ過した試料については、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりもかなり大きかったことがわかる。このことは、30kDaを超える分子量の汚染物が、実施例7の溶液に存在したことを示す。したがって、実施例7の透析液は、使用に適していなかった。
【0063】
図12は、実施例8、実施例9、比較例D、比較例Eおよび比較例FのIL−6応答を例示する。実施例8および9は、イコデキストリンの異なる試料から調製された液体試料であった。比較例DはRPMIの陰性対照であって、比較例Eは汚染されていない腹膜透析液の陰性対照であって、比較例Fは汚染された腹膜透析液の陽性対照であった。試料は、10kDaおよび30kDaでろ過して試験した。実施例8および9の両方について、両方のろ過レベルで、ろ液のIL−6応答は残留物のIL−6応答よりも大きかったことがわかる。このことは、イコデキストリン中の汚染物がろ過器を通過したこと、したがって10kDa未満の分子量を有することを示す。したがって、イコデキストリンは使用に適した。
【0064】
図13は、比較例D、比較例E、比較例Fならびに実施例10および11の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。実施例10および11は、イコデキストリンの異なる試料から調製された液体試料であった。試料は、30kDa、50kDaおよび100kDaでろ過して試験した。実施例10については、IL−6応答は各分画で比較的低く(陰性対照、比較例DおよびEの応答に同等)、各分画は類似した応答を示した。したがって、イコデキストリンは使用に適した。実施例11については、30kDaおよび50kDaで、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりも大きかった。汚染物は30kDaを超える大きさであったので、イコデキストリンは使用に適していなかった。
【0065】
図14は、実施例12および13の、対数スケール上のIL−6応答を例示する。実施例12および13は、イコデキストリンに基づく腹膜透析溶液の試料であった。試料は、30kDa、50kDaおよび100kDaでろ過して試験した。実施例12については、IL−6応答は各分画で比較的低く、各分画は類似した応答を示した。したがって、実施例12の腹膜透析液は、使用に適していた。実施例13については、30kDaで、残留物のIL−6応答はろ液のIL−6応答よりも大きかった。汚染物は30kDaを超える大きさであったので、イコデキストリンは使用に適していなかった。
【0066】
これらの試験結果に基づいて、ろ過工程と一緒にサイトカイン応答試験を用いることは、透析溶液中の汚染物の存在について試験するための改善された方法を提供することがわかる。
【0067】
本明細書に記載される現在好ましい実施形態への様々な変更および改変が、当分野の技術者に明らかとなることを理解すべきである。そのような変更および改変は、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、およびその意図する利点を減らすことなくなされることができる。したがって、そのような変更および改変が、添付の請求項によってカバーされることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法であって、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較することと
を含む方法。
【請求項2】
前記炎症誘発性応答が、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症誘発性応答がインターロイキン−6応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が第1の試料を含み、前記方法が、
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供することと、
該第2の試料を第3のアッセイに加えることと、
試薬を該第3のアッセイに加えることと、
該第3のアッセイの炎症誘発性応答を測定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬が末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記指定された分子量カットオフが約30kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を許容するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体がイコデキストリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法であって、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第1の試料を提供することと、
インターロイキン−6応答を引き起こす試薬を該第1の試料に加えることと、
該第1の試料によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定することと、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供することと、
該第2の試料を約30kDa以上かつ約100kDa以下の分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分および該ろ液部分の各々に該試薬を加えることと、
該残留部分および該ろ液部分の各々によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定することと、
該残留部分によって誘導されるインターロイキン−6応答を、該ろ液部分によって誘導されるインターロイキン−6応答と比較して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうかを判定することと
を含む方法。
【請求項12】
前記試薬が末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
pg/mLで表した、前記ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を許容するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
pg/mLで表した、前記ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
腹膜透析溶液を試験する方法であって、
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む該腹膜透析溶液の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定して、該腹膜透析溶液が使用に適するかどうか判定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該記第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較することと
を含む方法。
【請求項17】
前記炎症誘発性応答が、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される応答である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記指定された分子量カットオフが約30kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記腹膜透析溶液の使用を許容するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記腹膜透析溶液の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体がイコデキストリンである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定することと、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適する場合、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を用いて腹膜透析溶液を作製することと、
患者の治療で該腹膜透析溶液を用いることと
を含む方法。
【請求項24】
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
a)グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む第1の腹膜透析溶液成分の試料を提供することと、
b)該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
c)該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
d)該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
e)該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
f)該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定することと、
g)該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、該腹膜透析溶液成分が使用に適するかどうか判定することと、
h)使用に適さない場合、該腹膜透析溶液成分を破棄することと、
i)グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む第2の腹膜透析溶液成分の試料でステップa)〜g)を繰り返し、使用に適する場合、該第2の腹膜透析溶液成分を患者に投与することと
を含む方法。
【請求項1】
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法であって、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較することと
を含む方法。
【請求項2】
前記炎症誘発性応答が、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症誘発性応答がインターロイキン−6応答である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が第1の試料を含み、前記方法が、
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供することと、
該第2の試料を第3のアッセイに加えることと、
試薬を該第3のアッセイに加えることと、
該第3のアッセイの炎症誘発性応答を測定することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試薬が末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記指定された分子量カットオフが約30kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を許容するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体がイコデキストリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を試験する方法であって、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第1の試料を提供することと、
インターロイキン−6応答を引き起こす試薬を該第1の試料に加えることと、
該第1の試料によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定することと、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の第2の試料を提供することと、
該第2の試料を約30kDa以上かつ約100kDa以下の分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分および該ろ液部分の各々に該試薬を加えることと、
該残留部分および該ろ液部分の各々によって誘導されるインターロイキン−6応答を測定することと、
該残留部分によって誘導されるインターロイキン−6応答を、該ろ液部分によって誘導されるインターロイキン−6応答と比較して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうかを判定することと
を含む方法。
【請求項12】
前記試薬が末梢血単核細胞または単核球細胞系細胞を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
pg/mLで表した、前記ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を許容するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
pg/mLで表した、前記ろ液部分によって誘導される炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記残留部分によって誘導される炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
腹膜透析溶液を試験する方法であって、
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む該腹膜透析溶液の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定して、該腹膜透析溶液が使用に適するかどうか判定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該記第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較することと
を含む方法。
【請求項17】
前記炎症誘発性応答が、インターロイキン−1a、インターロイキン−1b、インターロイキン−6、インターロイキン−10、腫瘍壊死因子−α、マクロファージ炎症タンパク質1a、マクロファージ炎症タンパク質1b、顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される応答である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記指定された分子量カットオフが約30kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記指定された分子量カットオフが約50kDa以上かつ約100kDa以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%以上である場合、前記腹膜透析溶液の使用を許容するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
pg/mLで表した、前記第2のアッセイの炎症誘発性応答が、pg/mLで表した、前記第1のアッセイの炎症誘発性応答の50%未満である場合、前記腹膜透析溶液の使用を拒絶するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体がイコデキストリンである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体の試料を提供することと、
該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定することと、
該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適するかどうか判定することと、
該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体が使用に適する場合、該グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を用いて腹膜透析溶液を作製することと、
患者の治療で該腹膜透析溶液を用いることと
を含む方法。
【請求項24】
腹膜透析を患者に提供する方法であって、
a)グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む第1の腹膜透析溶液成分の試料を提供することと、
b)該試料を指定された分子量カットオフでろ過し、残留部分およびろ液部分を得ることと、
c)該残留部分を第1のアッセイに加えることと、
d)該ろ液部分を第2のアッセイに加えることと、
e)該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々に、炎症誘発性応答を引き起こす試薬を加えることと、
f)該第1のアッセイおよび該第2のアッセイの各々の炎症誘発性応答を測定することと、
g)該第1のアッセイの炎症誘発性応答を該第2のアッセイの炎症誘発性応答と比較して、該腹膜透析溶液成分が使用に適するかどうか判定することと、
h)使用に適さない場合、該腹膜透析溶液成分を破棄することと、
i)グルコースポリマーまたはグルコースポリマー誘導体を含む第2の腹膜透析溶液成分の試料でステップa)〜g)を繰り返し、使用に適する場合、該第2の腹膜透析溶液成分を患者に投与することと
を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2011−517405(P2011−517405A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500873(P2011−500873)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036940
【国際公開番号】WO2009/117304
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/036940
【国際公開番号】WO2009/117304
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
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