説明

膀胱癌の診断および/または予後方法

本発明は、イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後の方法であって、膀胱癌の遺伝子マーカーとして作用する所定の遺伝子および/またはその組合せの遺伝子発現の膀胱液における検出および定量に基づく方法に関する。本発明はまた、上記遺伝子の発現パターンの検出および定量に適するプローブの組の使用に基づく膀胱癌の診断および/または予後のキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の応用分野は、健康管理分野、主として「腫瘍泌尿器学」および「分子生物学」の分野にある。本発明は、特に膀胱癌の診断および予後方法を目的とするものである。
【背景技術】
【0002】
膀胱癌(bladder cancerまたはvesical cancer)は、前立腺癌に次いで頻発する尿生殖路の腫瘍である[Jemal A, Thomas A, Murray T, Thun M. Cancer statistics, 2002. カリフォルニア Cancer J Clin 2002; 52:23-47]。包括的には、それは癌による全死亡数の男性および女性ではそれぞれ3および1%である。絶対値では、これは、約95,000名の男性および約35,000名の女性がこの疾患により毎年死亡することを意味している。発生数と死亡数との比率は、それぞれの国の発展の程度によって異なる。極端な例としては、北米では、この比は0.2に近いが、サハラ砂漠以南の地域では0.6まで増加するということができる[Edwards BK, Brown ML, Wingo PA et al. 「癌の現状についての国家への年間報告、1975-2002、癌治療の人口を基準とした傾向特集(Annual repon to the nation on the status of cancer, 1975-2002年, featuring population-based trends in cancer treatment)」. J Nati Cancer Inst 2005; 97:1407-27; Pisani P, Parkin DM, Bray F, Ferlay J. 「1990年における25種類の癌による世界中の死亡数の推定(Estimates of the worldwide mortality from 25 cancers in 1990)」. Int J Cancer 1999; 83: 18-29]。
【0003】
他の腫瘍とは異なり、家族性の遺伝学的疾病素質因子は現在のところはほとんど検出されていない。対照的に、膀胱腫瘍に強く関係した幾つかの環境因子が検出されている。疾患に対する関係だけでなく人口における発生率による最も重要な要因の1つは、喫煙である。喫煙者は、膀胱腫瘍に罹る危険性が非喫煙者の3倍であることが観察されている。実際に、膀胱腫瘍の3分の1は、喫煙に関係している。不幸なことには、タバコに含まれる発癌性物質は、未だに明確に同定されていない[Burch JD, Rohan TE, Howe GR et al. 「タバコ暴露の源および種類による膀胱癌の危険性: 症例対照研究(Risk of bladder cancer by source and type of tobaceo exposure: a case-コントロール study)」. Int J Cancer 1989,44:622-28; Zeegers MP, Kellen E, Buntinx F, van den Brandt PA.「喫煙、飲料消費、食物および膀胱癌の間の関連性: 系統的文献総説(The association between smoking, beverage consumption, diet and bladder cancer: a systematic literature review)」. World J Urol 2004; 21:392-401]。
【0004】
様々な種類の疾患を、膀胱に細胞レベルで見出すことができる。特に、上皮過形成、尿路化生およびブルン細胞巣のような良性変化がある。対照的に、形成異常は、正常上皮と癌の中間くらいの疾患に相当する。最後に、様々な種類の尿路上皮癌は膀胱に見出され、これは腺癌、扁平上皮腫瘍および移行上皮癌(TCC)に分類することができる。
【0005】
90%を上回る膀胱腫瘍はTCCである。その診断時には、約75%は表在性腫瘍であり、20%は筋肉層を侵襲しており(浸潤性または侵襲性TCC)、5%は既に転位している。表在性の症例の中、約20%は1回の外科的介入によって治癒し、50〜70%は手術後に1回以上再発するが、浸潤性腫瘍にはならない。表在性腫瘍の10〜30%は、浸潤性腫瘍になる。これらの腫瘍は5年後の死亡率が50%である急速進行性の予後の難しい腫瘍であり、転移症例では、2年後の死亡率は100%である[Sanchez-Carbayo M, Socci ND, Charytonowicz E et al. 「cDNAマイクロアレーを用いる膀胱癌の分子プロファイリング: 組織発生および生物学的表現型の定義(Molecular profiling of bladder cancer using cDNAマイクロアレー: defining histogenesis and biological phenotypes)」. Cancer Res 2002,62:6973-80; Adshead JM, Kessling AM, Ogden CW. 「膀胱の移行上皮癌における遺伝学的開始、進行および予後マーカー: 構造および転写変化の概要および発育遺伝子の役割(Genetic initiation, progression and prognostic markers in transitional cell carcinoma of the bladder: a summary of the structural and transcriptional changes, and the role of developmental遺伝子)」. Br J Urol 1998,82:503-12; Babaian RJ, Johnson DE, Llamas L, Ay ala HG. 「膀胱の移行上皮癌の転移(Metastases from transitional cell carcinoma of urinary bladder)」. Urology 1980; 16:142-44]。
【0006】
表在性および侵襲性TCCの遺伝子経路は、関連してはいるが、全く異なるものであると思われる。表在性腫瘍における最も通常の進行は過形成、異型性および最終的には低悪性乳頭状TCCであると思われる。侵襲性腫瘍では、異型性から形成異常へと進行した後、イン・シテュー腫瘍(Tis)へと変化し、最後に浸潤性腫瘍となるのが最も一般的である[Knowles MA. 「現在なし得ること: 膀胱癌の分子病理学(What we could do now: molecular pathology of bladder cancer)」. Mol Pathol 2001; 54:215-21]。
【0007】
現行の診断システムは、尿細胞診(尿中の扁平上皮細胞由来)と膀胱鏡検査法による膀胱の直接観察との組合せに基づいている。後者は、実際的には腫瘍の主要な診断および追跡手法である。これは経尿道経路によって行われ、従ってこれは侵襲性であり患者にとってかなり不快な手法である。この手法の感受性および特異性は極めて高いと思われていたが、実際的手法(蛍光膀胱鏡検査法)における改良法は、この方法が恐らくはさほどでもなくかつ表在性腫瘍で見られる再発は目に見えない部分を完全に切除しきれなかったことによることを示している[Jones JS. 「膀胱癌サーベイランスのためのDNAに基づく分子細胞学(DNA-based molecular cytology for bladder cancer surveillance)」. Urology 2006; 67:35-45]。尿細胞診もまた、高悪性腫瘍に高感受性および特異性を有する非侵襲性診断手法である。しかしながら、この手法は低悪性腫瘍の検出に限界を示している[Bastacky S, lbrahim S, Wilczynski SP, Murphy WM. 「日常的実施における尿細胞診の精度(The accuracy of urinary cytology in daily practice)」. Cancer 1999; 87:118-28]。さらに、細胞学の解釈は観察者によって大きく異なっているので、特に低悪性腫瘍では観察者間の差である可能性がある。
【0008】
これら総ての限界から、さらに信頼性ある非侵襲性膀胱癌マーカーが求められてきた。膀胱TCCに高感受性および特異性を有する非侵襲性マーカーを見出すことができれば、臨床活動に大きな助けとなるであろう。実際に、幾つかの研究では、尿における新規な腫瘍マーカー、例えば、膀胱腫瘍抗原NMP22の試験[Wiener HG, Mian C, Haitel A, Pycha A, Schatzl G, Marberger M. 「尿に結合した診断試験は膀胱癌の処理において膀胱鏡検査法に代わりうるか(Can urine bound diagnostic tests replace cystoscopy in the management of bladder cancer?)」 J Urol 1998, 159:1876-80; Soloway MS, Briggman V, Carpinito GA et al. 「外科処理後の尿路の不顕性出血または急速再発性移行上皮癌の検出における新規腫瘍マーカーNMP22の使用(Use of a new tumor marker, urinary NMP22, in the detection of occult or rapidly recurring transitional cell carcinoma of the urinary tract following surgical treatment)」. J Urol 1996; 156:363-67]、フィブリン分解産物[Schmetter BS, Habicht KK, Lamm DL et al. 「膀胱癌の検出および監視のためのフィブリン/フィブリノーゲン分解産物の多中心試験評価(A multicenter trial evaluation of the fibrin/fibrinogen degradation producis test for detection and monitoring of bladder cancer)」. J Urol 1997; 158:801-5.]、テロメラーゼ[Takihana Y, Tsuchida T, Fukasawa M, Araki I, Tanabe N, Takeda M. 「膀胱癌における臨床病理学的パラメーターについてのマーカーとしてのヒトテロメラーゼ逆転写酵素mRNAおよびヒトテロメラーゼRNA成分mRNA発現のリアル・タイム定量分析(Real-time quantitative analysis for human telomerase reverse transcriptase mRNA and human telomerase RNA component mRNA expressions as markers for clinicopathologic parameters in urinary bladder cancer)」, Int J Urol 2006, 13:401-8]、蛍光原位置ハイブリダイゼーションに基づく試験[Halling KC, King W, Sokolova IA et al. 「尿での尿路上皮癌の検出を目的とするBTAスタット、ヘモグロビン尿検査、テロメラーゼおよびVysis UroVysionアッセイの比較(A comparison of BTA stat, hemoglobin dipstick, telomerase and Vysis UroVysion assays for the detection of urothelial carcinoma in urine)」. J Urol 2002, 167:2001-6]、またはフローサイトメトリー[Takahashi C, Miyagawa I, Kumano S, Oshimura M. 「針生験による前立腺癌におけるテロメラーゼ活性の検出(Detection of telomerase activity in prostate cancer by needle biopsy)」. Eur Urol 1997;32:494-98; Trott PA, Edwards L. 「膀胱癌の診断における膀胱洗浄液および尿細胞診の比較(Comparison of bladder washings and urine cytology in the diagnosis of bladder cancer)」. J Urol 1973, 110:664-66]が報告されており、それらのほとんどは尿細胞診より高い感受性を有するが、後者は未だに最も特異性が高い[Bassi P, De M, V, De Lisa A et al. 「膀胱癌の非侵襲性診断試験: 文献の総説(Non-invasive diagnostic tests for bladder cancer: a review of the literature)」. Urol Int 2005; 75: 193-200]。
【0009】
多数の極めて様々な遺伝子疾患が尿路腫瘍に見出されていることが知られているので、現行の傾向は分析試料において癌の存在を示すことができる(DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの)遺伝子マーカーを探索することである。さらに、これらの同じマーカーを有する患者の腫瘍の攻撃性を区別することができれば、さらに一層個人化した有効な治療を行うことができるので極めて興味深い。最後に、これらのマーカーの幾つかは、癌と闘う新薬を開発するための可能な治療ターゲットとすることができた。
【0010】
最近まで、遺伝子発現パターンを分析する能力は、実験当たり数個の遺伝子に限定されていた。DNAマイクロアレーのような新規な手法は、このシナリオを完全に変化させた。最近では、数千の遺伝子を一度の分析で分析することができる[Duggan DJ, Bittner M, Chen Y, Meltzer P, Trent JM. 「cDNAマイクロアレーを用いる発現プロファイリング(Expression profiling using cDNAマイクロアレー)」. Nat Genet 1999,21:10-14; Granjeaud S, Bertucci F, Jordan BR. 「発現プロファイリング: 多くの外観をしたDNAアレー(Expression profiling: DNA arrays in many guises)」. Bioessays 1999;21:781-90]。従って、膀胱腫瘍を含むあらゆる種類の腫瘍の厖大な発現結果が文献に現れ始めたが[Sanchez-Carbayo M, Socci ND, Charytonowicz E et al. 「cDNAマイクロアレーを用いる膀胱癌の分子プロファイリング: 組織発生および生物学的表現型(Molecular profiling of bladder cancer using cDNAマイクロアレー: defining histogenesis and biological phenotypes)」. Cancer Res 2002,62:6973-80; Ramaswamy S, Tamayo P, Rifkin R et al. 「腫瘍遺伝子発現用法指示を用いる多数のクラスの癌診断(Multiclass cancer diagnosis using tumor遺伝子 expression signatures)」. Proc Nati Acad Sci 米国 200198:15149-54; Sanchez-Carbayo M, Socci ND, Lozano JJ et al. 「cDNAマイクロアレーを用いる膀胱癌進行における遺伝子発見(Gene discovery in bladder cancer progression using cDNAマイクロアレー)」. Am J Pathol 2003; 163:505-16; Sanchez-Carbayo M, Capodieci P, Cordon-Cardo C. 「膀胱癌におけるKiSS-1の腫瘍サプレッサーの役割: KiSS-1発現の喪失は膀胱癌の進行および臨床的結果と関係している(Tumor suppressor role of KiSS-1 in bladder cancer: loss of KiSS-1 expression /s associated with bladder cancer progression and clinical outcome)」. Am J Pathol 2003; 162:609-17; Dyrskjot L, Thykjaer T, Kruhoffer M et al. 「マイクロアレーを用いる別個のクラスの膀胱癌の同定(Identifying distinct classes of bladder carcinoma usingマイクロアレー)」. Nat Genet 2003,33:90-96]、結果のほとんどは完全には公表されていない。しかしながら、これまでのところ、特異的膀胱癌マーカーを用いて行ってきた研究は1個または極めて少数の遺伝子に焦点が当てられてきた[Olsburgh J, Harnden P, Weeks R et al. 「正常なヒト組織および局所的に進行した膀胱癌におけるウロプラキン遺伝子発現(Uroplakin遺伝子 expression in 正常 human tissues and locally advanced bladder cancer)」. J Pathol 2003, 199:41-49; Fichera E, Liang S, Xu Z, Guo N, Mineo R, Fujita-Yamaguchi Y. 「ヒトIGF-IIについての定量的逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応分析法により、乳、膀胱および前立腺癌組織のIGF-II mRNAレベルを直接比較することができる(A quantitative reverse transcription and polymerase chain reaction assay for human IGF-II allows direct comparison of IGF-II mRNA levels in cancerous breast, bladder, and prostate tissues)」. Growth Horm IGF Res 2000, 10:61-70; Simoneau M, Aboulkassim T0, LaRue H, Rousseau F, Fradet Y. 「膀胱癌における染色体9q上の4個の腫瘍サプレッサー遺伝子座: 9q22.3および9q31における2個の新規候補領域の証拠(Four tumor suppressor loci on 染色体9q in bladder cancer: evidence for two novel candidate regions at 9q22.3 and 9q31)」. Oncogene 1999;18:157-63]。
【0011】
これらの腫瘍の性状が極めて異質であれば、単一のマーカーで総てまたはほとんどの癌を同定できるとは思われない。従って、ほとんどの腫瘍を特定することができるようにするには、最良のマーカーの幾つかをいずれかの種類の範囲に結合させることが肝要と思われる。
【0012】
その上、日常的診断方法を開発する上で最も苦痛のない代替法は、尿路組織の直接分析であるが、この後者の方法は患者の生活の品質を低下させかつ健康管理のための経済的負担が極めて高くなるため、先に述べたように、上記の方法が侵襲的ではないことは極めて興味深いことである。
【0013】
膀胱上皮全体、従って腫瘍塊と接触している膀胱液(bladder fluid)(尿または膀胱洗浄液)は、分析を行う試料を得るための容易で非侵襲性の手段であることを考慮すれば、腫瘍マーカーを検出するための良好な代替物であると思われる。従って、多数の研究は、膀胱TCCの非侵襲性診断法の探索において尿中の腫瘍マーカーの研究に焦点が当てられてきた。実際に、この目的を有する様々なテストが市販されている(NMP22, UroVysion, ImmunoCyt, Accu-Dxなど)。
【0014】
市販されていない1つの代替手段は、膀胱癌マーカーの遺伝子発現を測定することによる尿試料中の膀胱TCCの検出である。実際に、1個または数個のマーカー遺伝子を用いて行ったものではあるが、この方法の有用性を示唆している幾つかの研究がある[Parekattil SJ, Fisher HA, Kogan BA. 「膀胱癌検出のための尿中核マトリックスプロテイン-22、単球化学誘引プロテイン-1および尿中細胞間接着分子-1の組合せを用いる神経ネットワーク(Neural network using combined urine nuclear matrix protein-22, monocyte chemoattractant protein-1 and urinary intercellular adhesion molecule-1 to detect bladder cancer)」. J Urol 2003; 169:917-20; Eissa S, Kenawy G, Swellam M, El Fadle AA, Abd El-Aal AA, El Ahmady O. 「膀胱癌の診断手段としての排尿試料中のサイトケラチン20 RNAおよびアンギオゲニンの比較(Comparison of cytokeratin 20 RNA and angiogenin in voided urine samples as diagnostic tools for bladder carcinoma)」. Clin Biochem 2004,37:803-10; Larsson PC, Beheshti B, Sampson HA, Jewett MA, Shipman R. 「膀胱癌における尿細胞沈澱の対立形質欠失フィンガープリンティング(Allelic deletion fingerprinting of urine cell sediments in bladder cancer)」. Mol Diagn 2001;6:181-88]。
【0015】
これらの必要に応え、本発明者らは、鋭意研究の後、14種類の膀胱腫瘍マーカー遺伝子を同定し、それにより、膀胱液から抽出したRNAの定量的リアル・タイムPCRを用いた上記遺伝子の遺伝子発現の検出および定量に基づく膀胱癌の診断および予後方法、およびそれに続く「警告システム」を用いたコンピューターとの組み合わせを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】完全なRNA(BW0)。
【図1B】膀胱洗浄液の部分的に分解したRNA(BW1)。
【図1C】膀胱洗浄液の部分的に分解したRNA(BW2)。
【図1D】膀胱洗浄液の部分的に分解したRNA(BW3)。
【図1E】膀胱腫瘍(T0)の試料。
【図1F】膀胱腫瘍(T1)の試料。
【図1G】膀胱腫瘍(T2)の試料。
【図1H】膀胱腫瘍(T3)の試料。
【図1I】コントロール試料(C)のプール(図1I)のAgilent 2100 Bioanalyzerによって得られた電気泳動図。
【図1J】分析試料のそれぞれのリボソームRNAのバンド(28Sおよび18S)を有するゲル(図1J)。番号0、1、2および3は、分解の増加順の試料および類似の性質のRNAを有する試料について割り当てられる。
【図2】(a) それぞれのアレーにおいて100の最も示差的に発現した遺伝子のアレーの対の間の比較のセミマトリックス。セミマトリックスの灰色に陰影を付けた上部および下部は、様々な分解程度のRNAとハイブリダイズした膀胱洗浄液(BW)の対と腫瘍(T)アレーの対の間で共通している示差発現した遺伝子の割合を示す。セミマトリックスの陰影を付けていない部分は、膀胱洗浄液と腫瘍アレーの対の間で共通している示差発現遺伝子の割合を示す。(b) ダイ・スワップ(DS)による複製を包含するマイクロアレーに含まれる総てのクローンの未管理クラスター。
【図3】36の追加の膀胱腫瘍洗浄液試料におけるcDNAマイクロアレー中および膀胱癌に関連した4個の示差発現遺伝子(KRT20、GSN、IGF2およびCCL2)の定量的リアル・タイムRT-PCR(qRT-PCR)による確認。正の値は、コントロールと比較して膀胱腫瘍洗浄液での過剰発現を示している。試料は、腫瘍の工程および悪性度によってlog2ratioによってグラフで分類し、低悪性表在性腫瘍(8 pTaおよび3 pT1)、高悪性表在性腫瘍(5 pTa、5 pT1および4 pTis)および侵襲性腫瘍(9 pT2および2 pT4)とする。
【図4】未管理グローバルクラスター(ユークリッド距離およびUPGMA)による試料の分類。pT2_1、pT2_2、pT2_3 (浸潤性腫瘍); pT1 HG_1、pT1 HG_2およびpT1 HG_3 (高悪性表在性腫瘍); pT1 LG_1、pT1 LG_2、pT1 LG_3(低悪性表在性腫瘍)。
【図5】プールおよびそこに含まれる個々の試料の定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)。表は、プール(左側)と個々の試料(右側)とに分けてある。プールの縦列は、プール番号(No.)、マイクロアレーで観察された発現レベル(μアレー)およびqRT-PCRによって定量したレベル(qRT-PCR)を示す。個々の試料の第一列は、後の列(1-5)に示されているプールに含まれる個々の試料の発現の算術平均に相当する。それぞれの行は、それぞれのプールについて異なる発現レベルを有する遺伝子(TCN1、SORBS1、MYH11、SRPX、CRH、KRT14、RRM2、FOSB、CEAカリフォルニアM6、CES1)に相当する。
【図6】384個の遺伝子の未管理グローバルクラスター(ユークリッド距離およびUPGMA)による60の個々の膀胱液試料の分類。試料の命名は下記の規則に従う: 試料が「B」という文字で始まるときには膀胱腫瘍洗浄液試料を表し、「CB」で始まるときにはコントロール膀胱洗浄液試料を表し、試料番号の後に頭文字「RV」が付くときには膀胱洗浄液試料を表し、一方頭文字「O」が現れるときには尿試料を表し、腫瘍試料の腫瘍悪性度および病理学的状況は下線の後に示される。矢印は、確立した範疇に関してそれらが示す試料の不良分類(bad classification)を示している: T_HG (高悪性腫瘍); T_LG (低悪性腫瘍)およびC (コントロール)。
【図7A】:96の遺伝子の未管理グローバルクラスター(ユークリッド距離およびUPGMA)による140の個々の膀胱液試料の分類。矢印は、確立した範疇に関してそれらが示す試料の不良分類を示している(C,コントロール)。試料の命名は下記の規則に従う: 試料が「B」という文字で始まるときには膀胱腫瘍洗浄液試料を表し、「CB」で始まるときにはコントロール膀胱洗浄液試料を表し、試料番号の後に頭文字「R」が付くときには膀胱洗浄液試料を表し、一方頭文字「O」が現れるときには尿試料を表す。
【図7B】:96の遺伝子の未管理グローバルクラスター(ユークリッド距離およびUPGMA)による140の個々の膀胱液試料の分類。矢印は、確立した範疇に関してそれらが示す試料の不良分類を示している(T, 腫瘍試料)。試料の命名は下記の規則に従う: 試料が「B」という文字で始まるときには膀胱腫瘍洗浄液試料を表し、「CB」で始まるときにはコントロール膀胱洗浄液試料を表し、試料番号の後に頭文字「R」が付くときには膀胱洗浄液試料を表し、一方頭文字「O」が現れるときには尿試料を表す。
【図8A】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8B】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8C】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8D】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8E】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8F】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8G】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8H】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8I】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8J】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8K】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8L】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8M】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8N】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8O】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8P】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8Q】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8R】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8S】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図8T】(A-T):膀胱癌についての384の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、様々な工程および腫瘍悪性度の膀胱腫瘍組織試料のプールおよびコントロール膀胱粘膜試料のAffymetrixマイクロアレーによる分析によって得た。
【図9A】(A-D):膀胱癌についての96の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図8の384の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける60の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【図9B】(A-D):膀胱癌についての96の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図8の384の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける60の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【図9C】(A-D):膀胱癌についての96の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図8の384の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける60の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【図9D】(A-D):膀胱癌についての96の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図8の384の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける60の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【図10A】(AおよびB):膀胱癌についての48の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図9の96の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける140の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【図10B】(AおよびB):膀胱癌についての48の診断、予後および内因性コントロール遺伝子のリスト。このリストは、図9の96の遺伝子を含むマイクロ流体カードにおける140の膀胱液の分析によって得た。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択したTaqMan Gene Expression Assayの遺伝子記号および名称を示す。
【0017】
発明の目的
本発明の目的は、膀胱癌の遺伝子マーカーとして作用するある種の遺伝子および/またはそれらの組合せの遺伝子発現の膀胱液における検出および定量に基づくイン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および予後方法に関する。
【0018】
同様に、本発明の目的は、膀胱癌の診断および/または予後遺伝子マーカーとしての上記遺伝子の使用である。
【0019】
さらに、本発明の別の目的は、膀胱癌の遺伝子マーカーとしての上記遺伝子の使用に基づく膀胱癌の診断および予後キットに関する。
【0020】
発明の説明
本発明の主要な目的は、膀胱癌の遺伝子マーカーとして作用するある種の遺伝子の検出および定量に基づくイン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法を開発することにある。
【0021】
この方法を行うために、出発点は、ある種の遺伝子および/またはそれらの組合せの発現パターンの検出および定量について行う被験者から得た膀胱液試料である。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較することによって、診断および/または予後を確立する。
【0022】
本発明で用いられる「被験者」という用語は、ヒトに関するものである。
【0023】
被験者から得た膀胱液試料は、尿または膀胱洗浄液試料であってよく、任意の通常の方法によって得ることができる。
【0024】
本発明において、膀胱癌の診断方法は、腫瘍とコントロール試料(健康な個体由来)の間の示差発現遺伝子を検出して定量することができる方法と理解される(診断遺伝子)。
【0025】
予後方法は、様々な種類の腫瘍における示差発現遺伝子を検出することができるものに関し(予後遺伝子)、これにより侵襲性(aggressiveness)により腫瘍を分類し、それぞれの症例における治療を個人的なものとすることができる。
【0026】
様々な種類の移行上皮癌(TCC)の腫瘍分類は、現在は病理解剖学実験室における巨視的および微視的観察に基づいている。それらの分類は、腫瘍の深さおよび細胞の微視的外観に基づく多少標準化した観察によって決定される。最近の分子研究は、表在性腫瘍および浸潤性腫瘍を主として区別する実際上2個の示差遺伝子プロフィールがあることを示していると思われる。
【0027】
表在性膀胱腫瘍は、従って、Ta、TisおよびT1と呼ばれる。Ta癌は、非侵襲性であるかまたは上皮に閉じ込められている外方増殖性の癌である。Tisは原位置癌(扁平上皮腫瘍)であり、T1は上皮下結合組織に侵襲するまたは粘膜固有層を侵襲する腫瘍である。
【0028】
本発明において、HGという略号は、高悪性腫瘍を決定するのに用いられ、LGは低悪性腫瘍を決定するのに用いられる。
【0029】
TaおよびT1癌は、経尿道的切除(TUR)によって摘出することができる。高悪性(HG)TisおよびT1粘膜に閉じ込められた表在性癌であるが、高悪性腫瘍であるため、分子生物学の手法を用いて、それらが高悪性で侵襲の可能性を有する臨床的経験によって説明されてきた。
【0030】
その上、浸潤性膀胱癌はT2、T3およびT4に分類される。例えば、T2は、膀胱筋肉層を侵襲する腫瘍に関する。この種類は、さらに表面の筋肉層または内部の層を侵襲するT2aと深部筋肉層またはまたは外側の層を侵襲するT2bとに分類される。T3は、筋肉層を越えて侵襲するまたは膀胱周囲脂肪を侵襲する腫瘍に関する。この種類は、さらに微視的侵襲を有するT3aと巨視的侵襲を有するT3bとに分類される。さらに、T4は、膀胱に隣接する腫瘍侵襲構造に関しており、これはさらに前立腺、子宮または膣侵襲を有するT4aと骨盤壁または腹壁侵襲を有するT4bとに分類される。
【0031】
遺伝子の遺伝子発現の検出および定量は、本発明の目的に適する任意の非侵襲的な分子生物学の手法、例えば発現マイクロアレー、定量的リアル・タイムPCR、ノーザンブロット分析、通常のPCRなどによって行うことができる。
【0032】
具体的には、DNAアレーの使用により極めて多数の遺伝子の発現結果を得て、それぞれの実験において数千の遺伝子を試験することができる。この手法の使用には、良好な品質を有する多量の(非分解)RNAを必要とする。
【0033】
定量的リアル・タイムPCRの手法(qRT-PCR)は、診断および/または予後遺伝子を検出し手定量する目的で本発明において好ましく用いられる。この手法は、かなりの分解度のRNAを用いることができる上に、一層精確であり、最終結果に影響を与えない。特定の態様によれば、用いられるハイブリダイゼーションプローブはTaqmanプローブである。
【0034】
膀胱液試料における遺伝子発現の検出および定量で得られる結果と、健康な被験者の試料における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。マーカー遺伝子の増減は、一般に分析の被験者に対応する試料の分析により得られる結果を平行して分析されるコントロール試料の結果と比較することによって評価される。それぞれの試料の分類の最終的決定はマーカー遺伝子の発現値に基づく「警告システム」によって行われ、観察値のいずれかがコントロール試料で期待されるものと比較して極めて有意な変動を示すときには、最終分類が腫瘍分類である確率は「警告を与えられた」遺伝子には無関係に増加する。
【0035】
さらに具体的には、本発明の主要態様によれば、非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法は、被験者から膀胱液試料を集めてANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンを上記試料において検出および定量することを含んでなる。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0036】
膀胱液試料は、特に容易に得られるという条件では、好ましくは尿である。しかしながら、膀胱洗浄液が日常的方法では用いられることがあり、一層良好な品質のRNAが得られる。
【0037】
4q32.3にあるANXA10(アネキシンA10)遺伝子(ANX14とも呼ばれる)は、細胞分裂の調節および様々なシグナル導入経路に関与しているが、その正確な機能は未だ決定されていない。
【0038】
C14orf78(染色体14オープンリーディングフレーム78)遺伝子(AHNAK2またはKIAA2019とも呼ばれる)は、14q32.33に位置している。その機能は、未だ決定されていない。
【0039】
CTSE(カテプシンE)遺伝子(カリフォルニアTEとも呼ばれる)は1q31に位置しており、細胞内プロテアーゼをコードする。
【0040】
8q13に位置しているCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)遺伝子(CRFとも呼ばれる)は、ストレスに応じて視床下部に分泌されるコルチコトロピン放出ホルモンをコードする。
【0041】
11p15.5に位置しているIGF2(インスリン様増殖因子2 (ソマトメジンA))(11orf43、FLJ22066、FLJ44734、INSIGFとも呼ばれる)は、インスリン様増殖因子をコードする。
【0042】
KLF9 (クルッペル様因子9)遺伝子(BTEB1とも呼ばれる)は、転写因子をコードする。
【0043】
17q21.2に位置しているKRT20(ケラチン20)遺伝子(K20、CK20、KRT21、MGC35423とも呼ばれる)は、上皮細胞に構造および一体性を与える働きをする中間フィラメントのタンパク質形成部分をコードする。
【0044】
MAGEA3 (黒色腫抗原ファミリーA, 3)遺伝子(HIP8、HYPD、MAGE3、MAGEA6、MGC14613とも呼ばれる)は、Xq28に位置している。その機能は未知である。
【0045】
POSTN(ペリオスチン、骨芽細胞特異因子)遺伝子(PN、OSF-2、PDLPOSTN、MGC119510、MGC119511、ペリオスチン、RP11-412K4.1とも呼ばれる)は、13q13.3に位置しており、細胞移動性に関係した機能を有する。
【0046】
PPP1R14D(タンパク質ホスファターゼ1、調節(インヒビター)サブユニット14D)遺伝子(GBPI-1、FLJ20251、MGC119014、MGC119016、CPI17様とも呼ばれる)は15q15.1に位置しており、ホスファターゼをコードする。
【0047】
19p13.12に位置しているSLC1A6(溶質キャリヤーファミリー1(高親和性アスパルターゼ/グルタメート輸送体)、メンバー6)遺伝子(EAAT4、MGC33092、MGC43671とも呼ばれる)は、細胞内輸送に関与している。
【0048】
5p15.33に位置しているTERT(テロメラーゼ逆転写酵素)遺伝子(TP2、TRT、EST2、TCS1、hEST2とも呼ばれる)は、逆転写酵素活性を有するテロメアのポリメラーゼをコードする。
【0049】
11q24.1に位置しているASAM(脂肪細胞特異的接着分子)(ASAM、AカリフォルニアM、CLMP、FLJ22415とも呼ばれる)は、細胞接着に関与している。
【0050】
さらに、10p13に位置しているMCM10(ミニ染色体維持欠失10(S. cerevisiae))遺伝子(CNA43、PRO2249、MGC126776とも呼ばれる)は、ゲノム複製の開始に関与するタンパク質をコードする。
【0051】
本発明の別の態様によれば、イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法は、被験者から膀胱液試料を集めて、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの上記試料における検出および定量を行うことを含んでなる。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0052】
本発明の別の態様によれば、イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法は、被験者から膀胱液試料を集めて、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の発現の上記膀胱液試料における検出および定量を行うことを含んでなる。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0053】
例えば、本発明の一特定態様によれば、C14orf78遺伝子発現の個々の検出および定量に基づく上記診断および予後方法が意図される。
【0054】
本発明の別の特定態様によれば、KLF9遺伝子発現の個々の検出および定量に基づく上記診断および予後方法が意図される。
【0055】
本発明の別の特定態様によれば、POSTN遺伝子発現の個々の検出および定量に基づく上記診断および/または予後方法が意図される。
【0056】
別の特定態様によれば、PPPIR14D遺伝子発現の個々の検出および定量に基づく上記診断および/または予後方法が意図される。
【0057】
本発明の別の特定態様によれば、ASAM遺伝子発現の個々の検出および定量に基づく上記診断および/または予後方法が意図される。
【0058】
本発明の別の特定態様によれば、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択された遺伝子、およびさらにANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択された少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量に基づくイン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法が意図される。
【0059】
本発明の別の態様によれば、被験者から膀胱液試料を集めて、上記方法準じてANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量を行うこと含んでなる膀胱癌の診断に焦点を当てたイン・ビトロの非侵襲的方法が意図される。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0060】
本発明の別の態様によれば、イン・ビトロの非侵襲性の膀胱癌診断法は、被験者から膀胱液試料を集めて、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量を行うことを含んでなる。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0061】
本発明の別の態様によれば、イン・ビトロの非侵襲性の膀胱癌の診断法は、被験者から膀胱液試料を集めて、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子発現の検出および定量を行うことを含んでなる。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0062】
本発明の特定態様によれば、上記診断法はC14orf78遺伝子の検出および定量に基づいている。
本発明の別の特定態様によれば、上記診断法はKLF9遺伝子の検出および定量に基づいている。
【0063】
本発明の別の特定態様によれば、上記診断法はPOSTN遺伝子の検出および定量に基づいている。
【0064】
本発明の別の特定態様によれば、上記診断法はPPPIR14D遺伝子の検出および定量に基づいている。
【0065】
本発明の別の特定態様によれば、上記診断法はC14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子、およびさらにANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子の発現の検出および定量に基づいている。
【0066】
本発明の別の態様によれば、被験者から膀胱液試料を集めて、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量を行うことを含んでなるイン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の予後方法が意図される。得られた結果と、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値とを比較する。
【0067】
本発明の別の態様によれば、被験者から膀胱液試料を集めて、ASAM遺伝子の発現を検出および定量することを含んでなるイン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の予後方法が提供される。得られた結果を、膀胱液における上記遺伝子についての標準参照値と比較する。
【0068】
本発明の別の態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの使用が意図される。
【0069】
本発明の別の態様においては、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの使用に焦点が当てられている。
【0070】
本発明の別の態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのC14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の使用が意図される。
【0071】
本発明の特定態様によれば、膀胱癌の診断および/または予後マーカーとしてのC14orf78遺伝子の使用が意図される。
【0072】
本発明の別の特定態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのKLF9遺伝子の使用が意図される。
【0073】
本発明の別の特定態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのPOSTN遺伝子の使用が意図される。
【0074】
本発明の別の特定態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのPPP1R14D遺伝子の使用が意図される。
【0075】
本発明の別の特定態様によれば、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのASAM遺伝子の使用が意図される。
【0076】
本発明の別の態様においては、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択される少なくとも1種類の遺伝子と組み合わせた、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の、膀胱癌診断および/または予後マーカーとしての使用に焦点が当てられる。
【0077】
本発明の別の態様は、ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの膀胱癌の診断マーカーとしての使用に関する。
【0078】
本発明の別の態様においては、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用に焦点が当てられる。
【0079】
本発明の別の態様は、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用に関する。
【0080】
本発明の特定態様によれば、C14orf78遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用が意図される。
【0081】
同様に、本発明の別の特定態様によれば、KLF9遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用が意図される。
【0082】
本発明の別の特定態様によれば、POSTN遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用が意図される。
【0083】
本発明の別の特定態様によれば、PPP1R14D遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用が意図される。
【0084】
本発明の別の態様によれば、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子と組み合わせた、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の膀胱癌の診断マーカーとしての使用が意図される。
【0085】
本発明の別の態様によれば、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの膀胱癌の予後マーカーとしての使用が意図される。
【0086】
本発明の別の態様によれば、ASAM遺伝子の膀胱癌の予後マーカーとしての使用が意図される。
【0087】
本発明の別の態様は、ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、 SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる膀胱癌の診断および/または予後キットに関する。
【0088】
本発明の別の態様によれば、膀胱癌の診断および/または予後キットは、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる。
【0089】
本発明の別の態様によれば、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組に基づく膀胱癌の診断および/または予後キットが意図される。
【0090】
本発明の特定態様によれば、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量のためのプローブの組に基づく上記膀胱癌の診断および/または予後キットは、さらにANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる。
【0091】
本発明の別の態様によれば、ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組に基づく膀胱癌の診断キットが意図される。
【0092】
本発明の別の態様によれば、膀胱癌の診断キットは、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる。
【0093】
本発明の別の態様によれば、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組に基づく癌の診断キットが意図される。
【0094】
本発明の別の態様によれば、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組に基づく上記キットは、さらにANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量に適するプローブを含んでなる。
【0095】
本発明の別の態様によれば、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組に基づく膀胱癌の予後キットが意図される。
【0096】
本発明の別の態様によれば、この予後キットは、ASAM遺伝子の検出および定量に適するプローブの組に基づいている。
【0097】
表1に、膀胱癌の診断および/または予後遺伝子マーカーとして同定された14個の遺伝子を示す。ASAMおよびMCM10遺伝子は、予後のための2個の特異的遺伝子である。
本発明の制限ではなく例示に有用な幾つかの実施例を、下記に挙げる。
【実施例】
【0098】
実施例1 膀胱液試料における分解の重要性の決定
本発明の最終目的を行うには、膀胱液(尿および/または膀胱洗浄液)から得られるRNAの品質が一般的に低い場合には、最初に遺伝子発現プロフィールに対する様々なRNA分解レベルの衝撃を知る必要があった。膀胱液から得られた遺伝子発現プロフィールが対応する腫瘍で得られるものと調和する場合にも、測定しなければならなかった。
【0099】
1. 試料およびRNA製剤の選択
高悪性(G3)pT2として診断された1名の同一患者の腫瘍組織(T)および膀胱洗浄液(BW)試料を選択した[Lopez-Beltran A, Sauter G, Gasser T, Hartmann A, Schmitz-Drager BJ, Helpap B, Ayala HG, Tamboni P, Knowles MA, Sidransky D, Cordon-Cardo C, Jones PA, Cairns P, Simon R, Amin MB, Tyczynsky JE. 「泌尿器系の腫瘍(Tumours of the Urinary System)」: Eble JN, Sauter G, Epstein JI, Sesterhenn IA(監修), 「泌尿器系および男性器の腫瘍の病理学および遺伝学(Pathology and Genetics of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs)」. World Health Organization Classification of Tumours. リヨン: IARC Press; 2004: 89-157; Sobin LH, Wittekind CH. 「悪性腫瘍のTNM分類(TNM Classification of Malignant Tumours)」. International Union Against Cancer., 第6版. ニューヨーク: Jonh Wiley & Sons; 2002]。両試料(T0およびBW0)のRNAを、TRIzol(Invitrogen, カールスバード, カリフォルニア, 米国)を用いて供給業者の指示に従って抽出した。次いで、両RNA(T0およびBW0)の一部を80℃で15(T1およびBW1)、30(T2およびBW2)および60(T3およびBW3)分間インキュベーションすることによって分解し、水を塩基緩衝液の代わりに用いたことを除き、Xiang CC, Chen M, Ma L et al. 「マイクロアレー研究用の小さな組織試料からの分解したRNAを増幅する新規方法(A new strategy to amplify degraded RNA from small tissue samples for microarray studies)」. Nucleic Acids Res 2003; 31:53に記載の方法によって3つの分解レベルを得た。
【0100】
膀胱病状の証拠のない4名の患者から健康な膀胱粘膜試料(コントロール試料)も集め、RNAを上記試料と同様の方法で得て、4個のRNAを等モル比で混合した(C0)。
【0101】
完全および分解RNAのそれぞれ1μlをAgilent 2100 Bioanalyzerで分析して、それぞれのRNAの品質を決定した(Imbeaud S, Graudens E, Boulanger V et al. 「マイクロキャピラリー電気泳動トレースの使用者の影響を受けない選別器を用いるRNA品質査定の標準化に向けて(Towards standardization of RNA quality assessment using user-independent classifiers of microcapillary electrophoresis traces)」. Nucleic Acids Res 2005; 33:e56)(図1A-H)。図1(J)は、これらのバンドの分解の進行が見られる分析試料のそれぞれのリボソームRNA(28Sおよび18S)のバンドを有するゲルを示す。
【0102】
さらに、36の膀胱腫瘍洗浄液(8個の低悪性(LG)pTa、5個の高悪性(HG)pTa、3個のpT1 LG、5個のpT1 HG、4個のpTis、9個のpT2 HGおよび2個のpT4 HG)および膀胱病状のない患者の14個のコントロール膀胱洗浄液を集め、RNAを上記の場合と同様にして抽出した。
【0103】
2. イン・ビトロRNA増幅およびラベリング
完全なRNA(T0およびBW0)および分解RNA(T1、T2、T3、BW1、BW2およびBW3)5μgを、T3プロモーター配列の3'における付加によって修飾した9ヌクレオチドのランダム配列(T3N9)を有するプライマーを用いて増幅した(Xiang CC, Chen M, Ma L et al. 「マイクロアレー研究のための小さな組織試料由来の分解RNAを増幅する新規方法(A new strategy to amplify degraded RNA from small tissue samples for microarray studies)」. Nucleic Acids Res 2003; 31:e53)。プローブは、直接ラベリング法によって合成した(Richter A, Schwager C, Hentze S, Ansorge W, Hentze MW, Muckenthaler M. 「DNAマイクロアレーによる発現分析に用いた蛍光タグDNAラベリング法の比較(Comparison of fluorescent tag DNA labeling methods used for expression analysis by DNA microarrays)」. Biotechniques 2002; 33:620-8, 630)。
【0104】
3. アレープロセシングおよびデーター分析
Oncochip-v2グラスヒトcDNAマイクロアレー(http://qrupos.cnio.es/qenomica/arravs/reports/ochip_v2.xls)を用いて、腫瘍および膀胱洗浄液(T0、T1、T2、T3、BW0、BW1、BW2およびBW3)の両方のRNAの4個の次第に分解した部分のそれぞれを健康な膀胱試料由来のRNAのプール(C0)と共に同時ハイブリダイズした。蛍光画像はG2565BA Microarray Scanner System (Agilent, Technologies, バルトブロン, 独国)を用いて得て、TIFF画像はR統計学的環境下(http://www.r-project.org)でSpotプログラム(http://experimental.act.cmis.csiro.au/Spot)を用いて定量した。マイクロアレーのそれぞれの点の最終強度測定は、以前に示唆されている方法(http://www.stat.berkeley.edu/users/terrv/zarrav/Html/imaqe.html)(GEOデーターベースにおける一般にアクセス可能なデーター; GSE3192)により計算した。最後に、総ての品質基準に従う1111個の有効なクローンを得て、それぞれのアレーの100個の最も示差的に発現したクローンを選択してアレー間で比較し、それらの間の共通な遺伝子の割合を計算した。高い割合の共通の示差発現遺伝子が、腫瘍組織アレー間(85-91%)および膀胱洗浄液アレー間(78-93%)で検出され(図2a)、RNAの分解は実質的に遺伝子発現プロフィールに影響しないことを示唆していた。
【0105】
マイクロアレーに含まれる総てのクローンの未管理クラスターも、UPGMA(無荷重平均距離法(Unweighted Pair-Group Meted with Arithmetic Mean))およびピアソン補正を用いて行った。このクラスターは、分解レベルが異なる(例えば、BW0およびBW1)RNAとハイブリダイズした2個のアレー間で同定された共通な遺伝子の割合は、同じアレーのダイ・スワップ(DS)による複製(例えば、BW0対BW0-DS)間の割合より高いことがあり(図2b)、これは、遺伝子発現プロフィールは、部分的に分解したRNAで作業するときには実質的に変化しないという結論を強化するものであった。
【0106】
膀胱洗浄液試料から得た遺伝子発現プロフィールが対応する腫瘍で得られたものと調和するかどうかを決定するため、腫瘍組織アレーと膀胱洗浄液アレーとの間で共通の示差発現遺伝子の割合を比較した。腫瘍と膀胱洗浄液との間では高い類似性が得られ(52-60%)、この類似性はRNAの分解条件とは無関係であった。
【0107】
結論として、このデーターは、部分分解した膀胱洗浄液RNAをマイクロアレーを用いる遺伝子発現研究に用いることができ、このRNAは腫瘍の遺伝子発現を反映していることを示唆した。
【0108】
4. 定量的リアル・タイムRT-PCR(qRT-PCR)
特定の患者のマイクロアレーで得られた結果が一層長いコホートまで補外することができることを確認するため、文献に準じた膀胱癌過程に関するアレーで示差発現した4個の遺伝子(KRT20、IGF2、GSNおよびCCL2)をqRT-PCRによって分析した。この確認には、36個の追加の膀胱腫瘍洗浄液と14個のコントロール膀胱洗浄液を用いた。
【0109】
cDNAは、反応の最終容積を50μlに減少したことを除き、High-Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems, フォスター・シティー, 米国)を用いて供給業者の指示に従ってRNA 1μgから合成した。GUSB遺伝子を、内因性コントロールとして用いた。PCRは、反応の容積を20μlに減少したことを除き、ABI PRISM 7000 SDS (Applied Biosystems, フォスター・シティー, 米国)中でAssays-on-Demand(商品名)Gene Expression Productsを用いて行った。
【0110】
ΔΔCt法(ABI PRISM 7700 Sequence Detection System User Bulletin #2: 遺伝子発現の定量 P/N 4303859)を用いて、14個のコントロール試料の発現の平均値に対するそれぞれの遺伝子の発現の相対量を計算した。コントロールにおける参照値を確立するため、膀胱に病状のない患者の14コントロール膀胱洗浄液の発現の算術平均を得た。
【0111】
底が2の対数として表される2つの比較条件(この場合には、それぞれの指定遺伝子に対する内因性コントロール)の間の割合または除法(比)として定義されlog2ratioとして表されるこの分析の結果は、KRT20について試料の81%、GNSについて89%、IGF2について64%およびCCL2について89%においてマイクロアレーの結果を確かめた(図3)。単独の患者の分析から得られたマイクロアレーデーターおよび36名の患者のコホートの分析から得られたqRT-PCRにより、マイクロアレーで得られた遺伝子発現プロフィールは単独患者の分析によるものではないことが確かめられた。
【0112】
5. 実施例1の結論
膀胱洗浄液RNAを用いて、cDNAマイクロアレーおよびqRT-PCRの両方による対応する膀胱腫瘍の遺伝子発現プロフィールを推定することが可能である。
【0113】
実施例2. 予測モデルの候補遺伝子の初期測定
膀胱液試料の遺伝子発現プロフィールの測定が可能であることを知れば、次の目的はできるだけ大規模な特定遺伝子発現データーを得ることであった。少数の試料でできる限り多量の遺伝子を分析することによって出発し、連続的工程でさらに大規模なシリーズの試料においてますます小さくかつ一層選択された量の遺伝子を連続的に分析した。
【0114】
このプロトコルは、この過程の総ての決定的工程において極めて厳格な品質管理の確率も包含した。これは、Fundacio Puigvertチームの外科医により手術室で所望な特徴を有する生物学的試料の取得、試料の適当な条件での保管および保存、試料の解剖学的-病理学的分析、および実験室装置による分子処理を包含した。
【0115】
1.生物学的試料の取得および選択
組織試料は低温鉗子(腫瘍試料)または直接鋏(コントロール試料)を用いて手術室で得た。得られた組織の一部を、次にRNA抽出の目的で処理するまで直ちに-80℃で冷凍し、残りの部分はその解剖学的-病理学的分析のために病理解剖部門に送った。RNA抽出のため、組織を機械的にホモジナイズし、RNAをTRIzol (Invitrogen, カールスバード, カリフォルニア, 米国)のプロトコルに従って抽出した。最後に、RNAを分光光度法により260 nmの吸光度を測定することによって定量した。
【0116】
2. 検討試料の群
表在性腫瘍と侵襲性腫瘍が異なる遺伝子プロフィールを有すると思われるときには、最も端的な腫瘍群(低悪性の表在性腫瘍対浸潤性腫瘍)を比較することにした。さらに、不明瞭な臨床挙動を有する種類の腫瘍の分子プロフィールを見出すことも決定したが、それらは表在性であるが高度の細胞収差を有し(高悪性T1, pT1 HGとして分類)、多くの場合に(約50%)浸潤性腫瘍となるからである。このようにして、4つの検討群を定義した。
群1: 膀胱粘膜のみを侵襲する低悪性表在性腫瘍試料(LG)(病理学的にはpTa LGとして分類)。
群2: 上皮下結合組織を侵襲する高悪性表在性腫瘍試料(HG)(病理学的にはpT1 HGとして分類)。
群3: 浸潤性の高悪性腫瘍試料(病理学的にはpT2として分類)。
群4: 健康な膀胱粘膜試料(コントロール)。
【0117】
かなり高い生物学的変動を少なくするため、1種類の同一腫瘍、すなわち同一の解剖学的-病理学的分類を有する試料をプールした。従って、それぞれの群について4-5個の腫瘍試料を3回プールした。pTa LG、pT1 HG、pT2 HGおよびコントロール。
【0118】
3. Affvmetrixマイクロアレー
cDNAに基づくマイクロアレーのプラットフォームは以前に検討されてきたが、さらに多数の遺伝子発現結果を得ることができるオリゴヌクレオチドに基づく他の市販プラットフォームがあることが文献から知られていた。最後に、このプラットフォームについての公的データーベースで利用可能な多量のデーターがあり、実質的に総ての文献がその結果の高品質を記載し、ほとんどのヒト遺伝子の遺伝子発現を測定できる新規マイクロアレー(U133 plus 2.0)が市販されたときには、Affymetrixプラットフォーム(http://www.affymetrix.com/index.affx)を用いることにした。
【0119】
Affymetrixマイクロアレーは専門的会社(Progenika)がハイブリダイズして走査し、生の発現データー(またはセルファイル)をRMA(Robust Multi array Analysis)アルゴリズムを用いてR統計学的環境下で直接分析した。
【0120】
4. Affymetrixマイクロアレー分析
それぞれのクローンについての標準化した発現データーを得たならば、選択した様々な試料が未管理クラスターを行うことによって互いにクラスター形成する方法を研究することにした(図4)。後者では、総てのコントロールが互いにクラスター形成し、腫瘍から明らかに識別されることを観察することができ、これは腫瘍とコントロールとの間に多数の示差発現遺伝子(診断遺伝子)があることを示していた。さらに、浸潤性腫瘍(pT2_1、pT2_2およびpT2_3)および高悪性の表在性腫瘍(pT1 HG_1、pT1 HG_2およびpT1 HG_3)の3つのプールは互いにクラスター形成し、低悪性の表在性腫瘍の3つのプール(pT1 LG_1、pT1 LG_2、pT1 LG 3)から識別されることも観察され、これによりいずれの経路のマーカー遺伝子(予後遺伝子)を配置することもできる。
【0121】
様々な群を比較し最良の示差発現遺伝子を得るためのランキングシステムとして、最低平均値を有する群の最大強度値と最高平均値を有する群の最小強度値の対数尺度での比を用いることにした。この測定は、ある群の任意の複製を他の群の任意の複製と比較することによって得ることができるミニマム・フォールド・チェンジ(minimum fold change)と同等である。得られた最終結果は、腫瘍とコントロールとの間に十分有意な発現差を有する文字通り数千の遺伝子であった。
【0122】
5. 定量的リアル・タイムPCRによるマイクロアレーの結果の確認
遺伝子を多少示差発現するものから配列したならば、完全に独立し文献によれば遙かに正確な手法である定量的リアル・タイムPCR(qRT-PCR)を用いて得られた結果を実証することにした。特に示差的に発現した遺伝子10個をこの手法を実証するために選択し、それらの遺伝子発現を(両方の手法の結果を比較できるようにするために)マイクロアレーでハイブリダイズした正確に同じプールを用いて、および(実際のqRT-PCR法の再製可能性を検討できるようにするために)それぞれのプールの個々の試料を用いてqRT-PCRによって定量した(図5)。回帰係数0.978がマイクロアレーとqRT-PCRとの比較で得られ、これは2つの手法の間の極めて良好な再製可能性を示していた。qRT-PCRによって得られた個々の試料の算術平均と同じ手法によるプールでのそれらの発現を比較したところ、回帰係数は0.995となり、これによりqRT-PCRによる定量が優れた技術的品質を有するという事実の文献データーが確認された。
【0123】
6. 実施例2の結論
小さな遺伝子群で2種類の完全に独立した手法を用いる遺伝子発現の定量によって観察された結果を考慮すれば、マイクロアレーによって観察された発現は比較的大きな候補遺伝子の群を次にさらに大規模かつ特異的分析について定義する目的で使用するのに十分な信頼性があると思われると推定することができる。
【0124】
平行して、マイクロアレーは遺伝子発現の定量に適しているが、qRT-PCRは最終結果に悪影響を及ぼすことなく試料における一層高いRNA分解レベルを可能にすることに加えて、さらに正確であると結論された。
【0125】
実施例3. 候補遺伝子の最終選択
この研究の最終目的は、膀胱TCCに関係しかつその発現時に診断および予後腫瘍情報が得られる小さな遺伝子の群を選択することであった。その目的のため、DNAマイクロアレーおよび定量的リアル・タイムPCRの2つの手法を用いることができることが実証された。マイクロアレー法によれば、数千の遺伝子がそれぞれの実験で試験され、qRT-PCR法によるよりも一層良好な品質を有する一層多量のRNAが実験を行う上で必要とされる。さらに、後者は一層正確な手法であり、目的とする遺伝子の正確な数を定量することができる。従って、この研究の次の工程ではqRT-PCRに基づくTaqMan Low Density Arrays(TLDA)法を用いることにした。
【0126】
1. TaqMan Low Density Arrays(TLDA)カードに対する384個の遺伝子の選択
TLDAは、最大384の遺伝子に対する凍結乾燥プライマーおよびTaqManプローブを含むマイクロ流体カードである(1枚の同じカードで384の遺伝子から1つの同じ試料で48の遺伝子および8試料までを分析することができる様々なTLDA配置がある)。従って、組織RNAとハイブリダイズしたAffymetrixマイクロアレーにより上記で行った実験から、384遺伝子のサブグループを選択しなければならない。腫瘍とコントロールの間で最も示差的に発現した遺伝子(診断遺伝子)および3つの腫瘍群pTa LG、pT1 HGおよびpT2 HGの間で示差発現した遺伝子(予後遺伝子)も選択した。
【0127】
さらに、本研究の目的の1つが膀胱液を処理することであったので、本研究のこの工程での目的は、これまでに行ってきたような組織RNAを用いずに膀胱液(尿または膀胱洗浄液)を直接用いてこれら384の遺伝子を検討できるようにすることであった。
【0128】
2. 膀胱洗浄液および尿の収集および処理
膀胱洗浄液試料は、膀胱腫瘍の切除前または膀胱切開の前に手術中にバルボタージによって採取した。尿試料は、患者が手術に入る前の自発的排尿によって収集した。膀胱洗浄液試料および尿試料はいずれも、採取直後に氷中に入れて実験室に輸送した。試料を1/25容量の0.5M EDTA, pH8.0と混合して、1000 x gで10分間遠心分離した。細胞ペレットをTRIzol(Invitrogen, カールスバード, カリフォルニア, 米国)1mlに再懸濁し、RNA抽出まで-80℃で冷凍した。
【0129】
425個の膀胱腫瘍洗浄液試料、30個のコントロール膀胱洗浄液試料、43個の腫瘍尿試料および158個のコントロール尿試料を採取して保管した。
【0130】
3. RNA抽出およびcDNA合成
RNAをTRIzol(Invitrogen, カールスバード, カリフォルニア, 米国)のプロトコルに従って抽出し、分光光度法により260 nmの吸光度を測定することによって定量した。
【0131】
cDNAはHigh-Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems, フォスター・シティー, 米国)を用いて、反応の最終容積を50μlに減少したことを除いて供給業者の指示に従ってRNA 1μgから合成した。
【0132】
4. 「TaqMan遺伝子発現産物」の選択および定量的リアル・タイムRT-PCR(qRT-PCR)
目的の遺伝子が知られている場合には、プライマーおよび蛍光プローブ(TaqMan Assays-on-Demand(商品名)Gene Expression Products)を選択し、Applied Biosystemsウェブ(http://www.appliedbiosystems.com/)でqRT-PCRによって遺伝子発現を定量した。
【0133】
診断遺伝子および予後遺伝子、および内因性コントロール遺伝子に対応する384のアッセイを含むマイクロ流体カード(TaqMan Low Density Array, TLDA)を配列した(図8)。このTLDA配置により、カード当たり単一試料を分析することができる。図8の表は、遺伝子名および記号、並びに遺伝子の示差発現が見られたAffymetrixクローンを示している。TaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードについて選択されたTaqMan Gene Expression Assay (http://www.appliedbiosystems.com/)の名称も定義される。この分析名はまた、qRT-PCRで増幅される遺伝子領域を示している。最後に、このアッセイで増幅される主要な転写体の1つ(Ref SeqまたはGene Bank mRNA)が示されている。
【0134】
PCRは、ABI PRISM 9700 HD SDS (Applied Biosystems, フォスター・シティー, 米国)で供給業者の指示に従って行った。
【0135】
全部で60の試料を、384遺伝子TLDAによって分析した:
− 39個の膀胱腫瘍洗浄液試料
− 15個のコントロール膀胱洗浄液試料
− 3個の腫瘍尿試料
3個の末梢血試料; これは、Affymetrixマイクロアレーに基づく上記分析において、筋肉組織混入物が純粋と思われる膀胱粘膜試料で観察されかつ免疫系による膀胱液試料に混入物があることを伺わせる徴候があるときに行った。従って、3個のリンパ球試料を分析して、血中で高発現する遺伝子を比較によって除去できるようにすることにした(血液が膀胱腫瘍の患者からの膀胱液試料における一定の混入物であるとき)。
【0136】
5. 384遺伝子TLDAの分析
総てのPCRを行ったならば、それぞれの遺伝子に最も適する閾値レベルおよびベースラインレベルを確立し、Ct(サイクル閾値)または生発現データーをSDS 2.1プログラム(Applied Biosystems)によって計算した。
【0137】
次いで、それぞれの遺伝子の相対発現測定値またはデルタ(delta)Ct(ターゲット遺伝子のCt - 内因性コントロール、この場合にはGUSBのCt)を計算し、個々の試料が未管理クラスターによって互いにクラスター形成するのを(ユークリッド距離およびUPGMAを用いて)検討した(図6)。このクラスターで観察された第一分類レベルは、末梢血からの3個の試料と膀胱液(膀胱洗浄液および尿)試料との間の区別である。さらに、膀胱液はクラスターの上部で互いにクラスター形成し(B155-RV_T2high試料からB288-RV1_TaG2high試料まで)かつ腫瘍膀胱液試料によってのみ形成される試料の群と、腫瘍とコントロール膀胱液の混合物によって形成されるクラスターの下部における別の試料の群(B71-RV_TaG2lowCIS試料からB109-RV_T2high試料まで)とにサブクラスター形成される。上部クラスター内では、高悪性および低悪性腫瘍を識別することもでき、一方下部クラスターでは、ほとんどコントロール試料のみによるクラスタリングとコントロールと腫瘍の混合物による別のクラスタリングがある。プールでの組織の分析から個々の試料の膀胱液へ変化したことを考慮しなければならないので、クラスターによる識別力のこの損失は比較的予想可能であった。
【0138】
この分析の目的は、試料の数が多い次の工程で検討される遺伝子を384から96に減少させることである。最良の遺伝子を選択する過程について、上記統計学的パラメーター(ミニマム・フォールド・チェンジ)だけでなく、2つの比較群のメジアンの対数尺度比(メジアン・フォールド・チェンジ)および異なる強度値の遺伝子による個別の手動分析などの様々なパラメーターを考慮した。これにより、384個の遺伝子の初期群を次の工程の実験に必要な96個の遺伝子に減少することができた(図9)。
【0139】
実施例4. 診断/予後力を増加するための遺伝子の第二の選択
この工程の検討において、目的は腫瘍とコントロール試料との識別力を増加することであった。その目的のため、一層多数の膀胱液試料を分析し、可能ならばこの診断および予後システムの初期プロトタイプが基づいている遺伝子の数の少なくとも半数だけ減少させることを目的とした。
【0140】
1. 分析試料および96遺伝子TLDA
96アッセイを含むマイクロ流体カード(TaqMan Low Density Arrays)(図9)を、このTLDA配置によりカード当たり4試料を分析できることを除き、384個の遺伝子のものと同様に配置して処理した。
【0141】
全部で80の試料を96遺伝子TLDAによって分析した:
− 42個の腫瘍膀胱洗浄液試料
− 8個のコントロール膀胱洗浄液試料
− 15個の腫瘍尿試料
− 15個のコントロール尿試料。
【0142】
2. 96遺伝子TLDAの分析
前の実験工程で用いた手法(実施例3)がこの実施例のものと同じであり、この工程で分析される遺伝子が前に分析した384個の遺伝子TLDAに既に含まれている場合には、実施例3の60個の試料を新たな80個の試料と共に抽出して加えた(総試料数= 140)。
【0143】
最初の分析は、96遺伝子の発現を有する140試料の未管理クラスターによって行い、2つの明確に識別された大きな群を観察することができた(図7)。第一群(図7B)では、総ての試料は例外なく腫瘍試料である。対照的に、第二群(図7A)では、試料のほとんどはコントロールであるが、いくらかの腫瘍試料があり、遺伝子プロフィールは標準的試料と区別することができない。この結果から抽出される結論は、ほとんどの腫瘍はコントロール試料から差別化される特徴的遺伝子プロフィールを有するが、幾つかの場合には一般的プロフィールは標準的試料と識別されず、従って検出することができなかった。実施例3と同じ効果が観察されたが、試料の識別能力は一層高かった。
【0144】
クラスターから観察されるデーターに基づきかつ他の分類アルゴリズム(識別線形分析、k-ニアレスト・ネイバー(nearest neighbor)(KNN)など)を用いようとする適当な予備分析では、コントロール試料に関する幾つかの腫瘍の識別の問題が持続していることが観察された。この新規作業仮説は、特異的遺伝子群を用いる識別測定の包括的計算のための任意のシステムは同じ問題を有していることであった。これは、腫瘍が高度に不均質であるため、それらのほとんどのプロフィールを認識することは比較的容易であり、これはほとんどが同様の変化であるが、それらは少数の経路を変化させたものであるので、それらの分析の目的で選択される遺伝子の包括的挙動がコントロール試料と区別されない少数の例が常にあった。
【0145】
大多数および少数の腫瘍を両方とも検出するため、コントロール試料が変化する値の範囲を確立して信頼区間を加えることによって「警告システム」を設定して、他の遺伝子で観察された発現値とは関係なくより高い(または低発現遺伝子の場合にはより低い)発現は腫瘍を示唆する点を決定することができるようにした。このシステムの利点は、腫瘍は健康な試料と同様の一般的な発現プロフィールを有するが、警告遺伝子の1つが誘導されると、試料は腫瘍試料であることを断言できる点である。
【0146】
このシステムの開発における第一工程は、コントロールの発現範囲とそれらの信頼区間の推定であった。コントロール値が誤って範囲を変化させる技術的過誤を持たないことは極めて重要であるので、最小品質レベルを持たないコントロールを排除することにした。この品質測定を計算するため、総ての遺伝子の相対的定量のための(その幾何平均を計算することによる)内因性コントロールとしても有用な3個の遺伝子(GUSB、18SおよびPPIA)を用いた。それぞれの遺伝子の分布の個々の挙動を分析することによって、正規分布に対する十分な適合度が満たされていることを実証することはできず、従ってその分散に基づく信頼区間を設定することはできなかった。代わりに、様々なストリンジェンシーレベルを有する任意および固定の信頼区間を設定することにした(閾値点として腫瘍に一層類似した発現値を有するコントロール値を2倍、4倍または8倍用いることにした)。
【0147】
それぞれの遺伝子の閾値点を決定したならば、この総ての情報を腫瘍試料に対して96遺伝子を有するマトリックスにまとめた。閾値レベルを超過しなかった値を0とし、超過した値を1とした(それぞれのストリンジェンシーレベルについて)。(プロフィールを少なくとも48に減少させるための)最良の遺伝子を選択するため、1) この遺伝子が高い数値の腫瘍を検出することができ(値1の一層高い和を有するものの探索)、2) この検出は(少数経路の最大値を検出することができるようにするための)他の警告遺伝子からできる限り独立していることの2つの特性を考慮した。
【0148】
その結果、目的遺伝子の数は48未満まで減少させたが、(これまでに分析したコントロール試料の数が少ないため)コントロールの幾つかの区間は完全には正確ではないので、次の工程でこれらの分析のこの数を維持することにした。
【0149】
48の選択された遺伝子の遺伝子プロフィールから新たな試料を分析する方法を自動化するため(図10)、qRT-PCRから得られたCts結果から出発して、診断予測を行うことができるコンピュータープログラムを作成した。このプログラムは(区間のストリンジェンシーによって)様々なパラメーターファイルを用いることができるので、感受性(SN)および特異性(SP)値は変化する。最小ストリンジェントパラメーターファイル(閾値点は、腫瘍に最も近接しているコントロールの2倍である)を用いて、SN=100%およびSP=100%を得た。第二のパラメーターファイル(閾値点は、腫瘍に最も近接しているコントロールの4倍である)の場合には、SN=98.96%およびSP=100%を得た。最後の場合(閾値点は、腫瘍に最も近接しているコントロールの8倍である)には、SN=97.93%およびSP=100%を得た。これらの結果はパラメーターファイルの生成に用いた同一試料で得たので、過剰適合が起こる可能性があり、新規な試料を用いる後の実験では評価が必要になることを示していることは重要である。
【0150】
実施例5. 最終的診断モデルの開発
本研究のこの工程での目的は、腫瘍予測モデルを試験して改良すること、並びに予測を行うのに用いた遺伝子の数を最小値まで減少させることであった。
【0151】
この工程に対して、腫瘍およびコントロール試料の群をさらに増幅する必要があった。440の新規試料を実施例3 (60試料)および実施例4 (80試料)のデーターに加えられている48遺伝子を用いるマイクロ流体カードによって分析した。
【0152】
試料における最小品質管理を行ったならば、上記の定性的警告モデルによって分析した。得られた結果(SN=0.81およびSP=0.81)は実施例4の最終モデルで得られた結果と若干異なっており、多くの過剰トレーニングを有すると思われたので、これの改良を試みることにした。
【0153】
遺伝子のそれぞれの離散化頻度ヒトスグラムの観察から、腫瘍およびコントロール試料がどのように分布したかを観察することができた。サンプリングが極めて増加してしまったという事実により、分布間のオーバーラッピングはかなり減少した。極めて低頻度ではあるが、幾つかのコントロール症例は腫瘍に極めて類似した発現レベルを有することも観察することができた。
【0154】
概念的レベルでは、開発された定性的警告システムは遺伝子発現の細胞挙動に対する良好な近似であると考えられてはいたが、遺伝子のそれぞれの重要性を定量することが不可能であることはその予測力に対する重大な制限となった。
【0155】
同じ警告コンセプトに基づいて、バイエスの条件付確率法則を用いることによって可能な定量的モデルの開発を試みることにした。
【0156】
分析試料の数は十分に大きいので、発現値が与えられれば、試料は腫瘍またはコントロールであるという確率は、観察された発現頻度から推定することができる。
【0157】
バイエス法則に基づくモデルの利点の1つは、これがそれぞれのセンサー遺伝子に独立して応用することができることである。経験的確率が与えられて、これを再度次の遺伝子に対する先験的確率として用いることができれば、観察された遺伝子発現により腫瘍であることの先験的確率が変化するであろう。実際に、異なる遺伝子間の独立は、暗黙の中に仮定されている。
【0158】
モデルを適用することができた試料の最終的な数は、308個の腫瘍と156個のコントロールであった。
【0159】
このモデルを48個の遺伝子に相互作用的に適用すると、上記定性モデルの予測力が有意に改良されたが(SN=0.86およびSP=0.92)、頻度ヒトスグラムを検討することによって、多くの遺伝子は最終モデルに有意な情報を提供するとは思われないことが観察された。従って、試料の診断上法の最大量を捕捉するのに十分かつ必要な遺伝子のサブグループを選択することが提案された。
【0160】
定量的モデルの使用により極めて興味深い遺伝子の選択を行う明確な方法はなかった。古い定性的モデルで、最も有益でかつまた両者間に一層高い独立性を有する遺伝子を選択することができた。新たな定量的モデルと比較して定性的モデルで検出された最良の遺伝子(CTSE、MAGEA3、CRH、SLC1A6、PPP1R14D、IGF2、C14orf78およびKLF9)を用いたところ、結果に重要な改良を示した(SN=0.89およびSP=0.96)。
【0161】
いずれの場合でも、他の近似を試みることにした。48遺伝子の頻度ヒトスグラムの目視分析から、また互いに極めて大きく変動したヒトスグラムにより(この事実はそれらの間の一層高い独立性を示していることが期待される)明らかに最も有益なサブグループ(ANXA10、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、POSTN、SLC1A6およびTERT)が選択された。得られた結果はまた、48遺伝子の分析に対して有意な改良を示した(SN=0.90およびSP=0.96)。
【0162】
最後に、定性的モデルによって得た遺伝子のサブグループと目視によって選択された遺伝子は両方とも、初期の定量的モデルに対して改良を示したので、2近似値の遺伝子(ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT)を組み合わせることにした。組合せ保てての結果は、それらのいずれよりも若干良好であった(SN=0.91およびSP=0.96)。
【0163】
モデルが得られたならば、不完全に分類された腫瘍およびコントロールの両方における任意の共通パターンがあるかどうかを検討することにした。コントロールの場合には、泌尿器系(主として、前立腺、腎臓および陰茎)と接触した腫瘍を有する試料の有意な存在を検出することができた。これらの種類の試料は膀胱腫瘍と共通の発現パターンを有すると思われるので、予測モデルを混乱させる可能性がある。従って、泌尿器系と接触する可能性がある腫瘍を有する総ての症例をコントロール試料から除外することにした。
【0164】
コントロール試料の数は156から126に減少したが、308の腫瘍試料もあった。この新たな母集団について48遺伝子を有する定量的モデルを用いることによって重要な改良が観察された(SN=0.90およびSP=0.93)。8個の最も独立な遺伝子の場合には、SN=0.91およびSP=0.97を得た。最も興味深いヒトスグラムを有するサブグループでは、SN=0.91およびSP=0.97を得た。最後に、組み合わせた遺伝子のサブグループでは、SN=0.93およびSP=0.97を得た。それぞれの上記で選択したサブグループを用いてデーターを再度計算することによって、モデルの力はコントロールのこれらの種類を除外することによって増加したことが一般に分かる。
【0165】
不完全に分類された腫瘍の検討に関しては、この群に含まれる膀胱切除の数の有意な増加が検出された。腫瘍塊は膀胱の上皮壁から部分的にまたは完全に物理的に除去されているので、根治的手術に時間的に極めて接近して頻繁に行われる従来の経尿道的切除(TUR)は観察される分子プロフィールを変化させる可能性があると思われる。この検討では、データーは結論的なものではないので、膀胱切開の症例は除外されなかったが、新規な母集団の分析ではこれらの種類の試料を含まないことが推奨される。
【0166】
実施例6. 最終予後モデルの開発
とくに重要な関心は腫瘍予測(診断予測)であったが、様々な種類の腫瘍の分類(予後予測)にも興味があり、この項の主要な目的である。この分類により、それぞれの症例における治療をさらに個人化することができた。
【0167】
腫瘍分類は、現在は、病理解剖学実験室における巨視的および微視的観察に基づいている。それらの分類は、腫瘍の深さおよび細胞の微視的外観に基づいて多かれ少なかれ標準化した観察によって決定される。最近の分子研究は、実際に表在性腫瘍と浸潤性腫瘍を主に識別する2個の示差的遺伝子プロフィールがあることを示しているように思われる。
【0168】
予後分類モデルを行うためには、異なる群の腫瘍群を正確に分離しなければならない。解剖学的病理学的観察は、これらの試料の分子レベルでの挙動との調和を保証しないので、この分類からだけ予後モデルを誘導することは良好な考えとは思われなかった。解剖学的病理学的(AP)等級を考慮したことに加えて、未管理クラスター(試料を主に2つの大きな群に分離する)による分類システムの使用を選択した。
【0169】
有効な表在性腫瘍試料の群としては、それらに対応する群におけるクラスターに準じておよびAPに準じて互いにクラスター形成する必要があり、それらは低悪性Ta、T1腫瘍でなければならず、関連した上皮内癌(cis)はない。浸潤性腫瘍は対応する群のクラスターに属していなければならず、APによれば、それらは高悪性のT1、T2、T3またはT4腫瘍およびCISの存在を有する任意の腫瘍でなければならない。
【0170】
表在性腫瘍として定義される試料の群では、308の腫瘍の129が分類された。浸潤性腫瘍として定義される群では、308の腫瘍の100が分類された。最後に、79個の腫瘍試料は、解剖学的病理学的分類とそれらの分子プロフィールとの間に相違点があるか、または2つの主要なクラスター群内では明らかに定義されなかった。
【0171】
表在性腫瘍と浸潤性腫瘍を識別するモデルの作成に用いた方法論は、診断モデルを得る目的で実施例5で用いたのと正確に同じであった。
【0172】
バイエス法則を48個の遺伝子を用いて適用すると、良好な分類が得られた(SN=0.97およびSP=0.96)。
【0173】
診断に関する遺伝子は、頻度ヒトスグラムを分析することによって大部分は予後遺伝子と一致することを観察することができた。しかしながら、診断には適さず予後には適する幾つかの遺伝子(MCM 10およびASAM)があるので、これら2個の遺伝子を12個の上記で選択した遺伝子に加えた。14個の遺伝子で生成するモデルは、ほぼ完全に作業することが分かった(SN=0.99およびSP=1.00)。表1は、遺伝子記号およびTaqMan Low Density Arrayマイクロ流体カードに対して選択されたTaqMan Gene Expression Assayの名称を示す14個の遺伝子を含んでいる。
【0174】
表1
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記膀胱液試料が尿である、請求項1に記載のイン・ビトロの非侵襲的方法。
【請求項3】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項4】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断および/または予後方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるC14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAM、およびそれらの組合せから選択される遺伝子の発現を検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項5】
C14orf78遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
KLF9遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
POSTN遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
PPPIR14D遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ASAM遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択される少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量をさらに含んでなる、請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項12】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項13】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるC14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の発現を検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項14】
C14orf78遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
KLF9遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
POSTN遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
PPPIR14D遺伝子の検出および定量を含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量をさらに含んでなる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるASAMおよびMCM10遺伝子の発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項20】
イン・ビトロの非侵襲的な膀胱癌の診断方法であって、
a. 被験者から膀胱液試料を採取し、
b. 前記膀胱液試料におけるASAM遺伝子の発現パターンを検出して定量し、
c. 工程b)で得た結果と、膀胱液における前記遺伝子についての標準参照値とを比較すること
を含んでなる、方法。
【請求項21】
b)における遺伝子の発現を定量的リアル・タイムPCRによって定量する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの使用。
【請求項23】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの使用。
【請求項24】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのC14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の使用。
【請求項25】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのC14orf78遺伝子の請求項24に記載の使用。
【請求項26】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのKLF9遺伝子の請求項24に記載の使用。
【請求項27】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのPOSTN遺伝子の請求項24に記載の使用。
【請求項28】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのPPP1R14D遺伝子の請求項24に記載の使用。
【請求項29】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしてのASAM遺伝子の請求項24に記載の使用。
【請求項30】
膀胱癌診断および/または予後マーカーとしての、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択される少なくとも1種類の遺伝子と組み合わせた、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の使用。
【請求項31】
膀胱癌診断マーカーとしての、ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの使用。
【請求項32】
膀胱癌の診断マーカーとしての、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの使用。
【請求項33】
膀胱癌の診断マーカーとしての、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の使用。
【請求項34】
膀胱癌の診断マーカーとしてのC14orf78遺伝子の請求項33に記載の使用。
【請求項35】
膀胱癌の診断マーカーとしてのKLF9遺伝子の請求項33に記載の使用。
【請求項36】
膀胱癌の診断マーカーとしてのPOSTN遺伝子の請求項33に記載の使用。
【請求項37】
膀胱癌の診断マーカーとしてのPPP1R14D遺伝子の請求項33に記載の使用。
【請求項38】
膀胱癌の診断マーカーとしての、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子と組み合わせた、C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の使用。
【請求項39】
膀胱癌の予後マーカーとしての、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの使用。
【請求項40】
膀胱癌の予後マーカーとしてのASAM遺伝子の使用。
【請求項41】
ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6、TERT、ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項1の方法を行うための膀胱癌の診断および/または予後キット。
【請求項42】
ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項3に記載の方法を行うための膀胱癌の診断および/または予後キット。
【請求項43】
C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項4に記載の方法を行うための膀胱癌の診断および/または予後キット。
【請求項44】
C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14D、ASAMおよびそれらの組合せから選択される遺伝子と、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6、TERTおよびMCM10から選択される少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項10に記載の方法を行うための膀胱癌の診断および/または予後キット。
【請求項45】
ANXA10、C14orf78、CTSE、CRH、IGF2、KLF9、KRT20、MAGEA3、POSTN、PPP1R14D、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項11に記載の方法を行うための膀胱癌の診断キット。
【請求項46】
ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERT遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項12に記載の方法を行うための膀胱癌の診断キット。
【請求項47】
C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項13に記載の方法を行うための膀胱癌の診断キット。
【請求項48】
C14orf78、KLF9、POSTN、PPP1R14Dおよびそれらの組合せから選択される遺伝子と、ANXA10、CTSE、CRH、IGF2、KRT20、MAGEA3、SLC1A6およびTERTから選択される少なくとも1種類の遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項18に記載の方法を行うための膀胱癌の診断キット。
【請求項49】
ASAMおよびMCM10遺伝子の組合せの発現パターンの検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項19に記載の膀胱癌の予後キット。
【請求項50】
ASAM遺伝子の検出および定量に適するプローブの組を含んでなる、請求項20の方法を行うための膀胱癌の予後キット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図8L】
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【図8M】
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【図8N】
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【図8O】
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【図8P】
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【図8Q】
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【図8R】
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【図8S】
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【図8T】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【公表番号】特表2010−521981(P2010−521981A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500299(P2010−500299)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【国際出願番号】PCT/ES2007/000330
【国際公開番号】WO2008/113870
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509265151)
【氏名又は名称原語表記】FINA BIOTECH, S.L.U.
【Fターム(参考)】