説明

膜−膜補強部材接合体、膜−触媒層接合体、膜−電極接合体、及び高分子電解質形燃料電池

【課題】十分な耐久性を確保でき、かつ高分子電解質形燃料電池の低コスト化、及び大量生産に適した構成を有する、膜−膜補強部材接合体等を提供する。
【解決手段】膜−膜補強部材接合体1は、互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面F1及び第2主面F2を有する高分子電解質膜10と、F1の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、F1よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材22及び24と、F2の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、F2よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材26及び28とを有しており、1対の第1膜補強部材22及び24と1対の第2膜補強部材26及び28とは、全体として高分子電解質膜10の4辺に沿って延在しかつ高分子電解質膜10の4隅の部分を挟むように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−膜補強部材接合体、膜−触媒層接合体、膜−電極接合体、及び高分子形燃料電池、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子電解質形燃料電池は、水素などの燃料ガスと空気などの酸化ガスを白金などの触媒層を有するガス拡散層電極によって電気化学的に反応させるもので、電気と熱とを同時に発生させるものである。その構造は、まず水素イオンを選択的に輸送する高分子電解質膜の両面に、白金系の金属触媒を担持したカーボン粉末を触媒体とし、これに水素イオン伝導性高分子電解質を混合したもので触媒層を形成する。次に、この触媒層の外面に、燃料ガスの通気性を、電子伝導性を併せ持つ、例えば撥水処理を施したカーボンペーパーでガス拡散層を形成する。この触媒層とガス拡散層とを合わせてガス拡散電極と呼ぶ。
【0003】
次に、燃料を供給する燃料ガスが外部に漏れたり、燃料ガスと酸化剤ガスとが互いに混合したりしないように、電極の周囲には高分子電解質膜を挟んでガスシール剤やガスケットを配置する。このシール剤やガスケットは、電極及び高分子電解質膜と一体化し、これをMEA(膜−電極接合体)と呼ぶ。MEAの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接したMEAを互いに電気的に直列に接続するための導電性セパレーターを配置する。セパレーターのMEAと接触する部分には、電極面に反応ガスを供給し、生成ガスや余剰ガスを運び去るためのガス流路を形成する。ガス流路はセパレーターと別に設けることもできるが、セパレーターの表面に溝を設けてガス流路とする方式が一般的である。
【0004】
多くの燃料電池は、上記のような構造の単電池を数多く重ねた積層構造をとっている。燃料電池の運転時には、電力発生と共に発熱が起こる。積層電池では単電池1〜3セル毎に冷却水路等を設けることにより、電池温度を一定に保つと同時に発生した熱エネルギーを温水などの形で利用することができる。
【0005】
スタックを製造する際、高分子電解質膜は電極やセパレーターに挟持され、端板とボルトにより締め付けられる。締め付けの圧力に耐えられるように、また、長期間の使用において磨耗等による物理的な破損が生じないように、高分子電解質膜には十分な強度を持たせる必要がある。一方、プロトン伝導性を向上させる等の理由からは、高分子電解質膜をできるだけ薄くする必要がある。これらの理由から、厚さを増すことなく高分子電解質の強度を上げるための様々な検討がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1において、高分子電解質膜の周縁部に額縁状の保護膜を取り付けることで、高分子電解質膜の破損の防止を意図した高分子電解質形燃料電池が提案されている(例えば、特許文献1の図1参照)。以下、この高分子電解質形燃料電池の構造について、図面を用いて説明する。図13は、特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池のうちの、固体高分子電解質膜と、ふっ素樹脂シート(保護膜)との位置関係を説明するための要部分解斜視図である。図13に示すように、特許文献1の高分子電解質形燃料電池では、固体高分子電解質膜1000の略矩形状を呈する主面の周縁部分のすべてを覆うようにして、ふっ素樹脂シート(保護膜)220及びふっ素樹脂シート(保護膜)240が固体高分子電解質膜1000の表の主面と裏の主面のそれぞれに配置されている。
【特許文献1】特開平5−21077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術における高分子電解質形燃料電池は、特に高分子電解質膜と保護膜の接合体の部分において、低コストで容易に大量生産ができる構成(構造)を有していないため、高分子電解質形燃料電池の更なる低コスト化、及び更なる生産性の向上を意図(効率的な大量生産を意図)した場合に、未だ改善の余地があった。
【0008】
本発明は、以上の観点に鑑みてなされたものであり、十分な耐久性を確保でき、かつ高分子電解質形燃料電池の低コスト化、及び大量生産に適した構成を有する、膜−膜補強部材接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の本発明の膜−膜補強部材接合体を備えており、さらに触媒層が配置された、膜−触媒層接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、上記の本発明の膜−触媒層接合体を備えており、さらにガス拡散層が配置された、膜−電極接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記の本発明の膜−電極接合体を備えている、高分子電解質形燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の従来技術における高分子電解質形燃料電池が、特に高分子電解質膜と保護膜の接合体の部分において、低コストで容易に大量生産ができる構成を有していないという理由を、以下、図面を用いてより具体的に説明する。
【0010】
図14は特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池を、公知の薄膜積層体の製造技術を用いて大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造法の一例を示す説明図である。例えば、特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池を、大量生産する場合、まず、図14に示すように、テープ状の固体高分子電解質膜260を製造してこれを巻回してロール262とし、テープ状の保護膜250(図14に示した保護膜220を連続的に形成したテープ状のもの)を製造してこれを巻回してロール252とする。次に、図14に示すような構成の製造機構を有する装置を用いて、テープ状の固体高分子電解質膜260の主面の少なくとも一方にテープ状の保護膜250を積層した積層体を製造する。例えば、ロール252及びロール262からそれぞれ、テープ状の保護膜250とテープ状の固体高分子電解質膜260とを引っ張り出して、一対のローラ290の間に挟んで一体化して積層体として巻回し、ロール280とする。なお、ローラ290の間に挟んで一体化する際に、熱処理、加圧処理、加圧熱処理を施す場合もあり、一体化する直前に、テープ状の保護膜250とテープ状の固体高分子電解質膜260の少なくとも一方の主面(接着面)に接着剤を塗工する場合もある。
【0011】
このロール280を製造するときに、保護膜250には、当該保護膜250が進行する方向(テープ状の保護膜250の長手方向)D10に張力がかかる。このとき、保護膜250は非常に薄い膜(例えば、50μm以下)でありかつ主面の内部に開口部222が形成されているため、張力がかかると、保護膜250において張力のかかる方向と略垂直となる部分R200が浮き上がるようになる。これにより、ローラ290とロール252との間では、ローラ290により保護膜250を押えるときに上記R200の部分にしわがよる可能性が高くなる。また、ローラ290とロール280との間では張力により固体高分子電解質膜260から保護膜250のR200の部分が剥がれる可能性が高くなる。
【0012】
以上の理由により、図13に示した従来の構成を有する高分子電解質形燃料電池では、不良品を出さずに確実に製造する観点から、MEAを1つ1つ製造する手間のかかる複雑な製造方法を採用することしかできなかった。すなわち、バッチ式の方法で、固体電解質膜1000に保護膜220及び240を1つひとつ位置決めして貼り付けるという手間のかかる複雑で高コストな製造方法を採用することしかできなかった。
【0013】
このような課題を解決するために、本発明は、互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面及び第2主面を有する高分子電解質膜と、
第1主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、第1主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材と、
第2主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、第2主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材と、
を有しており、
1対の第1膜補強部材と1対の第2膜補強部材とは、全体として前記高分子電解質膜の4辺に沿って延在しかつ前記高分子電解質膜の4隅の部分を挟むように配置されている、膜−膜補強部材接合体を提供する。
【0014】
本発明の膜−膜補強部材接合体は、上述のように、主面(第1主面又は第2主面)の4辺のうちの互いに対向する1組の辺のみに1対の補強部材(第1膜補強部材又は第2膜補強部材)が配置された構成を有している。そのため、図14を用いて先に説明した燃料電池の保護膜250におけるR200の部分が存在しない。従って、本発明の膜−膜補強部材接合体は、テープ状の高分子電解質膜にテープ状の補強部材(第1膜補強部材又は第2膜補強部材)を積層して、高分子電解質膜及び補強部材の積層体からなるロールを製造するといった、公知の薄膜積層体の大量生産技術を容易に適用することが可能となる。従って、本発明の膜−膜補強部材接合体は、先に述べたバッチ式の方法で、固体電解質膜に保護膜を1つひとつ位置決めして貼り付けるという手間のかかる複雑で高コストな製造方法を採用する必要がなく、低コストで容易に大量生産することが可能となる。また、本発明の膜−膜補強部材接合体は、上述のように、1対の第1膜補強部材と1対の第2膜補強部材とは、全体として前記高分子電解質膜の4辺に沿って延在しかつ前記高分子電解質膜の4隅の部分を挟むように配置された構成を有している。これにより、本発明の膜−膜補強部材接合体は高分子電解質膜の破損を十分に防止できる十分な機械的強度を有する。すなわち、本発明の膜−膜補強部材接合体は、1対の第1膜補強部材と、1対の第2膜補強部材とにより十分な耐久性が確保される。
【0015】
したがって、本発明の膜−膜補強部材接合体は、上述したように1対の第1膜補強部材と、1対の第2膜補強部材とを高分子電解質膜を介して配置させた大量生産に適した構造を有するため、本発明の膜−膜補強部材接合体を用いて高分子電解質形燃料電池を構成すれば、十分な耐久性を確保しつつ、高分子電解質形燃料電池の更なる低コスト化、及び更なる生産性の向上を容易に図ることができる。
【0016】
更に、本発明の膜−膜補強部材接合体は、第1主面(又は第2主面)の4辺のうちの互いに対向する1組の辺のみに第1膜補強部材(又は第2膜補強部材)を配置する構成を有するため、図14に示した保護膜220及び240を主面の周縁部分のすべてに配置する構成を有する特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池よりも材料コストを低減できる。
【0017】
また、本発明は、先に述べた本発明の膜−膜補強部材接合体と、
膜−膜補強部材接合体の高分子電解質の第1主面のうちの第1膜補強部材が配置されてない領域の少なくとも一部に配置される第1触媒層と、
膜−膜補強部材接合体の高分子電解質の第2主面のうちの第2膜補強部材が配置されていない領域の少なくとも一部に配置されている第2触媒層と、
を有する、膜−触媒層接合体を提供する。
【0018】
以上のように、本発明の膜−触媒層接合体は、本発明の膜−膜補強部材接合体を備える構成を有しているので、本発明の膜−触媒層接合体を用いて高分子電解質形燃料電池を構成すれば、高分子電解質形燃料電池の更なる低コスト化、及び更なる生産性の向上を容易に図ることができる。
【0019】
更に、本発明は、先に述べた本発明の膜−触媒層接合体と、
膜−触媒層接合体の第1触媒層を被覆するように配置される第1ガス拡散層と、
膜−触媒層接合体の第2触媒層を被覆するように配置される第2ガス拡散層と、
を有する、膜−電極接合体を提供する。
【0020】
以上のように、本発明の膜−電極接合体は、本発明の膜−膜補強部材接合体、および、膜−触媒層接合体を備える構成を有しているので、本発明の膜−電極接合体を用いて高分子電解質形燃料電池を構成すれば、高分子電解質形燃料電池の更なる低コスト化、及び更なる生産性の向上を容易に図ることができる。
【0021】
また、本発明は、先に述べた本発明の膜−電極接合体を具備している、高分子電解質形燃料電池を提供する。
【0022】
以上のように、本発明の高分子電解質形燃料電池は、本発明の膜−膜補強部材接合体、膜−触媒層接合体、および、本発明の膜−電極接合体を備える構成を有しているので、本発明の高分子電解質形燃料電池によれば、更なる低コスト化、及び、更なる生産性の向上を容易に図ることができる。
【0023】
また、本発明は、互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面及び第2主面を有する高分子電解質膜の前記第1主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に、前記第1主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材を配置する工程Aと、
前記第2主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に、前記第2主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材を配置する工程Bと、を含み、
前記工程A及び工程Bにおいて、前記1対の第1膜補強部材と前記1対の第2膜補強部材とは、全体として前記高分子膜の4辺に沿って延在しかつ前記高分子膜の4隅の部分を挟むように配置される、膜−膜補強部材接合体の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、先に述べた膜−膜補強部材接合体方法によって膜−膜補強部材接合体を製造する工程と、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第1主面のうちの前記第1膜補強部材が配置されてない領域の少なくとも一部に第1触媒層を配置する工程Cと、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第2主面のうちの前記第2膜補強部材が配置されていない領域の少なくとも一部に第2触媒層を配置する工程Dと、を含む、膜−触媒層接合体の製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、先に述べた膜−触媒層接合体の製造方法によって膜−触媒層接合体を製造する工程と、
前記膜−触媒層接合体の前記第1触媒層を被覆するように第1ガス拡散層を配置する工程Eと、
前記膜−触媒層接合体の前記第2触媒層を被覆するように第2ガス拡散層を配置する工程Fと、を有する、膜−電極接合体の製造方法を提供する。
【0026】
また、本発明は、先に述べた膜−電極接合体の製造方法によって膜−電極接合体製造する工程を含む、高分子電解質形燃料電池の製造方法を提供する。
【0027】
以上の、膜−補強部材接合体の製造方法、膜−触媒層接合体の製造方法、膜−電極接合体の製造方法、及び高分子電解質形燃料電池の製造方法によれば、それぞれ、上述の膜−補強部材接合体、膜−触媒層接合体、膜−電極接合体、及び高分子電解質形燃料電池について得られる効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、十分な耐久性を確保でき、かつ高分子電解質形燃料電池の低コスト化、及び大量生産に適した構成を有する、膜−膜補強部材接合体及びその製造方法を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、上記の本発明の膜−膜補強部材接合体を備えており、さらに触媒層が配置された、高分子電解質形燃料電池の低コスト化、及び大量生産に適した膜−触媒層接合体及びその製造方法を提供することができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、上記の本発明の膜−触媒層接合体を備えており、さらにガス拡散層が配置された、高分子電解質形燃料電池の低コスト化、及び大量生産に適した膜−電極接合体及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
また、本発明によれば、上記の本発明の膜−電極接合体を備えている、低コスト化、及び大量生産に適した高分子電解質形燃料電池及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
[第1実施形態]
図1は、本発明の膜−膜補強部材接合体の第1実施形態の基本構成の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す膜−膜補強部材接合体1にさらに触媒層が配置された膜−触媒層接合体(本発明の膜−触媒層接合体の第1実施形態)の基本構成の一例を示す斜視図である。また、図3は、図2に示す膜−触媒層接合体2にさらにガス拡散層が配置された膜−電極接合体(本発明の膜−電極接合体の第1実施形態)の基本構成の一例を示す斜視図である。さらに、図4は、図3に示す膜−電極接合体3を具備する高分子電解質形燃料電池(本発明の高分子電解質形燃料電池の第1実施形態)の基本構成の一例(単電池の部分)を示す断面図である。
【0033】
まず図1に示す第1実施形態の膜−膜補強部材接合体1について説明する。
【0034】
図1に示すように、膜−膜補強部材接合体1は、第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28とが、全体として高分子電解質膜10の4辺に沿って延在しかつ高分子電解質膜10の4隅の部分を挟むように(以下、「井桁組状に」という)配置された構成を有している。
【0035】
即ち、図1に示すように、膜−膜補強部材接合体1は、互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面F1及び第2主面F2を有する高分子電解質膜10と、第1主面F1の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、第1主面F1よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材22及び24と、第2主面F2の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、第2主面F2よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材26及び28とを、主として具備する構成を有している。
【0036】
そして、第1実施形態の膜−膜補強部材接合体1は、第1主面F1の4辺のうちの互いに対向する1組の辺のみに1対の補強部材(第1膜補強部材22及び24)が配置された構成を有している。更に、膜−膜補強部材接合体1は、第2主面F2の4辺のうちの互いに対向する1組の辺(第2主面F2の4辺のうち、第1膜補強部材22及び24が配置されている第1主面F1の1組の辺と略直交する一組の辺)のみに1対の補強部材(第2膜補強部材26及び28)が配置された構成を有している。
【0037】
そのため、図14を用いて先に説明した燃料電池の保護膜250におけるR200の部分が存在しない。従って、膜−膜補強部材接合体1は、図5〜図10を用いて後述するように、テープ状の高分子電解質膜140にテープ状の補強部材(第1膜補強部材142A及び142B等)を積層して、高分子電解質膜及び補強部材の積層体143を製造するといった、公知の薄膜積層体の大量生産技術を容易に適用することが可能となる。
【0038】
従って、膜−膜補強部材接合体1は、バッチ式の方法で、固体電解質膜10に補強部材(第1膜補強部材22及び24、又は、第2膜補強部材26及び28)を1つひとつ位置決めして貼り付けるという手間のかかる複雑で高コストな製造方法を採用する必要がなく、低コストで容易に大量生産することが可能となる。
【0039】
また、膜−膜補強部材接合体1は、上述のように、第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28とが、全体として高分子電解質膜10の4辺に沿って延在しかつ高分子電解質膜10の4隅の部分を挟むように(井桁組状に)配置された構成を有している。これにより、膜−膜補強部材接合体1は高分子電解質膜10の破損を十分に防止できる十分な機械的強度を有する。
【0040】
以上により、膜−膜補強部材接合体1は、第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28とを高分子電解質膜10を介して配置させた大量生産に適した構造を有するため、この膜−膜補強部材接合体1を用いて高分子電解質形燃料電池を構成すれば、十分な耐久性を確保しつつ、高分子電解質形燃料電池の更なる低コスト化、及び更なる生産性の向上を容易に図ることができる。
【0041】
なお、図1に示した膜−膜補強部材接合体1においては、第1膜補強部材22及び24の外縁と高分子電解質膜10の外縁とが一致しており、かつ、第2膜補強部材26及び28と高分子電解質膜10の外縁とが一致している態様について説明したが、第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28とは、全体として高分子電解質膜10の4辺に沿って延在していればよく、第1膜補強部材22及び24、並びに、第2膜補強部材26及び28の高分子電解質膜10上の配置位置は、この態様に限定されるものではない。
【0042】
例えば、高分子電解質膜10の外縁が第1膜補強部材22の外縁よりも外に突出するように第1膜補強部材22が高分子電解質膜10上に配置されていてもよい。また、例えば、第1膜補強部材22の外縁が高分子電解質膜10の外縁よりも外に突出するように第1膜補強部材22が高分子電解質膜10上に配置されていてもよい。更に、高分子電解質膜10上での第1膜補強部材24の配置位置、高分子電解質膜10上での第2膜補強部材26の配置位置、及び、高分子電解質膜10上での第2膜補強部材28の配置位置も、上記の高分子電解質膜10上での第1膜補強部材22の配置位置と同様にしてもよい。
【0043】
次に、膜−膜補強部材接合体1の各構成要素について説明する。
【0044】
本発明の膜−膜補強部材接合体は、第1主面(又は第2主面)の4辺のうちの互いに対向する1組の辺のみに第1膜補強部材(又は第2膜補強部材)を配置する構成を有するため、図14に示した保護膜220及び240を主面の周縁部分のすべてに配置する構成を有する特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池よりも材料コストを低減できる。
【0045】
高分子電解質膜10は、プロトン伝導性を有している。高分子電解質膜10としては、陽イオン交換基として、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、及びスルホンイミド基を有するものが好ましくあげられる。プロトン伝導性の観点から、高分子電解質膜10はスルホン酸基を有するものが特に好ましい。
【0046】
スルホン酸基を有する高分子電解質膜を構成する樹脂としては、イオン交換容量が0.5〜1.5meq/g乾燥樹脂であることが好ましい。高分子電解質膜のイオン交換容量が0.5meq/g乾燥樹脂以上であると、発電時における高分子電解質膜の抵抗値の上昇をより十分に低減できるので好ましく、イオン交換容量が1.5meq/g乾燥樹脂以下であると、高分子電解質膜の含水率が増大せず、膨潤しにくくなり、触媒層中の細孔が閉塞するおそれがないため好ましい。以上と同様の観点から、イオン交換容量は0.8〜1.2meq/g乾燥樹脂が特に好ましい。
【0047】
高分子電解質としては、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(mは0〜3の整数を示し、nは1〜12の整数を示し、pは0または1を示し、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示す。)に基づく重合単位と、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位とを含む共重合体であることが好ましい。
【0048】
上記フルオロビニル化合物の好ましい例としては、下記式(4)〜(6)で表される化
合物が挙げられる。ただし、下記式中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜
3の整数を示す。
【0049】
CF2=CFO(CF2)q−SO3H ・・・(4)
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)r−SO3H ・・・(5)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF22−SO3H ・・・(6)
第1膜補強部材22及び第1膜補強部材24は、高分子電解質膜10の第1主面F1の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されている。また、第1膜補強部材22及び第1膜補強部材24は、第1主面F1よりも小さい略長方形の主面F22及びF24を有している。これらの第1膜補強部材22及び第1膜補強部材24が高分子電解質膜10に配置されることにより、高分子電解質形燃料電池4(後述の図4参照)を構成した際に、締結圧力がかかることなどによる高分子電解質膜10の破損が十分に防止される。
【0050】
第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28は、高分子電解質膜10の第2主面F2の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されている。また、第2膜補強部材26及び第1膜補強部材28は、第2主面F2よりも小さい略長方形の主面F26及びF28を有している。これらの第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28が高分子電解質膜10に配置されることにより、高分子電解質形燃料電池4を構成した際に、締結圧力がかかることなどによる高分子電解質膜10の破損が十分に防止される。
【0051】
そして、図1に膜−膜補強部材接合体1においては、1対の第1膜補強部材22及び24と、1対の第2膜補強部材26及び28とが、高分子電解質膜10を介して井桁組み状となるように互いに配置されている。第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28との位置関係をより具体的に説明すると、膜−膜補強部材接合体1を第1主面の法線方向から見た場合、第1膜補強部材22及び24と、第2膜補強部材26及び28とは、第1膜補強部材22の主面F22の長手方向(長辺方向)及び第1膜補強部材24の主面F24の長手方向(長辺方向)と、第2膜補強部材26の主面のF26の長手方向(長辺方向)及び第2膜補強部材28の主面F28の長手方向(長辺方向)とが、互いに略垂直となるように配置(高分子電解質膜10が互いの間に配置された状態で互いに略垂直となるように配置)されている。
【0052】
また、第1膜補強部材22及び第1膜補強部材24、又は、第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28を構成する材料としては、耐久性の観点から、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、及び、ポリイミドアミドからなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂であることが好ましい。
【0053】
さらに、第1膜補強部材22の厚さ、第1膜補強部材24の厚さ、第2膜補強部材26の厚さ、及び第2膜補強部材28の厚さは、本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点からは、第1膜補強部材22の厚さと第1膜補強部材24の厚さとは等しいことが好ましい。同様の観点から、第2膜補強部材26の厚さと第2膜補強部材28の厚さとは等しいことが好ましい。
【0054】
次に、図2に示す第1実施形態の膜−触媒層接合体2について説明する。
【0055】
膜−触媒層接合体2は、第1主面F1の略中央に第1触媒層31が配置され、さらに第2主面F2の略中央に第2触媒層32(図4参照)が配置されていること以外は、図1に示した膜−膜補強部材接合体1と同様の構成を有している。
【0056】
製造の容易さの観点から、第1触媒層31の厚さは、第1膜補強部材22の厚さ及び第1膜補強部材24の厚さ以下であることが好ましく、等しいことがより好ましい。また、同様の観点から、第2触媒層32の厚さは、第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28の厚さ以下であることが好ましく、等しいことがより好ましい。
【0057】
第1触媒層31の構成及び第2触媒層32の構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の燃料電池に搭載されているガス拡散電極の触媒層と同様の構成を有していてもよい。また、第1触媒層31の構成及び第2触媒層32の構成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0058】
例えば、第1触媒層31の構成及び第2触媒層32の構成としては、電極触媒が担持された導電性炭素粒子と、陽イオン(水素イオン)伝導性を有する高分子電解質とを含む構成を有していてもよく、更に、ポリテトラフルオロエチレンなどの撥水材料を更に含む構成を有していてもよい。尚、高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜10の構成材料と同種のものを使用してもよく異なる種類のものを使用してもよい。高分子電解質としては、高分子電解質膜10の構成材料として記載したものを使用することができる。
【0059】
上記の電極触媒は、金属粒子(例えば貴金属からなる金属粒子)からなり、導電性炭素粒子(粉末)に担持されて用いられる。当該金属粒子は、特に限定されず種々の金属を使用することができるが、電極反応活性の観点ら、白金、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、クロム、鉄、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛およびスズからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、白金および白金との合金が好ましく、白金とルテニウムの合金が、アノードにおいては触媒の活性が安定することから特に好ましい。
【0060】
また、電極触媒の粒子は平均粒径1〜5nmであることがより好ましい。平均粒径1nm以上の電極触媒は工業的に調製が容易であるため好ましく、また、5nm以下であると、電極触媒質量あたりの活性をより十分に確保しやすくなるため、燃料電池のコストダウンにつながり好ましい。
【0061】
上記の導電性炭素粒子は比表面積が50〜1500m/gであることが好ましい。比表面積が50m/g以上であると、電極触媒の担持率を上げることが容易であり、得られた第1触媒層31及び第2触媒層32の出力特性をより十分に確保できることから好ましく、比表面積が1500m/g以下であると、十分な大きさの細孔をより容易に確保できるようになりかつ高分子電解質による被覆がより容易となり、第1触媒層31及び第2触媒層32の出力特性をより十分に確保できることから好ましい。上記と同様の観点から、比表面積は200〜900m/gが特に好ましい。
【0062】
また、導電性炭素粒子は、その平均粒径が0.1〜1.0μmであることが好ましい。0.1μm以上であると、第1触媒層31及び第2触媒層32中のガス拡散性をより十分に確保し易くなり、フラッディングをより確実に防止できるようになるため好ましい。また、導電性炭素粒子の平均粒径が1.0μm以下であると、高分子電解質による電極触媒の被覆状態をより容易に良好な状態とし易くなり、高分子電解質による電極触媒の被覆面積をより十分に確保し易くなるため、十分な電極性能をより確保し易くなり好ましい。
【0063】
第1触媒層31及び第2触媒層32は、例えば、公知の燃料電池のガス拡散電極の触媒層の製造方法を用いて形成することができる。例えば、第1触媒層31及び第2触媒層32の構成材料(例えば、電極触媒が担持された導電性炭素粒子と、高分子電解質)と、分散媒と、を少なくとも含む液(触媒層形成用インク)を調製し、これを用いて作製することができる。
【0064】
次に、図3に示す第1実施形態の膜−電極接合体3について説明する。
【0065】
膜−電極接合体3は、第1触媒層31を覆うようにして略矩形状の主面F5を有する第1ガス拡散層41が配置され、さらに第2触媒層32を覆うようにして略矩形状の主面F6を有する第2ガス拡散層42が配置されていること以外は、図2に示した膜−触媒層接合体2と同様の構成を有している。
【0066】
第1ガス拡散層の主面F5の面積は、第1触媒層の主面F3の面積以上であることが好ましく、第1触媒層の主面F3の面積よりも大きいことがより好ましい。さらに、第2ガス拡散層の主面F6の面積は、第2触媒層の主面F4の面積以上であることが好ましく、第2触媒層の主面F4の面積よりも大きいことがより好ましい。
【0067】
さらに、第1ガス拡散層の主面F5の面積が第1触媒層の主面F3の面積よりも大きく、かつ、第2ガス拡散層の主面F6の面積が第2触媒層の主面F4の面積よりも大きい場合、略矩形の主面F5の4辺のうちの互いに対向する1組の辺であって、第1膜補強部材22及び第1膜補強部材24に最も近い位置に配置される1組の辺を含む第1ガス拡散層の端部は、第1膜補強部材22の主面F22及び第1膜補強部材24の主面F24上に載置された状態となっていることが好ましい。また、略矩形の主面F6の4辺のうちの互いに対向する1組の辺であって、第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28に最も近い位置に配置される1組の辺を含む第2ガス拡散層の端部は、第2膜補強部材26の主面F26及び第2膜補強部材28の主面F28上に載置された状態となっていることが好ましい。第1ガス拡散層41及び第2ガス拡散層42を上記の様に配置することにより、膜−電極接合体3の締結時において、ガス拡散層41の端部及びガス拡散層42の端部が、高分子電解質膜10に直接接触することがなく、高い耐久性をより確実に得ることができる。
【0068】
第1ガス拡散層41の構成及び第2ガス拡散層42の構成は、本発明の効果を得られるものであれば特に限定されず、公知の燃料電池に搭載されているガス拡散電極のガス拡散層と同様の構成を有していてもよい。また、第1ガス拡散層41の構成及び第2ガス拡散層42の構成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0069】
例えば、第1ガス拡散層41及び第2ガス拡散層42としては、ガス透過性を持たせるために、高表面積のカーボン微粉末、造孔材、カーボンペーパーまたはカーボンクロスなどを用いて作製された、多孔質構造を有する導電性基材を用いてもよい。また、十分な排水性を得る観点から、フッ素樹脂を代表とする撥水性高分子などを第1ガス拡散層及び第2ガス拡散層42の中に分散させてもよい。さらに、十分な電子伝導性を得る観点から、カーボン繊維、金属繊維またはカーボン微粉末などの電子伝導性材料で第1ガス拡散層41及び第2ガス拡散層42を構成してもよい。
【0070】
また、第1ガス拡散層41と第1触媒層31との間、及び、第2ガス拡散層42と第2触媒層32との間には、撥水性高分子とカーボン粉末とで構成される撥水カーボン層を設けてもよい。これにより、膜−電極接合体における水管理(膜−電極接合体の良好な特性維持に必要な水の保持、及び、不必要な水の迅速な排水)をより容易かつより確実に行うことができる。
【0071】
次に、図4に示す第1実施形態の燃料電池4について説明する。
【0072】
高分子電解質形燃料電池4は、主として、図3に示した膜−電極接合体3と、ガスケット60及びガスケット62と、セパレーター50及びセパレーター52とから構成されている。
【0073】
ガスケット60及びガスケット62は、膜−電極接合体3に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスの外部へのリーク防止や混合を防止するため、膜−電極接合体3の周囲に配置される。
【0074】
膜−電極接合体3の外側には、膜−電極接合体3を機械的に固定するための一対のセパレーター50及びセパレーター52が配置されている。セパレーター50の、膜−電極接合体3の第1ガス拡散層41(第1ガス拡散層41の外側の主面F5)に接触する内面には、酸化剤ガス又は燃料ガスを膜−電極接合体3に供給し、かつ、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場から膜−電極接合体3の外部に運び去るためのガス流路78が形成されている。また、セパレーター52の、膜−電極接合体3の第2ガス拡散層42(第2ガス拡散層42の外側の主面F6)に接触する内面には、膜−電極接合体3に供給し、かつ、電極反応生成物、未反応の反応ガスを含むガスを反応場から膜−電極接合体3の外部に運び去るためのガス流路78が形成されている。
【0075】
ガス流路78はセパレーター50及びセパレーター52とは別に設けることもできるが、図4の燃料電池4においては、セパレーター50の内面(第1ガス拡散層41の外側の主面F5に接する面)及びセパレーター52の内面(第2ガス拡散層42の外側の主面F6に接する面)に設けられた溝からなるガス流路78を有する構成が採用されている。
【0076】
また、セパレーター50は、膜−電極接合体3と反対の側の外面に、切削加工などにより設けられた溝からなる冷却水流路(図示せず)が形成された構成を有していてもよい。更に、セパレーター52も、膜−電極接合体3と反対の側の外面に、切削加工などにより設けられた溝からなる冷却水流路(図示せず)が形成された構成を有していてもよい。
【0077】
このように、1対のセパレーター50及びセパレーター52の間に膜−電極接合体3を固定し、例えば、セパレーター50のガス流路78に燃料ガスを供給し、セパレーター52のガス流路78に酸化剤ガスを供給することで、数十から数百mA/cmの実用電流密度通電時において一つの燃料電池4で0.7〜0.8V程度の起電力を発生させることができる。ただし、通常、高分子電解質形燃料電池を電源として使うときは、数ボルトから数百ボルトの電圧が必要とされるため、実際には、燃料電池4を必要とする個数だけ直列に連結し、いわゆるスタック(図示せず)として使用する。例えば、複数の燃料電池4を積層した積層体を、対向配置された2枚のエンドプレートの間に配置し、締結した状態をしたスタックとして使用する。
【0078】
次に、図1に示した膜−膜補強部材接合体1、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3の製造方法の一例(本発明の膜−膜補強部材接合体の製造方法の好適な実施形態、本発明の膜−触媒層接合体の製造方法の好適な実施形態、本発明の膜−電極接合体の製造方法の好適な実施形態)について図面を用いて説明する。
【0079】
図5は、図1に示した膜−膜補強部材接合体1、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3を製造するための一連の工程の一部を概略的に示す説明図である。
【0080】
図1に示した膜−膜補強部材接合体1、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3は、図5に示す一連の第1工程P1、第2工程P2、第3工程P3、第4工程P4及び第5工程P5を経て低コストで容易に大量生産することができる。
【0081】
まず、公知の薄膜製造技術を用いて、テープ状の高分子電解質膜140(切断後、図1の高分子電解質膜10となる部材)を巻回した高分子電解質ロール122と、テープ状の膜補強部材142A(切断後、図1の第1膜補強部材22となる部材)を巻回した膜補強部材ロール120Aと、テープ状の膜補強部材142B(切断後、図1の第1膜補強部材24となる部材)を巻回した膜補強部材ロール120Bとを製造する。
【0082】
次に、高分子電解質膜140の側端部に膜補強部材142Aと膜補強部材142Bとを接合する(第1工程P1)。この第1工程P1について図面を用いて説明する。図6は、図5における第1工程P1の作業を説明するための説明図である。
【0083】
図5及び図6に示すように、ロール120Aから膜補強部材142Aを引き出し、ロール120Bから膜補強部材142Bを引き出し、ロール122から高分子電解質膜140を引き出し、これらを一対のローラ124及びローラ126を有する熱圧着機(図示せず)内に高分子電解質膜140の側端部に膜補強部材142A及び膜補強部材142Bが載置されるようにして誘導する。図6に示すように、高分子電解質膜140、膜補強部材142A及び膜補強部材142Bは、熱圧着機内のローラ124とローラ126との間を進行方向D1に進む過程において、高分子電解質膜140の側端部に膜補強部材142A及び膜補強部材142Bが載置された状態で接合され、テープ状の膜−膜補強部材積層体141となる。ここで、ロール120Aとロール120Bとの間の幅は、第1触媒層31の大きさに対応するように調節されている。
【0084】
この第1工程P1においては、図14を用いて先に説明した燃料電池の保護膜250におけるR200の部分(張力がかかると浮き上がりやすい、張力がかかる方向と略垂直となる部分)が存在しないため、高分子電解質膜140、膜補強部材142A及び膜補強部材142Bは、熱圧着機内のローラ124とローラ126との間を進行方向D1に進む過程で、高分子電解質膜140に対する膜補強部材142A及び膜補強部材142Bの位置ずれやはがれの発生を十分に抑制することができる。
【0085】
次に、積層体141の裏面に膜補強部材136A(切断後、図1の第2膜補強部材26となる部材)及び膜補強部材136B(切断後、図1の第2膜補強部材28となる部材)を接合する(第2工程P2)。この第2工程P2について図面を用いて説明する。図7は、図5における第2工程P2の作業を説明するための説明図である。
【0086】
図5及び図7に示すように、第1工程P1で得られた積層体141はローラ128及びローラ130の駆動によりさらに第2工程P2のエリアまで進行方向D1に進んで、一旦停止する。図7に示すように、第2工程P2の行われるエリアには、積層体141の裏面に、テープ状の基材137A上にテープ状の膜補強部材136Aが積層された基材−補強部材積層体135Aが巻回されたロール134Aと、テープ状の基材137B上にテープ状の膜補強部材136Bが積層された基材−補強部材積層体135Bが巻回されたロール134Bとが配置されている。
【0087】
より具体的に説明すると、ロール134Aは、当該ロール134Aから引き出される積層体135Aの進行方向D2と積層体141の進行方向D1とが略垂直となり、かつテープ状の膜補強部材136Aが積層体141の高分子電解質膜140の裏面(膜補強部材142A及び膜補強部材142Bが配置されていない面)に接触するように配置されている。さらに、ロール134Bは、当該ロール134Bから引き出される積層体135Bの進行方向D3と積層体141の進行方向D1とが略垂直となり、かつテープ状の膜補強部材136Bが積層体141の高分子電解質膜140の裏面(膜補強部材142A及び膜補強部材142Bが配置されていない面)に接触するように配置されている。
【0088】
このエリアにおいて、積層体141が停止すると同時に、ロール134Aから引き出された基材膜−膜補強部材積層体135Aとロール134Bから引き出された基材膜−膜補強部材積層体135Bは、膜補強部材136Aと膜補強部材136Bが高分子電解質膜140の裏面に接触するようにして停止する。次に、図示しない押圧手段により、高分子電解質膜140と膜補強部材136Aとの接触部分、及び高分子電解質膜140と膜補強部材136Bとの接触部分が位置ずれを起こさないようにして、基材膜−膜補強部材積層体135Aと基材膜−膜補強部材積層体135Bと積層体141とが固定される。
【0089】
次に、図示しない二つのカッターにより、積層体141の幅にあわせて(高分子電解質膜140に接触する膜補強部材136Aの部分、及び、高分子電解質膜140に接触する膜補強部材136Bの部分が残るようにして)、基材−膜補強部材積層体135Aのうちの膜補強部材136A及び基材膜−膜補強部材積層体135Bのうちの膜補強部材136Bが切断される。このとき、二つのカッターの切り込み深さは、基材膜−膜補強部材積層体135Aのうちの基材137A及び基材膜−膜補強部材積層体135Bのうちの基材137Bが切断されない深さに調節されている。また、基材137A及び基材137Bも、この2つのカッターにより切断されない十分な機械的強度(硬さ、柔軟性)を有している。このようにして、積層体141の裏面に第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28が接合された積層体143が得られる。ここで、ロール134Aとロール134Bとの間の幅は、第2触媒層32の大きさに対応するように調節されている。なお、2つのカッターでなく1つのカッターで切断する構成としてもよい。
【0090】
さらに、第2工程P2では136Aと136Bを高分子電解質膜140に十分に一体化させるための処理が施される。例えば、二つのカッターで切断する際に、押圧手段によりさらに加熱処理し、136Aと136Bを高分子電解質膜140に融着させる処理を行ってもよい。また、例えば高分子電解質膜140に接触させる前の136Aと136Bの表面(接触面となる部分)に、接着剤を塗工する前処理を行ってもよい。この前処理をする場合、上記の融着させる処理を行ってもよく、融着させる処理を行わずに、押圧手段による加圧処理のみ行ってもよい。さらに、接着剤としては、電池特性を低下させないものであることが好ましい。例えば、高分子電解質膜140と同種または異種(但し、高分子電解質膜140と十分に一体化可能な親和性を有するもの)の高分子電解質材料(例えば、先に高分子電解質膜10の構成材料として例示したもの)を分散媒又は溶媒に含有させた液を用いてもよい。
【0091】
この第2工程P1においては、図14を用いて先に説明した燃料電池の保護膜250におけるR200の部分(張力がかかると浮き上がりやすい、張力がかかる方向と略垂直となる部分)が存在しない。具体的に説明すると、第2工程P1において積層体141の裏面に接合される第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28は、張力がかかる方向と略垂直となる部分ではあるが、隣り合う第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28同士は上記R200の部分と異なり互いに直接結合しておらず、張力がかかっても浮き上がりにくい。そのため、第2工程P1においても、進行方向D1に進む過程で、高分子電解質膜140に対する第2膜補強部材26及び第2膜補強部材28の位置ずれやはがれの発生を十分に抑制することができる。図14に示したR200の部分は、隣り合うR200の部分同士が同一の保護膜250の一部として直接結合した構成となっているため浮き上がりやすい。
【0092】
次に、積層体143の形成後、積層体143の膜補強部材142A及び膜補強部材142Bの形成されている側の高分子電解質膜140の主面F1A(切断後、図1の第1主面F1となる面)に触媒層190(切断後、図2の第1触媒層31となるもの)を形成する(第3工程P3)。この第3工程P3について図面を用いて説明する。図8は、図5における第3工程P3の作業を説明するための説明図である。
【0093】
図5及び図8に示すように、第2工程P2で得られた積層体143はローラ128及びローラ130の駆動によりさらに第3工程P3のエリアまで進行方向D1に進んで、一旦停止する。図8に示すように、第3工程P3の行われるエリアには、このエリアで停止した積層体143を、その裏面(上記高分子電解質膜140の主面F1Aの反対側の面)から支える図示しない支持手段(例えば支持台)と、高分子電解質膜140の主面F1Aの膜補強部材142Aと膜補強部材142Bとの間に触媒層190を形成するためのマスク186が配置されている。
【0094】
このマスク186には、開口部186Aが設けられている。この開口部186Aの形状と面積は、触媒層190の形状と面積に対応するように設定されている。更に、第3工程のエリアの上方には触媒層形成装置130Cが配置されている。この触媒層形成装置130Cには触媒層形成用インクを塗工又はスプレーするなどして、マスク186Aの開口部186Aに対応する高分子電解質膜140の主面F1Aの部分に触媒層190を形成するための機構が備えられている。この機構は、公知の燃料電池のガス拡散層の触媒層を形成するために採用されている機構を採用することができる。例えば、スプレー法、スピンコート法、ドクターブレード法、ダイコート法、スクリーン印刷法に基づいて設計された機構を採用することができる。
【0095】
次にこの第3工程P3の作業の流れの一例について詳細に説明する。まず、この第3工程P3のエリアで停止した積層体143が、マスク186Aと支持台(図示せず)との間に挟持されるようにして固定される。次に、触媒層形成装置130Cが作動し、マスク186の開口部186Aの上方から触媒層形成用インクを塗工又はスプレーするなどして、マスク186Aの開口部186Aに対応する高分子電解質膜140の主面F1Aの部分に触媒層190が形成され、触媒層190が形成された積層体144が得られる。次に、触媒層190の形成後、マスク186Aと支持台(図示せず)とが積層体144からはなれる。次に、ローラ128及びローラ130の駆動により、積層体144は進行方向D1に沿って移動する。
【0096】
次に、積層体144の形成後、積層体144の高分子電解質膜140の触媒層190が形成されていない側の主面(切断後、図1の第2主面F2となる面,図示せず)に触媒層(切断後、図4の第2触媒層32となるもの,説明の便宜上以下、第2触媒層32という)を形成する(第4工程P4)。この第4工程P4について図5を用いて説明する。
【0097】
図5に示すように、第3工程P3で得られた積層体144はローラ128及びローラ130の駆動によりさらに第4工程P4のエリアまで進行方向D1に進んで、一旦停止する。ここで、図5に示すように、積層体144はローラ128のところで折り返えされ、高分子電解質膜140の触媒層190が形成されていない側の主面F1B(図示せず)が上方を向き、高分子電解質膜140の触媒層190が形成されている側の主面F1Aとが下方を向くように反転される。
第4工程P4の行われるエリアには、このエリアで停止した積層体144を、その裏面(上記高分子電解質膜140の主面F1A)から支える図示しない支持手段(例えば支持台)と、高分子電解質膜140の主面F1Bの第2膜補強部材26と第2膜補強部材28との間に第2触媒層32を形成するためのマスク(図示せず)が配置されている。
【0098】
このマスクには、先に述べたマスク186の開口部186Aと同様の開口部(図示せず)が設けられている。この開口部の形状と面積は、第2触媒層32の形状と面積に対応するように設定されている。更に、図5に示すように、第4工程のエリアの上方には先に述べた触媒層形成装置130Cと同様の機構を有する触媒層形成装置130Bが配置されている。
【0099】
次にこの第4工程P4の作業の流れも先に述べた第3工程P3と同様である。第4工程P4により、積層体144上に第2触媒層32が更に形成された積層体145が得られる。次に、ローラ128及びローラ130の駆動により、積層体145は進行方向D1に沿って移動する。
【0100】
次に、図5に示すように、積層体145を裁断機構132を有する裁断装置内に導入し、予め設定されたサイズで切断し、図2に示す膜−触媒層接合体2を得る(第5工程P5)。
【0101】
なお、触媒層190及び第2触媒層32は適度な柔軟性を有するようにその成分組成、乾燥の度合いなどを調節し、ローラ128及びローラ130のところで折り返される際にも、高分子電解質膜140から剥がれ落ちないための処置が施されている。また、触媒層190及び第2触媒層32をそれぞれ高分子電解質膜140上に形成するごとに、乾燥処理(例えば加熱処理、送風処理及び脱気処理のうちの少なくとも1つの処理)を適宜行ってもよい。
【0102】
次に、膜−触媒層接合体2に第1ガス拡散層41と第2ガス拡散層42とを接合させ、図3に示した膜−電極接合体3を得る。より具体的には、積層体145を裁断した後に得られる膜−触媒層接合体2の大きさに対応する適度な大きさの第1ガス拡散層41及び第2ガス拡散層42を用意しておき、膜−触媒層接合体2に第1ガス拡散層41及び第2ガス拡散層42を接合してもよい。
【0103】
また、テープ状のガス拡散層(例えばカーボンクロスなど)を巻回したガス拡散層巻回ロール(図示せず)を準備しておき、図6に示した第1工程と同様のはり合わせ機構を有する装置を用いて第4工程P4後に得られる帯状の積層体145に対してガス拡散層巻回ロールから引き出したテープ状のガス拡散層を一体化させ、その後、第5工程P5と同様の裁断作業を行い、膜電極接合体3を連続的に形成してもよい。この場合、更に、撥水カーボン層を形成する場合には、撥水カーボン層形成用インクを用いること以外は第3工程P3に用いた触媒層形成装置130Cと同様の機構を有する撥水カーボン層形成装置(図示せず)を用いてもよい。この場合、撥水カーボン層形成装置を、はり合わせる前の帯状の積層体145又はテープ状のガス拡散層に撥水カーボン層形成用インクを塗工又はスプレーできるような位置に配置すればよい。また、撥水カーボン層を形成する場合には、撥水カーボン層を設定された位置に連続的に予め形成したテープ状のガス拡散層のロールを用いてもよい。
【0104】
なお、先に述べた第2工程P2の作業を、第3工程P3の作業の後に行うように製造プロセスを設計してもよい。また、第2工程P2のエリア内で、第2工程P2の作業を終了後、連続的に第3工程P3の作業を行ってもよい。
【0105】
次に、図1に示した膜−膜補強部材接合体1、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3の製造方法の他の一例について図面を用いて説明する。
【0106】
図9は、膜−膜補強部材接合体1の構成部材となる膜−膜補強部材積層体の製造方法を説明するための説明図である。図10は、2つの膜−膜補強部材積層体を接合する作業を説明するための説明図である。
【0107】
まず、図9に示すように、3本以上のテープ状の膜補強部材(切断後、図1の第2膜補強部材26及び28となる部材)100,102,104,106…が高分子電解質膜110の一方の主面状に、互いが略平行となるように一定の間隔で配置された構成を有する膜−膜補強部材積層体100Aを作成する。膜−膜補強部材積層体100Aは、例えば、図6を用いて先に説明した第1工程と同様の方法により作成することができる。なお、3本以上のテープ状の膜補強部材100,102,104,106…のうちの隣り合う2本の間隔は、後に形成する触媒層(第2触媒層32)の大きさに対応するように調節されている。
【0108】
次に、膜−膜補強部材積層体100Aをテープ状の膜補強部材100の長手方向に略垂直な方向から切断する(例えば、図9では、このような方向から切断する切断線を点線110A、110B、110Cとして例示する)。これにより、複数のテープ状の膜−膜補強部材積層体108Bが得られる。図9に示すように、このテープ状の膜−膜補強部材積層体108Bにある複数の膜補強部材(切断後、図1の第2膜補強部材26及び28となる部材)はそれぞれの長手方向が、本体のテープ状の膜−膜補強部材積層体108Bの長手方向と略垂直となるように配置されている。次にこのようにして得られたテープ状の膜−膜補強部材積層体108Bを巻回しロール(図示せず)にする。
【0109】
一方、図6に示した第1工程と同様の方法により、テープ状の高分子電解質膜140Aの側端部に膜補強部材142A及び膜補強部材142Bが載置された状態で接合された膜−膜補強部材積層体108A(図10参照)を作製する。そして、得られた、膜−膜補強部材積層体108Aを巻回しロール(図示せず)にする。なお、膜−膜補強部材積層体108Aの幅(短手方向の幅)と膜−膜補強部材積層体108Bの幅(短手方向の幅)は一致するように調節しておく。
【0110】
次に、図10に示すように、膜−膜補強部材積層体108Aと、膜−膜補強部材積層体108Bとを接合する。より具体的説明すると、それぞれのロールから膜−膜補強部材積層体108Aと膜−膜補強部材積層体108Bとを引き出し、これらを一対のローラ170及びローラ172を有する熱圧着機(図示せず)内に、重ね合わせるようにして誘導する。このとき、膜−膜補強部材積層体108Aの高分子電解質膜140Aの裏面(膜補強部材の配置されていない側の面)と、膜−膜補強部材積層体108Bの高分子電解質膜140Aの裏面(膜補強部材の配置されていない側の面)とが接合されるようにする。更にこのとき、膜−膜補強部材積層体108Aの主面の法線方向から膜−膜補強部材積層体108A及び膜−膜補強部材積層体108Bをみたときに、膜−膜補強部材積層体108Aから膜−膜補強部材積層体108Bの一部がはみ出して見えないように、両者を重ね合わせる。
【0111】
図10に示すように、膜−膜補強部材積層体108A及び膜−膜補強部材積層体108は、熱圧着機内のローラ170とローラ172との間を進行方向D1に進む過程において、上述した状態で接合され、テープ状の膜−膜補強部材積層体141となる。
【0112】
テープ状の膜−膜補強部材積層体141を製造した後は、例えば、先に述べた方法と同様の方法により、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3を製造することができる。
【0113】
更に、膜−電極接合体3を用いて図4に示した高分子電解質形燃料電池4を作製する方法は特に限定されず、公知の高分子電解質形燃料電池の製造技術を採用することができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の膜−膜補強部材接合体の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。図11は、本発明の膜−膜補強部材接合体の第2実施形態の基本構成の一例を示す斜視図である。
【0114】
図11に示す第2実施形態の膜−膜補強部材接合体1Aは、後述する高分子電解質膜10Aを搭載していること以外は、第1実施形態に示す図1の膜−膜補強部材接合体1と同様の構成を有している。
【0115】
次に、高分子電解質膜10Aについて説明する。図11に示すように、高分子電解質膜−内部補強膜複合体10Aは、互いに対向配置される第1高分子電解質膜11と第2高分子電解質膜12の間に内部補強膜80が配置された3層構造を有する膜である。第1高分子電解質膜11と第2高分子電解質膜12は図1に示した高分子電解質膜10と同じ構成を有する膜である。次に、図11に示す内部補強膜80について図12を用いて詳しく説明する。図12は、図11に示した膜−膜補強部材接合体1Aに備えられる内部補強膜80の基本構成の一例を示す要部拡大正面図である。
【0116】
内部補強膜80は樹脂製のフィルムで構成され、図12に示すように、厚み方向に貫通する複数の開口部(貫通孔)82を有する。開口部82の中には高分子電解質膜11及び高分子電解質膜12と同成分又は異成分の高分子電解質が充填されている。内部補強膜80の主面に対する開口部82の面積の割合(開口度)は、50%〜90%であることが好ましい。開口度を50%以上とすると、十分なイオン導電性を容易に得ることができるようになる。一方、開口度を90%以下とすると、内部補強膜80の十分な機械的強度を容易に得ることができる。
【0117】
さらに、内部補強膜80としては、延伸加工された多孔質フィルム(図示せず:例えば、ジャパンゴアテックステップ社製・商品名「ゴアセレクト(II)」)であってもよい。このように、内部補強膜80の開口部82としては、非常に微細な細孔(例えば細孔径が数十μm)であってもよい。この場合であっても、上述と同様の理由により、開口度(多孔度)は50%〜90%であることが好ましい。
【0118】
上述の内部補強膜80を構成する樹脂としては、化学的安定性および機械的安定性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフィド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、及び、ポリイミドアミドからなる群より選択される少なくとも1種の合成樹脂であることが好ましい。
【0119】
また、内部補強膜80の構成としては、先に述べた高分子電解質膜10の内部に、繊維状の補強体粒子及び球状の補強体粒子のうちの少なくとも一方を含有させることにより、上述の開口部を設けた構成としてもよい。上記の補強体粒子の構成材料としては、内部補強膜80を構成する樹脂が挙げられる。
【0120】
高分子電解質膜10Aの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の薄膜製造技術を用いて製造することができる。膜−膜補強部材接合体1Aは、この高分子電解質膜10Aを用いること以外は先に述べた膜−膜補強部材接合体1と同様の方法により製造することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態は、第1実施形態の膜−膜補強部材接合体1の製造方法において、図7に示す第2工程P2を手作業で行うものである。つまり、本実施形態では、図7において、高分子電解質膜140の一方の主面の側端部に膜補強部材142A及び膜補強部材142Bをはり付けてなる積層体141の他方の主面に、テープ状の膜補強部材136A及びテープ状の膜補強部材136Bが人手により所定長に切断してはり付けられる。その他は実施形態1と同様である。また、第1実施形態の高分子電解質膜10に代えて、第2実施形態の高分子電解質膜−内部補強膜複合体10Aを用いることもできる。
【0121】
このような、本実施形態によれば、少なくとも、積層体141、膜−触媒層接合体2、及び膜−電極接合体3を大量生産することができ、従来に比べて製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
《実施例1》
本実施例では、まず、図1に示した構造を有する本発明の膜−膜補強部材接合体を作製した。
【0123】
高分子電解質膜10(市販のパーフルオロカーボンスルホン酸からなる高分子電解質膜、150mm×150mm、厚さ:40μm)の両面に、第1膜補強部材22及び24並びに第2膜補強部材26及び28を、それぞれ図1に示した位置と同様の位置に配置した。
【0124】
なお、第1膜補強部材22及び24並びに第2膜補強部材26及び28は、PEN(ポリエチレンナフタレート)からなるテープ状の薄膜(厚さ:20μm)を使用した。
【0125】
次に、上記のようにして得た膜−膜補強部材接合体を用い、図2に示した構造を有する本発明の膜−触媒層接合体を作製した。
【0126】
電極触媒である白金粒子をカーボン粉末上に担持させてなる触媒担持カーボン(田中貴金属工業(株)製のTEC10E50E、50質量%がPt)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質溶液(旭硝子(株)製のFlemion)とを、エタノールと水との混合分散媒(質量比1:1)に分散させてカソード形成用インクを調製した。
【0127】
また、電極触媒である白金ルテニウム合金(白金:ルテニウム=1:1.5モル比(物質量比))粒子をカーボン粉末上に担持させてなる触媒担持カーボン(田中貴金属工業(株)製のTEC61E54、50質量%がPt−Ru合金)と、水素イオン伝導性を有する高分子電解質溶液(旭硝子(株)製のFlemion)とを、エタノールと水との混合分散媒(質量比1:1)に分散させてアノード触媒層形成用インクを調製した。
【0128】
得られたカソード触媒層形成用インクを、上述の高分子電解質膜の片面にスプレー法によって塗布し、白金担持量が0.6mg/cm2で寸法が140mm×140mmのカソード触媒層を、図2に示した位置と同様の位置に配置されるように形成した。
【0129】
さらに、得られたアノード触媒層形成用インクを、上述の高分子電解質膜のカソード触媒層が形成された面とは反対の面にスプレー法によって塗布し、白金担持量が0.35mg/cm2で寸法が140mm×140mmのアノード触媒層を、図2に示した位置と同様の位置に配置されるように形成した。
【0130】
このようにしてアノード触媒層及びカソード触媒層を形成することにより、膜−触媒層接合体を形成した。
【0131】
つぎに、上記のようにして得た膜−触媒層接合体を用い、図3に示した構造を有する膜−電極接合体を作製した。
【0132】
ガス拡散層を形成するために、寸法が200mm×200mmで厚みが100μmのカーボンペーパーを、フッ素樹脂含有の水性ディスパージョンに含浸した後、乾燥することで上記カーボンクロスに撥水性を付与した(撥水処理)。
【0133】
続いて、撥水処理後のカーボンペーパーの一方の面(全面)に撥水カーボン層を形成した。導電性カーボン粉末(電気化学工業(株)製のデンカブラック(商品名))と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粉末を分散させた水溶液(ダイキン工業(株)製のD−1)とを混合し、撥水カーボン層形成用インクを調製した。この撥水カーボン層形成用インクを、ドクターブレード法によって、上記撥水処理後のカーボンペーパーの一方の面に塗布し、撥水カーボン層を形成した。このとき、撥水カーボン層の一部は、上記カーボンペーパーの中に埋めこまれていた。
【0134】
その後、撥水処理および撥水カーボン層形成後のカーボンペーパーを、PTFEの融点以上の温度である350℃で30分間焼成した。最後に上記カーボンペーパーの中央部分を抜き型にて切断し、寸法が142.5mm×142.5mmのガス拡散層を得た。
【0135】
つぎに、上記のようにして得たガス拡散層の撥水カーボン層の中央部分がカソード触媒層およびアノード触媒層に接するように、2枚のガス拡散層で上述の膜−触媒層接合体を挟み、全体をホットプレス機で熱圧着(120℃、30分、10kgf/cm2)することにより、2枚のガス拡散層のそれぞれが図3に示した位置と同様の位置に配置されるようにして本発明の膜−電極接合体を得た。
【0136】
最後に、上記のようにして得た本発明の膜−電極接合体を用い、図4に示す構造を有する本発明の高分子電解質型燃料電池(単電池1)を作製した。
【0137】
上記膜電極接合体を、燃料ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレータ板と、酸化剤ガス供給用のガス流路および冷却水流路を有するセパレータ板とで挟持し、両セパレータ板間でカソードおよびアノードの周囲にフッ素ゴム製のガスケットを配置し、有効電極面積(アノードまたはカソードの有効電極面積)が196cm2である単電池(本発明の高分子電解質型燃料電池)を得た。
《比較例1》
第1膜補強部材22及び24並びに第2膜補強部材26及び28の代わりに、図13に示した額縁状の保護膜220及び保護膜240(ここでは、何れも実施例1と同じPEN製のもの)を配置したこと以外は、実施例1と同様にして膜−補強部材接合体、膜−触媒層接合体、膜−電極接合体および単電池(単電池2)を作製した。
[評価試験]
(1)エージング処理(活性化処理)
実施例1および比較例1で得られた単電池1及び単電池2を、64℃に制御し、アノード側のガス流路に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード側のガス流路に空気をそれぞれ供給した。この際、水素ガス利用率を70%に設定し、空気利用率を55%に設定し、水素ガスおよび空気の露点がそれぞれ約64℃となるように加湿してから単電池に供給した。そして、電流密度0.2A/cm2 で12時間、単電池を運転してエージングを行った。
(2)電池出力特性評価試験1
実施例1及び比較例1の単電池について、燃料電池の実運転に近い条件で行う定格耐久試験を行った。
【0138】
定格耐久試験においては、電流密度を0.16A/cm2とし、アノード側のガス流路に、水素ガス利用率が75%となるように、水素および二酸化炭素の混合ガス(体積比3:1)を供給した以外は、上記エージングと同じ条件下で各単電池を運転し、12時間経過後の出力電圧を記録した。
(3)電池出力特性評価試験2
実施例1及び比較例1の単電池について、膜電極接合体の劣化を加速して、より短時間で寿命の判断が可能な加速耐久試験を行った。
【0139】
加速耐久試験においては、実施例1および比較例1で得られた単電池1及び単電池2を、90℃に制御した以外は、上記電池出力特性評価試験1(定格耐久試験)と同じ条件下で各単電池を運転し、12時間経過後の出力電圧を記録した。なお、単電池1及び単電池2の90℃の制御は加熱用のヒータを用いて行った。
【0140】
【表1】


表1に示した結果から明らかなように、実施例1は、比較例1と同等の電池出力特性を有することが確認できた。
【0141】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0142】
例えば、上述した本発明の実施形態については、膜補強部材(例えば、図1に示した第1膜補強部材22及び24)の外側の周縁部(エッジ)が高分子電解質膜(例えば、図1に示した高分子電解質膜10)の周縁部(エッジ)が一致している態様(高分子電解質膜の主面の略法線方向から見た場合に膜補強部材の外側のエッジと高分子電解質膜のエッジが重なり、高分子電解質膜のエッジがはみ出て見えない状態となっている態様)について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明においては、例えば、本発明の効果を得られる範囲において、膜補強部材のエッジが高分子電解質膜のエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出している構成を有していてもよく、高分子電解質膜のエッジが膜補強部材のエッジよりも全体的に又は部分的にはみ出している構成を有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の膜−補強部材接合体、膜−触媒層接合体、及び膜−電極接合体は、大量生産が可能な高分子電解質形燃料電池の部品として有用である。
【0144】
本発明の高分子電解質形燃料電池は、自動車などの移動体、分散型(オンサイト型)発電システム(家庭用コジェネレーションシステム)などの主電源又は補助電源として好適に利用されることが期待される。
【0145】
本発明の膜−補強部材接合体の製造方法、膜−触媒層接合体の製造方法、及び膜−電極接合体の製造方法は、大量生産が可能な高分子電解質形燃料電池の製造方法に用いられるものとして有用である。
【0146】
本発明の高分子電解質形燃料電池の製造方法は、自動車などの移動体、分散型(オンサイト型)発電システム(家庭用コジェネレーションシステム)などの主電源又は補助電源として好適に利用される高分子電解質形燃料電池の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の膜−膜補強部材接合体の第1実施形態の基本構成の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す膜−膜補強部材接合体1にさらに触媒層が配置された膜−触媒層接合体(本発明の膜−触媒層接合体の第1実施形態)の基本構成の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す膜−触媒層接合体2にさらにガス拡散層が配置された膜−電極接合体(本発明の膜−電極接合体の第1実施形態)の基本構成の一例を示す斜視図である。
【図4】図3に示す膜−電極接合体3を具備する燃料電池(本発明の高分子電解質形燃料電池の第1実施形態)の基本構成の一例(単電池の部分)を示す断面図である。
【図5】図1に示した膜−膜補強部材接合体1、図2に示した膜−触媒層接合体2及び図3に示した膜−電極接合体3を製造するための一連の工程の一部を概略的に示す説明図である。
【図6】図5における第1工程P1の作業を説明するための説明図である。
【図7】図5における第2工程P2の作業を説明するための説明図である。
【図8】図5における第3工程P3の作業を説明するための説明図である。
【図9】膜−膜補強部材接合体1の構成部材となる膜−膜補強部材積層体の製造方法を説明するための説明図である。
【図10】膜−膜補強部材積層体を接合する作業を説明するための説明図である。
【図11】本発明の膜−膜補強部材接合体の第2実施形態の基本構成の一例を示す斜視図である。
【図12】図11に示した膜−膜補強部材接合体1Aに備えられる内部補強膜80の基本構成の一例を示す要部拡大正面図である。
【図13】特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池のうちの、固体高分子電解質膜と、ふっ素樹脂シート(保護膜)との位置関係を説明するための要部分解斜視図である。
【図14】特許文献1に記載の高分子電解質形燃料電池を、公知の薄膜積層体の製造技術を用いて大量生産しようと意図する場合に一般的に想定される製造法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0148】
1、1A・・・膜−膜補強部材接合体、2、膜−触媒層接合体、3・・・膜−電極接合体、4・・・燃料電池、10・・・高分子電解質膜、10A・・・高分子電解質−内部補強膜複合体、11・・・第1高分子電解質膜、12・・・第2高分子電解質膜、22、24・・・第1膜補強部材、26、28・・・第2膜補強部材、31・・・第1触媒層、32・・・第2触媒層、41・・・第1ガス拡散層、42・・・第2ガス拡散層、50、52・・・セパレーター、60、62・・・ガスケット、70、72、74、76・・・隙間、78・・・ガス流路、80・・・内部補強膜、82・・・開口部、120A、120B、122、134A、134B・・・ロール、124、126・・・熱圧着機、128、130・・・ローラ、130B、130C・・・触媒層塗工機、132・・・裁断機、135A、135B・・・基材−膜補強部材積層体、136A、136B・・・膜補強部材、137A、137B・・・基材、138・・・膜補強部材切断面、140・・・高分子電解質膜、141・・・膜−膜補強部材積層体、142A、142B・・・膜補強部材、143、144、145・・・積層体、186・・・マスク、186A・・・開口部、190・・・触媒層、D1、D2、D3・・・進行方向、F1・・・第1主面、F2・・・第2主面、F3・・・第1触媒層の主面、F4・・・第2触媒層の主面、F5・・・第1ガス拡散層の主面、F6・・・第2ガス拡散層の主面、F1A、F22、F24、F26、F28・・・主面、P1・・・第1工程、P2・・・第2工程、P3・・・第3工程、P4・・・第4工程、P5・・・第5工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面及び第2主面を有する高分子電解質膜と、
前記第1主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、前記第1主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材と、
前記第2主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に配置されており、前記第2主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材と、
を有しており、
前記1対の第1膜補強部材と前記1対の第2膜補強部材とは、全体として前記高分子電解質膜の4辺に沿って延在しかつ前記高分子電解質膜の4隅の部分を挟むように配置されている、膜−膜補強部材接合体。
【請求項2】
前記高分子電解質膜中に配置されておりイオン伝導パスとなる貫通孔を有する内部補強膜を更に具備している、請求項1に記載の膜−膜補強部材接合体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の膜−膜補強部材接合体と、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第1主面のうちの前記第1膜補強部材が配置されてない領域の少なくとも一部に配置されている第1触媒層と、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第2主面のうちの前記第2膜補強部材が配置されていない領域の少なくとも一部に配置されている第2触媒層と、を有する、膜−触媒層接合体。
【請求項4】
請求項3に記載の膜−触媒層接合体と、
前記膜−触媒層接合体の前記第1触媒層を被覆するように配置されている第1ガス拡散層と、
前記膜−触媒層接合体の前記第2触媒層を被覆するように配置されている第2ガス拡散層と、を有する、膜−電極接合体。
【請求項5】
前記第1ガス拡散層は、前記第1触媒層と前記第1膜補強部材の少なくとも一部とを被覆するように配置されており、
前記第2ガス拡散層は、前記第2触媒層と前記第2膜補強部材の少なくとも一部とを被覆するように配置されている、請求項4に記載の膜−電極接合体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の膜−電極接合体を具備している、高分子電解質形燃料電池。
【請求項7】
互いに対向しておりかつ略矩形状を呈する1対の第1主面及び第2主面を有する高分子電解質膜の前記第1主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に、前記第1主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第1膜補強部材を配置する工程Aと、
前記第2主面の4辺のうちの互いに対向する1組の辺に沿う部分に、前記第2主面よりも小さな主面を有しかつ膜状の形状を呈する1対の第2膜補強部材を配置する工程Bと、を含み、
前記工程A及び工程Bにおいて、前記1対の第1膜補強部材と前記1対の第2膜補強部材とは、全体として前記高分子電解質膜の4辺に沿って延在しかつ前記高分子電解質膜の4隅の部分を挟むように配置される、膜−膜補強部材接合体の製造方法。
【請求項8】
前記工程Aは、テープ状の前記高分子電解質膜のロールと2つのテープ状の前記第1膜補強部材のロールとを準備する工程と、各々のロールからテープ状の前記高分子電解質膜と2つのテープ状の第1膜補強部材とを引き出して、該テープ状の高分子電解質膜の第1主面の両側端部に前記2つの第1膜補強部材を接合する工程と、前記2つのテープ状の第1膜補強部材がその両側端部に接合されたテープ状の高分子電解質膜を所定の長さに切断する工程と、を含むものである、請求項7に記載の膜−膜補強部材接合体の製造方法。
【請求項9】
前記高分子電解質膜中にイオン伝導パスとなる貫通孔を有する内部補強膜が配置されている、請求項7又は8に記載の膜−膜補強部材接合体の製造方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の膜−膜補強部材接合体方法によって膜−膜補強部材接合体を製造する工程と、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第1主面のうちの前記第1膜補強部材が配置されてない領域の少なくとも一部に第1触媒層を配置する工程Cと、
前記膜−膜補強部材接合体の前記高分子電解質膜の前記第2主面のうちの前記第2膜補強部材が配置されていない領域の少なくとも一部に第2触媒層を配置する工程Dと、を含む、膜−触媒層接合体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の膜−触媒層接合体の製造方法によって膜−触媒層接合体を製造する工程と、
前記膜−触媒層接合体の前記第1触媒層を被覆するように第1ガス拡散層を配置する工程Eと、
前記膜−触媒層接合体の前記第2触媒層を被覆するように第2ガス拡散層を配置する工程Fと、を有する、膜−電極接合体の製造方法。
【請求項12】
前記工程Eにおいて、前記第1ガス拡散層は、前記第1触媒層と前記第1膜補強部材の少なくとも一部とを被覆するように配置され、
前記工程Fにおいて、前記第2ガス拡散層は、前記第2触媒層と前記第2膜補強部材の少なくとも一部とを被覆するように配置される、請求項11に記載の膜−電極接合体の製造方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の膜−電極接合体の製造方法によって膜−電極接合体製造する工程を含む、高分子電解質形燃料電池の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−242637(P2007−242637A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166281(P2007−166281)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2006−249466(P2006−249466)の分割
【原出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】