説明

膜−電極接合体及びその製造方法

【課題】効率良く製造することが可能な膜−電極接合体及びその製造方法並びにその燃料電池を組み込んだ燃料電池を提供する。
【解決手段】四辺形の高分子電解質膜2と該電解質膜の周縁部を除いて該電解質膜を挟む一対の触媒層と一対のガス拡散層3とを有し、ガス拡散層当接領域に反応ガスの流路A,Cが凹設された一対のセパレータに挟まれる膜−電極接合体1において、ガス拡散層当接領域における反応ガスの流路A,Cが、上流から下流に向かって、高分子電解質膜1の第1辺2aに沿った方向において反転しながら第1辺に隣接する第2辺2bに沿って第1辺から該第1辺に対向する第3辺2cに向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、高分子電解質膜2の周縁部の第2辺と該第2辺に対向する第4辺2dとに対応する部分に高分子電解質膜を補強する補強部4が形成され、高分子電解質膜2の周縁部の第3辺2cに対応する部分には補強部4が形成されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜−電極接合体及びその製造方法並びにその膜−電極接合体を組み込んだ燃料電池に関し、特に高分子電解質膜の周縁部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は多数のセルが積層されて構成されており、各セルは膜−電極接合体(MEA:membrane-electrode assembly)がその周縁部に配設されたガスケットとともに一対の導電性のセパレータで挟まれるようにして構成されている。膜−電極接合体は高分子電解質膜と、この高分子電解質膜の周縁部を除いて該高分子電解質膜を挟むように設けられた一対の電極とを有している。各電極は、高分子電解質膜上に形成された触媒層とこの触媒層の上に設けられたガス拡散層とで構成されている。各セパレータの内面には膜−電極接合体のガス拡散層に当接する領域(以下、ガス拡散層当接領域)に反応ガスの流路が凹設されている。そして、一方のセパレータの反応ガスの流路に、反応ガスとして燃料ガスが供給され、他方のセパレータの反応ガスの流路に、反応ガスとして酸化剤ガスが供給され、各電極においてそれぞれ化学反応する。それにより、熱とともに電気が発生する。
【0003】
ところで、この従来の燃料電池では、高分子電解質膜の電極の周辺部分が劣化することが知られており、その対策として、高分子電解質膜の周縁部を補強することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−308228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の燃料電池では、実際に膜−電極接合体を効率良く製造することが困難であった。すなわち、特許文献1の燃料電池では、高分子電解質膜の周縁部を全周に渡って補強しているため、高分子電解質膜を原反の状態で連続的に補強加工することができず、膜−電極接合体に用いる膜片(以下、高分子電解質膜片)に切断した後、その高分子電解質膜片に対して個々に補強加工を施していた。このため、膜−電極接合体を効率良く生産することができなかった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、効率良く製造することが可能な膜−電極接合体及びその製造方法並びにその燃料電池を組み込んだ燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下のような知見が得られた。
【0007】
図9は、検討に使用した燃料電池における膜−電極接合体の厚み方向から見た膜−電極接合体とセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路との位置関係を示す模式図である。図9において、各流路202〜204は、1本の線で表されているが、実際には複数本の流路で構成されている。
【0008】
図9に示すように、反応ガス流路202,203及び冷却水流路204は、膜−電極接合体200の厚み方向から見てガス拡散層3の内側に位置する領域においては、フラッディング防止及高分子電解質膜乾燥防止の観点から互いに平行な(正確には反転部の間の流路が互いに平行な)サーペンタイン状に形成されている。この燃料電池では、膜−電極接合体200を構成する高分子電解質膜201の平面形状(正確にはセルスタックの断面)が直角四辺形に形成されており、この燃料電池は高分子電解質膜201の各対向する2辺がそれぞれ鉛直方向及び水平方向を向くように設置される。そして、各流路202〜204は、高分子電解質膜の上辺201aに沿った方向において反転しながら右辺201b(左辺201d)に沿って上辺201aから下辺201cに向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成されている。従って、反応ガス及び冷却水は各セルにおいて左右方向に蛇行しながら上から下へと流れる。従って、アノードガスの流れとカソードガスの流れとの関係はいわゆる平行流となっている。また、高分子電解質膜201の周縁部は補強されていない。
【0009】
このような燃料電池において、耐久試験(所定条件下で連続発電運転)を行った後、膜−電極接合体201の主面におけるガス(正確には水素)のリーク量(以下、ガスリーク量)の分布を測定したところ図10に示すようなデータが得られた。図10は検討した燃料電池の膜−電極接合体201の主面におけるガスリーク量の分布を示すグラフである。
図10及び図9を参照すると、ガスリーク量は高分子電解質膜201の周縁部において多く、特に右辺201b及び左辺201dに対応する部分において多い。一方、下辺201cに対応する部分では少なく、上辺201aに対応する部分ではやや多い。ガスリーク量は高分子電解質膜の劣化に応じて増加するので、このガスリーク量の分布は、高分子電解質膜の劣化の分布を表していると考えられる。
【0010】
高分子電解質膜201の周縁部の右辺201b及び左辺201dに対応する部分において劣化が大きい理由は、これらの部分(特にガス拡散層3の外周部)はセパレータの反応ガスの流路202,203の反転部に当接しているので、右辺201b及び左辺201dに沿った方向において、セパレータの流路に当接する部分とセパレータの流路でない部分に当接する部分とが交互に存在する。このため、セルスタックの締結力によって高分子電界質膜201に賦課される圧力が右辺201b及び左辺201dに沿った方向においては不均一となり、高い圧力が賦課される部分が大きく劣化するのであると推察される。一方、高分子電解質膜201の周縁部の上辺201a及び下辺201cに対応する部分の劣化が小さい理由は、これらの部分は、反応ガスの流路202,203のターン間の直線部分に当接しているので、上辺201a及び下辺201cに沿った方向においては、セパレータの流路に当接する部分とセパレータの流路でない部分に当接する部分とのいずれかが存在し、それらが混在することはない。このため、セルスタックの締結力によって高分子電界質膜201に賦課される圧力が上辺201a及び下辺201cに沿った方向においては均一となり、劣化が小さいのであると推察される。さらに、高分子電解質膜201の周縁部の下辺201cに対応する部分の劣化が特に小さい理由は、この部分は、反応ガスの流路202,203の下流部に当接するため、反応ガスの反応により生成される水分によってこの部分が十分加湿されるため特に劣化が小さいのであると推察される。
【0011】
この知見によれば、高分子電解質膜はその4辺のうちの、セパレータにサーペンタイン状に形成された反応ガスの流路の列状の反転部に沿った2辺に対応するその周縁部には補強部を形成する必要があるが、残りの2辺のうちの、反応ガスの流路の下流部に沿った辺に対応するその周縁部には補強部を形成する必要がないことが判明した。
【0012】
さらに、本発明者等は、反応ガスの流れがいわゆる直交流である場合についても高分子電解質膜の劣化を調べた。その結果、直交流の場合は、矩形の高分子電解質膜の周縁部のうち、アノードガス流路の上流部に対応する部分と、カソードガス流路の上流部に対応する部分との劣化が大きいことが判明した。
【0013】
そこで、本発明の膜−電極接合体は、四辺形の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の周縁部を除いて該高分子電解質膜を挟むように設けられた一対の触媒層と該一対の触媒層の上にそれぞれ設けられた一対の導電性のガス拡散層とを有し、その内面の前記ガス拡散層に当接する領域であるガス拡散層当接領域に反応ガスの流路が凹設された一対のセパレータに挟まれて燃料電池に組み込まれる膜−電極接合体において、一方の前記セパレータにおいて、前記ガス拡散層当接領域における反応ガスの流路が、上流から下流に向かって、前記高分子電解質膜の1つの辺(以下、第1辺)に沿った方向において反転しながら前記第1辺に隣接する辺(以下、第2辺)に沿って前記第1辺から該第1辺に対向する辺(以下、第3辺)に向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、かつ他方の前記セパレータにおいて、前記ガス拡散層当接領域における反応ガスの流路が、上流から下流に向かって、前記高分子電解質膜の第2辺に沿った方向において反転しながら前記第1辺に沿って前記第2辺から該第2辺に対向する辺(以下、第4辺)に向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、前記高分子電解質膜の周縁部の前記第1辺と前記第2辺とに対応する部分に前記高分子電解質膜を補強する補強部が形成され、前記高分子電解質膜の周縁部の前記第3辺と前記第4辺とに対応する部分には前記補強部が形成されていない。
【0014】
また、本発明の膜−電極接合体の製造方法は、四辺形の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の周縁部を除いて該高分子電解質膜を挟むように設けられた一対の触媒層と該一対の触媒層の上にそれぞれ設けられた一対の導電性のガス拡散層とを有する膜−電極接合体の製造方法において、所定の幅を有する長尺の膜状の芯材を準備する工程と、前記芯材に、該芯材を厚み方向に貫通する貫通孔が形成された通孔形成領域と、前記貫通孔が実質的に形成されていない通孔非形成領域とを、該通孔非形成領域が前記芯材の幅方向に帯状に延びるようにして前記芯材の長さ方向に所定のピッチで複数存在しかつ前記通孔形成領域が残りの部分に存在するように形成する工程と、前記通孔非形成領域及び通孔形成領域が形成された芯材の両面に前記貫通孔を埋めるように高分子電解質層を形成して前記複数の通孔非形成領域上に高分子電解質層が形成されてなる複数の高強度部を有する長尺の高分子電解質膜を作成する工程と、前記高分子電解質膜の片側の縁に沿ってテープ状の補強部材を配設する工程と、前記長尺の高分子電解質膜を前記複数の高強度部の近傍において切断し、それにより、前記所定のピッチに相当する長さを有しかつ前記切断により形成された辺に沿う前記高強度部を有するとともに前記辺に隣接する辺に沿って配設され両端が切断された前記補強部材を有する膜片状の高分子電解質膜を作成する工程と、前記膜片状の高分子電解質膜の両面に、前記高強度部及び補強部材とこれらに対向する辺との間に少なくとも一部が位置するように前記一対の触媒層及びガス拡散層を形成する工程と、を有する。
【0015】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成を有し、効率良く製造することが可能な膜−電極接合体及びその製造方法並びにそれを組み込んだ燃料電池を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態及び参考発明の参考形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、便宜上、本発明の実施形態と参考形態とに共通に通し番号を付す。
【0018】
(第1参考形態)
図1は参考発明の第1参考形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。図2は図1の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIIB-IIB線に沿った断面を示す断面図である。
【0019】
図2(a)及び図2(b)に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1は、高分子電解質膜2を有している。この高分子電解質膜2の周縁部を除く部分の両面には一対の触媒層5がそれぞれ形成され、この一対の触媒層5の上に一対のガス拡散層3がそれぞれ設けられている。ガス拡散層3はここでは触媒層5の端面をも覆うように設けられている。そして触媒層5とガス拡散層3とが電極を構成している。
【0020】
高分子電解質膜(正確には高分子電解質膜片)2は、ここでは、多数の貫通孔が形成された膜状の芯材(図3の芯材51)の両面にその貫通孔を埋めるように高分子電解質層が形成されて構成されている。芯材の材料には、例えば、ポリフェニルスルフィド(PPS)が好適に用いられる。この芯材がPPSで構成される場合には、膜状の芯材にパンチングにより厚み方向の貫通孔(透孔:through hole)が形成される。高分子電解質層の材料には、プロトン伝導性を有する電解質、例えば、パーフルオロスルホン酸が好適に用いられる。図2(a)及び図2(b)において、高分子電解質膜2の着色部分は芯材に透孔が形成されている部分、すなわち非補強部である。一方、高分子電解質膜2の非着色部分4は芯材に透孔が形成されていない部分、すなわち、補強部である。この高強度部4は、透孔が形成されていないので、透孔の形成によって強度が低下しておらず、芯材の本来の強度を有している。この高強度部4は高分子電解質膜2の対向する2辺2b,2dに沿って帯状に形成されている。この高強度部4の配設位置については、後で詳述する。ガス拡散層3の周縁部は、ここでは、この高分子電解質膜2の高強度部4上に形成されている。もちろん、ガス拡散層3の周縁部が高強度部4上に形成されていなくても構わない。
【0021】
触媒層5は、例えば、白金等の触媒を担持した導電性担体で構成されている。導電性担体の材料には、例えば、ケッチェン、アセチレンブラック等が好適に用いられる。
【0022】
ガス拡散層3は多孔性の導電体で構成されている。多孔性の導電体としては、例えば、カーボン不織布、カーボン紙等が好適に用いられる。
【0023】
次に、高分子電解質膜2の高強度部4の配設位置について詳しく説明する。
【0024】
図1において、本参考形態の膜−電極接合体1を用いた燃料電池(第4参考形態)では、セルスタックの断面が直角四辺形に形成されており、従って、膜−電極接合体1を構成する高分子電解質膜2も直角四辺形の平面形状を有するように形成されている。そして、この燃料電池は高分子電解質膜2の各対向する2辺がそれぞれ鉛直方向及び水平方向を向くように設置される。以下、この高分子電解質膜2の各辺を、便宜上、図1に示す方向に従って、それぞれ、上辺2a(第1辺)、右辺2b(第2辺)、下辺2c(第3辺)、及び左辺2d(第4辺)と呼ぶ。
【0025】
図1は、設置状態における膜−電極接合体1をその背面(カソード側の主面)側から見た外観を示している。図1では、膜−電極接合体1の背面の外観に重ねるようにして各セパレータに形成された反応ガスの流路A,C及び冷却水流路Wが示されている。図1では、反応ガス流路A,C及び冷却水流路Wは、1本の線で表されているが、実際には複数本の流路で構成されている。
【0026】
高分子電解質膜2の上縁部には、その右側部分に冷却水供給マニフォールド孔23Aが形成されている。高分子電解質膜2の右縁部には、その上側部分に酸化剤ガス供給マニフォールド孔22Aが形成されている。高分子電解質膜2の下縁部には、その右側部分に燃料ガス排出マニフォールド孔21Bが形成され、その左側部分に酸化剤ガス排出マニフォールド孔22Bが形成されている。高分子電解質膜2の左縁部には、その上側部分に燃料ガス供給マニフォールド孔21Aが形成され、その下側部分に冷却水排出マニフォールド孔23Bが形成されている。
【0027】
各セパレータには、これらの各マニフォールド孔21A〜23Bに対応するマニフォールド孔が形成されており、高分子電解質膜2及び各セパレータの各マニフォールド孔がそれぞれ繋がって、それぞれ、燃料ガス供給マニフォールド、燃料ガス排出マニフォールド、酸化剤ガス供給マニフォールド、酸化剤ガス排出マニフォールド、冷却水供給マニフォールド、及び冷却水排出マニフォールドが形成される。
【0028】
アノードセパレータには、内面(膜−電極接合体1に当接する面)に一方の反応ガスの流路としての燃料ガス流路Aが燃料ガス供給マニフォールド孔から燃料ガス排出マニフォールド孔に至るように形成され、外面(内面と反対側の面)に冷却水流路Wが冷却水供給マニフォールド孔から冷却水排出マニフォールド孔に至るように形成されている。
【0029】
カソードセパレータには、内面(膜−電極接合体1に当接する面)に他方の反応ガスの流路としての酸化剤ガス流路Cが酸化剤ガス供給マニフォールド孔から酸化剤ガス排出マニフォールド孔に至るように形成され、外面(内面と反対側の面)に冷却水流路Wが冷却水供給マニフォールド孔から冷却水排出マニフォールド孔に至るように形成されている。
燃料ガス流路A、酸化剤ガス流路C、及び冷却水流路Wは、膜−電極接合体1の厚み方向から見てガス拡散層3の内側に位置する領域においては、サーペンタイン状に形成されている。ここで、サーペンタイン状の流路とは、参考発明及び本発明においては、微視的にはある方向103に対して交差するように曲がりくねりながら巨視的には前記ある方向103に延びるように形成された流路をいう。本参考形態では、サーペンタイン状の流路は、微視的には上下方向(右辺2b及び左辺2dに沿った方向)103に対し直交する方向、すなわち左右方向(上辺2a及び下辺2cに沿った方向)104に所定距離延びてそこで反転し、そこから左右方向における逆方向に所定距離延びてそこで反転するという区域を繰り返すようにして、巨視的には上下方向103に延びるように形成されている。
【0030】
そして、各流路A,C,Wは、フラッディング防止及高分子電解質膜乾燥防止の観点から、反転部の間の流路が互いに平行になるように形成されている。なお、各流路A,C,Wの反転部の間の部分を流れる流体の方向は互いに同じ方向でも反対方向でも構わない。また、反転部の間の流路は、巨視的な流路の延びる方向103に対し直交しなくても構わない。
【0031】
本参考形態では、反応ガス及び冷却水は、各セルにおいて、各々の供給マニフォールドから各々の流路A,C,に流入し、そこを左右方向に蛇行しながら上から下へと流れて、各々の排出マニフォールドに流出する。このようなアノードガスの流れとカソードガスの流れとの関係を参考発明及び本発明においては平行流と呼ぶ(一般的にもこのように呼ぶ)。
【0032】
そして、本参考形態では、サーペンタイン状の各流路A,C,Wの列状の反転部の沿った辺である右辺2b及び左辺2dに沿って帯状に高分子電解質膜の高強度部4が形成されている。
【0033】
このような構成とすることにより、耐久試験において劣化が大きい、サーペンタイン状の各流路A,C,Wの列状の反転部の沿った辺である右辺2b及び左辺2dに対応する高分子電解質膜2の周縁部(正確にはガス拡散層3(電極)の周辺部)が高強度部4によって強度的に補強されるので、高分子電解質膜2の劣化を低減することができる。また、高分子電解質膜2の周縁部を全周に渡って補強する場合に比べて補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0034】
次に、以上のように構成された膜−電極接合体1の製造方法を説明する。
【0035】
図3(a)及び図3(b)は本参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【0036】
膜−電極接合体を製造するには、まず、原反の芯材51に多数の透孔をパンチングにより形成する。加工前の芯材51は、ロール(図示せず)の状態に巻かれており、その巻かれた芯材が引き出されながらパンチング加工され、その加工された芯材51がロール52の状態に巻き取られる。芯材51は、所定の幅(高分子電解質膜片の幅:上辺2a及び下辺2cの長さ)L2に加工(スリット)されている。そして、パンチング加工の際、芯材51は、その両縁に沿った所定の帯状の領域51aには透孔を形成せず、その他の領域(以下、通孔形成領域という)51bには透孔を形成するようにパンチングされる(図3(a))。この透孔を形成されない領域(以下、通孔非形成領域という)51aは、図2の高強度部4となるべき領域である。
【0037】
次いで、芯材51の両面に透孔を埋めるようにして高分子電解質層が形成される。この工程も、加工前の芯材がロールから引き出され、加工後ロールに巻き取られるようにして行われる。これにより、帯状の高強度部4を有する高分子電解質膜2が作製される。
【0038】
次いで、図3(b)に示すように、高分子電解質膜2がロールから引き出されながら、所定の長さ(高分子電解質膜片の長さ:左辺2d及び右辺2b)L1にカットされる。これにより、矩形の膜片状の高分子電解質膜2が形成される。
【0039】
次いで、図2(a)及び図2(b)に示すように、この矩形の膜片状の高分子電解質膜2の両面に触媒層5及びガス拡散層3が順次設けられる。この工程は周知であるので、その詳しい説明は省略する。次いで、この矩形の膜片状の高分子電解質膜2の周縁部の所定位置に、アノードガス供給マニフォールド孔21A、アノードガス排出マニフォールド孔21B、カソードガス供給マニフォールド孔22A、カソードガス排出マニフォールド孔22B、冷却水供給マニフォールド孔23A、及び冷却水排出マニフォールド孔23Bが形成される。
【0040】
このようにして、膜−電極接合体1が作製される。
【0041】
以上の膜−電極接合体の製造方法によれば、膜−電極接合体1に用いる膜片(高分子電解質膜片)に切断する前に、原反の状態で連続して高分子電解質膜2に高強度部4を形成することができるため、膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0042】
[変形例1]
本変形例では、芯材51が多孔質のジャパンゴアテックス社製・商品名「ゴアセレクト(II)」で構成される。そして、図3(a)に示す工程において、パンチングに代えて、一対の熱ロールで芯材51の所定領域を挟むようにして押圧することにより、該所定領域の芯材51の空隙(孔)が潰れて、通孔非形成領域51a(高強度部4)が形成される。本変形例によっても、上述の場合と同様の効果を得ることができる。
【0043】
[変形例2]
本変形例では、芯材51が多孔質のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される。そして、図3(a)に示す工程において、パンチングに代えて、まず、芯材51の通孔非形成領域51a(高強度部4)となるべき部分(芯材51の幅方向の2箇所、図3(a)中の帯状の領域51a)を固定手段で固定して芯材51を幅方向に延伸し(このとき、帯状の領域51a以外の部分が延伸される)、その後、その固定を解除して芯材51を長手方向に一対の押圧ロールで延伸する(このときは図3(a)中の帯状の領域51a及び当該帯状の領域51a以外の領域51bの双方が延伸される)。これにより、固定手段で固定された部分は芯材の長手方向にのみ延伸されるので、帯状の領域51aの厚さをその他の領域51bの厚さに比較して大きくすることができる。そのため帯状の領域51a(高分子電解質膜2の周辺部に対応する領域)の機械的強度をその他の領域51bの機械的強度よりも高くできる。このような本変形例によっても、参考発明の効果を得ることができる。
【0044】
このように、本参考形態では、高分子電解質膜の周縁部のうち、互いに対向する2辺に対応する部分のみに高強度部4が形成されていることから、高分子電解質膜2を原反の状態で連続的に補強加工することができるため、膜−電極接合体を効率良く生産することができる。また、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体を効率良く生産することができる。
【0045】
(第2参考形態)
図4は参考発明の第2参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIVB-IVB線に沿った断面を示す断面図である。図4において図2と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0046】
図4に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1では、高分子電解質膜2が、第1参考形態の高強度部4に代えて、補強部材6によって補強されている。これ以外の点は第1参考形態と同様である。
【0047】
具体的には、高分子電解質膜2が内部に芯材を有しない高分子電解質膜で構成されている。そして、高分子電解質膜2の周縁部のうち、右辺2b及び左辺2dに対応する部分に一対の所定幅の板状の補強部材6が右辺2b及び左辺2dに沿ってそれぞれ配設されている。補強部材6は高分子電解質膜2の両面にそれぞれ一対配設されている。触媒層5は一対の補強部材6に両側が接するように形成され、ガス拡散層3は触媒層5と補強部材6の一部の上に設けられている。補強部材6の材料には、例えば、PPS、PTFE等の樹脂が好適に用いられる。
【0048】
次に、以上のように構成された膜−電極接合体の製造方法を説明する。
【0049】
図5(a)、図5(b)、図6(a)、及び図6(b)は本参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【0050】
本参考形態では、まず、図5(a)に示すように、高分子電解質膜2が所定の幅(高分子電解質膜片の幅)L2を有する原反に加工(スリット)されロール53に巻き取られる。次いで、図5(b)に示すように、高分子電解質膜2がロール53から引き出されて所定の長さ(高分子電解質膜片の長さ)L1にカットされる。
【0051】
次いで、図6(a)及び図6(b)に示すように、膜片状の高分子電解質膜(高分子電解質膜片)2の両面に一対の触媒層5が形成される。その後、各触媒層5の両側(左右方向の端)に接するように一対の補強部材6が配設される。具体的には、補強部材6はテープ状のものを所定長にカットして高分子電解質膜2に貼り付けるようにして配設される。
次いで、図4(a)及び図4(b)に示すように、触媒層5と補強部材6の一部との上にガス拡散層3が設けられる。
【0052】
以上に説明したような本参考形態によれば、高分子電解質膜の周縁部を前周に渡って補強する場合に比べて、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く生産することができる。
【0053】
(第3参考形態)
図7は参考発明の第3参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のVIIC-VIIC線に沿った断面を示す断面図である。図7において図2と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0054】
図7に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1では、第1参考形態の膜−電極接合体1において、さらに上辺2aに沿って補強部材6が配設されている。これ以外の点は第1参考形態と同様である。
【0055】
具体的には、補強部材6は高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2aに対応する部分に該上辺2aに沿って配設されている。補強部材6は高分子電解質膜2の両面にそれぞれ配設されている。触媒層5補強部材6に上側が接するように形成され、ガス拡散層3は触媒層5と補強部材6の一部の上に設けられている。
【0056】
次に、以上のように構成された膜−電極接合体の製造方法を説明する。
【0057】
本参考形態の膜−電極接合体の製造方法は、高分子電解質膜2の両面に一対の触媒層5を形成するまでの工程は、第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0058】
その後、触媒層5の上側に接するように高分子電解質膜2上に補強部材6が配設され、その後、触媒層5と補強部材6の一部の上とにガス拡散層3が形成される。
【0059】
以上に説明したような本参考形態によれば、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2aに対応する部分も補強されるので、高分子電解質膜2の劣化をより低減することができる。また、高分子電解質膜の周縁部を全周に渡って補強する場合に比べて、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く生産することができる。
【0060】
(第4参考形態)
図8は参考発明の第4参考形態の燃料電池の構成を示す一部分解斜視図である。図8において図2と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0061】
本参考形態の燃料電池101は、所定数のセル9が積層されてその両端に集電板10及び端板11が配置され、これらが図示されないロッドにより所定圧力で締結されるようにして構成されている。セル9は、膜−電極接合体1の周縁部の両面に一対のガスケット7A,7Bが配設され、これらがアノードセパレータ8Aとカソードセパレータ8Bとで挟まれるようにして構成されている。膜−電極接合体1は、第1参考形態乃至第3参考形態及び後述する第5参考形態乃至第8参考形態、第9実施形態、第10参考形態、及び第11参考形態のいずれかの膜−電極接合体で構成されている。なお、図8においては、隣接するセル9の間に配設される冷却水シール部材の図示が省略されている。
【0062】
本参考形態によれば、第1参考形態乃至第3参考形態で述べた効果及び第5参考形態乃至第8参考形態、第9実施形態、第10参考形態、及び第11参考形態で述べる効果が得られる。
【0063】
(第5参考形態)
参考発明の第5参考形態は、平行流に関して必要な補強を3辺に施した膜−電極接合体を例示したものである。換言すれば、第4参考形態に係る膜−電極接合体1の変形例を示したものである。
【0064】
図11は本参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIB-XIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIC-XIC線に沿った断面を示す断面図である。図11において図2と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0065】
図11に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1では、第1参考形態の膜−電極接合体1において、さらに上辺2aに沿って高強度部4が形成されている。これ以外の点は第1参考形態と同様である。
【0066】
具体的には、高強度部4は高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに対応する部分に該上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに沿って形成されている。
【0067】
以上のように構成された膜−電極接合体を製造するには、まず、原反の芯材を所定の長さLにカットして矩形の膜片状にする。次いで、この矩形の膜片状の芯材をパンチング加工することによってこの膜片状の芯材に通孔非形成領域と通孔形成領域とを形成する。この通孔非形成領域は、膜片状の芯材の3辺(膜片の高分子電界質膜2の上辺2a、右辺2b、及び左辺2dとなるべき辺)に対応する部分に該3辺に沿って逆U字状に形成される。その後、実施の形態1と同様の工程が遂行される。すなわち、この膜片状の芯材の両面に高分子電界質層が形成されて、該芯材が膜片の高分子電解質膜2とされる。これにより、図11に示すように、高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに対応する部分に該上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに沿って高強度部4が形成される。次いで、この高分子電解質膜2の両面に触媒層5及びガス拡散層3が形成される。次いで、この高分子電解質膜2の周縁部の所定位置に所定のマニフォールド孔が形成される。かくして、本参考形態の膜−電極接合体が製造される。
【0068】
本参考形態によれば、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2aに対応する部分も補強されるので、高分子電解質膜2の劣化をより低減することができる。また、高分子電解質膜の周縁部を全周に渡って補強する場合に比べて、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く生産することができる。
【0069】
(第6参考形態)
参考発明の第6参考形態は、平行流に関して必要な補強を3辺に施した膜−電極接合体を例示したものである。換言すれば、第4参考形態に係る膜−電極接合体1の変形例を示したものである。
【0070】
図12は本参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIIB-XIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIIC-XIIC線に沿った断面を示す断面図である。図12において図4と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0071】
図12に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1では、第2参考形態の膜−電極接合体1において、さらに上辺2aに沿って補強部材6が配設されている。これ以外の点は第2参考形態と同様である。
【0072】
具体的には、補強部材6は高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに対応する部分に該上辺2a、右辺2b、及び左辺2dに沿って配設されている。補強部材6は高分子電解質膜2の両面にそれぞれ配設されている。また、このように構成された膜−電極接合体の製造方法は、膜片状の高分子電解質膜2の両面に一対の触媒層5を形成した後、各触媒層5の上端、左端、及び右端に接するように3個の補強部材6が配設される点以外は、第2参考形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0073】
本参考形態によれば、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2aに対応する部分も補強されるので、高分子電解質膜2の劣化をより低減することができる。また、高分子電解質膜の周縁部を全周に渡って補強する場合に比べて、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く生産することができる。
【0074】
(第7参考形態)
参考発明の第7参考形態は、平行流に関して必要な補強を3辺に施した膜−電極接合体を例示したものである。換言すれば、第4参考形態に係る膜−電極接合体1の変形例を示したものである。
【0075】
図13は本参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIIIB-XIIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIIIC-XIIIC線に沿った断面を示す断面図である。図13において図7と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0076】
図13に示すように、本参考形態の膜−電極接合体1では、芯材51(図3参照)を有する高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2aに対応する部分に該上辺2aに沿って高強度部4が形成され、左辺2d及び右辺2bに対応する部分に該左辺2d及び右辺2bに沿って一対の補強部材6が配設されている。これ以外の膜−電極接合体1構成は第3参考形態と同様である。
【0077】
このように構成された膜−電極接合体1の製造方法は後の参考形態で詳しく説明する。
このような本参考形態によれば、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2aに対応する部分も補強されるので、高分子電解質膜2の劣化をより低減することができる。また、高分子電解質膜の周縁部を全周に渡って補強する場合に比べて、高分子電解質膜の周縁部の補強部分が減る分、膜−電極接合体1を効率良く生産することができる。
【0078】
(第8参考形態)
第1参考形態乃至第7参考形態は反応ガスの流れが平行流である場合の参考形態を例示したものであるが、参考発明の第8参考形態は反応ガスの流れが対向流である場合の参考形態を例示したものである。
【0079】
図14は本参考形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。図14おいて図1と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0080】
本実施の形態は以下の点で第1参考形態と相違し、その他の点は第1参考形態と同じである。本参考形態では、図14に示すように、膜−電極接合体1において、高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2a及び下辺2cに対応する部分に該上辺2a及び下辺2cに沿って一対の高強度部4が形成されている。
【0081】
そして、本参考形態では、一対のセパレータにおける反応ガス及び冷却水の流路A,C,W及び膜−電極接合体1における全てのマニフォールド孔の位置及び形状は第1参考形態と同じである。しかし、第1に、膜−電極接合体1におけるカソードガス供給マニフォールド孔22A及びカソードガス排出マニフォールド孔22Bが本参考形態と第1参考形態とでは反対になっている。つまり、第1参考形態におけるカソードガス排出マニフォールド孔22Bが本参考形態ではカソードガス供給マニフォールド孔22Aとなり、第1参考形態におけるカソードガス供給マニフォールド孔22Aが本参考形態ではカソードガス排出マニフォールド孔22Bとなっている。従って、本参考形態では、カソードセパレータにおいてカソードガスがカソードガス流路Cを第1参考形態と反対の方向に流れる。その結果、本参考形態では、膜−電極接合体1の厚み方向から見て、カソードガスがアノードガスに対し巨視的に反対方向に流れる。つまり、アノードセパレータにおいて、ガス拡散層3に当接する領域におけるアノードガスの流路Aが、上流から下流に向かって、高分子電解質膜2の上辺2aに沿った方向において反転しながら右辺2bに沿って上辺2aから下辺2cに向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、カソードセパレータにおいて、ガス拡散層3に当接する領域におけカソードガスの流路Cが、上流から下流に向かって、高分子電解質膜2の下辺2cに沿った方向において反転しながら左辺2dに沿って下辺2cから上辺2aに向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成されている。従って、アノードガスの流れとカソードガスの流れとの関係が対向流となっている。
【0082】
第2に、膜−電極接合体1における冷却水供給マニフォールド孔23A及び冷却水排出マニフォールド孔23Bが本参考形態と第1参考形態とでは反対になっている。つまり、第1参考形態における冷却水排出マニフォールド孔23Bが本参考形態では冷却水供給マニフォールド孔23Aとなり、第1参考形態における冷却水供給マニフォールド孔23Aが本参考形態では冷却水排出マニフォールド孔23Bとなっている。従って、本参考形態では、カソードセパレータ及びアノードセパレータにおいて冷却水が冷却水流路Wを第1参考形態と反対の方向に流れる。その結果、本参考形態では、膜−電極接合体1の厚み方向から見て、冷却水がアノードガスに対し巨視的に反対方向に流れる。なお、冷却水はカソードガスに対しては巨視的に同じ方向に流れる。
【0083】
本発明者等は、このような対向流についても、平行流の場合と同様にして高分子電解質膜の劣化を調べた。その結果、対向流の場合は、矩形の高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2aに対応する部分と下辺2cに対応する部分の劣化が最も大きいことが判明した。上辺2aに対応する部分は、アノードガス流路Aの上流部(アノードガスの入口側)に対応する部分であり、下辺2cに対応する部分は、カソードガス流路Cの上流部(カソードガスの入口側)に対応する部分である。
【0084】
本参考形態の膜−電極接合体1では、これらの、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2a及び下辺2cに対応する部分に高強度部4がそれぞれ形成されているので、これらの部分の劣化を防止することができる。
【0085】
次に、以上のように構成された本参考形態の膜−電極接合体1の製造方法を説明する。
【0086】
図15(a)及び図15(b)は本参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。図15(a)及び図15(b)において図3(a)及び図3(b)と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0087】
本参考形態の膜−電極接合体の製造方法は、以下の点を除き、第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0088】
本参考形態では、図15(a)に示すように、芯材51は、図14の高分子電解質膜片の幅(上辺2a及び下辺2cの長さ)に相当する所定の幅L2の原反に加工(スリット)される。そして、この原反の芯材51にパンチングにより幅方向の全長に渡って延びる帯状の通孔非形成領域51aが所定のピッチで形成される。この所定のピッチは、図14の高分子電解質膜片の長さ(左辺2d及び右辺2bの長さ)L1に相当するピッチである。このパンチング加工された芯材51は、第1参考形態と同様の工程を経て、高分子電解質膜2に加工されロールに巻き取られる。この高分子電荷質膜2においては、芯材51の通孔非形成領域51aが高強度部4となっている。
【0089】
その後、図15(b)に示すように、高分子電解質膜2がロールから引き出されながら、高強度部4においてカットされ、所定の長さL1の膜片となる。これにより、膜片状の高分子電解質膜2が作製される。この膜片状の高分子電解質膜2に第1参考形態と同様の加工が施されて、図14に示す膜−電極接合体1が作製される。
【0090】
このような本参考形態の膜−電極体製造方法によれば、膜−電極接合体1に用いる膜片(高分子電解質膜片)に切断する前に、原反の状態で連続して高分子電解質膜2に、対向流に関して必要な高強度部4を形成することができるため、膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0091】
なお、本参考形態の膜−電極接合体1を第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法によって製造することもできる。この場合、図3(a)において、芯材51の所定の幅を図14の高分子電解質膜(膜片)2の長さL1とし、図3(b)において、高分子電解質膜2を、図14の高分子電解質膜(膜片)2の幅に相当する長さL2にカットすればよい。
【0092】
また、逆に、本参考形態の膜−電極接合体の製造方法を第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法に応用することもできる。この場合、図15(a)、(b)において、芯材51の所定の幅を図1の高分子電解質膜(膜片)2の長さL1とし、高強度部4のピッチを図1の高分子電解質膜(膜片)2の幅L2とすればよい。
【0093】
(第9実施形態)
本発明の第9実施形態は反応ガスの流れが直交流である場合の実施形態を例示したものである。
【0094】
図16は本実施形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。図16において図1と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0095】
本実施の形態は以下の点で第1参考形態と相違し、その他の点は第1参考形態と同じである。本実施形態では、図16に示すように、膜−電極接合体1において、高分子電解質膜2の周縁部のうち、右辺2bに対応する部分に該右辺2bに沿って高強度部4が形成され、上辺2aに対応する部分に該上辺2aに沿って補強部材6が配設されている。
【0096】
そして、本実施形態では、一対のセパレータにおけるアノードガス流路A及び冷却水流路W並びに膜−電極接合体1における全てのマニフォールド孔の位置及び形状は第1参考形態と同じである。しかし、カソードセパレータにおけるカソードガス流路Cが、第1参考形態とは異なり、膜−電極接合体1の厚み方向から見て、アノードガス流路Aに対し巨視的に直交するように形成されている。すなわち、アノードガスの流れとカソードガスの流れとの関係が直交流となっている。具体的には、カソードガス流路Cは、微視的には左右方向(上辺2a及び下辺2cに沿った方向)104に対し直交する方向、すなわち上下方向(右辺2b及び左辺2dに沿った方向)103に所定距離延びてそこで反転し、そこから上下方向における逆方向に所定距離延びてそこで反転するという区域を繰り返すようにして、巨視的には左右方向104に延びるように形成されている。一方、アノードガス流路Aは、巨視的には上下方向103に延びるように形成されているので、アノードガス流路Aとカソードガス流路Cとは巨視的に直交するように形成されている。
【0097】
次に、以上のように構成された本実施形態の膜−電極接合体1の製造方法を説明する。
【0098】
本発明者等は、このような直交流についても、平行流の場合と同様にして高分子電解質膜の劣化を調べた。その結果、直交流の場合は、矩形の高分子電解質膜2の周縁部のうち、上辺2aに対応する部分と右辺2bに対応する部分の劣化が最も大きいことが判明した。上辺2aに対応する部分は、アノードガス流路Aの上流部(アノードガスの入口側)に対応する部分であり、右辺2bに対応する部分は、カソードガス流路Cの上流部(カソードガスの入口側)に対応する部分である。
【0099】
本実施形態の膜−電極接合体1では、これらの、高分子電解質膜2の周縁部のうちの上辺2aに対応する部分に補強部材6が配設されかつ右辺2bに対応する部分に高強度部4が形成されているので、これらの部分の劣化を防止することができる。
【0100】
次に、以上のように構成された本実施形態の膜−電極接合体1の製造方法を説明する。
【0101】
図17(a)及び図17(b)は本実施形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。図17(a)及び図17(b)において図15(a)及び図15(b)と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0102】
本実施形態の膜−電極接合体の製造方法は、以下の点を除き、第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0103】
本実施形態では、まず、以下のように高分子電解質膜が作製される。この工程は、作製される芯材(ひいては高分子電解質膜)の幅寸法及び通孔非形成領域(ひいては補強部)のピッチが異なる点を除き、第8参考形態と同様である。従って図15(a)を参照してこの工程を説明する。図15(a)において、芯材51が、図16の高分子電解質膜片の長さ(左辺2d及び右辺2bの長さ)に相当する所定の幅L1の原反に加工(スリット)される。そして、この原反の芯材51にパンチングにより幅方向の全長に渡って延びる帯状の通孔非形成領域51aが所定のピッチで形成される。この所定のピッチは、図16の高分子電解質膜片の幅(上辺2a及び下辺2cの長さ)L2に相当するピッチである。このパンチング加工された芯材51は、第1参考形態と同様の工程を経て、高分子電解質膜2に加工されロール52に巻き取られる。この高分子電荷質膜2においては、芯材51の通孔非形成領域51aが高強度部4となっている。
【0104】
次いで、図17(a)に示すように、この原反の高分子電解質膜2の両面に片側の縁に沿ってテープ状の補強部材6が貼り付けられる。この補強部材6の貼り付けは、良く知られているように、例えば、原反の高分子電解質膜2をロールから引き出し、この引き出した高分子電界質膜2の両面にテープ状の補強部材6を供給し、これらを一対の押圧ロールの間を通過させることによって行うことができる。この補強部材6が貼り付けられた原反の高分子電解質膜2はロール54に巻き取られる。
【0105】
その後、図17(b)に示すように、原反の高分子電解質膜2がロール54から引き出されながら、高強度部4の直後の部分においてカットされ、所定の長さL2の膜片となる。これにより膜片状の高分子電解質膜2が作製される。この膜片状の高分子電解質膜2に第1参考形態と同様の加工が施されて、図16に示す膜−電極接合体1が作製される。
【0106】
このような本実施形態の膜−電極体製造方法によれば、膜−電極接合体1に用いる膜片(高分子電解質膜片)に切断する前に、原反の状態で連続して高分子電解質膜2に、対向流に関して必要な高強度部4を形成しかつ補強部材6を配設することができるため、膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0107】
(第10参考形態)
参考発明の第10参考形態は、平行流に関して必要な補強を3辺に施した膜−電極接合体の効率の良い製造方法を例示したものである。換言すれば、第3参考形態に係る膜−電極接合体1の製造方法の変形例を示したものである。
【0108】
図18(a)及び図18(b)は参考発明の第10参考形態に係る膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。図18(a)及び図18(b)において図17(a)及び図17(b)と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0109】
図18(a)に示すように、本参考形態の膜−電極接合体の製造方法は、補強部材6を貼り付けた高分子電解質膜2のロール54を形成するまでの工程は、第9実施形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0110】
そして、本参考形態では、図18(b)に示すように、この原反の高分子電解質膜2がロール54から引き出されながら、高強度部4においてカットされ、所定の長さL2の膜片になる。これにより膜片状の高分子電解質膜2が作製される。この膜片状の高分子電解質膜2に第3参考形態と同様の加工が施されて、図7に示す膜−電極接合体1が作製される。
【0111】
このような本参考形態の膜−電極体製造方法によれば、膜−電極接合体1に用いる膜片(高分子電解質膜片)に切断する前に、原反の状態で連続して高分子電解質膜2に高強度部4を形成しかつ補強部材6を配設することができるため、平行流に関して必要な3辺の補強を施した膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0112】
(第11参考形態)
参考発明の第11参考形態は第3参考形態に係る膜−電極接合体1の製造方法を示したものである。
【0113】
図19(a)及び図19(b)は本参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。図19(a)及び図19(b)において図3(a)及び図3(b)と同一符号は同一又は相当する部分を示す。
【0114】
本参考形態の膜−電極接合体の製造方法は、以下の点を除き、第1参考形態の膜−電極接合体の製造方法と同じである。
【0115】
本参考形態では、まず、以下のように高分子電解質膜が作製される。この工程は、第8参考形態と同様である。従って図15(a)を参照してこの工程を説明する。図15(a)において、芯材51が、図13の高分子電解質膜片の幅(上辺2a及び下辺2cの長さ)に相当する所定の幅L2の原反に加工(スリット)される。そして、この原反の芯材51にパンチングにより幅方向の全長に渡って延びる帯状の通孔非形成領域51aが所定のピッチで形成される。この所定のピッチは、図13の高分子電解質膜片の長さ(右辺2b及び左辺2dの長さ)L1に相当するピッチである。このパンチング加工された芯材51は、第1参考形態と同様の工程を経て、高分子電解質膜2に加工されロール52に巻き取られる。この高分子電荷質膜2においては、芯材51の通孔非形成領域51aが高強度部4となっている。
【0116】
次いで、図19(a)に示すように、この原反の高分子電解質膜2の両面に両側の縁に沿って一対のテープ状の補強部材6が貼り付けられる。この補強部材6の貼り付けは、良く知られているように、例えば、原反の高分子電解質膜2をロールから引き出し、この引き出した高分子電界質膜2の両面に一対のテープ状の補強部材6を供給し、これらを一対の押圧ロールの間を通過させることによって行うことができる。この補強部材6が貼り付けられた原反の高分子電解質膜2はロール54に巻き取られる。
【0117】
その後、図19(b)に示すように、原反の高分子電解質膜2がロール54から引き出されながら、高強度部4の直後の部分においてカットされ、所定の長さL1の膜片になる。これにより膜片状の高分子電解質膜2が作製される。この膜片状の高分子電解質膜2に第1参考形態と同様の加工が施されて、図13に示す膜−電極接合体1が作製される。
【0118】
このような本参考形態の膜−電極体製造方法によれば、膜−電極接合体1に用いる膜片(高分子電解質膜片)に切断する前に、原反の状態で連続して高分子電解質膜2に高強度部4を形成しかつ補強部材6を配設することができるため、平行流に関して必要な3辺の補強を施した膜−電極接合体1を効率良く製造することができる。
【0119】
なお、上記各実施の形態において、高分子電界質膜2の膜片の全幅又は全長に渡るように設けられている高強度部4又は補強部材6は、高分子電界質膜2の膜片の幅方向の一部又は長さ方向の一部に渡るように設けられてもよい。
【0120】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の膜−電極接合体は、効率良く製造可能な膜−電極接合体として有用である。
【0122】
本発明の燃料電池は、効率良く膜−電極接合体を製造可能な燃料電池として有用である。
【0123】
本発明の膜−電極接合体の製造方法は、製造効率の良い膜−電極接合体の製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は参考発明の第1参考形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。
【図2】図2は図1の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIIB-IIB線に沿った断面を示す断面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は参考発明の第1参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【図4】図4は参考発明の第2参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIVB-IVB線に沿った断面を示す断面図である。
【図5】図5(a)及び図5(b)は参考発明の第2参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は参考発明の第2参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【図7】図7は参考発明の第3参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のVIIB-VIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のVIIC-VIIC線に沿った断面を示す断面図である。
【図8】図8は、参考発明の第4参考形態の燃料電池の構成を示す一部分解斜視図である。
【図9】図9は本発明の課題検討に使用した燃料電池における膜−電極接合体の厚み方向から見た膜−電極接合体とセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路との位置関係を示す模式図である。
【図10】図10は本発明の課題検討に使用した燃料電池の膜−電極接合体の主面におけるガスリーク量の分布を示すグラフである。
【図11】図11は参考発明の第5参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIB-XIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIC-XIC線に沿った断面を示す断面図である。
【図12】図12は参考発明の第6参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIIB-XIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIIC-XIIC線に沿った断面を示す断面図である。
【図13】図13は参考発明の第7参考形態の膜−電極接合体の構成を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のXIIIB-XIIIB線に沿った断面を示す断面図、(c)は(a)のXIIIC-XIIIC線に沿った断面を示す断面図である。
【図14】図14は参考発明の第8参考形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。
【図15】図15(a)及び図15(b)は参考発明の第8参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【図16】図16は本発明の第9実施形態の膜−電極接合体のセパレータの反応ガス流路及び冷却水流路に対するその厚み方向から見た位置関係を示す模式図である。
【図17】図17(a)及び図17(b)は本発明の第9実施形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【図18】図18(a)及び図18(b)は参考発明の第10参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【図19】図19(a)及び図19(b)は参考発明の第11参考形態の膜−電極接合体の製造工程を示す模式図である。
【符号の説明】
【0125】
1 膜−電極接合体
2 高分子電解質膜
2a〜2d 高分子電解質膜の辺
3 ガス拡散層
4 補強部
5 触媒層
6 補強部材
7A,7B ガスケット
8A アノードセパレータ
8B カソードセパレータ
9 セル
10 集電板
11 端板
21A 燃料ガス供給マニフォールド孔
21B 燃料ガス排出マニフォールド孔
22A 酸化剤ガス供給マニフォールド孔
22B 酸化剤ガス排出マニフォールド孔
23A 冷却水供給マニフォールド孔
23B 冷却水排出マニフォールド孔
51 芯材
51a 通孔非形成領域
51b 通孔形成領域
52 ロール
53 ロール
54 ロール
101 燃料電池
103 サーペンタイン状の流路の巨視的な延在方向
104 サーペンタイン状の流路の巨視的な延在方向に交差する方向
201 高分子電解質膜
201a〜201d 高分子電解質膜の辺
202,203 反応ガスの流路
204 冷却水の流路
A 燃料ガス流路
C 酸化剤ガス流路
W 冷却水流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四辺形の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の周縁部を除いて該高分子電解質膜を挟むように設けられた一対の触媒層と該一対の触媒層の上にそれぞれ設けられた一対の導電性のガス拡散層とを有し、その内面の前記ガス拡散層に当接する領域であるガス拡散層当接領域に反応ガスの流路が凹設された一対のセパレータに挟まれて燃料電池に組み込まれる膜−電極接合体において、
一方の前記セパレータにおいて、前記ガス拡散層当接領域における反応ガスの流路が、上流から下流に向かって、前記高分子電解質膜の1つの辺(以下、第1辺)に沿った方向において反転しながら前記第1辺に隣接する辺(以下、第2辺)に沿って前記第1辺から該第1辺に対向する辺(以下、第3辺)に向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、かつ他方の前記セパレータにおいて、前記ガス拡散層当接領域における反応ガスの流路が、上流から下流に向かって、前記高分子電解質膜の第2辺に沿った方向において反転しながら前記第1辺に沿って前記第2辺から該第2辺に対向する辺(以下、第4辺)に向かう方向に延びるサーペンタイン状に形成され、
前記高分子電解質膜の周縁部の前記第1辺と前記第2辺とに対応する部分に前記高分子電解質膜を補強する補強部が形成され、前記高分子電解質膜の周縁部の前記第3辺と前記第4辺とに対応する部分には前記補強部が形成されていない、膜−電極接合体。
【請求項2】
四辺形の高分子電解質膜と該高分子電解質膜の周縁部を除いて該高分子電解質膜を挟むように設けられた一対の触媒層と該一対の触媒層の上にそれぞれ設けられた一対の導電性のガス拡散層とを有する膜−電極接合体の製造方法において、
所定の幅を有する長尺の膜状の芯材を準備する工程と、
前記芯材に、該芯材を厚み方向に貫通する貫通孔が形成された通孔形成領域と、前記貫通孔が実質的に形成されていない通孔非形成領域とを、該通孔非形成領域が前記芯材の幅方向に帯状に延びるようにして前記芯材の長さ方向に所定のピッチで複数存在しかつ前記通孔形成領域が残りの部分に存在するように形成する工程と、
前記通孔非形成領域及び通孔形成領域が形成された芯材の両面に前記貫通孔を埋めるように高分子電解質層を形成して前記複数の通孔非形成領域上に高分子電解質層が形成されてなる複数の高強度部を有する長尺の高分子電解質膜を作成する工程と、
前記高分子電解質膜の片側の縁に沿ってテープ状の補強部材を配設する工程と、
前記長尺の高分子電解質膜を前記複数の高強度部の近傍において切断し、それにより、前記所定のピッチに相当する長さを有しかつ前記切断により形成された辺に沿う前記高強度部を有するとともに前記辺に隣接する辺に沿って配設され両端が切断された前記補強部材を有する膜片状の高分子電解質膜を作成する工程と、
前記膜片状の高分子電解質膜の両面に、前記高強度部及び補強部材とこれらに対向する辺との間に少なくとも一部が位置するように前記一対の触媒層及びガス拡散層を形成する工程と、を有する、膜−電極接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−99491(P2012−99491A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272029(P2011−272029)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2008−123606(P2008−123606)の分割
【原出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】