説明

膜ろ過システム

【課題】システムの省エネルギ化を図ることができる膜ろ過システムを提供する。
【解決手段】孔径調整材が付加されたろ過膜6を有する膜モジュール51,52と、膜モジュールにより処理された処理水が送られる処理水槽7と、処理水槽から膜モジュールまでの間に設けられた逆洗浄供給ラインL5と、逆洗浄供給ラインに設けられた逆洗浄ポンプ9と、逆洗浄供給ラインに設けられた加温手段8と、膜モジュールから逆洗浄使用済みの温水が排出される逆洗浄排出ラインL6と、膜モジュールのろ過膜でろ過されるべき原水を加温するための熱媒体が循環通流される熱媒体循環ラインL8,L9と、逆洗浄排出ラインに連通する第1の流路10aと熱媒体循環ラインに連通する第2の流路10bとを有し、第1の流路を流れる逆洗浄使用済みの温水と第2の流路を流れる熱媒体との間で熱交換させる熱交換器10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表流水、地下水等の淡水、雨水貯水、産業廃水、下水等の汚水、バラスト水等の海水の水処理に適した膜ろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
表流水、地下水等の淡水、雨水貯水、産業廃水、下水等の汚水、バラスト水等の海水などをろ過して、生活用水、工業用水、農業用水などの有用水を得る手段として、例えば精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などのろ過膜が利用されている。これらのろ過膜は原水中の微生物、藻類、粘土などの固形分に対して高い分離性能を備えているため、水処理分野での使用が拡大している。膜の素材としては一般には親水性材料が用いられるが、疎水性材料を用いる場合でも、膜面を重クロム酸カリの硫酸溶液などにより親水化処理することで用いられる。
【0003】
このようなろ過膜に継続的に原水を通水することにより、膜外表面や膜孔内に固形分などの異物が次第に付着・堆積してろ過性能が低下していく。そこで、所定の運転期間を過ぎたものは定期的にろ過した処理水や圧縮空気などによる物理洗浄を行い、膜外表面や膜孔内の付着物を除去する。さらに、物理洗浄では除去し難い付着物が徐々に蓄積するため、膜差圧が予め設定された閾値を越えたときに膜ろ過処理を停止し、所定の薬品を用いて膜を化学洗浄する。
【0004】
しかし、薬品による膜の化学洗浄は、薬品そのもののコストがかかるばかりでなく、廃水を処理するためにコストがかかる。たとえば処理対象が河川水の場合は、微小で粘着性の高い懸濁物が含まれており、これらによって通常の物理洗浄ではろ過性能が回復しにくいファウリング(膜閉塞)が発生するが、ファウリング(膜閉塞)の発生を未然に防止しようとすると、薬品洗浄の頻度が高くなり、廃水処理による環境負荷の増大とコスト上昇を招くという問題がある。廃水処理の問題は地球環境保全の観点からも重要である。そこで、特許文献1〜3に記載された膜ろ過システムでは、膜の表面に所定の温度で可逆的に膨張または収縮の変化をする温度応答性化合物を有するろ過膜を用いることにより、低コストでかつ環境にやさしい膜洗浄方法として薬品の代わりに温水を用いて膜洗浄処理している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−229503号公報
【特許文献2】特開2008−289959号公報
【特許文献3】特開2007−130532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の膜ろ過システムでは、所定の温度で可逆的に膨張/収縮や親水/疎水の変化を起こす温度応答性化合物の性質を利用して膜の洗浄効果を高めるために温水を使用するが、この温水を得るために多量の熱エネルギが消費されるばかりでなく、逆洗浄後の温排水はそのまま系外に排出されている。このため温排水とともに少なくない熱量が捨てられ、エネルギ利用効率が低いという問題がある。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、処理に要する全体的なエネルギを低減することができ、システムの省エネルギ化を図ることができる膜ろ過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る膜ろ過システムは、原水槽(2)と、周囲環境の状態量の変化に応じて水を通過させるための孔の径を変化させる孔径調整材が付加されたろ過膜(6)を有する膜モジュール(51,52)と、前記原水槽から前記膜モジュールに原水を供給する原水供給ポンプ(3)と、前記膜モジュールにより処理された処理水が送られる処理水槽(7)と、前記処理水槽から前記膜モジュールまでの間に設けられた逆洗浄供給ライン(L5)と、前記処理水槽からの処理水を逆洗浄水として前記膜モジュールに供給するために、前記逆洗浄供給ラインに設けられた逆洗浄ポンプ(9)と、前記処理水を加熱して所定温度の温水を生成するために、前記逆洗浄供給ラインに設けられた加温手段(8)と、前記膜モジュールから逆洗浄使用済みの温水が排出される逆洗浄排出ライン(L6)と、前記膜モジュールのろ過膜でろ過されるべき原水を加温するための熱媒体が循環通流される熱媒体循環ライン(L8,L9)と、前記逆洗浄排出ラインに連通する第1の流路(10a)と前記熱媒体循環ラインに連通する第2の流路(10b)とを有し、前記第1の流路を流れる逆洗浄使用済みの温水と前記第2の流路を流れる熱媒体との間で熱交換させる熱交換器(10)と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、逆洗浄時に膜モジュールから排出される温排水から熱交換器の熱媒体により余熱エネルギを回収し、回収した熱エネルギを膜モジュールのろ過膜に付与してろ過膜を予熱するので、処理に要する全体的なエネルギを低減することができ、システムの省エネルギ化を図ることができる膜ろ過システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る膜ろ過システムを示す構成ブロック図。
【図2】膜モジュールを切り欠いて示す斜視図。
【図3】(a)は常温通水時のろ過膜の状態を示す断面模式図、(b)は温水洗浄時のろ過膜の状態を示す断面模式図。
【図4】本発明の実施形態に係る膜ろ過システムの熱交換器の詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
膜ろ過システム1は、原水槽2、原水供給ポンプ3、ストレーナ4、中空糸状のろ過膜6を有する2つの膜モジュール51,52、処理水槽7、ヒータ8、逆洗浄ポンプ9、熱交換器10、熱発電モジュール11、熱媒体循環ポンプ12、回収装置13およびコンプレッサ14を有し、平均孔径100μm以下の微細孔を備えるろ過膜6を用いて原水中に含まれる固形分などの異物を除去して浄化された処理水を得るための水処理装置である。
【0013】
膜ろ過システム1において処理対象となる原水は図示しない導水ポンプによって原水槽2に導かれている。原水槽2には、河川水、地下水、湖沼水などの淡水、雨水貯水、産業廃水や下水などの汚水、バラスト水などの海水が導入され、このような原水が一時的に滞留または貯留されている。原水中には、例えばシリカコロイド、ベントナイト、粘土などの無機物のほかに大腸菌などのバクテリア、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどの原虫、プランクトンなどの異物が含まれている。これらはカルボキシル基、アミノ基、水酸基などを有している。
【0014】
原水槽2は、供給ラインL1を介して2つの膜モジュール51,52の下部にそれぞれ接続されている。供給ラインL1の幹管にはバルブV1,ポンプ3およびストレーナ4が取り付けられ、ラインL1の各枝管にはバルブV2,V3がそれぞれ取り付けられている。供給ポンプ3は、膜ろ過処理の前段プロセスの処理水を原水として膜モジュール51,52に供給するようになっている。
【0015】
供給ポンプ3は、膜モジュール51,52内の中空糸状のろ過膜6に対して十分な圧力を印加しうる能力を備えている。ストレーナ4は直径が1ミリ以上の比較的大サイズの異物を除去する性能を有している。バルブV1,V2,V3およびポンプ3は、図示しない制御器によってそれぞれ動作がコントロールされるようになっている。この図示しない制御器は、膜ろ過システム1の全体を統括的に制御するものであり、これらバルブV1,V2,V3の開閉動作およびポンプ3の起動・停止動作ばかりでなく、後述する他のバルブV4〜V14の開閉動作、ポンプ9,12の起動・停止動作およびヒータ8のオンオフ動作をそれぞれ制御するものである。
【0016】
図2に示すように、膜モジュール51,52の各々は長手軸が垂直方向に延び出す円筒状の本体ケーシング5aを有し、この本体ケーシング5a内に多数の中空糸を束ねてなるろ過膜6が充填装入されている。ろ過膜6を構成する中空糸は、本体ケーシング5aの長手軸と平行に並ぶように揃えられ、適所をバンドにより結束してバンドル状にまとまった形状にされるとともに、適所にスペーサを挿入して中空糸の相互間隔が所望の距離に保たれるようにされている。
【0017】
ろ過膜6を構成する中空糸の上端部は、膜モジュール51,52の上部に設けられた第2及び第4の開口流路5c,5eの近傍に開口している。また、ろ過膜6を構成する中空糸の下端部は、膜モジュール51,52の下部に設けられた第1の開口流路5bの近傍に開口している。
【0018】
第1の開口流路5bは、本体ケーシング5aの底部に設けられ、原水供給ラインL1に連通し、原水を膜モジュール51,52の下部に導入するための流路の一部をなすものである。原水供給ラインL1には上流側から順にバルブV1、供給ポンプ3、ストレーナ4およびバルブV2,V3が設けられている。
【0019】
第2の開口流路5cは、本体ケーシング5aの頂部に設けられ、処理水排出ラインL2および逆洗浄供給ラインL5にそれぞれ連通し、処理水または逆洗浄水が通流するための流路の一部をなすものである。すなわち、第2の開口流路5cは、通常運転時においては処理水排出ラインL2を通って処理水を処理水槽7に送り出すための排出口として機能する一方で、逆洗浄時においては逆洗浄供給ラインL5を通って処理水槽7/ヒータ8側から温水(約50℃に加温した処理水)を膜モジュール51,52内に導入するための導入口として機能するものである。処理水排出ラインL2には膜モジュール51,52に1対1に対応するバルブV4,V5がそれぞれ設けられている。逆洗浄供給ラインL5には上流側から順にバルブV9、ヒータ8、逆洗浄ポンプ9およびバルブV10,V11が設けられている。
【0020】
第3の開口流路5dは、本体ケーシング5aの側周面の下部に設けられ、温水排出ラインL6、熱媒体供給ラインL9および加圧空気供給ラインL10にそれぞれ連通し、温排水または熱媒体または加圧空気が通流するための流路の一部をなすものである。
【0021】
第4の開口流路5eは、本体ケーシング5aの側周面の上部に設けられ、温水排出ラインL6、熱媒体戻りラインL8および加圧空気供給ラインL10にそれぞれ連通し、温排水または熱媒体または加圧空気が通流するための流路の一部をなすものである。温水排出ラインL6には膜モジュール51,52に1対1に対応するバルブV12,V13が設けられている。熱媒体供給ラインL9にはポンプ12およびバルブV14が設けられている。加圧空気供給ラインL10には膜モジュール51,52に1対1に対応するバルブV6,V7が設けられている。膜モジュール51,52から溢れ出る水は、温水排出ラインL6により熱交換器10に導かれ、熱交換器10において熱媒体循環ラインL8,L9を通流する熱媒体と熱交換した後に熱交換器10から出て行くようになっている。
【0022】
なお、熱媒体供給ラインL9および熱媒体戻りラインL8は、熱媒体が系外に漏れ出さないようにして熱交換器10と膜モジュール51,52との間で熱媒体を循環させる閉じた回路を形成するために、膜モジュール51,52内では二重管構造(図示せず)になっている。また、加圧空気供給ラインL10には、コンプレッサ14からの加圧空気を膜モジュール51,52内に吹き込むためのノズル(図示せず)が設けられている。
【0023】
図3を参照して膜モジュール内のろ過膜の詳細を説明する。
【0024】
ろ過膜6を構成する中空糸は、図3の(a)に示すように基体5aに微細な多数の孔64を有し、外表面61に孔径調整材63としての温度応答性化合物であるN-イソプロピルアクリルアミドが付加(塗布)されている。N-イソプロピルアクリルアミドの高分子鎖は温度の変化やpHの変化に応じて収縮または膨張して、孔64の径が大きくなるか、または小さくなるようになっている。例えば第1の膜モジュール51内のろ過膜6を逆洗浄する場合に、ヒータ8で約50℃に加温した処理水を逆洗浄水としてラインL5を介して膜モジュール51内に導入すると、図3の(b)に示すように孔64の径が拡大するとともに、温度応答性化合物63の形態が変化することにより付着していた異物22がろ過膜の外表面61から離脱するようになる。これによりろ過膜6が清浄化され、低下したろ過性能が回復する。
【0025】
上述したように膜表面を温度応答性高分子63で処理した機能性中空糸膜と温水洗浄を組み合わせることにより、ファウリング(膜閉塞)の発生を抑制することができる。機能性中空糸は、温度に応じて膜表面の物性が変化するため、温水で逆洗浄することにより膜表面の汚れを効率良く除去する。室温では温度応答性高分子が伸びた状態にあるため、膜を水が通過する際に汚濁物質を捕獲しやすい。膜表面の汚れを除去する場合は、膜が接する水を約40℃以上に加温して温度応答性高分子を収縮させ、汚濁物質を膜表面から離脱させることができる。ちなみにN-イソプロピルアクリルアミドの高分子鎖は、温度が約25℃を超えると収縮を開始し、40℃付近では収縮がほぼ飽和状態となる。また、N-イソプロピルアクリルアミドの高分子鎖は、pHが酸性領域になるに伴い収縮し、中性またはアルカリ性のpH領域になるにしたがって膨張する。
【0026】
ろ過膜にかかる膜差圧は、通常5〜30kPa程度であるが、財団法人水道技術研究センターの「小規模水道における膜ろ過施設導入ガイドライン」によると精密ろ過膜の場合は最大150kPaであり、限外ろ過膜の場合は300kPa以下であることという指針が示されている。
【0027】
次に図4を参照して熱交換器の詳細を説明する。
【0028】
熱交換器10は、逆洗浄時に膜モジュール51(又は52)から排出される温排水を通流させる第1の流路10aと、膜モジュール51(又は52)に循環供給される熱媒体を通流させる第2の流路10bとを備えている。これら第1の流路10aと第2の流路10bとは、図示のように流体の流れの向きが対向流となるように熱交換器本体内部に形成されている。
【0029】
第1の流路10aは、入口側が逆洗浄排出ラインL6に連通し、出口側が回収ラインL7に連通している。一方、第2の流路10bは、入口側が熱媒体戻りラインL8に連通し、出口側が熱媒体供給ラインL9に連通している。この第2の流路10bは、膜モジュール51,52と熱交換器10との間で熱媒体を循環させる循環回路の一部をなすものである。
【0030】
次に本実施形態の膜ろ過システムの作用を説明する。
【0031】
以下に述べる一連の工程手順に従って膜ろ過処理が行われる。
【0032】
バルブV1,V2,V3を開け、ポンプ3の駆動によって各膜モジュール51,52に原水をそれぞれ供給し、ろ過膜の外表面61側に所定の圧力をかける。
【0033】
膜モジュール51,52の上部のバルブV4,V5を開け、ろ過膜6によりろ過された処理水を膜モジュール51,52からラインL2を介して処理槽7に送り出す。開口流路5d,5eを介して膜モジュール51,52から排出する残留水は、回収率を上げるため原水槽2へ戻すようにしてもよい。
【0034】
次に、逆洗浄処理の作用について説明する。
【0035】
膜ろ過処理を繰り返し行うと図3の(a)に示すようにろ過膜の外表面61に固形分などの異物22が付着蓄積してろ過性能が低下するため、定期的に所定の頻度(例えば1回/日)で温度調整またはpH調整のいずれか一方を用いてろ過膜を逆洗浄する。以下、第1の膜モジュール51を逆洗浄処理する場合について説明する。なお、第1の膜モジュール51を逆洗浄処理している間に、これと同時並行して第2の膜モジュール52のほうでは膜ろ過処理が行われる。
【0036】
(i)ドレイン工程
バルブV12および膜モジュール下部のバルブV2を開け、膜モジュール51の内部にある水を排出する。排出した水は、回収率を向上させるために原水槽2へ戻すようにしてもよい。
【0037】
(ii)温水工程
バルブV9を開け、処理槽7から処理水をヒータ8の容器へ送り出し、ヒータ8により処理水を50℃になるまで加熱する。ヒータ容器内の処理水の温度が50℃に達すると、バルブV10を開け(このときバルブV11は閉じた状態)、ポンプ9を起動し、温水を膜モジュール51の上部に導入する。膜モジュール51の内部の温度が50℃になるまで膜モジュール51から温水を溢れ出させる。膜モジュール51を所定の温度にするため、ヒータ8で加熱した温水を用いて膜モジュール51を加温する。膜モジュール51から溢れる温水は、排水ラインL6を通って熱交換器10に送られ、熱交換器10において温排水から余熱エネルギを回収するとともに水(熱媒体)に熱エネルギを付与する。
【0038】
(iii)逆圧・逆流工程
バルブV6を開け、膜モジュールの処理水側からコンプレッサ14により加圧空気を供給し、ろ過膜6の内表面側に所定の圧力をかける。さらに、膜モジュール上部のバルブVを開け、膜モジュールの上部の処理水(2次側の処理水)を原水の循環ラインへ押し出す。
【0039】
(iv)エアスクラビング工程
圧力を保持したままの状態で、バルブV6を開け、所定時間だけ膜モジュール下部の原水側からコンプレッサ14により加圧空気を供給し、吹き込みエアのバブリングによりろ過膜6を揺動させる。
【0040】
(v)ドレイン工程
所定時間エアスクラビングを行った後、バルブVおよび膜モジュール下部のバルブVを開け、膜モジュール51内の温水を排出する。このときコンプレッサ14により加圧空気を流したままのほうがより効果的に付着物を排出することができる。膜モジュール51から排出された温排水は、ラインL6を通って熱交換器10に送られ、熱交換器10において熱媒体と熱交換されて保有する熱エネルギが回収される。
【0041】
さらに、熱交換器10は熱発電装置11に熱エネルギを付与するため、熱発電装置11は熱発電することができる。さらに、熱交換器10からラインL7を介して回収装置13に温排水を送り出し、温排水を回収し、再生し、ラインL5に戻して再利用することができる。
【0042】
(vi)原水すすぎ工程
バルブV2を開け、さらに膜モジュール上部のバルブV4を開け、ポンプ3を起動し、膜モジュール51のすすぎを行う。すすいだ水は、回収、再生して再利用するようにしてもよいし、系外に排出するようにしてもよい。このときコンプレッサ14から加圧空気を流したままの状態にあるほうがより効果的にすすぎを行うことができるが、電力コストを削減するために加圧空気の供給を停止することもできる。
【0043】
本実施形態では2つの膜モジュールを並列に配置して交互に運転→逆洗浄→運転を繰り返すように動作を制御したが、さらに3つ以上の膜モジュールを並列に配置して他の膜モジュールが水処理運転している間に当該膜モジュールを逆洗浄するようにローテーションを組むこともできる。なお、処理対象水量の規模にもよるが、下水処理設備などの通常の水処理システムにおいては膜モジュールの数はせいぜい数十基から数百基程度までであるが、海水淡水化プラントのように処理対象水量が膨大になるもので設備が大規模にわたるものでは膜モジュールの数が数千基から数万基にも及ぶことがあるため、逆洗浄のローテーション操作をコンピュータシステムの管理下で自動制御することになる。
【0044】
本発明は、表流水、地下水等の淡水、雨水貯水、産業廃水、下水等の汚水をろ過処理する比較的小規模の水処理プラントの他に、膜ろ過ユニット数が数千から数万の多数におよぶ海水淡水化プラントにも採用することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…膜ろ過システム、2…原水槽、22…異物(固形分など)、
3…原水供給ポンプ、4…ストレーナ、
51,52…膜モジュール、5a…ケーシング、
5b,5c,5d,5e…開口流路、
6…ろ過膜、60…基体、61…外表面、62…内表面、
63…孔径調整材(温度応答性化合物、pH応答性化合物)、64…孔、
7…処理水槽、8…ヒータ(加温手段)、9…逆洗浄ポンプ、
10…熱交換器、10a…第1の流路、10b…第2の流路、
11…熱発電モジュール、
12…循環ポンプ、
13…回収再生装置、
14…コンプレッサ(気体供給装置)、
L1〜L10…ライン、V1〜V14…バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水槽と、
周囲環境の状態量の変化に応じて水を通過させるための孔の径を変化させる孔径調整材が付加されたろ過膜を有する膜モジュールと、
前記原水槽から前記膜モジュールに原水を供給する原水供給ポンプと、
前記膜モジュールにより処理された処理水が送られる処理水槽と、
前記処理水槽から前記膜モジュールまでの間に設けられた逆洗浄供給ラインと、
前記処理水槽からの処理水を逆洗浄水として前記膜モジュールに供給するために、前記逆洗浄供給ラインに設けられた逆洗浄ポンプと、
前記処理水を加熱して所定温度の温水を生成するために、前記逆洗浄供給ラインに設けられた加温手段と、
前記膜モジュールから逆洗浄使用済みの温水が排出される逆洗浄排出ラインと、
前記膜モジュールのろ過膜でろ過されるべき原水を加温するための熱媒体が循環通流される熱媒体循環ラインと、
前記逆洗浄排出ラインに連通する第1の流路と前記熱媒体循環ラインに連通する第2の流路とを有し、前記第1の流路を流れる逆洗浄使用済みの温水と前記第2の流路を流れる熱媒体との間で熱交換させる熱交換器と、
を有することを特徴とする膜ろ過システム。
【請求項2】
前記熱交換器で回収した熱エネルギを電気エネルギに変換する熱発電モジュールをさらに有することを特徴とする請求項1記載の膜ろ過システム。
【請求項3】
前記熱交換器を通過した逆洗浄水を回収し、再生し、再利用する手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の膜ろ過システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−56340(P2011−56340A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206236(P2009−206236)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】