膜イメージ転写印刷プロセスにおいて膜イメージを物品に転写する方法
膜イメージを物品に転写する方法は、低表面エネルギー膜上に施す印刷装飾を提供することを含む。低表面エネルギー膜の硬さレベルは、70デュロメータショアAよりも大きく、表面エネルギーは最大25mJ/m2までである。この方法は、さらに、加圧装置で所定の圧力をかけて、印刷装飾をスクリーンに通し、低表面エネルギー膜上に押し付けることを含む。加圧装置は、最大70デュロメータショアAの硬さを持つ。低表面エネルギー膜を、物品の表面の幾何学的形状に合わせて形成し、膜と物品との間に圧力をかけて膜イメージを膜から物品に転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、許容可能な不透明性及びイメージのきめ又は質を示す、インクパターンを柔らかい低表面エネルギー膜に施すためのスクリーン印刷パラメータを最適化することに関係し、これの後、プラスチック基材に転写してから印刷を行う。
【背景技術】
【0002】
成型プラスチック製品は、金属及びガラス製品の代替え品として広く受け入れられつつある。成型プラスチック製品に関連する利点の1つは、複数のコンポーネントを1つの物品にまとめて、組立作業の数を減らすことである。つまり、結合又は連結されて1つにされた複数のコンポーネントからすでに構成されている物品は、1工程の成型作業で製造できる。このような作業方法の出現から生じた固有の問題の1つは、その結果生じる物品の複雑な(凹型、凸型などの)表面形状に印刷する能力である。イメージを配置する他の手段がタイミングよく利用できるようになり、またこのニーズに応えるために、いくつかの二次元印刷概念、つまり、スクリーン印刷及びパッド印刷が広く使用されるようになったが、ある程度の成功しかあげられていないため、印刷が望ましい。
【0003】
スクリーン印刷は、知られている業務用プロセスであり、以下でさらに詳しく説明する。スクリーン印刷は、印刷できる表面の複雑さに制限がある。この技術は、「平坦な」基材上に印刷する場合に非常に経済的な方法である。これまで、スクリーン印刷は、絵付け成型(IMD)と呼ばれる技術を実装することにより湾曲した表面に施されてきた。この技術では、印刷イメージは、「平坦な」フィルムへのスクリーン印刷を介して形成される。次いで、このフィルムは、真空により金型の表面に保持される。フィルムは、プラスチック材料を金型に射出した後、物品の表面の一部となる。この技術を使用することに関連する大きな問題点は、物品の表面上の装飾の見当合わせ(registration)及び物品の表面複雑度の制限である。装飾見当合わせは、物品複製毎に金型内のフィルムの位置を正確に決めることを必要とする。表面複雑度は、物品の表面の一部として組み込まれる金型形状に適合する(例えば、伸びる)フィルムの能力により制限される。
【0004】
パッド印刷も、知られている業務用印刷プロセスであり、以下でさらに詳しく説明する。パッド印刷は、タンポン及びクリシェを使用して、凸曲面上に刻印又は印刷する印刷プロセスである。実際、パッド印刷又はタンポグラフィ(tampography)は、内装コンポーネントの装飾用に自動車業界で受け入れられている間接的又はオフセットグラビア印刷の一形態である。パッド又はタンポン印刷は、曲面及びでこぼこした表面の両方で細かい直線(32マイクロメートル)解像度を実現することができる経済的技術である。しかし、この技術は、印刷される基材の複雑な曲率、半径、及びサイズの程度だけでなく、印刷したい基材のエッジのデザインも制限される。
【0005】
膜イメージ転写(MIT)印刷(後述)は、複雑な形状を持つ物品の装飾のためのスクリーン印刷及びパッド印刷(タンポグラフィ)の2つを組み合わせて1つの方法にする新しい印刷概念である。MIT印刷では、平坦な基材にスクリーン印刷する場合に通常得られる印刷解像度及び不透明度で、複雑な形状を持つ物品の印刷を行うことができる。しかし、メーカーは、MIT印刷時のインクのパフォーマンスに関係する変数を最適化すること、及びイメージを膜にスクリーン印刷し、膜から基材にイメージを転写することに関係するこのプロセスを改善することという難題に突き当たっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、MIT印刷時のインクのパフォーマンス、イメージを柔らかい低表面エネルギー膜にスクリーン印刷するプロセス、及び膜から基材にこのイメージを転写するプロセスに関係する変数を最適化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、膜イメージを物品に転写する方法を実現する。この方法は、低表面エネルギー膜上に施す印刷装飾を提供することを含む。低表面エネルギー膜の硬さレベルは約70デュロメータショアA(durometer shore A)よりも大きく、表面エネルギーは最大25mJ/m2までである。この方法は、さらに、加圧装置で所定の圧力をかけて、印刷装飾をスクリーンに通し、低表面エネルギー膜上に押し付けることを含む。加圧装置は、最大約70デュロメータショアAの硬さを持つ。この方法は、さらに、低表面エネルギー膜を物品の表面の幾何学的形状に合わせて形成し、膜と物品との間に圧力をかけて膜イメージを膜から物品に転写することを含む。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び付属の図面から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
スクリーン印刷は、知られている業務用プロセスである。スクリーン印刷プロセスの概略は図1に示されており、参照番号10で表されている。スクリーン印刷プロセス10は、インク厚さが一様な平坦な基材11に印刷を施すために使用される。プロセス10は、目の粗いメッシュ14を所望のグラフィックパターンの形状で示すスクリーン12を使用することを伴う。スクリーン12は、指定された非接触距離のところで印刷される基材11に平行になるように配置される。次いで、スクリーンはインク16でインク浸しにされ、その後、スキージ(squeegee)18がスクリーンの表面の端から端まで移動する。このように移動している間にスキージにより加えられる下方圧力が、スクリーン内のグラフィックパターンを表している目の粗いメッシュにインクを通す。スキージがある領域を通過した後、スクリーンと基材との間の非接触距離とともに伸ばされたスクリーンの張力により、スクリーンをその領域内に蒸着したインクから離すことができる。
【0010】
典型的なパッド印刷プロセスでは、クリシェと呼ばれる彫り込まれたプレートは、インク浸しにされる。スクリーン印刷プロセスの概略は図2に示されており、参照番号110で表されている。クリシェ上の余分なインクは、ドクターブレード(doctoring blade)の使用により取り除かれる。クリシェ114からインク113をピックアップするために、パッド又はタンポン112が使用される。次いで、タンポンは、印刷される基材116上へ移動される。基材と接触した後、タンポンは、基材の表面上を転がされる。インク113イメージは、最後に、基材116から持ち上げられて離れるとタンポン112から解放される。タンポン112に関連するピッチ(厚さ及び角度)は、印刷される基材116の形状及び脆弱さに大きく依存する。タンポン112のピッチ及び形状(丸形、四角形、又は棒状)は、典型的には、インク113がクリシェ114からピックアップされ、基材116上に蒸着されるとローリング作用を行うように選択される。平坦なプロファイルを持つタンポンは、タンポンと基材との間に空気を閉じこめる傾向があり、施された印刷に不良部分を生じさせるため、通常は敬遠される。
【0011】
スクリーン印刷とパッド印刷との著しい差は、使用されるインクの組成に関して存在する。典型的には、これら2つの適用方法で使用されるインクは、溶媒の構成が非常に異なる。スクリーンを乾燥させないようにするため、スクリーン印刷で使用されるインク配合は、蒸発率がパッド印刷インクで使用されるのよりも低い溶媒を含む。パッド印刷インク配合では、溶媒の蒸発を利用して、レオロジー特性及び表面張力を変えて、転写時に「粘着性のある」フィルムをパッド上に実現する。そのため、多くの業務用スクリーン印刷及びパッド印刷のインクは、MIT印刷など、従来の両方の印刷技術を組み合わせて1つの方法にする印刷プロセスでは最適な機能を果たさない。
【0012】
さらに、MIT印刷と従来のスクリーン印刷又は従来のパッド印刷との間の著しい違いは、さまざまなインクパラメータ、膜/基材特性、及びプロセス/適用変数に関して存在する。MIT印刷のインクパラメータは、加速自動車試験プロトコルに対し持ちこたえるためのファクタである構成を持つ、レオロジー及び表面張力を含む。MITプロセスを介して印刷する能力に影響を及ぼすいくつかの基材特性としては、表面エネルギー及び硬さがある。最後に、イメージを膜上にスクリーン印刷するために最適化されるプロセス変数全体としては、スキージの硬さ、スキージに加えられる力、スキージの横断速度、及びスクリーンがインク浸しにされている時間の長さがある。イメージを膜からプラスチック窓などの基材に転写することに関して最適化される追加のプロセス変数としては、印刷を「柔らかい」膜に施してから印刷を膜から「硬い」基材に転写するまでの時間、剥離角、及びとりわけ印刷の転写をしやすくするために形成された膜と基材との間に加えられる圧力の量がある。したがって、業界では、インクのパフォーマンス、イメージを柔らかい低表面エネルギー膜にスクリーン印刷すること、及び膜から基材にこのイメージを転写することに関係するすべての変数を最適化することが要求されている。
【0013】
好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単に例示的であるにすぎず、発明又はその応用又は使用を限定することはいっさい意図されていない。
【0014】
本発明は、膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して膜から「硬い」(例えば、プラスチックなどの)基材に転写された後受け入れ可能な印刷を実現する、イメージを「柔らかい」低表面エネルギー膜上に印刷するために使用されるのが好ましいスクリーン印刷プロセスパラメータの詳細な仕様を規定する。膜イメージ転写印刷から生じる印刷のインク厚さ(つまり、不透明度)及び質に影響を及ぼすスクリーン印刷に関連する一次的特性は、スキージによりスクリーンに加えられる力の大きさ、スキージの硬さ、及び「柔らかい」膜の硬さであることが判明している。非接触距離、インク浸し時間、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、スキージ角度、及びスクリーン組成などの他のスクリーン印刷プロセス変数、さらには厚さ、清潔さ、表面エネルギー、表面極性、及び組成などの膜特性に対する最適な範囲も確定される。
【0015】
MITプロセスの概略は、図3a〜3dに示されている。MIT印刷では、平坦な基材にスクリーン印刷する場合に通常得られる印刷解像度及び不透明度で、複雑な形状を持つ物品の印刷を行うことができる。図3a〜3dに示されているように、インクは、膜イメージ転写(MIT)印刷で使用される。この実施形態では、上で言及され、図3aに示されているように、従来のスクリーン印刷を使用することにより、平坦な「柔らかい」膜218に、スクリーン215を通して、印刷装飾212が施される。次いで、膜218は、図3bに示されているように物品220の鏡像に似た形態固定具223を使用して物品220の表面の幾何学的形状に合わせて変形又は整形し直される。次いで、部品固定具226内に保持されている変形された膜218及び物品220は、図3cに示されているように、強制接触で圧縮されて一体にされる。部品固定具226で保持されている物品220と形成された膜218との間に圧力を加えると、図3dに示されているように、スクリーン印刷されたイメージが膜218から物品220に転写される。
【0016】
発明者らは、「硬い」基材又は「柔らかい」基材上へのスクリーン印刷は、インク厚さに関して類似の結果をもたらすが、パターン品質又はイメージのきめに関しては非常に異なる結果をもたらすことを見いだした。パターン品質は、スクリーンメッシュのせいで生じる薄い線(インクの不足)及び/又は孔が存在するという不具合のあることが観察された。最終的な結果として、図4に示されているような薄い線の領域内にインクが不足しているため不透明度が減少した。この図では、「柔らかい」(白色)膜312が、第1の印刷イメージ313を通して見えるが、「硬い」プラスチック基材上にスクリーン印刷された第2のイメージ314は、完全に不透明であることが観察される。「硬い」基材と「柔らかい」基材の両方に対する同一の結果が、基材の材料組成と無関係に得られた。例えば、発明者らは、PC、TPO、ABS、及びナイロン(すべて、イースタンミシガン大学のポリマー研究所から入手)などの「硬い」基材上にスクリーン印刷されたイメージについて完全な被覆又はソリッドイメージのきめを観察した。同様に、シリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)、ニトリル膜(W60、Kuriyama of America)、フルオロシリコーン膜(MIL−25988,Jedtco Corp.)、又はフルオロカーボンエラストマー(Viton、Daemar Inc.)などの「柔らかい」基材上にスクリーン印刷する場合に不完全な被覆又はイメージのきめが観察された。
【0017】
硬さのレベルに加えて、これらの「柔らかい」基材に関連する低表面エネルギーは、さらに、膜に施された後インクが流れるのを阻害することにより薄い線及び孔の出現に影響する。上述の膜のそれぞれにより示される表面エネルギーは、典型的なリンク配合により示される表面張力にほぼ等しいか、又はそれより小さいことが知られている(例えば、インクの表面張力は、約25ダイン/cm又はmN/mよりも大きい)。上述の「柔らかい」膜の場合のように構造が主に−CH3、−CF2、又は−CF3基を含む表面は、典型的には25mJ/m2又はerg/cm2以下である表面エネルギーを示すことが知られている。
【0018】
「柔らかい」又は「硬い」基材にスクリーン印刷を介して塗布されるインクの厚さは、干渉分光法を使用することで類似であることが観察された。従来の形式の表面形状測定法(profilometry)を使用すると、信頼できない結果が得られることがわかった。表面形状測定法を使用して測定された「柔らかい」基材上に印刷されたインク膜の厚さは、典型的には、干渉分光法を介して測定された厚さよりも大きく測定された。より具体的には、干渉分光法で測定したところ、「硬い」ポリカーボネート基材に塗布されたインクの厚さと「柔らかい」シリコーン膜に塗布されたインクの厚さとの差は5%未満であった。対照的に、同じサンプルについて、表面形状測定法を介した測定結果を得た後、インクの厚さの差は50%を超えることが観察された。
【0019】
表面形状測定装置を使用した場合に誤った結果が得られる主な理由は、干渉分光法と表面形状測定法との基本的な違いにある。干渉分光法は、試料と基準標的とから反射された白色光の増加的及び減殺的干渉による明暗干渉縞の生成を利用する非接触法の代表的なものである。この技術では、きめ、粗さ、及びステップ高距離に関する定量的情報を得ることができる。他方、表面形状測定法は、外力の下で針を表面全体にわたって引きずりステップ高情報を得る接触法である。表面形状測定法は、数種類の熱可塑性基材上に蒸着されたインクについて行った測定間の類似性により示されるとおり「硬い」基材に適した技術である。しかし、この技術では、「柔らかい」基材上に蒸着された類似のインクフィルムを、「硬い」基材上に蒸着されたインクフィルムよりもかなり厚いものとして測定する。針は、外力が加わった状態では「柔らかい」基材の中に押し込まれ、それによって初期基準点又はベースラインが膜の「真の」表面よりも下に押し下げられると考えられる。最終的な結果は、蒸着されたインクフィルムの表面に到達する、より大きなステップ高の測定結果となる。この効果は、直径のより小さな先端(例えば、2.5μmの先端)を持つ円錐形の針を使用するか、又はより大きな力(例えば、最大=20mg)を針に加えると過大に現れることがわかった。
【0020】
スキージ硬さ、スキージ角、スキージに加えられる力、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、及びスクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、印刷される厚さ(例えば、不透明度)及び画質に関するインクのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性のある重要なスクリーン印刷プロセス変数である。発明者らは、いくつかの相互に関係のある実験計画(DOE)を使用してそれらの変数をそれぞれ評価した。実行されたDOEは、実験室規模の装置又は卓上装置を利用するいくつかの完全要因実験及びポリカーボネート窓用の試作品MITプロセスを組み込む1つの一部実施要因スクリーニング実験を含む。これらのDOEはすべて、発明者らにより「柔らかい」基材上へのその後の印刷及びポリカーボネートへの転写が比較され、最適化される際の基準となるベースラインをなした。
【0021】
わかりやすくするため、「柔らかい」膜及び「硬い」基材は、ASTM D2240−03で規定されているように硬さの値により定義される。典型的には、「柔らかい」膜は、硬さが通常ショアAスケールで測定されるエラストマー材料を表す。「柔らかい」材料の例は、とりわけニトリル、ポリジメチルシロキサン、EPDM、ネオプレン、フルオロシリコーン、及びフルオロカーボンエラストマーなどのゴム及びエラストマーを含む。「硬い」基材は、ショアD又はロックウェルRスケールなどの異なるスケールで硬さが典型的に測定される熱可塑性プラスチック材料を代表するものである。熱可塑性プラスチック材料の例は、とりわけTPO、ABS、ポリカーボネート、及びナイロンを含む。
【0022】
スキージ角は、印刷プロセス実行時のスキージの中心線とスクリーンとの間に生じる接触の角度として定義される。図5に示されているように、スクリーン412との接触は、スキージ414幅の中央で行われる。DOEのうちのいくつかの評価を行うために選択されたスキージ角は、0.0°及び45.0°であった。スキージ414角は、露出領域の約3/4を包含するスキージ414の背後に配置された金属支持留め金416を使用することによりそれぞれの実験において保持された。
【0023】
スキージ414に加えられる力は、インク418でスクリーン印刷するときに採用される確定された中点から離れたところのスキージ圧力制御バー上の回転数により表すことができる。外力の中点は、手軽で単純な試行錯誤実験を通じて基材上に印刷する際の上限及び下限を定めることにより決定される。下限は、不完全な印刷が基材に施される地点で定められる(例えば、回転数)。上限は、蒸着するインクが多すぎるせいで印刷が歪み始めるか、又は「汚れ」始める点で定められる。外力の中点は、上限と下限との間の1/2の点又は中程を表す。この技術は、M&R Screen Printing Equipment IncorporatedのSaturn modelなどの市販の多くの低技術スクリーンプリンタに適している。典型的には、スキージ圧力制御バー上の1回転は、スキージの2mmの変位に相当する。発明者らは、下限と上限との間で、通常、4mm程度の分離が生じることを見いだした。そのため、中点を決定する場合の概算で、低点を定め、その後、スキージ変位を2mmだけ増やす。これらの方法を使用してスキージに加えられる力を定めることで、スクリーンと基材との間の「非接触」距離について発生しうる違いについて調整する。「非接触」距離は、通常、約3から12mmまでの間で設定される。加えられたスキージ力(例えば、回転数)に対する定められた中点は、選択された「非接触」距離に依存する。
【0024】
すでに説明されている主スクリーン印刷変数はすべて、「柔らかい」膜に施されるインク層の厚さに影響を及ぼすことがわかっており、その後、膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「硬い」基材への転写が行われる。スキージの外力及び硬さは、発明者らにより、転写されたインク層の厚さに対する最大の影響を示す最も敏感なパラメータであることが見いだされた。外力は、さらに、スキージの硬さ及び角度の両方で、著しい二次相互作用に加わることもわかった。これらの二次相互作用は、主変数効果を補うことが観察された。転写インク層厚さに関するこれらの変数の相互作用プロット及び応答表面は、図6a〜6bに示されている。
【0025】
「柔らかい」膜上に蒸着され、その後「硬い」基材上に転写されるインクフィルムの厚さは、外力が低く、スキージ硬さが高い場合に劇的に増えることが観察された。より具体的には、外力が高められ(例えば、設定された中点よりも+0.5回転多い)たとき、スキージの硬さ(図6a〜6bを参照)は、転写インクフィルムの厚さにはほとんど影響を持たなかった。しかし、外力が減らされたときには、スキージの硬さは著しい影響を持つことがわかった。インク層厚さは、外力が減少するとすべてのスキージ厚さ値で増加することが観察されたが、高い硬さ(80デュロメータショアA)のスキージでは最大の変化が生じた。応答表面に示されているように(図6bを参照)、実験データ中には、著しい大きさの曲率が現れた。
【0026】
約4.0から10.0μmの全限界の範囲内の約4.0〜6.0μmの所望の又は最適なインク厚さは、決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い外力又は圧力を加えることで確保することができた。インクの厚さは、印刷の不透明度と直接的な相関関係を持つ。印刷イメージの不透明度を100%近くにするためには、約4.0から5.0μmの最小厚さが好ましい。所望のインク厚さは60〜80デュロメータショアAの範囲内でスキージを使用して得ることができるが、この変数が持つ外力又は圧力との相互作用のため、低デュロメータ(例えば、70デュロメータショアA未満)のスキージを使用して適切なインク層厚さを得ることが推奨される。0.25回転のこの設定の感度により、外力の慎重な調整が示される。外力の大きさに影響を与えないようにするために、適切なメッシュ張力を保証するスクリーンの定期的調査が推奨される。
【0027】
インク厚さ(例えば、不透明度)は、それほどではないが、スクリーンメッシュカウント(screen mesh count)、及びスクリーンがインク浸しにされる時間の長さの影響を受けることが判明した。特に、印刷の厚さは、230メッシュ未満のスクリーンメッシュカウントを使用すると増やすことができる。スクリーンは、160又は200メッシュの好ましいメッシュカウントのものが利用可能である。スクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、施される印刷の厚さを高めるために最大にされることが好ましい。施される印刷の厚さを増やすためには、30秒を超えるインク浸し時間が好ましい。さらに、発明者らは、印刷イメージの不透明度は、スキージの横断速度の一意的な制御を通じて高めることができることも発見した。典型的なインクにより示されるずり流動化挙動(shear thinning behavior)のため、スキージを約0.34m/秒を超える高い速度で始動すると(例えば、M&R Screen Printing Equipment Inc.のSaturn screen printerでは2から11までの範囲の設定)、施されるイメージの不透明度を高めるのを助長することがわかった。高速だと、インクで生じるずり速度が高くなり、さらにこれにより、インクの粘度が実質的に減少する。そのため、インクの流れがスクリーンを通り「柔らかい」低表面エネルギー膜上に付きやすくなる。スキージの横断速度は、メカニカルアームが機械の停止メカニズムに強い力で衝撃を与えることを防ぐためにストロークの終わりに向けて遅くすることができる。
【0028】
すべてのDOE結果は、0°及び45°の角度の両方のスキージについて再現された。そのため、いずれかの種類の角のある表面を持つスキージを使用し、類似の結果を得ることができる。それぞれの種類のスキージに対する外力の中点は、互いに異なることが観察された。つまり、異なる角度を持つ2つのスキージが同じ硬さを示す場合があっても、それぞれのスキージは、中点を定めるために異なる外力設定(例えば、回転数)を持つのが好ましい。ボールノーズスキージは、最大のインク厚さを蒸着させることがわかった。発明者らは、思いがけなく、平坦(0°)又は角付きスキージ(45°)とは異なり、ボールノーズスキージを使用する許容可能な印刷においてスキージが高いレベルの硬さを示すようにできると判断した。ボールノーズスキージには、約80デュロメータショアAを超える硬さが好ましい。したがって、好ましいデュロメータが利用されるならば、ボールノーズスキージを使用することで、そうするのが望ましければ約10μmの上限に向かってインク厚さが最大になるようにすることができる。
【0029】
発明者らは、さらに実験を通じて、施される印刷のイメージのきめ(例えば、パターン品質)に影響を著しく及ぼす主要変数が、スキージ硬さ及び外力の両方を含むことを発見した。スキージ硬さは、さらに、外力との著しい二次相互作用するようになることもわかった。ここでもまた、この二次相互作用は、主変数効果を補うことが観察された。
【0030】
測定されたイメージのきめデータに十分適合することがわかった最良のモデルは、逆変換であった。つまり、最良のイメージのきめは、1/(イメージのきめ)が最小になったときに存在した。イメージのきめ又は品質評価は、スクリーンメッシュの頂点、透明なスクリーンメッシュ線、影の存在、及び細部の喪失により引き起こされるピンホールの存在を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)であった。イメージのきめに関するこれらの変数について生じる相互作用プロット及び応答表面は、図7a〜7bに示されている。
【0031】
施されるインクフィルムのイメージのきめは、スキージの硬さ低い場合に改善することが観察された。より具体的には、スキージ硬さが低かった場合(例えば、60デュロメータショアA)、外力(図7a〜7b)は印刷イメージの品質にはほとんど影響を持たなかった。しかし、スキージ硬さが増えたときは、外力は著しい影響を与えることがわかった。イメージのきめ又は品質の劣化は、弱い力(例えば、中点から−0.5回転)が加えられたときに高いスキージ硬さにおいて観察可能であった。
【0032】
典型的な統計ソフトウェアパッケージ(ミネソタ州ミネアポリスのDesign Expert(登録商標)社のStatEase)に用意されている客観的望ましさ評価機能を使用していくつかの数値計算を実行し、蒸着したインクフィルムの厚さ及びイメージのきめを最適化し、それにより、最良のパターン品質及び不透明度レベルを得た。この計算に使用されるそれぞれのプロセス変数及び測定された応答に割り当てられた最適化パラメータが表1に示されている。許容可能な不透明度レベルを得るために使用されるインク厚さの範囲は、多くの従来のスクリーン印刷及びパッド印刷インクについて、4.0〜10.0マイクロメートルであることが知られており、4.0から6.0マイクロメートルの範囲が好ましい。これらの計算に対する外力及びスキージ硬さの望ましい範囲は、すでに説明されている実験計画法で使用される範囲全体であると解釈された。高い(望ましい)イメージのきめ評価は、逆変換モデルにより示されるように低い逆比(1.0/イメージのきめ)を持つことにより例示された。
【0033】
それぞれのスキージ角度についてこの分析から得られた数値解は、表1に示されている。これらの解はそれぞれ、0°又は45°のいずれかの角度でスキージを使用してインクを「柔らかい」膜上に蒸着したときに好ましい結果をもたらすと予想される。上述のDOEで評価される範囲内では、低い(70デュロメータショアA未満)硬さのスキージ及び決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い加圧が好ましい。測定データのこの分析に関する重要な観察結果は、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷されたイメージは、MIT処理後の「硬い」基材上に得られる最終イメージを十分表す。
【表1】
【0034】
「柔らかい」低表面エネルギー膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写される印刷に対する約0.17から0.19のイメージのきめの範囲の逆(1.0/イメージのきめ)は、イメージを「硬い」基材上に直接スクリーン印刷する場合に得られるものよりも高い。「硬い」基材上に直接スクリーン印刷する場合に得られるイメージのきめの逆に対する範囲は、0.10〜0.13のオーダーであることがわかった。低いイメージのきめ逆比は、高いレベルの印刷品質に対応する。こうして、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、次いでMIT処理を行うと、「硬い」基材上に直接スクリーン印刷することにより得られる印刷に比べて低い品質の印刷が得られる。「柔らかい」膜上に存在するインク層厚さは、「硬い」基材上に存在するのと似ているが、画質は、スクリーンメッシュにより残された透明な線及び孔の出現により例示されるように低い(図4を参照)。
【0035】
発明者らは、MIT処理(例えば、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、「硬い」基材に転写する)を介して得られた印刷の画質又はイメージのきめは、膜材料の硬さを60デュロメータショアAから約70デュロメータショアA以上に高めることにより劇的に改善できることを発見した。膜の硬さの増大は、重合体鎖の間のより大きな架橋度により行われるため、伸び特性の減少が観察される。そのため、膜材料の硬さを高めるという負の影響は、対応できる基材の曲率の度合いに関する制限となる。
【0036】
イメージを硬いフルオロカーボンエラストマー(THV、ミネソタ州セントポールのDyneon Corp.社)膜上にスクリーン印刷しても、より柔らかい膜材料ですでに観察されているようにスクリーンメッシュ線の現れを示さないことがわかった。この特定の膜は、44デュロメータショアDのオーダーで硬さの値を示し、これは95デュロメータショアAにほぼ等しい。約75デュロメータショアAよりも大きな硬さ値を示す他の膜材料についても類似の結果が得られた。例えば、その後、シリコーン膜(80〜85デュロメータショアA、Ja−Bar Silicone Corp.)からポリカーボネートに印刷を転写すると、60デュロメータショアAの硬さの膜について図8b対図8aで示されているようにスクリーンメッシュ(例えば、透明な線又は孔)の現れがなくても完全なイメージを生成することがわかった。そこで、発明者らは、膜硬さが全被覆又は不透明度を示すイメージをスクリーン印刷する能力を左右することを見いだした。膜の硬さを高めることにより、膜によって示される表面エネルギーが最終イメージに対し持つ効果が、「硬い」基材にイメージ転写するときの膜からのインクの放出に及ぼされるようにできる。
【0037】
発明者らは、2つの固有の種類の「柔らかい」膜材料が膜イメージ転写プロセスで使用するのに好ましいものであることを見いだした。これらの膜は、シリコーン又はフルオロシリコーンエラストマーのいずれかの高分子量押し出し又は圧縮成型シートからなる。これらの種類の膜の具体的例は、イリノイ州エルクグローヴヴィレッジのKuriyama of America社の押し出し成形シリコーンシート(SIL60)、硬さ80+デュロメータショアAの押し出し成形シリコーンシート(ニュージャージー州アンドーバーのJa−Bar Silicone Corp.)、及びミシガン州ウェストランドのJedtco Corp.が製造している押し出し成形フルオロシリコーンシート(MIL−25988、タイプ2、クラス1)を含む。これらの押し出し成形シートは、インクの転写性、及びウレタンコーティング又はシリコーンハードコートシステムなどのオーバーコートの塗布との親和性に関して、例外的なパフォーマンス特性を持つことがわかった。オーバーコートは、印刷イメージ及びプラスチックコンポーネント全体を、さまざまな気象条件及び研磨媒体(例えば、石片、引っかき傷、通常のすり切れなど)に曝されることによる有害な影響から保護するために使用すべきである。
【0038】
液体中では、それぞれの分子が引き起こす引力は、液体が流れる、又は新しい表面を形成するのを抑制する内部圧力を発生させる。この現象は、表面張力と呼ばれ、液体が表面上を流れるために克服される。表面張力は、通常、単位長さ当たりの力(ダイン/cm又はmN/m)として報告される。しかし、液体の場合、この単位長さ当たりの力は、さらに、新しい表面を形成するために加えられる単位面積当たりの過剰自由エネルギー(mJ/m2又はエルグ/cm2)に等価である。つまり、エネルギーは、大量の液体から分子を移動し新しい表面を形成するために使用される。そのため、液体(例えば、インク)では、表面張力は、表面エネルギーと等価である。この同じ等価性は、固体材料については成り立たない(例えば、膜と基材)。
【0039】
固体中の分子は液体中の分子と同じ分子運動性を持たないため、固体に力をかけて、エネルギーを加え、新しい表面の形成に対応できるように表面を歪ませる。そのため、固体中の表面応力又は張力は、典型的には、表面エネルギーよりも大きくなる。固体物質の場合、表面応力と表面エネルギーの両方を測定することは困難なので、表面エネルギーの推定値を出す方法(例えば、接触角、標準化された液体など)に委ねられる。
【0040】
液体が固体に接触したときに、システムの界面エネルギーと接触角(θ)との間に関係が存在する。この関係は、図9に示されているようにヤングの式により記述される。液体が固体表面に広がり、それにより、固体液体界面が増えた場合、固有の効果は、固体蒸気界面の減少である。
【0041】
面積の増大に関するギブス自由エネルギーの変化(dA)は、式(γiv+γis−γsv)dAにより近似される。自由エネルギーのこの変化が負の場合、液体は、固体の表面上を自然に流れるか、又は拡散する。この概念は、式1により定義されているように、拡散係数(S)に関して一般的に表される。この場合、自然な拡散が生じることに対しては正の拡散係数が使用される。
S=γsv−(γiv+γis) (式1)
【0042】
固体蒸気界面の界面エネルギーは、ASTM D2258−94に記述されているように、標準化された解を使用することにより固体に対し臨界「ぬれ」張力を決定することにより推定することができる。知られている表面エネルギー又は張力の解は、基材上の液体となす接触角のコサインとの一次関係を与えることがわかった。そのため、固体の表面を自然に「濡らす」液体の表面張力を、実験により決定できる。この臨界「ぬれ」張力以下の表面張力を示す液体も、表面上を自然に拡散する。臨界「ぬれ」張力のこの概念が言及されているのは、MIT印刷プロセスで膜がインクを正常に転写することができるために好ましい界面化学作用を決定することに意味があるからである。構造が主に−CH2、−CH3、−CF2、又は−CF3のいずれかの基を含む表面は、それぞれ31、22、18、及び15mN/mのオーダーで臨界「ぬれ」張力を示すことが当業者に知られている。
【0043】
シリコーンゴムからなる膜の表面上のSi−CH3機能の存在は、非常に低い「ぬれ」張力を示す表面をもたらす。シリコーンゴムによって示される低い臨界「ぬれ」張力は、良好なインク転写を行う膜の主要特性である。そのため、膜は、約25mN/m以下の臨界「ぬれ」張力を示さなければならない。この臨界ぬれ張力限界は、約25mJ/m2以下の表面エネルギー限界に等しい。
【0044】
全臨界ぬれ張力又は表面エネルギーに加えて、表面の極性は、膜とインクと間の粘着エネルギーが最小にされ、その一方で、インクとプラスチック基材との間の接着エネルギーは最大にされる。インク、膜、及び基材の表面極性は、当業で知られているように、測定された表面張力及び表面エネルギー値を有極成分と分散成分に分けることにより決定することができる。
【0045】
ファウクス(Fowkes)表面エネルギー理論によれば、液体(例えば、インク)の分散(無極性)成分は、式2によりPTFE(無極性表面)に対するインクの接触角度を使用して全表面張力から分離することができる。理論上、PTFE上で低い接触角を示す液体は、表面張力の分散成分について高いレベルを示す。
【数1】
【0046】
この式では、θPTFEは、PTFEと液体(例えば、インク)との間の測定された接触角を表すが、液体に対する全表面張力は、σLにより表される。そのため、液体により示される分散表面張力成分(σLD)は、式2による単純な計算により求めることができる。次いで、全表面張力(σL)と分散成分(σLD)との差を介して、液体に対する極性表面張力成分(σLP)が決定される。極性成分と全表面張力との比から、表面の(%)極性の測定が得られる。
【0047】
同様に、固体基材により示される表面エネルギー(σs)は、式3により、ファウクスのエネルギー理論に従って求めることができる。この式では、σsD及びσsPは、その固体により示される表面エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。σsの決定のため、2つの標準流体を使用することが好ましく、1つは全表面張力に対する分散成分のみを示す。この状況において、σLPは0に近づき、σLはσLDに等しい。そのため、σsDは、式3から直接、測定された接触角及び表面張力データを使用して計算することができる。第1の標準流体として、通常、ジヨードメタンが使用される(σLPは0.0mN/mに等しい)。この標準流体は、50mN/mのオーダーで表面張力値(σL及びσLD)を示す。
【数2】
【0048】
使用される第2の標準流体は、通常、70〜75mN/mの表面張力(σL)、約25mN/m と等価な分散成分(σLD)、及び約50mN/mの極性成分(σLP)を示す水である。この標準流体に対する知られている表面張力値を基材の表面エネルギーの分散成分(σSD)に対する値及び基材に対する水の測定接触角とともに使用することで、極性成分(σSP)の値を式3から求めることができる。したがって、固体基材に対する全表面エネルギーは、単純に分散成分と極性成分の和となる。基材の表面極性は、通常、基材により示される全表面エネルギーに対する極性成分のパーセンテージとして与えられる。
【0049】
MITプロセスで最良の転写を行うために、発明者らは、インクと基材との間の接着エネルギー(類似表面極性)を最大にしつつ、膜とインクとの間の接着(表面極性の不整合)を最小にすることが望ましいことを見いだした。したがって、インクの表面極性は約10%よりも大きく、膜の表面極性は約2%よりも小さくなければならない。同様に、基材の表面極性は、インクの膜表面極性に対する近さよりも、インクの表面極性に近くなければならない。プラスチック基材の表面極性は、約20%未満でなければならない。インクと基材との間の表面極性の類似性により、インクと基材の表面との接着が促進される。
【0050】
硬さ改質のためパッド印刷業界で行われているようにシリコーンオイルをシリコーンゴムに加えても、膜の表面エネルギー又は臨界ぬれ張力に対し全くといっていいくらい影響しないことが示されている。しかし、低分子量シリコーンオイルがシリコーンゴム中に存在することは、シリコーンハードコートシステムなどの保護オーバーコートを「硬い」基材に塗布することができることに問題が生じる可能性があるため、望ましくない。膜から「硬い」基材の表面に汚染物質が移ることで、窓により示される表面エネルギーが変化し、それにより、保護オーバーコートの塗布を妨げる可能性もある。
【0051】
すべての従来のシリコーン印刷パッドは、ポリカーボネート基材の臨界ぬれ張力を接触後の42〜45mN/mから〜30mN/m未満の値に減少させることがわかった。シリコーンパッドと接触した後、アクリルプライマー(SHP401、GE Silicones)からなるオーバーコート及びシリコーンハードコート(AS4000、GE Silicones)をこのポリカーボネート基材に塗布しようとしても、大きなクレーター(例えば、フィッシュアイ)が形成されるため塗布できなかった。低分子量シリコーンオイル(直鎖状及び環状分子)がシリコーンパッドから基材に滲出することが、コーティングの欠陥形成の原因となる表面汚染源として識別された。硬さ改質のため添加された「遊離」シリコーンオイルが皆無かそれに近い「乾燥」として売られている従来のシリコーンパッドであっても、オーバーコート塗布後に類似の表面エネルギー減少及びクレーターの形成を引き起こすことが観察された。
【0052】
真空状態でポストベーク(post−bake)に曝された射出成型(IM)シリコーン及びフルオロシリコーン材料は、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の実質的減少を引き起こすことがわかった。化学洗浄手順(2分間トルエンに浸した後、50℃で45分間ベークサイクル)を使用して低分子量不純物をさらに除去することを試みて、この影響を少し緩和した。しかし、この場合でも、その結果の34〜35mN/mの範囲の臨界ぬれ張力において、オーバーコートシステムをポリカーボネート基材に施した後、クレーターの形成が観察された。1種類のシリコーン及び1種類のフルオロシリコーン膜材料のみ、つまり、押し出し成形シートは、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさず、保護オーバーコートできちんとコーティングする能力を示さないことがわかった。
【0053】
押し出し成形シリコーンゴム膜は、補強剤(例えば、溶融シリカ、沈降シリカなど)及び増量充填剤(例えば、硫酸バリウム、二酸化チタンなど)、さらには硬化剤を加えるとともに、縮合、フリーラジカル、又は付加重合を通じて形成された高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーからなる。エラストマーは、単一重合体型、又は異なる機能若しくは分子量を含む重合体のブレンドからなるものとしてよい。例えば、縮合重合では、ポリジメチルシロキサン主剤樹脂中に存在するヒドロキシル末端基は、架橋剤と反応させられる(図10aを参照)。好ましい架橋剤は、メトキシ又はエトキシ系シラン又はポリシロキサンである。触媒縮合反応は、アルコールを排除して室温で生じる。典型的触媒は、アミン、並びに鉛、亜鉛、鉄、スズなど多くの金属のカルボン酸塩を含む。
【0054】
フリーラジカル硬化プロセスでは、過酸化物などの、特に重合体骨格内のアルキル置換基と相互作用する触媒を利用する。過酸化物触媒(例えば、とりわけ過酸化ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)及び過酸化ベンゾイル)は、熱を加えると分解し、重合体の骨格と反応するフリーラジカル種を形成する。付加硬化機構は、図10bに示されているように、水素化ケイ素(−SiH)の、重合体骨格内に存在する官能基中の不飽和炭素炭素結合への触媒付加を伴う。ヒドロシリル化触媒は、通常、白金、パラジウム、及びロジウムなどの貴金属に基づく。例えば、塩化白金酸(図10bを参照)は、ヒドロシリル化触媒の一実施例である。付加硬化機構は、硬化反応で形成されるいかなる副産物も存在しないため膜材料で使用する高コンシステンシーシリコーンゴムを形成するための好ましい機構である。
【0055】
高コンシステンシー(consistency)シリコーンゴムエラストマーは、典型的には構成要素の射出成型に使用される液体シリコーンゴムとは異なる。一般に、高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーは、液体シリコーンゴムがポンプ注送可能であるのに比べて典型的には粉砕可能である。高コンシステンシーシリコーンゴムの重合度は、約5,000から10,000(重合体骨格内の反復官能基の個数)の範囲内であり、分子量は約350,000から750,000amuの範囲である。対照的に、液体シリコーンゴムの重合度は、10から1,000のオーダーであり、750から75,000amuの範囲の分子量を示す。
【0056】
説明されている実施形態に適している押し出し成形フルオロシリコーンゴムは、ポリジメチルシロキサンゴムについてすでに説明されているのと類似のプロセスを通じて製造できる。ポリジメチルシロキサンゴムの生産に使用される従来のシリコーン中間物質中のメチル基と、トリフルオロプロピル基などのフッ素含有有機基との置換により、高コンシステンシーを持つフルオロシリコーンゴム膜の生産に好ましい基本的成分が得られる。
【0057】
大半のインクシステム中に存在する溶媒システムは、典型的にはエステル、ケトン、及び/又は炭化水素を含むが、とりわけ、「柔らかい」低表面エネルギー膜により吸収することができる。発明者らは、フルオロカーボンエラストマーは、増量及び寸法拡大(膨張)の両方により特徴付けられるように、シリコーンゴム又はフルオロシリコーンゴムに比べて、吸収する溶媒が多いことを見いだした。膜の膨張は、MIT印刷プロセスでインクを塗布し、「柔らかい」膜を使用する場合に問題になる可能性がある。そもそも、発明者らは、膜の膨張は施された印刷の不透明度及び画質に影響を及ぼす膜の硬さの減少に現れるということを明らかにしたのであった。この現象は、非常に薄い(例えば、約0.16cm又は1/16インチ以下の厚さの)膜を使用することで悪化する。この現象は、膜から基材の表面に何らかの汚染物質が滲出するせいで「硬い」基材の表面に影響を及ぼすということはないと判断された。つまり、「硬い」基材の表面エネルギーは、溶媒「膨張」膜と接触した後影響を受けないということである。
【0058】
連続MIT印刷プロセス中に、膜により示される硬さの減少を最小限に抑えるうえで、2つの方法が有益であることがわかった。これらの方法は、膜の表面に強制空気を吹き付け、及び/又は膜材料と親和性のある溶媒で表面を拭くことを含む。シリコーン膜と併用するのに適した溶媒の一実施例は、イソプロピルアルコールなどのアルコールである。これらの洗浄法のいずれかを、約5〜15回の印刷を施す毎に施すことが好ましいことがわかった。アルコール洗浄法を使用すると、膜により示される硬さの減少が図11に示されているように洗浄なしの場合に観察された減少の少なくとも50%に低減されることがわかった。上述の2つの洗浄法を使用するのは、約0.16cm(1/16インチ)を超える厚さの膜を使用すれば60+の連続印刷を施した後であっても許容可能な印刷品質が得られるという点で有益であることがわかった。印刷をポリカーボネート窓に施すためにMITプロセスで使用する好ましい膜厚さは、約0.32から0.64cm(1/18から1/4インチ)のオーダーである。
【0059】
膜の膨張を低減することに対しほとんど影響を持たないとわかっている洗浄法は、インク中に存在する溶媒で膜を拭き、膜の表面を65℃(150°F)の温度に短時間加熱することを含んでいた。時間が経つうちに、膜に吸収されている溶媒が蒸発し、膜は元の硬さに戻る。しかし、この復元は、約12時間を超える時間を要することが観察され、生産効率の観点からは容認できない(過剰な機器不稼働時間)。そのため、膜の表面全体に強制空気を吹き付け、及び/又は膜の表面を親和性のある溶媒で定期的に拭くことが好ましい。
【0060】
以下の具体的例は、本発明を例示するために掲載されており、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
干渉分光法と表面形状測定法によるインク厚さ測定
表2(試行1〜7番)で識別されているようなさまざまな組成及び特性の合計7つの平坦な材料が、従来のスクリーン印刷を使用して印刷された。スクリーン印刷作業では、65デュロメータショアAのスキージ及び160メッシュスクリーンを備える標準スクリーン印刷機(Saturn、M&R Screen Printing Equipment Inc.)を使用した。異なる基材は、ナイロン、ポリカーボネート、ABS、及びTPOなどの「硬い」熱可塑性プラスチック、又はシリコーン及びニトリルなどの「柔らかい」エラストマー(ゴム)のいずれかであることにより例示されているように、2つの硬さ範囲のものであった。すべての基材の厚さは、一定の値に保持された。すべての基材は、同一の印刷条件(例えば、外力、横断速度、インク浸し時間など)、及びブラックスクリーン印刷可能インク(Noriphan HTR−952+10重量%097/003遅延剤、スイスのProell KG)を使用して同時に印刷された。
【表2】
【0062】
従来の表面形状測定法で測定されたときに「硬い」基材(試行1〜4番)に施されたそれぞれの印刷対「柔らかい」基材(試行5〜7番)に施されたそれぞれの印刷のステップ高厚さに著しい違いが観察された。表面形状測定法は、数種類の熱可塑性基材上に蒸着されたインクについて行った測定間の類似性により示されるとおり「硬い」基材に適した技術である(試行1〜4番)。しかし、この技術では、「柔らかい」基材上に蒸着された類似のインクフィルムを、試行5〜7番のさまざまなエラストマー基材について示されているようにかなり厚いものとして測定する。これらの測定結果を得るために使用された表面形状測定装置(Dektak 8000、Sloan、Vicker Industriesの子会社)は、1mgの力を12.5μmの円錐状針に加えた。発明者らは、針が、外力が加わった状態では柔らかい基材の中に押し込まれ、それによって初期基準点又はベースラインが膜の「真の」表面よりも下に押し下げられると考えている。最終的な結果は、蒸着されたインクフィルムの表面に到達する、より大きなステップ高の測定結果となる。この効果は、60デュロメータショアAの硬さを示す他の2つの膜材料(試行5〜6番)と比較して最低の硬さ(30デュロメータショアA)の膜について得られる最大のステップ高測定(試行7番)により立証される。この効果は、直径の小さな先端(例えば、2.5Lmの先端)を持つ円錐形の針を使用するか、又はより大きな力(例えば、最大=20mg)を針に加えると過大に現れることさえあることがわかった。これらの場合の両方において、「柔らかい」基材に施される印刷の測定厚さのバラツキは、有意に増大することがわかった。
【0063】
干渉分光法は、従来の表面形状測定法を使用して得られるのと比べて印刷厚さの測定がより正確な、表面のきめ、粗さ、及びステップ高の違いを測定する非接触法の代表である。この技術では、試料と基準標的とから反射された白色光の増加的及び減殺的干渉による光学的明暗干渉縞の生成を利用して距離を測定する。表3で試行8〜11番と識別されているような全部で2つのポリカーボネート基材及び2つのシリコーンエラストマー膜材料が、従来のスクリーン印刷を使用して印刷された。上ですでに説明されているような同一パラメータを使用して、それぞれの試料をスクリーン印刷したが、ただし、スクリーンのメッシュサイズは、1インチ当たり糸200本に増やした。
【表3】
【0064】
干渉分光法及び表面形状測定法は、「硬い」基材に施される印刷に対するステップ高厚さに関して同一の結果をもたらすことがわかった。試行8番及び9番でポリカーボネートに施された印刷の平均厚さは、干渉分光法(NewView(商標)5022 3D profiler、Zygo Corporation、コネティカット州ミドルフィールド)を介して、7.5μmと測定されたが、これらの同じ試料について表面形状測定法を介して測定された厚さ7.4μmとほぼ同じである。
【0065】
干渉分光法及び表面形状測定法は、「柔らかい」基材に施される印刷のステップ高厚さについて大きく異なる結果をもたらすことがわかった。発明者らは、干渉分光法で測定したところ、ポリカーボネート(試行8番〜9番)基材に塗布されたインクの平均厚さとシリコーン(試行10番〜11番)膜との差は5%未満であることを見いだした。対照的に、これらの同じサンプル(試行8番〜9番対10番〜11番)について、表面形状測定法を介した測定結果を得た後、インクの厚さの差は50%を超えることが観察された。
【0066】
この実施例では、スクリーン印刷は、「硬い」(例えば、ポリカーボネートなど)基材と「柔らかい」(例えば、シリコーン膜など)基材の両方に似た厚さのインクの蒸着を行うことを示している。類似の条件の下でこれらの基板上に蒸着されるインク厚さのバラツキは、干渉分光法により5%未満であるということがわかった。表面形状測定法を使用すると、「柔らかい」基材上に蒸着されたインクの厚さについて間違った測定を行うことがわかった。この場合、針で「柔らかい」膜が凹むと、「真の」ベースラインを確立する難しさが増すと考えられる。
【0067】
「硬い」及び「柔らかい」基材上の印刷の厚さはほぼ同一であったが、印刷により示される画質は、図4に示されているように非常に異なっていた。ニトリル膜(60デュロメータショアA)に施された印刷の場合、不完全なイメージパターンが観察された。この不完全なパターンは、スクリーン印刷プロセスから残されたメッシュ線を埋めるために膜上をインクが流れ得ないことにより生じた。対照的に、ポリカーボネート基材に施されるイメージは、ベタの又は完全なイメージパターンを持つ100%不透明度を示すことがわかった。したがって、この実施例は、さらに、スクリーン印刷により「柔らかい」低表面エネルギー膜に施された印刷の画質は、表面エネルギーがインクにより示されるエネルギーよりも高い「硬い」基材上にスクリーン印刷することにより施される印刷により示される画質ほど目立つ又は際だつものではないことを実証している。
【0068】
膜と基材との主な違いは、硬さと表面エネルギーの両方の値を含む。ポリカーボネートの硬さは、約80デュロメータショアDであるが、臨界ぬれ張力は、ASTM D2578−94により測定した場合に42〜45mN/m又はダイン/cmのオーダーである。他方、ニトリル膜の硬さは、約60デュロメータショアAであり、臨界ぬれ張力は34〜35mN/mのオーダーである。この実験で使用されるインクなどの典型的な溶剤型インクは、27〜35mN/mのオーダーの表面張力を示す。インクなどの液体が基材の表面を完全に「濡らす」ためには、液体により示される表面張力の大きさは、基材の表面張力(「臨界ぬれ張力」)よりも約10mN/mだけ低いのが好ましいことは当業者によく知られている。
【0069】
(実施例2)
実験用及び試作品のMIT装置
実施例1の干渉分光法では、柔らかい膜上に蒸着されたインク厚さはポリカーボネート上へのスクリーン印刷により蒸着された厚さに匹敵すると確定したので、費用効果の最も高い試験手順は、柔らかい膜からポリカーボネート基材上へのMIT転写後にすべての印刷されたイメージを評価することであろう。これらの条件、例えば、試験に先立つ膜からポリカーボネートへの印刷のMIT転写では、従来の表面形状測定装置を使用して、インク厚さの値を正確に決定することが可能である。
【0070】
実験室規模のMIT装置は、膜材料(最大サイズ25.4×25.4cm)とインク組成の両方を費用効果のある形で評価し、さらに、膜からポリカーボネート基材へのインクの転写に関連する基本を理解するために組み立てられた。この実験室規模の装置では、本格的生産MIT機器の実際の稼働をシミュレートした。この意味で、形態固定具を上げて、膜を固定具の形状になるように引き伸ばす。引き伸ばされた膜は、ポリカーボネート基材(最大サイズ22.9×22.9cm)の表面よりも約1〜2mm下に静止する。ポリカーボネート基材は、部品固定具により適所に保持され、その後、下げられ、伸ばされた膜に押し付けられる。基材(部品固定具)と膜(形態固定具)との間に加えられる力は、単純な圧力/力計器を使用して測定される(最大91kgすなわち200lbs)。この実験装置は、その後の実験で使用された(実施例3などを参照)。
【0071】
本格的MIT試作品装置は、本明細書に組み込まれている米国特許出願第2003−0116047号に記載されている図面及び情報に従って製作された。この試作品装置は、約0.5m2の最大サイズまで、ポリカーボネート窓などのプラスチック基材上に印刷することができる。この機械は、標準スクリーン印刷機(Saturn、M&R Screen Printing Equipment Inc.)及びシリコーン膜(60デュロメータショアA、Kuriyama of America、イリノイ州エルクグローヴヴィレッジ)を使用して、ポリカーボネート窓の内面に転写される印刷を生成した。この本格的MIT試作品装置は、その後の実験で使用された(実施例6などを参照)。
【0072】
(実施例3)
実験用MIT装置を使用したDOEのスクリーン印刷
初期実験計画(DOE)は、Noriphan HTR−952(Proell KG)インクシステムをシリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)上にスクリーン印刷するときにスキージの硬さと外力との間の関係を調べるために複製22完全要因(Resolution V)計画として構築された。実験計画は、インク厚さ及びイメージのきめ又は画質に関して測定されたデータとともに表4に示されている。合計12回の実験を試行し、その結果得られるモデル内の曲率を決定するために使用される4つの中点試行(標準順序9〜12)を含むようにした。これらの実験の実験誤差は、中点試行とすべての試行の複製の両方を通じて確定される(つまり、標準順序1及び2は、同一パラメータ設定を使用する)。図5で定義されているように、異なる角度(0°又は45°)のスキージを使用して、この実験計画全体を2回実行した。
【0073】
実施例2で製作された実験室規模のMIT装置は、それぞれの実験試行で施される印刷をシリコーン膜からポリカーボネートプラークに転写するために使用された。すべてのMITプロセス変数は、それぞれの実験試行全体を通して一定に保たれた。この点で、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間の全圧縮力は91キログラムに保持された。さらに、膜へのスクリーン印刷から、膜からポリカーボネート基材への印刷の転写までの時間も、30秒と一定に保たれた。インク厚さ及び画質又はきめに関するすべての測定は、この方法で用意された「硬い」ポリカーボネート試料上で実行され、メーカーの公開推奨事項に従って硬化された。
【表4】
【0074】
異なる角度(45°又は0°)を持つそれぞれのスキージは、望ましい印刷品質を得るために異なる中点力設定を示した。より具体的には、角度45°又は0°のスキージに対する中点力設定は、Saturn screen printerのスキージ圧力制御バー上で、それぞれ3.0又は4.5回転のいずれかの設定であることがわかった。中点力は、施された印刷が一部存在しない(インクが十分でない)、又は部分的に汚れている(インクが多すぎる)の評価の中点を決定することにより定められた。スキージ力は、このダイアルを回してある設定(最小=0、最大=15)に合わすことによりこのスクリーン印刷機上で調整される。この設定は、スキージの垂直配置を上げ下げし、それにより、スキージによりスクリーンに当たる圧力を変える。発明者らは、「柔らかい」膜への印刷の品質は、外力の最小の調整に対し非常に敏感であることを見いだした(例えば、約±0.25回転又は設定)。したがって、それぞれのDOEについて、低及び高の力設定は、最適設定から±0.5回転のところに合わせた。スキージにより示される高及び低の硬さは、それぞれ、60及び80デュロメータショアAに設定された。さらに、すべての実験試行において、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、及びスクリーンインク浸し時間は、それぞれ、1インチ当たり糸200本、25.4cm/秒、及び15秒と一定に保たれた。加えられたスキージ力の中点を決定するので、スクリーンと膜との間の「非接触」距離は、この実験ではプロセス変数とはみなされなかった。上の手順に従って決定されたときに加えられたスキージ力に対する中点は、当業者であれば使用することができる「非接触」距離の違いの主因となっている。
【0075】
スキージの硬さ及び外力は、膜からポリカーボネート基材に転写される際に印刷イメージの厚さ及び画質(きめ)との著しい、一次及び二次相互作用を両方とも持つことがわかった。0°又は45°の角度を持つスキージを使用すると、類似の結果が得られた。0°又は45°の角度でスキージを使用してDOEについて得られた測定データを上の表4にまとめた。測定された結果はすべて、Design−Expert(登録商標)(Stat−Ease Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)などの最も標準的な統計ソフトウェアパッケージで利用可能な、完全ANOVAプロトコルを使用して分析された。
【0076】
ANOVA分析では、スキージ硬さと外力の両方が施された印刷の厚さ(例えば、不透明度)に著しい影響を及ぼすことを立証した。例えば、DOE(スキージ角0°)は、0.908の調整済みR2値を持つ式4として以下で示されている最終的な式を使用してモデル化された。蒸着インク層の厚さは、図6aに示されているように外力が最適な設定よりも0.5回転高い場合に最小値に達することがわかった。この具体的結果は、スキージの硬さに無関係であることが観察された。インク層厚さは、外力が減少するとすべてのスキージ厚さ値で増加することが観察されたが、高い硬さ(80デュロメータショアA)のスキージでは最大の影響が観察された。応答表面に示されているように(図6bを参照)、著しい大きさの曲率が現れた。したがって、許容可能なインク厚さを得るには、低い硬さ及び外力が確定された中点の近くにあるスキージが望ましい。
厚さ=−5.60+0.29×硬さ+2.40×力−0.07×硬さ×力 (式4)
【0077】
膜からポリカーボネートへのMIT転写後に印刷されたインクイメージにより示されるイメージのきめ又は質は、ANOVA分析を通じて、外力とスキージ硬さの両方の著しい影響も受けることが観察された。例えば、DOE(スキージ角0°)は、0.944の調整済みR2値を持つ式5として以下で示されている最終的な式を使用してモデル化された。逆変換は、両方のDOE(45°及び0°のスキージ角)でこの応答に対する最良のモデルを表すことがわかった。より具体的には、画質は、硬いスキージが使用された場合に外力が増えるにつれ画質は改善することが観察され、柔らかいスキージが使用された場合に類似の力条件の下で劣化することが観察された(図7a〜7bを参照)。イメージのきめに関してこの効果について両方のDOEにおいて有意な曲率が観察された。角度0°を持つスキージを使用してDOEでこの効果に対し応答表面が生成される応答表面は、図4Bに一実施例として掲載されている。
1.0/画質=−1.63+0.03×硬さ+0.55×力−0.01×硬さ×力 (式5)
【0078】
それぞれのDOEのANOVA分析を介して生成された応答表面(45°及び0°のスキージ角)を使用して、定義されている基準(表1を参照)に従って最適なパラメータ設定の計算を実行した。Design−Expert(登録商標)ソフトウェアを使用する上述のようなインク層厚さ及び画質の最適化により、指定されたレベルのイメージのきめ及びインク層厚さを示すいくつかの解が得られた。それぞれの解は、低い硬さ、及び中点値よりも少し下又はそれに近い外力のスキージを使用することを示していた。そのため、上述のDOEで評価される範囲内では、低い(70デュロメータショアA未満)硬さのスキージ及び決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い加圧が好ましい。
【0079】
イメージのきめ(品質)のベースラインを定めるために、発明者らは、「硬い」ポリカーボネート基材上に直接印刷する上記のスクリーン印刷DOEを反復した。上で指定されているようなスクリーン印刷パラメータはすべて、この実験で使用された。中点外力は、45°及び0°の角度を持つスキージに対する定められた中点値から7.0及び9.5回転と決定された。「硬い」基材上に直接印刷する場合のイメージのきめの比の逆数は、測定データのANOVA分析により、0.10〜0.13の範囲と決定された。発明者らは、有用な結果を得るために、イメージのきめの逆数(1.0/イメージのきめ)基準は、「柔らかい」膜上に印刷するときに0.10〜0.13から0.17〜0.20まで緩和されなければならないことを思いがけなく見いだした。こうして、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、次いでMIT処理を行うと、「硬い」基材上に直接スクリーン印刷することにより得られる印刷に比べて低い品質の印刷が得られる。「柔らかい」膜上に存在するインク層厚さは、「硬い」基材(実施例1を参照)上に存在するのと似ているが、画質は、スクリーンメッシュにより残された透明な線及び孔713の出現により例示されるように低い(実施例については図8aを参照)。これらの透明な線及び孔を含む印刷の最終結果は、施された印刷により示される最終不透明度の許容できない出現及び減少である。
【0080】
(実施例4)
膜硬さを介した画質向上
実施例3では、イメージのきめ又は印刷品質は、「硬い」基材と比べて、「柔らかい」基材上へのインクの蒸着後に低下することが観察される。特に、スクリーンメッシュ頂点により引き起こされる小さな孔及び透明な線の存在は、「柔らかい」基材上に印刷されるイメージにおいて認められた(図8aを参照)。この実施例は、上述のような現象は、膜の硬さを60デュロメータショアAから約70デュロメータショアAを超えるまで高めることにより回避できることを示している。
【0081】
より具体的には、発明者らは、イメージを「適度に硬い」(THV、フルオロエラストマー、Dyneon Corp.、ミネソタ州セントポール)膜上にスクリーン印刷した後、実験室規模の装置(実施例2)を使用して転写された印刷は、図8bに示されているようなより柔らかい膜材料の場合にすでに観察されているようにスクリーンメッシュ線の何らかの現れを示さないことを見いだした。この特定の膜は、44デュロメータショアDのオーダーで硬さの値を示したが、これは95デュロメータショアAにほぼ等しい。70デュロメータショアAを超える硬さの値を示すさまざまな組成(例えば、シリコーン、及びとりわけ、フルオロシリコーン)の膜上にスクリーン印刷した後、類似の結果が得られた。例えば、その後シリコーン膜(80デュロメータショアA、Ja−Bar Silicone Corp.)からポリカーボネートに印刷を転写すると、図8bに示されているようにスクリーンメッシュ(例えば、透明な線又は孔)の現れがなくても完全なイメージを生成することがわかった。そこで、「柔らかい」柔軟な膜の硬さが、高い画質及び不透明度を示すイメージをスクリーン印刷する能力を左右することがわかった。したがって、膜によって示される表面エネルギーが最終イメージに対し持つ効果は、ポリカーボネートなどの「硬い」基材にイメージ転写するときの膜からのインクの放出に及ぶ。
【0082】
(実施例5)
好ましい膜組成
MIT印刷プロセスで使用できるかどうかについて、8つの従来のシリコーンパッド配合及び16の異なる膜材料が評価された。膜材料は、組成はさまざまであるが、ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、及びフルオロカーボンエラストマーだけでなく、EPDM、ニトリル、及びゴムの中でもネオプレンの代表的試料を含んでいた。ポリカーボネート基材により示されている臨界ぬれ張力の変化は、ポリカーボネートプラークが約10〜15秒間膜と接触した後に測定された。ポリカーボネート基材の臨界ぬれ張力は、ASTM D2578−94で説明されている手順に従って決定された。それぞれの膜材料上へのスクリーン印刷及び「硬い」ポリカーボネート基材への印刷のその後の転写(実験室規模の装置)に関係するすべての変数は、この評価全体を通して一定に保持された。特に、使用されたスクリーン印刷手順は、実施例1及び3で定義されているのと同じであり、実験室規模のMITプロセスは実施例2及び3で説明されている。この評価の結果の詳細な要約は、表5に示されている。
【0083】
従来のパッド印刷で使用されるすべてのシリコーン印刷パッドは、接触後ポリカーボネートの臨界ぬれ張力を42〜45ダイン/cm(試行12番)から30ダイン/cm未満まで減少させることがわかった(試行13〜20番)。シリコーンパッドと接触した後、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートをこのポリカーボネート基材に塗布しようとしても、大きなクレーター(例えば、フィッシュアイ)が形成されるため塗布できなかった。シリコーンパッドから基材にシリコーンオイルが滲出することは、赤外分光法を使用して判別された。赤外分光法は、低分子量シリコーンオイルについて知られているSi−C及びSi−O伸縮振動を識別することができた。硬さ改質のため添加された「遊離」シリコーンオイルが皆無かそれに近い「乾燥」として売られている従来のシリコーンパッドであっても、シリコーンハードコートシステムを施した後に類似の表面エネルギー減少及びクレーター(試行16、19、及び20を参照)の形成を引き起こすことが観察された。
【表5】
【0084】
真空状態でポストベークに曝された射出成型(IM)シリコーン材料は、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の実質的減少を引き起こすことがわかった(試行21〜28番)。化学洗浄手順(2分間トルエンに浸した後、50℃で45分間ベーク)を使用して低分子量不純物をさらに除去することを試みて、この影響を少し緩和した(試行25〜28番)。しかし、34〜35ダイン/cmの範囲の臨界ぬれ張力であっても、オーバーコートをポリカーボネート基材に塗布した後、クレーターの形成が観察された。1種類のシリコーン膜材料のみ、つまり、高コンシステンシーシリコーンの押し出し成形シートは、試行36番に示されているようにポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさず、シリコーンハードコートシステムできちんとコーティングする能力を示さないことがわかった。
【0085】
フルオロシリコーンゴム(試行29〜33番)、フルオロカーボンエラストマー(試行34及び35番)、ニトリルゴム(試行37番)、EPDMゴム(試行38及び40番)、及びネオプレンゴム(試行39番)も、ポリカーボネートにより示される臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさないことがわかった。すべて押し出し成形シート(試行33〜40番)である、これらの膜と接触した後の基材は、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートシステムでオーバーコーティングできることがわかった。射出成型フルオロシリコーンゴムと接触した後(試行29〜32番)のポリカーボネート基材は、アクリルプライマーをその後塗布した後、「ウェットアウト」(“wet−out”)問題を示すことがわかった。この現象は、膜材料の組成は、その材料のシートを作成するために使用される加工方法に関係するので、その膜がMIT印刷プロセスで機能する能力に影響を及ぼす臨界パラメータであることを示唆している。
【0086】
3つの従来のスクリーン印刷インク配合を使用して、印刷をポリカーボネートに転写するさまざまな膜材料の能力を確定した。これらのスクリーン印刷インクは、ポリカーボネート樹脂ベース配合(HTR−952、Proell Gmbh)、アクリルPVC樹脂ベース配合(HG−N501、Coates Screen)とともにある1つの放射線硬化可能アクリレートシステム(DTX−0638、Coates Screen)で代表される2つの熱硬化システムで構成された。ポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的に影響を及ぼさない膜材料(試行29〜40番)のみを、インク転写能力に関して評価した。対照として、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の劇的な減少を引き起こした従来のパッド印刷パッドを使用した1つの試行(試行14番)も試験した。押し出し成形シリコーン(試行36番)及びフルオロシリコーン(試行29〜33番)膜材料は、インク転写を行い、ポリカーボネート基材に転写した後、従来の印刷パッド(試行14番)で得られたのと類似の画質が得られることがわかった。すべての場合に、インクは、膜上にスクリーン印刷された直後に膜からポリカーボネートに転写された。他の膜材料(試行37〜40番)は、それぞれシリコーン及びフルオロシリコーン材料中のSi−CH3及びSi−(CH2)3CF3官能基と比較して、高い表面エネルギー特性のため、失敗した。フルオロカーボンエラストマー(試行34及び35番)は、これらの膜が転写時にインクを膜と基材とに分けることができるため失敗した。つまり、膜と基材は両方とも、転写が完了した後に同じイメージを示した。
【0087】
画質評価は、ピンホールの存在、不完全な転写(均質対局在)、影の存在、及び細部の喪失を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)である。どのような膜材料も、典型的なUV硬化可能インクを使用して許容可能なイメージを転写することができないことがわかった。シリコーン(試行36番)、フルオロシリコーン(試行33番)、及びニトリルゴム(試行37番)の押し出し成形シートとともに、射出成型フルオロシリコーン(試行29〜32番)及び従来のシリコーンパッド(試行14番)は、熱硬化可能インクで最高の画質評価を示した。
【0088】
この実施例は、2つの膜材料、つまり、高コンシステンシーシリコーンの押し出し成形シート及び押し出し成形フルオロシリコーンシートが許容可能なパフォーマンス特性を示すことを実証している。特に、これらの2種類の膜材料は、その後基材に塗布される、シリコーンハードコートなどの保護オーバーコートの品質に影響を及ぼすことなく「硬い」基材への例外的インク転写性を示す。この実施例は、さらに、射出成型可能グレードのシリコーン及びフルオロシリコーンが、基材が保護オーバーコートの塗布を受けるMITプロセスで膜として使用することに対し許容可能でないことを示している。
【0089】
(実施例6)
試作品装置を使用したDOEのスクリーン印刷
実験計画(DOE)は、分解能IV計画にする完全折り重ねとともに2(12−8)一部実施要因(分解能III)計画として構成された。このDOEでは、スクリーン印刷(スクリーンメッシュカウント、スキージ硬さ、スキージ外力、及びインク浸し時間)とMIT転写(印刷から転写までの時間、イメージ転写圧力、及びイメージ転写時間)の両プロセス変数とともに、いくつかのインク組成変数(分散剤重量%、溶媒重量%、樹脂比、触媒重量%、及び不透明度増強剤重量%)の関係を調べようとした。他の可能なすべての変数は、一定に保たれた(例えば、膜硬さ、スキージ横断速度、及びとりわけスキージ角)。ポリカーボネートに転写された後印刷上で測定される選択された応答は、エッジの品質、イメージの明瞭さ、及びピンホールの存在などの視覚的欠陥、転写されたインクのパーセンテージ、及びインク厚さ(不透明度)を含んでいた。この実施例で使用されたインクは、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で説明されているように、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂と、イソシアネート触媒及び不透明度増強顔料とを混合エステル/炭化水素溶媒系中の混合したもので構成された。使用された膜は、65デュロメータショアAのシリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)であった。スキージ角0°がすべての実験試行で使用された。合計38回の実験を試行して6つの中点試行を含むようにし、これを、それぞれの測定された応答について結果のモデルにおける実験誤差及び曲率を決定するために使用した。実験計画は表6にまとめた。
【0090】
このDOEに含まれるスクリーン印刷プロセス変数に対する高低範囲は、スクリーンメッシュカウントについては1インチ当たり糸200〜260本、スキージ外力について設定された中点の周りで−2及び+2回転、スキージ硬さについて60〜80デュロメータショアA、及びスクリーンインク浸し時間について10〜50秒であった。適用された硬さの中点は、実施例3で定義された手順により決定された。このDOEで実行された試験では、加えられたスキージ圧力について確定された中点は、Saturn screen printerのスキージ圧力制御バー上で完全2.0回転であった。
【表6】
【0091】
従来の統計ソフトウェア(Design−Expert(登録商標)、StatEase Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)で実行されたANOVA分析を使用して、イメージ又は印刷の品質、転写された印刷のインク厚さ(不透明度)、及び「柔らかい」膜から「硬い」基材へのインク転写性に影響を及ぼす重要なプロセス変数を決定した。より具体的には、発明者らは、プロセス変数のそれぞれ、つまり、スクリーンメッシュカウント、スキージ圧力(力)、スキージ硬さ、及びスクリーンインク浸し時間が測定された応答の1つ又は複数に影響を及ぼすことを見いだした。より具体的には、スクリーンメッシュ、スクリーンインク浸し時間、スキージ硬さは、蒸着された印刷の厚さに影響を及ぼすことがわかった。さらに、スキージ硬さ及びスキージ外力は、追加の測定法を介して、施された印刷の全不透明度に寄与する有意な因子であることがわかった。スキージ外力は、さらに、膜から基材にインクを転写する能力に影響を及ぼすことがわかったが、スキージ硬さは、イメージの全体的な品質(きめ)に影響を及ぼした。
【0092】
後でポリカーボネート窓に転写される、それぞれの実験試行(表6を参照)で膜に施される印刷の厚さは、実施例1で説明されているように、表面形状測定法を使用して測定された。図12a〜12bに示されているように、インクの厚さは、スクリーンメッシュ(図12a)とスクリーンがインク浸しにされる時間の長さ(図12b)の両方の著しい影響を受けた。ANOVA分析では、不透明度及び接着度の両方に対する好ましいインク厚さ(例えば、4.0及び10.0μm)が確実に得られるようにするためには、スクリーンメッシュは1インチ当たり糸230本未満でなければならないことを示している。このメッシュカウントでは、インク厚さは約4.5μmで、メッシュカウントの低いスクリーンが高い。高いメッシュカウントのスクリーンを使用すると、厚さ下限値4.0μmに近づき始める。低い仕様値又は高い仕様値の近くで動作するプロセスは、本質的に、限界値近傍の測定結果を示す部品の統計分布のため、著しい量の廃物を生み出す。同様に、スクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、好ましいインク厚さを得るために約30秒以上であるのが好ましい。インク浸し時間が30秒の場合のインクの厚さは、約4.5μmとなることがわかった。堅牢なプロセスを用意するために、MT機器は、メッシュカウントが1インチ当たり糸230本以下で、インク浸し時間が約30秒以上であるスクリーンを使用するのが好ましい。
【0093】
施された印刷の厚さも、スキージの硬さの影響を受けることがわかった。図13a〜13bに示されているように、印刷の厚さと印刷の不透明度の直接的相関が観察された。70デュロメータショアAのスキージ硬さでは、施された印刷の厚さは、約4.5μm(図13a)であることがわかった。スキージの硬さが増すと、施された印刷の厚さは減少することが観察された。堅牢なプロセスを用意するために、MIT機器では、約70デュロメータショアA以下の硬さ値を持つスキージ(0°又は45°の角度)を利用する。
【0094】
それぞれの施された印刷の不透明度は、ASTM D001で適宜説明されている光透過率測定法により直接測定された。図10A及びBの比較からわかるように、インク厚さと不透明度との間に直接的相関関係が存在する。印刷されたイメージの不透明度は、同じスキージ硬さ範囲にわたるインク厚さで観察される減少と同様にしてスキージの硬さが増大すると、減少することが観察される(図13b)。
【0095】
スキージ外力は、施された印刷の不透明度にも影響を及ぼすことがわかった。図14aに示されているように、施された印刷の不透明度は、スキージの外力が減少すると増大する。しかし、低いスキージ外力(圧力)を利用することができないが、それは、このプロセス変数は、さらに、他の重要な応答、つまり、膜から基材へのインクの転写に影響を及ぼすことがわかったためである。図14bに示されているように、転写されるインクのパーセンテージは、スキージ外力が低くなると減少する。転写しないインクは、MITプロセスの利用に2つの問題を生じる可能性がある。部品に転写されるインクが不足すると、観察可能な印刷上の欠陥が生じる可能性がある。さらに、インクが膜に残っていると、印刷毎に膜を洗浄する必要が生じ、そのため、生産性が低下し(サイクルタイムが長くなる)、コストが増大する可能性がある。そのため、このプロセス変数は、約±0.5回転が許容可能な確定された中点近く操作されるのが好ましい。この範囲内のスキージ外力の作用により、不透明度とインク転写性との間にバランスのとれた妥協が得られる。
【0096】
この実施例の画質評価は、ピンホールの存在、エッジの品質、イメージの明瞭さ、及び他の視覚的欠陥(例えば、とりわけ影及び透明線の存在)を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)である。スキージの硬さは、発明者らにより、「柔らかい」膜に施され、その後「硬い」基材に転写されるイメージの画質に影響を及ぼす重要なスクリーン印刷変数であることがわかった。図15に示されているように、画質は、スキージの硬さが減少すると増大する。イメージ硬さを70デュロメータショアA以下に保ち、結果として得られる画質を高めるようにしなければならない。
【0097】
(実施例7)
標準パッド印刷タンポンからの汚染
MIT印刷プロセスで使用できるかどうかについて、4つの異なる硬さ範囲内の4つの従来のシリコーンパッド印刷タンポン(白色、青色、赤色、及び灰色に等しい色)が評価された。これらのタンポンは、Comec Pad Printing Machinery of Vermont,Incorporatedが市販する製品である。それぞれのタンポンの硬さ範囲は、タンポンの生産(例えば、成型)時に低分子量シリコーンオイルを加えることにより修正された。シリコーンオイルを加えてタンポンが示す硬さを減少させることは、パッド印刷業界では一般的な方法である。従来の転写タンポンは、低分子量シリコーン材料の縮合又は付加重合のいずれかを通じて形成される成型シリコーンゴムで作られる。
【0098】
それぞれのタンポンについて、表7に示されている温度で実験を都合4回実施した。すべての実験又は試行において、タンポン及び3つのポリカーボネートプラークは、30分間、指示された温度で平衡化された。次いで、それぞれのタンポン及びプラークは、互いに接触させられた。重量4.5キログラムのローラーを、15秒間、タンポンの背面上で前後に移動させ、パッド印刷プロセスをシミュレートした。次いで、水平(剥離)運動を使用してプラークの表面からタンポンが取り外された。
【0099】
すべての実験又は試行で使用される3つのプラークの集まりから、1つのプラークを使用して、標準化された解を使用することにより臨界面(「ぬれ」)張力を決定した。次いで、他の2つのプラークは、コーティング欠陥及び/又は接着喪失の出現を調べるため、アクリルプライマー(SHP401、GE Silicones)及びシリコーンハードコート(AS4000、GE Silicones)でディップコーティングされた。プラマイー/ハードコートシステムは、30分のフラッシュオフ(flash−off)の後、120℃で1時間かけて硬化された。
【表7】
【0100】
シリコーンゴムタンポンに曝されていないポリカーボネートにより示される臨界「ぬれ」張力は、表7(対照)に示されているように42〜44ダイン/cmの範囲内にあることが観察された。シリコーンタンポンに曝された後、ポリカーボネートプラークの表面エネルギーは減少することがわかった。この減少の大きさは、配合中のシリコーンオイルの量(硬さデュロメータにより示される)とタンポンの温度の両方に依存した。それぞれの実験又は試行(温度は一定に保たれた)において、臨界「ぬれ」張力の最大の減少は、最も多いシリコーンオイルを含む、最も柔らかいタンポン(白色)の場合に発生した。臨界「ぬれ」張力の最小の減少は、最小量のシリコーンオイルを含む、最も硬いタンポン(灰色)の場合に観察された。そのため、シリコーンオイルを、タンポンからポリカーボネート基材の表面上に転写し、表面エネルギーを下げることができる。
【0101】
試行41番と42番、さらには、試行43番と44番との間で得られた測定結果の類似性は、プラークの温度が臨界「ぬれ」張力の結果に著しい影響を及ぼさないことを示している。しかし、試行41番及び42番を試行43番及び44番と比較した場合、タンポンの温度は、ポリカーボネートにより示される表面エネルギーに影響を及ぼすことがわかる。すべての場合において、ポリカーボネートプラークの臨界「ぬれ」張力は、タンポン温度が上昇したときに減少した。温度が上昇すると、粘度減少(エントロピー増大)によるシリコーンオイルの流動性も高まる。
【0102】
シリコーン不純物の存在は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を使用して確認された。シリコーンタンポンに曝されたポリカーボネートプラークについて得られたスペクトルは、ポリジメチルシロキサンを示す複数の吸収を含むことがわかった。特に、Si−O−Si非対称伸縮振動は、1050〜1150cm−1で観察される。この伸縮振動は、双極子モーメントの著しい変化を引き起こし、赤外線領域において非常に強く、激しい吸収を発生する。802cm−1を中心とする第2の強い吸収も観察された。この吸収は、Si−C伸縮振動と−CH3揺動の組み合わせにより引き起こされる。
【0103】
4つのシリコーンタンポンのそれぞれに曝されるすべてのプラークは、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートを塗布した後コーティングの欠陥を示すことがわかったが、これはポリカーボネートの表面上にシリコーンオイルが存在することを示す。一般に、表面欠陥の大きさは、ポリカーボネートの表面エネルギーが減少すると増大することが観察された(表7を参照)。コーティング塗布後に生じる典型的な欠陥は、基材の表面の「ウェットアウト」及びクレーター又はフィッシュアイの欠如を含んでいた。フィッシュアイは、押し下げにより囲まれるコーティングされた中心領域及びコーティングの隆起により区別可能なクレーターの一形態である(お碗形の凹み)。これらの種類の欠陥は、コーティングされる基材の表面汚染により引き起こされることが当業者にはよく知られている。この実施例では、従来のシリコーンタンポンが、その後保護オーバーコートが用意されるMITプロセスで使用するのには適していないことを示している。これらのタンポンの生産で使用されるシリコーンゴムは、「成型」グレードであり、好ましい実施形態で示されている高コンシステンシーグレードではない。
【0104】
(実施例8)
表面エネルギー及び表面張力の測定
本明細書に組み込まれている2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で説明されているように、好ましいMITプロセスインクの平均表面張力は、従来のウィルヘルミプレート法を使用して5回測定された。この方法では、19.9mm×0.2mm周囲を示す標準白金プレートを備える張力計(K100、Kruss USA、ノースカロライナ州シャーロット)を使用する。一滴ずつ清潔なポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)表面に堆積したときにインクにより示される接触角も、Drop Shape Analysis System(DSA10、Kruss USA)を使用して5回測定された。測定データは、PTFEに対して確定されたインクの表面張力と接触角の両方に対する平均値とともに、表8に示されている。
【表8】
【0105】
表面張力と接触角の両方をPTFEに対し測定する理由は、式2により説明されるように表面張力を極性成分と分散成分とに分離することにある(ファウクスのエネルギー理論)。表8に示されているように、極性成分と全表面張力との比から、表面の(%)極性の測定が得られる。
【0106】
同様に、シリコーン膜及びポリカーボネート基材により示される表面エネルギーは、式3(ファウクスのエネルギー理論)を使用して決定された。ジヨードメタンが、50.8mN/mの測定された表面張力(σL及びσLD)を示す第1の標準流体として使用された(σLPは0.0mN/mに等しい)。使用される第2の標準流体は、72.8mN/mの測定された表面張力(σL)、26.4mN/mと等価な分散成分(σLD)、及び46.4mN/mの極性成分(σLP)を示す水であった。この標準流体に対する知られている表面張力値を基材の表面エネルギーの分散成分に対する値及び基材に対する水の測定接触角とともに使用することで、極性成分の値並びに2つのシリコーン膜(異なる硬さ値)及びポリカーボネート基材に対する全表面エネルギーを表9に示されているように決定された。
【表9】
【0107】
この実施例は、本発明の押し出し成形シリコーン膜により示される表面エネルギーが25mJ/m2以下であることを実証している。表面エネルギーのこの値は、ほぼ同じ数、25ダイン/cmの臨界ぬれ張力と相関する。比較すると、インクの表面張力は、25ダイン/cmよりも大きいことがわかった。シリコーン膜は、インクの極性に著しく不整合な表面極性を示す(12.66%)。そのため、この実施例は、さらに、インクの表面極性が約10%よりも大きく、膜の表面極性は約2%よりも小さいことを示す。基材の表面極性(18.62%)は、膜表面極性に近いというよりも、インクの表面極性に近い。表面極性のこのような類似性により、インクと基材の表面との接着が促進される。MITプロセスで最良の転写を行うために、インクと基材との間の接着エネルギーを最大にしつつ(表面極性の差を最小にする)、膜とインクとの間の接着を最小にする(表面極性の不整合を最大にする)ことが望ましい。したがって、膜の表面極性は、約2%未満でなければならないが、MITプロセスで許容可能なインク転写を促進するために、インク及び基材の表面極性は、それぞれ、約10%よりも大きく約20%よりも小さくなければならない。
【0108】
(実施例9)
スキージ横断速度を上げた場合の効果
スキージ横断速度が変更される唯一の変数である実験試行が行われた。この点において、2002年12月19日に出願された米国特許出願公報第US2003/0116047A1号で説明されているようなインクを、Kuriyama of Americaにより販売されているシリコーン膜(60デュロメータショアA)上にスクリーン印刷した。スキージ圧力又は力は、確定された中点で保持され、インク浸し時間は8〜30秒の範囲とされ、スキージ角は0°であったが、スキージ横断速度は、毎秒0.22メートル未満から毎秒0.65メートル超まで変化させた。スキージ横断速度に対する上限及び下限は、それぞれ、Saturn screen printer(M&R)上の1及び4のダイアル設定と相関する。
【0109】
実施例2で製作された実験室規模のMIT装置は、それぞれの実験試行で施される印刷をシリコーン膜からポリカーボネートプラークに転写するために使用された。すべてのMITプロセス変数は、それぞれの実験試行全体を通して一定に保たれた。この点で、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間の全圧縮力は91キログラム(200ポンド)に保持された。さらに、膜へのスクリーン印刷から、膜からポリカーボネートへの印刷の転写までの時間も、30秒と一定に保たれた。
【0110】
発明者らは、転写された印刷のインク厚さは、図16に示されているように、スキージ横断速度が高まると増大することを見いだした。スキージ速度を高めると、本質的に、インクにより見られるずり環境が大きくなる。インクはずり流動化流体なので、その粘度は、ずり速度のべき関数として減少する。印刷の開始時に流体により示される粘度が低いほど、流体は柔らかい低表面エネルギー膜上を流れやすく、そのため、被膜厚さが厚くなる。実施例6に示されているように、インク厚さは、不透明度の増大と相関することが観察される。そのため、この実施例は、スキージを業界標準の毎秒0.22メートル又はSaturn screen printerの1のダイアル設定を超える横断速度で動作させることにより、最適なインク厚さにすることができることを示している。10マイクロメートルの望ましいインク厚さに対する上限は、スキージの速度が毎秒約2.0メートル(Saturn screen printer上の11のダイアル設定)を超えない限り到達しない。
【0111】
(実施例10)
ボールノーズスキージ
3つの因子に対するボックスベーンケン応答表面実験計画を実行し、スキージ硬さ、膜硬さ、及び「柔らかい」膜に印刷してから「硬い」基材に印刷を転写するまでの経過時間に関係する等高線面を決定した。この実験計画は、MITプロセスのスクリーン印刷部分における選択したスキージとしてボールノーズスキージを使用して実行された。他のすべてのスクリーン印刷及び転写印刷変数は、この実施例の実験試行全体にわたって一定に保たれた。MITプロセスのスクリーン印刷部分では、スキージ圧力又は力は、確定された中点に保持され、インク浸し時間は30秒に保持され、スキージ横断速度は、Saturn screen printer(M&R)上の2(0.34m/s)のダイアル設定に保持された。同様に、MITプロセスの転写部分では(実施例2の実験室規模の機器を参照)、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間に加えられる全圧縮力は91キログラムに保持された。
【0112】
3つの変数、つまり、スキージ硬さ、経過時間、及び膜硬さは、この実施例では、3つの異なるレベル間で変化させた。ボールノーズスキージの硬さは、57、71、及び85デュロメータショアAの間で変化させた。膜の硬さは、約60(Kuriyama of America)、80(Ja−Bar Silicones Corp.)、及び95(Reiss Manufacturing Inc.、バージニア州ブラックストーン)デュロメータショアAの間で変化させた。最後に、膜に印刷してから印刷を基材に転写するまでの経過時間を、15、30、及び45秒と変えた。この実施例で使用される標準インク配合は、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で適宜説明されている。
【0113】
このDOEのそれぞれの実験試行において転写された印刷について表面形状測定法(Dektak 8000、Vicker Industriesの子会社Sloan)で測定されたインク厚さ値は、ほとんどの統計ソフトウェアパッケージ(例えば、Design−Expert(商標登録)、StatEase inc.、ミネソタ州ミネアポリス)に用意されている完全ANOVAプロトコルを使用して分析された。2つの硬さ変数(例えば、スキージと膜)の間の相互作用として得られる印刷の厚さに対する結果として得られた等高線面は、図17に示されている。発明者らは、ボールノーズスキージが0°又は45°の角度のスキージについて知られているのと異なる振る舞いをすることに思いがけなく気づいた(実施例3及び6を参照)。この点で、高い硬さ値を持つボールノーズスキージは、施された印刷の厚さを4〜10マイクロメートルの望ましい範囲内に維持するために使用される。ボールノーズスキージの硬さは、印刷厚さが好ましい範囲内であるようにするため、約75デュロメータショアA以上であるのが好ましい。
【0114】
図17の等高線面は、さらに、適切な硬さのボールノーズスキージを使用する場合に好ましい印刷厚さとなるようにするため、膜硬さを60デュロメータショアA以上とすることができることも示している。しかし、より高い膜硬さ(例えば、約75デュロメータショアAよりも高い)で与えられるスキージ硬さに許される許容度は大きい方が好ましい。
【0115】
(実施例11)
膜膨張度を最小にする
この実施例では、知られている硬さ(67デュロメータショアA)のシリコーン膜をMITプロセスにおいて複数の印刷に曝した。すべてのプロセスパラメータは、この実施例全体を通して定数値に維持された。MITプロセスのスクリーン印刷部分では、スキージ圧力又は力は、確定された中点に保持され、インク浸し時間は30秒に保持され、スキージ横断速度は、Saturn screen printer(M&R)上の2(0.34m/s)のダイアル設定に保持された。同様に、MITプロセスの転写部分では(実施例2の実験室規模の機器を参照)、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間に加えられる全圧縮力は91キログラムに保持された。最後に、膜に印刷してから印刷を基材に転写するまでの経過時間は、30秒に保持された。この実施例で使用されるインク配合は、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号において好ましいものとして適宜説明されている。
【0116】
5回印刷する毎に、膜は、いくつかの異なる洗浄手順のうちの1つに曝された。これらの洗浄手順では、インクからの溶媒の吸収を介して膜の膨張を最小限に抑えようとしていた。膨張度は、膜の硬さに応じて変化するものとして監視された。膜が膨張し始めると、膜の硬さは減少し始める。そのため、膜硬さは、それぞれの洗浄試行直前に測定された。印刷に応じた膜(厚さ0.12cm)の測定された硬さ値は、表10において、(1)いかなる種類の洗浄も行わない、(2)膜をインク中に存在する溶媒(例えば、遅延剤)で拭くことにより洗浄を行う、(3)イソプロピルアルコールで膜を拭く、(4)膜を加熱する、及び(5)強制空気を膜の表面に吹き渡す、の5つの異なる実験試行について示されている。
【表10】
【0117】
膜の硬さ(厚さ0.32cm)は、洗浄手順が施されなかった場合に最初の60回の印刷で67デュロメータショアAから60.5デュロメータショアAに減少することが観察された。遅延剤(例えば、インク中に微量成分としてすでに存在している溶媒)で膜の表面を拭いても、膜の膨張は変わらない。同様に、IR対流式オーブン内で膜を短時間加熱しても、膜の膨張に影響しない。より高い硬さ値を維持することにより明らかなように膜の膨張を低減する2つの洗浄手順は、膜の表面に強制空気を吹き渡し、膜をアルコール溶媒で拭くことである。シリコーン膜は、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコールと非常に相性がよい。
【0118】
上記実験は、異なるレベルの厚さ(例えば、0.16cm及び0.64cm)のシリコーン膜について繰り返した。2つのシナリオ、つまり、洗浄なしとIPAによる拭き取りに対するすべての膜厚さにわたって得られた硬さ値の範囲は、図11に示されている。1012で示されている、印刷欠陥は、0.16cmの厚さの膜を使用した場合に、約25回印刷した後に発生した。膜膨張により引き起こされたこの印刷欠陥は、洗浄作業と関係なく発生した。この欠陥は、0.16cmよりも厚い膜で発生することは観察されなかった。
【0119】
この実施例では、インクからの溶媒吸収のせいで生じる膜膨張は、アルコールなどの膜と親和性のある溶媒を使用して5〜15回の印刷毎に膜の表面を拭くか、又は膜の表面上に強制空気を吹き渡すことにより最小限に抑えることができることを実証している。この実施例では、さらに、印刷欠陥が形成されることなくMITプロセスが適切に機能するように、膜の厚さを0.16cmよりも大きくするのが好ましく、0.32から0.64cmであるのが好ましいことを実証している。
【0120】
当業者であれば、前の説明から、請求項で定められているように、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に対し修正及び変更を加えることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】スキージを使用してインクをスクリーンメッシュに押し通し平坦な基材上に蒸着させる従来のスクリーン印刷プロセスの概略図である。
【図2】転写パッドによる彫り込まれたクリシェからインクピックアップした後、加圧を介してインクを基材上に蒸着することを含む従来のパッド印刷プロセスの概略図である。
【図3a】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3b】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3c】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3d】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図4a】「硬い」(ポリカーボネート)基材及び「柔らかい」(ニトリル)膜上にスクリーン印刷されたイメージの斜視図である。
【図4b】「硬い」(ポリカーボネート)基材及び「柔らかい」(ニトリル)膜上にスクリーン印刷されたイメージの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による実験計画法におけるスキージ角(φ)の適用の概略図である。
【図6a】膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「柔らかい」(シリコーン)膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材上に転写されたインク層の厚さに対しスキージ硬さ及び外力(applied force;加えた力)が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図6b】膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「柔らかい」(シリコーン)膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材上に転写されたインク層の厚さに対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図7a】転写されたインク層のイメージのきめ又は質に対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図7b】転写されたインク層のイメージのきめ又は質に対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図8a】続いてMITプロセスを介して「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写が行われる、シリコーン膜上にスクリーン印刷されたインク及びシリコーン膜の顕微鏡写真である。
【図8b】続いてMITプロセスを介して「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写が行われる、シリコーン膜上にスクリーン印刷されたインク及びシリコーン膜の顕微鏡写真である。
【図9】界面エネルギー及び接触角に関係するヤングの式の概略表現である。
【図10a】縮合重合及び付加重合の両方の反応を介してシリコーンゴムの化学量論的形成を示す図である。
【図10b】縮合重合及び付加重合の両方の反応を介してシリコーンゴムの化学量論的形成を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態によるシリコーン膜硬さ対印刷サイクル数のグラフである。
【図12a】インク層の厚さに対しスクリーンメッシュカウント及びインク浸し時間が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図12b】インク層の厚さに対しスクリーンメッシュカウント及びインク浸し時間が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図13a】インク層の厚さ及び不透明度に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図13b】インク層の厚さ及び不透明度に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図14a】施された印刷の不透明度及び転写されたインクの割合に対し外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図14b】施された印刷の不透明度及び転写されたインクの割合に対し外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図15】転写された印刷の質に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図16】最終印刷の厚さを、印刷を「柔らかい」膜に蒸着するために使用されるスキージの横断速度の関数として示すグラフである。
【図17】膜の硬さとスキージの硬さのグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、許容可能な不透明性及びイメージのきめ又は質を示す、インクパターンを柔らかい低表面エネルギー膜に施すためのスクリーン印刷パラメータを最適化することに関係し、これの後、プラスチック基材に転写してから印刷を行う。
【背景技術】
【0002】
成型プラスチック製品は、金属及びガラス製品の代替え品として広く受け入れられつつある。成型プラスチック製品に関連する利点の1つは、複数のコンポーネントを1つの物品にまとめて、組立作業の数を減らすことである。つまり、結合又は連結されて1つにされた複数のコンポーネントからすでに構成されている物品は、1工程の成型作業で製造できる。このような作業方法の出現から生じた固有の問題の1つは、その結果生じる物品の複雑な(凹型、凸型などの)表面形状に印刷する能力である。イメージを配置する他の手段がタイミングよく利用できるようになり、またこのニーズに応えるために、いくつかの二次元印刷概念、つまり、スクリーン印刷及びパッド印刷が広く使用されるようになったが、ある程度の成功しかあげられていないため、印刷が望ましい。
【0003】
スクリーン印刷は、知られている業務用プロセスであり、以下でさらに詳しく説明する。スクリーン印刷は、印刷できる表面の複雑さに制限がある。この技術は、「平坦な」基材上に印刷する場合に非常に経済的な方法である。これまで、スクリーン印刷は、絵付け成型(IMD)と呼ばれる技術を実装することにより湾曲した表面に施されてきた。この技術では、印刷イメージは、「平坦な」フィルムへのスクリーン印刷を介して形成される。次いで、このフィルムは、真空により金型の表面に保持される。フィルムは、プラスチック材料を金型に射出した後、物品の表面の一部となる。この技術を使用することに関連する大きな問題点は、物品の表面上の装飾の見当合わせ(registration)及び物品の表面複雑度の制限である。装飾見当合わせは、物品複製毎に金型内のフィルムの位置を正確に決めることを必要とする。表面複雑度は、物品の表面の一部として組み込まれる金型形状に適合する(例えば、伸びる)フィルムの能力により制限される。
【0004】
パッド印刷も、知られている業務用印刷プロセスであり、以下でさらに詳しく説明する。パッド印刷は、タンポン及びクリシェを使用して、凸曲面上に刻印又は印刷する印刷プロセスである。実際、パッド印刷又はタンポグラフィ(tampography)は、内装コンポーネントの装飾用に自動車業界で受け入れられている間接的又はオフセットグラビア印刷の一形態である。パッド又はタンポン印刷は、曲面及びでこぼこした表面の両方で細かい直線(32マイクロメートル)解像度を実現することができる経済的技術である。しかし、この技術は、印刷される基材の複雑な曲率、半径、及びサイズの程度だけでなく、印刷したい基材のエッジのデザインも制限される。
【0005】
膜イメージ転写(MIT)印刷(後述)は、複雑な形状を持つ物品の装飾のためのスクリーン印刷及びパッド印刷(タンポグラフィ)の2つを組み合わせて1つの方法にする新しい印刷概念である。MIT印刷では、平坦な基材にスクリーン印刷する場合に通常得られる印刷解像度及び不透明度で、複雑な形状を持つ物品の印刷を行うことができる。しかし、メーカーは、MIT印刷時のインクのパフォーマンスに関係する変数を最適化すること、及びイメージを膜にスクリーン印刷し、膜から基材にイメージを転写することに関係するこのプロセスを改善することという難題に突き当たっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、MIT印刷時のインクのパフォーマンス、イメージを柔らかい低表面エネルギー膜にスクリーン印刷するプロセス、及び膜から基材にこのイメージを転写するプロセスに関係する変数を最適化する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、膜イメージを物品に転写する方法を実現する。この方法は、低表面エネルギー膜上に施す印刷装飾を提供することを含む。低表面エネルギー膜の硬さレベルは約70デュロメータショアA(durometer shore A)よりも大きく、表面エネルギーは最大25mJ/m2までである。この方法は、さらに、加圧装置で所定の圧力をかけて、印刷装飾をスクリーンに通し、低表面エネルギー膜上に押し付けることを含む。加圧装置は、最大約70デュロメータショアAの硬さを持つ。この方法は、さらに、低表面エネルギー膜を物品の表面の幾何学的形状に合わせて形成し、膜と物品との間に圧力をかけて膜イメージを膜から物品に転写することを含む。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び付属の図面から明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
スクリーン印刷は、知られている業務用プロセスである。スクリーン印刷プロセスの概略は図1に示されており、参照番号10で表されている。スクリーン印刷プロセス10は、インク厚さが一様な平坦な基材11に印刷を施すために使用される。プロセス10は、目の粗いメッシュ14を所望のグラフィックパターンの形状で示すスクリーン12を使用することを伴う。スクリーン12は、指定された非接触距離のところで印刷される基材11に平行になるように配置される。次いで、スクリーンはインク16でインク浸しにされ、その後、スキージ(squeegee)18がスクリーンの表面の端から端まで移動する。このように移動している間にスキージにより加えられる下方圧力が、スクリーン内のグラフィックパターンを表している目の粗いメッシュにインクを通す。スキージがある領域を通過した後、スクリーンと基材との間の非接触距離とともに伸ばされたスクリーンの張力により、スクリーンをその領域内に蒸着したインクから離すことができる。
【0010】
典型的なパッド印刷プロセスでは、クリシェと呼ばれる彫り込まれたプレートは、インク浸しにされる。スクリーン印刷プロセスの概略は図2に示されており、参照番号110で表されている。クリシェ上の余分なインクは、ドクターブレード(doctoring blade)の使用により取り除かれる。クリシェ114からインク113をピックアップするために、パッド又はタンポン112が使用される。次いで、タンポンは、印刷される基材116上へ移動される。基材と接触した後、タンポンは、基材の表面上を転がされる。インク113イメージは、最後に、基材116から持ち上げられて離れるとタンポン112から解放される。タンポン112に関連するピッチ(厚さ及び角度)は、印刷される基材116の形状及び脆弱さに大きく依存する。タンポン112のピッチ及び形状(丸形、四角形、又は棒状)は、典型的には、インク113がクリシェ114からピックアップされ、基材116上に蒸着されるとローリング作用を行うように選択される。平坦なプロファイルを持つタンポンは、タンポンと基材との間に空気を閉じこめる傾向があり、施された印刷に不良部分を生じさせるため、通常は敬遠される。
【0011】
スクリーン印刷とパッド印刷との著しい差は、使用されるインクの組成に関して存在する。典型的には、これら2つの適用方法で使用されるインクは、溶媒の構成が非常に異なる。スクリーンを乾燥させないようにするため、スクリーン印刷で使用されるインク配合は、蒸発率がパッド印刷インクで使用されるのよりも低い溶媒を含む。パッド印刷インク配合では、溶媒の蒸発を利用して、レオロジー特性及び表面張力を変えて、転写時に「粘着性のある」フィルムをパッド上に実現する。そのため、多くの業務用スクリーン印刷及びパッド印刷のインクは、MIT印刷など、従来の両方の印刷技術を組み合わせて1つの方法にする印刷プロセスでは最適な機能を果たさない。
【0012】
さらに、MIT印刷と従来のスクリーン印刷又は従来のパッド印刷との間の著しい違いは、さまざまなインクパラメータ、膜/基材特性、及びプロセス/適用変数に関して存在する。MIT印刷のインクパラメータは、加速自動車試験プロトコルに対し持ちこたえるためのファクタである構成を持つ、レオロジー及び表面張力を含む。MITプロセスを介して印刷する能力に影響を及ぼすいくつかの基材特性としては、表面エネルギー及び硬さがある。最後に、イメージを膜上にスクリーン印刷するために最適化されるプロセス変数全体としては、スキージの硬さ、スキージに加えられる力、スキージの横断速度、及びスクリーンがインク浸しにされている時間の長さがある。イメージを膜からプラスチック窓などの基材に転写することに関して最適化される追加のプロセス変数としては、印刷を「柔らかい」膜に施してから印刷を膜から「硬い」基材に転写するまでの時間、剥離角、及びとりわけ印刷の転写をしやすくするために形成された膜と基材との間に加えられる圧力の量がある。したがって、業界では、インクのパフォーマンス、イメージを柔らかい低表面エネルギー膜にスクリーン印刷すること、及び膜から基材にこのイメージを転写することに関係するすべての変数を最適化することが要求されている。
【0013】
好ましい実施形態の以下の説明は、本質的に単に例示的であるにすぎず、発明又はその応用又は使用を限定することはいっさい意図されていない。
【0014】
本発明は、膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して膜から「硬い」(例えば、プラスチックなどの)基材に転写された後受け入れ可能な印刷を実現する、イメージを「柔らかい」低表面エネルギー膜上に印刷するために使用されるのが好ましいスクリーン印刷プロセスパラメータの詳細な仕様を規定する。膜イメージ転写印刷から生じる印刷のインク厚さ(つまり、不透明度)及び質に影響を及ぼすスクリーン印刷に関連する一次的特性は、スキージによりスクリーンに加えられる力の大きさ、スキージの硬さ、及び「柔らかい」膜の硬さであることが判明している。非接触距離、インク浸し時間、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、スキージ角度、及びスクリーン組成などの他のスクリーン印刷プロセス変数、さらには厚さ、清潔さ、表面エネルギー、表面極性、及び組成などの膜特性に対する最適な範囲も確定される。
【0015】
MITプロセスの概略は、図3a〜3dに示されている。MIT印刷では、平坦な基材にスクリーン印刷する場合に通常得られる印刷解像度及び不透明度で、複雑な形状を持つ物品の印刷を行うことができる。図3a〜3dに示されているように、インクは、膜イメージ転写(MIT)印刷で使用される。この実施形態では、上で言及され、図3aに示されているように、従来のスクリーン印刷を使用することにより、平坦な「柔らかい」膜218に、スクリーン215を通して、印刷装飾212が施される。次いで、膜218は、図3bに示されているように物品220の鏡像に似た形態固定具223を使用して物品220の表面の幾何学的形状に合わせて変形又は整形し直される。次いで、部品固定具226内に保持されている変形された膜218及び物品220は、図3cに示されているように、強制接触で圧縮されて一体にされる。部品固定具226で保持されている物品220と形成された膜218との間に圧力を加えると、図3dに示されているように、スクリーン印刷されたイメージが膜218から物品220に転写される。
【0016】
発明者らは、「硬い」基材又は「柔らかい」基材上へのスクリーン印刷は、インク厚さに関して類似の結果をもたらすが、パターン品質又はイメージのきめに関しては非常に異なる結果をもたらすことを見いだした。パターン品質は、スクリーンメッシュのせいで生じる薄い線(インクの不足)及び/又は孔が存在するという不具合のあることが観察された。最終的な結果として、図4に示されているような薄い線の領域内にインクが不足しているため不透明度が減少した。この図では、「柔らかい」(白色)膜312が、第1の印刷イメージ313を通して見えるが、「硬い」プラスチック基材上にスクリーン印刷された第2のイメージ314は、完全に不透明であることが観察される。「硬い」基材と「柔らかい」基材の両方に対する同一の結果が、基材の材料組成と無関係に得られた。例えば、発明者らは、PC、TPO、ABS、及びナイロン(すべて、イースタンミシガン大学のポリマー研究所から入手)などの「硬い」基材上にスクリーン印刷されたイメージについて完全な被覆又はソリッドイメージのきめを観察した。同様に、シリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)、ニトリル膜(W60、Kuriyama of America)、フルオロシリコーン膜(MIL−25988,Jedtco Corp.)、又はフルオロカーボンエラストマー(Viton、Daemar Inc.)などの「柔らかい」基材上にスクリーン印刷する場合に不完全な被覆又はイメージのきめが観察された。
【0017】
硬さのレベルに加えて、これらの「柔らかい」基材に関連する低表面エネルギーは、さらに、膜に施された後インクが流れるのを阻害することにより薄い線及び孔の出現に影響する。上述の膜のそれぞれにより示される表面エネルギーは、典型的なリンク配合により示される表面張力にほぼ等しいか、又はそれより小さいことが知られている(例えば、インクの表面張力は、約25ダイン/cm又はmN/mよりも大きい)。上述の「柔らかい」膜の場合のように構造が主に−CH3、−CF2、又は−CF3基を含む表面は、典型的には25mJ/m2又はerg/cm2以下である表面エネルギーを示すことが知られている。
【0018】
「柔らかい」又は「硬い」基材にスクリーン印刷を介して塗布されるインクの厚さは、干渉分光法を使用することで類似であることが観察された。従来の形式の表面形状測定法(profilometry)を使用すると、信頼できない結果が得られることがわかった。表面形状測定法を使用して測定された「柔らかい」基材上に印刷されたインク膜の厚さは、典型的には、干渉分光法を介して測定された厚さよりも大きく測定された。より具体的には、干渉分光法で測定したところ、「硬い」ポリカーボネート基材に塗布されたインクの厚さと「柔らかい」シリコーン膜に塗布されたインクの厚さとの差は5%未満であった。対照的に、同じサンプルについて、表面形状測定法を介した測定結果を得た後、インクの厚さの差は50%を超えることが観察された。
【0019】
表面形状測定装置を使用した場合に誤った結果が得られる主な理由は、干渉分光法と表面形状測定法との基本的な違いにある。干渉分光法は、試料と基準標的とから反射された白色光の増加的及び減殺的干渉による明暗干渉縞の生成を利用する非接触法の代表的なものである。この技術では、きめ、粗さ、及びステップ高距離に関する定量的情報を得ることができる。他方、表面形状測定法は、外力の下で針を表面全体にわたって引きずりステップ高情報を得る接触法である。表面形状測定法は、数種類の熱可塑性基材上に蒸着されたインクについて行った測定間の類似性により示されるとおり「硬い」基材に適した技術である。しかし、この技術では、「柔らかい」基材上に蒸着された類似のインクフィルムを、「硬い」基材上に蒸着されたインクフィルムよりもかなり厚いものとして測定する。針は、外力が加わった状態では「柔らかい」基材の中に押し込まれ、それによって初期基準点又はベースラインが膜の「真の」表面よりも下に押し下げられると考えられる。最終的な結果は、蒸着されたインクフィルムの表面に到達する、より大きなステップ高の測定結果となる。この効果は、直径のより小さな先端(例えば、2.5μmの先端)を持つ円錐形の針を使用するか、又はより大きな力(例えば、最大=20mg)を針に加えると過大に現れることがわかった。
【0020】
スキージ硬さ、スキージ角、スキージに加えられる力、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、及びスクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、印刷される厚さ(例えば、不透明度)及び画質に関するインクのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性のある重要なスクリーン印刷プロセス変数である。発明者らは、いくつかの相互に関係のある実験計画(DOE)を使用してそれらの変数をそれぞれ評価した。実行されたDOEは、実験室規模の装置又は卓上装置を利用するいくつかの完全要因実験及びポリカーボネート窓用の試作品MITプロセスを組み込む1つの一部実施要因スクリーニング実験を含む。これらのDOEはすべて、発明者らにより「柔らかい」基材上へのその後の印刷及びポリカーボネートへの転写が比較され、最適化される際の基準となるベースラインをなした。
【0021】
わかりやすくするため、「柔らかい」膜及び「硬い」基材は、ASTM D2240−03で規定されているように硬さの値により定義される。典型的には、「柔らかい」膜は、硬さが通常ショアAスケールで測定されるエラストマー材料を表す。「柔らかい」材料の例は、とりわけニトリル、ポリジメチルシロキサン、EPDM、ネオプレン、フルオロシリコーン、及びフルオロカーボンエラストマーなどのゴム及びエラストマーを含む。「硬い」基材は、ショアD又はロックウェルRスケールなどの異なるスケールで硬さが典型的に測定される熱可塑性プラスチック材料を代表するものである。熱可塑性プラスチック材料の例は、とりわけTPO、ABS、ポリカーボネート、及びナイロンを含む。
【0022】
スキージ角は、印刷プロセス実行時のスキージの中心線とスクリーンとの間に生じる接触の角度として定義される。図5に示されているように、スクリーン412との接触は、スキージ414幅の中央で行われる。DOEのうちのいくつかの評価を行うために選択されたスキージ角は、0.0°及び45.0°であった。スキージ414角は、露出領域の約3/4を包含するスキージ414の背後に配置された金属支持留め金416を使用することによりそれぞれの実験において保持された。
【0023】
スキージ414に加えられる力は、インク418でスクリーン印刷するときに採用される確定された中点から離れたところのスキージ圧力制御バー上の回転数により表すことができる。外力の中点は、手軽で単純な試行錯誤実験を通じて基材上に印刷する際の上限及び下限を定めることにより決定される。下限は、不完全な印刷が基材に施される地点で定められる(例えば、回転数)。上限は、蒸着するインクが多すぎるせいで印刷が歪み始めるか、又は「汚れ」始める点で定められる。外力の中点は、上限と下限との間の1/2の点又は中程を表す。この技術は、M&R Screen Printing Equipment IncorporatedのSaturn modelなどの市販の多くの低技術スクリーンプリンタに適している。典型的には、スキージ圧力制御バー上の1回転は、スキージの2mmの変位に相当する。発明者らは、下限と上限との間で、通常、4mm程度の分離が生じることを見いだした。そのため、中点を決定する場合の概算で、低点を定め、その後、スキージ変位を2mmだけ増やす。これらの方法を使用してスキージに加えられる力を定めることで、スクリーンと基材との間の「非接触」距離について発生しうる違いについて調整する。「非接触」距離は、通常、約3から12mmまでの間で設定される。加えられたスキージ力(例えば、回転数)に対する定められた中点は、選択された「非接触」距離に依存する。
【0024】
すでに説明されている主スクリーン印刷変数はすべて、「柔らかい」膜に施されるインク層の厚さに影響を及ぼすことがわかっており、その後、膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「硬い」基材への転写が行われる。スキージの外力及び硬さは、発明者らにより、転写されたインク層の厚さに対する最大の影響を示す最も敏感なパラメータであることが見いだされた。外力は、さらに、スキージの硬さ及び角度の両方で、著しい二次相互作用に加わることもわかった。これらの二次相互作用は、主変数効果を補うことが観察された。転写インク層厚さに関するこれらの変数の相互作用プロット及び応答表面は、図6a〜6bに示されている。
【0025】
「柔らかい」膜上に蒸着され、その後「硬い」基材上に転写されるインクフィルムの厚さは、外力が低く、スキージ硬さが高い場合に劇的に増えることが観察された。より具体的には、外力が高められ(例えば、設定された中点よりも+0.5回転多い)たとき、スキージの硬さ(図6a〜6bを参照)は、転写インクフィルムの厚さにはほとんど影響を持たなかった。しかし、外力が減らされたときには、スキージの硬さは著しい影響を持つことがわかった。インク層厚さは、外力が減少するとすべてのスキージ厚さ値で増加することが観察されたが、高い硬さ(80デュロメータショアA)のスキージでは最大の変化が生じた。応答表面に示されているように(図6bを参照)、実験データ中には、著しい大きさの曲率が現れた。
【0026】
約4.0から10.0μmの全限界の範囲内の約4.0〜6.0μmの所望の又は最適なインク厚さは、決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い外力又は圧力を加えることで確保することができた。インクの厚さは、印刷の不透明度と直接的な相関関係を持つ。印刷イメージの不透明度を100%近くにするためには、約4.0から5.0μmの最小厚さが好ましい。所望のインク厚さは60〜80デュロメータショアAの範囲内でスキージを使用して得ることができるが、この変数が持つ外力又は圧力との相互作用のため、低デュロメータ(例えば、70デュロメータショアA未満)のスキージを使用して適切なインク層厚さを得ることが推奨される。0.25回転のこの設定の感度により、外力の慎重な調整が示される。外力の大きさに影響を与えないようにするために、適切なメッシュ張力を保証するスクリーンの定期的調査が推奨される。
【0027】
インク厚さ(例えば、不透明度)は、それほどではないが、スクリーンメッシュカウント(screen mesh count)、及びスクリーンがインク浸しにされる時間の長さの影響を受けることが判明した。特に、印刷の厚さは、230メッシュ未満のスクリーンメッシュカウントを使用すると増やすことができる。スクリーンは、160又は200メッシュの好ましいメッシュカウントのものが利用可能である。スクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、施される印刷の厚さを高めるために最大にされることが好ましい。施される印刷の厚さを増やすためには、30秒を超えるインク浸し時間が好ましい。さらに、発明者らは、印刷イメージの不透明度は、スキージの横断速度の一意的な制御を通じて高めることができることも発見した。典型的なインクにより示されるずり流動化挙動(shear thinning behavior)のため、スキージを約0.34m/秒を超える高い速度で始動すると(例えば、M&R Screen Printing Equipment Inc.のSaturn screen printerでは2から11までの範囲の設定)、施されるイメージの不透明度を高めるのを助長することがわかった。高速だと、インクで生じるずり速度が高くなり、さらにこれにより、インクの粘度が実質的に減少する。そのため、インクの流れがスクリーンを通り「柔らかい」低表面エネルギー膜上に付きやすくなる。スキージの横断速度は、メカニカルアームが機械の停止メカニズムに強い力で衝撃を与えることを防ぐためにストロークの終わりに向けて遅くすることができる。
【0028】
すべてのDOE結果は、0°及び45°の角度の両方のスキージについて再現された。そのため、いずれかの種類の角のある表面を持つスキージを使用し、類似の結果を得ることができる。それぞれの種類のスキージに対する外力の中点は、互いに異なることが観察された。つまり、異なる角度を持つ2つのスキージが同じ硬さを示す場合があっても、それぞれのスキージは、中点を定めるために異なる外力設定(例えば、回転数)を持つのが好ましい。ボールノーズスキージは、最大のインク厚さを蒸着させることがわかった。発明者らは、思いがけなく、平坦(0°)又は角付きスキージ(45°)とは異なり、ボールノーズスキージを使用する許容可能な印刷においてスキージが高いレベルの硬さを示すようにできると判断した。ボールノーズスキージには、約80デュロメータショアAを超える硬さが好ましい。したがって、好ましいデュロメータが利用されるならば、ボールノーズスキージを使用することで、そうするのが望ましければ約10μmの上限に向かってインク厚さが最大になるようにすることができる。
【0029】
発明者らは、さらに実験を通じて、施される印刷のイメージのきめ(例えば、パターン品質)に影響を著しく及ぼす主要変数が、スキージ硬さ及び外力の両方を含むことを発見した。スキージ硬さは、さらに、外力との著しい二次相互作用するようになることもわかった。ここでもまた、この二次相互作用は、主変数効果を補うことが観察された。
【0030】
測定されたイメージのきめデータに十分適合することがわかった最良のモデルは、逆変換であった。つまり、最良のイメージのきめは、1/(イメージのきめ)が最小になったときに存在した。イメージのきめ又は品質評価は、スクリーンメッシュの頂点、透明なスクリーンメッシュ線、影の存在、及び細部の喪失により引き起こされるピンホールの存在を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)であった。イメージのきめに関するこれらの変数について生じる相互作用プロット及び応答表面は、図7a〜7bに示されている。
【0031】
施されるインクフィルムのイメージのきめは、スキージの硬さ低い場合に改善することが観察された。より具体的には、スキージ硬さが低かった場合(例えば、60デュロメータショアA)、外力(図7a〜7b)は印刷イメージの品質にはほとんど影響を持たなかった。しかし、スキージ硬さが増えたときは、外力は著しい影響を与えることがわかった。イメージのきめ又は品質の劣化は、弱い力(例えば、中点から−0.5回転)が加えられたときに高いスキージ硬さにおいて観察可能であった。
【0032】
典型的な統計ソフトウェアパッケージ(ミネソタ州ミネアポリスのDesign Expert(登録商標)社のStatEase)に用意されている客観的望ましさ評価機能を使用していくつかの数値計算を実行し、蒸着したインクフィルムの厚さ及びイメージのきめを最適化し、それにより、最良のパターン品質及び不透明度レベルを得た。この計算に使用されるそれぞれのプロセス変数及び測定された応答に割り当てられた最適化パラメータが表1に示されている。許容可能な不透明度レベルを得るために使用されるインク厚さの範囲は、多くの従来のスクリーン印刷及びパッド印刷インクについて、4.0〜10.0マイクロメートルであることが知られており、4.0から6.0マイクロメートルの範囲が好ましい。これらの計算に対する外力及びスキージ硬さの望ましい範囲は、すでに説明されている実験計画法で使用される範囲全体であると解釈された。高い(望ましい)イメージのきめ評価は、逆変換モデルにより示されるように低い逆比(1.0/イメージのきめ)を持つことにより例示された。
【0033】
それぞれのスキージ角度についてこの分析から得られた数値解は、表1に示されている。これらの解はそれぞれ、0°又は45°のいずれかの角度でスキージを使用してインクを「柔らかい」膜上に蒸着したときに好ましい結果をもたらすと予想される。上述のDOEで評価される範囲内では、低い(70デュロメータショアA未満)硬さのスキージ及び決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い加圧が好ましい。測定データのこの分析に関する重要な観察結果は、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷されたイメージは、MIT処理後の「硬い」基材上に得られる最終イメージを十分表す。
【表1】
【0034】
「柔らかい」低表面エネルギー膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写される印刷に対する約0.17から0.19のイメージのきめの範囲の逆(1.0/イメージのきめ)は、イメージを「硬い」基材上に直接スクリーン印刷する場合に得られるものよりも高い。「硬い」基材上に直接スクリーン印刷する場合に得られるイメージのきめの逆に対する範囲は、0.10〜0.13のオーダーであることがわかった。低いイメージのきめ逆比は、高いレベルの印刷品質に対応する。こうして、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、次いでMIT処理を行うと、「硬い」基材上に直接スクリーン印刷することにより得られる印刷に比べて低い品質の印刷が得られる。「柔らかい」膜上に存在するインク層厚さは、「硬い」基材上に存在するのと似ているが、画質は、スクリーンメッシュにより残された透明な線及び孔の出現により例示されるように低い(図4を参照)。
【0035】
発明者らは、MIT処理(例えば、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、「硬い」基材に転写する)を介して得られた印刷の画質又はイメージのきめは、膜材料の硬さを60デュロメータショアAから約70デュロメータショアA以上に高めることにより劇的に改善できることを発見した。膜の硬さの増大は、重合体鎖の間のより大きな架橋度により行われるため、伸び特性の減少が観察される。そのため、膜材料の硬さを高めるという負の影響は、対応できる基材の曲率の度合いに関する制限となる。
【0036】
イメージを硬いフルオロカーボンエラストマー(THV、ミネソタ州セントポールのDyneon Corp.社)膜上にスクリーン印刷しても、より柔らかい膜材料ですでに観察されているようにスクリーンメッシュ線の現れを示さないことがわかった。この特定の膜は、44デュロメータショアDのオーダーで硬さの値を示し、これは95デュロメータショアAにほぼ等しい。約75デュロメータショアAよりも大きな硬さ値を示す他の膜材料についても類似の結果が得られた。例えば、その後、シリコーン膜(80〜85デュロメータショアA、Ja−Bar Silicone Corp.)からポリカーボネートに印刷を転写すると、60デュロメータショアAの硬さの膜について図8b対図8aで示されているようにスクリーンメッシュ(例えば、透明な線又は孔)の現れがなくても完全なイメージを生成することがわかった。そこで、発明者らは、膜硬さが全被覆又は不透明度を示すイメージをスクリーン印刷する能力を左右することを見いだした。膜の硬さを高めることにより、膜によって示される表面エネルギーが最終イメージに対し持つ効果が、「硬い」基材にイメージ転写するときの膜からのインクの放出に及ぼされるようにできる。
【0037】
発明者らは、2つの固有の種類の「柔らかい」膜材料が膜イメージ転写プロセスで使用するのに好ましいものであることを見いだした。これらの膜は、シリコーン又はフルオロシリコーンエラストマーのいずれかの高分子量押し出し又は圧縮成型シートからなる。これらの種類の膜の具体的例は、イリノイ州エルクグローヴヴィレッジのKuriyama of America社の押し出し成形シリコーンシート(SIL60)、硬さ80+デュロメータショアAの押し出し成形シリコーンシート(ニュージャージー州アンドーバーのJa−Bar Silicone Corp.)、及びミシガン州ウェストランドのJedtco Corp.が製造している押し出し成形フルオロシリコーンシート(MIL−25988、タイプ2、クラス1)を含む。これらの押し出し成形シートは、インクの転写性、及びウレタンコーティング又はシリコーンハードコートシステムなどのオーバーコートの塗布との親和性に関して、例外的なパフォーマンス特性を持つことがわかった。オーバーコートは、印刷イメージ及びプラスチックコンポーネント全体を、さまざまな気象条件及び研磨媒体(例えば、石片、引っかき傷、通常のすり切れなど)に曝されることによる有害な影響から保護するために使用すべきである。
【0038】
液体中では、それぞれの分子が引き起こす引力は、液体が流れる、又は新しい表面を形成するのを抑制する内部圧力を発生させる。この現象は、表面張力と呼ばれ、液体が表面上を流れるために克服される。表面張力は、通常、単位長さ当たりの力(ダイン/cm又はmN/m)として報告される。しかし、液体の場合、この単位長さ当たりの力は、さらに、新しい表面を形成するために加えられる単位面積当たりの過剰自由エネルギー(mJ/m2又はエルグ/cm2)に等価である。つまり、エネルギーは、大量の液体から分子を移動し新しい表面を形成するために使用される。そのため、液体(例えば、インク)では、表面張力は、表面エネルギーと等価である。この同じ等価性は、固体材料については成り立たない(例えば、膜と基材)。
【0039】
固体中の分子は液体中の分子と同じ分子運動性を持たないため、固体に力をかけて、エネルギーを加え、新しい表面の形成に対応できるように表面を歪ませる。そのため、固体中の表面応力又は張力は、典型的には、表面エネルギーよりも大きくなる。固体物質の場合、表面応力と表面エネルギーの両方を測定することは困難なので、表面エネルギーの推定値を出す方法(例えば、接触角、標準化された液体など)に委ねられる。
【0040】
液体が固体に接触したときに、システムの界面エネルギーと接触角(θ)との間に関係が存在する。この関係は、図9に示されているようにヤングの式により記述される。液体が固体表面に広がり、それにより、固体液体界面が増えた場合、固有の効果は、固体蒸気界面の減少である。
【0041】
面積の増大に関するギブス自由エネルギーの変化(dA)は、式(γiv+γis−γsv)dAにより近似される。自由エネルギーのこの変化が負の場合、液体は、固体の表面上を自然に流れるか、又は拡散する。この概念は、式1により定義されているように、拡散係数(S)に関して一般的に表される。この場合、自然な拡散が生じることに対しては正の拡散係数が使用される。
S=γsv−(γiv+γis) (式1)
【0042】
固体蒸気界面の界面エネルギーは、ASTM D2258−94に記述されているように、標準化された解を使用することにより固体に対し臨界「ぬれ」張力を決定することにより推定することができる。知られている表面エネルギー又は張力の解は、基材上の液体となす接触角のコサインとの一次関係を与えることがわかった。そのため、固体の表面を自然に「濡らす」液体の表面張力を、実験により決定できる。この臨界「ぬれ」張力以下の表面張力を示す液体も、表面上を自然に拡散する。臨界「ぬれ」張力のこの概念が言及されているのは、MIT印刷プロセスで膜がインクを正常に転写することができるために好ましい界面化学作用を決定することに意味があるからである。構造が主に−CH2、−CH3、−CF2、又は−CF3のいずれかの基を含む表面は、それぞれ31、22、18、及び15mN/mのオーダーで臨界「ぬれ」張力を示すことが当業者に知られている。
【0043】
シリコーンゴムからなる膜の表面上のSi−CH3機能の存在は、非常に低い「ぬれ」張力を示す表面をもたらす。シリコーンゴムによって示される低い臨界「ぬれ」張力は、良好なインク転写を行う膜の主要特性である。そのため、膜は、約25mN/m以下の臨界「ぬれ」張力を示さなければならない。この臨界ぬれ張力限界は、約25mJ/m2以下の表面エネルギー限界に等しい。
【0044】
全臨界ぬれ張力又は表面エネルギーに加えて、表面の極性は、膜とインクと間の粘着エネルギーが最小にされ、その一方で、インクとプラスチック基材との間の接着エネルギーは最大にされる。インク、膜、及び基材の表面極性は、当業で知られているように、測定された表面張力及び表面エネルギー値を有極成分と分散成分に分けることにより決定することができる。
【0045】
ファウクス(Fowkes)表面エネルギー理論によれば、液体(例えば、インク)の分散(無極性)成分は、式2によりPTFE(無極性表面)に対するインクの接触角度を使用して全表面張力から分離することができる。理論上、PTFE上で低い接触角を示す液体は、表面張力の分散成分について高いレベルを示す。
【数1】
【0046】
この式では、θPTFEは、PTFEと液体(例えば、インク)との間の測定された接触角を表すが、液体に対する全表面張力は、σLにより表される。そのため、液体により示される分散表面張力成分(σLD)は、式2による単純な計算により求めることができる。次いで、全表面張力(σL)と分散成分(σLD)との差を介して、液体に対する極性表面張力成分(σLP)が決定される。極性成分と全表面張力との比から、表面の(%)極性の測定が得られる。
【0047】
同様に、固体基材により示される表面エネルギー(σs)は、式3により、ファウクスのエネルギー理論に従って求めることができる。この式では、σsD及びσsPは、その固体により示される表面エネルギーの分散成分及び極性成分を表す。σsの決定のため、2つの標準流体を使用することが好ましく、1つは全表面張力に対する分散成分のみを示す。この状況において、σLPは0に近づき、σLはσLDに等しい。そのため、σsDは、式3から直接、測定された接触角及び表面張力データを使用して計算することができる。第1の標準流体として、通常、ジヨードメタンが使用される(σLPは0.0mN/mに等しい)。この標準流体は、50mN/mのオーダーで表面張力値(σL及びσLD)を示す。
【数2】
【0048】
使用される第2の標準流体は、通常、70〜75mN/mの表面張力(σL)、約25mN/m と等価な分散成分(σLD)、及び約50mN/mの極性成分(σLP)を示す水である。この標準流体に対する知られている表面張力値を基材の表面エネルギーの分散成分(σSD)に対する値及び基材に対する水の測定接触角とともに使用することで、極性成分(σSP)の値を式3から求めることができる。したがって、固体基材に対する全表面エネルギーは、単純に分散成分と極性成分の和となる。基材の表面極性は、通常、基材により示される全表面エネルギーに対する極性成分のパーセンテージとして与えられる。
【0049】
MITプロセスで最良の転写を行うために、発明者らは、インクと基材との間の接着エネルギー(類似表面極性)を最大にしつつ、膜とインクとの間の接着(表面極性の不整合)を最小にすることが望ましいことを見いだした。したがって、インクの表面極性は約10%よりも大きく、膜の表面極性は約2%よりも小さくなければならない。同様に、基材の表面極性は、インクの膜表面極性に対する近さよりも、インクの表面極性に近くなければならない。プラスチック基材の表面極性は、約20%未満でなければならない。インクと基材との間の表面極性の類似性により、インクと基材の表面との接着が促進される。
【0050】
硬さ改質のためパッド印刷業界で行われているようにシリコーンオイルをシリコーンゴムに加えても、膜の表面エネルギー又は臨界ぬれ張力に対し全くといっていいくらい影響しないことが示されている。しかし、低分子量シリコーンオイルがシリコーンゴム中に存在することは、シリコーンハードコートシステムなどの保護オーバーコートを「硬い」基材に塗布することができることに問題が生じる可能性があるため、望ましくない。膜から「硬い」基材の表面に汚染物質が移ることで、窓により示される表面エネルギーが変化し、それにより、保護オーバーコートの塗布を妨げる可能性もある。
【0051】
すべての従来のシリコーン印刷パッドは、ポリカーボネート基材の臨界ぬれ張力を接触後の42〜45mN/mから〜30mN/m未満の値に減少させることがわかった。シリコーンパッドと接触した後、アクリルプライマー(SHP401、GE Silicones)からなるオーバーコート及びシリコーンハードコート(AS4000、GE Silicones)をこのポリカーボネート基材に塗布しようとしても、大きなクレーター(例えば、フィッシュアイ)が形成されるため塗布できなかった。低分子量シリコーンオイル(直鎖状及び環状分子)がシリコーンパッドから基材に滲出することが、コーティングの欠陥形成の原因となる表面汚染源として識別された。硬さ改質のため添加された「遊離」シリコーンオイルが皆無かそれに近い「乾燥」として売られている従来のシリコーンパッドであっても、オーバーコート塗布後に類似の表面エネルギー減少及びクレーターの形成を引き起こすことが観察された。
【0052】
真空状態でポストベーク(post−bake)に曝された射出成型(IM)シリコーン及びフルオロシリコーン材料は、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の実質的減少を引き起こすことがわかった。化学洗浄手順(2分間トルエンに浸した後、50℃で45分間ベークサイクル)を使用して低分子量不純物をさらに除去することを試みて、この影響を少し緩和した。しかし、この場合でも、その結果の34〜35mN/mの範囲の臨界ぬれ張力において、オーバーコートシステムをポリカーボネート基材に施した後、クレーターの形成が観察された。1種類のシリコーン及び1種類のフルオロシリコーン膜材料のみ、つまり、押し出し成形シートは、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさず、保護オーバーコートできちんとコーティングする能力を示さないことがわかった。
【0053】
押し出し成形シリコーンゴム膜は、補強剤(例えば、溶融シリカ、沈降シリカなど)及び増量充填剤(例えば、硫酸バリウム、二酸化チタンなど)、さらには硬化剤を加えるとともに、縮合、フリーラジカル、又は付加重合を通じて形成された高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーからなる。エラストマーは、単一重合体型、又は異なる機能若しくは分子量を含む重合体のブレンドからなるものとしてよい。例えば、縮合重合では、ポリジメチルシロキサン主剤樹脂中に存在するヒドロキシル末端基は、架橋剤と反応させられる(図10aを参照)。好ましい架橋剤は、メトキシ又はエトキシ系シラン又はポリシロキサンである。触媒縮合反応は、アルコールを排除して室温で生じる。典型的触媒は、アミン、並びに鉛、亜鉛、鉄、スズなど多くの金属のカルボン酸塩を含む。
【0054】
フリーラジカル硬化プロセスでは、過酸化物などの、特に重合体骨格内のアルキル置換基と相互作用する触媒を利用する。過酸化物触媒(例えば、とりわけ過酸化ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)及び過酸化ベンゾイル)は、熱を加えると分解し、重合体の骨格と反応するフリーラジカル種を形成する。付加硬化機構は、図10bに示されているように、水素化ケイ素(−SiH)の、重合体骨格内に存在する官能基中の不飽和炭素炭素結合への触媒付加を伴う。ヒドロシリル化触媒は、通常、白金、パラジウム、及びロジウムなどの貴金属に基づく。例えば、塩化白金酸(図10bを参照)は、ヒドロシリル化触媒の一実施例である。付加硬化機構は、硬化反応で形成されるいかなる副産物も存在しないため膜材料で使用する高コンシステンシーシリコーンゴムを形成するための好ましい機構である。
【0055】
高コンシステンシー(consistency)シリコーンゴムエラストマーは、典型的には構成要素の射出成型に使用される液体シリコーンゴムとは異なる。一般に、高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーは、液体シリコーンゴムがポンプ注送可能であるのに比べて典型的には粉砕可能である。高コンシステンシーシリコーンゴムの重合度は、約5,000から10,000(重合体骨格内の反復官能基の個数)の範囲内であり、分子量は約350,000から750,000amuの範囲である。対照的に、液体シリコーンゴムの重合度は、10から1,000のオーダーであり、750から75,000amuの範囲の分子量を示す。
【0056】
説明されている実施形態に適している押し出し成形フルオロシリコーンゴムは、ポリジメチルシロキサンゴムについてすでに説明されているのと類似のプロセスを通じて製造できる。ポリジメチルシロキサンゴムの生産に使用される従来のシリコーン中間物質中のメチル基と、トリフルオロプロピル基などのフッ素含有有機基との置換により、高コンシステンシーを持つフルオロシリコーンゴム膜の生産に好ましい基本的成分が得られる。
【0057】
大半のインクシステム中に存在する溶媒システムは、典型的にはエステル、ケトン、及び/又は炭化水素を含むが、とりわけ、「柔らかい」低表面エネルギー膜により吸収することができる。発明者らは、フルオロカーボンエラストマーは、増量及び寸法拡大(膨張)の両方により特徴付けられるように、シリコーンゴム又はフルオロシリコーンゴムに比べて、吸収する溶媒が多いことを見いだした。膜の膨張は、MIT印刷プロセスでインクを塗布し、「柔らかい」膜を使用する場合に問題になる可能性がある。そもそも、発明者らは、膜の膨張は施された印刷の不透明度及び画質に影響を及ぼす膜の硬さの減少に現れるということを明らかにしたのであった。この現象は、非常に薄い(例えば、約0.16cm又は1/16インチ以下の厚さの)膜を使用することで悪化する。この現象は、膜から基材の表面に何らかの汚染物質が滲出するせいで「硬い」基材の表面に影響を及ぼすということはないと判断された。つまり、「硬い」基材の表面エネルギーは、溶媒「膨張」膜と接触した後影響を受けないということである。
【0058】
連続MIT印刷プロセス中に、膜により示される硬さの減少を最小限に抑えるうえで、2つの方法が有益であることがわかった。これらの方法は、膜の表面に強制空気を吹き付け、及び/又は膜材料と親和性のある溶媒で表面を拭くことを含む。シリコーン膜と併用するのに適した溶媒の一実施例は、イソプロピルアルコールなどのアルコールである。これらの洗浄法のいずれかを、約5〜15回の印刷を施す毎に施すことが好ましいことがわかった。アルコール洗浄法を使用すると、膜により示される硬さの減少が図11に示されているように洗浄なしの場合に観察された減少の少なくとも50%に低減されることがわかった。上述の2つの洗浄法を使用するのは、約0.16cm(1/16インチ)を超える厚さの膜を使用すれば60+の連続印刷を施した後であっても許容可能な印刷品質が得られるという点で有益であることがわかった。印刷をポリカーボネート窓に施すためにMITプロセスで使用する好ましい膜厚さは、約0.32から0.64cm(1/18から1/4インチ)のオーダーである。
【0059】
膜の膨張を低減することに対しほとんど影響を持たないとわかっている洗浄法は、インク中に存在する溶媒で膜を拭き、膜の表面を65℃(150°F)の温度に短時間加熱することを含んでいた。時間が経つうちに、膜に吸収されている溶媒が蒸発し、膜は元の硬さに戻る。しかし、この復元は、約12時間を超える時間を要することが観察され、生産効率の観点からは容認できない(過剰な機器不稼働時間)。そのため、膜の表面全体に強制空気を吹き付け、及び/又は膜の表面を親和性のある溶媒で定期的に拭くことが好ましい。
【0060】
以下の具体的例は、本発明を例示するために掲載されており、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
干渉分光法と表面形状測定法によるインク厚さ測定
表2(試行1〜7番)で識別されているようなさまざまな組成及び特性の合計7つの平坦な材料が、従来のスクリーン印刷を使用して印刷された。スクリーン印刷作業では、65デュロメータショアAのスキージ及び160メッシュスクリーンを備える標準スクリーン印刷機(Saturn、M&R Screen Printing Equipment Inc.)を使用した。異なる基材は、ナイロン、ポリカーボネート、ABS、及びTPOなどの「硬い」熱可塑性プラスチック、又はシリコーン及びニトリルなどの「柔らかい」エラストマー(ゴム)のいずれかであることにより例示されているように、2つの硬さ範囲のものであった。すべての基材の厚さは、一定の値に保持された。すべての基材は、同一の印刷条件(例えば、外力、横断速度、インク浸し時間など)、及びブラックスクリーン印刷可能インク(Noriphan HTR−952+10重量%097/003遅延剤、スイスのProell KG)を使用して同時に印刷された。
【表2】
【0062】
従来の表面形状測定法で測定されたときに「硬い」基材(試行1〜4番)に施されたそれぞれの印刷対「柔らかい」基材(試行5〜7番)に施されたそれぞれの印刷のステップ高厚さに著しい違いが観察された。表面形状測定法は、数種類の熱可塑性基材上に蒸着されたインクについて行った測定間の類似性により示されるとおり「硬い」基材に適した技術である(試行1〜4番)。しかし、この技術では、「柔らかい」基材上に蒸着された類似のインクフィルムを、試行5〜7番のさまざまなエラストマー基材について示されているようにかなり厚いものとして測定する。これらの測定結果を得るために使用された表面形状測定装置(Dektak 8000、Sloan、Vicker Industriesの子会社)は、1mgの力を12.5μmの円錐状針に加えた。発明者らは、針が、外力が加わった状態では柔らかい基材の中に押し込まれ、それによって初期基準点又はベースラインが膜の「真の」表面よりも下に押し下げられると考えている。最終的な結果は、蒸着されたインクフィルムの表面に到達する、より大きなステップ高の測定結果となる。この効果は、60デュロメータショアAの硬さを示す他の2つの膜材料(試行5〜6番)と比較して最低の硬さ(30デュロメータショアA)の膜について得られる最大のステップ高測定(試行7番)により立証される。この効果は、直径の小さな先端(例えば、2.5Lmの先端)を持つ円錐形の針を使用するか、又はより大きな力(例えば、最大=20mg)を針に加えると過大に現れることさえあることがわかった。これらの場合の両方において、「柔らかい」基材に施される印刷の測定厚さのバラツキは、有意に増大することがわかった。
【0063】
干渉分光法は、従来の表面形状測定法を使用して得られるのと比べて印刷厚さの測定がより正確な、表面のきめ、粗さ、及びステップ高の違いを測定する非接触法の代表である。この技術では、試料と基準標的とから反射された白色光の増加的及び減殺的干渉による光学的明暗干渉縞の生成を利用して距離を測定する。表3で試行8〜11番と識別されているような全部で2つのポリカーボネート基材及び2つのシリコーンエラストマー膜材料が、従来のスクリーン印刷を使用して印刷された。上ですでに説明されているような同一パラメータを使用して、それぞれの試料をスクリーン印刷したが、ただし、スクリーンのメッシュサイズは、1インチ当たり糸200本に増やした。
【表3】
【0064】
干渉分光法及び表面形状測定法は、「硬い」基材に施される印刷に対するステップ高厚さに関して同一の結果をもたらすことがわかった。試行8番及び9番でポリカーボネートに施された印刷の平均厚さは、干渉分光法(NewView(商標)5022 3D profiler、Zygo Corporation、コネティカット州ミドルフィールド)を介して、7.5μmと測定されたが、これらの同じ試料について表面形状測定法を介して測定された厚さ7.4μmとほぼ同じである。
【0065】
干渉分光法及び表面形状測定法は、「柔らかい」基材に施される印刷のステップ高厚さについて大きく異なる結果をもたらすことがわかった。発明者らは、干渉分光法で測定したところ、ポリカーボネート(試行8番〜9番)基材に塗布されたインクの平均厚さとシリコーン(試行10番〜11番)膜との差は5%未満であることを見いだした。対照的に、これらの同じサンプル(試行8番〜9番対10番〜11番)について、表面形状測定法を介した測定結果を得た後、インクの厚さの差は50%を超えることが観察された。
【0066】
この実施例では、スクリーン印刷は、「硬い」(例えば、ポリカーボネートなど)基材と「柔らかい」(例えば、シリコーン膜など)基材の両方に似た厚さのインクの蒸着を行うことを示している。類似の条件の下でこれらの基板上に蒸着されるインク厚さのバラツキは、干渉分光法により5%未満であるということがわかった。表面形状測定法を使用すると、「柔らかい」基材上に蒸着されたインクの厚さについて間違った測定を行うことがわかった。この場合、針で「柔らかい」膜が凹むと、「真の」ベースラインを確立する難しさが増すと考えられる。
【0067】
「硬い」及び「柔らかい」基材上の印刷の厚さはほぼ同一であったが、印刷により示される画質は、図4に示されているように非常に異なっていた。ニトリル膜(60デュロメータショアA)に施された印刷の場合、不完全なイメージパターンが観察された。この不完全なパターンは、スクリーン印刷プロセスから残されたメッシュ線を埋めるために膜上をインクが流れ得ないことにより生じた。対照的に、ポリカーボネート基材に施されるイメージは、ベタの又は完全なイメージパターンを持つ100%不透明度を示すことがわかった。したがって、この実施例は、さらに、スクリーン印刷により「柔らかい」低表面エネルギー膜に施された印刷の画質は、表面エネルギーがインクにより示されるエネルギーよりも高い「硬い」基材上にスクリーン印刷することにより施される印刷により示される画質ほど目立つ又は際だつものではないことを実証している。
【0068】
膜と基材との主な違いは、硬さと表面エネルギーの両方の値を含む。ポリカーボネートの硬さは、約80デュロメータショアDであるが、臨界ぬれ張力は、ASTM D2578−94により測定した場合に42〜45mN/m又はダイン/cmのオーダーである。他方、ニトリル膜の硬さは、約60デュロメータショアAであり、臨界ぬれ張力は34〜35mN/mのオーダーである。この実験で使用されるインクなどの典型的な溶剤型インクは、27〜35mN/mのオーダーの表面張力を示す。インクなどの液体が基材の表面を完全に「濡らす」ためには、液体により示される表面張力の大きさは、基材の表面張力(「臨界ぬれ張力」)よりも約10mN/mだけ低いのが好ましいことは当業者によく知られている。
【0069】
(実施例2)
実験用及び試作品のMIT装置
実施例1の干渉分光法では、柔らかい膜上に蒸着されたインク厚さはポリカーボネート上へのスクリーン印刷により蒸着された厚さに匹敵すると確定したので、費用効果の最も高い試験手順は、柔らかい膜からポリカーボネート基材上へのMIT転写後にすべての印刷されたイメージを評価することであろう。これらの条件、例えば、試験に先立つ膜からポリカーボネートへの印刷のMIT転写では、従来の表面形状測定装置を使用して、インク厚さの値を正確に決定することが可能である。
【0070】
実験室規模のMIT装置は、膜材料(最大サイズ25.4×25.4cm)とインク組成の両方を費用効果のある形で評価し、さらに、膜からポリカーボネート基材へのインクの転写に関連する基本を理解するために組み立てられた。この実験室規模の装置では、本格的生産MIT機器の実際の稼働をシミュレートした。この意味で、形態固定具を上げて、膜を固定具の形状になるように引き伸ばす。引き伸ばされた膜は、ポリカーボネート基材(最大サイズ22.9×22.9cm)の表面よりも約1〜2mm下に静止する。ポリカーボネート基材は、部品固定具により適所に保持され、その後、下げられ、伸ばされた膜に押し付けられる。基材(部品固定具)と膜(形態固定具)との間に加えられる力は、単純な圧力/力計器を使用して測定される(最大91kgすなわち200lbs)。この実験装置は、その後の実験で使用された(実施例3などを参照)。
【0071】
本格的MIT試作品装置は、本明細書に組み込まれている米国特許出願第2003−0116047号に記載されている図面及び情報に従って製作された。この試作品装置は、約0.5m2の最大サイズまで、ポリカーボネート窓などのプラスチック基材上に印刷することができる。この機械は、標準スクリーン印刷機(Saturn、M&R Screen Printing Equipment Inc.)及びシリコーン膜(60デュロメータショアA、Kuriyama of America、イリノイ州エルクグローヴヴィレッジ)を使用して、ポリカーボネート窓の内面に転写される印刷を生成した。この本格的MIT試作品装置は、その後の実験で使用された(実施例6などを参照)。
【0072】
(実施例3)
実験用MIT装置を使用したDOEのスクリーン印刷
初期実験計画(DOE)は、Noriphan HTR−952(Proell KG)インクシステムをシリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)上にスクリーン印刷するときにスキージの硬さと外力との間の関係を調べるために複製22完全要因(Resolution V)計画として構築された。実験計画は、インク厚さ及びイメージのきめ又は画質に関して測定されたデータとともに表4に示されている。合計12回の実験を試行し、その結果得られるモデル内の曲率を決定するために使用される4つの中点試行(標準順序9〜12)を含むようにした。これらの実験の実験誤差は、中点試行とすべての試行の複製の両方を通じて確定される(つまり、標準順序1及び2は、同一パラメータ設定を使用する)。図5で定義されているように、異なる角度(0°又は45°)のスキージを使用して、この実験計画全体を2回実行した。
【0073】
実施例2で製作された実験室規模のMIT装置は、それぞれの実験試行で施される印刷をシリコーン膜からポリカーボネートプラークに転写するために使用された。すべてのMITプロセス変数は、それぞれの実験試行全体を通して一定に保たれた。この点で、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間の全圧縮力は91キログラムに保持された。さらに、膜へのスクリーン印刷から、膜からポリカーボネート基材への印刷の転写までの時間も、30秒と一定に保たれた。インク厚さ及び画質又はきめに関するすべての測定は、この方法で用意された「硬い」ポリカーボネート試料上で実行され、メーカーの公開推奨事項に従って硬化された。
【表4】
【0074】
異なる角度(45°又は0°)を持つそれぞれのスキージは、望ましい印刷品質を得るために異なる中点力設定を示した。より具体的には、角度45°又は0°のスキージに対する中点力設定は、Saturn screen printerのスキージ圧力制御バー上で、それぞれ3.0又は4.5回転のいずれかの設定であることがわかった。中点力は、施された印刷が一部存在しない(インクが十分でない)、又は部分的に汚れている(インクが多すぎる)の評価の中点を決定することにより定められた。スキージ力は、このダイアルを回してある設定(最小=0、最大=15)に合わすことによりこのスクリーン印刷機上で調整される。この設定は、スキージの垂直配置を上げ下げし、それにより、スキージによりスクリーンに当たる圧力を変える。発明者らは、「柔らかい」膜への印刷の品質は、外力の最小の調整に対し非常に敏感であることを見いだした(例えば、約±0.25回転又は設定)。したがって、それぞれのDOEについて、低及び高の力設定は、最適設定から±0.5回転のところに合わせた。スキージにより示される高及び低の硬さは、それぞれ、60及び80デュロメータショアAに設定された。さらに、すべての実験試行において、スクリーンメッシュ、スキージ横断速度、及びスクリーンインク浸し時間は、それぞれ、1インチ当たり糸200本、25.4cm/秒、及び15秒と一定に保たれた。加えられたスキージ力の中点を決定するので、スクリーンと膜との間の「非接触」距離は、この実験ではプロセス変数とはみなされなかった。上の手順に従って決定されたときに加えられたスキージ力に対する中点は、当業者であれば使用することができる「非接触」距離の違いの主因となっている。
【0075】
スキージの硬さ及び外力は、膜からポリカーボネート基材に転写される際に印刷イメージの厚さ及び画質(きめ)との著しい、一次及び二次相互作用を両方とも持つことがわかった。0°又は45°の角度を持つスキージを使用すると、類似の結果が得られた。0°又は45°の角度でスキージを使用してDOEについて得られた測定データを上の表4にまとめた。測定された結果はすべて、Design−Expert(登録商標)(Stat−Ease Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)などの最も標準的な統計ソフトウェアパッケージで利用可能な、完全ANOVAプロトコルを使用して分析された。
【0076】
ANOVA分析では、スキージ硬さと外力の両方が施された印刷の厚さ(例えば、不透明度)に著しい影響を及ぼすことを立証した。例えば、DOE(スキージ角0°)は、0.908の調整済みR2値を持つ式4として以下で示されている最終的な式を使用してモデル化された。蒸着インク層の厚さは、図6aに示されているように外力が最適な設定よりも0.5回転高い場合に最小値に達することがわかった。この具体的結果は、スキージの硬さに無関係であることが観察された。インク層厚さは、外力が減少するとすべてのスキージ厚さ値で増加することが観察されたが、高い硬さ(80デュロメータショアA)のスキージでは最大の影響が観察された。応答表面に示されているように(図6bを参照)、著しい大きさの曲率が現れた。したがって、許容可能なインク厚さを得るには、低い硬さ及び外力が確定された中点の近くにあるスキージが望ましい。
厚さ=−5.60+0.29×硬さ+2.40×力−0.07×硬さ×力 (式4)
【0077】
膜からポリカーボネートへのMIT転写後に印刷されたインクイメージにより示されるイメージのきめ又は質は、ANOVA分析を通じて、外力とスキージ硬さの両方の著しい影響も受けることが観察された。例えば、DOE(スキージ角0°)は、0.944の調整済みR2値を持つ式5として以下で示されている最終的な式を使用してモデル化された。逆変換は、両方のDOE(45°及び0°のスキージ角)でこの応答に対する最良のモデルを表すことがわかった。より具体的には、画質は、硬いスキージが使用された場合に外力が増えるにつれ画質は改善することが観察され、柔らかいスキージが使用された場合に類似の力条件の下で劣化することが観察された(図7a〜7bを参照)。イメージのきめに関してこの効果について両方のDOEにおいて有意な曲率が観察された。角度0°を持つスキージを使用してDOEでこの効果に対し応答表面が生成される応答表面は、図4Bに一実施例として掲載されている。
1.0/画質=−1.63+0.03×硬さ+0.55×力−0.01×硬さ×力 (式5)
【0078】
それぞれのDOEのANOVA分析を介して生成された応答表面(45°及び0°のスキージ角)を使用して、定義されている基準(表1を参照)に従って最適なパラメータ設定の計算を実行した。Design−Expert(登録商標)ソフトウェアを使用する上述のようなインク層厚さ及び画質の最適化により、指定されたレベルのイメージのきめ及びインク層厚さを示すいくつかの解が得られた。それぞれの解は、低い硬さ、及び中点値よりも少し下又はそれに近い外力のスキージを使用することを示していた。そのため、上述のDOEで評価される範囲内では、低い(70デュロメータショアA未満)硬さのスキージ及び決定された中点設定(0.00±0.25回転)に近い加圧が好ましい。
【0079】
イメージのきめ(品質)のベースラインを定めるために、発明者らは、「硬い」ポリカーボネート基材上に直接印刷する上記のスクリーン印刷DOEを反復した。上で指定されているようなスクリーン印刷パラメータはすべて、この実験で使用された。中点外力は、45°及び0°の角度を持つスキージに対する定められた中点値から7.0及び9.5回転と決定された。「硬い」基材上に直接印刷する場合のイメージのきめの比の逆数は、測定データのANOVA分析により、0.10〜0.13の範囲と決定された。発明者らは、有用な結果を得るために、イメージのきめの逆数(1.0/イメージのきめ)基準は、「柔らかい」膜上に印刷するときに0.10〜0.13から0.17〜0.20まで緩和されなければならないことを思いがけなく見いだした。こうして、「柔らかい」膜上にスクリーン印刷し、次いでMIT処理を行うと、「硬い」基材上に直接スクリーン印刷することにより得られる印刷に比べて低い品質の印刷が得られる。「柔らかい」膜上に存在するインク層厚さは、「硬い」基材(実施例1を参照)上に存在するのと似ているが、画質は、スクリーンメッシュにより残された透明な線及び孔713の出現により例示されるように低い(実施例については図8aを参照)。これらの透明な線及び孔を含む印刷の最終結果は、施された印刷により示される最終不透明度の許容できない出現及び減少である。
【0080】
(実施例4)
膜硬さを介した画質向上
実施例3では、イメージのきめ又は印刷品質は、「硬い」基材と比べて、「柔らかい」基材上へのインクの蒸着後に低下することが観察される。特に、スクリーンメッシュ頂点により引き起こされる小さな孔及び透明な線の存在は、「柔らかい」基材上に印刷されるイメージにおいて認められた(図8aを参照)。この実施例は、上述のような現象は、膜の硬さを60デュロメータショアAから約70デュロメータショアAを超えるまで高めることにより回避できることを示している。
【0081】
より具体的には、発明者らは、イメージを「適度に硬い」(THV、フルオロエラストマー、Dyneon Corp.、ミネソタ州セントポール)膜上にスクリーン印刷した後、実験室規模の装置(実施例2)を使用して転写された印刷は、図8bに示されているようなより柔らかい膜材料の場合にすでに観察されているようにスクリーンメッシュ線の何らかの現れを示さないことを見いだした。この特定の膜は、44デュロメータショアDのオーダーで硬さの値を示したが、これは95デュロメータショアAにほぼ等しい。70デュロメータショアAを超える硬さの値を示すさまざまな組成(例えば、シリコーン、及びとりわけ、フルオロシリコーン)の膜上にスクリーン印刷した後、類似の結果が得られた。例えば、その後シリコーン膜(80デュロメータショアA、Ja−Bar Silicone Corp.)からポリカーボネートに印刷を転写すると、図8bに示されているようにスクリーンメッシュ(例えば、透明な線又は孔)の現れがなくても完全なイメージを生成することがわかった。そこで、「柔らかい」柔軟な膜の硬さが、高い画質及び不透明度を示すイメージをスクリーン印刷する能力を左右することがわかった。したがって、膜によって示される表面エネルギーが最終イメージに対し持つ効果は、ポリカーボネートなどの「硬い」基材にイメージ転写するときの膜からのインクの放出に及ぶ。
【0082】
(実施例5)
好ましい膜組成
MIT印刷プロセスで使用できるかどうかについて、8つの従来のシリコーンパッド配合及び16の異なる膜材料が評価された。膜材料は、組成はさまざまであるが、ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーン、及びフルオロカーボンエラストマーだけでなく、EPDM、ニトリル、及びゴムの中でもネオプレンの代表的試料を含んでいた。ポリカーボネート基材により示されている臨界ぬれ張力の変化は、ポリカーボネートプラークが約10〜15秒間膜と接触した後に測定された。ポリカーボネート基材の臨界ぬれ張力は、ASTM D2578−94で説明されている手順に従って決定された。それぞれの膜材料上へのスクリーン印刷及び「硬い」ポリカーボネート基材への印刷のその後の転写(実験室規模の装置)に関係するすべての変数は、この評価全体を通して一定に保持された。特に、使用されたスクリーン印刷手順は、実施例1及び3で定義されているのと同じであり、実験室規模のMITプロセスは実施例2及び3で説明されている。この評価の結果の詳細な要約は、表5に示されている。
【0083】
従来のパッド印刷で使用されるすべてのシリコーン印刷パッドは、接触後ポリカーボネートの臨界ぬれ張力を42〜45ダイン/cm(試行12番)から30ダイン/cm未満まで減少させることがわかった(試行13〜20番)。シリコーンパッドと接触した後、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートをこのポリカーボネート基材に塗布しようとしても、大きなクレーター(例えば、フィッシュアイ)が形成されるため塗布できなかった。シリコーンパッドから基材にシリコーンオイルが滲出することは、赤外分光法を使用して判別された。赤外分光法は、低分子量シリコーンオイルについて知られているSi−C及びSi−O伸縮振動を識別することができた。硬さ改質のため添加された「遊離」シリコーンオイルが皆無かそれに近い「乾燥」として売られている従来のシリコーンパッドであっても、シリコーンハードコートシステムを施した後に類似の表面エネルギー減少及びクレーター(試行16、19、及び20を参照)の形成を引き起こすことが観察された。
【表5】
【0084】
真空状態でポストベークに曝された射出成型(IM)シリコーン材料は、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の実質的減少を引き起こすことがわかった(試行21〜28番)。化学洗浄手順(2分間トルエンに浸した後、50℃で45分間ベーク)を使用して低分子量不純物をさらに除去することを試みて、この影響を少し緩和した(試行25〜28番)。しかし、34〜35ダイン/cmの範囲の臨界ぬれ張力であっても、オーバーコートをポリカーボネート基材に塗布した後、クレーターの形成が観察された。1種類のシリコーン膜材料のみ、つまり、高コンシステンシーシリコーンの押し出し成形シートは、試行36番に示されているようにポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさず、シリコーンハードコートシステムできちんとコーティングする能力を示さないことがわかった。
【0085】
フルオロシリコーンゴム(試行29〜33番)、フルオロカーボンエラストマー(試行34及び35番)、ニトリルゴム(試行37番)、EPDMゴム(試行38及び40番)、及びネオプレンゴム(試行39番)も、ポリカーボネートにより示される臨界ぬれ張力に劇的影響を及ぼさないことがわかった。すべて押し出し成形シート(試行33〜40番)である、これらの膜と接触した後の基材は、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートシステムでオーバーコーティングできることがわかった。射出成型フルオロシリコーンゴムと接触した後(試行29〜32番)のポリカーボネート基材は、アクリルプライマーをその後塗布した後、「ウェットアウト」(“wet−out”)問題を示すことがわかった。この現象は、膜材料の組成は、その材料のシートを作成するために使用される加工方法に関係するので、その膜がMIT印刷プロセスで機能する能力に影響を及ぼす臨界パラメータであることを示唆している。
【0086】
3つの従来のスクリーン印刷インク配合を使用して、印刷をポリカーボネートに転写するさまざまな膜材料の能力を確定した。これらのスクリーン印刷インクは、ポリカーボネート樹脂ベース配合(HTR−952、Proell Gmbh)、アクリルPVC樹脂ベース配合(HG−N501、Coates Screen)とともにある1つの放射線硬化可能アクリレートシステム(DTX−0638、Coates Screen)で代表される2つの熱硬化システムで構成された。ポリカーボネートの臨界ぬれ張力に劇的に影響を及ぼさない膜材料(試行29〜40番)のみを、インク転写能力に関して評価した。対照として、ポリカーボネートの臨界ぬれ張力の劇的な減少を引き起こした従来のパッド印刷パッドを使用した1つの試行(試行14番)も試験した。押し出し成形シリコーン(試行36番)及びフルオロシリコーン(試行29〜33番)膜材料は、インク転写を行い、ポリカーボネート基材に転写した後、従来の印刷パッド(試行14番)で得られたのと類似の画質が得られることがわかった。すべての場合に、インクは、膜上にスクリーン印刷された直後に膜からポリカーボネートに転写された。他の膜材料(試行37〜40番)は、それぞれシリコーン及びフルオロシリコーン材料中のSi−CH3及びSi−(CH2)3CF3官能基と比較して、高い表面エネルギー特性のため、失敗した。フルオロカーボンエラストマー(試行34及び35番)は、これらの膜が転写時にインクを膜と基材とに分けることができるため失敗した。つまり、膜と基材は両方とも、転写が完了した後に同じイメージを示した。
【0087】
画質評価は、ピンホールの存在、不完全な転写(均質対局在)、影の存在、及び細部の喪失を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)である。どのような膜材料も、典型的なUV硬化可能インクを使用して許容可能なイメージを転写することができないことがわかった。シリコーン(試行36番)、フルオロシリコーン(試行33番)、及びニトリルゴム(試行37番)の押し出し成形シートとともに、射出成型フルオロシリコーン(試行29〜32番)及び従来のシリコーンパッド(試行14番)は、熱硬化可能インクで最高の画質評価を示した。
【0088】
この実施例は、2つの膜材料、つまり、高コンシステンシーシリコーンの押し出し成形シート及び押し出し成形フルオロシリコーンシートが許容可能なパフォーマンス特性を示すことを実証している。特に、これらの2種類の膜材料は、その後基材に塗布される、シリコーンハードコートなどの保護オーバーコートの品質に影響を及ぼすことなく「硬い」基材への例外的インク転写性を示す。この実施例は、さらに、射出成型可能グレードのシリコーン及びフルオロシリコーンが、基材が保護オーバーコートの塗布を受けるMITプロセスで膜として使用することに対し許容可能でないことを示している。
【0089】
(実施例6)
試作品装置を使用したDOEのスクリーン印刷
実験計画(DOE)は、分解能IV計画にする完全折り重ねとともに2(12−8)一部実施要因(分解能III)計画として構成された。このDOEでは、スクリーン印刷(スクリーンメッシュカウント、スキージ硬さ、スキージ外力、及びインク浸し時間)とMIT転写(印刷から転写までの時間、イメージ転写圧力、及びイメージ転写時間)の両プロセス変数とともに、いくつかのインク組成変数(分散剤重量%、溶媒重量%、樹脂比、触媒重量%、及び不透明度増強剤重量%)の関係を調べようとした。他の可能なすべての変数は、一定に保たれた(例えば、膜硬さ、スキージ横断速度、及びとりわけスキージ角)。ポリカーボネートに転写された後印刷上で測定される選択された応答は、エッジの品質、イメージの明瞭さ、及びピンホールの存在などの視覚的欠陥、転写されたインクのパーセンテージ、及びインク厚さ(不透明度)を含んでいた。この実施例で使用されたインクは、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で説明されているように、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂と、イソシアネート触媒及び不透明度増強顔料とを混合エステル/炭化水素溶媒系中の混合したもので構成された。使用された膜は、65デュロメータショアAのシリコーン膜(SIL60、Kuriyama of America)であった。スキージ角0°がすべての実験試行で使用された。合計38回の実験を試行して6つの中点試行を含むようにし、これを、それぞれの測定された応答について結果のモデルにおける実験誤差及び曲率を決定するために使用した。実験計画は表6にまとめた。
【0090】
このDOEに含まれるスクリーン印刷プロセス変数に対する高低範囲は、スクリーンメッシュカウントについては1インチ当たり糸200〜260本、スキージ外力について設定された中点の周りで−2及び+2回転、スキージ硬さについて60〜80デュロメータショアA、及びスクリーンインク浸し時間について10〜50秒であった。適用された硬さの中点は、実施例3で定義された手順により決定された。このDOEで実行された試験では、加えられたスキージ圧力について確定された中点は、Saturn screen printerのスキージ圧力制御バー上で完全2.0回転であった。
【表6】
【0091】
従来の統計ソフトウェア(Design−Expert(登録商標)、StatEase Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)で実行されたANOVA分析を使用して、イメージ又は印刷の品質、転写された印刷のインク厚さ(不透明度)、及び「柔らかい」膜から「硬い」基材へのインク転写性に影響を及ぼす重要なプロセス変数を決定した。より具体的には、発明者らは、プロセス変数のそれぞれ、つまり、スクリーンメッシュカウント、スキージ圧力(力)、スキージ硬さ、及びスクリーンインク浸し時間が測定された応答の1つ又は複数に影響を及ぼすことを見いだした。より具体的には、スクリーンメッシュ、スクリーンインク浸し時間、スキージ硬さは、蒸着された印刷の厚さに影響を及ぼすことがわかった。さらに、スキージ硬さ及びスキージ外力は、追加の測定法を介して、施された印刷の全不透明度に寄与する有意な因子であることがわかった。スキージ外力は、さらに、膜から基材にインクを転写する能力に影響を及ぼすことがわかったが、スキージ硬さは、イメージの全体的な品質(きめ)に影響を及ぼした。
【0092】
後でポリカーボネート窓に転写される、それぞれの実験試行(表6を参照)で膜に施される印刷の厚さは、実施例1で説明されているように、表面形状測定法を使用して測定された。図12a〜12bに示されているように、インクの厚さは、スクリーンメッシュ(図12a)とスクリーンがインク浸しにされる時間の長さ(図12b)の両方の著しい影響を受けた。ANOVA分析では、不透明度及び接着度の両方に対する好ましいインク厚さ(例えば、4.0及び10.0μm)が確実に得られるようにするためには、スクリーンメッシュは1インチ当たり糸230本未満でなければならないことを示している。このメッシュカウントでは、インク厚さは約4.5μmで、メッシュカウントの低いスクリーンが高い。高いメッシュカウントのスクリーンを使用すると、厚さ下限値4.0μmに近づき始める。低い仕様値又は高い仕様値の近くで動作するプロセスは、本質的に、限界値近傍の測定結果を示す部品の統計分布のため、著しい量の廃物を生み出す。同様に、スクリーンがインク浸しにされる時間の長さは、好ましいインク厚さを得るために約30秒以上であるのが好ましい。インク浸し時間が30秒の場合のインクの厚さは、約4.5μmとなることがわかった。堅牢なプロセスを用意するために、MT機器は、メッシュカウントが1インチ当たり糸230本以下で、インク浸し時間が約30秒以上であるスクリーンを使用するのが好ましい。
【0093】
施された印刷の厚さも、スキージの硬さの影響を受けることがわかった。図13a〜13bに示されているように、印刷の厚さと印刷の不透明度の直接的相関が観察された。70デュロメータショアAのスキージ硬さでは、施された印刷の厚さは、約4.5μm(図13a)であることがわかった。スキージの硬さが増すと、施された印刷の厚さは減少することが観察された。堅牢なプロセスを用意するために、MIT機器では、約70デュロメータショアA以下の硬さ値を持つスキージ(0°又は45°の角度)を利用する。
【0094】
それぞれの施された印刷の不透明度は、ASTM D001で適宜説明されている光透過率測定法により直接測定された。図10A及びBの比較からわかるように、インク厚さと不透明度との間に直接的相関関係が存在する。印刷されたイメージの不透明度は、同じスキージ硬さ範囲にわたるインク厚さで観察される減少と同様にしてスキージの硬さが増大すると、減少することが観察される(図13b)。
【0095】
スキージ外力は、施された印刷の不透明度にも影響を及ぼすことがわかった。図14aに示されているように、施された印刷の不透明度は、スキージの外力が減少すると増大する。しかし、低いスキージ外力(圧力)を利用することができないが、それは、このプロセス変数は、さらに、他の重要な応答、つまり、膜から基材へのインクの転写に影響を及ぼすことがわかったためである。図14bに示されているように、転写されるインクのパーセンテージは、スキージ外力が低くなると減少する。転写しないインクは、MITプロセスの利用に2つの問題を生じる可能性がある。部品に転写されるインクが不足すると、観察可能な印刷上の欠陥が生じる可能性がある。さらに、インクが膜に残っていると、印刷毎に膜を洗浄する必要が生じ、そのため、生産性が低下し(サイクルタイムが長くなる)、コストが増大する可能性がある。そのため、このプロセス変数は、約±0.5回転が許容可能な確定された中点近く操作されるのが好ましい。この範囲内のスキージ外力の作用により、不透明度とインク転写性との間にバランスのとれた妥協が得られる。
【0096】
この実施例の画質評価は、ピンホールの存在、エッジの品質、イメージの明瞭さ、及び他の視覚的欠陥(例えば、とりわけ影及び透明線の存在)を考慮することにより決められる主観的な数(10=最良、0=最悪)である。スキージの硬さは、発明者らにより、「柔らかい」膜に施され、その後「硬い」基材に転写されるイメージの画質に影響を及ぼす重要なスクリーン印刷変数であることがわかった。図15に示されているように、画質は、スキージの硬さが減少すると増大する。イメージ硬さを70デュロメータショアA以下に保ち、結果として得られる画質を高めるようにしなければならない。
【0097】
(実施例7)
標準パッド印刷タンポンからの汚染
MIT印刷プロセスで使用できるかどうかについて、4つの異なる硬さ範囲内の4つの従来のシリコーンパッド印刷タンポン(白色、青色、赤色、及び灰色に等しい色)が評価された。これらのタンポンは、Comec Pad Printing Machinery of Vermont,Incorporatedが市販する製品である。それぞれのタンポンの硬さ範囲は、タンポンの生産(例えば、成型)時に低分子量シリコーンオイルを加えることにより修正された。シリコーンオイルを加えてタンポンが示す硬さを減少させることは、パッド印刷業界では一般的な方法である。従来の転写タンポンは、低分子量シリコーン材料の縮合又は付加重合のいずれかを通じて形成される成型シリコーンゴムで作られる。
【0098】
それぞれのタンポンについて、表7に示されている温度で実験を都合4回実施した。すべての実験又は試行において、タンポン及び3つのポリカーボネートプラークは、30分間、指示された温度で平衡化された。次いで、それぞれのタンポン及びプラークは、互いに接触させられた。重量4.5キログラムのローラーを、15秒間、タンポンの背面上で前後に移動させ、パッド印刷プロセスをシミュレートした。次いで、水平(剥離)運動を使用してプラークの表面からタンポンが取り外された。
【0099】
すべての実験又は試行で使用される3つのプラークの集まりから、1つのプラークを使用して、標準化された解を使用することにより臨界面(「ぬれ」)張力を決定した。次いで、他の2つのプラークは、コーティング欠陥及び/又は接着喪失の出現を調べるため、アクリルプライマー(SHP401、GE Silicones)及びシリコーンハードコート(AS4000、GE Silicones)でディップコーティングされた。プラマイー/ハードコートシステムは、30分のフラッシュオフ(flash−off)の後、120℃で1時間かけて硬化された。
【表7】
【0100】
シリコーンゴムタンポンに曝されていないポリカーボネートにより示される臨界「ぬれ」張力は、表7(対照)に示されているように42〜44ダイン/cmの範囲内にあることが観察された。シリコーンタンポンに曝された後、ポリカーボネートプラークの表面エネルギーは減少することがわかった。この減少の大きさは、配合中のシリコーンオイルの量(硬さデュロメータにより示される)とタンポンの温度の両方に依存した。それぞれの実験又は試行(温度は一定に保たれた)において、臨界「ぬれ」張力の最大の減少は、最も多いシリコーンオイルを含む、最も柔らかいタンポン(白色)の場合に発生した。臨界「ぬれ」張力の最小の減少は、最小量のシリコーンオイルを含む、最も硬いタンポン(灰色)の場合に観察された。そのため、シリコーンオイルを、タンポンからポリカーボネート基材の表面上に転写し、表面エネルギーを下げることができる。
【0101】
試行41番と42番、さらには、試行43番と44番との間で得られた測定結果の類似性は、プラークの温度が臨界「ぬれ」張力の結果に著しい影響を及ぼさないことを示している。しかし、試行41番及び42番を試行43番及び44番と比較した場合、タンポンの温度は、ポリカーボネートにより示される表面エネルギーに影響を及ぼすことがわかる。すべての場合において、ポリカーボネートプラークの臨界「ぬれ」張力は、タンポン温度が上昇したときに減少した。温度が上昇すると、粘度減少(エントロピー増大)によるシリコーンオイルの流動性も高まる。
【0102】
シリコーン不純物の存在は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を使用して確認された。シリコーンタンポンに曝されたポリカーボネートプラークについて得られたスペクトルは、ポリジメチルシロキサンを示す複数の吸収を含むことがわかった。特に、Si−O−Si非対称伸縮振動は、1050〜1150cm−1で観察される。この伸縮振動は、双極子モーメントの著しい変化を引き起こし、赤外線領域において非常に強く、激しい吸収を発生する。802cm−1を中心とする第2の強い吸収も観察された。この吸収は、Si−C伸縮振動と−CH3揺動の組み合わせにより引き起こされる。
【0103】
4つのシリコーンタンポンのそれぞれに曝されるすべてのプラークは、アクリルプライマー及びシリコーンハードコートを塗布した後コーティングの欠陥を示すことがわかったが、これはポリカーボネートの表面上にシリコーンオイルが存在することを示す。一般に、表面欠陥の大きさは、ポリカーボネートの表面エネルギーが減少すると増大することが観察された(表7を参照)。コーティング塗布後に生じる典型的な欠陥は、基材の表面の「ウェットアウト」及びクレーター又はフィッシュアイの欠如を含んでいた。フィッシュアイは、押し下げにより囲まれるコーティングされた中心領域及びコーティングの隆起により区別可能なクレーターの一形態である(お碗形の凹み)。これらの種類の欠陥は、コーティングされる基材の表面汚染により引き起こされることが当業者にはよく知られている。この実施例では、従来のシリコーンタンポンが、その後保護オーバーコートが用意されるMITプロセスで使用するのには適していないことを示している。これらのタンポンの生産で使用されるシリコーンゴムは、「成型」グレードであり、好ましい実施形態で示されている高コンシステンシーグレードではない。
【0104】
(実施例8)
表面エネルギー及び表面張力の測定
本明細書に組み込まれている2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で説明されているように、好ましいMITプロセスインクの平均表面張力は、従来のウィルヘルミプレート法を使用して5回測定された。この方法では、19.9mm×0.2mm周囲を示す標準白金プレートを備える張力計(K100、Kruss USA、ノースカロライナ州シャーロット)を使用する。一滴ずつ清潔なポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)表面に堆積したときにインクにより示される接触角も、Drop Shape Analysis System(DSA10、Kruss USA)を使用して5回測定された。測定データは、PTFEに対して確定されたインクの表面張力と接触角の両方に対する平均値とともに、表8に示されている。
【表8】
【0105】
表面張力と接触角の両方をPTFEに対し測定する理由は、式2により説明されるように表面張力を極性成分と分散成分とに分離することにある(ファウクスのエネルギー理論)。表8に示されているように、極性成分と全表面張力との比から、表面の(%)極性の測定が得られる。
【0106】
同様に、シリコーン膜及びポリカーボネート基材により示される表面エネルギーは、式3(ファウクスのエネルギー理論)を使用して決定された。ジヨードメタンが、50.8mN/mの測定された表面張力(σL及びσLD)を示す第1の標準流体として使用された(σLPは0.0mN/mに等しい)。使用される第2の標準流体は、72.8mN/mの測定された表面張力(σL)、26.4mN/mと等価な分散成分(σLD)、及び46.4mN/mの極性成分(σLP)を示す水であった。この標準流体に対する知られている表面張力値を基材の表面エネルギーの分散成分に対する値及び基材に対する水の測定接触角とともに使用することで、極性成分の値並びに2つのシリコーン膜(異なる硬さ値)及びポリカーボネート基材に対する全表面エネルギーを表9に示されているように決定された。
【表9】
【0107】
この実施例は、本発明の押し出し成形シリコーン膜により示される表面エネルギーが25mJ/m2以下であることを実証している。表面エネルギーのこの値は、ほぼ同じ数、25ダイン/cmの臨界ぬれ張力と相関する。比較すると、インクの表面張力は、25ダイン/cmよりも大きいことがわかった。シリコーン膜は、インクの極性に著しく不整合な表面極性を示す(12.66%)。そのため、この実施例は、さらに、インクの表面極性が約10%よりも大きく、膜の表面極性は約2%よりも小さいことを示す。基材の表面極性(18.62%)は、膜表面極性に近いというよりも、インクの表面極性に近い。表面極性のこのような類似性により、インクと基材の表面との接着が促進される。MITプロセスで最良の転写を行うために、インクと基材との間の接着エネルギーを最大にしつつ(表面極性の差を最小にする)、膜とインクとの間の接着を最小にする(表面極性の不整合を最大にする)ことが望ましい。したがって、膜の表面極性は、約2%未満でなければならないが、MITプロセスで許容可能なインク転写を促進するために、インク及び基材の表面極性は、それぞれ、約10%よりも大きく約20%よりも小さくなければならない。
【0108】
(実施例9)
スキージ横断速度を上げた場合の効果
スキージ横断速度が変更される唯一の変数である実験試行が行われた。この点において、2002年12月19日に出願された米国特許出願公報第US2003/0116047A1号で説明されているようなインクを、Kuriyama of Americaにより販売されているシリコーン膜(60デュロメータショアA)上にスクリーン印刷した。スキージ圧力又は力は、確定された中点で保持され、インク浸し時間は8〜30秒の範囲とされ、スキージ角は0°であったが、スキージ横断速度は、毎秒0.22メートル未満から毎秒0.65メートル超まで変化させた。スキージ横断速度に対する上限及び下限は、それぞれ、Saturn screen printer(M&R)上の1及び4のダイアル設定と相関する。
【0109】
実施例2で製作された実験室規模のMIT装置は、それぞれの実験試行で施される印刷をシリコーン膜からポリカーボネートプラークに転写するために使用された。すべてのMITプロセス変数は、それぞれの実験試行全体を通して一定に保たれた。この点で、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間の全圧縮力は91キログラム(200ポンド)に保持された。さらに、膜へのスクリーン印刷から、膜からポリカーボネートへの印刷の転写までの時間も、30秒と一定に保たれた。
【0110】
発明者らは、転写された印刷のインク厚さは、図16に示されているように、スキージ横断速度が高まると増大することを見いだした。スキージ速度を高めると、本質的に、インクにより見られるずり環境が大きくなる。インクはずり流動化流体なので、その粘度は、ずり速度のべき関数として減少する。印刷の開始時に流体により示される粘度が低いほど、流体は柔らかい低表面エネルギー膜上を流れやすく、そのため、被膜厚さが厚くなる。実施例6に示されているように、インク厚さは、不透明度の増大と相関することが観察される。そのため、この実施例は、スキージを業界標準の毎秒0.22メートル又はSaturn screen printerの1のダイアル設定を超える横断速度で動作させることにより、最適なインク厚さにすることができることを示している。10マイクロメートルの望ましいインク厚さに対する上限は、スキージの速度が毎秒約2.0メートル(Saturn screen printer上の11のダイアル設定)を超えない限り到達しない。
【0111】
(実施例10)
ボールノーズスキージ
3つの因子に対するボックスベーンケン応答表面実験計画を実行し、スキージ硬さ、膜硬さ、及び「柔らかい」膜に印刷してから「硬い」基材に印刷を転写するまでの経過時間に関係する等高線面を決定した。この実験計画は、MITプロセスのスクリーン印刷部分における選択したスキージとしてボールノーズスキージを使用して実行された。他のすべてのスクリーン印刷及び転写印刷変数は、この実施例の実験試行全体にわたって一定に保たれた。MITプロセスのスクリーン印刷部分では、スキージ圧力又は力は、確定された中点に保持され、インク浸し時間は30秒に保持され、スキージ横断速度は、Saturn screen printer(M&R)上の2(0.34m/s)のダイアル設定に保持された。同様に、MITプロセスの転写部分では(実施例2の実験室規模の機器を参照)、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間に加えられる全圧縮力は91キログラムに保持された。
【0112】
3つの変数、つまり、スキージ硬さ、経過時間、及び膜硬さは、この実施例では、3つの異なるレベル間で変化させた。ボールノーズスキージの硬さは、57、71、及び85デュロメータショアAの間で変化させた。膜の硬さは、約60(Kuriyama of America)、80(Ja−Bar Silicones Corp.)、及び95(Reiss Manufacturing Inc.、バージニア州ブラックストーン)デュロメータショアAの間で変化させた。最後に、膜に印刷してから印刷を基材に転写するまでの経過時間を、15、30、及び45秒と変えた。この実施例で使用される標準インク配合は、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号で適宜説明されている。
【0113】
このDOEのそれぞれの実験試行において転写された印刷について表面形状測定法(Dektak 8000、Vicker Industriesの子会社Sloan)で測定されたインク厚さ値は、ほとんどの統計ソフトウェアパッケージ(例えば、Design−Expert(商標登録)、StatEase inc.、ミネソタ州ミネアポリス)に用意されている完全ANOVAプロトコルを使用して分析された。2つの硬さ変数(例えば、スキージと膜)の間の相互作用として得られる印刷の厚さに対する結果として得られた等高線面は、図17に示されている。発明者らは、ボールノーズスキージが0°又は45°の角度のスキージについて知られているのと異なる振る舞いをすることに思いがけなく気づいた(実施例3及び6を参照)。この点で、高い硬さ値を持つボールノーズスキージは、施された印刷の厚さを4〜10マイクロメートルの望ましい範囲内に維持するために使用される。ボールノーズスキージの硬さは、印刷厚さが好ましい範囲内であるようにするため、約75デュロメータショアA以上であるのが好ましい。
【0114】
図17の等高線面は、さらに、適切な硬さのボールノーズスキージを使用する場合に好ましい印刷厚さとなるようにするため、膜硬さを60デュロメータショアA以上とすることができることも示している。しかし、より高い膜硬さ(例えば、約75デュロメータショアAよりも高い)で与えられるスキージ硬さに許される許容度は大きい方が好ましい。
【0115】
(実施例11)
膜膨張度を最小にする
この実施例では、知られている硬さ(67デュロメータショアA)のシリコーン膜をMITプロセスにおいて複数の印刷に曝した。すべてのプロセスパラメータは、この実施例全体を通して定数値に維持された。MITプロセスのスクリーン印刷部分では、スキージ圧力又は力は、確定された中点に保持され、インク浸し時間は30秒に保持され、スキージ横断速度は、Saturn screen printer(M&R)上の2(0.34m/s)のダイアル設定に保持された。同様に、MITプロセスの転写部分では(実施例2の実験室規模の機器を参照)、形態固定具の剥離角は10°に、形態固定具の硬さは35デュロメータショアAに、印刷膜とポリカーボネート基材との間の接触時間は2秒に、膜(形態固定具)と基材(部品固定具)との間に加えられる全圧縮力は91キログラムに保持された。最後に、膜に印刷してから印刷を基材に転写するまでの経過時間は、30秒に保持された。この実施例で使用されるインク配合は、2002年12月19日に出願された米国特許出願公開第US2003/0116047A1号において好ましいものとして適宜説明されている。
【0116】
5回印刷する毎に、膜は、いくつかの異なる洗浄手順のうちの1つに曝された。これらの洗浄手順では、インクからの溶媒の吸収を介して膜の膨張を最小限に抑えようとしていた。膨張度は、膜の硬さに応じて変化するものとして監視された。膜が膨張し始めると、膜の硬さは減少し始める。そのため、膜硬さは、それぞれの洗浄試行直前に測定された。印刷に応じた膜(厚さ0.12cm)の測定された硬さ値は、表10において、(1)いかなる種類の洗浄も行わない、(2)膜をインク中に存在する溶媒(例えば、遅延剤)で拭くことにより洗浄を行う、(3)イソプロピルアルコールで膜を拭く、(4)膜を加熱する、及び(5)強制空気を膜の表面に吹き渡す、の5つの異なる実験試行について示されている。
【表10】
【0117】
膜の硬さ(厚さ0.32cm)は、洗浄手順が施されなかった場合に最初の60回の印刷で67デュロメータショアAから60.5デュロメータショアAに減少することが観察された。遅延剤(例えば、インク中に微量成分としてすでに存在している溶媒)で膜の表面を拭いても、膜の膨張は変わらない。同様に、IR対流式オーブン内で膜を短時間加熱しても、膜の膨張に影響しない。より高い硬さ値を維持することにより明らかなように膜の膨張を低減する2つの洗浄手順は、膜の表面に強制空気を吹き渡し、膜をアルコール溶媒で拭くことである。シリコーン膜は、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコールと非常に相性がよい。
【0118】
上記実験は、異なるレベルの厚さ(例えば、0.16cm及び0.64cm)のシリコーン膜について繰り返した。2つのシナリオ、つまり、洗浄なしとIPAによる拭き取りに対するすべての膜厚さにわたって得られた硬さ値の範囲は、図11に示されている。1012で示されている、印刷欠陥は、0.16cmの厚さの膜を使用した場合に、約25回印刷した後に発生した。膜膨張により引き起こされたこの印刷欠陥は、洗浄作業と関係なく発生した。この欠陥は、0.16cmよりも厚い膜で発生することは観察されなかった。
【0119】
この実施例では、インクからの溶媒吸収のせいで生じる膜膨張は、アルコールなどの膜と親和性のある溶媒を使用して5〜15回の印刷毎に膜の表面を拭くか、又は膜の表面上に強制空気を吹き渡すことにより最小限に抑えることができることを実証している。この実施例では、さらに、印刷欠陥が形成されることなくMITプロセスが適切に機能するように、膜の厚さを0.16cmよりも大きくするのが好ましく、0.32から0.64cmであるのが好ましいことを実証している。
【0120】
当業者であれば、前の説明から、請求項で定められているように、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の好ましい実施形態に対し修正及び変更を加えることができることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】スキージを使用してインクをスクリーンメッシュに押し通し平坦な基材上に蒸着させる従来のスクリーン印刷プロセスの概略図である。
【図2】転写パッドによる彫り込まれたクリシェからインクピックアップした後、加圧を介してインクを基材上に蒸着することを含む従来のパッド印刷プロセスの概略図である。
【図3a】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3b】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3c】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図3d】膜イメージ転写(MIT)プロセスの概略図である。
【図4a】「硬い」(ポリカーボネート)基材及び「柔らかい」(ニトリル)膜上にスクリーン印刷されたイメージの斜視図である。
【図4b】「硬い」(ポリカーボネート)基材及び「柔らかい」(ニトリル)膜上にスクリーン印刷されたイメージの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による実験計画法におけるスキージ角(φ)の適用の概略図である。
【図6a】膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「柔らかい」(シリコーン)膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材上に転写されたインク層の厚さに対しスキージ硬さ及び外力(applied force;加えた力)が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図6b】膜イメージ転写(MIT)プロセスを介して「柔らかい」(シリコーン)膜から「硬い」(ポリカーボネート)基材上に転写されたインク層の厚さに対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図7a】転写されたインク層のイメージのきめ又は質に対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図7b】転写されたインク層のイメージのきめ又は質に対しスキージ硬さ及び外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用及び応答表面の曲線を示すグラフである。
【図8a】続いてMITプロセスを介して「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写が行われる、シリコーン膜上にスクリーン印刷されたインク及びシリコーン膜の顕微鏡写真である。
【図8b】続いてMITプロセスを介して「硬い」(ポリカーボネート)基材に転写が行われる、シリコーン膜上にスクリーン印刷されたインク及びシリコーン膜の顕微鏡写真である。
【図9】界面エネルギー及び接触角に関係するヤングの式の概略表現である。
【図10a】縮合重合及び付加重合の両方の反応を介してシリコーンゴムの化学量論的形成を示す図である。
【図10b】縮合重合及び付加重合の両方の反応を介してシリコーンゴムの化学量論的形成を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態によるシリコーン膜硬さ対印刷サイクル数のグラフである。
【図12a】インク層の厚さに対しスクリーンメッシュカウント及びインク浸し時間が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図12b】インク層の厚さに対しスクリーンメッシュカウント及びインク浸し時間が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図13a】インク層の厚さ及び不透明度に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図13b】インク層の厚さ及び不透明度に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図14a】施された印刷の不透明度及び転写されたインクの割合に対し外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図14b】施された印刷の不透明度及び転写されたインクの割合に対し外力が及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図15】転写された印刷の質に対しスキージ硬さが及ぼす影響を示す、実験計画法で得られた相互作用曲線を示すグラフである。
【図16】最終印刷の厚さを、印刷を「柔らかい」膜に蒸着するために使用されるスキージの横断速度の関数として示すグラフである。
【図17】膜の硬さとスキージの硬さのグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜イメージを物品に転写する方法であって、
施すべき印刷装飾を、約70デュロメータショアAよりも大きい硬さレベル及び最大25mJ/m2までの表面エネルギーを持つ低表面エネルギー膜上に与えることと、
最大約70デュロメータショアAまでの硬さを持つ圧力デバイスで所定の圧力を加え、印刷装飾をスクリーンに強制的に通して低表面エネルギー膜上に配置することと、
低表面エネルギー膜を物品の表面の幾何学的形状に合わせて形成することと、
膜と物品との間に圧力をかけて、膜イメージを膜から物品に転写することとを含む、上記方法。
【請求項2】
低表面エネルギー膜は、最大2%までの表面極性を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低表面エネルギー膜は、少なくとも0.16センチメートルの厚さを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
低表面エネルギー膜は、0.3センチメートルから0.7センチメートルまでの範囲の厚さを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定の圧力は、中心点に関して約±0.25回転である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、低表面エネルギー膜を洗浄し、低表面エネルギー膜の硬さの減少を弱めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
低表面エネルギー膜を洗浄することは、低表面エネルギー膜の表面に強制空気を吹き付ける工程と、低表面エネルギー膜の表面上に溶媒を塗布する工程とのうちの少なくとも一方を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶媒は、アルコールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
圧力デバイスは、スクリーンに関して所定の角度を持つエッジにより形成されたスキージデバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所定の角度は、スクリーンに関して最大45°までである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
所定の角度は、スクリーンに関して実質的に法線方向である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
膜と物品との間に圧力をかけることは、
膜と物品とを圧縮してくっつけ、強制的接触状態にすることと、
膜と物品との間の圧力を保持することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
スクリーンは、約3ミリメートルから12ミリメートルまでの非接触距離のところに膜と実質的に平行になるように配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、スクリーンをインク浸しにし、膜イメージの厚さを増やすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
インク浸しにする工程は、少なくとも約30秒のインク浸し時間を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
スキージデバイスは、毎秒0.3メートルを超える速度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
スクリーンは、1インチ当たり糸約230本未満のメッシュカウントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
低表面エネルギー膜は、高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
高コンシステンシーシリコーンゴムは、約5,000から10,000の範囲の重合度を含み、約350,000から750,000amuの範囲の分子量を持つ、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
印刷装飾は、10%から20%までの表面極性を持つインクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
インクは、物品の表面極性に実質的に等しい表面極性を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
膜イメージを物品に転写する方法であって、
施すべき印刷装飾を、約70デュロメータショアAよりも大きい硬さレベル及び最大25mJ/m2までの表面エネルギーを持つ低表面エネルギー膜上に与えることと、
最大約70デュロメータショアAまでの硬さを持つ圧力デバイスで所定の圧力を加え、印刷装飾をスクリーンに強制的に通して低表面エネルギー膜上に配置することと、
低表面エネルギー膜を物品の表面の幾何学的形状に合わせて形成することと、
膜と物品との間に圧力をかけて、膜イメージを膜から物品に転写することとを含む、上記方法。
【請求項2】
低表面エネルギー膜は、最大2%までの表面極性を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低表面エネルギー膜は、少なくとも0.16センチメートルの厚さを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
低表面エネルギー膜は、0.3センチメートルから0.7センチメートルまでの範囲の厚さを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
所定の圧力は、中心点に関して約±0.25回転である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
さらに、低表面エネルギー膜を洗浄し、低表面エネルギー膜の硬さの減少を弱めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
低表面エネルギー膜を洗浄することは、低表面エネルギー膜の表面に強制空気を吹き付ける工程と、低表面エネルギー膜の表面上に溶媒を塗布する工程とのうちの少なくとも一方を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶媒は、アルコールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
圧力デバイスは、スクリーンに関して所定の角度を持つエッジにより形成されたスキージデバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
所定の角度は、スクリーンに関して最大45°までである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
所定の角度は、スクリーンに関して実質的に法線方向である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
膜と物品との間に圧力をかけることは、
膜と物品とを圧縮してくっつけ、強制的接触状態にすることと、
膜と物品との間の圧力を保持することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
スクリーンは、約3ミリメートルから12ミリメートルまでの非接触距離のところに膜と実質的に平行になるように配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、スクリーンをインク浸しにし、膜イメージの厚さを増やすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
インク浸しにする工程は、少なくとも約30秒のインク浸し時間を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
スキージデバイスは、毎秒0.3メートルを超える速度を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
スクリーンは、1インチ当たり糸約230本未満のメッシュカウントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
低表面エネルギー膜は、高コンシステンシーシリコーンゴムエラストマーからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
高コンシステンシーシリコーンゴムは、約5,000から10,000の範囲の重合度を含み、約350,000から750,000amuの範囲の分子量を持つ、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
印刷装飾は、10%から20%までの表面極性を持つインクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
インクは、物品の表面極性に実質的に等しい表面極性を持つ、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−526155(P2007−526155A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501765(P2007−501765)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035841
【国際公開番号】WO2005/095112
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035841
【国際公開番号】WO2005/095112
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】
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