説明

膜処理装置

【課題】有機汚水を膜分離活性汚泥処理を行う際の目詰まりを抑制することができる膜処理装置を提供する。
【解決手段】
集水管14に支持されている膜13bに液状物質を透過させて、当該液状物質を濾過する膜処理装置において、前記膜の前記支持体に支持されている支持部分、または、当該支持部分とその近傍13aの膜機能をなくした限外濾過膜、精密濾過膜、逆浸透膜からなる群から選択され、中空糸膜かあるいは平膜で構成された膜処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜処理装置に関するものであり、特に、有機排水などの処理において汚泥と放流水を膜で強制分離する膜分離活性汚泥法に好適に用いることができる膜処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、工場排水などの有機排水の処理に、汚泥をバクテリアの力で分解する活性汚泥処理法が広く用いられている。この活性汚泥処理法には、処理水と汚泥の分離に沈殿槽を用いた標準活性汚泥法や、有機汚水と汚泥状反応物質との混合液を膜でろ過して処理を行う膜分離活性汚泥法がある。このうち、膜分離活性汚泥法は、処理装置をコンパクトにすることができ、イニシャルコストが低く、高負荷で効率の良い運転が可能であるため、近年注目されている。
【0003】
この膜分離活性汚泥法に用いる膜には、限外ろ過膜、精密ろ過膜、逆浸透膜、などがあり、最近では中空糸膜を利用したものが広く利用されている。中空糸膜は微細な粒子や細菌等も補足することができるため、従来の活性汚泥法では困難であった高濃度排水の処理が可能となる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−300576号公報
【特許文献2】特開2001−087790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような膜分離活性汚泥法においては、活性汚泥中の高分子物質や固形物(粒子)が分離膜に付着していわゆる目詰まり現象が生じ、膜を透過する水量が徐々に減少してしまうといった問題がある。特に、省スペース化を図るために膜クリアランスを狭くした場合に目詰まりが生じやすくなり、目詰まりを抑制する方法の開発が強く望まれている。
【0006】
通常の膜処理装置では、膜エレメントの両端を集水管などの支持体に支持させて、このような膜エレメント複数枚を所定のクリアランスを設けて並設した膜ユニットに排水を通過させてろ過するようにしている。このような装置では、支持体(集水管)に支持されている膜部分は、片支持構造になっているため、液状物質が通過しても動きが少なく、特に目詰まりが生じやすい。目詰まりが生じた場合、膜エレメントを取り出してエアで汚泥を吹き飛ばすなどの処理が行われているが、エアを吹き付けても支持部分やその近傍は動きが少ないため、汚泥を良好に取り除くことができない。したがって、薬品を用いて膜を頻繁に洗浄するか、あるいは膜を交換するなどする必要があるが、薬品洗浄や、膜の交換はコストが高く、また、膜ユニットを一旦外部に取り出して作業をしなければならないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決して有機汚水を膜分離活性汚泥処理を行う際の目詰まりを抑制することができる膜処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の膜処理装置では、膜処理装置の膜の支持体に支持されている部分または当該部分とその近傍の膜機能をなくすようにした。すなわち、支持体に支持されている膜部分は片支持構造になっているため特に目詰まりが生じやすいが、この部分またはこの部分とその近傍の膜機能をなくすことによって、この部分を汚水等が通過せず、したがって目詰まりも生じない。
このように、特に目詰まりしやすい支持部分(根元部分)に膜機能を持たせていないので、この部分に汚泥等が残らない。また、目詰まりは通常この支持部分から始まって内側へ向けて進行して行くが、本発明によれば支持部分に目詰まりが生じないので、膜の内側部分は常にきれいな状態に保たれる。したがって、膜の洗浄、交換などのメンテが不要となり、排水処理の高効率化を図ることができる。
【0009】
膜機能は、当該部分のそれぞれの膜表面をコーティングして、あるいは熱処理によって、膜孔を塞ぐことによってなくすことができる。
【0010】
本発明は、中空糸膜を利用した膜処理装置に特に好適に適用されるが、平膜を利用した装置に適用するようにしても良い。
【発明の効果】
【0011】
上述したとおり、本発明の膜処理装置によれば、膜エレメントを支持する集水管の支持部分または該支持部分とその近傍の膜機能を取るようにしているため、最も目詰まりを起こしやすい支持部分を原水が通過せず、膜エレメント全体の目詰まりを防ぐことができる。したがって、膜ユニットのメンテが容易となり、より高い稼働率を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である膜処理装置を用いた膜分離活性汚泥処理装置の構成を示す概略図である。この処理装置は、曝気槽と沈殿槽を一体化した生物反応層で処理を完結することができる浸漬型膜分離活性汚泥処理装置である。図1に示すとおり、膜分離活性汚泥処理装置1は、前処理装置10と、流量調整槽20、生物反応槽30と、汚泥濃縮貯留槽40、および汚泥搬出装置50を具える。産業廃水、生活廃水などの有機汚水は、前処理装置10にて前処理を行った後、流量調整槽20を通って生物反応槽30に入る。
【0014】
生物反応槽30内では、反応槽30に入る有機汚水と生物反応槽30内に滞留している汚泥状反応物質との混合液を膜ユニットでろ過して処理水と汚泥に分離する。処理水は放流され、汚泥は汚泥濃縮貯留槽40に貯留された後、搬出装置50にて搬出される。
【0015】
図2は、生物反応槽30の構成を示す図である。前処理を行った有機汚水は、生物反応槽30内で汚泥状反応物質と混合され膜ユニット11を通ってろ過される。膜ユニット11の下には曝気装置12が設けられており、汚泥状反応物質を曝気するようにしている。
【0016】
本実施形態では、膜ユニット11に中空糸膜13が使用されている。中空糸膜13は両端が集水管14に固定されて、生物反応槽30内でその位置を保っている。集水管14には吸引パイプ15が設けられており、中空糸膜13でろ過した処理水は吸引ポンプ16にて吸引されるか、あるいは自然流出によって、パイプ15を介して処理水タンク17に貯められる。
【0017】
図3は、本実施形態の膜ユニット11に用いる中空糸膜エレメント13と集水管14の具体的な構造を示す図である。中空糸膜エレメント13はその両端が集水管4に固定されており、生物反応槽30中で所定の位置が保たれている。原水(廃水と活性汚泥の混合物)が中空糸膜エレメント13を通過してろ過され、中空糸膜エレメント13の中空部分から集水管14に集水される。
【0018】
中空糸膜エレメント13は両端部13aが、集水管14a、14aにそれぞれ片支持されており、本実施例では、例えば端部13aおよびその近傍の中空糸膜表面部分にシリコン等をコーティングして膜孔を塞ぐことによって、この端部13aまたはこの端部とその近傍(図4参照)の膜機能をなくすようにしている。
【0019】
この膜機能を除去する部分は、膜エレメント13の長さにもよるが、膜分離活性汚泥法に使用するアプリケーションでは、膜エレメント13の長手方向における長さの少なくとも1%以上25%以下であることが好ましい。1%以下であると、目詰まりが生じてしまい、25%以上になると、ろ過機能が低減してしまう。「端部とその近傍」とは、集水管14に固定されている固定端とその近傍という意味であり、膜機能を除去する部分の長さはアプリケーションに応じて適宜決定することができる。
【0020】
図2に示すように、膜ユニット11には、複数枚の中空糸膜エレメントが所定のクリアランスを設けて並設されている。各膜エレメント13aの両端部にシリコン樹脂等を注入、あるいはコーティングして、この部分の膜機能を取るようにしているので、原水は膜エレメント13の内側部分13bのみを通過することになり、膜エレメント13の両端部13aには目詰まりが生じない。上述したとおり、目詰まりは通常両端部13aから内側に向けて徐々に発生するので、両端部13aに目詰まりが生じない本発明の膜処理装置では、膜の内側部分13bも目詰まりしない。
【0021】
上述した実施形態では、中空糸膜を用いた例を説明したが、平膜を用いた場合でも同様に、膜エレメントの支持体(集水管)の支持部分およびその近傍の膜機能を取る事によって、目詰まりを良好に防ぐことができる。
【0022】
また、膜の種類は、限外ろ過膜、精密ろ過膜、逆浸透膜など、どのようなものであっても良い。
【0023】
膜機能を取る他の手段として、熱処理を行うことによって膜エレメントの所定部分の膜孔を塞ぐようにしても良い。また、シリコン以外の樹脂を用いて膜エレメントの所定部分の膜孔を塞ぐようにしても良い。
【0024】
上述の実施形態では、膜分離活性汚泥処理法に本発明を適用した例を説明したが、本発明は目詰まりが生じる可能性がある膜処理装置であれば他のどのような装置にも応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明にかかる膜処理装置は、水処理の分野に広く利用することが可能であり、特に膜分離活性汚泥処理法に用いる膜処理に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】膜分離活性汚泥法を用いた排水処理システムの概要を示す図である。
【図2】図1に示す廃水処理システムに用いる膜ユニットの構造を示す図である。
【図3】図2に示す膜ユニットの膜エレメントの構成を示す図である。
【図4】本発明にかかる膜処理装置の膜エレメントの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 膜分離活性汚泥処理装置
10 前処理装置
20 流量調整槽
30 生物反応槽
40 汚泥濃縮貯留槽
50 汚泥搬出装置
11 膜ユニット
12 曝気装置
13 中空糸膜
14 集水管
15 吸引パイプ
16 吸引ポンプ
17 処理水タンク
13a 膜端部
13b 膜内側部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に支持されている膜に液状物質を透過させて、当該液状物質をろ過する膜処理装置において、前記膜の前記支持体に支持されている支持部分、または、当該支持部分とその近傍の膜機能をなくしたことを特徴とする膜処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の膜処理装置において、前記支持部分、または、当該支持部分とその近傍を樹脂で固めることによって膜機能をなくしたことを特徴とする膜処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の膜処理装置において、前記支持部分、または、当該支持部分とその近傍を熱処理を行うことによって膜機能をなくしたことを特徴とする膜処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の膜処理装置において、前記膜が、複数枚の膜エレメントを所定のクリアランスを設けて並設した膜ユニットを構成していることを特徴とする膜処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の膜処理装置において、前記膜が限外ろ過膜、精密ろ過膜、逆浸透膜、からなる群から選択された膜であることを特徴とする膜処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の膜処理装置において、前記限外ろ過膜、精密ろ過膜、または逆浸透膜が、中空糸膜かあるいは平膜で構成されていることを特徴とする膜処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の膜処理装置を用いた廃水処理システム。
【請求項8】
支持体に支持させて使用する膜エレメントにおいて、支持体への支持部分、または、当該支持部分とその近傍の膜機能をなくしたことを特徴とする膜エレメント。
【請求項9】
請求項8に記載の膜エレメント複数枚を所定のクリアランスを設けて並設した膜ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−247481(P2006−247481A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65070(P2005−65070)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(592101736)株式会社日本水処理技研 (9)
【出願人】(503462648)
【Fターム(参考)】