説明

膜容器

【課題】 水分離膜を複数単位でモジュール化する。
【解決手段】
本発明は、透過流体出口16を有し、被処理流体の流れ方向に対して複数の水分離膜を並列に格納するシェル部11と、被処理流体入口14を有し、シェル部11の上端部に接続する上部チャンネル部12と、被処理流体出口15を有し、シェル部11の下端部に接続する下部チャンネル部13とを備える、被処理流体から水を分離する脱水システムに用いられる膜容器を提供することを目的とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分離膜を格納する膜容器に関する。さらに詳しくは、水分離膜を複数単位でモジュール化し、プラントをコンパクトにする膜容器に関する。また、本発明の膜容器は、膜容器外表面に曝される面積を低減して放熱損失量を低減させる。
【背景技術】
【0002】
石油燃料を代替する燃料源として、エタノールが注目されており、その市場規模は、2010年に5500万キロリットルと予測されている。しかし、メタノールを燃料として採用するためには、トウモロコシ等のバイオ原料から得た粗製物を蒸留精製し、少なくとも99.5wt%以上に脱水しなければならない。
従来、脱水にあたっては、希薄エタノール水溶液を、蒸留塔で蒸留することにより、エタノール/水系の共沸点近くまで濃縮し、次いで脱水するといったことが行われている。
【0003】
脱水するための手法としては、エントレーナを加え、共沸蒸留で脱水する方法がある。しかし、この方法では、三成分系を共沸蒸留し、さらにエントレーナを回収するといった工程を踏む必要があり、多大の熱エネルギーを必要とするといったような幾つかの欠点があった。
【0004】
また、モレキュラーシーブ槽を複数並列し、これらをバッチ切替しながら脱水する方法もある。しかし、この方法でも、モレキュラーシーブ槽の再生に多大なエネルギーを消費するという難点があった。
【0005】
そこで、水分離膜のように、以上の欠点を伴わない要素を用いることが考案されている(特許文献1:特開昭58−21629号公報)。しかし、水分離膜を用いた脱水装置は、大型化してメンテナンス性等が悪化するといった問題があった。
【特許文献1】特開昭58−21629号公報
【特許文献2】特開平02−229529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、水分離膜を用いた脱水装置を備えるプラントにおいて、膜容器を用いて水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、水分離膜のスケールアップを容易とし、プラントをコンパクトとすることを目的とする。加えて、本発明は、水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、膜容器外表面に曝される面積を低減し、放熱損失量を低減させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、透過流体出口を有し、被処理流体の流れ方向に対して複数の水分離膜を並列に格納するシェル部と、シェル部の上端部に接続する上部チャンネル部と、シェル部の下端部に接続する下部チャンネル部とを備える、被処理流体から水を分離する脱水システムに用いられる膜容器を提供することを目的とする。ここで、被処理流体入口は、上部チャンネル部又は下部チャンネル部に設けられ、被処理流体出口は、上部チャンネル部又は下部チャンネル部に設けられる。上記透過流体出口、被処理流体入口、被処理流体出口はそれぞれ、一般的には、透過流体出口ノズル、被処理流体入口ノズル、被処理流体出口ノズルとして形成する。
【0008】
本発明に係る膜容器では、シェル部がその長手方向に補強壁を有することが好適である。ここで、補強壁は1つ以上の貫通穴を有することが好適である。
【0009】
また、本発明に係る膜容器では、上部チャンネル部及び下部チャンネル部が鏡板部分を有し、この上部チャンネル部及び下部チャンネル部の鏡板部分に対応する位置にシェル部が鏡板部分を有し、上部チャンネル部及び下部チャンネル部の鏡板部分とシェル部の鏡板部分との間に仕切り板を更に備えることが好適である。
【0010】
本発明に係る膜容器では、チャンネル部が、被処理流体に熱を加える、少なくとも1つのスチーム部を有することが好適である。また、被処理流体に熱を加えるためのスチーム部を、シェル部の外面に更に備えることが好適である。
【0011】
被処理流体の温度を監視する温度検出器を備えることが好適である。また、被処理流体の濃度を監視する濃度検出器を備えることが好適である。
【0012】
本発明に係る膜容器では、被処理流体は、一般的には有機水溶液である。有機水溶液の有機成分は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール等のアルコール、酢酸等のカルボン酸、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトアルデヒド等のアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチルエステル等のエステルからなる群から選択される一の有機成分であって、水に可溶なものであることが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水分離膜を用いた脱水装置を備えるプラントについて、上記構成を採用し、水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、水分離膜のスケールアップを容易とする膜容器が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、水分離膜を用いた脱水装置を備えるプラントについて、上記構成を採用し、水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、プラントをコンパクトとする膜容器が提供される。
【0015】
さらに、本発明によれば、水分離膜を用いた脱水装置を備えるプラントについて、上記構成を採用し、水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、例えば、膜容器の気密確認等に関するメンテナンス性を向上させる膜容器が提供される。
【0016】
本発明によれば、水分離膜を用いた脱水装置を備えるプラントについて、上記構成を採用し、水分離膜を複数単位でモジュール化することによって、膜容器外表面に曝される面積を低減して放熱損失量を低減させる膜容器が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明に係る膜容器について、その実施の形態を参照しながらさらに詳細に説明する。以下の実施形態においては、特定の数の膜容器について例示するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1(a)は、本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す正面図である。本発明に係る膜容器1は、シェル部11と、上部チャンネル部12、下部チャンネル部13と、被処理流体入口ノズル14、被処理流体出口ノズル15、透過流体出口ノズル16とから構成される。シェル11は断面楕円形の円筒であって、その上下両端部において上部チャンネル12及び下部チャンネル13がパッキン12a、13aを介して結合されている。シェル11には透過流体出口ノズル16が取り付けられ、上部チャンネル12、下部チャンネル13にはそれぞれ被処理流体入口ノズル14、被処理流体出口ノズル15が取り付けられている。
【0019】
図1(b)は、本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す上方断面図であり、図1(a)のA−Aにおける断面図である。また、図1(c)は、本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す側面断面図であり、図1(b)のB−Bにおける断面図である。本発明に係る膜容器1は、複数の水分離膜部710を並列に格納することができる。図1では、水分離膜部710としてモノリス型を使用した例を図示しているが、チューブラ型を使用してもよい。
【0020】
図1(b)及び(c)に示すように、シェル11は断面楕円形の円筒であり、その両端面の円形曲率は水分離膜部710の円形曲率と適合するようになっている。また、温度、圧力によってシェル11の構造が変形してしまうことを防止するため、シェル11内に補強壁17を配置している。図1(b)及び(c)に示すように、補強壁17は、複数の水分離膜710を個別に仕切るように形成することができるが、この実施形態に限定されるものではない。また、補強壁17には、少なくとも1つの貫通穴を設ける。これによって、シェル11内全体において流体が流れるようになる。なお、本発明に係る膜容器1は、横置き、縦置き、斜め置きいずれの形態でも使用することができる。
【0021】
図2は、本発明に係る膜容器とその設置スペースとを示す上面図である。図2では、Dは膜容器を設置するための設置スペースを示し、Lは膜容器の作業スペース幅、配管スペース幅、計測用スペース幅を示す。従来では、複数本の水分離膜部を円筒形のシェル部に組み込み、処理量に応じてその円筒形のシェル部を複数本設置していた。そのため、設置スペースが大きいという欠点があった。これに対して、本発明では、図2に示すように、処理量に応じて複数本の水分離膜部710を膜容器1に組み込む。これによって、設置スペースDを縮小することができる。例えば、膜容器1がN個有り、膜容器1を設置するための作業スペース23が0.5mであるとする。この場合、従来と比較し、作業スペースを1/(N−1)倍縮小することができる。以下に、詳細を示す。
【0022】
従来の設置スペース:
(N×D+0.5×2×N)×(D+0.5×2)=N(D+1)2
本発明の設置スペース:
(N×D+0.5×2)×(D+0.5×2)=(ND+1)(D+1)
従来法の設置スペース/本発明の設置スペース:
=N(D+1)/(ND+1)
=((ND+1)+(N−1))/(ND+1)
=1+(N−1)/(ND+1)
【0023】
さらに、本発明に係る膜容器1を用いることによって、シェル外壁面の面積が縮小される。以下に、従来の外壁面の面積と、本発明に係る膜容器の外壁面の面積とを比較する。
【0024】
従来の外壁面の面積:
πD×N×L (L:膜長さ)
本発明の外壁面の面積:
(πD+(N−1)×D)×L
従来の外壁面の面積/本発明の外壁面の面積
=πD×N×L/((πD+(N−1)×D)×L)
=πN/(N+π−1)
=π−(π−π)/(N+π−1)
【0025】
すなわち、従来では、大気と接するシェル外壁面の面積は、水分離膜部数Nに応じてN倍で増加する。一方、本発明では、膜容器1を用いることによって、水分離膜部数Nが無限であるとき、(π−π)/(N+π−1)は0に近づく。よって、本発明では、水分離膜部110が1つ増えるたびに、シェル外壁面の面積を従来と比較して約3倍縮小することができる。
【0026】
また、本発明に使用する水分離膜は、供給側が液相で透過側が気相となるパーベパレーション(浸透気化)法によって水を分離するものである。この分離方法では、透過した成分が液体から気体に相変化する際に、被処理流体の温度が蒸発潜熱によって低下してしまう。なお、パーべパレーション法以外の相変化を伴わないガス相あるいは液相での分離に使用することも可能である。
【0027】
水分離膜の透過速度は、一般に、被処理流体の温度低下によって大きく低下する。したがって、被処理流体の温度を一定に保つため、スチーム器等の加熱手段が必要である。これに対して、本発明に係る膜容器1は、シェル外壁面の面積を縮小させることによって、放熱損失量を低減させることができる。したがって、本発明に係る膜容器を使用することによって、加熱手段を用いることなく、被処理流体の温度低下を防止することができる。
【0028】
加えて、従来では、被処理流体を供給するため、各シェル部に対して配管を設置する必要があった。本発明に係る膜容器1は、シェル部11の両端部に結合した上部チャンネル12、下部チャンネル13を介して被処理流体を供給するため、別途配管を設置する必要がない。
【0029】
図3は、本発明に係る膜容器1を複数個並列に配置した膜容器ユニット30の一実施の形態を示す上面図である。図3に示すように、複数個の膜容器1を並列に配置する。これによって、処理量に応じて、適切なスケールアップを容易に行うことが可能である。ここで、膜容器1のシェル外壁面が、他の膜容器のシェル外壁面と接触するように、それぞれの膜容器1を配置してもよい。これによって、放熱損失量を効果的に低減させることできる。
【0030】
被処理流体の温度低下を防止するため、上部チャンネル12、下部チャンネル13内においてスチーム器を配置してもよい。または、膜容器1の側面にスチーム器を配置してもよい。図4(a)は、本発明に係る膜容器の側面に設置されたスチーム器の正面図である。被処理流体の温度を一定にするため、蛇行状のスチーム器41を膜容器1の側面に配置する。また、図4(b)は、本発明に係る複数の膜容器の側面に配置されたスチーム器の上面図である。蛇行状スチーム41をそれぞれの膜容器間に配置する。スチーム器を適宜配置することによって、被処理流体の温度低下を防止することができ、水分離膜の透過速度低下を防止することが可能である。スチーム器は、一形態として蛇行状のものを例示したがこれに限定されるものではなく、その他の形状のスチームを用いることもできる。
【0031】
次に、本発明に係る直列型の膜容器5について説明する。図5は、本発明に係る直列型の膜容器の一実施の形態を示す断面図である。図1に示す膜容器1では、複数の水分離膜部710がシェル部11において並列に配置されている。したがって、被処理流体はそれぞれの水分離膜部710に同時に通過する。これに対して、図5に示す膜容器5では、それぞれの水分離膜部710に被処理流体が順次通過する。
【0032】
図5に示す直列型膜容器5は、図1に示す膜容器1と同様に、複数の水分離膜部710を並列に格納する。膜容器5は、シェル51と、上部チャンネル52、下部チャンネル53と、被処理流体入口ノズル54、被処理流体出口ノズル55、透過流体出口ノズル56とから構成される。シェル51は断面楕円形の円筒であって、その両端部において上部チャンネル52及び下部チャンネル53がそれぞれパッキン52a、53aを介して結合している。シェル51には、透過流体出口ノズル56が取り付けられており、上部チャンネル52、下部チャンネル53には、それぞれ被処理流体入口ノズル54、被処理流体出口ノズル55が取り付けられている。仕切り板58は、上部チャンネル部52、下部チャンネル部53内において鏡板部分58aに挿入されて取り付けられる。被処理流体は、各仕切り板58によって、各水分離膜部710を順次通過する。これによって、被処理流体の流速を向上させることができ、物質移動を促進することが可能である。
【0033】
図6は、本発明に係る膜容器を用いた脱水システム100の一実施の形態を示す概要図である。本実施の形態に係る脱水システム100は、脱水される被処理流体として、原料エタノールを想定している。この原料エタノール水溶液の濃度としては、エタノール濃度94.5wt%〜94.8wt%の水溶液を想定している。すなわち、有機成分としてエタノールを含む原料エタノールを被処理流体としている。最終的に得られる製品流体、すなわち製品エタノール(無水エタノール)のエタノール濃度は、99.5wt%〜99.8wt%である。
【0034】
本実施の形態に係る脱水システム100は、主たる構成要素として、膜容器101〜110と、スチーム部121〜132と、冷却器133とから構成される。なお、膜容器101〜110はそれぞれ、少なくとも1つの水分離膜部710を有する。
【0035】
本実施の形態に係る脱水システム100の原理は、膜の1次側は液相であり2次側は気相である、パーベパレーション法である。膜を透過した液体は、2次側で減圧により蒸発し、その蒸発潜熱は1次側から2次側への熱潜熱により供給される。したがって、膜容器101の入口温度をスチーム131によって高くし、且つ各膜容器102〜110の間に中間スチーム器121〜130を配置することによって、温度低下を小さくする。これによって、膜の水分離性能を向上させる。
【0036】
以下に、水分離膜部710について説明する。水分離膜部710は、パーベパレーション法により、有機水溶液から水を分離する装置である。ここで、有機水溶液とは、水と相互溶解する液体と、水との混合物をいう。水と相互溶解する液体としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、または酢酸などの酸、アセトン等のケトンが挙げられるが、これらには限定されない。
【0037】
図7(a)は、モノリス型の水分離膜部710の上面図である。また、図7(b)は、モノリス型の水分離膜710の断面図であって、図7(a)のC−Cにおける断面を示す。モノリス型の水分離膜部710は、円柱状の水分離膜710dに有機水溶液を通すための上下に延びる一以上の中空部である有機水溶液の流路710cを複数設けたものである。通常、かかる形態の水分離膜においては、水分離膜内部の有機水溶液の流路710cを、膜の一次側、または供給側といい、水分離膜710dの外側を、膜の二次側、または透過側とよぶ。
【0038】
このような水分離膜部を用いたパーベパレーション法膜分離においては、水分離膜部710を、好ましくは流路の方向が鉛直方向と平行になるように設置する。そして、水分離膜部710の透過側を減圧しながら、鉛直方向下側の入口710aから有機水溶液を供給し、重力と逆の向きに流して、鉛直方向上側の出口710bから有機水溶液を排出する。かかる操作により、有機水溶液中の水が、水蒸気となって、円柱状の水分離膜710dの側面から、透過側に引き抜かれる。その結果、水分離膜部出口710bから回収される有機水溶液は、脱水されたものとなっている。
【0039】
図示したモノリス型の水分離膜部710は、概略的なものであるが、一例として、直径が30mmの円柱状の水分離膜に対して、直径が3mmの穴を30個設けた水分離膜部を用いることができる。別の例として、直径が150〜200mmの水分離膜部に対して、直径が2mmの穴を200個設けた水分離膜部を用いることができる。水分離膜部の長さは、所望の膜性能に応じて当業者が適宜決定することができるが、一例として、150mmから1mのものを用いることができる。
【0040】
次に、チューブラ型の水分離膜部を説明する。図8(a)は、チューブラ型の水分離膜部810の上面図である。また、図8(b)は、チューブラ型の水分離膜部810の断面図であって、図8(a)のD−Dにおける断面である。チューブラ型の水分離膜部810は、内部に有機水溶液の流路810cがひとつだけ設けられた管状の水分離膜810dである。チューブラ型の水分離膜部810も、その設置態様および作用効果は、モノリス型の水分離膜部と同様である。チューブラ型の水分離膜部の一例としては、外径が10mm、内径が7mmのものを用いることができ、別の例としては、外径が30mm、内径が22mmのものを用いることができる。長さは、一例として、150mmから1mのものを用いることができる。
【0041】
水分離膜部を構成する水分離膜の材質としては、無機材でナノオーダーまたはそれより小さい孔径が精密に制御された微細孔多孔膜を用いることができる。微細孔多孔膜は、小分子ガスを通し、大分子ガスを排除する分子ふるい効果を発現し、その透過係数は温度上昇とともに増加する活性化拡散の挙動を示す。微細孔多孔膜の例としては、炭素膜、シリカ膜、ゼオライト膜が挙げられる。本実施形態においては、水分離膜としては、細孔径10オングストローム以下のシリカ系又はゼオライト系の無機水分離膜が好適である。
【0042】
また、特許第2808479号記載の無機水分離膜も適用可能である。該特許第2808479号の無機水分離膜は、無機多孔体の細孔内に、エトキシ基又はメトキシ基を含むアルコキシシランの加水分解を経て得られたシリカゲルを担持することによって得られる耐酸性複合分離膜である。水分離膜部の形態、サイズ、および材質は、使用目的に応じて当業者が適宜選択することができる。
【0043】
また、膜容器111〜120は、全て同一でもよく、一部が異なる膜容器もよい。例えば、チューブラ型の水分離膜を備える膜容器と、モノリス型の水分離膜を備える膜容器とを交互に配置することもできる。それぞれの膜容器が、異なる数の水分離膜部を有することもできる。
【0044】
冷却器133は、膜容器101〜120を通過した高温の有機水溶液を、常温にまで冷却することができるものであればよく、通常の熱交換器を用いることができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る脱水システム100は、膜容器の出口に検出器を設置するように構成してもよい。検出器は膜容器の状態を連続監視し、オンラインで欠陥を検出することができる。検出器は、温度及び濃度の変化を検出するものである。例えば、閉塞などで透析量が低下した場合、検出器は、1次側の出口温度の低下が小さいことを検出する。また、膜に欠陥が生じて透過量が増加した場合、2次側の温度低下が大きくなったことを検出することができる。さらに、検出器は、透析量により、1次側の出口濃度が変動したことを検出することができる。検出器が温度及び濃度の異常な変化を検出した場合、脱水システム100は膜容器101〜110への原料エタノールの供給を止める。これによって、膜容器内の破損した水分離膜部を容易に交換することができる。
【0046】
本実施の形態に係る脱水システム100は、液抜出し手段を2次側に備えるように構成することができる。液抜出し手段としては、TLV(ポンピングトラップGP/GT)を使用することができる。TLVは、ドレン廃液を圧送するため、蒸気又は圧縮空気を操作気体として使用するメカニカルポンプで、操作気体の供給制御を本体内のフロートの動きによる給排気弁の開閉切り換えによって行う。 TLVは、ドレン、廃液等の圧送専用のGPタイプと、トラップを内装したGTタイプがある。
【0047】
以下に、TLVの特徴を説明する。まず、電気が不要なメカニカルポンプである。具体的には、レベルコントロール、電気、選定が一切不要である。次に、キャビテーションのない高温ドレン用ポンプである。また、TLVは、使用可能な範囲が広く、大容量である。具体的には、0.3〜10.5kg/cmG、6,650Kg/H(背圧1KG、操作蒸気圧7KG時)。さらに、3.0Kg/H(ドレン1T/H、背圧1KG、操作蒸気圧3.4KG時)であり、ランニングコストを抑えることができる。
【0048】
また、TLVは、正負圧変動の用途に使用可能であるため、大容量トラップとして使用可能である。さらに、配管したままメンテナンスが可能であるため、出入口配管と、給排気配管との分離が不要である。最後に、TLVは、独自のレバースナップアクション機構を有しており、高い信頼性がある。
【実施例1】
【0049】
本発明に係る膜容器5を用いた脱水システム100において、1次側の流速と、透過流速との関係を計測した。図9は、1次側流速と透過流速との関係を示すグラフである。1次側の流速が6倍になると、バルクの物質移動が大幅に促進された。これにより、水分離能が向上することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す正面図である。(b)本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す上方断面図である。(c)本発明に係る膜容器の一実施の形態を示す側面断面図である。
【図2】本発明に係る膜容器とその設置スペースとを示す上面図である。
【図3】本発明に係る膜容器を複数個並列に配置した膜容器ユニットの一実施の形態を示す上面図である。
【図4】(a)本発明に係る膜容器の一実施の形態についてその側面に設置されたスチーム器の正面図である。(b)本発明に係る複数の膜容器の一実施の形態についてその側面に配置されたスチーム器の上面図である。
【図5】本発明に係る直列型の膜容器の一実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る膜容器を用いた脱水システムの一実施の形態を示す概要図である。
【図7】(a)モノリス型の水分離膜部を概念的に示した上面図である。(b)モノリス型の水分離膜部を概念的に示した断面図である。
【図8】(a)チューブラ型の水分離膜部を概念的に示した上面図である。(b)チューブラ型の水分離膜部を概念的に示した断面図である。
【図9】本発明に係る直列型の膜容器の一実施例について1次側流速と透過流速との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 膜容器
5 直列型の膜容器
11、51 シェル部
12、52 上部チャンネル部
13、53 下部チャンネル部
12a、13a パッキン
52a、53a パッキン
14、54 被処理流体入口ノズル
15、55 被処理流体出口ノズル
16、56 透過流体出口ノズル
17、57 補強壁
41 スチーム器
58 仕切り板
100 脱水システム
101〜110 膜容器
121〜132 スチーム器
133 冷却器
710、810 水分離膜部
710a、810a 被処理流体の入口
710b、810b 被処理流体の出口
710c、810c 流路
710d、810d 水分離膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体から水を分離する脱水システムに用いられる膜容器であって、
透過流体出口を有し、前記被処理流体の流れ方向に対して複数の水分離膜を並列に格納するシェル部と、
被処理流体入口を有し、前記シェル部の上端部に接続する上部チャンネル部と、
被処理流体出口を有し、前記シェル部の下端部に接続する下部チャンネル部と
を備える、膜容器。
【請求項2】
被処理流体から水を分離する脱水システムに用いられる膜容器であって、
透過流体出口を有し、前記被処理流体の流れ方向に対して複数の水分離膜を並列に格納するシェル部と、
被処理流体入口及び被処理流体出口を有し、前記シェル部の上端部に接続する上部チャンネル部と、
前記シェル部の下端部に接続する下部チャンネル部と
を備える、膜容器。
【請求項3】
被処理流体から水を分離する脱水システムに用いられる膜容器であって、
透過流体出口を有し、前記被処理流体の流れ方向に対して複数の水分離膜を並列に格納するシェル部と、
前記シェル部の上端部に接続する上部チャンネル部と、
被処理流体入口及び被処理流体出口を有し、前記シェル部の下端部に接続する下部チャンネル部と
を備える、膜容器。
【請求項4】
前記シェル部が、その長手方向に補強壁を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜容器。
【請求項5】
前記補強壁が、1つ以上の貫通穴を有することを特徴とする請求項4に記載の膜容器。
【請求項6】
前記上部チャンネル部及び下部チャンネル部が鏡板部分を有し、該上部チャンネル部及び下部チャンネル部の鏡板部分に対応する位置に前記シェル部が鏡板部分を有し、当該上部チャンネル部及び下部チャンネル部の鏡板部分と当該シェル部の鏡板部分との間に仕切り板を更に備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の膜容器。
【請求項7】
前記チャンネル部が、前記被処理流体に熱を加える、少なくとも1つのスチーム部を有することを特徴とする請求項1〜3に記載の脱水装置。
【請求項8】
前記被処理流体に熱を加えるためのスチーム部を、前記シェル部の外面に更に備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱水装置。
【請求項9】
前記被処理流体の温度を監視する温度検出器を備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱水装置。
【請求項10】
前記被処理流体の濃度を監視する濃度検出器を備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱水装置。
【請求項11】
前記被処理流体が有機水溶液であることを特徴とする請求項1〜3に記載の脱水装置。
【請求項12】
前記有機水溶液の有機成分が、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリコール等のアルコール、酢酸等のカルボン酸、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル、アセトアルデヒド等のアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、酢酸エチルエステル等のエステルからなる群から選択される一の有機成分であって、水に可溶なものであることを特徴とする請求項9に記載の脱水装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−115596(P2010−115596A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290783(P2008−290783)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】