説明

膜濾過システムの運転方法

【課題】膜濾過部へ給水を供給する給水ポンプの運転開始時に、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量にするとともに、オーバーシュート量を抑制する。
【解決手段】濾過膜部へ給水を供給する給水ポンプを備えた膜濾過システムの運転方法であって、前記給水ポンプの運転開始時に、運転開始時の給水の温度と前回の運転時における前記濾過膜部を通過する給水の透過流束とに基づいて、処理水流量を目標流量X1にするための前記給水ポンプの運転圧力を算出し、この給水ポンプの運転圧力に基づいて前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量X1になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられて前記濾過膜部へ給水を供給する給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蒸気ボイラ,温水ボイラ,クーリングタワー,給湯器等の熱機器や、洗浄装置等の水使用機器などの機器への給水ラインに、濾過膜部を設けた膜濾過システムが知られている。
【0003】
前記濾過膜部の濾過膜にあっては、水温により水の粘性や膜特性が変化するため、前記濾過膜部からの処理水流量が、季節によって違ったものとなってしまう。ここで、処理水流量は、水温が低くなるほど低下する。したがって、前記濾過膜部の下流側の前記給水ラインに定流量弁を設けておき、前記濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプを、低温時でも所要の処理水流量が確保できるように予め高く設定された運転圧力で運転するといったことが行われている。このような膜濾過システムの運転方法によれば、処理水流量を一定にすることができるものの、水温が高い時には過剰な運転圧力になるため、年間を通じると、ほとんどがエネルギーロスになっていた。
【0004】
そこで、特許文献1では、前記給水ポンプの消費電力を抑えつつ処理水流量を所要の目標流量で一定にするための膜濾過システムの運転方法として、処理水流量が目標流量になるように、処理水流量の検出値に基づいて、インバータのPID制御機能によって前記給水ポンプの回転数を制御する方法が提案されている。また、特許文献2では、前記濾過膜部の下流側に膜式脱気部を備えた膜濾過システムの運転方法として、水温が低下したときに処理水流量の減量運転を行うため、前記給水ポンプの回転数を制御する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−296945号公報
【特許文献2】特開2005−279459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1に記載された方法で膜濾過システムの運転を行う場合、P制御(比例制御)の制御パラメータを大きくすれば、前記給水ポンプの運転開始時に、処理水流量が目標流量になるまでの時間を短くすることができる。しかし、P制御(比例制御)の制御パラメータを大きくすると、目標流量に対する処理水流量のオーバーシュート量が大きくなる。一方で、P制御(比例制御)の制御パラメータを小さくすれば、オーバーシュート量を抑制することができるものの、処理水流量が目標流量になるまでに時間がかかってしまう。
【0006】
また、前記特許文献2に記載された処理水流量の減量運転において、前記給水ポンプの回転数制御を、前記特許文献1と同様にして処理水流量の検出値に基づくインバータのPID制御機能によって行う場合、P制御(比例制御)の制御パラメータを大きくすれば、減量運転時に、処理水流量が目標流量になるまでの時間を短くすることができる。しかし、P制御(比例制御)の制御パラメータを大きくすると、目標流量に対する処理水流量のアンダーシュート量が大きくなる。一方で、P制御(比例制御)の制御パラメータを小さくすれば、アンダーシュート量を抑制できるものの、処理水流量が目標流量になるまでに時間がかかってしまう。
【0007】
この発明が解決しようとする第一の課題は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプとを備え、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量になるように前記給水ポンプを運転する膜濾過システムの運転方法において、前記給水ポンプの運転開始時に、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量にするとともに、オーバーシュート量を抑制することである。
【0008】
また、この発明が解決しようとする第二の課題は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられた給水ポンプとを備え、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量になるように前記給水ポンプを運転する膜濾過システムの運転方法において、処理水流量の減量運転時に、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量にするとともに、アンダーシュート量を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、前記給水ポンプの運転開始時に、運転開始時の給水の温度と前回の運転時における前記濾過膜部を通過する給水の透過流束とに基づいて、処理水流量を目標流量にするための前記給水ポンプの運転圧力を算出し、この給水ポンプの運転圧力に基づいて前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、処理水流量の減量運転時に、減量運転開始時の給水の温度と前回の減量運転時における前記濾過膜部を通過する給水の透過流束とに基づいて、処理水流量を目標流量にするための前記給水ポンプの運転圧力を算出し、この給水ポンプの運転圧力に基づいて前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、前記給水ポンプの運転開始時に、運転開始時の給水の温度を検出し、この検出値に基づいて、処理水流量を目標流量にするため予め定められた温度に対応する前記インバータの出力周波数を設定し、この設定周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、処理水流量の減量運転時に、減量運転開始時の給水の温度を検出し、この検出値に基づいて、処理水流量を目標流量にするため予め定められた温度に対応する前記インバータの出力周波数を設定し、この設定周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,3に記載された発明によれば、前記給水ポンプの運転開始時に、通常運転を行う前に、処理水流量を目標流量にするための前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御する初期運転を行うことにより、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量にすることができるとともに、オーバーシュート量を抑制することができる。
【0014】
請求項2,4に記載された発明によれば、処理水流量の減量運転時に、通常運転を行う前に、処理水流量を目標流量にするための前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御する初期運転を行うことにより、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量にすることができるとともに、アンダーシュート量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、この発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明を実施する膜濾過システムの一例を示す概略的な説明図、図2は、この発明に係る膜濾過システムの運転方法を実施したときの処理水流量の変化を示す図である。
【0016】
図1において、膜濾過システム1は、水道水,工業用水,地下水などの水源から供給される原水を水処理して得られた給水を、後段に設置されたボイラなどの機器(図示省略)へ供給するものである。前記膜濾過システム1は、前記機器への給水ライン2を備えており、この給水ライン2には、濾過膜部3が設けられている。前記濾過膜部3の上流側の前記給水ライン2には、給水ポンプ4が設けられている。そして、この給水ポンプ4と前記濾過膜部3の間の前記給水ライン2には、圧力センサ5が設けられている。また、前記濾過膜部3の下流側の前記給水ライン2には、流量センサ6および温度センサ7が設けられている。前記圧力センサ5の圧力検出信号,前記流量センサ6の流量検出信号および前記温度センサ7の温度検出信号は、CPUを備える制御部8へ入力されるようになっている。
【0017】
前記濾過膜部3は、濾過膜モジュール(図示省略)により給水を濾過処理するように構成されている。この濾過膜モジュールは、濾過膜(図示省略)として、具体的には逆浸透膜(RO膜)やナノ濾過膜(NF膜)などを使用して形成されている。前記逆浸透膜および前記ナノ濾過膜は、ポリアミド系,ポリエーテル系などの合成高分子膜である。そして、前記逆浸透膜は、分子量が数十程度の物質の透過を阻止できる液体分離膜である。また、前記ナノ濾過膜は、2nm程度より小さい粒子や高分子(分子量が最大数百程度の物質)の透過を阻止できる液体分離膜である。前記ナノ濾過膜は、濾過機能の点において、前記逆浸透膜と、分子量が1,000〜300,000程度の物質を濾別可能な限外濾過膜(UF膜)との中間に位置する機能を有する。前記濾過膜は、前記機器への給水が、所望の水質になるように選択される。
【0018】
前記濾過膜部3では、一側から流入した給水が、前記濾過膜で濾過され、他側から透過水と濃縮水とが分離されて流出するようになっている。透過水は、前記給水ライン2へ流出するようになっている。これにより、前記機器へ所望の水質になった給水が供給されるようになっている。一方、濃縮水は、前記濾過膜部3と接続された濃縮水ライン9へ流出するようになっている。この濃縮水ライン9は、排水ライン10と、還流ライン11とに分岐しており、この還流ライン11は、前記給水ポンプ4の上流側の前記給水ライン2と接続されている。そして、前記濃縮水ライン9へ流出した濃縮水は、一部が前記排水ライン10を介して系外へ排水されるとともに、残部が前記還流ライン11を介して前記濾過膜部3の上流側の前記給水ライン2へ還流するようになっている。
【0019】
前記給水ポンプ4は、インバータ12の出力周波数に応じて、回転数が制御されるようになっている。ここで、前記給水ポンプ4にあっては、後述する通常運転時には、前記流量センサ6の検出値に基づく流量フィードバック運転が行われる。具体的には、前記制御部8は、前記流量センサ6からの流量検出信号を受けると、これを周波数指示信号(たとえば、4〜20mAの電流値,もしくは1〜5Vの電圧値)としてインバータ12へ出力するようになっている。そして、周波数指示信号を受けた前記インバータ12の出力周波数に応じ、前記濾過膜部3からの処理水流量が目標流量になるように、前記給水ポンプ4の回転数が制御されるようになっている(定流量制御)。詳細については後述する。
【0020】
また、前記給水ポンプ4は、後述する初期運転時には、前記制御部8で算出された前記インバータ12の出力周波数に応じて、回転数が制御されるようになっている。前記給水ポンプ4の運転周波数の算出については後述する。
【0021】
さて、前記膜濾過システム1の運転方法について説明する。前記給水ポンプ4にあっては、処理水流量が目標流量になるように、前記インバータ12の出力周波数に応じて回転数が制御される。そして、前記膜濾過システム1においては、処理水流量の目標流量がX1に設定される運転(標準運転)と、処理水流量の目標流量がX2(X1>X2)に設定される運転(減量運転)とが行われる。標準運転は、給水の温度が所定温度よりも高いときに行われ、一方で減量運転は、給水の温度が所定温度以下に低下したときに行われる。
【0022】
前記膜濾過システム1においては、標準運転および減量運転において、後述する初期運転を行った後の通常運転として、前記制御部8の比例制御(P制御)および積分制御(I制御)および/または微分制御(D制御),すなわちPI制御,PD制御およびPID制御のいずれかを使用し、前記流量センサ6の検出値に基づいて流量フィードバック運転を行う。
【0023】
通常運転についてさらに詳細に説明する。通常運転においては、前記制御部8は、前記流量センサ6からの流量検出信号を受けると、これを周波数指示信号として前記インバータ12へ出力する。そして、前記インバータ12は、この周波数指示信号に応じて前記給水ポンプ4への出力周波数を制御する。前記制御部8は、PI制御,PD制御およびPID制御のいずれかにより、処理水流量が目標流量X1またはX2になるように、前記インバータ12への周波数指示信号を制御する。
【0024】
ここで、前記制御部8のPI制御機能,PD制御機能およびPID制御機能は、前記流量センサ6からの流量信号をフィードバック値として目標値と比較を行い、偏差をゼロにするように動作する機能である。これにより、処理水流量が目標流量X1またはX2になるように、前記インバータ12の出力周波数に応じ、前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0025】
通常運転時に、前記制御部8は、前記濾過膜部3を通過する給水の透過流束を所定時間毎に算出し、これを記憶する。この透過流束は、基準温度(たとえば25℃)において、単位時間および単位圧力あたりに前記濾過膜部3を通過する処理水流量である。この透過流束は、処理水流量/(運転圧力×温度補正係数)で算出される。ここで、処理水流量は、前記流量センサ6の検出値である。また、運転圧力は、前記圧力センサ5の検出値である。さらに、温度補正係数は、前記温度センサ7の検出値と所定の係数とから算出される値である。
【0026】
前記膜濾過システム1では、以上のような通常運転の他、前記給水ポンプ4の運転開始時に、通常運転を行う前の起動運転としてまず初期運転を行う。また、減量運転時においても、通常運転を行う前の移行運転として初期運転を行う。この初期運転について、標準運転時と減量運転時とに分けて説明する。
【0027】
前記給水ポンプ4の運転開始時における初期運転では、前記制御部8が、処理水流量を目標流量X1にするための前記インバータ12の出力周波数を算出する。そして、算出された前記インバータ12の出力周波数に応じて、処理水流量が目標流量X1になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0028】
さらに具体的に説明すると、前記制御部8は、インバータ12の出力周波数,すなわち前記給水ポンプ4の運転周波数を算出するにあたり、まず処理水流量を目標流量X1にするための前記給水ポンプ4の運転圧力を算出する。つぎに、前記制御部8は、算出された前記給水ポンプ4の運転圧力に基づいて前記給水ポンプ4の運転周波数を算出し、さらにこの運転周波数に基づいて電流値を算出する。そして、前記制御部8は、算出された前記給水ポンプ4の運転周波数に対応した電流値を周波数指示信号として前記インバータ12へ出力する。このインバータ12からは、前記制御部8で算出された運転周波数が出力され、前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0029】
前記給水ポンプ4の運転圧力は、前記給水ポンプ4の運転開始時の給水の温度と前回の通常運転(標準運転)時における前記濾過膜部3を通過する給水の透過流束とに基づいて算出する。具体的には、前記給水ポンプ4の運転圧力の算出は、{目標流量X1/(透過流束×温度補正係数)}の計算式を用いて行われる。ここで、透過流束は、前回の通常運転(標準運転)時における前記濾過膜部3を通過する給水の透過流束である。この透過流束としては、前回の通常運転(標準運転)時に算出されて前記制御部8に記憶された透過流束の平均値,すなわち平均透過流束を用いる。この平均透過流束は、前記濾過膜部3からの処理水流量が目標流量X1になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御されていたときのものである。したがって、この平均透過流束をもとに、前記給水ポンプ4の運転開始時の給水の温度を考慮して前記給水ポンプ4の運転圧力を算出することで、処理水流量が目標流量X1になるような前記給水ポンプ4の運転圧力が算出される。
【0030】
また、前記給水ポンプ4の運転圧力の計算式において、温度補正係数は、前記給水ポンプ4の運転開始時における前記温度センサ7の検出値と所定の係数とから算出される値である。
【0031】
つぎに、前記給水ポンプ4の運転周波数は、前記のようにして算出された前記給水ポンプ4の運転圧力をPとすると、A×P+B×P+Cで算出される。ここで、A,B,Cは所定の係数である。
【0032】
さらに、前記のようにして算出された前記給水ポンプ4の運転周波数をFとすると、前記制御部8から前記インバータ12へ出力される電流値は、(F/D)×E+Fで算出される。ここで、D,E,Fは所定の係数である。
【0033】
前記制御部8は、前記給水ポンプ4の運転開始から所定時間T1が経過すると、初期運転から通常運転に切り替えるように、前記インバータ12へ運転切替信号を出力する。これにより、前記給水ポンプ4の運転が初期運転から通常運転へ切り替わる。
【0034】
ここで、所定時間T1は、前記給水ポンプ4の運転開始から処理水流量が目標流量X1になるまでの想定時間であり、適宜設定される。ただし、所定時間T1をこれよりも短く、たとえば前記給水ポンプ4の運転開始から、処理水流量が目標流量X1の80〜90%になるまでの想定時間に設定されてもよい。
【0035】
以上のように、前記給水ポンプ4の運転開始時に、通常運転を行う前に初期運転を行うことにより、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量X1にすることができるとともに、目標流量X1に対する処理水流量のオーバーシュート量を抑制することができる。
【0036】
つぎに、減量運転時における初期運転について説明する。この場合の初期運転では、前記制御部8が、処理水流量を目標流量X2にするための前記インバータ12の出力周波数を算出する。そして、算出された前記インバータ12の出力周波数に応じて、処理水流量が目標流量X2になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0037】
さらに具体的に説明すると、前記制御部8は、前記インバータ12の出力周波数,すなわち前記給水ポンプ4の運転周波数を算出するにあたり、まず処理水流量を目標流量X2にするための前記給水ポンプ4の運転圧力を算出する。そして、前記制御部8は、前記給水ポンプ4の運転圧力に基づいて前記給水ポンプ4の運転周波数を算出した後、この運転周波数に基づいて電流値を算出する。そして、前記制御部8は、算出された前記給水ポンプ4の運転周波数に対応した電流値を周波数指示信号として前記インバータ12へ出力する。このインバータ12からは、前記制御部8で算出された運転周波数が出力されて、前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0038】
前記給水ポンプ4の運転圧力は、減量運転開始時の給水の温度と前回の通常運転(減量運転)時における前記濾過膜部3を通過する給水の透過流束とに基づいて算出する。具体的には、前記給水ポンプ4の運転圧力の算出は、{目標流量X2/(透過流束×温度補正係数)}の計算式を用いて行われる。ここで、透過流束は、前回の通常運転(減量運転)時における前記濾過膜部3を通過する給水の透過流束である。この透過流束としては、前回の通常運転(減量運転)時における平均透過流束を用いる。この平均透過流束は、前記濾過膜部3からの処理水流量が目標流量X2になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御されていたときのものである。したがって、この平均透過流束をもとに、減量運転開始時の給水の温度を考慮して前記給水ポンプ4の運転圧力を算出することで、処理水流量が目標流量X2になるような前記給水ポンプ4の運転圧力が算出される。
【0039】
また、前記給水ポンプ4の運転圧力の計算式において、温度補正係数は、減量運転開始時における前記温度センサ7の検出値と所定の係数とから算出される値である。
【0040】
つぎに、前記給水ポンプ4の運転周波数は、前記のようにして算出された前記給水ポンプ4の運転圧力に基づいて、標準運転における初期運転と同様にして算出され、また前記制御部8から前記インバータ12へ出力される電流値も、標準運転における初期運転と同様にして算出される。
【0041】
前記制御部8は、減量運転の開始から所定時間T2が経過すると、初期運転から通常運転に切り替えるように、前記インバータ12へ運転切替信号を出力する。これにより、前記給水ポンプ4の運転が初期運転から通常運転へ切り替わる。
【0042】
ここで、所定時間T2は、減量運転の開始から処理水流量が目標流量X2になるまでの想定時間であり、適宜設定される。ただし、所定時間T2をこれよりも短く、たとえば減量運転の開始から、処理水流量が目標流量X2の110%〜120%になるまでの想定時間に設定されてもよい。
【0043】
以上のように、処理水流量の減量運転時に、通常運転を行う前に初期運転を行うことにより、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量X2にすることができるとともに、目標流量X2に対する処理水流量のアンダーシュート量を抑制することができる。
【0044】
ここで、前記実施形態の変形例について説明する。この変形例では、初期運転において、前記給水ポンプ4の運転開始時または減量運転開始時の給水の温度を検出し、この検出値に基づいて、処理水流量を目標流量X1またはX2にするため予め定められた温度に対応する前記インバータ12の出力周波数を設定し、この設定周波数に応じて前記給水ポンプ4の回転数を制御する。具体的に説明すると、前記制御部8には、給水の温度に対応する前記インバータ12への出力電流値(前記給水ポンプ4の運転周波数に対応した電流値)を記憶しておく。この電流値としては、処理水流量が目標流量X1になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御される電流値と、処理水流量が目標流量X2になるように前記給水ポンプ4の回転数が制御される電流値とが記憶される。そして、初期運転において、前記制御部8は、前記温度センサ7の検出値に基づいて、予め記憶された温度に対応する電流値を前記インバータ12へ周波数指示信号として出力する。ここで、電流値は、標準運転時における初期運転では、処理水流量が目標流量X1になるような電流値であり、また減量運転時における初期運転では、処理水流量が目標流量X2になるような電流値である。これにより、処理水流量が目標流量X1またはX2になるように、前記インバータ12の出力周波数に応じて前記給水ポンプ4の回転数が制御される。
【0045】
このようにして初期運転を行うことにより、処理水流量をできるだけ短時間で目標流量X1またはX2にすることができるとともに、目標流量X1またはX2に対する処理水流量のオーバーシュート量およびアンダーシュート量を抑制することができる。
【0046】
以上、この発明を実施形態により説明したが、この発明は、その主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明を実施する膜濾過システムの一例を示す概略的な説明図である。
【図2】この発明に係る膜濾過システムの運転方法を実施したときの処理水流量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 膜濾過システム
2 給水ライン
3 濾過膜部
4 給水ポンプ
12 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、
前記給水ポンプの運転開始時に、運転開始時の給水の温度と前回の運転時における前記濾過膜部を通過する給水の透過流束とに基づいて、処理水流量を目標流量にするための前記給水ポンプの運転圧力を算出し、この給水ポンプの運転圧力に基づいて前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする膜濾過システムの運転方法。
【請求項2】
機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、
処理水流量の減量運転時に、減量運転開始時の給水の温度と前回の減量運転時における前記濾過膜部を通過する給水の透過流束とに基づいて、処理水流量を目標流量にするための前記給水ポンプの運転圧力を算出し、この給水ポンプの運転圧力に基づいて前記インバータの出力周波数を算出するとともに、このインバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする膜濾過システムの運転方法。
【請求項3】
機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、
前記給水ポンプの運転開始時に、運転開始時の給水の温度を検出し、この検出値に基づいて、処理水流量を目標流量にするため予め定められた温度に対応する前記インバータの出力周波数を設定し、この設定周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする膜濾過システムの運転方法。
【請求項4】
機器への給水ラインに設けられた濾過膜部と、この濾過膜部の上流側の前記給水ラインに設けられ、前記濾過膜部からの処理水流量が目標流量で一定になるようにインバータの出力周波数に応じて回転数が制御される給水ポンプとを備えた膜濾過システムの運転方法であって、
処理水流量の減量運転時に、減量運転開始時の給水の温度を検出し、この検出値に基づいて、処理水流量を目標流量にするため予め定められた温度に対応する前記インバータの出力周波数を設定し、この設定周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して初期運転を行った後、処理水流量が目標流量になるように、比例制御および積分制御および/または微分制御によって制御された前記インバータの出力周波数に応じて前記給水ポンプの回転数を制御して通常運転を行うことを特徴とする膜濾過システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−188540(P2008−188540A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26318(P2007−26318)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】