説明

膜濾過システム及び膜濾過装置

【課題】装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメントの目詰まりを効果的に防止することができる膜濾過システム及び膜濾過装置を提供する。
【解決手段】交流電源102からコイル101に交流電流を供給することにより、コイル101内に配置されている磁性体シート30が発生する固定磁場上に変動磁場を発生させる。これにより、固定磁場を発生する磁性体シート30を備えた各膜エレメント10が、変動磁場発生装置100により発生される変動磁場との間で引き合ったり、反発したりすることにより振動し、当該膜エレメント10に付着している不純物を振るい落とすことができる。したがって、膜濾過装置50を機械的に振動させるような構成と比較して、膜濾過装置に磁性体シート30などの固定磁場を発生させるための比較的小さい部材を設けるだけで、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメント10の目詰まりを効果的に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成するための膜濾過システム及び膜濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成する膜濾過装置としては、MF(Membrane Filter:精密濾過膜)エレメント、UF(Ultra Filter:限外濾過膜)エレメント、RO(Reverse Osmosis:逆浸透膜)エレメントなどの各種膜エレメントを用いた膜濾過装置が知られている。
【0003】
このような膜濾過装置では、原液が膜エレメントで濾過されることにより、原液中の不純物が膜エレメントに付着するようになっている。そのため、当該膜濾過装置を用いて連続的に濾過処理を行った場合には、膜エレメントに不純物が堆積して目詰まりが発生することにより、透過性能が徐々に低下するといった問題がある。そこで、下記特許文献1〜5に開示されているような技術を用いて、膜エレメントの目詰まりを防止することができる。
【0004】
特許文献1(特開平11−290849号公報)には、逆洗機構を用いて透過水側から原水側へ定期的に逆流洗浄を行ったり、振動発生装置を用いて振動を与えたりすることによって、スケールによる膜性能の低下を防止する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2(特開2002−28455号公報)には、散気装置により散出された気泡を圧力容器の内部に導入して、スパイラル型膜エレメントの膜面に散気流(気液混合流)を形成することにより、汚染物質が膜面に付着するのを抑制するとともに、膜面に付着した汚染物質を剥離させることができるような技術が開示されている。
【0006】
特許文献3(特開2001−79366号公報)には、原水側に気体を導入して膜を揺動させると同時に、濾液側(透過水側)から加圧した液体又は気体で逆流洗浄することにより、膜を傷つけずに効果的に洗浄を行い、高い濾過流速を維持することができるような技術が開示されている。
【0007】
特許文献4(特開2005−7332号公報)には、逆浸透膜による分離濾過処理前の原水流に対して、超音波発生手段により超音波の微弱振動を加えることによって、逆浸透膜に各種物質が固着化しないようにする技術が開示されている。
【0008】
特許文献5(特許第2989828号公報)には、振動手段により葉状要素(濾膜)を振動させることによって、濾膜の詰まりを防止することができるような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−290849号公報
【特許文献2】特開2002−28455号公報
【特許文献3】特開2001−79366号公報
【特許文献4】特開2005−7332号公報
【特許文献5】特許第2989828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1には、逆洗機構や振動発生装置の具体的な構成について詳細には記載されていないが、それらの構成によっては装置全体が大型化する可能性がある。また、透過水側から原水側への逆流洗浄を用いた場合には、透過水が膜エレメントの目詰まりしていない部分を優先的に通過するため、膜エレメント全体を良好に洗浄することができず、膜エレメントの目詰まりを十分に防止することができないといった問題がある。
【0011】
上記特許文献2及び3のように原水に気体を導入したり、上記特許文献4のように原水に超音波の微弱振動を加えたりするような構成を用いた場合には、原水が膜エレメントの目詰まりしていない部分を優先的に通過するため、膜エレメントの目詰まりを十分に防止することができないといった問題がある。また、上記特許文献4のような構成を用いて膜エレメントに直接的に超音波を照射した場合には、その照射部近傍では超音波による効果が期待できるが、照射部から離れた箇所では超音波による効果が著しく低下してしまう。
【0012】
上記特許文献5に開示されているような構成では、振動手段が葉状要素(濾膜)を機械的に振動させるような構成であるため、装置全体が大型化してしまうといった問題がある。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメントの目詰まりを効果的に防止することができる膜濾過システム及び膜濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の本発明に係る膜濾過システムは、膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成するための膜濾過システムであって、上記膜エレメントを有し、固定磁場を発生する膜濾過装置と、上記固定磁場上に変動磁場を発生する変動磁場発生装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、固定磁場を発生する膜濾過装置が、変動磁場発生装置により発生される変動磁場から力を受けて振動する。これにより、膜濾過装置に備えられた膜エレメントを振動させ、当該膜エレメントに付着している不純物を振るい落とすことができる。したがって、膜濾過装置を機械的に振動させるような構成と比較して、膜濾過装置に例えば磁性体などの固定磁場を発生させるための比較的小さい部材を設けるだけで、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメントの目詰まりを効果的に防止することができる。
【0016】
第2の本発明に係る膜濾過システムは、上記膜濾過装置が、上記膜エレメントに設けられ、上記固定磁場を発生するための固定磁場発生部を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、固定磁場発生部が設けられた膜エレメントを、変動磁場発生装置により発生される変動磁場から力を受けて振動させることができる。これにより、膜エレメントに付着している不純物をより良好に振るい落とすことができるので、膜エレメントの目詰まりをさらに効果的に防止することができる。
【0018】
第3の本発明に係る膜濾過システムは、上記膜濾過装置が、上記膜エレメントを内部に収容するベッセルを有し、上記変動磁場発生装置が、上記ベッセルの周面に沿って設けられたコイルを有することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、ベッセルの周面に沿ってコイルを設けるといった簡単な構成を用いて変動磁場を発生させることができるので、装置が大型化するのを効果的に防止することができる。
【0020】
第4の本発明に係る膜濾過システムは、上記変動磁場発生装置が、上記コイルに交流電流を供給する交流電源を有することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、交流電源からコイルに交流電流を供給することにより、コイルを流れる電流の向きを周期的に変化させ、変動磁場を発生させることができるので、膜エレメントを良好に振動させることができる。
【0022】
第5の本発明に係る膜濾過システムは、上記変動磁場発生装置が、上記交流電源から上記コイルに供給される交流電流の周波数、振幅及び波形の少なくとも1つを変更することにより、上記変動磁場を調整する変動磁場調整部を有することを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、変動磁場調整部を用いて、交流電源からコイルに供給される交流電流の周波数、振幅及び波形の少なくとも1つを変更することにより、変動磁場を所望の態様に調整して膜エレメントを振動させることができるので、膜エレメントに付着している不純物をより良好に振るい落とすことができる。
【0024】
第6の本発明に係る膜濾過装置は、膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成するための膜濾過装置であって、固定磁場を発生し、変動磁場上に配置されることにより上記膜エレメントを振動させるための固定磁場発生部を備えたことを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、固定磁場発生部を備えた膜濾過装置が変動磁場上に配置されることにより、当該変動磁場から膜エレメントが力を受けて振動し、当該膜エレメントに付着している不純物を振るい落とすことができる。したがって、膜濾過装置を機械的に振動させるような構成と比較して、膜濾過装置に例えば磁性体などの比較的小さい固定磁場発生部を設けるだけで、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメントの目詰まりを効果的に防止することができる。
【0026】
第7の本発明に係る膜濾過装置は、上記膜エレメントを内部に収容するベッセルと、上記ベッセルの周面に沿って設けられ、上記変動磁場を発生するためのコイルとを備えたことを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、ベッセルの周面に沿ってコイルを設けるといった簡単な構成を用いて変動磁場を発生させることができるので、装置が大型化するのを効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、膜濾過装置に例えば磁性体などの固定磁場を発生させるための比較的小さい部材を設けるだけで、変動磁場から受ける力で膜エレメントを振動させ、当該膜エレメントに付着している不純物を振るい落とすことができるので、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメントの目詰まりを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る膜濾過装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】図1の膜エレメントの内部構成を示した斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る膜濾過システムの一例を示した概略図である。
【図4】透過量測定中における膜エレメントの膜負荷及び回収率の条件を示した図である。
【図5】透過量測定の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る膜濾過装置50の一例を示した概略断面図である。また、図2は、図1の膜エレメント10の内部構成を示した斜視図である。この膜濾過装置50は、膜エレメント10をベッセル40内に一直線上に複数配置することにより構成されている。
【0031】
ベッセル40は、樹脂製の筒体からなる耐圧容器であり、例えばFRP(Fiberglass Reinforced Plastics)により形成される。このベッセル40内に軸線方向に沿って複数の膜エレメント10が並べて配置されている。ベッセル40の一端部には、排水や海水などの原水(原液)が流入する原水流入口48が形成されており、当該原水流入口48から所定の圧力で流入する原水が複数の膜エレメント10で濾過されることにより、浄化された透過水(透過液)と、濾過後の原水である濃縮水(濃縮液)とが得られる。ベッセル40の他端部には、透過水が流出する透過水流出口46と、濃縮水が流出する濃縮水流出口44とが形成されている。
【0032】
図2に示すように、膜エレメント10は、分離膜12と供給側流路材18と透過側流路材14とが積層された状態で中心管20の周囲にスパイラル状に巻回されることにより形成されたRO(Reverse Osmosis:逆浸透膜)エレメントである。
【0033】
より具体的には、樹脂製の網状部材からなる矩形形状の透過側流路材14の両面に、同一の矩形形状からなる分離膜12が重ね合わせられるとともに、その3辺が接着されることにより、1辺に開口部を有する袋状の膜部材16が形成される。そして、この膜部材16の開口部が中心管20の外周面に取り付けられ、樹脂製の網状部材からなる供給側流路材18とともに中心管20の周囲に巻回されることにより、上記膜エレメント10が形成される。上記分離膜12は、例えば不織布層上に多孔性支持体及びスキン層(緻密層)が順次に積層されることにより形成される。
【0034】
上記のようにして形成された膜エレメント10の一端側から原水を供給すると、原水スペーサとして機能する供給側流路材18により形成された原水流路を介して、膜エレメント10内を原水が通過する。その際、原水が分離膜12により濾過され、原水から濾過された透過水が、透過水スペーサとして機能する透過側流路材14により形成された透過水流路内に浸透する。
【0035】
その後、透過水流路内に浸透した透過水が、当該透過水流路を通って中心管20側に流れ、中心管20の外周面に形成された複数の通水孔(図示せず)から中心管20内に導かれる。これにより、膜エレメント10の他端側から、中心管20を介して透過水が流出するとともに、供給側流路材18により形成された原水流路を介して濃縮水が流出することとなる。
【0036】
図1に示すように、ベッセル40内に収容されている複数の膜エレメント10は、隣接する膜エレメント10の中心管20同士が管状のインターコネクタ42で連結されている。このインターコネクタ42は、膜エレメント10の中心管20に対して着脱可能な取付部材を構成している。したがって、原水流入口48から流入した原水は、当該原水流入口48側の膜エレメント10から順に原水流路内に流れ込み、各膜エレメント10で原水から濾過された透過水が、インターコネクタ42により接続された1本の中心管20を介して透過水流出口46から流出する。一方、各膜エレメント10の原水流路を通過することにより透過水が濾過されて濃縮された濃縮水は、濃縮水流出口44から流出する。
【0037】
ただし、膜濾過装置50は、ベッセル40内に複数の膜エレメント10が収容されているような構成に限らず、ベッセル40内に膜エレメント10が1つだけ収容されているような構成であってもよい。また、膜エレメント10としては、ROエレメントに限らず、MF(Membrane Filter:精密濾過膜)エレメントやUF(Ultra Filter:限外濾過膜)エレメントなど、他の各種膜エレメントを採用することができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る膜濾過システムの一例を示した概略図である。この膜濾過システムには、上述の膜濾過装置50と、変動磁場を発生するための変動磁場発生装置100とが備えられている。
【0039】
本実施形態では、膜濾過装置50の各膜エレメント10には、その外周に固定磁場発生部としての磁性体シート30が巻回されており、当該磁性体シート30が固定磁場を発生している。磁性体シート30は、全ての膜エレメント10に取り付けられていることが好ましい。また、磁性体シート30が発生する固定磁場の磁束密度は、0.01〜1Wb/m(=0.01〜1T=100〜10000G)であることが好ましい。
【0040】
ただし、固定磁場発生部は、固定磁場を発生するような構成であれば、磁性体シート30のようなシート状のものに限らず、粉末状などの各種形状を採用することができる。また、固定磁場発生部は、膜エレメント10の外周に取り付けられた構成に限らず、膜エレメント10の内部において分離膜12、透過側流路材14又は供給側流路材18などに取り付けられた構成であってもよいし、中心管20、インターコネクタ42、又は、中心管20の端部に取り付けられたパッキンを保持するためのパッキンホルダ(図示せず)などの膜エレメント10に対して直接又は間接に連結されている他の部材に取り付けられた構成であってもよい。
【0041】
変動磁場発生装置100は、コイル101、交流電源102及び変動磁場調整部103を備えている。コイル101は、例えばベッセル40の周面に沿って、ベッセル40の一端部から他端部にわたって設けられている。ただし、コイル101は、磁性体シート30に対向する部分、すなわち、本実施形態では各膜エレメント10に対向する部分にのみ設けられた構成であってもよい。
【0042】
コイル101は、ベッセル40の外周面上又は内周面上に巻回された構成であってもよいし、ベッセル40の内部に当該ベッセル40の周面に沿って延びるように埋め込まれた構成であってもよい。また、コイル101は、ベッセル40に接触した構成に限らず、例えばベッセル40の外周面又は内周面に対して所定の間隔を隔てて、当該外周面又は内周面に沿って延びるように配置された構成であってもよい。
【0043】
交流電源102は、コイル101に交流電流を供給する。交流電源102からコイル101に交流電流を供給することにより、コイル101を流れる電流の向きを周期的に変化させ、変動磁場を発生させることができる。交流電源102からコイル101に供給される交流電流の周波数は、10〜1000Hzであることが好ましく、50〜100Hzであればより好ましい。
【0044】
コイル101に交流電流が供給されることにより発生する変動磁場の磁束密度は、0.01〜1Wb/m(=0.01〜1T=100〜10000G)であることが好ましい。この変動磁場の磁束密度は、コイル101の巻数やコイル101に供給する電流値を変化させることにより、所望の値に調整することができる。
【0045】
上記のような構成により、交流電源102からコイル101に交流電流を供給した場合には、コイル101内に変動磁場が発生し、コイル101内に配置されている磁性体シート30が発生する固定磁場上に変動磁場が発生することとなる。これにより、固定磁場を発生する磁性体シート30を備えた各膜エレメント10が、変動磁場発生装置100により発生される変動磁場との間で引き合ったり、反発したりすることにより振動し、当該膜エレメント10に付着している不純物を振るい落とすことができる。したがって、膜濾過装置50を機械的に振動させるような構成と比較して、膜濾過装置50に磁性体シート30などの固定磁場を発生させるための比較的小さい部材を設けるだけで、装置が大型化するのを防止しつつ膜エレメント10の目詰まりを効果的に防止することができる。
【0046】
特に、本実施形態では、固定磁場を発生する磁性体シート30が膜エレメント10に直接取り付けられているので、膜エレメント10を良好に振動させることができる。これにより、膜エレメント10に付着している不純物をより良好に振るい落とすことができるので、膜エレメント10の目詰まりをさらに効果的に防止することができる。ただし、磁性体シート30などの固定磁場発生部は、膜エレメント10に直接取り付けられた構成に限られるものではなく、膜濾過装置50に設けられた構成であれば、膜エレメント10を間接的に振動させて不純物を振るい落とすことができる。
【0047】
また、本実施形態では、ベッセル40の周面に沿ってコイル101を設けるといった簡単な構成を用いて変動磁場を発生させることができるので、装置が大型化するのを効果的に防止することができる。ただし、変動磁場発生装置100は、変動磁場を発生するような構成であれば、コイル101を用いた構成に限らず、他の各種構成を採用することができる。
【0048】
本実施形態では、変動磁場調整部103により、交流電源102からコイル101に供給される交流電流の周波数、振幅及び波形の少なくとも1つを変更することができるようになっている。この例では、変動磁場調整部103は、手動又は自動で、交流電源102からコイル101に供給される交流電流の周波数を10〜1000Hz(より好ましくは、50〜100Hz)の間で変更することができるようになっている。
【0049】
このように、変動磁場調整部103を用いて、交流電源102からコイル101に供給される交流電流の周波数、振幅及び波形の少なくとも1つを変更することにより、変動磁場を所望の態様に調整して膜エレメント10を振動させることができるので、膜エレメント10に付着している不純物をより良好に振るい落とすことができる。
【0050】
なお、上記のような磁界を用いた振動は、膜濾過装置50の運転中(濾過中)に常時付与されるような構成であってもよいし、所定のタイミング、例えば一定時間ごとに付与されるような構成であってもよい。また、膜濾過装置50の運転中(濾過中)に限らず、膜濾過装置50に対して、原水、透過水又は薬品を添加した透過水などの供給水を低圧、高流量で流して、膜面上のファウリング(汚染)物質を洗い流す物理的洗浄(いわゆるフラッシング洗浄)や、透過水側から原水側に向かって逆流洗浄(いわゆる逆洗)を行う際など、膜エレメント10の洗浄時に上記のような磁界を用いた振動を付与するような構成であってもよい。
【0051】
以下では、磁界を用いて振動を付与した場合と付与しなかった場合とについて、膜エレメントの透過量測定を行った結果を説明する。この測定には、外周面に磁性体シートが巻回された膜面積7.5mの4インチRO膜エレメントが、外周面にコイルが巻回されたベッセル内に収容されることにより形成された膜濾過装置を用いた。上記磁性体シートにより発生する固定磁場の磁束密度を測定したところ、0.6Wb/m(=0.6T)であった。また、500ppmNaCl溶液を原水に用いて当該膜エレメントの性能を測定したところ、操作圧力0.7MPa、回収率15%の条件において、透過水量が8.0m/d、NaCl阻止性能が99.5%であった。
【0052】
上記膜濾過装置を用いて、下記表1に示すような成分を有する原水を濾過することにより、膜エレメントの透過量を経時的に測定した。図4は、透過量測定中における膜エレメントの膜負荷及び回収率の条件を示した図である。また、図5は、透過量測定の結果を示した図である。なお、透過量測定中は、100時間に1回、40L/minの濃縮流量で10分間のフラッシング洗浄を行った。
【表1】

【0053】
(実施例1)
実施例1では、各フラッシング洗浄中に、ベッセルの外周面に巻回されたコイルに60Hz、5Aの交流電流を供給することにより変動磁場を発生させ、膜エレメントを振動させた。このとき、ベッセル内に発生した変動磁場の磁束密度は、0.06Wb/m(=0.06T)であった。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、各フラッシング洗浄中にコイルに交流電流を供給せず、膜エレメントに振動を付与しなかった。その他の条件等については、実施例1と同様である。
【0055】
図5に示した実施例1及び比較例1における透過量測定の結果から明らかなように、膜エレメントに振動を付与しなかった場合(比較例1)には、時間経過とともに透過水量が低下したが、膜エレメントに振動を付与した場合(実施例1)には、透過水量を高い値に維持することができた。
【符号の説明】
【0056】
10 膜エレメント
12 分離膜
14 透過側流路材
16 膜部材
18 供給側流路材
20 中心管
30 磁性体シート
40 ベッセル
42 インターコネクタ
44 濃縮水流出口
46 透過水流出口
48 原水流入口
50 膜濾過装置
100 変動磁場発生装置
101 コイル
102 交流電源
103 変動磁場調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成するための膜濾過システムであって、
上記膜エレメントを有し、固定磁場を発生する膜濾過装置と、
上記固定磁場上に変動磁場を発生する変動磁場発生装置とを備えたことを特徴とする膜濾過システム。
【請求項2】
上記膜濾過装置が、上記膜エレメントに設けられ、上記固定磁場を発生するための固定磁場発生部を有することを特徴とする請求項1に記載の膜濾過システム。
【請求項3】
上記膜濾過装置が、上記膜エレメントを内部に収容するベッセルを有し、
上記変動磁場発生装置が、上記ベッセルの周面に沿って設けられたコイルを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の膜濾過システム。
【請求項4】
上記変動磁場発生装置が、上記コイルに交流電流を供給する交流電源を有することを特徴とする請求項3に記載の膜濾過システム。
【請求項5】
上記変動磁場発生装置が、上記交流電源から上記コイルに供給される交流電流の周波数、振幅及び波形の少なくとも1つを変更することにより、上記変動磁場を調整する変動磁場調整部を有することを特徴とする請求項4に記載の膜濾過システム。
【請求項6】
膜エレメントにより原液を濾過して透過液を生成するための膜濾過装置であって、
固定磁場を発生し、変動磁場上に配置されることにより上記膜エレメントを振動させるための固定磁場発生部を備えたことを特徴とする膜濾過装置。
【請求項7】
上記膜エレメントを内部に収容するベッセルと、
上記ベッセルの周面に沿って設けられ、上記変動磁場を発生するためのコイルとを備えたことを特徴とする請求項6に記載の膜濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194405(P2010−194405A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39718(P2009−39718)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】