説明

膜濾過装置の逆洗方法

【課題】圧洗浄によっても除去しきれない膜表面の付着物質を効果的に除去することができ、長期に安定した運転を行うことのできる膜濾過装置の逆洗方法を提供すること。
【解決手段】原水室1Aと処理水室1Bとに区画され、処理水室1B側に開口する濾過筒7が設置され、原水が上向流しながら濾過される構造を有し、前記処理水室1Bには洗浄水供給管4、前記原水室1Aには洗浄排水排出管6が接続された膜濾過装置の逆洗方法において、前記処理水室1Bに洗浄水を満たした状態で前記洗浄排水排出管6の開閉弁61を閉じ、空気を注入して洗浄水を加圧した後、開閉弁61を開き、洗浄水を一気に膜透過させて逆洗浄を行う第1の膜洗浄工程と、前記第1の膜洗浄工程の後、開閉弁61を開いた状態で前記処理水室1Bに洗浄水を供給して前記第1の膜洗浄工程よりも小さい流速で洗浄水を膜透過させて膜の逆洗浄を行う第2の膜洗浄工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜濾過装置の逆洗方法に関し、詳しくは、加圧洗浄によっても除去しきれない膜表面の付着物質を効果的に除去することができ、長期に安定した運転を行うことのできる膜濾過装置の逆洗方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濾過槽内が仕切板により原水室と処理水室とに区画され、原水室内に、仕切板を貫通して処理水室側に開口する袋状の膜を備えた多数の濾過筒が設置され、原水室に入った原水を膜により濾過して処理水として処理水室内に集水する構造の膜濾過装置が知られている(特許文献1、2)。
【0003】
このような膜濾過装置では、原水中に含まれる目詰まり物質によって膜表面が経時的に汚れて目詰まりを起こす。このため、洗浄水を濾過時とは逆方向に流すことにより膜表面から目詰まり物質を剥離させて洗浄する逆洗運転を濾過運転と交互に行い、定期的に膜の機能回復を図る必要がある。例えば、海水をくみ上げて船舶のバラストタンク内に移送する場合、くみ上げられた海水を膜濾過装置によって濾過すると、膜表面に粒子が徐々に堆積してやがて目を塞いでしまう。この粒子の多くはSi、Al、Fe等の無機物であり、海底の泥に由来すると思われる。このため、定期的に逆洗運転を行うことにより、膜表面に堆積した粒子を剥離させる必要がある。
【0004】
一方、海水を濾過してバラスト水とする膜濾過装置では、膜濾過処理は船舶上で行われることになるので、逆洗運転する際の洗浄水量には限りがある。このため少ない洗浄水量で効果的に逆洗することが望まれる。
【特許文献1】特開平5−245312号公報
【特許文献2】特開2006−15296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、かかる膜濾過装置における膜の逆洗を少ない洗浄水量で効果的に行う方法として、濾過槽内を密閉した状態で、洗浄水を満たした処理水室内に空気を所定の圧力となるまで注入した後、原水室側を開放して洗浄水を一気に排出させることにより、洗浄水を濾過時とは逆方向に高速に透過させ、膜表面の付着物質を除去する加圧逆洗方法を試みている。この方法は付着物質による膜の目詰まりを少ない洗浄水量で除去するのに極めて効果的である。
【0006】
しかし、この逆洗方法でも、付着物質を完全には除去しきれず、一部が膜表面に付着したままとなってしまう場合のあることが判明した。加圧逆洗は通常複数回繰り返し行う、この付着物質は加圧逆洗を複数回繰り返しても除去されずに残ってしまう。
【0007】
図7に示すように、膜100の表面は、表面積を大きくするために山部と谷部とが交互に配置されるように多数の折り部を形成したプリーツ状を呈しており、その谷部101(濾過方向に沿って見た場合に谷となる部分)に、原水中の泥や砂(シルト)200が付着し、これが加圧逆洗によっても除去しきれず、徐々に蓄積していることが判明した。
【0008】
これは、逆洗時に高圧の洗浄水を瞬間的に透過させる加圧洗浄では、プリーツの山部102(濾過方向に沿って見た場合に山となる部分)の先端付近に瞬間的な洗浄水の流れが集中してしまい、プリーツの谷部101内の膜表面はその洗浄水の流れとほぼ平行な面となるために、谷部101内の膜表面から孔を垂直な方向に通過する洗浄水の流れが十分に形成されず、この部位の付着物質を除去する力が不十分となり、シルト200は完全には抜け出て行かないためであると考えられる。従って、このようなシルト200が蓄積した状態で通常の濾過運転を行うと、膜が早急に目詰まりを起こしてしまうことにより膜間差圧が上昇してしまい、長期に安定した運転ができない問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、加圧洗浄によっても除去しきれない膜表面の付着物質を効果的に除去することができ、長期に安定した運転を行うことのできる膜濾過装置の逆洗方法を提供することを課題とする。
【0010】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
(請求項1)
濾過槽内が仕切板により原水室と処理水室とに区画され、前記原水室内に、前記仕切板を貫通して前記処理水室側に開口する袋状の膜を備えた多数の濾過筒が設置され、前記原水室に入った原水が該原水室内を上向流しながら前記膜により濾過され処理水として前記濾過筒内を上昇して前記処理水室内に集水される構造を有し、前記処理水室には開閉弁を介して洗浄水供給管が接続され、前記原水室には開閉弁を介して洗浄排水排出管が接続された膜濾過装置の逆洗方法において、
前記処理水室に洗浄水を満たした状態で前記洗浄排水排出管の開閉弁を閉じ、前記処理水室内に空気を注入して洗浄水を加圧した後、前記洗浄排水排出管の開閉弁を開くことにより、加圧された洗浄水を一気に膜透過させて前記膜の逆洗浄を行う第1の膜洗浄工程と、
前記第1の膜洗浄工程の後、前記洗浄排水排出管の開閉弁を開いた状態で前記洗浄水供給管から前記処理水室に洗浄水を供給することにより、前記第1の膜洗浄工程よりも小さい流速で洗浄水を膜透過させて前記膜の逆洗浄を行う第2の膜洗浄工程とを有することを特徴とする膜濾過装置の逆洗方法。
【0013】
(請求項2)
前記第2の膜洗浄工程における前記洗浄水の流速は、1〜3m/sであることを特徴とする請求項1記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【0014】
(請求項3)
前記第2の膜洗浄工程における前記洗浄水の供給時間は、10〜90秒であることを特徴とする請求項1又は2記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【0015】
(請求項4)
前記膜は、プリーツ状の膜であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【0016】
(請求項5)
前記第1の膜洗浄工程において、前記処理水室内の洗浄水中に微細気泡を導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【0017】
(請求項6)
前記原水は船舶のバラストタンクに供給するためのバラスト水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の逆洗方法を実施するのに好適な膜濾過装置の一例を示す概略断面図である。
【0020】
図中、1は濾過槽である。濾過槽1は円筒竪型に形成されることが好ましく、内部は仕切板11により、原水が導入される原水室1Aと濾過された後の処理水が集水される処理水室1Bとに区画されている。原水室1Aの下方側部には原水供給口12が設けられ、処理水室1Bの上部には処理水排出口13が設けられている。
【0021】
原水供給口12には原水供給管2が接続され、開閉弁21によって原水の供給経路が開閉可能とされている。本発明において、原水としては、船舶のバラストタンクに供給するためのバラスト水(海水や淡水)が好ましく用いられる。バラスト水として海水を原水とする場合、濾過対象となる物質としては、動物性プランクトン、植物性プランクトン、微生物、Si、Al、Feなどの元素又はその酸化物や塩化物などの無機物、その他、懸濁物質(SS)、ゲル状物質などがある。
【0022】
処理水排出口13には処理水排出管3が接続され、開閉弁31によって処理水の排出経路が開閉可能とされている。
【0023】
また、処理水排出口13には、濾過膜の逆洗用の洗浄水を供給するための洗浄水供給管4が接続され、開閉弁41によって洗浄水の供給経路が開閉可能とされている。洗浄水供給管4には洗浄水供給ポンプ42が介設されており、洗浄水タンク43内の洗浄水を処理水排出口13から濾過槽1内の処理水室1Bに供給する。
【0024】
更に、処理水排出口13には、逆洗時に処理水室1B内に洗浄水が満たされている状態で空気を供給して該処理水室1B内を加圧するための加圧用空気供給管5の一端が接続され、開閉弁51によって加圧用空気の供給経路が開閉可能とされている。加圧用空気供給管5の他端は加圧空気を供給するための加圧用空気供給源52に接続されている。加圧用空気供給源52には例えばコンプレッサーを用いることができる。加圧用空気供給管5には処理水室1B内に送られる加圧空気の圧力を計測する圧力計53が設けられている。
【0025】
原水室1Aの底部には洗浄排水排出口14が設けられている。洗浄排水排出口14には洗浄排水排出管6が接続され、開閉弁61によって洗浄排水の排出経路が開閉可能とされている。
【0026】
なお、洗浄水供給管4及び加圧用空気供給管5は、それぞれを処理水排出口13とは別に処理水室1B内に供給可能に接続するようにしてもよい。
【0027】
7は仕切板11に吊り下げられた濾過筒であり、該濾過筒7は多孔製の円筒形の支持体71と濾過膜72によって構成されている。
【0028】
支持体71の材質には、例えばポリエチレンを用いることができる。支持体71は、処理水室1Bに処理水を送液可能なように、該処理水室1B側に向けて開口する上部開口73を有している。支持体71の表面は網目状に形成されてもよいし、あるいは多数の孔が形成されたものでもよい。支持体71表面の開口率は40%〜70%の範囲が好ましく、45%〜65%の範囲がより好ましく、50%〜65%の範囲が更に好ましい。
【0029】
濾過膜72は、精密濾過膜や限外濾過膜などを用いることができるが、好ましいのは精密濾過膜である。本発明に好ましく用いることができる精密濾過膜は市販品として入手でき、例えば、株式会社ユアサメンブレンシステム製「ユミクロンメンブレンフィルター」などを使用できる。
【0030】
濾過膜72は袋状に形成されており、図2に示すように、支持体71の外周に被覆されている。この濾過膜72は、同図に示すように、長さ方向にプリーツ加工されたプリーツ状の濾過膜であることが好ましい。
【0031】
濾過筒7は、仕切板11に多数吊り下げられ、原水室1A内に配置される。その本数は濾過槽1の大きさ、原水の処理量に応じて適宜決められる。
【0032】
8は微細気泡吐出部であり、濾過槽1の処理水室1B内に配置されている。この微細気泡吐出部8には多孔部材を用いることができる。微細気泡吐出部8は空気供給管81を介して空気供給源82と接続されており、この空気供給源82を稼動させることにより、処理水室1B内に微細気泡を導入させる。空気供給源82としてはコンプレッサーを用いることができる。
【0033】
この微細気泡を導入するに際しては、加圧用空気供給源52から加圧用空気供給管5を介して供給される加圧空気より高い圧力で空気供給源82から微細気泡を吐出する必要がある。気泡の吐出圧力は、処理水室1Bの加圧状態の圧力より50〜100kPa高く設定することが気泡を良好に吐出する上で好ましい。微細気泡の直径は、濾過膜72を透過させる観点から、濾過膜72の孔径と同等程度が好ましい。この直径は多孔部材の孔径によって規定される。これら微細気泡を導入する構成は、本発明において好ましく設けられる。
【0034】
かかる膜濾過装置において、原水の処理を行う濾過運転時、原水は、原水供給管2から原水供給口12を経由して原水室1Aに導入され、原水室1A内を上向流して、濾過膜72を通過することによって濾過される。濾過膜72によって濾過された処理水は、濾過筒71内を更に上方に向かって進み、上部開口73から処理水室1Bに集水され、処理水排出口13から処理水排出管3を経由して排出される。
【0035】
このようにして濾過膜72による原水の処理を継続すると、次第に濾過膜72の目詰まりが生じるので、濾過膜72の逆洗浄が必要になる。本発明において、逆洗運転は第1の膜洗浄工程と第2の膜洗浄工程との2段階で行うことを特徴としている。以下、各工程について説明する。
【0036】
第1の膜洗浄工程は、加圧された洗浄水を処理水室1B側から原水室1A側に向けて一気に膜透過させる工程である。この工程では、原水供給管2の開閉弁21を閉じて原水の供給を停止させた後、処理水室1Bに洗浄水供給管4から逆洗用の洗浄水を供給する。洗浄水は、洗浄水タンク43から洗浄水供給ポンプ42の駆動によって供給される。このとき洗浄排水排出管6の開閉弁61及び処理水排出管3の開閉弁31は閉じた状態とし、処理水室1B内を洗浄水で満たす。この洗浄水が満たされた処理水室1Bに、加圧空気供給管5から加圧空気を注入することで、処理水室1B内の洗浄水を加圧する。
【0037】
このとき、空気供給源82を稼動させることにより微細気泡吐出部8から微細気泡を生成させることが好ましい。すなわち、洗浄水供給管4から処理水室1B内に洗浄水を供給して該処理水室1B内が洗浄水で満たされた状態で、空気供給源82を稼動させることにより微細気泡吐出部8から微細気泡を生成させる。
【0038】
処理水室1B内が洗浄水で満たされたら、開閉弁51を開けて加圧用空気供給源52を稼動させることにより、同じく処理水室1B内に加圧空気を供給し、処理水室1B内の洗浄水を加圧する。洗浄水を加圧するのは、洗浄排水排出管16の開閉弁61を開けて洗浄水を洗浄排水排出口14から外部に排出する際に、処理水室1B内の洗浄水を濾過膜72を通過させて一気に原水室1A側に移動させ、濾過膜72の付着物質を除去させるためである。
【0039】
この加圧時の圧力は、濾過膜72のバブルポイント以上の圧力とすることが好ましい。圧力は加圧用空気供給管5に設けられた圧力計53によって計測することができる。処理水室1B内を濾過膜72のバブルポイント以上の圧力で加圧することにより、処理水室1B内に導入された微細気泡Bは、図3に示すように、濾過膜72の孔72aを通過する。このとき、濾過膜72の表面の付着物質(ゲル状物質なども含む)Xの大部分は一緒に除去される。
【0040】
また、濾過膜72を通過して原水室1A側に出た微細気泡Bは、図4に示すように、濾過膜72の膜面を叩きながら上昇することにより、更に表面の付着物質の除去を助長させる。
【0041】
濾過膜72のバブルポイントは、濾過膜72を気泡が通過する最低圧力であり、このバブルポイントは、膜の孔径、膜の表面張力などによって決まる。本発明における実験例では、孔径が0.4〜0.9μmの範囲の精密濾過膜72に対して、加圧力を110〜160kPaとすることにより、気泡が膜を通過した。一般には、加圧空気による加圧力は、300〜500kPaとすることが好ましい。
【0042】
一方、第2の膜洗浄工程はかかる第1の膜洗浄工程の後に行われる。第2の膜洗浄工程は、第1の膜洗浄工程において、加圧されて一気に濾過膜72を通過した洗浄水を洗浄排水排出管6から排出した後、その洗浄排水排出管6の開閉弁61を開いた状態で、洗浄水供給管4から処理水室1Bに更に洗浄水を供給し、その洗浄水を濾過膜72に透過させる。このときの洗浄水は、洗浄水供給ポンプ42の作動によって供給されるだけであり、加圧用空気供給源52による加圧は行わない。従って、第1の膜洗浄工程よりも小さい流速で洗浄水を処理水室1B側から原水室1A側へ向けて緩慢に膜透過させて濾過膜72の逆洗浄を行う。
【0043】
このように洗浄水が濾過膜72を透過する際の流速は、1〜3m/sが好ましい。
【0044】
また、この第2の膜洗浄工程において洗浄水を供給する時間は、10〜90秒が好ましい。
【0045】
これにより、洗浄水は、瞬間的に濾過膜72を通過する第1の膜洗浄工程とは異なり、濾過膜72の孔をゆっくり、じわっと通過することになる。この洗浄水は、加圧洗浄時のようにプリーツの山部(濾過方向に沿って見た場合に山となる部分)に集中することなく、プリーツ状の濾過膜72の表面のほぼ全面に対して垂直方向に通過しようとするため、プリーツの谷部(濾過方向に沿って見た場合に谷となる部分)内も洗浄水が通過して、第1の膜洗浄工程によっても除去しきれなかったプリーツの谷部に残留、蓄積したシルト等の付着物質が、緩慢に流れる洗浄水の流れによって徐々に膜表面から剥離し、洗浄水と共に原水室1A内に流出する。
【0046】
従って、逆洗運転においてかかる第1の膜洗浄工程の後に第2の膜洗浄工程を実施することにより、濾過膜72をシルト等の付着がない新品の膜と同等の状態に回復させることができ、膜間差圧の上昇を抑えて、長期に安定した濾過運転を行うことが可能となる。
【0047】
本発明において、第1の膜洗浄工程及び第2の膜洗浄工程は、1度の逆洗運転において複数回繰り返し行うことが好ましい。この場合、第1の膜洗浄工程と第2の膜洗浄工程とを交互に複数回繰り返す態様に限らず、第1の膜洗浄工程だけを複数回繰り返した後、第2の膜洗浄工程を実施する態様等としてもよい。
【0048】
図5、図6は、同一の濾過膜を有する膜濾過装置によって海水を膜濾過した場合について、第1の膜洗浄工程のみを行った態様(図5)と、第1の膜洗浄工程の後に第2の膜洗浄工程を行った態様(図6)における膜間差圧の変化を調べたグラフである。ここでは、それぞれ膜濾過装置を2塔用意し、一方が濾過運転している間に他方を逆洗し、待機させる運転を行うようにしている。
【0049】
図5の態様では、各逆洗運転時に、500kPaの加圧空気を洗浄水で満たした処理水室に送って一気に排出する第1の膜洗浄工程のみを実施した。その結果、逆洗運転実施直後は一時的に膜間差圧が低下するが、直ぐに上昇し、累積運転時間の増加に伴って徐々に上昇しており、全体的に傾きが大きくなっている。
【0050】
一方、図6の態様では、各逆洗運転時に、500kPaの加圧空気を洗浄水で満たした処理水室に送って一気に排出する第1の膜洗浄工程と、流速1.5m/sでの洗浄水の供給を行う第2の膜洗浄工程とを交互に繰り返した。その結果、膜間差圧は図5の態様に比べて著しく低下し、累積運転時間24時間後の膜間差圧は60%低下し、全体的に傾きは小さくなっており、図5の態様に比べて長期に亘って安定して濾過運転可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の逆洗方法を実施するのに好適な膜濾過装置の一例を示す概略断面図
【図2】濾過筒の断面図
【図3】濾過膜を微細気泡が通過する様子を説明する図
【図4】濾過膜を微細気泡が通過する様子を説明する図
【図5】第1の膜洗浄工程のみを行った場合の累積運転時間と膜間差圧との関係を示すグラフ
【図6】第1の膜洗浄工程と第2の膜洗浄工程とを行った場合の累積運転時間と膜間差圧との関係を示すグラフ
【図7】従来の逆洗後の膜表面の様子を説明する図
【符号の説明】
【0052】
1:濾過槽
1A:原水室
1B:処理水室
11:仕切板
12:原水供給口
13:処理水排出口
14:洗浄排水排出口
2:原水供給管
21:開閉弁
3:処理水排出管
31:開閉弁
4:洗浄水供給管
41:開閉弁
42:洗浄水供給ポンプ
43:洗浄水タンク
5:加圧用空気供給管
51:開閉弁
52:加圧用空気供給源
53:圧力計
6:洗浄排水排出管
61:開閉弁
7:濾過筒
71:支持体
72:濾過膜
72a:孔
73:上部開口
8:微細気泡吐出部
81:空気供給管
82:空気供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過槽内が仕切板により原水室と処理水室とに区画され、前記原水室内に、前記仕切板を貫通して前記処理水室側に開口する袋状の膜を備えた多数の濾過筒が設置され、前記原水室に入った原水が該原水室内を上向流しながら前記膜により濾過され処理水として前記濾過筒内を上昇して前記処理水室内に集水される構造を有し、前記処理水室には開閉弁を介して洗浄水供給管が接続され、前記原水室には開閉弁を介して洗浄排水排出管が接続された膜濾過装置の逆洗方法において、
前記処理水室に洗浄水を満たした状態で前記洗浄排水排出管の開閉弁を閉じ、前記処理水室内に空気を注入して洗浄水を加圧した後、前記洗浄排水排出管の開閉弁を開くことにより、加圧された洗浄水を一気に膜透過させて前記膜の逆洗浄を行う第1の膜洗浄工程と、
前記第1の膜洗浄工程の後、前記洗浄排水排出管の開閉弁を開いた状態で前記洗浄水供給管から前記処理水室に洗浄水を供給することにより、前記第1の膜洗浄工程よりも小さい流速で洗浄水を膜透過させて前記膜の逆洗浄を行う第2の膜洗浄工程とを有することを特徴とする膜濾過装置の逆洗方法。
【請求項2】
前記第2の膜洗浄工程における前記洗浄水の流速は、1〜3m/sであることを特徴とする請求項1記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【請求項3】
前記第2の膜洗浄工程における前記洗浄水の供給時間は、10〜90秒であることを特徴とする請求項1又は2記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【請求項4】
前記膜は、プリーツ状の膜であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【請求項5】
前記第1の膜洗浄工程において、前記処理水室内の洗浄水中に微細気泡を導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の膜濾過装置の逆洗方法。
【請求項6】
前記原水は船舶のバラストタンクに供給するためのバラスト水であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の膜濾過装置の逆洗方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−241043(P2009−241043A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94229(P2008−94229)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(503442592)株式会社ユアサメンブレンシステム (28)
【Fターム(参考)】