説明

膜脱気モジュール

【課題】液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を維持しつつ、液体流路の洗浄性も向上させることができる。
【解決手段】膜脱気モジュール10において、2枚の脱気膜20A、20Bを封筒状にした封筒状脱気膜12の内側に、被脱気液体の供給口32側から排出口34側に向けて複数本並設されたテーパー状凸部50Aを有する気体流路形成材を配置することにより、封筒状脱気膜12をスパイラル状に巻回したときに、封筒状脱気膜12同士の間にテーパー状溝の液体流路18が形成されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液等の被脱気液体から溶存気体を膜脱気により除去する膜脱気モジュールの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
溶存気体量の多い塗布液は、塗布中に塗布機において気泡が発生し易く、発生した気泡は、支持体に塗布形成された塗布液層において筋やハジキ故障の原因となる。したがって、塗布液を塗布機に送る前に、塗布液中の溶存気体を除去しておく必要があり、この塗布液の溶存気体を除去するには膜脱気モジュールが通常用いられていた。この膜脱気モジュールに塗布液を通過させることにより脱気するものである。
【0003】
この膜脱気モジュールは、ハウジングに、非多孔質ないし多孔質等から成るフィルムタイプの脱気膜を封筒状に形成した脱気膜構造体をスパイラル状に巻回して収納したものであり、この脱気膜構造体の外側が塗布液の流れる液体流路となる。また、脱気膜構造体の内部に減圧された気体流路が形成されており、この気体流路が塗布液から脱気された気体の流路となる。
【0004】
従来、このような脱気膜構造体の液体流路や気体流路を形成する方法には、特許文献1で開示されているように、ネット状、綿布等の液体流路形成材を脱気膜構造体に重ね合わせた状態でスパイラル状に巻回することにより液体流路を形成し、脱気膜間にクロス織布、ネット等から成る気体流路形成材を設けることにより気体流路を形成していた。
【0005】
即ち、図13(A)に示すように、脱気膜構造体1と、それに重ね合わせた網状(メッシュ状)の液体流路形成材2とをスパイラル状に巻回し、液体流路形成材2が液体流路として機能するようにしている。更に、脱気膜構造体1は、図13(B)に示すように、2枚の脱気膜3、4の間に気体流路形成材5が設けられ、この気体流路形成材5が気体流路として機能するようにしている。
【0006】
また、特許文献2に示すように、脱気膜構造体1の少なくとも一方の面に、散点状にドット状の凸部6を形成したり(図14A)、格子状の凸部7を形成したり(図14B)することにより、液体流路を形成することも提案されている。
【0007】
このように、特許文献1や特許文献2の膜脱気モジュールのように、液体流路を、網状の液体流路形成材で形成したり、脱気膜構造体に散点状、格子状の凸部を形成したり、一定方向の液流れを遮る構造に形成すると、液体流路を流れる被脱気液体の流れに乱れを発生させることができるので、脱気性能が向上するとされている。
【特許文献1】特開平9−225206号公報
【特許文献2】特開2000−117068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一定方向の液流れを遮る構造の液体流路は、膜脱気モジュールを分解しない状態で液体流路に洗浄液を流して洗浄する際に洗浄性が悪くなり、膜モジュールの脱気運転中に液体流路に蓄積した異物が洗浄により十分排除できないという問題がある。これにより、膜脱気モジュールで脱気した塗布液を塗布形成した塗布液層に異物故障や泡はじき故障等が発生する。
【0009】
したがって、従来の膜脱気モジュールは、劣化が早く、脱気運転を長期間行った後は、膜脱気モジュールを交換せざるをえない状況にあった。
【0010】
このような背景から、脱気性能を低下させずに液体流路の洗浄性も向上できる膜脱気モジュールが要望されている。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を維持しつつ、液体流路の洗浄性も向上させることができる膜脱気モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の膜脱気モジュールは、周縁が封筒状に閉じられた2枚の脱気膜と、前記封筒状に閉じられた封筒状脱気膜の内側に形成され被脱気液体から脱気された気体の気体流路を形成する気体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の端部に前記気体流路に連通して設けられ前記被脱気液体から前記気体流路に脱気された気体を吸引除去する吸引管と、を備え、前記吸引管を中心として前記封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回した状態で、被脱気液体の供給口が一端側に形成されると共に脱気された脱気液体の排出口が他端側に形成されたハウジングに収納されてなる膜脱気モジュールであって、前記気体流路形成部材は、前記封筒状脱気膜の少なくとも一方の内側面に対し前記供給口側から前記排出口側に向けて徐々に幅広になるテーパー状凸部が複数本並設された形状を有し、前記スパイラル状に巻回された封筒状脱気膜同士の間には、前記テーパー状凸部によって、被脱気液供給口側から排出口側に向け幅狭になるテーパー状溝の液体流路が形成され、該液体流路の流路断面積が前記供給口側から排出口側に向けて下記式を満足することを特徴とし、供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲である。
【0013】
ここで、「2枚の脱気膜」とは、分離された2枚の脱気膜の場合以外に、1枚の脱気膜を折り畳んで上下2枚にする場合も含む。
【0014】
本発明の請求項1は、2枚の脱気膜を封筒状にした封筒状脱気膜の内側に気体流路形成材で、被脱気液体の供給口側から排出側に向けて複数本並設されたテーパー状凸部を形成することにより、封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回したときに、封筒状脱気膜同士の間にテーパー状溝の液体流路が形成されるように構成したものである。なお、テーパー状溝とは、テーパー形状の溝をいう。
【0015】
本発明の請求項1によれば、封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回することにより、テーパー状凸部を挟んだ封筒状脱気膜同士の間に、供給口から供給された被脱気液体が流れるテーパー状溝の液体流路が形成されるようにし、該液体流路の流路断面積が、供給口側から排出口側に向けて、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲を満足するように、徐々に狭くなるようにした。このように、流路断面積の広い供給口側から液体流路に流入した被脱気液体は、排出口側に向けて流路断面積が徐々に小さくなることにより、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を得ることができる。この理由は定かではないが、液体流路の流路断面積を被脱気液体の供給口側から排出口側に徐々に小さくすることで液体における流れの速度、圧力上昇、乱れが生ずることが予想され、これにより、脱気膜近傍に形成される境膜(透過膜内への気体の透過を阻害する)を薄膜化又は破壊することで脱気性能が向上することが推測される。
【0016】
一方、液体流路を洗浄液で洗浄する場合には、液体流路は供給口側から排出口側に向けて、又はその反対方向に一定方向の流れを形成し、従来の網状、散点状、あるいは格子状に形成された液体流路のように、一定方向の液流れを遮ることがないので、洗浄性を向上できる。
【0017】
これにより、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等の脱気性能を維持しつつ、液体流路の洗浄性も向上させることができる膜脱気モジュールを提供できる。
【0018】
前記目的を達成するために、本発明の請求項2の膜脱気モジュールは、周縁が封筒状に閉じられた2枚の脱気膜と、封筒状に閉じられた封筒状脱気膜の内側に形成され被脱気液体から脱気された気体の気体流路を形成する気体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の外側に前記被脱気液体の流路を形成する液体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の端部に前記気体流路に連通して設けられ前記被脱気液体から前記気体流路に脱気された気体を吸引除去する吸引管と、を備え、前記吸引管を中心として前記封筒状脱気膜と液体流路形成部材を重ね合わせ、スパイラル状に巻回した状態で、被脱気液体の供給口が一端側に形成されると共に脱気された脱気液体の排出口が他端側に形成されたハウジングに収納されてなる膜脱気モジュールであって、前記液体流路形成部材は、前記封筒状脱気膜の少なくとも一方の外側面に対し前記供給口側から前記排出口側に向けて徐々に幅広になるテーパー状凸部が複数本並設された形状を有し、前記スパイラル状に巻回された封筒状脱気膜と前記テーパー状凸部によって、被脱気液供給口側から排出口側に向け幅狭になるテーパー状溝の液体流路が形成され、該液体流路の流路断面積が前記供給口側から排出口側に向けて下記式を満足することを特徴とし、供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲である。
【0019】
本発明の請求項2は、2枚の脱気膜を封筒状にした封筒状脱気膜の外側に液体流路形成材で、被脱気液体の供給口側から排出側に向けて複数本並設されたテーパー状凸部を形成することにより、封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回したときに、封筒状脱気膜同士の間にテーパー状溝の液体流路が形成されるように構成したものである。なお、テーパー状溝とは、テーパー形状の溝をいう。
【0020】
請求項2の場合も、請求項1と同様に、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等の脱気性能を維持しつつ、液体流路の洗浄性も向上させることができる膜脱気モジュールを提供できる。
【0021】
本発明において、前記液体流路形成材は、前記封筒状脱気膜の一方の外側面よりも、両方の外側面に対して前記供給口側から前記排出口側に向けて徐々に幅広になるテーパー状凸部が複数本並設された形状を有することが好ましい。これは、吸引管を中心にスパイラル状に巻回した時に、全ての膜面においてテーパー状溝が形成できるからである。
【0022】
特に、請求項1のように、封筒状脱気膜の内側に、気体流路形成材でテーパー状凸部を形成した場合には、気体流路形成材が液体流路を形成するための液体流路形成部材を兼用する。これにより、請求項2のように、液体流路形成材を別途設ける必要がないと共に、液体流路が封筒状脱気膜で囲まれた状態になることから、被脱気液体が接触する部材が脱気膜のみになり、脱気性能及び洗浄性が向上する。
【0023】
本発明において、液体流路形成部材及び気体流路形成部材が並設される凸状部の間隔は、等間隔であることが好ましい。これは、液の偏流を抑制し、脱気性能を得るためである。
【0024】
液体流路及び気体流路を形成するテーパー状凸部は、封筒状脱気膜の外側ないし内側と一体に形成してもよい。脱気膜とは別に形成し、脱気膜とともにスパイラル状に巻回してもよい。テーパー形状を形成する凸部断面形状は、半円形、台形等の多角形、球形等の形状でも形成できる。
【0025】
本発明において、前記供給口側の流路断面積Aは0.01mm〜5mmの範囲であると共に、排出口側の流路断面積Bは0.005mm〜4mmの範囲であることが好ましい。
【0026】
これは、供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲を満足した条件下で、更に流路断面積Aが0.01mm〜5mmの範囲であり、排出口側の流路断面積Bが0.005mm〜4mmの範囲であることが、脱気性能及び洗浄性の向上にとって一層好ましいからである。これにより、脱気性能を一層向上できると共に、異物故障を一層防止できる。
【0027】
本発明において、前記脱気膜全体の表面積は、前記テーパー状凸部全体の表面積よりも4%以上10%以下の範囲で大きいことが好ましい。これにより、巻回時あるいは脱気膜内を減圧にしたときに、膜の破損を防止できる。
【0028】
本発明において、前記並設された複数本の液体流路において、前記供給口側のピッチ幅が、0.25mm以上6mm以下であることが好ましい。これにより、脱気性能を一層向上できると共に、異物故障を一層防止できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の膜脱気モジュールによれば、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を維持しつつ、液体流路の洗浄性も向上させることができる。これにより、塗布液層における異物故障及び泡はじき故障の両方を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、添付図面に従って、本発明に係る膜脱気モジュールの好ましい実施の形態について詳説する。
【0031】
(膜脱気モジュールの第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、2枚の脱気膜を封筒状にした封筒状脱気膜の内側に、気体流路を形成する気体流路形成材で、被脱気液体の供給口側から排出側に向けて複数本並設されたテーパー状凸部を形成することにより、封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回したときに、封筒状脱気膜同士の間にテーパー状溝の液体流路が形成されるように構成したものである。
【0032】
図1は、本発明の膜脱気モジュール10(図4参照)の主たる構成要素である封筒状脱気膜12(脱気膜構造体ということもある)を巻回してハウジング14(図4参照)に収納する前の状態を説明する説明図である。図2は、吸引管16を中心に図1の封筒状脱気膜12を巻回している状態図である。図3は、封筒状脱気膜12の内側に気体流路形成材50でテーパー状凸部50Aを形成した部分断面図である。図4は、巻回した封筒状脱気膜12をハウジング14に収納して膜脱気モジュール10を構成した断面図であり、封筒状脱気膜12は図2のA−A線に沿って切断することにより、液体流路18が分かり易いようにしている。
【0033】
図1に示すように、封筒状脱気膜12は、2枚の脱気膜20A、20B(図3参照)を合わせて、その周縁が熱融着等の接合方法によって封筒状にシールされると共に、シールされた封筒状脱気膜12の内側には、気体流路を形成する気体流路形成材50で形成されたテーパー状凸部50Aが設けられる(図3参照)。これにより、シールされた脱気膜20A、20B同士の内側に、気体流路形成材50によりテーパー状凸部50Aが設けられた矩形板状の封筒状脱気膜12が形成される。封筒状脱気膜12の長手方向端部には、脱気された気体をハウジング14外に吸引除去するための吸引管16が設けられる。この吸引管16の基端部16Aを除く部分は、封筒状脱気膜12の内部に挿入され、挿入部分12Bの吸引管16には、気体流路形成材50に連通する多数の吸引孔24が形成される。また、吸引管16の基端部16Aは、図4に示すようにハウジング14外に延設されて、図示しない真空ポンプの配管に接続される。また、吸引管16の挿入部分16Bから気体が洩れないように、挿入部分16Bが図示しないシール部材でシールされる。そして、上記の気体流路形成材50は、吸引管16により封筒状脱気膜12の内部を吸引したときに、2枚の脱気膜20、20が密着することを防止するので、封筒状脱気膜12の内部に脱気された気体が流れる気体流路22を形成することができる。
【0034】
脱気膜20は、非多孔質膜であっても多孔質膜であってもよく、また、その厚み等に関しても適宜変更することができる。例えば、脱気膜として、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を好適に使用できる。
【0035】
尚、本実施の形態では、分離された2枚の脱気膜20、20を合わせて周縁部を接合することにより封筒状脱気膜12を形成したが、一枚の脱気膜を2つに折り畳んで周縁部をシールすることにより封筒状脱気膜12を形成してもよい。
【0036】
気体流路形成材50に直接、接着、融着、塗布、成型法等で、供給口32側から排出口34側に向けてテーパー状凸部50Aをストライプ状に形成する。又、気体流路形成材50とは別に、供給口32側から排出口34側に向けて凸形状をストライプ状に形成したテーパー状凸部50Aを用意し、気体流路形成材50の片面ないし両面に形成しても良い。
【0037】
テーパー状凸部50Aを形成する気体流路形成材50の材質は、被脱気液体及び脱気対象気体に溶解しない材質であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の各種樹脂を用いることができる。
【0038】
気体流路形成材50でテーパー状凸部50Aを形成する方法としては、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))粉末溶融接着、スクリーン塗布、グラビア塗布等、気体流路形成材50に一体形成できる手段あるいは、気体流路形成材50に接着できれば特に限定されない。
【0039】
テーパー状凸部50Aの断面形状は円状、半円状、楕円状、三角形状、台形状等の各種形状とすることができる。なお、本実施の形態では、断面台形状に形成した例で示してある。これにより、液体流路18を形成するためのネット(網)等の液体流路形成材を別途必要としないので、製作も簡単になる。又、2枚の脱気膜20A、20Bの少なくとも一方の内面にテーパー状凸部50Aを封筒状脱気膜12と一体的に設けても良い。
【0040】
テーパー状凸部50Aの高さは、封筒状脱気膜12の内側に対して片面にのみ設ける場合は、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が最も好ましい。また、封筒状脱気膜12の内側に対して両面に設ける場合は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0041】
このように、封筒状脱気膜12の内側に、気体流路形成材50によって吸引管16と平行な複数本のテーパー状凸部50Aが並設される。このテーパー状凸部50Aは、断面が台形な棒状に形成されると共に、ハウジング14に形成された被脱気液体の供給口32側から脱気された脱気気体の排出口34側に向けて台形幅が徐々に幅広になるように台形側面にテーパーが形成されている。このようなテーパーが形成された複数本のテーパー状凸部50Aを封筒状脱気膜12の内側に並設させた封筒状脱気膜12を図2のように巻回することにより、脱気膜20Bの面には、供給口32側から供給された被脱気液体が脱気膜20に接触しながら流れる液体流路18が形成される(図1参照)。そして、この液体流路18の流路断面積は、供給口32側から排出口34側に向けて下記式を満足するように徐々に幅が狭くなる。
【0042】
即ち、供給口32側の流路断面積をAとし、排出口34側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲である。
【0043】
また、液体流路18は、上記式(B/A)×100が40%以上80%以下である条件に加えて、下記の条件を満足することが一層好ましい。
【0044】
(1)供給口32側の流路断面積Aは0.01mm〜5mmの範囲であると共に、排出口34側の流路断面積Bは0.005mm〜4mmの範囲であることが好ましい。
【0045】
供給口32側の流路断面積をAとし、排出口34側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲を満足した条件下で、更に供給口32側の流路断面積Aが0.01mm〜5mmの範囲であり、排出口34側の流路断面積Bが0.005mm〜4mmの範囲であることが、脱気性能及び洗浄性の向上にとって一層好ましいからである。即ち、液体流路18の供給口32側の流路断面積Aが0.01mm未満では、排出口34側の流路断面積Bを更に狭くする必要があり、異物の径にもよるが異物詰まりが生じ易くなる。これを排出口34側の流路断面積Bから見た場合には、0.005mmが下限になる。
【0046】
一方、液体流路18の排出口34側の流路断面積Bが4mmを超えると、供給口32側の流路断面積Aを更に広くする必要があり、流速や圧力の上昇、液流の乱れが低下し、液と膜との接触が低下するため、脱気能力が低下する。これを供給口32側の流路断面積Aから見た場合には、5mmが上限になる。
【0047】
これにより、脱気性能を一層向上できると共に、洗浄性が向上するので異物故障防止を一層向上できる。
【0048】
(2)脱気膜20全体の表面積は、テーパー状凸部50A全体の表面積よりも4%以上10%以下の範囲で大きいことが好ましい。
【0049】
これは、封筒状脱気膜12の内部を減圧したときに、凸部を有し、表面積の大きな気体流路形成材50によって脱気膜20A,20Bが破壊されてしまうためである。
【0050】
そこで、発明者は、脱気膜20全体の表面積と、テーパー状凸部50A全体の表面積との好ましい関係を実験により調べたところ、脱気膜20全体の表面積は、テーパー状凸部50A全体の表面積よりも4%以上10%以下の範囲で大きく設計することで、脱気性能を向上でき、且つ脱気膜の破損を防止できた。
【0051】
(3)並設された複数本の液体流路18において、供給口32側のピッチ幅Pが、0.25mm以上6mm以下であることが好ましい。ここで、ピッチ幅Pは、図1に示すように、液体流路18の供給口32側の幅方向中心から隣の液体流路18の供給口32側の幅方向中心までの距離を言う。
【0052】
これは、供給口32側のピッチ幅が0.25mm未満で小さ過ぎると、流路断面積の小さな液体流路18が多数本形成されることになり、液体流路18が異物によって目詰まりし易くなる傾向にある。また、ハウジング14内に収納できる封筒状脱気膜12の直径、即ち封筒状脱気膜12を巻き戻したときの長さL(図1参照)には制限があるので、供給口32側のピッチ幅が6mmを超えて大きくなり過ぎると、封筒状脱気膜12に形成できる液体流路18の本数が少なくなる。これにより、脱気性能が落ちる傾向にある。したがって、供給口32側のピッチ幅が、0.25mm以上6mm以下とすることで、脱気性能を一層向上できると共に、洗浄性が向上するので異物故障防止を一層向上できる。
【0053】
図1〜図2では、気体流路形成材50で形成したテーパー状凸部50Aを封筒状脱気膜12の内側に対して片面のみに設け例で説明したが、封筒状脱気膜12の内側に対して、両面に設けてもよい。図3(A)は、テーパー状凸部50Aを封筒状脱気膜12の内側に対して片面にのみ設けた図である。図3(B)は、テーパー状凸部50Aを封筒状脱気膜12の内側に対して両面に設けた図であり、図3(B)の場合、封筒状脱気膜12をスパイラル状に巻回したときに、両面に形成されたテーパー状凸部50A同士が接触して合わさった状態で液体流路18を形成することになる。したがって、上記したように、テーパー状凸部50Aが、片面にのみ形成された図3(A)の場合に比べてテーパー状凸部50Aの台形高さを低くすることが好ましい。
【0054】
次に、図4を用いて本発明の膜脱気モジュール10について説明する。
【0055】
本発明の膜脱気モジュール10は、上記の如く構成された封筒状脱気膜12を、吸引管16を中心に巻回した状態で、ハウジング14に収納することにより形成される。ハウジング14の材質及び形状に関しては特に限定されない。
【0056】
ハウジング14は、主として、円筒ケーシング14Aと、円筒ケーシング14Aの両端に被せる一対の蓋部材14B,14Cとによって構成される。一対の蓋部材14B,14Cのうちの一方の蓋部材14Bには、被脱気液体を供給する供給口32が形成される。また、他方の蓋部材14Cには、封筒状脱気膜12によって脱気された脱気液体を排出する排出口34が形成されると共に、吸引管16が貫通する貫通孔38が形成される。
【0057】
円筒ケーシング14Aの両端には、整流用スクリーン40,40が設けられ、供給口32から供給された被脱気液体が封筒状脱気膜12全体に均等に行き渡るように整流される。洗浄性向上のため、この整流用スクリーン40をなくしてもよい。
【0058】
ハウジング14に収納された封筒状脱気膜12は、図4の封筒状脱気膜12の断面図から分かるように、液体流路18の流路断面積は、供給口32側から排出口34側に向けて徐々に狭くなっている。これにより、液体流路が網状、散点状、あるいは格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を得ることができる。この理由については、定かではないが、図5に示すように液体流路18を流れる被脱気液体における流れの速度、圧力上昇、乱れが生ずることが予想される。これにより、脱気膜20B面の近傍に形成される境膜(脱気膜内への気体の透過を阻害する)を薄膜化又は破壊することができる。したがって、本発明のように液体流路18をストライプ状に形成して、一定方向の流れが発生するようにしても、網状、散点状、格子状に液体流路を形成した従来の膜脱気モジュールと比べても同等以上の脱気性能を得ることができる。
【0059】
一方、供給口32又は排出口34から洗浄液(例えば清浄水)を膜脱気モジュール10内に送液して液体流路18を洗浄する場合には、液体流路18は供給口32側から排出口34側、又は排出口34側から供給口32側に向けて一定方向の流れを形成する。これにより、従来の網状、散点状、格子状に形成された液体流路のように、一定方向の液流れを遮ることがないので、洗浄性を向上できる。洗浄液の送液は、排出口34側から送液することが好ましく、排出口34側と供給口32側から交互に送液することが一層好ましい。
【0060】
これにより、液体流路18が網状、散点状、格子状に形成された従来の膜脱気モジュールと同等以上の脱気性能を維持しつつ、液体流路18の洗浄性も向上させることができる膜脱気モジュールを提供できる。
【0061】
(膜脱気モジュールの第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、図6に示すように、2枚の脱気膜20A、20Bを封筒状にした封筒状脱気膜12の外側に液体流路形成材30で、被脱気液体の供給口32側から排出口34側に向けて複数本並設されたテーパー状凸部30Aを形成することにより、封筒状脱気膜12をスパイラル状に巻回したときに、封筒状脱気膜12と液体流路形成部材30とでテーパー状溝の液体流路18が形成されるように構成したものである。なお、第1の実施の形態と同様の部分についての説明は省略する。
【0062】
図6では、液体流路形成材30で形成したテーパー状凸部30Aを封筒状脱気膜12の片面にのみに設けた例で説明したが、封筒状脱気膜12の両面に設けてもよい。図7(A)は、テーパー状凸部30Aを封筒状脱気膜12の両面に設けた図であり、図7(B)は、テーパー状凸部30Aを封筒状脱気膜12の片面にのみ設けた図である。図7(A)の場合、封筒状脱気膜12をスパイラル状に巻回したときに、両面に形成されたテーパー状凸部30A同士が接触して合わさった状態で液体流路18を形成することになる。したがって、テーパー状凸部30Aが、片面にのみ形成された図7(B)の場合に比べてテーパー状凸部30Aの台形高さを低くすることが好ましい。
【0063】
第2の実施の形態の場合も、液体流路形成材30で形成するテーパー状凸部30Aの断面形状は、円状、半円状、楕円状、台形状、三角形状等の各種形状とすることができ、図6及び図7は、楕円状で図示したものである。テーパー状凸部30Aを楕円状や円状にすることで、台形状、半円状、三角形状にする場合に比べて、脱気膜20との接触面積を小さくできるので、脱気性能向上にとって好ましい。
【0064】
液体流路形成材30で形成するテーパー状凸部30Aの台形高さは、封筒状脱気膜12の片面のみに設ける場合は、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が最も好ましい。また、封筒状脱気膜12の両面に設ける場合は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0065】
テーパー状凸部30Aを形成する液体流路形成材30の材質は、被脱気液体に溶解しない材質であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。
【0066】
液体流路用のテーパー状凸部30Aを、封筒状脱気膜12の面に形成する方法としては、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))粉末溶融接着、スクリーン塗布、グラビア塗布等、テーパー状凸部30Aを、封筒状脱気膜12に一体形成できる手段、あるいは液体流路形成材30に接着できれば特に限定されない。
【0067】
また、第2の実施の形態において、封筒状脱気膜12の内部に気体流路22を形成する方法は、気体が流れる流路であれば特に限定されず、例えばテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ナイロン、ポリエステル等の樹脂製のクロス織布、ウレタンスポンジ、樹脂製のネット、金属金網等の気体流路形成材26(図7参照)を2枚の脱気膜20の間に挟み込む方法を採用できる。
【0068】
気体流路用凸部28としては、表面が平滑なもの以外に、ドット状の凸状部を脱気膜20面に多数散点させた散点状のもの、脱気膜20面に供給口側から排出口側に向けて凸状部をストライプ状に形成したもの、脱気膜20面に凸部を格子状に形成したもの等の各種形態を採用することができる。また、気体流路用凸部28の断面形状は円状、半円状、楕円状、三角形状、台形状等の各種形状とすることができる。又、封筒状脱気膜12と一体的に設けても良い。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の第1の実施の形態の膜脱気モジュールを使用した実施例を説明する。
【0070】
(実施例A)
実施例Aは、本発明の膜脱気モジュールの脱気能力を、比較例と比較した試験である。
【0071】
本発明の実施例で使用した膜脱気モジュールと、比較例で使用した膜脱気モジュールの詳細を図8の表に示す。
【0072】
図8の表において、実施例1〜4は、テーパー状凸部により液体流路を形成したものであり、液体流路の供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲に入るようにしたものである。
【0073】
比較例1は、厚み250μmで孔径が60メッシュのポリエステルネット(液体流路形成材)を封筒状脱気膜に重ね合わせることにより液体流路を形成したもので、従来の膜脱気モジュールに相当するものである。
【0074】
比較例2〜5は、テーパー状凸部により液体流路を形成したことは実施例1〜4と同様であるが、式(B/A)×100が40%以上80%以下を満足しない場合である。
【0075】
尚、実施例1〜4、及び比較例1〜5ともにハウジング容積、脱気膜の材質、面積、厚み、及び気体流路の形成方法は共通である。
【0076】
そして、脱気能力試験は、図1の膜脱気モジュールのそれぞれについて、純水(25℃、溶存酸素量:8.1ppm)を流して、純水中の溶存酸素を脱気する脱気能力を対比した。また、純水の送液量を、500cc/分、1000cc/分、1500cc/分、2000cc/分の4水準で行った。なお、脱気時間は、ハウジング容積が1L(リットル)であることから、例えば送液量が1000cc/分の場合には1分となる。
【0077】
脱気能力試験の結果を図9の表に示す。
【0078】
図9の表から、本発明の実施例1〜4は、液体流路形成にポリエステルネットを使用した比較例1と対比すると、同等の脱気能力があり、従来の膜脱気モジュールの脱気能力が維持されていることが分かる。
【0079】
本発明の実施例1〜4を、比較例2〜5と対比すると、比較例2、3は本発明よりも若干良くなっているが、比較例4、5は本発明の方が若干良い結果になっている。
【0080】
(実施例B)
実施例Bの泡はじき試験は、図8の表に示すそれぞれの膜脱気モジュールによって塗布液を脱気した後、塗布装置によって塗布液を走行する支持体に塗布したときに、塗布液層の泡はじき個数を対比したものである。
【0081】
塗布条件:バー塗布装置を使用して、塗布速度(支持体の走行速度)80m/分で、厚み0.3mm、幅1000mmのアルミニウム製の支持体に塗布液を塗布した。
【0082】
塗布液:純水にポリビニルアルコール(PVA)と界面活性剤とを混合溶解して塗布液を調製した。
【0083】
膜脱気モジュール:塗布液供給ラインには1台の膜脱気モジュールを配置し、塗布液を送液量2000cc/分で流して脱気した後、長さ10インチで、濾過精度が20μmの日本ポールプロファイル濾過フィルタで濾過してバー塗布装置に送った。膜脱気モジュールの脱気減圧度は30torrとした。膜脱気モジュールの封筒状脱気膜は、縦0.31m(310mm)×横16mサイズの2枚の脱気膜を重ね合わせて、周囲を封筒状に封止することで形成した。また、ハウジングは、円筒ケーシングのサイズが内径125mm×長さ370mmのものを使用した。供給口及び排出口の配管径は10Aサイズの配管を使用したが、15A又は20Aサイズ配管でもよい。また、膜脱気モジュール後の濾過フィルタ前の配管に圧力計をつけて送液圧力を測定した。
【0084】
そして、支持体に塗布された塗布液層に発生する泡はじき個数(個/支持体1000m当たり)、及び送液圧力(MPa)の2項目について評価した。泡はじき個数は目視にて評価した。また、泡はじき個数と送液圧力の両方から総合判定を○、△、×で判定した。○は、泡はじきが無く、送液圧力も低い場合である。△は、泡はじき個数は問題ないが、送液圧力が高い場合である。×は、送液圧力は問題ないが、泡はじき個数が多く問題な場合である。
【0085】
実施例Bの泡はじき試験結果を、図10の表に示す。
【0086】
図10の表から分かるように、比較例1及び本発明の実施例1〜4は、泡はじき個数が0個であると共に、送液圧力も0.07〜0.09(MPa)の範囲であり、総合判定が○であった。
【0087】
これに対して、比較例2〜3は、泡はじき個数が0個であるものの、送液圧力が0.13〜0.15と実施例1〜4の約2倍になっており、総合評価は△であった。また、比較例4〜5は、送液圧力は0.04〜0.06と実施例1〜4よりも低いものの、泡はじき個数が6〜7個と多く、×の評価であった。
【0088】
(実施例C)
実施例Cの洗浄による能力回復試験は、図8の表に示したそれぞれの膜脱気モジュールを長期間運転した後の洗浄によって、脱気能力、送液圧力、泡はじき個数、及び異物個数の4項目の回復力がどうなるかを対比したものである。
【0089】
試験は、それぞれの膜脱気モジュールに、塗布液を送液量2000cc/分で1カ月間循環送液した直後の洗浄前について、脱気能力、送液圧力、泡はじき個数、及び異物個数を調べた。また、1カ月間循環送液した後で、膜脱気モジュールに純水(30℃)を送液量2000cc/分で30分流して洗浄した洗浄後について、脱気能力、送液圧力、泡はじき個数、及び異物個数を調べた。
【0090】
そして、洗浄前と洗浄後の結果を対比することで洗浄回復力を判定した。尚、脱気能力の試験は実施例Aと同様に行い、送液圧力、泡はじき個数、及び異物故障の試験は実施例B(但し、濾過フィルタは使用せず)と同様に行うことで調べた。
【0091】
図11の表に洗浄前の結果を示し、図12の表に洗浄後の結果を示す。
【0092】
図11の洗浄前の結果を見ると、膜脱気モジュールを長期運転した後の脱気能力の低下の程度は、実施例1〜4が一番小さく、次に比較例2〜4が小さく、比較例1が一番大きかった。尚、図9の表に示す脱気能力が膜脱気モジュールを長期運転する前の脱気能力である。
【0093】
また、膜脱気モジュールを長期運転した後の送液圧力の上昇は、実施例1〜4が一番小さく、次に比較例2〜4が小さく、比較例1が一番大きかった。尚、図10の表に示す送液圧力が膜脱気モジュールを長期運転する前の送液圧力である。
【0094】
膜脱気モジュールを長期運転することにより、塗布液層に異物が発現しているが、実施例1〜4は、異物個数が2個であり、比較例1の異物個数30に比べて顕著に少ない。このことから、従来のポリエステルネットで液体流路を形成する方法は、長期間運転により異物故障が発生し易くなることが分かる。また、比較例2〜5は、実施例1〜4に比べて異物個数が若干多い傾向になるが、比較例1に比べると顕著に少ない。これにより、テーパー状凸部で液体流路を形成する方法は、液体流路に異物が蓄積されにくく、異物故障に対して顕著な改善がなされることが分かる。
【0095】
また、膜脱気モジュールを長期運転した後の泡はじき個数について見ると、実施例1〜4及び比較例2〜5は、泡はじき個数が5〜7の範囲で略同等であるが、比較例1の泡はじき個数は10個と多かった。
【0096】
次に、図12の洗浄後の結果を、上記した洗浄前の結果と対比すると、いずれの膜脱気モジュールの場合も洗浄することによって、脱気能力、送液圧力、泡はじき個数、及び異物個数は、改善される。しかし、長期運転する前の図9の脱気能力と比較した場合、実施例1〜4は、長期運転する前の脱気能力レベルまで回復しているのに対して、比較例1〜5は、長期運転する前の脱気能力レベルまで回復しないことが分かる。
【0097】
また、洗浄することによって、実施例1〜4の異物個数及び泡はじき個数は0個になり
、比較例1〜5に比べて回復力が大きいことが分かる。比較例4、5の異物個数は0個であるものの、泡はじき個数は7個と多い。また、比較例1〜3は、異物個数及び泡はじき個数とも多く、洗浄回復力が悪い結果であった。
【0098】
以上の洗浄前と洗浄後の対比による洗浄回復力を総合判定すると、実施例1〜4は回復力が良く○の評価であり、比較例1〜5は回復力が悪く×の判定になる。
【0099】
また、テーパー状凸部で液体流路を形成した実施例1〜4と比較例2〜5との対比に注目して、脱気能力、送液圧力、泡はじき個数、異物個数を総合的に見ると、供給口側の流路断面積Aが0.01mm〜5mmの範囲であり、排出口側の流路断面積Bが0.005mm〜4mmの範囲である実施例1〜4において良い傾向にあることが分かる。
【0100】
尚、実施例には示さなかったが、脱気性能や異物故障の防止には、脱気膜全体の表面積が、テーパー状凸部全体の表面積よりも4%以上10%以下の範囲で大きいことが好ましいことが分かった。また、並設された複数本の液体流路において、供給口側のピッチ幅が、0.25mm以上6mm以下であることが好ましいことも分かった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施の形態の脱気膜モジュールであり、テーパー状凸部を封筒状脱気膜の内側に形成したもので、巻回してハウジングに収納する前の状態を説明する説明図
【図2】吸引管を中心に図1の封筒状脱気膜を巻回している状態図
【図3】テーパー状凸部を封筒状脱気膜の内側に対して片面に形成した場合と、両面に形成した場合の断面図
【図4】巻回した封筒状脱気膜をハウジングに収納して本発明の膜脱気モジュールを構成したもので、図2の封筒状脱気膜をA−A線に沿って切断した断面図
【図5】テーパー状凸部で形成した液体流路の作用を説明する説明図
【図6】本発明の第2の実施の形態の脱気膜モジュールであり、テーパー状凸部を封筒状脱気膜の外側に形成したもので、巻回してハウジングに収納する前の状態を説明する説明図
【図7】テーパー状凸部を脱気膜の外側に形成したときのテーパー状凸部と脱気膜との関係を示す説明図
【図8】本発明の膜脱気モジュールと比較例の膜脱気モジュールの構成上の違いを説明する説明図
【図9】実施例Aの脱気能力試験の結果を説明する表図
【図10】実施例Bの泡はじき試験の結果を説明する表図
【図11】実施例Cの洗浄前の結果を説明ずる表図
【図12】実施例Cの洗浄後の結果を説明ずる表図
【図13】従来の膜脱気モジュールの液体流路形成及び気体流路形成を説明する説明図
【図14】従来の膜脱気モジュールの液体流路形成の別態様を説明する説明図
【符号の説明】
【0102】
10…膜脱気モジュール、12…封筒状脱気膜、14…ケーシング、16…吸引管、18…液体流路、20…脱気膜、22…気体流路、24…吸引孔、26…気体流路形成材、28…気体流路用凸部、30…液体形成部材で形成したテーパー状凸部、32…供給口、34…排出口、38…貫通孔、40…整流用スクリーン、50…気体形成部材、50A…気体形成部材で形成したテーパー状凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁が封筒状に閉じられた2枚の脱気膜と、前記封筒状に閉じられた封筒状脱気膜の内側に形成され被脱気液体から脱気された気体の気体流路を形成する気体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の端部に前記気体流路に連通して設けられ前記被脱気液体から前記気体流路に脱気された気体を吸引除去する吸引管と、を備え、
前記吸引管を中心として前記封筒状脱気膜をスパイラル状に巻回した状態で、被脱気液体の供給口が一端側に形成されると共に脱気された脱気液体の排出口が他端側に形成されたハウジングに収納されてなる膜脱気モジュールであって、
前記気体流路形成部材は、前記封筒状脱気膜の少なくとも一方の内側面に前記供給口側から前記排出口側に向けて徐々に幅広になるテーパー状凸部が複数本並設された形状を有し、前記スパイラル状に巻回された封筒状脱気膜同士の間には、前記テーパー状凸部によって、被脱気液供給口側から排出口側に向け幅狭になるテーパー状溝の液体流路が形成され、該液体流路の流路断面積が前記供給口側から排出口側に向けて下記式を満足することを特徴とする膜脱気モジュール。
供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲である。
【請求項2】
周縁が封筒状に閉じられた2枚の脱気膜と、封筒状に閉じられた封筒状脱気膜の内側に形成され被脱気液体から脱気された気体の気体流路を形成する気体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の外側に前記被脱気液体の流路を形成する液体流路形成部材と、前記封筒状脱気膜の端部に前記気体流路に連通して設けられ前記被脱気液体から前記気体流路に脱気された気体を吸引除去する吸引管と、を備え、
前記吸引管を中心として前記封筒状脱気膜と液体流路形成部材を重ね合わせ、スパイラル状に巻回した状態で、被脱気液体の供給口が一端側に形成されると共に脱気された脱気液体の排出口が他端側に形成されたハウジングに収納されてなる膜脱気モジュールであって、
前記液体流路形成部材は、前記封筒状脱気膜の少なくとも一方の外側面に対し前記供給口側から前記排出口側に向けて徐々に幅広になるテーパー状凸部が複数本並設された形状を有し、前記スパイラル状に巻回された封筒状脱気膜と前記テーパー状凸部によって、被脱気液供給口側から排出口側に向け幅狭になるテーパー状溝の液体流路が形成され、該液体流路の流路断面積が前記供給口側から排出口側に向けて下記式を満足することを特徴とする膜脱気モジュール。
供給口側の流路断面積をAとし、排出口側の流路断面積をBとしたときに、式(B/A)×100が40%以上80%以下の範囲である。
【請求項3】
前記気体流路形成部材のテーパー状凸部が複数本、等間隔で配置されていることを特徴とする請求項1の膜脱気モジュール。
【請求項4】
前記液体流路形成部材のテーパー状凸部が複数本、等間隔で配置されていることを特徴とする請求項2の膜脱気モジュール。
【請求項5】
前記液体流路の供給口側の流路断面積Aは0.01mm2〜5mm2の範囲であると共に、排出口側の流路断面積Bは0.005mm2〜4mm2の範囲であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1に記載の膜脱気モジュール。
【請求項6】
前記脱気膜全体の表面積は、前記テーパー状凸部全体の表面積よりも4%以上10%以下の範囲で大きいことを特徴とする請求項1〜5の何れかに1に記載の膜脱気モジュール。
【請求項7】
前記並設された複数本の液体流路において、前記供給口側のピッチ幅が、0.25mm以上6mm以下であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1に記載の膜脱気モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−51933(P2010−51933A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222776(P2008−222776)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】