説明

膜蒸留装置

【課題】膜蒸留装置のスタック内の圧力差により膜が枠から剥がれたとしても、ポート孔において溶液と溶媒が混ざるのを防止する。
【解決手段】スタック2の積層方向から見て、スタックの外側にポート部71〜76を設ける。スタック2の枠30の所定箇所に、隣接する枠10,20の前記箇所よりも延び出す延出枠部35を形成する。膜40,50の所定箇所に、隣接する枠10,20の前記箇所よりも延び出す延出膜部45,55を形成する。延出膜部45,55を延出枠部35に被せ、連通路75bを画成する。ポート孔75aを連通路75bを介して枠の内部39に連ねる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海水等の溶液から溶媒を膜蒸留法(MD;Membrane Distillation法)にて蒸留して取り出す膜蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ギャップ式の膜蒸留装置は、2種類の膜と3つ以上の枠を積層したスタックにて構成されている(特許文献1等参照)。2種類の膜の一方は、気体も液体も通さない不透過膜であり、もう片方は気体を通すが液体を通さない蒸留膜である。2つの枠の間に1つの膜が挟まれている。
【0003】
各枠の内部は、抽出対象の溶液を通す一次液路、熱源にて加温後の上記溶液を通す二次液路、又は溶媒が抽出される抽出室の何れかを構成する。不透過膜によって一次液路と抽出室が仕切られている。蒸留膜によって抽出室と二次液路が仕切られている。
【0004】
上記スタックの端部には、各枠及び各膜を貫く貫通孔状のポート孔が6つ形成されている。各ポート孔が、一次液路の入口又は出口、二次液路の入口又は出口、抽出室の取出口又はガス抜き口の何れかを構成している。
【0005】
枠の内縁には、外縁へ向かって凹む凹部が形成されている。この凹部が、1つのポート孔と交差して該ポート孔と一体に連なっている。上記凹部における枠の厚さ方向(すなわちスタックの積層方向)の両側には、膜が被さり、更に該膜を介して隣の枠が被さっている。これら膜及び隣の枠の上記凹部に被さる部分を上記1つのポート孔が貫通している。
【0006】
また、不透過膜を省略したダイレクト式の膜蒸留装置も知られている(特許文献2等参照)。ダイレクト式の膜蒸留装置では、一次液路が抽出室を兼ねている。一次液路(ないしは抽出室)に液体溶媒を流し、二次液路に溶液を流し、これら液路を蒸留膜にて仕切る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−197205号公報
【特許文献2】特開昭60−118205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
各枠内の圧力は互いに同じでない。特に、一次液路の流れ方向と二次液路の流れ方向は、通常、互いに対向流であるため、圧力差が生じやすい。この圧力差によって、膜の上記凹部に被さる部分が、上記隣の枠から剥がれることがある。そうすると、上記隣の枠内の流体が上記剥がれた部分を通って、上記凹部と交差する1つのポート孔に漏れてしまう。特に、上記ポート孔が抽出室(ダイレクト式においては抽出室を兼ねる一次液路)の取出口を構成している場合、隣の枠内の海水等の溶液が漏れて、抽出室からの溶媒と混ざってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、溶液の溶媒を膜蒸留にて抽出する膜蒸留装置であって、
膜蒸留のための膜を枠を挟んで積層してなるスタックと、
前記抽出した溶媒又は前記溶液を通すポート孔を有し、前記積層の方向から見て前記スタックの外側に配置されたポート部と、を備え、
少なくとも1つの枠の前記ポート部に対応する箇所には、隣接する枠の前記箇所よりも前記ポート部の側へ延び出て前記ポート部の一部を構成する延出枠部が形成され、
上記1つの枠と上記隣接する枠との間に挟まれた膜の外周部の前記箇所には、前記隣接する枠の前記箇所よりも前記ポート部の側へ延び出て前記ポート部の一部を構成する延出膜部が形成され、前記延出膜部が前記延出枠部に被さり、
前記延出枠部の内縁及び前記延出膜部によって、前記ポート孔を前記スタックにおける前記1つの枠の内部に連ねる連通路が画成されていることを特徴とする。
【0010】
前記スタック内に大きな圧力差が生じる等により、膜が前記隣接する枠から剥がれたとしても、前記剥がれた部分(前記隣接する枠と膜との間の隙間)が前記ポート孔に連通しないようにできる。したがって、前記隣接する枠の内部の溶液(又は溶媒)が前記剥がれた部分から漏れても、前記ポート孔を通る溶媒(又は溶液)と混ざるのを回避できる。
【0011】
前記ポート部が、前記延出枠部と協同して前記延出膜部を挟持する枠外ピースを含み、前記隣接する枠と前記枠外ピースとの間に隙間が形成されていることが好ましい。
これにより、前記漏出した溶液(又は溶媒)を前記隙間から排出でき、前記ポート孔を通る溶媒(又は溶液)との混合を確実に回避できる。
【0012】
前記隙間が、外部に開放されていることが好ましい。
これにより、前記漏出した溶液又は溶媒を前記隙間から外部に排出できる。
【0013】
前記スタックが、前記積層の方向と直交する幅方向をほぼ上下方向(ほぼ鉛直)に向けて配置され、前記ポート部が、前記スタックの前記積層方向及び幅方向と直交する方向の外側に配置され、前記隙間の少なくとも下端部が外部に開放されていることが好ましい。
これにより、前記漏出した溶液又は溶媒を前記隙間を伝って下方へ流し、前記隙間の下端から外部へ排出できる。
【0014】
前記ポート孔が、前記延出膜部を貫通して前記連通路に連なっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スタック内の圧力差等によって膜が枠から剥がれたとしても、ポート孔において溶液と溶媒が混ざるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るギャップ式の膜蒸留装置の正面図である。
【図2】上記膜蒸留装置の第1枠の正面図である。
【図3】上記膜蒸留装置の第2枠の正面図である。
【図4】上記膜蒸留装置の第3枠の正面図である。
【図5】上記膜蒸留装置の不透過膜の正面図である。
【図6】上記膜蒸留装置の蒸留膜の正面図である。
【図7】上記膜蒸留装置の裏側の外壁の正面図である。
【図8】図1のVIII−VIII線に沿う上記膜蒸留装置の断面図である。
【図9】図1のIX−IX線に沿う上記膜蒸留装置の断面図である。
【図10】図1のX−X線に沿う上記膜蒸留装置の断面図である。
【図11】上記膜蒸留装置のスタックに内圧差が生じた状態を、図9の一部分を拡大して示す断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係るダイレクト式の膜蒸留装置の正面図である。
【図13】上記ダイレクト式の膜蒸留装置の第1補助枠の正面図である。
【図14】上記ダイレクト式の膜蒸留装置の蒸留膜の正面図である。
【図15】図12のXV−XV線に沿う上記ダイレクト式膜蒸留装置の断面図である。
【図16】図12のXVI−XVI線に沿う上記ダイレクト式膜蒸留装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1〜図10は、例えば海水(溶液)から淡水(溶媒)を抽出するギャップ式の膜蒸留装置1を示したものである。図1に示すように、膜蒸留装置1は、スタック2と、ポート部71〜76を備えている。スタック2は、長手方向を左右に向け、幅方向を上下に向けた大略直方体形状になっている。図8〜図10に示すように、スタック2は、第1〜第3の枠10,20,30と、膜蒸留のための2種類の膜40,50と、一対の外壁60,69を含む。
【0018】
枠10,20,30は、海水等の溶液に対し耐腐蝕性を有していることが好ましく、ここではパッキン用のゴム材にて構成されているが、これに限られず、樹脂、その他の材料にて構成されていてもよい。各枠10,20,30の厚さは、例えば5mm程度である。(図8〜図10において、枠10,20,30の厚さは誇張されている。)
【0019】
第1枠10の枠内が、一次液路19になっている。第2枠20の枠内が、二次液路29になっている。第3枠30の枠内が、抽出室39になっている。図示は省略するが、各枠10,20,30の枠内には、網材が収容されている。網材の網目が、上記路又は室19,29,39になっている、
【0020】
不透過膜40は、気体も液体も通さず、かつ良好な伝熱性を有する。不透過膜40は、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂フィルムにて構成されているが、その他の材料からなるフィルムにて構成されていてもよい。
【0021】
蒸留膜50は、例えば多孔質の膜で構成され、気体の透過を許容し、液体の透過を阻止する。蒸留膜50の材料としては、例えばPVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0022】
図8〜図10に示すように、これらスタック要素10〜50が、第1枠10、不透過膜40、第3枠30、蒸留膜50、第2枠20、蒸留膜50、第3枠30、不透過膜40、第1枠10…の順に積層されている。隣り合う2つの枠どうしの間に1つの膜40,50が配置されている。該膜40,50の周縁部が上記2つの枠にて挟持されている。膜40,50の周縁部が、その両隣の枠10,20,30に接着剤9(図11参照)にて接着されている。接着剤9としてエポキシ系接着剤等が挙げられる。膜40,50にコロナ処理等の表面処理を施したうえで、接着剤9を塗布することが好ましい。これにより、接着強度を増すことができる。接着に代えて、熱融着でもよい。
【0023】
各枠10,20,30内に収容された網材によって、隣接する膜40,50どうし間の間隔が維持されている。不透過膜40によって一次液路19と溶媒抽出室39が仕切られている。蒸留膜50によって、二次液路29と溶媒抽出室39が仕切られている。
【0024】
スタック2の積層方向の両外側には、それぞれ第1枠10(すなわち一次液路19)が配置され、更にその外側に外壁60,69が配置されている。外壁60,69は、海水等の溶液に対し耐腐蝕性を有していることが好ましく、ここでは樹脂にて構成されているが、その他の材料にて構成されていてもよい。
【0025】
膜蒸留装置1のポート構造を説明する。
図1に示すように、膜蒸留装置1には6つのポート部71〜76が設けられている。ポート部71〜76は、スタック2の積層方向から見てスタック2の外側に配置されている。ここでは、ポート部71〜76は、スタック2の長手方向の両端部(周端部)の外側に配置されている。
【0026】
図1に示すように、第1ポート部71は、スタック2の右下の外側に配置されている。図8に示すように、第1ポート部71は、第1端子710及び第1枠外ピース711を含む。端子710は、表側の外壁60に設けられている。抽出対象の海水(溶液)の供給路81が、端子710に連なっている。枠外ピース711は、スタック2の右端面から縁切りされている。枠20,30の右下部(ポート部71と対応する箇所)と枠外ピース711との間には、隙間71gが形成されている。隙間71gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の両端部は、外部に開放されている。第1ポート部71の内部には、ポート孔71aが形成されている。ポート孔71aは、端子710からスタック2の積層方向に沿って延び、枠外ピース711を貫通している。ポート孔71aと各一次液路19とが、第1連通路71bを介して連通されている。
【0027】
図1に示すように、第2ポート部72は、第1ポート部71と対角をなすよう、スタック2の左上の外側に配置されている。図10に示すように、第2ポート部72は、第2端子720及び第2枠外ピース721を含む。枠外ピース721は、スタック2の左端面から縁切りされている。枠20,30の左上部(ポート部72と対応する箇所)と枠外ピース721との間には隙間72gが形成されている。隙間72gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の両端部は、外部に開放されている。第2ポート部72の内部には、ポート孔72aが形成されている。ポート孔72aは、スタック2の積層方向に沿って延び、枠外ピース721を貫通している。各一次液路19とポート孔72aとが、第2連通路72bを介して連通されている。端子720は、表側の外壁60に設けられている。ポート孔72aが端子720に接続されている。端子720から加熱往路82が熱源(図示せず)へ向けて延びている。熱源は、太陽熱集熱器でもよく、エンジン等の排熱の回収部でもよく、電熱ヒータでもよい。
【0028】
図1に示すように、第3ポート部73は、スタック2の左下の外側に配置されている。図8に示すように、第3ポート部73は、第3端子730及び第3枠外ピース731,732を含む。枠外ピース731,732は、スタック2の左端面から縁切りされている。枠10,30の左下部(ポート部73と対応する箇所)と枠外ピース731,732との間には、それぞれ隙間73gが形成されている。隙間73gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の端部は、外部に開放されている。枠外ピース731の表側面に端子730が設けられている。熱源からの加熱復路83が端子730に連なっている。第3ポート部73の内部には、ポート孔73aが形成されている。ポート孔73aは、端子730からスタック2の積層方向に沿って延び、枠外ピース731,732を貫通している。ポート孔73aと二次液路29とが、第3連通路73bを介して連通されている。
【0029】
図1に示すように、第4ポート部74は、第3ポート部73と対角をなすよう、スタック2の右上の外側に配置されている。図10に示すように、第4ポート部74は、第4端子740及び第4枠外ピース741,742を含む。枠外ピース741,742は、スタック2の右端面から縁切りされている。枠10,30の右上部(ポート部74と対応する箇所)と枠外ピース741,742との間には、それぞれ隙間74gが形成されている。隙間74gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の端部は、外部に開放されている。第4ポート部74の内部には、ポート孔74aが形成されている。ポート孔74aは、スタック2の積層方向に沿って延び、枠外ピース741,742を貫通している。二次液路29とポート孔74aとが、第4連通路74bを介して連通されている。枠外ピース741の表側面に端子740が設けられている。ポート孔74aが端子740に接続されている。端子740から海水の排出路84が延びている。
【0030】
図1に示すように、第5ポート部75は、スタック2の右端部の中央の外側に配置されている。図9に示すように、第5ポート部75は、第5端子750及び第5枠外ピース751,752,753を含む。枠外ピース751,752,753は、スタック2の右端面から縁切りされている。枠10,20の右側の中央部(ポート部74と対応する箇所)と枠外ピース751,752,753との間には、それぞれ隙間75gが形成されている。隙間75gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の端部は、外部に開放されている。。第5ポート部75の内部には、ポート孔75aが形成されている。ポート孔75aは、枠外ピース751,752,753を貫通し、スタック2の積層方向に沿って延びている。各抽出室39とポート孔75aとが、第5連通路75bを介して連通されている。枠外ピース751の表側面に端子750が設けられている。ポート孔75aが端子750に接続されている。端子750から淡水(溶媒)の取り出し路85が延びている。
【0031】
図1に示すように、第6ポート部76は、スタック2の左端部の中央の外側に配置されている。図9に示すように、第6ポート部76は、第6端子760及び第6枠外ピース761,762,763を含む。枠外ピース761,762,763は、スタック2の左端面から縁切りされている。枠10,20の左側の中央部(ポート部74と対応する箇所)と枠外ピース761,762,763との間には、それぞれ隙間76gが形成されている。隙間76gの少なくとも上下方向(スタック幅方向)の端部は、外部に開放されている。。第6ポート部76の内部には、ポート孔76aが形成されている。ポート孔76aは、枠外ピース761,762,763を貫通し、スタック2の積層方向に沿って延びている。各抽出室39とポート孔76aとが、第6連通路76bを介して連通されている。枠外ピース761の表側面に端子760が設けられている。ポート孔76aが端子760に接続されている。第6ポート部76は、ガス抜き用であるが、淡水の取り出し用として用いてもよい。端子760から淡水(溶媒)の取り出し路が延びていてもよい。
【0032】
図1に示すように、スタック2の右外側のポート部71,75,74どうしは、スタック2の幅方向(上下)に互いに離れ、隣接するポート部間に隙間77が形成されている。スタック2の左外側のポート部73,76,72どうしは、スタック2の幅方向(上下)に互いに離れ、隣接するポート部間に隙間78が形成されている。
【0033】
更に、膜蒸留装置1においては、枠10,20,30、膜40,50、壁60,69の一部がポート部71〜76として提供されている。
詳述すると、図1に示すように、表側の外壁60には、2つの延出壁部61,62が設けられている。これら延出枠部11,12は、外壁60の互いに対角をなす位置に配置されている。第1延出壁部61は、外壁60におけるスタック2を構成する部分の右下の端部から右外側へ延び出している。延出壁部61を第1ポート孔71aが貫通している。第2延出壁部62は、外壁60におけるスタック2を構成する部分の左上の端部から左外側へ延び出している。延出壁部62を第2ポート孔72aが貫通している。
【0034】
図7に示すように、裏側の外壁69は、スタック2と6つのポート部71〜76を合わせた大きさの四角形の板形状になっている。
【0035】
図2に示すように、第1枠10には、コ字状をなす2つの延出枠部11,12が設けられている。これら延出枠部11,12は、第1枠10の互いに対角をなす位置に配置されている。第1延出枠部11は、第1枠10におけるスタック2を構成する部分の右下部(ポート部71と対応する箇所)から右外側へ延び出している。すなわち、図8に示すように、延出枠部11は、隣接する枠30の右下部(ポート部71と対応する箇所)よりもポート部71の側へ延び出ている。第1枠10の枠内空間が、延出枠部11の内部に延びている。
【0036】
図2に示すように、第2延出枠部12は、第1枠10におけるスタック2を構成する部分の左上部(ポート部72と対応する箇所)から左外側へ延び出している。すなわち、図10に示すように、延出枠部12は、隣接する枠30の左上部(ポート部72と対応する箇所)よりもポート部72の側へ延び出ている。第1枠10の枠内空間が、延出枠部12の内部に延びている。
【0037】
図3に示すように、第2枠20には、コ字状をなす2つの延出枠部23,24が設けられている。これら延出枠部23,24は、第2枠20の互いに対角をなす位置に配置されている。第3延出枠部23は、第2枠20におけるスタック2を構成する部分の左下部(ポート部73と対応する箇所)から左外側へ延び出している。すなわち、図8に示すように、延出枠部23は、隣接する枠30の左下部(ポート部73と対応する箇所)よりもポート部73の側へ延び出ている。第2枠20の枠内空間が、延出枠部23の内部に延びている。
【0038】
図3に示すように、第4延出枠部24は、第2枠20におけるスタック2を構成する部分の右上部(ポート部74と対応する箇所)から右外側へ延び出している。すなわち、図10に示すように、延出枠部24は、隣接する枠30の右上部(ポート部74と対応する箇所)よりもポート部74の側へ延び出ている。第2枠20の枠内空間が、延出枠部24の内部に延びている。
【0039】
図4に示すように、第3枠30には、コ字状をなす2つの延出枠部35,36が設けられている。第5延出枠部35は、第3枠30におけるスタック2を構成する部分の右端の中央(ポート部75と対応する箇所)から右外側へ延び出している。すなわち、図9に示すように、延出枠部35は、隣接する枠10,20の右端の中央(ポート部75と対応する箇所)よりもポート部75の側へ延び出ている。第3枠30の枠内空間が、延出枠部35の内部に延びている。
【0040】
図4に示すように、第6延出枠部36は、第3枠30におけるスタック2を構成する部分の左端の中央(ポート部76と対応する箇所)から左外側へ延び出している。すなわち、図9に示すように、延出枠部36は、隣接する枠10,20の左端の中央(ポート部76と対応する箇所)よりもポート部76の側へ延び出ている。第3枠30の枠内空間が、延出枠部36の内部に延びている。
【0041】
図5に示すように、不透過膜40には、4つの延出膜部41,42,45,46が設けられている。第1延出膜部41は、不透過膜40におけるスタック2を構成する部分の右下部(ポート部71と対応する箇所)から右外側へ延び出している。したがって、図8に示すように、延出膜部41は、隣接する第3枠30の右下部(ポート部71と対応する箇所)よりもポート部71の側へ延び出している。延出膜部41におけるスタック2と枠外ピース711との間の部分は、隙間71gに面している。第1ポート孔71aが延出膜部41の中央部を貫通している。
【0042】
図5に示すように、第2延出膜部42は、不透過膜40におけるスタック2を構成する部分の左上部から左外側へ延び出している。したがって、図10に示すように、延出膜部42は、隣接する第3枠30の左上部(ポート部72と対応する箇所)よりもポート部72の側へ延び出している。延出膜部42におけるスタック2と枠外ピース721との間の部分は、隙間72gに面している。第2ポート孔72aが延出膜部42の中央部を貫通している。
【0043】
図5に示すように、第5延出膜部45は、不透過膜40におけるスタック2を構成する部分の右端の中央から右外側へ延び出している。したがって、図9に示すように、延出膜部45は、隣接する第1枠10の右端の中央(ポート部75と対応する箇所)よりもポート部75の側へ延び出している。延出膜部45におけるスタック2と枠外ピース751,753との間の部分は、隙間75gに面している。第5ポート孔75aが延出膜部45の中央部を貫通している。
【0044】
図5に示すように、第6延出膜部46は、不透過膜40におけるスタック2を構成する部分の左端の中央から左外側へ延び出している。したがって、図9に示すように、延出膜部46は、隣接する第1枠10の左端の中央(ポート部76と対応する箇所)よりもポート部76の側へ延び出している。延出膜部46におけるスタック2と枠外ピース761,763との間の部分は、隙間76gに面している。第6ポート孔76aが延出膜部46の中央部を貫通している。
【0045】
図6に示すように、蒸留膜50には、4つの延出膜部53,54,55,56が設けられている。第3延出膜部53は、蒸留膜50におけるスタック2を構成する部分の左下部から左外側へ延び出している。したがって、図8に示すように、延出膜部53は、隣接する第3枠30の左下部(ポート部73と対応する箇所)よりもポート部73の側へ延び出している。延出膜部53におけるスタック2と枠外ピース731,732との間の部分は、隙間73gに面している。第3ポート孔73aが延出膜部53の中央部を貫通している。
【0046】
図6に示すように、第4延出膜部54は、蒸留膜50におけるスタック2を構成する部分の右上部から右外側へ延び出している。したがって、図10に示すように、延出膜部54は、隣接する第3枠30の右上部(ポート部74と対応する箇所)よりもポート部74の側へ延び出している。延出膜部54におけるスタック2と枠外ピース741,742との間の部分は、隙間74gに面している。第4ポート孔74aが延出膜部54の中央部を貫通している。
【0047】
図6に示すように、第5延出膜部55は、蒸留膜50におけるスタック2を構成する部分の右端の中央から右外側へ延び出している。したがって、図9に示すように、延出膜部55は、隣接する第2枠20の右端の中央(ポート部75と対応する箇所)よりもポート部75の側へ延び出している。延出膜部55におけるスタック2と枠外ピース752との間の部分は、隙間75gに面している。第5ポート孔75aが延出膜部55の中央部を貫通している。
【0048】
図6に示すように、第6延出膜部56は、蒸留膜50におけるスタック2を構成する部分の左端の中央から左外側へ延び出している。したがって、図9に示すように、延出膜部56は、隣接する第2枠20の左端の中央(ポート部76と対応する箇所)よりもポート部76の側へ延び出している。延出膜部56におけるスタック2と枠外ピース762との間の部分は、隙間76gに面している。第6ポート孔76aが延出膜部56の中央部を貫通している。
【0049】
図8に示すように、第1延出枠部11と延出膜部41と延出壁部61とは、それぞれ第1ポート部71の一部を構成している。延出枠部11の片面に延出膜部41が被さり、接着されている。延出枠部11の反対側の面に延出壁部61(又は外壁69)が被さっている。これにより、延出枠部11の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔71aが、延出膜部41及び延出壁部61の上記延出枠部11に被さる部分を貫通して延出枠部11の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部11の枠内空間が、第1枠10におけるスタック2を構成する部分の枠内空間19に一体に連なり、上記連通路71bを構成している。すなわち、延出枠部11の内縁並びに延出膜部41及び延出壁部61(又は外壁69)によって、上記連通路71bが画成されている。
【0050】
枠外ピース711が、延出枠部11と協同して延出膜部41を挟持している。更に、枠外ピース711は、2つの延出膜部41どうしの間を埋めるスペーサになっている。
【0051】
図10に示すように、第2延出枠部12と延出膜部42と延出壁部62とは、それぞれ第2ポート部72の一部を構成している。延出枠部12の片面に延出膜部42が被さり、接着されている。延出枠部12の反対側の面に延出壁部62(又は外壁69)が被さっている。これにより、延出枠部12の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔72aが、延出膜部42及び延出壁部62の上記延出枠部12に被さる部分を貫通して延出枠部12の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部12の枠内空間が、第1枠10におけるスタック2を構成する部分の枠内空間19に一体に連なり、上記連通路72bを構成している。すなわち、延出枠部12の内縁並びに延出膜部42及び延出壁部62(又は外壁69)によって、上記連通路72bが画成されている。
【0052】
枠外ピース721が、延出枠部12と協同して延出膜部42を挟持している。更に、枠外ピース721は、2つの延出膜部42どうしの間を埋めるスペーサになっている。
【0053】
図8に示すように、第3延出枠部23と延出膜部53とは、それぞれ第3ポート部73の一部を構成している。延出枠部23の両側面にそれぞれ延出膜部53が被さり、接着されている。これにより、延出枠部23の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔73aが、延出膜部53の上記延出枠部23に被さる部分を貫通して延出枠部23の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部23の枠内空間が、第2枠20におけるスタック2を構成する部分の枠内空間29に一体に連なり、上記連通路73bを構成している。すなわち、延出枠部23の内縁及び延出膜部53によって、上記連通路73bが画成されている。
【0054】
枠外ピース731,732は、延出枠部23と協同して延出膜部53を挟持している。更に、枠外ピース732は、裏側の外壁69と延出膜部53の間を埋めるスペーサになっている。
【0055】
図10に示すように、第4延出枠部24と延出膜部54とは、それぞれ第4ポート部74の一部を構成している。延出枠部24の両側面にそれぞれ延出膜部54が被さり、接着されている。これにより、延出枠部24の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔74aが、延出膜部54の上記延出枠部24に被さる部分を貫通して延出枠部24の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部24の枠内空間が、第2枠20におけるスタック2を構成する部分の枠内空間29に一体に連なり、上記連通路74bを構成している。すなわち、延出枠部24の内縁及び延出膜部54によって、上記連通路74bが画成されている。
【0056】
枠外ピース741,742は、延出枠部24と協同して延出膜部54を挟持している。さらに、枠外ピース742は、裏側の外壁69と延出膜部54の間を埋めるスペーサになっている。
【0057】
図9に示すように、第5延出枠部35と延出膜部45,55とは、それぞれ第5ポート部75の一部を構成している。図11に拡大して示すように、延出枠部35の両側面に延出膜部45,55が被さり、接着剤9にて接着されている。これにより、延出枠部35の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔75aが、各延出膜部45,55の上記延出枠部35に被さる部分を貫通して延出枠部35の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部35の枠内空間が、第3枠30におけるスタック2を構成する部分の枠内空間39に一体に連なり、上記連通路75bを構成している。すなわち、延出枠部35の内縁及び延出膜部45,55によって、上記連通路75bが画成されている。
【0058】
枠外ピース751,752,753は、隣接する延出枠部35と協同して、両者の間の延出膜部45,55を挟持している。枠外ピース752は、隣接する延出膜部55どうしの間を埋めるスペーサになっている。枠外ピース753は、裏側の外壁69と延出膜部45の間を埋めるスペーサになっている。
【0059】
図9に示すように、第6延出枠部36と延出膜部46,56とは、それぞれ第6ポート部76の一部を構成している。延出枠部36の両側面に延出膜部46,56が被さり、接着されている。これにより、延出枠部36の枠内空間の厚さ方向の両側が塞がれている。ポート孔76aが、各延出膜部46,56の上記延出枠部36に被さる部分を貫通して延出枠部36の枠内空間と交差するように連通している。この延出枠部36の枠内空間が、第3枠30におけるスタック2を構成する部分の枠内空間39に一体に連なり、上記連通路76bを構成している。すなわち、延出枠部36の内縁及び延出膜部46,56によって、上記連通路76bが画成されている。
【0060】
枠外ピース761,762,763は、隣接する延出枠部36と協同して、両者の間の延出膜部46,56を挟持している。枠外ピース762は、隣接する延出膜部56どうしの間を埋めるスペーサになっている。枠外ピース763は、裏側の外壁69と延出膜部46の間を埋めるスペーサになっている。
【0061】
上記構成の膜蒸留装置1の作用を説明する。
海水が供給路81を経て、第1ポート部71の端子710に供給される。この海水が、ポート孔71aから各連通路71bに分配される。そして、連通路71bからスタック2の一次液路19に導入され、一次液路19内を流通する。このとき、海水は、後述する水蒸気(溶媒)の凝縮熱により加温される。その後、海水は、第2ポート部72の各連通路72bを経てポート孔72aに集められ、端子720から導出される。そして、加熱往路82を経て、熱源によって更に加温される。加温後の海水が、加熱復路83を経て、第3ポート部73の端子730に供給される。そして、ポート孔73aから連通路73bを通ってスタック2の二次液路29に導入され、二次液路29内を流通する。このとき、海水中の水蒸気(溶媒ガス)が、蒸留膜50を透過して抽出室39に入る。この水蒸気が、不透過膜40を介して一次液路19の海水にて冷却されて凝縮される。こうして海水(溶液)から淡水(溶媒)を抽出できる。抽出された淡水(溶媒)は、第5ポート部75の連通路75bを通り、ポート孔75aから端子750を経て、取り出し路85にて導出される。
二次液路29の淡水抽出済みの海水は、第4ポート部74の連通路74bを通り、ポート孔74aから端子740を経て、排出路84にて排出される。
抽出室39内のガスは、第6ポート部76の連通路76bを通り、ポート孔76aから端子760を経て排出される。第6ポート部76からも淡水(溶媒)を取り出すことにしてもよい。
【0062】
図11に示すように、スタック2内における例えば第5ポート部75の近くにおいて一次液路19の内圧が抽出室39の内圧より大きくなることがある。この内圧差が過度に大きくなると、図11の二点鎖線にて示すように、不透過膜40が、抽出室30の側に強く押されて、第1枠10の第5ポート部75側の端部から剥がれるおそれがある。すると、第1枠10の上記端部と不透過膜40との間に隙間e1が形成され、この隙間e1から一次液路19内の海水(溶媒)が漏れ出る。一方、隙間e1は、スタック2とポート部75との間の隙間75gを介して外部に連なる。したがって、上記の漏出海水は、隙間75gから外部に排出される。
【0063】
また、スタック2内の第5ポート部75の近くにおいて二次液路29の内圧が抽出室39の内圧より過度に大きくなった場合、図11の二点鎖線にて示すように、蒸留膜50が第2枠20の第5ポート部75側の端部から剥がれるおそれがある。すると、第2枠20の上記端部と蒸留膜50との間に隙間e2が形成され、この隙間e2から二次液路29内の濃縮海水(溶媒)が漏れ出る。この漏出海水は、隙間75gから外部に排出される。
よって、漏出海水が、ポート孔75a内に侵入することはなく、取り出し路85に導出される淡水(溶媒)に海水(溶液)が混ざるのを防止することができる。
【0064】
同様に、スタック2における他のポート部71〜74,76の近くにおいても、内圧差によって膜40,50が隣接する枠10〜30から剥がれ、隣接する路又は室19,29,39の海水(溶液)又は淡水(溶媒)が漏れたとしても、上記漏れた海水又は淡水がスタック2と当該ポート部71〜74,76との間の隙間71g〜74g,76gから外部へ排出されるようにすることができる。よって、当該ポート部のポート孔71a〜74a,76aにおいて海水(溶液)と淡水(溶媒)が混合されるのを防止できる。
【0065】
スタック2の幅方向が上下に向けられ、隙間71g〜76gが上下に延びて下端が開放されているため、上記漏出海水(又は淡水)は、隙間71g〜76g内を下方へ伝わり、隙間71g〜76gの下端から排出される。よって、隙間71g〜76g内に漏出海水(又は淡水)が溜まるのを防止できる。
【0066】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する内容については、同一符号を付して説明を簡略化する。
図12〜図16は、ダイレクト式の膜蒸留装置1Aを示したものである。図15及び図16に示すように、膜蒸留装置1Aでは、第3枠30及び不透過膜40が省略されている。第1枠10内の一次液路19が抽出室39を兼ねている。
【0067】
図12に示すように、膜蒸留装置1Aには、幅方向の中央のポート部75,76が設けられていない。
図14に示すように、膜50には、幅方向の中央の延出膜部55,56が形成されていない。
【0068】
図15及び図16に示すように、蒸留膜50が第1枠10と第2枠20の間に挟まれている。更に、第1枠10と蒸留膜50との間には、第1補助枠10Aが介在されている。第1補助枠10Aの厚さは、第1枠10より十分に小さい。第1補助枠10Aは、枠10,20と同様のゴム材にて構成されていてもよく、第1実施形態の不透過膜40と同じ膜材料にて構成されていてもよく、樹脂にて構成されていもよい。図13に示すように、第1補助枠10Aは、第1枠10と同じ外周形状及び一次液路19となる枠内空間を有し、第1枠10に重ねられている。第1補助枠10Aの外周の互いに対角をなす位置に延出部11A,12Aが形成されている。第1延出部11Aは、ポート部71に対応する位置に配置されている。第1延出部11Aを第1ポート孔71aが貫通している。第2延出部12Aは、ポート部72に対応する位置に配置されている。第2延出部12Aを第2ポート孔72aが貫通している。第1補助枠10Aの枠内空間19は、上記延出部11A,12Aの内部には及んでいない。
【0069】
図15に示すように、第1延出部11Aが第1延出枠部11と枠外ピース711との間に挟まれている。第1延出部11Aによって、連通路71bの枠外ピース711側の開口が塞がれている。
【0070】
図16に示すように、第2延出部12Aが第2延出枠部12と枠外ピース721との間に挟まれている。第2延出部12Aによって、連通路72bの枠外ピース721側の開口が塞がれている。
【0071】
図12及び図15に示すように、淡水往路81Aが第1ポート部71の端子710に接続されている。図12及び図16に示すように、第2ポート部72の端子720から淡水復路82Aが引き出されいる。したがって、一次液路19には淡水(液体溶媒)が通される。図示は省略するが、淡水復路82Aは、淡水往路81Aの基端部に接続されている。淡水往路81Aと一次液路19と淡水復路路82Aとにより、淡水(液体溶媒)の循環路が構成されている。往復路81A又は82Aから淡水取り出し路が分岐されている。
【0072】
図12及び図15に示すように、熱源(図示せず)からの海水往路83Aが第3ポート部73の端子730に接続されている。図12及び図16に示すように、第4ポート部74の端子740から海水復路84Aが引き出されている。図示は省略するが、海水復路84Aには海水補充路が合流している。合流後の海水復路84Aが上記熱源に熱的に接続されている。海水往路83Aと二次液路29と海水復路84Aとにより、海水(溶液)の循環路が構成されている。
【0073】
ダイレクト式の膜蒸留装置1Aは、次のように作動する。
淡水(液体溶媒)が、往路81Aから第1ポート部71の端子710に導入され、ポート孔71a及び連通路71bを経て、一次液路19を流れる。また、熱源にて加温後の溶液が、往路83Aから第3ポート部73の端子730に導入され、ポート孔73a及び連通路73bを経て、二次液路29を流れる。この海水中の水蒸気(溶媒蒸気)が、蒸留膜50を透過し、一次液路19の淡水に混入する。したがって、一次液路19の下流に向かうにしたがって、淡水流量が増大する。二次液路29の下流に向かうにしたがって、海水の流量が減少する。
【0074】
一次液路19の淡水は、連通路72b及びポート孔72aを経て、端子720から復路82Aに導出される。上記増量分の淡水が、淡水取り出し路から取り出される。残りの淡水は、往路81Aにてスタック2へ送られる。したがって、淡水が、往復路81A,82Aとスタック2の間を循環する。
【0075】
二次液路29の海水は、連通路74b及びポート孔74aを経て、端子740から復路84Aに導出される。上記減量分の海水が、海水補充路から復路84Aに補充される。補充後の海水が熱源にて加熱されたうえで、往路83Aにてスタック2へ送られる。したがって、海水が、往復路83A,84Aとスタック2の間を循環する。
【0076】
第2実施形態において、スタック2内の圧力差等により、膜50が隣接する枠10A又は20から剥がれたとしても、その剥がれた部分がポート孔71a〜74aに直接連通しないようにでき、ポート部71〜74において、淡水(溶媒)と海水(溶液)が混ざるのを回避できるる点は、第1実施形態と同様である。
【0077】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、延出枠部は、少なくとも1つの枠に設けられていればよく、スタック2の外置きのポート部は、少なくとも1つあればよい。残りのポート部は、スタック2の内部に設けられていてもよい。少なくとも淡水(溶媒)の取り出し用のポート部75がスタック2の外部に設けられていることが好ましい。
スタック2の配置は実施形態のものに限られず、スタック2の幅方向を鉛直に対して斜めに傾けて配置してもよい。或いは、スタック2の長手方向をほぼ上下に向けて配置してもよい。スタック2をほぼ水平に配置してもよい。
スタック2の枠10〜30、膜40,50の数ひいては路又は室19,29,39の数は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、積層数を更に増やしてもよく、減らしてもよい。ギャップ式装置1においては、膜40,50はそれぞれ少なくとも1つ、枠は少なくとも3つあればよい。そして、積層数の多寡に拘わらず、一次液路19と二次液路29の間に抽出室39が挟まれるように配置するのが好ましく、積層方向の両外側には一次液路19を配置するのが好ましく、一次液路19の両側には抽出室39を配置するのが好ましく(ただし、上記両外側の一次液路19の一側には外壁60,69を配置する。)、二次液路29の両側には抽出室39を配置するのが好ましい。ダイレクト式装置1Aにおいては、膜50は少なくとも1つ、枠は少なくとも2つあればよい。
抽出対象の溶液は、海水に限られず、塩水、泥水、汚水、灌水等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば海水から淡水を取り出す淡水化装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1,1A 膜蒸留装置
2 スタック
10 第1枠
10A 第1補助枠
11,12 延出枠部
11A,12A 延出部
19 一次液路(枠の内部)
20 第2枠
23,24 延出枠部
29 二次液路
30 第3枠
35,36 延出枠部
39 抽出室
40 不透過膜(膜蒸留のための膜)
41,42,45,46 延出膜部
50 蒸留膜(膜蒸留のための膜)
53,54,55,56 延出膜部
60 表側外壁
61,62 延出壁部
69 裏側外壁
71,72,73,74,75,76 ポート部
710,720,730,740,750,760 端子
711,721,731,732,741,742 枠外ピース
751,752,753,761,762,763 枠外ピース
71a,72a,73a,74a,75a,76a ポート孔
71b,72b,73b,74b,75b,76b 連通路
71g,72g,73g,74g,75g,76g 隙間
77,78 隙間
81 海水供給路
82 加熱往路
83 加熱復路
84 海水排出路
85 淡水取り出し路
81A 淡水往路
82A 淡水復路
83A 海水往路
83A 海水復路
e1,e2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液の溶媒を膜蒸留にて抽出する膜蒸留装置であって、
膜蒸留のための膜を枠を挟んで積層してなるスタックと、
前記抽出した溶媒又は前記溶液を通すポート孔を有し、前記積層の方向から見て前記スタックの外側に配置されたポート部と、を備え、
少なくとも1つの枠の前記ポート部に対応する箇所には、隣接する枠の前記箇所よりも前記ポート部の側へ延び出て前記ポート部の一部を構成する延出枠部が形成され、
上記1つの枠と上記隣接する枠との間に挟まれた膜の外周部の前記箇所には、前記隣接する枠の前記箇所よりも前記ポート部の側へ延び出て前記ポート部の一部を構成する延出膜部が形成され、前記延出膜部が前記延出枠部に被さり、
前記延出枠部の内縁及び前記延出膜部によって、前記ポート孔を前記スタックにおける前記1つの枠の内部に連ねる連通路が画成されていることを特徴とする膜蒸留装置。
【請求項2】
前記ポート部が、前記延出枠部と協同して前記延出膜部を挟持する枠外ピースを含み、前記隣接する枠と前記枠外ピースとの間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の膜蒸留装置。
【請求項3】
前記隙間が、外部に開放されていることを特徴とする請求項2に記載の膜蒸留装置。
【請求項4】
前記スタックが、前記積層の方向と直交する幅方向をほぼ上下方向に向けて配置され、前記ポート部が、前記スタックの前記積層方向及び幅方向と直交する方向の外側に配置され、前記隙間の少なくとも下端部が外部に開放されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の膜蒸留装置。
【請求項5】
前記ポート孔が、前記延出膜部を貫通して前記連通路に連なっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の膜蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−173095(P2011−173095A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40764(P2010−40764)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】