説明

膜間差圧制御を備えた膜装置および使用方法

原料を供給液端面で受け入れ、原料を透過液と保持液とに分離するクロスフロー膜装置。本装置は、多孔質材料から成る少なくとも1つのモノリスを含む膜支持体を有し、該モノリスは、モノリスの供給液端面からモノリスの保持液端面までの長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が該複数の通路を通って流れて、装置から保持液を通過させる。多孔質材料の細孔径よりも微細な細孔径の選択透過性膜被覆が、モノリスの通路壁面に施される。少なくとも1つの透過液導管がモノリス内に形成され、導管は、供給液端面またはその付近で透過液を導入し、保持液端面またはその付近で透過液を取出す手段と連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む。透過液は、供給液および保持液から分離され、透過液の一部は、透過液導管を介して透過液の一部を循環し、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を生成し、装置の長さに沿って膜間差圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、供給液端面で原料を受け入れ原料を透過液と保持液とに分離する、改良されたクロスフロー膜装置に関する。本装置は、複数の通路を規定する多孔質材から成る少なくとも1つのモノリスを含む膜支持体を含み、該通路は、モノリスの供給液端面からモノリスの保持液端面まで長手方向に延びている。少なくとも1つの透過液導管がモノリス内に形成され、該導管は、供給液端面またはその付近で透過液導入手段と、保持液端面またはその付近で透過液取出し手段とに連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む。透過液は供給液および保持液から分離され、透過液の一部は、原料流とクロスフローの透過液導管を通って循環し、装置の長さに沿った膜間差圧を制御する。
【0002】
発明の背景
クロスフロー精密ろ過および限外ろ過については、膜モジュールの長さに沿って均一な膜間差圧を維持することが有利であると、一般に認識されている。このような膜モジュールに対しては、原料は、モジュールの供給液端部からモジュールの保持液端部まで循環される。相対的に高いクロスフロー速度は、時間とともに高くかつ相対的に安定した膜流束を維持することができるように、膜表面で保持される供給液成分の濃度分極を最小にするように設計されている。この高クロスフロー速度は、結果として、モジュールの供給液端部から保持液端部までの圧力低下も引き起こす。この圧力低下は、クロスフロー速度、流体速度および膜供給液チャネルの水力直径および長さに依存して、膜モジュールに対しては、2バール〜4バール以上にもなり得る。特に、精密ろ過に対しては、1バール未満の膜間差圧(TMP)で望ましくは作動してもよい。このことは、第一に、濃度分極およびこれに伴う膜汚染を最小にすることによって、相対的に安定した流束を維持するために望ましい。第二に、低TMPでの作動は、膜細孔のプラギングを最小限に抑える。第三に、用途によっては、分極層(高TMPで強められた)は、ダイナミック膜となり、透過液流で除去されることが所望される供給液種を保持する。供給液から保持液への圧力低下、膜モジュールに沿って、たとえば5バールから2バールへの圧力低下および1バールの透過圧レベルに対しては、TMPは、モジュール入口で4バールから、保持液出口で1バールに減少するであろう。一定のTMP、たとえば、1バールで膜モジュールを作動することが好ましく、これが、特定の膜構造のための本発明の目的である。
【0003】
膜モジュールの供給液端部から、保持液端部までのTMPを均一にする一手段は、透過液回収ハウジングに収納された膜要素の外側に沿って並流中で透過液を循環させることである。流れる透過液に対する圧力低下は、供給液から保持液への圧力低下に一致するように制御可能であり、その結果、膜要素の長さに沿って、制御可能な実質的に一定のTMPをもたらす。この手段は、Alfa-Laval ABに譲渡された米国特許第4105547号明細書においてSandblomによって開示されている。Alfa-Lavalに譲渡されたその後の特許(Holmら、米国特許第4901362号明細書)は、さらに、ハウジング内の非常に多数の膜要素の周囲の透過液空間への粒状充填剤の追加を含んでいる。この充填剤は、透過液流のための透過液空洞において、抵抗の増大を生み出す働きをした。これによって、モジュールにおいて、ほぼ一定のTMPを達成させるために必要な透過液流量を減少させ、透過液循環流量を減少させ、結果として生じる機器の寸法を小さくし、費用を低減することによってシステムを簡素化し、さらにまた、電力消費を低減した。
【0004】
必要な透過液循環流量を低減するために多要素膜モジュールの透過液空洞を充填することの代替案は、Osterlandらによって、米国特許第5906739号明細書によって特許化されている。この特許では、個々の透過液回収管内の個々の膜要素を包み込み、膜要素と透過液管との間に小さな環状空間を生成する手段が開示されている。この並流の透過液流において、所望の圧力低下を生じさせるために必要なこのような環状部を通る透過液流量は、Holmによって開示された流量制限なしにハウジングにのみ収納された非常に多数の膜要素を有する膜装置におけるものよりも減少される。
【0005】
一般に、上記の技術は、管状および多チャネル構造の両方における膜要素に適用可能である。しかしながら、後者は、費用的理由から好ましい。これらの多チャネル膜装置については、要素の長さに沿ってTMPを制御する他の2つの手段が商業化されている。第1番目は、GarceraおよびToujasによって、米国特許第6375014号明細書で開示されているような、長さに沿った膜支持体の透過度の格付けである。この技術では、膜支持体の抵抗は、保持液出口におけるよりも、供給液入口におけるほうが大きい。膜流束の範囲内では、支持体の流動抵抗は、要素の出口よりも要素の入口における透過液回収域への透過液流に対してより高い圧力低下をもたらす。第2の技術は、TAMI Industriesによって商業化されており、これは、膜要素の長さに沿って、膜厚みと抵抗とを変更することから成る。入口における膜が厚くなるにつれて、要素出口におけるよりも要素入口における透過液流に対して、より高い圧力低下をもたらし、これによって、膜要素の長さに沿って、より均一のTMPを提供する(Grangeonら、米国特許第6499606号明細書、米国特許出願公開第2003/0070981号明細書)。
【0006】
上記の方法は、単一のハウジング内に多重要素を含む膜モジュール用に主として開発されており、これらの要素は、主として小口径で多チャネル構造である。異なる膜モジュール構造が、Goldsmithらによって開発され、米国特許第4781831号明細書、米国特許第5009781号明細書、米国特許第5108601号明細書および米国特許第6126833号明細書において開示され、これら全ては参照によって本明細書に組み込まれている。これらの特許では、大口径の多チャネル膜要素が開示されている。これらの要素の著しい特徴は、これらの要素は、透過液を要素の内部から抽出するための1つ以上の内部透過液導管を含み、多チャネルモノリス膜内の透過液側の圧力低下を回避している。さもないと、このような装置の性能を制限するであろう。
【0007】
Goldsmithの装置の好ましい実施形態は、大径モノリスの一端部または両端部に形成される透過液の抽出チャネルを、好ましくは、膜要素の長さに沿って長手方向に延びる透過液チャンバと交差するスロットの形で含む。これらのチャネルの存在は、膜要素の両端部にあるときには、膜要素の長さに沿って、より均一なTMPを達成するために、供給液流と並流に透過液導管を通って透過液流を循環させる新規な手段を提供する。
【0008】
Goldsmithの装置のまた別の実施形態は、膜要素の端面に位置した透過液ダクトを用いるモノリス膜要素から、透過液を抽出する手段を含み、ダクトは、内部横断チャネルを介して、内部透過液導管チャンバと連通している。これらのダクトの存在は、膜要素の両端部に存在するとき、膜要素の長さに沿って均一なTMPを達成するための透過液導管を通って透過液流を循環させる第2の新規な手段を提供する。これらの構造は、このようなモノリス膜要素の長さに沿って一定のまたはほぼ一定のTMPを維持するために、並流透過液循環流を受け入れやすく、本発明に対する基礎を形成する。
【0009】
発明の要約
したがって、本発明の目的は、装置の長さに沿って、均一の膜間差圧で作動する改良されたクロスフロー膜装置を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、装置の単位容積あたり、大量の面積を有するこのような装置を提供することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、膜支持体として、大口径の多重通路モノリスを用いるこのような装置であって、装置の内部から透過液を抽出するための透過液導管構造物用の少数のモノリス通路を利用する装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、装置の長さに沿って、透過液圧力プロファイルを生成し、その結果、装置の長さに沿ってさらに均一な膜間差圧をもたらすために、原料流と並流に、膜装置内で透過液の循環させるための、透過液導管構成物を利用することである。
【0013】
本発明は、精密ろ過膜法および限界ろ過膜法に対して、このろ過法で用いられる膜装置の長さに沿って、制御されかつ均一な膜間差圧で作動することは、しばしば有利であるということを認識することからもたらされる。膜装置を通した原料の循環は、装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、かなり大きな圧力低下を結果としてもたらすので、透過液の背圧が膜装置の長さに沿って類似の方法で減少する場合には、制御されかつ均一の膜間差圧が達成され得る。
【0014】
本発明は、大口径モノリス基質の膜装置が、装置内部から透過液を有益に抽出するために、1つ以上の内部透過液導管で構成されることが可能であり、さらに重要には、装置内の原料圧力低下を同等にし、それによって、装置の長さに沿って、均一な膜間差圧を発生させるように、装置の長さに沿った透過液背圧が増加するように、当該透過液導管構造物は、原料流と並流に、装置内の透過液を循環させるために用いることができることを、認識することからも、もたらされる。透過液導管は、装置内に複数の長手方向透過液チャンバを含み、これらのチャンバを並流に流下する透過液循環流は、所望の透過液側圧力低下を発生させる。透過液をチャンバに導入し、装置の供給液入口端部および保持液出口端部で、それぞれ、チャンバから取り出す各種手段があり、これらの手段は、モノリス構造物に簡単な修正をし、ハウジング内の膜装置を透過液流循環用の簡単な接続部品で取り付けることによって実施することができる。
【0015】
本発明は、原料を供給液端面で受け入れ、原料を透過液と保持液とに分離するためのクロスフロー膜装置を特徴とする。装置は、モノリスの供給液端面からモノリスの保持液端面まで長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が該通路を通って流れて装置から保持液を通過させる、多孔質材から成る少なくとも1つのモノリスを含む膜支持体を使用している。装置は、多孔質材の細孔径よりも微細な細孔を有する、モノリスの通路壁面に施された選択透過性膜被覆をさらに含む。透過液抽出のための少なくとも1つの透過液導管は、モノリスに含まれ、該導管は、供給液端面またはその付近で透過液を導入し、保持液端面またはその付近で透過液を取出す手段と連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む。供給液および保持液から透過液を分離する手段が設けられ透過液導管を介して透過液の一部を循環させ、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を生成させる手段も設けられている。
【0016】
装置に用いられる膜支持体は、単一のモノリスまたは複数のモノリスセグメントであってもよい。装置の選択透過性膜は、好ましくは、10ナノメートル〜1ミクロンの範囲の細孔径を有し、限外ろ過法または精密ろ過法に適している。
【0017】
一実施形態では、装置に対する透過液を導入し取出す手段は、膜装置と透過液回収ハウジングとの間の環状空間と連通するチャネルであってもよい。環状空間は、装置の供給液端部から装置の保持液端部までの環状空間を介して、透過液流量を減少させるために、流動抵抗材で充填されてもよい。流動抵抗材は、粒状材料の拘束床であってもよく、セラミック、ガラス、金属、または重合体の粒状材料の群から選択される。あるいは、流動抵抗材は、金属またはプラスチックメッシュであってもよい。
【0018】
装置のさらに別の実施形態においては、透過液を導入し取出す手段は、それぞれ、供給液端面および保持液端面におけるダクトを介してなされることである。
【0019】
上記装置のいずれについても、透過液チャンバの断面積は、均一で未修正の通路構造物を有するモノリス支持体に対して別途存在するチャンバの断面積から減少され得る。チャンバの断面積は、モノリス支持体組み立て工程中に、減少させることもできる。あるいは、チャンバ断面積は、装置の組み立て工程中に、モノリス支持体のチャンバをプラギングすることによって、減少され得る。あるいは、チャンバ断面積は、装置組み立て工程中に、モノリス支持体のチャンバを粒状材料の拘束床で充填することによって減少され得る。
【0020】
好ましい実施形態では、クロスフロー膜装置は、膜支持体として、多孔質のセラミックモノリスを利用し、該モノリスは、装置の供給液端面から装置の保持液端面まで長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が該複数の通路を通って流れて装置から保持液を通過させる。10ナノメートル〜1ミクロンの平均細孔径を有する選択透過性膜被覆が、モノリスの通路壁面に施される。透過液回収ハウジングは、供給液端面および保持液端面で、それぞれ供給液および保持液から、透過液を分離するための手段とともに設けられる。少なくとも1つの透過液導管は、モノリス内に形成され、該導管は、供給液端面付近で透過液を導入するいための少なくとも1つの横方向チャネルと、保持液端面付近の透過液を取出すための少なくとも1つの横方向チャネルとに連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む。最後に、透過液導管を介して透過液の一部を循環させ、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を生成する手段が設けられる。
【0021】
本発明は、また、クロスフロー膜装置の原料を透過液と保持液とに分離する方法を特徴とし、該方法は、原料を、透過液回収ハウジングに収納される装置の供給液端面、および透過液と保持液とに分離するための複数の装置通路に導入することを含む。透過液は、透過液回収域で回収され、装置から取り除かれ、保持液は装置の保持液端面から取り除かれる。装置から取り除かれた保持液の一部は、原料流に並流の内部透過液導管を介して循環され、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を与える。
【0022】
発明の詳細な説明
図1において、モノリス膜要素1は、原料入口12および保持液出口13から透過液回収域11を隔離する手段10を有するモジュールハウジング2で収納されている。膜要素は、該要素の供給液入口端部および保持液出口端部に、それぞれ1つ以上の横方向スロット3および4、または他のチャネルを含んでいる。スロットは、複数の長手方向透過液導管チャンバ5を横断し、これによって、上記Goldsmithの特許明細書に記載されているように、透過液導管の一形式をなす。透過液ポート14,15は、入口端部および出口端部付近のモジュールハウジングにそれぞれ配置されている。流動抵抗材16が、膜要素とモジュールハウジングとの間に位置する透過液回収域環状部を充填するために用いられ、この環状空間における透過液の流動抵抗を増加することができる。
【0023】
作動中、クロスフロー速度、供給液粘度、膜要素チャネル直径およびチャネル長さに応じて、作動圧力プロファイルが作られる。典型的には、精密ろ過および限外ろ過に対しては、このプロファイルは、2未満〜6バール絶対圧の供給液入口圧力、1未満〜5バール絶対圧の保持液出口圧力、および、約1バール絶対圧の透過液出口圧力であってもよい。しかしながら、本発明に対しては、モジュールの外側のポンプ(図示せず)は、透過液を、透過液入口ポート17に導入し、透過液チャンバ内の流れを原料流と並流にするための透過液導管(または複数の導管)を通り、透過液出口ポート18から排出する透過液循環を提供するために用いられる。この強制透過液循環流は、要素の長さに沿って、不均一な(低下する)透過液圧力を生じ、TMPを要素の長さに沿ってさらに均一にする。
【0024】
環状部を通る流れに対する抵抗は、流動抵抗材の有無にかかわらず、透過液導管構造物を通る透過液流に対する流動抵抗に比べて、好ましくは高い。環状流動抵抗は、透過液導管構造物を通る場合と少なくとも同じであるべきである。
【0025】
一体型モノリス膜要素のための透過液導管の好適な構造物は、モノリス内に、モノリスの長さに沿って延びる複数の透過液チャンバを含む。これらのチャンバは、好ましくは、1つ以上のモノリス通路の形式である。モノリスの両端部では、透過液導管チャンバは、チャンバと、膜要素の少なくとも1つの側面に沿って配置された透過液回収域との間を連通する1つ以上の横方向チャネルによって横断される。これらのチャネルは、供給液または保持液材料の流入を防止するために、モノリス要素の端部で封止された、好ましくはスロットの形式である。機械的手段が、モノリス要素端部の周辺に用いられて、供給液または保持液と、透過液回収域で回収された透過液との混合を防止する。
【0026】
米国特許第6126833号明細書に開示されたマルチセグメントの膜モジュール構造物については、透過液導管構造物は、少なくとも1つのモノリスセグメント内の上記セグメント間構造物と、モノリスセグメント間の空間によって規定されたセグメント間透過液導管構造物とから成る。
【0027】
透過液環状部における流動抵抗材は、異なる形式をとってもよい。たとえば、この材料は、粒状材料の床を介して流動抵抗が相対的に高くなるような粒状材料の拘束床であってもよい。粒状材料は、セラミック、ガラス、金属、重合体または他の材料からなる粉末であってもよい。このことは、Holmによって採用された上記技術と類似するであろう。代替方法は、モノリス周辺表面を包むまたは嵌められた、プラスチックまたは金属のメッシュを用い透過液空洞を充填することである。このことは、いわゆる「衛生的バイパス」様式での作動のためのらせん状に巻かれた膜モジュールを覆うために用いられる材料と類似するであろう。GE Osmonicsによって、商標名Durasan(登録商標)で市販される製品は、このようなメッシュを含んでいる。流動抵抗材は、オープンセルまたはクローズドセルフォーム、またはゴムマットあるいは、環状空間内の流動抵抗または環状空間の閉塞を生成するために有用な他のいかなる材料または手段からなってもよい。流動抵抗特性以外の流動抵抗材の選択に対する重要な考察には、取り付けの容易さ、化学的および熱的耐久性、所定の場所で洗浄および消毒または殺菌が可能な膜モジュールを必要とする、特に食品、飲料および医薬用途用に洗浄される能力が含まれる。必要ではないが、流動抵抗材料が要素の長さに沿って均一の流動抵抗を生成することが好ましい。しかしながら、環状空間を、たとえば要素の両端で、単に閉塞することは、導管構造物を介して透過液流の循環を強制するであろう。
【0028】
また別の方法は、透過液の循環中、環状空間を通る流れが、膜要素内の透過液導管構造物を通る流れに比べて相対的に小さくなるように、膜要素と透過液回収ハウジングとの間の環状寸法を制御することである。膜要素の長さに沿って、TMPの制御を達成する透過液循環方法は、Osterlandらによって採用された技術に類似しているであろう。
【0029】
図2は、膜要素の長さに沿ってTMPを制御する別の手段を示す。本実施形態では、透過液流が入口透過液ポート17に導入され、ダクト6を通り、内部透過液導管チャンバ5に入り、ダクト7を出て、出口透過液ポート18を介して排出されることによって、透過液は膜要素を介して循環される。米国特許第5009781号明細書に開示されているように、両ダクトと透過液チャンバ5との間の連通は、横方向チャンバ19を介している。膜要素とモジュールハウジングとの間の空洞に回収されてもよい透過液は、供給液流体および保持液流体から隔離されなければならない。このことは、たとえば、環状部における透過液回収を防止するための、セラミック釉薬または不透過性プラスチックの覆いで、膜要素の外表面を封止することによって達成することができる。あるいは、この空洞は、図1に示されるように、弾性シールなどのシール10を用いて、端面で隔離することができる。圧力プロファイルは、ポート12を介して導入された供給液と、ポート13を介して排出される保持液に対して、膜要素内で、確立される。膜要素の長さに沿った透過液背圧は、図1に示されるモジュールに関しては、透過液流を循環することによって透過液導管構造物で確立される。透過液循環流の独立制御は、膜要素に沿ったTMPの制御を可能にする。
【0030】
本発明の装置に対する更なる修正には、長手方向透過液チャンバ内の流れの制限が含まれる。これは、2つの理由で望ましいであろう。第一には、横方向透過液チャネルに存在する循環透過液流通路における抵抗の一部を最小にすることである。透過液導管を介する透過液循環に関連する圧力低下の大部分は長手方向チャンバで生じ、横方向チャネルでは生じないことが望ましい。第二に、透過液導管における循環透過液流量を減少させることによって、システムハードウェアは、寸法が小さくされ、費用が低減され、透過液循環の電力消費が低減される。透過液チャンバの流動抵抗を増加させるいくつかの手段があり、その全ては、様々な方法で、チャンバの開口断面積の減少に関連する。第一の手段は、モノリス支持体を作製するために採用される押出成形法(または他の成形法)で達成することができる。押出ダイは、チャンバ通路に隣接した、より厚肉の通路壁20を形成することによって、一定のモノリス壁ピッチのために意図された透過液チャンバ用の通路サイズ19(図3a)を小さくするように作製されてもよい。代替のモノリスは、固形物21(図3b)としての別の開放透過液チャンバのいくつかで押出することができる。これらの図は、端部で、たとえば、装置の中央またはその付近で、透過液チャネルから取り除かれた位置でのモノリス支持体の断面を示し、開放透過液チャンバは、「X」で示されている。
【0031】
第二の手段は、透過液チャンバのいくつかを、たとえばプラギングによって、閉塞することである。このプラギングは、チャンバのいくつかの一端部でまたは両端部で、あるいは、プラギングされたチャンバの長さの全てまたは一部分のみに沿って、実施することができる。採用され得るプラギングパターンの例は、図4で示され、図4では、プラギングされたチャンバ22は、黒く表示され、開放チャンバは「X」によって示されている。透過液チャンバ内の流れを制限するさらに別の手段では、チャンバは、上記で開示されたように、環状空間を充填するために用いることができる粒状材料の使用と同様に、粒状材料の拘束床で充填することができる。
【0032】
過剰の透過液循環流圧力低下が透過液チャネルに生じる場合には、この抵抗は、低減されるべきである。様々な手段が用いられてもよい。たとえば、透過液チャネルが1列の透過液チャンバにオーバーレイされるスロットである場合は、スロットの深さを増加してもよい。代わりに、スロットは、1列のチャンバよりも幅広くし、下に置かれるチャンバのいくつかをプラギングまたは寸法を小さくしてもよい。すなわち、透過液導管、スロットチャネルおよび通路チャンバの数を、透過液チャンバの流動抵抗を増加させるためにも用いられる手段で、透過液循環のないモジュールで用いられるであろうものよりも増加することができる。
【0033】
上記構造物に対して、透過液は、原料と並流で循環される。透過液流の流路抵抗および透過流の関連する圧力低下は、膜要素の長さに沿ってさらに均一なTMPを確立するために用いられる。本発明の必要な特徴は、第一に、少なくとも1つの内部透過液導管を有する膜要素を使用することであり、第二に、要素の供給液入口端部で導管への循環透過液導入および要素の保持液出口端部での取出しの手段である。循環透過液流は、要素の入口端部から出口端部まで、減少する透過液圧力プロファイルを生成する。さらに、TMPが装置の長さに沿ってできる限り均一にされるように、循環透過液の圧力低下が、透過液チャンバに主として存在することが重要である。加えて、装置に沿って、許容可能透過液チャンバ圧力低下プロファイルを有するために、循環透過液の量は、膜流束から生じる透過液流と少なくとも同じ大きさであるべきである。このことによって、透過液チャンバに沿って、相対的に均一の流量および相当する線圧レベルの低下を維持する。
【0034】
上記装置の全てについて、非常にコンパクトな膜要素を組み立てることができる。装置の単位容積あたりの膜面積は、膜要素容積立法フィートあたり約100平方フィートよりも大きくてもよい。
【0035】
モノリス膜支持体は、セラミック、金属性、重合体または他の適切な多孔性材料であってもよい。モノリス支持体の空隙率は、一般に、約30〜50%の範囲にある。モノリス支持体の平均細孔径は、好ましくは、約3ミクロン〜約30ミクロンの範囲にある。支持体の通路壁に施された支持体および膜被覆の両方を含む膜要素は、単一の一体型モノリス構造物またはマルチセグメントモノリス構造物を用いてもよい。
【0036】
本発明が適用できる膜型式は、微細孔型であり、精密ろ過および限外ろ過に用いられる。このような膜の細孔径は、好ましくは、約10ナノメートル〜1ミクロンの範囲にある。膜材料は、セラミック、金属、重合体またはそれらの組み合わせであってもよい。
他の実施形態が当業者に想到され、かつ、添付の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ハウジング2に収納された1つ以上の内部透過液導管(3つが図示されている)を有するモノリス膜要素1を示す。この構造は、透過液回収が通常膜要素の側面に沿っているであろう膜モジュール(透過液回収ハウジングにおける膜要素)に適している。透過液導管構造物は、該要素の入口および出口端で、スロット3および4を含む。該スロットは、要素の長さに沿って延びる内部長手方向透過液導管チャンバ5と交差し連通している。これらのスロットおよびチャンバは、透過液流の内部から要素への循環を実行する手段を提供する。
【図2】ハウジング2に収納された1つ以上の内部透過液導管(3つが図示されている)を有する別のモノリス膜要素1を示す。この例では、透過液流は、膜要素の入口端面8および出口端面9に配置されたダクト6および7を通っている。これらのダクトは、内部長手方向透過液導管チャンバと連通し、内部透過液導管システムを介して透過液を循環する代替手段を提供する。
【図3a】透過液導管内の透過液導管チャンバの可能な構造を示す、モノリス支持体の一部、特に、押出モノリス通路構造物の、断面を示す。この断面は、装置の入口端部および出口端部のスロット間に配置されている。
【図3b】透過液導管内の透過液導管チャンバの可能な構造を示す、モノリス支持体の一部、特に、押出モノリス通路構造物の、断面を示す。この断面は、装置の入口端部および出口端部のスロット間に配置されている。
【図4】モノリス支持体の一部の断面、特に、透過液内の透過液チャンバのためのプラギングされたモノリス通路パターンの配置を示す。この断面は、装置の入口端部および出口端部におけるスロットの基底部、すなわち、スロットへの導管チャンバ開口部に位置している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を供給液端面で受け入れ、原料を透過液と保持液とに分離するためのクロスフロー膜装置であって、
多孔質材料から成る少なくとも1つのモノリスを含む膜支持体であって、該モノリスは、供給液端面と保持液端面とを有し、モノリスの供給液端面からモノリスの保持液端面までの長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が該複数の通路を通って流れて装置から保持液を通過させ、該通路が壁面を有する、膜支持体と、
モノリスの前記通路壁面に施された多孔質材料の細孔径よりも微細な細孔径の選択透過性膜被覆と、
モノリス内に形成された少なくとも1つの透過液導管であって、該導管は、前記供給液端面またはその付近で透過液を導入し、前記保持液端面またはその付近で透過液を取出す手段と連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む、透過液導管と、
供給液および保持液から透過液を分離する手段と、
透過液導管を介して透過液の一部を循環させ、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を生成する手段とを含むことを特徴とするクロスフロー膜装置。
【請求項2】
膜支持体が、単一のモノリスであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
膜支持体が、複数のモノリスセグメントであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
選択透過性膜は、10ナノメートル〜1ミクロンの範囲の細孔径を有する膜であり、限外ろ過法または精密ろ過法に適していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
透過液を導入し取出す手段は、膜装置と透過液回収ハウジングとの間の環状空間と連通するチャネルであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
環状空間は、装置の供給液端部から装置の保持液端部までの環状空間を通る透過液流量を減少させるために、流動抵抗材で充填されることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
流動抵抗材は、セラミック、ガラス、金属または重合体の粒状材料の群から選択された粒状材料の拘束床であることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
流動抵抗材は、金属またはプラスチックメッシュであることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項9】
透過液を導入し取出す手段は、それぞれ、供給液端面および保持液端面におけるダクトであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
透過液チャンバの断面積は、均一で未修正の通路構造物を有するモノリス支持体に対して別途存在するチャンバの断面積から減少されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
チャンバの断面積は、モノリス支持体組み立て工程中に減少されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
チャンバの断面積は、装置組み立て工程中に、モノリス支持体のチャンバをプラギングすることによって減少されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】
チャンバの断面積は、装置組み立て工程中に、モノリス支持体のチャンバを粒状材料の拘束床で充填することによって減少されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項14】
原料を供給液端面で受け入れ、原料を透過液と保持液とに分離するためのクロスフロー膜装置であって、
多孔質セラミックモノリスを含む膜支持体であって、該モノリスは、供給液端面と保持液端面とを有し、モノリスの該供給液端面からモノリスの該保持液端面までの長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が該複数の通路を通って流れて装置から保持液を通過させ、該通路は壁面を有する、膜支持体と、
モノリスの前記通路壁面に施された10ナノメートル〜1ミクロンの平均細孔径を有する選択透過性膜被覆と、
供給液端面と保持液端面で、それぞれ供給液および保持液から透過液を分離する手段を有する透過液回収ハウジングと、
モノリス内に形成された少なくとも1つの透過液導管であって、供給液端面付近で透過液を導入するための少なくとも1つの横方向チャネルと、保持液端面付近で透過液を取出すための少なくとも1つの横方向チャネルとに連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む、透過液導管と、
透過液導管を介して透過液の一部を循環させ、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に透過液圧力の低下を生成する手段とを含むことを特徴とするクロスフロー膜装置。
【請求項15】
内部透過液導管を有するクロスフロー膜装置において、原料を透過液と保持液とに分離する方法において、
a)透過液回収ハウジング内に含まれるクロスフロー膜装置と、透過液から原料および保持液を分離する手段とを準備し、
b)原料を、装置の供給液端面、および透過液と保持液とに分離するための複数の装置通路に導入し、
c)装置の保持液端面から保持液を取り除き、
d)透過液を透過液回収域で回収して、装置から取り除き、
e)原料流と並流に、内部透過液導管を介して、取出された透過液の一部を循環させて、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内の透過液圧力の低下を与えることを特徴とする方法。
【請求項16】
原料を受け入れ、原料を透過液と保持液とに分離するためのクロスフロー膜装置であって、
多孔質材料の少なくとも1つのモノリスを含む膜支持体であって、該モノリスは、供給液端面と保持液端面とを有し、モノリスの供給液端面からモノリスの保持液端面までの長手方向に延びる複数の通路を規定し、原料が複数の通路を通って流れて装置から保持液を通過させ、該通路は壁面を有する、膜支持体と、
モノリスの前記通路壁面に施された多孔質材料の細孔径よりも微細な細孔径の選択透過性膜被覆と、
モノリス内に形成された少なくとも1つの透過液導管であって、前記供給液端面またはその付近で透過液を導入するための少なくとも1つのチャネルと、前記保持液端面またはその付近で透過液を取出すための少なくとも1つのチャネルとに連通する複数の長手方向透過液チャンバを含む、透過液導管と、
透過液導管を介して透過液の一部を循環させ、膜装置の供給液端部から装置の保持液端部まで、透過液チャンバ内に低下する透過液圧力を生成する駆動力とを含むことを特徴とするクロスフロー膜装置。


【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−507345(P2007−507345A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533835(P2006−533835)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/024114
【国際公開番号】WO2005/039721
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501332699)セラメム コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】