説明

膜電極接合体、燃料電池、及び膜電極接合体の製造方法

【課題】膜電極接合体及びそれを備える燃料電池に関し、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上に加え、電解質膜及び触媒層の含水量の低下を防止する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】膜電極接合体であって、電解質膜11と、電解質膜11面上に形成された触媒層15と、触媒層上15に形成されたガス拡散層18と、を備え、触媒層15は、触媒152とアイオノマ154とを有し、触媒層15は、電解質膜11と接する第1の層部分C1と、ガス拡散層と接する第2の層部分C2と、第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分C3と、を有し、第1と第2の層部分C1,C2のそれぞれのアイオノマ量は、第3の層部分C3のアイオノマ量よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜電極接合体、膜電極接合体を備えた燃料電池、及び膜電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の面上に触媒層とガス拡散層とがこの順番で積層された膜電極接合体を備える。従来、燃料電池の性能を向上させるために、ガス拡散層側よりも高分子電解質膜側に位置する触媒層のアイオノマ(「高分子電解質」ともいう。)量(g/cm3)を大きくする技術が知られている(例えば、特許文献1)。これにより、水素イオン(H+。「プロトン」ともいう。)の移動抵抗が低減され、ガス拡散層から供給される反応ガス(燃料ガス又は酸化ガス)のガス拡散性が向上される。
【0003】
しかしながら、燃料電池の動作環境によっては電解質膜及び触媒層から多量の水が蒸発する場合がある。ガス拡散層側に位置する触媒層のアイオノマ量が小さいと、電解質膜及び触媒層で蒸発した水がガス拡散層を通り反応ガスと共に燃料電池外に排出される。この結果、電解質膜及び触媒層の含水量が低下し、電池性能が低下する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−88008号公報
【特許文献2】特開2006−286432号公報
【特許文献3】特開2008−186798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上に加え、電解質膜及び触媒層の含水量の低下を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0007】
[適用例1]膜電極接合体であって、電解質膜と、前記電解質膜の面上に形成され、触媒とアイオノマとを含む触媒層と、前記触媒層の面上に形成されたガス拡散層と、を備え、前記触媒層は、前記電解質膜と接する第1の層部分と、前記ガス拡散層と接する第2の層部分と、前記第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分と、を有し、前記第1と第2の層部分のそれぞれのアイオノマ量は、前記第3の層部分のアイオノマ量よりも大きい、膜電極接合体。
適用例1の膜電極接合体によれば、電解質膜と接する第1の層部分のアイオノマ量は第3の層部分のアイオノマ量より大きいことから、プロトンの移動抵抗を低減できる。また、ガス拡散層と接する第2の層部分のアイオノマ量は第3の層部分のアイオノマ量よりも大きいことから、電解質膜及び触媒層に含まれる水の一部が蒸発しても、蒸発した水のガス拡散層側への移動をアイオノマにより抑制し、蒸発した水が燃料電池外へ排出されるのを抑制できる。この結果、電解質膜及び触媒層の含水量の低下を防止することができる。さらに、第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分は、第1と第2の層部分よりもアイオノマ量が小さいことから、触媒層中の反応ガスの拡散性を向上させることができる。ここで、「アイオノマ量」とは、触媒層1cm3中に含まれるアイオノマの質量(g)を意味する。例えば、第1の層部分の体積がVa1(cm3)であり、第1の層部分に含まれるアイオノマの質量がMa1(g)であった場合、第1の層部分のアイオノマ量はMa1/Va1(g/cm3)となる。なお、アイオノマ量の算出にあたり、算出対象となる層部分を複数個のブロックに分割し、ブロック毎にアイオノマ量を算出した場合は、ブロック毎のアイオノマ量の平均をそれぞれの層部分のアイオノマ量とする。特許請求の範囲及び本明細書において、アイオノマ量という時には、同様の意味を指すものとする。
【0008】
[適用例2]適用例1に記載の膜電極接合体であって、前記第3の層部分の空隙率は、前記第1と第2の層部分のそれぞれの空隙率よりも大きい、膜電極接合体。
適用例2の膜電極接合体によれば、第3の層部分の空隙率は、第1と第2の層部分のそれぞれの空隙率よりも大きいことから、触媒層中の反応ガスの拡散性をより確実に向上させることができる。ここで、第1〜第3の層部分のそれぞれの「空隙率」とは、第1〜第3の層部分のそれぞれの体積(cm3)に占める、第1〜第3の層部分のそれぞれの空隙の体積(cm3)の割合を意味する。例えば、第1の層部分の体積がV1(cm3)であり、第1の層部分の空隙の体積がV2(cm3)であった場合、第1の層部分の空隙率は、V2/V1(cm3/cm3)となる。なお、空隙率の算出にあたり、算出対象となる層部分を複数個(例えば4個)のブロックに分割し、ブロック毎に空隙率を算出した場合は、ブロック毎の空隙率の平均をそれぞれの層部分の空隙率とする。特許請求の範囲及び本明細書において空隙率という時には、同様の意味を指すものとする。
【0009】
[適用例3]適用例1又は適用例2に記載の膜電極接合体であって、前記触媒層の厚さは、2μm以上25μm以下である、膜電極接合体。
適用例3の膜電極接合体によれば、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上をより達成できると共に、電解質膜及び触媒層の含水量の低下をさらに防止することができる。
【0010】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の膜電極接合体であって、前記触媒層の厚さをDとすると、前記第1と第2の層部分の厚さはそれぞれ、0.05D以上0.45D以下であり、前記第3の層部分の厚さは、0.1D以上0.9D以下である、膜電極接合体。
適用例4の膜電極接合体によれば、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上をより達成できると共に、電解質膜及び触媒層の含水量の低下をさらに防止することができる。
【0011】
[適用例5]適用例1乃至適用例4のいずれか1つに記載の膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持するセパレータと、を複数積層させた積層体を備える燃料電池。
適用例5の燃料電池によれば、電解質膜及び触媒層の含水量の低下を防止することができることから、乾燥しやすい環境下(例えば、燃料電池内が温度90℃以上になる環境下)でも電池性能の低下を防止することができる。
【0012】
[適用例6]電解質膜の面上に触媒層とガス拡散層とがこの順番で形成された膜電極接合体の製造方法であって、(a1)前記電解質膜の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(b1)前記工程(a1)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記電解質膜の面上に第1の触媒形成層を形成する工程と、(c1)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(d1)前記工程(c1)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2の触媒形成層を形成する工程と、(e1)前記第1の触媒形成層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面と、前記第2の触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合させて前記触媒層を形成する工程と、(f1)前記触媒層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面上に前記ガス拡散層を形成する工程と、を含む、膜電極接合体の製造方法。
【0013】
適用例6の膜電極接合体の製造方法によれば、電解質膜に接する第1の層部分と、ガス拡散層に接する第2の層部分と、第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分とを有し、第1と第2の層部分のそれぞれのアイオノマ量は、第3の層部分のアイオノマ量よりも大きい触媒層を容易に作製することができる。なお、工程(a1),(b1)からなる工程(工程(ab)という。)と、工程(c1),(d1)からなる工程(工程(cd)という。)の順序は問わず、工程(ab)を行った後に工程(cd)を行っても良いし、その逆でも良い。さらには、工程(ab)と工程(cd)を同時に行っても良い。
【0014】
[適用例7]電解質膜の面上に触媒層とガス拡散層とがこの順番で形成された膜電極接合体の製造方法であって、前記触媒層は、前記電解質膜側から順に第1〜第N(Nは2以上の整数)の触媒積層体を積層した構成であり、前記膜電極接合体の製造方法は、(A)前記第1の触媒積層体を作製する工程と、(B)前記第n(nは2〜Nの整数)の触媒積層体を作製する工程と、(C)前記ガス拡散層を前記触媒層の面上に形成する工程と、を含み、
前記工程(A)は、(a2)前記電解質膜の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(b2)前記工程(a2)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記電解質膜の面上に第1の触媒形成層を形成する工程と、(c2)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(d2)前記工程(c2)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2の触媒形成層を形成する工程と、(e2)前記第1の触媒形成層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面と、前記第2の触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合する工程と、を含み、前記工程(B)は、(f2)第(n−1)の触媒積層体の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(g2)前記工程(f2)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで第(n−1)の触媒積層体の面上に第(2n−1)の触媒形成層を形成する工程と、(h2)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、(i2)前記工程(h2)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2nの触媒形成層を形成する工程と、(j2)前記第(2n−1)の触媒形成層の2つの面の内、前記第(n−1)の触媒積層体側とは反対側に位置する面と、前記第2nの触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合する工程と、を含む、膜電極接合体の製造方法。
【0015】
適用例7の膜電極接合体の製造方法によれば、電解質膜側からガス拡散層側へ向かって、アイオノマ量の大きい層部分L1と、層部分L1よりもアイオノマ量の小さい層部分S1と、層部分S1よりもアイオノマ量の大きい層部分の3層構造からなる触媒積層体を容易に複数積層させることができる。また、触媒積層体を複数個積層させた触媒層は、電解質膜に接する第1の層部分と、ガス拡散層に接する第2の層部分と、第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分とを含む構造を有し、第1と第2の層部分は、第3の層部分よりもアイオノマ量が大きい。これにより、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上に加え、電解質膜及び触媒層の含水量の低下を防止することができる。さらに、積層させる触媒積層体の個数により、第1と第2の層部分よりも空隙率の大きい第3の層部分の個数を制御することができる。すなわち、積層させる触媒積層体の個数をより多くすることで、第3の層部分の個数を多くすることができる。第3の層部分の個数を多くし、第3の層部分のトータルの厚みを大きくすることで、第3の層部分における空隙量(cm3)を大きくできることから、ガス拡散性の向上をより達成することができる。
【0016】
[適用例8]適用例6又は適用例7に記載の膜電極接合体の製造方法であって、さらに、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを作製するインク作製工程と、を含み、触媒形成層を形成させる際の各工程で用いる触媒形成インクは、前記インク作製工程で作製した触媒形成インクである、膜電極接合体の製造方法。
適用例8に記載の膜電極接合体の製造方法によれば、インク作製工程で作製した同じ組成の触媒形成インクを用いて、第1〜第3の層部分を有する触媒層を容易に作製することができる。よって、異なる組成の触媒形成インクを作製し、第1〜第3の層部分を有する触媒層を作製する場合に比べ、より短時間で第1〜第3の層部分を有する触媒層を作製することができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば膜電極接合体又は膜電極接合体の製造方法、膜電極接合体を備えた燃料電池、燃料電池と制御装置とを備えた燃料電池システム、燃料電池又は燃料電池システムを搭載する車両等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例としての膜電極接合体を備える単セル1の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施例としてのカソード触媒層15の状態を示す図である。
【図3】カソード触媒層15の構成を模式的に示す図である。
【図4】カソード触媒層15の作製方法を説明するための第1の図である。
【図5】カソード触媒層15の作製方法を説明するための第2の図である。
【図6】第2実施例としてのカソード触媒層15aの構成を模式的に示す図である。
【図7】カソード触媒層15aの作製方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0020】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての膜電極接合体10を備える単セル1の概略構成を示す図である。図1(A)は、単セル1の分解斜視図であり、図1(B)は、図1(A)のB−B断面の模式図である。単セル1は、複数積層させたスタック構造とすることで固体高分子型燃料電池を構成している。固体高分子型燃料電池は、単セル1を複数積層させた積層体の両側を2枚のエンドプレートにより挟持することで作製される。図1(A)に示すように単セル1は、電解質膜11の両面上に、カソード12とアノード13とをそれぞれ形成した膜電極接合体10と、膜電極接合体10を挟持するセパレータ20,22と、を備える。図示の都合上、カソード12は、電解質膜11に隠れた位置に存在する。図1(B)に示すように、カソード12は、電解質膜11の一方の面上に形成されたカソード触媒層15と、カソード触媒層15上に形成されたカソードガス拡散層18と、を備える。また、アノード13は、電解質膜11の他方の面上に形成されたアノード触媒層14と、アノード触媒層14上に形成されたアノードガス拡散層16と、を備える。なお、本明細書の「膜電極接合体」とは、電解質膜と触媒層と拡散層とがこの順番で積層された構造物を指す。
【0021】
電解質膜11は、プロトン伝導性を有する固体高分子電解質で形成されている。具体的には、フッ素系スルホン酸高分子樹脂から作製された固体高分子電解質膜(例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標))が用いられる。触媒層14,15は、触媒を担持した担体と、担体の周囲を覆うアイオノマとにより形成される。具体的には、例えば、白金を担持したカーボン粒子と、アイオノマとにより形成される。なお、触媒層14,15の具体的な構成と作製方法については後述する。ガス拡散層16,18は、ガス透過性を有するとともに導電性の良好な材料で形成される。このような材料としては、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスが用いられる。セパレータ20,22は、水素透過性が低く導電性の良好な材料で形成される。このような材料としては、例えば樹脂に導電材料を混入して成形したものが用いられる。セパレータ20,22は、単セル1内に配置されて反応ガス(水素ガスを含有する燃料ガス又は酸素を含有する酸化ガス)が流れるガス流路を形成する部材であって、その両面には、ガス流路を形成するために溝26,28が形成されている。具体的には、図1(A),(B)に示すように、セパレータ20の2つの面の内、アノード13と接する面に形成された溝28には燃料ガスが流れ、セパレータ22の2つの面の内、カソード12と接する面に形成された溝26には酸化ガスが流れる。なお、セパレータ20,22はそれぞれ、一方の面には溝26が形成されると共に、他方の面には溝28が形成されている。
【0022】
セパレータ20,22は、その外周近くの互いに対応する位置に、貫通孔30〜34を備えている。貫通孔30〜34は、単セル1を複数積層させ燃料電池を組み立てた場合に、互いに重なり合って、単セル1の積層方向に沿って燃料電池内部を貫通する流路を形成する。すなわち、溝26,28に対して反応ガスを供給する反応ガス供給マニホールドと、カソード12又はアノード13を通過した反応ガスを排出する反応ガス排出マニホールドとを形成する。本実施例では、溝26の一端と連通する貫通孔32は、燃料電池の外部から供給された酸化ガスが流れる酸化ガス供給マニホールドを形成し、溝26の他端と連通する貫通孔34は、カソード12を通過した酸化ガスが流れる酸化ガス排出マニホールドを形成する。また、溝28の一端と連通する貫通孔30は、燃料電池の外部から供給された燃料ガスが流れる燃料ガス供給マニホールドを形成し、溝28の他端と連通する貫通孔31は、アノード13を通過する燃料ガスが流れる燃料ガス排出マニホールドを形成する。なお、図示は省略しているが、スタック構造の内部温度を調節するために、各単セル1間に、あるいは所定数の単セル1を積層する毎に、冷媒の通過する冷媒流路を設けても良い。冷媒流路は、隣り合う単セル1間において、一方の単セル1が備えるセパレータ20と、これに隣接して設けられる他方の単セルのセパレータ22との間に設ければよい。
【0023】
図2は、本発明の第1実施例としてのカソード触媒層15の状態を示す図である。カソード触媒層15は、その厚さ方向(図2の上下方向)において、カソードガス拡散層18側に位置する部分と、電解質膜11側に位置する部分のアイオノマ量(g/cm3)はそれぞれ、2つの触媒層部分の間に位置する部分のアイオノマ量よりも大きい構成となっている。なお、この詳細は後述する。アノード13側で生成されたプロトンは、電解質膜11を通りカソード触媒層15に達する。カソード触媒層15に達したプロトンは、カソード触媒層15中のアイオノマ154を介して、カソード触媒層15中の触媒152に到達する。カソードガス拡散層18からカソード触媒層15に供給された酸化ガス中の酸素は、カソード触媒層15中の空隙156を通ることでカソード触媒層15中に拡散し、触媒152に到達する。また、アノード側で生成した電子は、外部回路を通ってカソード触媒層15に達し、カソード触媒層15中のカーボン粒子150を介して触媒152に到達する(図示せず)。触媒152に達したプロトンと電子と酸素が反応して水が生成される。さらに、特に高温(例えば燃料電池内の温度が90℃以上)での燃料電池の運転の際には、電解質膜11やカソード触媒層15に含まれる水が蒸発し、蒸発した水はカソードガス拡散層18を通りカソード排ガスと共に燃料電池外に排出される。なお、図2において、カーボン粒子150は大きい円で示し、触媒152はカーボン粒子150の円よりも直径の小さい円で示す。
【0024】
図3は、カソード触媒層15の構成を模式的に示す図である。なお、アノード触媒層14の構成は、カソード触媒層15と同様の構成であるため説明は省略する。カソード触媒層15は、複数のカーボン粒子150と、各カーボン粒子150に担持された触媒としての白金152と、カーボン粒子150と白金152とを被覆するアイオノマ154と、を備える。また、カソード触媒層15は、電解質膜11と接する第1の層部分C1と、カソードガス拡散層18と接する第2の層部分C2と、第1と第2の層部分C1,C2の間に位置する第3の層部分C3とからなる。
【0025】
カソード触媒層15の厚さをDとすると、第1〜第3の層部分の厚さはそれぞれD/3である。また、第1と第2の層部分C1,C2のアイオノマ量はそれぞれ、第3の層部分C3のアイオノマ量よりも大きい。言い換えれば、第1と第2の層部分C1,C2に位置するカーボン粒子150を被覆するアイオノマ154の厚さは、第3の層部分C3に位置するカーボン粒子150を被覆するアイオノマ154の厚さよりも大きい。さらに、第3の層部分C3の空隙率は、第1と第2の層部分C1,C2のそれぞれの空隙率よりも大きい。ここで、第1〜第3の層部分C1〜C3の空隙率は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)でカソード触媒層15の断面を観察することで算出することができる。また、アイオノマ量の大小は、算出した空隙率を基に決定することができる。すなわち、空隙率が大きい部分はアイオノマ量が小さく、空隙率が小さい部分はアイオノマ量が大きいことが分かる。
【0026】
このように、第1の層部分C1は第3の層部分C3よりもアイオノマ量が大きく、また空隙率が小さいことから、プロトンの移動抵抗を低減することができる。また、第2の層部分C2は第3の層部分C3よりもアイオノマ量が大きく、空隙率が小さいことから、蒸発した水が燃料電池外へ排出するのを抑制することができ、電解質膜11及び触媒層14,15の含水量の低下を防止することができる。さらに、第3の層部分は、第1と第2の層部分よりもアイオノマ量が小さく、空隙率が大きいことから、触媒層14,15中の反応ガスの拡散性を向上させることができる。
【0027】
また、膜電極接合体10は、電解質膜11及び触媒層14,15の含水量の低下を防止することができることから、膜電極接合体10を備えた燃料電池は、乾燥しやすい環境下(例えば、燃料電池内が温度90℃以上になる環境下)における性能低下を防止することができる。
【0028】
触媒層14,15の厚さは、特に限定されないが、それぞれ2μm以上25μm以下であることが好ましい。また、第1〜第3の層部分C1〜C3の厚さも、特に限定されないが、第1と第2の層部分C1,C2はそれぞれ、0.05D以上0.45D以下、第3の層部分C3は0.1D以上0.9D以下であることが好ましい。なお、第1と第2の層部分の厚さは同じでなくても良い。これらの範囲であれば、プロトンの移動抵抗の低減とガス拡散性の向上に加え、電解質膜11と触媒層14,15の含水量の低下をより防止することができるからである。
【0029】
第1実施例において、反応ガスの拡散性を向上させるために、第3の層部分C3の複数の空隙156は互いに連通していることが好ましい。また、ガス拡散層16,18から供給される反応ガスを電解質膜11側に位置する第1の層部分C1にまで拡散させるために、触媒層14,15中の空隙156は第2の層部分C2から第1の層部分C1まで互いに連通していることが好ましい。
【0030】
次に、図4と図5を用いて、カソード触媒層15の作製方法について説明する。図4はカソード触媒層15の作製方法を説明するための第1の図であり、図5は、カソード触媒層15の作製方法を説明するための第2の図である。なお、アノード触媒層14も同様の方法で作製することができる。
【0031】
図4(A)に示すように、予め作製した触媒形成インクIを噴射装置50にセットし、触媒形成インクIを噴射口51より電解質膜11面上に噴霧する(工程(P1))。触媒形成インクIは、白金を担持したカーボン粒子とフッ素系スルホン酸高分子樹脂溶液(例えば、デュポン社の製品名DE2020CS)を水及び有機溶媒(例えば、エタノール)中に加え混合することで作製する。図4(A−1)に示すように、噴霧直後の電解質膜11面上のアイオノマ154は厚さ方向について略一定の割合で存在している。なお、噴霧条件は特に限定されないが、形成するカソード触媒層15の厚みや目標とする触媒目付に応じて、噴霧口51と電解質膜11面との距離を20mm〜300mm、噴霧口51の開口径を50μm〜200μm、噴霧圧力を1kPa〜20kPa、塗布回数を1回〜10回の範囲とすることが好ましい。
【0032】
図4(B),(B−1)に示すように、触媒形成インクIを電解質膜11面上に噴霧した後に、カーボン粒子150を覆うアイオノマ154の一部を下降させる(工程(P2))。この下降は、触媒形成インクIを噴霧した電解質膜11を一定温度(例えば80℃)に加熱したホットプレート上に設置し、電解質膜11を所定時間(例えば、触媒形成インクI中の有機溶媒が揮発するまでの時間)静置させることで行う。この結果、図4(B−1)に示すように、電解質膜11面上に位置するアイオノマ量の大きい第1の層部分C1と、第1の層部分C1上に位置する第1の層部分C1よりアイオノマ量の小さい第3の層部分の一部C3sからなる第1の触媒形成層40が形成される。なお、アイオノマ量の大小は、各層部分の体積1cm3に含まれるアイオノマの質量(g)で評価する。このように作製した第1の触媒形成層40と電解質膜11を、第1の部材60と呼ぶものとする。
【0033】
図5(A),(A−1)に示すように、予め作製した触媒形成インクIを転写用基材52面上に噴霧し(工程(P3))、噴霧後にカーボン粒子150を覆うアイオノマ154の一部を下降させることで第2の触媒形成層42を形成させる(工程(P4))。この下降は工程(P2)同様、転写用基材52をホットプレート上に設置し、所定時間静置させることで行う。第2の触媒形成層42の部分拡大図(図5(A−1))に示すように、第2の触媒形成層42は、転写用基材52面上に位置するアイオノマ量の大きい第2の層部分C2と、第2の層部分C2上に位置する第2の層部分C2よりもアイオノマ量の小さい第3の層部分の一部C3tからなる。このように作製した第2の触媒形成層42と転写用基材52を第2の部材62と呼ぶものとする。ここで、転写用基材52面上に触媒形成インクIを噴霧する工程(工程(P3))と、噴霧後にカーボン粒子150を覆うアイオノマ154の一部を下降させる工程(工程(P4))とを、転写触媒形成工程と呼ぶものとする。
【0034】
転写用基材52としては、後述するホットプレスによって成分が第2の触媒形成層42に溶出せず、かつ、剥離性が良い材料(例えば、フッ素樹脂(PTFE)やカソードガス拡散層18)を用いることができる。
【0035】
次に、第1の触媒形成層40と第2の触媒形成層42とを接合する(工程(P5))。この接合は、図5(B)に示すように、電解質膜11面上の第1の触媒形成層40と転写用基材52面上の第2の触媒形成層42の表面同士を重ね合わせ、ホットプレスすることで行う。ホットプレス条件は特に限定されないが、プレス温度100℃〜200℃、プレス圧力1Mpa〜5Mpa、プレス時間0.5min〜60minで行うことが好ましい。
【0036】
図5(C)に示すように、上記接合の後に、転写用基材52を第2の触媒形成層42から剥離することで、第1〜第3の層部分C1,C2,C3を有する第1の触媒積層体70を作製する。第1実施例において、この第1の触媒積層体70がカソード触媒層15となる。次に、図5(D)に示すように、カソードガス拡散層18を第1の触媒積層体70上に接合することで膜電極接合体10のカソード12(図1(B))を作製することができる。なお、転写用基材52にカソードガス拡散層18を用いた場合は、第1と第2の触媒形成層40,42を接合することで、カソード12を作製することができる。
【0037】
上記のように、触媒形成インクIを電解質膜11や転写用基材52に噴霧後、アイオノマの一部を下降させることで、第1と第2の触媒形成層40,42のそれぞれの厚さ方向について、アイオノマ量が大きい部分と小さい部分を設けることができる。このため、第1と第2の触媒形成層40,42をホットプレスにより接合することで容易に第1〜第3の層部分C1,C2,C3を有する第1の触媒積層体70(カソード触媒層15)を作製することができる。また、アイオノマ量の大きい第1と第2の層部分C1,C2と、第1と第2の層部分よりもアイオノマ量の小さい第3の層部分C3とを同じ触媒形成インクIを用いて作製することができるため、I/C比(アイオノマの質量/カーボンの質量)の大きい第1の触媒形成インクと、第1の触媒形成インクよりもI/C比の小さい第2の触媒形成インクとを用意し、第1の触媒形成インクを用いて第1と第2の層部分C1,C2を作製し、第2の触媒形成インクを用いて第3の層部分C3を作製するよりも、短時間で第1〜第3の層部分C1〜C3を作製することができる。言い換えれば、短時間で第1の触媒積層体70(カソード触媒層15)を作製することができる。
【0038】
なお、工程(P1),工程(P2),工程(P3),工程(P4),工程(P5)はそれぞれ、課題を解決するための手段に記載の工程(a1),工程(b1),工程(c1),工程(d1),工程(e1)に相当する。
【0039】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例としてのカソード触媒層15aの構成を模式的に示す図である。なお、アノード触媒層の構成は、カソード触媒層15aと同様の構成であるため説明は省略する。第2実施例のカソード触媒層15aと第1実施例のカソード触媒層15との構造上の違いは、カソード触媒層15aの厚さと、2つの第3の層部分C3a,C3bのトータルの厚さと、層部分の構成である。また、カソード触媒層15aは、第1実施例と異なり2つの触媒積層体を積層させることで作製している。その他の構成については第1実施例と同様であるため同様の構成については同一符号を付すと共に説明を省略する。
【0040】
カソード触媒層15aは、電解質膜11に接する第1の層部分C1aとカソードガス拡散層18に接する第2の層部分C2aとを有する。さらにカソード触媒層15aは、第1と第2の層部分C1a,C2aの間に位置する、2つの第3の層部分C3a、C3bと、第4の層部分C4aとを有する。また、カソード触媒層15aの厚さDaは第1実施例のカソード触媒層15の厚さDよりも大きい。さらに、2つの第3の層部分C3a,C3bのトータルの厚さは、第1実施例の第3の層部分C3(図3)の厚さよりも大きい。なお、カソード触媒層15aは第1実施例のカソード触媒層15と同様、第1と第2の層部分C1a,C2aのそれぞれのアイオノマ量は、2つの第3の層部分C3a,C3bのそれぞれのアイオノマ量よりも大きく、かつ、2つの第3の層部分C3a,C3bのそれぞれの空隙率は、第1と第2の層部分C1a,C2aのそれぞれの空隙率よりも大きい。
【0041】
カソード触媒層15aが以上のような構成を有することにより、第1実施例のカソード触媒層15と同様、プロトンの移動抵抗の低減と、電解質膜11とカソード触媒層15aの含水量の低下を防止とを図ることができる。さらに、第1実施例のカソード触媒層15よりも第2実施例のカソード触媒層15aの方が、第1と第2の層部分C1,C2よりも空隙率の大きい第3の層部分C3a,C3bのトータルの厚さが大きいため、第3の層部分C3a,C3bにおけるガスの拡散性を第1実施例のカソード触媒層15よりも向上させることができる。
【0042】
また、第2実施例の触媒層を備える燃料電池は、第1実施例の触媒層を備える燃料電池よりも、氷点下の運転性能を向上させることができる。この理由を以下に述べる。氷点下の燃料電池の始動時において、第1と第2の層部分よりも空隙率の大きい第3の層部分の厚さが大きい触媒層の方が、第3の層部分において大きい空隙量(cm3)を有するため、発電時に生成した生成水が凍結した場合であっても、より多くの凍結した生成水を第3の層部分の空隙に収容することができる。よって、生成水の凍結による膨張によって触媒層に加わる応力を緩和することができ、触媒層の破損を抑制することができる。この結果、氷点下の運転性能をより向上させることができる。
【0043】
図7は、カソード触媒層15aの作製方法を説明するための図である。図7(A)に示すように、第1実施例と同様の作製方法で作製した電解質膜11と第1の触媒積層体70aからなる第1の部材60aを用意する。次に図7(B)に示すように、第1の触媒積層体70aの面上に噴射装置50によって触媒形成インクIを噴霧する。噴霧後、図7(C)に示すように、噴霧後にカーボン粒子150を覆うアイオノマ154の一部を下降させることで第3の触媒形成層40bを形成させる。この下降は電解質膜11をホットプレート上に設置し、所定時間静置させることで行う。ここで、電解質膜11面上に形成された触媒積層体の面上に、触媒形成インクIを噴霧し、噴霧後にアイオノマの一部を下降させる工程を、噴霧触媒形成工程と呼ぶものとする。
【0044】
次に図5(D)に示すように、転写触媒形成工程により転写用基材52a面上に形成した第4の触媒形成層42bと、第3の触媒形成層40bの表面同士を重ね合わせホットプレスにより接合する。その後、第1実施例同様、転写用基材52aを第4の触媒形成層42bから剥離することで、第1の触媒積層体70a面上に第2の触媒積層体70bを形成させる。図示は省略するが、第1実施例同様、カソードガス拡散層を第2の触媒積層体70b上に接合することで膜電極接合体のカソードを作成することができる。なお、第1と第2の触媒積層体70a,70bが第2実施例のカソード触媒層15aとなる。
【0045】
上記の作製方法を用いることで、アイオノマ量の大きい層部分R1と、層部分R1よりもアイオノマ量の小さい層部分R2と、層部分R2よりもアイオノマ量の大きい層部分の3層構造を有する触媒積層体70a,70bを容易に複数積層させることができる。これにより、触媒層の厚さ方向において、容易にアイオノマ量や空隙率の分布を制御することができる。
【0046】
第2の実施例において、第2の触媒積層体70b上にさらに、噴霧触媒形成工程と転写用触媒形成工程を複数回行い、3個以上の触媒積層体からなるカソード触媒層を形成させても良い。カソード触媒層を形成する触媒積層体の個数N(Nは2以上の整数)により、第3の層部分C3,C3aの個数を制御することができる。すなわち、積層させる触媒積層体の個数を多くし、第3の層部分のトータルの厚みを大きくすることで、第3の層部分の空隙量を大きくすることができる。この結果、ガス拡散性を向上させることができる。
【0047】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0048】
C−1.第1変形例:
上記実施例では、カソード触媒層15,15aとアノード触媒層14は共に第1〜第3の層部分を有していたが、いずれか一方の触媒層のみに第1〜第3の層部分を有しても良い。このようにしても、第1〜第3の層部分を有する触媒層において、プロトンの移動抵抗の低減と、反応ガスの拡散性の向上と、電解質膜及び触媒層の含水量の低下の低減を達成することができる。この場合、第1〜第3の層部分を有さない触媒層は、公知の方法で作製することができる。例えば、白金とカーボン粒子とアイオノマとを含む触媒形成インクを電解質膜11面上に噴霧し、乾燥させることで触媒層を作製する。
【0049】
C−2.第2変形例:
上記実施例の第1〜第3の層部分を有する触媒層14,14aの作製方法としては、実施例に記載の作製方法に限らず、他の作製方法を採用することができる。例えば、まず、I/C比の大きい第1の触媒形成インクと、第1の触媒形成インクよりもI/C比の小さい第2の触媒形成インクを作製する。次に、第1の触媒形成インクを複数の転写基材面上に噴霧した後、インクを乾燥させ有機溶媒を揮発させる(このように、第1の触媒形成インクにより転写基材面上に形成させた層を「第1の層」という。)。また、第2の触媒形成インクを複数の別の転写基材面上に噴霧した後、インクを乾燥させ有機溶媒を揮発させる(このように、第2の触媒形成インクにより転写基材面上に形成させた層を「第2の層」という。)。次に、電解質膜11面上に第1層、第2層、第1層をこの順に転写する。これにより、アイオノマ量がより大きい第1と第2の層部分と、アイオノマ量がより小さい第3の層部分を有する触媒層を作製することができる。
【0050】
C−3.第3変形例:
上記実施例では、予め作製した同一組成の触媒形成インクIを用いて、第1〜第4の触媒形成層40,40b,42,42bを作製したが、これに限らず、触媒形成層を積層させた際に、第1〜第3の層部分を有する触媒層を形成できる範囲で、それぞれの触媒形成層を作製する際に用いる触媒形成インクの組成を変えることができる。
【0051】
C−4.第4変形例:
上記実施例は、触媒として白金を用いたが、これに限らず、電気化学反応を促進する種々の触媒を採用可能である。例えば、白金、バナジウム、パラジウム等の貴金属、あるいは、このような貴金属を含む合金等を採用可能である。
【0052】
C−5.第5変形例:
上記実施例では、触媒を担持する担体としてカーボン粒子を用いたが、これに限らず導電性の良好な種々の材料を採用可能である。例えば、ステンレススチール等の金属を採用しても良い。また、必ずしも担体を用いる必要はなく、触媒とアイオノマとにより触媒層を構成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1…単セル
10…膜電極接合体
11…電解質膜
12…カソード
13…アノード
14…アノード触媒層
15,15a…カソード触媒層
16…アノードガス拡散層
18,18a…カソードガス拡散層
20,22…セパレータ
26,28…溝
30,31,32,34…貫通孔
40…第1の触媒形成層
40b…第3の触媒形成層
42…第2の触媒形成層
42b…第4の触媒形成層
50…噴射装置
51…噴射口
52,52a…転写用基材
60…第1の部材
62…第2の部材
70,70a…第1の触媒積層体
70b…第2の触媒積層体
150…カーボン粒子
152…白金
154…アイオノマ
156…空隙
I…触媒形成インク
C1,C1a…第1の層部分
C2,C2a…第2の層部分
C3,C3a,C3b…第3の層部分
C4a…第4の層部分
C3s,C3t…第3の層部分の一部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体であって、
電解質膜と、
前記電解質膜の面上に形成され、触媒とアイオノマとを含む触媒層と、
前記触媒層の面上に形成されたガス拡散層と、を備え、
前記触媒層は、前記電解質膜と接する第1の層部分と、前記ガス拡散層と接する第2の層部分と、前記第1と第2の層部分の間に位置する第3の層部分と、を有し、
前記第1と第2の層部分のそれぞれのアイオノマ量は、前記第3の層部分のアイオノマ量よりも大きい、膜電極接合体。
【請求項2】
請求項1に記載の膜電極接合体であって、
前記第3の層部分の空隙率は、前記第1と第2の層部分のそれぞれの空隙率よりも大きい、膜電極接合体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の膜電極接合体であって、
前記触媒層の厚さは、2μm以上25μm以下である、膜電極接合体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の膜電極接合体であって、
前記触媒層の厚さをDとすると、
前記第1と第2の層部分の厚さはそれぞれ、0.05D以上0.45D以下であり、
前記第3の層部分の厚さは、0.1D以上0.9D以下である、膜電極接合体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟持するセパレータと、を複数積層させた積層体を備える燃料電池。
【請求項6】
電解質膜の面上に触媒層とガス拡散層とがこの順番で形成された膜電極接合体の製造方法であって、
(a)前記電解質膜の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(b)前記工程(a)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記電解質膜の面上に第1の触媒形成層を形成する工程と、
(c)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(d)前記工程(c)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2の触媒形成層を形成する工程と、
(e)前記第1の触媒形成層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面と、前記第2の触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合させて前記触媒層を形成する工程と、
(f)前記触媒層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面上に前記ガス拡散層を形成する工程と、
を含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項7】
電解質膜の面上に触媒層とガス拡散層とがこの順番で形成された膜電極接合体の製造方法であって、
前記触媒層は、前記電解質膜側から順に第1〜第N(Nは2以上の整数)の触媒積層体を積層した構成であり、
前記膜電極接合体の製造方法は、
(A)前記第1の触媒積層体を作製する工程と、
(B)前記第n(nは2〜Nの整数)の触媒積層体を作製する工程と、
(C)前記ガス拡散層を前記触媒層の面上に形成する工程と、を含み、
前記工程(A)は、
(a)前記電解質膜の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(b)前記工程(a)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記電解質膜の面上に第1の触媒形成層を形成する工程と、
(c)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(d)前記工程(c)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2の触媒形成層を形成する工程と、
(e)前記第1の触媒形成層の2つの面の内、前記電解質膜側とは反対側に位置する面と、前記第2の触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合する工程と、
を含み、
前記工程(B)は、
(f)第(n−1)の触媒積層体の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(g)前記工程(f)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで第(n−1)の触媒積層体の面上に第(2n−1)の触媒形成層を形成する工程と、
(h)所定の基材の面上に、触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを噴霧する工程と、
(i)前記工程(h)の後に、前記担体を覆うアイオノマの一部を下降させることで前記所定の基材の面上に第2nの触媒形成層を形成する工程と、
(j)前記第(2n−1)の触媒形成層の2つの面の内、前記第(n−1)の触媒積層体側とは反対側に位置する面と、前記第2nの触媒形成層の2つの面の内、前記所定の基材側とは反対側に位置する面とを接合する工程と、
を含む、膜電極接合体の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の膜電極接合体の製造方法であって、さらに、
触媒と担体とアイオノマとを含む触媒形成インクを作製するインク作製工程と、を含み、
触媒形成層を形成させる際の各工程で用いる触媒形成インクは、前記インク作製工程で作製した触媒形成インクである、膜電極接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−251140(P2010−251140A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99707(P2009−99707)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】