説明

膨張性粒状ポリマー組成物

膨張性粒状相互侵入網状ポリマー(IPN)組成物はペンタフルオロブタン膨張剤および、任意に、ヘプタフルオロプロパン少量を含む。膨張性粒状IPNは、粒状IPNの総重量を基準にして、(ι)ポリオレフィンポリマー10から80%および(n)ビニル芳香族ポリマー20から90%を含む。膨張剤は粒状相互侵入網状ポリマー内に存在する(または含浸される)。ペンタフルオロブタンは1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンであり得、ヘプタフルオロプロパンは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンであり得る。膨張剤は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンからなることがある。本発明の膨張性粒状IPN組成物は、(例えば、イソペンタンを膨張剤として含む)比較膨張性粒状IPN組成物に対して、改善された膨張剤保持値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は膨張性粒状相互侵入網状ポリマー組成物に関する。膨張性粒状ポリマー組成物は、ポリオレフィンおよびビニル芳香族ポリマーおよび膨張剤を含む粒状相互侵入網状ポリマーを含む。膨張剤はペンタフルオロブタンおよび、任意に、ヘプタフルオロプロパン少量で構成され、粒状相互侵入網状ポリマー中に共存する。相互侵入網状ポリマーは、典型的には、粒状ポリオレフィンポリマー内でのビニル芳香族モノマー組成物の重合によって形成される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは一般に公知である。相互侵入網状ポリマーは、典型的には、粒状ポリマー(例えば、ポリエチレンのような粒状ポリオレフィン材料)内でのモノマー組成物(例えば、スチレンを含むビニル芳香族モノマー組成物)の重合によって形成される。粒状ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)内での少なくとも部分的なビニル芳香族モノマー組成物(例えば、スチレン)の重合は粒状相互侵入網状ポリマーの形成を生じる。粒状相互侵入網状ポリマーは、典型的には、それぞれのポリマーの物理的混合物もしくは配合物のような、同じポリマー(もしくはモノマー)比を有する比較材料またはこれらのポリマーのモノマーから形成されるコポリマーに対して、耐衝撃性のような物理特性の改善をもたらす。これらの改善された物理特性は、より特に、以下でさらに論述されるように、膨張した粒状相互侵入網状ポリマーから調製される成型物品で立証される。
【0003】
粒状相互侵入網状ポリマー材料を膨張性にするため、典型的には、しばしば高温および高圧の条件下で、膨張剤を網状材料に注入または含浸させる。膨張剤は、一般には、6個未満の炭素原子を有する1以上のアルカン(例えば、n−ブタン、イソ−ペンタンおよび/またはn−ペンタン)を含む。その内部に膨張剤が含浸されている、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料は、典型的には、膨張器に導入する。膨張器内が高温に晒されることで膨張剤が膨張し(例えば、少なくとも部分的に揮発性になる)、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料を膨張または発泡させる。揮発性膨張剤は、典型的には、膨張プロセスの間に膨張器から排出される。
【0004】
膨張した粒状相互侵入網状ポリマーは、周囲条件での任意の貯蔵(またはエージング)の後、型に充填され、そこで高温および高圧に晒される。膨張相互侵入網状ポリマー粒子の隣接面は互いに融合し、成型物品の形成を生じる。膨張粒子中に存在し得る残留揮発性膨張剤は、典型的には、成型プロセスの間に型から排出される。
【0005】
これらに限定されるものではないが、安全性および処理ロジスティックを含む理由から、膨張剤含浸および膨張・成型操作は別の位置で行うことがしばしば望ましい。典型的には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料をポリマー製造設備で形成した後、成型設備に(非膨張形態で)輸送し、そこで膨張および成型操作を行う。膨張剤はしばしば揮発性物質であるため、含浸および膨張/成型プロセスの合間に膨張性粒状材料からこれが失われることがある。中間期間に膨張性粒状材料から失われる膨張剤が多すぎる場合、膨張プロセスの間に十分な膨張を受けられず、望ましくない物理特性(例えば、高密度)および/または審美的特性を有する成型物品を生じる。
【0006】
膨張剤の損失を最少に止めるため、膨張および成型操作に先立ち、膨張性粒状材料を低温で、および/または密封条件下に貯蔵することができる。密封容器内での、および/または低温の条件下での膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料の貯蔵および/または輸送は、一般には、輸送および貯蔵経費の増加を生じる。加えて、輸送および/または貯蔵の間の膨張性粒状材料からの膨張剤の損失は環境および/または安全性の問題を生じ得る。
【0007】
改善された膨張剤保持特性を提供する粒状膨張性相互侵入網状ポリマー組成物を開発することが望ましい。このような新たに開発された膨張性相互侵入網状ポリマー組成物から調製される成型物品が比較膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料から調製される成型物品のものとほとんど等価ではない物理特性を有することがさらに望ましい。
【0008】
米国特許第6,476,080B2号は、30℃以上および120℃未満の沸点を有する中域低沸点ヒドロフルオロカーボン;30℃未満の沸点を有する低域低沸点ヒドロフルオロカーボン;並びに低沸点アルコールおよび/または低沸点カルボニル化合物を含む発泡剤組成物を開示する。この‘080特許は、このような発泡剤組成物を含有する発泡性ポリマー組成物をも開示する。‘080特許に開示される発泡性ポリマー組成物は押出しによって調製され、スリットダイを通過させることによって膨張させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,476,080号明細書
【発明の概要】
【0010】
(発明の要旨)
本発明によると、
(a)
(i)粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、10重量パーセントから80重量パーセントの量で存在するポリオレフィンポリマー、および
(ii)粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、20重量パーセントから90重量パーセントの量で存在するビニル芳香族ポリマー;
を含む粒状相互侵入網状ポリマー、並びに
(b)ペンタフルオロブタンおよび、任意に、ヘプタフルオロプロパン少量(ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総量、例えば、総重量を基準にして)を含む膨張剤、
を含み、膨張剤が粒状相互侵入網状ポリマー内に実質的に存在する、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーが提供される。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「(メタ)アクリル酸」という用語および類似する用語は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの組み合わせを意味する。本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「(メタ)アクリル酸のエステル」という用語および「(メタ)アクリレート」のような類似する用語は、アクリル酸のエステル(またはアクリレート)、メタクリル酸のエステル(またはメタクリレート)およびこれらの組み合わせを意味する。
【0012】
操作例における以外、または他に指示される場合以外、本明細書および特許請求の範囲において用いられる成分の量、反応条件等に言及するすべての数字または表現は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】様々な粒状相互侵入網状ポリマーサンプル内に保持される膨張剤の重量パーセントの、時間に応じた、プロットのグラフ表示であり、このデータはさらにここでの実施例の表3から引き出される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な記述)
本発明によると、ポリオレフィンポリマーを含む、上に要約されるような特定の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー組成物が提供される。本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「ポリオレフィン」という用語並びに「ポリアルキレン」および「熱可塑性ポリオレフィン」のような類似する用語は、1以上のポリオレフィンホモポリマー、1以上のポリオレフィンコポリマー、1以上の均一ポリオレフィン、1以上の不均一ポリオレフィンおよびこれらの2以上の配合物を意味する。説明の目的では、ポリオレフィンコポリマーの例には、これらに限定されるものではないが、エチレン並びに:1以上の、1−ブテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンのような、C−C12アルファ−オレフィン;酢酸ビニル;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸;並びにC−C−(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸のエスエルの少なくとも1つから調製されるものが含まれる。
【0015】
本発明の粒状相互侵入網状ポリマーのポリオレフィンは不均一ポリオレフィン、均一ポリオレフィンまたはこれらの組み合わせから選択することができる。「不均一ポリオレフィン」という用語および類似する用語は:(i)個々のポリマー鎖の間の分子量(即ち、3以上の多分散指数;および(ii)個々のポリマー鎖の間のモノマー残基分布(コポリマーの場合)に比較的広い変動を有するポリオレフィンを意味する。「多分散指数(PDI)」という用語はM/Mの比を意味し、Mは重量平均分子量を意味し、およびMは数平均分子量を意味し、各々、ポリエチレン標準のような適切な標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。不均一ポリオレフィンは、典型的には、チーグラー・ナッタ型触媒によって不均一相において調製される。
【0016】
「均一ポリオレフィン」という用語および類似する用語は:(i)個々のポリマー鎖の間の分子量(即ち、3未満の多分散指数);および(ii)個々のポリマー鎖の間のモノマー残基分布(コポリマーの場合)に比較的狭い変動を有するポリオレフィンを意味する。このようなものとして、不均一ポリオレフィンとは対照的に、均一ポリオレフィンは、個々のポリマー鎖の間の類似する鎖長、ポリマー鎖主鎖に沿うモノマー残基の比較的均一な分布および個々のポリマー鎖主鎖の間での比較的類似するモノマー残基の分布を有する。均一ポリオレフィンは、典型的には、シングルサイト、メタロセンまたは拘束幾何触媒によって調製される。均一ポリオレフィンコポリマーのモノマー残基分布は組成分布幅指数(composition distribution breadth index)(CDBI)値によって特徴付けることができ、これはメジアン総モルコモノマー含有率の50パーセント以内のコモノマー残基含有率を有するポリマー分子の重量パーセントと定義される。このようなものとして、ポリオレフィンホモポリマーはー100パーセントのCDBI値を有する。例えば、均一ポリエチレン/アルファ−オレフィンコポリマーは、典型的には、60パーセントを上回るか、または70パーセントを上回るCDBI値を有する。組成分布幅指数値は、Wild et al,Journal of Polymer Science,Poly.Phys.Ed.,Vol.20,p.441 (1982)によって記述され、または米国特許第4,798,081号もしくは米国特許第5,089,321号に記述される昇温溶離分別(TREF)のような、当分野において認知される方法によって決定することができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィンはポリエチレンである。「ポリオレフィン」という用語に関して本明細書に示される説明によると、「ポリエチレン」という用語は、ポリエチレンホモポリマー、ポリエチレンコポリマー、均一ポリエチレン、不均一ポリエチレン;2以上のこれらこのようなポリエチレンの配合物;およびポリエチレンと他のポリマー(例えば、ポリプロピレン)との配合物を意味する。
【0018】
本発明において用いることができるポリエチレンコポリマーは、典型的には:エチレンモノマー残基少なくとも50重量パーセント、より典型的には、少なくとも70重量パーセント;および非エチレンコモノマー残基(例えば、酢酸ビニルモノマー残基)50重量パーセント以下、より典型的には、30重量パーセント以下を含む。各々の場合における重量パーセントはモノマー残基の総重量に基づく。ポリエチレンコポリマーはエチレンおよびエチレンと共重合可能であるあらゆるモノマーから調製することができる。エチレンと共重合可能であるモノマーの例には、これらに限定されるものではないが、1−ブテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンのようなC−C12アルファ−オレフィン;酢酸ビニル;塩化ビニル;(メタ)アクリル酸;並びに(メタ)アクリル酸のエステルが含まれる。
【0019】
本発明において用いることができるポリエチレン配合物は、典型的には:ポリエチレンポリマー(例えば、ポリエチレンホモポリマーおよび/またはコポリマー)少なくとも50重量パーセント、より典型的には、少なくとも60重量パーセント;およびポリエチレンポリマーとは異なる他のポリマー(例えば、ポリプロピレン)50重量パーセント以下、より典型的には、40重量パーセント以下を含む。各々の場合における重量パーセントは総ポリマー配合物重量に基づく。ポリエチレン配合物はポリエチレンおよびこれらの適合性であるあらゆる他のポリマーから調製することができる。ポリエチレンと配合することができるポリマーの例には、これらに限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、塩化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、酢酸ビニル−エチレンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマーおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
本発明の一実施形態において、ポリエチレンポリマーは:低密度ポリエチレン;中密度ポリエチレン;高密度ポリエチレン;エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー;エチレンおよびブチルアクリレートのコポリマー;エチレンおよびメチルメタクリレートのコポリマー;ポリエチレンおよびポリプロピレンの配合物;ポリエチレン並びにエチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーの配合物;並びにポリエチレン並びにエチレンおよびプロピレンのコポリマーの配合物から選択される。
【0021】
特定の実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、エチレンモノマー並びに、任意に、C−C−アルファ−オレフィンモノマー(例えば、プロピレンおよび/またはブチレン)のようなエチレン以外のアルファ−オレフィンモノマー、酢酸ビニル、C−C−(メタ)アクリレートのようなC−C20−(メタ)アクリレートおよびこれらの組み合わせから選択されるコモノマーを含むオレフィンモノマー組成物から調製される。典型的には、エチレンモノマーはオレフィンモノマー組成物中に、このオレフィンモノマー組成物の総重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの量で存在する。
【0022】
本発明のさらなる実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、エチレンモノマー(例えば、オレフィンモノマー組成物の総重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントのエチレンモノマー)および酢酸ビニルを含むオレフィンモノマー組成物から調製される。より特に、ポリオレフィンポリマーは、75重量パーセントから99重量パーセントの量のエチレンモノマー残基および1重量パーセントから25重量パーセントの量の酢酸ビニルモノマー残基を含む、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーであるポリエチレンポリマーである。各々の場合における重量パーセントはモノマー残基の総重量に基づく。特定の実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、各々の場合においてモノマー残基の総重量を基準にして、エチレンモノマー残基95重量パーセントおよび酢酸ビニルモノマー残基5重量パーセントを含む、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーであるポリエチレンポリマーである。本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、モノマー残基重量パーセント値は、このポリオレフィンポリマーを調製する、オレフィンモノマー組成物内に存在する対応モノマーの重量パーセントと実質的に等価である。
【0023】
ポリオレフィンポリマーは、典型的には、粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、80重量パーセント以下、より典型的には65重量パーセント以下、さらに典型的には50重量パーセント以下の量で存在する。ポリオレフィンポリマーは、典型的には、粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、10重量パーセント以上、より典型的には15重量パーセント以上、さらに典型的には20重量パーセント以上の量で存在する。本発明の粒状相互侵入網状ポリマー中に存在するポリオレフィンポリマーの量は、列挙される値を含めて、これらの上方値および下方値のあらゆる組み合わせの間の範囲を取り得る。例えば、ポリオレフィンポリマーは粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、10から80重量パーセント、より典型的には15から65重量パーセント、さらに典型的には20から50重量パーセントの量で存在し得る。
【0024】
本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーはビニル芳香族ポリマーをも含む。本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「ビニル芳香族ポリマー」という用語は、1以上のビニル芳香族ホモポリマー、1以上のビニル芳香族コポリマーおよびこれらの配合物を意味する。
【0025】
ビニル芳香族ポリマーは、1種類以上のビニル芳香族モノマーおよび、任意に、少なくとも1種類のビニル芳香族モノマーではないコモノマーから調製することができる。一実施形態において、ビニル芳香族ポリマーは:(i)ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の総重量を基準にして、70重量パーセントから99重量パーセント(または90から98重量パーセント、または92.5から97.5重量パーセント)の量で存在するビニル芳香族モノマー;および(ii)ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の総重量を基準にして、1重量パーセントから30重量パーセント(または2から10重量パーセント、または2.5から7.5重量パーセント)の量で存在するコモノマーを含むビニル芳香族ポリマーモノマー組成物から調製される。
【0026】
本発明のビニル芳香族ポリマーの調製に用いることができるビニル芳香族モノマーには当業者に公知のものが含まれる。一実施形態において、ビニル芳香族モノマーはスチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンゼン、イソプロピルキシレンおよびこれらの組み合わせから選択される。
【0027】
ビニル芳香族モノマー(1以上)と重合して本発明のビニル芳香族ポリマーを形成することができるコモノマーには当業者に公知のものが含まれる。適切なコモノマーの例には、これらに限定されるものではないが:C―C20−またはC−C−(メタ)アクリレート(例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレート)のような(メタ)アクリレート;アクリロニトリル;酢酸ビニル;ジアルキルマレエート(例えば、ジメチルマレエートおよびジエチルマレエート);および無水マレイン酸が含まれる。コモノマーは、ジエン(例えば、1,3−ブタジエン)のような多エチレン性不飽和モノマー;1以上のアルキレングリコール反復単位を有するアルキレングリコールのジ−(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ−(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ−(メタ)アクリレートおよび、3から100反復単位のように、3以上のエチレングリコール反復単位を有するポリ(エチレングリコール)ジ−(メタ)アクリレート);トリメチロールプロパンジ−およびトリ−(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ−、トリ−およびテトラ−(メタ)アクリレート;並びにジビニルベンゼンから選択することもできる。多エチレン性不飽和モノマーは、典型的には、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物中に、このビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の総重量を基準にして、5重量パーセント以下、より典型的には、3重量パーセント以下(例えば、0.5から1.5または2重量パーセント)の量で存在する。
【0028】
一実施形態において、ビニル芳香族ポリマーは、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)および、少なくとも1種類のC−C−(メタ)アクリレート(例えば、ブチル(メタ)アクリレート)のような、C−C20−(メタ)アクリレートを含むビニル芳香族ポリマーモノマー組成物から調製される。特定の実施形態において、ビニル芳香族ポリマーは、スチレンおよびブチルアクリレート(例えば、各々の場合において総モノマー重量を基準にして、97重量パーセントのスチレンおよび3重量パーセントのブチルアクリレート)を含むビニル芳香族ポリマーモノマー組成物から調製される。
【0029】
ビニル芳香族ポリマーは、典型的には、粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、90重量パーセント以下、より典型的には85重量パーセント以下、さらに典型的には80重量パーセント以下の量で存在する。ビニル芳香族ポリマーは、典型的には、粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、20重量パーセント以上、より典型的には35重量パーセント以上、さらに典型的には50重量パーセント以上の量で存在する。本発明の粒状相互侵入網状ポリマー中に存在するビニル芳香族ポリマーの量は、列挙される値を含めて、これらの上方値および下方値のあらゆる組み合わせの間の範囲を取り得る。例えば、ビニル芳香族ポリマーは粒状相互侵入網状ポリマー中に、この粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、20から90重量パーセント、より典型的には35から85重量パーセント、さらに典型的には50から80重量パーセントの量で存在し得る。
【0030】
ポリオレフィンポリマー(例えば、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー)およびビニル芳香族ポリマー(例えば、スチレンおよびブチルアクリレートのコポリマー)が一緒になって本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの粒状相互侵入網状ポリマーを形成する。典型的には、相互侵入網状ポリマーは、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物を予め形成された/重合されたポリオレフィン粒子の実質的に内部で重合させることによって調製する。一般には、ポリオレフィン粒子にビニル芳香族ポリマーモノマー組成物および、過酸化物開始剤のような、1種類上の開始剤を注入または含浸させる。その後、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物を重合させる。手元の証拠に基づくと、いかなる理論によっても拘束されることを意図するものではないが、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合は実質的にポリオレフィン粒子内で生じるものと信じられる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは:(a)ポリオレフィンポリマーを粒状ポリオレフィンポリマーの形態で提供すること;および(b)ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物を実質的に粒状ポリオレフィンポリマー内で重合させることを含む方法によって調製される。
【0032】
粒状相互侵入網状ポリマーの形成は水性または非水性条件下(例えば、有機媒体の存在下)で行うことができる。典型的には、粒状相互侵入網状ポリマーの形成は水性条件下で行う。
【0033】
水性条件下で行うとき、ポリオレフィン粒子を、典型的には、まず水(例えば、脱イオン水)および懸濁剤の組み合わせに懸濁させる。当業者に公知である多くの懸濁剤を用いることができる。本発明の相互侵入網状ポリマーの形成に用いることができる懸濁剤のクラスには、これらに限定されるものではないが:水溶性高分子量物質(例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロースおよびポリビニルピロリドン);僅かに、またはかろうじて水溶性である無機物質(例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウムおよび炭酸カルシウム);およびナトリウムドデシルベンゼンスルホネートのようなスルホネートが含まれる。一実施形態においては、リン酸三カルシウムおよびナトリウムドデシルベンゼンスルホネートの組み合わせが懸濁剤として粒状相互侵入網状ポリマーの調製において用いられる。
【0034】
懸濁剤は水性媒体内でポリオレフィン粒子の懸濁が生じるような量で存在することができる。典型的には、懸濁剤は、水および懸濁剤(1種類以上)の総重量を基準にして、0.01から5重量パーセント、より典型的には、1から3重量パーセントの量で存在する。
【0035】
ポリオレフィン粒子は、一般には、撹拌しながら、予め形成された水および懸濁剤組成物に添加される。その代わりに、ポリオレフィン粒子、水および懸濁剤を同時に共に混合することもできる。ポリオレフィン粒子の量に対する、存在する水の量は、広範に変化し得る。ポリオレフィン粒子を有効に懸濁させ、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の添加、注入および重合を可能にするため、十分な水が存在する。典型的には、水のポリオレフィン粒子に対する重量は0.7:1から5:1、より典型的には、3:1から5:1である。
【0036】
水の粒状ポリマー材料に対する重量比は、粒状相互侵入網状ポリマーを形成するプロセスの間、変化し得る。例えば、水のポリオレフィン粒子に対する重量比は最初は5:1であり得、時間に伴うビニル芳香族ポリマーモノマーの導入および重合に従い、水の形成されつつある/形成された粒状相互侵入網状ポリマーに対する重量比は、事実上、相応に低下し得る(例えば、1:1まで)。
【0037】
典型的には、次に、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物および開始剤を粒状ポリオレフィンの水性懸濁液に添加する。開始剤は、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物と予め混合して、これらと同時に、および/またはこれらに続いて添加することができる。ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物とは別に添加する場合、当業者に公知のように、開始剤は単独で、またはトルエンもしくは1,2−ジクロロプロパンのような有機溶媒に溶解して添加することができる。典型的には、開始剤をビニル芳香族ポリマーモノマー組成物と予め混合し(例えば、そこに溶解し)、これらの混合物をポリオレフィン粒子の水性懸濁液に添加する。
【0038】
ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合に適する1種類以上の開始剤を用いることができる。適切な開始剤の例には、これらに限定されるものではないが:過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過安息香酸t−ブチルおよびt−ブチルペルオキシピバレートのような有機過酸化物;並びにアゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルのようなアゾ化合物が含まれる。
【0039】
ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合は連鎖移動剤の存在下で行うこともでき、この連鎖移動剤は生じるビニル芳香族ポリマーの分子量の制御に役立つ。用いることができる連鎖移動剤の例には、これらに限定されるものではないが:n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタンおよびn−ブチルメルカプタンのようなC15アルキルメルカプタン;並びにアルファメチルスチレンダイマーが含まれる。
【0040】
開始剤は、一般には、少なくとも、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物のモノマーの実質的にすべてを重合するのに十分な量存在する。典型的には、開始剤は、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物および開始剤の総重量を基準にして、0.05から2重量パーセント、より典型的には、0.1から1重量パーセントの量で存在する。
【0041】
ポリオレフィン粒子内でのビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合は、一般には、反応混合物への熱の導入を含む。例えば、反応器の内容物を60°から120°の温度に少なくとも1時間(例えば、8から20時間)、密閉容器(または反応器)内、不活性雰囲気下(例えば、窒素掃引)で、当分野で認められる手順に従って加熱することができる。重合の完了の直後、後処理手順は、当分野で認められる方法に従い、1種類上の洗浄剤(例えば、無機酸)の導入および(例えば、遠心による)水性反応媒体からの粒状相互侵入網状ポリマーの分離を含み得る。
【0042】
本発明の一実施形態においては、粒状ポリオレフィンを架橋することができる。粒状ポリオレフィンポリマーの架橋は、ポリオレフィン粒子の重合および形成の最中、並びに/またはポリオレフィン粒子内でのビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合の最中に達成することができる。粒状ポリオレフィンポリマーの、これらの形成の最中の架橋は、当分野で認められる方法および材料に従い、多官能性開始剤および/または多エチレン性不飽和モノマーを用いることによって達成することができる。
【0043】
一実施形態においては、ポリオレフィン粒子内でのビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合と同時に粒状ポリオレフィンポリマーを架橋する。典型的には、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合と同時に行うとき、特定の有機過酸化物材料から選択される架橋剤によってポリオレフィン粒子の架橋を達成する。適切な架橋剤の例には、これらに限定されるものではないが:過酸化ジ−t−ブチル、過酸化t−ブチル−クミル、過酸化ジクミル、α,α−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン、t−ブチル−ペルオキシイソプロピル−カーボネート;LUPEROX JWEB50の商品名で商業的に入手可能なポリエーテルポリ(t−ブチルペルオキシカーボネート)のような多官能性有機過酸化物材料;およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0044】
架橋剤は、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の一部として、および/またはビニル芳香族ポリマーモノマー組成物とは別に(例えば、その前に、これと同時に、および/またはこれに続いて)導入することができる。典型的には、架橋剤をビニル芳香族ポリマーモノマー組成物と混合する(例えば、これに/これと溶解する)。架橋剤は、一般には、ポリオレフィン粒子の重量を基準にして、0.1から2重量パーセント、典型的には、0.5から1重量パーセントの量で存在する。
【0045】
(膨張剤を含浸させる前の)中間粒状相互侵入網状ポリマーは広範囲の粒子径および粒子形状を有し得る。典型的には、粒状相互侵入網状ポリマーは0.2から2.0mm、より典型的には0.8から1.5mm、さらに典型的には1.0から1.2mmの(最長粒子寸法に沿って決定される)平均粒子径を有する。粒状相互侵入網状ポリマーは、球状形状、長円形状、棒様形状、不規則形状およびこれらの組み合わせから選択される形状を有し得る。より典型的には、粒状相互侵入網状ポリマーは球状形状および/または長円形状から選択される形状を有する。粒状相互侵入網状ポリマーは1:1から4:1(例えば、1:1から2:1)のアスペクト比を有し得る。
【0046】
粒状相互侵入網状ポリマーの形成を通して1以上の点で、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーが形成されるように膨張剤を導入することができる。例えば、膨張剤を粒状相互侵入網状ポリマーに:ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合と同時に;ポリエチレン粒子の重合を行う前に;重合および架橋工程の完了後で後処理工程の前に;並びに/または後処理工程の後に、導入することができる。含浸プロセスはビニル芳香族モノマー重合を行うのと同じ容器内で、および/または別の容器内で行うことができる。
【0047】
典型的には、(例えば、洗浄剤の添加および水性反応媒体からの分離による)粒状相互侵入網状ポリマーの後処理の後、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーが形成されるように、膨張剤を粒状相互侵入網状ポリマーに導入する。本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの膨張剤は、ペンタフルオロブタンおよび、任意に、ヘプタフルオロプロパン少量(即ち、ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総重量を基準にして、ヘプタフルオロプロパン49重量パーセント以下)からなるか、または本質的になる。
【0048】
膨張剤は、典型的には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー中に、(膨張剤の重量を含む)膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、20重量パーセント以下、より典型的には15重量パーセント以下、さらに典型的には12重量パーセント以下の量で存在する。膨張剤は、典型的には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー中に、(膨張剤の重量を含む)膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、1重量パーセント以上、より典型的には1.5重量パーセント以上、さらに典型的には3重量パーセント以上の量で存在する。本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー中に存在する膨張剤の量は、列挙される値を含めて、これらの上方値および下方値のあらゆる組み合わせの間の範囲を取り得る。例えば、膨張剤は本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー中に、(膨張剤の重量を含み、および列挙される値を含めて)膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、1または1.5重量パーセントから20重量パーセント、より典型的には1.5重量パーセントから15重量パーセント、さらに典型的には3重量パーセントから12重量パーセントの量で存在し得る。
【0049】
膨張剤がペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの両者を含むとき、ペンタフルオロブタンが多量に存在し(即ち、ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総重量を基準にして、51重量パーセント以上のペンタフルオロブタン)、ヘプタフルオロプロパンが少量で存在する(即ち、ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総重量を基準にして、ヘプタフルオロプロパン49重量パーセント以下)。より特に、膨張剤がペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの両者を含むとき、ペンタフルオロブタンは、ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総重量を基準にし、列挙される値を含めて、51重量パーセントから99重量パーセント、典型的には60重量パーセントから99重量パーセント、より典型的には70重量パーセントから99重量パーセント、さらに典型的には85重量パーセントから99重量パーセントの量で存在し得る。膨張剤がペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの両者からなるとき、ヘプタフルオロプロパンは、ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンの総重量を基準にし、列挙される値を含めて、1重量パーセントから49重量パーセント、典型的には1重量パーセントから40重量パーセント、より典型的には1重量パーセントから30重量パーセント、さらに典型的には1重量パーセントから15重量パーセントの量で存在し得る。
【0050】
ペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンは、各々独立に、これらの1以上の構造的異性体から選択することができる。本発明の一実施形態において、ペンタフルオロブタンは1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンであり、ヘプタフルオロプロパンは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンである。一実施形態において、膨張剤は1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン多量および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン少量を含むか、またはこれらから本質的になり、多量および少量はペンタフルオロブタンおよびヘプタフルオロプロパンに関してここで前に列挙される量および範囲から選択される。例えば、膨張剤は、膨張剤の総重量を基準にして、85から99重量パーセント(例えば、87または93重量パーセント)の量で存在する1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび、膨張剤の総重量を基準にして、1から15重量パーセント(例えば、13または7重量パーセント)の量で存在する1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンを含み得るか、またはこれらから本質的になり得る。一実施形態において、膨張剤は、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンまたは他のあらゆる膨張剤の非存在下で、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンのみからなるか、または本質的になる。
【0051】
膨張剤は、典型的には、高圧および高温の条件下で粒状相互侵入網状ポリマーに導入される。膨張剤は、液体懸濁媒体(例えば、水および/または有機溶媒)の存在下であっても、これらの非存在下であっても、粒状相互侵入網状ポリマーに導入することができる。例えば、別の液体懸濁媒体なしで(例えば、水なしで)、粒状相互侵入網状ポリマーを膨張剤のみに分散させ、高温および高圧に晒すことができる。
【0052】
液体懸濁媒体なしで粒状相互侵入網状ポリマーに膨張剤を含浸させるとき、乾燥(または無水)含浸法を用いることができる。例えば、高温(例えば、25℃を超えて70℃まで、または50℃から60℃)の条件下で、発泡剤を(任意に回転する容器内で形成される)粒状相互侵入網状ポリマーの流動床に導入することができる。
【0053】
典型的には、液体媒体の存在下、特には、水の存在下、水性条件下で、膨張剤を粒状相互侵入網状ポリマーに含浸させる。特には、水中の粒状相互侵入網状ポリマー材料および懸濁剤の懸濁液を密閉容器内で形成する。懸濁剤は、粒状相互侵入網状ポリマーの形成に関して本明細書において前に列挙されるクラスおよび例から選択することができる。次に、撹拌しながら、不活性雰囲気(例えば、窒素掃引)下で、膨張剤を容器に導入する。容器の内容物の温度を上昇させ(例えば、40℃から120℃まで)、粒状相互侵入網状ポリマーへの膨張剤の注入(または含浸)を生じるのに十分な時間(例えば、4から8時間)保持する。次いで、膨張剤が含浸された粒状相互侵入網状ポリマー(即ち、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー)を(例えば、遠心によって)水性含浸媒体から分離する。
【0054】
(膨張剤を含浸させた後の)膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは広範囲の粒子径および粒子形状を有し得る。典型的には、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは(膨張剤を含浸させる前の)中間粒状相互侵入網状ポリマーのものに実質的に類似する形状および粒子径を有する。例えば、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、典型的には、0.2から2.0mm、より典型的には0.8から1.5mm、さらに典型的には1.0から1.2mmの(最長粒子寸法に沿って決定される)平均粒子径を有する。膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、球状形状、長円形状、棒様形状、不規則形状およびこれらの組み合わせから選択される形状を有し得る。より典型的には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは球状形状および/または長円形状から選択される形状を有する。膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは1:1から4:1(例えば、1:1から2:1)のアスペクト比を有し得る。
【0055】
貯蔵の際、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、典型的には、これらから膨張剤の幾らかを失う。いかなる理論によっても拘束されることを意図するものではないが、手元の証拠に基づくと、膨張剤は、粒子の外部への膨張剤の拡散によって膨張性粒状相互侵入網状ポリマーから失われるものと信じられる。失われる膨張剤が多すぎる場合、この粒状相互侵入網状ポリマーは十分に膨張性ではない。このようなものとして、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーを膨張剤保持値に関して特徴付けることができる。膨張剤保持値は、特定の期間および特定の指定条件下での貯蔵の後に膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料内に依然として残留する膨張剤の量を示す。膨張剤保持値は重量パーセント値として表すことができ、膨張性粒状材料内に元来、または初めに、存在する膨張剤の重量に基づくものである。このようなものとして、より大きい膨張剤保持値が望ましく、一方、より小さい膨張剤保持値は望ましくない。
【0056】
時間に応じて失われる膨張剤の量は、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料を低温で(例えば、5℃から15℃の温度で)、および/または密封容器内で貯蔵することによって減少または最少化することができる。前に論じられるように、このようなさらなる尺度は、典型的には、貯蔵および/または輸送経費の増加を生じる。従って、周囲条件下での膨張性粒状材料からの膨張剤損失の量の減少が望ましい。
【0057】
一般には、膨張剤の元の重量を基準にして、50重量パーセント以上の膨張剤保持値が望ましい。50重量パーセント未満、例えば、40重量パーセント以下、特には、30重量パーセント以下の膨張剤保持値は、粒状相互侵入網状ポリマー材料が十分に膨張性ではない可能性があり、このようなものとして、高い耐衝撃性および低密度のような望ましい物理的特性を有する膨張粒状成型物品の調製に用いることができない可能性があるため、望ましいものではない。
【0058】
一実施形態において、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、膨張剤の元の重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの膨張剤保持値を有する。さらなる実施形態において、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、膨張剤の元の重量を基準にして、少なくとも60重量パーセントの膨張剤保持値を有する。膨張剤保持値の上限は100重量パーセントであるが、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、典型的には、膨張剤の元の重量を基準にして、90重量パーセント以下、80重量パーセント以下、または70重量パーセント以下のような100パーセント未満の膨張剤保持値を有する(通常、幾らかの膨張剤が時間の経過と共に膨張性粒状相互侵入網状ポリマーから失われるため)。本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの膨張剤保持値は、列挙される値を含めて、これらの上方値および下方値のあらゆる組み合わせの間の範囲を取り得る。例えば、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、膨張剤の元の重量を基準にして(列挙される値を含めて)、50重量パーセントから100重量パーセント未満、または50から90重量パーセント、または60から80重量パーセント、または60から70重量パーセントの膨張剤保持値を有し得る。
【0059】
膨張剤保持値は、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの単層を、開放容器(例えば、トレー)において:約25℃の温度(例えば、25℃+/−2℃);約1気圧の圧力(例えば、1atm+/−0.2atm);および7日の期間(例えば、168時間)の条件に晒すことによって決定される。本明細書および特許請求の範囲において用いられる場合、「膨張剤保持値」は、本明細書の実施例において「膨張剤保持評価」の見出しで示される説明に従ってさらに決定され、および定義される。
【0060】
本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、任意に、トルエン、エチルベンゼンおよび/またはリモネンのような可塑剤をさらに含むことができる。特に好ましい可塑剤はリモネンである。いかなる理論によっても拘束されることを意図するものではないが、現在手元にある証拠に基づくと、リモネン材料は、少なくとも幾らかの程度まで可塑剤として作用することに加えて、またはその代わりに、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー内で膨張剤としても作用し得るものと信じられる。リモネン材料はd−リモネン、I−リモネン、d/I−リモネンまたはこれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態において、リモネン材料はd−リモネンから選択される。リモネン材料は、典型的には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量(リモネンの重量を含む)を基準にして、0.1から5重量パーセント、より典型的には、0.1から1重量パーセントの量で存在する。
【0061】
リモネン材料は、膨張剤の導入/含浸の前、これと同時、またはこれに続いて粒状相互侵入網状ポリマーに導入することができる。リモネン材料は、通常、膨張剤と同時に粒状相互侵入網状ポリマーに導入される。例えば、リモネンおよび(例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび、任意に、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンで構成される)膨張剤を予め一緒に混合した後、本明細書において前述されるように、含浸プロセスの間に粒状相互侵入網状ポリマーに一緒に導入する。
【0062】
本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、任意に、添加物を含むことができる。添加物の例には、これらに限定されるものではないが:着色剤(例えば、染料および/または顔料);紫外線吸収剤;酸化防止剤;帯電防止剤;難燃材;充填剤(例えば、粘土);および、典型的にはワックス(例えば、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィンワックス)の形態にある、成核剤が含まれる。添加物は膨張性粒状相互侵入網状ポリマー中に、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、独立に0.1重量パーセントから10重量パーセントの量のような機能的に十分な量で存在し得る。添加物は、膨張性粒状相互侵入網状ポリマーまたはこれらのあらゆる成分の形成の間のあらゆる点で導入することができる。例えば、添加物の少なくとも幾らかは、ポリオレフィンポリマーに、この重合の間および/または重合の後に溶融配合(例えば、押出し)によって導入することができる。その代わりに、添加物の少なくとも幾らかは、ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の重合の間に導入することができる。さらにその代わりに、添加物の少なくとも幾らかは、粒状相互侵入網状ポリマーの形成後および膨張剤でのこれらの含浸の前、並びに/または含浸プロセスと同時に、導入することができる。
【0063】
本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーは、膨張した粒状相互侵入網状ポリマーを含む成型物品の調製に用いることができる。一般には、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料を膨張器に導入し、(例えば、膨張器に蒸気を通過させることより)高温に晒す。高温に晒すことで、膨張剤が粒状相互侵入網状ポリマー材料を膨張させる。任意の貯蔵またはエージング期間の後、膨張した相互侵入網状ポリマー材料を型に導入し、そこで高温および高圧に晒す。膨張した相互侵入網状ポリマー材料の表面の隣接部分は共に融合し、残留する膨張剤は、存在するのであれば、型から排出される。膨張剤は、膨張器および型から補足し、単離して再利用するか熱分解することができ、または大気に排出することもできる。成型物品はその後に型から取り出し、そのまま用いることも、切断、ヤスリがけおよび成形のような成型後操作を施すこともできる。
【0064】
本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーから調製することができる成型物品の例には、これらに限定されるものではないが:輸送容器および食品容器のような容器;包装組立品において用いられるクッションまたは衝撃要素(impact elements);浮遊装置;並びに建築パネル(例えば、ドア、壁、仕切りおよび隔壁)および、サーフボードのような、娯楽物品の芯材が含まれる。説明のためではあるが、包装組立品には、その内部に保持される、本発明の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーから組み立てられるクッション要素を有する、段ボール箱のような箱が含まれ得る。これらのクッション要素は、品物(例えば、フラットスクリーンTV)の一部を受容するような寸法にし、これにより、そうしなければこの品物に損傷を生じる、輸送中の衝撃からこの品物を保護することができる。
【0065】
以下の例において本発明をより具体的に説明するが、これらの例は、これらにおける多くの変更および変形が当業者に明らかであろうため、例証のみを行おうとするものである。他に指定されない限り、すべての部およびすべてのパーセンテージは重量基準である。
【実施例】
【0066】
(実施例A)
本明細書においてさらに説明される膨張例において用いられる粒状相互侵入網状ポリマーは以下の説明に従って調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
チャージ1を、温度制御可能ジャケット、モーター駆動インペラ、窒素掃引および少なくとも1つの供給ポートを有する、空の454.6リットル(100ガロン)ステンレス鋼容器に加えた。窒素掃引の下、毎分86回転で回転するインペラによってもたらされる持続的な撹拌を伴いながらではあるが、反応器内容物は85℃の温度に上昇した。
【0069】
次に、チャージ2を、持続的に撹拌しながら、反応器の内容物に添加した。
【0070】
チャージ3を、持続的に撹拌しつつ(毎分86回転で回転するインペラによってもたらされる)、窒素掃引の下、反応器の内容物を85℃の温度で維持しながら、4.4時間の期間にわたって反応器に滴下により添加した。チャージ3の添加が完了した直後、持続的に撹拌し、窒素掃引しながら、反応器の内容物を153分の期間にわたって143℃の温度まで上昇させ、次いで143℃で2.5時間保持した。
【0071】
143℃で2.5時間の保持が完了した後、反応器の内容物を(約25℃の)周囲温度まで冷却して下流洗浄容器(またはケトル)に放出し、内容物が1.8のpH値を有するまでそこでチャージ4を添加した。典型的には、1.8のpH値を達成するのに、チャージ4の約8.2から11.5リットルを添加する。
【0072】
次に、反応器の内容物を遠心器に移し、回転によって脱水した。乾燥した相互侵入網状ポリマー粒子を遠心器から回収した後、ふるいがけして:0.869mm未満の平均径;および2.449mmを上回る平均粒子径を有する粒子を除去した。乾燥させ、ふるいがけした相互侵入網状ポリマー粒子を、以下の例の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの調製に用いた。
【0073】
(実施例1)
比較含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を以下の説明に従って調製した。CALSOFT F90ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート(Pilot Chemical Corporationから商業的に入手)を、脱イオン水887グラムを収容する、温度制御可能ジャケット、モーター駆動インペラ、窒素ブランケットおよび少なくとも1つの供給ポートを有する2リットルステンレス鋼容器に0.04グラムの量で添加した。周囲温度で持続的に撹拌しながら、実施例Aの粒状相互侵入網状ポリマー814グラムを容器に添加した。容器を密閉し、これらの内容物を700rpmの速度、周囲温度、窒素ブランケットの下で撹拌した。
【0074】
(Florida Chemical Companyから商業的に入手し、95重量%の純度を有する)d−リモネン2.9グラムおよび(膨張剤としての)イソペンタン99.3グラムで構成される組成物を、持続的に撹拌しつつ容器の内容物を70℃の温度まで加熱しながら、10ml/分の速度で容器に導入した。容器の内容物が70℃の温度に到達するのに約18分を要した。次に、(イソペンタンおよびd−リモネンの添加を含む)容器の内容物を、持続的に撹拌しながら窒素ブランケットの下で1.5時間、70℃で保持した後、容器の内容物を室温まで冷却した。比較含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を容器から取り出し、遠心器において脱水した。この例の含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料の物理的特性および試験結果を表1、2および3にまとめる。
【0075】
(実施例2から4)
本発明による含浸された、従って膨張性の、粒状相互侵入網状ポリマー材料を以下の説明に従って調製した。(Pilot Chemical Corporationから商業的に入手した)CALSOFT F90ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートを、脱イオン水887グラムを収容する、温度制御可能ジャケット、モーター駆動インペラ、窒素ブランケットおよび少なくとも1つの供給ポートを有する2リットルステンレス鋼容器に0.04グラムの量で添加した。周囲温度で持続的に撹拌しながら、実施例Aの粒状相互侵入網状ポリマー814グラムを容器に添加した。容器を密閉し、これらの内容物を、700rpmの速度、周囲温度、窒素ブランケットの下で撹拌し、4.5℃/分の速度で60℃まで加熱した。
【0076】
(Florida Chemical Companyから商業的に入手し、95重量%の純度を有する)d−リモネン2.9グラム並びに(膨張剤としての)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび、任意に、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン101.9グラムで構成される組成物を4.6ml/分の速度で容器に導入した。1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン単独の場合(実施例2)、添加の最中に、持続的に撹拌しながら、容器の内容物を95℃の温度まで加熱した。1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンの配合物の場合(実施例3および4)、添加の最中に、持続的に撹拌しながら、容器の内容物を85℃の温度まで加熱した。1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンの重量比は表1に列挙される。実施例2の場合、容器の内容物が95℃の温度に到達するのに約15分を要した。実施例3および4の場合、容器の内容物が85°の温度に到達するのに約10分を要した。次に、(d−リモネン、ペンタフルオロブタンおよび、任意に、ヘプタフルオロプロパンの添加を含む)容器の内容物を、持続的に撹拌しながら窒素ブランケットの下で6時間、実施例2の場合には95℃で、実施例3および4の場合には85℃で保持した後、容器の内容物を室温まで冷却した。本発明による含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を容器から取り出し、遠心器において脱水した。実施例2から4の含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料の物理的特性および試験結果を表1、2および3にまとめる。
【0077】
【表2】

【0078】
膨張評価
実施例1から4の含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を以下の説明に従って評価し、これらの膨張性を決定した。含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料約10グラムを、基部に蒸気ポート、頂部に排出口および容器の中間部に位置する熱電対が取り付けられた2.5リットル円筒状ステンレス鋼容器に導入した。この容器を密閉し、弁の手動制御によってこれらの基部に蒸気を導入した。導入された蒸気は含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を上方に向けて通過し、容器頂部の排出口を通して排出された。排出口は、表2に列挙される保持温度に関連付けられる飽和蒸気圧に相当する、容器内の背圧をもたらすように調整された。各々の場合において、表2に列挙される保持温度に到達するのに約10秒を要した。表2に列挙される時間だけ保持した後、蒸気弁を手動で閉鎖し、容器を開けて膨張した粒状相互侵入網状ポリマー材料をそこから取り出した。
【0079】
【表3】

【0080】
本発明の含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料(例えば、実施例2、3および4)は、比較含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料(例えば、実施例1)のものに対して許容し得る膨張特性を有することが見出された。この決定は、膨張した粒状相互侵入網状ポリマー材料の目視検査によって定性的に、並びに(表2にまとめられる)膨張条件および膨張した材料の密度の比較によって定量的に行った。
【0081】
膨張した粒状相互侵入網状ポリマー材料の(5cm×10cm×3.7cmの寸法を有する)成形試験サンプルを実験用成形装置において調製し、これを、密閉容器内で0.5分間、100℃の温度の蒸気に晒した。(例えば、実施例2から4によって代表される)本発明による膨張した粒状相互侵入網状ポリマー材料から調製される成型試験サンプルは、定性的目視および触覚検査により、(例えば、実施例1によって代表される)比較膨張粒状相互侵入網状ポリマー材料から調製される成型試験サンプルのものに実質的に類似する特性を有するものと決定された。
【0082】
膨張剤保持評価
実施例1から4の含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料を以下の説明に従って評価し、これらの膨張剤保持値を決定した。含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料約2グラムを円形頂部開放アルミニウムトレー(直径6.4cm;深さ1.3cm)に導入した。含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料の単層が各アルミニウムトレーの基部を覆った。初期サンプル重量を記録し、サンプル収容アルミニウムトレーを実験棚(開放および非被覆)に置いて周囲室内条件に晒した。周囲室温は約25℃から約27℃の範囲であった。サンプルを時間と共に周期的に秤量して次の重量を初期重量と比較し、以下の等式から膨張剤保持値を決定した:
A=(初期サンプル重量)×(ITVC)
B=(初期サンプル重量)−(次のサンプル重量)
膨張剤保持値=100×{(A)−(B)}/(A)
従って、膨張剤保持値は重量パーセント値であり、含浸粒状相互侵入網状ポリマー材料内に存在する膨張剤の初期重量に基づくものである。
【0083】
実施例1から4の膨張剤保持値を下記表3に示す。各々の含浸/膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料について3つの別々のサンプルを評価し、表3に示される結果は各々の場合において3サンプルから得られる膨張剤保持値の平均である。時間に応じた膨張剤保持値のグラフ表示を図に示すが、これは表3のデータから導かれたものである。
【0084】
【表4】

【0085】
表3にまとめられるデータは、(例えば、実施例2、3および4によって代表される)本発明による含浸/膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料が、(実施例1によって代表される)比較含浸/膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料に対して、実質的に改善された膨張剤保持値を有することを示す。周囲温度でのエージング168時間(1週間)の後:本発明による膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料は十分に膨張性であることが見出された;一方、比較膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料は(上記表2に対して説明される膨張評価が施されたエージング済みサンプルの定性的目視検査によって決定されるように)もはや膨張性ではないことが見出された。
【0086】
実施例1から4の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料についての、時間に応じた保持される膨張剤の重量パーセントのプロットが図に示される。図のプロットを再検討することで、実施例2、3および4によって代表される、本発明による膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料が、実施例1によって代表される比較膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料に対して、実質的に改善された膨張剤保持値を有することは明らかである。
【0087】
これらの例の前記表にまとめられる結果は、本発明による膨張性(即ち、含浸)粒状相互侵入網状ポリマー材料が、比較膨張性粒状相互侵入網状ポリマー材料に対して、膨張性および成型性のような望ましい物理的特性と併せて、実質的に改善された膨張剤保持値を有することを示す。
【0088】
本発明を、これらの特定の実施形態の具体的な詳細を参照して説明した。このような詳細が、これらが添付の特許請求の範囲に含まれる場合および含まれる程度までを除いて、本発明の範囲に対する限定とみなされることは意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性粒状相互侵入網状ポリマーであって、
(a)
(i)前記粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、10重量パーセントから80重量パーセントの量で存在するポリオレフィンポリマー、および
(ii)前記粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、20重量パーセントから90重量パーセントの量で存在するビニル芳香族ポリマー;
を含む粒状相互侵入網状ポリマー、並びに
(b)ペンタフルオロブタンおよび、任意に、ヘプタフルオロプロパン少量から本質的になる膨張剤、
を含み、前記膨張剤が前記粒状相互侵入網状ポリマー内に実質的に存在する、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項2】
前記膨張剤が、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、1重量パーセントから20重量パーセントの量で存在する、請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項3】
ペンタフルオロブタンが1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンであり、ヘプタフルオロプロパンが1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンである、請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項4】
前記膨張剤が、多量の1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび少量の1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンから本質的になる、請求項3の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項5】
前記膨張剤が、前記膨張剤の総重量を基準にして、85から99重量パーセントの量で存在する1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタンおよび、前記膨張剤の総量を基準にして、1から15重量パーセントの量で存在する1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンから実質的になる、請求項4の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項6】
請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーであって、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーが、膨張剤の元来の重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの膨張剤保持値を有し、
さらに前記膨張剤保持値が、開放容器において、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーを
25℃の温度、
1気圧の圧力、および
7日の期間
の条件に晒すことによって決定される、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項7】
請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーであって、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーが、膨張剤の元来の重量を基準にして、少なくとも60重量パーセントの膨張剤保持値を有し、
さらに前記膨張剤保持値が、開放容器において、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーを
25℃の温度、
1気圧の圧力、および
7日の期間
の条件に晒すことによって決定される、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項8】
前記ポリオレフィンポリマーが、エチレンモノマー並びに、任意に、C−C−アルファ−オレフィンモノマー、酢酸ビニル、C−C−(メタ)アクリレートおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるコモノマーを含むオレフィンモノマー組成物から調製される、請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項9】
エチレンモノマーが前記オレフィンモノマー組成物中に、前記オレフィンモノマー組成物の総重量を基準にして、少なくとも50重量パーセントの量で存在する、請求項8の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項10】
前記オレフィンモノマー組成物がエチレンモノマーおよび酢酸ビニルを含む、請求項9の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項11】
前記ビニル芳香族ポリマーが、
(i)前記ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の総重量を基準にして、70重量パーセントから99重量パーセントの量で存在するビニル芳香族モノマー、および
(ii)前記ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の総重量を基準にして、1重量パーセントから30重量パーセントの量で存在するコモノマー、
を含むビニル芳香族ポリマーモノマー組成物から調製される、請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項12】
前記ビニル芳香族モノマーが、スチレン、アルファ−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、エチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンゼン、イソプロピルキシレンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項13】
前記ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物の前記コモノマーがC−C−(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種類のメンバーを含む、請求項11の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項14】
前記ビニル芳香族モノマーがスチレンであり、並びに前記コモノマーがブチルアクリレートである、請求項12の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項15】
前記ポリオレフィンポリマーが架橋剤で架橋している、請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項16】
前記架橋剤が、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化t−ブチル−クミル、過酸化ジクミル、α,α−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン、t−ブチル−ペルオキシイソプロピル−カーボネート、ポリエーテルポリ(t−ブチルペルオキシカーボネート)およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15の膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項17】
請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーであって、前記膨張性粒状相互侵入網状ポリマーの総重量を基準にして、リモネン0.1から5重量パーセントをさらに含む、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。
【請求項18】
請求項1の膨張性粒状相互侵入網状ポリマーであって、前記粒状相互侵入網状ポリマーが:
(a)前記ポリオレフィンポリマーを粒状ポリオレフィンポリマーの形態で提供すること;および
(b)ビニル芳香族ポリマーモノマー組成物を実質的に粒状ポリオレフィンポリマー内で重合させること
を含む方法によって調製される、膨張性粒状相互侵入網状ポリマー。

【図1】
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【公表番号】特表2011−511877(P2011−511877A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546803(P2010−546803)
【出願日】平成21年1月12日(2009.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/030693
【国際公開番号】WO2009/102511
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(311000269)
【Fターム(参考)】