説明

膨潤可能な物品を有するヒドロゲル椎間板移植片

脱水されたミクロスフェアのような1つ以上の膨潤可能な物品を含む椎間板移植片。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本願は、2005年10月26日に出願されたU.S.Provisional Application Serial No.60/730,516および2006年3月22日に出願されたU.S.Provisional Application Serial No.60/784,723に対する優先権に関しそして該優先権を主張する。その全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
椎間板(spinal disc)は、髄核と呼ばれる柔軟なコアと線維輪(annulus fibrosis)と呼ばれる外側保持構造からなる。髄核と線維輪は、脊椎椎骨間に収容されており、椎骨の終板(end plates)と緊密に接触している。従って髄核は、線維輪により横方向に束縛されそして椎骨体終板(vertebral body end plates)により軸方向に束縛される。髄核、線維輪および椎骨は、脊柱外構造物(extra-vertebral column structures)、例えば、脊椎間関節(facet joints)により更に拘束される。全体として、これらの構造物は、相乗的に作用して脊柱における運動および軸方向衝撃吸収を可能とする。
【0003】
髄核は、プロテオグリカン、コラーゲンおよび水のゼリー状の組成物からなる。髄核の水含有率は若年での約90%から熟年での約40%以下までの範囲にある。水の存在は、運動および衝撃吸収のために必要な椎間板における静水圧を維持するのを助ける。ヒトが数時間横たわった後、髄核は、完全に水和され、そして脊柱はその最大高さに達する。活動と共に、上部身体からの圧力は、椎間板が少量の水を周囲の環境に損失することを引き起こす。かくして、1日にわたり、椎間板は膨潤したり収縮したりする。この膨潤および収縮サイクルは椎間板空間における圧力の増加を阻止し、線維輪を過剰の加圧から保護する。この膨潤−収縮サイクルの他の効果は、椎間板空間への栄養の輸送である。
【0004】
髄核は、老化プロセスの一部として水含有率を損失しそしてその脊柱に運動及び衝撃吸収を与える能力も減少する。更に、水の損失は、線維輪がそのネイテイブな凹形状から線維輪の線維に追加の応力を加える形状に変化することも引き起こすことがある。更に、髄核における水の損失は、椎骨間の空間の収縮を引き起こし、これは線維輪の外側表面に付着している神経線維に対して追加のストレスを引き起こすことがある。この追加のストレスは痛みをもたらすことがある。
【0005】
膨潤可能な合成物質を使用して老化または損傷した髄核を置換するという概念は、例えば、Ray et al. (U.S. Patent No. 4,772,287)、Bao et al. (U.S. Patent Nos. 5,047,055 and 5,192,326)およびStoy et al. (U.S. Patent No. 6,726,721)により教示されている。Ray et al. は、線維輪における大きな切開による髄核空間への挿入の前に部分的に脱水されている1つまたは2つの膨潤可能なシリンダーからなる移植片を記載している。この移植片は数時間にわたり膨潤するので、それは最終的には多孔性布カバーにより拘束される。移植片は約100%膨潤して、外科的に切除されたネイティブな髄核によりそれまで占められていた髄核空間を満たす。
【0006】
Bao et al. のU.S. Patent No. 5,047,055に記載の移植片は、線維輪における大きな切開により髄核に挿入される予備成形された膨潤可能なヒドロゲルである。Ray et al.に記載の移植片と違って、この装置は、ポリマー移植片を収容するための拘束ジャケットを含まない。この装置は、典型的には、横断面直径が約2mm〜10mmでありそしてロッド形状である。この装置は、脱水された状態で移植されそして装置が線維輪と終板により形成されたキャビティー内に堅く拘束されるように完全に水和させられる。この装置は、外側のサックなどの物理的拘束がないことにより等方性に膨潤する。それはロッド形状でありそして挿入のための相対的に大きな孔を線維輪に作らなければならないので、この装置は、弱化した線維輪を通しての排出(expulsion)と関連したいくらかの臨床的合併症を生じるはずである。
【0007】
Bao et al. のU.S. Patent No. 5,192,326は、弾性の半透過性サックまたはラップ中のヒドロゲルスフェアからなる移植片を教示している。多孔性ラップは、その広げた状態では、線維輪キャビティーの形状を有する。ヒドロゲルスフェアは、それらの膨潤した状態では細孔のサイズの少なくとも3倍であり、従って、ラップを通るそれらの排出を理論的に許容しない。装置の膨潤はラップにより制限される。従って、膨潤は、空間を充填するためにのみ使用されそして隣接した椎骨をエクスパンションするためのいかなる追加の膨潤圧力も及ぼさない。
【0008】
Stoy et al.(6,726,721)は、椎間板空間の軸方向エクスパンションを与えることを請求した装置を記載している。この装置は、軸方向のみの膨潤およびエクスパンションを許容するヒドロゲル−テキスタイルラミネートからなる。このアプローチは、非等方性膨潤の結果として、5〜7mmの挿入孔からの移植片の排出を軽減するという理論的利点を有する。この軸方向膨潤は、軸方向リフトも与えることができ、これは順に近くの神経の緊張を減少させるのに十分に隣接した椎骨を分離することができる。Stoy et al.のデザインは、等方性膨潤期間中に起こりうる線維輪にかけられた外向きのストレスを制限するという理論的利点も有する。反対に、この装置は、空にされた髄核の空間を完全に満たさないことがあり、従って追加の荷重を支えるのに必用な解剖学的形状に線維輪を作り直すことを強制することがある。
【0009】
膨潤可能な髄核移植片は、類似した荷重支持、空間充填および日々のリフト特性を含めて、ネイティブな髄核を模倣することを意図する。しかしながら、膨潤可能な物質単独を使用してリフティング力を十分に発生させることは困難でありうる。膨潤可能な物質は、有意な強度を失うことなく膨潤するのに十分な水を吸収することができなければならない。本発明の目的は、膨潤しそしてリフトを与える髄核移植片を提供することである。本発明の他の目的は、線維輪キャビティーから排出されそうもない髄核移植片を提供することである。
【0010】
発明の要約
本発明は、生物医学的移植片、特に椎間板髄核の置換または増加において使用するための移植片である。この移植片は、ヒドロゲルおよび1つ以上の、好ましくは複数の膨潤可能な物品を含む。得られる生物医学的移植片は、それを椎間板髄核移植片としての使用のために適当にするリフトおよび水吸収特性を有する。この移植片は、膨潤可能な物品の同時的送達を伴なうヒドロゲルのin situ形成により形成されうる。好ましい態様では、膨潤可能な物質は、脱水された膨潤可能なミクロスフェアである。
【0011】
移植片は、好ましくは膨潤可能な物品を含有する液体として移植片部位に好ましくは送達される組成物から形成され、しかる後ヒドロゲル前駆体は膨潤可能な物品を閉じ込めるヒドロゲルを形成することが望ましい。物品は、一般に流体の吸収により時間と共に膨潤する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、生物医学的移植片に関する。更に詳しくは、本発明は、椎間板髄核の置換または増加のための移植片に関する。本発明は、更に椎間板髄核を増加させるかまたは置換するための方法に関する。
【0013】
移植片は、ヒドロゲルと、ヒドロゲルに埋め込まれた1つ以上の、好ましくは複数の膨潤可能な物品を含む。「ヒドロゲル」は、その重量の少なくとも10〜90%を水として有する交錯したポリマー成分(interlaced polymer component)を有する水性相を有する物質を指す。ヒドロゲルは、望ましくは、注入可能な(injectable)組成物からin situで形成される。物品は、望ましくは、組成物と共に注入される(injected)。組成物がヒドロゲルを形成するにつれて、物品はヒドロゲル中に埋め込まれる。
【0014】
膨潤可能な物品は、好ましくは、流体を取り入れると膨潤し、従って時間と共にヒドロゲル移植片の容積を増加させるであろう、脱水された物品である。移植片は、望ましくは、それが注入される髄核空間に形状が一致するであろう。移植片は、望ましくは、10〜30%歪で約0.1〜5メガパスカルの圧縮モジュラス、約1000〜6000ニュートンの降伏荷重、60〜70%の破断点歪を有しそして生理学的条件下のサイクル荷重に耐える能力を有する。
【0015】
ヒドロゲル
ヒドロゲルは、生物適合性でありそしてヒドロゲル前駆体として椎間板髄核空間に送達されることができそしてin situでヒドロゲルに成形されうる多数の種類のいずれかであることができる。一般的に言えば、ヒドロゲル前駆体は、開始剤に応答してゲル化されうるマクロマー、モノマーまたはポリマーの溶液である。
【0016】
好ましい態様では、ヒドロゲルは、硬化可能なマクロマーの溶液から形成され、これはマクロマーが組織部位でin situで硬化されうるかさもなければ改変されうることおよび所望の位置および形状を保持するのに十分な相変化または化学変化を受けうることを意味する。ヒドロゲルは、親水性もしくは水溶性領域および1つ以上の架橋可能な領域を含む1つ以上のマクロマーから形成されうる。マクロマーは、1つ以上の分解可能なもしくは生物分解可能な領域などの他のエレメントを含むこともできる。様々な因子−主として形成されたヒドロゲルの所望される特性−は、使用するのに最も適切なマクロマーを決定する。生物適合性ヒドロゲルを形成する多くのマクロマー系を使用することができる。
【0017】
本明細書に記載の組成物に使用するための適当なマクロマーは、Bio Cure, Inc. のWO 01/68721に開示されている。他の適当なマクロマーは、Hubbell et al., のU.S. Patent No. 5,410,016、Dunn et al., のU.S. Patent No 4,938,763、Cohn et al., のU.S. Patent Nos. 5,100,992および4,826,945、De Luca et al., のU.S. Patent Nos. 4,741,872および5,160,745およびNowinski et al のU.S. Patent No. 4,511,478に開示されたマクロマーを含む。
【0018】
最も好ましい態様では、ヒドロゲルは、Bio Cure. のWO 01/68721に記載のヒドロゲルである。この刊行物は、1,2−ジオールおよび/または1,3−ジオール構造を有する単位を有するポリマーの主鎖を有するマクロマーを含む、組織嵩高化(tissue bulking)のために有用な組成物を開示している。このようなポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)および酢酸ビニルの加水分解されたコポリマー、例えば塩化ビニル、N−ビニルピロリドン等とのコポリマーを含む。主鎖ポリマーは、架橋可能な基を有する側鎖および場合により他の改変剤を含有する。マクロマーは架橋されるときヒドロゲルを形成する。
【0019】
マクロマー主鎖として使用されうるポリビニルアルコール(PVAs)は、市販のPVAs、例えばAir productsからのVinol(登録商標)107(MW22,000~31,000、98〜98.8%加水分解されている)、Polysciences 4397(MW 25,000、98.5%加水分解されている)、Chan ChunからのBF14、DuPontからのElvanol(登録商標)90−50およびUnitikaからのUF−120を含む。他の製造者は、例えば、Nippon Gohsei(Gohsenol(登録商標))、Monsanto(Gelvatol登録商標))、Wacker(Polyviol(登録商標))、Kuraray、DerikiおよびShin-Etsuである。ある場合には、Hoechst からのMowiol(登録商標)製品、特に、3−83、4−88、4−98、6−88、6−98、8−88、8−98、10−98、20−98、26−88、および40−88型を使用するのが有利である。
【0020】
例えば、加水分解されたエチレン−酢酸ビニル(EVA)または塩化ビニル−酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン−酢酸ビニルおよび無水マレイン酸−酢酸ビニルとして得られうる加水分解されたまたは部分的に加水分解された酢酸ビニルのコポリマーを使用することも可能である。マクロマー主鎖が、例えば、酢酸ビニルとビニルピロリドンとのコポリマーであるならば、市販のコポリマー、例えば、BASFからの名称Luviskol(登録商標)の下に入手可能な市販の製品を使用することがやはり可能である。特定の例は、Luviskol VA 37 HM、Luviskol VA 37 EおよびLuviskol VA 28である。マクロマー主鎖がポリ酢酸ビニルであるならば、HoechstからのMowilith 30が特に適当である。
【0021】
PVAは、好ましくは、少なくとも約2,000の分子量を有する。上限として、PVAは300,000までの分子量を有することができる。好ましくは、PVAは、約130,000まで、更に好ましくは約60,000まで、特に好ましくは約14,000までの分子量を有する。
【0022】
PVAは、通常ポリ(2−ヒドロキシ)エチレン構造を有する。PVAは、1,2−グリコールの形態のヒドロキシル基を含むこともできる。PVAは、すべての反復基が−CH−CH(OH)である完全に加水分解されたPVA、または好ましくは種々の割合の(1%〜25%)エステル側基を有する部分的に加水分解されたPVAであることができる。エステル側基を有するPVAは、構造CH−CH(OR)(式中、RはCOCH基または、PVA水溶性が保存されるかぎり、より長いアルキルである)の反復基を有する。エステル基は、PVAにある程度の疎水性および強度を付与するアセトアルデヒドアセタールまたはブチルアルデヒドアセタールにより置換されることもできる。酸化的に安定なPVAを必要とする用途のために、市販のPVAを、NaIO−KMnO酸化により分解させて小さな分子量(2000〜4000)のPVAを生じさせることができる。
【0023】
PVAは、ポリ酢酸ビニルの塩基性または酸性の、部分的または実質的に完全な加水分解により調製される。好ましい態様では、PVAは、50%より少ないアセテート単位、特に約25%より少ないアセテート単位を含む。PVAにおける残留アセテート単位の好ましい量は、アルコール単位とアセテート単位の和を基準として、約3〜25%である。
【0024】
マクロマーは、架橋されうる基を含有する少なくとも2つの側鎖を有する。基は、単一の重合可能な部分、例えばアクリレートおよびより大きい架橋可能な領域、例えばオリゴマーまたはポリマー領域を含むことが本発明で規定される。架橋剤は、望ましくは主鎖1グラム当たり約0.01〜10ミリ当量(meq/g)、更に望ましくは約0.05〜1.5ミリ当量/グラム(meq/g)の量で存在する。マクロマーは、1つより多くのタイプの架橋可能な基を含有することができる。
【0025】
側鎖は、主鎖のヒドロキシル基を介して結合されている。望ましくは、架橋可能な基を有する側鎖は、1,2−ジオールまたは1,3−ジオールヒドロキシル基に環状アセタール結合を介して結合されている。望ましい架橋可能な基は、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエステル、ビニルケトン、ビニルエーテル等を含む。特に望ましいものは、エチレン系不飽和官能基である。特に望ましい架橋剤は、マクロマー当たり約6〜21個の架橋剤の量のN−アクリロイルアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)である。
【0026】
組成物において使用するために適当な特定のマクロマーは、U.S. Patent Nos. 5,508,317、5,665,840、5,807,927、5,849,841、5,932,674 、5,939,489および6,011,077に開示されている。
【0027】
1つの態様では、架橋可能な基を含有する単位は、特に、式I
【化1】


に合致する。
上記式中、Rは直鎖状もしくは分岐状C〜Cアルキレンまたは直鎖状もしくは分岐状C〜C12アルカンである。適当なアルキレンの例は、オクチレン、ヘキシレン、ペンチレン、ブチレン、プロピレン、エチレン、メチレン、2−プロピレン、2−ブチレンおよび3−ペンチレンを含む。好ましくは、低級アルキレンRは6個まで、特に好ましくは4個までの炭素原子を有する。基エチレンおよびブチレンは特に好ましい。アルカンは、特に、メタン、エタン、n−もしくはイソプロパン、n−、sec−もしくはtert−ブタン、n−もしくはイソペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンを含む。好ましい基は、1〜4個の炭素原子、特に1個の炭素原子を含有する。
【0028】
は、水素、C〜Cアルキルまたはシクロアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはブチルでありそしてRは水素またはC〜Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルである。RおよびRは好ましくは各々水素である。
【0029】
は25個までの炭素原子を有するオレフィン系不飽和の電子吸引性の共重合可能な基である。1つの態様では、Rは、構造
【化2】


を有し、式中、n=ゼロであるならば、Rは、
【化3】


基であり、または
n=1であるならば、Rは、
【化4】


架橋であり;
は、水素またはC〜Cアルキル、例えばn−ブチル、n−もしくはイソプロピル、エチルまたはメチルであり;
nはゼロまたは1、好ましくはゼロであり;そして
およびRは、互いに独立に、水素、直鎖状もしくは分岐状C〜Cアルキル、アリールまたはシクロヘキシル、例えば下記:オクチル、ヘキシル、ペンチル、ブチル、プロピル、エチル、メチル、2−プロピル、2−ブチルまたは3−ペンチルの1つである。Rは好ましくは水素またはCH基でありそしてRは好ましくはC〜Cアルキル基である。アリールとしてのRおよびRは好ましくはフェニルである。
【0030】
他の態様では、Rは、式R−CO−(式中、Rは、2〜24個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有するオレフィン系不飽和の共重合可能な基である)のオレフィン系不飽和アシル基である。2〜24個の炭素原子を有するオレフィン系不飽和の共重合可能な基Rは、好ましくは2〜24個の炭素原子を有するアルケニル、特に2〜8個の炭素原子を有するアルケニル、特に好ましくは2〜4個の炭素原子を有するアルケニル、例えばエテニル、2−プロペニル、3−プロペニル、2−ブテニル、ヘキセニル、オクテニルまたはドデセニルである。基−CO−Rがアクリル酸またはメタクリル酸のアシル基であるように、基エテニルおよび2−プロペニルが好ましい。
【0031】
他の態様では、基Rは、式
【化5】


(式中、pおよびqはゼロまたは1であり、そして
およびR10は、各々独立に、2〜8個の炭素原子を有する低級アルキレン、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン、6〜10個の炭素原子を有する飽和二価環状脂肪族基、7〜14個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンもしくはアルキレンアリーレンまたは13〜16個の炭素原子を有するアリーレンアルキレンアリーレンであり、そして
は上記したとおりである)
で示される基である。
【0032】
低級アルキレンRまたはR10は、好ましくは2〜6個の炭素原子を有し、そして特に直鎖状である。適当な例は、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ジメチルエチレン、特に好ましくはエチレンを含む。
【0033】
アリーレンRまたはR10は、好ましくは非置換フェニレンまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシにより置換されているフェニレン、特に1,3−フェニレン、もしくは1,4−フェニレンまたはメチル−1,4−フェニレンである。
【0034】
飽和二価環状脂肪族基RまたはR10は、好ましくはシクロヘキシレンまたはシクロヘキシレン−低級アルキレン、例えば、非置換シクロヘキシレンメチレンまたは1つ以上のメチル基により置換されているシクロヘキシレンメチレン、例えば、トリメチルシクロヘキシレンメチレン、例えば二価イソホロン基である。
【0035】
アルキレンアリーレンまたはアリーレンアルキレンRまたはR10のアリーレン単位は、好ましくは、非置換フェニレンまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシにより置換されているフェニレンであり、そしてそのアルキレン単位は、好ましくは低級アルキレン、例えばメチレンまたはエチレン、特にメチレンである。従ってこのような基RまたはR10は、好ましくはフェニレンメチレンまたはメチレンフェニレンである。
【0036】
アリーレンアルキレンアリーレンRまたはR10は、好ましくは、アルキレン単位中に4個までの炭素原子を有するフェニレン−低級アルキレン−フェニレン、例えばフェニレンエチレンフェニレンである。
【0037】
基RおよびR10は、各々独立に、好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する低級アルキレン、非置換フェニレンもしくは低級アルキルにより置換されているフェニレン、非置換のまたは低級アルキルにより置換されているシクロヘキシレンもしくはシクロヘキシレン−低級アルキレン、フェニレン−低級アルキレン、低級アルキレン−フェニレンまたはフェニレン−低級アルキレン−フェニレンである。
【0038】
基−R−NH−CO−O−は、qが1であるときに存在し、そしてqがゼロであるときは存在しない。qがゼロであるマクロマーが好ましい。
【0039】
基−CO−NH−(R−NH−CO−O−)−R10−O−は、pが1であるときに存在し、そしてpがゼロであるときは存在しない。pがゼロであるマクロマーが好ましい。
【0040】
pが1であるマクロマーにおいて、qは好ましくはゼロである。pが1であり、qはゼロでありそしてR10が低級アルキレンであるマクロマーが特に好ましい。
【0041】
上記基のすべては、一置換または多置換されることができ、適当な置換基の例は、下記のもの:C〜Cアルキル、例えばメチル、エチルもしくはプロピル、−COOH、−OH、−SH、C〜Cアルコキシ(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシまたはイソブトキシなど)、−NO、−NH、−NH(C〜C)、−NH−CO−NH、−N(C〜Cアルキル)、フェニル(非置換であるかまたは例えば−OHもしくはハロゲン、例えばCl、Brもしくは特にIにより置換されている)、−S(C〜Cアルキル)、5員もしくは6員複素環式環、例えば、特にインドールもしくはイミダゾール、−NH−C(NH)−NH、フェノキシフェニル(非置換であるかまたは例えば−OHもしくはハロゲン、例えばCl、Brもしくは特にIにより置換されている)、オレフィン基、例えばエチレンもしくはビニル、およびCO−NH−C(NH)−NHである。
【0042】
好ましい置換基は、低級アルキル基、この説明において他の場合と同様にこの場合も好ましくはC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、COOH、SH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)またはハロゲンである。特に好ましいのは、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、COOHおよびSHである。
【0043】
本発明の目的で、シクロアルキルは、特にシクロアルキルであり、そしてアリールは、特に非置換フェニルまたは上記したとおりに置換されたフェニルである。
【0044】
特に好ましいマクロマーは、1.07meq/g N−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール(NAAADA)重合可能側基(約15架橋剤/鎖)で改変されたPVA主鎖(14kDa、17%アセテート含有)を有する。ある好ましい態様では、PVA主鎖は、約0〜4ミリ当量/グラムPVA(meq/g)の量で存在する疎水性改変剤アセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)によっても改変される(更に下記する)。
【0045】
コモノマー
WO 01/68721は、ヒドロゲルの特性を変化させるためのコモノマーの添加を記載している。他のコモノマーは、WO 06/004940に記載されている。最終ヒドロゲルの所望の特性に依存して、1つ以上のこれらのコモノマーを含むことが望ましいことがある。
【0046】
架橋開始剤
マクロマーのエチレン系不飽和基と任意のコモノマーは、光開始、レドックス開始または熱開始による開始を含む、遊離基開始重合により架橋されうる。これらの開始手段を使用する系は当業者に周知でありそして本明細書に教示された組成物において使用されうる。開始剤成分の所望の量は、ゲル化速度、毒性、所望されるゲル化の程度および安定性に関係した問題により決定されるであろう。
【0047】
1つの態様では、2つの部分の二成分レドックス系が使用される。この系の1つの部分は、還元剤を含有する。還元剤の例は、鉄(II)塩(グルコン酸鉄(II)二水塩、乳酸鉄(II)二水塩、または酢酸鉄(II)など)、銅(I)塩、セリウム(III)塩、コバルト(II)塩、過マンガン酸塩、マンガン(II)塩、および第三級アミン、例えばN,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン(TEDMA)である。溶液の他の半分は、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クミルペルオキシド、過硫酸カリウム、または過硫酸アンモニウムなどの酸化剤を含有する。
【0048】
レドックス溶液のいずれか一方または両方がマクロマーを含有することができ、またはマクロマーは第3の溶液中にあってもよい。還元剤を含有する溶液と酸化剤を含有する溶液を一緒にして架橋を開始する。例えばアスコルベートなどの共還元剤(coreductant)を使用し、例えば、該還元剤を再循環しそして必要な量を減少させることが望ましいことがある。これは鉄(II)をベースとする系の毒性を減少させることができる。
【0049】
熱開始は、架橋開始剤として過硫酸アンモニウムを使用しそして場合により、アミン促進剤であるN,N,N,N,−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を使用して達成されうる。
【0050】
改変剤基
マクロマーは、更に改変剤基および架橋可能な基を含むことができる。いくらかのこのような基が、U.S. Patent Nos. 5,508,317、5,665,840、5,807,927、5,849,841、5,932,674、5,939,489および6,011,077に記載されておりそして、アセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)、ブチルアルデヒドおよびアセトアルデヒドなどの疎水性改変剤、またはN−(2,2−ジメトキシエチル)スクシンアミド酸、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、およびアミノブチルアルデヒドジメチルアセタールなどの親水性改変剤を含む。これらの基は、マクロマー主鎖に結合されうるかまたは主鎖に含まれた他のモノマー単位に結合されうる。架橋可能な基および場合による改変剤基は、種々の方法で、例えばある百分率の改変されるべき1,3−ジオール単位を介して、マクロマー主鎖に結合させて、2−位置に架橋可能な基または更なる改変剤を含有する1,3−ジオキサンを与えることができる。改変剤は、疎水性または親水性を改変するための改変剤、活性剤(active agents)もしくは活性剤の結合を可能とするための基、光開始剤、接着性を高めもしくは減少させるための改変剤、熱敏感性を付与するための改変剤、他のタイプの敏感性を付与するための改変剤、および追加の架橋可能な基を含む。
【0051】
細胞接着促進剤をマクロマーに結合させることは、組成物の細胞接着または接着性を高めることができる。これらの作用物質は、当業者に周知でありそしてカルボキシメチルデキストラン、プロテオグリカン、コラーゲン、ゼラチン、グルコサミノグリカン、フィブロネクチン、レクチン、ポリカチオン、および天然もしくは合成の生物学的細胞接着剤、例えばRGDペプチドを含む。
【0052】
アセトアルデヒドもしくはブチルアルデヒドアセタールにより置換されているエステル側基を有することは、例えばマクロマーおよび形成されるヒドロゲルの疎水性を増加させることができる。1つの特に有用な疎水性改変基は、約0〜4ミリ当量/グラムPVA(meq/g)の量で存在するアセトアルデヒドジエチルアセタール(AADA)である。
【0053】
約0〜2meq/gPVAの量のN−(2,2−ジメトキシ−エチル)スクシンアミド酸の形態にある−COOHなどの親水性改変剤を、組成物に添加して組成物の性能、例えば膨潤を高めることができる。
【0054】
形成されたヒドロゲルの可視化を可能とする分子をマクロマー上に含ませることが望ましいこともある。例は磁気共鳴画像法により可視化される染料および分子を含む。
【0055】
コントラスト剤
コントラスト剤を含有する移植片を作成することができる。コントラスト剤は、例えばX線撮影法により監視されうる生物適合性物質である。コントラスト剤は、水溶性または水不溶性であることができる。水溶性コントラスト剤の例は、メトリザミド、イオパミドール、ヨータラム酸ナトリウム、ヨードミドナトリウム(iodomide sodium)およびメグルミンを含む。ヨウ素化液体コントラスト剤は、Omnipaque(登録商標)、Visipaque(登録商標)、およびHypaque-76(登録商標)を含む。水に不溶性のコントラスト剤の例は、タンタル、酸化タンタル、硫酸バリウム、金、タングステンおよび白金である。これらは、好ましくは約10μm以下のサイズを有する粒子として市販されている。コーティングされた繊維、例えばタンタルでコーティングされたDacron繊維を使用することもできる。
【0056】
コントラスト剤は、移植片中に一時的にまたは恒久的に組み込まれる。固体および液体コントラスト剤は、マクロマーおよびコモノマーの架橋の前に液体組成物の溶液と単に混合することができる。液体コントラスト剤は、約10〜80容積%、更に望ましくは約20〜50容積%の濃度で混合することができる。固体コントラスト剤は、望ましくは、約5〜40重量%、更に好ましくは約5〜20重量%の量で含まれる。
【0057】
活性剤
移植片は、有効量の1つ以上の生物学的または構造的活性剤を含むことができる。形成されたヒドロゲルから活性剤を送達することが望ましいことがある。送達するのが望ましいことがある活性剤は、有機および無機分子を含む予防剤、治療剤、診断剤および構造剤および細胞を含む(本明細書では集合的に「活性剤」または「薬物」と呼ばれる)。広い種類の活性剤をヒドロゲルに組み込むことができる。組み込まれた添加剤のヒドロゲルからの放出は、ヒドロゲルからの活性剤の拡散、ヒドロゲルの分解および/または活性剤をポリマーにカップリングさせる化学結合の分解により達成される。この関連で、「有効量」は、所望の効果を得るのに必要な活性剤の量を指す。
【0058】
組みこまれうる活性剤の例は、痛みの処置のための鎮痛剤、例えばイブプロフェン、アセトアミノフェンおよびアセチルサリチル酸;感染の処置のための抗生物質、例えばテトラサイクリンおよびペニシリンおよび誘導体;感染の処置のための他の添加剤、例えば銀イオン、銀(金属)および銅(金属)を含むが、それらに限定されない。
【0059】
幹細胞、自己髄核細胞、移植された自己髄核細胞、自己組織、繊維芽細胞、軟骨細胞、脊索細胞、同種移植片組織および細胞ならびに異種移植片組織および細胞を含む、細胞および組織を組成物に組み込むことができる。
【0060】
タンパク質、ポリペプチド、多糖、プロテオグリカンおよび成長因子などの生物学的起源の物質または合成製造方法に由来する生物学的物質を組み込むことが有利でありうる。
【0061】
例えばAMPSなどの親水性ポリマー等、または寒天、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、グアーゴム、アラビアゴム、ペクチン、デンプンおよびキサンタンゴムなどの親水性コロイドなどの、本明細書に記載の膨潤可能な物質の外に移植片の膨潤性および空間充填性を改良するための添加剤を含むことが望ましいことがある。
【0062】
有利であると証明することができる他の添加剤は、Quatなどの正に帯電したポリマー、主鎖に結合した正に帯電した部分で改変されたPVA、シアノアクリレート、主鎖に結合したシアノアクリレート部分で改変されたPVA、キトサンおよびムール貝をベースとする接着剤を含む、移植片の接着性を改良するための添加剤である。
【0063】
注入可能な椎間板物質(injectable disc materials)の靭性を改良するための添加剤、例えば「クラック防止剤」として作用する低モジュラススフェア、繊維等および「強化」剤として作用する高モジュラススフエア、繊維等の組み込みは、望ましいことを証明することができる。
【0064】
活性剤は、単に活性剤を投与の前に組成物と混合することにより組成物に組み込むことができる。次いで活性剤は、組成物を投与すると形成されるヒドロゲル中に閉じ込められるであろう。活性剤は、カプセル化および当技術分野で知られている更に下記する他の方法により、予備成形された物品に組みこむことができる。活性剤は、化合物形態(compound form)にあることができ、または分解可能なもしくは非分解性のナノスフェアもしくはミクロスフェアの形態にあることができる。ある場合には、活性剤をマクロマーまたは予備成形された物品に結合させることが可能でありそして望ましいことがある。活性剤を、予備成形された物品の表面にコーティングすることもできる。活性剤を、時間と共にまたは環境条件に応答してマクロマーまたはヒドロゲルから放出させることができる。
【0065】
他の添加剤
レドックス開始系においてペルオキシド安定剤を含ませることが望ましいことがある。ペルオキシド安定剤の例は、例えば、Dequest(登録商標)2010およびDequest(登録商標)2060SなどのSolutia Inc からのDequest(登録商標)製品である。これらは、ペルオキシド系の安定化を与えるホスホネートおよびキレート化剤である。Dequest(登録商標)2060Sは、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)である。これらは、製造者により推奨されたとおりの量で添加することができる。
【0066】
膨潤可能な物品
膨潤可能な物品は、乾燥した状態、凍結乾燥した状態、部分的に水和した状態、または内部環境が周囲の環境よりも高いイオン強度である状態から、水性流体の吸収により膨潤することができる。膨潤可能な物品は、ポリマー、モノマー、デンプン、ゴムまたはポリ(アミノ酸)などから作ることができる。物品を作ることができる物質の非限定的リストは、ポリビニルアルコール(PVA)、親水性コモノマー、例えばAMPSで改変されたPVA、急速に架橋する基、例えばNAAADAで改変されたPVA、ポリビニルピロリドン(PVP)で改変されたPVA、ポリエチレングリコール(PEG)、PVAとPEGのコポリマー、ポリプロピレングリコール(PPG)、PEGとPPGのコポリマー、PVAとPPGのコポリマー、ポリアクリロニトリル、親水コロイド、例えば、寒天、アルギネート、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ゼラチン等である。
【0067】
ポリマーは、架橋したポリマー、好ましくは軽度に架橋した親水性ポリマーであることができる。これらのポリマーは非イオン性、カチオン性、両性イオン性またはアニオン性であることができるが、好ましいポリマーは、カチオン性またはアニオン性である。特に好ましいのは、カルボン酸基またはその塩などの多数の酸官能基を含有する酸ポリマーである。本発明で使用するための適当なこのようなポリマーの例は、重合可能な酸含有モノマー、または重合後に酸基に転換されうる官能基を含有するモノマーから調製されるポリマーを含む。このようなポリマーの例は、多糖をベースとするポリマー、例えばカルボキシメチルデンプンおよびセルロースならびにポリ(アミノ酸)ポリマー、例えばポリ(アスパラギン酸)も含む。更に詳細については、Schmidt et al. のUS Patent Application 20050065237参照。
【0068】
吸収剤ポリマーを調製するのに通常少量のいくらかの非酸モノマーを含ませることもできる。このような非酸モノマーは、例えば、下記のタイプの官能基:カルボン酸エステルもしくはスルホン酸エステル、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、ニトリル基、第四級アンモニウム塩基およびアリール基(例えば、スチレンモノマーから誘導されるフェニル基などのフェニル基)を含有するモノマーを含む。他の潜在力を有する非酸モノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ブタジエンおよびイソプレンなどの不飽和炭化水素を含む。Westerman のUS Patent No. 4,062,817およびMasuda et al. のUS Patent No.4,076,663 参照。
【0069】
最も好ましい非酸ポリマーまたはモノマー物質は、アクリル酸官能基で改変されている部分的に中和したポリビニルアルコールである。
【0070】
膨潤可能な物品は、好ましくは脱水されておりそして流体取り込みに応答して移植後に膨潤する。物品は、完全に脱水されているかまたは部分的にのみ脱水されていることができる。液体(水、生理的食塩水、体液等)に暴露すると、スフェアが液体を吸収しそして膨潤するであろう。ある場合には、装置のデザインは、拘束されているにもかかわらず空間充填およびエクスパンションの両方を与えるのに十分な力で膨潤する脱水された物品もしくは部分的に脱水された物品を組み込むことであることができる。他の場合には、十分な液体がありそして脱水された物品がエクスパンションするのに十分な余地を有すると仮定すると、その場合には物品は空間充填のみを与えるであろう。
【0071】
上記したとおり、物品は、物品とポリマーとのイオン強度の差により引き起こされる流体の取り込みによることを含む、他の手段により膨潤することができる。
【0072】
膨潤の量は、5〜100%、更に望ましくは5〜40%、最も望ましくは5〜20%の範囲にあることができる。最大膨潤に達するための時間は、製品のデザインに設計されうる。実際には、最大膨潤に達するための時間は、96時間の期間内に、更に好ましくは48時間の期間内に、最も好ましくは24時間の期間内に起こりうる。
【0073】
脱水された物品は、スフェア、粒子、繊維、フレーク、小板(platelets)、円板または凝集体などの多くの形態を取ることができる。デザインにおける主要な制限は、膨潤能力、リフティング能力、サイズおよび注入可能な処方の粘度にたいする影響を含む。
【0074】
脱水した状態と水和した状態との差である膨潤能力は、物品の化学の関数である。水性環境における膨潤は、カルボキシル基などの負に帯電した種の存在により改良されうる。膨潤は、物品の電解質含有率によっても駆動されうる。高い塩濃度を有する物品は、物品の内部環境と外側液体間で浸透圧を釣り合わせるのに十分な量の液体を吸い込むであろう。物品の膨潤ファクターをデザインするための更なる方法は。物品の分子網目の正しい選択による。例えば、高度に架橋した網目を有するポリマーはゆるい網目を有するポリマーよりも少なく膨潤するであろう。
【0075】
リフティング能力は、膨潤能力に関係している。主要な違いは、脱水された物品が周囲の組織に及ぼすことができる力の量である。髄核の場合に、髄核キヤビティにおける空間を単に満たす装置は膨潤すると考えられるが、隣接した椎骨を満たしそしてエクスパンションする装置はリフトを有すると考えられる。膨潤する装置のデザインと同様に、リフトを与える装置は、周囲の液体を吸収するが、より高い力でそのようにするであろう。
【0076】
膨潤可能な物品のサイズは、主として物品の膨潤能力またはリフティング能力;針または送達カテーテルによるなどの送達を制限しないようなそのサイズ;および針または送達カテーテルによる送達を制限しないような注入可能な髄核の粘度に対するその効果により選ばれるろう。上記したとおり、電荷を示す物品は、膨潤/リフティングに対して有意な影響を有することができるが、粘度も同様に有意に増加させることができる。
【0077】
膨潤可能な物品は、圧縮可能なまたは圧縮できないミクロスフェアの形態にあることができる。膨潤可能な物品は、BioCureのWO01/68721に記載のとおりに作られたミクロスフェアであることができる。合成の注入可能な髄核において有用でありうるミクロスフェアのサイズは、約0.2〜200ミクロン、更に好ましくは0.2〜50ミクロン、最も好ましくは約0.2〜20ミクロンの範囲にある。
【0078】
膨潤可能な物品は線維の形態にあることもできる。線維は、その長さとして定義されたその主軸およびその幅として定義されたその副軸によって説明される。線維は、柔軟性、半硬質または硬質であることができる。柔軟性線維は半固体または固体線維よりも送達するのに容易であることが認識される。移植片において有用でありうる柔軟性線維の副軸は、約0.2〜20ミクロン、更に好ましくは0.2〜10ミクロン、最も好ましくは約0.2〜1ミクロンの範囲にある。
【0079】
物品の脱水は、乾燥、高度に濃縮された塩環境に置くことまたは水性ベースの物品のための有機溶媒中などのような、非溶媒環境に置くことにより達成されうる。
【0080】
移植片を作成する方法
移植片を作成するために、マクロマーおよび架橋開始剤などの任意の他の成分を、各々について所望の濃度で且つ互いに対する所望の割合で混合することにより液体組成物を調製する。組成物は、一緒に混合されるときヒドロゲルを形成する2成分組成物として調製されうる。1つの態様では、マクロマーは、移植の前にヒドロゲルに形成される。他の態様では、マクロマーは、in situで移植片に架橋される。膨潤可能な物品は、移植およびヒドロゲル形成の前に液体マクロマーと望ましくは混合される。
【0081】
椎間板髄核は、脱核が必用でなくなる点まで変性されてもよい。しかしながら、プロテーゼ髄核の移植の前に椎間板髄核のすべてまたは一部を脱核することが望ましいことがある。これは、当技術分野で知られている方法によりなされうる。
【0082】
投与の前に移植片を形成する場合に、ヒドロゲルを成形するためにモールドを使用することができまたはヒドロゲルは自由成形されうる。液体組成物を、所望ならば、膨潤可能な物品と共にモールド内に入れそしてマクロマーを架橋するための条件にさらす。次いで移植片を所望により脱核されている髄核に移植する。予備成形された移植片の移植は当技術分野で知られている方法によることができる。
【0083】
更に望ましくは、移植片は、in situ架橋およびヒドロゲル形成により作成される。脱核の後に所望により膨潤可能な物品を含有する有効量の液体組成物を、好ましくは最小に侵襲性の方法により髄核に入れる。本明細書で使用される用語「有効量」は、椎間板髄核キャビティを所望のレベルに充填するのに必要な組成物の量を意味する。組成物は、1つまたは複数の処置期間にわたり投与されうる。
【0084】
移植片を作成する好ましい方法では、液体組成物および膨潤可能な物品を、いかなる気泡も排除するように注意を払いながら10mLルエル−ロク注射器中に吸い込ませ、次いで、椎間板空間が所望のレベルに充填されるまで、蛍光透視案内の下に脱核された椎間板空間に小さな環状受け入れポートを通して約18ゲージの針を使用して送達する。2部分の組成物の場合には、組成物を、注射器において注入の前に混合するか、またはデュアルシリンジ法(dual syringe method)−気泡を回避するように注意を払いながら、三方コックを使用して2つの5ml注射器間で前後に混合物を移送する、を使用して混合する。組成物は、好ましくは混合後5〜15分以内に形成されたヒドロゲルに架橋するであろう。
【0085】
組成物の粘度は、広い制限内で、決定的ではないが、溶液は、好ましくは注入されうる流動性溶液であるべきである。好ましい態様では、組成物は、マクロマーの実質的な架橋が起こる前に注入されるべきである。これはゲル化したポリマーによる注射針またはカテーテルの詰まりを防止する。更に、in situ架橋は、ホスト組織内に存在するコラーゲン分子と共有結合することによりホスト組織へのヒドロゲルの固着を可能とすることができる。
【0086】
下記の実施例は、本明細書で特許請求された化合物、組成物、物品、装置および/または方法がいかにして作られそして評価されるかの完全な開示および説明を当業者に与えるために、本発明を更に説明するのに役立ち、そして本発明の範囲を限定することを意図しない。実施例において、特記しない限り、量および百分率は重量により、温度は摂氏であるかまたは周囲の温度であり、そして圧力は大気圧または大気圧付近である。
【0087】
実施例1:降伏荷重実験
ヒドロゲルを作成しそして、PVAをベースとするミクロスフェアを伴う場合と伴わない場合にそれらの降伏荷重について試験した。Bionix 858試験機(MTS System Corp., Eden Prairie, MN)を使用して平行なステンレス鋼アンビル間でヒドロゲル試験片を破壊するまで圧縮することにより機械的試験を行った。試験片は横方向には拘束されなかった。取付具を37±1℃でリン酸緩衝化0.9%生理的食塩水試験浴に浸漬した。各試験片を20%の公称歪まで3回の条件調節サイクルに付した。荷重速度及び荷重除去速度は5mm/分であった。時間、変位および力のデータは10HZで記録された。
【0088】
PVAはMowiol 3-83(14k MW)(Hoechst Cleanese/Gehring Montgomery)であった。架橋剤は、15架橋剤/鎖のNAAADA(N−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール)であった。マクロマーの疎水性改変は、AADA(アセトアルデヒドジエチルアセタール)を使用して達成された。マクロマーの親水性改変は、−COOHを使用して達成された。コモノマーDAA(ジアセトンアクリルアミド)が含まれた。開始剤は過硫酸アンモニウムでありそして促進剤はTMEDA(N,N,N,N−テトラメチレンジアミン)であった。約50〜100ミクロンの寸法を有する、WO 01/68720の実施例2のサンプルGに記載のとおりに作成されたPVAミクロスフェアを脱水し、次いでTMEDAの添加の前に基礎処方に添加した。
【0089】
ミクロスフェアを下記のとおりに脱水した。ミクロスフェアを最初に水ですすいで生理的食塩水を除去した。次いでそれらをアセトン中に1時間貯蔵し、ろ過しそして更に1時間アセトン中で再び平衡化した。次いでそれらをアセトン中で24時間平衡化し、ろ過しそして45℃で一晩乾燥した。
【0090】
ミクロスフェアを含有する処方をモールドに注ぎそして完全に重合させた。試験片をモールドから取り出しそしてBionix 858試験機で試験する前に生理的食塩水中に入れた。
【0091】
【表1】

【0092】
ミクロスフェアの添加によってより低い圧縮降伏荷重が見られた。
【0093】
実施例2:リフティング実験
種々の量のPVAをべースとするミクロスフェアを含有するヒドロゲルを作成しそしてそれらのリフティング能力について試験した。ヒドロゲルを硬化させそして37℃で一晩生理的食塩水中に貯蔵した。次いでリフティング能力を、高さ、重量および直径の変化を測定することにより決定した。
【0094】
PVAはMowiol 3-38(14k MW)であった。架橋剤は、15架橋剤/鎖のNAAADA(N−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール)であった。2.7ミリ当量のAADA(アセトアルデヒドジエチルアセタール)を使用して、マクロマーの疎水性改変を達成した。コモノマーDAA(ジアセトンアクリルアミド)が1:1比で含まれていた。開始剤は過硫酸アンモニウム(0.5%)でありそして促進剤はTMEDA(0.3%)であった。一般にWO01/68720に記載のとおりに作成されたPVAをベースとする脱水されたミクロスフェアが含まれていた。ミクロスフェアの量は5〜10重量%の範囲にあった。膨潤実験において2つのタイプのミクロスフェアを使用した。7−1と名付けられたミクロスフェアは1%AMPSを含有しておりそして7〜11と名付けられたミクロスフェアは11%AMPSを含有していた。
【0095】
【表2】

【0096】
実施例3:処方におけるミクロスフェア添加の効果
PVAはMowiol 3-83(14k MW)であった。架橋剤は、15架橋剤/鎖のNAAADA(N−アクリルアミドアセトアルデヒドジメチルアセタール)であった。2.7ミリ当量のAADA(アセトアルデヒドジエチルアセタール)を使用して、マクロマーの疎水性改変を達成した。コモノマーDAA(ジアセトンアクリルアミド)は1:1比で含まれていた。0.25%APSを1分間攪拌することにより処方に溶解させた。0.3%TMEDAを処方に加えそして15秒間攪拌した。乾燥ミクロスフェアを加えそして20秒間混合した。処方をモールドに注ぎそして10分間硬化させた。ポリマーをモールドから取り出し、重量を計り、それらの高さおよび直径を測定した。次いでポリマーを50ml生理的食塩水中に貯蔵しそして指示された時間にわたり37℃オーブンに入れた。
【0097】
【表3】

【0098】
脱水されたミクロスフェアの存在は、移植片の膨潤性を高めることができる。5〜10重量%のミクロスフェアの添加は、試験片の高さを約5〜12%そして幅を約2〜約10%増加させる。この範囲の膨潤は、線維輪に追加の応力を加えることなく髄核空間を充填させるのに十分であることができる。ポリマー髄核の注入後に起こりうるような種々の試験片形状は、種々の方法で膨潤することができる。移植片中の約10%ミクロスフェアの添加は、試験片の降伏荷重を有意に変化させない。
【0099】
実施例4:膨潤可能な繊維A
PVA(分子量=14,000)をNAAADA1.07ミリモル/gおよびAADA2.7ミリモル/gで改変した。コモノマーDAA20gを24%PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。過硫酸アンモニウム0.25gを得られる溶液4.9gに溶解した。TMEDA15ulを加えそして20秒間混合した。ポリ(イソブチレン−コ−マレイン酸)(2%)ナトリウム塩繊維(直径24〜40um)0.1gを加えそして20秒間混合し、次いで椎間板モールド(disc mold)中に送達し、ポリマーを得た。次いで硬化したポリマーを37℃で24時間生理的食塩水中に貯蔵した。百分率高さ変化は11.29であり;百分率重量変化は20.79であり;そして百分率幅変化は4.64であった。
【0100】
実施例5:膨潤可能な繊維B
PVA(分子量=14,000)を架橋剤としてNAAADA1.07ミリモル/gおよびAADA2.7ミリモル/gで改変した。コモノマーDAA20gを24%PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。過硫酸アンモニウム0.25gを得られる溶液4.5gに溶解した。TMEDA15ulを加えそして20秒間混合した。ポリ(イソブチレン−コ−マレイン酸)(10%)ナトリウム塩繊維(直径24〜40um)0.5グラムを加えそして20秒間混合し、次いで椎間板モールド中に送達し、ポリマーを得た。次いで硬化したポリマーを37℃で24時間生理的食塩水中に貯蔵した。百分率高さ変化は36.2であり;百分率重量変化は104.3であり;そして百分率幅変化は22.8であった。
【0101】
実施例6:セファデックスミクロスフェアA
PVA(分子量=14,000)を架橋剤としてNAAADA1.07ミリモル/gおよびAADA2.7ミリモル/gで改変した。コモノマーDAA20gを24%PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。過硫酸アンモニウム0.25gを得られる溶液4.8gに溶解した。TMEDA15ulを加えそして20秒間混合した。セファデックスG−25(4%)(直径20〜50um)0.2gを加えそして20秒間混合し、次いで椎間板モールド中に送達して、ポリマーを得た。次いで硬化したポリマーを37℃で24時間生理的食塩水中に貯蔵した。百分率高さ変化は3.24であり;百分率重量変化は6.03であり;そして百分率幅変化は2.12であった。
【0102】
実施例7:セファデックスミクロスフェアB
PVA(分子量=14,000)を架橋剤としてNAAADA1.07ミリモル/gおよびAADA2.7ミリモル/gで改変した。コモノマーDAA20gを24%PVA溶液20g中にゆっくりと溶解した。過硫酸アンモニウム0.25gを得られる溶液4.8gに溶解した。TMEDA15ulを加えそして20秒間混合した。セファデックスG−25(10%)(直径20〜50um)0.5gを加えそして20秒間混合し、次いで椎間板モールド中に送達して、ポリマーを得た。次いで硬化したポリマーを37℃で24時間生理的食塩水中に貯蔵した。百分率高さ変化は6.53であり;百分率重量変化は11.07であり;そして百分率幅変化は3.33であった。
【0103】
本発明の修正及び変更は、前記詳細な説明から当業者には明らかであろう。すべての修正及び変更は、特許請求の範囲に包含されることを意図する。本明細書で引用されたすべての刊行物、特許および特許出願はそのまま参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロゲルと1つ以上の膨潤可能な物品を含む椎間板髄核移植片。
【請求項2】
膨潤可能な物品が脱水された物品である、請求項1に記載の移植片。
【請求項3】
膨潤可能な物品が脱水されたミクロスフェアである、請求項1に記載の移植片。
【請求項4】
膨潤可能な物品がヒドロゲル中に埋め込まれている、請求項1に記載の移植片。
【請求項5】
膨潤可能な物品が流体の吸収に応答して膨潤しそしてリフトを与える、請求項1に記載の移植片。
【請求項6】
移植片が髄核キヤビティを充填することができるように、前記膨潤可能な物品がエクスパンションする、請求項1に記載の移植片。
【請求項7】
移植片が髄核キャビティに移植されるとき移植片が椎間板のエクスパンションを与えるように十分な力で、前記膨潤可能な物品が膨潤する、請求項1に記載の移植片。
【請求項8】
膨潤可能な物品が約1〜10重量%の量で存在する、請求項1に記載の移植片。
【請求項9】
膨潤可能な物品が約5〜20%膨潤する、請求項1に記載の移植片。
【請求項10】
膨潤可能な物品が、約24時間膨潤した後最大サイズに達する、請求項1に記載の移植片。
【請求項11】
ミクロスフェアのサイズが約0.2〜200ミクロンの範囲にある、請求項3に記載の移植片。
【請求項12】
ヒドロゲルおよびミクロスフェアがPVAをベースとする、請求項3に記載の移植片。
【請求項13】
膨潤可能な物品が、物品と周囲の環境とのイオン強度の差により膨潤する、請求項1に記載の移植片。

【公表番号】特表2009−513265(P2009−513265A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537942(P2008−537942)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/041765
【国際公開番号】WO2007/050744
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(502158232)バイオキュア・インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】BIOCURE,INC.
【出願人】(308002669)
【氏名又は名称原語表記】GOUPIL,Dennis,W.
【出願人】(307025724)
【氏名又は名称原語表記】ASFAW,Bruktawit,T.
【Fターム(参考)】