説明

膵炎及び膵不全を治療するための膵酵素組成物及び方法

本発明の組成物が、腸溶性の膵酵素含有ビーズと被膜がない膵酵素含有ビーズとの組合せを含み、膵炎痛を治療及び予防し、任意に消化酵素の欠乏と関連する障害を治療及び予防するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2009年9月17日付の米国仮特許出願第61/243,467号に対する優先権を主張し、その内容全体は総ての目的のために、全体が引用によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
膵不全の場合においては、パンクレリパーゼ及び他の膵酵素生成物(PEP)は、膵炎、膵切除、嚢胞性線維症等といった膵に影響を及ぼす多様な疾患によって引き起こされる酵素欠損症を少なくとも部分的に治療するのに投与できる。膵不全の治療における膵酵素の使用は嚢胞性線維症で苦しむ患者の治療の必須の部分である。これらの補充がなければ、患者は重篤な栄養障害となる。この栄養障害は未治療で放置される場合、特に乳児の場合において重篤になりうる。
【0003】
栄養障害(例えば、脂肪吸収不全症等)に加えて、慢性膵炎に罹患する患者の大部分は更に、その状態に関連する重度で、多くの場合衰弱性の疼痛を受ける。膵の疼痛の原因は不確かであるが、CCK放出ペプチドのフィードバック制御の低下による膵の過刺激によって生じると仮定されている。通常、食事の摂取に応じた膵のプロテアーゼの放出によって、上部胃腸(GI)管にあるCCK放出ペプチドの分解が生じ、十分な消化酵素が消化のために生成された時点で、膵の収縮と酵素分泌が減少する。膵不全に罹患した患者では、CCK放出ペプチドは十分に分解されず、ひいては膵の連続した(過剰な)刺激が生じる。任意の特定の理論によって結びつけられることを望まないが、この疼痛生成の仮定によると、プロテアーゼ酵素の投与(例えば、膵酵素の製剤における)で、CCK放出ペプチドが分解することによって、膵の過刺激及び生じた膵の疼痛が寛解する。
【0004】
膵臓酵素は、中性に近い条件及びわずかにアルカリ性の条件下で最適な活性を示す。胃の条件下では、多くの場合に治療用の酵素組成物にあるリパーゼ酵素はpHを低下し、かつ/あるいはpHの低下状態での曝露時間を増加するとともに不活性化が増加し、不可逆的になると予測され、生物学的活性が低下する。従って、体外から投与した酵素は一般的には一般的には、無傷のままで維持するように例えば腸溶性被膜で、胃での不活性化から保護し、胃を通り、十二指腸に入る移動中の胃酸から保護される。しかしながら、CCK放出ペプチドは消化管で分泌が高いため、従来の腸溶性被膜がある膵酵素の調剤は、消化管の好適な部分において、十分にCCK放出ペプチドを分解することによって膵の疼痛を低減又は除去するほど迅速にはプロテアーゼ酵素を放出できない。
【発明の概要】
【0005】
被膜がない酵素製剤は消化管において徐放又は不完全な放出の問題を提示し、pHが低い胃の環境においては実質的に不活性となると予測され、ひいては膵不全によって生じる栄養障害を治療するのに十分な活性消化酵素の濃度を提供しない。被膜がない酵素製剤で膵臓痛を治療する1のアプローチはいくつかの活性酵素、特にリパーゼが十二指腸まで耐久するように、胃における酵素分解を低減する目的で、被覆がない酵素をプロトンポンプ阻害薬と併用投与することである(Liebら,Aliment.Pharmacol.Ther.29,706−719(2009))。代替的には、膵臓痛は、十分な活性酵素が十二指腸に到達するのを保証すべく、比較的高用量の被膜がある膵酵素及び被膜がない膵酵素で治療されている(Winsteadら,Pancreatology 9,344−350(2009))。例えば、64,000単位のリパーゼで投与し、公称上プロテアーゼ活性が240,000単位(1食あたり)の被膜がない酵素製剤で膵臓痛が軽減されると示唆されている(Liebら)。
【0006】
被覆がない酵素が、他の研究(Liebら)で用いた被膜がある酵素製剤よりも良好であるように見える多数の小さな臨床研究によると、従来の見識は被膜がある酵素製剤は膵臓痛の治療に推奨されないが、被膜がない酵素製剤は好適であるとのことである。しかしながら、現在までに膵炎と関連する疼痛の治療における被膜の有無での膵酵素の効果を十分に実証した臨床対照試験はない。
【0007】
しかしながら、(例えば、被膜がない酵素製剤での)膵臓痛と、(例えば、被膜がある酵素製剤での)栄養障害との双方の治療のためには、従来の治療方法は非常に高用量の酵素、すなわち、1食あたり約4の腸溶性被膜があるパンクレアチンの丸薬と4の被膜がないパンクレアチンの丸薬とを必要とした。これは、現在のところ疼痛の治療に認可された被膜がない生成物がないため、CREON24の推奨される中程度の投与の中間点と、被覆がない酵素の投与の専門家の推奨に基づいている(Winsteadら)。これは患者にとってかなりの負担であり、患者に与えられる酵素の総用量が安全の懸念を生じさせることを意味する(Smythら,Fibrosing colonopathy in cystic fibrosis:results of a case−control study.Lancet.1995;346:1247−1251;FitzSimmonsら,High−dose pancreatic enzyme supplements and fibrosing colonopathy in children with cystic fibrosis.New England Journal of Medicine.1997;336:1283−1289)。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は驚くべきことに、比較的少量の腸溶性被膜がある消化酵素の被膜がない消化酵素との組合せを含む単一剤形で、膵臓痛を有効に治療し、脂肪吸収不全症等の栄養障害を有効に制御することを見出した。更に、本発明者は驚くべきことに、非常に低用量の腸溶性の酵素が、例えば慢性膵炎に罹患した患者において、膵不全による吸収障害の治療に有効であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態においては、本発明は腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとを含む多粒子性の消化酵素組成物に関し、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズは中核部と中核部を覆って配置される腸溶性被膜とを含み、中核部は治療上有効な量の消化酵素を含み、腸溶性被膜は腸溶性の重合体を含み、被膜がない消化酵素含有ビーズは治療上有効な量の消化酵素を含み、腸溶性の重合体被膜が実質的にはない。
【0010】
別の実施形態においては、本発明は膵炎痛を治療する方法に関し、必要に応じて本発明の組成物を患者に投与するステップを具える。
【0011】
更に別の実施形態においては、本発明は膵外分泌機能不全を治療する方法に関し、必要に応じて治療上有効な用量の腸溶性被膜がある消化酵素を患者に投与するステップを具え、前記用量の範囲は1食あたり約100ないし約300USP単位リパーゼ/kgである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様は、腸溶性の消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとの組合せを含む安定化した消化酵素組成物に関する。「安定化した消化酵素(stabilized digestive enzyme)」との用語は、長期貯蔵後に相応の酵素活性を維持している消化酵素を意味する。「消化酵素(digestive enzyme)」との用語は、食物の成分が有機体によって摂取、あるいは吸収できるように分解する消化管内の酵素を意味する。
【0013】
本発明で用いるのに好適な消化酵素の限定しない分類は、リパーゼ、アミラーゼ、及びプロテアーゼを含む。消化酵素の限定しない例はパンクレリパーゼ(パンクレアチンとも称される)、リパーゼ、コリパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモトリプシンB、膵ペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、グリセロールエステルヒドロラーゼ、ホスホリパーゼ、ステロールエステルヒドロラーゼ、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α−アミラーゼ、パパイン、キモパパイン、グルテナーゼ、ブロメライン、フィシン、β−アミラーゼ、セルラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ラクターゼ、スクラーゼ、イソマルターゼ、及びその混合物を含む。
【0014】
本発明の一実施形態においては、安定化した消化酵素は膵酵素である。本明細書中で用いられるように「膵酵素(pancreatic enzyme)」はアミラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、又はその混合物といった膵分泌物に存在する酵素の種類の任意の1つ、あるいはパンクレアチンといった酵素活性がある膵起源の任意の抽出物のことである。膵酵素は膵からの抽出を通して取得するか、人工的に産生するか、あるいは微生物、植物、又は他の動物組織由来といった、膵以外の供給源から取得することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態においては、安定化した消化酵素はパンクレリパーゼである。「パンクレリパーゼ(pancrelipase)」又は「パンクレアチン(pancreatin)」といった用語は数種類の酵素の混合物を意味し、アミラーゼ、リパーゼ、及びプロテアーゼの酵素を含む。パンクレリパーゼはNordmark Arzneimittel社又はScientific Protein Laboratories LLCから商業上入手可能である。
【0016】
本発明の組成物の一実施形態においては、安定化した消化酵素はリパーゼを含む。「リパーゼ(lipase)」という用語はグリセロール及び単一の脂肪酸への脂質の加水分解を触媒する酵素のことである。
【0017】
本発明に好適なリパーゼの例は限定しないが、動物リパーゼ(例えば、ブタリパーゼ)、細菌リパーゼ(シュードモナスリパーゼ及び/又はバークホルデリアリパーゼ)、真菌リパーゼ、植物リパーゼ、組換えリパーゼ(例えば、培養中の細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、又はほ乳類の宿主細胞のうちの任意の1つから選択される好適な宿主細胞での組換えDNA技術、あるいは、天然に存在する配列と相同又は実質的に同一なアミノ酸配列を含む組換えリパーゼ、天然に存在するリパーゼをコードする核酸と相同又は実質的に同一な核酸によってコードされるリパーゼ等を介して生成される)、化学修飾したリパーゼ、又はその混合物を含む。
【0018】
本発明の組成物の別の実施形態においては、安定化した消化酵素はアミラーゼを含む。「アミラーゼ(amylase)」との用語はデンプンを分解するグリコシドヒドロラーゼの酵素、例えばα−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、酸性α−グルコシダーゼ、プチアリンといった唾液アミラーゼ等のことである。
【0019】
本発明の組成物で用いるのに好適なアミラーゼは限定しないが、細菌アミラーゼ、真菌アミラーゼ(例えば、アスペルギルス(Aspergillus:商標)アミラーゼ、好適にはコウジカビアミラーゼ)、植物アミラーゼ、組換えアミラーゼ(例えば、培養中の細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、又はほ乳類の宿主細胞のうちの任意の1つから選択される好適な宿主細胞での組換えDNA技術、あるいは、天然に存在する配列と相同又は実質的に同一なアミノ酸配列を含む組換えアミラーゼ、天然に存在するアミラーゼをコードする核酸と相同又は実質的に同一な核酸によってコードされるアミラーゼ等を介して生成される)、化学修飾したアミラーゼ、又はその混合物を含む。
【0020】
本発明の組成物の別の実施形態においては、安定化した消化酵素はプロテアーゼを含む。「プロテアーゼ(protease)」という用語は一般的には、タンパク質のアミノ酸の間のペプチド結合を切断する酵素(例えば、プロテイナーゼ、ペプチダーゼ、又はタンパク質分解酵素)のことである。プロテアーゼは一般的には、その酵素型、例えばアスパラギン酸ペプチダーゼ、システイン(チオール)ペプチダーゼ、メタロペプチダーゼ、セリンペプチダーゼ、スレオニンペプチダーゼ、アルカリプロテアーゼ又はセミアルカリプロテアーゼ、中性、及び未知の触媒機構のペプチダーゼで同定される。
【0021】
本発明の組成物又は経口剤形で用いるのに好適なプロテアーゼの限定しない例は、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、プラスメプシン)メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ等を含む。加えて、本発明の組成物又は経口剤形に用いるのに好適なプロテアーゼは限定しないが、動物プロテアーゼ、細菌プロテアーゼ、真菌プロテアーゼ(例えば、糸状菌(Aspergillus melleus)プロテアーゼ)、植物プロテアーゼ、組換えプロテアーゼ(例えば、培養中の細菌、酵母、真菌、植物、昆虫、又はほ乳類の宿主細胞のうちの任意の1つから選択される好適な宿主細胞での組換えDNA技術、あるいは、天然に存在する配列と相同又は実質的に同一なアミノ酸配列を含む組換えプロテアーゼ、天然に存在するプロテアーゼをコードする核酸と相同又は実質的に同一な核酸によってコードされるプロテアーゼ等を介して生成される)、化学修飾したプロテアーゼ、又はその混合物を含む。
【0022】
本発明の組成物又は経口剤形は1以上のリパーゼ(すなわち、1のリパーゼ又は2以上のリパーゼ)、1以上のアミラーゼ(すなわち、1のアミラーゼ又は2以上のアミラーゼ)、1以上のプロテアーゼ(すなわち、1のプロテアーゼ又は2以上のプロテアーゼ),1以上のリパーゼの1以上のアミラーゼとの混合物、1以上のリパーゼの1以上のプロテアーゼとの混合物、1以上のアミラーゼの1以上のプロテアーゼとの混合物、又は1以上のリパーゼの1以上のアミラーゼ及び1以上のプロテアーゼとの混合物を含むことができる。
【0023】
一実施形態においては、消化酵素は多様なリパーゼ(例えば、リパーゼ、コリパーゼ、ホスホリパーゼA2、コレステロールエステラーゼ)、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼA及びカルボキシペプチダーゼB、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、トリプシン阻害因子)、アミラーゼ、及び任意にヌクレアーゼ(リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ)を含むブタの膵抽出物である。別の実施形態においては、消化酵素はヒトの膵液に実質的に類似する。更に別の実施形態においては、消化酵素はパンクレリパーゼUSPである。更に別の実施形態においては、消化酵素は、リパーゼ活性が69ないし120USP単位/mg、アミラーゼ活性が216USP単位/mg以上、プロテアーゼ活性が264USP単位/mg以上、総プロテアーゼ活性が264USP単位/mg以上のパンクレリパーゼUSPである。
【0024】
一実施形態においては、本発明の組成物のリパーゼ、プロテアーゼ、及びアミラーゼの総活性は以下の表1に記載するとおりである(総(total)活性は腸溶性の酵素含有ビーズ及び被膜がない酵素含有ビーズの活性の組合せのことである)。
【0025】
【表1】

【0026】
特定の実施形態においては、本発明の組成物は総計で約25,000USP単位のリパーゼと約85,000USP単位のプロテアーゼとを含む。別の実施形態においては、本発明の組成物は総計で約20,000USP単位のリパーゼと68,000USP単位のプロテアーゼとを含む。別の実施形態においては、本発明の組成物は総計で約15,000USP単位のリパーゼと51,000USP単位のプロテアーゼとを含む。別の実施形態においては、本発明の組成物は総計で約10,000USP単位のリパーゼと34,000USP単位のプロテアーゼとを含む。別の実施形態においては、本発明の組成物は総計で約5,000USP単位のリパーゼと17,000USP単位のプロテアーゼとを含む。酵素活性度に基づく、被覆がないビーズに含まれるリパーゼ又はプロテアーゼに対する腸溶性被膜があるビーズに含まれるリパーゼ又はプロテアーゼの比率の範囲は約5/95ないし約50/50である(約5/90、約10/90、約15/85、約20/80、約25/75、約30/70、約35/65、約40/60、約45/55、又は約50/50を含む)。例として、本発明による組成物におけるリパーゼ及びプロテアーゼの活性の概数は以下の表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
腸溶性のビーズ及び被覆がないビーズでの好適な比率のリパーゼ及び/又はプロテアーゼを含む本発明の組成物は、単一の剤形、例えば腸溶性の消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとの混合物を含むカプセルで提供できるか、あるいは別個の剤形で、各々が腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとを含むことによって提供できる。代替的には、比率が異なる腸溶性の消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとを含む単一の剤形は、所望の比率の腸溶性の消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとを提供するように組合わせることができる。
【0029】
他の実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形におけるリパーゼ:プロテアーゼ:アミラーゼの比率の範囲は、約1:10:10ないし約10:1:1又は約1.0:1.0:0.15にできる(酵素活性度に基づき)。本発明の組成物又は経口剤形におけるアミラーゼ/リパーゼの比率の範囲は約1.8ないし8.2、例えば約1.9ないし8.2及び約2.0ないし8.2にできる。本発明の組成物又は経口剤形におけるプロテアーゼ/リパーゼの比率の範囲は約1.8ないし6.2、例えば約1.9ないし6.1及び約2.0ないし6.1にできる。
【0030】
本発明の組成物又は経口剤形における消化酵素の総量(重量パーセント)は、約20ないし100%、20ないし90%、20ないし80%、20ないし70%、20ないし60%、20ないし50%、20ないし40%、20ないし30%、あるいは約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%にできる。一実施形態においては、消化酵素の総量は60ないし90%である。別の実施形態においては、消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)の総量は約68ないし72%である。
【0031】
一実施形態においては、少なくとも1の消化酵素を含む本発明の組成物又は経口剤形の含水量は約3%以下、約2.5%以下、約2%以下、約1.5%以下、又は約1%以下であり、その間の総ての範囲及び部分的な範囲(すなわち、約2.5%ないし3%、2%ないし3%、1.5%ないし3%、1%ないし3%、2%ないし2.5%、1.5%ないし2.5%、1%ないし2.5%、1.5%ないし2%、1%ないし2%、1%ないし1.5%等のいずれか)を含む。本発明の組成物又は経口剤形は含水量が少なく維持され、例えば約3%以上に含水量が高く維持された従来の組成物と比較して実質的に更に安定していることが見出されている。
【0032】
「含水量(moisture content)」という用語は、「含水率(water content)」とも称され、組成物が含む水の含量を意味する。含水量が変化しても容積が変化しない組成物については、含水量は、材料の乾燥容積に対する水分の質量の比率として容量測定的に(すなわち、容量パーセントで)表すことができる。含水量が変化するとともに容積が変化する組成物については、含水量は、標本の単位乾燥質量あたりの乾燥により除去される水の質量として重量測定的に(すなわち、重量パーセントで)表すことができる。含水量の定量は当該技術分野で既知の従来の方法のいずれかでなされうる。例えば、含水量は試料が電気化学的な滴定セルで溶解されるカール・フィッシャー(Karl Fischer)滴定といった化学滴定で定量できる。試料からの水は、電位差滴定で終点が測定される電気化学的反応で消費され、これによって試料中の水の量は直接的に測定される。代替的には、「乾燥減量法(LoD:Loss on Drying)」といった比較的容易な熱重量分析法を用いてもよく、試料の質量は乾燥の調節前後に測定される。乾燥後の質量の減少は水分の減少に起因する。市販の水分分析計(例えば、Mettler Toledo社、Sartorius AGから入手可能)は更に含水量を定量するのに用いることができる。本発明の組成物又は経口剤形の含水量は当該技術分野で既知の任意の好適な方法、例えばLoDで測定できる。
【0033】
別の実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形は少なくとも1の消化酵素を含み、水分活性が約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下、又は約0.1以下であり、その間の総ての範囲及び部分的な範囲(すなわち、約0.5ないし0.6、0.4ないし0.6、0.3ないし0.6、0.2ないし0.6、0.1ないし0.6、0.4ないし0.5、0.3ないし0.5、0.2ないし0.5、0.1ないし0.5、0.3ないし0.4、0.2ないし0.4、0.1ないし0.4、0.2ないし0.3、0.1ないし0.3、0.1ないし0.2等のいずれか)を含む。本発明の組成物又は経口剤形は水分活性が低く維持され、水分活性レベルが高く維持された従来の消化酵素組成物と比較して実質的に更に安定していることが見出されている。
【0034】
水分活性は「aw」とも称され、物質中の水の相対的な有効性である。本明細書中で用いられるように、用語「水分活性(water activity)」は同一温度で純水の蒸気圧で除算した試料における水蒸気圧として定義される。純蒸留水の水分活性は厳密に1である。水分活性は温度依存性である。すなわち、温度が変化すると水分活性が変化する。本発明においては、水分活性は約0℃ないし約50℃、好適には約10℃ないし約40℃の範囲の温度で測定される。
【0035】
生成物の水分活性は平衡状態で試料を取り囲む空気の相対湿度を測定することによって定量できる。従って、試料における水分活性の測定は一般的にはこの平衡状態が生じうる閉塞した(通常は遮蔽した)空間で行われる。平衡状態では、試料の水分活性と空気の相対湿度とが等しくなり、ひいては空洞内の空気の平衡相対湿度を測定することによって、試料の水分活性が測定される。少なくとも2の異なる種類の水分活性測定器は商業上利用可能である。ある種類の水分活性測定器は鏡面冷却式露点技術を用いる(例えば、Decagon Devices社から入手可能なAquaLab(商標)水分活性計)が、別の測定器は電気抵抗及び電気容量が変化するセンサで相対湿度を測定する(例えば、Rotronic社から入手可能)。本発明の組成物又は経口剤形の水分活性は当該技術分野で既知の任意の好適な方法で測定できる。
【0036】
別の実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形は少なくとも1の安定化した消化酵素を含み、6月の加速安定性試験後に約25%程度、約20%程度、約15%程度、約12%程度、約10%程度、約8%程度、又は約5%程度の酵素活性度の減少を示す。
【0037】
「加速安定性試験(accelerated stability testing)」又は「加速貯蔵試験(accelerated storage testing)」といった用語は酵素活性度に対する比較的長期貯蔵状態の効果をシミュレートするのに用いられる試験方法のことであり、比較的短期間で実行できる。加速安定性試験法は実時間安定性試験に代わり信頼できることが当該技術分野で既知であり、生物学的生成物の有効期間を正確に予見できる。このような「加速安定性試験」の条件は当該技術分野で既知であり、「International Conference for Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:Stability Testing of New Drug Substances and Products Q1A」に従い、その全体が引用によって本明細書中に組み込まれている。
【0038】
加速安定性試験の一方法は、密封したNialene(ナイロン、アルミニウム、ポリエチレンラミネート;ミラノのGOGLIO SpA)バックにおいて、40℃/75%の相対湿度で6月間、消化酵素組成物の試料を貯蔵するステップを具える。
【0039】
貯蔵後(又は貯蔵中に定期的に)試料の酵素活性度は消化酵素活性を定量するために従来の方法を用いて試験できる(例えば、「United States Pharmacopoeia,Pancrelipase:Assay for lipase activity」であり、その全体が引用によって本明細書中に組み込まれる)。
【0040】
本発明の組成物又は経口剤形は更に、本発明の組成物又は経口剤形の安定性を向上又は改善する1以上の安定剤を含みうる。好適な安定剤の限定しない例は:プロリン;トレハロース;デキストラン;マルトース;スクロース;マンニトール;ポリオール;シリカゲル;アミノグアニジン;ピリドキサミン;炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウムといった無水金属塩;及びその混合物を含む。1以上の安定剤は約3%以下の含水量、及び/又は0.6以下の水分活性にできる。
【0041】
本発明の組成物又は経口剤形において用いることができるトレハロースの好適な形態の限定しない例としてトレハロース二水和物(TD)、アモルファストレハロース(AT)、無水トレハロース(例えば、アモルファス無水トレハロース(AAT)、無水結晶トレハロース(ACT))を含む。粉末の無水トレハロースは任意のAAT及び/又はACTを含んでもよい。本明細書中で用いられるように、「トレハロース(trehalose)」という用語は、任意の物理的形態のトレハロースのことであり、無水物、部分的に水和されたもの、完全に水和されたもの、ならびにその混合物及び溶液を含む。「無水トレハロース(anhydrous trehalose)」という用語は、2%未満の水を含む任意の物理的形態のトレハロースのことである。無水形態のトレハロースは0ないし2%の水を含んでよい。アモルファストレハロースは約2ないし9%の水を含み、トレハロース二水和物は約9ないし10%の水を含む。無水トレハロースは国際特許出願第PCT/GB97/00367号に記載のように調製でき、その全体は引用によって本明細書中に組み込まれる。一実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形は1以上の安定化した消化酵素と無水トレハロースとを含む。
【0042】
本発明の組成物における無水トレハロース(AAT又はACT)の量は、約5ないし50%、5ないし40%、5ないし30%、5ないし20%、5ないし15%、5ないし10%、7ないし15%の範囲、あるいは約5%、約7%、約10%、約15%、又は約20%にできる。
【0043】
無水トレハロースは粉末として本発明の組成物又は経口剤形に組み込むことができる。無水トレハロース粉末の粒径は約2ないし2000μmの範囲にできる。
【0044】
1以上の安定化した消化酵素と無水トレハロースとを含む本発明の組成物又は経口剤形によって、酵素安定性が改善される。無水トレハロースは、周囲の湿気からの水分、又は製造による、あるいは製剤自体の内部にある残存水分を吸収又は隔離することによって、本発明の組成物又は経口剤形を安定化させると考えられる。
【0045】
組成物の使用及び要求の目的に応じて、安定化した消化酵素の安定剤に対する重量比の範囲は約99:1ないし80:20となる。安定剤は、少なくとも1の安定化した消化酵素を少なくとも1の安定剤と湿式混合又は乾式混合することによって、本発明の組成物又は経口剤形に組み込むことができる。一実施形態においては、1以上の安定化した消化酵素は1以上の安定剤と乾式混合する。別の実施形態においては、1以上の安定化した消化酵素を1以上の安定剤と湿式混合する。
【0046】
安定化した消化酵素及び/又は1以上の安定剤に加えて、本発明の組成物又は経口剤形は更に、1以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。用語「賦形剤(excipient)」は、加工性、安定性、嗜好性等を改善するために組成物の1以上の有効成分(例えば、安定化した消化酵素)に添加する他の薬学的に許容可能な成分を包含する。好適な賦形剤の限定しない例は、薬学的に許容可能な結合剤、安定剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、希釈剤、及びその混合物等を含む。特定の賦形剤が組成物内で複数の機能を果たしうることは医薬製剤の技術分野における当業者に理解されよう。同様に、例えば結合剤は希釈剤としても機能しうる。賦形剤の含水量は約3%以下、及び/又は水分活性は約0.6以下にできる。
【0047】
好適な結合剤の限定しない例はデンプン、糖(例えば、ラクトース)、糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール)、セルロース(例えば微結晶性セルロース)、変性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルギン酸、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、及びその混合物を含む。好適な崩壊剤の限定しない例は第二リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋結合したカルボキシメチルセルロースナトリウム、膨潤性のイオン交換樹脂、アルギナート、ホルムアルデヒドカゼイン、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、架橋結合したポリビニルピロリドン)、微結晶性セルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン(トウモロコシデンプン、コメデンプン)、及びその混合物を含む。好適な潤滑剤の限定しない例はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマラート、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、滑石、ろう、STEROTEX(登録商標)、STEAROWET(登録商標)、及びその混合物を含む。好適な流動促進剤の限定しない例はコロイド状二酸化ケイ素、滑石、及びその混合物を含む。好適な希釈剤の限定しない例はマンニトール、スクロース、無水第二リン酸カルシウム、無水第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、セルロース、ラクトース、炭酸マグネシウム、微結晶性セルロース、及びその混合物を含む。好適な安定剤の限定しない例はトレハロース、プロリン、デキストラン、マルトース、スクロース、マンニトール、ポリオール、シリカゲル、アミノグアニジン、ピリドキサミン、及びその混合物を含む。
【0048】
一実施形態においては、崩壊剤はクロスポビドン(例えば、POLYPLASDONE XL、POLYPLASDONE XL−10)である。別の実施形態においては、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム(例えば、AC−DI−SOL)である。別の実施形態においては、崩壊剤はデンプングリコール酸ナトリウム(例えば、EXPLOTAB、EXPLOTAB CV)である。別の実施形態では、本発明の組成物又は経口剤形が、例えば微結晶性セルロースとデンプングリコール酸ナトリウム、又はクロスカルメロースナトリウムとクロスポビドンといった崩壊剤の組合せを含むことができる。
【0049】
崩壊剤の量の範囲は、約0.1ないし30%、1%ないし30%、1%ないし25%、1%ないし20%、1%ないし15%、1%ないし10%、1%ないし5%、5%ないし10%、5%ないし15%、5%ないし20%、5%ないし25%、又は5%ないし30%の任意の概数にできる。一実施形態においては、崩壊剤の量が約2%ないし4%若しくはは約2%ないし3%、又は約2.5%である。
【0050】
好適な希釈剤の限定しない例は微結晶性セルロース、デンプン、リン酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、及びその組合せを含む。一実施形態においては、希釈剤は微結晶性セルロース(例えば、Avicel)である。別の実施形態においては、希釈剤はデンプンである。別の実施形態においては、希釈剤はラクトース(例えば、Pharmatol)である。別の実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形は、微結晶性セルロース、デンプン及びラクトースといった希釈剤の組合せを含むことができる。
【0051】
希釈剤の量の範囲は、約0.1ないし99%、1%ないし30%、1%ないし25%、1%ないし20%、1%ないし15%、1%ないし10%、1%ないし5%、5%ないし10%、5%ないし15%、5%ないし20%、5%ないし25%、又は5%ないし30%の任意の概数にできる。一実施形態においては、希釈剤の量は約2%ないし5%、3%ないし5%、又は約4%である。
【0052】
本発明の組成物又は経口剤形の賦形剤のうちの1以上が乾燥剤として機能して、更に組成物を安定化できる。乾燥剤として有用な好適な賦形剤は、水と密に結合するか、あるいは組成物の水分活性を減少させる任意の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。例えば、本発明の組成物は約1ないし4%のシリカゲル、又は約2.5%のシリカゲルを含むことができる。
【0053】
本明細書中に記載のように、本発明の多粒子性の組成物は腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの第1の集合と被膜がない消化酵素含有ビーズの第2の集合とを含む。腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズは中核部と中核部を覆って配置される腸溶性被膜とを含む。中核部は:
(1)少なくとも1のリパーゼか;あるいは、
(2)例えばリパーゼ、プロテアーゼ、及びアミラーゼといった消化酵素の混合物;
と、本明細書中に記載のような任意の更なる賦形剤とを含む。腸溶性被膜は少なくとも1の腸溶性の重合体と、任意に本明細書中に記載のような可塑剤及び無機材料とを含む。
【0054】
被膜がない消化酵素含有ビーズは:
(1)少なくとも1のプロテアーゼか;
(2)被膜前の腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの中核部としての同一混合物の消化酵素か;あるいは、
(3)被膜前の腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの中核部としての異なる混合物の消化酵素;
と、本明細書中に記載のような任意の更なる賦形剤を含む。一実施形態においては、被膜がない消化酵素含有ビーズと、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの中核部とは実質的に同一である。いくつかの実施形態においては、被膜がない消化酵素含有ビーズは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むシーラント層で任意に被膜される。
【0055】
腸溶性の消化酵素含有ビーズ及び被膜がない消化酵素含有ビーズは本明細書中に記載のように、あるいは米国特許出願第2005/0250817号、米国特許出願第2006/0128587号、米国特許出願第2006/0121017号、米国特許出願第2007/0148151号、米国特許出願第2007/0148152号、米国特許出願第2007/0148153号、米国特許出願第2008/0299185号、米国特許出願第2008/0274174号、若しくは米国特許出願第2008/0279953号、又は米国特許第4,079,125号、米国特許第5,260,074号、米国特許第5,302,400号、米国特許第5,324,514号、米国特許第5,378,462号、米国特許第5,460,812号、米国特許第5,578,304号、又は米国特許第5,750,104号のいずれかに記載のように調整できる。
【0056】
本発明の組成物は任意の好適な経口剤形で調製できる。好適な剤形の限定しない例は、錠剤、カプセル又は小袋を含む。本発明の組成物が錠剤として調剤した場合、腸溶性の消化酵素含有ビーズ及び被膜がない消化酵素含有ビーズ、ならびに任意の賦形剤は当該技術分野で既知の方法を用いて「錠剤化(tabletted)」(すなわち、錠剤に形成)できる。特定の実施形態においては、本発明の組成物は、当該技術分野で既知の方法を用いてカプセルに充填される。
【0057】
本明細書中に記載のように、本発明の多粒子性の組成物は腸溶性の消化酵素含有ビーズと、被膜がない消化酵素含有ビーズとを含む。「ビーズ(bead)」という用語は、例えば粉末、顆粒、マイクロ錠剤(本明細書中に記載のような)、又はミニ錠剤(本明細書中に記載のような)といった消化酵素を含む任意の好適な粒子形態のことである。「顆粒(granulate)」という用語は、主に粒子からなり、当該技術分野で既知の従来の顆粒化プロセスで形成される、凝集した粒子のことであり、任意の結合剤を含んでもよい。
【0058】
腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズは少なくとも1の腸溶性の重合体を含む腸溶性被膜で被膜される。「腸溶性の重合体(enteric polymer)」という用語は、胃の内容物から消化酵素を保護する重合体、例えば酸性pHでは安定であるが、pHが更に高いと迅速に分解しうる重合体、又は残余の消化管と対照的に、胃の内容物の消化酵素との接触が比較的少ないが、重合体が胃内にあることを保証する程度に、その水和速度又は浸食速度が緩速な重合体を意味する。腸溶性の重合体の限定しない例は:セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、及びセラックといった変性又は未変性の天然高分子;又は、アクリルの重合体又は共重合体、メタクリル酸の重合体及び共重合体、メチルメタクリラートの共重合体、ならびにメタクリル酸/メチルメタクリラートの共重合体(例えば、EUDRAGIT(登録商標)L又はEUDRAGIT(登録商標)S)といった合成高分子;等の当技術分野で既知の重合体を含む。
【0059】
腸溶性の重合体被膜は合成高分子にでき、任意にアルカリ化剤といった無機材料を含む。得られた被膜粒子によって、1以上の安定化した消化酵素を含む中核部と、中核部を封入する腸溶性被膜とを含む腸溶性被膜があるビーズが得られる。被膜し安定化した消化酵素の粒子は次いで錠剤又はカプセルに製剤できる。
【0060】
腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料とによって、本発明の腸溶性被膜があるビーズに腸溶特性が与えられる。すなわち、腸溶性被膜は胃の酸性環境から封入した消化酵素を保護する障壁として作用し、小腸に到達する前に薬剤が放出するのを実質的に防ぐ(すなわち、胃における消化酵素の放出は、組成物の腸溶性被膜があるビーズ部分において、消化酵素の総量の約10ないし20%未満である)。
【0061】
無機材料は、例えば二酸化ケイ素、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、滑石、及びその組合せを含むことができる。一実施形態においては、無機材料が滑石である。
【0062】
腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約10:1ないし約1:60であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約8:1ないし約1:50であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約6:1ないし約1:40であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約5:1ないし約1:30であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約4:1ないし約1:25であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約4:1ないし約1:9であってもよい。別の実施形態においては、腸溶性の重合体と少なくとも1の無機材料との重量での比率の範囲は約10:4ないし約10:7であってもよい。
【0063】
一実施形態においては、本発明の組成物又は経口剤形は、腸溶性の重合体と滑石といった無機材料とを含む腸溶性被膜で被膜した安定化した消化酵素の粒子を含む。特定の実施形態においては、腸溶性被膜の無機材料は、粒子の総重量のうち約1ないし10重量パーセントを含む。別の実施形態においては、無機材料は粒子の約3、約5、約7、又は約10重量パーセントを含む。更なる他の実施形態においては、無機材料は乾燥被膜重量のうち約20ないし60%を構成する。更なる他の実施形態においては、アルカリ化剤は乾燥被膜重量の約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、又は約55%である(全範囲、部分範囲、及びその間の値を含む)。特定の実施形態においては、アルカリ化剤は滑石である。更に別の特定の実施形態においては、粒子の乾燥被膜が約31%ないし約35%の滑石を含む。
【0064】
いくつかの実施形態においては、被膜は実質的に可塑剤がない。本発明の他の実施形態においては、被膜は更に可塑剤を含む。好適な可塑剤の例は限定しないが、トリアセチン、トリブチルシトラート、トリエチルシトラート、アセチルトリ−n−ブチルシトラート、ジエチルフタラート、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒマシ油、アセチル化したモノグリセリド、アセチル化したジグリセリド、及びその混合物を含む。
【0065】
本発明の剤形は、本発明の組成物(例えば、一部を腸溶性の重合体と無機材料とで被膜した安定化した消化酵素組成物の粒子)を含むカプセルにできる。カプセル自体は、当該技術分野で既知の任意の従来の生分解性材料、例えば、ゼラチン、プルランといった多糖、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースといった変性したセルロース材料、を含みうる。安定化した消化酵素の安定性を改善するために、カプセルは充填前に乾燥できるか、あるいは含水量が低い材料を含むカプセルを選択できる。本発明の剤形の一実施形態においては、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。本発明の剤形の別の実施形態においては、カプセルは、含水率が約6%以下、例えば約4%以下、2%以下、又は2ないし6%若しくは4ないし6%の任意の概数のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。別の実施形態においては、カプセルは、含水率が約2%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0066】
本発明の剤形は単一の消化酵素、又は消化酵素の混合物を含むことができる。本発明の多粒子性の組成物の被覆がないビーズと腸溶性被膜があるビーズの中核部分とが各々、名目上組成を同一にできるか、あるいは組成を別個にできる。例えば、被覆がないビーズはプロテアーゼを含み、かつ被覆があるビーズはリパーゼを含みうるか、あるいは被覆がないビーズ及び被覆があるビーズは各々が消化酵素の混合物、すなわち、リパーゼとプロテアーゼとを含みうるか、あるいは被覆がないビーズはプロテアーゼで濃縮した消化酵素の混合物を含み、かつ被覆があるビーズはリパーゼで濃縮した消化酵素の混合物を含みうる。例えば、剤形は各々の中核部がパンクレリパーゼを含む腸溶性被膜があるビーズと、パンクレリパーゼを含む被覆がないビーズとで充填したカプセルにできる。代替的には、剤形は腸溶性被膜があるビーズと被覆がないビーズとで充填されるカプセルにでき、一部の腸溶性被膜があるビーズの中核部はパンクレリパーゼを含む一方、それ以外の腸溶性被膜があるビーズの中核部は別個にリパーゼ、又はプロテアーゼ、又はアミラーゼを含む。同様に、一部の被覆がないビーズはパンクレリパーゼを含みうるが、それ以外の被覆がないビーズは別個にリパーゼ、プロテアーゼ、又はアミラーゼを含む。代替的には、腸溶性被膜があるビーズの中核部は各々がパンクレリパーゼを含みうる一方、一部又は総ての被覆がないビーズは異なる酵素組成物、例えばプロテアーゼを含みうる。異なる組成の被膜があるビーズ及び被膜がないビーズの任意の好適な組合せは所望の治療効果を提供するのに用いることができる。
【0067】
更には、個々の腸溶性被膜があるビーズは各々で腸溶性被膜組成物が同一になりうるか、あるいは一部の腸溶性被膜組成物が異なる腸溶性被膜があるビーズの混合物を含みうる。腸溶性被膜組成物の任意の好適な組合せは、所望の型の治療効果を供するのに用いることができる。
【0068】
腸溶性のビーズの中核部又は被覆がないビーズの粒径又は形状は、任意に好適にできる。例えば、ビーズは、粒径の範囲が約50ないし5000ミクロンの被膜した粉末形態にするか、あるいは公称粒径の範囲が約2ないし5mmの「ミニタブ(minitab)」の形態にすることができる。他の用途では、被膜粒子の中核部は、公称粒径が約2mm未満、例えば約1ないし2mmであの「マイクロタブ(microtab)」にできる。
【0069】
消化酵素含有ビーズ(例えば、被膜がない消化酵素含有ビーズ、又は腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの中核部)は、消化酵素、少なくとも1の崩壊剤、少なくとも1の高分子結合剤又は希釈剤、ならびに、任意に少なくとも1の可塑剤、任意に少なくとも1の流動促進剤、及び任意に少なくとも1の潤滑剤を含むことができる。一実施形態においては、腸溶性のビーズ又は被覆がないビーズは約60ないし90%の消化酵素、約1ないし4%の少なくとも1の崩壊剤、約2ないし6%の少なくとも1の高分子結合剤又は希釈剤、ならびに任意に約0.5ないし1.0%の少なくとも1の可塑剤、任意に約0.2ないし0.6%の少なくとも1の流動促進剤、及び任意に約0.2ないし0.6%の少なくとも1の潤滑剤を含むことができる。例えば、消化酵素含有ビーズは約60ないし90%のパンクレリパーゼ、約1ないし4%のクロスカルメロースナトリウム、約0.5ないし1.0%の硬化ヒマシ油、約0.2ないし0.6%のコロイド状二酸化ケイ素、約2ないし6%の微結晶性セルロース、及び約0.2ないし0.6%のステアリン酸マグネシウムを含むことができる。腸溶性被膜は少なくとも1の腸溶性の重合体と、約20ないし35%の少なくとも1の無機材料(腸溶性被膜の乾燥重量に基づいて)と、任意に少なくとも1の可塑剤とを含むことができる。一実施形態においては、腸溶性被膜は約10ないし20%の少なくとも1の腸溶性ポリマー、約4ないし10%の少なくとも1のアルカリ化剤、及び約1ないし2%の少なくとも1の可塑剤(被覆があるビーズの総重量に基づいて)を含むことができる。例えば、被膜は約10ないし20%のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、約4ないし10%の滑石、及び約1ないし2%のトリエチルシトラート(被覆があるビーズの総重量に基づいて)を含むことができる。複数の被覆した消化酵素含有ビーズは次いで被膜がない消化酵素含有ビーズと組合わせて、錠剤に成形するか、あるいはカプセルに充填できる。一実施形態においては、カプセルはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。
【0070】
本発明の組成物、及び本発明の組成物を含む剤形は、従来の消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)組成物及び剤形と比較して安定性が改善している。結果的には、本発明の剤形は、臨床上有用な量の消化酵素を必要に応じて患者に送達するのに従来の消化酵素の剤形で実施しているような「過剰充填(overfill)」する必要がない(すなわち、ゼロ過剰充填(zero−overfill))。従来の消化酵素組成物及び剤形は、わずかな酵素安定性を補償するために65%のレベル(すなわち、必要な消化酵素の用量の165%)で過剰充填する必要がある。結果として、従来の消化酵素組成物で送達される用量に関して不確実となる。このように、従来の「過剰充填」した剤形は、製造直後に目的の用量より多く送達できるが、経時的に、酵素活性度は目的の用量未満に低下しうる。
【0071】
一実施形態においては、本発明の組成物を含む剤形は実質的にゼロ過剰充填である。用語「実質的にゼロ過剰充填(substantially zero−overfill)」との用語は、追加の消化酵素活性の量(すなわち、目的の用量を超える追加の酵素活性の量)が約10%以下、すなわち、約10%、約10%未満、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、又は約0%となる本発明の組成物を意味する。そうすると、例えば、目的の用量が約4500IUリパーゼの場合、本発明の実質的にゼロ過剰充填の剤形は約4950IU以下のリパーゼ(すなわち、4500IUのリパーゼの110%以下)を含みうる。別の実施形態では、ゼロ過剰充填の剤形が4500IUのリパーゼを含む。
【0072】
腸溶性の消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズとの組合せを含む本発明の組成物又は剤形は更に、従来有効であると考えられていたよりも実質的に低い用量で膵臓痛ならびにその根底にある栄養障害(例えば、脂肪吸収不全症)を有効に治療するという利点がある。例えば、被覆がない膵酵素組成物での膵臓痛の治療を調査した従前の研究では、1食あたり64,000単位のリパーゼと240,000単位のプロテアーゼの投与が必要であった。脂肪吸収不全症の治療は一般的には、1食あたり約35,000ないし175,000単位のリパーゼの投与が必要となる。従って、膵臓痛と脂肪吸収不全症との双方の治療には(被覆がない膵酵素と被覆がある膵酵素とを組合わせて)1食あたり約99,000ないし239,000単位リパーゼが必要となる。驚くべきことに、本発明者は約2000ないし20,000単位のリパーゼが腸溶性被膜があるビーズの形態で供され、かつ約78,000ないし60,000単位のリパーゼが被覆がないビーズの形態で供される(すなわち、5/95ないし約25/75の腸溶性のリパーゼ/被覆がないリパーゼである)場合に約80,000単位リパーゼのリパーゼ総用量で膵臓痛と脂肪吸収不全症との治療に有効であることを見出した。これらの用量は1食ごとに与えられても、単一日に複数回投与してもよい。
【0073】
他の実施形態においては、膵臓痛と脂肪吸収不全症とを治療するのに有効な用量は:
約1000ないし10,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約65,000ないし34,000USP単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約1000ないし5,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約3000ないし20,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約1000ないし4,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約3000ないし15,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約2000ないし5,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約6000ないし20,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約2000ないし4,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約6000ないし15,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約2000ないし6,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約6000ないし22,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約3000ないし6,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約10,000ないし22,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
約3000ないし7,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約10,000ないし23,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;又は、
約4000ないし7,000単位のリパーゼを含有する腸溶性被膜があるビーズ及び約15,000ないし23,000単位のプロテアーゼを含有する被覆がないビーズ;
を含む。本明細書中に記載の用量は単一剤形として、あるいは総計で全用量を与える2以上の小さな剤形として投与できる。
【0074】
特定の実施形態においては、被膜がない消化酵素含有ビーズは更にリパーゼ(プロテアーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約50:50にすることによって、腸溶性被膜があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位になるか、あるいは、被膜がない消化酵素含有ビーズは更にリパーゼ(プロテアーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約25:75にすることによって、被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位になる。
【0075】
特定の実施形態においては、被膜がない消化酵素含有ビーズは更にリパーゼ(プロテアーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約95:5ないし約50:50にすることによって、腸溶性被膜があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位になるか、あるいは、被膜がない消化酵素含有ビーズは更にリパーゼ(プロテアーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約95:5ないし約75:25にすることによって、被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位になる。
【0076】
特定の他の実施形態においては、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズは更にプロテアーゼ(リパーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼの、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約50:50にすることによって、被覆がないビーズのプロテアーゼ活性の範囲は約65,000USP単位ないし約34,000USP単位になるか、あるいは、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズは更にプロテアーゼ(リパーゼに加えて)を含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼの、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約75:25にすることによって、被覆がないビーズのリパーゼ活性の範囲は約65,000USP単位ないし約34,000USP単位になる。
【0077】
更なる他の実施形態においては、腸溶性の消化酵素含有ビーズ及び被膜がない消化酵素含有ビーズは双方がリパーゼとプロテアーゼとを含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約95:5ないし約50:50とし、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼの、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約50:50とすることによって、被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位となり、被覆がないビーズにおけるプロテアーゼ活性の範囲は約65,000USP単位ないし約34,000USP単位となる組成物を提供する。
【0078】
更なる他の実施形態においては、腸溶性の消化酵素含有ビーズ及び被膜がない消化酵素含有ビーズは双方がリパーゼとプロテアーゼとを含み、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約95:5ないし約75:25とし、腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼの、被膜がない消化酵素含有ビーズに対する比率の範囲を約5:95ないし約25:75とすることによって、被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲は約1000USP単位ないし約10,000USP単位となり、被覆がないビーズにおけるプロテアーゼ活性の範囲は約65,000USP単位ないし約34,000USP単位となる組成物を提供する。
【0079】
本発明の組成物又は剤形(例えば、錠剤又はカプセル)は任意の好適な容器に貯蔵できる。例えば、パッケージはネジ閉鎖手段又は圧入閉鎖手段があるガラス又はプラスチック製の広口瓶であってよい。代替的には、本発明の組成物又は剤形は単位剤形として「ブリスターパック(blister packs)」に包装できる。出願人は、防湿シール及び/又は防湿容器によって、消化酵素組成物又は剤形の安定性が改善するのを見出した。好適な防湿容器の限定しない例は、ガラス製の広口瓶、吸湿防止系の樹脂又は被膜を組み込んだプラスチック製の広口瓶、アルミニウム処理したプラスチック(例えば、Mylar)容器等を具える。「防湿(moisture−proof)」という用語は、水が1年に容器の容積1cmあたり約0.5mg未満しか透過しない容器のことである。
【0080】
容器(例えば、瓶)は任意の好適な閉鎖手段、特に貯蔵中の水分の進入を最小限にする閉鎖手段にできる。例えば、本発明の組成物又は剤形はシールライナーと印字されたHS035 Heat Seal/20F(SANCAP Liner Technology社)を含むSaf−Cap III−A(Van Blarcom Closures社)等の閉鎖手段で閉鎖できる。
【0081】
容器の保全性を保証し、貯蔵中の水分の進入を最小限にするために、本発明の組成物又は剤形を調剤して、容器を密封した後に、本発明の組成物又は剤形を含む密封容器の漏れを検査できる。例えば、閉鎖手段に調整した真空を印加して、経時的に真空の減少を検出することによって、密封容器を検査できる。好適な漏れ試験装置は、Bonfiglioli社製のもの(例えば、モデルLF−01−PKV又はモデルPKV516)を具える。
【0082】
本発明の組成物又は剤形を含む容器は更に、容器内部の湿気を減少でき、容器内に密封した雰囲気から水分を「除去(scavenge)」できる乾燥剤(すなわち、水を吸収するか、水と反応するか、あるいは水を吸着する物質)、例えば乾燥剤カプセルを含むことができる。このような容器内部に配置できる好適な乾燥剤の限定しない例は、ゼオライト(例えば、4Å分子ふるいといった分子ふるい)、粘土(例えば、モンモリロナイト粘土)、シリカゲル、活性炭、又はその組合せを含む。一実施形態においては、乾燥剤は分子ふるいを含む。
【0083】
更に、容器の上部の空きスペースを充填するために綿といったセルロース系材料の「栓子(plug)」を容器の上部内に付加することによって、内容物の移動を最小限にすることは、経口医薬品の単位用量を包装する際の一般的な方法である。セルロース系材料は多少吸湿性であり、容器内部の水分の「貯留層(reservoir)」として作用しうる。従って、本発明の容器の一実施形態においては、セルロース又は綿の「栓子」は容器内に存在しない。本発明の容器の別の実施形態においては、容器にはセルロース又は綿の栓子がなく、乾燥剤を含む。
【0084】
本発明の組成物は従来技術を用いて調製できるが、約3%以下の含水量、約0.6以下の水分活性となるように、あるいは3月の加速安定性試験後に約15%程度の活性の減少を示す安定化した消化酵素組成物となるように本明細書中で示したように改変している。例えば、消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)のビーズは減湿器を装備した流動床式被膜装置で被膜できる。一実施形態においては被膜装置は、含水率が約4g/m以下、約3.5g/m以下、約3g/m以下、約2.5g/m以下、約2.0g/m以下、約1.5g/m以下、約1.0g/m以下、又は約0.5g/m以下、その間の総ての範囲及び部分的な範囲を含む雰囲気において操作される。被膜を行う雰囲気は、除湿した空気、除湿した窒素、又は別の除湿した不活性ガスを含みうる。
【0085】
被膜は、アルコール(例えばエタノール)、ケトン(例えばアセトン)、塩化メチレン、又はその混合物(例えば、アセトンとエタノールとの混合物)といった有機溶媒において腸溶性の重合体(及び任意の懸濁した無機材料)の溶液として塗布できる。
【0086】
本発明の組成物は、膵臓痛を治療する(すなわち、膵臓痛を低減又は軽減する)のに有効であり、更に、消化酵素の欠乏に関連する状態又は障害に罹患した患者において、脂肪、タンパク質、及び炭水化物の吸収を改善する。一実施形態においては、本発明の組成物、特にパンクレリパーゼ又はパンクレアチン組成物は膵臓痛、例えば、種々の疾患又は状態に関連し、外分泌性膵不全(EPI)に関連する膵臓痛を治療するのに用いることができる。このような疾患は限定しないが、嚢胞性線維症(CF)又はアルコール乱用に関連する膵不全を含む。
【0087】
いくつかの実施形態においては、このような組成物は、膵臓痛のみ、あるいは嚢胞性線維症の患者及び小児患者を含めた他の患者におけるEPIに関連する(例えば脂肪の)吸収障害と併合した膵臓痛を実質的に軽減できる。いくつかの実施形態においては、このような組成物は、嚢胞性線維症患者で脂肪吸収係数(CFA)を少なくとも約85%以上に増加できる。他の薬剤又は組成物と併用投与した場合にこのような結果が得られうるか、あるいは他の薬剤と併用投与せずに得られうる。一実施形態においては、このようなCFAの結果はPrilosec(登録商標)、Nexium(登録商標)等といったプロトンポンプ阻害薬を併用投与することなく得られる。
【0088】
GIのpHレベルが低い(例えば、GIのpHレベルが約4未満)と同定された患者では、結果の改善は、本発明の組成物又は剤形をプロトンポンプ阻害薬、制酸剤、及びGI管のpHが増加する他の薬剤と併用して投与することによって得ることができる。例えば、本発明の組成物又は剤形をプロトンポンプ阻害薬、制酸剤、又は他の薬剤と別個に(プロトンポンプ阻害薬、制酸剤などの投与の前、同時、又は後に)投与できる。代替的には、単一剤形として、プロトンポンプ阻害薬、制酸剤、又は他の薬剤を本発明のパンクレアチン組成物と併用できる。
【0089】
更に別の実施形態では、本発明は、膵臓痛と、任意に消化酵素の欠乏に関連する障害とを治療又は予防する方法を提供し、必要に応じて本発明の組成物をほ乳類に投与するステップを具える。一実施形態においては、ほ乳類がヒトである。
【0090】
別の実施形態においては、本発明は膵臓痛を治療又は予防し、かつ/あるいは消化酵素の欠乏と関連する障害を治療する方法を提供し、低用量の膵酵素(例えば、本明細書中に記載のように5000USP単位リパーゼのカプセルを7個、あるいは同様の用量の、CREON(登録商標)1206、CREON(登録商標)1212、CREON(登録商標)1224、又はULTRASE(登録商標)、VIOKASE(登録商標)等といった当該技術分野で既知の市販組成物)を投与するステップを具える。
【0091】
更に別の実施形態においては、本発明は、膵臓痛と、任意に消化酵素の欠乏と関連する障害とを治療又は予防する方法を提供し、本発明の組成物又は剤形を必要に応じてほ乳類に投与するステップを具え、本発明の組成物又は剤形は少なくとも1の消化酵素に加えて、プロトンポンプ阻害薬、制酸剤、又はGIのpHが増加する他の薬剤を含む。更に別の実施形態においては、本発明は、本発明の組成物又は剤形を、消化酵素の欠乏に関連する障害を治療又は予防する方法を提供し、プロトンポンプ阻害薬、制酸剤、又はGIのpHが増加する他の薬剤を含む剤形と併用して投与するステップを具える。
【0092】
膵臓痛を引き起こすかあるいは膵臓痛と関連し、かつ本発明の組成物又は剤形で治療できる障害は、患者の消化酵素がないか又はレベルが低い状態、又は患者が消化酵素の補充を必要とする状態を含む。例えば、このような状態は:嚢胞性線維症;慢性膵炎;他の膵疾患(例えば、遺伝性、外傷後及び同種移植片の膵炎、ヘモクロマトーシス、シュバックマン症候群、リポマトーシス、又は副甲状腺機能亢進症);癌又は癌治療の副作用;外科手術(例えば、胃腸バイパス手術、ウィップル手順、全膵切除等)又は膵酵素が腸に到達できない他の状態の副作用;適合性の低下(例えば、ビルロートII胃切除、他のタイプの胃のバイパス手術、ガストリノーマ等);メトホルミンでの治療といった薬剤治療、あるいは膵臓が損なわれうるHIV及び糖尿病といった自己免疫性疾患症状を治療するのに用いる薬剤治療の副作用;閉塞(例えば、膵管及び胆管の結石症、膵及び十二指腸の新生物、管狭窄症);小児脂肪便症に付随する吸収障害;食物アレルギー;ならびに老化;を含む。本発明の消化酵素組成物で治療できる他の状態は自閉症、パーキンソン病、糖尿病、及び自律神経障害を含む。
【0093】
ほ乳類(例えば、ヒト)に一日に投与される本発明の組成物又は剤形の量は、目的とする成果に依存する。当業者は、治療すべき状態の診断に基づいて必要な用量を処方可能である。
【0094】
例えば、ヒトにおける(例えば、嚢胞性線維症に関連する)消化酵素の機能不全の治療では、一般的な開始用量は1食あたり500ないし1000単位リパーゼ/kgであり、総用量は米国食品医薬品局(US FDA)の勧告に従って1食の脂肪1gあたり2500リパーゼ単位又は4000リパーゼ単位を超えない。一般的には、患者は好ましくは食事と一緒に投与される、1日に少なくとも4つの剤形を受けるべきである。
【0095】
特定の実施形態においては、用量は1食あたり約80,000単位リパーゼ及び約272,000単位プロテアーゼであり、約5ないし25%の酵素(活性に基づく)は腸溶性被膜があるビーズの形態で与えられ、約95ないし75%の酵素は被覆があるビーズの形態で与えられる。
【0096】
他の実施形態においては、本発明は、例えば本明細書中に記載の任意の状態により生じる膵外分泌機能不全を、低用量の腸溶性被膜がある消化酵素組成物、例えば本明細書中に記載の腸溶性被膜があるビーズで治療する方法に関する。膵不全を治療する従来の用量の範囲は本明細書中に記載のように、1食あたり約500ないし1000単位リパーゼである。例えば、CREON(登録商標)パンクレリパーゼカプセルのFDAラベルには成人用に投与する酵素は「4歳を超えるヒトには1食あたり体重1kgにつき500単位リパーゼで開始し、1食あたり体重1kgにつき2,500単位リパーゼを最大とすべきである」と呈示している。従って、70kgの成人については、1日に3食半(すなわち、3食と1回の軽食)を食する場合、CREON(登録商標)パンクレリパーゼの推奨の一日投与量の範囲は約122,500単位リパーゼないし約612,500単位リパーゼである。本明細書中に記載のように、本発明者は驚くべきことに、実質的に低用量の腸溶性被膜がある消化酵素の調製で膵外分泌機能不全の治療に効果があることを見出している。従って、1食あたり約100単位リパーゼ/kg程度及び1食あたり最大約300単位リパーゼ/kgの低用量の腸溶性被膜がある消化酵素で膵外分泌機能不全の治療に効果があるが、このような状態に罹患する患者の「丸薬の負担(pill burden)」を低減する。好適な用量は1食あたり約100、約110、約120、約130、約140、約150、約160、約170、約180、約190、約200、約10、最大20、約230、約240、約250、約260、約270、約280、約290、又は約300単位リパーゼ/kgを含み、その間の総ての範囲及び部分的な範囲を含み、必要に応じて患者に投与できる。
【実施例】
【0097】
[実施例1]
《被膜がないパンクレリパーゼと腸溶性のパンクレリパーゼとのミニ錠剤》
被膜がないパンクレリパーゼと腸溶性のパンクレリパーゼとの
パンクレリパーゼMT(ミニ錠剤)は、約2mm径の面取り加工したパンチを用いて製剤された、パンクレリパーゼ素材(例えば、Nordmark社で得られる)と賦形剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム、硬化ヒマシ油、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、及びステアリン酸マグネシウム)との混合物である。被膜前のパンクレリパーゼMTの物理特性は以下の表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】
パンクレリパーゼMTは、プロセス気流においてMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置を用いて被膜製剤で被膜した(表4)。被膜プロセスは3の異なる含水量でプロセス空気において行った(表5)。各々のバッチについては、被膜重量は被覆があるビーズの総重量の約15%であった。各設定のプロセス状態での被覆があるビーズの組成はほぼ同一であり(表6)、顕微鏡検査で均一、平滑、及び均質であると思われた。
【0100】
【表4】

【0101】
【表5】

【0102】
【表6】

【0103】
3設定の試料(すなわち、P9A165、P9A167、及びP9A170)はプロセス流の含水量に対応する残留含水量を示した(表7)。
【0104】
【表7】


[実施例2]
【0105】
《腸溶性のミニ錠剤》
パンクレリパーゼMTの粒子は別個の量の滑石を含む2の被膜組成物で被膜した(表8)。
【0106】
【表8】

【0107】
被膜試験は含水量が低い(すなわち、1g/m未満の)プロセス気流を保証するためにMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置を用いて行った。被膜重量は約15%であった。2のバッチの理論上の組成は表9で報告する。顕微鏡検査によって、総ての試料の被膜は平滑かつ均質であったことが示された。残留含水量は乾燥減量法で測定した(表10)。
【0108】
【表9】

【0109】
【表10】


[実施例3]
【0110】
《腸溶性のミニ錠剤》
表6に記載のものと同様の「滑石が多い(High talc)」被膜組成物及び「滑石が少ない(low talc)」被膜組成物は、エタノール(96%エタノール、4%水)/アセトンの溶媒を除いて、100%アセトンで置換した。
【0111】
【表11】

【0112】
被膜試験は含水量が低い(すなわち、1g/m未満の)プロセス気流を保証するためにMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置を用いて行った。被膜重量は約15%であった。2のバッチの理論上の組成は表12で報告する。
【0113】
【表12】


[実施例7]
【0114】
《腸溶性のミニ錠剤》
パンクレリパーゼMTの粒子は、被膜溶媒としてアセトン又はエタノール/アセトンの混合物を用いて、滑石の濃度が上で用いた「低(low)」濃度及び「高(high)」濃度の中間となる2の被膜組成物で被膜した(HP55:TEC:滑石=10:1:5)。2の被膜懸濁剤の理論上の組成は以下の表13に示す。
【0115】
【表13】

【0116】
被膜試験は含水量が低い(すなわち、1g/m未満の)プロセス気流を保証するためにMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置を用いて行った。
【0117】
バッチは約15%の被膜重量でパンクレリパーゼMTを被膜することによって調製した。3のバッチはエタノール/アセトンの被膜溶媒で調製し、3のバッチはアセトン被膜溶媒で調製した。理論上の組成は総ての6のバッチで同一であり、以下の表14に示す。
【0118】
【表14】

【0119】
総ての6の試料に対する被膜の顕微鏡検査で平滑、及び均質であると思われた。
[実施例8]
【0120】
《腸溶性のマイクロ錠剤及び被膜がないマイクロ錠剤》
〈マイクロ錠剤〉
錠剤の寸法が顕著に低減した投与製剤は更なる選択肢を提供した。パンクレリパーゼの混合物は約1.5mmの直径、1.2mmの曲率半径のパンチで製剤された。
【0121】
圧縮パラメータは破砕性が2.5%未満のマイクロ錠剤(μΤ)を得るように設定した(USP法)。ロット番号9A402の特性は表15に示す。
【0122】
【表15】

【0123】
ロット番号P9A402は、表4に示した組成物の懸濁液で含水量が低い(すなわち、1g/m未満の)プロセス気流を保証するためにMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置で被膜さた。22%の被膜重量が得られた。薄膜被膜の顕微鏡検査によって、総ての試料の被膜は平滑かつ均質に見えることが示された。
【0124】
ロット番号P9A422のバッチの理論上の組成は表16に示す。
【0125】
【表16】

【0126】
腸溶性のマイクロ錠剤2の別のバッチは上述のように調製され、その特性は以下の表17に示す。
【0127】
【表17】

【0128】
上で調製したマイクロ錠剤はわずかに長方形であり(表15参照)、マイクロ錠剤の厚さと直径との比率は1.22:1ないし1.15:1であった。
【0129】
マイクロ錠剤の直径を更に低減するために、新規の試料は直径に対する厚さの比率をほぼ1:1に調製した(ロット番号Q9A006)。以下の表18に示す。
【0130】
【表18】

【0131】
ロット番号Q9A006は22%の特定の重量で表19に示した組成物で被膜した。被膜試験は含水量が低い(すなわち、1g/m未満の)プロセス気流を保証するためにMunters ML1350減湿器を装備した流動床式Glatt−GPCG1装置を用いて行った。
【0132】
ロット番号Q9A019の被膜したマイクロ錠剤の理論上の組成は表19に示すものと同一であった。顕微鏡検査によって、被膜は平滑かつ均質であることが示された。
【0133】
【表19】


[実施例9]
【0134】
《腸溶性のパンクレアチンと被膜がないパンクレアチンとの組合せでの治療》
異なる膵酵素生成物(PEP)の組成物A及び組成物Bの安全性及び有効性を向上させるための、単一施設における、無作為で非盲検で交差式の実対照薬研究は、慢性膵炎の患者で行われた。
【0135】
組成物Aの各々のカプセルは全部で10,000USP単位リパーゼ及び34,000USP単位プロテアーゼの約10の腸溶性被膜がある小さなビーズと、10,000USP単位リパーゼ及び34,000USP単位プロテアーゼの10の被膜がないビーズとを含む。組成物Bの各々のカプセルは全部で2,000USP単位リパーゼ及び6,800USP単位プロテアーゼの約2の腸溶性被膜がある小さなビーズと、18,000USP単位リパーゼ及び61,200USP単位プロテアーゼの18の被膜がないビーズとを含む。腸溶性被膜があるPEPでの別個の現行の膵酵素補充療法(Pancreatic Enzyme Replacement Therapy:PERT)が実対照薬として用いられる。
【0136】
群1は1食あたり4カプセルの組成物Aを、4食で分割して1日あたり16カプセルで受容するように無作為抽出される。群2は組成物Bを、4食で分割して1日あたり16カプセルを受容するように無作為抽出される。群3は検診前に与えられる、1日あたり固定用量のカプセルを同一のPERTで投与される。
【0137】
効果は1日あたりの疼痛発症の数としての疼痛の重症度と、11点の視覚的アナログスケールで測定するような疼痛の重症度を数量化することによって評価する。副次的目標はCFAを評価することによって脂肪の吸収障害を測定することである。
【0138】
患者の算入基準は:
基準でCFAが70%未満の(脂肪の取込みが100gの患者における1日あたりの便において脂肪が7gを超える)随伴性の脂肪便症でのERP異常(Cambridge II又はIIIの変更)によって確認したCPの診断;
1日あたり少なくとも1の発症頻度の、反復性で慢性の上部GIの疼痛;
市場にある現存のPEP治療からの切替可能性;
この臨床試験への同意前の7日間に併発疾患又は急性の上部気道若しくは下部気道の感染症の形跡がない臨床上の安定性;
である。
【0139】
本研究は3の期間に分割される:
1.検診期間:適格性の評価に1週間;
2.休薬期間(1週間):患者は現行のPEPを中断するが、総ての他の認容される併用薬は維持され、特に患者はPPIを含む胃酸調節のための薬物を投薬するのを認可される。休薬期間の終了時に、CFAを定量する;
3.治療期間1(4週間):総ての患者は脂肪便症を制御するのに必要な別個の固定用量で現行のPERTを受容する;
4. 治療期間2(4週間):群1は固定した単位/kgの用量で1食あたり4カプセルの組成物Aを受容するように無作為抽出される。群2は固定した単位/kgの用量で組成物Bを受容するように無作為抽出される。群3は4週間検診前に与えられるのと同一のPERTで初期の用量を投与される。治療期間2の終了時に、CFAを定量する;
5.疼痛の重症度及び頻度は1日基準で休薬期間及び治療期間に記録する。
【0140】
効果は各々の治療群での治療期間の疼痛の重症度及び頻度、ならびに疼痛用薬剤の使用を比較することによって評価する。効果は更に、各々の治療群での治療期間2及び休薬期間の規定の食事及び3日間の定量的な便採取に由来するCFAを比較することによって評価する。最終的に、疼痛の重症度及び頻度ならびにCFAは治療期間2における群の間で比較される。
【0141】
組成物A及び組成物Bでの治療後に、双方の組成物は膵臓痛を治療するのに有効であり、双方の組成物は膵外分泌機能不全の治療に有効である。組成物Bは膵臓痛の治療に組成物Aよりも有効である。
[実施例10]
【0142】
無作為で二重盲検で交差式の用量応答対照試験は、本発明による組成物の効果を評価するのに行われた。検診後、適合した患者はプラセボ基準の外来段階を開始した(4日間)。日数5で患者は、コントロール食の下で「基準段階(baseline)」の72時間の脂肪吸収係数(CFA)を定量し、便標識を用いてコントロール食期間の最初と最後を表示するために3ないし5日間入院した。プラセボ基準段階の終了時に、患者は「高用量に続く低用量」といったEUR−1008の投与順、又は「低用量に続く高用量」といったEUR−1008の投与順に無作為抽出され、第1の交差法段階に進んだ。各々の交差法段階は自宅での6日間の安定期間と、それに続くコントロール食を用いて72時間の脂肪吸収係数(CFA)を定量し、便標識を用いてコントロール食期間の最初と最後を表示するための3ないし5日間の入院とからなった。
【0143】
主要な有効性の研究の目的は、慢性膵炎の診断と関連するEPIの患者における徴候及び症候の治療ならびに吸収障害の管理において、高用量の腸溶性のパンクレアチンで治療した患者の、低用量の腸溶性のパンクレアチンで治療した患者との脂肪吸収係数(CFA)の差異を評価することである。
【0144】
適合した患者はプラセボ基準の外来段階を開始した(4日間)。日数5で患者は、コントロール食の下で「基準段階」の72時間の脂肪吸収係数(CFA)を定量し、便標識を用いてコントロール食期間の最初と最後を表示するために3ないし5日間入院する一方、プラセボ治療を受け続けた。プラセボ基準段階の終了時に、患者は「高用量に続く低用量」といった腸溶性のパンクレアチンの投与順、又は「低用量に続く高用量」といった腸溶性のパンクレアチンの投与順に無作為抽出され、第1の交差法段階に進んだ。各々の交差法段階は自宅での6日間の安定期間と、それに続くコントロール食を用いて72時間の脂肪吸収係数(CFA)を定量し、便標識を用いてコントロール食期間の最初と最後を表示するための3ないし5日間の入院とからなった。
【0145】
高用量(20,000USP単位リパーゼのカプセルを7個、表20の組成物4)は24時間あたり7カプセルの固定した1日投与量で投与され、食事の規模(脂肪量の概算)に応じて分配した(推定例:朝食で2カプセル、昼食で2カプセル、夕食で2カプセル、及び間食で1カプセル)。
【0146】
【表20】

【0147】
低用量(5,000USP単位リパーゼのカプセルを7個、表20の組成物1)は24時間あたり7カプセルの固定した1日投与量で投与され、食事の規模(脂肪量の概算)に応じて分配した(推定例:朝食で2カプセル、昼食で2カプセル、夕食で2カプセル、及び間食で1カプセル)。
【0148】
対照治療については、対照のプラセボは24時間あたり7カプセルの固定した1日投与量で投与された。各々の交差治療段階は自宅での6日間の安定期間と、3ないし5日間の入院とからなった。
【0149】
CFAの平均はプラセボ基準期間の終了時よりも双方の用量濃度での治療の後に、有意に高くなった。プラセボ基準期間からの変化の平均は、低用量で7.19±14.49(p<0.001)であり、高用量で8.18±17.35(95%のCI、4.10ないし12.26)であった。高用量と低用量とのLSの平均間の差異は1.023%(95%のCI、−0.656ないし2.701)であり、ひいては用量間の差異は統計上有意ではなかった(p=0.228)。従って、驚くべきことにこの研究によって、被覆がある酵素は慢性膵炎の患者で脂肪吸収不全症を治すのに有効であり、かつ高用量によって脂肪吸収係数(CFA)のいかなる増加も生じないことを見出した。
【0150】
この結果によって、実質的に低用量の腸溶性被膜がある消化酵素は、従来用いられているものよりも膵外分泌機能不全を治療するのに有効であることを示す。例えば、CREON(登録商標)パンクレリパーゼカプセルのFDAラベルには成人用に投与する酵素は「4歳を超えるヒトには1食あたり体重1kgにつき500単位リパーゼで開始し、1食あたり体重1kgにつき2,500単位リパーゼを最大とすべきである」と呈示している。従って、70kgの成人については、1日に3食半(すなわち、3食と1回の軽食)を食する場合、CREON(登録商標)パンクレリパーゼの推奨の一日投与量の範囲は約122,500単位リパーゼないし約612,500単位リパーゼである。これに対して、本研究によって、35,000単位リパーゼ程度の低い1日投与量が膵外分泌機能不全の治療に有効であり、従来許容される最小用量の消化酵素の30%未満であることを示した。
【0151】
更には、本研究の結果によって更に、少量の被覆がある酵素が脂肪吸収不全症を治すのに用いることができる一方、多量の被覆がない酵素は膵臓痛の治療用に単一剤形に含むことができることを示す。このような生成物は現行の用途を超える丸薬の負担の過剰な増加、あるいは消費する酵素濃度の全体的な有意な増加はなく、ひいては薬剤の安全特性を維持する一方、吸収障害を治療する効果を保持する。特に、胃から出て、CCK放出ペプチドを十分に分解するときに即時に利用可能な十分な被膜がないプロテアーゼがあり、ひいては単一の薬剤で慢性膵炎ならびに疼痛及び吸収障害という2の主要な症候を治療するのに有効である。従って、単一の丸薬又はカプセルに腸溶性の消化酵素と被膜がない消化酵素との双方を含む剤形は慢性膵炎、ならびに疼痛と吸収障害との双方を示す任意の膵疾患の治療に有効である。
【0152】
本発明の前述の記載は、例示及び説明の目的のために提示している。排他的にすること、又は開示した正確な形態に本発明を限定することを目的としていない。上述の教示に照らして変更及び変形が可能である。実施形態の記載は、本発明の原理及び本発明の実際の用途を説明及び記載するために選択され、特許請求の範囲を限定することを意味しない。
【0153】
本明細書中で引用したすべての刊行物及び特許又は特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、又は特許出願が引用によって具体的かつ別個に示され、組み込まれたかのように、その全体が引用によって組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズと被膜がない消化酵素含有ビーズトを含む多粒子性の消化酵素組成物であって:
前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズが中核部と当該中核部を覆って配置される腸溶性被膜とを含み、前記中核部が治療上有効な量のリパーゼを含み、前記腸溶性被膜が腸溶性の重合体を含み;
前記被膜がない消化酵素含有ビーズが治療上有効な量のプロテアーゼを含み、腸溶性の重合体被膜が実質的になく;
該被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲が約1000USP単位ないし約10,000USP単位であり、該被覆がないビーズにおけるプロテアーゼ活性の範囲が約65,000USP単位ないし約34,000USP単位であることを特徴とする、多粒子性の消化酵素組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の多粒子性の消化酵素組成物において、前記被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲が約1000USP単位ないし約5000USP単位であることを特徴とする、多粒子性の消化酵素組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の多粒子性の消化酵素組成物において、前記被覆があるビーズのリパーゼ活性の範囲が約2000USP単位ないし約4000USP単位であることを特徴とする、多粒子性の消化酵素組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の多粒子性の消化酵素組成物において:
該腸溶性の消化酵素含有ビーズ及び該被膜がない消化酵素含有ビーズの各々がリパーゼとプロテアーゼとを具え、プロテアーゼ活性及びリパーゼ活性が実質的に同一であり;
前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、前記被膜がない消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性に対する比率の範囲が約95:5ないし約50:50であり;
前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼ活性の、前記被膜がない消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼ活性に対する比率の範囲が約5:95ないし約50:50である;
ことを特徴とする、多粒子性の消化酵素組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の多粒子性の消化酵素組成物において:
前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性の、前記被膜がない消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼ活性に対する比率の範囲が約95:5ないし約75:25であり;
前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼ活性の、前記被膜がない消化酵素含有ビーズにおけるプロテアーゼ活性に対する比率の範囲が約5:95ないし約25:75である;
ことを特徴とする、多粒子性の消化酵素組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の多粒子性の消化酵素組成物を含むことを特徴とする剤形。
【請求項7】
請求項6に記載の剤形において、前記被膜がない消化酵素含有ビーズの総プロテアーゼ活性の範囲が約34,000USP単位プロテアーゼないし約62,000USP単位プロテアーゼであることを特徴とする剤形。
【請求項8】
請求項6に記載の剤形において、前記被膜がない消化酵素含有ビーズの総プロテアーゼ活性の範囲が約47,000USP単位プロテアーゼないし約62,000USP単位プロテアーゼであることを特徴とする剤形。
【請求項9】
前記多粒子性の消化酵素組成物を充填したカプセル形態の請求項6に記載の剤形。
【請求項10】
膵炎痛を治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を必要に応じて患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
膵炎痛と膵不全とを治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を必要に応じて患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、該投与ステップが、前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズのリパーゼ活性の範囲が約1000ないし約5,000USP単位リパーゼとなるような量の多粒子性の消化酵素組成物を1食あたりに投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
膵外分泌機能不全を治療する方法であって、治療上有効な用量の請求項1に記載の多粒子性の組成物を、必要に応じて患者に投与するステップを具え、前記治療上有効な用量中の前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズの量の範囲が、1食あたり約100ないし約300USP単位リパーゼ/kgであることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記腸溶性被膜がある消化酵素含有ビーズにおけるリパーゼの日用量の範囲が、約35,000ないし約90,000USP単位リパーゼであることを特徴とする方法。
【請求項15】
膵臓痛を治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を必要に応じて患者に投与するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、該投与ステップが、前記被膜がない消化酵素含有ビーズのプロテアーゼ活性の範囲が約130,000ないし約260,000USP単位リパーゼとなるような量の多粒子性の消化酵素組成物を1食あたりに投与するステップを具えることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2013−505255(P2013−505255A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529909(P2012−529909)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049203
【国際公開番号】WO2011/035079
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512000167)アプタリス ファーマテク,インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】APTALIS PHARMATECH,INC.
【Fターム(参考)】