説明

自動ワインダーの糸解舒補助装置

【課題】糸の解舒に追随移動する可動筒を昇降するための昇降機構に、風綿などが付着しないように防塵する。
【解決手段】糸解舒補助装置は、ボビンBからの糸Yの解舒に追随移動して、糸Yの解舒を補助する可動筒(規制筒)13と、可動筒13を支持するホルダー12とを備える。また、糸解舒補助装置は、モーターM、ねじ部材30などで構成され、ホルダー12を昇降して、可動筒13を昇降する昇降機構3を備える。さらに、糸解舒補助装置は、昇降機構3を防塵するための包囲機構(カバー部材)4を備え、包囲機構4は、可動筒13の昇降に伴って上下方向に伸縮する伸縮部材41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダーに適用され、ボビンからの糸の解舒を補助する糸解舒補助装置に関する。
【0002】
自動ワインダーは、図1に示すように、ボビンBの糸Yを解舒して、巻取管に巻き付ける複数の巻取装置2と、各巻取装置2において満巻になった巻取パッケージを玉揚する玉揚装置7などを備える。各巻取装置2には、ボビンBから糸Yを解舒する際に形成されるバルーンを規制し、糸Yに適切なテンションを付与して、糸Yの解舒を補助する糸解舒補助装置が設けられる。
【0003】
例えば図8に示すように、従来の糸解舒補助装置9は、ボビンBから糸Yの解舒をする際に固定された状態の固定筒90と、固定筒90に外嵌され、ボビンBからの糸Yの解舒に追随して移動する可動筒(規制筒)91と、可動筒91を昇降するための昇降機構92などを備える。昇降機構92は、巻取装置2のフレーム内部93に設けられ、エアシリンダ94と、上下方向に延設された昇降ガイド部材95と、昇降ガイド部材95に沿って移動可能なスライダー96などによって構成され、これらによって可動筒91を支持するホルダー97を昇降することで、可動筒91の昇降を行う。ここで、巻取装置2のフレーム93の内外に渡ってのびるホルダー97が昇降できるように、フレーム93には上下方向にのびるガイド孔(不図示)が形成されている。
【0004】
ところで、各巻取装置2でボビンBから糸Yを解舒する際には、風綿が発生し、飛散して、糸解舒補助装置9を始めとして巻取装置2のあらゆる部分に堆積する。風綿が巻取装置2の可動部分に堆積すれば、動作不良の原因となる。
【0005】
従来の糸解舒補助装置9では、昇降機構92はフレーム93内部に設けられているため風綿が多少堆積しにくくはなっている。しかしながら、上記のとおり、フレーム93にはホルダー97が昇降できるようにガイド孔を形成しているため、このガイド孔から風綿が入り込んで、昇降機構92に堆積してしまう。例えば、風綿が昇降機構92のエアシリンダ94に付着すると、エアシリンダ94のパッキンが不良となり、可動筒91を昇降することができなくなるなどの問題ある。そのため、昇降機構92に付着した風綿などの塵埃を除去するメンテナンスを定期的にしなければならない。
【0006】
この他に、例えば特許文献1には、図8と同様の構成の糸解舒補助装置であって、可動筒を昇降する昇降機構を、送りねじ、昇降ガイド部材、スライダーなどによって構成するものが開示されている。この昇降機構を構成している送りねじは特に塵埃を嫌うものであるため、特許文献1のような糸解舒補助装置では、非常に短い間隔で昇降機構の風綿に対するメンテナンスをする必要がある。しかしながら、特許文献1では、昇降機構に対する防塵については何も謳われていない。
【0007】
このように、昇降機構をフレーム内部に設けたとしても、フレームにはホルダーの昇降のためにガイド孔を形成する必要があり、そこから風綿が入り込み、昇降機構に付着していた。そのため、昇降機構の風綿に対するメンテナンスは不可欠であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−242028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、糸の解舒を補助する可動筒を昇降するための昇降機構を、風綿などが付着しないように防塵する自動ワインダーの糸解舒補助装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動ワインダーの糸解舒補助装置は、ボビンからの糸の解舒に追随移動して、糸の解舒を補助する規制筒と、規制筒を支持するホルダーと、ホルダーを昇降して、規制筒を昇降する昇降機構と、昇降機構を防塵するためのカバー部材と、
を備え、
カバー部材は、
規制筒の昇降に伴って上下方向に伸縮する伸縮部材を備えることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、カバー部材は、
伸縮部材の下端に設けられ、昇降機構を防塵のためにカバーする非伸縮性のカップ部材をさらに備える。
【0012】
好ましくは、昇降機構は、上下方向に延設され、軸周りに回転可能に支持されたねじ部材と、ねじ部材に平行に延設された昇降ガイド部材と、ねじ部材を回転駆動するための駆動源と、ねじ部材の回転により、昇降ガイド部材に案内されてホルダーとともに昇降するスライダーとを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自動ワインダーの糸解舒補助装置は、上記構成の通り、昇降機構を防塵するためのカバー部材が、規制筒の昇降に伴って上下方向に伸縮する伸縮部材を備える。この伸縮部材を設けたことによって、風綿が付着しないように昇降機構を完全に防塵した状態を保持しながらも、従来のようにホルダーの昇降によって規制筒を昇降させる構成を実現することができる。
【0014】
これにより、従来のように昇降機構に風綿が付着することはなくなり、昇降機構の風綿に対するメンテナンスは不要となる。また、昇降機構の完全な防塵により、昇降機構の配置を風綿の影響を気にせずに自由に選択して糸解舒補助装置を設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動ワインダーの全体構成を示す正面図である。
【図2】巻取装置の構成を示す概略側面図である。
【図3】本発明に係る糸解舒補助装置の一部破断側面図である。
【図4】解舒補助ユニットの一部破断側面図であり、(A)は可動筒が下降した図で、(B)は可動筒が上昇した図である。
【図5】本発明に係る糸解舒補助装置の正面図である。
【図6】本発明に係る糸解舒補助装置の一部破断平面図である。
【図7】解舒補助ユニットの他の実施形態の一部破断側面図であり、(A)は可動筒が下降した図で、(B)は可動筒が上昇した図である。
【図8】従来の糸解舒補助装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る自動ワインダーの糸解舒補助装置(以下、単に糸解舒補助装置という)について説明する。
【0017】
自動ワインダーは、図1に示すように、直線列状に配置された複数の巻取装置2を備える。自動ワインダーは、各巻取装置2にボビンBを供給するボビン供給装置6と、玉揚げ作業をする玉揚装置7とを備える。さらに、自動ワインダーは、各巻取装置2、ボビン供給装置6、および玉揚装置7などを制御する機台制御装置8を備える。
【0018】
巻取装置2には、図2に示すように、糸解舒補助装置1と、テンション装置22と、糸継装置23と、スラブキャッチャー24とが、下方から上方に向かって順に設けられる。また、巻取装置2は、糸Yを一定の幅範囲でトラバースする綾振りドラム25と、綾振りドラム25のトラバース領域に臨んで設けられるガイド板26と、パッケージPを回転自在に支持するクレードル27とを備える。
【0019】
巻取装置2には、切断された糸を吸引捕捉して糸継装置23に渡す中継パイプ28およびサクションマウス29が設けられる。ボビンBから繰り出された糸Yは、テンション装置22からスラブキャッチャー24を通過する間に糸欠陥の有無がチェックされる。糸Yに欠陥部分があると、欠陥部分が糸継装置23に設けられたカッターと、スラブキャッチャー24に設けられたカッターとで切断されて、吸引除去される。
【0020】
糸解舒補助装置1は、図3に示すように、取付部材20により巻取装置2のフレーム21に取り付けられ、搬送トレイ61上に起立固定したボビンBの上方においてボビンBの解舒を補助する。糸解舒補助装置1は、下記する固定筒(第一規制筒)11、可動筒(第二規制筒)13などからなる解舒補助ユニットUを備え、この解舒補助ユニットUによって、ボビンBから解舒される糸Yにより形成されるバルーンの大きさを制御し、糸Yに適切なテンションを付与する。
【0021】
解舒補助ユニットUは、第1ホルダー10に支持される固定筒11と、第2ホルダー12に支持される可動筒13とを備える。固定筒11は固定された状態でバルーンの拡がりを規制し、可動筒13はボビンBからの糸Yの解舒に追随して移動してバルーンの拡がりを規制し、糸Yの解舒を補助する。
【0022】
固定筒11および可動筒13は上下端が開口する円筒体であり、可動筒13は固定筒11に外嵌される。固定筒11は、その下端に糸ガイド14が設けられる。可動筒13の下端には、下方向に拡大するテーパー状の導入口15が形成される。ボビンBの中心軸線と固定筒11および可動筒13の中心軸線とは一致している。
【0023】
可動筒13には対向する支持アーム16が固定され、支持アーム16の対向面にはボビンBのチェース部60を検出するためのセンサー17が配置される。センサー17は、受光部および投光部を備えた光センサーであって、チェース部60の高さを検出する。
【0024】
さらに、解舒補助ユニットUは、図4Aに示すように、可動筒13を昇降するための昇降機構3を備える。昇降機構3全体は包囲機構(カバー部材)4により完全に包囲されており、糸Yの解舒の際に発生する風綿が付着しないように防塵されている。昇降機構3は、上下方向に延設されたねじ部材30と、ねじ部材30に平行に延設された昇降ガイド部材31と、昇降ガイド部材31によって案内されるスライダー32とを備える。
【0025】
ねじ部材30および昇降ガイド部材31は、上端側において上支持部材33に支持され、下端側において下支持部材34に支持される。ねじ部材30は、上支持部材33および下支持部材34に設けられたベアリング35に差し込まれ、軸周りに回転可能に支持される。ねじ部材30には、ねじ部材30の回転により昇降するナット部材36が螺合している。このナット部材36はスライダー32に固定してある。なお、上支持部材33は包囲機構4に固定されており、下支持部材34は包囲機構4には固定されない。
【0026】
昇降機構3は、ねじ部材30を回転駆動するための駆動源としてのモーターMと、モーターMの動力を伝達するための伝達部材としての歯付きベルト37を備える。歯付きベルト37は、モーターMの出力軸に装着されるプーリーと、ねじ部材30に装着されるプーリーとに係合し、モーターMの動力をねじ部材30に伝達する。上記の構成により、モーターMを正逆のいずれかに回転することで、ねじ部材30が軸周りに回転駆動するため、ねじ部材30に螺合したナット部材36が昇降し、これによりスライダー32が昇降する。
【0027】
包囲機構(カバー部材)4は、糸Yの解舒の際に発生する風綿が昇降機構3に付着しないように、昇降機構3全体を包囲するためのものである。包囲機構4は、モーターMなどを防塵のためにカバーする上部カバー40を備える。上部カバー部40には上支持部材33が固定してあり、またその外面には固定筒11を支持する第1ホルダー10が固定してある。
【0028】
包囲機構4は、ねじ部材30、昇降ガイド部材31、スライダー32などを防塵のためにカバーする伸縮部材としての蛇腹部材41と、非伸縮性のカップ部材42とを備える。蛇腹部材41は円筒形状で伸縮自在である。蛇腹部材41は、その伸縮方向が上下方向となるように、そしてねじ部材30および昇降ガイド部材31の周囲をカバーするように設けられる。蛇腹部材41は上端が上部カバー部40に接続され、下端がリング状の連結部材43を介してカップ部材42に接続される。
【0029】
蛇腹部材41の下端に設けられるカップ部材42は、例えば樹脂、金属などの硬質材料からなり、非伸縮性である。カップ部材42は上端が開口し下端が閉口しており、連結部材43に取り付けられて、ねじ部材30、昇降ガイド部材31などを下側からカバーする。こうして、包囲機構4は、昇降機構3全体を完全に包囲し、風綿などの塵埃が内部に侵入しないようにしている。
【0030】
そして、リング状の連結部材43の内面にはスライダー32が固定してあり、外面には可動筒13を支持する第2ホルダー12が固定してある。したがって、モーターMによりスライダー32が昇降すると、連結部材43、第2ホルダー12、カップ部材42が一体となって昇降するので、可動筒13が昇降する。
【0031】
このようにして可動筒13が昇降する際、蛇腹部材41の上端側は上部カバー部40に固定されているため昇降しないが、蛇腹部材41の下端側は連結部材43に取り付けられているため昇降するので、蛇腹部材41は可動筒13の昇降に伴って上下方向に伸縮する。蛇腹部材41は可動筒13が下降すれば伸長し(図4A)、可動筒13が上昇すれば短縮する(図4B)。こうして、蛇腹部材41を可動筒13の昇降に対応して伸縮させることにより、可動筒13を昇降させても、包囲機構4に風綿が内部に侵入するような隙間が形成されないようになっている。
【0032】
上記のように、昇降機構3をカバーする蛇腹部材41(伸縮部材)が上下方向に伸縮するように、そして可動筒13を支持する第2ホルダー12を包囲機構4の外面であって、スライダー32と共に昇降する箇所(連結部材43の外面)に固定するようにして、可動筒13を昇降させている。この構成により、昇降機構3を完全に防塵した状態を保持しながらも、昇降機構3が第2ホルダー12を介して可動筒13を昇降できるようになっている。したがって、糸Yの解舒の際に発生する風綿が昇降機構3に付着することはなく、本実施例のように昇降機構3をボビンBの近傍に垂下させても、昇降機構3が風綿により動作不良になる心配はない。そして、従来は定期的に行う必要があった昇降機構3の風綿に対するメンテナンスは一切不要となる。
【0033】
なお、本実施例のように、ボビンBの近傍に包囲機構4を配置する構成の場合、包囲機構4の下部側に、排出されたボビンBに引き連れられる糸Yが接触することがあり、これにより包囲機構4の一部が裂けて防塵性が損なわれることが考えられる。しかしながら、本実施例の場合、包囲機構4の下部側を、非伸縮性で硬質のカップ部材42で構成しているので、たとえ糸Yが接触したとしても裂けることはなく、糸Yの接触により包囲機構4の防塵性が損なわれることはない。
【0034】
また、図4A、Bから明らかなように、可動筒13が下降する際、カップ部材42も下降するため、包囲機構4のベース面62からの高さHは次第に低くなる。そのため、可動筒13を糸Yの解舒に伴って下降させる際に、カップ部材42がベース面62に接触しないように留意する必要がある。
【0035】
解舒補助ユニットUは、上記の固定筒11、可動筒13、昇降機構3および包囲機構4からなり、これらは第1ホルダー10、第2ホルダー12などによる連結によって一体化している。
【0036】
糸解舒補助装置1は、図5に示すように、ケーシング18を備え、このケーシング18に上記の解舒補助ユニットUを制御するための制御部19が収納される。ケーシン18は巻取装置2のフレーム21に固定されている。制御部19は、モーターMを駆動するためのドライブ基板、電源などを含む。ケーシング18は、図6に示すように、背面にカバー18aが取り付けられ、このカバー18aを取り外すことにより、制御部19をケーシング18に収納できる。
【0037】
また、ケーシング18の側面と、上部カバー部40の側面にはそれぞれゴムブッシュ38が設けられ、これらのゴムブッシュ38を通じて、制御部19からの配線39がモーターMに接続される。これにより、制御部19とモーターMとが電気的に接続される。また、図示しないが制御部19からの配線39はセンサー17にも接続される。
【0038】
上記構成からなる糸解舒補助装置1によって、ボビンBからの糸Yの解舒を補助する。ボビンBからの糸Yの解舒に伴い、ボビンBのチェース部60の高さは次第に下降していく。センサー17はこのチェース部60の下降を検出すると、その検出信号を制御部19へと出力する。そして、この検出信号を受けた制御部19は、上記の包囲機構4に包囲された昇降機構3のモーターMを駆動し、スライダー32を所定位置まで下降させ、可動筒13をチェース部60の高さ変化に追随して新たな動作位置にまで下降させる。この可動筒13のチェース部60の高さの変化に追随した下降は、ボビンBに巻かれた糸Yが1/3程度になるまで繰り返し行われる。
【0039】
解舒補助ユニットU全体としての高さは、ボビンBの上下寸法に合わせて設定するものである。そのため、使用するボビンBの上下寸法が変われば、解舒補助ユニットUの高さを変更調整する必要がある。そこで、糸解舒補助装置1は、図5に示すように、ボビンBに対する解舒補助ユニットUの高さを調節するための高さ調整機構5を備える。
【0040】
高さ調整機構5は、解舒補助ユニットUを上下方向に案内するガイド部材としてのシャフト50と、シャフト50を把持および解除可能なクランプ部材51と、クランプ部材50の把持および解除を操作するための操作レバー52とを備える。シャフト50は、ケーシング18の側面から水平にのびる上下一対の突出部53に、その上端および下端が固定されている。
【0041】
クランプ部材51はその後面において解舒補助ユニットUに取り付けられている。解舒補助ユニットUは、シャフト50およびクランプ部材51によって支持され、ボビンBの上方において垂下した状態にある。クランプ部材51は、シャフト50を把持していないときは、シャフト50に沿って移動可能である。解舒補助ユニットUとクランプ部材51とは一体となって移動するため、解舒補助ユニットUはシャフト50に沿って上下方向に案内される。
【0042】
なお、解舒補助ユニットUとクランプ部材51とは、ねじなどの着脱可能な一つの着脱部材(図示せず)によって取り付けられている。そのため、作業者はこの一つの着脱部材を取り外すだけで、垂下している解舒補助ユニットU全体を一度に取り外すことができ、解舒補助ユニットUのメンテナンスが容易である。
【0043】
クランプ部材51に取り付けられた操作レバー52は、一方向に回動することで、クランプ部材51がシャフト50を把持するように、反方向に回動することで、クランプ部材51のシャフト50に対する把持を解除できるように構成される。操作レバー52の操作によりクランプ部材51がシャフト50を把持すると、締付力が作用し、クランプ部材51がシャフト50に固定されるので、解舒補助ユニットUが位置決め固定される。
【0044】
ボビンBの上下寸法の変更に伴い、解舒補助ユニットUのボビンBに対する高さを調整する際には、作業者はまず操作レバー52を操作して、クランプ部材51のシャフト50に対する把持を解除する。それから、解舒補助ユニットUをボビンBの上下寸法にあった所望の高さにまでシャフト50に沿って移動させる。そして、再度操作レバー52を操作して、クランプ部材51がシャフト50を把持するようにして、解舒補助ユニットUを所望の高さに位置決め固定する。
【0045】
このように作業者は糸解舒補助装置1の正面にある操作レバー52により、クランプ部材51の把持および解除の操作をするだけで、解舒補助ユニットUのボビンBに対する高さを調整することができる。すなわち、解舒補助ユニットUのボビンBに対する高さ調整を、工具を用いることなく手作業で容易に行える。
【0046】
なお、シャフト50には、解舒補助ユニットUの位置決め用の目印(不図示)を設けてもよい。目印は、例えば、シャフト50において上下方向に所定間隔で付される目盛りである。目盛りは、クランプ部材51のシャフト50に対する把持に影響を与えなければ、シャフト50に直接刻むことで付してもよい。このような目印をシャフト50に設けることにより、作業者はさらに容易に解舒補助ユニットUの高さ調整を行える。
【0047】
本実施例では、クランプ部材51を上下方向に案内する案内部材がシャフト50で構成されているため、上記の構成だけでは、クランプ部材51はシャフト50周りに回転する。クランプ部材51がシャフト50周りに回転すると、解舒補助ユニットUがシャフト50を中心として回転する。解舒補助ユニットUの高さ調整をする際に、解舒補助ユニットUを所望の高さに位置決めしたとしても、解舒補助ユニットUがシャフト50を中心として少しでも回転すると、固定筒11および可動筒13の中心軸線がボビンBの中心軸線からずれてしまう。
【0048】
そこで、高さ調整機構5は、解舒補助ユニットUのシャフト50を中心とした回転を規制するための回転規制部材54を備える。回転規制部材54は、シャフト50に平行に延設され、ケーシング18の側面に固定される。そして、図5および図6に示すように、回転規制部材54はクランプ部材51に上下方向に形成された凹部55と係合しており、クランプ部材51は回転規制部材54に案内されて上下方向にスライド移動する。
【0049】
そして、この係合によりクランプ部材51はシャフト50周りに回転することができなくなるため、その結果、解舒補助ユニットUのシャフト50を中心とした回転は規制される。これにより、ボビンBの中心軸線と、固定筒11および可動筒13の中心軸線とが一致した状態のまま解舒補助ユニットUを所望の高さに移動させて、位置決めすることができる。
【0050】
また、回転規制部材54は、図5に示すように、その上下寸法がシャフト50の上下寸法より短く形成され、シャフト50に対する所定の高さ範囲内に位置するようにケーシング18の側面に固定されている。したがって、クランプ部材51を、シャフト50に沿って上方または下方に移動させて、回転規制部材54の高さ範囲から外せば、凹部55とスライドガイド部材54との係合が解け、クランプ部材51を回転規制部材54から取り外すことができる。すなわち、解除補助ユニットUのシャフト50を中心とする回転の規制を作業者が解除できるようになっている。
【0051】
作業者は、解舒補助ユニットUの回転規制を解除し、図6の矢印に示すように解舒補助ユニットUを、シャフト50を中心に回転させると、ケーシング18の後方にある包囲機構4が移動するため、ケーシング18の後方に作業スペースが確保される。これにより、作業者は、ケーシング18の背面のカバー18aを取り外して、ケーシング18内の制御部19のメンテナンおよび取り出しができるようになっている。すなわち、上記構成により、解除補助ユニットUの高さ調整をする際に必要であった回転規制を作業者が意図的に解除できるようにして、メンテナンスのための作業スペースを確保できるようにしている。
【0052】
本発明に係る糸解舒補助装置1は、上記の実施例に限定されるものではない。
上記実施例では自動ワインダーのボビン供給装置3はトレイ式の供給装置であるが、マガジン式の供給装置を採用してもよい。また、解舒補助ユニットUを位置決めするための目盛りをシャフト50に設けたが、回転規制部材54、ケーシング18の正面または側面など作業者が高さ調整の際に視認し易い位置に設けてもよい。
【0053】
防塵のために昇降機構3をカバーする伸縮部材として蛇腹部材41を採用しているがこれに限定されない。伸縮部材は、昇降機構3を風綿などの塵埃から保護することができ、可動筒の昇降に伴って上下方向に伸縮可能なものであれば他の構成でもよい。例えば、伸縮部材は、複数個の径の異なる筒体を径の大きさ順に嵌合することで、上下方向に伸縮可能に構成される連続筒体でもよい。
【0054】
図4において、蛇腹部材41と、カップ部材42とを備えた包囲機構4を示したがこれに限定されない。例えば、図7に示す構成がある。図7では、連結部材43の上側を図4と同様に第1蛇腹部材41aで構成し、連結部材43の下側をカップ部材42ではなく、下端が閉口した第2蛇腹部材41bで構成する。第2蛇腹部材41bの上端は連結部材43に取り付けられる。第2蛇腹部材41bの下端には、ねじ部材30およびガイド部材31を支持する下支持部材34が固定される。他の構成は、図4と同様である。
【0055】
この構成によると、モーターMによってスライダー32を昇降して可動筒13を昇降する際、第2蛇腹部材41bの上端は昇降するが、第2蛇腹部材41bの下端は下支持部材34に固定されているため昇降しない。そのため、可動筒13の昇降に伴い、第1蛇腹部材41aだけでなく、第2蛇腹部材41bも上下方向に伸縮する。可動筒13が下降すると、第1蛇腹部材41aは伸長し、第2蛇腹部材41bは短縮する(図7A)。可動筒13が上昇すると、第1蛇腹部材41aは短縮し、第2蛇腹部材41bは伸長する(図7B)。この構成でも、可動筒13が昇降したとしても、包囲機構4に風綿が内部に侵入するような隙間が形成されず、防塵性は保持される。
【0056】
図7A、Bからわかるように、この構成によれば、可動筒13が昇降したとしても、第2蛇腹部材41bの下端の位置は変わらないため、包囲機構4のベース面62からの高さHは変化しない。そのため、図4の実施例とは異なり、昇降機構3を垂下するにあたり、ベース面62からの高さHを気にする必要はない。ただし、図4の実施例とは異なり、包囲機構4の下部側を構成する第2蛇腹部材41bは伸縮性を有するものであるため、糸Yが接触することで裂けることがあり、裂けた部分から風綿などが侵入し防塵性が損なわれる虞があるので、この点には留意する必要がある。
【符号の説明】
【0057】
1 糸解舒補助装置
11 固定筒(第一規制筒)
12 第2ホルダー(可動筒用ホルダー)
13 可動筒(第二規制筒)
3 昇降機構
30 ねじ部材
31 昇降ガイド部材
32 スライダー
4 包囲機構(カバー部材)
41 蛇腹部材(伸縮部材)
42 カップ部材
5 昇降機構
50 シャフト(ガイド部材)
51 クランプ部材
52 操作レバー
54 回転規制部材
B ボビン
M モーター(駆動源)
U 解舒補助ユニット
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンからの糸の解舒に追随移動して、糸の解舒を補助する規制筒と、前記規制筒を支持するホルダーと、前記ホルダーを昇降して、前記規制筒を昇降する昇降機構と、前記昇降機構を防塵するためのカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材は、
前記規制筒の昇降に伴って上下方向に伸縮する伸縮部材を備えることを特徴とする自動ワインダーの糸解舒補助装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、
前記伸縮部材の下端に設けられ、前記昇降機構を防塵のためにカバーする非伸縮性のカップ部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の自動ワインダーの糸解舒補助装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、上下方向に延設され、軸周りに回転可能に支持されたねじ部材と、前記ねじ部材に平行に延設された昇降ガイド部材と、前記ねじ部材を回転駆動するための駆動源と、前記ねじ部材の回転により、前記昇降ガイド部材に案内されて前記ホルダーとともに昇降するスライダーとを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動ワインダーの糸解舒補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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