説明

自動ワインダ

【課題】給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置の運転/停止スイッチの切り替え作業を省略できる自動ワインダを提供する。
【解決手段】自動運転により給糸ボビンB1から糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する複数の巻き取り装置10と、複数の巻き取り装置10の動作を制御する機台制御本体5と、を具備し、巻き取り装置10は、自動運転による巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチ12と、を具備し、機台制御本体5は、複数の巻き取り装置10の自動運転スイッチ12の切り替え状態によらず、給糸ボビンB1の準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードへ移行させる制御部50と、を具備する自動ワインダ100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダは、給糸ボビンに巻かれた糸の糸欠点を除去しつつパッケージに巻き返す装置として公知である。自動ワインダは、複数の巻き取り装置から構成されている。自動ワインダでは、運転を開始する際に、給糸ボビンを各巻き取り装置に供給する給糸ボビン準備作業が必要である。例えば、マガジン式の自動ワインダでは、給糸ボビン準備作業として、各巻き取り装置のマガジンに給糸ボビンをセットし、給糸ボビンの糸端をマガジン中央の吸引口に吸引させる準備作業が必要となる。また、ボビン自動供給式の自動ワインダでは、給糸ボビンの糸端を口出しするとともに給糸ボビンの芯管の中に糸端を挿入して、各巻き取り装置に給糸ボビンを供給する給糸ボビン準備作業が必要となる。
【0003】
マガジン式の自動ワインダでは、給糸ボビン準備作業を行う場合、マガジン中央の吸引口に負圧を供給するための負圧発生装置を起動させる必要がある。ボビン自動供給式の自動ワインダでは、口出し装置に負圧を供給するための負圧発生装置及び、各巻き取り装置に給糸ボビンを供給するための装置を起動させる必要がある。
【0004】
ところで、マガジン式の自動ワインダ、及びボビン自動供給式の自動ワインダは、ともに機台制御本体に設けられ自動ワインダの各装置を起動または停止させる起動/停止スイッチと、各巻き取り装置の各々に設けられ各巻き取り装置の巻き取り作業を実行または停止させる自動運転スイッチと、を具備している。給糸ボビン準備作業を行う場合、糸端吸引口等を起動するために機台制御本体の起動スイッチをONにする必要がある。ところが、機台制御本体の起動スイッチをONにしたときに、巻き取り装置の自動運転スイッチがONであると、給糸ボビンが供給されていないにも関わらず、巻き取り装置が駆動し、自動運転をするために、ボビン保持装置がボビンを受け入れるための動作を繰り返すという問題がある。このような動作は、無駄な電力の消費や、ボビン保持装置の駆動機構の寿命低下につながる。
【0005】
そのため、自動ワインダでは、給糸ボビン準備作業を行う際には、各巻き取り装置の自動運転が停止していることが望ましく、作業者は、機台制御本体の起動スイッチをONにする前に、各巻き取り装置の自動運転スイッチをOFFにする作業が必要であった。また、給糸ボビン準備作業が終了した後には、各巻き取り装置の自動運転スイッチをONにする作業が必要であった。このような各巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え作業は、多数の巻き取り装置から構成される自動ワインダでは、作業工数の増加につながる問題がある。
【0006】
このような課題を解決するには、給糸ボビン準備作業に必要な巻き取り装置の一部の装置を動作することができれば良い。例えば特許文献1は、巻き取り装置の一部の装置を動作させる構成の自動ワインダを開示している。しかし、特許文献1に開示された自動ワインダは、給糸ボビン準備作業において、巻き取り装置の一部の装置を動作させる構成ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−112854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、解決しようとする課題は、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え作業を省略できる自動ワインダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
第1の発明は、給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、を具備し、前記巻き取り装置は、巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチを具備し、前記機台制御本体は、複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードへ移行させる制御部と、前記制御部に給糸ボビン準備モードへの移行を実行させる準備スイッチと、を具備するものである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の自動ワインダであって、前記給糸ボビン準備モードは、前記複数の巻き取り装置を構成する各装置であって、給糸ボビンの準備作業に必要なものを動作させ、給糸ボビンの準備作業に必要ではないものを停止させるものである。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明の自動ワインダであって、前記複数の巻き取り装置に負圧を供給する負圧供給装置を具備し、前記負圧供給装置は、前記給糸ボビン準備モードでは、各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転され、負圧を供給する前記複数の巻き取り装置に負圧を供給する負圧供給装置と、を具備し、前記負圧供給装置は、前記給糸ボビン準備モードでは、各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転され、負圧を供給するものである。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の自動ワインダであって、前記機台制御本体は、各装置を起動させる起動スイッチと、各装置を停止させる停止スイッチと、を具備し、前記制御部は、前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチを、前記給糸ボビン準備モードへ移行させる前記準備スイッチとして動作させるものである。
【0014】
第5の発明は、第4の発明の自動ワインダであって、前記機台制御本体は、設定部を具備し、前記制御部は、前記設定部の設定に応じて、前記起動スイッチまたは前記停止スイッチを、前記各装置の起動状態または停止状態からの前記給糸ボビン準備モードへの移行を実行させる前記準備スイッチとして設定するものである。
【0015】
第6の発明は、第3の発明の自動ワインダであって、前記制御装置は、前記機台制御本体は、前記準備スイッチとは別に、各装置を起動させる起動スイッチと、各装置を停止させる停止スイッチと、各装置を前記給糸ボビン準備モードで稼働させる操作部としての準備スイッチと、を具備する、ものである。
【0016】
第7の発明は、第6の発明の自動ワインダであって、前記機台制御本体は、設定部を具備し、前記制御部は、前記設定部の設定に応じて、前記準備スイッチによる前記各装置の運転状態または停止状態から前記給糸ボビン準備モードへの移行の許可を設定するものである。
【0017】
第8の発明は、給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、前記複数の巻き取り装置に所定負圧を供給する負圧供給装置と、を具備し、前記巻き取り装置は、マガジン式の給糸ボビン装置と、巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチと、を具備し、前記機台制御本体は、各装置を起動させる起動スイッチと、各装置を停止させる停止スイッチと、複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードを実行する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチの操作に基づいて、前記給糸ボビン準備モードへ移行させ、前記給糸ボビン供給装置は、複数の給糸ボビンを収納し、給糸ボビン保持位置に給糸ボビンを供給する給糸ボビン収納装置と、前記負圧供給装置から供給された負圧によって、給糸ボビンの糸端を吸い込む糸端吸引口と、を具備し、前記制御部は、給糸ボビン準備モードでは、各巻き取り装置の巻き取り動作を停止させ、前記負圧供給装置を動作させるものである。
【0018】
第9の発明は、第8の発明の自動ワインダであって、前記負圧供給装置を各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転することによって負圧の供給を制限させるものである。
【0019】
第10の発明は、自動ワインダであって、給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、トレイ式の給糸ボビン装置と、巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチと、前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、前記複数の巻き取り装置に所定負圧を供給する負圧供給装置と、負圧力により、給糸ボビンの糸端を引き出して、前記巻き取り装置が、前記糸端を受け取り可能な状態に準備する糸端引き出し装置と、を具備し、前記巻き取り装置は、巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチを具備し、前記機台制御本体は、各装置を起動させる起動スイッチと、各装置を停止させる停止スイッチと、複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードを実行する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチの操作に基づいて、前記給糸ボビン準備モードへ移行させ、前記給糸ボビン準備モードでは、前記ボビン供給装置、負圧供給装置、および糸端引出し装置を動作させるものである。
【0020】
第11の発明は、第10の発明の自動ワインダであって、前記制御部は、前記給糸準備モードでは、前記負圧装置を、各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転し、負圧を供給するものである。
【0021】
第12の発明は、第10または第11の発明の自動ワインダであって、給糸ボビンを搬送して各巻き取り装置に供給するためのボビン搬送装置を具備し、前記制御部は、前記給糸準備モードでは、前記ボビン搬送装置を駆動させるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
第1の発明は、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置の運転/停止スイッチの切り替え作業を省略できる。
【0024】
第2の発明は、給糸ボビン準備モードでは、給糸ボビン準備作業に必要な装置のみを動作させるため、給糸ボビン準備作業に必要ではない装置の動作によって無駄な電力が消費されること、ならびに、駆動機構の寿命低下を防止できる。
【0025】
第3の発明は、給糸ボビン準備モードでは、必要最小限の負圧を発生させることによって、消費電力を削減できる。
【0026】
第4の発明は、自動ワインダの起動/停止スイッチを利用して、給糸ボビン準備モードに移行させるため、作業者の操作ミスを防止することができる。
【0027】
第5の発明は、自動ワインダの使用状況に応じて給糸ボビン準備モードへ移行するか否かを設定できるので、使用性を向上できる。
【0028】
第6の発明は、給糸ボビン準備モードに移行させるのみのスイッチを利用して、給糸ボビン準備モードに移行させるため、作業者の操作ミスを防止することができる。
【0029】
第7の発明は、自動ワインダの使用状況に応じて給糸ボビン準備モードへ移行するか否かを設定できるので、使用性を向上できる。
【0030】
第8の発明は、マガジン供給式の自動ワインダでは、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置の起動/停止の切り替え作業を省略できる。
【0031】
第9の発明は、トレイ供給式の自動ワインダでは、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置の起動/停止の切り替え作業を省略できる。
【0032】
第10の発明は、負圧装置を低い駆動力で運転することで、自動ワインダの消費電力を低減できる。
【0033】
第11の発明は、トレイ供給式の自動ワインダでは、各巻き取り装置に給糸ボビンを搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1に係る自動ワインダの全体的な構成を示した正面図。
【図2】同じく巻き取り装置の構成を示す模式図。
【図3】同じく機台制御本体の構成を示す構成図。
【図4】給糸ボビン準備モードを示すテーブル図。
【図5】本発明の実施形態2に係る自動ワインダの全体的な構成を示した正面図。
【図6】同じく巻き取り装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1を用いて、自動ワインダ100について説明する。
自動ワインダ100は、本発明の自動ワインダの実施形態1である。自動ワインダ100は、複数の巻き取り装置10と、機台3と、給糸ボビン回収装置4と、機台制御本体5と、負圧発生装置6と、玉揚機7と、を具備している。
【0036】
機台3は、自動ワインダ100の長手方向に配置されている。給糸ボビン回収装置4は、自動ワインダ100の長手方向の一側に配置されている。給糸ボビン回収装置4は、各巻き取り装置10にて糸Yが解舒された空の給糸ボビンB1を回収する装置である(図2参照)。給糸ボビン回収装置4について、詳細な説明は省略する。機台制御本体5は、自動ワインダ100の長手方向の他側に配置されている。機台制御本体5について、詳しくは後述する。
【0037】
玉揚機7は、機台3の上方の長手方向を走行するように支持されている。玉揚機7は、パッケージP(図2参照)の払い出し作業、ボビンB2の綾振ドラム15(図2参照)へのセット動作、糸端のピックアップ動作等を行う装置である。
【0038】
負圧発生装置(負圧供給装置)6は、負圧を発生させて供給する装置である。負圧発生装置6は、ダクト(図示略)を介して、各巻き取り装置10に負圧を供給するように構成されている。負圧発生装置6は、機台制御本体5に隣接して配置されている。負圧発生装置6は、発生する負圧を調整できるように構成されている。例えば、負圧発生装置6は、発生する負圧を最大能力に対して80%、60%、・・、20%といった所定割合の能力で運転することによって、負圧の供給を制限して動作する。
【0039】
巻き取り装置10は、複数台(実施形態1では60台)が機台3の長手方向に並列に配置されている。巻き取り装置10について、詳しくは後述する。
【0040】
図2を用いて、巻き取り装置10について説明する。
巻き取り装置10は、給糸ボビンB1から解舒された糸Yを、上方に設けられた綾振ドラム15においてボビンB2に巻き取ってパッケージPを作成する装置である。巻き取り装置10は、給糸装置20と、テンション装置(図示略)と、糸継装置13と、糸欠陥除去装置14と、綾振ドラム15と、ユニットコントローラ55(図3参照)と、ユニット本体11と、自動運転スイッチ12と、を具備している。
【0041】
テンション装置は、走行する糸Yに所定のテンションを付与する装置である。実施形態1のテンション装置は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものが用いられている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、図略のロータリ式のソレノイドにより回動することができる。
【0042】
糸継装置13は、糸欠陥除去装置14が糸欠点を検出した時に、あるいは、給糸ボビンB1からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビンB1側の下糸と、ボビンB2側の上糸とを糸継ぎする装置である。
【0043】
糸欠陥除去装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0044】
巻き取り装置10は、さらに綾振ドラム15を回転させるための駆動モータと、駆動モータの回転速度を制御するインバータと、を具備している。
【0045】
給糸装置20は、給糸ボビンB1を保持するための給糸ボビン保持装置21と、糸解舒補助装置22と、ボビン供給装置30と、を具備している。ボビン供給装置30は、給糸ボビンB1を給糸ボビン保持装置21へ供給する装置である。実施形態1のボビン供給装置30は、マガジン式のボビン供給装置とされている。ボビン供給装置30は、マガジン31と、糸端吸引口32と、ボビンシュート33と、を具備している。
【0046】
マガジン31は、収納孔の下方開口部を給糸ボビン保持装置21側に向けた姿勢で配置されている。マガジン31には、中心軸を中心とした円周上に給糸ボビンB1を収納するための筒状の収納孔が複数形成されている。マガジン31は、駆動機構によって中心軸回りに間欠回動する構成とされている。
【0047】
糸端吸引口32は、マガジン31の収納孔に収納された給糸ボビンB1から口出しした糸端を負圧で吸い込んで保持する装置である。糸端吸引口32は、ダクト(図示略)を介して、負圧発生装置6に接続されている。
【0048】
ボビンシュート33は、給糸ボビンB1をマガジン31の収納孔の下方開口部から給糸ボビン保持装置21へ案内するものである。
【0049】
このような構成とすることで、ボビン供給装置30は、マガジン31を中心軸回りに間欠回動させ、一の給糸ボビンB1を下方開口部のある位置に移動させ、給糸ボビンB1を下方へ投下し、ボビンシュート33の案内によって給糸ボビン保持装置21へ投入することができる。また、ユニット本体11には、自動運転スイッチ12が設けられており、この自動運転スイッチ12がONのときに、巻き取り装置10は、給糸ボビンB1からパッケージPへの巻き取り作業を実行する。
【0050】
図3を用いて、機台制御本体5について説明する。
機台制御本体5は、制御部としてのコントローラ50と、操作部60と、設定部70と、を具備している。
【0051】
コントローラ50は、機台制御本体5の内部に配置されている。コントローラ50は、各巻き取り装置10のユニットコントローラ55と接続されている。コントローラ50は、各巻き取り装置10が給糸ボビンB1に巻かれた糸Yの糸欠点を除去しつつパッケージPに巻き返す動作を監視する機能を有している。また、コントローラ50は、複数の巻き取り装置10の給糸ボビンB1を巻き返し可能な状態にする給糸ボビン準備モードを実行する機能を有している。なお、給糸ボビン準備モードについて、詳しくは後述する。
【0052】
ユニットコントローラ55は、マガジン31および糸端吸引口32を含む巻き取り装置10の各装置と接続されている。
【0053】
操作部60は、機台制御本体5の正面側に配置されている。操作部60には、自動ワインダ100を操作するための各スイッチが配置されている。操作部60は、起動スイッチ61と、停止スイッチ62と、を具備している。起動スイッチ61は、コントローラ50に対して自動ワインダ100を構成する各装置を起動するように指令するスイッチである。すなわち、自動ワインダ100を構成する各装置は、起動スイッチ61を押すことで起動され、運転可能な状態となる。停止スイッチ62は、コントローラ50に対して自動ワインダ100を停止するように指令するスイッチである。すなわち、自動ワインダ100を構成する各装置は、停止スイッチ62を押すことで停止され、停止状態となる。
【0054】
設定部70は、機台制御本体5の正面側に配置されている。設定部70は、自動ワインダ100の各種の設定をコントローラ50に対して設定するものである。設定部70は、設定ボタン71と、液晶表示部72と、を具備している。液晶表示部72には、設定ボタン71によって設定された各種設定が表示される。
【0055】
給糸ボビン準備モードについて説明する。
自動ワインダ100では、運転を開始する時に、給糸ボビンB1を各巻き取り装置10に供給する給糸ボビン準備作業が必要である。例えば、実施形態1のマガジン式のボビン供給装置30を具備する自動ワインダ100では、給糸ボビン準備作業として、各巻き取り装置10のマガジン31に給糸ボビンB1をセットし、給糸ボビンB1の糸端を糸端吸引口32に吸引させる作業が必要となる。給糸ボビン準備モードとは、作業者が給糸ボビン準備作業を効率良く行うために自動ワインダ100の各装置を動作させる状態をいう。
【0056】
実施形態1の給糸ボビン準備モードでは、自動ワインダ100では、負圧発生装置6が巻き取り装置10が巻き取り動作を実行するときの運転(駆動力)を100%としたときの60%の運転によって負圧を制限して供給し、その他の装置等は、例え自動運転スイッチ12がONであっても動作しないものとされている。また、各巻き取り装置10では、ボビン供給装置30の糸端吸引口32のみが動作し、ボビン供給装置30のマガジン31、巻き取り装置10の給糸ボビン保持装置21、その他の装置等は動作しないものとされている。なお、給糸準備モードにおける装置の動作等は、予めコントローラ50およびユニットコントローラ55に記憶されている。
【0057】
図4を用いて、給糸ボビン準備モードの設定について説明する。
図4は、液晶表示部72に表示される給糸ボビン準備モードの設定パターンを示している。なお、現在は、網がけの設定パターン(3)が設定されている。
【0058】
設定部70は、給糸ボビン準備モードへの移行を実行させる準備スイッチを設定するものである。作業者は、設定ボタン71によって、給糸ボビン準備モードの移行の許可が設定された設定パターン(1)〜(4)を選択し、設定できる。
【0059】
起動時の給糸ボビン準備モードがONに設定することにより、起動スイッチ61が準備スイッチとして設定され、自動ワインダ100を構成する各装置が停止状態のとき、1回起動スイッチ61を押すと、制御部であるコントローラ50は、自動ワインダ100を構成する各装置を給糸ボビン準備モードに移行させ、もう1回起動スイッチ61が押されると、自動ワインダ100を構成する各装置を起動状態に移行させ、自動運転スイッチ12がONである巻き取り装置10は、巻き取り作業を実行する。
【0060】
起動時の給糸ボビン準備モードがOFFに設定され、自動ワインダ100を構成する各装置が停止状態のとき、1回起動スイッチ61を押すと、制御部であるコントローラ50は、自動ワインダ100を構成する各装置が起動状態に移行する。なお、このとき、自動ワインダ100を構成する各装置は、起動スイッチ61によっては給糸ボビン準備モードには移行しない。
【0061】
停止時の給糸ボビン準備モードがONに設定することにより、停止スイッチ62が準備スイッチとして設定され、自動ワインダ100を構成する各装置が起動状態のとき、1回停止スイッチ62を押すと、制御部であるコントローラ50は、自動ワインダ100を構成する各装置を給糸ボビン準備モードに移行させ、もう1回停止スイッチ62が押されると、自動ワインダ100を構成する各装置を停止状態に移行させる。
【0062】
起動時の給糸ボビン準備モードがOFFに設定され、自動ワインダ100を構成する各装置が停止状態のとき、1回停止スイッチ62を押すと、制御部であるコントローラ50は、自動ワインダ100を構成する各装置を停止状態に移行させる。なお、このとき、自動ワインダ100を構成する各装置は、停止スイッチ62によっては給糸ボビン準備モードには移行しない。
【0063】
例えば、設定パターン(3)では、起動時の給糸ボビン準備モードがOFFとされ、停止時の給糸ボビン準備モードがONとされている。つまり、停止スイッチ62が準備スイッチとして設定されている。設定パターン(3)では、自動ワインダ100を構成する各装置は、停止状態の時には、起動スイッチ61を押すと起動状態に移行する。また、自動ワインダ100を構成する各装置は、起動状態の時には、停止スイッチ62を押すと、給糸ボビン準備モードに移行する。そして、給糸ボビンの準備が完了した後に、起動スイッチ61を押すと、自動ワインダ100を構成する各装置が起動状態に移行する。また、給糸ボビン準備モード中にさらに停止スイッチ62を押すことにより、停止状態に移行させることもできる。
【0064】
実施形態1の自動ワインダ100の効果について説明する。
従来の自動ワインダでは、機台制御本体5の起動スイッチを押したときは、各巻き取り装置10の自動運転スイッチ12がONとなっている場合には、即座に糸巻き取り作業が開始されることになる。そのため、作業者は、機台制御本体5の起動スイッチ61を押す前に、各巻き取り装置10の自動運転スイッチ12をOFFにする作業が必要であった。同時に、給糸ボビン準備作業が終了した後には、各巻き取り装置10の自動運転スイッチ12をONにする作業が必要であった。
【0065】
自動ワインダ100によれば、給糸ボビン準備モードを設定することによって、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置10の自動運転スイッチ12の切り替え作業を省略できる。
【0066】
また、給糸ボビン準備モードでは、給糸ボビン準備作業に必要な装置のみ(負圧発生装置6および糸端吸引口32)を動作させるため、給糸ボビン準備作業に必要ではない装置の動作によって無駄な電力が消費されること、あるいは、給糸ボビン保持装置21またはマガジン31の駆動機構の寿命低下を防止できる。
【0067】
さらに、給糸ボビン準備モードでは、必要最小限の負圧を発生させるために、負圧発生装置6を、巻き取り装置10が巻き取り動作を実行するときの運転(駆動力)を100%としたときの60%の運転で動作させることによって、消費電力を削減できる。
【0068】
さらに、給糸ボビン準備モードでは、自動ワインダ100の起動スイッチ61または停止スイッチ62をONとすることによって、給糸ボビン準備モードに移行させるため、作業者の操作ミスを防止することができる。
【0069】
さらに、自動ワインダ100の使用状況に応じて給糸ボビン準備モードへ移行するタイミングを設定部70によって設定できるので、使用性を向上できる。
【0070】
なお、実施形態1では、自動ワインダ100の起動スイッチ61または停止スイッチ62を利用して、給糸ボビン準備モードへ移行する構成としたが、これに限定されない。例えば、操作することで給糸ボビン準備モードに移行する準備スイッチを別途具備する構成としても良い。このような構成とすることで、準備スイッチを利用して、給糸ボビン準備作業に移行させるため、作業者の操作ミスを防止することができる。
【0071】
図5を用いて、実施形態2の自動ワインダ200について説明する。
自動ワインダ200は、本発明の自動ワインダの実施形態2である。自動ワインダ200は、巻き取り装置10と、機台3と、給糸ボビン処理装置8と、機台制御本体5と、負圧発生装置6と、玉揚機7と、給糸ボビン処理装置8と、ユニット本体11と、自動運転スイッチ12と、を具備している。
【0072】
給糸ボビン処理装置8は、給糸ボビンB1をトレイに載置し、コンベア(図6参照)によってそれぞれの巻き取り装置10に自動的に供給し、糸Yが全て引き出された給糸ボビンB1を自動的に回収する装置である。給糸ボビン処理装置8は、給糸ボビンB1を1本ずつトレイに載せる給糸ボビン供給部81と、トレイに載置された給糸ボビンB1の糸端を引き出す、すなわち口出しする糸端引き出し装置82と、糸Yが全て引き出された給糸ボビンB1を回収する給糸ボビン回収部(図示略)と、を具備している。
【0073】
その他の装置の構成は、実施形態1の自動ワインダ100と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
図6を用いて、巻き取り装置10について説明する。
巻き取り装置10は、給糸装置20と、テンション装置17と、糸継装置13と、糸欠陥除去装置14と、綾振ドラム15と、ユニットコントローラ55(図3参照)と、を具備している。
【0075】
給糸装置20は、給糸ボビンB1を保持するための給糸ボビン保持装置21と、糸解舒補助装置22と、コンベア(ボビン搬送装置)24と、を具備している。コンベア24は、給糸ボビン供給部81から各巻き取り装置10を経由して給糸ボビン回収部へ至る搬送経路を形成するものである。
【0076】
なお、その他の装置の構成は、実施形態1の巻き取り装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
実施形態2の給糸ボビン準備モードでは、自動ワインダ200では、負圧発生装置6が巻き取り装置10が巻き取り動作を実行するときの運転(駆動力)を100%としたときの60%の運転によって負圧を制限して供給し、給糸ボビン供給部81と、糸端引き出し装置82と、給糸ボビン回収部と、コンベア24と、が動作し、その他の装置等は動作しないものとされている。
【0078】
なお、給糸ボビン準備モードの設定については、実施形態1の自動ワインダ100と同様であるため説明を省略する。
【0079】
実施形態2の自動ワインダ200の効果について説明する。
自動ワインダ200によれば、給糸ボビン準備モードを設定することによって、給糸ボビン準備作業の前後における各巻き取り装置10の起動/停止の切り替え作業を省略できる。
【0080】
なお、本発明の自動給糸ボビン供給装置として、給糸ボビン処理装置8とする構成としたが、これに限定されることはない。自動給糸ボビン供給装置を精紡機と自動ワインダ100とを直結するリンクコーナー式の自動給糸ボビン供給装置としても良い。
【0081】
また、本発明の給糸準備モードとして、自動ワインダ100の一部動作を実行させ、糸掛け動作まで実行する構成としても良い。
【0082】
また、本実施形態の綾振ドラム15の代わりに、アーム式のトラバース装置とする構成としても良い。
【符号の説明】
【0083】
5 機台制御本体
10 巻き取り装置
20 給糸装置
30 ボビン供給装置(マガジン式)
31 マガジン
32 糸端吸引口
50 コントローラ(制御部)
60 操作部
61 起動スイッチ
62 停止スイッチ
70 設定部
100 自動ワインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、
前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、
を具備し、
前記巻き取り装置は、
巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチを具備し、
前記機台制御本体は、
複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードへ移行させる制御部と、
前記制御部に給糸ボビン準備モードへの移行を実行させる準備スイッチと、
を具備する、
自動ワインダ。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
前記給糸ボビン準備モードは、
前記複数の巻き取り装置を構成する各装置であって、給糸ボビンの準備作業に必要なものを動作させ、給糸ボビンの準備作業に必要ではないものを停止させる、
自動ワインダ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動ワインダであって、
前記複数の巻き取り装置に負圧を供給する負圧供給装置を具備し、
前記負圧供給装置は、
前記給糸ボビン準備モードでは、各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転され、負圧を供給する、
自動ワインダ。
【請求項4】
請求項3に記載の自動ワインダであって、
前記機台制御本体は、
各装置を起動させる起動スイッチと、
各装置を停止させる停止スイッチと、
を具備し、
前記制御部は、
前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチを、前記給糸ボビン準備モードへ移行させる前記準備スイッチとして動作させる、
自動ワインダ。
【請求項5】
請求項4に記載の自動ワインダであって、
前記機台制御本体は、
設定部を具備し、
前記制御部は、前記設定部の設定に応じて、
前記起動スイッチまたは前記停止スイッチを、前記各装置の起動状態または停止状態からの前記給糸ボビン準備モードへの移行を実行させる前記準備スイッチとして設定する、
自動ワインダ。
【請求項6】
請求項3に記載の自動ワインダであって、
前記制御装置は、
前記機台制御本体は、前記準備スイッチとは別に、
各装置を起動させる起動スイッチと、
各装置を停止させる停止スイッチと、
を具備する、
自動ワインダ。
【請求項7】
請求項6に記載の自動ワインダであって、
前記機台制御本体は、
設定部を具備し、
前記制御部は、前記設定部の設定に応じて、
前記準備スイッチによる前記各装置の運転状態または停止状態から前記給糸ボビン準備モードへの移行の許可を設定する、
自動ワインダ。
【請求項8】
自動ワインダであって、
給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、
前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、
前記複数の巻き取り装置に所定負圧を供給する負圧供給装置と、
を具備し、
前記巻き取り装置は、
マガジン式の給糸ボビン装置と、
巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチと、
を具備し、
前記機台制御本体は、
各装置を起動させる起動スイッチと、
各装置を停止させる停止スイッチと、
複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードを実行する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチの操作に基づいて、前記給糸ボビン準備モードへ移行させ、
前記給糸ボビン供給装置は、
複数の給糸ボビンを収納し、給糸ボビン保持位置に給糸ボビンを供給する給糸ボビン収納装置と、
前記負圧供給装置から供給された負圧によって、給糸ボビンの糸端を吸い込む糸端吸引口と、
を具備し、
前記制御部は、
給糸ボビン準備モードでは、
各巻き取り装置の巻き取り動作を停止させ、
前記負圧供給装置を動作させる、
自動ワインダ。
【請求項9】
請求項8に記載の自動ワインダであって、
前記負圧供給装置を各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転することによって負圧の供給を制限させる、
自動ワインダ。
【請求項10】
自動ワインダであって、
給糸ボビンから糸を巻き取ってパッケージを形成する複数の巻き取り装置と、
トレイ式の給糸ボビン装置と、
巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチと、
前記複数の巻き取り装置の動作を制御する機台制御本体と、
前記複数の巻き取り装置に所定負圧を供給する負圧供給装置と、
負圧力により、給糸ボビンの糸端を引き出して、前記巻き取り装置が、前記糸端を受け取り可能な状態に準備する糸端引き出し装置と、
を具備し、
前記巻き取り装置は、
巻取り作業の実行または停止を切り替える自動運転スイッチを具備し、
前記機台制御本体は、
各装置を起動させる起動スイッチと、
各装置を停止させる停止スイッチと、
複数の巻き取り装置の自動運転スイッチの切り替え状態によらず、給糸ボビンの準備作業を実行可能な状態にする給糸ボビン準備モードを実行する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記起動スイッチおよび/または前記停止スイッチの操作に基づいて、前記給糸ボビン準備モードへ移行させ、
前記給糸ボビン準備モードでは、前記ボビン供給装置、負圧供給装置、および糸端引出し装置を動作させる、
自動ワインダ。
【請求項11】
請求項10に記載の自動ワインダであって、
前記制御部は、
前記給糸準備モードでは、前記負圧装置を、各巻き取り装置が巻き取り動作を実行できる駆動力よりも低い駆動力で運転し、負圧を供給する、
自動ワインダ。
【請求項12】
請求項10または11に記載の自動ワインダであって、
給糸ボビンを搬送して各巻き取り装置に供給するためのボビン搬送装置を具備し、
前記制御部は、
前記給糸準備モードでは、前記ボビン搬送装置を駆動させる、
自動ワインダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−218915(P2012−218915A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88488(P2011−88488)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】