説明

自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造

【課題】フレームとエンジンとの相対的な配置の自由度を保つとともにアイドルスピードコントロールバルブを配置可能な自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を提供する。
【解決手段】前半部51、中間部52および後半部53を有するメインフレーム12と、前半部51の下方に位置するエアクリーナ42と、シリンダヘッド26を前方へ向けシリンダ中心線を略水平に向けてメインフレーム12の下方かつエアクリーナ42より後方に位置するエンジン9と、エアクリーナ42から後方下向きに傾斜して延び吸気ポート43に接続する吸気通路45と、スロットルバルブ46と、スロットルバルブ46の下流側かつ後半部53の下方に位置する燃料噴射装置47と、スロットルバルブ46の上流側と下流側とを接続する迂回路48と、スロットルバルブ46の上方かつエアクリーナ42と燃料噴射装置47との間に位置するアイドルスピードコントロールバルブ49と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂アンダーボーン形式のフレームを備える自動二輪車が知られている。
【0003】
この自動二輪車は、ヘッドパイプから後方下向きに傾斜して延びるメインフレームと、このメインフレームの下方に吊り下がるエンジンと、を備える。エンジンはシリンダヘッドを前方に向ける。また、この自動二輪車は、メインフレームの前端部下方に位置するエアクリーナと、このエアクリーナとシリンダヘッドの吸気ポートとを接続する吸気通路と、吸気通路の吸気流量を調整するスロットルバルブと、スロットルバルブよりも下流側に位置する燃料噴射弁と、を備える。
【0004】
吸気通路、スロットルバルブおよび燃料噴射弁は、エアクリーナと吸気ポートとを極力短い路程で接続するため、メインフレームの近傍に位置する。特に、燃料噴射弁は、吸気ポートが開口する方向へ向けて吸気通路へ突き立つように延びるため、メインフレームに近づきやすい。
【0005】
そこで、途中で折れ曲がるメインフレームを備え、メインフレームの前半直線部および中間屈曲部の境界線の下方延長線と後半直線部および中間屈曲部の境界線の下方延長線で挟まれた領域に吸気通路のうちスロットルバルブの弁体回転中心よりも下流側を配置し、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの合わせ面の上方延長面よりも前方側にメインフレームの中間屈曲部における外側曲線の中点を配置し、燃料噴射弁を前記領域に納め、かつ燃料噴射弁の上端部を前記中点より前方に配置し、燃料噴射弁の上端部に嵌合する燃料供給管を中間屈曲部の下面に対向近接して配置する自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−249028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造は、燃料噴射弁の噴射口を吸気ポートに正対させた状態で燃料噴射弁とメインフレームとの干渉を避けるために、メインフレームの中間屈曲部の下方領域内に吸気ポートを配置している。このことは、フレームと吸気ポートとの相対的な配置、ひいてはフレームとエンジンとの相対的な配置関係の自由度を損なう。
【0008】
また、アイドル時のエンジン回転数を制御するため、スロットルバルブを迂回する迂回路と、迂回路の吸気流量を調整するアイドルスピードコントロールバルブとを自動二輪車に加える場合、これら迂回路およびアイドルスピードコントロールバルブを吸気通路とメインフレームとの狭隘な隙間に追加する必要がある。この場合、これら迂回路およびアイドルスピードコントロールバルブ自体の配置場所や、これらを配置するための容積を確保することによる燃料噴射弁の配置場所に対する影響に配慮する必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、フレームとエンジンとの相対的な配置の自由度を保つとともにアイドルスピードコントロールバルブを配置可能な自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するため本発明に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造は、後方下向きに傾斜する直線状の前半部、前記前半部の後端に連接する円弧状の中間部および前記中間部の後端に連接するとともに後方下向きかつ前記前半部よりも緩やかに傾斜する直線状の後半部を有するバックボーンと、前記前半部の下方に位置するエアクリーナと、吸気ポートを有するシリンダヘッドを前方へ向けシリンダ中心線を略水平に向けて前記バックボーンの下方かつ前記エアクリーナより後方に位置するエンジンと、前記エアクリーナから後方下向きに傾斜して延び前記吸気ポートに接続する吸気通路と、前記吸気通路の吸気流量を調整するスロットルバルブと、前記スロットルバルブの下流側かつ前記後半部の下方に位置する燃料噴射装置と、前記スロットルバルブの上流側と下流側とを接続する迂回路と、前記スロットルバルブの上方かつ前記エアクリーナと前記燃料噴射装置との間に位置して前記迂回路の吸気流量を調整するアイドルスピードコントロールバルブと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フレームとエンジンとの相対的な配置の自由度を保つとともにアイドルスピードコントロールバルブを配置可能な自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す右側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す斜視図。
【図3】本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す右側面図。
【図4】本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す平面図。
【図5】本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す背面図。
【図6】本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す部分的な断面図。
【図7】本発明の実施形態に係る自動二輪車のスロットルバルブを示す断面の斜視図。
【図8】本発明の実施形態に係る自動二輪車の迂回路を示す断面の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造の実施形態について図1から図7を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車を示す右側面図である。
【0015】
なお、本実施形態において、前後上下左右の表現は、自動二輪車1に乗車するライダーを基準にする。
【0016】
図1に示すように、自動二輪車1は、所謂アンダーボーン形式の車体フレーム2と、車体フレーム2の前方に位置する前輪5と、車体フレーム2の前方に位置して前輪5を回転自在に支持するステアリング機構6と、車体フレーム2の後方に位置する後輪7と、後輪7を上下方向へ揺動自在に支持するスイングアーム8と、車体フレーム2の下方に位置するエンジン9と、を備える。
【0017】
車体フレーム2は、所謂アンダーボーン形式であり、複数の鋼鉄製中空管を一体に組み合わせてなる。車体フレーム2は、前頭部に位置するヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から分岐して後方下向きに傾斜して延びるメインフレーム12と、メインフレーム12の後端部から分岐して後方上向きに傾斜して延びる左右一対のリヤフレーム13と、メインフレーム12とリヤフレーム13との連結部分から下方に垂下する複数のエンジンブラケット15、16と、を備える。
【0018】
ヘッドパイプ11はステアリング機構6を車両の左右方向へ操舵可能に支持する。
【0019】
エンジンブラケット16は、エンジン9の他にスイングアーム8の揺動中心となるピボット軸17を支持する。
【0020】
ステアリング機構6は、サスペンション機構(図示省略)を内装して前輪5を回転自在に支持する左右一対のフロントフォーク18と、フロントフォーク18の頂部に接続する左右一対のハンドル21と、を備える。ライダーは、ハンドル21を左右に操舵することによって自動二輪車1を旋回できる。車両の右側にあるハンドル21はアクセルグリップ21aである。
【0021】
スイングアーム8は、後輪7を回転自在かつ上下揺動自在に支持する。リアクッションユニット22は、車体フレーム2とスイングアーム8との間に介在して後輪7から車体フレーム2に伝わる力を緩衝する。
【0022】
エンジン9は、エンジンブラケット15、16を介してメインフレーム12の下方に吊り下がる。エンジン9は、50ccクラスや125ccクラスの小排気量で、例えば単気筒、4サイクルの内燃機関であり、シリンダ(図示省略)の中心線を自動二輪車1の前後方向に向け、略水平に前傾するシリンダヘッド26およびシリンダブロック27をクランクケース28の前面に配置する。
【0023】
エンジン9の排気系統に接続する排気マフラ29は、後輪7の右側に位置する。
【0024】
後輪7は、車両の左側に位置してエンジン9から延びるチェーンユニット31を介して駆動力を得る。
【0025】
また、自動二輪車1は、車体フレーム2の前部を覆う樹脂製のフロントカバー32およびレッグシールド33と、車体フレーム2の後部を覆う左右一対の樹脂製のフレームカバー35と、を備える。
【0026】
フレームカバー35は、メインフレーム12とリヤフレーム13との連結部分の上部に位置して上方へ開口する有底箱状の収納ボックス36と、収納ボックス36の後方に位置してリヤフレーム13間に架設される燃料タンク37と、を納める。収納ボックス36はヘルメット等を収容可能な容量を持つ。
【0027】
シート38は、収納ボックス36および燃料タンク37の上部を覆ってフレームカバー35に連接する。シート38は、収納ボックス36の前上部に位置するヒンジ39を中心に揺動できる。ヒンジ39を回転中心にしてシート38の後端を上方へ持ち上げることによって、収納ボックス36への物品の出し入れや燃料タンク37への給油等が可能になる。
【0028】
リヤフェンダ41は、燃料タンク37の下方から後方へ向かって延び、後輪7の上方を覆う。
【0029】
図2は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す斜視図である。
【0030】
図3は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す右側面図である。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す平面図である。
【0032】
図5は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す背面図である。
【0033】
図6は、本発明の実施形態に係る自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造を示す部分的な断面図である。
【0034】
図2から図6に示すように、自動二輪車1は、メインフレーム12と、メインフレーム12の下方に位置するエアクリーナ42と、メインフレーム12の下方かつエアクリーナ42より後方に位置するエンジン9と、エアクリーナ42から後方下向きに傾斜して延び吸気ポート43に接続する吸気通路45と、吸気通路45の吸気流量を調整するスロットルバルブ46と、スロットルバルブ46の下流側に位置する燃料噴射装置47と、スロットルバルブ46の上流側と下流側との迂回路となる迂回路48と、スロットルバルブ46の上方かつエアクリーナ42と燃料噴射装置47との間に位置して迂回路48の吸気流量を調整するアイドルスピードコントロールバルブ49と、を備える。
【0035】
メインフレーム12は、車両の幅方向の略中央に位置し、かつ車両の前後方向へ延びるとともに途中で折れ曲がる。メインフレーム12は、ヘッドパイプ11から後方下向きに傾斜する直線状の前半部51と、前半部51の後端に連接する円弧状の中間部52と、中間部52の後端に連接するとともに後方下向きかつ前半部51よりも緩やかに傾斜する直線状の後半部53と、を備える鋼鉄製中空管である。前半部51と後半部53とがなす角度は鈍角である。
【0036】
エアクリーナ42は、前半部51の下方に位置し、メインフレーム12下方の領域の最前部にある。エアクリーナ42は、車両の幅方向へ略左右均等に広がり、前半部51の後端および中間部52よりも下方へ膨らむ多角形状の箱体である。エアクリーナ42は、内部空間を通過する空気を濾過して清浄にするフィルタ(図示省略)を備える。エアクリーナ42前面のカバー42aはフィルタを覆い、フィルタよりも上流側に位置する所謂ダーティサイドを形成する。エアクリーナ42の上端部は、ブラケット55を介して前半部51に固定され、エアクリーナ42の下端部は、エンジン9の上面よりは上方に位置し、ヘッドカバー56を臨む。
【0037】
また、エアクリーナ42は、エンジン9の吸気ポート43を臨む傾斜面58と、傾斜面58からエンジン9へ向かって突出するフランジ部59と、を備える。傾斜面58は、エアクリーナ42のうち車両の幅方向のいずれか一方(ここでは右方)側に位置する半部(ここでは右半部)に位置する。フランジ部59は、吸気通路45の一部でありスロットルバルブ46を固定する。
【0038】
さらに、エアクリーナ42は、メインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか他方側(ここでは左方側)に位置する膨出部61を備える。膨出部61は、メインフレーム12を挟んで吸気通路45に並行して延び、エアクリーナ42の容積を増加する。なお、膨出部61はフィルタよりも下流に位置する所謂クリーンサイドの一部である。
【0039】
吸気通路45は、メインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか一方側(ここでは右側)に位置してエアクリーナ42から吸気ポート43へ延びる。
【0040】
エンジン9は、吸気ポート43を有するシリンダヘッド26を前方へ向け、シリンダ中心線Cを略水平、より具体的には前方上向きへ数度から十数度傾ける。エンジン9は、車両の前方側からヘッドカバー56、シリンダヘッド26、シリンダブロック27、クランクケース28の順番にそれぞれの部品を並べる。ヘッドカバー56はメインフレーム12の前半部51の下方に位置し、シリンダヘッド26は中間部52の下方に位置し、シリンダブロック27は後半部53の下方に位置する。ヘッドカバー56とシリンダヘッド26との合わせ面の延長面は中間部52に交差し、シリンダヘッド26とシリンダブロック27との合わせ面の延長面は後半部53に交差する。
【0041】
吸気ポート43は、シリンダヘッド26の上面に位置し、メインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか一方側(ここでは右側)に位置し、かつ当該方向の斜め上方へ向けて開口する。吸気ポート43は、吸気通路45から吸気を受け取り、シリンダヘッド26内の燃料室(図示省略)へ案内する。
【0042】
スロットルバルブ46は、エアクリーナ42のフランジ部59に固定されて吸気通路45の一部をなす。スロットルバルブ46内の流路はフランジ部59とともにエアクリーナ42から直線的に延びる流路を構成する。スロットルバルブ46は、吸気通路45全体と同様にメインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか一方側(ここでは右側)に位置し、かつヘッドカバー56のほぼ上方に位置する。
【0043】
スロットルポジションセンサ62は、スロットルバルブ46の一方の側面(ここでは右側面)に位置してスロットルバルブ46の開度を測定する。
【0044】
スロットルプーリ63は、スロットルバルブ46の他方の側面(ここでは左側面)かつメインフレーム12の下方に位置してアクセル操作をスロットルバルブ46へ伝達する。
【0045】
吸気中継管65は、吸気通路45の一部であり、スロットルバルブ46と吸気ポート43とを接続する。吸気中継管65は、エアクリーナ42のフランジ部59からスロットルバルブ46の下流端へ掛けて直線的に延びる流路の向きを変え、吸気ポート43へ案内する曲管である。また、吸気中継管65は、燃料噴射装置47を装着するポート65aと、燃料噴射装置47の側方に位置して並行に延びる燃料ホース支持台65bと、を備える。燃料ホース支持台65bは、燃料噴射装置47よりもメインフレーム12の近傍にあり、吸気中継管65に接続する根元部分から長手状に延びる突出端へ向かうにつれてメインフレーム12から遠ざかる方向へ傾斜する。
【0046】
燃料噴射装置47は、吸気中継管65に固定され、メインフレーム12の後半部53の下方に位置する。また、燃料噴射装置47は、吸気通路45に接続する根元部分から長手状に延びる突出端へ向かうにつれてメインフレーム12から遠ざかる方向へ傾斜する。
また、燃料噴射装置47は、吸気中継管65に固定される固定端側の先端部分に吸気通路45内へ燃料を噴射する噴射口66を有する。噴射口66は、吸気ポート43を塞ぐポペットバルブ67のバルブステムの根元へ指向する。
【0047】
さらに、燃料噴射装置47は、弁体(図示省略)を駆動して燃料の噴射量を制御するソレノイド(図示省略)に電気的に接続するとともに車両の外側へ向くコネクタ68(第二コネクタ)を備える。
【0048】
アイドルスピードコントロールバルブ49は、車両側面視において前半部51の長手方向中心線CL1と後半部53の長手方向中心線CL2とがなす角度θを二等分する線分Lよりも後方側に位置する。また、アイドルスピードコントロールバルブ49も、吸気通路45全体と同様にメインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか一方側(ここでは右側)に位置する。
【0049】
アイドルスピードコントロールバルブ49のコネクタ69は、スロットルプーリ63よりもスロットルポジションセンサ62の近くに位置する。
【0050】
アイドルスピードコントロールバルブ49のコネクタ69、燃料噴射装置47のコネクタ68およびスロットルポジションセンサ62は、いずれも吸気通路45よりも車両の外側に位置する。他方、ワイヤハーネス71、72、73は、いずれも1本に束なったままメインフレーム12の上方を横切り、さらにアイドルスピードコントロールバルブ49の上方を横切って、吸気通路45よりも車両の外側を回り込む経路に沿って延び、適宜の位置で分岐する。ワイヤハーネス71はアイドルスピードコントロールバルブ49のコネクタ69に電気的に接続する。ワイヤハーネス72はスロットルポジションセンサ62に電気的に接続する。ワイヤハーネス73は燃料噴射装置47のコネクタ68に電気的に接続する。
【0051】
燃料ホース75は、吸気中継管65から延びる燃料ホース支持台65bによって支持されて、燃料噴射装置47の突出端に接続する。
【0052】
図7は、図3のVII−VII線において、本発明の実施形態に係る自動二輪車のスロットルバルブを示す断面の斜視図である。
【0053】
図7に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1のスロットルバルブ46は、筒状のボディ76と、スロットルバルブ46内に回転可能に支持されて吸気通路45の吸気流量を調整する回転弁体78と、スロットルバルブ46内外を貫いて回転弁体78を回転可能に支持する弁軸79と、を備える。
【0054】
回転弁体78は、円板形状の弁体であり、弁軸79とともに回転することによって吸気通路45の開度を変更する。
【0055】
弁軸79は、吸気通路45の中心線に直交しつつ車両の幅方向へ延びる。
【0056】
スロットルポジションセンサ62は、弁軸79の一方の端部(ここでは右端部)に接続して弁軸79の回転角度を測定して回転弁体78の開度を測定する。
【0057】
スロットルプーリ63は、弁軸79の他方の端部(ここでは左端部)に回転一体に接続してアクセル操作を伝達する。具体的には、スロットルプーリ63は、アクセルグリップ(図示省略)から延びるスロットルケーブル81に巻掛かり、アクセル操作に連動して弁軸79および回転弁体78ごと回転し、吸気通路45の吸気流量を調整する。
【0058】
他方、アイドルスピードコントロールバルブ49は、アイドルスピードコントロールバルブ49内にあり回転弁体78の回転中心線と略平行な方向へ進退可能に支持されて迂回路48の吸気流量を調整する可動弁体82を備える。
【0059】
コネクタ69は、可動弁体82を駆動するアクチュエータ83に電気的に接続する。アクチュエータ83は、例えばステッピングモータ、DCモータ、ブラシレスモータまたは電磁ソレノイドである。
【0060】
図8は、図4のVIII−VIII線において、本発明の実施形態に係る自動二輪車の迂回路を示す断面の斜視図である。
【0061】
図8に示すように、本実施形態に係る自動二輪車1の迂回路48は、スロットルバルブ46の上流側と下流側とを接続し、回転弁体78が全閉の状態であってもエンジン9のアイドリングの安定を図る適宜の吸気流量をエアクリーナ42から吸気ポート43へ導く。
【0062】
迂回路48は、スロットルバルブ46のボディ76とともに一体形成される。迂回路48は、回転弁体78の上流側に位置して吸気通路45の側方へ延びる第一直線路85と、スロットルバルブ46の弁軸79に対して平行に延びかつ第一直線路85に交差する第二直線路86と、第二直線路86の端部に交わり回転弁体78の下流側の吸気通路45へ合流する第三直線路87と、を備える。迂回路48は、回転弁体78が吸気通路45を閉じていても、回転弁体78の上流側から第一直線路85、第二直線路86および第三直線路87を通じて回転弁体78の下流側へ吸気を導く。
【0063】
第二直線路86は、可動弁体82を収容する部分でありアイドルスピードコントロールバルブ49のボディを兼ねる。
【0064】
可動弁体82は、進退方向の正面に第三直線路87を臨み、進退にともなって第一直線路85と第二直線路86との連接部分の開口面積を増減して迂回路48の吸気流量を制御する。
【0065】
本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、メインフレーム12の後半部53の下方に燃料噴射装置47を配置することによって、エアクリーナ42の後方かつ燃料噴射装置47の前方の空間にアイドルスピードコントロールバルブを配置できる。
【0066】
また、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、車両側面視においてメインフレーム12の前半部51の長手方向中心線と後半部53の長手方向中心線とがなす角度を二等分する線分よりも後方側にアイドルスピードコントロールバルブ49を配置することによって、スロットルバルブ46と吸気ポート43との距離を近づけ吸気中継管65を極力短くして吸気通路45の抵抗を抑制できる。
【0067】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、スロットルバルブ46の回転弁体78の回転中心線とアイドルスピードコントロールバルブ49の可動弁体82の進退方向とを略並行に向けるため、アイドルスピードコントロールバルブ49を吸気通路45に向けて立ち上げる場合に比べてメインフレーム12への接近方向におけるアイドルスピードコントロールバルブ49の突出寸法を抑制することができる。このことによって、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、メインフレーム12とアイドルスピードコントロールバルブ49との間に空間的な余裕を確保できる分、吸気通路45のより下流側へアイドルスピードコントロールバルブ49を配置することが可能になり、吸気ポート43に対して吸気通路45をより直線的に立ち上げて接続することができ、吸気効率を改善できる。
【0068】
さらにまた、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、スロットルバルブ46の回転弁体78の回転中心線とアイドルスピードコントロールバルブ49の可動弁体82の進退方向とを略並行に配置するので、可動弁体82の進退方向を回転弁体78の回転中心線に対して傾ける場合に比べてスロットルバルブ46とアイドルスピードコントロールバルブ49とを密集させて狭隘な空間に配置できる。
【0069】
また、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、アイドルスピードコントロールバルブ49のコネクタ69およびスロットルポジションセンサ62を車両の同じ側の側方へ配置するので、ワイヤハーネス71、72を車両の一方側(ここでは右側)で束ねることができる。
【0070】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、メインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか一方側に吸気通路45を配置するので、メインフレーム12との干渉を避けつつアイドルスピードコントロールバルブ49も上方の空間を有効に活用できる。具体的には、ワイヤハーネス71、72、73の経路に利用できる。
【0071】
さらにまた、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、メインフレーム12よりも車両の幅方向のいずれか他方側に位置しかつメインフレーム12を挟んで吸気通路45に並行して延びる膨出部を備えるため、吸気通路45との干渉を避けてエアクリーナ42の容量を拡大できる。
【0072】
また、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、根元部分から突出端へ向かうにつれてメインフレーム12から遠ざかる方向へ燃料噴射装置47を傾斜するため、アイドルスピードコントロールバルブ49、燃料噴射装置47およびスロットルポジションセンサ62を車両の外側に集約して配置し、ワイヤハーネス73を含めてワイヤハーネス71、72、73を束ねて配置することができる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造は、燃料噴射装置47のコネクタ68を車両の外側へ向けるため、ワイヤハーネス73の結線を容易化できる。
【0074】
したがって、本実施形態に係る自動二輪車1の燃料噴射装置47の配置構造によれば、車体フレーム2とエンジン9との相対的な配置の自由度を保つとともにアイドルスピードコントロールバルブ49を配置できる。
【符号の説明】
【0075】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
5 前輪
6 ステアリング機構
7 後輪
8 スイングアーム
9 エンジン
11 ヘッドパイプ
12 メインフレーム
13 リヤフレーム
15、16 エンジンブラケット
17 ピボット軸
18 フロントフォーク
21 ハンドル
22 リアクッションユニット
26 シリンダヘッド
27 シリンダブロック
28 クランクケース
29 排気マフラ
31 チェーンユニット
32 フロントカバー
33 レッグシールド
35 フレームカバー
36 収納ボックス
37 燃料タンク
38 シート
39 ヒンジ
41 リヤフェンダ
42 エアクリーナ
42a カバー
43 吸気ポート
45 吸気通路
46 スロットルバルブ
47 燃料噴射装置
48 迂回路
49 アイドルスピードコントロールバルブ
51 前半部
52 中間部
53 後半部
55 ブラケット
56 ヘッドカバー
58 傾斜面
59 フランジ部
61 膨出部
62 スロットルポジションセンサ
63 スロットルプーリ
65 吸気中継管
65a ポート
65b 燃料ホース支持台
66 噴射口
67 ポペットバルブ
68、69 コネクタ
71、72、73 ワイヤハーネス
75 燃料ホース
76 ボディ
78 回転弁体
79 弁軸
81 スロットルケーブル
82 可動弁体
83 アクチュエータ
85 第一直線路
86 第二直線路
87 第三直線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方下向きに傾斜する直線状の前半部、前記前半部の後端に連接する円弧状の中間部および前記中間部の後端に連接するとともに後方下向きかつ前記前半部よりも緩やかに傾斜する直線状の後半部を有するバックボーンと、
前記前半部の下方に位置するエアクリーナと、
吸気ポートを有するシリンダヘッドを前方へ向けシリンダ中心線を略水平に向けて前記バックボーンの下方かつ前記エアクリーナより後方に位置するエンジンと、
前記エアクリーナから後方下向きに傾斜して延び前記吸気ポートに接続する吸気通路と、
前記吸気通路の吸気流量を調整するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの下流側かつ前記後半部の下方に位置する燃料噴射装置と、
前記スロットルバルブの上流側と下流側とを接続する迂回路と、
前記スロットルバルブの上方かつ前記エアクリーナと前記燃料噴射装置との間に位置して前記迂回路の吸気流量を調整するアイドルスピードコントロールバルブと、を備えることを特徴とする自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項2】
前記アイドルスピードコントロールバルブは、車両側面視において前記前半部の長手方向中心線と前記後半部の長手方向中心線とがなす角度を二等分する線分よりも後方側に位置することを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項3】
前記スロットルバルブ内に回転可能に支持されて前記吸気通路の吸気流量を調整する回転弁体と、
前記アイドルスピードコントロールバルブ内にあり前記回転弁体の回転中心線と略平行な方向へ進退可能に支持されて前記迂回路の吸気流量を調整する可動弁体と、を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項4】
前記スロットルバルブ内外を貫いて前記回転弁体を回転可能に支持する弁軸と、
前記弁軸の一方の端部に接続して前記回転弁体の開度を測定するスロットルポジションセンサと、
前記弁軸の他方の端部に回転一体に接続してアクセル操作を伝達するスロットルプーリと、
前記可動弁体を駆動するアクチュエータに電気的に接続するとともに前記スロットルプーリよりも前記スロットルポジションセンサの近くに位置するコネクタと、を備えることを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項5】
前記吸気通路は、前記バックボーンよりも車両の幅方向のいずれか一方側に位置して前記エアクリーナから前記吸気ポートへ延びることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項6】
前記エアクリーナは、前記バックボーンよりも車両の幅方向のいずれか他方側に位置しかつ前記バックボーンを挟んで前記吸気通路に並行して延びる膨出部を備えることを特徴とする請求項5に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項7】
前記燃料噴射装置は、前記吸気通路に接続する根元部分から長手状に延びる突出端へ向かうにつれて前記バックボーンから遠ざかる方向へ傾斜することを特徴とする請求項6に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。
【請求項8】
前記燃料噴射装置の突出端に接続する燃料ホースと、
前記燃料噴射装置を駆動するソレノイドに電気的に接続するとともに車両の外側へ向く第二コネクタと、を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の自動二輪車の燃料噴射装置の配置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108457(P2013−108457A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255409(P2011−255409)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)