説明

自動二輪車用フロントフォーク

【課題】 ブレーキキャリパを車軸ブラケットから外さずに車輪を着脱可能にする自動二輪車用フロントフォークにおいて、車輪側チューブの耐久性を向上すること。
【解決手段】 自動二輪車用フロントフォーク10において、車輪側チューブ14の外周にマウントブラケット40を隙間なく嵌挿し、該マウントブラケット40を車軸ブラケット15に固定し、マウントブラケット40の外周にフェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51を回転自在、かつ軸方向には不動に取付けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車用フロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用フロントフォークでは、特許文献1、2に記載の如く、車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、車輪側チューブの外周に車軸ブラケットを固定し、車軸ブラケットにブレーキキャリパと泥よけフェンダーを取付けている。
【0003】
フェンダーとブレーキキャリパを車軸ブラケットに取付けた車両において、フェンダーを車軸ブラケットに取付けたままで、車輪を車体から外す場合には、ブレーキキャリパが車両の正面視で車輪のリムより内側に配置されている関係上、車輪のリムがブレーキキャリパに干渉してしまう。特許文献1、2は、ブレーキキャリパを車軸ブラケットから外すことなく、しかも車輪のリムをブレーキキャリパに干渉させずに、車輪を着脱可能にしたものである。
【0004】
特許文献1は、車輪側チューブの外周にフェンダー取付ブラケットを回転自在に嵌挿し、車輪側チューブに固定してある車軸ブラケットの上端面と、車輪側チューブの外周溝に係着したサークリップとの間に上記フェンダー取付用ブラケットを軸方向には不動に保持したものである。フェンダーをフェンダー取付用ブラケットに取付けたままで、車輪側チューブ及び車軸ブラケットをフェンダー取付用ブラケットに対して回転でき、結果として、車軸ブラケットに取付けてあるブレーキキャリパを車輪のリムが干渉しない外側方に逃し、車輪を着脱できる。
【0005】
特許文献2は、車輪側チューブの外周にストッパーを車軸ブラケットと対向させながら挿入し、このストッパーの外周にフェンダー取付用ブラケットを回転自在に挿入し、ストッパーの下部を車軸ブラケットの上部内周に螺合し、ストッパー上部の鍔と車軸ブラケットの上端との間でフェンダー取付用ブラケットを挟持させたものである。フェンダーをフェンダー取付用ブラケットに取付けたままで、車輪側チューブ及び車軸ブラケットをフェンダー取付用ブラケットに対して回転でき、結果として、車軸ブラケットに取付けてあるブレーキキャリパを車輪のリムが干渉しない外側方に逃し、車輪を着脱できる。
【特許文献1】特許2794095
【特許文献2】実用2510697
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の自動二輪車用フロントフォークには以下の課題がある。
(1)フェンダー取付用ブラケットを車軸ブラケットの上端面と、車輪側チューブの外周溝に係着したサークリップとの間に保持するものであり、車輪側チューブの耐久性は溝加工によって低くなるおそれがあり、車輪側チューブの剛性確保への配慮が必要となる。
【0007】
(2)フェンダー取付用ブラケットは車輪側チューブの外周に直接摺接して回転するものであり、フェンダー取付用ブラケットと車輪側チューブの間にどうしても隙間を伴ない、この隙間に侵入する異物が車輪側チューブの外周をこすってキズつけないように、別途シール等の手段が必要となる。
【0008】
特許文献2の自動二輪車用フロントフォークには以下の課題がある。
車輪側チューブの外周にストッパーを挿入し、ストッパーを車軸ブラケットの内周に螺合させるものであり、車軸ブラケット内周にストッパーを螺合するための加工を施すため、車軸ブラケット内周の肉厚が薄くなり、車軸ブラケットの強度確保が別途必要となる場合がある。また、車軸ブラケットの内周を加工することで、車軸ブラケットと車輪側チューブの嵌合長と耐久性を確保するためフロントフォークの大型化を招いていた。
【0009】
本発明の課題は、ブレーキキャリパを車軸ブラケットから外さずに車輪を着脱可能にする自動二輪車用フロントフォークにおいて、車輪側チューブの耐久性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、車輪側チューブの外周に車軸ブラケットとフェンダー取付用ブラケットを設けた自動二輪車用フロントフォークにおいて、車輪側チューブの外周にマウントブラケットを隙間なく嵌挿し、該マウントブラケットを車軸ブラケットに固定し、マウントブラケットの外周にフェンダー取付用ブラケットの環状取付部を回転自在、かつ軸方向には不動に取付けたものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記マウントブラケットが樹脂カラーを介して車輪側チューブの外周に隙間なく嵌挿されたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記マウントブラケットが車輪側チューブの外周に嵌挿される環状ベース部と車軸ブラケットに固定される固定部を有し、環状ベース部が両端の鍔部の間に環状溝を備え、この環状溝にフェンダー取付用ブラケットの環状取付部を取付け可能にするようにしたものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において更に、前記フェンダー取付用ブラケットが環状取付部をC字状にし、C字の両端部をボルト締め可能にするようにしたものである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において更に、前記フェンダー取付用ブラケットが環状取付部の内周に滑りの良いブッシュを装填してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1)
(a)フェンダー取付用ブラケットが回転自在に取付けられるマウントブラケットを車輪側チューブの外周に隙間なく嵌挿して固定化するものであるから、車輪側チューブにフェンダー取付用ブラケットのための取付用溝等を加工する必要がない。このため、車輪側チューブに溝加工等に対応する補強構造を付与する必要がなく、車輪側チューブを薄肉化できるし、耐久性を向上できる。
【0016】
(b)フェンダー取付用ブラケットが回転自在に取付けられるマウントブラケットを車軸ブラケットに固定するものであり、フェンダー取付用ブラケットが車輪側チューブに及ぼす外力の負担を少なくし、車輪側チューブの耐久性を向上できる。
【0017】
(c)フェンダー取付用ブラケットが回転自在に取付けられるマウントブラケットを車輪側チューブの外周に隙間なく嵌挿して固定化するものであり、マウントブラケットと車輪側チューブの間に隙間を生じないし、マウントブラケットと車輪側チューブの摺接もない。従って、車輪側チューブの外周が侵入異物によってキズつけられる如くがなく、車輪側チューブの耐久性を向上できる。
【0018】
(請求項2)
(d)車輪側チューブに嵌挿してある樹脂カラーの外周にマウントブラケットを圧入することにより、樹脂カラーを縮径して車輪側チューブの外周に簡易に隙間なく嵌合できる。
【0019】
また、フェンダー取付用ブラケットが車輪側チューブに及ぼす外力を樹脂カラーにより緩和し、車輪側チューブの耐久性を向上できる。
【0020】
(請求項3)
(e)フェンダー取付用ブラケットの環状取付部をマウントブラケットの環状ベース部の環状溝に取付けるものとすることにより、フェンダー取付用ブラケットの環状取付部を回転自在、かつ軸方向には不動に取付けできる。
【0021】
(請求項4)
(f)フェンダー取付用ブラケットの環状取付部をC字状にすることにより、フェンダー取付用ブラケットの環状取付部のC字を開いて、マウントブラケットの外周に簡易に取付けできる。
【0022】
(請求項5)
(g)フェンダー取付用ブラケットの環状取付部の内周に滑りの良いブッシュを装填したことにより、フェンダー取付用ブラケットをマウントブラケットに対してスムースに回転できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は自動二輪車の前輪懸架構造を示す側面図、図2はフロントフォークの要部を示す側面図、図3は図2の正面図、図4は図3のIV-IV線に沿う断面図、図5は樹脂カラーを示す断面図、図6はマウントブラケットを示し、(A)は断面図、(B)は平面図、図7はフェンダー取付用ブラケットを示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)はC−C線に沿う断面図、図8はブッシュを示し、(A)は断面図、(B)は平面図、図9はフロントフォークの改造例を示す側面図である。
【実施例】
【0024】
図1の自動二輪車は、車体フレームの前部のヘッドパイプに回動自在に嵌入されたステアリング軸の上下端部に上下のブラケット11、12を取付け、これらのブラケット11、12にフロントフォーク10の左右一対の円筒状車体側チューブ13を固定している。フロントフォーク10は、左右の車体側チューブ13の内周側に円筒状車輪側チューブ14を摺動自在に嵌合する倒立式であり、車体側チューブ13と車輪側チューブ14の内部に懸架スプリングと減衰力発生装置を内蔵し、車輪側チューブ14の下端外周には車軸ブラケット15を固定している。
【0025】
フロントフォーク10は、左右の車輪側チューブ14の車軸ブラケット15に車軸16を着脱自在にし、前輪17を枢支する。前輪17は、ハブ17Aとリム17Bを有し、ハブ17Aに車軸16を嵌入し、リム17Bを車幅方向の外方に向けて張り出し、リム17Bにタイヤ17Cを取付けている。前輪17の側面にはディスクブレーキ18が取付けられ、前輪17の上部外周には泥よけフェンダー19が設けられる。
【0026】
ディスクブレーキ18は、ハブ17Aの左右両側面に左右一対のブレーキディスク21をボルト止めするとともに、ブレーキディスク21にその径方向から嵌合してブレーキディスク21の側面に摩擦接合し得るブレーキキャリパ22を有する。このとき、左右の車輪側チューブ14の車軸ブラケット15の後部にキャリパブラケット23を突設し、キャリパブラケット23の突出部にブレーキキャリパ22を固定する。ブレーキキャリパ22は、前輪17のリム17Bとブレーキディスク21の外周縁の間の凹所24に収められる。
【0027】
フェンダー19は、左右の車輪側チューブ14の外周に設けられるフェンダー取付用ブラケット50に以下の如くに取付けられる(図2〜図4)。尚、フェンダー19は、カーボンFRP製であり、左右両側から下方に向かう前支持部19A及び後支持部19Bを一体に延出し、前支持部19Aを車輪側チューブ14の前側に配置し、後支持部19Bを車輪側チューブ14の後側に配置する。
【0028】
左右の車輪側チューブ14の外周に例えばナイロン、テフロン(登録商標)等からなる樹脂カラー30を挿着する。樹脂カラー30は、車輪側チューブ14への挿着過程では、車輪側チューブ14の外周との間に僅かに隙間を介するものであって良い。
【0029】
樹脂カラー30は、図5に示す如く、円筒体をなし、下端外周に環状鍔部30Aを備えており、鍔部30Aを車軸ブラケット15の上端面に突当てられる。
【0030】
左右の車輪側チューブ14の外周に挿着されている樹脂カラー30の外周にその上方から例えばAl製のマウントブラケット40の環状ベース部41を圧入する。これにより、マウントブラケット40の環状ベース部41が樹脂カラー30を介して車輪側チューブ14の外周に隙間なく、車輪側チューブ14と同軸上に嵌挿する。マウントブラケット40の圧入により、樹脂カラー30は縮径されて車輪側チューブ14の内周との隙間をなくす。
【0031】
マウントブラケット40は、図6に示す如く、車輪側チューブ14の外周に嵌挿される環状ベース部41と、車軸ブラケット15に固定される固定部42を有する。
【0032】
マウントブラケット40の環状ベース部41は、上下両端の環状鍔部41A、41Bの間に円環状溝41Cを備え、この環状溝41Cにフェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51を取付け可能にする。フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51の下端面を支承する下鍔部41Bの半径方向長さを、フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51の上端面が接する上鍔部41Aの半径方向長さより大きくする。環状ベース部41は下端内周を大径化した環状段差部41Dを備え、この環状段差部41Dを樹脂カラー30の鍔部30Aに上から嵌合し、この嵌合端を樹脂カラー30に対するマウントブラケット40の圧入端とする。
【0033】
マウントブラケット40の固定部42は環状ベース部41の下鍔部41Bの周方向の一部から下向きに延出し、車軸ブラケット15の前部(キャリパブラケット23に対する直径方向反対側)の取付ボス15Aに、ボルト43で固定される。42Aはボルト43の挿通孔である。42Bはフェンダー取付用ブラケット50の前取付部52の側面が回転方向で当接する切欠状ストッパー面である。
【0034】
マウントブラケット40の環状ベース部41の上下鍔部41A、41Bに挟まれる環状溝41Cに、例えばAl製のフェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51が回転自在、かつ上下鍔部41A、41Bによって上下軸方向への移動を阻止されて不動に取付けられる。フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51は、図7に示す如く、すり割部51Aを有するC字状をなし、一端拡径されてマウントブラケット40の環状ベース部41の環状溝41Cに収められ、C字の両端突起部51B、51Cをボルト55、ナット56で締め付け、環状溝41Cに回転自在に取付けられる。
【0035】
フェンダー取付用ブラケット50は、図7に示す如く、マウントブラケット40の環状ベース部41の環状溝41Cに回転自在に取付けられる環状取付部51と、環状取付部51のC字の一端から車軸ブラケット15の前側に沿って下方に延出する前取付部52と、環状取付部51のC字の中間部から車軸ブラケット15の後側に沿って上方に延出する後取付部53を有する。前取付部52の上下の取付ねじ孔にフェンダー19の前支持部19Aがボルト52Aにより固定され、後取付部53の上端の取付ねじ孔にフェンダー19の後支持部19Bがボルト53Aにより固定される。
【0036】
フェンダー取付用ブラケット50は、図2に示す如く、環状取付部51の内周に滑りの良い、例えば金属メッシュ入りPTFEシート製のブッシュ60を装填できる。ブッシュ60は、図8に示す如く、環状取付部51と同様のC字状をなすとともに、上下両端外周の環状鍔部60A、60Bを備え、環状取付部51の上下両端内周を大径化した環状段差部51D、51Eにブッシュ60の上下鍔部60A、60Bを嵌着して環状取付部51の内周に組込まれる。フェンダー取付用ブラケット50に組込まれたブッシュ60の内周がマウントブラケット40の環状ベース部41の環状溝41Cを摺接するものになり、鍔部60Aの外面が環状ベース部41の鍔部41Aに摺接し、鍔部60Bの外面が環状ベース部41の鍔部41Bに摺接する。
【0037】
従って、フロントフォーク10にあっては、車輪側チューブ14の外周に、樹脂カラー30を介して、マウントブラケット40の環状ベース部41が隙間なく車輪側チューブ14と同軸上に嵌挿され、このマウントブラケット40の固定部42が車軸ブラケット15の取付ボス15Aにボルト固定される。マウントブラケット40の環状ベース部41の環状溝41Cに、フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51がブッシュ60を介して回転自在、かつ軸方向には不動に取付けられる。フェンダー取付用ブラケット50の前取付部52にフェンダー19の前支持部19Aをボルト固定し、フェンダー取付用ブラケット50の後取付部53にフェンダー19の後支持部19Bをボルト固定する。
【0038】
フロントフォーク10において、フェンダー19をフェンダー取付用ブラケット50に取付けたままで、尚かつディスクブレーキ18のブレーキキャリパ22を車軸ブラケット15の後部のキャリパブラケット23から外さずに前輪17を着脱する作業は以下の如くになされる。
【0039】
(1)車軸ブラケット15から車軸16を取外し、左右の車輪側チューブ14、車軸ブラケット15に対する前輪17の支承を解除する。
【0040】
(2)前輪17をその径方向の前方に向けてブレーキディスク21とともに移動し、ブレーキキャリパ22とブレーキディスク21の嵌合を解除する。
【0041】
(3)左右の車輪側チューブ14、車軸ブラケット15を車体側チューブ13に対しそれらの軸まわりに回転し、これに伴なってキャリパブラケット23とともに回転するブレーキキャリパ22を前述の前輪17の凹所24から車幅方向の外方に逃す。
【0042】
(4)前輪17を更に、僅かに下向きの前方に移動する。前輪17のリム17Bは前輪17の径方向で上述(3)のブレーキキャリパ22に当たることなく、前輪17を取外しできる。
【0043】
尚、フェンダー19が取付けられているフェンダー取付用ブラケット50は、車輪側チューブ14、車軸ブラケット15の側のマウントブラケット40に対して相対回転できるから、フェンダー19をフェンダー取付用ブラケット50に取付けたままの状態で、上述(3)の車輪側チューブ14、車軸ブラケット15の回転ができる。
【0044】
左右の車輪側チューブ14、車軸ブラケット15に対する前輪17の取付け作業は、上述(1)〜(4)の逆手順によりなされる。
【0045】
尚、本発明は、フェンダー取付用ブラケットが車軸ブラケット15に固定されている図9に示す如くの従来のフロントフォーク10を簡易に改造して適用できる。従来のフロントフォーク10が前側2個のフェンダー取付部101、102、後側1個のフェンダー取付部103を備えて、フェンダー取付部101、102、103の突出部を図9のカット線A、B、Cで切除する。これにより、本発明のマウントブラケット40はフェンダー取付用ブラケット50がそれらの取付部101〜103に干渉することがないし、取付部101の切除後の残余部にボルト取付部を加工するだけで、これをマウントブラケット40のための取付ボス15Aとして利用でき、フロントフォーク10の強度、性能に影響しない。
【0046】
本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)フェンダー取付用ブラケット50が回転自在に取付けられるマウントブラケット40を車輪側チューブ14の外周に隙間なく嵌挿して固定化するものであるから、車輪側チューブ14にフェンダー取付用ブラケット50のための取付用溝等を加工する必要がない。このため、車輪側チューブ14に溝加工等に対応する補強構造を付与する必要がなく、車輪側チューブ14を薄肉化できるし、耐久性を向上できる。
【0047】
(b)フェンダー取付用ブラケット50が回転自在に取付けられるマウントブラケット40を車軸ブラケット15に固定するものであり、フェンダー取付用ブラケット50が車輪側チューブ14に及ぼす外力の負担を少なくし、車輪側チューブ14の耐久性を向上できる。
【0048】
(c)フェンダー取付用ブラケット50が回転自在に取付けられるマウントブラケット40を車輪側チューブ14の外周に隙間なく嵌挿して固定化するものであり、マウントブラケット40と車輪側チューブ14の間に隙間を生じないし、マウントブラケット40と車輪側チューブ14の摺接もない。従って、車輪側チューブ14の外周が侵入異物によってキズつけられる如くがなく、車輪側チューブ14の耐久性を向上できる。
【0049】
(d)車輪側チューブ14に嵌挿してある樹脂カラー30の外周にマウントブラケット40を圧入することにより、樹脂カラー30を縮径して車輪側チューブ14の外周に簡易に隙間なく嵌合できる。
【0050】
また、フェンダー取付用ブラケット50が車輪側チューブ14に及ぼす外力を樹脂カラー30により緩和し、車輪側チューブ14の耐久性を向上できる。
【0051】
(e)フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51をマウントブラケット40の環状ベース部41の環状溝41Cに取付けるものとすることにより、フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51を回転自在、かつ軸方向には不動に取付けできる。
【0052】
(f)フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51をC字状にすることにより、フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51のC字を開いて、マウントブラケット40の外周に簡易に取付けできる。
【0053】
(g)フェンダー取付用ブラケット50の環状取付部51の内周に滑りの良いブッシュ60を装填したことにより、フェンダー取付用ブラケット50をマウントブラケット40に対してスムースに回転できる。
【0054】
尚、車軸ブラケットの上端部にフェンダーステー取付溝を設ける従来技術では、ブレーキキャリパ等の取付ボスを車軸ブラケットのフェンダーステー取付溝より下側に設ける必要がある。本発明では、車軸ブラケットに対しフェンダーステー取付部を別体にしたから、ブレーキキャリパ等の取付ボスを車軸ブラケットの上端部にも配置できる等、車軸ブラケットへの他部品の取付レイアウトの自由度を向上できる。
【0055】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は自動二輪車の前輪懸架構造を示す側面図である。
【図2】図2はフロントフォークの要部を示す側面図である。
【図3】図3は図2の正面図である。
【図4】図4は図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は樹脂カラーを示す断面図である。
【図6】図6はマウントブラケットを示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図7】図7はフェンダー取付用ブラケットを示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)はC−C線に沿う断面図である。
【図8】図8はブッシュを示し、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図9】図9はフロントフォークの改造例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 フロントフォーク
13 車体側チューブ
14 車輪側チューブ
15 車軸ブラケット
30 樹脂カラー
40 マウントブラケット
41 環状ベース部
41A、41B 鍔部
41C 環状溝
42 固定部
50 フェンダー取付用ブラケット
51 環状取付部
60 ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブを摺動自在に嵌合し、車輪側チューブの外周に車軸ブラケットとフェンダー取付用ブラケットを設けた自動二輪車用フロントフォークにおいて、
車輪側チューブの外周にマウントブラケットを隙間なく嵌挿し、該マウントブラケットを車軸ブラケットに固定し、
マウントブラケットの外周にフェンダー取付用ブラケットの環状取付部を回転自在、かつ軸方向には不動に取付けたことを特徴とする自動二輪車用フロントフォーク。
【請求項2】
前記マウントブラケットが樹脂カラーを介して車輪側チューブの外周に隙間なく嵌挿された請求項1に記載の自動二輪車用フロントフォーク。
【請求項3】
前記マウントブラケットが車輪側チューブの外周に嵌挿される環状ベース部と車軸ブラケットに固定される固定部を有し、環状ベース部が両端の鍔部の間に環状溝を備え、この環状溝にフェンダー取付用ブラケットの環状取付部を取付け可能にする請求項1又は2に記載の自動二輪車用フロントフォーク。
【請求項4】
前記フェンダー取付用ブラケットが環状取付部をC字状にし、C字の両端部をボルト締め可能にする請求項1〜3のいずれかに記載の自動二輪車用フロントフォーク。
【請求項5】
前記フェンダー取付用ブラケットが環状取付部の内周に滑りの良いブッシュを装填してなる請求項1〜4のいずれかに記載の自動二輪車用フロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−240461(P2006−240461A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58114(P2005−58114)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】