説明

自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ

【課題】旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを、従来技術と比べ低コストで構成する。
【解決手段】投影レンズと、光源と、前記光源から入射する光を前記投影レンズの光軸寄りに集光させて前記投影レンズを透過させるとともに、前記投影レンズを透過した光が車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に所定配光パターンを形成するように構成された第1反射面と、前記光源から入射する光を前記投影レンズのうち前記第1反射面からの反射光が透過しないレンズ部分に向けて集光させるように構成された第2反射面と、前記レンズ部分を透過した前記第2反射面からの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第3反射面と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプに係り、特に旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射するように構成された自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車用前照灯の分野においては、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射するように構成されたプロジェクタ型ヘッドランプが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図20に示すように、特許文献1に記載のプロジェクタ型ヘッドランプ200は、ロービーム用ランプ210、その左右両側それぞれに配置されたコーナリングランプ220を備えている。
【0004】
ロービーム用ランプ210は、ロービーム用配光パターンP1(図21(a)参照)を形成するように構成されたヘッドランプユニットであり、図20に示すように、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプと同様、投影レンズ211、光源212、反射面213、シェード214等を備えている。
【0005】
このロービーム用ランプ210によれば、光源212から放射され反射面213で反射された光の一部がシェード214で遮光され、その像が投影レンズ211により投影されることで、ロービーム用配光パターンP1を形成する(図21(a)参照)。
【0006】
コーナリングランプ220は、図21(a)に示す付加配光パターンP2と、図21(b)に示す付加配光パターンP3とを切り替え可能に構成されたヘッドランプユニットであり、図22(a)、図22(b)に示すように、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプと同様、投影レンズ221、光源222、反射面223を備えているが、シェード224は一般的なプロジェクタ型ヘッドランプのものと異なっている。
【0007】
すなわち、コーナリングランプ220のシェード224は、一般的なプロジェクタ型ヘッドランプに用いられる固定シェード224aの他に、方向指示器の操作スイッチのオンオフにより図22(b)に示す遮光位置又は図22(a)に示す退避位置に位置させられる可動シェード224bを含んでいる。
【0008】
このコーナリングランプ220によれば、方向指示器の操作スイッチがオフのときには、光源222から放射され反射面223で反射された光の一部が図22(b)の遮光位置に位置した可動シェード224bで遮光され、その像が投影レンズ221により投影され図21(a)に示すような付加配光パターンP2を形成する。一方、方向指示器の操作スイッチがオンされると、可動シェード224bは図22(a)の退避位置に移動するため、光源222から放射され反射面223で反射された光の一部が固定シェード224aで遮光され、その像が投影レンズ221により投影され図21(b)に示すような配光パターンP3を形成する。これにより、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面が照射されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−1306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記構成の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ200においては、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面が照射されるものの、ロービーム用ランプ210の他に二つのコーナリングランプ220を追加する構成であるため、その分コストが増大する、という問題がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを、従来技術と比べ低コストで構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、投影レンズと、光源と、前記光源から入射する光を前記投影レンズの光軸寄りに集光させて前記投影レンズを透過させるとともに、前記投影レンズを透過した光が車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に所定配光パターンを形成するように構成された第1反射面と、前記光源から入射する光を前記投影レンズのうち前記第1反射面からの反射光が透過しないレンズ部分に向けて集光させるように構成された第2反射面と、前記レンズ部分を透過した前記第2反射面からの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第3反射面と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、既存のロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットに対し、レンズ部分、第2反射面及び第3反射面を追加するだけで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能となる。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、コーナリングランプが不要となる分、従来と比べ、低コストで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを構成することが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第3反射面は、前記投影レンズの周囲に配置された装飾部材であるエクステンションに形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、別個独立の第3反射面ではなく、エクステンションの一部を第3反射面として用いているため、その分、さらに低コスト化が可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記レンズ部分は、当該レンズ部分に入光した前記第2反射面からの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて全反射又は屈折させるためのレンズ面を含んでいることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、既存のロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットに対し、さらに全反射又は屈折させるためのレンズ面を追加するだけで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能となる。すなわち、請求項3に記載の発明によれば、コーナリングランプが不要となる分、従来と比べ、低コストで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを構成することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、前記投影レンズと前記光源との間に配置され、前記第1反射面からの反射光のうち水平線よりも上へ向かう光を遮光するためのシェードをさらに備えており、前記シェードは、前記レンズ部分へ入光する前記第2反射面からの反射光を遮らないように、前記レンズ部分よりも上方に配置された帯状のシェードであることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、レンズ部分よりも上方に配置された帯状のシェードの作用により、第2反射面からの反射光を、シェードの下方を通過させてレンズ部分へ入光させることが可能となる。すなわち、レンズ部分へ入光する第2反射面からの反射光は、シェードにより遮られないため、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面をより明るく照射することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを、従来技術と比べ低コストで構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態である自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10が搭載された自動二輪車の正面図である。
【図2】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10の斜視図である。
【図3】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10の横断面図である。
【図4】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10の縦断面図である。
【図5】(a)直立時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上の鉛直線Vに対し左右(例えば0〜45°)かつ水平線Hよりも上(例えば0〜30°)の領域A、A、当該領域A、Aに形成される付加配光パターンP2、P2、ロービーム用配光パターンP1の例、(b)バンク時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンP2、P2、ロービーム用配光パターンP1の例である。
【図6】(a)全反射面11b1(レンズカット)の例1、(b)全反射面11b1(レンズカット)の例2である。
【図7】(a)直立時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上の鉛直線Vに対し左右(例えば0〜45°)かつ水平線Hよりも上(例えば0〜30°)の領域A、A、当該領域A、Aに形成される付加配光パターンP2、P2、ロービーム用配光パターンP1の例、(b)バンク時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンP2、P2、ロービーム用配光パターンP1の例である。
【図8】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10の横断面図である(シェード15省略)。
【図9】バンク時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に形成される付加配光パターンP2(路面配光)の例である。
【図10】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の斜視図である。
【図11】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の縦断面図である。
【図12】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の横断面図である。
【図13】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の横断面図である。
【図14】(a)屈折面11c1(レンズカット)を含むレンズカット部11cの例、(b)全反射面及び屈折面として機能するレンズ面11d1を含むレンズカット部11dの例、(c)素通しのレンズ部11eの例である。
【図15】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の横断面図である。
【図16】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)が搭載された自動二輪車の正面図である。
【図17】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)が搭載された自動二輪車の正面図である。
【図18】シェード15の斜視図である。
【図19】自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(変形例)の縦断面図である。
【図20】従来の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ200の構成を説明するための上面図である。
【図21】(a)図20に示した自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプにより形成される付加パターンP2、すれ違いビーム用配光パターンP1(車体直立姿勢時)を説明するための図、(b)付加配光パターンP2、すれ違いビーム用配光パターンP1(バンク時)を説明するための図である。
【図22】(a)図20に示したコーナリングランプ220の縦断面図、(b)シェード224の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態である自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプについて図面を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ10(以下ヘッドランプ10と称す)は、ロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットであり、図1、図3に示すように、車体前部左側に配置されている。車体前部右側には、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニット20が配置されている。
【0024】
図2はヘッドランプ10の斜視図、図3は横断面図、図4は縦断面図である。
【0025】
図2〜図4に示すように、ヘッドランプ10は、車両前方側に配置された投影レンズ11、車両後方側に配置された光源12、光源12の上方に配置された第1反射面13、光源12の下方に配置された第2反射面14、投影レンズ11と光源12との間に配置されたシェード15等を備えている。
【0026】
図2、図4に示すように、投影レンズ11は、投影レンズ部11a、レンズカット部11bを含むガラス製又は透明樹脂製のレンズである。レンズカット部11bは、第1反射面13からの反射光が入射しない領域(本実施形態では投影レンズ部11aの下方)に配置されている。
【0027】
投影レンズ部11aは、車両前方側の凸面、車両後方側の平面を含む平凸非球面レンズである(図4参照)。レンズカット部11bは、車両前方側に左右対称に形成された全反射面11b1(レンズカット)を含んでいる(図1参照)。全反射面11b1(レンズカット)は、レンズカット部11bに入光した第2反射面14からの反射光を、直立時の車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上の鉛直線Vに対し左右(例えば0〜45°)かつ水平線Hよりも上(例えば0〜30°)の領域A、A(図5(a)参照)に向けて全反射(内部反射)する全反射面として機能する。
【0028】
全反射面11b1は反射率が100%であるため、全反射面以外の反射面(例えば反射率90%の反射面)を用いる場合と比べ、領域A、Aをより明るく照射することが可能となる。なお、複数の全反射面11b1(レンズカット)を用いることで、領域A、Aをさらに明るく照射することが可能となる(図6(a)、図6(b)参照)。
【0029】
光源12としては、例えば、ハロゲン電球、HID、白熱電球、半導体発光素子を用いることが可能である。本実施形態では、図4に示すように、個別に点消灯制御される二つのフィラメント12a、12b、車両前方側のフィラメント12aの下方に配置され、フィラメント12aから放射され水平線Hよりも上に向かう光を遮光して明瞭なカットオフラインを形成するためのシェード12cを含むハロゲン電球(例えば、HS1型)を用いている。なお、HS1型以外の例えばS2型のハロゲン電球を用いることも可能である。
【0030】
第1反射面13は、光源12(フィラメント12b)から上方へ放射される光が入射するように、光源12の上方に配置されている(図4参照)。
【0031】
第1反射面13は、光源12(フィラメント12b)から入射する光Ray1を投影レンズ11の光軸AX寄りに集光させて投影レンズ部11aを透過させるとともに、投影レンズ部11aを透過した光Ray1が車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上にロービーム用配光パターンP1(図5(a)参照)を形成するように構成されている。例えば、第1反射面13は、光軸AXを含む断面形状が略楕円形状に設定されるとともに、その離心率が鉛直断面から水平断面に向けて徐々に大きくなるように設定されている。
【0032】
シェード15は、第1反射面13からの反射光Ray1のうち水平線Hよりも上へ向かう光を遮光するための遮光部材であり、上端縁を投影レンズ部11aの後側焦点F近傍に位置させた状態で投影レンズ11と光源12との間に配置されている(図4参照)。
【0033】
シェード15は、車幅方向略水平に延びる帯状のシェードであり、レンズカット部11bよりも上方に配置されている。シェード15としては、例えば、図18に示す形状のものを用いることが可能である。これにより、第2反射面13からの反射光Ray2を、シェード15によって遮られることなくレンズカット部11bに入光させることが可能となる。
【0034】
図4に示すように、第1反射面13に入射した光源12(フィラメント12b)からの光Ray1は、当該第1反射面13の作用により投影レンズ11の光軸AX寄りに集光されるとともに、水平線Hよりも上へ向かう光がシェード15で遮光されて、その像が投影レンズ部11aにより車両前方へ投影される。これにより、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に、シェード15の上端縁により規定されるカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンP1が形成される(図5(a)、図7(a)参照)。
【0035】
第2反射面14は、光源12(フィラメント12b)から下方へ放射される光が入射するように、光源12の下方に配置されている(図4参照)。
【0036】
第2反射面14は、光源12(フィラメント12b)から入射する光Ray2をレンズカット部11bに向けて集光させるように構成されている。本実施形態では、第2反射面14は、図2、図8に示すように、上下左右に配置された四つの反射領域14a〜14dを含んでいる。
【0037】
上下に配置された反射領域14a、14bは、光源12(フィラメント12b)から入射する光Ray2を、水平方向に関しては光軸AXに対し平行となるように集光させ(図8参照)、かつ、鉛直方向に関しては車両前方側に傾斜するように集光させる(図4参照)反射面として構成されている。一方、左右に配置された反射領域14c、14dは、光源12(フィラメント12b)から入射する光Ray2を、水平方向に関しては光軸AX寄りに集光させ(図8参照)、かつ、鉛直方向に関しては車両前方側に傾斜するように集光させる(図4参照)反射面として構成されている。
【0038】
図4に示すように、第2反射面14に入射した光源12(フィラメント12b)からの光Ray2は、当該第2反射面14の作用により集光されて、シェード15の下方を通過してレンズカット部11bに入光し、全反射面11b1(レンズカット)の作用により全反射されて、領域A、Aを照射する(図5(a)参照)。これにより、領域A、Aに付加配光パターンP2L、P2Rが形成される(図5(a)、図7(a)参照)。
【0039】
次に、車体バンク時の作用について説明する。
【0040】
例えば、図5(b)に示すように、左コーナーコーナリング時に車体を左側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ10も傾く。これにより、それまで水平線Hよりも上の領域Aを照射していた付加配光パターンP2L(図5(a)図7(a)参照)が、水平線Hよりも下に移動し(図5(b)、図7(b)参照)、ライダーの左前方の路面を照射する(図9参照)。この水平線Hよりも下に移動した付加配光パターンP2Lが照射する路面領域は左コーナーコーナリング時のライダーの視線方向に位置するため、左コーナーコーナリング時の視認性を大きく向上させることが可能となり、快適なコーナリングを実現することが可能となる。
【0041】
同様に、右コーナーコーナリング時に車体を右側に傾けると(例えば、バンク角36°)、これに伴ってヘッドランプ10も傾く。これにより、それまで水平線Hよりも上の領域Aを照射していた付加配光パターンP2R(図5(a)、図7(a)参照)が、水平線Hよりも下に移動し、ライダーの右前方の路面を照射する。この水平線Hよりも下に移動した付加配光パターンP2Rが照射する路面領域は右コーナーコーナリング時のライダーの視線方向に位置するため、右コーナーコーナリング時の視認性を大きく向上させることが可能となり、快適なコーナリングを実現することが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のヘッドランプ10によれば、既存のロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットに対し、レンズカット部11b及び光源12から入射する光をレンズカット部12に向けて集光させるように構成された第2反射面14を追加するだけで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能となる(図5(b)、図7(b)、図9参照)。すなわち、本実施形態のヘッドランプ10によれば、コーナリングランプが不要となる分、従来と比べ、低コストで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを構成することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、レンズカット部11bよりも上方に配置された帯状のシェード15の作用により、第2反射面14からの反射光Ray2を、シェード15の下方を通過させてレンズカット部11bへ入光させることが可能となる(図4参照)。すなわち、レンズカット部11bへ入光する第2反射面14からの反射光Ray2は、シェード15により遮られないため、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面をより明るく照射することが可能となる。
【0044】
次に、変形例について説明する。
【0045】
ヘッドランプ10は、レンズカット部11bを透過した第2反射面14からの反射光を、領域A、A(図5(a)参照)に向けて反射させるための第3反射面17を備えていてもよい。
【0046】
例えば、第3反射面17は、図10〜図12に示すように、投影レンズ11の周囲に配置された装飾部材であるエクステンション16の一部に形成することが可能である。
【0047】
図10、図12は、表面にアルミ蒸着等の鏡面処理が施されたエクステンション16のうち車両前後方向に延びる壁面16aに、第3反射面17を形成した例である。なお、壁面16aに限られず、例えば、図11に示すように、エクステンション16のうち投影レンズ11直下又はその周辺部分に、第3反射面17を形成してもよい。
【0048】
本変形例によれば、第2反射面14に入射した光源12からの光Ray2は、当該第2反射面14の作用により集光されて、シェード15の下方を通過してレンズカット部11bに入光し、全反射面11b1(レンズカット)の作用により全反射されて、領域A、Aを照射する(図5(a)参照)。これにより、領域A、Aに付加配光パターンP2L、P2Rが形成される(図5(a)、図7(a)参照)。
【0049】
また、本変形例によれば、全反射面11b1(レンズカット)の作用により右方向へ照射されてエクステンション16の壁面16aにより遮蔽される光が、当該壁面16aに形成された第3反射面17の作用により反射されて(図12参照)、領域Aを照射する。これにより、第3反射面17を形成しない場合と比べ、領域Aに形成される付加配光パターンP2Lをより明るくすることが可能となる。すなわち、本来、エクステンション16の壁面16aによって遮蔽される光の有効利用が可能となる。
【0050】
特に、図13に示すように、アウターレンズ18のスラント角がきつくなり、これに伴ってエクステンション16を構成する壁面16aが車両前後方向に長くなり、全反射面11b1(レンズカット)の作用により右方向へ照射される光が当該壁面16aによって完全に遮蔽される場合に、当該壁面16aに第3反射面17を形成するのが好ましい。このようにすれば、第3反射面17を形成しない場合と比べ、領域Aに形成される付加配光パターンP2Lをより明るくすることが可能となる。すなわち、本来、エクステンション16を構成する壁面16aによって完全に遮蔽される光の有効利用が可能となる。
【0051】
以上説明したように、本変形例のヘッドランプ10によれば、既存のロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットに対し、レンズ部分(レンズカット部11b〜11e、全反射又は屈折させるためのレンズ面11b1〜11d1)、第2反射面14及び第3反射面17を追加するだけで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能となる(図5(b)、図7(b)、図9参照)。すなわち、本変形例のヘッドランプ10によれば、コーナリングランプが不要となる分、従来と比べ、低コストで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを構成することが可能となる。
【0052】
また、本変形例のヘッドランプ10によれば、別個独立の第3反射面17ではなく、エクステンション16の一部を第3反射面17として用いているため、その分、さらに低コスト化が可能となる。
【0053】
上記変形例では、全反射面11b1を含むレンズカット部11b(図6(a)、図6(b)参照)を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14(a)に示すように、全反射面11b1に代えて、屈折面11c1を含むレンズカット部11cを用いてもよい。また、図14(b)に示すように、全反射面及び屈折面として機能するレンズ面11d1を含むレンズカット部11dを用いてもよい。また、図14(c)に示すように、レンズカット部11b、11cに代えて、全反射面11b1や屈折面11c1を含まないいわゆる素通しのレンズ部11eを用いてもよい。
【0054】
上記実施形態及び変形例では、光源12として個別に点消灯制御される二つのフィラメント12a、12bを含むハロゲン電球を用いた例(図4参照)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15に示すように、光源12として一つのフィラメント(例えばフィラメント12bに相当するフィラメント)のみを含む光源を用いてもよい。
【0055】
また、上記実施形態及び変形例では、ロービーム用の光学ユニット10とハイビーム用の光学ユニット20とを左右に配置した例(図1参照)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図16に示すように、ロービーム用の光学ユニット10とハイビーム用の光学ユニット20とを車幅方向の中央かつ上下に配置してもよい。このようにすれば、左右(領域A、A)均等に照射することが可能となるため、領域A、Aに均等な明るさの付加配光パターンP2L、P2Rを形成することが可能となる。
【0056】
また、上記実施形態及び変形例では、レンズカット部11bは投影レンズ部11aの下方に配置されているように説明した(図1、図4等参照)が、本発明はこれに限定されない。例えば、図17、図19に示すように、レンズカット部11bを投影レンズ部11aの上方に配置し、かつ、光源12(フィラメント12a及び/又は12b)から上方へ放射される光が入射するように、光源12の上方に第2反射面(反射領域14a、14b)を配置してもよい。
【0057】
第1反射面13に入射した光源12(フィラメント12b及び/又は12a)からの光Ray1は、当該第1反射面13の作用により投影レンズ11の光軸AX寄りに集光されるとともに、水平線Hよりも上へ向かう光がシェード15で遮光されて、その像が投影レンズ部11aにより車両前方へ投影される。これにより、車両前端部に正対した仮想鉛直スクリーン上に、シェード15の上端縁により規定されるカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンP1が形成される(図5(a)、図7(a)参照)。
【0058】
第2反射面14に入射した光源12(フィラメント12b及び/又は12a)からの光Ray2は、当該第2反射面14の作用により集光されてレンズカット部11bに入光し、全反射面11b1(レンズカット)の作用により全反射されて、領域A、Aを照射する(図5(a)参照)。これにより、領域A、Aに付加配光パターンP2L、P2Rが形成される(図5(a)、図7(a)参照)。
【0059】
本変形例によっても、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能となる。すなわち、本変形例のヘッドランプ10によっても、コーナリングランプが不要となる分、従来と比べ、低コストで、旋回時(例えば、コーナリング時)に旋回方向の路面を照射することが可能な自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプを構成することが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態及び変形例では、ヘッドランプ10がロービーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットであるように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ヘッドランプ10は、鉛直線Vと水平線Hの交点を含む領域に形成されたホットゾーンを含むハイビーム用配光パターンを形成するように構成された光学ユニットであってもよい。例えば、図3に示したヘッドランプ10からシェード15を取り除き、第1反射面13をハイビーム用配光パターンを形成する反射面として構成することで、ハイビーム用のヘッドランプ10を構成することが可能である。
【0061】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10…自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ(ロービーム用光学ユニット)、11…投影レンズ、11a…投影レンズ部、11b…レンズカット部、11b1…全反射面、11c…レンズカット部、11c1…屈折面、11d…レンズカット部、11d1…レンズ面、11e…素通しレンズ部、12…光源、12a、12b…フィラメント、12c…シェード、13…第1反射面、14…第2反射面、14a、14b…上下反射領域、14c、14d…左右反射領域、15…シェード、16…エクステンション、16a…壁面、17…第3反射面、18…アウターレンズ、20…ハイビーム用光学ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、
光源と、
前記光源から入射する光を前記投影レンズの光軸寄りに集光させて前記投影レンズを透過させるとともに、前記投影レンズを透過した光が車体前端に正対した仮想鉛直スクリーン上に所定配光パターンを形成するように構成された第1反射面と、
前記光源から入射する光を前記投影レンズのうち前記第1反射面からの反射光が透過しないレンズ部分に向けて集光させるように構成された第2反射面と、
前記レンズ部分を透過した前記第2反射面からの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて反射させるための第3反射面と、
を備えることを特徴とする自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項2】
前記第3反射面は、前記投影レンズの周囲に配置された装飾部材であるエクステンションに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項3】
前記レンズ部分は、当該レンズ部分に入光した前記第2反射面からの反射光を、直立時の車体前端に正対する仮想鉛直スクリーン上の鉛直線に対し左右かつ水平線よりも上の領域に向けて全反射又は屈折させるためのレンズ面を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ。
【請求項4】
前記投影レンズと前記光源との間に配置され、前記第1反射面からの反射光のうち水平線よりも上へ向かう光を遮光するためのシェードをさらに備えており、
前記シェードは、前記レンズ部分へ入光する前記第2反射面からの反射光を遮らないように、前記レンズ部分よりも上方に配置された帯状のシェードであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動二輪車用プロジェクタ型ヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142159(P2012−142159A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293281(P2010−293281)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】