説明

自動二輪車

【課題】電子認証システムを車両に組立てるに際して、車両への組立て作業を容易にし、組立て作業を効率化させる。
【解決手段】電子認証システムは、電子キー13のID情報が車両側のID情報に合致するかどうかを判断する車両側コントロールユニット10と、電子キー13のID情報が車両側のID情報に合致したことに応じて、エンジンの始動操作やハンドルロック解除操作を可能にするイグニッションスイッチユニット18と、収納リッド125等の開閉蓋のロック解除用アクチュエータ21とを含んでいるが、これらの構成部材がレグシールド(レグシールドインナ113)に取付固定されて、モジュール化されている。このように予めレグシールドインナ113に組み付けモジュール化しておくことにより、車両への組立て作業が格段に容易になり、組立て作業を大幅に効率化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子認証システムを搭載した典型的にはスクータ型車両等の自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
電子認証システムを搭載した自動二輪車として、たとえば特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1において、コントロールユニットは、車両ユーザが携帯する正規の携帯送信機からのID信号送信を促す信号を送信するように送信アンテナを制御するものであり、また前記携帯送信機の信号を受信する受信ユニットの信号受信結果が入力されるものである。而してコントロールユニットは、携帯送信機から送信されたID信号が所定の信号であることを確認したときに、ノブによるシリンダ錠の回動操作を許容するようにロックソレノイドを作動せしめる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−119421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ハンドルロックモジュールが、ノブで回動操作可能であるとともに回動操作時には操向ハンドルのヘッドパイプへのロック状態を解除するシリンダ錠と、該シリンダ錠の回動を不能とし得るロックソレノイドと、前記シリンダ錠の回動に応じてスイッチング作動するメインスイッチと、メインスイッチからの信号が入力されるコントロールユニットとを備える。
【0005】
また、受信ユニットは、収納ボックス内もしくは乗車用シート内に配設され、送信アンテナは、車両の幅方向中心線上でハンドルロックモジュールの上方、たとえば車体カバーの一部を構成するパネルの直下に配置される。
【0006】
しかしながら、コントロールユニット、受信ユニット、送信アンテナを別体として車両の各部に分散して配置すると、車両への組立て作業の効率が悪くなってしまう。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、電子認証システムを車両に組立てるに際して、車両への組立て作業を容易にし、組立て作業を効率化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による自動二輪車は、車両の所有者を特定するID情報が車両側のID情報に合致するかどうかを判断する車両側コントロールユニットと、前記車両の所有者を特定するID情報が前記車両側のID情報に合致したことに応じて、少なくともエンジンの始動操作およびハンドルロック解除操作を可能にするイグニッションスイッチユニットと、レグシールドに設けられた収納ボックスを開閉する収納ボックス用蓋部材のロックを解除するロック解除用アクチュエータとを備えた自動二輪車であって、前記車両側コントロールユニットおよび前記ロック解除用アクチュエータが前記レグシールドにそれぞれ取付固定されている点に特徴を有する。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記車両の所有者を特定するID情報は電子キーに格納された電子信号である点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記車両の所有者を特定するID情報は個人を識別する身体情報である点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記送信アンテナおよび受信アンテナがモジュール化された車両側コントロールユニットが、サイドスタンド側に配置されている点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記収納ボックスの天井面の上面が平坦に形成され、略水平配置されており、前記車両側コントロールユニットおよび前記ロック解除用アクチュエータが、前記収納ボックスの天井面の上面に取付固定されている点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記レグシールドは、運転者用シート側に向くレグシールドインナと、車両前方に向くレグシールドフロントとを含み、前記収納ボックスが前記レグシールドインナに開口する点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記イグニッションスイッチユニットと前記ロック解除用アクチュエータとが、前記収納ボックス用蓋部材をロックするためのロック機構にそれぞれケーブルを介して接続されており、前記イグニッションスイッチユニットがステアリングヘッドパイプの右側に配置されるとともに、前記ロック解除用アクチュエータが前記収納ボックスの天井面の上面のうち右側に配置されている点にある。
また、本発明による自動二輪車の他の特徴とするところは、前記レグシールドには燃料タンクの給油口にアクセスするための開口部が開設されており、前記ロック解除用アクチュエータは、前記開口部を開閉するフューエル用蓋部材のロックを解除するアクチュエータも兼ねる点にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子認証システムを車両に組立てるに際して、予め車両側コントロールユニットおよび前記ロック解除用アクチュエータをレグシールドに組み付けモジュール化しておくことにより、車両への組立て作業が格段に容易になり、組立て作業を大幅に効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明による自動二輪車の好適な実施の形態を説明する。
本発明は各タイプの自動二輪車に対して有効に適用可能であるが、この実施形態ではたとえば図1に示すように所謂、スクータ型車両の例とする。ここで先ず、本実施形態に係るスクータ型車両100の全体構成を説明する。なお、各図要所において、車両の前方および後方をそれぞれ矢印Frおよび矢印Rrで表わす。図1において、鋼製あるいはアルミニウム合金材でなる車体フレームの前部には、ステアリングヘッドパイプによって左右に回動可能に支持された2本のフロントフォーク101が設けられる。フロントフォーク101の上端にはハンドル102が固定され、ハンドル102の左右両端にグリップ103を有する。フロントフォーク101の下部には前輪104が回転可能に支持されると共に、前輪104の上部を覆うようにフロントフェンダ105が固定される。前輪104は、前輪104と一体回転するブレーキディスク106を有している。
【0011】
車体フレームの後部には、左右スイングアーム107が揺動可能に設けられると共に、車体フレームとスイングアーム107の間にリヤショックアブソーバが装架される。一方(左側)のスイングアーム107は、ベルト式無段変速機又は複数のギヤ列で構成される動力伝達機構を内蔵している。スイングアーム107の後端には後輪108が回転可能に支持され、後輪108は上述した動力伝達機構を介して、回転駆動されるようになっている。後輪108の上部を覆うようにリヤフェンダ109が固定される。
【0012】
なお、図示されていないが、車体フレームに搭載されたエンジンユニットには、エアクリーナ装置等を含む吸気系から混合気が供給されると共に、燃焼後の排気ガスが排気管を通って排気される。さらにエンジンユニットを始めとして、燃料タンクやラジエタ装置等を含む車両の主用構成部材は、後述する車体カバーによって覆われ、図1のように車両の外観構成は一体感のあるすっきりしたものとなっている。また、車両の略中央から後方へ運転者用シート110およびタンデムシート111が連設される(以下、これらを単にシート110とする)。
【0013】
ここで、図2を参照すると、車両前部の車体カバーの構造は、車両の進行方向前方から車体の前頭部を覆うレグシールドフロント112および車両の進行方向後方のシート110側から車体の前頭部を覆うレグシールドインナ113が連接され、レグシールドフロント112の下方にはレグシールドロア114が配置される。レグシールドフロント112にはヘッドランプ115が埋設されるかたちで配置される。レグシールドフロント112の上部にはフロントレグシールドカバー116を介して、ウィンドスクリーン117が立設される。また、レグシールドインナ113の上部にはメータパネル118が配置される。レグシールドフロント112およびレグシールドインナ113やウィンドスクリーン117は、運転者の少なくとも下半身の脚部および上半身を含めたハンドル102まわりを車両進行方向の前方から覆うように配置構成される。
【0014】
レグシールドインナ113の下側にはレグシールドインナ113の前端部付近で左右両側から後方へかけて低床の左右足載せ部120が設けられ、運転者はこの足載せ部120に足を載せてシート110に着座することができる。左右足載せ部120の相互間にはレグシールドインナ113およびフロントフレームカバー121の一部により、上方に突出して前後に延在するフロアトンネル部が形成されると共に、左右足載せ部120の下側を覆うアンダーカバー119が連接され、エンジンユニットはこのフロアトンネル部内に配置される。
【0015】
フロントフレームカバー121は、レグシールドインナ113の後縁に連接し、シート110の下縁に向かって立ち上がる。フロントフレームカバー121の後側には左右のサイドフレームカバー122等が連接する。上述した各種車体カバー類は基本的には合成樹脂により成形され、車体フレームに直接にまたはブラケット等の支持部材を介して間接的に取付固定される。
【0016】
つぎに図3には、レグシールドインナ113まわりの構成例を示している。その概略構成として、下部では左右の足載せ部120の相互間から上方に突出した突状のトンネル部が形成され、上部では収納ボックス123(前部収納室)が車両進行方向後方のシート110側に開口する開口部123aを備えて前方に一体に突設される。収納ボックス123の上部には天井壁を形成するための左右一対のカバー124が結合し、収納ボックス123の開口部123aには収納ボックス用蓋部材125(収納リッド)がアーム126を介して開閉可能に閉合する(図4(a)をも参照のこと)。
【0017】
収納ボックス123の天井壁すなわち各カバー124の上面は平坦に形成され、略水平に配置される。そして、カバー124の上面には後述するように、車両側コントロールユニット10や収納リッド125等のロック解除用アクチュエータ21が取付固定されるようになっている。このように適度に柔軟性のある水平面に車両側コントロールユニット10やロック解除用アクチュエータ21を取り付けることにより、特に鉛直方向に作用する振動(路面振動等)が緩衝されるので、これら車両側コントロールユニット10やロック解除用アクチュエータ21の耐久性を向上させることができる。
【0018】
また、収納リッド125は収納リッドオープナ127の操作で開放することができる。この場合、後述するように収納リッドオープナ127による開放操作を無効にして収納リッド125の開放を規制する開放操作規制機構(ロック機構)を備え、これを解除することで収納リッドオープナ127の開放操作が有効になり収納リッド125の開放が可能になる。収納ボックス123を開けるとその奥所内にはバッテリ(図示せず)が装備されるが、その場合バッテリボックスリッド128の内側(車両前方側)に格納され、常態では露出しないようになっている。
【0019】
収納ボックス123下方のトンネル部の上面には燃料タンクの給油口にアクセスするための開口部129が開設され、この開口部129にはフューエル用蓋部材130(フューエルリッド)がアーム131を介して開閉可能に閉合する(図4(b)をも参照のこと)。フューエルリッド130の内側には図4(b)のように燃料タンクの給油口を栓止するキャップ132が設けられ、フューエルリッド130を開けてキャップ132を取り外しできるようになっている。
【0020】
フューエルリッド130はフューエルリッドオープナ133の操作で開放することができる。この場合、後述するようにフューエルリッドオープナ133による開放操作を無効にしてフューエルリッド130の開放を規制する開放操作規制機構(ロック機構)を備え、これを解除することでフューエルリッドオープナ133の操作が有効になりフューエルリッド130の開放が可能になる。
【0021】
このようにレグシールドにおいて収納ボックス123による収納機能や、リッド類の開閉機構等を備えている。また、ここで図1(b)を参照すると、シート110は前端部付近に設けた支点のまわりに回動可能に取り付けられており、シート110の下方には左右のサイドフレームカバー122に囲まれ、収納ボックス123よりも大容量の収納部が形成されている。シート110の回動によりその収納部を開閉するが、シート110の開放を許容するシートロック解除機構30を有している。
【0022】
つぎに、本実施形態のスクータ型車両100に装備された電子認証システムについて概略説明する。この電子認証システムでは、アクセススイッチ16を操作することで車両側コントロールユニット10から認証要求信号を送出し、その認証要求信号に応答して携帯型電子キー13からID情報を含む認証応答信号を出力する。そして、認証応答信号を車両側コントロールユニット10で受信して、ID情報が合致するかどうかを判断し、合致したと判断した場合には車両の操作を許容するようになっている。
【0023】
この電子認証システムにおいて、図5に示されるように車両側コントロールユニット10には電子認証用の認証要求信号を送信する送信アンテナ11および認証応答信号を受信する受信アンテナ12が接続される一方、電子キー13(図6参照)には認証要求信号を受信する受信アンテナ14および認証応答信号を送信する送信アンテナ15等を含む送受信機が内蔵されている。電子認証システムはアクセススイッチ16をON操作することで電子認証を開始する。送信アンテナ11から認証要求信号を送出し、その認証要求信号が電子キー13の受信アンテナ14で受信され、認証要求信号に応答して送信アンテナ15から認証応答信号が送信される。この認証応答信号は車両側の受信アンテナ12で受信され、車両側コントロールユニット10においてID情報が合致するかどうかを判断する。電子認証が得られた場合には、後述するイグニッションスイッチユニット18のイグニッションノブ19の操作が許容される。
【0024】
なお、電子キー13は図6に示されるように、操作ボタン(もしくはスイッチ)13aを有し、この操作ボタン13aを押すことで電子認証機能の起動と停止が可能になる。電子認証機能が停止している間は、車両側コントロールユニット10と通信可能な範囲内に電子キー13を置いた状態でアクセススイッチ16を操作しても、電子キー13が車両側コントロールユニット10からの認証要求信号を受信しないため電子認証が得られない。また、電子キー13には緊急解錠キー17が内装されており、この緊急解錠キー17はキーレバー13bの操作により取り外すことができる。
【0025】
ここで、図4(a)にも示されるように収納ボックス123の上方で車両右寄りの位置にイグニッションスイッチユニット18の操作子であるイグニッションノブ19(図7参照)がレッグシールドインナ113からシート110側へ適度に突出するように配置される。なお、イグニッションスイッチユニット18は、レッグシールドフロント112とレッグシールドインナ113およびメータパネル120で覆われた空間内に車両の略前後方向に沿って配設され、ステアリングヘッドパイプの右側近傍まで延出している。イグニッションノブ19は回動操作と押込み操作が可能に構成され、その押込みによりイグニッションスイッチユニット18のアクセススイッチ16のON操作を行い得るようになっている。
【0026】
さらに電子認証システムは、後述するイグニッションノブ19の回動を規制するロック機構22のロックを解除するソレノイド20と、収納リッド125およびフューエルリッド130の開放を規制するロック機構26,27のロックを解除するアクチュエータ21とを有する。これらソレノイド20およびアクチュエータ21は車両側コントロールユニット10によって作動制御される。
【0027】
イグニッションノブ19は図7に示されるように、回動操作により「LOCK」、「OFF」および「ON」位置を取り得るように構成されている。また、押回し操作(紙面直交方向)により「OFF」および「ON」の中間位置も取ることができる。
【0028】
次に、図8および図9を参照して、イグニッションノブ19のロック機構22はイグニッションスイッチユニット18のケーシング内に内蔵され、イグニッションノブ19を「LOCK」あるいは「ON」位置にロックする。ロック機構22は車両側コントロールユニット10からの電気信号によってソレノイド20(図5)を作動させることで、ロックおよびロック解除する。
【0029】
さらに、ロック機構22は緊急解錠キー17の操作によってもロック解除することができる。この実施形態において緊急解錠キー17によって操作可能な緊急解錠用のキーシリンダ23を有し、このキーシリンダ23は緊急解錠用のケーブル24を介してロック機構22と機械的に接続されている。
【0030】
また、イグニッションスイッチユニット18にはフロントフォーク101と結合するハンドル102の回動を規制するロック機構25を一体に備える。このロック機構25は、たとえばイグニッションノブ19の回動操作でステアリングヘッドパイプに支持されたフロントフォーク101のステアリング軸に対して進退するロックピンを有し、イグニッションノブ19を「LOCK」位置から「OFF」位置へ回動することでロック機構25のロックを解除することができる。
【0031】
収納リッド125のロック機構26は、イグニッションスイッチユニット18の左側近傍に配置される。ロック機構26はロック爪26aを有し、ロック爪26aは収納ボックス123の開口部123aに配設されて収納リッド125の裏側(車両前方側)に係合する。そして、ロック爪26aが収納リッド125に係合することで収納リッドオープナ127の開放操作を無効にする。また、図10にも示すようにロック機構26は、ケーブル28を介してアクチュエータ21に接続されている。アクチュエータ21はその駆動源としてモータを内蔵し、ケーブル28を緊張・弛緩させるように往復動(図10、両矢印および二点鎖線参照)するスライド駒21aを有する。スライド駒21aを介してケーブル28を引っ張ることで、ロック機構26のロック爪26aを進退させてロックおよびロック解除することができる。
【0032】
フューエルリッド130のロック機構27はロック爪27aを有し、ロック爪27aは開口部129に配設されてフューエルリッド130の裏側に係合する。そして、ロック爪27aがフューエルリッド130に係合することでフューエルリッドオープナ133の開放操作を無効にする。また、ロック機構27は、ケーブル29を介してアクチュエータ21に接続されている。アクチュエータ21は、スライド駒21aを介してケーブル29を引っ張ることで、ロック機構27のロック爪27aを進退させてロックおよびロック解除することができる。
【0033】
さらに本実施形態において、イグニッションノブ19の回動操作で収納リッド125およびシート110をロック解除し得るようになっている。図8および図10に示されるようにイグニッションスイッチユニット18にはさらに、そのロック解除のためのシートロック解除機構30が内蔵されている。このシートロック解除機構30にはシートロック解除用のケーブル31の一端が連結され、ケーブル31の他端は二又に分岐してシート110のロック機構32(図1(a)参照)と収納リッド125のロック機構26にそれぞれ機械的に接続されている。
【0034】
シートロック解除機構30は、イグニッションノブ19をその「OFF」位置から「ON」位置との中間位置(▼)まで押し回しすることで作動し、これにより収納リッド125およびシート110のロック機構26,32の双方のロックを解除することができる。また、電子認証が得られた場合、イグニッションノブ19を「OFF」位置から「ON」位置に回動し、エンジンスタータ33の操作によりエンジンを始動することができる。
【0035】
上述のように電子認証システムは、車両側コントロールユニット10と、イグニッションスイッチユニット18と、収納リッド125およびフューエルリッド130のロック機構26,27と、アクチュエータ21とを含んでいるが、これらの構成部材は図11に示すようにレグシールド(レグシールドインナ113)に取付固定されて、モジュール化されている。
【0036】
電子認証システムを車両に組立てるに際して、予めレグシールドインナ113に組み付けモジュール化しておくことにより、車両への組立て作業が格段に容易になり、組立て作業を大幅に効率化することができる。
【0037】
この場合に、エンジン制御ユニット137と、車両側コントロールユニット10と、送信アンテナ11と、受信アンテナ12とが一体化されている。具体的には、エンジン制御ユニット137上に車両側コントロールユニット10を載置し、さらにその上に受信アンテナ12を載置した状態で、樹脂製カバーにより覆っている。送信アンテナ11は、車両側コントロールユニット10の側部に配設する。このようにして送信アンテナ11および受信アンテナ12が一体化された車両側コントロールユニット10をサイドスタンドが配設される車両左側に配置する。実使用において車両ユーザはサイドスタンド使用状態において車両が傾斜している車両左側から乗車する場合が多く、ユーザが携帯する電子キー13と車両側コントロールユニット10の送受信アンテナがより接近して、送受信装置の小型化を図ることができる。
【0038】
また、イグニッションスイッチユニット18とアクチュエータ21がステアリングヘッドパイプの右側に配置されるとともに、イグニッションスイッチユニット18はステアリングヘッドパイプに取り付けられ、アクチュエータ21は収納ボックス123の天井壁の上面に取り付けられている。既述したように、イグニッションスイッチユニット18とアクチュエータ21とが、収納リッド125のロック機構26にそれぞれケーブル28、31を介して接続されている。このようにイグニッションスイッチユニット18、アクチュエータ21、ケーブル28、31を車両の片側(右側)に配置することにより、ケーブル等が作業の妨げとなりにくく、レッグシールドインナ113の組み付け性を損なうのを防ぐことができる。
【0039】
つぎに本実施形態においては、緊急解錠キー17で操作可能な緊急解錠用のキーシリンダ23は、工具なしで着脱可能な蓋部材(カバー136)で覆われる。すなわち、図12に示されるようにレグシールドインナ113の上部に配置されるメータパネル118にはスピードメータ134やタコメータ135が装着されると共に、その手前側(シート110側)にカバー136が被着する。キーシリンダ23は図示例のようにスピードメータ134側に配置され、蓋部材であるカバー136によって覆われているため露呈しない。
【0040】
図12(b)に示されるようにカバー136を取り外すことによってキーシリンダ23が露呈し、この状態で緊急解錠キー17による操作が可能になる。なお、カバー136はたとえばクリップ式にメータパネル118に対して容易に着脱可能に取り付けることができる。この場合、カバー136の長手方向(車両左右方向)に沿って略均等間隔で複数(たとえば4つ)のボスを設け、各ボスの先端にクリップが一体成形される。
【0041】
図8を参照して正規の電子認証操作およびその作用を説明する。電子キー13を携帯するユーザがイグニッションノブ19を押すことでアクセススイッチ16がONし、これにより電子認証を開始する。車両側コントロールユニット10の送信アンテナ11から認証要求信号を送出し、その認証要求信号が電子キー13の受信アンテナ14で受信され、認証要求信号に応答して送信アンテナ15から認証応答信号が送信される。受信アンテナ12で受信された認証応答信号に対して、車両側コントロールユニット10においてID情報が合致するかどうかを判断し、電子認証が得られれば車両側コントロールユニット10からイグニッションノブ19のロック機構22に電気信号が出力され、ロック機構22のロックが解除されてイグニッションノブ19の回動操作が許容される。
【0042】
同様に電子認証が得られると、並行して車両側コントロールユニット10からアクチュエータ21に電気信号が出力され、ケーブル28,29を介して収納リッド125およびフューエルリッド130のロック機構26、27のロックがそれぞれ解除される。これにより収納リッド125およびフューエルリッド130はそれぞれ、収納リッドオープナ127およびフューエルリッドオープナ133の操作で開放することができる。
【0043】
ロック解除されたイグニッションノブ19を「LOCK」位置から「OFF」位置へ押し回しすることにより、ハンドル102のロック機構25によるハンドルロックが解除される。ハンドルロック解除後、イグニッションノブ19を「OFF」位置からさらに「ON」位置に回動することで、エンジンスタータ33の操作によりエンジンを始動することができる。
【0044】
さらに、必要に応じてシート110のロック機構32(および収納リッド125のロック機構26)のロックを解除することができる。この場合、イグニッションノブ19をその「OFF」位置から中間位置(▼)まで押回しすることで、ケーブル31を介してロック機構32のロックが解除される。なお、収納リッド125のロック機構26については既にロック解除されており、ケーブル31による操作は空振りになる。
【0045】
つぎに緊急解錠時の操作およびその作用について説明する。この場合、通常は図12(a)のようにスピードメータ134の手前側を覆っているカバー136を取り外すことによって、図12(b)に示されるようにキーシリンダ23が露呈する。なお、カバー136の取外しは簡単に行うことができる。この状態で緊急解錠キー17による操作が可能になり、すなわち先ず、緊急解錠キー17の操作によりケーブル24を介して、車両側コントロールユニット10とは別経路でイグニッションノブ19のロック機構22がロック解除される。
【0046】
イグニッションノブ19のロック機構22がロック解除されるため、イグニッションノブ19の回動操作が可能になり、イグニッションノブ19を「LOCK」位置から「OFF」位置へ回動することにより、ハンドル102のロック機構25によるハンドルロックが解除される。さらにイグニッションノブ19をその「OFF」位置から中間位置(▼)まで押回しすることで、ケーブル31を介してシート110および収納リッド125のロック機構32、26のロックが解除される。これによりシート110および収納リッド125を開けることができる。
【0047】
このように緊急解錠システムにおいては、車両側に緊急解錠用のキーシリンダ23を備え、緊急解錠用キーシリンダ23の操作をケーブル24で伝達して、イグニッションノブ19のロック機構22をロック解除する。これによりイグニッションノブ19の回動操作が許容され、ハンドルロックおよびシートロックを解除することが可能となる。
【0048】
シートロック解除操作ではイグニッションノブ19の回動操作をシートロック解除用のケーブル31で伝達してシート110のロック機構32をロック解除する構成となっている。シートロック解除用のケーブル31は、一端がイグニッションスイッチユニット18のシートロック解除機構30に連結される一方、他端が二又に分岐してシート110および収納リッド125のロック機構32,26にそれぞれ機械的に接続されている。
【0049】
一方、緊急解錠用のキーシリンダ23の操作でシートロック解除操作を行った場合は、それ以前に電子認証が得られていないためアクチュエータ21は駆動されず、そのため収納リッド125のロック機構26はシートロック解除用のケーブル31が引かれることで初めてロック解除され、収納リッドオープナ127の開放操作が許容された状態になる。
【0050】
すなわち、正規の電子認証による場合には電子認証完了と同時に収納リッド125とフューエルリッド130との開放が許容され、さらにその後のイグニッションノブ19の操作でハンドルロック解除とシートロック解除とが順次行われる。これに対して緊急解錠キー17による場合は、イグニッションノブ19の回動操作が許容された後でハンドルロック解除を行い、その後シートロック解除操作を行うことによりシートロックを解除し、これと同時に収納リッドオープナ127の開放操作による収納リッド125の開放が許容される。
【0051】
また、緊急解錠用のキーシリンダ23はOFF方向へ常時付勢する自動復帰機構が与えられている。それは、自動復帰機構がないと、走行中の振動等によりイグニッションノブ19のロック機構22がロック解除位置で保たれる可能性があり、その後所有者が車両から離れてシステムが停止した後でもイグニッションノブ19の回動操作が許容されてしまうおそれがあるからである。緊急解錠キー17によるシートロック解除操作では、イグニッションノブ19と収納リッドオープナ127とを同時に両手で操作する必要があるため、緊急解錠用のキーシリンダ23をON操作位置に保持する保持機構を設けることで、緊急開錠用のキーシリンダ23から手を放した状態でそれらを操作可能にする。
【0052】
さらに、緊急解錠用のキーシリンダ23をカバー136で覆って外部に露出しないようにしたことで、キーシリンダ23の位置を第三者に発見され難くする。カバー136はメータの手前側に位置して車幅方向を長手方向とし、カバー136の奥にある空間内には緊急解錠用のキーシリンダ23の他に、フューズボックスも配設されている。カバー136はクリップ式で車体カバーに容易に着脱可能である。
【0053】
また、緊急解錠キー17によりイグニッションノブ19の回動操作を許容するので、当然ハンドル102のロック機構25も解除することができる。この場合電子認証は行われないためイグニッションノブ19をイグニッション「ON」位置へ移動してエンジン始動スイッチをON操作してもエンジン始動することができない。したがって、正規の電子キーを持たない者による盗難を防止することができ、また、緊急解錠キー17ではフューエルリッド130を開放操作することが許容されないため、燃料の盗難も防止することができる。
【0054】
これに対して収納リッド125で閉合された収納ボックス123およびシート110下の物品収納室へのアクセスに関しては、緊急解錠キー17の操作で可能になるため、バッテリを交換して電子認証システムを復旧させることができるばかりか、バッテリの取出し作業を行うのに先立って貴重品等を確保することができる。特に、収納リッド125で閉合された収納ボックス123には財布や携帯電話等の小物類を収納することが多く、バッテリ交換をできない運転者であっても、携帯電話で修理業者を呼び、あるいは財布等の貴重品を持ち帰ることができる。
【0055】
以上、本発明を実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば電子キー13による電子認証に替えて個人を識別可能な身体情報による生体認証を用いたシステムでも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の例を示す平面図および側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動二輪車の車体カバーの構成例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態におけるレグシールドまわりの構成例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態における収納ボックスおよびフューエルリッドまわりを示すそれぞれ斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における電子認証システムの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子キーの構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るイグニッションノブの構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態にシステム構成例を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態におけるシステムのハード構成例を説明する図である。
【図10】本発明の実施形態に係るアクチュエータの構成例を説明する図である。
【図11】本発明の実施形態に係るモジュール化したレグシールドまわりを示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態における緊急解錠用のキーシリンダの配置例を示すそれぞれ平面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 車両側コントロールユニット
11 送信アンテナ
12 受信アンテナ
13 電子キー
14 受信アンテナ
15 送信アンテナ
16 アクセススイッチ
17 緊急解錠キー
18 イグニッションスイッチユニット
19 イグニッションノブ
20 ソレノイド
21 アクチュエータ
22,25,26,27,32 ロック機構
23 キーシリンダ
24,28,29,31 ケーブル
30 シートロック解除機構
100 スクータ型車両
101 フロントフォーク
102 ハンドル
104 前輪
107 スイングアーム
108 後輪
110 シート
112 レグシールドフロント
113 レグシールドインナ
114 レグシールドロア
116 フロントレグシールドカバー
117 ウィンドスクリーン
118 メータパネル
120 足載せ部
121 フロントフレームカバー
123 収納ボックス
124 カバー
125 収納リッド
127 収納リッドオープナ
129 開口部
130 フューエルリッド
133 フューエルリッドオープナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所有者を特定するID情報が車両側のID情報に合致するかどうかを判断する車両側コントロールユニットと、
前記車両の所有者を特定するID情報が前記車両側のID情報に合致したことに応じて、少なくともエンジンの始動操作およびハンドルロック解除操作を可能にするイグニッションスイッチユニットと、
レグシールドに設けられた収納ボックスを開閉する収納ボックス用蓋部材のロックを解除するロック解除用アクチュエータとを備えた自動二輪車であって、
前記車両側コントロールユニットおよび前記ロック解除用アクチュエータが前記レグシールドにそれぞれ取付固定されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記車両の所有者を特定するID情報は電子キーに格納された電子信号であることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記車両の所有者を特定するID情報は個人を識別する身体情報であることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記車両側コントロールユニットには、前記電子キーとの通信を行うための受信アンテナおよび送信アンテナがモジュール化されていることを特徴とする請求項2に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記送信アンテナおよび受信アンテナがモジュール化された車両側コントロールユニットが、サイドスタンド側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記収納ボックスの天井面の上面が平坦に形成され、略水平配置されており、前記車両側コントロールユニットおよび前記ロック解除用アクチュエータが、前記収納ボックスの天井面の上面に取付固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記レグシールドは、運転者用シート側に向くレグシールドインナと、車両前方に向くレグシールドフロントとを含み、前記収納ボックスが前記レグシールドインナに開口することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記イグニッションスイッチユニットと前記ロック解除用アクチュエータとが、前記収納ボックス用蓋部材をロックするためのロック機構にそれぞれケーブルを介して接続されており、
前記イグニッションスイッチユニットがステアリングヘッドパイプの右側に配置されるとともに、前記ロック解除用アクチュエータが前記収納ボックスの天井面の上面のうち右側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の自動二輪車。
【請求項9】
前記レグシールドには燃料タンクの給油口にアクセスするための開口部が開設されており、前記ロック解除用アクチュエータは、前記開口部を開閉するフューエル用蓋部材のロックを解除するアクチュエータも兼ねることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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