説明

自動二輪車

【課題】ヘッドパイプの前方に比較的大きな空間を確保し難い車両においても、配管が転舵の影響を受け難くい位置にABSモジュールを配置することができる自動二輪車を提供する。
【解決手段】自動二輪車10は、ヘッドパイプ12に転舵可能に支持されるステアリング部材21aと、ステアリング部材21aに取り付けられ、乗員が転舵時に操作するバー状のハンドル22と、車輪WF,WRに制動力を与える液圧式ブレーキ45,46と、液圧式ブレーキ45,46に作用する液圧を減圧するABSモジュール70と、を備え、ハンドル22の中間部に下方に向けて屈曲する凹部22aが形成されており、ABSモジュール70は、車両側面視において、ステアリング部材21aの上方且つハンドル22と重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、ハンドル22の凹部22aに収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車として、液圧ブレーキに作用する液圧を減圧するABS(Anti−lock Brake System)のABSモジュールを搭載したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の自動二輪車では、ABSモジュールを、フロントカウル内であって、ヘッドパイプの前方に配置することによって、ABSモジュールが雨等の影響を受けないような配慮がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−216547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の自動二輪車では、ヘッドパイプの近傍にABSモジュールを配置することにより、配管が転舵の影響を受け難くすることができるが、ヘッドパイプの前方には、灯火器などの部材が配置されるため、ヘッドパイプの前方に大きな空間を確保し難い車両においては、ABSモジュールを配置することが難しかった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヘッドパイプの前方に比較的大きな空間を確保し難い車両においても、配管が転舵の影響を受け難くい位置にABSモジュールを配置することができる自動二輪車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ヘッドパイプに転舵可能に支持されるステアリング部材と、ステアリング部材に取り付けられ、乗員が転舵時に操作するバー状のハンドルと、車輪に制動力を与える液圧式ブレーキと、液圧式ブレーキに作用する液圧を減圧するABSモジュールと、を備え、ハンドルの中間部に下方に向けて屈曲する凹部が形成される自動二輪車において、ABSモジュールは、車両側面視において、ステアリング部材の上方且つハンドルと重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、ハンドルの凹部に収容されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、ハンドルの中間部は、ハンドルカバーで覆われ、ハンドルカバーには、ヘッドライト及びメーターが取り付けられ、ABSモジュールは、ハンドルカバー内であって、ヘッドライトの後方且つメーターの下方に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の構成に加えて、ABSモジュールのモータ軸線を車両前後方向に指向させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成に加えて、液圧式ブレーキは、ハンドルの両端部に取り付けられるブレーキレバーの操作により油圧を発生するマスターシリンダと、マスターシリンダとABSモジュールを接続する入力配管と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成に加えて、前輪を支持するフロントフォークに取り付けられるフロントブレーキキャリパと、フロントブレーキキャリパとABSモジュールを接続する出力配管と、を備え、出力配管は、ボトムブリッジに支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ABSモジュールが、車両側面視において、ステアリング部材の上方且つハンドルと重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、ハンドルの凹部に収容されるため、ヘッドパイプの前方に比較的大きな空間を確保し難い車両においても、配管が転舵の影響を受け難くい位置にABSモジュールを配置することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、ABSモジュールは、ハンドルカバー内であって、ヘッドライトの後方且つメーターの下方に配置されるため、ハンドルカバー内の空間を有効に利用することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、ABSモジュールのモータ軸線を車両前後方向に指向させるため、ハンドルの凹部が小さくても、ABSモジュールを配置することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、液圧式ブレーキは、ハンドルの両端部に取り付けられるブレーキレバーの操作により油圧を発生するマスターシリンダと、マスターシリンダとABSモジュールを接続する入力配管と、を備えるため、ABSモジュールまでの入力配管を短くすることができる。また、左右のマスターシリンダの中間位置にABSモジュールが配置されるので、入力配管の一方のみが長くならない。
【0016】
請求項5の発明によれば、前輪を支持するフロントフォークに取り付けられるフロントブレーキキャリパと、フロントブレーキキャリパとABSモジュールを接続する出力配管と、を備え、出力配管がボトムブリッジに支持されているため、配管(ホース)もステアリング部材と回動するので、ねじれ等の力が配管に及ぶのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る自動二輪車の一実施形態を説明する左側面図である。
【図2】図1に示すハンドルの周辺の拡大左側面図である。
【図3】図4のIII−III線断面図である。
【図4】図2に示すハンドルの周辺の拡大上面図である。
【図5】図1に示すハンドルの周辺を矢印V方向から見た図である。
【図6】ブレーキ系配管の配索を説明する拡大左側面図である。
【図7】本発明に係る自動二輪車のABSシステムを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る自動二輪車の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0019】
本実施形態の自動二輪車10は、図1に示すように、車体フレーム11を、前端に設けられるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から下後方に延びるメインフレーム13と、メインフレーム13の後端部に連結され下方に延びる左右一対のピボットプレート14と、メインフレーム13の中間部に連結され上後方に延びる左右一対のシートフレーム15と、メインフレーム13の後端部に連結され上後方に延び、その後端部がシートフレーム15に連結される左右一対のサブフレーム16と、から構成し、メインフレーム13及びピボットプレート14にエンジン50が取り付けられている。
【0020】
また、自動二輪車10は、ヘッドパイプ12に転舵可能に支持されるステアリング部材21aと、ステアリング部材21aの下端に設けられるボトムブリッジ21bと、上端がボトムブリッジ21bに支持されるフロントフォーク21cと、フロントフォーク21cの下端部に回転可能に支持される前輪WFと、ステアリング部材21aの上端部に取り付けられ、乗員が転舵時に操作するバー状のハンドル22と、左右一対のピボットプレート14に揺動可能に支持されるスイングアーム23と、スイングアーム23の後端部に回転可能に支持される後輪WRと、シートフレーム15にスイングアーム23を懸架する緩衝器24と、左右一対のシートフレーム15間に前方から順に配置される収納ボックス25及び燃料タンク26と、収納ボックス25の前端部に開閉可能に取り付けられ、左右一対のシートフレーム15に支持されるシート27と、を備える。また、ハンドル22の中間部には、下方に向けて屈曲する凹部22aが形成されている。
【0021】
なお、図1中の符号31はヘッドライト、32はハンドルカバー、33はフロントカバー、34はフロントサイドカバー、35はレッグシールド、36はアンダーサイドカバー、37はリヤサイドカバー、39はサイドミラー、40はフロントフェンダ、41はフロントウィンカ、42はグラブレール、43はテールライト、44はリヤフェンダである。
【0022】
エンジン50は、空冷式の単気筒エンジンであって、図1に示すように、クランクケース51と、クランクケース51の前端部に取り付けられるシリンダブロック52と、シリンダブロック52の前端部に取り付けられるシリンダヘッド53と、シリンダヘッド53の前端部に取り付けられるシリンダヘッドカバー54と、クランクケース51の左側面に取り付けられる発電機カバー55と、クランクケース51の右側面に取り付けられる不図示のクラッチカバーと、を備える。また、エンジン50は、メインフレーム13の下方に配置されている。
【0023】
また、図1に示すように、シリンダヘッド53の上面には、吸気管61を介してスロットルボディ62が接続され、このスロットルボディ62の上流端には、接続管63を介してエアクリーナ64が接続される。また、シリンダヘッド53の下面には、排気管65を介してマフラー66が接続される。
【0024】
また、自動二輪車10は、前輪WFに制動力を与えるフロントブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)45と、後輪WRに制動力を与えるリヤブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)46と、ハンドル22の右端部に取り付けられ、フロントブレーキキャリパ45を操作する右側ブレーキレバー22R(図4参照)と、ハンドル22の左端部に取り付けられ、リヤブレーキキャリパ46を操作する左側ブレーキレバー22L(図4参照)と、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46に作用する油圧(液圧)を減圧するABSモジュール70と、を備える。また、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46は、車幅方向右側に配置されている。なお、本実施形態の自動二輪車10のABSシステム図を図7に示す。また、フロントブレーキキャリパ45は、フロントフォーク21cに取り付けられている。
【0025】
また、図2〜図7に示すように、ABSモジュール70の前面左側の後輪側入力部76aには、左側ブレーキレバー22Lのマスターシリンダ22Laからの油圧を入力する後輪側入力配管71が接続され、ABSモジュール70の上面左側の後輪側出力部76bには、リヤブレーキキャリパ46に油圧を出力する後輪側出力配管72が接続されている。また、ABSモジュール70の前面右側の前輪側入力部75aには、右側ブレーキレバー22Rのマスターシリンダ22Raからの油圧を入力する前輪側入力配管73が接続され、ABSモジュール70の上面右側の前輪側出力部75bには、フロントブレーキキャリパ45に油圧を出力する前輪側出力配管74が接続されている。さらに、配管72,74には、1つの継手部材77が設けられている。なお、マスターシリンダ22La,22Raは、左側及び右側ブレーキレバー22L,22Rの操作により油圧を発生する。
【0026】
後輪側出力配管72は、後輪側出力部76bと継手部材77との間を接続する金属製の第1後輪側出力配管72aと、継手部材77とリヤブレーキキャリパ46との間を接続する可撓性を有する第2後輪側出力配管72bと、備える。また、前輪側出力配管74は、前輪側出力部75bと継手部材77との間を接続する金属製の第1前輪側出力配管74aと、継手部材77とフロントブレーキキャリパ45との間を接続する可撓性を有する第2前輪側出力配管74bと、備える。また、図6に示すように、第2後輪側出力配管72bは、クリップ78aによりヘッドパイプ12に固定されている。また、第2前輪側出力配管74bは、ボトムブリッジ21bとフロントフォーク21cにそれぞれ設けられるクリップ79a,79bにより支持されている。
【0027】
そして、本実施形態では、図2〜図5に示すように、ABSモジュール70は、車両側面視において、ステアリング部材21aの上端部の上方且つハンドル22と重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、ハンドル22の中間部の凹部22aに収容されている。また、ABSモジュール70のモータ軸線70aは、車両前後方向に指向している。なお、図2中の符号L1は、ステアリング軸線であり、図4中の符号L2は、車体中心線であり、図5中の符号L3は、車体幅方向中心線である。
【0028】
また、ハンドル22の中間部は、ハンドルカバー32で覆われており、このハンドルカバー32には、ヘッドライト31及びメーター49が取り付けられている。そして、ABSモジュール70は、ハンドルカバー32内であって、ヘッドライト31の後方且つメーター49の下方に配置されている。
【0029】
また、ABSモジュール70は、図5に示すように、ハンドル22の中間部に取り付けられる支持ステイ80により支持されている。
【0030】
支持ステイ80は、ハンドル22の車幅方向中心より左側部分に固定され、上方に延びる左側支持板81と、ハンドル22の車幅方向中心より右側部分に固定され、上方に延びると共に左方に延びて左側支持板81に接合される右側支持板82と、を有する。
【0031】
そして、図3〜図5に示すように、ABSモジュール70は、支持ステイ80の左側支持板81及び右側支持板82に、2本のボルト91,92により取り付けられる。また、継手部材77は、支持ステイ80の左側支持板81に、ボルト91によりABSモジュール70と共に取り付けられる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70が、車両側面視において、ステアリング部材21aの上方且つハンドル22と重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、ハンドル22の凹部22aに収容されるため、ヘッドパイプ12の前方に比較的大きな空間を確保し難い車両においても、配管71〜74が転舵の影響を受け難くい位置にABSモジュール70を配置することができる。
【0033】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70は、ハンドルカバー32内であって、ヘッドライト31の後方且つメーター49の下方に配置されるため、ハンドルカバー32内の空間を有効に利用することができる。
【0034】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、ABSモジュール70のモータ軸線70aを車両前後方向に指向させるため、ハンドル22の凹部22aが小さくても、ABSモジュール70を配置することができる。
【0035】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、フロントブレーキキャリパ45及びリヤブレーキキャリパ46は、ハンドル22の両端部に取り付けられるブレーキレバー22R,22Lの操作により油圧を発生するマスターシリンダ22Ra,22Laと、マスターシリンダ22Ra,22LaとABSモジュール70を接続する前輪側及び後輪側入力配管73,71と、を備えるため、ABSモジュール70までの前輪側及び後輪側入力配管73,71を短くすることができる。また、左右のマスターシリンダ22La,22Raの中間位置にABSモジュール70が配置されるので、前輪側及び後輪側入力配管73,71の一方のみが長くならない。
【0036】
また、本実施形態の自動二輪車10によれば、フロントフォーク21cに取り付けられるフロントブレーキキャリパ45と、フロントブレーキキャリパ45とABSモジュール70を接続する前輪側出力配管74と、を備え、前輪側出力配管74がボトムブリッジ21bに支持されているため、前輪側出力配管74もステアリング部材21aと回動するので、ねじれ等の力が前輪側出力配管74に及ぶのを抑制することができる。
【0037】
なお、本発明は上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 自動二輪車
12 ヘッドパイプ
21a ステアリング部材
21b ボトムブリッジ
21c フロントフォーク
22 ハンドル
22a 凹部
22R 右側ブレーキレバー
22Ra マスターシリンダ
22L 左側ブレーキレバー
22La マスターシリンダ
31 ヘッドライト
32 ハンドルカバー
45 フロントブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)
46 リヤブレーキキャリパ(液圧式ブレーキ)
49 メーター
70 ABSモジュール
70a モータ軸線
71 後輪側入力配管
72 後輪側出力配管
73 前輪側入力配管
74 前輪側出力配管
WF 前輪
WR 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(12)に転舵可能に支持されるステアリング部材(21a)と、
前記ステアリング部材に取り付けられ、乗員が転舵時に操作するバー状のハンドル(22)と、
車輪(WF,WR)に制動力を与える液圧式ブレーキ(45,46)と、
前記液圧式ブレーキに作用する液圧を減圧するABSモジュール(70)と、を備え、
前記ハンドルの中間部に下方に向けて屈曲する凹部(22a)が形成される自動二輪車において、
前記ABSモジュールは、車両側面視において、前記ステアリング部材の上方且つ前記ハンドルと重なる位置に配置されると共に、車両正面視において、前記ハンドルの前記凹部に収容されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記ハンドル(22)の中間部は、ハンドルカバー(32)で覆われ、
前記ハンドルカバーには、ヘッドライト(31)及びメーター(49)が取り付けられ、
前記ABSモジュール(70)は、前記ハンドルカバー内であって、前記ヘッドライトの後方且つ前記メーターの下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ABSモジュール(70)のモータ軸線(70a)を車両前後方向に指向させることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記液圧式ブレーキ(45,46)は、前記ハンドル(22)の両端部に取り付けられるブレーキレバー(22R,22L)の操作により油圧を発生するマスターシリンダ(22Ra,22La)と、前記マスターシリンダと前記ABSモジュール(70)を接続する入力配管(73,71)と、を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前輪(WF)を支持するフロントフォーク(21c)に取り付けられるフロントブレーキキャリパ(45)と、前記フロントブレーキキャリパと前記ABSモジュール(70)を接続する出力配管(74)と、を備え、
前記出力配管は、ボトムブリッジ(21b)に支持されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103693(P2013−103693A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250934(P2011−250934)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】