説明

自動二輪車

【課題】ハンドルの転舵によるブレーキホースが受ける影響を小さくする技術を提供することを課題とする。
【解決手段】ヘッドパイプ11の近傍に、フロント上流継手部材66及びフロント下流継手部材67が配置される。このようなフロント上流継手部材66及びフロント下流継手部材67にブレーキホースとしての第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの一端が接続される。第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの一端がヘッドパイプ11の近傍に配置されるため、旋回半径が小さくなる。
【効果】転舵によりブレーキホースが受ける影響が小さくなる。すなわち、ヘッドパイプの近傍にフロント上流継手部材を配置したので、ハンドルの転舵に関わらずフロントマスターシリンダからフロント上流継手部材までの距離があまり変わらないようにでき、フロント上流配管としてのブレーキホースを短くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABSモジュールを備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキの制動力を制御するABS(antilock braking system)モジュールを搭載した自動二輪車が知られている(例えば、特許文献1(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1の図1に示されるように、自動二輪車の車体(1)(括弧付き数字は特許文献1に記載されている符号を示す。以下同じ。)前部のヘッドパイプ(2a)に、ブラケット(14)を介してABSモジュール(13)が設けられている。
【0004】
ハンドル(10)に設けられた第1ブレーキ操作子(12)が操作されると、第1マスターシリンダ(M)の油圧情報が配管としてのブレーキホース(17)を介してABSモジュール(13)に入力される。入力される油圧情報に基づいてABSモジュール(13)はブレーキホース(18)を介してフロントブレーキ(Bf)を制御する。
【0005】
同様に、ハンドル(10)に設けられた第2ブレーキ操作子(12)が操作されると、第2マスターシリンダ(M)の油圧情報がブレーキホース(17)を介してABSモジュール(13)に入力され、ABSモジュール(13)は剛性導管(21)を介してフロントブレーキ(Bf)又はリアブレーキ(Br)を制御する。
【0006】
ABSモジュール(13)はヘッドパイプ(2a)の近傍で且つ前方に配置されている。ヘッドパイプ(2a)前近傍にABSモジュール(13)を配置することにより、ブレーキホース(17、17、18)が長くなることを、ある程度は抑制することができる。
【0007】
しかし、ABSモジュール(13)の配管接続口は、ヘッドパイプ(2a)からどうしてもある程度離れる。
ヘッドパイプ(2a)を中心にハンドル(10)を転舵させると、ブレーキホース(17、17)はハンドル(10)と共に変位する。ブレーキホース(17、17)の一端がヘッドパイプ(2a)から離れている程、ブレーキホース(17、17)での撓み量が大きくなり、この撓みを吸収させるためにブレーキホース(17、17)を長くする必要がある。
【0008】
すなわち、配管が転舵の影響を強く受けるため、転舵時に配管が車体に当たり難いように設計する必要があり、設計が複雑化する傾向にある。
対策として、転舵の影響を小さくすることができる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−216547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ハンドルの転舵による配管が受ける影響を小さくする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、車体の前部に設けられるヘッドパイプと、前輪を制動するフロントブレーキと、前記フロントブレーキに制動圧を与えるフロントマスターシリンダと、このフロントマスターシリンダと前記フロントブレーキとの間に設けられ液圧を伝達するフロント配管と、このフロント配管の途中に設けられ前記フロントブレーキの制動圧を減圧することができるABSモジュールと、を備える自動二輪車において、前記フロント配管は、前記フロントマスターシリンダと前記ABSモジュールを接続するフロント上流配管と、前記ABSモジュールと前記フロントブレーキを接続するフロント下流配管と、を備え、前記ABSモジュールは、前記ヘッドパイプの前方且つ車体幅方向中心に対して一方にオフセットした位置に取り付けられ、前記フロント上流配管の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、車両側面視で前記ABSモジュールと前記ヘッドパイプの間に配置されるフロント上流継手部材と、前記フロント下流配管の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、車両側面視で前記ABSモジュールと前記ヘッドパイプの間に配置されるフロント下流継手部材と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、後輪を制動するリアブレーキと、リアブレーキに制動圧を与えるリアマスターシリンダと、このリアマスターシリンダとリアブレーキとの間に設けられ液圧を伝達するリア配管と、を備え、ABSモジュールは、このリア配管の途中に設けられるとともにリアブレーキの制動圧を減圧することができ、リア配管は、リアマスターシリンダとABSモジュールを接続するリア上流配管と、ABSモジュールとリアブレーキを接続するリア下流配管とを有し、リア上流配管の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、ヘッドパイプの近傍に配置されるリア上流継手部材と、を有することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、ABSモジュールのモータ軸線は車両前後方向に指向しており、フロント上流継手部材、フロント下流継手部材及びリア上流継手部材は、ABSモジュールの上下幅内に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、車体幅方向中心に対して一方側であってヘッドパイプの車幅方向側方にパワーユニットを制御する電子制御ユニットが配置され、ABSモジュールのハーネス接続口も車体幅方向中心に対して一方側に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明では、電子制御ユニットは、車両正面視でABSモジュールの幅内に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、車両側面視でABSモジュールとヘッドパイプの間に配置されるフロント上流継手部材及びフロント下流継手部材を有することにより、ヘッドパイプの近傍に、フロント上流継手部材及びフロント下流継手部材が配置されることになる。このようなヘッドパイプ近傍に配置されるフロント上流継手部材及びフロント下流継手部材にブレーキホースの一端が接続されるため、転舵中心の近くにブレーキホースの一端が支持されることになる。支持端が転舵中心に近いほど、転舵によりブレーキホースが受ける影響が小さくなる。すなわち、ヘッドパイプの近傍にフロント上流継手部材を配置したので、ハンドルの転舵に関わらずフロントマスターシリンダからフロント上流継手部材までの距離があまり変わらないようにでき、転舵により発生するブレーキホースの撓みを小さくでき、他部品への干渉を抑えることができ、設計工数を削減できる。
【0017】
さらに加えて、ヘッドパイプの近傍にフロント下流継手部材を配置したので、ハンドルの転舵に関わらずフロント下流継手部材からフロントブレーキまでの距離があまり変わらないので、転舵により発生するブレーキホースの撓みを小さくでき、他部品への干渉を抑えることができ、設計工数を削減できる。
【0018】
請求項2に係る発明では、ヘッドパイプの近傍に、リア上流継手部材が配置されるので、ハンドルの転舵によるリア上流配管としてのブレーキホースが受ける影響を小さくすることができる。
加えて、車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に、フロント上流継手部材、フロント下流継手部材及びリア上流継手部材が集中して配置されるので、メンテナンス等の作業性が向上する。
【0019】
請求項3に係る発明では、ABSモジュールのモータ軸線は車両前後方向に指向しており、フロント上流継手部材、フロント下流継手部材及びリア上流継手部材はABSモジュールの上下幅内に配置されるので、フロント上流継手部材及びリア上流継手部材からABSモジュールまでの配管長、ABSモジュールからフロント下流継手部材までの配管長を短くでき、配管のコスト及び重量を低減させることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、車体幅方向中心に対して一方側であってヘッドパイプの車幅方向側方にパワーユニットを制御する電子制御ユニットが配置され、ABSモジュールのハーネス接続口も車体幅方向中心に対して一方側に配置される。
電子制御ユニット及びハーネス接続口を車体幅方向中心に対して一方側にまとめて配置したので、ハーネスの取付作業が容易である。
【0021】
請求項5に係る発明では、電子制御ユニットは、車両正面視でABSモジュールの幅内に配置される。
ABSモジュールの車両後方側の空間に電子制御ユニットを配置したので、空間を有効に活用し、車体前部のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車のブレーキ装置の回路図である。
【図3】ブレーキ装置の作用図である。
【図4】本発明に係る自動二輪車の要部斜視図である。
【図5】本発明に係る自動二輪車の要部平面図である。
【図6】本発明に係る自動二輪車の要部側面図である。
【図7】図6の7線断面図である
【図8】図6の8矢視図である。
【図9】本発明に係る自動二輪車の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、図中の矢印(FRONT)は車両前方を表している。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、スクータタイプのものであり、車体14の前部に設けられるヘッドパイプ11から下方に延びる側面視U字形状のメインフレーム12と、このメインフレーム12の後部から車両後方に延びるシートレール13とを有する。
【0025】
また、自動二輪車10は、ヘッドパイプ11に軸支されるボトムブリッジ18と、このボトムブリッジ18に設けられ下部に前輪15を備える操舵系としてのフロントフォーク16と、このフロントフォーク16の上部に設けられ前輪15を操舵するハンドル17と、メインフレーム12の後部に上下揺動可能に設けられ後部に後輪21を備えるパワーユニット22と、このパワーユニット22とシートレール13との間に設けられ地面からの衝撃を吸収するリアクッション23と、シートレール13の上部に設けられ乗員が着座するシート24とを有する。シート24の下方に燃料タンク25及び収納ボックス26が設けられる。
【0026】
ハンドル17はハンドル17と一体的に回転するハンドルカバー31で覆われ、ヘッドパイプ11の車両前方側はフロントカバー32で覆われ、メインフレーム12の上部はレッグシールド33で覆われ、メインフレーム12の下部はステップフロア34及びアンダーカバー35で覆われ、シートレール13はサイドカバー36及びリアカバー37で覆われる。
【0027】
前輪15の上方にフロントフェンダ41が設けられ、後輪21の上方にリアフェンダ42が設けられ、フロントカバー32に方向指示灯43が設けられ、ハンドルカバー31の前部に前照灯44が設けられ、パワーユニット22の上部にエアクリーナ45が設けられる。
【0028】
また、自動二輪車10は、フロントフォーク16に設けられたフロントキャリパ51aにより前輪15に設けられたフロントディスク51bを制動する油圧式のフロントブレーキ51と、パワーユニット22の後部に設けられ後輪21を制動するリアブレーキ52と、フロントカバー32内に且つヘッドパイプ11の前方に配置され、フロントブレーキ51操作時に前輪15の制動力を制御するとともにリアブレーキ52操作時に後輪21及び前輪15の制動力を制御するABSモジュール53とを有する。ABSモジュール53は左右の方向指示灯43の間を利用して配置される。
【0029】
次にブレーキ装置の回路について説明する。
図2に示すように、ブレーキ装置50は、前輪15のみを制動するフロントブレーキ系60と、前輪15及び後輪21の両輪を制動するリアブレーキ系70とからなる。
【0030】
フロントブレーキ系60は、右のハンドル17に設けられフロントブレーキ51を操作する第1操作子61と、この第1操作子61に設けられ油圧を発生するフロントマスターシリンダ62と、このフロントマスターシリンダ62とフロントブレーキ51との間に設けられ油圧を伝達するフロント配管63と、このフロント配管63の途中に設けられフロントブレーキ51を制御するABSモジュール53とを有する。
【0031】
フロント配管63は、フロントマスターシリンダ62とABSモジュール53とを接続するフロント上流配管64と、ABSモジュール53とフロントブレーキ51とを接続するフロント下流配管65とを備える。
【0032】
さらに、フロント上流配管64の途中にフロント上流継手部材66が設けられる。フロント上流配管64は、フロントマスターシリンダ62からフロント上流継手部材66まで延ばされる可撓性の第1フロント上流配管64aと、フロント上流継手部材66からABSモジュール53に延ばされる金属性の第2フロント上流配管64bとからなる。
【0033】
フロント下流配管65の途中にフロント下流継手部材67が設けられる。フロント下流配管65は、ABSモジュール53からフロント下流継手部材67まで延ばされる金属性の第1フロント下流配管65bと、フロント下流継手部材67からフロントブレーキ51に延ばされる可撓性の第2フロント下流配管65aとからなる。
【0034】
リアブレーキ系70は、左のハンドル17に設けられフロントブレーキ51及びリアブレーキ52を操作する第2操作子71と、この第2操作子71に設けられ油圧を発生するリアマスターシリンダ72と、このリアマスターシリンダ72とリアブレーキ52との間に設けられ油圧を伝達するリア配管73と、このリア配管73の途中に設けられリアブレーキ52及びフロントブレーキ51を制御するABSモジュール53とを有する。
【0035】
リア配管73は、リアマスターシリンダ72とABSモジュール53とを接続するリア上流配管74と、ABSモジュール53とリアブレーキ52とを接続するリア下流配管75とからなる。
【0036】
さらに、リア上流配管74の途中にリア上流継手部材76が設けられる。リア上流配管74は、リアマスターシリンダ72からリア上流継手部材76まで延ばされる可撓性の第1リア上流配管74aと、リア上流継手部材76からABSモジュール53に延ばされる金属性の第2リア上流配管74bとからなる。
なお、フロント配管63等の配管は、可撓性を有するホースや、一定の形状を保つ金属管等を含むものであり、可撓性であっても金属性であっても管であれば差し支えない。
【0037】
次にブレーキ装置の作用を説明する。
図3(a)はフロントブレーキ系60の作用を示す図であり、第1操作子61を操作すると、フロントマスターシリンダ62で発生した油圧は、第1フロント上流配管64a、フロント上流継手部材66及び第2フロント上流配管64bを通ってABSモジュール53に送られる。さらに、ABSモジュール53に送られた油圧は、第1フロント下流配管65b、フロント下流継手部材67及び第2フロント下流配管64aを通ってフロントブレーキ51に送られる。
【0038】
図3(b)はリアブレーキ系70の作用を示す図であり、第2操作子71を操作すると、リアマスターシリンダ72で発生した油圧は、第1リア上流配管74a、リア上流継手部材76及び第2リア上流配管74bを通ってABSモジュール53に送られる。ABSモジュール53に送られた油圧の一部は、リア下流配管75を通ってリアブレーキ52に送られる。ABSモジュール53に送られた油圧の残りは、第1フロント下流配管65b、フロント下流継手部材67及び第2フロント下流配管64aを通ってフロントブレーキ51に送られる。
【0039】
なお、リアブレーキ系70において、ABSモジュール53の制御により、フロントブレーキ51のみ、又はリアブレーキ52にのみ油圧が送られても差し支えない。また、実施例では、リアブレーキ系70は、前輪15及び後輪21の両方を制動させたが、これに限定されず、後輪21のみを制動させるものであっても差し支えない。
【0040】
次にABSモジュール53の位置について説明する。
図4に示すように、ABSモジュール53は、ヘッドパイプ11の近傍に且つヘッドパイプ11の車両前方側にブラケット54を介して設けられる。フロント上流配管64の第1フロント上流配管64aは、ヘッドパイプ11の近傍に配索される。リア上流配管74の第1リア上流配管74aは、ヘッドパイプ11の近傍に配索される。
【0041】
フロント下流配管65の第2フロント下流配管65aは、ヘッドパイプ11の近傍から延ばされフロントフォーク16を沿うようにして配索される。リア下流配管75は、ABSモジュール53から車両後方へ延ばされ、ヘッドパイプ11を回り込むようにしてメインフレーム12に配索される。
【0042】
次に平面図に基づいてフロント配管63及びリア配管73の配索について説明する。
図5に示すように、車幅方向右側のハンドル17に第1操作子61が設けられ、第1操作子61にフロントマスターシリンダ62が設けられる。第1フロント上流配管64aは、フロントマスターシリンダ62からハンドル17に沿うようにして車幅方向中心側に延ばされ、さらにヘッドパイプ11に沿って配索され、フロント上流継手部材66に接続される。
【0043】
第2フロント上流配管64bは、フロント上流継手部材66から車幅方向外方へ延ばされ、ABSモジュール53の後方、側方及び前方を迂回して前方に開口するABSモジュール53の第1油圧入口部68に接続される。第1フロント下流配管65bは、上方に開口するABSモジュール53の第1油圧出口部69から延ばされ、ABSモジュール53の上方、側方及び後方を迂回してフロント下流継手部材67に接続される。
【0044】
また、車幅方向左側のハンドル17に第2操作子71が設けられ、第2操作子71にリアマスターシリンダ72が設けられる。第1リア上流配管74aは、リアマスターシリンダ72からハンドル17に沿うようにして車幅方向中心側に延ばされ、さらにヘッドパイプ11に沿って配索され、リア上流継手部材76に接続される。リア上流継手部材76は、フロント上流継手部材66の車両前方側に配置される。
【0045】
第2リア上流配管74bは、リア上流継手部材76から車両前方へ延ばされ、ABSモジュール53の側方及び前方を迂回して前方に開口するABSモジュール53の第2油圧入口部77に接続される。リア下流配管75は、上方に開口するABSモジュール53の第2油圧出口部78からABSモジュール53の後方へ延ばされ、ヘッドパイプ11の側方を通りメインフレーム12へ配索される。
【0046】
また、ABSモジュール52のモータの中心線(軸線)81は、車体幅方向の中心線82より車幅方向右側へ距離Lだけオフセットした位置に取り付けられる。車体幅方向の中心線82に対して車幅方向右側であってヘッドパイプ11の車幅方向右側に、ブラケット54を介してパワーユニット(図1、符号22)を制御する電子制御ユニット83が取り付けられる。車体幅方向の中心線82に対して車幅方向右側に、ABSモジュレータ53のハーネス接続口84が配置される。電子制御ユニット83及びハーネス接続口84を中心線82に対して同じ側に配置したので、ハーネスの接続が容易になる。
【0047】
車体幅方向の中心線82に対して車幅方向左側に、ブラケット54を介してフロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76が取り付けられる。フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76と中心線82に対して同じ側に配置したので、配管やホースの接続が容易になる。
【0048】
次に側面図に基づいて第2フロント下流配管65aの配索について説明する。
図6に示すように、第2フロント下流配管65aは、フロント下流継手部材67から延ばされ、ヘッドパイプ11の側方を通り、フロントフォーク16に沿うようにして配索される。第2フロント下流配管65aは、ボトムブリッジ18に設けられたホースクリップ85により固定される。(詳細口述)
【0049】
また、ヘッドパイプ11に車両前方に向けてブラケット54がボルト55により取り付けられる。車両側面視において、フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76は、ABSモジュレータ53とヘッドパイプ11との間に、ブラケット55を介してヘッドパイプ11に設けられる。
なお、第1フロント上流配管64a、第2フロント下流配管65a及び第1リア上流配管74aは、可撓性を有するホースである。
【0050】
ABSモジュール53のモータ軸線81は車両前後方向に指向している。ABSモジュール53の上下幅はHである。フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76はABSモジュール53の上下幅H内に配置される。
【0051】
次に油圧ホースの取り付けについて説明する。
図7に示すように、ホースクリップ85は、第2フロント下流配管65aを囲むように曲げられており、その端部がボトムブリッジ18にボルト86により固定される。なお、油圧ホースは、他の部分でも同様のホースクリップで保持されていても差し支えない。
【0052】
次に正面図に基づいてABSモジュール53の取り付けについて説明する。
図8に示すように、ABSモジュール53は、ブラケット54にブッシュ87を介してボルト88により取り付けられる。車両正面視において、電子制御ユニット83は、ABSモジュレータ53の幅内に配置される。なお、ABSモジュール53は、ブッシュを介さずにブラケット54に固定しても差し支えない。
【0053】
図6に戻って、本構造は、ABSモジュール53とヘッドパイプ11との間の空いた空間を利用して、フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76を配置したので、車両前後方向を長くすることなくコンパクト化を図ることができる。結果、図1に示すように、脚の居住空間を確保しながらフロントカバー32をコンパクトにできるので、本構造は、フロントカバー32シート24の間にステップフロア34を備えるスクータタイプの自動二輪車10に好適である。さらには、フロントカバー32の車両前後方向の厚みが、フロントカバーの車幅方向の寸法よりも薄いスクータタイプの自動二輪車により一層好適である。
【0054】
次に継手の効果について比較例と比べて説明する。
図9(a)は比較例の自動二輪車100の前部を概念的に示す平面図であり、ヘッドパイプ101にブラケット102を介してABSモジュレータ103が取り付けられる。ヘッドパイプ101に対してハンドル104は回転可能に設けられており、ハンドル104の車幅方向右側のフロントマスターシリンダ105から第1ホース106が延ばされ、ABSモジュレータ103に直接的に接続される。また、ハンドル104の車幅方向左側のリアマスターシリンダ107から第2ホース108が延ばされ、ABSモジュレータ103に直接的に接続される。第1ホース106及び第2ホース107は、撓むようにしてハンドル104からABSモジュレータ103に配索されている。
【0055】
図9(b)は比較例の自動二輪車100のハンドル104を右に転舵した状態を概念的に示す平面図である。ABSモジュール103の第1ホース106及び第2ホース108の接続口は、ヘッドパイプ101からどうしてもある程度離れる。ヘッドパイプ101を中心にハンドル104を転舵させると、第1ホース106及び第2ホース108は、ハンドル104と共に変位する。ホースの接続口がヘッドパイプ101から離れているので、第1ホース106及び第2ホース108の撓み量が大きくなる。よって、第1ホース106及び第2ホース108を長くする必要がある。また、第1ホース106及び第2ホース108が大きく撓むことで、ホースの接続口に負荷がかかる。
【0056】
図9(c)は実施例の自動二輪車10の前部を概念的に示す図であり、ヘッドパイプ11とABSモジュール53との間に、第1上流継手66及びリア上流継手部材76が配置される。第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの撓み量は、比較例の第1ホース106及び第2ホース108に比較して小さい。
【0057】
図9(d)は実施例の自動二輪車10のハンドル17を右に転舵した状態を概念的に示す平面図である。ヘッドパイプ11を中心にハンドル17を転舵させると、第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aは、ハンドル17と共に変位する。しかし、第1上流継手66及びリア上流継手部材76がヘッドパイプ11の近傍にあるので、第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの撓み量は小さい。よって、第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aは短くて済み、ホースの配索が容易であり、設計を容易にできる。また、第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの撓みが小さく、第1上流継手66及びリア上流継手部材76にかかる負荷を低減できる。
【0058】
以上に述べた自動二輪車10の作用を次にまとめて述べる。
図5に示す構成により、ヘッドパイプ11の近傍に、フロント上流継手部材66及びフロント下流継手部材67が配置されることになる。このようなヘッドパイプ11近傍に配置されるフロント上流継手部材66及びフロント下流継手部材67にブレーキホースとしての第1フロント上流配管64a及び第1リア上流配管74aの一端が接続されるため、転舵中心の近くにブレーキホースの一端が支持されることになる。支持端が転舵中心に近いほど、転舵によりブレーキホースが受ける影響が小さくなる。すなわち、ヘッドパイプ11の近傍にフロント上流継手部材66を配置したので、ハンドル17の転舵に関わらずフロントマスターシリンダ62からフロント上流継手部材66までの距離があまり変わらないようにでき、転舵により発生するブレーキホースとしての第1フロント上流配管64aの撓みを小さくでき、他部品への干渉を抑えることができ、設計工数を削減できる。
【0059】
さらに加えて、ヘッドパイプ11の近傍にフロント下流継手部材67を配置したので、ハンドル17の転舵に関わらずフロント下流継手部材67からフロントブレーキ51までの距離があまり変わらないので、転舵により発生するフロント下流配管65としての第2フロント下流配管65aの撓みを小さくでき、他部品への干渉を抑えることができ、設計工数を削減できる。
【0060】
図5に示す構成により、ヘッドパイプ11の近傍に、リア上流継手部材76が配置されるので、ハンドル17の転舵によるブレーキホースとしてのリア上流配管74が受ける影響を小さくすることができる。加えて、車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に、フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76が集中して配置されるので、メンテナンス等の作業性が向上する。
【0061】
図6に示す構成により、ABSモジュール53のモータ軸線81は車両前後方向に指向しており、フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76はABSモジュール53の上下幅H内に配置されるので、フロント上流継手部材66及びリア上流継手部材76からABSモジュール53までの配管長、ABSモジュール53からフロント下流継手部材67までの配管長を短くでき、配管のコスト及び重量を低減させることができる。
【0062】
図5に示す構成により、電子制御ユニット83及びハーネス接続口84を車体幅方向の中心線82に対して一方側にまとめて配置したので、ハーネスの取付作業が容易である。
【0063】
図8に示す構成により、ABSモジュール53の車両後方側の空間に電子制御ユニット83を配置したので、空間を有効に活用し、車体前部のコンパクト化を図ることができる。
【0064】
尚、本発明は、実施の形態ではスクータタイプの自動二輪車に適用したが、ハンドルに第1操作子及び第2操作子が設けられたものであれば、一般の自動二輪車に適用することは差し支えない。また、実施の形態では、フロント上流継手部材66、フロント下流継手部材67及びリア上流継手部材76を中心線82に対して車幅方向左側に配置し、ABSモジュール53、ハーネス接続口84及び電子制御ユニット83を中心線82に対して車幅方向右側に配置したが、左右の配置が逆であっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ABSモジュールを備える自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0066】
10…自動二輪車、11…ヘッドパイプ、14…車体、15…前輪、16…フロントフォーク、17…ハンドル、21…後輪、51…フロントブレーキ、52…リアブレーキ、53…ABSモジュール、62…フロントマスターシリンダ、63…フロント配管、64…フロント上流配管、65…フロント下流配管、66…フロント上流継手部材、67…フロント下流継手部材、72…リアマスターシリンダ、73…リア配管、74…リア上流配管、75…リア下流配管、76…リア上流継手部材、81…ABSモジュールのモータの中心線(軸線)、82…車体幅方向の中心線、83…電子制御ユニット、84…ハーネス接続口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(14)の前部に設けられるヘッドパイプ(11)と、前輪(15)を制動するフロントブレーキ(51)と、前記フロントブレーキ(51)に制動圧を与えるフロントマスターシリンダ(62)と、このフロントマスターシリンダ(62)と前記フロントブレーキ(51)との間に設けられ液圧を伝達するフロント配管(63)と、このフロント配管(63)の途中に設けられ前記フロントブレーキ(51)の制動圧を減圧することができるABSモジュール(53)と、を備える自動二輪車(10)において、
前記フロント配管(63)は、前記フロントマスターシリンダ(62)と前記ABSモジュール(53)を接続するフロント上流配管(64)と、前記ABSモジュール(53)と前記フロントブレーキ(51)を接続するフロント下流配管(65)と、を備え、
前記ABSモジュール(53)は、前記ヘッドパイプ(11)の前方且つ車体幅方向中心に対して一方にオフセットした位置に取り付けられ、
前記フロント上流配管(64)の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、車両側面視で前記ABSモジュール(53)と前記ヘッドパイプ(11)の間に配置されるフロント上流継手部材(66)と、
前記フロント下流配管(65)の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、車両側面視で前記ABSモジュール(53)と前記ヘッドパイプ(11)の間に配置されるフロント下流継手部材(67)と、を有することを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
後輪(21)を制動するリアブレーキ(52)と、前記リアブレーキ(52)に制動圧を与えるリアマスターシリンダ(72)と、このリアマスターシリンダ(72)と前記リアブレーキ(52)との間に設けられ液圧を伝達するリア配管(73)と、を備え、
前記ABSモジュール(53)は、このリア配管(73)の途中に設けられるとともに前記リアブレーキ(52)の制動圧を減圧することができ、
前記リア配管(73)は、前記リアマスターシリンダ(72)と前記ABSモジュール(53)を接続するリア上流配管(74)と、前記ABSモジュール(53)と前記リアブレーキ(52)を接続するリア下流配管(75)とを有し、
前記リア上流配管(74)の途中に且つ車体幅方向中心に対して他方へオフセットした位置に設けられるとともに、前記ヘッドパイプ(11)の近傍に配置されるリア上流継手部材(76)と、を有することを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ABSモジュール(53)のモータ軸線は車両前後方向に指向しており、
前記フロント上流継手部材(66)、前記フロント下流継手部材(67)及び前記リア上流継手部材(76)は、前記ABSモジュール(53)の上下幅内に配置されることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
車体幅方向中心に対して一方側であって前記ヘッドパイプ(11)の車幅方向側方にパワーユニット(22)を制御する電子制御ユニット(83)が配置され、
前記ABSモジュール(53)のハーネス接続口(84)も車体幅方向中心に対して一方側に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記電子制御ユニット(83)は、車両正面視でABSモジュール(53)の幅内に配置されることを特徴とする請求項4記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47018(P2013−47018A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185375(P2011−185375)
【出願日】平成23年8月27日(2011.8.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】