自動分析装置のラック搬送方法
【課題】 装置の状況に応じた適切なラックを選択して交換できる自動分析装置を提供する。
【解決手段】 第一のモジュールから第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、第二のモジュールもしくは第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを第一のモジュールに搬送するラック交換手段と、待機部で待機しているラックから、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段とを有する。
【解決手段】 第一のモジュールから第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、第二のモジュールもしくは第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを第一のモジュールに搬送するラック交換手段と、待機部で待機しているラックから、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から採取した血液や尿などの検体の成分を分析する自動分析装置に係り、特に、生化学検査項目や免疫検査項目などを分析する複数の分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを主搬送装置へ複数個接続した自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析部と待機部を主搬送装置へ接続した形態の自動分析装置として、特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。特許文献1では、生化学分析部と免疫分析部で構成される自動分析装置において、ラックを免疫分析部に搬送して待機部で再検待ちし、その後に生化学分析部へ搬送する自動分析装置が示されている。特許文献2では、往復可能な搬送ラインの両側に待機部を備えた自動分析装置において、搬入されたラックを分注待ちラックとして前方の待機部で待機させ、分析部での分注処理を行った後、再検待ちラックとして後方の待機部で待機させる自動分析装置が示されている。特許文献3では、複数の分析部に対して待機部を1つ備えた自動分析装置において、ラックの搬入頻度が分析部の処理性能を超えた場合、ラックを一旦待機部へ搬送し、分析部の混雑解消後に待機中のラックを分析部に搬送する自動分析装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−74925号公報
【特許文献2】特開2004−279357号公報
【特許文献3】特開2006−038881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析部と待機部とを組とするモジュールを主搬送装置へ複数個接続した形態の自動分析装置におけるラックの搬送フローを以下で説明する。まず、ラックを搬入すると、ラック上の検体に添付されたバーコードを読み取り、検体ごとに分析する項目を認識する。その後、ラック上の検体が必要とする分析部へラックを搬送する。搬送先のモジュールにおいて、分析部が処理中でなければ、ラックは分析部へ搬送され、ラック上の検体の一部を取り出す分注処理を行う。分析部が処理中であれば、ラックは分注待ち状態となり、待機部に搬送されて順番待ちを行う。ラック上の検体が必要とする全てのモジュールへの搬送が完了すれば、検体の分析結果が出揃うまでの約10〜30分の間、再検待ち状態となって、いずれかのモジュールの待機部で待機する。最後に、分析結果が出揃えば搬出待ち状態となり、自動分析装置の外へ搬出される。従来の自動分析装置では、第一のモジュールで待機中である分注待ちラックを第二のモジュールへ搬送する際に、第二のモジュールの待機部に新たなラックが待機できる領域が無い場合、第一のモジュールにおける分注待ちラックを交換ラックとし、第二のモジュールにおける再検待ちラックを被交換ラックとして、交換ラックと被交換ラックを交換するラック交換を行っていた。
【0005】
しかしながら、交換ラックと被交換ラックを固定的な基準で選択していたため、装置の状況に応じた適切なラックを選択できない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、装置の状況に応じた適切なラックを選択できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を実現するために、本発明の自動分析装置は、第一のモジュールから第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、第二のモジュールもしくは第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを第一のモジュールに搬送するラック交換手段と、待機部で待機しているラックから、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段とを有することを特徴としている。
【0008】
さらに、ラック選択手段は、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理の順番を待つ分注待ち状態と、ラックに搭載された検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、検体の分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態に基づいて、分注待ち状態で第二のモジュールに搬送する予定のラックを交換候補ラックとし、分注待ち状態で第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、被交換候補ラックが無ければ再検待ち状態で第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、被交換候補ラックがなければ搬出待ち状態のラックを被交換候補ラックとすることを特徴としている。さらに、ラック選択手段は、交換候補ラックと被交換候補ラックの各々について、少なくともラックが分析部において検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数とに、さらにラックの交換回数を加えたスコアを計算して、スコアが最も高い交換候補ラックと被交換候補ラックを交換ラックと被交換ラックとして選択することを特徴としている。
【0009】
さらに、ラック選択手段は、過去のラックの搬送に関する情報であるラック搬送履歴から平均的な自動分析装置内のラックの状況を表すラック平均統計量を計算し、現在のラックの搬送に関する情報であるラック管理情報から現在の自動分析装置内のラックの状況を表すラック現在統計量を計算し、ラック平均統計量とラック現在統計量との差に基づいて、交換候補ラックと被交換候補ラック毎に適切な重みを計算する重み計算手段を有することを特徴としている。
【0010】
さらに、重み計算手段は、自動分析装置の起動時に、ラック搬送履歴からラック平均統計量を計算する過程における中間結果をメモリ上に保持し、ラック現在統計量を中間結果にリアルタイムに反映することを特徴としている。
【0011】
さらに、ラック平均統計量の計算においてラック搬送履歴のうち特定曜日のみの履歴を使用するか否かを設定する選択肢と、ラック現在統計量をリアルタイムでラック平均統計量に反映させるか否かを設定する選択肢と、ラック平均統計量の計算において使用するラック搬送履歴の日付の範囲とをユーザが設定できるオプション設定手段を有することを特徴としている。
【0012】
さらに、少なくとも自動分析装置の日毎の処理能力と、ラック交換手段によりラック交換を実施した回数と、ラック選択手段におけるラックの選択履歴を表示する交換履歴表示手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動分析装置は、第一のモジュールと第一のモジュールを除くその他のモジュールとの間でラックを交換するラック交換手段と、ラック上の検体が分注処理に必要とする時間と、ラックの静的優先度と、ラックの経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュール数との情報に重みを加重したスコアに基づいて装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段により、現在の装置の状況に適したラックを交換できる効果がある。
【0014】
また、本発明の自動分析装置は、ラックが分注処理の順番待ちをしている状態である分注待ち状態と、検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態とを考慮したラック選択手段により、主搬送装置上の搬送回数を抑制できるラックを選択できる。これにより、ラック交換の増加に関わらず主搬送装置の混雑を回避し、自動分析装置の処理能力の低下を回避できる効果がある。
【0015】
また、本発明の自動分析装置は、少なくともラックの分注所要時間と、ラックの静的優先度と、ラックの経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュール数とに、さらにラックの交換回数を加えることで、ラックの交換回数を考慮したスコアを計算できる。従って、他に高スコアのラックが存在するにも関わらず1つのラックが交換され続ける状況を回避できる効果がある。
【0016】
また、本発明の自動分析装置は、ラック搬送履歴から計算したラック平均統計量と、ラック管理情報から計算したラック現在統計量との差に基づいて、交換候補ラックと被交換候補ラック毎に重みを計算できる。従って、現在の自動分析装置内のラックの状況に適した重みを自動的に計算できる効果がある。
【0017】
また、本発明の自動分析装置は、自動分析装置の起動時にラック搬送履歴からラック平均統計量を計算する途中の中間結果をメモリ上に展開しておくことで、ラック現在統計量をリアルタイムで中間結果にフィードバックできる。従って、より適切な重みを自動的に設定できる効果がある。
【0018】
また、本発明の自動分析装置は、曜日毎のラック搬送履歴の使用可否や今日のラック搬送履歴の使用可否を設定でき、さらに、ラック搬送履歴を使用する日付の範囲を設定できる。従って、過去の自動分析装置のラックの傾向を正確に捉えることができ、適切な重みを計算できる効果がある。
【0019】
また、本発明の自動分析装置は、交換ログ表示手段を備えることで、過去の自動分析装置の処理能力とラック交換の結果の関係を確認できる。これにより、適切なラックが選択されているかを判断でき、設定の変更を促すことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を交えながら詳細に説明する。以下では、第一のモジュールのラックを交換ラック、第二のモジュールのラックを被交換ラックとして両者を交換する実施例を示す。
【0021】
図1は、本発明の実施例である自動分析装置の一構成例を示している。本発明の自動分析装置は、装置のハードウェアである装置本体101、メモリやハードディスクなどの記憶装置111、プログラムを演算・実行するCPU112、ディスプレイなどの表示装置113、マウスやキーボードなどの入力装置114で構成される。記憶装置111には、以下で説明するプログラムやデータが格納されており、これらは必要に応じてCPU112に読み出されて実行される。装置本体101は、ラック102を自動分析装置に投入するラック投入部103、分析が完了したラックを搬出するラック回収部104、ラック上の検体のバーコードを読み取るバーコードリーダ105、ラックを待機させる待機部107、ラック上の検体の分析を行う分析部108、待機部と分析部とを組とするモジュール109、ラック投入部とラック回収部と各モジュールとを接続する主搬送装置106で構成される。記憶装置111は、ラックの交換処理を実施するラック交換手段115、交換するべきラックを選択するラック選択手段116、ラックの現在の状態を管理するラック管理情報117、過去のラックの搬送履歴を蓄積するラック搬送履歴118から成る。
【0022】
図2にラック交換手段の処理フローの一例を示す。まず、ラック選択手段を用いて、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと、第二のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックを選択する(ステップ202)。次に、交換ラックと被交換ラックとを交換するラック交換を実施する。(ステップ203)。
【0023】
図3にラック交換におけるラックの搬送経路の一例を示す。本実施例では、待機部に設けた交換用待機領域を用いて交換ラックと被交換ラックとを交換する例を示す。まず、第一のモジュールの交換ラック301を第二のモジュールの交換用待機領域303に搬送する(搬送経路304)。次に、第二のモジュールの被交換ラック302を第一のモジュールの待機部に搬送する(搬送経路305)。最後に、交換ラックを被交換ラックが元々待機していた領域に搬送する(搬送経路306)。
【0024】
図4にラック交換を実現する制御シーケンスの一例を示す。まず、ラック交換手段402は、交換するべき交換ラックと被交換ラックとをラック選択手段403に要求する(制御命令404)。この要求を受け取ったラック選択手段403は、交換ラックと被交換ラックとをラック交換手段402に通知する(制御命令405)。次に、ラック交換手段402は、交換ラックを第二のモジュールに搬送するように装置本体401に依頼する(制御命令406)。装置本体401は、交換ラックを第二のモジュールの交換用待機領域へ搬送し、搬送が完了すれば交換ラックの搬送が完了したことをラック交換手段402に通知する(制御命令407)。次に、ラック交換手段402は、被交換ラックを第一のモジュールに搬送するように装置本体401に依頼する(制御命令408)。装置本体401は、被交換ラックを第二のモジュールの搬送し、搬送が完了した時点で被交換ラック搬送完了を通知する(制御命令409)。次に、交換ラックの待機領域を変更する搬送を装置本体410に依頼する(制御命令410)。最後に、装置本体410は交換ラックの待機領域を変更する搬送を行った後、ラック交換手段402に交換ラックの待機領域変更完了を通知する(制御命令411)。
【0025】
ラック選択手段が参照するラック管理情報のデータ構造の一例を図5に示す。ラックID501は、ラックを識別するために自動分析装置が与えるIDであり、例えばラックの搬入毎に1ずつ増やす。ラック現在位置502は、ラックの現在位置に対応するモジュールのIDであり、例えばラック供給部に近いモジュールから順に1、2、3…とIDを割り付ける。ラック状態503は、ラックの現在の状態であり、例えば、分析部での分注の順番待ちをしている状態を分注待ち状態、分析部で分注を実施している状態を分注中状態、分注が完了して検体の分析結果が出揃うのを待っている状態を再検待ち状態、検体の分析結果が出揃ってラック回収部への搬送を待っている状態を搬出待ち状態とする。静的優先度504は、検体の分析の緊急度を表し、例えば1〜5の5段階を与え、最高優先度のラックを1、最低優先度のラックを5とする。残り搬送先505は、ラックを搬送するべき残りの分析部のIDと、各分析部において検体を分注するのに要する時間(分注予定時間)である。分析部のIDは、例えばモジュールのIDと同様に、ラック供給部に近い分析部から順に1、2、3…とIDを割り付ける。分注予定時間は、各分析部における検査項目数と分析部の分注スピードから計算する。例えば、10秒に一回分注できる分析部で5項目検査するラックの分注予定時間は、5×10=50秒である。搬入時刻506は、ラックが搬入された時刻であり、例えばバーコード読み取りによる検体の認識が完了した時間とする。
【0026】
ラック選択手段が参照するラック搬送履歴のデータ構造の一例を図6に示す。ラックID601は自動分析装置が与えるIDであり、ラック管理情報におけるラックIDと同一のものである。イベントコード602は、自動分析装置内で発生したイベントの種類を表す。例えば、INはラックの搬入、NEXTは次のモジュールへのラックの搬送、EXCNGはラック交換の発生、OUTはラックの搬出を表す。日時603は、上述のイベントが発生した日時である。静的優先度604は、ラックの静的優先度であり、ラック管理情報の静的優先度と同一のものである。搬送先605は、NEXTイベント発生時におけるラックの次の搬送先分析部のIDである。分注予定時間606は、NEXTイベント発生時における搬送先のモジュールでの分注予定時間である。分注待ち時間607は、NEXTイベント発生時における搬送先のモジュールの分注待ち時間(分注待ち状態のラックの分注予定時間の合計値)である。第一のモジュール608と第二のモジュール609は、ラック交換の発生時に交換ラックと被交換ラックがそれぞれ待機しているモジュールのIDである。
【0027】
ラック選択手段の一例を図7に示す。まず、第一のモジュールで待機しているラックから第二のモジュールで分注する予定のラックを交換ラックの候補(交換候補ラック)として選択する(ステップ702)。次に、第二のモジュールで待機しているラックから第一のモジュールで分注する予定のラックを被交換ラックの候補(被交換候補ラック)として選択する(ステップ703)。次に、ラック管理情報とラック搬送履歴を用いて、現在のラック平均統計量と過去のラック平均統計量を計算する(ステップ704)。ラック平均統計量とは、ラックの各分析部における分注予定時間と、各静的優先度に対するラックの割合と、経過時間に対するラックの割合と、残り搬送先モジュールの数に対するラックの割合である。各候補ラックの分注予定時間piと、静的優先度qiと、残りの搬送先モジュールの数siと、搬入からの経過時間tiとについて、計算した過去と現在のラック平均統計量の差を重みとして、以下の式によりスコアを計算する(ステップ705)。
(数1)
ただし、Wp, Wq, Ws, Wtは、pi, qi, si, tiそれぞれに対応する重みである。最後に、スコアが最も大きい交換候補ラックと被交換候補ラックとを、それぞれ交換ラックと被交換ラックとして選択する(ステップ706)。
【0028】
以上のように、本実施例では、ラックの分析部における分注予定時間と、ラックの静的優先度と、ラックの搬入からの経過時間と、残りの搬送先モジュールの数とについて、現在の平均的なラックの状況と過去の平均的なラックの状況との比較に基づいて交換するラックを選択できる。従って、現在の装置の状況に応じた適切なラックを選択できる効果がある。
【0029】
上記実施例では、ラック選択手段において、分注待ち状態のラックを被交換候補ラックとしたが、再検待ち状態ならびに搬出待ち状態と、ラックの残りの搬送先モジュールを考慮して被交換候補ラックを選択することも可能である。まず、主搬送装置の混雑を避けるために、第一のモジュールで分注するラックを優先するべきである。従って、(1)第一のモジュールで分注する予定である分注待ち状態のラック、 (2)再検発生時に第一のモジュールで分注する予定である再検待ち状態のラック、の順に選択する。さらに、上記以外のラックとして、(3)搬出待ち状態のラック、(4)再検待ち状態だが第一のモジュールで分注する予定が無いラック、(5)分注待ち状態だが第一のモジュールで分注する予定が無いラック、がある。これらのラックは、第一のモジュールで分注する予定が無いため、主搬送装置が混雑する可能性があるが、交換ラックを第二のモジュールへ搬送するために選択せざるを得ない状況もある。従って、分析部へのラック供給の遅延が最小限になるように、分注予定が無いラックから順に、すなわち(3) (4) (5)の順に選択する。以上のような被交換候補ラックの選択により、主搬送装置の混雑を回避し、かつ、第二のモジュールで分注する予定のラックを第二のモジュールに供給し続けることが可能となり、自動分析装置の処理能力を改善できる効果がある。
【0030】
また、上記実施例では、ラック選択手段において、各候補ラックの分注予定時間piと、静的優先度qiと、残りの搬送先モジュールの数siと、搬入からの経過時間tiとに基づいたスコア関数を用いたが、さらにラックの交換回数ciを加えたスコア関数を用いることも可能である。ラックの交換回数を加えたスコア関数を以下に示す。
(数2)
このように、ラックの交換回数を掛けることで、交換回数が多いラックのスコアを下げることができる。従って、他に高いスコアを持つラックが存在するにも関わらず1つのラックが交換され続ける状況を回避できる効果がある。
【0031】
また、上記実施例では、重みを全てのラックで共通の値としたが、以下のような計算式によりラック毎に変更することも可能である。
(数3)
ただし、xはp,q,s,tのいずれかを表し、Bxは重みWp, Wq, Ws, Wtのそれぞれの基本値、αx(Ri)はラック毎に変動する重み係数である。以下、図8〜図11を用いて、重みWp, Wq, Ws, Wtの計算方法の一例について述べる。
【0032】
図8に重みWpの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から第一のモジュールにおける分注待ち時間の平均値Ppastを計算する(ステップ802)。次に、ラック管理情報から現在の第一のモジュールにおける分注待ち時間Pcurrを計算する(ステップ803)。そして、以下の式により基本値Bpを計算する(ステップ804)。
(数4)
ただし、Upはユーザの設定値である。計算の結果、Bp<0となれば、現在の分注待ち時間が十分大きく、ラックの選択において分注待ち時間を重視する必要は無いと判断できるため、Wp=0とする。Bp>0であれば、以下の手順により重み係数αp(Ri)を決定する。まず、ラック搬送履歴から第一のモジュールにおける過去の分注予定時間P’pastの平均を計算する(ステップ805)。次に、ラック管理情報からラックRiの第一のモジュールにおける分注予定時間P’curr(Ri)を計算する(ステップ806)。そして、以下の式により候補ラックRiの重み係数αp(Ri)を計算する(ステップ807)。
(数5)
最後に、各候補ラックの重みパラメータWp(Ri)を以下の式で計算する(ステップ808)。
(数6)
図9に重みWqの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から過去のラックの静的優先度別の搬入率Qpastを計算する(ステップ902)。次に、ラック管理情報から現在のラックの静的優先度別の搬入率Qcurrを計算する(ステップ903)。そして、以下の式により候補ラックRiの重み係数αq(Ri)を計算する(ステップ904)。
(数7)
ただし、Qcurr(Ri)とQpast(Ri)は、候補ラックRiの静的優先度に対する現在と過去のラック搬入率である。最後に、各候補ラックの重みWq(Ri)を以下の式で計算する(ステップ905)。
(数8)
ただし、基本値Bqはユーザの設定値Uqと等しいものとする。
【0033】
図10に重みWsの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から第二のモジュールを除く他のモジュールから第二のモジュールへのラック交換発生率Spastを計算する(ステップ1002)。次に、ラック管理情報から第二のモジュールを除く他のモジュールから第二のモジュールへのラック搬送予定の割合Scurrを計算する(ステップ1003)。そして、候補ラックの残り搬送先のモジュールDEST(Ri)に基づいて、以下の式により重み係数αsを計算する(ステップ1004)。
(数9)
最後に、各候補ラックの重みパラメータWs(Ri)を以下の式で計算する(ステップ1005)。
(数10)
ただし、基本値Bsはユーザの設定値Usと等しいものとする。
【0034】
図11に重みWtの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から過去の経過時間毎のラックの割合Tpastを計算する(ステップ1102)。例えば、処理時間を100秒単位で区分し、その区分に含まれるラックの頻度をカウントすれば、全ラックに対してその区分に含まれるラックの割合を計算できる。次に、ラック管理情報から現在の経過時間毎のラック割合Tcurrを計算する(ステップ1103)。そして、ラックRiの現在の経過時間に基づいて、以下の式により重み係数αt(Ri)を計算する(ステップ1104)。
(数11)
ただし、Tcurr(Ri)とTpast(Ri)は、ラックRiの現在の経過時間における過去と現在のラック割合である。最後に、ラックの重みパラメータWt(Ri)を以下の式で計算する(ステップ1105)。
(数12)
ただし、基本値Btはユーザの設定値Utと等しいものとする。
【0035】
以上、図8〜11を用いて説明したように、過去の装置の状況と現在の装置の状況に基づいて、ラック毎に適切な重みを設定することができ、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0036】
上記実施例では、ラック平均統計量をラック搬送履歴から逐次計算するフローを示したが、自動分析装置の起動時にラック平均統計量の計算過程である中間結果をメモリ上に展開しておくことも可能である。以下、図12と図13を用いて中間結果の計算方法の一例を説明する。
【0037】
図12に中間結果の計算の処理フローの一例を示す。まず、ラック搬送履歴のNEXTイベントに基づいて、分注予定時間と分注待ち時間に対する中間結果を計算する(ステップ1202)。次に、INイベントに基づいて、静的優先度に対する中間結果を計算する(ステップ1203)。次に、EXCNGイベントに基づいて残りの搬送先モジュールの数に対する中間結果を計算する(ステップ1204)。最後に、INイベントとOUTイベントの時間差により、経過時間に対する中間結果を計算する(ステップ1205)。
【0038】
図13に中間結果計算後のデータ構造の一例を示す。図中(a)は分注時間の中間結果である。分析部ID1301は、自動分析装置を構成する分析部のIDである。ラック数1302は、分析部IDに対応する分析部へ搬送先したラックの数であり、搬送履歴のNEXTイベントからカウントできる。分注待ち時間の合計1303は、ラック搬送履歴のNEXTイベントにおける搬送先の分析部の分注待ち時間の合計である。分注予定時間の合計1304は、ラック搬送履歴のNEXTイベントにおける搬送先の分析部におけるラックの分注予定時間の合計値である。図中(b)は静的優先度の中間結果である。静的優先度1311は、例えば5段階の静的優先度からなる自動分析装置では1〜5である。ラック数1312は、それぞれの静的優先度における搬入ラック数である。すなわち、ラック搬送履歴のINイベントのラック数を静的優先度毎にカウントした値である。図中(c)は搬送先モジュールの中間結果である。第一のモジュールID1321と第二のモジュールID1322は、ラック交換を実施した時の第一と第二のモジュールIDの組み合わせである。ラック数1323は、第一のモジュールと第二のモジュールとの組み合わせ毎にカウントしたラック交換の回数である。すなわち、ラック搬送履歴のEXCNGイベントを発生させたラック数を、第一のモジュールと第二のモジュールの組み合わせ毎にカウントした値である。図中(d)は経過時間の中間結果である。経過時間1331は、ラックの搬入から搬出までに要した時間であり、例えば0秒から3600秒までを100秒単位で区分する。ラック数1332は、その区分の経過時間内に搬出されたラック数を表す。すなわち、ラック搬送履歴のINイベントの日時とOUTイベントの日時の差が1030秒のラックが存在すれば、1000秒から1100秒の区分のラック数を1増やす。
【0039】
以上のように、本実施例では、ラック平均統計量の計算過程における中間結果をメモリ上に展開しておくことで、現在の自動分析装置で発生したイベントをラック平均統計量へリアルタイムに反映できる。従って、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0040】
上記実施例では、ラック平均統計量の計算においてラック搬送履歴の全データを用いたが、特定のデータのみを使用することも可能である。図14に特定のデータを使用するためのオプション設定手段の表示例を示す。日毎のデータ数1401は、ラック数1402と交換回数1403の日毎のデータ数を表示するグラフである。曜日のデータ1404は、今日の曜日のみのデータを使用するか(ボタン1405)、あるいは、全ての曜日のデータを使用するか(ボタン1406)を設定するオプションであり、どちらか一方を選択することができる。今日のデータ1407は、今日のデータをリアルタイムでラック平均統計量に反映するか(ボタン1408)、反映しないか(ボタン1409)を設定するオプションであり、どちらか一方を選択できる。データの使用範囲1401は、データの使用範囲の日時を指定するオプションである。重みの基本値の設定1411は、Wp, Wq, Ws, Wtそれぞれの基本値を設定するオプションである。OKボタン1412は、設定が完了した際にユーザがマウスなどの入力装置でクリックするボタンであり、キャンセルボタン1413は、設定の変更を中止する際にクリックするボタンである。このように、例えば特定の曜日のみ診察可能な診察室がある病院では、曜日毎のデータを用いることで、ラック平均統計量をより正確に計算できる。また、多量の集団検診を実施する日であれば、今日のデータをリアルタイムに反映することで、ラック平均統計量をより正確に計算できる。また、分析部の配置変更といった自動分析装置の運用を過去のある時点で変更した場合は、変更後のデータのみを使用することで、より正確なラック平均統計量を計算できる。以上のオプション設定により、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0041】
上記実施例では、ラック搬送履歴をラックの選択時にのみ使用したが、ラック交換の履歴を表示装置に表示する交換履歴表示手段を設けることもできる。図15に交換履歴表示手段の表示例を示す。基本性能情報1501は過去の自動分析装置の基本性能であり、分析部の合計処理能力1502、搬入されたラックの数1503、ラックの交換回数1504を表示する。また、グラフ上の領域をマウスなどの入力装置で選択することで、その日のラック交換履歴1506を表示する。ラック交換ログ1506は、入力装置で選択した日時1507、交換ラックのID1508、被交換ラックのID1509、重みWp, Wq, Ws, Wtの計算結果1510〜1513とスコアの計算結果1514を表示する。このように、ユーザは基本性能情報1501とラック交換履歴1506の関係を確認でき、重みの基本値が適切かどうかを判断できる効果がある。
【0042】
本発明の自動分析装置による処理能力の改善効果を示す一例として、(1)ラック交換無し、(2)ラック交換有りでラックをランダムに選択、(3)ラック交換有りでラックをスコア関数により選択、の3通りについて、ラック搬送シミュレータによる処理能力検証実験を行った。実験条件として、分析部の構成を生化学分析部(最大処理性能2000test/h)×2台、電解質分析部(最大処理性能600test/h)×1台、免疫分析部(最大処理性能170test/h)×1台とした。この4台の合計処理性能は4770test/hである。また、1検体当たりの検査依頼項目数を5項目〜15項目の一様分布、各々の分析部に対する検査依頼項目の比率を生化学84%、電解質12.6%、免疫3.4%とした。このような検体を1ラックにつき5検体搭載し、合計200ラック(1000検体、9932項目)の検査を実施するシミュレーションを行った。さらに、ラックは分析結果が出るまで待機部で待機するものとし、生化学項目の分析時間を10分、電解質項目の分析時間を3分、免疫項目の分析時間を27分、各待機部の容量を17個とした。シミュレーション結果を図19に示す。図19に示すとおり、ラック交換無しの場合は79.0%の処理能力であったのに対し、ラック交換により86.6%、スコア関数によるラックの選択により91.0%まで処理能力を向上できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の自動分析装置の構成を示す図。
【図2】ラック交換手段の手順を示すフローチャート。
【図3】ラック交換手段におけるラックの搬送経路を示す図。
【図4】ラック交換におけるラックの制御シーケンス。
【図5】ラック管理情報のデータ構造を示す図。
【図6】ラック搬送履歴のデータ構造を示す図。
【図7】被交換ラック選択手段の手順を示すフローチャート。
【図8】重みWpの計算の手順を示すフローチャート。
【図9】重みWqの計算の手順を示すフローチャート。
【図10】重みWsの計算の手順を示すフローチャート。
【図11】重みWtの計算の手順を示すフローチャート。
【図12】中間結果の計算の手順を示すフローチャート。
【図13】中間結果のデータ構造を示す図。
【図14】オプション設定手段の表示例を示す図。
【図15】交換履歴表示手段の表示例を示す図。
【図16】本発明の自動分析装置による処理能力改善効果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0044】
101…自動分析装置本体、102…ラック、103…ラック供給部、104…ラック回収部、105…バーコードリーダ、106…主搬送装置、107…待機部、108…分析部、109…モジュール、111…記憶装置、112…CPU、113…表示装置、114…入力装置、115…ラック交換手段、116…ラック選択手段、117…ラック管理情報、118…ラック搬送履歴、201…ラック交換開始ステップ、202…ラック選択ステップ、203…ラック交換ステップ、204…ラック交換終了ステップ、301…交換ラック、302…被交換ラック、303…交換用待機領域、304…交換ラック搬送経路、305…被交換ラック搬送経路、306…交換ラック搬送経路、401…自動分析装置本体、402…ラック交換手段、403…ラック選択手段、404…ラック選択要求、405…選択ラック通知、406…交換ラック搬送依頼、407…交換ラック搬送完了通知、408…被交換ラック搬送依頼、409…被交換ラック搬送完了通知、410…交換ラック搬送依頼、411…交換ラック搬送完了通知、501…ラックID、502…ラック現在位置、503…ラック状態、504…ラック静的優先度、505…残りの搬送先モジュールIDと分注予定時間、506…ラック搬入時刻、601…ラックID、602…イベントコード、603…イベント発生日時、604…ラック静的優先度、605…搬送先の分析部、606…搬送先の分析部における分注予定時間、607…搬送先の分析部における分注待ち時間、608…ラック交換発生時の交換ラック側のモジュールID、609…ラック交換発生時の被交換ラック側のモジュールID、701…ラック選択開始ステップ、702…交換候補ラックの選択ステップ、703…被交換候補ラックの選択ステップ、704…ラック平均統計量計算ステップ、705…候補ラックのスコア計算ステップ、706…交換ラックと被交換ラックの決定ステップ、707…ラック選択終了ステップ、801…重みWp計算開始ステップ、802…過去の平均分注待ち時間計算ステップ、803…現在の平均分注待ち時間計算ステップ、804…重み基本値計算ステップ、805…過去の分注予定時間計算ステップ、806…現在の分注予定時間計算ステップ、807…重み係数計算ステップ、808…重みWp計算ステップ、809…重みWp計算終了ステップ、901…重みWq計算開始ステップ、902…過去の静的優先度別ラック搬入率計算ステップ、903…現在の静的優先度別ラック搬入率計算ステップ、904…重み係数計算ステップ、905…重みWq計算ステップ、906…重みWq計算終了ステップ、1001…重みWs計算開始ステップ、1002…過去の交換発生率計算ステップ、1003…現在の搬送発生割合計算ステップ、1004…重み係数計算ステップ、1005…重みWs計算ステップ、1006…重みWs計算終了ステップ、1101…重みWt計算開始ステップ、1102…過去の平均処理時間計算ステップ、1103…現在の平均処理時間計算ステップ、1104…重み係数計算ステップ、1105…重みWt計算ステップ、1106…重みWt計算開始ステップ、1201…中間結果計算開始ステップ、1202…分注時間の中間結果計算ステップ、1203…静的優先度の中間結果計算ステップ、1204…残り搬送先モジュール数の中間結果計算ステップ、1205…経過時間の中間結果計算ステップ、1206…中間結果計算終了ステップ、1301…分析部ID、1302…ラック数、1303…分注待ち時間の合計値、1304…分注予定時間の合計値、1311…静的優先度、1312…ラック数、1321…第一のモジュールID、1322…第二のモジュールID、1323…ラック数、1331…経過時間、1332…ラック数、1401…日毎のデータ数表示画面、1402…日毎のラック数、1403…日毎の交換回数、1404…曜日のデータ設定オプション、1405…今日の曜日のみ使用する選択ボタン、1406…全曜日使用する選択ボタン、1407…今日のデータ設定オプション、1408…今日のデータを使用する選択ボタン、1409…今日のデータを使用しない選択ボタン、1410…データの使用範囲設定オプション、1411…重み基本値の設定オプション、1412…設定完了ボタン、1413…設定キャンセルボタン、1501…基本性能情報表示画面、1502…日毎の分析部処理性能、1503…日毎のラック数、1504…日毎のラック交換発生回数、1506…ラック交換履歴表示画面、1507…交換履歴選択日、1508…交換ラックのラックID、1509…被交換ラックのラックID、1510…重みWpの値、1511…重みWqの値、1512…重みWsの値、1513…重みWtの値、1815…スコアの値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者から採取した血液や尿などの検体の成分を分析する自動分析装置に係り、特に、生化学検査項目や免疫検査項目などを分析する複数の分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを主搬送装置へ複数個接続した自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析部と待機部を主搬送装置へ接続した形態の自動分析装置として、特許文献1、特許文献2、特許文献3がある。特許文献1では、生化学分析部と免疫分析部で構成される自動分析装置において、ラックを免疫分析部に搬送して待機部で再検待ちし、その後に生化学分析部へ搬送する自動分析装置が示されている。特許文献2では、往復可能な搬送ラインの両側に待機部を備えた自動分析装置において、搬入されたラックを分注待ちラックとして前方の待機部で待機させ、分析部での分注処理を行った後、再検待ちラックとして後方の待機部で待機させる自動分析装置が示されている。特許文献3では、複数の分析部に対して待機部を1つ備えた自動分析装置において、ラックの搬入頻度が分析部の処理性能を超えた場合、ラックを一旦待機部へ搬送し、分析部の混雑解消後に待機中のラックを分析部に搬送する自動分析装置が示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−74925号公報
【特許文献2】特開2004−279357号公報
【特許文献3】特開2006−038881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分析部と待機部とを組とするモジュールを主搬送装置へ複数個接続した形態の自動分析装置におけるラックの搬送フローを以下で説明する。まず、ラックを搬入すると、ラック上の検体に添付されたバーコードを読み取り、検体ごとに分析する項目を認識する。その後、ラック上の検体が必要とする分析部へラックを搬送する。搬送先のモジュールにおいて、分析部が処理中でなければ、ラックは分析部へ搬送され、ラック上の検体の一部を取り出す分注処理を行う。分析部が処理中であれば、ラックは分注待ち状態となり、待機部に搬送されて順番待ちを行う。ラック上の検体が必要とする全てのモジュールへの搬送が完了すれば、検体の分析結果が出揃うまでの約10〜30分の間、再検待ち状態となって、いずれかのモジュールの待機部で待機する。最後に、分析結果が出揃えば搬出待ち状態となり、自動分析装置の外へ搬出される。従来の自動分析装置では、第一のモジュールで待機中である分注待ちラックを第二のモジュールへ搬送する際に、第二のモジュールの待機部に新たなラックが待機できる領域が無い場合、第一のモジュールにおける分注待ちラックを交換ラックとし、第二のモジュールにおける再検待ちラックを被交換ラックとして、交換ラックと被交換ラックを交換するラック交換を行っていた。
【0005】
しかしながら、交換ラックと被交換ラックを固定的な基準で選択していたため、装置の状況に応じた適切なラックを選択できない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、装置の状況に応じた適切なラックを選択できる自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を実現するために、本発明の自動分析装置は、第一のモジュールから第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、第二のモジュールもしくは第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを第一のモジュールに搬送するラック交換手段と、待機部で待機しているラックから、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段とを有することを特徴としている。
【0008】
さらに、ラック選択手段は、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理の順番を待つ分注待ち状態と、ラックに搭載された検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、検体の分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態に基づいて、分注待ち状態で第二のモジュールに搬送する予定のラックを交換候補ラックとし、分注待ち状態で第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、被交換候補ラックが無ければ再検待ち状態で第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、被交換候補ラックがなければ搬出待ち状態のラックを被交換候補ラックとすることを特徴としている。さらに、ラック選択手段は、交換候補ラックと被交換候補ラックの各々について、少なくともラックが分析部において検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数とに、さらにラックの交換回数を加えたスコアを計算して、スコアが最も高い交換候補ラックと被交換候補ラックを交換ラックと被交換ラックとして選択することを特徴としている。
【0009】
さらに、ラック選択手段は、過去のラックの搬送に関する情報であるラック搬送履歴から平均的な自動分析装置内のラックの状況を表すラック平均統計量を計算し、現在のラックの搬送に関する情報であるラック管理情報から現在の自動分析装置内のラックの状況を表すラック現在統計量を計算し、ラック平均統計量とラック現在統計量との差に基づいて、交換候補ラックと被交換候補ラック毎に適切な重みを計算する重み計算手段を有することを特徴としている。
【0010】
さらに、重み計算手段は、自動分析装置の起動時に、ラック搬送履歴からラック平均統計量を計算する過程における中間結果をメモリ上に保持し、ラック現在統計量を中間結果にリアルタイムに反映することを特徴としている。
【0011】
さらに、ラック平均統計量の計算においてラック搬送履歴のうち特定曜日のみの履歴を使用するか否かを設定する選択肢と、ラック現在統計量をリアルタイムでラック平均統計量に反映させるか否かを設定する選択肢と、ラック平均統計量の計算において使用するラック搬送履歴の日付の範囲とをユーザが設定できるオプション設定手段を有することを特徴としている。
【0012】
さらに、少なくとも自動分析装置の日毎の処理能力と、ラック交換手段によりラック交換を実施した回数と、ラック選択手段におけるラックの選択履歴を表示する交換履歴表示手段を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動分析装置は、第一のモジュールと第一のモジュールを除くその他のモジュールとの間でラックを交換するラック交換手段と、ラック上の検体が分注処理に必要とする時間と、ラックの静的優先度と、ラックの経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュール数との情報に重みを加重したスコアに基づいて装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段により、現在の装置の状況に適したラックを交換できる効果がある。
【0014】
また、本発明の自動分析装置は、ラックが分注処理の順番待ちをしている状態である分注待ち状態と、検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態とを考慮したラック選択手段により、主搬送装置上の搬送回数を抑制できるラックを選択できる。これにより、ラック交換の増加に関わらず主搬送装置の混雑を回避し、自動分析装置の処理能力の低下を回避できる効果がある。
【0015】
また、本発明の自動分析装置は、少なくともラックの分注所要時間と、ラックの静的優先度と、ラックの経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュール数とに、さらにラックの交換回数を加えることで、ラックの交換回数を考慮したスコアを計算できる。従って、他に高スコアのラックが存在するにも関わらず1つのラックが交換され続ける状況を回避できる効果がある。
【0016】
また、本発明の自動分析装置は、ラック搬送履歴から計算したラック平均統計量と、ラック管理情報から計算したラック現在統計量との差に基づいて、交換候補ラックと被交換候補ラック毎に重みを計算できる。従って、現在の自動分析装置内のラックの状況に適した重みを自動的に計算できる効果がある。
【0017】
また、本発明の自動分析装置は、自動分析装置の起動時にラック搬送履歴からラック平均統計量を計算する途中の中間結果をメモリ上に展開しておくことで、ラック現在統計量をリアルタイムで中間結果にフィードバックできる。従って、より適切な重みを自動的に設定できる効果がある。
【0018】
また、本発明の自動分析装置は、曜日毎のラック搬送履歴の使用可否や今日のラック搬送履歴の使用可否を設定でき、さらに、ラック搬送履歴を使用する日付の範囲を設定できる。従って、過去の自動分析装置のラックの傾向を正確に捉えることができ、適切な重みを計算できる効果がある。
【0019】
また、本発明の自動分析装置は、交換ログ表示手段を備えることで、過去の自動分析装置の処理能力とラック交換の結果の関係を確認できる。これにより、適切なラックが選択されているかを判断でき、設定の変更を促すことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を交えながら詳細に説明する。以下では、第一のモジュールのラックを交換ラック、第二のモジュールのラックを被交換ラックとして両者を交換する実施例を示す。
【0021】
図1は、本発明の実施例である自動分析装置の一構成例を示している。本発明の自動分析装置は、装置のハードウェアである装置本体101、メモリやハードディスクなどの記憶装置111、プログラムを演算・実行するCPU112、ディスプレイなどの表示装置113、マウスやキーボードなどの入力装置114で構成される。記憶装置111には、以下で説明するプログラムやデータが格納されており、これらは必要に応じてCPU112に読み出されて実行される。装置本体101は、ラック102を自動分析装置に投入するラック投入部103、分析が完了したラックを搬出するラック回収部104、ラック上の検体のバーコードを読み取るバーコードリーダ105、ラックを待機させる待機部107、ラック上の検体の分析を行う分析部108、待機部と分析部とを組とするモジュール109、ラック投入部とラック回収部と各モジュールとを接続する主搬送装置106で構成される。記憶装置111は、ラックの交換処理を実施するラック交換手段115、交換するべきラックを選択するラック選択手段116、ラックの現在の状態を管理するラック管理情報117、過去のラックの搬送履歴を蓄積するラック搬送履歴118から成る。
【0022】
図2にラック交換手段の処理フローの一例を示す。まず、ラック選択手段を用いて、第一のモジュールから第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと、第二のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックを選択する(ステップ202)。次に、交換ラックと被交換ラックとを交換するラック交換を実施する。(ステップ203)。
【0023】
図3にラック交換におけるラックの搬送経路の一例を示す。本実施例では、待機部に設けた交換用待機領域を用いて交換ラックと被交換ラックとを交換する例を示す。まず、第一のモジュールの交換ラック301を第二のモジュールの交換用待機領域303に搬送する(搬送経路304)。次に、第二のモジュールの被交換ラック302を第一のモジュールの待機部に搬送する(搬送経路305)。最後に、交換ラックを被交換ラックが元々待機していた領域に搬送する(搬送経路306)。
【0024】
図4にラック交換を実現する制御シーケンスの一例を示す。まず、ラック交換手段402は、交換するべき交換ラックと被交換ラックとをラック選択手段403に要求する(制御命令404)。この要求を受け取ったラック選択手段403は、交換ラックと被交換ラックとをラック交換手段402に通知する(制御命令405)。次に、ラック交換手段402は、交換ラックを第二のモジュールに搬送するように装置本体401に依頼する(制御命令406)。装置本体401は、交換ラックを第二のモジュールの交換用待機領域へ搬送し、搬送が完了すれば交換ラックの搬送が完了したことをラック交換手段402に通知する(制御命令407)。次に、ラック交換手段402は、被交換ラックを第一のモジュールに搬送するように装置本体401に依頼する(制御命令408)。装置本体401は、被交換ラックを第二のモジュールの搬送し、搬送が完了した時点で被交換ラック搬送完了を通知する(制御命令409)。次に、交換ラックの待機領域を変更する搬送を装置本体410に依頼する(制御命令410)。最後に、装置本体410は交換ラックの待機領域を変更する搬送を行った後、ラック交換手段402に交換ラックの待機領域変更完了を通知する(制御命令411)。
【0025】
ラック選択手段が参照するラック管理情報のデータ構造の一例を図5に示す。ラックID501は、ラックを識別するために自動分析装置が与えるIDであり、例えばラックの搬入毎に1ずつ増やす。ラック現在位置502は、ラックの現在位置に対応するモジュールのIDであり、例えばラック供給部に近いモジュールから順に1、2、3…とIDを割り付ける。ラック状態503は、ラックの現在の状態であり、例えば、分析部での分注の順番待ちをしている状態を分注待ち状態、分析部で分注を実施している状態を分注中状態、分注が完了して検体の分析結果が出揃うのを待っている状態を再検待ち状態、検体の分析結果が出揃ってラック回収部への搬送を待っている状態を搬出待ち状態とする。静的優先度504は、検体の分析の緊急度を表し、例えば1〜5の5段階を与え、最高優先度のラックを1、最低優先度のラックを5とする。残り搬送先505は、ラックを搬送するべき残りの分析部のIDと、各分析部において検体を分注するのに要する時間(分注予定時間)である。分析部のIDは、例えばモジュールのIDと同様に、ラック供給部に近い分析部から順に1、2、3…とIDを割り付ける。分注予定時間は、各分析部における検査項目数と分析部の分注スピードから計算する。例えば、10秒に一回分注できる分析部で5項目検査するラックの分注予定時間は、5×10=50秒である。搬入時刻506は、ラックが搬入された時刻であり、例えばバーコード読み取りによる検体の認識が完了した時間とする。
【0026】
ラック選択手段が参照するラック搬送履歴のデータ構造の一例を図6に示す。ラックID601は自動分析装置が与えるIDであり、ラック管理情報におけるラックIDと同一のものである。イベントコード602は、自動分析装置内で発生したイベントの種類を表す。例えば、INはラックの搬入、NEXTは次のモジュールへのラックの搬送、EXCNGはラック交換の発生、OUTはラックの搬出を表す。日時603は、上述のイベントが発生した日時である。静的優先度604は、ラックの静的優先度であり、ラック管理情報の静的優先度と同一のものである。搬送先605は、NEXTイベント発生時におけるラックの次の搬送先分析部のIDである。分注予定時間606は、NEXTイベント発生時における搬送先のモジュールでの分注予定時間である。分注待ち時間607は、NEXTイベント発生時における搬送先のモジュールの分注待ち時間(分注待ち状態のラックの分注予定時間の合計値)である。第一のモジュール608と第二のモジュール609は、ラック交換の発生時に交換ラックと被交換ラックがそれぞれ待機しているモジュールのIDである。
【0027】
ラック選択手段の一例を図7に示す。まず、第一のモジュールで待機しているラックから第二のモジュールで分注する予定のラックを交換ラックの候補(交換候補ラック)として選択する(ステップ702)。次に、第二のモジュールで待機しているラックから第一のモジュールで分注する予定のラックを被交換ラックの候補(被交換候補ラック)として選択する(ステップ703)。次に、ラック管理情報とラック搬送履歴を用いて、現在のラック平均統計量と過去のラック平均統計量を計算する(ステップ704)。ラック平均統計量とは、ラックの各分析部における分注予定時間と、各静的優先度に対するラックの割合と、経過時間に対するラックの割合と、残り搬送先モジュールの数に対するラックの割合である。各候補ラックの分注予定時間piと、静的優先度qiと、残りの搬送先モジュールの数siと、搬入からの経過時間tiとについて、計算した過去と現在のラック平均統計量の差を重みとして、以下の式によりスコアを計算する(ステップ705)。
(数1)
ただし、Wp, Wq, Ws, Wtは、pi, qi, si, tiそれぞれに対応する重みである。最後に、スコアが最も大きい交換候補ラックと被交換候補ラックとを、それぞれ交換ラックと被交換ラックとして選択する(ステップ706)。
【0028】
以上のように、本実施例では、ラックの分析部における分注予定時間と、ラックの静的優先度と、ラックの搬入からの経過時間と、残りの搬送先モジュールの数とについて、現在の平均的なラックの状況と過去の平均的なラックの状況との比較に基づいて交換するラックを選択できる。従って、現在の装置の状況に応じた適切なラックを選択できる効果がある。
【0029】
上記実施例では、ラック選択手段において、分注待ち状態のラックを被交換候補ラックとしたが、再検待ち状態ならびに搬出待ち状態と、ラックの残りの搬送先モジュールを考慮して被交換候補ラックを選択することも可能である。まず、主搬送装置の混雑を避けるために、第一のモジュールで分注するラックを優先するべきである。従って、(1)第一のモジュールで分注する予定である分注待ち状態のラック、 (2)再検発生時に第一のモジュールで分注する予定である再検待ち状態のラック、の順に選択する。さらに、上記以外のラックとして、(3)搬出待ち状態のラック、(4)再検待ち状態だが第一のモジュールで分注する予定が無いラック、(5)分注待ち状態だが第一のモジュールで分注する予定が無いラック、がある。これらのラックは、第一のモジュールで分注する予定が無いため、主搬送装置が混雑する可能性があるが、交換ラックを第二のモジュールへ搬送するために選択せざるを得ない状況もある。従って、分析部へのラック供給の遅延が最小限になるように、分注予定が無いラックから順に、すなわち(3) (4) (5)の順に選択する。以上のような被交換候補ラックの選択により、主搬送装置の混雑を回避し、かつ、第二のモジュールで分注する予定のラックを第二のモジュールに供給し続けることが可能となり、自動分析装置の処理能力を改善できる効果がある。
【0030】
また、上記実施例では、ラック選択手段において、各候補ラックの分注予定時間piと、静的優先度qiと、残りの搬送先モジュールの数siと、搬入からの経過時間tiとに基づいたスコア関数を用いたが、さらにラックの交換回数ciを加えたスコア関数を用いることも可能である。ラックの交換回数を加えたスコア関数を以下に示す。
(数2)
このように、ラックの交換回数を掛けることで、交換回数が多いラックのスコアを下げることができる。従って、他に高いスコアを持つラックが存在するにも関わらず1つのラックが交換され続ける状況を回避できる効果がある。
【0031】
また、上記実施例では、重みを全てのラックで共通の値としたが、以下のような計算式によりラック毎に変更することも可能である。
(数3)
ただし、xはp,q,s,tのいずれかを表し、Bxは重みWp, Wq, Ws, Wtのそれぞれの基本値、αx(Ri)はラック毎に変動する重み係数である。以下、図8〜図11を用いて、重みWp, Wq, Ws, Wtの計算方法の一例について述べる。
【0032】
図8に重みWpの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から第一のモジュールにおける分注待ち時間の平均値Ppastを計算する(ステップ802)。次に、ラック管理情報から現在の第一のモジュールにおける分注待ち時間Pcurrを計算する(ステップ803)。そして、以下の式により基本値Bpを計算する(ステップ804)。
(数4)
ただし、Upはユーザの設定値である。計算の結果、Bp<0となれば、現在の分注待ち時間が十分大きく、ラックの選択において分注待ち時間を重視する必要は無いと判断できるため、Wp=0とする。Bp>0であれば、以下の手順により重み係数αp(Ri)を決定する。まず、ラック搬送履歴から第一のモジュールにおける過去の分注予定時間P’pastの平均を計算する(ステップ805)。次に、ラック管理情報からラックRiの第一のモジュールにおける分注予定時間P’curr(Ri)を計算する(ステップ806)。そして、以下の式により候補ラックRiの重み係数αp(Ri)を計算する(ステップ807)。
(数5)
最後に、各候補ラックの重みパラメータWp(Ri)を以下の式で計算する(ステップ808)。
(数6)
図9に重みWqの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から過去のラックの静的優先度別の搬入率Qpastを計算する(ステップ902)。次に、ラック管理情報から現在のラックの静的優先度別の搬入率Qcurrを計算する(ステップ903)。そして、以下の式により候補ラックRiの重み係数αq(Ri)を計算する(ステップ904)。
(数7)
ただし、Qcurr(Ri)とQpast(Ri)は、候補ラックRiの静的優先度に対する現在と過去のラック搬入率である。最後に、各候補ラックの重みWq(Ri)を以下の式で計算する(ステップ905)。
(数8)
ただし、基本値Bqはユーザの設定値Uqと等しいものとする。
【0033】
図10に重みWsの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から第二のモジュールを除く他のモジュールから第二のモジュールへのラック交換発生率Spastを計算する(ステップ1002)。次に、ラック管理情報から第二のモジュールを除く他のモジュールから第二のモジュールへのラック搬送予定の割合Scurrを計算する(ステップ1003)。そして、候補ラックの残り搬送先のモジュールDEST(Ri)に基づいて、以下の式により重み係数αsを計算する(ステップ1004)。
(数9)
最後に、各候補ラックの重みパラメータWs(Ri)を以下の式で計算する(ステップ1005)。
(数10)
ただし、基本値Bsはユーザの設定値Usと等しいものとする。
【0034】
図11に重みWtの計算方法の一例を示す。まず、ラック搬送履歴から過去の経過時間毎のラックの割合Tpastを計算する(ステップ1102)。例えば、処理時間を100秒単位で区分し、その区分に含まれるラックの頻度をカウントすれば、全ラックに対してその区分に含まれるラックの割合を計算できる。次に、ラック管理情報から現在の経過時間毎のラック割合Tcurrを計算する(ステップ1103)。そして、ラックRiの現在の経過時間に基づいて、以下の式により重み係数αt(Ri)を計算する(ステップ1104)。
(数11)
ただし、Tcurr(Ri)とTpast(Ri)は、ラックRiの現在の経過時間における過去と現在のラック割合である。最後に、ラックの重みパラメータWt(Ri)を以下の式で計算する(ステップ1105)。
(数12)
ただし、基本値Btはユーザの設定値Utと等しいものとする。
【0035】
以上、図8〜11を用いて説明したように、過去の装置の状況と現在の装置の状況に基づいて、ラック毎に適切な重みを設定することができ、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0036】
上記実施例では、ラック平均統計量をラック搬送履歴から逐次計算するフローを示したが、自動分析装置の起動時にラック平均統計量の計算過程である中間結果をメモリ上に展開しておくことも可能である。以下、図12と図13を用いて中間結果の計算方法の一例を説明する。
【0037】
図12に中間結果の計算の処理フローの一例を示す。まず、ラック搬送履歴のNEXTイベントに基づいて、分注予定時間と分注待ち時間に対する中間結果を計算する(ステップ1202)。次に、INイベントに基づいて、静的優先度に対する中間結果を計算する(ステップ1203)。次に、EXCNGイベントに基づいて残りの搬送先モジュールの数に対する中間結果を計算する(ステップ1204)。最後に、INイベントとOUTイベントの時間差により、経過時間に対する中間結果を計算する(ステップ1205)。
【0038】
図13に中間結果計算後のデータ構造の一例を示す。図中(a)は分注時間の中間結果である。分析部ID1301は、自動分析装置を構成する分析部のIDである。ラック数1302は、分析部IDに対応する分析部へ搬送先したラックの数であり、搬送履歴のNEXTイベントからカウントできる。分注待ち時間の合計1303は、ラック搬送履歴のNEXTイベントにおける搬送先の分析部の分注待ち時間の合計である。分注予定時間の合計1304は、ラック搬送履歴のNEXTイベントにおける搬送先の分析部におけるラックの分注予定時間の合計値である。図中(b)は静的優先度の中間結果である。静的優先度1311は、例えば5段階の静的優先度からなる自動分析装置では1〜5である。ラック数1312は、それぞれの静的優先度における搬入ラック数である。すなわち、ラック搬送履歴のINイベントのラック数を静的優先度毎にカウントした値である。図中(c)は搬送先モジュールの中間結果である。第一のモジュールID1321と第二のモジュールID1322は、ラック交換を実施した時の第一と第二のモジュールIDの組み合わせである。ラック数1323は、第一のモジュールと第二のモジュールとの組み合わせ毎にカウントしたラック交換の回数である。すなわち、ラック搬送履歴のEXCNGイベントを発生させたラック数を、第一のモジュールと第二のモジュールの組み合わせ毎にカウントした値である。図中(d)は経過時間の中間結果である。経過時間1331は、ラックの搬入から搬出までに要した時間であり、例えば0秒から3600秒までを100秒単位で区分する。ラック数1332は、その区分の経過時間内に搬出されたラック数を表す。すなわち、ラック搬送履歴のINイベントの日時とOUTイベントの日時の差が1030秒のラックが存在すれば、1000秒から1100秒の区分のラック数を1増やす。
【0039】
以上のように、本実施例では、ラック平均統計量の計算過程における中間結果をメモリ上に展開しておくことで、現在の自動分析装置で発生したイベントをラック平均統計量へリアルタイムに反映できる。従って、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0040】
上記実施例では、ラック平均統計量の計算においてラック搬送履歴の全データを用いたが、特定のデータのみを使用することも可能である。図14に特定のデータを使用するためのオプション設定手段の表示例を示す。日毎のデータ数1401は、ラック数1402と交換回数1403の日毎のデータ数を表示するグラフである。曜日のデータ1404は、今日の曜日のみのデータを使用するか(ボタン1405)、あるいは、全ての曜日のデータを使用するか(ボタン1406)を設定するオプションであり、どちらか一方を選択することができる。今日のデータ1407は、今日のデータをリアルタイムでラック平均統計量に反映するか(ボタン1408)、反映しないか(ボタン1409)を設定するオプションであり、どちらか一方を選択できる。データの使用範囲1401は、データの使用範囲の日時を指定するオプションである。重みの基本値の設定1411は、Wp, Wq, Ws, Wtそれぞれの基本値を設定するオプションである。OKボタン1412は、設定が完了した際にユーザがマウスなどの入力装置でクリックするボタンであり、キャンセルボタン1413は、設定の変更を中止する際にクリックするボタンである。このように、例えば特定の曜日のみ診察可能な診察室がある病院では、曜日毎のデータを用いることで、ラック平均統計量をより正確に計算できる。また、多量の集団検診を実施する日であれば、今日のデータをリアルタイムに反映することで、ラック平均統計量をより正確に計算できる。また、分析部の配置変更といった自動分析装置の運用を過去のある時点で変更した場合は、変更後のデータのみを使用することで、より正確なラック平均統計量を計算できる。以上のオプション設定により、より適切なラックを選択できる効果がある。
【0041】
上記実施例では、ラック搬送履歴をラックの選択時にのみ使用したが、ラック交換の履歴を表示装置に表示する交換履歴表示手段を設けることもできる。図15に交換履歴表示手段の表示例を示す。基本性能情報1501は過去の自動分析装置の基本性能であり、分析部の合計処理能力1502、搬入されたラックの数1503、ラックの交換回数1504を表示する。また、グラフ上の領域をマウスなどの入力装置で選択することで、その日のラック交換履歴1506を表示する。ラック交換ログ1506は、入力装置で選択した日時1507、交換ラックのID1508、被交換ラックのID1509、重みWp, Wq, Ws, Wtの計算結果1510〜1513とスコアの計算結果1514を表示する。このように、ユーザは基本性能情報1501とラック交換履歴1506の関係を確認でき、重みの基本値が適切かどうかを判断できる効果がある。
【0042】
本発明の自動分析装置による処理能力の改善効果を示す一例として、(1)ラック交換無し、(2)ラック交換有りでラックをランダムに選択、(3)ラック交換有りでラックをスコア関数により選択、の3通りについて、ラック搬送シミュレータによる処理能力検証実験を行った。実験条件として、分析部の構成を生化学分析部(最大処理性能2000test/h)×2台、電解質分析部(最大処理性能600test/h)×1台、免疫分析部(最大処理性能170test/h)×1台とした。この4台の合計処理性能は4770test/hである。また、1検体当たりの検査依頼項目数を5項目〜15項目の一様分布、各々の分析部に対する検査依頼項目の比率を生化学84%、電解質12.6%、免疫3.4%とした。このような検体を1ラックにつき5検体搭載し、合計200ラック(1000検体、9932項目)の検査を実施するシミュレーションを行った。さらに、ラックは分析結果が出るまで待機部で待機するものとし、生化学項目の分析時間を10分、電解質項目の分析時間を3分、免疫項目の分析時間を27分、各待機部の容量を17個とした。シミュレーション結果を図19に示す。図19に示すとおり、ラック交換無しの場合は79.0%の処理能力であったのに対し、ラック交換により86.6%、スコア関数によるラックの選択により91.0%まで処理能力を向上できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の自動分析装置の構成を示す図。
【図2】ラック交換手段の手順を示すフローチャート。
【図3】ラック交換手段におけるラックの搬送経路を示す図。
【図4】ラック交換におけるラックの制御シーケンス。
【図5】ラック管理情報のデータ構造を示す図。
【図6】ラック搬送履歴のデータ構造を示す図。
【図7】被交換ラック選択手段の手順を示すフローチャート。
【図8】重みWpの計算の手順を示すフローチャート。
【図9】重みWqの計算の手順を示すフローチャート。
【図10】重みWsの計算の手順を示すフローチャート。
【図11】重みWtの計算の手順を示すフローチャート。
【図12】中間結果の計算の手順を示すフローチャート。
【図13】中間結果のデータ構造を示す図。
【図14】オプション設定手段の表示例を示す図。
【図15】交換履歴表示手段の表示例を示す図。
【図16】本発明の自動分析装置による処理能力改善効果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0044】
101…自動分析装置本体、102…ラック、103…ラック供給部、104…ラック回収部、105…バーコードリーダ、106…主搬送装置、107…待機部、108…分析部、109…モジュール、111…記憶装置、112…CPU、113…表示装置、114…入力装置、115…ラック交換手段、116…ラック選択手段、117…ラック管理情報、118…ラック搬送履歴、201…ラック交換開始ステップ、202…ラック選択ステップ、203…ラック交換ステップ、204…ラック交換終了ステップ、301…交換ラック、302…被交換ラック、303…交換用待機領域、304…交換ラック搬送経路、305…被交換ラック搬送経路、306…交換ラック搬送経路、401…自動分析装置本体、402…ラック交換手段、403…ラック選択手段、404…ラック選択要求、405…選択ラック通知、406…交換ラック搬送依頼、407…交換ラック搬送完了通知、408…被交換ラック搬送依頼、409…被交換ラック搬送完了通知、410…交換ラック搬送依頼、411…交換ラック搬送完了通知、501…ラックID、502…ラック現在位置、503…ラック状態、504…ラック静的優先度、505…残りの搬送先モジュールIDと分注予定時間、506…ラック搬入時刻、601…ラックID、602…イベントコード、603…イベント発生日時、604…ラック静的優先度、605…搬送先の分析部、606…搬送先の分析部における分注予定時間、607…搬送先の分析部における分注待ち時間、608…ラック交換発生時の交換ラック側のモジュールID、609…ラック交換発生時の被交換ラック側のモジュールID、701…ラック選択開始ステップ、702…交換候補ラックの選択ステップ、703…被交換候補ラックの選択ステップ、704…ラック平均統計量計算ステップ、705…候補ラックのスコア計算ステップ、706…交換ラックと被交換ラックの決定ステップ、707…ラック選択終了ステップ、801…重みWp計算開始ステップ、802…過去の平均分注待ち時間計算ステップ、803…現在の平均分注待ち時間計算ステップ、804…重み基本値計算ステップ、805…過去の分注予定時間計算ステップ、806…現在の分注予定時間計算ステップ、807…重み係数計算ステップ、808…重みWp計算ステップ、809…重みWp計算終了ステップ、901…重みWq計算開始ステップ、902…過去の静的優先度別ラック搬入率計算ステップ、903…現在の静的優先度別ラック搬入率計算ステップ、904…重み係数計算ステップ、905…重みWq計算ステップ、906…重みWq計算終了ステップ、1001…重みWs計算開始ステップ、1002…過去の交換発生率計算ステップ、1003…現在の搬送発生割合計算ステップ、1004…重み係数計算ステップ、1005…重みWs計算ステップ、1006…重みWs計算終了ステップ、1101…重みWt計算開始ステップ、1102…過去の平均処理時間計算ステップ、1103…現在の平均処理時間計算ステップ、1104…重み係数計算ステップ、1105…重みWt計算ステップ、1106…重みWt計算開始ステップ、1201…中間結果計算開始ステップ、1202…分注時間の中間結果計算ステップ、1203…静的優先度の中間結果計算ステップ、1204…残り搬送先モジュール数の中間結果計算ステップ、1205…経過時間の中間結果計算ステップ、1206…中間結果計算終了ステップ、1301…分析部ID、1302…ラック数、1303…分注待ち時間の合計値、1304…分注予定時間の合計値、1311…静的優先度、1312…ラック数、1321…第一のモジュールID、1322…第二のモジュールID、1323…ラック数、1331…経過時間、1332…ラック数、1401…日毎のデータ数表示画面、1402…日毎のラック数、1403…日毎の交換回数、1404…曜日のデータ設定オプション、1405…今日の曜日のみ使用する選択ボタン、1406…全曜日使用する選択ボタン、1407…今日のデータ設定オプション、1408…今日のデータを使用する選択ボタン、1409…今日のデータを使用しない選択ボタン、1410…データの使用範囲設定オプション、1411…重み基本値の設定オプション、1412…設定完了ボタン、1413…設定キャンセルボタン、1501…基本性能情報表示画面、1502…日毎の分析部処理性能、1503…日毎のラック数、1504…日毎のラック交換発生回数、1506…ラック交換履歴表示画面、1507…交換履歴選択日、1508…交換ラックのラックID、1509…被交換ラックのラックID、1510…重みWpの値、1511…重みWqの値、1512…重みWsの値、1513…重みWtの値、1815…スコアの値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者から採取した検体を分析する分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを組とするモジュールを複数接続し、前記モジュール間でラックを搬送する主搬送装置を有する自動分析装置において、記憶装置とCPUとを備え、
前記待機部で待機しているラックから、前記第一のモジュールから前記第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと前記第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段と、
前記ラック選択手段によるラックの選択に基いて、第一のモジュールから前記第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、前記第二のモジュールもしくは前記第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを前記第一のモジュールに搬送する制御を行うラック交換手段とを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理の順番を待つ分注待ち状態と、ラックに搭載された検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、検体の分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態に基づいて、前記分注待ち状態で前記第二のモジュールに搬送する予定のラックを交換候補ラックとし、前記分注待ち状態で前記第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、前記被交換候補ラックが無ければ前記再検待ち状態で前記第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、前記被交換候補ラックがなければ前記搬出待ち状態のラックを被交換候補ラックとすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、前記交換候補ラックと前記被交換候補ラックの各々について、少なくともラックが分析部において検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数とに、さらにラックの交換回数を加えたスコアを計算して、前記スコアが最も高い前記交換候補ラックと前記被交換候補ラックを前記交換ラックと前記被交換ラックとして選択することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、過去のラックの搬送に関する情報であるラック搬送履歴から平均的な自動分析装置内のラックの状況を表すラック平均統計量を計算し、現在のラックの搬送に関する情報であるラック管理情報から現在の自動分析装置内のラックの状況を表すラック現在統計量を計算し、前記ラック平均統計量と前記ラック現在統計量との差に基づいて、前記交換候補ラックと前記被交換候補ラック毎に適切な重みを計算することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、自動分析装置の起動時に、前記ラック搬送履歴から前記ラック平均統計量を計算する過程における中間結果をメモリ上に保持し、前記ラック現在統計量を前記中間結果にリアルタイムに反映することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の自動分析装置において、表示手段と入力手段とを有し、前記ラック平均統計量の計算において前記ラック搬送履歴のうち特定曜日のみの履歴を使用するか否かを設定する選択肢と、前記ラック現在統計量をリアルタイムで前記ラック平均統計量に反映させるか否かを設定する選択肢と、前記ラック平均統計量の計算において使用する前記ラック搬送履歴の日付の範囲とを表示し、入力手段により入力させる設定手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の自動分析装置において、さらに表示手段を有し、前記表示手段は、少なくとも自動分析装置の日毎の処理能力と、前記ラック交換手段によりラック交換を実施した回数と、前記ラック選択手段におけるラックの選択履歴を表示する交換履歴表示手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
患者から採取した検体を分析する分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを組とするモジュールを複数接続し、前記モジュール間でラックを搬送する主搬送装置を有する自動分析装置の制御方法であって、記憶装置とCPUを備え、
前記記憶装置に記憶されたラック選択手段により、前記待機部で待機しているラックから、前記第一のモジュールから前記第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと前記第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択し、
前記記憶装置に記憶されたラック交換手段により、前記ラック選択手段の選択に基いて、第一のモジュールから前記第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、前記第二のモジュールもしくは前記第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを前記第一のモジュールに搬送制御を行うことを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【請求項1】
患者から採取した検体を分析する分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを組とするモジュールを複数接続し、前記モジュール間でラックを搬送する主搬送装置を有する自動分析装置において、記憶装置とCPUとを備え、
前記待機部で待機しているラックから、前記第一のモジュールから前記第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと前記第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択するラック選択手段と、
前記ラック選択手段によるラックの選択に基いて、第一のモジュールから前記第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、前記第二のモジュールもしくは前記第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを前記第一のモジュールに搬送する制御を行うラック交換手段とを有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理の順番を待つ分注待ち状態と、ラックに搭載された検体の分析結果が出揃うのを待つ再検待ち状態と、検体の分析結果が出揃って搬出を待つ搬出待ち状態に基づいて、前記分注待ち状態で前記第二のモジュールに搬送する予定のラックを交換候補ラックとし、前記分注待ち状態で前記第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、前記被交換候補ラックが無ければ前記再検待ち状態で前記第一のモジュールに搬送する予定のラックを被交換候補ラックとし、前記被交換候補ラックがなければ前記搬出待ち状態のラックを被交換候補ラックとすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、前記交換候補ラックと前記被交換候補ラックの各々について、少なくともラックが分析部において検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数とに、さらにラックの交換回数を加えたスコアを計算して、前記スコアが最も高い前記交換候補ラックと前記被交換候補ラックを前記交換ラックと前記被交換ラックとして選択することを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、過去のラックの搬送に関する情報であるラック搬送履歴から平均的な自動分析装置内のラックの状況を表すラック平均統計量を計算し、現在のラックの搬送に関する情報であるラック管理情報から現在の自動分析装置内のラックの状況を表すラック現在統計量を計算し、前記ラック平均統計量と前記ラック現在統計量との差に基づいて、前記交換候補ラックと前記被交換候補ラック毎に適切な重みを計算することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の自動分析装置において、前記ラック選択手段は、自動分析装置の起動時に、前記ラック搬送履歴から前記ラック平均統計量を計算する過程における中間結果をメモリ上に保持し、前記ラック現在統計量を前記中間結果にリアルタイムに反映することを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の自動分析装置において、表示手段と入力手段とを有し、前記ラック平均統計量の計算において前記ラック搬送履歴のうち特定曜日のみの履歴を使用するか否かを設定する選択肢と、前記ラック現在統計量をリアルタイムで前記ラック平均統計量に反映させるか否かを設定する選択肢と、前記ラック平均統計量の計算において使用する前記ラック搬送履歴の日付の範囲とを表示し、入力手段により入力させる設定手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の自動分析装置において、さらに表示手段を有し、前記表示手段は、少なくとも自動分析装置の日毎の処理能力と、前記ラック交換手段によりラック交換を実施した回数と、前記ラック選択手段におけるラックの選択履歴を表示する交換履歴表示手段を有することを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
患者から採取した検体を分析する分析部と検体を搭載したラックを待機させる待機部とを組とするモジュールを複数接続し、前記モジュール間でラックを搬送する主搬送装置を有する自動分析装置の制御方法であって、記憶装置とCPUを備え、
前記記憶装置に記憶されたラック選択手段により、前記待機部で待機しているラックから、前記第一のモジュールから前記第二のモジュールに搬送するラックである交換ラックと前記第二もしくは第三のモジュールから第一のモジュールに搬送するラックである被交換ラックとを、少なくとも分析部においてラックに搭載された検体の一部を取り出す分注処理に要する時間と、分析の緊急性を表すラックの静的優先度と、ラックの自動分析装置搬入後の経過時間と、ラックの搬送が必要な残りのモジュールの数との情報に重みを加重したスコアに基づいて、装置の状況に応じたラックを選択し、
前記記憶装置に記憶されたラック交換手段により、前記ラック選択手段の選択に基いて、第一のモジュールから前記第一のモジュールとは異なる第二のモジュールへのラック搬送と同期して、前記第二のモジュールもしくは前記第一及び第二のモジュールとは異なる第三のモジュールで待機しているラックを前記第一のモジュールに搬送制御を行うことを特徴とする自動分析装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−8464(P2009−8464A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168374(P2007−168374)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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