説明

自動分析装置及びサンプリング制御方法

【課題】検体の分注量が多くなっても1サイクル内で分注ができてスループットを向上させ、かつサンプル分注制御を簡素化すること。
【解決手段】検体4のサンプリング量の増加に応じてサンプリング速度制御部23によりサンプリングアーム7の上下動作の昇降速度及び回転速度、サンプリングポンプ15によるエアーの吸引速度を速く可変する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブにより検体(サンプル)をサンプリングし、検体に対する生化学分析と免疫分析とを行う自動分析装置、及びこの自動分析装置においてプローブにより検体をサンプリングするサンプリング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば病院では、血液や尿等の検体を各計測項目別に分析する自動分析装置が用いられている。この自動分析装置は、検体の生化学分析を行う生化学分析ユニットと免疫分析を行う免疫分析ユニットとを連結して成る。この自動分析装置は、検体を検体容器内に収容し、この検体容器を搬送系によって生化学分析ユニットと免疫分析ユニットとの間に搬送する。生化学分析ユニットには、反応管が設けられ、搬送系によって検体容器が搬送されると、検体容器内の検体が反応管にそれぞれ分注される。
【0003】
この分注は、生化学分析ユニットに設けられてするサンプリング機構により行われる。このサンプリング機構は、例えばサンプリングプローブ(以下、プローブと省略する)と、このプローブを設けたサンプリングアームと、このサンプリングアームを上下移動させる上下機構とを有する。又、プローブにより検体の吸引又は吐出しを行わせるサンプリングポンプを有する。
【0004】
このサンプリング機構は、サンプリングアームを下降させてプローブを検体容器内の検体中に浸し、サンプリングポンプを駆動してプローブにより検体を吸引させる。次にサンプリング機構は、サンプリングアームを上昇させ、回転させてプローブを反応管の上方に移動し、下降させ、サンプリングポンプを駆動してプローブから反応管内に検体を吐き出す。次にサンプリング機構は、サンプリングアームを上昇させ、回転させてプローブを洗浄位置に配置し、プローブの洗浄後、サンプリングアームを元の位置に戻す。
このような検体のサンプル分注制御では、サンプリングアームの下降から検体の吸引、反応管内への検体の吐き出し、プローブの洗浄を1サイクルとして検体のサンプリングを繰り返し、検体容器内の検体を複数の反応管に分注する。
【0005】
又、かかる検体のサンプル分注制御では、検体のサンプリング量すなわち分注量に応じてサンプリングポンプによる検体の吸引又は吐出し速度を変化させている。具体的にサンプリングポンプは、ステッピングモータにより駆動している。このステッピングモータは、検体のサンプリング量に応じて予め決められた関数により算出された速度、又はサンプリング量に応じてテーブル化された速度により制御される。なお、検体のサンプリング動作に関する技術としては、例えば特許文献1がある。
【0006】
しかしながら、検体のサンプル分注制御では、検体をサンプリングするときの吸引、吐出し速度を最悪条件、すなわち吸引、吐出しに要する時間が最も長く要する時間を想定して1サイクル中における例えばサンプリングアームの上昇や下降等の時間を割り当てている。このような1サイクル中の時間割り当てにおいて、検体の分注量に対して高精度を要求される少ない分注量のときには、吸引、吐出し速度を遅く設定し、分注量が多くなるに従って吸引、吐出し速度を速く設定している。
【0007】
検体のサンプル分注量は、広い分注量の範囲を有し、例えば1.5〜35uLである。このような広い分注量の範囲を有すると、全ての範囲の分注量の分注を同一期間のサイクル内で行うことは不可能である。少ない分注量例えば、1.5uLの分注量であれば、1サイクル内で1.5uLの全ての分注を行うことができる。これに対して多い分注量例えば、15uL以上の分注量であれば、1サイクル内で15uL以上の全ての分注を行うには時間が足りず、15uL以上の分注量を2回のサイクルを使って対処している。このため、検体の分注に時間を要し、検体の分注、さらには検体の分析のスループットを低下させている。2回のサイクルを使って分注するために、検体のサンプル分注制御を複雑化している。
【特許文献1】特公平5−11846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、検体の分注量が多くなっても1サイクル内で分注ができてスループットを向上させ、かつサンプル分注制御を簡素化できる自動分析装置及びサンプリング制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面に係る自動分析装置は、プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させてサンプリングポンプの駆動により検体又は試薬を吸引し、プローブをサンプリングアームの動作により第2の容器に移動させてサンプリングポンプの駆動により検体又は試薬を吐き出し、検体の分析を行う自動分析装置において、検体又は試薬のサンプリング量に応じてサンプリングアームの移動速度と、サンプリングポンプの駆動によるエアーの吸引速度と、プローブを移動させるまでの待ち時間とのうち少なくとも1つを可変するサンプリング速度制御部を具備する。
【0010】
本発明の第2の局面に係るサンプリング制御方法は、プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させ、サンプリングポンプの駆動によりプローブにより第1の容器から検体又は試薬を吸引し、プローブをサンプリングアームの動作により第2の容器に移動させ、サンプリングポンプの駆動によりプローブから検体又は試薬を吐き出すサンプリング制御方法において、検体又は試薬のサンプリング量に応じてサンプリングアームの移動速度と、サンプリングポンプの駆動によるエアーの吸引速度と、プローブを移動させるまでの待ち時間とのうち少なくとも1つを可変する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検体の分注量が多くなっても1サイクル内で分注ができてスループットを向上させ、かつサンプル分注制御を簡素化できる自動分析装置及びサンプリング制御方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は自動分析装置の構成図を示す。この自動分析装置は、生化学分析ユニット1と免疫分析ユニット2と連結し、かつこれら生化学分析ユニット1と免疫分析ユニット2との間に搬送ユニット3を設けて成る。搬送ユニット3は、血清又は尿等の検体4を収容した第1の容器としての複数の検体容器5を生化学分析ユニット1から免疫分析ユニット2へ搬送する。各検体容器5にそれぞれ収容されている各検体4は、例えばそれぞれ異なる各患者から採取されたものである。
【0013】
生化学分析ユニット1には、サンプリング機構6が設けられている。このサンプリング機構6は、検体容器5内に収容されている検体4を生化学分析ユニット1に分注するもので、それぞれサンプリングアーム7の先端にサンプリングプローブ8を設けて成る。
生化学分析ユニット1側のサンプリング機構6は、サンプリングアーム7の移動によりサンプリングプローブ8を検体容器5中の検体4中に浸し、検体4を吸引し、この吸引した検体4を生化学分析ユニット1における第2の容器としての反応容器9内に吐き出す。なお、生化学分析ユニット1の反応容器9は、図面上、図示し易い位置に示してある。生化学分析ユニット1は、反応容器9内に分注された検体4の生化学分析を行う。
【0014】
図2はサンプリング機構6の概略構成図を示す。ベース10上に回転機構11が設けられ、この回転機構11上に昇降機構12が立設されている。この昇降機構12には、サンプリングアーム7が例えば水平方向に設けられている。このサンプリングアーム7の先端部には、サンプリングプローブ8が検体4の吐出口13を下方に向けて設けられている。これにより、サンプリング機構6は、回転機構11の回転動作により昇降機構12を矢印A方向に回転させることによりサンプリングアーム7を昇降機構12を中心として回転移動させ、かつ昇降機構12の昇降動作によりサンプリングアーム7を矢印B方向に昇降させる。図3はサンプリングアーム7の回転移動の軌跡を示す。サンプリングアーム7は、矢印A方向に回転することにより搬送ユニット3上の検体容器5と生化学分析ユニット1における反応容器9との間に回転移動する。サンプリングアーム7の搬送ユニット3側の停止位置は、サンプリングプローブ8を検体容器5の真上に配置したところであり、サンプリングアーム7の生化学分析ユニット1側の停止位置は、反応容器9の真上に配置したところである。なお、生化学分析ユニット1側の反応容器9は、搬送機構14により矢印方向に移動する。
【0015】
サンプリング機構6には、サンプリングポンプ15が設けられている。このサンプリングポンプ15は、例えばサンプリングアーム7内を介してサンプリングプローブ8に連通している。このサンプリングポンプ15は、吸引又は吐出しの動作を行う。このサンプリングポンプ15が吸引動作することによりサンプリングプローブ8は例えば検体4を吸引する。サンプリングポンプ15が吐出し動作することによりサンプリングプローブ8は例えば検体4を吐き出す。又、サンプリングポンプ15が吸引動作することによりサンプリングプローブ8のエアーギャップを吸引する。なお、エアーギャップは、吸引用の水と検体4とが混ざるのを防止するためにサンプリングプローブ8内に設けられる。
【0016】
次に、制御系について説明する。図4は自動分析装置の制御系の機能ブロック構成図を示す。この制御系は、コンピュータにより成り、CPU、RAM、ROM、入出力ポート等を有する。制御系は、コンピュータがROMに記憶されている自動分析プログラムを実行することにより次の機能を有する。主制御部20は、CPUにより成り、記憶部21に記憶されている自動分析プログラムを実行して自動分析部22、サンプリング速度制御部23、サンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25及び洗浄駆動部26に各動作指令を発する。
【0017】
記憶部21は、RAM及びROMを有する。この記憶部21には、自動分析プログラムが記憶されると共に、例えば図5に示すようなサンプリング速度制御テーブル27が記憶されている。このサンプリング速度制御テーブル27には、例えば検体4のサンプリング量に応じたサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度、及び待ち時間が記憶されている。検体4のサンプリング量は、例えば1.5〜5uL、5〜10uL、10〜15uL、15〜35uLに分けられている。この検体4のサンプリング量の分け方は、任意に設定可能である。
【0018】
サンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度は、検体4のサンプリング量の増加に伴って速く設定されている。サンプリングアーム7の上下動作の速度及び回転動作の速度も検体4のサンプリング量の増加に伴って速く設定されている。サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度も検体4のサンプリング量の増加に伴って速く設定されている。待ち時間は、検体4を吸引後又は検体4を吐出し後のうちいずれか一方又は両方におけるサンプリングプローブ8を移動させるまでの時間である。この待ち時間も検体4のサンプリング量の増加に伴って短く設定されている。
【0019】
サンプリング速度制御テーブル27に記憶されている検体4のサンプリング量に応じたサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間は、サンプリングプローブ8を検体容器5に移動させて検体4を吸引し、サンプリングプローブ8を反応容器9に移動させて検体4を吐き出す動作を1サイクルとした場合、この1サイクル期間内で、例えば検体4の全範囲に亘るサンプリング量1.5〜35uLを検体4を反応容器9に分注するためのサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15のエアーの吸引速度が記憶されている。
【0020】
自動分析部22は、例えば血液や尿等の検体4を各計測項目別に分析するもので、検体4の生化学分析を行う生化学分析ユニットと免疫分析を行う免疫分析ユニットとの各分析を行わせる。
サンプリング速度制御部23は、検体4のサンプリング量に応じてサンプリングアーム7の移動速度すなわちサンプリングアーム7の上下動作の速度及びサンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動による検体4の吸引及び吐出し速度、サンプリングポンプ15の駆動による検体4に混在するエアーの吸引速度を可変する。
【0021】
具体的にサンプリング速度制御部23は、図5に示すサンプリング速度制御テーブル27に記憶されている検体4のサンプリング量(例えば1.5〜5uL、5〜10uL、10〜15uL、15〜35uL)に対応するサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7aの上下動作の速度、サンプリングアーム7aの回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間を読み出し、これらサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7aの上下動作の速度、サンプリングアーム7aの回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間に従ってサンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25に対して各制御信号を送出する。
【0022】
サンプリングアーム駆動部24は、サンプリング速度制御部23からの制御信号を受け、この制御信号に従ってサンプリング機構6における昇降機構12と回転機構11とをそれぞれサンプリング速度制御テーブル27に記憶されているサンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度で駆動する。
ポンプ駆動部25は、サンプリング速度制御部23からの制御信号を受け、この制御信号に従ってサンプリングポンプ15をサンプリング速度制御テーブル27に記憶されているサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、又はエアーの吸引速度で駆動する。
【0023】
洗浄駆動部26は、洗浄機構28における洗浄ポンプ29を動作させて洗浄液を洗浄槽30内に噴射させる。洗浄機構28は、洗浄槽30に洗浄ポンプ29を設けて成り、洗浄槽30に挿入されたサンプリングプローブ8に対して洗浄ポンプ29の駆動により洗浄液を噴射させることによりサンプリングプローブ8を洗浄する。
【0024】
次に、上記の如く構成された装置における検体4のサンプリング制御について図6に示す1サイクル中のタイミングチャートを参照して説明する。このタイミングチャートは、検体4のサンプリング量例えば15uL以下の場合と15uL以上の場合とを比較して示す。1サイクルの期間ts〜teは、サンプリング量15uL以下の場合と15uL以上の場合とで同一である。
先ず、検体4のサンプリング量が例えば15uL以下の場合について説明する。
主制御部20は、記憶部21に記憶されている自動分析プログラムを実行して自動分析部22、サンプリング速度制御部23、サンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25及び洗浄駆動部26に各動作指令を発する。
【0025】
サンプリング速度制御部23は、図5に示すサンプリング速度制御テーブル27に記憶されている15uL以下のサンプリング量(例えば1.5〜5uL、5〜10uL又は10〜15uL)に対応するサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間を読み出し、これらサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間に従ってサンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25に対して各制御信号を送出する。
【0026】
これにより、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tsから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応した回転速度でサンプリング機構6aにおける回転機構11を回転駆動し、サンプリングアーム7を図3に示す矢印A方向に回転させ、サンプリングプローブ8を搬送ユニット3の検体容器5の真上に配置する。これと共に、ポンプ駆動部25は、略同一の時刻tsから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応したエアー吸引の速度で、サンプリングポンプ15を吸引動作させ、エアーギャップを吸引する。
【0027】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応した下降速度でサンプリング機構6における昇降機構12を下降動作し、サンプリングアーム7を図2に示す矢印B方向に下降させる。このサンプリングアーム7の下降によりサンプリングプローブ8は、検体容器5に向かって下降する。サンプリングプローブ8が検体容器5に収容されている検体4内に浸透すると、この時刻tにおいて、サンプリングアーム駆動部24は、昇降機構12の下降動作を停止する。
【0028】
次に、ポンプ駆動部25は、時刻tから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応した吸引速度でサンプリングポンプ15を吸引動作させ、サンプリングプローブ8により検体容器5に収容されている検体4を吸引する。サンプリングポンプ15の吸引動作が時刻tに終了すると、サンプリングプローブ8内に検体4が保持される。
【0029】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、サンプリングプローブ8により検体4を吸引後、待ち時間wの経過の後、時刻tから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応した上昇速度でサンプリング機構6における昇降機構12を上昇動作し、サンプリングアーム7を図2に示す矢印B方向に上昇させる。これにより、サンプリングプローブ8は、検体容器5に収容されている検体4内から出て、検体容器5の真上に移動する。
【0030】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tから時刻tにおいて、サンプリング機構6における回転機構11を回転駆動し、サンプリングアーム7を図3に示す矢印A方向に回転させ、サンプリングプローブ8を生化学分析ユニット1における反応容器9の真上に移動する。
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tから時刻tにおいて、サンプリング機構6aにおける昇降機構12を下降動作し、サンプリングアーム7を下降させる。このサンプリングアーム7の下降によりサンプリングプローブ8は、反応容器9内に向かって下降する。サンプリングプローブ8が反応容器9内に例えば挿入されると、この時刻tにおいて、サンプリングアーム駆動部24は、昇降機構12の下降動作を停止する。
【0031】
次に、ポンプ駆動部25は、時刻tから時刻tにおいて、15uL以下のサンプリング量に対応する吐出し速度でサンプリングポンプ15を吐出し動作させ、サンプリングプローブ8に保持されている検体4を反応容器9内に吐き出す。これにより、反応容器9内には、15uL以下にサンプリングされた検体4が分注される。
次に、サンプリングアーム駆動部24は、サンプリングプローブ8から検体4を吐出した後、待ち時間wの経過の後、時刻tから時刻tにおいて、サンプリング機構6における昇降機構12を上昇動作し、サンプリングアーム7を上昇させる。これにより、サンプリングプローブ8は、反応容器9から出て、反応容器9の真上に移動する。
【0032】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tから時刻tにおいて、サンプリング機構6における回転機構11を回転駆動し、サンプリングアーム7を図3に示す矢印A方向に回転させ、サンプリングプローブ8を洗浄機構28の洗浄槽30内に移動する。洗浄機構28は、時刻tから時刻t10において、洗浄槽30に挿入されたサンプリングプローブ8に対して洗浄ポンプ29の駆動により洗浄液を噴射させることによりサンプリングプローブ8を洗浄する。
【0033】
次に、検体4のサンプリング量が例えば15uL以上の場合について説明する。
主制御部20は、記憶部21に記憶されている自動分析プログラムを実行して自動分析部22、サンプリング速度制御部23、サンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25及び洗浄駆動部26に各動作指令を発する。
【0034】
サンプリング速度制御部23は、図5に示すサンプリング速度制御テーブル27に記憶されている15uL以上のサンプリング量(例えば15〜35uL)に対応するサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7aの上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間を読み出し、これらサンプリングポンプ15の吸引及び吐出し速度、サンプリングアーム7の上下動作の速度、サンプリングアーム7の回転動作の速度、サンプリングポンプ15の駆動によるエアーの吸引速度及び待ち時間に従ってサンプリングアーム駆動部24、ポンプ駆動部25に対して各制御信号を送出する。
【0035】
これにより、サンプリングアーム駆動部24は、時刻tsから時刻t11において、15uL以上のサンプリング量に対応した回転速度でサンプリング機構6aにおける回転機構11を回転駆動し、サンプリングアーム7を搬送ユニット3の検体容器5の真上に配置する。このとき、サンプリングアーム7の回転速度は、サンプリング量15uL以下の場合の回転速度よりも速く設定されている。これにより、サンプリングアーム7を回転移動する期間(ts〜t11)は、サンプリング量15uL以下の期間(ts〜t)よりも短縮される。
【0036】
これと共に、ポンプ駆動部25は、略同一の時刻tsから時刻t11において、15uL以上のサンプリング量に対応したエアー吸引の速度でサンプリングポンプ15を吸引動作させ、サンプリングプローブ8のエアーギャップを吸引する。このとき、エアーギャップの吸引速度は、サンプリング量15uL以下の場合の吸引速度よりも速く設定されている。これにより、エアーギャップを吸引する期間(ts〜t11)もサンプリング量15uL以下の期間(ts〜t)よりも短縮される。
【0037】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻t11から時刻t12において、15uL以下のサンプリング量に対応した下降速度でサンプリング機構6における昇降機構12を下降動作し、サンプリングアーム7を下降させる。このとき、サンプリングアーム7の下降速度は、サンプリング量15uL以下の場合の下降速度よりも速く設定されている。これにより、サンプリングプローブ8が検体容器5に収容されている検体4内に浸透するまでに要する期間(t11〜t12)は、サンプリング量15uL以下の場合よりも短縮される。このサンプリングアーム7の下降によりサンプリングプローブ8は、検体容器5に向かって下降し、サンプリングプローブ8が検体容器5に収容されている検体4内に浸透すると、サンプリングプローブ8の下降が停止する。
【0038】
次に、ポンプ駆動部25は、時刻t12から時刻t13において、15uL以上のサンプリング量に対応した吸引速度でサンプリングポンプ15を吸引動作させ、サンプリングプローブ8により検体容器5に収容されている検体4を吸引する。このとき、検体4の吸引速度は、サンプリング量15uL以下の場合の吸引速度よりも速く設定されている。
ところで、サンプリング量15uL以上の検体4をサンプリングする場合、検体4の吸引速度をサンプリング量15uL以下の場合の吸引速度よりも速く設定したとしても、サンプリング量15uL以下の検体4を吸引する期間(例えばt〜t)と略同一期間で吸引を終了できるとは限らず、期間(例えばt〜t)よりも長く要する場合がある。この場合、サンプリングアーム7の回転や下降、後述するサンプリングアーム7の上昇する各期間を短縮するので、サンプリング量15uL以上の検体4を吸引するに要する期間(t12〜t13)を長くできる。
【0039】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、サンプリングプローブ8により検体4を吸引後、待ち時間w11の経過の後、時刻t13から時刻t14において、15uL以上のサンプリング量に対応した上昇速度でサンプリングアーム7を上昇させ、検体容器5の真上に移動させる。なお、待ち時間w11は、上記15uL以下のサンプリング量のときの待ち時間wよりも短縮されている。サンプリングアーム7の上昇速度は、サンプリング量15uL以下の場合の上昇速度よりも速く設定されている。これにより、サンプリングプローブ8が検体容器5から出て、検体容器5の真上までに要する期間(t13〜t14)は、サンプリング量15uL以下の場合よりも短縮される。
【0040】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻t14から時刻t15において、サンプリング量15uL以下の場合と同様に、サンプリングアーム7を回転させて生化学分析ユニット1における反応容器9の真上に移動する。
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻t15から時刻t16において、サンプリング量15uL以下の場合と同様に、サンプリングアーム7を下降させる。このサンプリングアーム7の下降によりサンプリングプローブ8は、反応容器9内に向かって下降し、反応容器9内に例えば挿入されたときに下降を停止する。
【0041】
次に、ポンプ駆動部25は、時刻t16から時刻t17において、15uL以上のサンプリング量に対応する吐出し速度でサンプリングポンプ15を吐出し動作させ、サンプリングプローブ8に保持されている検体4を反応容器9内に吐き出す。このとき、検体4の吐出し速度は、サンプリング量15uL以下の場合の吐出し速度よりも速く設定されている。
【0042】
ところで、サンプリング量15uL以上の検体4を吐き出す場合、検体4の吐出し速度をサンプリング量15uL以下の場合の吐出し速度よりも速く設定したとしても、サンプリング量15uL以下の検体4を吐き出す期間(例えばt〜t)と略同一期間で吐出しを終了できるとは限らず、期間(例えばt〜t)よりも長く要する場合がある。この場合、サンプリングアーム7の回転や下降、後述するサンプリングアーム7の上昇する各期間を短縮するので、サンプリング量15uL以上の検体4を吐き出すに要する期間(t16〜t17)を長くできる。これにより、反応容器9内には、15uL以上の検体4が分注される。
【0043】
次に、サンプリングアーム駆動部24は、サンプリング量15uL以下の場合と同様に、サンプリングプローブ8により検体4を吐出し後、待ち時間w12の経過の後、時刻t17から時刻t18において、サンプリングアーム7を上昇させw反応容器9の真上に移動する。なお、待ち時間w12は、上記15uL以下のサンプリング量のときの待ち時間wよりも短縮されている。
次に、サンプリングアーム駆動部24は、時刻t18から時刻t19において、サンプリングアーム7を回転させてサンプリングプローブ8を洗浄機構28の洗浄槽30内に移動する。洗浄機構28は、時刻t19から時刻t20において、洗浄槽30に挿入されたサンプリングプローブ8に対して洗浄ポンプ29の駆動により洗浄液を噴射させることによりサンプリングプローブ8を洗浄する。
【0044】
このように上記一実施の形態によれば、検体4のサンプリング量の増加に応じてサンプリングアーム7の上下動作の昇降速度及び回転速度、サンプリングポンプ15によるエアーの吸引速度を速く可変するので、サンプリングアーム7の上昇動作、下降動作及び回転動作に要する期間を短縮し、1サイクル期間中における検体4の吸引期間及び吐出し期間を長くすることができる。換言すれば、例えばサンプリング量15uL〜35uLに増加した場合における検体4の吸引期間及び吐出し期間の延びを補償することができ、これにより、1サイクル期間内で例えばサンプリング量15uL〜35uLの検体4を分注できる。従って、検体4の分析のスループットを向上でき、検体4のサンプル分注制御を複雑化することもない。
【0045】
又、例えばサンプリングアーム7により検体4を吸引後又は検体4を吐出し後のうちいずれか一方又は両方におけるサンプリングプローブ8を移動させるまでの待ち時間を短縮でき、検体4の分析のスループット向上に寄与できる。
【0046】
なお、サンプリングアーム7の移動速度、エアー吸引速度、検体4を吸引後又は検体4を吐出し後のうちいずれか一方又は両方におけるサンプリングプローブ8を移動させるまでの待ち時間を変える場合、以下を考慮するのがよい。
【0047】
サンプリングアーム7の移動速度が速いと移動による振動等の影響による誤差、例えば、検体4への吸引用の水の混入等を生じやすい。サンプリングプローブ8内で例えば吸引用の水が僅かに検体4に混入した場合、検体4のサンプル量が多い時は全体の割合から誤差は小さく問題とならない。しかしながら、少量の検体4のときは誤差が大きくなり問題である。従って、少量の検体4をサンプリングするときは、サンプリングプローブ8の移動速度を遅くする方が好ましい。
【0048】
エアー吸引速度の場合、検体4の吸引時間が早いと吸引用の水のサンプリングプローブ8の吸引管への付着残量の増加等の誤差要因を生じやすくなる。検体4が多い場合は全体の量に対する誤差の割合が小さいので吸引速度を短くしても誤差への影響は少ない。従って、検体4が少ない場合は全体の量に対する誤差が比較的大きくなるので吸引速度は遅くすることが好ましい。
【0049】
サンプリングプローブ8を移動させずに停止している休止時間の場合、この休止時間が短いとエアーギャップ部の変動が十分に治まらず誤差を生じる原因となる可能性がある。検体4が多い場合は、全体の量に対する誤差の割合が小さいので休止時間を短くしても誤差への影響は少ない。従って、検体4が少ない場合は、全体の量に対する誤差が比較的大きくなるので、休止時間は長くすることが好ましい。
【0050】
なお、本発明は、上記一実施の形態に限定されるものではなく、次のように変形してもよい。
上記一実施の形態は、検体4を分注する場合に適用したが、例えば反応容器9内に収容されている検体4にそれぞれ試薬を投入する場合にも適用可能である。この場合、試薬用のサンプリングアームは、試薬の量の増加に応じて昇降速度及び回転速度を速く設定する。又、試薬用のサンプリングプローブの吸引速度及び吐出し速度も速く設定する。
上記一実施の形態は、検体4のサンプリング量の増加に応じてサンプリングアーム7の上下動作の昇降速度及び回転速度、サンプリングポンプ15によるエアーの吸引速度を速く可変しているが、これらサンプリングアーム7の上下動作の昇降速度及び回転速度、サンプリングポンプ15によるエアー吸引速度以外の検体4又は試薬のサンプリング時間の延長に寄与する少なくとも1つの機器の動作時間を検体4又は試薬のサンプリング量に応じて短縮してもよい。
【0051】
なお、サンプリングプローブ8により例えば検体4を分注する場合、吸引速度及び吐出し速度を遅く設定すれば、精度高くサンプリング量を分注でき、吸引速度及び吐出し速度を速くするに伴なって分注するサンプリング量の精度が低下する。従って、例えばサンプリング量15uL〜35uLの検体4を分注する場合、精度高くサンプリング量を分注する要求がある場合には、当該検体4の分注に2サイクルを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る自動分析装置の一実施の形態を示す構成図。
【図2】同装置におけるサンプリング機構を示す概略構成図。
【図3】同装置におけるサンプリングアームの回転移動の軌跡を示す図。
【図4】同装置における制御系を示す機能ブロック構成図。
【図5】同装置におけるサンプリング速度制御テーブルを示す模式図。
【図6】同装置におけるサンプリング制御を示す1サイクル中のタイミングチャート。
【符号の説明】
【0053】
1:生化学分析ユニット、2:免疫分析ユニット、3:搬送ユニット、4:検体、5:検体容器、6:サンプリング機構、7:サンプリングアーム、8:サンプリングプローブ、9:反応容器、10:ベース、11:回転機構、12:昇降機構、13:吐出口、14:搬送機構、15:サンプリングポンプ、20:主制御部、21:記憶部、22:自動分析部、23:サンプリング速度制御部、24:サンプリングアーム駆動部、25:ポンプ駆動部、26:洗浄駆動部、27:サンプリング速度制御テーブル、28:洗浄機構、29:29:洗浄ポンプ、30:洗浄槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させてサンプリングポンプの駆動により検体又は試薬を吸引し、前記プローブを前記サンプリングアームの動作により第2の容器に移動させて前記サンプリングポンプの駆動により前記検体又は前記試薬を吐き出し、前記検体の分析を行う自動分析装置において、
前記検体又は前記試薬のサンプリング量に応じて前記サンプリングアームの移動速度と、前記サンプリングポンプの駆動によるエアーの吸引速度と、前記プローブを移動させるまでの待ち時間とのうち少なくとも1つを可変するサンプリング速度制御部、
を具備したことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記サンプリング速度制御部は、前記サンプリングアームの上下動作の速度又は前記サンプリングアームの回転動作の速度のうち一方又は両方を可変して前記サンプリングアームの移動速度を可変することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させてサンプリングポンプの駆動により検体又は試薬を吸引し、前記プローブを前記サンプリングアームの動作により第2の容器に移動させて前記サンプリングポンプの駆動により前記検体又は前記試薬を吐き出し、前記検体の分析を行う自動分析装置において、
前記サンプリングポンプの駆動による前記検体又は前記試薬の吸引速度及び吐き出し速度以外の前記検体又は前記試薬のサンプリング時間の延長に寄与する少なくとも1つの動作時間を前記検体又は前記試薬のサンプリング量に応じて短縮するサンプリング速度制御部、
を具備したことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
前記プローブを前記第1の容器に移動させて前記検体又は前記試薬を吸引し、前記プローブを前記第2の容器に移動させて前記検体又は前記試薬を吐き出す動作を1サイクルとし、
前記サンプリング速度制御部は、前記1サイクル期間内で、前記検体又は前記試薬を前記第2の容器に分注するための前記サンプリングポンプの吸引及び吐出し速度、前記サンプリングアームの上下動作の速度、前記サンプリングアームの回転動作の速度、又は前記エアーの吸引速度を設定することを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記1サイクル内には、前記プローブにより前記検体又は前記試薬を吸引後又は吐出し後のうちいずれか一方又は両方における前記プローブを移動させるまでの待ち時間を有することを特徴とする請求項4記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記サンプリング速度制御部は、前記検体又は前記試薬のサンプリング量に応じた前記サンプリングポンプの吸引及び吐出し速度、前記サンプリングアームの上下動作の速度、前記サンプリングアームの回転動作の速度、前記サンプリングポンプの駆動による前記エアーの吸引速度、又は前記待ち時間のうち少なくとも1つをテーブル化して記憶する記憶部を有することを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記第1の容器は、前記検体を収容する検体容器を有し、
前記第2の容器は、前記検体と前記試薬とを反応させる反応管を有する、
ことを特徴とする請求項1又は3項記載の自動分析装置。
【請求項8】
プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させ、サンプリングポンプの駆動により前記プローブにより前記第1の容器から検体又は試薬を吸引し、前記プローブを前記サンプリングアームの動作により第2の容器に移動させ、前記サンプリングポンプの駆動により前記プローブから前記検体又は前記試薬を吐き出すサンプリング制御方法において、
前記検体又は前記試薬のサンプリング量に応じて前記サンプリングアームの移動速度と、前記サンプリングポンプの駆動によるエアーの吸引速度と、前記プローブを移動させるまでの待ち時間とのうち少なくとも1つを可変することを特徴とするサンプリング制御方法。
【請求項9】
前記サンプリングアームの移動速度の可変は、前記サンプリングアームの上下動作の速度と、前記サンプリングアームの回転動作の速度とをそれぞれ可変して行うことを特徴とする請求項8記載のサンプリング制御方法。
【請求項10】
プローブをサンプリングアームの動作により第1の容器に移動させ、サンプリングポンプの駆動により前記プローブにより前記第1の容器から検体又は試薬を吸引し、前記プローブを前記サンプリングアームの動作により第2の容器に移動させ、前記サンプリングポンプの駆動により前記プローブから前記検体又は前記試薬を吐き出すサンプリング制御方法において、
前記サンプリングポンプの駆動による前記検体の吸引速度及び吐き出し速度以外の前記検体のサンプリング時間の延長に寄与する少なくとも1つの動作時間を前記検体のサンプリング量に応じて短縮することを特徴とするサンプリング制御方法。
【請求項11】
前記プローブを前記第1の容器に移動させて前記検体又は試薬を吸引し、前記プローブを前記第2の容器に移動させて前記検体又は前記試薬を吐き出す動作を1サイクルとし、
前記サンプリングポンプの吸引及び吐出し速度、前記サンプリングアームの上下動作の速度、前記サンプリングアームの回転動作の速度、又は前記エアーの吸引速度は、それぞれ前記1サイクル期間内で前記検体又は前記試薬を前記第2の容器に分注するに応じた速度に設定することを特徴とする請求項9記載のサンプリング制御方法。
【請求項12】
前記1サイクル期間内は、前記プローブにより前記検体又は前記試薬を吸引後又は吐出し後のうちいずれか一方又は両方における前記プローブを移動させるまでの待ち時間を有することを特徴とする請求項11記載のサンプリング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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