説明

自動分析装置

【課題】原液と原液を希釈する希釈液とが混合された希釈溶液の有効期限を管理し、正確な分析結果の取得を維持できる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】原液と原液を希釈する希釈液とを混合した希釈溶液の有効期限を設定する設定部421と、設定部421によって設定された希釈溶液の有効期限をもとに、自動分析装置1が使用する希釈溶液が有効期限切れであるか否かを管理し、有効期限切れである場合にその旨を出力する管理部45とを備え、希釈溶液作成制御部411によって新たに作成される希釈溶液に有効期限を設定して管理することで分析精度を維持することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器に収容された検体と試薬との反応物の光学的特性を測定して前記検体の分析処理を行う自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、多数の検体に対する分析処理を同時に行ない、さらに、多成分を迅速に、かつ、高精度で分析できるため、免疫検査、生化学検査、輸血検査などさまざまな分野での検査に用いられている。このうち、腫瘍マーカーや感染症に対する免疫検査を行なう自動分析装置においては、緩衝液であるBF液の注入および吸引によって反応生成物と未反応物とを分離するBF(bound−free)分離を実施する不均一分析法が広く用いられている。
【0003】
ところで、免疫検査を行なう自動分析装置においては、検体の分析処理において緩衝液としてBF液を使用して未反応物の除去を行なっている。このBF液の有効期限が切れている場合には、未反応物の除去が十分に行なわれず実際には陰性である検体が擬陽性として検出されるなど、分析結果に影響を及ぼすおそれがある。また、検体、試薬及びBF液等を分注する分注プローブは、分注を行う度にプローブの洗浄を行う。このプローブの洗浄にはプローブ洗浄液が用いられ、分析処理におけるコンタミネーションを防止している。さらに正確な分析結果の取得を求める近年の要望に応えるため、BF液及びプローブ洗浄液等に対して、耐用回数若しくは有効期限を管理する自動分析装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−350451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、BF液及びプローブ洗浄液は、原液を希釈液によって希釈して用いられる。特許文献1に示した自動分析装置では、原液に対する管理しか行われておらず、希釈された希釈溶液は管理されていない。分析の間隔によっては、経時変化によって希釈溶液の機能が劣化し、分析に影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原液と原液を希釈する希釈液とが混合された希釈溶液の有効期限を管理し、正確な分析結果の取得を維持できる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、反応容器に収容された検体と試薬との反応物の光学的特性を測定して前記検体の分析処理を行う自動分析装置において、原液と該原液を希釈する希釈液とを混合した希釈溶液の有効期限を設定する有効期限設定手段と、前記有効期限設定手段によって設定された前記希釈溶液の前記有効期限をもとに、当該自動分析装置が使用中の前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを管理し、有効期限切れである場合にその旨を出力する管理手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記有効期限は、前記希釈溶液が作成された日時に所定期間付与して設定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記希釈溶液を貯蔵する希釈溶液タンク内の残量が所定量以下になったときに前記希釈溶液を補充する希釈溶液補充機構を備え、前記管理手段は、前記希釈溶液補充機構が前記希釈溶液を新たに補充する場合、該補充前に前記希釈溶液タンクに残存する希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れでない場合に該希釈溶液の有効期限を更新し、有効期限切れである場合に該希釈溶液の有効期限を更新しないことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記管理手段は、前記希釈溶液タンクに残存する希釈溶液が有効期限切れであると判断した場合、前記希釈溶液タンクを洗浄した後に有効期限を更新することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記管理手段は、各反応容器内の検体の分析処理の開始前に、該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れである場合、その旨を報知する報知処理手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記管理手段は、各反応容器内の検体の分析処理の開始前に、該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れである場合、該反応容器内の検体に対する分析処理結果に有効期限切れの情報を付加する情報付加手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記情報付加手段は、前記管理手段による判断において該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであって、前記分析処理を継続した場合に、該反応容器内の検体に対する分析処理結果に有効期限切れの情報を付加することを特徴する。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記原液は、前記検体と前記試薬との未反応物を除去する濃縮緩衝液であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記原液は、前記反応容器に溶液を分注する分注プローブを洗浄する濃縮プローブ洗浄液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、原液と原液を希釈する希釈液とが混合された希釈溶液に対して有効期限を設けるようにしたので、希釈溶液を管理して機能劣化を防止することで、正確な分析結果の取得を維持できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である自動分析装置について、被検血液の抗原抗体反応などの免疫検査を行なう自動分析装置を例に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0018】
図1は、本実施の形態にかかる自動分析装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、実施の形態にかかる自動分析装置1は、検体と試薬との間の反応物の作用による発光基質の発光量を測定する測定機構2と、測定機構2を含む自動分析装置1全体の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう制御機構4とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の免疫学的な分析を自動的に行なう。
【0019】
まず、測定機構2について説明する。測定機構2は、大別して検体移送部21、チップ格納部22、検体分注部23、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、第1試薬庫26、第2試薬庫27、第1試薬分注部28、第2試薬分注部29、酵素反応テーブル30、測光部31、第1反応容器移送部32および第2反応容器移送部33を備える。測定機構2の各構成部位は、所定の動作処理を行なう単数または複数のユニットを備える。
【0020】
検体移送部21は、検体を収容した複数の検体容器21aを保持し、図中の矢印方向に順次移送される複数の検体ラック21bを備える。検体容器21aに収容された検体は、検体の提供者から採取した血液または尿などである。
【0021】
チップ格納部22は、複数のチップを整列したチップケースを設置しており、このケースからチップを供給される。このチップは、分析項目測定時のキャリーオーバー防止のため、検体分注部23のノズル先端に装着され、検体分注ごとに交換されるディスポーザブルのサンプルチップである。
【0022】
検体分注部23は、検体の吸引および吐出を行なうチップが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。検体分注部23は、検体移送部21によって所定位置に移動された検体容器21a内の検体をチップによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器に分注して検体を所定タイミングでBFテーブル25上の反応容器内に移送する。
【0023】
免疫反応テーブル24は、それぞれ配置された反応容器内で検体と分析項目に対応する所定の試薬とを反応させるための反応ラインを有する。免疫反応テーブル24は、免疫反応テーブル24の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、免疫反応テーブル24に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。免疫反応テーブル24においては、図1に示すように、前処理、前希釈用の外周ライン24a、検体と固相担体試薬との免疫反応用の中周ライン24bおよび検体と標識試薬との免疫反応用の内周ライン24cを有する3重の反応ライン構造を形成してもよい。
【0024】
BFテーブル25は、所定の洗浄液を吸引吐出して検体または試薬における未反応物質を分離するBF(bound−free)分離を実施するBF洗浄処理を行なう。BFテーブル25は、BFテーブル25の中心を通る鉛直線を回転軸として反応ラインごとに回動自在であり、BFテーブル25に配置された反応容器を所定タイミングで所定位置に移送する。BFテーブル25は、BF分離に必要な磁性粒子を集磁する集磁機構と、BF希釈溶液を反応容器内に吐出・吸引してBF分離を実施するBF洗浄ノズルを有するBF洗浄部251と、集磁された磁性粒子を分散させる攪拌機構とを有する。このBFテーブル25におけるBF洗浄処理として、第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理が行われる。なお、BF洗浄部251は、複数のBF液吐出ノズルと、各BF液吐出ノズルに対応する複数のBF液吸引ノズルとを有する。なお、BF希釈溶液は、BF原液と、BF原液を希釈する希釈液とを混合させて、使用に適した濃度に調製された希釈溶液である。また、BF原液は、特許請求の範囲における緩衝液に対応する。
【0025】
第1試薬庫26は、BFテーブル25に配置された反応容器内に分注される第1試薬が収容された第1試薬容器26aを複数収納できる。第2試薬庫27は、BFテーブル25に配置された反応容器内に分注される第2試薬が収容された第2試薬容器27aを複数収納できる。第1試薬庫26および第2試薬庫27は、図示しない駆動機構が駆動することによって、時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器を第1試薬分注部28または第2試薬分注部29による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬は、分析対象である検体内の抗原または抗体と特異的に結合する反応物質を固相した不溶性担体である磁性粒子を含む試薬である。第2試薬は、磁性粒子と結合した抗原または抗体と特異的に結合する標識物質(たとえば酵素)を含む試薬である。また、第2試薬庫27は、標識物質との酵素反応によって発光する基質を含む基質液が収容された基質液容器27bを収納し、時計回りまたは反時計回りに回動して所定の基質液容器27bを第1試薬分注部28による基質液吸引位置まで搬送する。
【0026】
第1試薬分注部28は、第1試薬の吸引および吐出を行なうプローブが先端部に取り付けられ鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行なうアームを備える。第1試薬分注部28は、第1試薬庫26によって所定位置に移動された第1試薬容器26a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって第1試薬吐出位置に搬送された反応容器に分注する。また、第1試薬分注部28は、第2試薬庫27によって所定位置に移動された基質液容器27b内の基質液をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって基質液吐出位置に搬送された反応容器に分注する。なお、コンタミネーションを防止するため、図示しないプローブ洗浄部によってプローブの洗浄を行う。
【0027】
第2試薬分注部29は、第1試薬分注部と同様の構成を有し、第2試薬庫27によって所定位置に移動された試薬容器内の試薬をプローブによって吸引し、アームを旋回させ、BFテーブル25によって所定位置に搬送された反応容器に分注する。なお、第1試薬分注部28同様、コンタミネーションを防止するため、図示しないプローブ洗浄部によってプローブの洗浄を行う。
【0028】
酵素反応テーブル30は、反応容器内に注入された基質液内の基質が発光可能となる酵素反応処理を行なうための反応ラインである。測光部31は、反応容器内の反応液内の基質から発する発光を測定する。測光部31は、たとえば、化学発光で生じた微弱な発光を検出する光電子倍増管を有し、カウント法を用いて発光量を測定する。また、測光部31は、光学フィルターを保持し、発光強度に応じて光学フィルターにより減光された測定値によって真の発光強度を算出する。
【0029】
第1反応容器移送部32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、免疫反応テーブル24、BFテーブル25、酵素反応テーブル30、図示しない反応容器供給部および図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。また、第2反応容器移送部33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行ない、液体を収容した反応容器を所定タイミングで、酵素反応テーブル30、測光部31、図示しない反応容器廃棄部の所定位置に移送するアームを備える。
【0030】
つぎに、制御機構4について説明する。制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、送受信部44、管理部45、出力部46、及び記憶部47を備える。測定機構2および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。制御機構4は、一または複数のコンピュータシステムを用いて実現され、測定機構2に接続する。制御機構4は、自動分析装置1の各処理にかかわる各種プログラムを用いて、測定機構2の動作処理の制御を行なうとともに測定機構2における測定結果の分析を行なう。
【0031】
制御部41は、制御機能を有するCPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各構成部位の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行ない、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行なう。制御部41は、記憶部47が記憶するプログラムをメモリから読み出すことにより自動分析装置1の制御を実行する。また、制御部41は、希釈溶液作成制御部411と、報知処理部412と、情報付加部413とを有する。希釈溶液作成制御部411は、BF希釈溶液、プローブ洗浄液等の希釈溶液が所定量より少なくなった場合に補充処理を行う。報知処理部412は、分析処理において使用する希釈溶液の有効期限が切れている場合に、当該希釈溶液の有効期限が切れている旨を報知する報知処理を行う。情報付加部413は、分析処理に使用した希釈溶液が有効期限切れであった場合に、有効期限切れの希釈溶液の使用情報を分析結果に付加する。
【0032】
入力部42は、種々の情報を入力するためのキーボード、出力部46を構成するディスプレイの表示画面上における任意の位置を指定するためのマウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。また、設定部421は、希釈溶液作成制御部411によって作成された希釈溶液に対して有効期限を設定する設定情報を有効期限管理設定テーブル472に入力するとともに、有効期限管理設定テーブル472に基づいて希釈溶液の有効期限の設定を行い、有効期限管理テーブル471に出力する。分析部43は、測定機構2から取得した測定結果に基づいて検体に対する分析処理等を行なう。送受信部44は、図示しない通信ネットワークを介して所定の形式にしたがった情報の送受信を行なうインターフェースとしての機能を有する。
【0033】
管理部45は、各希釈溶液の有効期限を管理する。分析処理において、管理部45は、有効期限管理テーブル471から当該希釈溶液の有効期限を読み出し、使用する希釈溶液が有効期限内であるか否かを判断する。
【0034】
出力部46は、プリンタ、スピーカー等を用いて構成され、制御部41の制御のもと、分析に関する諸情報を出力する。出力部46は、制御部41の制御のもと、管理部45が希釈溶液の有効期限が切れていると判断した場合、希釈溶液の有効期限が切れていることを報知する警告を出力する。
【0035】
記憶部47は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部47は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。また、記憶部47は、有効期限管理テーブル471と、有効期限管理設定テーブル472とを有する。有効期限管理テーブル471は、各希釈溶液の有効期限を管理する。有効期限管理設定テーブル472は、各希釈溶液の有効期限に関する設定情報を管理し、各希釈溶液の有効期限を設定する場合に、設定情報をもとに設定部421が有効期限を設定する。
【0036】
この免疫検査を行なう自動分析装置1においては、第1試薬分注処理、検体分注処理、第1BF洗浄処理、第2試薬分注処理、第2BF洗浄処理、基質液分注処理、測定処理および分析処理が行われる。
【0037】
第1BF洗浄処理および第2BF洗浄処理において緩衝液として使用されるBF希釈溶液は、自動分析装置1内でBF原液を希釈液によって希釈した希釈溶液である。図2を参照して、BF原液を所定濃度に希釈する希釈溶液補充機構について説明する。図2は、BF希釈溶液を補充する希釈溶液補充機構を示す模式図である。
【0038】
図2に示すように、BF希釈溶液を補充する希釈溶液補充機構は、BF希釈溶液の原液を収容するBF原液タンク253と、BF原液を所定濃度に希釈するBF希釈溶液タンク254と、BF原液タンク253とBF希釈溶液タンク254とを接続するチューブ255と、原液を希釈する希釈液を収容する希釈液タンク256と、希釈液タンク256とBF希釈溶液タンク254とを接続するチューブ257と、BF希釈溶液タンク254とBF洗浄部251とを接続する管258aとを有する。チューブ255のBF原液タンク253側の先端には、異物を除去するフィルター255aが設けられている。チューブ255には、BF原液タンク253内のBF原液のBF希釈溶液タンク254内への注入および注入量を制御する原液用ポンプ255bが設けられている。チューブ257には、希釈液タンク256内の希釈液のBF希釈溶液タンク254内への注入および注入量を制御する希釈用ポンプ257aが設けられている。管258aには、BF希釈溶液タンク254内のBF洗浄部251への供給および供給量を制御するBF液供給ポンプ258bが設けられている。希釈液は、通常は、イオン交換水などの精製水が用いられる。
【0039】
原液用ポンプ255bおよび希釈用ポンプ257aの注入処理によって、所定量のBF原液および所定量の希釈液がBF希釈溶液タンク254内に注入され、所定濃度のBF希釈溶液に調製される。そして、BF洗浄処理においては、BF希釈溶液タンク254内のBF希釈溶液は、BF液供給ポンプ258bの供給処理によって、管258aを介してBF洗浄部251に供給され、BF液吐出ノズル251aから反応容器10内に吐出された後、BF液吸引ノズル251bから吸引され、排水管と接続する管258cを介して自動分析装置1外に廃棄される。
【0040】
さらに、BF希釈溶液タンク254には、BF希釈溶液タンク254内の希釈溶液量を検出する液位センサ259を有する。液位センサ259は、たとえば、サーミスタを自己発熱させて、液体の有無によって変わるサーミスタの温度変化特性を利用して液体の有無を判定するものでもよく、液体による圧力変化を電気信号に変換して液位を判定してもよい。液位センサ259による液量情報は、希釈溶液作成制御部411に出力され、BF希釈溶液タンク254内のBF希釈溶液が所定量より少ない場合、希釈溶液作成制御部411は、原液用ポンプ255bおよび希釈用ポンプ257aに注入処理させ、所定量のBF原液および所定量の希釈液をBF希釈溶液タンク254内に注入してBF希釈溶液を補充する。また、希釈溶液が補充されるとともに、補充情報が制御部41に出力され、有効期限管理が行われる。
【0041】
このような希釈溶液補充が行われるのは、自動分析装置1の分析中又は装置立ち上げ時等に、BF希釈溶液が消費され所定量より少なくなった場合である。この場合に行われる有効期限管理処理を、図3を参照して説明する。図3は、有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【0042】
まず、制御部41が希釈溶液補充指示を受けると、制御部41は、管理部45に希釈溶液の有効期限管理処理を行うよう指示を出す(ステップS102:Yes)。管理部45は、制御部41から有効期限管理処理指示を受けると、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が期限内であるかを判断する(ステップS104)。ここで、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が期限内である場合(ステップS104:Yes)、設定部421が、BF希釈溶液タンク254内に新たに補充された希釈溶液の有効期限を、作成された日時から所定期間付与して有効期限を設定して、有効期限管理テーブル471に出力し、管理部45が有効期限を更新する(ステップS106)。有効期限を更新した後、制御部41は、希釈溶液作成制御部411に希釈溶液の補充を許可し、BF希釈溶液タンク254に希釈溶液を補充する(ステップS108)。
【0043】
一方、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が切れている場合(ステップS104:No)、管理部45は、有効期限の更新は行わず、新たに希釈溶液が補充されても補充前の有効期限に設定する。なお、ステップS102において希釈溶液補充指示がない場合(ステップS102:No)、制御部41は、希釈溶液補充指示の有無の確認を繰り返す。
【0044】
上述した有効期限を用いる分析処理について、図4を参照して説明する。図4は、分析処理を示すフローチャートである。
【0045】
まず、制御部41が分析処理指示を受けると(ステップS202:Yes)、制御部41は、BF希釈溶液タンク254に貯蔵されている希釈溶液が有効期限内か否かを判断するよう管理部45に指示を出す(ステップS204)。ここで、有効期限内である場合(ステップS204:Yes)、制御部41は、検体と試薬との分注処理を行い(ステップS206)、分注処理後に検体と試薬との混合物の測光処理を行う(ステップS208)。その後、測光して得られた情報をもとに、分析部43が演算処理して検体の分析を行い(ステップS210)、ステップS224に移行して次検体の分析指示の有無を確認する。次検体の分析指示がある場合(ステップS224:Yes)、ステップS204へ移行して次の検体の分析処理を行う。また、次検体の分析指示がない場合(ステップS224:No)、分析処理を終了する。
【0046】
一方、BF希釈溶液タンク254に貯蔵されている希釈溶液の有効期限が切れている場合(ステップS204:No)、管理部45は、報知処理部412に希釈溶液の有効期限が切れている旨を出力し、報知処理部412が、希釈溶液の有効期限が切れている旨を報知する(ステップS212)。その後、分析を継続する指示がある場合(ステップS214:Yes)、制御部41は、検体と試薬との分注処理を行い(ステップS216)、分注処理後に検体と試薬との混合物の測光処理を行う(ステップS218)。測光して得られた情報をもとに、分析部43が演算処理して検体の分析を行う(ステップS220)。制御部41は、ステップS220で得られた分析結果に対して使用した希釈溶液が有効期限切れである旨の情報を付加するよう情報付加部413に指示を出す(ステップS222)。分析結果に有効期限切れ情報を付加した後、ステップS224に移行して次の検体の分析指示の有無を確認する。次検体の分析指示がある場合(ステップS224:Yes)、ステップS204へ移行して次の検体の分析処理を行う。一方、次検体の分析指示がない場合(ステップS224:No)、分析処理を終了する。なお、ステップS214において、分析を継続する指示がない場合、ステップS224に移行して、次の検体の分析指示の有無を確認する。また、ステップS202において分析処理指示がない場合、制御部41は、分析指示の有無の確認を繰り返す。
【0047】
ここで、希釈溶液の有効期限が一度切れてしまうと、補充を繰り返しても希釈溶液の有効期限は更新されない。一度切れた有効期限の更新は、BF希釈溶液タンク254の洗浄を行って新たな希釈溶液を補充した場合に行われる。すなわち、BF希釈溶液タンク254に残存している希釈溶液の有効期限が切れている場合の有効期限の更新は、BF希釈溶液タンク254を洗浄することによって更新可能となる。なお、希釈溶液タンク254の洗浄は、自動分析装置1の準備動作中又はメンテナンス時に行われる。この洗浄における有効期限管理処理を、図5を参照して説明する。図5は、洗浄時における有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【0048】
まず、管理部45は、BF希釈溶液タンク254の洗浄が終了したか否かの報知情報を取得する(ステップS302)。洗浄が終了した旨の情報を取得すると(ステップS302:Yes)、管理部45は、希釈溶液作成制御部411に希釈溶液の補充を許可する(ステップS304)。希釈溶液を補充後、管理部45は、有効期限を更新する(ステップS306)。上述した処理によって、期限の切れた希釈溶液の有効期限を更新し、新たに設定された有効期限を用いて分析処理を行うことができる。
【0049】
なお、洗浄による有効期限の更新は、図3に示した有効期限管理処理中で行ってもよい。図6は、有効期限が切れた場合に洗浄によって更新する有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【0050】
まず、制御部41が希釈溶液補充指示を受けると、制御部41は、管理部45に希釈溶液の有効期限管理処理を行うよう指示を出す(ステップS402:Yes)。管理部45は、制御部41から有効期限管理処理指示を受けると、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が期限内であるかを判断する(ステップS404)。ここで、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が期限内である場合(ステップS404:Yes)、設定部421が、BF希釈溶液タンク254内に新たに補充された希釈溶液の有効期限を、作成された日時から所定期間付与して有効期限を設定して、有効期限管理テーブル471に出力し、管理部45が有効期限を更新する(ステップS414)。有効期限を更新した後、制御部41は、希釈溶液作成制御部411に希釈溶液の補充を許可し、BF希釈溶液タンク254に希釈溶液を補充する(ステップS416)。
【0051】
一方、補充前にBF希釈溶液タンク254に残存していた希釈溶液の有効期限が切れている場合(ステップS404:No)、管理部45は、自動分析装置が分析中であるか否かを確認する(ステップS406)。ここで、分析中でない場合(ステップS406:No)、管理部45は、BF希釈溶液タンク254の洗浄指示を報知するよう報知制御部412に指示する(ステップS408)。その後、管理部45は、BF希釈溶液タンク254の洗浄が終了した旨の情報を受けると(ステップS410:Yes)、ステップS414に移行して有効期限の更新処理を行い、希釈溶液作成制御部411に希釈溶液の補充を許可し、希釈溶液作成制御部411がBF希釈溶液タンク254に希釈溶液を補充する(ステップS416)。また、ステップS406において、分析中である場合(ステップS406:Yes)、管理部45は、ステップS412に移行して報知制御部412に分析中である旨を報知するよう指示した後、希釈溶液作成制御部411に希釈溶液の補充を許可する(ステップS416)。上述した有効期限管理処理によって、装置立ち上げ時に希釈溶液補充処理を行う場合等、分析中以外に有効期限の切れた希釈溶液に対して有効期限を更新することが可能となる。
【0052】
なお、上述した希釈溶液補充機構及び有効期限管理処理は、BF希釈溶液に限らず、プローブ洗浄液等、自動分析装置で使用される希釈溶液の全てに適用できる。
【0053】
本実施の形態では、原液と原液を希釈する希釈液とを混合した希釈溶液に有効期限を設定して管理できるため、実際に自動分析装置で使用される希釈溶液の機能劣化を防止することが可能となり、分析結果の精度を維持することができる。また、希釈溶液の有効期限が切れた状態で分析を継続した場合に分析結果に有効期限切れの情報を付加することで、分析結果に異常があった場合でも対応することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態にかかる自動分析装置を示す模式図である。
【図2】BF希釈溶液を補充する希釈溶液補充機構を示す模式図である。
【図3】有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【図4】分析処理を示すフローチャートである。
【図5】洗浄時有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【図6】有効期限管理処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 自動分析装置
2 測定機構
4 制御機構
21 検体移送部
22 チップ格納部
23 検体分注部
24 免疫反応テーブル
25 BFテーブル
26 第1試薬庫
27 第2試薬庫
28 第1試薬分注部
29 第2試薬分注部
30 酵素反応テーブル
31 測光部
32 第1反応容器移送部
33 第2反応容器移送部
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 送受信部
45 管理部
46 出力部
47 記憶部
251 BF洗浄部
253 BF原液タンク
254 BF希釈溶液タンク
255,257 チューブ
255b 原液用ポンプ
256 希釈液タンク
257a 希釈用ポンプ
258a,258c 管
258b BF液供給ポンプ
259 液位センサ
411 希釈溶液作成制御部
412 報知処理部
413 情報付加部
421 設定部
471 有効期限管理テーブル
472 有効期限管理設定テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に収容された検体と試薬との反応物の光学的特性を測定して前記検体の分析処理を行う自動分析装置において、
原液と該原液を希釈する希釈液とを混合した希釈溶液の有効期限を設定する有効期限設定手段と、
前記有効期限設定手段によって設定された前記希釈溶液の前記有効期限をもとに、当該自動分析装置が使用中の前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを管理し、有効期限切れである場合にその旨を出力する管理手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記有効期限は、前記希釈溶液が作成された日時に所定期間付与して設定されることを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記希釈溶液を貯蔵する希釈溶液タンク内の残量が所定量以下になったときに前記希釈溶液を補充する希釈溶液補充機構を備え、
前記管理手段は、前記希釈溶液補充機構が前記希釈溶液を新たに補充する場合、該補充前に前記希釈溶液タンクに残存する希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れでない場合に該希釈溶液の有効期限を更新し、有効期限切れである場合に該希釈溶液の有効期限を更新しないことを特徴とする請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記管理手段は、
前記希釈溶液タンクに残存する希釈溶液が有効期限切れであると判断した場合、前記希釈溶液タンクを洗浄した後に有効期限を更新することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記管理手段は、
各反応容器内の検体の分析処理の開始前に、該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れである場合、その旨を報知する報知処理手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記管理手段は、
各反応容器内の検体の分析処理の開始前に、該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであるか否かを判断し、有効期限切れである場合、該反応容器内の検体に対する分析処理結果に有効期限切れの情報を付加する情報付加手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記情報付加手段は、前記管理手段による判断において該分析処理に用いられる前記希釈溶液が有効期限切れであって、前記分析処理を継続した場合に、該反応容器内の検体に対する分析処理結果に有効期限切れの情報を付加することを特徴する請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記原液は、前記検体と前記試薬との未反応物を除去する濃縮緩衝液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記原液は、前記反応容器に溶液を分注する分注プローブを洗浄する濃縮プローブ洗浄液であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−19684(P2010−19684A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180403(P2008−180403)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】