説明

自動分析装置

【課題】抗凝固剤によらず高精度な測定を行うことができる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】検体容器11aに収容された血液成分を含む検体をプローブ12aによって反応容器13aに分注し、反応容器13a内で試薬と反応させて検体を分析する自動分析装置1において、検体容器11aが自動分析装置1の検体供給部11に配置されてからの経過時間を計時する計時部33と、血液の凝固を抑制する抗凝固剤の種類ごとに、経過時間と、抗凝固剤を混合した検体の液面からのプローブ12aの侵入深さとを対応させた侵入深さ情報を記憶する侵入深さ情報記憶部34aと、検体に混合された抗凝固剤の種類情報を取得するバーコード読取装置19と、侵入深さ情報に基づいて、抗凝固剤の種類および経過時間に応じた吸引位置までプローブ12aの先端を下降させ、プローブ12aによって検体を吸引させる血球分注制御部35aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体容器に収容された検体をプローブによって反応容器に分注し、反応容器内の検体を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を分析する自動分析装置は、検体が収容された検体容器から一定量の検体を反応容器に分注し、反応容器内で試薬と検体とを反応させて検体を分析している。このような自動分析装置において、血液に含まれるヘモグロビンA1c(HbA1c)の測定を行う場合、検体容器内の血液から血球成分を分注する必要がある。この血球成分を含む検体は、検体容器に採取した後、放置しておくと血球成分が沈降し、血漿成分と血球成分とに分離してしまう。そこで、検体容器に収容された全血の液面からのプローブの侵入深さを変化させる自動分析装置が提案されている(特許文献1参照)。この自動分析装置は、予め取得した鉛直方向での血球成分の経時的な濃度変化情報をもとに、適切な深さにプローブを位置させて検体を分注するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−316013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検体容器に収容された抗凝固剤を含んだ全血では、混合する抗凝固剤の種類によって、HbA1cの測定結果に差が生じることがある。しかしながら、特許文献1の自動分析装置は、抗凝固剤の種類に応じて異なる測定を行うものではない。従って、高精度な測定を行うことできない場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、抗凝固剤によらず高精度な測定を行うことができる自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体容器に収容された血液成分を含む検体をプローブによって反応容器に分注し、該反応容器内で試薬と反応させて前記検体を分析する自動分析装置において、前記検体容器が当該自動分析装置の所定位置に配置されてからの経過時間を計時する計時部と、血液の凝固を抑制する抗凝固剤の種類ごとに、前記経過時間と、前記抗凝固剤を混合した前記検体の液面からの前記プローブの侵入深さとを対応させた侵入深さ情報を記憶する記憶部と、前記検体に混合された前記抗凝固剤の種類情報を取得する取得部と、前記侵入深さ情報に基づいて、前記抗凝固剤の種類および前記経過時間に応じた吸引位置まで前記プローブの先端を下降させ、前記プローブによって前記検体を吸引させる制御部と、を備えること特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記取得部は、前記検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを示す分析項目情報を取得し、前記制御部は、
前記分析項目情報に基づいて、前記プローブに吸引させる検体の分析項目が、前記検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを判断する判断部と、前記判断部が、前記プローブに吸引させる検体の分析項目が前記検体の血球成分を用いる分析項目であると判断した場合、前記侵入深さ情報を参照することによって、前記検体の液面に対して前記プローブの侵入深さ分だけ深い位置の前記吸引位置を算出する算出部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検体の液面を検出する検出部をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる自動分析装置は、計時部が、検体容器が当該自動分析装置の所定位置に配置されてからの経過時間を計時し、記憶部が、血液の凝固を抑制する抗凝固剤の種類ごとに、前記経過時間と、前記抗凝固剤を混合した前記検体の液面からの前記プローブの侵入深さとを対応させた侵入深さ情報を記憶し、取得部が、前記検体に混合された前記抗凝固剤の種類情報を取得し、制御部が、前記侵入深さ情報基づいて、前記抗凝固剤の種類および前記経過時間に応じた吸引位置まで前記プローブの先端を下降させ、前記プローブによって前記検体を吸引させるので、前記抗凝固剤の種類によって変化する血球成分の沈降速度に応じた吸引位置で血球成分を吸引させることができる。従って、抗凝固剤によらず高精度な測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る自動分析装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、抗凝固剤としてNaFを用いた場合について、転倒混和してからの時間の経過に伴って血球成分の濃度が鉛直方向で変化することを示すグラフである。
【図3】図3は、抗凝固剤としてEDTA−2Kを用いた場合について、転倒混和してからの時間の経過に伴って血球成分の濃度が鉛直方向で変化することを示すグラフである。
【図4】図4は、図1に示した自動分析装置が行う検体分注処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、この発明にかかる自動分析装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る自動分析装置の構成を模式的に示す図である。自動分析装置1は、分析対象である検体と試薬との反応を光学的に測定する測定部10と、測定部10を含む自動分析装置1全体の制御および測定部10における測定結果の分析を行う制御装置30とを有する。自動分析装置1は、測定部10および制御装置30を連携させることによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。
【0013】
測定部10は、検体供給部11、検体分注部12、反応テーブル13、測光部14、洗浄部15、攪拌部16、試薬分注部17および試薬テーブル18を有する。
【0014】
検体供給部11は、検体容器11aが保持された複数のラック11bを収納して検体分注位置に順次移送する。検体供給部11の側部には、バーコード読取装置19が設けられる。また、検体容器11aには、検体情報が記録されたバーコードラベル11cが付与され、ラック11bには、ラック情報が記録されたバーコードラベル11dが付与されている。バーコード読取装置19は、検体容器11aがラック11bに保持されて搬送される際に、バーコードラベル11c,11dの情報を読み取り、読み取った検体情報およびラック情報を制御部35に出力する。
【0015】
なお、バーコードラベル11cに記録された情報は、検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを示す分析項目情報および検体に混合された抗凝固剤の種類情報を含む。すなわち、バーコード読取装置19は、取得部として分析項目情報および検体に混合された抗凝固剤の種類情報を取得する。なお、分析項目情報および抗凝固剤の種類情報は、後述する入力部31によって入力するようにしてもよい。
【0016】
検体分注部12は、検体の吸引および吐出を行うプローブ12a、プローブ12aが先端部に取り付けられたアーム12b、プローブ12aを洗浄するプローブ洗浄部12c、および液面検出センサ12dを有する。アーム12bは、図示しない駆動機構によって鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。
【0017】
液面検出センサ12dは、光センサによって実現され、検体分注位置に移送された検体容器11aの側方となる位置に設けられる。液面検出センサ12dは、液面の検出部として検体容器11a内の検体の液面を検出し、検出した液面の位置情報を制御部35に出力する。なお、液面検出センサ12dは、検体容器11a内の検体の液面を検出できれば、例えば、静電容量の変化によって液面を検出する接触式センサをプローブ12aの先端部に設け、この接触式センサによって液面を検出するようにしてもよい。
【0018】
検体分注部12は、検体供給部11の検体分注位置に移送された検体容器11a内からプローブ12aによって検体を吸引し、アーム12bを図中反時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の検体吐き出し位置に搬送された反応容器13aに、検体を吐き出して分注を行う。
【0019】
反応テーブル13は、図示しない保温部材と、ホイール13bとを有する。ホイール13bは、複数の反応容器13aを保持し、図示しない駆動機構によって回転して反応容器13aを周方向に移送する。
【0020】
測光部14は、所定の測定位置に移送された反応容器13aに測定光を照射し、反応容器13a内の検体と試薬との反応液を透過した光を分光し、各波長光の強度測定を行うことによって、分析対象である検体と試薬との反応液に特有の波長の吸光度を測定する。
【0021】
洗浄部15は、図示しないノズルによって、測光部14による測定が終了した反応容器13a内の混合液を吸引して排出するとともに、洗剤や洗浄水等の洗浄液を注入および吸引することで洗浄を行う。攪拌部16は、反応容器13aに分注された試薬と検体との混合液の攪拌を行い、反応を促進させる。
【0022】
試薬分注部17は、試薬の吸引および吐出を行うプローブ17a、プローブ17aが先端部に取り付けられたアーム17bおよびプローブ17aを洗浄するプローブ洗浄部17cを有する。アーム17bは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。試薬分注部17は、試薬テーブル18上の所定位置に移送された試薬容器18b内の試薬をプローブ17aによって吸引し、アーム17bを図中反時計回りに旋回させ、反応テーブル13上の所定位置に搬送された反応容器13aに、試薬を吐き出して分注を行う。
【0023】
試薬テーブル18は、ホイール18aを有する。ホイール18aは、複数の試薬容器18bを保持し、図示しない駆動機構によって回転して試薬容器18bを周方向に移送する。
【0024】
制御装置30は、入力部31、出力部32、計時部33、記憶部34および制御部35を有する。測定部10および制御装置30内の上述した各部は、制御部35に接続される。制御部35は、CPU等によって実現され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部35は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部35は、測光部14によって測定された測定結果をもとに、検体内における検出対象物の濃度を求め、検体の成分分析等を行う。
【0025】
入力部31は、キーボート、マウスあるいはハンディータイプのバーコードリーダー等によって実現され、検体の分析に関する各種情報の入力を受ける。出力部32は、ディスプレイ、プリンタおよびスピーカー等によって実現され、検体の分析に関する各種情報等を出力する。
【0026】
計時部33は、時間を計時するタイマー機能を備えて実現される。計時部33は、検体を収容した検体容器11aが自動分析装置1の検体供給部11に配置されてからの経過時間を計時する。具体的には、操作者が検体容器11a内の検体を転倒混和し、ラック11bを検体供給部11に配置する際に、入力部31の図示しないハンディータイプのバーコードリーダー等によって、バーコードラベル11dのラック情報を読み取る。計時部33は、入力部31によるバーコードラベル11dの記録情報の読み取り処理をトリガとして計時を開始する。計時部33は、プローブ12aが検体の吸引のために検体分注位置の検体容器11a上方に移動した際に、計時を停止する。すなわち、計時部33によって計時される時間は、検体容器11a内の検体を転倒混和してから検体が分注されるまでの経過時間である。計時部33は、この経過時間の情報を制御部35に出力する。
【0027】
また、計時部33は、バーコードラベル11dのラック情報と計時開始時刻とを関連づけて記憶部34に記憶させ、プローブ12bが検体の吸引のために検体分注位置の検体容器11a上方に移動した時刻との差から経過時間を算出してもよい。この場合、複数のラック11bについて検体供給部11に配置されてからの経過時間を計時することができる。なお、計時部33は、検体を収容した検体容器11aが自動分析装置1の所定位置に配置されてからの経過時間を計時できればよい。すなわち、検体容器11a内の検体を転倒混和してからの経過時間を計時できればよい。
【0028】
記憶部34は、情報を磁気的に記憶するハードディスク等によって実現され、検体の分析に関する各種情報を記憶する。記憶部34は、侵入深さ情報記憶部34aを有する。侵入深さ情報記憶部34aは、抗凝固剤の種類ごとに転倒混和後の経過時間と、検体の液面からのプローブ12aの侵入深さとを対応させた侵入深さ情報を記憶する。
【0029】
ここで、図2および図3を参照し、転倒混和後の経過時間とプローブ12aの侵入深さとの関係を説明する。図2は、抗凝固剤としてNaFを用いた場合について、転倒混和してからの時間の経過に伴って血球成分の濃度が鉛直方向で変化することを示すグラフである。図3は、抗凝固剤としてEDTA−2Kを用いた場合について、転倒混和してからの時間の経過に伴って血球成分の濃度が鉛直方向で変化することを示すグラフである。図2および図3において、横軸は転倒混和してからの経過時間tを表し、縦軸は、液面からの深さhを表している。この深さhは、検体容器11aの底面から液面までの高さに対する液面からの深さの割合である。従って、図2および図3において、縦軸は、液面位置の深さhを0とし、検体容器11aの底面位置の深さhを1として表す。
【0030】
図2および図3に示すように、転倒混和してからの時間の経過に伴い血球成分が沈降するため、血球成分は、適正な濃度R1より薄い濃度R0の領域が経時的に上層から下層に向かって拡大し、適正な濃度R1よりも濃い濃度R2の領域は、下層から上層に拡大する。
【0031】
抗凝固剤としてNaFを用いた場合、図2に示すように、転倒混和してから経過時間t3で検体がほぼ血漿成分層と血球成分層とに分離する。この分離が発生するまでの間、例えば、経過時間t1では、h1<h<h4の深さhの範囲にプローブ12aの先端を位置させることによって適正な濃度R1の血球成分を吸引することができる。
【0032】
抗凝固剤としてEDTA−2Kを用いた場合、図3に示すように、転倒混和してからt2で検体がほぼ血漿成分層と血球成分層とに分離する。この場合、経過時間t1では、h2<h<h3の深さhの範囲にプローブ12aの先端を位置させることによって適正な濃度R1の血球成分を吸引することができる。すなわち、抗凝固剤の種類によって血球成分の沈降速度が異なる。このため、侵入深さ情報は、抗凝固剤の種類によって転倒混和後の経過時間に応じた検体の液面からのプローブ12aの侵入深さを対応させる。
【0033】
具体的には、経過時間t1では、抗凝固剤としてNaFを用いた場合、深さh1近傍に侵入深さを設定し、抗凝固剤としてEDTA−2Kを用いた場合、深さh2近傍に侵入深さを設定する。すなわち、プローブ12aの侵入深さを抗凝固剤の種類に応じて浅い位置に設定する。このため、抗凝固剤としてNaFを用いた場合、抗凝固剤としてEDTA−2Kを用いた場合に比して、同一の経過時間においてより浅い位置で適正な濃度の血球成分を分注することができる。
【0034】
制御部35は、制御装置30内の各種機能の制御を含めて自動分析装置1の制御を行う。制御部35は、血球分注制御部35aを有する。
【0035】
血球分注制御部35aは、侵入深さ情報記憶部34a内の侵入深さ情報に基づいて、抗凝固剤の種類および計時部33が計時した経過時間に応じた吸引位置までプローブ12aの先端を下降させ、プローブ12aによって検体を吸引させる。血球分注制御部35aは、判断部35bおよび算出部35cを有する。
【0036】
判断部35bは、バーコード読取装置19が取得した検体容器11a内の検体が血球成分の分析項目を含むか否かの分析項目情報に基づいて、プローブ12aに吸引させる検体の分析項目が、検体の血球成分を用いる分析項目か否かを判断する。ここで、プローブ12aに吸引させる検体とは、検体分注位置に搬送される検体である。
【0037】
算出部35cは、判断部35bがプローブ12aに吸引させる検体の分析項目が検体の血球成分を用いる分析項目であると判断した場合、侵入深さ情報記憶部34a内の侵入深さ情報を参照することによって、液面検出センサ12dによって検出された検体の液面に対してプローブ12aの侵入深さ分だけ深い位置の吸引位置を算出する。
【0038】
自動分析装置1では、順次搬送される複数の反応容器13aに対して、試薬分注部17が、試薬容器18bから反応容器13aに試薬を分注し、検体分注部12が、検体容器11aから反応容器13aに所定量の検体を分注する。続いて、攪拌部16が、反応容器13a内の試薬と検体とを撹拌して反応させた後、測光部14が、試薬と検体との混合液の吸光度測定を行う。そして、制御部35が、測定結果を分析し、検体の成分分析等を自動的に行う。また、洗浄部15が、測光部14による測定が終了した反応容器13aの洗浄・乾燥を行い、一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0039】
ここで、図4を参照して自動分析装置1が行う検体分注処理の手順を説明する。図4は、自動分析装置1が行う検体分注処理の手順を示したフローチャートである。まず、計時部33が、計時を開始する(ステップS101)。計時部33による計時の開始は、制御部35が入力部31からの計時開始を指示する旨の信号を受信した場合に行われる。その後、血球分注制御部35aは、分注対象の検体情報を取得する(ステップS102)。この検体情報は、検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かの情報、および血球成分を含む検体に混合された抗凝固剤の種類情報を含むものであり、バーコード読取装置19によって取得される。
【0040】
その後、判断部35bは、検体供給部11に搬送された検体の分析項目が検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを判断する(ステップS103)。この判断は、ステップS102において取得した検体情報に基づいて行われる。検体の血球成分を用いる分析項目である場合(ステップS103,Yes)、血球分注制御部35aは、検体分注位置に搬送された検体容器11aの上方にプローブ12aを移動させる(ステップS104)。
【0041】
その後、計時部33は、計時を停止し(ステップS105)、血球分注制御部35aは、計時された時間が所定時間内であるか否かを判断する(ステップS106)。この判断に用いる所定時間は、転倒混和してからの血漿成分層と、血球成分層とが分離するまでの経過時間であり、例えば、抗凝固剤としてNaFを用いた場合、図2に示した経過時間t3である。計時された時間が所定時間内である場合(ステップS106,Yes)、血球分注制御部35aは、プローブ12aを下降させ、液面検出センサ12dによって検体の液面を検出する(ステップS107)。一方、計時された時間が所定時間内でない場合(ステップS106,No)、血球分注制御部35aは、検体分注処理を停止させる処理を行い(ステップS113)、この処理を終了させる。これにより、転倒混和してから長く時間が経過して濃度が高くなりすぎた血球成分を吸引することがなくなる。
【0042】
ステップS107で検体の液面を検出すると、算出部35cは、吸引位置を算出する(ステップS108)。具体的には、算出部35cは、侵入深さ情報記憶部34a内の侵入深さ情報を参照することによって、ステップ102で取得された抗凝固剤の種類およびステップS101〜S105までの経過時間に応じた吸引位置を算出する。
【0043】
その後、血球分注制御部35aは、ステップS108で算出した吸引位置までプローブ12aの先端を下降させ(ステップS109)、プローブ12aによって検体を吸引させる(ステップS110)。これにより、抗凝固剤の種類ごとに転倒混和後の経過時間に応じた侵入深さの吸引位置、すなわち血球成分の沈降状態に応じた侵入深さの吸引位置でプローブ12aによって検体を吸引させることができる。その後、血球分注制御部35aは、検体の分注先である反応容器13aが配置された位置にプローブ12aを移動し(ステップS111)、プローブ12a内に吸い込んだ検体を反応容器13aに吐出する(ステップS112)。その後、制御部35は、この処理を終了する。
【0044】
ステップS103において、判断部35bが、検体の血球成分を用いる分析項目でないと判断した場合(ステップS103,No)、制御部35は、血球成分を用いない分析項目での検体の分注処理を行い(ステップS114)、この処理を終了する。血球成分を用いない分析項目での検体の分注処理は、例えば、検体の液面から予め設定された侵入深さの吸引位置でプローブ12aによって検体を吸引し、吸引した検体を反応容器13aに吐出して分注する処理である。
【0045】
この実施の形態では、検体容器11aが自動分析装置1の検体供給部11に配置されてからの経過時間、すなわち検体容器11a内の検体を転倒混和してからの経過時間を計時し、検体が血球成分を用いる分析項目である場合、検体に混合された抗凝固剤の種類および経過時間に応じた吸引位置までプローブ12aの先端を下降させ、プローブ12aによって検体を吸引させるので、抗凝固剤の種類によって変化する血球成分の沈降速度に応じた吸引位置で血球成分を吸引させることができる。従って、抗凝固剤によらず高精度な測定を行うことができる。
【0046】
また、この実施の形態では、プローブ12aの侵入深さを抗凝固剤の種類に応じて浅い位置に設定するので、抗凝固剤の種類によらず一律にプローブ12aの侵入深さを設定する場合に比して、プローブ12aに付着する検体の量を低減することができる。
【0047】
また、この実施の形態では、液面検出センサ12dによって検体容器11a内の検体の液面を検出するものを例示したが、これに限らず、検体容器11a内の検体の液面位置の情報を取得できればよい。例えば、検体容器11aに収容される検体の量が固定され、かつ検体容器11aの種類が固定されることによって、液面位置は固定されるため、この固定された液面位置の情報を予め記憶部34に記憶させてもよい。また、検体容器11aに収容される検体の量が固定され、かつ検体容器11aの種類が限定されることによって、液面位置が検体容器11aの種類ごとに限定されるため、この限定された液面位置の情報を予め記憶部34に記憶させてもよい。この場合、バーコード読取装置19を介して検体容器11aの種類を識別する情報を取得するようにする。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上のように、本発明にかかる自動分析装置は、血球成分を含んだ検体を分注し、分析するのに有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動分析装置
10 測定部
11 検体供給部
11a 検体容器
11b ラック
11c,11d バーコードラベル
12 検体分注部
12a,17a プローブ
12b,17b アーム
12c,17c プローブ洗浄部
12d 液面検出センサ
13 反応テーブル
13a 反応容器
13b,18a ホイール
14 測光部
15 洗浄部
16 攪拌部
17 試薬分注部
18 試薬テーブル
18b 試薬容器
30 制御装置
31 入力部
32 出力部
33 計時部
34 記憶部
34a 侵入深さ情報記憶部
35 制御部
35a 血球分注制御部
35b 判断部
35c 算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体容器に収容された血液成分を含む検体をプローブによって反応容器に分注し、該反応容器内で試薬と反応させて前記検体を分析する自動分析装置において、
前記検体容器が当該自動分析装置の所定位置に配置されてからの経過時間を計時する計時部と、
血液の凝固を抑制する抗凝固剤の種類ごとに、前記経過時間と、前記抗凝固剤を混合した前記検体の液面からの前記プローブの侵入深さとを対応させた侵入深さ情報を記憶する記憶部と、
前記検体に混合された前記抗凝固剤の種類情報を取得する取得部と、
前記侵入深さ情報に基づいて、前記抗凝固剤の種類および前記経過時間に応じた吸引位置まで前記プローブの先端を下降させ、前記プローブによって前記検体を吸引させる制御部と、
を備えること特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを示す分析項目情報を取得し、
前記制御部は、
前記分析項目情報に基づいて、前記プローブに吸引させる検体の分析項目が、前記検体の血球成分を用いる分析項目であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が、前記プローブに吸引させる検体の分析項目が前記検体の血球成分を用いる分析項目であると判断した場合、前記侵入深さ情報を参照することによって、前記検体の液面に対して前記プローブの侵入深さ分だけ深い位置の前記吸引位置を算出する算出部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記検体の液面を検出する検出部をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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