説明

自動分注装置

【課題】 本発明は大容量の分注を行う場合でも、複数本のチップを一括して装着できる、簡単な構造で且つ安価な装置として、故障が少なく、短時間に処理を可能とすることを技術的課題としている。
【解決手段】 複数のチップと、前記チップを装着して液体の吸引及び吐出をおこなう分注機と、前記分注機が3次元空間を移動して位置決め可能な移動手段と、前記チップを格子状に整列させて収納するチップ容器と、前記チップ容器を配置できる台座から構成される自動分注装置において、前記チップ容器を台座に固定することにより達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学・農学・薬学・理学などの分野で試薬や試料を自動的に分注する、自動分注装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動分注装置は、チップを装着し試料や試薬を吸引および吐出する分注機、分注機を3次元空間で移動させる移動手段、前記チップを収納するチップ容器、試薬や試料を入れた試薬容器、および分注機に試料や試薬を分注されるマイクロプレートから構成されている。分注時において分注機は移動手段により、チップを収納しているチップ容器に移動し、分注機のノズルの先端にチップを装着する。装着後、分注機は試料や試薬をチップに吸引し、マイクロプレートに吐出する。
【0003】
マイクロプレートは縦方向と横方向に複数個のウェルが一定の間隔で格子状に配置された容器で、例えば縦12個×横8個の96個のウエルを有し、各ウエルは9mm間隔で配置されいて、標準化されている。
【0004】
分注チップ容器(以下チップ容器と言う)には縦方向と横方向に一定の間隔で格子状に穴が設けられていて、分注チップ(以下チップと言う)はそれぞれの穴に収納される。また、チップ容器の穴にはチップ装着時にチップとチップ容器が勘合しないように、チップと隙間を持つ大きさとなっている。ここで、チップ容器の穴の間隔は、マイクロプレートのウェルの間隔に合わせてあるのが一般的である。
【0005】
一方、自動分注装置を使用して行う固相抽出などの工程では例えば1度に1000μlの大容量の分注を行う場合がある。この場合、自動分注装置は分注量に合わせ分注機やチップも大型のものを使用する必要がある。大型のチップを使用する場合は、チップを収納するチップ容器の穴も大きくしなければならない。しかし、チップ容器の穴の間隔は、前述したように前記マイクロプレートに合わせて標準化されており、穴の大きくするにも限界がある。このため、チップはチップ容器と十分な隙間が持てずに収納され、分注機のノズル部にチップ装着後の引き抜き時にチップ外周部とチップ容器の穴部との接触する面積が大きくなる。
【0006】
また、運転時間短縮のため分注機は前記マイクロプレートのウェル1列分のチップを一括して装着できる複数のノズルを有する分注機が多く用いられる。この場合、チップ装着時にチップ外周部とチップ容器の穴部との接触する面積は装着するチップの本数に比例して倍増する。
【0007】
このような自動分注装置では分注機のノズル部にチップ装着後の引き抜き抵抗が大きくなり、分注機の上昇と共にチップ容器を持ち上げてしまい、分注機破損や分注ミスなど重大な事故を起こす可能性があった。
【0008】
これに対し、従来では複数の大容量チップを一括して装着できる自動分注装置は無く、特開平5−232124号公報の図1〜図7では1本のノズルを有する分注機が、チップを装着し分注する自動分注装置が提案されている。しかし、この方法では複数の試料を処理する場合、運転時間が長くなり効率が悪い。
また、特開平8−164302号公報の図1、図2では分注機がニードルノズルを有し、チップを装着せず試料や試薬をニードルノズルで直接吸引し、マイクロプレートのウェルに滴下する装置が提案されている。しかし、この方法では試料や試薬が変わる毎に洗浄の手間がかかり、また他試料混入の不具合もあった。
【0009】
【特許文献1】特開平5−232124号公報
【0010】
【特許文献2】特開平8−164302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題点を解決し、大容量の分注を行う場合でも複数本のチップを一括して装着できる、簡単な構造で且つ安価な装置として、故障が少なく、短時間に処理を可能とすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、複数のチップと、前記チップを装着して液体の吸引及び吐出をおこなう分注機と、前記分注機が3次元空間を移動して位置決め可能な移動手段と、前記チップを格子状に整列させて収納するチップ容器と、前記チップ容器を配置できる台座から構成される自動分注装置において、前記チップ容器を台座に固定することにより達成することができる。
【0013】
さらに、前記チップ容器を前記台座にネジで締結することで達成できる。
【0014】
さらに、前記台座は磁性体部またはマグネットを有し、前記チップ容器のマグネットまたは磁性体部を吸着することで達成することができる。
【0015】
さらに、前記台座に針を設け、前記チップ容器を設置する際に、前記チップ容器の底面部を穿設することで達成することができる。
【0016】
さらに、前記台座または前記チップ容器に粘着体を有し、粘着することで達成することができる。
【0017】
さらに、前記台座がバネに支持されたボールを内蔵し、前記ボールが前記チップ容器に設けた穴に嵌合することで達成できる。
【0018】
さらに、前記台座がバネヒンジで固定されたフックを有し、前記フックが前記チップ容器を係合することで達成することができる。
【0019】
さらに、前記フックの底面が前記台座の上面に近接する位置に配置することで達成することができる。
【0020】
さらに、前記フックにテーパを設けることで達成することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明ではチップ容器を台座に固定することにより、チップの装着を不具合なく行うことができ、安価で故障が少なく且つ短時間に処理が行える自動分注装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明の自動分注装置1の斜視図であり、図2はその内部の拡大斜視図である。図3はチップ5を収納するチップ容器の平面図および断面図、図4は本発明の一実施例を示すチップ5を装着する分注機3の断面図である。図5は本発明の他の実施例を示す台座10aとチップ容器6の断面図。図6は本発明の他の実施例を示す台座10aとチップ容器6の断面図。図7は本発明の他の実施例を示す台座10aとチップ容器6の正面図。図8は本発明の他の実施例を示す台座10aとチップ容器6の断面図。図9は本発明の他の実施例を示す台座10aとチップ容器6の正面図である。
【0023】
図1において、自動分注装置1には、装置内の空間を上下、左右、前後方向に移動して位置決め可能な移動手段2があり、その先端に8本または12本のシリンジを一括動作する分注機3が設置され、図に示していない制御装置に制御されている。図2において、自動分注装置1の下部には、分注機3先端のノズル4に装着される分注チップ5(以下チップと言う)が、この例では縦12本、横8本の96本収納する分注チップ容器6(以下チップ容器と言う)と、複数の試薬やサンプルを入れた試薬容器7と、この例では96穴のマイクロプレート8および、使用済のチップを廃棄する廃棄容器9が、それぞれ台座10a〜10dに配置されている。ここで、これらの容器は運転開始前にあらかじめ人が手作業で配置する。
【0024】
自動分注装置1の動作について説明する。
【0025】
初めに、分注機3が移動手段2によりチップ容器6に移動し、チップ容器6に収納されたチップ5を装着する。次にチップ5を装着した分注機3は移動手段により試薬容器7に移動し、所望の試薬または試料を吸引する。更に分注機3は搬送手段2により、マイクロプレート8の所望のウェル上に移動し、吐出する。その後、分注機3は廃棄容器9の上空に移動し、チップ5は図に示していないチップ外し機構により外され廃棄容器9に廃棄される。
【0026】
図3において、チップ容器6はこの例では容器の上面に縦12個、の穴が格子状に設けてあり、穴にチップ5が収納される。
【0027】
図4において、チップ5を収納したチップ容器6は、台座10aに固定部材となるネジ11で締結されている。また、チップ容器6は台座10aに設けられたピン12により前後、左右方向に拘束され、位置決めされている。初めに、分注機3は移動手段2によりチップ容器6の上方に移動する。次に分注機3は下降し、ノズル4はチップ5の穴に挿入し、チップ5を装着する。その後、分注機3は上方に移動し、チップ5は引き抜かれる。このとき、チップ容器6は台座10aにネジ11で締結され、上方への移動を拘束されているため、チップ容器6の持ち上がりを防止できる。
【0028】
図5において、チップ容器6には固定部材となるマグネット13を設け、台座10aに設けた磁性体部14と吸着している。また、チップ容器6は台座10aに設けられたピン12により前後、左右方向に拘束され、位置決めされている。チップ5装着後の引き抜き時においては、チップ容器6は台座10aに吸着されることにより、図4で説明した実施例と同様の性能を達成できる。もちろんマグネット13と磁性体部14はチップ容器6と台座10aのどちら側に設置されていても同様な効果を示す。なお、台座10a自体を磁性体からなる部材で製作しても良い。
【0029】
図6において、台座10aにはチップ容器6の固定部材となる先端の尖った針15が設けてあり、針15はチップ容器6より硬い材質となっている。チップ容器6の配置時において、初めにチップ容器6は台座10aに設けられたピンにより前後、左右方向に拘束され位置決めされた状態で、下方へ押し付けられる。次に、チップ容器底面16に針15が突き刺さり、チップ容器底面16が変形され穿設される。このとき、チップ容器底面16の穴部17は変形の復元力により針15を圧着し、チップ容器6が固定される。チップ5装着後の引き抜き時においては、チップ容器6は台座10aに圧着されることにより、図4で説明した実施例と同様の性能を達成できる。
【0030】
図7において、台座10aにはチップ容器6の固定部材となる粘着体18を設け、チップ容器6を粘着している。また、チップ容器6は台座10aに設けられたピン12により前後、左右方向に拘束され、位置決めされている。チップ5装着後の引き抜き時においては、チップ容器6は台座10aに粘着されることにより、図4で説明した実施例と同様の性能を達成できる。もちろん粘着体18はチップ容器6に設置されていても同様な効果を示す。
【0031】
図8において、台座10aにはチップ容器6の固定部材となるガイド19が設けてあり、チップ容器6を前後、左右方向に拘束し位置決めする。さらにガイド19にはチップ容器6の固定部材となるバネ20に支持されたボール21が内蔵されている。
【0032】
また、チップ容器6の側面にはボール21と勘合する凹部25が設けられている。チップ容器6の配置時において、初めにチップ容器6は下方に移動させると、ボール21はチップ容器6側面に押され、バネ21は圧縮される。次にチップ容器底面16が台座10aの上面の位置まで移動すると、ボール21はバネ力により押し戻され、チップ容器6の側面の凹部25と勘合する。この時、チップ容器6はバネ力によりボールに押し付けられ保持された状態となる。チップ5装着後の引き抜き時においては、チップ容器6は台座10aに保持されることにより、図4で説明した実施例と同様の性能を達成できる。
【0033】
図9において、台座10aにはチップ容器6を前後、左右方向に拘束し位置決めできるピン12が設けてある。さらに、台座10aにはチップ容器6の固定部材となるバネヒンジ22および上部にテーパ24を有するフック23が設けてある。バネヒンジ23には図に示していない捻じりバネが取り付けられており、バネ力が台座10aの内側に働く。
【0034】
ここで、フック23は底面が台座10a上面に近接した位置に取り付けられている。これは、台座10aの上面とフック23の底面を接触させ、バネヒンジ22のバネ力を受け止め、フック23を台座10aのピン12側に大きく倒れさせないためである。この効果により、チップ容器6配置時にあらかじめフック23を開く手間が省ける。
【0035】
チップ容器6配置時において、初めにチップ容器6を下方に移動させると、チップ容器6はフック23のテーパ24に当たり、フック23を外側に開かせながら、テーパ24を滑り下降する。この効果により、チップ容器6を装着する際、スムーズに装着できる。次にチップ容器底面16が台座10aの上面の位置まで移動すると、フック23はバネヒンジ22のバネ力により戻され、チップ容器6と係合する。チップ5装着後の引き抜き時においては、チップ容器6は台座10aに係合されることにより、図4で説明した実施例と同様の性能を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の自動分注装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】本発明の自動分注装置の一実施形態を示す図1の要部拡大斜視図。
【図3】チップを収納するチップ容器の平面図および断面図。
【図4】本発明の一実施形態を示すチップを装着する分注機の断面図。
【図5】本発明の他の実施形態を示す台座とチップ容器の断面図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す台座とチップ容器の断面図。
【図7】本発明の他の実施形態を示す台座とチップ容器の正面図。
【図8】本発明の他の実施形態を示す台座とチップ容器の断面図。
【図9】本発明の他の実施形態を示す台座とチップ容器の正面図。
【符号の説明】
【0037】
図において、1は自動分注装置、2は移動手段、3は分注機、4はノズル、5はチップ、6はチップ容器、7は試薬容器、8はマイクロプレート、9は廃棄容器、10は台座、11はネジ、12はピン、13はマグネット、14は磁性体部、15は針15、16はチップ容器底面、17は穴部、18は粘着体、19はガイド、20はバネ、21はボール、22はバネヒンジ、23はフック、24はテーパである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップと、前記チップを装着して液体の吸引及び吐出をおこなう分注機と、前記分注機が3次元空間を移動して位置決め可能な移動手段と、前記チップを格子状に整列させて収納するチップ容器と、前記チップ容器を配置できる台座から構成される自動分注装置において、前記チップ容器を台座に固定することを特徴とする自動分注装置。
【請求項2】
前記チップ容器を前記台座にネジで締結することすることを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項3】
前記台座は磁性体部またはマグネットを有し、前記チップ容器のマグネットまたは磁性体部を吸着することを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項4】
前記台座に針を設け、前記チップ容器を設置する際に、前記チップ容器の底面部を穿設するすることを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項5】
前記台座または前記チップ容器に粘着体を有し、粘着することを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項6】
前記台座がバネに支持されたボールを内蔵し、前記ボールが前記チップ容器に設けた穴に嵌合することを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項7】
前記台座がバネヒンジで固定されたフックを有し、前記フックが前記チップ容器を係合することを特徴とする請求項1記載の自動分注装置。
【請求項8】
前記フックは、前記フックが予め決められた角度以上に傾かないことを特徴とする請求項7記載の自動分注装置。
【請求項9】
前記フックにテーパを設けることを特徴とする請求項7記載の自動分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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