説明

自動制御システムの備わる軸負荷のかかる医療用スーツ

本発明の適用分野は、特別な衣服の開発であって、それは、幼児の脳性まひ、脳血管系障害(脳卒中)、及び、その後手足双方の運動協調障害の伴う他の疾病での運動機能障害といった病態における治療のための、及び、当該スーツによって生じる患者の身体への負荷を測定し登録するためのものである。当該スーツは、(少なくとも)1枚の布層で製造されるつなぎ服と張力装置を含む。当該張力装置は緩衝材を使用しつつ患者の筋骨格系への軸負荷の生成をもたらす。つなぎ服には付加的に、負荷の測定及び登録のシステムが備わり、該システムは、電源と、衣服の固定した解剖学的位置にある増幅器の伴う筋張力計と、USBケーブルの伴うアナログ・デジタル変換器とを備えるので、該システムは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、それらを動作の分析、画像化、登録のためにコンピュータに送ることが可能である。各緩衝材は張力センサーを有し、該センサーは張力要素の伴う引っ張り留め金(tenso−clasp)の形態で製造されている。前記システムは、20点において、15kg以下の幅での負荷測定をもたらす。負荷測定システムの質量は、3.5kg以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の適用分野は、特別な衣服の開発であって、それは、幼児の脳性まひ、脳血管系障害(脳卒中)、及び、その後手足双方の運動協調障害の伴う他の疾病での運動機能障害といった病態における治療のため、及び、当該スーツによって生じる患者の身体への負荷を測定し登録するためのものである。
【0002】
本発明の課題は、負荷を測定し登録するシステムの備わる軸負荷のかかる医療用スーツを開発することである。
【背景技術】
【0003】
人間のための軽量化と無重力状態における適用の課題を解決する、宇宙飛行士のための衣服の色々な構造は、技術水準から周知である(例えば、特許文献1乃至3)。
【0004】
これらに共通の欠点は、負荷の補正とその制御をもたらす未解決の課題である。
【0005】
プロトタイプとして技術的解決法が選択された−すなわち、張力装置を備える編まれたつなぎ服からなる宇宙飛行士のための予防負荷スーツ(prophylaxis load suit)である(特許文献4)。
【0006】
しかし周知のスーツは、張力緩衝材の負荷の測定、制御、登録をもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ロシア国特許第2254272C2号(2005年6月20日)
【特許文献2】米国特許第4051848号(1977年10月4日)
【特許文献3】ロシア国特許出願第2007146197/12号(2007年12月14日)
【特許文献4】ロシア国特許出願第2007146198A号公報(2007年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の欠点は、ここに提案する本発明の使用によって除去され、その課題と技術的結果は、患者のための軸負荷を受ける医療用衣服の創作であり、該衣服は、病態における緩衝材負荷の制御と測定のシステムを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
技術的結果は、ここに提案する医療用スーツの使用によって成し遂げられ、該スーツは、(少なくとも)1枚の布層で製造されるつなぎ服と張力装置を含み、該張力装置は緩衝材を使用しつつ患者の筋骨格系に軸負荷を与えることによって特徴づけられ、該スーツには付加的に、負荷の測定及び登録を行なうシステムが備わり、該システムは、電源と、固定した複数の解剖学的位置にそれぞれある複数の緩衝材にそれぞれ設置された複数の増幅器をそれぞれ伴う複数の筋張力計と、USBケーブルを伴うアナログ・デジタル変換器とを備えるので、該システムは、複数のアナログ信号をそれぞれ複数のデジタル信号に変換し、該複数のデジタル信号を動作の分析、画像化、登録のためにコンピュータに送ることが可能である。複数の筋張力計はそれぞれ複数の緩衝材に接続され、張力要素及び増幅器を有する留め金の形態で作られ、該留め金を緩衝材の調整テープが通る。張力要素は、金属製の留め金の中間にある横材に固定され、該留め金は緩衝材の張力の測定の際、張力要素と共に弾性的に変形し、アウトプットにおいてDV電圧が生じるが、そのDV電圧は曲げ負荷の値に比例する。ADCとのインターフェースを提供するために、この電圧は増幅され、アナログ信号としてADCに入る。ADCは、この信号をデジタル形式に変換し、コンピュータに送る。ADCからの入力信号の処理のためのR−プログラム(調整プログラム)が、CDからコンピュータにインストールされており、それがもたらすのは、信号のキャリブレーション、その範囲決定(ranging)、及び、スーツを着た人間にかけられる負荷の(キログラムでの)形式での登録である。
【0010】
当該システムがもたらすのは、20個の筋張力計における0〜15kgの幅での負荷の測定と登録、及び、負荷の測定についての±3%の精度である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実体は以下の通りである:
負荷測定のシステムが対象としているのは、病態にある際、リハビリ治療の所定の時間の間、着用時に医療用スーツによって生じる患者身体への負荷の測定と登録である。
【0012】
当該スーツの主要な機構が患者の身体に与える影響は、多くの緩衝材を用いることにより、筋骨格系に軸負荷を生み出すことである。
【0013】
当該スーツが提供するのは、広い幅で負荷が変化する機会であり:すなわち、総負荷は40kg以上に達することも可能である。そして、「人間のスーツ」のシステムの状態の測定、制御及び登録の機構を提供するが、それらはリアルタイムで実行され、着用中の当該スーツを用いた養生の有効な補正のためのフィードバックも提供する。
【0014】
当該スーツの使用は、以下の課題を解決する:
1.患者のために最適な総軸負荷の値の決定と生成。
2.データベース内の所与の負荷の登録を用いた、患者のリハビリテーションの間の負荷の有効な変更。
3.厳しい患者の生理的特徴を考慮した治療に必要とされる特定の筋肉群の負荷の生成。
4.患者の筋肉と骨格の負荷を、対称的に又は非対称的に、右から−左から、前から−後ろから形成する機会の具現化。
【0015】
「生理学的なパラメータ−コンピュータ」のフィードバックの存在により、患者の現在の生理学的状態に一致した物理的負荷と、治療の間の運動の課題の生成が可能となる。例えば、運動の速度は心拍の頻度に応じて変化することが可能であり、制御チャンネルの感度は、筋電図の水準等に応じて変化することが可能である。
【0016】
ここで提案する技術的な決定により、コンピュータサポート手段のおかげで当該医療用衣服(軸負荷スーツ)の使用の効果が高まる。
【0017】
当該スーツの負荷要素(弾性緩衝材)が生成するのは、患者の身体や脚への軸負荷である。緩衝材の引っ張りによる張力は、全体としてかなりの値−40kg以上まで−到達することが可能であるが、これらの張力は、この緩衝材が「働く」体のパーツ(のお互いについて)の位置によって、原則的に変化する。すなわち、初期状態(概して、これは真っ直ぐの身体や脚に対して垂直な位置である)にある緩衝材の引っ張りによる張力は、接合部における角度が生じるのに応じて変化し始め、運動の間、急速なダイナミクスを有する。
【0018】
データベース内の張力の客体的な登録が前提とするのは、静的な値とそのダイナミクスの双方の存在であって、それには、動力学過程に受け入れられ、患者の状態の評価に有用なパラメータ(例えば、運動時間、曲げ伸ばしの間の相互関係、運動の微分:速度と加速度、等)の分析が伴う。
【0019】
張力の測定のシステムの以下の例が、与えられる:
当該スーツの各緩衝材は張力センサーを有し、該センサーは引っ張り留め金(tenso−clasp)の形態で製造されており、該留め金を負荷ストラップが通る(それはつなぎ服においてのことであり、これは前記緩衝材の調整テープである)。シンプルな留め金の形状(20×20×2mm)をしている張力センサーの形態は、当該スーツの引っ張り要素と十全に結合し、その構成のデザインに支障をきたすことはない。
【0020】
張力要素それ自身は、留め金の中間にある横材に固定され、該留め金は、緩衝材の張力が変化する間、張力要素と共に弾性的に変化する。張力要素の変形によって、その中の信号の変化が生じ、それは緩衝材内の張力に比例する。緩衝材内の張力の値は、各張力センサーのレイティングカーブに応じて決定される。
【0021】
KF5P(5mmの基部を有する長方形の張力抵抗を要素とする一定の金属の薄片)のような張力要素を用いることが想定されており、該張力要素は、電源から5Vの電圧で電力が供給される。信号が、増幅器を通ってADCに与えられ、それからコンピュータに送られるが、それは、見て分かる有効な画像化と印刷による特別なプログラムの下での処理のためである。
【0022】
プログラムを処理する多くのデータを用いることができる。
【0023】
一つの例は、医療用スーツの制御の自動化のシステムであって、以下を前提とする:
1.当該スーツの技術的状態の情報の客体化;
2.当該スーツの負荷の積分パラメータのリアルタイムでの有効な取得;
3.当該スーツの負荷データの処理の増強。
【0024】
スーツの使用方法を決定するパラメータが登録されるべきである:すなわち、緩衝材における最大張力、いくつかの緩衝材の引っ張りの積分推定、運動中のエネルギー消費の定性的特徴としての緩衝材の能力、技術的信号値の許容範囲からの超過分を決定する臨界的な指標である。
【0025】
20個の筋張力計を用いた負荷測定システムは、人間の身体に対して当該医療用スーツによって生成される負荷の測定、アナログ信号のデジタル形式への変換、動作の分析のために該信号をコンピュータに送ること、リアルタイムでの画像化と登録をもたらす。
【0026】
負荷測定システムは、以下の技術的特徴を有する:
a)20点において、0〜15kgの範囲で負荷の測定をもたらすこと;
b)負荷の測定についての±3%の精度;
c)負荷測定システムの質量が、3.5kg以下であること。
【0027】
特定持続時間は1000時間以上である。
【0028】
特定稼働時間は5年以上である。
【0029】
接続と取り外し(connections−disconnections)の保証された回数が、250以上である。
【0030】
身体に対する初期の電源回路をカバーするワイヤーの電気抵抗は、以下に示す値以上である:
a)湿度20〜90%、且つ、温度10〜25℃において、20メガオームであり、
b)湿度95±3%、且つ、温度20℃の温度において1メガオーム。
【0031】
身体に対する初期の電源回路のワイヤーの電気的遮蔽は、1分間の直流の試験電圧500Bに耐える。
【0032】
負荷測定システムにおけるADCの作動能力の制御は、制御及び診断の統合システムによってもたらされる。
【0033】
医療用スーツ負荷測定のシステムのためのソフトウェアは以下の通りである:
負荷測定システムの作動能力は、コンピュータの使用によって制御され、該コンピュータには、OSとしてウインドウズXP/VISTAがインストールされている。
【0034】
コンピュータのソフトウェアは、ウインドウズXP/VISTAの中で動作し、以下の機能の実行を可能とする:
−周波数20Hzで、筋張力計からのデータを得る。
−各センサーからの出力ゼロの初期シフトを考慮する。
−コンピュータのモニタに、全ての緩衝材からの現在の負荷の値の表を、個別に全て表示し、それは解剖学的な身体の部分(左肩、右肩、胸、背中等)に従う。
【0035】
ソフトウェアのフォームビューはディスプレイに映され、それは、医療用スーツでのセンサーの配置の図表、全ての緩衝材と緩衝材群(合計で28の意味(meanings))の現在の負荷値の表、そして、治療セッションに対する短いコメント:すなわち、患者とオペレータの名前、日付、負荷登録の時間、センサーの位置の名前、の形式である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動制御システムの伴う軸負荷のための医療用スーツにおいて、少なくとも一枚の布層でできたつなぎ服と張力装置を含み、該張力装置は緩衝材を使用しつつ筋骨格系に対する軸負荷の生成をもたらし、前記つなぎ服には、付加的に負荷の測定及び登録を行なうためのシステムが備わり、該システムは、電源と、複数の固定点にそれぞれ設置された複数の増幅器をそれぞれ伴う複数の筋張力計と、USBケーブルを伴うアナログ・デジタル変換器とを含み、該アナログ・デジタル変換器により、前記システムは、アナログ信号をデジタル信号に変換し、それを動作の分析、画像化、及び登録のためにコンピュータに送信することを特徴とする、医療用スーツ。
【請求項2】
全ての筋張力計は、金属製の留め金の形態で作られており、張力要素と増幅器が伴い、該留め金を緩衝材の調整テープが通っていることを特徴とする、請求項1に記載のスーツ。
【請求項3】
張力要素が前記金属製の留め金の中間にある横材に固定され、該留め金は緩衝材の張力の測定の際、張力要素と共に弾性的に変形することを特徴とする、請求項2に記載のスーツ。
【請求項4】
前記システムは、20点において、0から15kgの幅で、負荷測定をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載のスーツ。
【請求項5】
前記システムは、負荷の測定について±3%の正確性をもたらすことを特徴とする、請求項1に記載のスーツ。
【請求項6】
負荷測定器の質量が、3.5kg以下であることを特徴とする、請求項1に記載のスーツ。

【公表番号】特表2013−508711(P2013−508711A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534711(P2012−534711)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065968
【国際公開番号】WO2011/048211
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(512106425)ステイト サイエンティフィック センター オブ ザ ロシアン フェデレーション インスティテュート オブ バイオメディカル プロブレムズ オブ ザ ロシアン アカデミー オブ サイエンスズ (2)
【出願人】(512075268)
【出願人】(511275027)シブ ラボラトリーズ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】