説明

自動化透析システム

【課題】改良された透析システムと改良された透析法を提供すること。
【解決手段】詳しくは、本発明は自動化腹膜透析(APD)を行うシステムと方法を提供する。本発明のシステムと方法は、透析物を患者に提供し、使用済み透析物を患者から排出することによる透析治療を自動的に行う。また、本発明のシステムと方法は様々な透析治療を行うことができる。本発明により行われ得る透析治療の一例には、患者による透析物の充満、滞留および排出を自動化することが含まれる。本発明の透析システムは患者に対する透析治療、例えば患者が眠っている夜間の透析治療を自動的に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は全体として透析システムに関する。具体的には、本発明は自動化腹膜透析システムに関する。本発明はまた、自動化された腹膜透析を行う方法と、それを行うデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
病気、発作またはその他の原因で患者の腎臓系が不調になることがある。どのような原因の腎不全でも、いくつかの生理的な乱れを生じる。水、ミネラルおよび日常の代謝負荷のバランスが腎不全ではもはや不可能になる。腎不全に罹るとその間は、窒素代謝の毒性のある最終生成物(尿素、クレアチニン、尿酸その他)が血液および組織に蓄積する。
【0003】
腎不全および腎臓機能の低下は透析で治療されている。透析により、通常は正常に機能する腎臓で除去されていたであろう老廃物、毒素および過剰の水が体から除去される。腎臓機能の代替のための透析は、その治療で命が救われるため多くの人で重要である。腎不全の人は、少なくとも腎臓の濾過機能を補わなければ生き続けることができない。
【0004】
血液透析および腹膜透析は、腎臓機能の喪失を治療するために通常用いられる透析治療の二つのタイプである。血液透析治療では、老廃物、毒素および過剰の水を患者から除去するために患者の血液を利用する。患者と透析デバイスとを連結し、患者の血液をデバイスを通してポンプ送りする。カテーテルを患者の静脈と動脈に挿入し、血流を血液透析デバイスへ流し、血液透析デバイスから排出させる。血液が血液透析デバイスの透析器を通過すると、透析器は老廃物、毒素および過剰の水を患者の血液から取り去り、血液を患者に戻す。大量の透析物、例えば120リッターが1回の血液透析治療中に血液を透析するために使用される。使用済みの透析物は廃棄される。血液透析治療は数時間続き、通常は透析センターで週に3回から4回行われる。
【0005】
腹膜透析は、腹膜腔内に移植されたカテーテルを通して患者の腹膜腔内に注入される透析溶液または“透析物”を利用する。透析物は腹膜腔内の患者の腹膜と接触する。老廃物、毒物および過剰の水は患者の血流から腹膜を通って透析物へ通過する。老廃物、毒物および水の血流から透析物中への移行は、拡散と浸透圧で生じる、すなわち膜を横切って浸透圧勾配が生じる。使用済みの透析物は患者の腹膜腔から排出し、老廃物、毒物および過剰の水を患者から除去する。このサイクルが繰り返される。
【0006】
連続通院腹膜透析(CAPD)、自動腹膜透析および連続流腹膜透析を含め、腹膜透析治療には様々なタイプがある。CAPDは手動式透析治療であり、患者は移植されたカテーテルとドレインを連結し、使用済みの透析物を腹膜腔から排出させる。次に患者はカテーテルと新鮮な透析物のバッグを連結し、新鮮な透析物をカテーテルを通して手動で患者の腹膜腔中に注入する。患者はカテーテルを新鮮な透析物バッグから外し、透析物を腹膜腔内に滞留させ、老廃物、毒物および過剰の水を患者の血流から透析物へ移行させる。一定の滞留期間後、患者は手動透析手順を繰り返す。
【0007】
CAPDでは患者は排出、滞留、充満および排出のサイクルをその日に数回、例えば1日に4回行う。各治療サイクルは例えば1時間を要する。患者が行う手動腹膜透析は相当な時間と患者の努力を必要とする。患者の生活の質を改善するためには、この不便な手順を改良し治療効果を上げる十分な余地がある。
【0008】
自動腹膜透析(APD)は、透析治療に排出、充満、排出サイクルが含まれる点でCAPDと類似している。しかしながら、APDデバイスは3回から4回の腹膜透析治療を、例えば患者が眠っている間に終夜、自動的に行う。APDデバイスは移植されたカテーテルと流体とを接続する。APDデバイスはまた、新鮮な透析物の容器またはバッグ、および流体排排出口と流体で接続されている。
【0009】
APDデバイスは透析物容器から新鮮な透析物をポンプで汲み上げ、カテーテルを通して患者の腹膜腔中に送り込み、透析物を腹膜腔内に滞留させ、その結果老廃物、毒物および過剰の水を患者の血流から透析物へ移行させることができる。次いでAPDデバイスは使用済みの透析物を腹膜腔から汲み上げ、カテーテルを通して排出する。具体的にはAPDデバイスはコンピューターで制御され、患者が透析デバイスに接続されている時、例えば患者が眠っている間に透析治療が自動的に行われる。すなわち、APDシステムは流体を自動的に腹膜腔内に汲み上げ、滞留させ、腹膜腔の外へ汲み出し、この手順を繰り返す。
【0010】
手動手順と同様に、数回の排出、充満および滞留サイクルがADPを稼動している間に行われる。具体的には“最後の充満”がAPD治療の最後に行われ、患者がその日に透析デバイスから開放されると透析物は患者の腹膜腔内に残される。APDにより、患者は手動で排出、滞留および充満工程を行わなくてもよくなる。
【0011】
しかしながら、APDシステムの改良を続ける必要がある。例えば、患者が使い易く操作しやすい簡単なAPDシステムを提供する必要がある。さらに、値段が安く運転費用がより少ないAPDシステムを提供する必要がある。とりわけ、既存のAPDシステムを臨床的、経済的および人間工学的に改良する必要がある。
【0012】
APDシステムを家庭用に改良する必要がある。現在の家庭用システムに共通の問題の一つは、“漏洩電流”のために感電し易いことである。相互に絶縁された導体から、または導体とアースとの間に流れる電流は“漏洩電流”と呼ばれる。任意の導体がアース電位以上の電位になった場合、幾分かの電流がその導体からアースへ流れる。完全な絶縁または無限大の抵抗は決してないので、このことはアースから十分に絶縁されている導体でも生じる。流れる電流量は(i)電位、(ii)導体とアース間の静電容量リアクタンスおよび(iii)導体とアース間の抵抗に依存する。
【0013】
医療機器では、漏洩電流が通る通路によっていくつかの異なった漏洩電流が定義されている。“アース漏洩電流”は、通常、デバイスの保護目的でアースされた部分のアース導体中を流れる電流である。医療機器では、外装部からアースへのインピーダンスは通常、患者を通過するインピーダンスより保護用アース導体を通るインピーダンスのほうががはるかに低い。しかしながら保護用アース導体が開放回路となった場合、患者には感電の危険性がある。
【0014】
“患者漏洩電流”は用いられる部品に接続された患者を通って流れる漏洩電流である。この電流は使用する部品から患者を通ってアースに流れるか、または外部高電圧電源から患者を通ってアースへ流れる。別個のタイプの漏洩電流には“外装部漏洩電流”および“患者補助電流”が含まれる。
【0015】
漏洩電流は通常は小さいが、患者に生理的な悪影響を及ぼすに必要な電流量も小さい。従って、デバイスの設計により漏洩電流はできる限り小さく制限し、安全限界以内としなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
本願発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
透析システムであって、以下:
流体供給ライン;
選ばれた場所で相互に固定され、流体ポンプ受器および流体加熱経路を形成する少なくとも2枚の柔軟膜を有する、流体供給ラインと流体連通する使い捨てユニット;
使い捨てユニットと流体連通する患者ライン;
使い捨てユニットと流体連通するドレインライン;
流体ポンプ受器を駆動するポンプアクチュエーター;および
流体加熱経路を加熱するヒーター
を有することを特徴とする、透析システム。
(項目2)
使い捨てユニットが複数のバルブチャンバーを形成するバルブマニホールドを含み、システムが選ばれた少なくとも1個のバルブチャンバーを逐次圧縮するバルブアクチュエーターを含むことを特徴とする、項目1に記載の透析システム。
(項目3)
バルブアクチュエーターがカム軸および複数のカムを含むことを特徴とする、項目2に記載の透析システム。
(項目4)
ヒーターが加熱プレートを含むことを特徴とする、項目1に記載の透析システム。
(項目5)
ヒーターが赤外線熱源を含むことを特徴とする、項目1に記載の透析システム。
(項目6)
流体加熱経路およびヒーターがインラインヒーターを形成することを特徴とする、項目1に記載の透析システム。
(項目7)
透析システムであって、以下:
内部を形成する外装を含み、ポンプシェル、バルブアクチュエーターおよびヒーターを含む携帯用ハードウエアユニット;および
ハードウエアユニットのシェルでポンプチャンバーを形成するポンプ部、バルブアクチュエーターで駆動されるバルブ部、およびヒーターで加熱される加熱部を有し、外装の内部に取り外し可能に置かれた使い捨てユニット、
を有することを特徴とする、透析システム。
(項目8)
ポンプアクチュエーター、バルブアクチュエーターおよびヒーターを同調させるプロセッサーを含むことを特徴とする、項目7に記載の透析システム。
(項目9)
プロセッサーが複数のセンサーと連動し、センサーが静電容量流体体積センサー、透析物温度センサー、圧力センサー、真空センサー、空気方向センサーおよび機械的位置決めセンサーで構成される群より選ばれることを特徴とする、項目8に記載の透析システム。
(項目10)
ハードウエアユニットには透析システム情報を提供するディスプレイデバイスが含まれることを特徴とする、項目7に記載の透析システム。
(項目11)
透析システムであって、以下:
ポンプアクチュエーターを含むハードウエアユニット;
供給ライン、ドレインラインおよび患者ラインに流体結合し、ポンプ受器を含む使い捨てユニット;
ポンプチャンバーを形成するハードウエアユニットおよび受器;および
ポンプチャンバーと結合し、チャンバー内の流体体積を表示し得る静電容量流体体積センサー、
を有することを特徴とする、透析システム。
(項目12)
静電容量流体体積センサーが受器内の流体体積を表示し得る信号を発生することを特徴とする、項目11に記載の透析システム。
(項目13)
受器内の流体または空気の量を定量し得る静電容量液体体積センサーと結合して作動するコントローラーを含むことを特徴とする、項目11に記載の透析システム。
(項目14)
透析システム用使い捨てユニットであって、以下:
選ばれた場所で相互に接着されて、以下:
ポンプ受器、および
ポンプ受器と流体連通する流体加熱経路
を形成する第1柔軟膜および第2柔軟膜;および
剛性部材と膜が、ポンプ受器および流体加熱経路と流体で連通するバルブマニホールドの少なくとも一部を形成する、第1および第2柔軟膜に接着された剛性部材、
を有することを特徴とする、透析システム用使い捨てユニット。
(項目15)
第1および第2膜が相互に熱シールされてポンプ受器および流体加熱経路を形成することを特徴とする、項目14に記載の使い捨てユニット。
(項目16)
第1および第2膜が剛性部材に熱シールされてバルブマニホールドの少なくとも一部を形成することを特徴とする、項目14に記載の使い捨てユニット。
(項目17)
第1膜が剛性部材に押し付けられて流体がバルブマニホールド部を通って流れなくすることを特徴とする、項目14に記載の使い捨てユニット。
(項目18)
バルブマニホールドに供給ライン、ドレインラインおよび患者ラインへの結合手段が含まれることを特徴とする、項目14に記載の使い捨てユニット。
(項目19)
使い捨てユニットであって、以下:
相互に接着されてポンプ受器を形成する第1および第2膜を有する第1部分;および
第2部分の第1および第2膜が相互に接着されて流体加熱経路を形成し、第1部分が第2部分と流体連通する、第1部分の膜とは異なる第1および第2膜を有する第2部分、
を有することを特徴とする、使い捨てユニット。
(項目20)
第1部分がさらに第1および第2柔軟膜の間に配置され、ポンプ受器と流体連通するバルブマニホールド、および流体加熱経路を有することを特徴とする、項目19に記載の使い捨てユニット。
(項目21)
第1部分を第2部分と接続する医療グレード配管を含むことを特徴とする、項目19に記載の使い捨てユニット。
(項目22)
使い捨てユニットであって、以下:
ポンプ受器、流体加熱経路およびバルブマニホールドを形成する第1柔軟膜および第2柔軟膜;および
剛体フレームにより使い捨てユニットを透析システムの外装の中に置くための剛性が与えられる、第1および第2柔軟膜の少なくとも一つに取り付けられた剛体フレーム、
を有することを特徴とする、使い捨てユニット。
(項目23)
剛性フレームがポンプ受器、流体加熱経路およびバルブマニホールドの回りに伸びていることを特徴とする、項目22記載の使い捨てユニット。
(項目24)
剛性フレームが使い捨てユニットを収容するための外装中にしっかりと嵌まる寸法であることを特徴とする、項目22記載の使い捨てユニット。
(項目25)
剛性フレームがプラスチックあることを特徴とする、項目22記載の使い捨てユニット。
(項目26)
自動透析を行う方法であって、以下の工程:
ユニットおよび外装がポンプチャンバーを形成する様に外装中に置かれる使い捨てユニットを準備し、患者を透析物容器に接続するポートを使い捨てユニットに設けておく工程;および
透析物をポンプチャンバーおよびポートを通って患者に自動的にポンプ送りする工程、を包含することを特徴とする、方法。
(項目27)
患者が使い捨てユニットを通る透析物の自動的な流れを開始し得る様に、操作者が入力を供給することを特徴とすることを含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
透析物を空気の作用でポンプチャンバーを通ってポンプ送りすることを特徴とする、項目26に記載の方法。
(項目29)
透析物を空気の作用で、機械的にポンプチャンバーを通ってポンプ送りすることを特徴とすることを含む、項目26に記載の方法。
(項目30)
患者が眠っている間にポンプチャンバーを通って自動的に透析物をポンプ送りすることを含むことを特徴とする、項目26に記載の方法。
(項目31)
夜間にポンプチャンバーを通って自動的に透析物をポンプ送りすることを含むことを特徴とする、項目26に記載の方法。
(項目32)
流体を腹膜透析システムに移動させる方法であって、以下の工程:
膜のポンプ受器部分で第1および第2膜上に負圧を維持する工程;
第1膜を第2膜から引き離して透析物をポンプ受器部分へ引き込む工程;および
第1膜を第2膜の方向へ押して透析物をポンプ受器部分から押出す工程、
を包含することを特徴とする、方法。
(項目33)
ホーム位置に対し相対的に第1膜部分の位置を検知する工程を含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目34)
ホーム位置に対し相対的に検出された第2位置に基づき第1膜の位置決めをする工程を含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目35)
第1モーターに第1膜を機械的に移動させ、第2モーターに第1および第2膜のバルブマニホールド部分を操作させる工程を含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目36)
モーターに第1および第2膜のバルブマニホールド部分を操作させ、ホーム位置に対し相対的にモーターで移動した部材の位置を検出する工程を含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目37)
モーターに第1および第2膜のバルブマニホールドを操作させ、ホーム位置に対し相対的にモーターで移動した部材を位置決めする工程を含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目38)
第1膜に負圧をかけながら第2膜から機械的に引き離す工程をことを含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目39)
第1膜に陽圧をかけながら第1膜を機械的に引き離す工程を含むことを含むことを特徴とする、項目32に記載の方法。
(項目40)
透析システム中の透析物の移動方法であって、以下の工程:
機械的に、および空気の作用で流体ポンプを運転し透析物を供給容器から患者へ移動する工程;
透析物を患者内に一定時間滞留させる工程;および
機械的に、および空気の作用でポンプを運転して透析物を患者からドレインへ移動する工程、
を包含する、方法。
(項目41)
透析物を患者にポンプ送りする間に透析物を加熱する工程を含むことを特徴とする、項目40に記載の方法。
(項目42)
透析物から空気を追い出す工程を含むことことを特徴とする、項目40に記載の方法。
(項目43)
患者へポンプ送りされる流体の体積を検出する工程を含むことことを特徴とする、項目40に記載の方法。
(項目44)
自動透析を実施する方法であって、以下の工程:
患者の家庭へ手で運ぶことのできる透析ユニットを提供し、ユニットを開いて患者がその中の使い捨てユニットを設置し、ユニットを閉じて透析ユニットと使い捨てユニットが共同してポンプチャンバーを形成し、透析物を患者に、および患者からポンプ送りすることを可能にする工程を有することを特徴とする、方法。
(項目45)
透析システムであって、以下:
第1および第2膜を含む使い捨てユニット;および
使い捨てユニットが第1および第2部分の間にあり、第1および第2膜が透析物を受け取って膨脹し、第1膜が第1部分と接触し第2膜が第2部分と接触する、第1および第2部分を含むヒーター、
を有することを特徴とする、透析システム。
(項目46)
使い捨てユニットが流体加熱部を含み、流体加熱部中の膜が膨脹してヒーター部と接触することを特徴とする、項目45に記載の透析システム。
(項目47)
透析システムであって、以下:
ある厚みを有する複数の膜を含む使い捨てユニット;および
空隙によって隔てられた第1部分と第2部分であって、使い捨てユニット中に透析物が滞留しない場合は空隙は膜の厚さより大きく、透析物が膜の少なくとも一部を満たして膜の一部が空隙部分を満たす第1部分と第2部分、
を有することを特徴とする、透析システム。
(項目48)
透析物が膜で形成する流体加熱経路を満たし、膜と流体が空隙を満たす経路にあることを特徴とする、項目47に記載の透析システム。
(項目49)
透析を提供するためのシステムであって、以下:
患者と透析システムを結合するための流体経路;
透析物を患者へ、および患者からポンプ送りするためのポンプ;
患者へ、および患者からの流体を加熱するためのヒーター;
ヒーターおよびポンプを制御するためのコントローラー;および
ポンプ、ヒーターおよびコントローラー用の1個のハウジングであって、システムが提供する治療の選ばれた特性を表示するためのディスプレイデバイスを含むハウジング、
を有することを特徴とする、システム。
【0017】
本発明は一般的に改良された透析システムと改良された透析法を提供する。詳しくは、本発明は自動化腹膜透析(APD)を行うシステムと方法を提供する。本発明のシステムと方法は、透析物を患者に提供し、使用済み透析物を患者から排出することによる透析治療を自動的に行う。
【0018】
また、本発明のシステムと方法は様々な透析治療を行うことができる。本発明により行われ得る透析治療の一例には、患者による透析物の充満、滞留および排出を自動化することが含まれる。本発明の透析システムは患者に対する透析治療、例えば患者が眠っている夜間の透析治療を自動的に行うことができる。
【0019】
最後に、一つの実施態様で透析システムが提供される。このシステムには流体供給ラインが含まれる。使い捨てユニットが流体供給ラインと流体で連通している。使い捨てユニットは選ばれた場所で相互に接着し、剛性プラスチック部品またはマニホールドと接着された少なくとも2枚の柔軟膜を有する。膜は1層または2層のいずれかである。好ましい膜の材料が本明細書に記載される。膜は相互に密封され、流体ポンプ受器および流体加熱通路となる。膜とプラスチックマニホールドでいくつかの弾力性バルブチャンバーが形成される。使い捨てユニットはまた、患者ラインおよび排出ラインと流体で連通している。
【0020】
マニホールドと使い捨てユニットの他の領域には縮められた、または先細の末端があり、膜を密封する領域となっている。縮められた厚さまたは先細の領域は元の厚さより必要な熱が少なく、使い捨てユニットのマニホールドの厚さと、より薄い弾力性膜の間の蓄熱の不均衡を緩和する。マニホールドのフレームは固さを与えるために弓形にするか曲げられている。フレームは非対称であり、ハードウエアユニット中で一方向にのみ設置されるように設計されている。
【0021】
ハードウエアユニットを患者の家に手で運ぶことがでる。患者はハードウエアユニットを開いて使い捨てユニットをその中に設置し、それを閉じて透析ユニットと使い捨てユニットが共同でポンプチャンバーを形成し、透析物を患者に送液し患者から流出させることができる。ハードウエアユニットはポンプ本体、バルブアクチュエーターおよびヒーターを形成する外装を有する。使い捨てユニットを外装部に出し入れすることが可能である。使い捨てユニットの流体ポンプ受器とハードウエアユニット本体でポンプチャンバーが形成される。ポンプチャンバーは持ち運び可能なハードウエアユニット内部に設置されたポンプアクチュエータで操作される。
【0022】
梱包した場合、複数のチューブが使い捨てユニットから伸びている。各チューブの末端には1個のボディに取り付けられるコネクターがある。ボディは複数のチッププロテクターとなり、治療の工程に従った順番でチューブを保持する。ボディは一方向からシステムのハードウエア内に滑り込む様になっており、患者はチューブとコネクターをチッププロテクターオーガナイザーから容易に引き出すことができる。
【0023】
患者の流体コネクターを収容するチッププロテクターには、空気を逃すが流体は通らない疎水性フィルターが含まれる。この通気性チッププロテクターにより、持ち上げてバランスを取る、または流体流量を調節せずにシステムを始動することができる。流体をシステムを通って患者の流体ラインへ、透析物がフィルターに戻ってくるまで流体を流し、システムで検出される流体圧を上げることにより、システムが始動する。次いでシステムはポンプを停止する。
【0024】
ハードウエアユニットはコントローラーも備えている。コントローラーには複数のプロセッサー、各プロセッサー用のメモリ、および入出力機能が備えられる。プロセッサーの一つは充満、滞在および排出段階等、透析物の流れの様々な段階でポンプアクチュエーター、バルブアクチュエーターおよびヒーターの動作を調整する。プロセッサーはまた、複数の異なった型のセンサーを制御する、またはフィードバックを受け取る。様々なセンサーのうち、センサーには静電容量型流体体積センサー、透析物温度センサー、圧力センサー、真空センサー、空気検出センサーおよび機械的位置決めセンサー等が含まれる。
【0025】
ある実施態様では、流体ポンプ受器中の流体圧力を制御するために、システムはプリセット運動制御と適応圧力制御を用いる。システムのコンプライアンス(例えば膜とチューブの柔軟性)を克服するためにプリセットポンプモーター加速を用いるが、これらは公知の比例、差動または積算制御では容易に克服されないものである。システムがコンプライアンスを克服後、システムはポンプモーター軸の速度を正確に制御することにより圧力を制御する適応技術を用いる適応制御に切り替える。システムの微調整を行うため、適応パラメーターが経時的に変更される。この方法は患者の充満および排出サイクルで特に重要であり、患者は圧力変動を感知することができる。この方法はまた、バッグの高さおよび充満度による圧力変動を容易に補償する。
【0026】
静電容量型流体体積センサーはポンプチャンバー内の流体の体積を指示すが、そのためにセンサーは流体受器中の流体の体積を示す電圧信号を発生する。コントローラーが電圧信号を受信し、信号をポンプチャンバーの弾力性流体受器中の流体量または空気量に変換する。
【0027】
ポンプアクチュエーターを機械的または空気圧で操作することができる。機械的に駆動する場合、ポンプモーターがピストンシリンダー等の真空源を駆動し、それにより使い捨てユニットの流体受器の膜上を真空にする。ここでエンコーダー等の機械的位置センサーがポンプモーター軸の角度をホーム位置に対し相対的に検出し、コントローラーに信号を送り、その結果コントローラーがポンプモーターを制御することができる。エンコーダーはまたコントローラーに対する安全フィードバックともなり、治療が始まると、バルブが自由に患者に充満し得る位置へカム軸が回転することがコントローラーにより阻止される。ポンプアクチュエーターが空気圧で操作される場合、実施態様によるシステムは真空ポンプを使用して流体受器の膜を引き離す。この場合、システムは真空センサーを使用して真空ポンプとリニアーエンコーダー等の機械的検出器の状態を検出し、ポンプピストンの状態を検出する。
【0028】
従って、ある実施態様では、システムは使い捨てユニットの流体受器の膜の一方の上で負圧を維持し、その膜をもう一方の膜から引き離し、透析物を流体受器へ引き込む。次いで作動膜上の負圧が開放され、膜をもう一方の膜の方向へ押して透析物をポンプ流体受器から押出す。また別個の実施態様では、機械式ポンプピストンが空気圧で一方の膜と接触し、システムが膜をもう一方の膜から機械的に引き離す。ある実施態様では膜は負圧によりポンプピストンと連結している。ポンプにはピストンヘッドの底部に引き込まれるダイアフラムも含まれ、膜はピストンヘッドの上端部に引き上げられる。また別個の実施態様では、システムは一方の膜を機械的に押し、膜に負圧を加える。
【0029】
システムは他の必要な作業も自動的に行う。例えば、システムは透析物を必要な温度に自動的に加熱し、透析物を患者に送液する。ヒーターが使い捨てユニットの弾力性膜で区切られる流体加熱経路を加熱する。ある実施態様では、ヒーターには電気的加熱プレートが含まれる。また、ヒーターには加熱プレートの他に赤外加熱源も含まれる。ある実施態様では、流体加熱経路とヒーターが、透析物が供給バッグから患者に送られる間に透析物を加熱するインラインヒーターとなる。
【0030】
システムは知識ベースアルゴリズムとファジー論理ベースアルゴリズムを用いる加熱制御法を採用する。前者は物理の法則、経験的データおよび検出されたインプット信号を用いる。後者は所定の温度と実際の温度の差を入力し、ファジー論理メンバーシップ関数とファジー論理規則を用いる。各アルゴリズムは異なった更新周波数で作動する。各アルゴリズムは異なった更新周波数で作動する。各アルゴリズムは負荷サイクルを出力し、システムはファジー論理ベース負荷サイクルを知識ベース負荷サイクルに対して加重し、全体的なヒーター制御負荷サイクルを作成する。この方法は正確な透析物の温度制御を可能にする。
【0031】
システムは透析物から、例えばポンプチャンバーを通って空気を自動的に追い出す。システムはまた、患者に送液された流体の全体積を検出し、それを記録および保管する。さらに、システムは患者の腹膜腔に流入、流出する流体の瞬間的な流速と圧力を知覚する。
【0032】
使い捨てユニットにはバルブマニホールドが含まれる。マニホールドは複数のバルブチャンバーを形成する。ハードウエアユニットには、少なくとも1個のバルブチャンバーを選択的かつ逐次的に押すバルブアクチュエーターが含まれる。ある実施態様では、機械的に操作されるバルブアクチュエーターには一本のカム軸および複数のカムが含まれる。カムが使い捨てユニットの一方の膜を押し、もう一方の膜と触れ合い流体の流れを阻止または不能にする。先に述べた様に、システムはホーム位置に対し相対的なカム軸の角度を検出するために回転式エンコーダー等の検出器を使用し、コントローラーがカム軸を回転させて少なくとも1個のバルブを所望通り開閉することができる。一本のカム軸は“供給およびポンプチャンバー充満位置”と“患者排出およびシステム排出位置”の間、およびポンプチャンバー充満位置と患者充填位置の間で前後に切り替えられる。これらの位置は全体的なカムプロファイル上の独自の回転位置(すなわちカム軸の末端から見て個々のカムの重なり)により作動する。
【0033】
本発明の使い捨てユニットは多様な異なった形式で提供される。ある実施態様では、加熱経路を形成する使い捨てユニットの部分は、バルブチャンバーを形成する剛性部材またはマニホールドを密封する同じ膜で形成される。同じ膜がポンプ受器も形成する。別個の実施態様では、使い捨てユニットには剛性部材を経由してポンプ受器とバルブマニホールドを形成する膜の第1セットが含まれる。使い捨てユニットには、流体加熱経路を形成する第1の膜とは異なった第2の膜も含まれる。ある実施態様では、医療グレードの配管が第1セットの膜を第2セットの膜に接続する。具体的には、配管により流体加熱経路がバルブマニホールドと流体を通じて連結される。
【0034】
他の実施態様の使い捨てユニットには、ポンプ受器、流体加熱経路およびバルブマニホールドを収容する第1の柔軟膜と第2の柔軟膜が含まれる。使い捨てユニットはまた、第1および第2の柔軟膜に取り付けられた剛性フレームを含む。剛性フレームにより、患者または操作者がフレームと使い捨てユニットを自動透析システムのハードウエアユニットの外装内に設置することができる。剛性フレームは外装内に用意された場所にきっちりと合う様な寸法になっている。剛性フレームはさらに、患者または操作者がチューブを接続する場合に使い捨てユニットを安定に保持する。例えば、バルブマニホールドは供給ライン、排出ラインおよび患者ラインに接続するための接続口またはその他のタイプのコネクターを提供する。ある実施態様では、剛性フレームはポンプ受器、流体加熱経路およびバルブマニホールドを含む膜の回りに伸びる、または膜を迂回している。ある実施態様では、剛性フレームはプラスチックである。ある実施態様では、剛性フレームは両側線に沿って弓型に曲り、使い捨てユニットの剛性を増し、その製造の熱シール中に使い捨てユニットが変形しない様にしている。
【0035】
ある実施態様では、使い捨てユニットの剛性部材またはマニホールドには、膜がマニホールドにより容易に密封し得るインターフェースが含まれる。マニホールドのエッジは先細になり、膜とプラスチックバルブマニホールドの間を接着するに必要な熱を減らしている。ナイフ状の先細エッジはまた、先端および底部の膜間の空隙を減らすかなくし、使い捨てユニットで生じる漏れの可能性を最小限にしている。角取りされたエッジはまた、熱シール工程で膜を焼き切る可能性を減少させる。
【0036】
上記のハードウエアユニットには表示システム情報を与えるディスプレイデバイスも含まれる。ディスプレイデバイスにより、患者または操作者が情報および命令をコントローラーに入力することができる。例えば、ディスプレイデバイスには、患者または操作者が使い捨てユニットを通って自動送液を開始することができる付属のタッチ画面も含まれる。システムは空気圧で、または機械的にポンプチャンバーを通り、インラインヒーターを通って患者の腹膜腔内に透析物の送液を開始する。その後、システムは透析治療の他のサイクルを、例えば患者が眠っている間、または夜間に自動的に実行する。自動化システムは透析物を供給容器から患者に移動させるばかりでなく、透析物を患者内部に一定時間滞留させ、透析物を患者からドレイン容器へ自動的に移行させる。
【0037】
システムはグラフィックユーザーインターフェース(GUI)を提供する。ある実施態様中のGUIは埋め込み式ウエブブラウザと埋め込み式ウエブサーバーを使用する。ウエブブラウザーとサーバーはシステムの主マイクロプロセッサーを作動させる。GUIはまた、主システムプロセッサーと専用プロセッサー上で作動するデバイスアクセスおよび制御ソフトウエアを使用する。このデバイスアクセスおよび制御主とウエアはヒーターおよびポンプ等の低レベルデバイスを制御する。GUIはまた、ウエブブラウザがデバイスアクセスおよび制御ソフトウエアと通信する中間ソフトウエアも提供する。
【0038】
GUIはいくつかの治療セットアップ画面といくつかの透析治療画面を表示する。セットアップ画面は一般に患者を治療のセットアップ部分を下見させる。システムは次のセットアップ画面に進む前に操作者の入力を待っている。セットアップ画面は患者にデバイスの実際のイメージと、システムを患者に接続するのに必要な動作を動画で提供する。
【0039】
治療処置画面は様々な治療サイクルをリアルタイムまたは実質的にリアルタイムで患者に表示する。治療処置画面はサイクル時間等の情報をグラフおよび数字の両方で表示する。治療処置画面は、これらの画面が表示されている間、眠っているかもしれない患者からの入力を要求しない。処置が終わると、システムはいくつかの取り外し画面を再度表示するが、これはセットアップ画面と同様に、動作を行う前に患者からの入力を待っている。
【0040】
処置画面はカラー表示であり、夜も観られるように照明されていて約10から15フィートの距離からでも容易に観られるが、眠っている患者を起さないように照明されている。ある実施態様では、画面の背景は黒色であり、一方、グラフはルビーの赤色である。対照的に、セットアップ画面は昼間に観られる様に証明され色が付けられている。
【0041】
上記の実施態様で、本発明の利点の一つは透析を行うための改良されたシステムと方法を提供することである。
【0042】
本発明の他の利点は、腹膜透析を行うための改良されたシステムと方法を提供することである。
【0043】
本発明のまた別個の利点は、自動化腹膜透析システムとその操作法を提供することである。
【0044】
本発明のさらに別個の利点は、透析治療に便利な自動化透析システムを提供することである。
【0045】
本発明のさらに別個の利点は、経済的に有利な自動化透析システムを提供することである。
【0046】
本発明のさらに別個の利点は、生活の質に有利な自動化透析システムを提供することである。
【0047】
本発明のさらに別個の利点は、使い捨てユニットの剛性を増し曲り減らす弓型に曲った側面を有する使い捨てユニットを提供することである。
【0048】
さらに、本発明の利点は、先細のインターフェースを有する使い捨てユニットを提供し、半剛性マニホールドの畜熱を減少しより強固なシールを行うことである。
【0049】
本発明の様々な特徴と利点を、添付の図面を参照して添付の特許請求の範囲を含む本開示を読むことにより明らかにすることができる。この利点は本発明の実施に望ましいが必要なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は機械的に起動する流体ポンプを有する本発明の自動化透析システムの実施態様を図示する。
【図2】図2は流体で起動する流体ポンプを有する本発明の自動化透析システムの実施態様を図示する。
【図3A】図3Aおよび3Bは本発明のハードウエアユニットと使い捨てユニットの斜視図を図示する。
【図3B】図3Aおよび3Bは本発明のハードウエアユニットと使い捨てユニットの斜視図を図示する。
【図4A】図4Aは本発明のハードウエアユニットと使い捨てユニットの実施態様の平面図である。
【図4B】図4Bは図4Aの線4B−4Bに沿った断面図であり、ハードウエアユニット内のシステム部品の可能な構成の一つを示す。
【図5】図5は本発明の使い捨てユニットの別な実施態様を示す。
【図6】図6は本発明の使い捨てユニットの別な実施態様を示す。
【図7】図7は使い捨て透析ユニットの膜とシールされる厚さを減らしたインターフェースを含むバルブマニホールドの実施態様の斜視図である。
【図8】図8は本発明の複数のチッププロテクターオーガナイザーの実施態様の斜視図である。
【図9】図9は図8に図示した複数のチッププロテクターオーガナイザーの正面断面図である。
【図10】図10は患者流体ラインコネクターを収容するチッププロテクターを示す本発明の通気性チッププロテクターの実施態様の正面断面図である。
【図11】図11は本発明の通気性チッププロテクターと結合した患者流タイラインコネクターの実施態様の正面断面図である。
【図12】図12は本発明の通気性チッププロテクターの実施態様の正面断面図である。
【図13】図13は本発明の使い捨てユニット膜の単一層フィルム構造の実施態様の断面図である。
【図14】図14は本発明の使い捨てユニット膜の複数層フィルム構造の実施態様の断面図である。
【図15】図15は本発明の流体マニホールドと組み合わせたバルブアクチュエーターの実施態様の斜視図である。
【図16A】図16Aは本発明のカム軸とカム配列の特徴を図示する。
【図16B】図16Bは本発明のカム軸とカム配列の特徴を図示する。
【図17A】図17Aは本発明の機械的に操作される流体ポンプと静電容量型流体体積センサーの実施態様を図示する。
【図17B】図17Bは本発明の機械的に操作される流体ポンプと静電容量型流体体積センサーの実施態様を図示する。
【図18】図18は本発明の流体で操作される流体ポンプと静電容量センサーの別な実施態様を図示する。
【図19】図19はポンプ内部の圧力をポンプピストンの正確な速度制御により制御するための、本発明の実施態様のグラフ表示である。
【図20】図20は比例、積分および微分型適応圧力制御を実行するための本発明のアルゴリズムの実施態様を図示する。
【図21】図21は供給バッグストロークから患者に充満および患者から吸引を繰り返す間の流体ポンプ内部の圧力の制御のための、本発明の実施態様のグラフ表示である。
【図22】図22は患者が排出および排出ストロークへの汲み上げを繰り返す間の流体ポンプ内の圧力制御のための、本発明の実施態様のグラフ表示である。
【図23】図23は圧力制御効率を最適化するための経時的圧力エラー補正パラメーターを適用するための、本発明のアルゴリズムの実施態様を図示する。
【図24】図24は図23に図示する補正パラメーターセットを示す表である。
【図25】図25は本発明の加熱制御法の実施態様を図示する。
【図26】図26は図25とに関連して討議される方法の知識ベースアルゴリズムのフローダイアグラムである。
【図27】図27は図25とに関連して討議される方法のファジーベースアルゴリズムのフローダイアグラムである。
【図28】図28は本発明の医療用流体ユニットで二重電気絶縁を提供する実施態様を示す電気絶縁ダイアグラムである。
【図29】図29は本発明のウエブベースグラフィックユーザーインターフェースの実施態様を図示する。
【図30−1】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【図30−2】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【図30−3】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【図30−4】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【図30−5】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【図30−6】図30A〜30Mは本発明の図表ユーザーインターフェースを用いるディスプレイデバイスからのスクリーン場面である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
(発明の詳細な説明)
本発明は透析システムおよび透析を行う方法に関する。具体的には、本発明は患者に腹膜透析を自動的に行うシステムおよび方法に関する。本発明は患者の腹膜腔の内外へ透析流体を自動的に複数回交換する方法を提供する。透析物の自動交換には排出、充満および滞留期間が含まれ、通常は患者が眠っている間に行われる。具体的な治療では3〜5回の透析流体の交換が含まれる。ある実施態様では、本発明は透析物が排出前に1回だけ腹膜腔を通過する、単一パスシステムを提供する。本発明は腹膜透析を行うものであるが、他のタイプの透析および他の医学的流体移動操作にも適している。
【0052】
(I.システムの概要)
図面、特に図1を参照すると、本発明のシステム10で行われる具体的な治療は、既に患者の腹膜腔12内にある透析溶液を排出することから始まる。システム10は新鮮な透析物を複数のバッグ14の一つから、インラインヒーター16を通って患者または腹膜腔12に送液する。腹膜腔12内の一定の滞留期間後、腹膜腔内の使用済み透析物は患者または腹膜腔12からドレイン容器18または他の廃棄手段へポンプで汲み出される。次にシステム10は新鮮な透析物を供給バッグ14から患者または腹膜腔12へポンプで汲み上げ、この手順が治療プロトコールで決められた通りに繰り返される。ある実施態様のシステム10では、日中の滞留等の滞留延長のために透析物の最後のバッグ(通常、他の供給バッグ中のものとは異なった処方を有する透析物)が腹膜腔12にポンプ送りされる。
【0053】
ある実施態様では、システム10には機械的に操作されるダイアフラムポンプ20が含まれる。機械的に操作されるダイアフラムポンプ20ではポンプモーター22および線形ポンプアクチュエーター24が用いられる。以下に詳細に述べる様に、ダイアフラムポンプ20のための機械的アクチュエーターでは真空も使用し得る。図2に示す他の実施態様では、ポンプは完全に流体作動である。
【0054】
図1では、システム10にはバルブV1〜V5を機械的に起動するバルブアクチュエーター26も含まれる。コントローラー30がバルブアクチュエーター26を制御し、必要な場合はバルブV1〜V5を開いて透析物を所定の方向に流す。ある実施態様では、バルブアクチュエーター26にはバルブモーター28とカム軸(以下に図示)が含まれ、V1〜V5の少なくとも1個を開いて透析物を所定の方向に流す。
【0055】
コントローラー30には複数のプロセッサーおよび各プロセッサー用のメモリが含まれる。プロセッサーには主マイクロプロセッサーおよびいくつかの専用プロセッサーが含まれる。主マイクロプロセッサーは以下に説明するグラフィックユーザーインターフェース(GUI)等の高度なレベルの仕事を実行させる。専用プロセッサーはバルブの運動、センサーの読み取り、ヒーターの繰り返しサイクル等の低レベルの仕事を行う。ヒータープレートおよび医療用流体温度等の安全パラメーターを追跡するための目的のみで別個のプロセッサーが備えられる。本発明の目的では、特に断らない限り“プロセッサー34”とは全てのプロセッサーを総称し、“メモリ32”とは対応する全てのメモリを総称する。
【0056】
コントローラー30には入出力(I/O)モジュール36も含まれる。メモリ32はシステム10用の段階的シーケンスを含むコンピュータープログラムを記憶し、特定の入力があるとある出力を出す様に形成されている。プロセッサー34はメモリ32内のプログラムを実行する。I/Oモジュールは様々なセンサーからの信号ラインを受け取る。I/Oモジュール36はまた、入力電源ライン(電池電源も含む)と様々な電気部品へ出力される電源ラインを含む電源ラインに接続される。
【0057】
ある実施態様ではコントローラー30には例えばビデオカード等のビデオコントローラー38が含まれる。コントローラー30には、医療処置または透析情報を患者または操作者に表示するディスプレイデバイスまたはビデオモニター40も含まれる。ある実施態様では、コントローラー30にはビデオモニター40を仲介しI/Oモジュール36と電気的に連通するタッチスクリーン42も含まれる。タッチスクリーン42により患者または操作者が医療処置または透析情報をコントローラー30に入力することができる。
【0058】
コントローラー30は一回の医療または透析処置を形成するいくつかの異なったフェーズで、ヒーター16、ポンプ20およびバルブアクチュエーター26を制御する。最初のポンプ充満フェーズでは、コントローラー30はポンプ20を起動して医療用流体または透析物を供給バッグ14の一つからポンプ送りする。図1でコントローラー30は空気ポンプ46を含む真空源44に、第1真空ライン48および再2真空ライン50を通ってポンプ20の両側を真空にする様に命令する。真空ライン48および50は第1および第2ポンプチャンバー壁それぞれを通って、ポンプチャンバー内部でポンプチャンバー内部に向かい合う一対の膜の一つを吸引して真空にする。もう一つの膜はポンプ20内のピストンヘッドと向かい合って保持される。もう一つの膜は交互に一時的に、または永久的に機械的にピストンヘッドに取り付けられ、ポンプ20のピストン側を真空にする必要がない。
【0059】
膜をポンプチャンバーの内部およびピストンヘッドと向き合って取り付けて、コントローラー30は線形アクチュエーター24にポンプ20内を吸引する様に命令する。吸引によりポンプチャンバー内の膜がさらに引き離される。この時点で、コントローラー30はバルブアクチュエーター26を制御しバルブV1のみを開く。膜を引き離すことによって充満ライン52を負圧にし、負圧が医療用流体または透析物を供給バッグ14から、ポンプ20のポンプチャンバー内の膜を開くことにより形成された受器内に引き込む。
【0060】
患者に充満するフェーズでは、真空源44によりポンプチャンバー壁を通って内部膜状に負圧が維持されている場合、コントローラー30により線形ポンプアクチュエーター24がポンプ20内で上方に移動する。アクチュエーター24の上方移動と、取り付けられたピストンヘッドにより機械的な陽圧を生じ、膜受器を閉じ、医療用流体をポンプ20の外へ送り出す。この時点でコントローラー30がバルブアクチュエーター26を制御し、バルブV2およびV3のみが開く。従って、ポンプ20から出る流体がすべてインラインヒーター16を通りヒーターライン54およびカテーテルライン56を通って患者中に、例えば患者の腹膜腔12内に送液される。ある実施態様におけるカテーテルライン56は、患者12内に移植された1本の内腔カテーテルに接続されるが、他の実施態様ではシステム10は複数の内腔カテーテルを用いることができる。
【0061】
ある実施態様におけるヒーター16には、医療用流体をほぼ体温に加熱する少なくとも1枚の電気加熱板が含まれる。コントローラー30が必要に応じてヒーター16をオンオフして適当な流体温度を得る。医療用流体が熱すぎるか冷たすぎる場合、コントローラー30はヒーターライン54のヒーターとは反対側に設置されたバルブV1およバルブV2を閉じる。加熱が不適切である場合、透析物は腹膜腔に入らない。
【0062】
コントローラー20はポンプ充満フェーズとヒーター充満フェーズを繰り返し、患者の腹膜腔12を治療プロトコールに従って流体で満たす。ある実施態様では、ポンプ内部の体積は約30〜50ミリリッターであり、成人の患者は例えば約2リッターの透析物を使用する。従って、ポンプ充満フェーズとヒーター充満フェーズは50回程度繰り返される。ある実施態様では、ポンプアクチュエーター24はポンプ20における流体圧力を平方インチ当たり約3ポンド(psi)に保つ。
【0063】
システム10はポンプ20を通って送液される医療用流体の実際の体積を測定する流体体積センサー60を備えている。複数の個々のポンプ体積を集計することにより、コントローラーは患者12にどれだけの量の医療等流体または透析物が配送されたかを正確に知っている。ある実施態様ではシステム10はポンプ充満フェーズおよびヒーター充満フェーズを繰り返し、ポンプ20が所定の体積の医療用流体を配送する。所定の体積は患者または操作者によりコントローラー30に入力される。
【0064】
滞留フェーズでは、コントローラー30は医療用流体または透析物を患者12内に一定時間滞留させるが、その時間は患者12または操作者によりコントローラーで制御される。ある実施態様では、コントローラー30が停留時間を決定するが、患者12または操作者はシステム10を無視してシステム10が医療用流体を患者12から除去する様に命令できる。
【0065】
第2のポンプ充満フェーズでは、医療用流が患者12から除去される。コントローラー30およびアクチュエーター26はバルブV4を開き、残りのバルブを閉じる。真空源がポンプ20の内部の負圧を維持している間に、線形アクチュエーター24がポンプ20のチャンバー内にポンプピストンを引き込み、膜間の受器を再度開く。受器を開くことで生成した負圧がカテーテルライン56を通って患者12から医療用流体を引き抜き、ポンプ20の内部に形成された膜受器中に送る。
【0066】
排出フェーズでは、ポンプチャンバー壁を通って真空源44により内部膜上の負圧を維持しながら、コントローラー30は線形ポンプアクチュエーター24をポンプ20内で上方へ移動させる。アクチュエーター24の上方移動により機械的陽圧を生じ、膜受器を閉じ、医療用流体をポンプ20の外へ排出する。この時点で、コントローラー30はバルブアクチュエーター26を制御しバルブV5のみを開く。その結果、ポンプ20に存在する流体は全てドレインライン58を通ってドレイン容器18へ排出される。ドレイン容器18はドレインバッグまたは家庭、病院その他のドレインパイプである。
【0067】
流体体積センサー60の実施態様が、ダイアフラムポンプ20の説明と共に以下により詳細に説明される。流体体積センサー60の他に、システム10には様々な他の所望のタイプのセンサーが含まれる。
【0068】
システム10にはシステム10内の関連する場所にセンサーT1およびT2等の温度センサー62が含まれる。ある実施態様では、センサー62は非侵入型であるが、その他任意の型の温度センサーを使用できる。図1に示す様に、センサーT1およびT2によりコントローラー30が流体温度の余剰ヒーター後フィードバックを行う。センサーT3は加熱前の医療用流体の温度を測定する。センサーT4は周囲温度を提供する。
【0069】
システム10はまた、ヒーター16の温度を監視する温度センサー62も備えている。ある実施態様では、ヒーター16はインラインプレートヒーターである。インラインプレートヒーター16は少なくとも1枚のヒータープレート、例えばその間に使い捨てユニットをが設置された2枚のヒータープレートを有する。別個の温度センサーPT1およびPT2が各プレートヒーターの温度を測定するために備えられる。それによりシステム10は各プレートヒーターを個別に制御することができる。
【0070】
システム10にはセンサーAS1等の、ポンプ20の入り口および排出口の咽喉部に直接設置された少なくとも1個の空気センサー64が含まれる。別個の空気センサーAS2は非―他を出た後、カテーテルライン56へ導く最後の遮断バルブV13直前の医療用流体中の空気を監視する。コントローラー30は空気センサー64で検出された空気含有量を監視し、システム10が必要な空気抜きを行うように制御する。システム10は空気を分離し空気を流体から排出するか、単に空気をドレイン容器18へ運ぶことができる。システム10にはコントローラー30で作動する排気ソレノイド66も含まれる。排気ソレノイド66により、システム10はポンプ20内の一方または双方の膜に加えられた真空を逃がすことができる。
【0071】
システム10は様々な理由で空気を蓄積し得る。例えば、バルブV1〜V5およびライン52、54、56および58等の流体ラインはシステム10を始動する前に空気を含み得る。供給バッグ14も空気をポンプ20に導入する。患者20もある種のガスを生成し、透析物に同伴しポンプ20に入り得る。さらに、使い捨て流体または供給バッグ12、患者のカテーテルまたはドレインバッグへの接続に漏れがある場合、ポンプ20は漏れにより空気を引き込むことがある。
【0072】
システム10は様々な流体圧力センサー68を備えている。流体圧力センサーFP1およびFP2はポンプ60へ繋がる充満ライン52中の流体の流体の余剰圧力測定を行う。流体圧力センサー68はコントローラー30へその位置での個々の流体圧力を示す信号を提供する。圧力センサーFP1およびFP2からの信号に基づき、コントローラー30は流体ポンプおよびバルブを操作し所望の流体圧力を得てそれを維持する。先に述べた様に、システム10はポンプ圧力を例えば3psiに保つ。
【0073】
システム10はまた様々なバルブ圧力センサーを70備える。バルブ圧力センサーVP1〜VP2はバルブV1〜V5における流体圧力を検出する。システム10にはさらに少なくとも1個の真空圧センサー72が、例えば真空源44に備えられ、ポンプ20内の膜上で適切な圧力が維持されていることを保証する。
【0074】
別個の実施態様では、流体圧力センサー68、バルブ圧力センサー70および真空センサー72はそれぞれ非侵入型センサーである。すなわち、センサーは医療用流体または透析物と物理的に接触しない(および汚染する可能性がない)。もちろん、システム10には任意の品質で任意の場所に流速センサー、圧力ゲージ、フローメーターまたは圧力調節器等の他の流体および圧力機器が含まれる。
【0075】
システム10にはまた、様々な位置センサーが含まれる。ある実施態様では、位置センサーには線形ポンプアクチュエーター24の位置を監視する直線エンコーダー74、およびバルブアクチュエーター26またはカム軸の角度位置を監視する回転エンコーダー76が含まれる。エンコーダーは使用し得る位置決めフィードバックデバイスの1つの型である。位置決めフィードバックデバイスの1つの型にはパルス、例えばカム軸に取り付けられたギアの歯を検知し、パルスをコンピューターまたはマイクロプロセッサーに出力する近接センサーおよび磁気ピックアップが含まれる。
【0076】
エンコーダー74および76は例えば、コントローラー30に送られるパルス出力を提供する。パルス出力は線形ポンプアクチュエーター24またはバルブアクチュエーター26がホーム位置またはホームインデックス78からどれだけのステップにあるか、またはどれだけ遠いかをコントローラー30に知らせる。例えば、ホーム位置78は直線エンコーダー74ではポンプが完全に開いた、または閉じた位置であり、回転エンコーダー76では角度0度の位置である。
【0077】
ある実施態様では、エンコーダー74および76はパワーロスの後でもホーム位置78を検知する絶対式エンコーダーである。他の実施態様では、エンコーダー74および76は増量式エンコーダーであり、外部電源が加えられていない場合でもシステム10がホーム位置78の場所を記憶し得る様にバッテリーでバックアップされている。また別に、システム10をプログラムし、電源を入れるとホーム位置を検出するまでポンプアクチュエーター24およびバルブアクチュエーター26を自動的に移動させることもできるが、その場合はシステム10はメインシーケンスを実行する。
【0078】
図2には別個のシステム100が図示されている。システム100には先に説明したものと同じ機能(および同じ参照番号)を有する同じ部品が含まれる。従って、システム100の新しい部品の機構が異なる場合を除いて、これらの部品は再度説明する必要はない。システム100とシステム10の主な違いは、システム100のポンプ120が完全に流体で起動され、システム10の線形アクチュエータ24を使用しないことである。
【0079】
上記のポンプ充満フェーズで、コントローラー30は供給バッグ14の一つから医療用流体または透析物をポンプ送りする様にポンプ120を起動する。そのために、コントローラー30は真空ポンプモーター46を含む真空源44(図2でモーター46から離れて示される)にポンプ120の両側、すなわち2枚のポンプ膜上を真空ライン148および149を通って真空に引く様に命令する。この実施態様の真空ポンプモーター46には回転エンコーダー76およびホーム位置またはホームインデックス78が含まれる。回転エンコーダー76は真空源44内で部材150の位置のフィードバックを行う。従って、システム100は真空源44がさらに吸引を行うか、または部材150が真空源44内の底にあるかを知ることができる。
【0080】
医療用流体を引き込むために、真空ライン148は第1および第2ポンプチャンバー壁を通してポンプチャンバー内の向き合った一対の膜を真空に引く。真空はポンプチャンバーとは反対方向に膜を引き寄せる。この時点で、コントローラー30はバルブアクチュエーター26を制御してバルブV1のみを開く。膜を引き離すことにより、充満ライン52に陰圧を生じさせ、医療用流体または透析物を充満ライン52を通り、ポンプ120のポンプチャンバー内の膜の間に形成された受器中へ陰圧により供給バッグ14から引き込む。
【0081】
また別個の実施態様では、ポンプ120は膜の一方に一定の真空を維持するが、もう一方の膜はポンプ吸引を行わない。流体をポンプ流出させるために、2枚の膜の一方の上の真空が開放される。引き離された膜は閉じた位置へ弾性で復帰する。この操作を以下に詳細に述べる。
【0082】
システム100にはシステム10より若干異なったバルブマニホールドも含まれる。システム100はシステム10より1個少ないバルブを有するが、システム100は流体ヒーター16の直後に追加バルブ(システム10のバルブV3)を持たない。明らかに、当業者はシステム10およびシステム100のバルブと流体送液ラインを形成する方法がいくつもあることを理解する必要がある。従って、図示されたシステム10とシステム100のバルブと流体送液ラインの形状は単に具体例を示すものであり、本発明はそれに制約されない。
【0083】
(II.ハードウエアユニットおよび使い捨てユニット)
図3A、3B、4Aおよび4Bを参照すると、システム10および100にはハードウエアユニット110と使い捨てユニット160が含まれる。ある実施態様のハードウエアユニット110は携帯用で患者の家へ、および家から持ち運びできる。ハードウエアユニット110にはベース114および蓋116を含むハウジング112が含まれる。ある実施態様では、蓋116はベース114に蝶番で止められている。または、蓋116はベースから完全に取り外すことができる。何れの場合でも蓋116を開いてハウジング112の内部に触れ、患者または操作者が使い捨てユニット160をハードウエア110中に設置し、およびハードウエア110の中から取り出すことができる。ハードウエアユニット110は任意の保護性の、固く弾力のある、または弾力性材料、例えばプラスチックまたは金属シートで製造され、表面に修飾または仕上げを施すことができる。
【0084】
使い捨てユニット160をハードウエアユニット110の中に設置すると、操作者は蓋116を閉じ少なくとも1個のロックまたはラッチ機構118を使用し(図3B)、使い捨てユニット160をハードウエアユニット110内に安全に収納する。図4Aは蓋116のラッチ機構が取り付けられたハウジング112の部材119を示す。ハードウエアユニット110はビデオモニター40を表示し、上記のような命令を入力するための関連するタッチスクリーン42を有する。それとは別に、またはタッチスクリーン42に加えて、ハードウエアユニット110には少なくとも1個の電気機械式スイッチまたはタッチボタン43、124、125および127を備えると同時に、制御部材122および/または照明されたディスプレーを備える。プッシュボタンまたはスイッチ43、124、125および127、およびノブ122により、患者または操作者が命令および情報をシステム10および100に入力することができる。ビデオモニター40は患者または操作者に医療処置情報126を提供する。
【0085】
図3Bは本発明のハードウエアユニット110の1セットの寸法を示す。本発明の寸法と重量は以前の自動化透析システムより小さい。この特徴は本発明のシステム10、100の携帯性および使いやすさを示すものである。サイズと重量はハードウエアユニット110を標準の終夜特急便で出荷することを可能にする。本発明のシステム10、100が故障した場合、次の治療に間に合うように患者に経済的に交換ユニットを発送することができる。
【0086】
ある実施態様におけるハードウエアユニット110は高さおよび奥行きが約23〜30cmであり、図25に示す好ましい実施態様では高さおよび奥行きが約25cmである。ある実施態様におけるハードウエアユニットは幅約32〜40cmであり、ある好ましい実施態様では図に示す様に幅約34cmである。従ってユニット110の内体積は約17、000cm〜36、000cmであり、ある好ましい実施態様では約21、250cm(1310in)である。断面図4Bはこのコンパクトな空間内に収められた多くの部品と、その効率的な使用を巧みに図示している。これらの部品とハードウエアユニット110は全重量は約9キログラム(kg)であり好ましい実施態様では約7キログラムである。
【0087】
図3Aおよび4Bはハードウエアユニット110の形式、形状およびレイアウトにより、使用しやすい自動化システムが提供される。患者が拘らなければならないシステム10、100の部品はユニットの上部、全面および側部に設置されている。送液制御部品はヒーター116の下に設置され、使い捨てユニット搭載ステーションの下に設置されている。モニターおよび制御部43、122、124、125および127はユニット110の全面に設置されている。
【0088】
ハードウエアユニット110にはポンプ20または120、およびシステム10を使用する場合は線形ポンプアクチュエーター24が含まれる。ハードウエアユニット110はまた、バルブモーター28、インラインヒーター16、様々なセンサー、空気ポンプモーター46を含む真空源44バルブアクチュエーター26およびコントローラー30の他、上記のその他のハードウエアを含む。図4Bはポンプ20または120のポンプチャンバー壁はハウジングの蓋116内に配置されていることを図示している。図4Bでヒーター16はハウジング112のベース114に配置されている。それとは別に、またはそれに追加して、ヒーターを蓋116に設置こともできる。ベース114は向かい合うポンプチャンバー壁も含む。
【0089】
図3A、4A、4B、5および6を参照すると、使い捨てユニット160の様々な実施態様が示されている。各実施態様において、使い捨てユニット160には上部柔軟膜162と下部柔軟膜164を含む一対の柔軟膜が含まれる。図6の使い捨てユニット160には2枚の柔軟膜、すなわち膜ペア166と膜ペア168が含まれる。膜ペア166と168のそれぞれには上部柔軟膜162と下部柔軟膜164が含まれる。
【0090】
柔軟膜162と柔軟膜164は無菌で不活性なプラスチックまたはゴム等の任意の無菌で不活性な材料で製作できる。例えば、膜162および164はブナ(buna)−N、ブチル、ハイパロン(hyparon)、ケル(kel)−F、カイナール(kynar)、ネオプレン、ナイロン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、ビニル、バイトン(viton)またはそれらの任意の組み合わせである。柔軟膜の好ましい実施態様の一つは図13および14と関連して以下に記載される。
【0091】
膜162および164は様々な場所で相互にシールされ、流体送液経路と膜162および164の間の受器を形成する。シールはヒートシール、接着剤シール、またはその組み合わせである。図3A、4A、5および6はほぼ円形のシール170が実質的に円形の膜162および164の間の流体ポンプ受器172を形成することを示している。ポンプ受器172は流体ポンプとともに作動する。しーる170の代わりに、ある実施態様ではベース114と蓋116が膜を圧縮しシールとなっている。図4Aおよび5Bは、ある実施態様で使い捨てユニット160が第2のシール174となり、1次シール170が使用中に漏れる、または劣化した場合はシステム10および100を保護することを示している。
【0092】
図3A、3Bおよび4Bは、流体ポンプ受器172がクラムシェル形のポンプ20および120と蓋116の間にはめ込まれることを示している。ハードウエアユニット110のベース114と蓋116と共に流体ポンプ受器172を形成するクラムシェル形が、本発明のポンプ20および120のポンプチャンバーを形成する。ベース114と蓋116中のクラムシェル形には、膜162および164上で真空に引く少なくとも1個のポートが含まれる。この様にして、膜162および164はクラムシェル形の方向へ引っ張られ、ベース114および蓋116中でクラムシェル形になり、受器172の内部を陰圧にし、その結果ハードウエアユニット110の外側に位置する供給バッグ14から受器172内へ医療用流体を引き込む。
【0093】
図3A、4A、5および6は通常長方形の螺旋状シール178が巻き162および164の間に螺旋状加熱経路180を生成することを示している。流体加熱経路180はバルブマニホールド190から螺旋状部分を通り、バルブマニホールドへ戻る。図4Aは流体加熱経路180が、ハードウエアユニット110のベース114と蓋116に設置されたヒーター16の加熱プレートの間にはめ込まれていることを図示している。熱源を流体加熱経路180のどちらか一方に備えることにより、医療用流体を素早く効率的に加熱することができる。しかしながら別個の実施態様では、ヒーター16は使い捨てユニット160で形成される流体加熱経路180の一方にある1個のヒーターのみを含むか、使い捨てユニット160のそれぞれの側面上の複数のヒーターを含むこともできる。
【0094】
上部および下部膜162、164は、本明細書に記載する熱シール技術を用いて使い捨てユニット160に取り付けられる。膜162、164は延伸可能で、使い捨てユニット160がヒーター16の上部および下部プレートの間の所定の間隙の間に設置された場合、膜162、164が伸びてヒータープレートと接触する。これによりヒータープレート16と膜162、164、膜と医療用流体の間で伝導加熱が行われる。所定の間隙は使い捨てユニット160の厚さより若干大きい。具体的には、透析物が使い捨てユニット160の流体加熱経路180を通って移動すると、螺旋状に巻かれた流体加熱経路180の膜162、164が螺旋状シール178の間で伸び、ヒータープレート16に触れる。
【0095】
(A.別個の膜セット)
図6の使い捨てユニット160は図3A〜5の使い捨てユニット160と類似いている。しかしながら、インライン流体加熱経路180は、別個の膜ペア168に設置された流体ポンプ受器172とバルブマニホールド190とは異なった膜ペア166に設置されている。任意の適当な医療グレード配管である一対の弾力性チューブ182と184がバルブマニホールド190を流体加熱経路180に流体で連結される。チューブ182および184は膜ペア166、168と、ヒートシール、接着、加圧接着または他の永久的または路値は取り外し可能な流体接続等、任意の所望の方法で接続するこができる。ハードウエアユニット110に設置されると、他の実施態様と同様にヒーター16がヒーター膜ペア166の各側面を加熱する。
【0096】
流体加熱経路180を流体ポンプ受器172およびバルブマニホールド190から分離することにより、各膜ペアの膜を異なった材料で製作することができる。加熱ペア166の膜162および164が熱を効果的に伝導または放射することが望ましい。一方、流体送液ペア166の膜162および164は吸引および機械的起動の力に耐えることが望ましい。従って、膜ペア166と膜ペア168には異なった材料を使用することが望ましい。
【0097】
ヒーター流体流路180を形成する膜ペア166は、ハードウエアユニット110のベース114または蓋116から突出する突起に沿った整列孔176も形成する。本明細書に開示された使い捨てユニット160の各実施態様には整列孔176を含む様になっており、患者または操作者が使い捨てユニット160をハードウエアユニット110のハウジング112内に設置し易くしている。
【0098】
(B.剛性フレームおよび弓形側面)
図3A、4Aおよび5に示す様に、本明細書に開示する使い捨てユニット160の実施態様も剛性または半剛性部材または、ある実施態様では使い捨てユニット160の膜162および164を取り巻く、または実質的に囲むフレーム186を提供する様に形成される。ある実施態様ではフレーム186の剛性部材は滅菌した剛性または半剛性プラスチック、例えば膜162および164用に上に列記したプラスチックの一つまたはその組み合わせで形成される。フレーム186により患者または操作者が使い捨てユニット160をハードウエアユニット110のハウジング112内に設置し易くなる。
【0099】
ある実施態様では、ハウジング112は使い捨てユニット160のフレーム186が快適にはまり込むピンまたはガイドが設けられている。図5は、フレーム186にはハウジング112のピンまたはガイドにはめ込まれる細孔161が設けられていることを示している。フレーム186はハウジング112が提供するほぼ同数のピンまたはガイドにはめ込まれる複数の開口部を提供し得る。図5はまたフレーム186に非対称な数の面取り部163が含まれることを示している。面取り部163はフレーム186の他方の側面に対して5°等のある角度となっている。ハウジング112は使い捨てユニット160を設置する表面を有する、または提供する。この表面は非対称の形であるか、またはユニット160をハウジング112内に1方向から設置し得るガイドを提供する。面取り部163および対応するハウジング112により、患者が使い捨てユニット160をはハウジング112内に設置する場合、使い捨てユニット160の底がハウジング内に設置され、流体入口/排出口196が適切な方向に向くことが保証される。
【0100】
上記の様に、使い捨てユニット160にはバルブマニホールド190が含まれる。ある実施態様ではバルブマニホールド190は膜162および164用の上に列記したものの一つまたはその組み合わせ等の剛性または半剛性プラスチックで作成される。バルブマニホールド190はそのどちらかの側で上部および下部膜162および164で覆われ、その結果システム10および100の密封され不活性な論理流路を形成する。
【0101】
図5で、マニホールド190には孔192とスロット194が設けられている。孔192は例えばシステム10のバルブV1およびV5等のバルブの位置を決める。スロット194はバルブから流体ポンプ受器172、流体加熱経路180または流体入口/排出口196への流体送液経路となる。流体入口/排出口196はそれぞれ供給バッグ14、カテーテルライン56、患者12およびドレイン容器18に導かれる。流体入口/排出口196は図3Aに図示する様な様々な形体と方向を持つことができる。ドレイン容器196は当業者に公知の方法で外部の弾力性チューブと接続される。
【0102】
ある実施態様では、剛性または半剛性フレーム186には図5に図示する様な弓形に曲った側面187および189が含まれる。弓形に曲った側面187および189は膜162および164がフレーム186およびマニホールド190に熱シールまたは接着シールされる前にフレーム186で形成される。フレーム186と弓形に曲った側面187および189は押出し成形プラスチックまたは射出成形プラスチックである。フレーム186には僅か1個所、全ての数より少ない数または全ての数の弓形に曲った側面が含まれ得る。
【0103】
図示された実施では、側面187および189は外向きに弓形に曲がっているか、交互に内向きに曲がっている。好ましい実施態様では、側面は使い捨てユニット160のフレーム186の平面の方向に弓形に曲がっている。弓形に曲がった側面187および189はフレーム186および使い捨てユニット169の剛性を増加させる。従って使い捨てユニットはハードウエアユニット110のハウジング112内により容易に設置できる。弓形の曲った側面187および189は、膜162および164をフレーム186およびマニホールド190に熱シールまたは機械プレスによるフレーム186の曲りまたは歪みの程度を減少させる。
【0104】
(C.熱シールインターフェース)
図7を参照すると、膜162および164のマニホールド190への熱シールが図示されている。ある実施態様では、マニホールド190は上記の様な剛性または半剛性プラスチック材料で製作される。実施態様では射出成形部品である膜162および164のマニホールド190への熱シールでは、例えば流体ポンプ受器172のシール170における個々の膜162および164相互のの熱シールとは異なった加工パラメーターが必要である。例えば、膜162および164のマニホールド190への熱シールにはより多くの熱、圧力および加熱時間が必要である。半剛性または剛性マニホールド190それぞれの膜162および164よりかなり厚い。従って、薄い膜に比べて、より厚いマニホールド190が熱溜めとして作用する。従って薄い膜と厚いマニホールド190の間の接着は、薄い膜162および164間の接着シールより多くの熱またはエネルギーが必要である。
【0105】
図3A、4A、5および6に示す様に、使い捨てユニット160には膜とマニホールド、および膜と膜のシールが必要である。明らかに、使い捨てユニット160全体を1工程またはプロセスでで熱シールすることが必要である。熱シールプロセスを薄い膜162および164の燃焼または溶融を避ける様に行わなければならないことも明白である。
【0106】
図7は異なった材料間の畜熱の不均衡を解決する実施態様を示す。図7は、図5にその全体が示されたマニホールド190の一部を示す。図5で、マニホールド190は流体ポンプ受器172に接続された部分を示す。この部分は部分205として図7に示される。図5はまた、流体加熱経路180に流体で接続されたマニホールド190から伸びる2個のポートを示す。これらのポートは図7にぽーと201および203として図示される。図5および7の双方は、射出成形されたマニホールド190が複数の孔192および194を形成することを示している。孔192はバルブアクチュエーターおよびスロット194で作動して、膜162および164で囲われた場合、流体経路を形成する。
【0107】
膜162および164をマニホールド190へシールするに必要な熱量を減らすため、マニホールド190にはマニホールド190の残りの部分より厚さが小さい側面193がある。より薄い側面193の質量はより小さく、従ってマニホールドが均一な厚さである場合より小さい局所熱を吸収する。側面193はまた、テーパー部195を軽視するか含んでいる。テーパー部195は膜162および164をシールし、膜162および164を一緒に置く平坦部があり、ある実施態様では膜と膜のシールが膜とマニホールド190のシールに加えて行われる。
【0108】
テーパー状エッジ195は、膜162および164をマニホールド190へシールするインターフェースとなる。このエッジはシールが必要なマニホールド190の側面193を連続的に延伸して生じ、シールしなければ医療用流体と接触する。従って、図5に示す様に、入口/排出口ポート196を形成するマニホールド190の側面はず7に図示する様に先細にする必要がない。また図7に示す様に、薄い側193の先細エッジ195はポート201、203および205がマニホールド190から伸びる場所で不連続である。
【0109】
ポート201、203および205は先細エッジ207も形成する。先細エッジ207は膜162および164への部分を熱シールするためのインターフェースを形成する。上記の様に、ポート201、203および205の先細エッジ207により、膜から先細エッジ207へのシールの次に膜から膜へのシールを直接行うことを可能にする。好ましい実施態様における先細エッジ195および207はナイフ上エッジに向かって徐々に細くなっている。他の実施態様では、先細エッジ195および207は、丸いエッジ、鈍いエッジ等の異なった形式または形状であるか、マニホールド190の側面193から単に厚ささらにを減らしてもよい。図示する様に、ある実施態様のぽーと201、203および205は卵型の開口部を形成する。先細の卵型開口部により、円形の外径よりスムースな移行が可能である。卵型開口部は、内部卵型の開口面積が適当な円形ポートの開口面積以下でなければ、流体送液の立場からは丸い開口部と同様な機能を果たす
ポート201、203および205は立ち上がり部209も形成する。立ち上がり部209はポート201、203および205の先端および先細エッジ207にそってポリマー材料の玉を形成する。玉を先細エッジ195および/または側面193に沿って追加して、または立ち上がり部の代わりに設置することができる。立ち上がり部またはビーズ209は、溶融または変形して、膜162および164をマニホールド190へシールし得るフラックス様のシール材となるプラスチックのごく薄い領域を提供する。ビーズはマニホールド190を取り巻くプラスチックより高温のプラスチックが凝集した薄片となる。膜162および164はマニホールド190に、マニホールド190のより広い面積を加熱することなくシールされる。立ち上がり部またはビーズ209により、マニホールド190が形成する曲った部分および/または角をシールし易くする。
【0110】
(D.一体化チッププロテクターオーガナイザーおよび通気性チッププロ)テクター
HOMECHOICE(登録商標)腹膜透析システム図8を参照すると、一体化チッププロテクターオーガナイザー270のある実施態様が図示される。本発明の譲受人が提供するHOMECHOICE(登録商標)腹膜透析システムでは、使い捨てセットはプレパックされて患者に提供される。患者がバッグを開くと、各部品は滅菌され使い捨てセット中に保持されている。使い捨てセットには使い捨てユニットと、使い捨てユニットから出るいくつかのチューブが含まれる。本発明と同様、HOMECHOICE(登録商標)使い捨てユニットには少なくとも1個のバッグ充満チューブへ接続するドレインラインチューブと、患者輸液セットに接続するチューブが含まれる。これらにチューブのそれぞれには別々のチッププロテクターが必要である。すなわち、使い捨てユニットの内部とチューブを例えばエチレンオキサイドを使用して滅菌後、システムの内部の滅菌状態が維持される様にチューブの末端をキャップで密封しなければならない。HOMECHOICE(登録商標)システムは各チューブ毎に独立したチッププロテクターを提供する。
【0111】
本発明の一体化チッププロテクターオーガナイザー270は複数のチッププロテクター274、276、278および280で形成される、またはそれらを提供する一体部材272(実際には複数の部品で作成され得る)を提供する。通気性チッププロテクター270は使い捨てユニット160から伸びるチューブの末端でコネクターを収容し保護するばかりでなく、一体化チッププロテクター270はまた透析治療の手順にしたがってチューブをまとめ整列する。図示された実施態様では、チッププロテクター274は使い捨てユニット160の適当なポートへ導くドレインライン285に接続されたドレインラインコネクター284用のチッププロテクターである。チッププロテクター276および278は供給バッグプロテクターである、Y接続部287/289に伸びるチューブ287および289の末端を接続するコネクター286および288を保護するが、Y接続部287/289の脚は使い捨てユニット160の適当なポートへ伸びている。チッププロテクター280は患者流体ラインプロテクターである。チッププロテクター280は、使い捨てユニット160の適当なポートへ伸びる患者チューブに接続するコネクター290を収容し保護する。
【0112】
ある実施態様のチューブ285、Y接続部287/289および/または患者流体チューブ292のそれぞれは、内径4mm、外形5mmのポリビニルピロリドン(PVC)で作成される。図示する様に、一体化チッププロテクターオーガナイザー270は様々なタイプの流体コネクターを受け取り保護する様に形成される。チューブ285を経由して使い捨てユニット160のドレインラインポートへ伸びる流体コネクター284は、ある実施態様では供給バッグ14から出るポートと全く同じである。供給バッグ14から出るポートには、供給バッグコネクター286および288の鋭い幹で穿孔された膜も含まれる。ドレインラインコネクター284には、必要のない供給バッグ14の膜は含まれない。患者流体チューブ292の末端へ接続するチッププロテクター290は以下に詳細に議論される。
【0113】
ある好ましい実施態様では、本発明のシステム10、100は2個の6リッター供給バッグ14を備える。2個の6リッターバッグは経済的な量の腹膜透析物を備え、患者が眠っている間の夜間の何回かの充満、滞留およびドレインサイクルを行うに十分な量の流体である。従って、一体化オーガナイザー270は2個の供給コネクター286および288を収容し保護するチッププロテクター276および278を備える。別個の実施態様では、一体化オーガナイザー270は任意の数の供給バッグチッププロテクターを形成または備えることができる。任意の数の供給バッグをYまたはT型配管結合を経由してさらに接続することができる。
【0114】
一体化オーガナイザー270は、日中に患者に最後に充満する十分な量、例えば2リッターの腹膜透析物を保持する最後のバッグのプロテクター等の別個のチッププロテクターを備えることができる。この場合、図示されないが別個の最後のバッグチューブがコネクターに接続されるが、このチューブは充満バッグコネクター286および288と同じ、または類似のバッグ穿孔コネクターである。
【0115】
プロテクターオーガナイザー270の本体272はPVCで作成された実施態様である。チッププロテクター274、276、278および280は射出成形またはブロー成形されている。または、チッププロテクターが別々に本体272に取り付けられる。図8に見られる様に、少なくとも1個のチッププロテクターにはそれぞれのチューブコネクタを掴んで保持しやすくする縦溝、糸またはその他の突起が含まれる。さらに、本明細書ではオーガナイザー270は通常“一体化”オーガナイザーと呼ばれるが、オーガナイザー270それ自体は任意の数の部分で構成され得る。“一体化”とは1個のユニットが複数のチッププロテクターを収容する形態を言う。
【0116】
一体化オーガナイザー270には本体272の主要部から外側に伸び、本体272の主要部を取り巻くリム294が含まれる。図9にはリム294がドレインラインチッププロテクター274から患者流体チッププロテクター280へ向かって下向きに先細になっている一体化オーガナイザー270の断面図が示される。すなわち、リム294は患者流体ラインの末端よりドレインライン末端で高く、または厚くなっている。これにより一体化チッププロテクターオーガナイザー270をハードウエアユニット110上に一方向のみに搭載することができる。
【0117】
図3Aは一体化チッププロテクターオーガナイザー270がある実施態様ではハードウエアユニット110中に縦に滑り込むことを図示している。ハードウエアユニット110にはハードウエアユニット110の側壁から外向きに伸びる一対の膜296が含まれる、または備えられている。図3Bおよび4Aは他の実施態様を示すが、オーガナイザー270のリム294は、ハードウエアユニット110のハウジング112のベース114で形成される、または提供されるノッチ297中に垂直に滑り込むことを図示している。オーガナイザー270のリム294は膜296とハードウエアユニット110の間に滑り込む。部材296はハードウエアユニット110の先端に向けて伸びる場合、さらに外側に伸びる。膜296の先細部はオーガナイザー270のリム294の先細部に対応し、オーガナイザー270がハードウエアユニット110中へ1方向のみから滑り込む。
【0118】
図9も、チッププロテクター274、276、278および280が様々な断面形状を、持ち得ることを示している。チッププロテクターのそれぞれには、それぞれのコネクター284、286、288および290の回りをシールする固い底と側面が含まれ、患者が使い捨てセットをシールされた滅菌容器から取り出した後でも一体化オーガナイザー270がシステムの滅菌性を維持する。図8および9に図示された一体化オーガナイザー270は頑丈な方法でハードウエアユニット110の側面に搭載される。硬い接続を経由して、多くの場合患者は片手のみを使ってチューブ285、287、289および292を取り外すことができる。ハードウエアユニット110とオーガナイザー270の間のインターフェースは患者の手順を簡単にし、チューブと関連するコネクターユニットに対し固く無菌の環境を提供する。
【0119】
図3Aはまた、別の一体化オーガナイザー298が使い捨てユニット160のフレーム186に組み込まれている、またはフレームに備えられている別個の可能な実施態様を示す。一般的に示されるチューブ196がハウジング112のチッププロテクター270の垂直配置とは対照的に水平にまとめられている。水平の一体化オーガナイザー298は、仕様前にチューブを保護しまとめる考え方をシステム10の様々な場所と方位で応用されることを示している。
【0120】
ある実施態様では、チッププロテクターとオーガナイザー270がチューブ285、287、289および292を下向きに垂直な並列で構成され、透析治療を開始する時に患者が引っ張ると思われる第1チューブが上部に備えられ、その結果患者が引っ張ると思われる次のチューブが真ん中に備えられ、最後のチューブが垂直に蜂された一体化オーガナイザー270の一番下に備えられる。ある実施態様によれば、患者はチッププロテクター274からドレインコネクター284を最初に取り出し、ドレインライン285をトイレット、ドレインバッグまたはその他のドレインへ導く。次に患者は供給コネクター286および288を取り出し、供給バッグ14を破る(図1および2)。この時点で、透析物を使い捨てユニット160およびシステム10全体に送液することができる。システム10、100のコントローラー30はサイクルを始動し始めるが、これは以下により詳細に述べる。
【0121】
始動が終わると、システム10、100は患者に始動した患者ライン292を取り出し、それを患者に埋め込まれた移動セットに接続する様に促す。移動セット(図示せず)には患者の腹膜腔内に位置するカテーテルと、カテーテルへ伸びるチューブが含まれる。チューブにはコネクター290と接続するコネクターが含まれる。この時点で、システム10、100が使用済み腹膜液を患者12からドレイン18へ排出するか、新しい液を少なくとも1個の供給バッグ14から引き出し、患者の腹膜腔12へ充満することができる。
【0122】
図10および12には患者ラインチッププロテクター280の実施態様が図示される。本発明の譲受人が製造するHOMECHOICE(登録商標)システムが、患者コネクターをほぼ供給バッグと同じ高さに垂直に保持することで患者流体ラインを始動する。この様にして、HOMECHOICE(登録商標)システムが使い捨てユニットを始動すると、重力で腹膜流体が患者の流体ラインに患者流体コネクターの末端まで供給する。患者流体コネクターが開かれ、腹膜流体が患者ラインを通って重力で供給されると空気が自由に抜け出す。HOMECHOICE(登録商標)システムにより患者流体ラインをポンプストロークを数えなくても、または拭く圧で失敗しがちな技術である既知の体積の透析物を定量送液しなくても起動することができる。
【0123】
本発明のシステム10、100は、患者流体ラインの患者コネクターに正確に届くがそれを越えない流体の量を計算する必要のない、始動の異なったデバイスと方法を提供する。図10は、通気チッププロテクター280内に挿入された患者流体コネクター290の断面を示す。図11は患者流体コネクター290単独の断面を示す。図12はチッププロテクター280単体の断面を示す。疎水性膜300がチップコネクター280の外エッジに設置されている。チッププロテクター280はチッププロテクター280の全長にわたり伸びる流体ルーメン302を形成する。疎水性膜300は流体ルーメン302を覆っている。疎水性膜300により、空気が患者流体ライン〜排出されるが、水または腹腔液はその膜を通って流れない。
【0124】
疎水性膜300を含む通気性チッププロテクター280が一体化チッププロテクターオーガナイザー270に設置されることに限られないことを理解する必要がある。図9は、一体化オーガナイザー270が疎水性膜300と流体ルーメン302を有する患者チッププロテクター280を含むことを示す。しかしながら、別個の実施態様では、通気性チッププロテクター280が、本発明の譲受人が提供するHOMECHOICE(登録商標)システムで使用されるものと類似した別個の、または孤立したチッププロテクターとして備えられる。
【0125】
本明細書で採用される疎水性膜300等の疎水性膜は市販されている。適当な疎水性膜の一つはミリポア(Millipore、80Ashby Road、Bedford、MA01730)で製造されている。図12は、疎水性膜がチッププロテクター280にヒートシールまたは超音波シーはされることを最も良く図示している。ある実施態様における流体ルーメン302は、1インチの5〜7万分の一と直径が相対的に小さい(1.25〜1.75mm)。
【0126】
通気性チッププロテクター280および患者流体コネクター290が共同して、システム10、100が完全に始動した場合、患者が患者流体コネクター290をチッププロテクター280から取り外してもチッププロテクター280および患者流体コネクター290は漏れる液量を最少にする。図10で最も良く分かる様に、コネクター290は雌ルア306と合う雄ルア304を含む、または提供する。嵌め合わされたルア304および306により、患者流体コネクター290のフランジ308を収納するために十分に広くなければならない腹膜液がチッププロテクター280の空洞に充満することを防止する。図12は、コネクター290の雄ルア304と通気性チッププロテクター280の雌ルア306の間のシールインターフェースが、雄ルア304の回りの内体積310をルーメン302の体積の5万〜7万分の一へかなり減少させることを示している。
【0127】
システム10、100始動するために、患者はドレインライン285をチッププロテクター274から取り外し、たらい、トイレまたはドレイン18に入れる。患者は少なくとも2個の供給バッグコネクター286および288を取り外し、供給バッグ14のシール膜(図示せず)を破る。するとシステム10、100は自動的にポンプ始動を始めるか、患者の入力で。いずれの場合も、システム10、100は少なくとも1個の供給バッグ14からコネクター286および288、およびチューブ287および289を通り使い捨てユニット160の中へ流体をポンプ送りし、患者流体ライン292から一体化オーガナイザー270の通気性チッププロテクター280中に収納されたままの患者流体コネクター290へドレインする。図3および3Bに示す様に、オーガナイザー270はハードウエアユニット110中に垂直に収納されている。
【0128】
腹膜液が患者流体コネクター290に達すると、システム10内のほとんどの空気が一体化チッププロテクター270の中に収納されたチッププロテクター280の末端に取り付けられた疎水性膜300を通って押出される。疎水性膜300の性質は、空気を通過させるが水または腹膜液を通過させないことにある。従って、流体が疎水性膜300に最終的に到達すると、流体が流れ込む余分な空間がほとんどないためにシステム10、100内で圧力が上昇する。システム10、100は少なくとも1個の圧力センサー、例えば圧力センサー68(図1および2でFP1、FP2およびFPTと記される)を備えている。
【0129】
少なくとも1個の圧力センサー68が、疎水性フィルター300を押し上げている腹膜液による圧力上昇を検知する。圧力センサーはコントローラー30のI/Oモジュールに信号を送る。コントローラー30は信号を受け取るが、コントローラーはメモリ32中にダイアフラムポンプ20、120を停止する様にプログラムされている。この様にして、システム10は充満ライン287および289、使い捨てユニット160、および患者流体ライン292それぞれを、制御体積の計算または重力による始動の必要がなく自動的に自己始動する。
【0130】
システム10、100には、体積計算に基づく少なくとも1個の安全手段が含まれる。すなわち、正常な運転ではシステム10、100は体積の計算を用いる始動を制御しない。しかしながら、例えば患者が患者流体システム10、100が圧力上昇を検知してポンプ10、100を停止する前にコネクター290を一体化オーガナイザー270の通気性チッププロテクター280から取り外す場合、システム10、100はアラーム計算を採用する。システム10、100は腹膜液のポンプ送りが多すぎた(例えばシステムの最初の体積より多い体積を設定していた場合)ことを知らされ、ポンプ20、120を停止する。
【0131】
(III.使い捨てユニット用の膜材料)
図13および14を参照すると、上部および下部膜162、164を単層フィルム構造312(図13)または多層フィルム構造312(図14)で製作することができる。フィルム312はPVCを含まないポリマー材料で製作され、多くの物理的性質の要請を満足しなければならない。フィルム312は弾性率が低く、低圧力で変形してポンプ要素として機能しなければならない。低弾性率とは、ASTM D882に従って測定した弾性率が約10、000psi以下、より好ましくは約8、000psi以下、さらに好ましくは約5、000psi以下、最終的には3、000psi以下、またはこれらの数字で定義される範囲の陰胃の組み合わせであることを意味する。インライン加熱を可能にするためには、フィルムは適度の熱伝導率を持つ必要がある。マチスインスツルーメンツ社(Mathis Instruments Ltd)製のHotDisk(商標)を用いて測定して、フィルムは0.13W/メーター°K以上の熱伝導率を有する。フィルム312はカセット160へ熱シールが可能でなければならない。フィルム312はガンマ線照射、一定時間の蒸気暴露(例えば1時間)、およびエチレンオキサイド暴露で、フィルムの重大な劣化または透析物に対する悪影響がなく滅菌可能でなければならない。最後に、フィルム312は50フィート/分以上の高速で延伸可能である必要がある。
【0132】
単層構造312はスチレンおよび炭化水素を含む約90〜約99重量%の第1成分と、約10〜1重量%の溶融強度増大ポリマー、およびより好ましくは腔溶融強度ポリプロピレンのブレンドで形成される。
【0133】
“スチレン”と言う用語には、スチレンおよびアルキル置換スチレンおよびハロゲン置換スチレンを含む様々な置換スチレンが含まれる。アルキル基は1〜6個の炭素原子を含む。置換スチレンの具体例にはα−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、2、4−ジメチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、2−クロロ−4−メチルスチレン等が含まれる。スチレンが最も好ましい。
【0134】
スチレンの炭化水素部分および炭化水素ポリマーには共役ジエンが含まれる。使用される共役ジエンは4〜10個の炭素原子、具体的には4〜6個の炭素原子を含むものである。それらの例には1、3−ブタジエン、2−メチル−1、3−ブタジエン(イソプレン)、2、3−ジメチル−1、3−ブタジエン、プロロプレン、1、3−ペンタジエン、1、3−ヘキサジエン等が含まれる。ブタジエンとイソプレンの混合物等、これらの共役ジエンの混合物も用いられる。好ましい共役ジエンはイソプレンと1、3−ブタジエンである。
【0135】
スチレンと炭化水素とのコポリマーはジブロック、トリブロック、多重ブロックおよび星型ブロックを含むブロックコポリマーである。ジブロックコポリマーの具体例にはスチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、およびそれらの選択的水素化誘導体下含まれる。トリブロックコポリマーの例にはスチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレン−イソプレン−α−メチルスチレン、およびそれらの選択的水素化誘導体が含まれる。
【0136】
上記ブロックコポリマーの選択的水素化は、ラネーニッケル、プラチナまたはパラジウム等の貴金属等の触媒、可溶性遷移金属触媒等の存在下での水素化等、様々な公知のプロセスで行われる。使用し得る適した水素化プロセスでは、ジエン含有ポリマーまたはコポリマーをシクロヘキサン等の不活性炭化水素希釈剤に溶解し、可溶性水素化触媒の存在下に水素との反応で水素化される。この様なプロセスは米国特許第3、113、986号および第4、226、952号に記載され、その開示内容は本明細書に採用して援用され、本発明の一部とされる。
【0137】
特に有用な水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)スチレンブロックコポリマー等のスチレン−イソプレン−スチレンの水素化ブロックコポリマーである。ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロックコポリマーを水素化する場合、得られた生成物はポリエチレンと1−ブタジエンの規則的コポリマーブロックと類似している。この水素化コポリマーはSEBSと呼ばれることが多い。使用した共役ジエンがイソプレンである場合、得られた水素化生成物はエチレンとプロピレンの規則的ブロックコポリマー(EP)に類似している。この水素化ブロックコポリマーはSEPSと呼ばれる子とが多い。共役ジエンがイソプレンとブタジエンの混合物である場合、選択的水素化生成物はSEEPSと呼ばれる。適当なSEBS、SEPSおよびSEEPSコポリマーはシェルオイル(Shell Oil)社から商標KRANTON、クラリー(KURARY)社から商標SEPTON(登録商標)およびHYBPAR(登録商標)で販売されている。
【0138】
共役ジエンとビニル芳香族化合物のブロックコポリマーをα、β−不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸試薬とグラフトすることができる。カルボン酸試薬にはカルボン酸それ自体と、無水物、イミド、金属塩、エステル等の官能性誘導体が含まれ、それらは選択的水素化ブロックコポリーマーへグラフトすることができる。グラフトポリマーは通常、ブロックコポリマーおよびカルボン酸試薬の全重量に対し0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%のグラフトカルボン酸を含む。有用な1塩基カルボン酸の具体例にはアクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、無水アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウムおよびアクリル酸マグネシウム等が含まれる。ジカルボン酸およびその有用な誘導体にはマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、イタコン酸、シトラコニン酸、マレイン酸モノメチル、モノナトリウムマレイン酸等が含まれる。
【0139】
スチレンと炭化水素ブロックコポリマーを含む第1成分を鉱物油、パラフィン油、ポリブテン油等を添加して変性することができる。スチレンと炭化水素ブロックコポリマーに添加されるオイルの量は5〜40%である。第1成分はポリプロピレンを第1成分の約20重量%で含み得る。特に適した第1成分の一つはシェルケミカル社(ShellChemical Company)が製品名KRANTON G2705で販売するオイル変性SEBSである。
【0140】
溶融強度増大ポリマーは高溶融強度ポリプロピレンであることが好ましい。適当な高溶融強度ポリプロピレンはポリプロピレンのホモポリマーまたはコポリマーであり、自由末端長鎖分枝を持っていても持たなくてもよい。本発明の好ましい形態の一つでは、高溶融強度ポリプロピレンは10グラム/10分から800グラム/10分の範囲、より好ましくは10グラム/10分から200グラム/10分の範囲、またはこの範囲内の任意の組み合わせの溶融強度を有する。高溶融強度ポリプロピレンはポリプロピレンユニットの自由末端長鎖分枝を有することが知られている。高溶融強度特性を示すポリプロピレンの調製法は米国特許第4、916、198号、5、047、485号および第5、605、936号に記載され、本明細書に参考資料として援用され、その一部となっている。この様な方法の一つには、鎖状プロピレンポリマーを、活性酸素濃度が約15%である環境中、高エネルギーイオン化放射線を1×10メガラッド/分の線量で、鎖状プロピレンポリマーの相当量の鎖切断を生じるには充分であるが、材料をゼラチン状にするには不十分な照射する方法がある。照射により鎖が切断する。それに続く鎖の再配列により、新しい鎖が生成すると同時に鎖の断片が鎖と結合して分枝を生じる。これにより、所望の自由末端長鎖分枝を有する、高分子量、非鎖状プロピレンポリマー材料となる。放射線を相当量の長鎖分枝を生成するまで維持する。次いでその材料を照射された材料中に存在する全てのフリーラディカルが実質的に不活性化されるまで処理する。
【0141】
高溶融強度ポリプロピレンを、その全体が本明細書に参考資料として援用され、その一部となる米国特許第5、416、169号に記載の様に得ることもできるが、その方法では特定の誘起過酸化物(ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート)をポリプロピレンと特定の条件で反応させ、次いで溶融押出する。この様なポリプロピレンは、分枝計数が実質的に1である鎖状の結晶性ポリプロピレンであり、従って自由末端長鎖分枝を持たず、約2.5dl/g〜10dl/gの固有粘度を有する。
【0142】
ポリプロピレンの適したコポリマーは炭素数2から20のα−オレフィンを有するプロピレンモノマーを重合して得られる。本発明のより好ましい形式では、プロピレンはエチレンと、コポリマーの約1〜20重量%、より好ましくは約1〜10重量%、最も好ましくは約2〜5重量%の割合で共重合される。プロピレンとエチレンのコポリマーはランダムまたはブロックコポリマーである。本発明の好ましい形式では、プロピレンコポリマーは単一座触媒を用いて得られる。
【0143】
ブレンドの成分は公知の技術を用いてブレンドされ押出される。フィルム312は約3〜12ミル、より好ましくは約5〜9ミルの厚さを有する。
【0144】
図14は第1層314と第2層316を有する多重層フィルムを示す。図14には2層の使用を示すが、本発明は上記材料の性質に対する要請が合致するならば2層以上の使用も想定している。第1層314は単層構造を製作するために用いられたモノと同じポリマーブレンドでも良いが、本発明のより好ましい形式ではフィルムをカセット160に接着するためのシール層となる。第2層316はPVCを含まない材料で製作され、好ましくはポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリエステルエーテル、ポリエステルエラストマー、ポリイミド等、およびそれらのブレンドから選ばれる。結合層(単数または複数)は第1層314に接着する必要がある。
【0145】
適当なポリオレフィンには炭素数2〜20、より好ましくは2〜10を含むα−オレフィンを重合して得られるホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。従って、適当なポリオレフィンにはプロピレン、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1およびデセン−1のポリマーおよびコポリマーが含まれる。最も好ましくはポリオレフィンはプロピレンのポリマーおよびコポリマー、またはポリエチレンのポリマーおよびコポリマーである。
【0146】
ポリプロピレンの適当なホモポリマーは非結晶、イソタクチック、シンジオタクチック、アタクチックまたはステレオブロックの立体化学構造を有する。本発明の好ましい形式の一つでは、ポリプロピレンのホモポリマーは単一座触媒を用いて得られる。
【0147】
ポリプロピレンとα−オレフィンのブレンドを使用することも好ましいが、プロピレンコポリマーはα−オレフィンの炭素数で変わり得る。例えば、本発明は一つのコポリマーが炭素数2のα−オレフィンを有し、他方のコポリマーが炭素数4のα−オレフィンを有するプロピレンとα−オレフィンのブレンドを想定している。炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンの任意の組み合わせを使用することも可能である。従って、本発明は第1および第2α−オレフィンが2および6、2および8、4および6、4および8の炭素数の組み合わせを有するプロピレンとα−オレフィンのブレンドを想定している。ブレンド中に2個以上のポリプロピレンとα−オレフィンを使用することも想定している。適当なポリマーはキャタロイ(catalloy)プロセスを用いて得られる。
【0148】
上記に定義した高溶融強度ポリプロピレンを使用することが好ましい。
【0149】
エチレンの適当なホモポリマーには0.915g/cc以上の密度を有するものが含まれ、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。
【0150】
エチレンの適当なコポリマーはエチレンモノマーと3〜20個の炭素原子、より好ましくは3〜10、最も好ましくは4〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンの重合で得られる。エチレンコポリマーがASTM D−792で測定して0.915g/cc以下、より好ましくは0.910g/cc、さらに好ましくは0.900以下の密度を有することが望ましい。この様なポリマーはしばしばVLDPE(極低密度ポリエチレン)またはULDPE(超低密度ポリエチレン)と呼ばれる。エチレンα−オレフィンコポリマーが単一座触媒を用いて製造されることが好ましく、メタ路線触媒系を用いて製造されることがさらに好ましい。単一座触媒は、混合触媒部位を有することが知られているツィーグラーナッタ(Ziegler−Natta)型触媒とは対照的に、単一の立体的および電子的に等価な触媒位置を有すると信じられている。単一座触媒で触媒されたα−オレフィンはダウケミカル(Dow Chemical)社から商品名AFFINITY、ジュポン(DuPont)社から商標ENGAGE(登録商標)、エクソン(Exxon)しゃから商品名EXACTで販売されている。これらのコポリマーは本明細書ではULDPEと呼ばれることがある。
【0151】
エチレンの適当なコポリマーにはエチレンと低級アルキルアクリレートのコポリマー、エチレンと低級アルキル置換アルキルアクリレート、およびコポリマーに対し約5〜40重量%の酢酸ビニル含有量を有するエチレン酢酸ビニルコポリマーが含まれる。“低級アルキルアクリレート”という用語はダイアグラム1に示す式を有するコモノマーを言う:
【0152】
【化1】


ダイアグラム1
R基は1〜17の炭素数を有するアルキルである。従って、“低級アルキルアクリレート”と言う用語はメチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートに限られない。
【0153】
“アルキル置換アルキルアクリレート”と言う用語はダイアグラム2に示す式を有するコモノマーである:
【0154】
【化2】


ダイアグラム2
とRは炭素数1〜17のアルキルであり、端素数が同じであっても異なっていてもよい。従って、“アルキル置換アルキルアクリレート”と言う用語はメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルエタクリレート、エチルエタクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルエタクリレート等を含むが、それらに限定されない。
【0155】
適当なポリブタジエンには1、3−ブタジエンの1、2−および1、4−付加生成物が含まれる(これらを総称してポリブタジエンと呼ぶ)。本発明のより好ましい形式では、ポリマーは1、3−ブタジエンの1、2−付加生成物である(これらを1、2−ポリブタジエンと呼ぶ)。本発明のさらにより好ましい形式では、関心のあるポリマーはシンジオタクティック1、2−ポリブタジエンであり、さらにより好ましくは低結晶性のシンジオタクティック1、2−ポリブタジエンである。本発明の好ましい形式では、低結晶性のシンジオタクティック1、2−ポリブタジエンは50%以下、より好ましくは約45%以下、さらにより好ましくは約40%以下、さらにより好ましくは約13〜40%、最も好ましくは約15〜30%の結晶性を有する。本発明の好ましい形式では、シンジオタクティック1、2−ポリブタジエンはASTM D3418に従って測定した融点が約70〜120°Cである。適当な樹脂には、JSR(ジャパンシンセティックラバー(Japan Synthetic Rubber)社)から等級JSR RB 810、JSR RB 820、JSR RB 830として販売されるものが含まれる。
【0156】
適当なポリエステルにはジ−またはポリカルボン酸およびジ−またはポリヒドロキシアルコールまたはアルキレンオキサイドが含まれる。本発明の好ましい形式では、ポリエステルはポリエステルエーテルである。適当なポリエステルエーテルは1、4−シクロヘキサンジメタノール、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸およびポリテトラメチレングリコールエーテルを反応させて得られ、一般的にPCCEと呼ばれる。適当なPCCEはイーストマン(Eastman)社から商品名ECDELとして販売されている。適当なポリエステルにはさらに、ポリブチレンテレフタレートの硬い折衝性セグメントと柔らかい(非晶質)ポリエーテルグリコールのブロックコポリマーであるポリエステルエラストマーが含まれる。この様なポリエステルエラストマーはジュポンケミカル(DuPont Chemical)社から商品名HYTREL(登録商標)で販売されている。
【0157】
適当なポリアミドには、4〜12の炭素数を有するラクタムの開環反応で得られるものが含まれる。従って、このグループのポリアミドにはナイロン6、ナイロン10およびナイロン12が含まれる。受容されるポリアミドには、2〜13以内の範囲の炭素数を有するジアミンの縮合反応で得られる脂肪族ポリアミド、2〜13以内の範囲の炭素数を有するジ酸の縮合反応で得られる脂肪族ポリアミド、脂肪酸ダイマーの縮合反応で得られるポリアミド、およびコポリマーを含むポリアミドも含まれる。従って、適当なポリアミドには例えばナイロン66、ナイロン6、10、および脂肪酸ダイマーポリアミドが含まれる。
【0158】
本発明の好ましい形式では、カセット160は上部および下部膜162および164と接着可能である材料で製作される。接着可能という用語は、標準の熱シール技術を用いて膜がカセットに接着し得ることを意味する。適当な材料の一つはポリオレフィン、ポリスチレンおよび炭化水素コポリマーのポリマーブレンドである。具体的には、ポリマーブレンドのポリオレフィンはポリプロピレンであり、より好ましくはエチレン含有量がコポリマーの約1〜6重量%のエチレンとポリプロピレンのコポリマーである。スチレンと炭化水素のコポリマーはより好ましくは上記に定義したSEBSトリブロックコポリマーである。ポリプロピレンコポリマーは約70〜95%、取り好ましくは約80〜90%のブレンドで構成される必要があり、SEBSは約5%〜30%、より好ましくは約10%〜20%のSENBSで構成される。本発明の好ましい形式では、カセットを製作するために用いられたポリプロピレンは、膜を製作するために用いられた高溶融強度ポリプロピレンより低い融点を有する。本発明の好ましい形式では、カセット160のポリプロピレンは約120〜140°Cの融点を有し、膜は約145〜160°Cの融点を有する。カセット160はこれらのポリマーブレンドから射出成形することができる。
【0159】
上部および下部膜162、164はカセット160に熱シール技術を用いて接着される。膜は引っ張り強度試験機を用いてフィルムが破れるか接着が壊れるまで試験した場合、5.0ポンド/インチ以上の引き離し強度を有する。また、膜をカセットに取り付けた場合、膜を5psiの圧力で変形することができる。膜は滅菌を続けた後でもその低弾性率および変形性を維持し、ポンプ送り条件に適合する。膜は保存寿命が長い。膜は2年間保存した後でもポンプ送り性を保っている。
【0160】
(IV.バルブアクチュエーター)
図15を参照すると、バルブアクチュエーター26とバルブマニホールド190の間のインターフェースの実施態様が図示される。バルブアクチュエーター26のバルブモーター28(図示せず)が当業者が決定し得る機械的結合でカム軸200を駆動する。ある実施態様では、単一のカム軸200が一連のカム202、例えばシステム10または100内の各バルブそれぞれにに取り付けられている。カム202はカム軸200に固定され、それと1:1の関係で回転する。
【0161】
カム202はピストン204を駆動し、ピストンはカムと摩擦を減少する方法、例えばローラー206を経由してカムと噛み合う。カム202はピストン204を上下に駆動する(アクチュエーター26の他の特徴を示すため、5個のカムのうち2個のみがピストンと連結している)。カム202がそれと連結したピストン204を上向きに駆動すると、ピストン204は膜162または164の一つと噛み合い(具体的には下部膜164、分かりやすくするため図15には示されていない)、膜を剛性マニホールド190が形成するそれぞれの孔192中に押し込む。この動作は医療用流体または透析物の流れをそれぞれのバルブで停止する。
【0162】
ピストン204も受器ハウジング208内部にばねで搭載されている。カム軸200が回転してカムの下部の形がピストン204の下に現れると、ハウジング208内部のばねがピストン208を押しローラー206がそれぞれのカム202と接触を保つ。その結果ピストン204は剛性マニホールド190が形成するそれぞれの孔192から取り去られ、ピストン204で上向きに延ばされたいた膜162および164がその正常の形にばねで戻される。この動作が医療用流体または透析物をそれぞれのバルブを通って流れ始める。
【0163】
モーター28は例えばステップモーターまたはサーボモータータイプであり、回転の一定割合で回転し、任意の所定の時間滞留することができる。従って、モーター28はバルブを必要な時間だけ開または閉に保つことができる。カム202は各流れの状態毎に独自の山と谷の組み合わせを有する。システム10のバルブV2およびV3を有するある状態では、バルブは常に一緒に開いているか閉じており、双方のバルブがカム軸200上で同じ方向を向いている同じカム200を使用している。
【0164】
図16Aおよび16Bを参照すると、カム軸200とカム202が象徴的に図示される。図16Aは複合カムのプロファイル370、すなわち図16Bのカム202a〜202fの組み合わせを図示する。図16Bは、カム202a〜202fがハブ384を経由してカム軸200に搭載されていることを示している。ハブ384は公知のようにセットスクリーンを採用し得る。カム軸200はハブ384を整列するための刻み目等も有する。別個の実施態様では、少なくとも1個のカム202a〜202fがカム軸200と一体に形成されている。ある実施態様では、カム軸200は一体成形部品であり、カム202a〜202fが相互に回転することを防止している。一体成形カム軸200は複数、または全てのカム202a〜202fを支えるか取り付けている。
【0165】
図15に図示する様に、図16Bの各カム202a〜202fは1個のピストン204とローラー206を駆動し、剛性マニホールド190の1個のバルブヘッド192を操作する。カム202a〜202fはそれぞれのカムの形に応じてバルブヘッド192を開くか閉じる。図16Bは、カム軸200が6個のカム202a〜202fを支えていることを示す。図15は5このカム200を示す。図16Bの実施態様に備えられたカムは、“最後のバッグバルブを開く”位置382で示される最後のバッグを開くためのものである。システム10または100の何れかが最後のバッグを含んでいる。最後のバッグは、患者がシステムから離れ、正常の日常活動に戻る前に約2リッターの最後の透析物を患者に充満するためのものである。
【0166】
バルブモーター28とバルブアクチュエーター26(図1および2)はカム軸200を回転し、バルブヘッド192を開閉し所望の溶液流路を作成する。カム軸200上のカム202a〜202fの配置は、治療中の任意の時間に任意の与えられた時間に少なくとも1個の流体経路が開いている様に作成されている。さらに、バルブアクチュエータ26がカム軸200をある流路が開いている位置から次へ回転する場合、カムのシリーズ202a〜202fは一時的に全てのバルブを閉じる。各バルブを閉じることにより、透析物が逆流する、または間違った方向に流れるのを防止する。さらに、カム202a〜202fは、使い捨てユニット160のバルブマニホールド190の1個のバルブヘッド192のみがある時間に開いている様に配列されている。さらに、システムの故障または具合の悪い停電の場合は開いている流路はない。この安全対策により、透析物が患者12に自由に流れる、または患者12に充満しすぎることを防止する。
【0167】
使い捨てユニット160をハードウエアユニットに搭載するため、ハードウエアユニット110用のハウジング112の蓋116を操作者または患者が自由に開くことができる。この場合、コントローラー30がカム軸に自動的に回転する様に命令し、複合プロファイル370で図示される様に、“全てのバルブが開”位置372がローラー206とピストン204の下にある様にする。“全てのバルブが開”位置372では、カム軸200が回転し、各ピストン204と関連するローラー206の下が押し付けられる。従って、操作者または患者が使い捨てユニット160とバルブマニホールド190をハードウエアユニット110に搭載する場合、ピストン204が相対的に低い位置、すなわち経路の外にある。これにより患者または操作者は、少なくとも1個のピストン206による妨害またはちこうする力を受けず、使い捨てユニット160をハードウエアユニット110中に設置することができる。
【0168】
患者または操作者が使い捨てユニットをハードウエアユニット110に搭載し、蓋116を閉めた後、コントローラー30は自動的にカム軸200を回転し、“全てのバルブが閉”位置386aがピストン204およびローラー206にくる様にする。図示する様に、全てのバルブが閉”位置386aは“全てのバルブが開”位置372に隣接する。カム軸200が“全てのバルブが閉”位置386aへ回転すると、流体はシステム10、100を通って流れることができない。カム軸200が“全てのバルブが開”位置372から第1の“全てのバルブが閉”位置386aへ回転すると、機械的インターロック(図示されない)がカム軸200中へ移動し、カム軸200の“全てのバルブが開”位置372への逆回転を阻止する。これにより、操作者が治療中に蓋116を開けようとした場合、各バルブヘッド192が開の場合に起きる透析物が制御されずに流れることを阻止する。
【0169】
別個の実施態様では、インターロックがソフトウエアで提供される。エンコーダーが位置および速度をコントローラー30にフィードバックする。従って、コントローラー30はカム軸200の位置を認識し、コントローラー30がカム軸200の“全てのバルブが開”位置372への逆回転を阻止する。
【0170】
患者が蓋116を閉じると、第2の機械的インターロック(図示せず)が蓋をその位置にロックし、患者は治療中に蓋116を開くことができない。システム10、100は患者が何時患者流体ライン292とコネクター290を患者12に移植された輸液セットから取り外したかを検知する。その後初めて、システム10、100が患者が蓋116を開けることを許可する。機械的インターロックは自由な充満、過剰充満、および患者がシステムが稼動している間にシステムに干渉することを防止する。バルブの形状により、故障または停電の際の送液を止めるフェイルセーフシステムが提供される。
【0171】
患者が透析治療を開始する多くの場合に、患者は既に透析物で満たされている。従って図16で湿される実施態様では、複合プロファイル370は“全てのバルブが開”位置372を“患者からのバルブ開”位置374の次に備えている。“患者からのバルブ開”位置は“ドレインバルブ開”位置376の隣にある。この様にして、治療を開始すると、カム軸200は容易にポンプ20、120と共同して使用済み透析物を患者から排出する。カム202a〜202fの任意のカムが“患者からのバルブ開”位置374、“ドレインバルブ開”位置376等を提供するカムになり得ることを理解する必要がある。
【0172】
“患者からのバルブ開”位置374と“ドレインバルブ開”位置376の間に第2の“全てのバルブ閉”位置386bがある。新しいバルブを開き、先に開いたバルブを閉じる間に、各バルブは瞬間的に閉じられる。コントローラー30がモーター(例えばステップモーター、サーボモーターまたはDCモーター)およびアクチュエーター26にカム軸200を“全てのバルブ閉”位置386bを通って“ドレインバルブ開”位置376へ“患者からのバルブ開”位置374の間で前後に切り替えさせる。この様にして、ポンプ20、120は患者12から流体を引き出し、ドレイン18へ棄てることができる。
【0173】
システム10、100が初期の患者からのドレインサイクルを終了すると、コントローラー30がモーター28のアクチュエーター26にカム軸200を“全てのバルブが閉”位置386cを通って“供給バルブ開”位置378へ回転させる。患者に新鮮な透析物を充満するため、コントローラー30はカム軸200に“供給バルブ開”位置378と“患者バルブ開”位置380の間で前後に切り替えさせるが、そのたびに“全てのバルブが閉”位置386dを通過する。繰り返すが、ドレインおよび充満サイクルでは、任意の時間で1個のバルブヘッド192のみが開いている。切り替えには常に、1個のバルブヘッド192の作動と他のバルブの開の間に“全てのバルブが閉”位置が含まれる。1台のポンプが流体を使い捨てユニット160内に逐次引き込み、底から流体を押出す。
【0174】
初回の充満の後、カム軸200は中間の“全てのバルブが閉”位置386bを通り“ドレインバルブ開”位置376へ“患者からのバルブ開”位置374の間を再び前後に切り替えることのできる様な位置にある。患者が再度空になると、カム軸200は“供給バルブ開”位置378と“患者へのバルブ開”位置380の間で前後に切り替える様に位置している。システム10、100はこの一連のサイクルを必要な回数だけ繰り返す。具体的には、患者は約2〜2.5リッターの透析物を1回の充満サイクルで受け取る。ある実施態様では2個の供給バッグ14は6リッターの透析物を保有している。これによりシステム10、100は4〜6回の充満、滞留およびドレインサイクルを備え、このサイクルは患者が眠っている間に終夜提供される。
【0175】
多くの場合、患者は治療の最後に最後のバッグで充満され、患者はその流体をその日に持ち運ぶ。この手順を行うため、カム軸200は“患者からのバルブ開”位置374と“ドレインバルブ開”位置376の間を前後に切り替え、先に充満された腹膜液をドレイン18に棄てる。従って、カム軸200は“最後のバッグバルブ開”位置382と“患者へのバルブ開”位置380の間で前後に切り替える位置にある。その場合、カム軸200は全てのバルブ閉位置、すなわち“全てのバルブ閉”位置386eの一つを通って回転する。
【0176】
システムを始動するため、カム軸200はいくつかの異なった方法で位置を決め切り替えを行う。ある実施態様では、カム軸200は“全てのバルブ閉”位置386cを通り過ぎて“供給バルブ開”位置378と“ドレインバルブ開”位置376の間で前後に切り替える。ポンプ20または120と共同するこの切り替えにより、透析物を使い捨てユニット160を通り供給バッグ14からドレイン18へ送液することができる。他の実施態様では、図8〜12殿関連で図示される通気性チッププロテクター280を用いて、カム軸200が“供給バルブ開”位置378と“患者へのバルブ開”位置380の間で前後に切り替えられる。これにより透析物がバッグ14から使い捨てユニット160を通り通気性チッププロテクター280の末端の“患者流体ライン”292へ送液される。透析物が通気性チッププロテクター28の疎水性膜300へ達すると、システム10、100内の圧力が上昇し、コントローラー30が信号を受け取り、ポンプ20、120のポンプ送りを停止しカム軸200の切り替えを停止する。
【0177】
(V.医療用流体ポンプ)
(A.ポンプのハードウエアと操作)
図17Aおよび17Bにはポンプ20の実施態様が示される。ハードウエアユニット110の蓋116が上部チャンバー壁216となる。ハードウエアユニット110(図3Aおよび4B)のハウジング112内に下部チャン間―壁218が配置されている。チャンバー壁216および218は内部チャンバー210を形成する。チャンバー210は例えば図17Aおよび17Bに図示される様なクラムシェル形等、任意の形で有り得る。
【0178】
下部チャンバー壁218はポンプピストン212をチャンバー210内で前後に運動させるシールされた開口219を形成または提供する。ピストン212はピストンヘッド214に取り付けられるか、それと一体で形成される。図のピストンヘッド214は上部チャンバー壁216と類似または同じ内部形状である外形を有する。
【0179】
ポンプピストン212は線形アクチュエーター24と接続しているか、それと一体に形成される。図の線形アクチュエーター24はモーター22の回転運動をピストン212の伝達運動に変換するデバイスである。ある好ましい実施態様では、モーター22は伝達運動を行う軸を突き出す線形ステップモーターである。アクチュエーター24は単にモーター軸をピストン212と結合するものである。線形またはステップ回転モーターにより極めて静かな運動と、高い位置分解能、精度および再現性を得ることが可能になる。ステップモーターは例えばハイドンスイッチアンドインスツルメント社(Hydon Switch and Instrument Inc.、Waterbury、CT)等から市販されている。
【0180】
上記の様に、弾力性流体受器172(17Aには記載されているが17Bには記載されない)は使い捨てユニット160の伸長可能な上部および下部膜162および164それぞれで形成される。図17Aでは、ポンプ20に医療用流体が満たされた場合、ポンプチャンバー210と膜受器172は実質的に同じ形となる。図17Bでは、ポンプ20が医療用流体の全部またはそのほとんどを吐出した場合、ポンプチャン場0210は同じ体積を維持するが、流体受器172の膜162および164は上部チャンバー壁216の内部表面にそって潰され、実質的に体積ゼロとなる。
【0181】
ポンプ22の真空源44が図1に記載されている。真空源44は細孔またはポート222を通じて上部膜162に真空を与える。細孔またはポート222は上部チャンバー壁216を通って伸びている。真空源44はハウジング223が形成する、またはそれにより提供される開口部221、および開口部220のポートを通って下部膜164に真空を与える。ポートまたは開口部220はピストンヘッド214を含むピストン212を通って伸びている。真空が加えられると、下部膜164はピストンヘッド214に対してシールされる。上部膜162は上部チャンバー壁に対してもシールされる。
【0182】
ポート222は上部チャンバー壁216の内壁で形成されるチャネル(図示せず)に流体接続される。チャネルはポート222から放射状に外向きに様々な方向に伸びている。チャネルによりポート222を通じて加えられる負圧が分配され易くなり、上部膜162が上部チャンバー壁216の内部の形に実質的に添わせる。同様な方法で、ピストンヘッド214の外部表面も放射状に伸びるチャネルを有し、真空を加えると下部膜164をピストンヘッド214の外部表面に添わせることができる。
【0183】
ポンプ20には上部および下部壁216および218それぞれの間に張られたダイアフラム232を含む。ダイアフラム232は上部チャンバー壁218と共に既知の、予測し得る再現性のある透析物の最大体積を決めるが、その透析物は少なくとも1個の供給バッグ14から引き込まれ、患者12に送液される。ダイアフラム232はまた、部分的なストロークの特性を決めることが可能で、そのために正確で再現性のある体積測定を可能にする。
【0184】
ダイアフラム232はピストンヘッド214の下ピストン212の回りに配置される。ポートまたは開口部220に真空が加えられると、ダイアフラム232と下部膜164はピストンヘッド214の反対側へ引き付けられる。開口部220を通して真空を加えてピストンヘッド214が下部チャンバー壁218から上向きに起動すると、膜164とダイアフラム232はピストンヘッド214に対して下がったままになる。膜164の内部はピストンヘッド214の外部表面の形に添う。膜164の残りの外側の部分はダイアフラム232の露出した表面の形に添う。
【0185】
ある実施態様におけるダイアフラム232には弾力性の成形されたカップ型のエラストマーと、繊維強化エチレンプロピレンジエンメチレン(EPDM)等の強化繊維が含まれる。繊維をエラストマーと一体に成形することが可能である。繊維は、圧力下でダイアフラムの望ましくない変形を防止する。ダイアフラム232はピストン212とヘッド214が下部チャンバー壁218に向かって下向きに動き、ダイアフラム232を上部および下部壁216および218の縁に沿って引っ張ると、ダイアフラム232は伸びる。ダイアフラム232はまた、ピストン212とヘッド214が上部チャンバー壁216に向かって下向きに動く場合も移動してピストンヘッド214をシールしたままとなる。
【0186】
ポンプ20を作動すると、負圧がポート222を通って加えられ、上部膜162を上部チャンバー壁に保持する。使い捨てユニット160のマニホールド190(図3Aおよび5参照)は膜受器172に対する流体ポート開口部230を形成する。流体ポート開口部230により医療用流体または透析物が膜受器172に出入りすることができる。膜受器172は上部および下部チャンバー壁216および218の折り曲げた縁にはめ込まれる。受器172のシール170は実際には上部および下部チャンバー壁216および218の折り曲げた縁より若干内側にある(図4A参照)。
【0187】
上部膜162が上部チャンバー壁に真空で押し付けられ、下部膜164とダイアフラム232がピストンヘッド214に真空で押し付けられているポンプ充満ストローク中に、モーター22/アクチュエーター24がピストンヘッド214を下部チャンバー壁218へ向かって下向きに移動し、弾力性受器172内の体積を増加させその中に負圧を生成する。本明細書のバルブ配列で説明した様に、負圧は透析物を供給バッグ14または患者12から引き込む。開いた受器172が流体で満たされる。このプロセスは、ポンプが図17Bの位置から図17Aの位置へ動くときに生じる。図17Aは受器172がいっぱいに開いて(すなわち流体が充満)、ストロークの終わりにあるポンプを示す。
【0188】
患者充填またはドレインストローク中、再び上部膜162が上部チャンバー壁216に真空で押し付けられ、下部膜164とダイアフラム232がピストンヘッド214に真空で押し付けられると、モーター22/アクチュエーター24がピストンヘッド214を上部チャンバー壁216へ向かって上向きに移動させ、弾力性受器172内の体積を減少させてその中に陽圧を発生する。本明細書のバルブ配列が示す様に、陽圧が透析物を受器172から患者12またはドレイン18に押出す。下部膜164が上部膜162に向かって上方へ移動すると受器172が閉じる。このプロセスは、ポンプが図17Aの位置から図17Bの位置へ移動する場合に生じる。図17Bは受器172が空、または実際上空である場合の、ストロークの終わりにあるポンプ20を示す。
【0189】
空気(本発明の目的では“空気”とは空気の他、存在し得る任意の気体、特に患者の腹膜腔から追い出された気体を含む)が流体受器172に入った場合、精度を保つために追い出さなければならない。空気が膜162と164の間に入った場合、本発明の好ましいシステム10、100は膜162と164の間を真空に引く能力を有しないことを理解する必要がある。しかしながら、膜62と164の弾性は当然空気をそこから追い出す傾向にある。別個の実施態様では、システム10、100は膜162と164の間を真空に引きそこから空気を追い出す真空源を供給する様に用いることができる。
【0190】
膜の間から空気を追い出すために、システム10、100には陽圧源も備えられている。例えばシステム10、100ではポンプモーター46を通常の運転の逆に作動させ、真空源44(図1および2)を作成する代わりに陽圧を発生することができる。空気が膜162と164の間、または使い捨てユニット160または配管のどこかに検出された場合、システム10は上部チャンバー壁216の細孔またはポート222を通じて陽圧を及ぼす。ある追い出し手順では、コントローラー30がモーター22/アクチュエーター24にピストンヘッド214を正または負のストロークでほぼ中間点に移動させる。上部膜162が上部チャンバー壁216に真空で押し付けられ、下部膜164とダイアフラム232が中間点に保持されたピストンヘッド214に押し付けられている場合、コントローラーは負圧源を細孔222を通して導入してそれを陽圧源に変えさせる。その結果、上部膜162がピストンヘッド214とダイアフラム232で支えられる下部膜に添う様に押し付けられる。受器172内に滞在する空気または流体のいずれも、受器172とドレイン18の間の空気と同様に追い出される。
【0191】
(B.静電容量型体積センサー)
図17Aと17Bは、ポンプ20がシステム10の静電容量型流体体積センサー60の実施態様と共同することも示している。静電量型センサー60の一つの実施態様が整理番号10/054487、2002年1月22日提出のタイトル“静電容量式体積測定(Capacitance Fluid Volume Measurement)”の特許出願に詳細に記載され、本明細書に参照される。静電量型センサー60はチャンバー内の流体の体積を測定するために静電容量測定技術を用いている。流体の体積が変化すると、静電容量量の変化に比例する検出電圧が変化する。従って、センサー60は例えばチャンバーが空であるか、8割満たされているか、1/4満たされているか、半分満たされているか、またはその他任意の割合で満たされているかを決定することができる。これらの各測定は正確に、例えば公知の重量天秤または圧力/体積測定で達成される精度のオーダーで行うことができる。しかしながら、本発明の方法は単純で非侵入性であり、医療操作をバッチ操作であることを必要としない。
【0192】
一般的に、2枚のキャパシタープレート間の静電容量Cは式C=k×(S/d)に従って変化する。ここでkは誘電率、Sは個々のプレートの表面積、dはプレーと間の距離である。プレーと間の静電容量は式1/(R×V)に比例して変化する。ここでRは既知の抵抗、Vはキャパシタープレートを横切って測定される電圧である。
【0193】
医療用流体または透析物の誘電率kは、例えば図17Bに示す様に、ピストンヘッド214が上部チャンバー壁216に対して底に降りている場合にポンプチャンバー210を満たす空気の値よりはるかに大きい。従って、伸縮する容器172と下部チャンバー壁218との間の低誘電変位流体の距離Δdが変化すると、接地キャパシタープレート224と陽極キャパシタープレート226の間の静電容量に何らかの影響があると思われる。同様に、キャパシタープレートの表面積Sと移動する膜164も静電容量に何らかの影響があると思われる。確かに、低誘電率空気を置き換える高誘電率透析物(またはその逆)由来の変化する全体の誘電率は電極224間の全体的な静電容量に影響する。
【0194】
膜162と164が拡張して医療用流体で満たされるので、全体の静電容量が変化する、すなわち増加する。センサー60は接地と陽極キャパシタープレート224および226を横切る高インピーダンス電位を発生する。高インピーダンス電位は受器172中の流体の量を示すものである。変化が予期されているのに電位が経時変化しない場合、センサー60は受器172内にある量の空気があることを示す。
【0195】
静電容量検出回路が高インピーダンス信号を増幅し低インピーダンス電位を発生する。低インピーダンス電位は、鋭敏な信号を外部の電気的影響から保護する保護プレート228にフィードバックされる。増幅された電位はデジタル信号に変換され、プロセッサー34に供給され、そこで信号が濾過および/または合計される。次にビデオモニター40を用いて体積または流速の指示を患者または操作者に画像で提供する。さらに、プロセッサー34を合計された出力を用いて、例えば所定の全体積に到達する透析物の流速を決定する等、システム10のポンプ20制御する。
【0196】
図18を参照すると、本発明のキャパシターセンサー60で操作されるシステム100のポンプ120が図示される。ポンプ120はポンプチャンバー250を形成する第1および第2部分246および248を有するクラムシェル形を形成する。部分246および248はハードウエアユニット110のベース114および蓋116中の剛性の固定容積円盤型の刻み目である。クラムシェル型の第1および第2部分246および248は閉じられ、使い捨てユニット110の膨脹可能膜162および164を含むポンプ受器部172上にシールされている。
【0197】
開口部または細孔252は第1および第2クラムシェル部246および248と柔軟膜162および164の間に形成される。開口部により医療用流体、例えば透析物が受器部172の膜162と164の間のチャンバー250に出入りすることができる。受器部分172はバルブマニホールド190と流体で連通している。
【0198】
図18は2枚の膜162および164が緩んだ位置にあり、弾性受器部分172が閉じている空の状態のポンプチャンバー250を示す。空の体積状態は、膜162および164が潰れて実質的に全てのが滅菌受器172および同様にポンプチャンバー250から除かれた場合に達成される。
【0199】
空の体積状態は、例えば図18に示す様に柔軟膜162、164をその緩んだ、未拡張状態にすることで達成される。また、2枚の膜162および164を相互に、またはポンプチャンバー250の246および248の何れか一方へ押し付けることができる。ポンプチャンバー250が満たされた状態である場合、医療用流体は膜162および164の間に滞留し、膜は部分246および248の内壁と反対に吸引される。
【0200】
膜の162および164の一方、または双方の何れかが、任意の適当な流体活動デバイスによりクラムシェル部246および248の方向へ、およびそれらから離れて動き得ることを理解する必要がある。様々な実施態様で、ダイアフラムポンプが空気力学的または水力学的に起動される。
【0201】
システム100のダイアフラムポンプ120にはシステム10のポンプ20の様な独立したピストンまたは機械的アクチュエーターを必要としない。クラムシェル部246および248がそれぞれポート254および256を形成し、変位流体(例えば空気力学または水力学流体)に受器172の外側のチャンバー領域へ出し入れする運動を行わせダイアフラムポンプを作動させる。
【0202】
ある実施態様では、医療用流体、例えば透析物がチャンバー250内の受器172へ吸引される。チャンバーポート254および256の少なくとも一方に負圧を加えて膜162および164で形成する受器172を医療用流体で充満し得る。ポート254および256の少なくとも一方に陽圧を加えるか、または膜162および164を形状中へばねで戻して医療用流体を受器172から抜き出すこともできる。別個の実施態様では、医療用流体、例えば透析物に外部から圧力を加えて膜162と164の間のポンプチャンバー250に出し入れすることができる。
【0203】
クラムシェル部246および248はキャパシターセンサー60のキャパシタープレートを形成し保持する。ある実施態様では、上部クラムシェル部分246には、電気絶縁部またはプラスチック層の間の活性金属あるいは伝導性キャパシタープレート258が含まれる。金属保護プレート260が上部クラムシェル部246の外側のプラスチック層の上に備えられている。保護プレート260は、陽極キャパシタープレートから送られる高いインピーダンス信号に対する雑音保護となる。
【0204】
システム10のポンプ20と同じく、システム100のポンプ120の上部クラムシェル部246の陽極キャパシタープレートは、静電容量検出回路と結合する。保護プレート260も同様に静電容量検出回路のフェードバックループと電気的に結合する。
【0205】
ある実施態様では、下部クラムシェル部248も不活性なプラスチックで作成され、金属キャパシタープレート262が下部クラムシェル部248の外部表面に取り付けられている。クラムシェル部248の外側に配置された金属キャパシタープレート262は接地されている。
【0206】
ある実施態様では、下部ポート256に負圧が定常的に保たれ、充満と空の繰り返しサイクル中に下部膜164が接地されたクラムシェル部248の内部表面に添う様に聞きつけられている。この態様では、上部膜162はポンプの仕事を行う。すなわち、上部クラムシェル246の上部ポート254に負圧が加えられると、上部膜162は上部クラムシェル246の内部表面に対して吸い上げられ、その表面に添う様になる。この動作で流体を供給バッグ14からマニホールド190を通して受器172中へ引き込む。流体を排出するため、負圧が上部ポート254から逃がされ、上部膜が崩壊して流体を受器172から押出す。または陽圧を少なくとも1個のポートを通して加えられる。
【0207】
操作する場合は、静電容量センサー60が図17Aおよび17Bに記載の様に作動する。受器172がクラムシェル部246および248の間に広がる。膨脹/収縮受器172とクラムシェル部246および248の間の低誘電変位流体の距離の変化Δdは接地プレート262と陽極プレート258の間の静電容量に何らかの効果があると思われる。接地プレートと陽極キャパシタープレートで決まる表面積Sと同様に、膨脹する膜も全体の静電容量に何らかの影響があると思われる。確かに、低誘電率の空気を置換する高誘電率透析物(またはその逆)で変化する全体の誘電率が、プレート258と162の間の静電容量に影響する。
【0208】
膜162と164が膨脹し医療用流体が満たされると、静電容量が変化、すなわち増加する。チャンバー内の医療用液体の量が異なる毎に独自の全静電容量となる。従って、独自の静電容量はチャンバー内のそれぞれ特定の流体体積、例えば実質的に空、部分的に充満または実質的に一杯であることと関連し得る。
【0209】
上記の静電容量センサー60の代替として、自動化システム10および100を流れる透析物の体積を、電子天秤等の他の方法を用いて測定することができる。この様な場合、電子天秤はシステムの始動中にシステムに供給された透析物の量を追跡する。電子天秤はまた、透析治療中にシステムに添加された任意の追加透析物を監視する。
【0210】
他の実施態様では、本明細書に記載された任意のシステムを他の型の流速計または当業者に公知のボイル(Boyle)の法則を用いるデバイスで検出することができる。さらに、オリフィスプレート、マスフローメーターまたは当業者に公知の他の流量測定デバイス等、様々な他の型の流体体積測定または流速計を自動化システム10および100で使用できる。
【0211】
(VI.精密圧力制御)
上記で議論した様に、システム10はバルブアクチュエーター24およびポンプモーター22を使用する。ある実施態様では、ポンプモーター22はステップモーターである。他の実施態様では、モーター22はDCモーターまたは他の型の再現性があり正確に位置決め可能なモーターである。この様な型のモーターのそれぞれにより、システム10はピストン212およびピストンヘッド214をポンプチャンバー210内で極めて正確に位置決めすることができる。高精度回転モーター22の場合は、アクチュエーター24が回転運動を正確に移動運動に変換し、ピストン212をシステムの要求する精度と再現性の範囲内でチャンバー内で前後に動かす。実施態様における線状ステップモーターの精度はステップ当たり約0.00012〜0.00192インチである。
【0212】
ポンプモーター22はまた、プログラム可能であるポンプモーター22のプログラム可能な性質により、加速、速度および位置データをコントローラー30に入力することが可能である。コントローラー30はその情報を用いてピストン212とピストンヘッド214を適当な時間内にポンプチャンバー210内に位置決めし、所定の力または流体圧力を発生する。加速、速度およびピストンヘッド214の位置を予め設定しておくことにより、単純な空気システムと比べて相対的にゆっくりと応答する利点が得られる。
【0213】
例えば図8に関連して説明したPVC医療用配管の柔軟な性質、および図13および14に関連して説明した膜材料により、システム10はいわゆる“コンプライアンス”を持つことができる。システム10が例えばポンプピストン212およびヘッド214を動かして流体圧力を発生しようとしている場合、コンプライアンスが得られるが、その代わりに柔軟な配管と膜が膨脹する。柔軟な膜と配管ではコンプライアンスは不可避である。実際、配管と膜がその弾性限界まで膨脹した場合、ポンプチャンバー210内(即ち受器172内)の圧力および配管を通した圧力は急激に上昇する。圧力を上げて流体を駆動させるためには、配管と膜162および164のコンプライアンスをできるだけ速く克服することが望ましい。
【0214】
本発明は、ポンプピストンの加速と速度をあらかじめ設定する能力と適応圧力制御方式を組み合わせたハイブリッド圧力制御システムを用いるが、それにより圧力を所定のストロークに対する所望の圧力設定値に調節し、圧力を経時的に、すなわち反復ストロークにわたって微調整することができる。言い換えれば、本発明は圧力を、システムのコンプライアンスを克服し所望の圧力設定値を求めるシステム内で制御する方法を用いる。圧力をポンプチャンバー210内で制御する本発明の方法は、図19の速度−圧力曲線で示される。
【0215】
一般に、システム10はピストン212とピストンヘッド214の速度を制御することにより、圧力をポンプチャンバー210内の受器172内で制御する。図19の速度プロファイル390は、ストローク位置392の開始点で始まる時間“t”にわたって行われる1回のポンプストロークを示す。ストロークの始めでは、速度は予め設定した加速394を越えて暴走する。予め設定した加速394はコントローラー30にプログラムされている。予め設定した加速394による速度が最大速度396に達すると、加速394はゼロに変わり、ピストン212は一定の最大速度396で運動する。
【0216】
垂直の点線398で示される加速394と最大速度396の期間中、圧力プロファイル400の圧力曲線401で示される対応する圧力は始めは非常に遅く、時間が破線398に達すると級数的に増加して暴走する。圧力曲線の最初の部分、すなわちストローク位置の開始直後では、システムのコンプライアンスが働いて圧力が徐々に上昇する。コンプライアンスが働くと、圧力はますます速い速度で上昇する。
【0217】
圧力がソフトウエアに設定された圧力閾値402の近くに達すると、コントローラー30内のソフトウエアが以前の動作(加速、速度、位置)制御から順応制御へ変換する。本発明の流体ポンプ内の圧力の制御法は、技術の組み合わせを用いるハイブリッド型制御であることを理解する必要がある。
【0218】
加速394と最大速度396を強調する運動制御部は、制御法がシステムに圧力コンプライアンスを克服する様に強制する期間を表す。ある力が閾値の近くに達すると、コントローラー30は速度を減速404で急速に減速させる。減速404によりピストン212とピストンヘッド214の速度が速度406に減少するが、この速度は圧力制御システムの適応制御部分に圧力設定値408を達成するの能力を与えるものである。すなわち、プログラムされた減速404がなければ、適応制御部分が圧力を制御して圧力を圧力設定値に到達させる、または実質的に到達させるための時間がより困難になる(すなわちより長くなる)と思われる。
【0219】
以下により詳細に説明する様に、加速394はある実施態様では初期のオーバーショットの程度を減少させるため、より適応する様に制御される。加速394に対する適応性制御を経時的に微調整して初期のオーバーショット量を更に減少させる。この様な手段のそれぞれは、必要な減速制御の量に影響する。
【0220】
制御された減速404が速度406に達した後、および第2の破線410の時間までに、システム10は適応モードを作動させる。第2の垂直線410はストロークの終わりに生じる。図示する様に、ストロークの適応部分はいくつかの領域、すなわち領域412と領域414に分解される。領域412はプログラムされた加速394でもたらされたオーバーショットまたはアンダーショット394が特徴である。適応技術を応用する場合、領域414のエラーを克服する調節またはパラメーターはソフトウエア中に予め設定され、おバーショットまたはアンダーショットに対向する。領域414は実際の圧力曲線401と圧力設定値408の間のエラーを最少にしようとする試みを目的とする。領域414中に、パラメーターと適応手段がソフトウエア中にあらかじめ設定され、圧力曲線401の振動を減少し、圧力設定値408をできるだけ多く、できるだけ速く達成する。
【0221】
破線410で示される時間に達すると、圧力制御法は再び運動制御を繰り返し、速度を制御された所定の減速416で最終速度418へ減速するが、この速度はストローク392の開始時点での初期速度でもある。別個の実施態様では、その方法は単に時間ライン410を過ぎて適応制御を続けさせ、最終移動速度418を達成しようとする。時間ライン410後、圧力曲線401に沿う圧力は、圧力プロファイル400で示される様にゼロ圧力に向かって下降する。圧力プロファイル400を速度プロファイル390と比較すると、時間“t”におけるストローク後も圧力はポンプチャンバー210の受器172中で維持されることを理解する必要がある。ある場合は、ピストンが突然停止すると圧力がオーバーシュートするが、液体の慣性により時間“t”後に圧力の突出を生じる。
【0222】
図20を参照すると、圧力プロファイル400の領域412および414中で適応圧力制御を採用するアルゴリズム420が示される。ある実施態様では、圧力制御法の適応制御部分は比例、積分および微分(PID)適応パラメーターを採用する。この方法では、アルゴリズム420で図示される様に、圧力の測定値はポンプチャンバー210の受器172内部の圧力を検出し、コントローラー30に圧力センサー入力422を提供する圧力センサーから得られる。圧力センサー入力422がデジタルフィルター424を通って送られ、測定された変数426となる。測定された変数426が所望の変数、すなわち図19に示す圧力設定値408と比較され、測定された変数426と圧力設定値408の間のエラーを発生させる。
【0223】
次に、エラー428を比例係数432、積分計数434および微分計数436を使用するPID計算430に入力する。PID計算430の出力は適応圧力変化438である。次にコントローラー30は速度を上げ下げして変化させ、圧力変化438を発生する。
【0224】
図19の圧力プロファイル400で、図20のアルゴリズム420を適応領域412および414中に定常的に実行する。以下に議論する様に、補正パラメーター、すなわち計数432、434および436が領域412および414中に異なって用いられるが、その理由は領域412中での補正はオーバーシュートおよびアンダーシュートを最少にすることを目的とするが、は領域414中での補正は圧力設定値408付近のぞ差をゼロにすることを目的とするからである。
【0225】
上記の様に、システム10では1台のポンプ20が用いられる。1台のポンプ20により患者充填ストロークおよびポンプ排出ストローク中に陽圧が加えられる。ポンプ20により、供給バッグ14からの吸引ストロークおよび患者12から吸引ストローク中に陰圧が加えられる。4つのストローク中、患者充填および患者排出ストローク中に圧力を正確に制御することが最も重要である。供給バッグ14から流体送液の場合、またはポンプチャンバー210の受器172からドレイン18へ流体の送液の場合、圧力を制御することはそれほど重要ではない。二つの陽圧ストロークで、一つのストローク、すなわち患者充填ストロークでは、圧力を適切に制御することが重要である。二つの陰圧ストロークの一つのストローク、すなわち患者から吸引ストロークでは、圧力を適切に制御することが重要である。その他の二つのストロークでは、コントローラー、モーター22および使い捨てユニット160に不必要に負荷をかけず圧力が制御される。
【0226】
図21を参照すると、患者充填サイクルのいくつかのストローク中の圧力−速度曲線が示される。上部プロファイル440は平方インチ当たりミリポンド(mPSI)で表された実際の圧力444/所定の圧量442を示す。下部プロファイル450は対応する速度曲線を示す。圧力プロファイル440で、黒い線442はmPSIで表された所望の圧力に対応する。曲線444はmPSIで表された実際の圧力を示す。速度プロファイル450中の曲線452a、452bおよび452cは、圧力プロファイル440の圧力曲線444に沿ったピストン速度を示す。使用したモーター22がステップモーターである場合、速度は秒当たりミリステップまたはマイクロステップ等の秒当たりのわずかなステップの増加で測定される。本発明に用いられる異なったステップモーターも、異なったステップの増加でプログラム可能である。従って実際の速度はステップモーターの分解能の関数である。
【0227】
時間ゼロでは、所望の圧力442はほとんど瞬間的に2000mPSIに変化する。所望の圧力442は約1.6秒になるまでこの一定の2000mPSIを維持するが、この時点で所望の圧力は瞬間的にほとんどゼロへ戻る。所望の圧力曲線によるこのステップは1回の完全な患者充填ストロークを表すが、この時、ポンプチャンバー220内のピストン212およびぴピストンヘッド214の1回の完全な正の上向きのストロークが行われる。透析物が患者の腹膜腔12中へポンプ送りされているので、このステップでは圧力を制御することが重要である。実際の圧力曲線444は指数的に暴走し、図19に関連して説明した方法で約2000mPSIの設定値で振動する。速度曲線452aは図19に示したものと類似のパターンに従うことに注意しなければならない。
【0228】
約1.6秒で、すなわちピストンヘッドがバルブチャンバー210の上部チャンバー216に到達した場合、コントローラー30がピストン212の引導を停止する。ピストンヘッドの速度は約3.4秒までゼロのままである。この時点で、バルブは図16Aに関連して図示される“全バルブ閉”位置の一つを経由して閉じられている。圧力曲線444で示す様に、ピストンヘッド214が動いていなくても残存する流体圧力がポンプチャンバー210内に残る。
【0229】
時間約3.4秒で、所望の圧力曲線がほとんど瞬間的に−2000mPSIへ切り替わる。そこでポンプ20は膨脹して流体を供給バッグ14から引き込む負圧を発生するように問われる。このストローク中、圧力を患者流体充満におけるほど正確に制御する必要はない。従って、圧力調節法の運動制御部を迂回し、ライン442に沿って圧力設定値を単純に適応して見出す様にプログラムされる。患者充填ストローク中、透析物は使い捨てユニット160の流体加熱経路180を通って送液される(図3A、5等を参照)。流体が経路180を通過する場合、コンプライアンスの多く、すなわちシステムの引っ張りが生じる。しかしながら、供給バッグ14からのポンプ送り流体は、流体が加熱経路180を通過することを要求しない。従って、システム10はこのストローク中、同じレベルのコンプライアンスを経験しない。コンプライアンスが減少すると制御された加速から供給される“強い力”が必要でないので、図19と関連して図示された運動制御部分を使用せずにバッグ14からポンプ送りすることが可能である。
【0230】
図21では、ポンプは約5秒で透析物を供給バッグから引き込むストロークを想定している。従って、曲線442に沿った要求圧力はゼロに戻る。次に、バルブが全て閉じた位置に切り替わり、コントローラー30がピストンをゼロに設定し、約6.8秒が経過するまでピストンヘッドは受器172が流体で満たされて下部チャンバー壁218にそって止まるが、システム10は先に述べたように患者充填ストロークを繰り返す。
【0231】
図22を参照すると、患者はドレインサイクルの患者ドレインストロークとドレインへのポンプ送りストロークのための圧力プロファイル452と速度プロファイル460が示される。圧力プロファイル452では要求圧力曲線454はコントローラーが患者から透析物を引き込むために負圧2500mPSIを要求することを示している。コントローラー30はポンプチャンバー210の受器172から流体をドレインバッグ18へ押し込むために陽圧2500mPSIを要求する。圧力プロファイル452の下に示される速度プロファイル460では、秒当たりのステップが若干増加する実際の速度462が示される。図21および22の速度プロファイル450および460の双方は絶対速度でり、ポンプピストン212が正および負の方向に動くことを示すものではないことを理解する必要である。
【0232】
プロファイル452の実際の圧力曲線456は、圧力を制御して、プロファイル452のポンプからドレイン部分中よりも患者から吸引部分中の方が要求圧力ライン454により密接に添わせることを示している。ある実施態様では、患者からの吸引部分に対して運動が制御された速度464を提供し、時間“tadapt”中は適応制御を使用する様にコントローラー30がプログラムされている。ある実施態様では、その方法は患者から吸引の終わりに制御された減速も使用する。または、その方法はゼロ圧力を見つけるためにPID制御を行う。同様に、ポンプからドレインストローク中、コントローラー30をPID制御のみに切り替えることもできる。
【0233】
図23を参照すると、本発明の圧力制御法のPID部分の“微調整”適応制御が示される。図20と同様に、図23には測定された圧力変数426と所望の圧力設定値408が含まれる。圧力エラー472は、図19の圧力−速度プロファイル400に図示されたオーバーシュート領域412または振動領域414の何れかにおけるエラーを示す。各領域でアルゴリズム470は2つのエラー成分、すなわち現在のストロークで測定されるエラー474と以前のストロークで記憶されたエラー476に注目している。コントローラー30が二つのエラー476と478を比較し、決定ブロック478に示される決定を行う。
【0234】
ブロック476で現在のストロークエラー474が以前のストロークエラー476より小さい場合、以前の計数が望ましい結果を有しているので、この方法は以前の計数を使用する。現在のストロークエラー474が以前のストロークエラー476より大きい場合、二つの可能性がある。まず、計数または補正手段がエラーの増加を克服するに十分でない。ここで計数または補正設定を増加させるか、別個の戦略が取られる。次に、以前の補正手順が悪影響を有している可能性があるので、その場合はパラメーターの関係を逆転するか、別個の戦略が用いられる。明らかに、アルゴリズム470を使用するために、その方法はコントローラー30が以前の補正の試みの方法をとその結果を記憶していると仮定する。以前に起こったことに基づき、コントローラーはパラメーターの少なくとも1個を増減することを決定する。増減量を増分表480に機腐れた少なくとも1個の計数に当てはめる。調節された、または調節されない増分が、現在使用されている少なくとも1個の計数482に合計され、調節された少なくとも1個の計数484を生成する。
【0235】
図24を参照すると、表500は様々な異なった計数と、本発明の圧力制御法に対する適応境界線を示す。ある計数とパラメーターは上記のプロファイルの運動制御部分、即ちプロファイルの加速、減速および速度部分のセットにより適用される。しかしながら、運動制御パラメーターはエラーを生じさせ、それが圧力制御のPID部分における適応パラメーターに影響する。他のパラメーターもプロファイルの適応制御部に適用される。開始ストローク加速パラメーター486(図19の速度プロファイル390の加速394で示される)を調節することは、本方法の運動制御部分に影響する。図示される加速は、オーバーシュートおよびストローク時間の効率的な使用に影響する。言い換えれば、コンプライアンスを速やかに克服するためには高い加速を行うことが望ましいが、その代償はオーバーシュートが増加することである。一方、より低い加速はオーバーシュートを減少させるが、システムのコンプライアンスを克服するのにより多くの時間が必要になる。
【0236】
近接閾値パラメーター488(図19の圧力プロファイル400の圧力ライン402で示される)もオーバーシュートおよびアンダーシュートに影響する。ここで、圧力閾値488を低く設定し過ぎるとアンダーシュートを生じ、圧力閾値488を高く設定し過ぎるとオーバーシュートを生じる。DP/dtパラメーター490は与えられた時間内の圧力変化である。このパラメーターは、例えば図19で、圧力曲線401のある傾きを達成することを求めるためのものである。
【0237】
図19の速度プロファイル390のライン396で示される最大移動速度パラメーター492も、オーバーシュートおよびそれに続く共鳴に影響する。その他の補正因子は図19のライン410に対応する圧力減速494への変換である。この方法には運動制御へ戻らず、システムを作動させ、その代わりにシステムを適応PID制御のままにすることが含まれる。減速への変換はバルブを閉じた後にポンプチャンバー210に残る残留圧力に大きな影響を与え得る。
【0238】
それぞれ496、498および502でラベルされるPID因子Kp、KdおよびKiは本方法の適応制御部分に影響するが、ストロークの最後の制御された減速に影響する割合は少ない。PID因子またはパラメーターのそれぞれは、中間ストロークで変化し適応する。図23に示す様に、それらの因子はシステムを経時的に最適化する様に変化し得る。
【0239】
上記因子のそれぞれは、システム10の外の環境で流体圧力を変化しにくい様に用いられる。例えば、因子は患者の腹部内の生理的および化学的変化による変化を克服し得る。また、患者供給バッグ14の高さも流体ポンプ20の初期負荷に影響する。図24に示すパラメーターは自動的に高さによる変化を克服する。さらに、患者が夜間に眠っている場合、バッグ14はますます空になって行き、一方ドレインバッグ18はより充満され、その双方がポンプ圧力に影響する。図24に示されたパラメーターは、これらの変化を自動的に調節して補償することが可能で、システムをスムースに作動し続ける。
【0240】
上記因子のあるものは、図19の圧力プロファイル400の存在で図示されるオーバーシュート領域中にさらに変化し使用される。その他の因子とパラメーターはプロファイル400の振動部分414中で使用されさらに変化する。
【0241】
(VII.インラインヒーター)
ある実施態様では、インラインヒーター16には当業者に公知の2枚の電気プレートヒーターが含まれる。ヒーター16のプレートヒーターは、使い捨てユニット160に面する平滑で平坦な表面を有する。別個の実施態様では、自動化システム10および100は、赤外線ヒーターまたはその他の対流ヒーターと組み合わせたプレートヒーターを有するインラインヒーター16を備えている。
【0242】
別個のデュアルモード型のヒーターでは、プレートヒーターと例えば赤外線ヒーターの双方が、使い捨てユニット160の流体加熱経路180を流れる医療用流体を加熱するインラインヒーターである。赤外線ヒーターの輻射エネルギーは流体加熱経路180中の流体に向けられ、流体に吸収される。実施態様の輻射エネルギーまたは赤外線ヒーターは一次または高容量ヒーターであり、比較的大容積の冷たい流体を所定の温度に短時間で加熱することができる。
【0243】
ある実施態様のデュアルモードヒーターのプレートヒーターは、赤外線ヒーターに比べて比較的低い加熱容量を有する2次またはメインテナンスヒーターである。上記の様に、プレートヒーターはプレートの温度を上昇するために電気抵抗を利用し、プレートに隣接する経路180を流れる流体を加熱する。
【0244】
デュアルモードヒーターは、供給バッグ14の一つから自動化システム10または100に供給される冷たい(高い熱エネルギーを要求する)透析物を素早く加熱するために実用的に有用である。初期のシステム充満は後の充満より冷たく、システムは対流フェーズ中に熱を失う。従って、供給バッグ14が冷たい周囲温度中に保管された場合、初期のシステム充満における透析物の温度は5°C〜10°Cと極めて低い。
【0245】
ヒーター16のデュアルモードヒーターの実施態様のプレートヒーターおよび赤外線ヒーターを相互に様々な形態で配列することができる。ある実施態様におけるデュアルモードヒーターは、流体がヒーターの側を順次通過する様に配列されている(例えば最初にプレートヒーター、次に輻射または赤外線ヒーター)。他の実施態様では、流体がヒーターの側を同時に通過する(同時にヒーター)。ヒーターを通り過ぎる流体流路は、流体加熱経路180中等、双方のヒーターで共通の流路であるか、または各ヒーター毎に独立の流路を含むこともある。
【0246】
(VIII.ヒーター制御のためのファジー論理)
流体の圧力制御と同様に、プレートヒーター16の制御もいくつかの環境変数の一つである。例えば、患者の自宅の周囲温度も、医療用流体の温度を所望の温度に上昇するのに必要な熱量に影響する。明らかに、供給バッグ14中の透析物の温度も、流体の温度を所望の温度に上昇するのに必要な熱量に影響する。プレートヒーターの効率も必要な熱量に影響する。さらに、患者の家庭で提供される電圧も別個の因子である。具体的には、医師または看護人が37°C付近の温度に制御される患者に対する透析物の温度を処方する。従って、ヒーター16を外部温度勾配に対して補正し、適切な患者流体温度を維持する方法を有することが望ましい。
【0247】
図25には加熱制御法510の実施態様が図示される。方法510には、全体的な出力544を発生するために平行して作動する二つの独立に実行されるアルゴリズム520および530が含まれる。アルゴリズム520は“知識ベース”制御アルゴリズムと呼ばれる。知識ベースアルゴリズムは経験データ、流れの機構、物理的法則および実験データ等の知識に基づいている。
【0248】
知識ベースアルゴリズムは多くの入力とともに、多くの一定の設定を必要とする。例えば、制御アルゴリズム520は入力拍動流速を要求する。下記に図示する様に、拍動流速は実際にはいくつかの変数から計算される。本発明のシステム10、100は患者12に流体を連続した流れでなくパルスで提供する。使い捨てユニット中の全てのバルブヘッドが閉じられた場合、流体加熱経路から患者へ流体が流れることができないことは、図16Aおよび16Bに基づく議論から容易に理解し得る。従って、患者への流体の流速は拍動流速であり、患者は透析物を噴出またはパルスで受け取る。この型の流速では流体の温度を制御することは困難である。結局、加熱制御法510はデュアルアルゴリズム520および530を提供する。
【0249】
拍動流速の他に、知識ベース制御アルゴリズム520は測定された、すなわち実際の流体流入温度信号を受け取る。さらに、アルゴリズム520は経験データに基づくプレートヒーター効率を記憶する。ある実施態様では、プレートヒーター16の上部および下部プレートの効率は約95%である。アルゴリズム520はまた、システム10、100中への入力電圧から導かれる全ヒーター電力を入力する。住宅用電圧はその日により、または一日にわたり、または場所により変化する。
【0250】
アルゴリズム520はまた、一定の設定であるが、患者の医師または看護人により変更し得る所望の流出流体温度を入力する。図25に示す様に、所望の流出流体温度を知識ベース制御アルゴリズム520とファジー論理ベース制御アルゴリズム530の双方へ入力する。以下により詳細に議論する様に、知識ベース制御アルゴリズム520は知識ベース動作サイクルを合計ポイント544に出力する。
【0251】
ファジー論理ベース制御アルゴリズム530では、所望の流体温度を比較ポイント514に入力する。比較ポイント514は所望の流体温度と加熱システム548を励起する実測の流体温度との間の差を出力する。従って、ファジー論理ベース制御アルゴリズム530は入力として温度変化ΔTを受け取る。以下に説明する様に、ファジー論理ベース制御アルゴリズム530はファジー論理動作サイクルを出力するためにファジー論理制御の概念と戦略を採用する。
【0252】
加熱制御法510では、知識ベース動作サイクルをファジー論理ベース動作サイクルに対して加重して適用する。別個の実施態様では、システムは相対的加重を予め決めておく。加熱制御法510では、ファジー論理ベース動作サイクルは加重される、即ちブロック542に示す様な重率因子を備えている。例えば、ファジー論理ベース動作サイクルに重率因子1を与えた場合、ファジー論理ベース動作サイクルは知識ベース動作サイクルで等しく加重される。ファジー論理ベース動作サイクルに重率因子2を与えた場合、ファジー論理ベース動作サイクルは知識ベース動作サイクルの2倍み加重される。ブロック542の重率因子は経時的に変化する、および/または経時的に最適化することができる。
【0253】
加重ブロック542を知識ベース動作サイクル出力に置くこともできることを理解する必要がある。しかしながら、以下に議論する様にファジー論理制御ループの更新率は知識ベース制御アルゴリズム520に入力する入力信号の更新率より実質的に高い。従って、ファジー論理ベース動作サイクルを知識論理ベース動作サイクルよりも重量付けすることが有利である。
【0254】
加重ファジー論理ベース動作サイクルおよび知識ベース動作サイクルを合計ポイント544で合計し全体的なヒーター動作サイクルを作成する。動作サイクルは電力入力を制御、従ってヒーターのプレート温度をする一つの方法である。動作サイクルを制御することは、全電力がヒーター、例えばプレートヒーター16に加えられる時間の割合を制御することを意味する。別個の実施態様では、平行する制御アルゴリズム520および530の出力が、全ての時間で加えられた全電力の割合であってもよい。またさらに、平行する制御アルゴリズム520および530の出力が、ある時間に加えられた全電力の割合であってもよい。図示する目的で、加熱制御法510が全電力がヒーターに加えられた時間の割合である動作サイクル出力を用いて説明される。
【0255】
本明細書で説明する様に、好ましい実施態様の加熱システム548(即ちヒーター16)はプレートヒーターであり、上部および下部プレートが使い捨てユニット160の流体加熱経路の回りに配置されている。しかしながら、加熱制御法510は先に説明した赤外線ヒーターにも同様に応用可能である。さらに、加熱制御法510はプレートヒーターと赤外線ヒーターの組み合わせ等、異なったタイプのヒーターの組み合わせにも同様に応用可能である。
【0256】
加熱制御法510は図1および2に示したセンサー62等、複数の温度センサーを使用するが、それらのセンサーは加熱制御法510内で異なった時間の温度を検出し、システム10、100内に置かれる。1個のセンサーが流定排出口温度を検出し、その結果を加熱システム548から比較ポイント514へフィードバックする。他の2個のセンサーは上部プレーとおよび下部プレートの温度を検出し、ソフトウエアに置かれた温度制限コントローラー546にフィードバックする。
【0257】
図示する様に、合計されたヒーター動作サイクルが加熱システム548に入力される前に、システムは上部および下部加熱プレートが既に最大許容温度にあるかどうかを決定する。それより上ではプレートヒーターのプレートを維持することが安全でない温度が存在する。少なくとも1枚のプレートが現在温度制限に達している場合、知識ベース制御システム520およびファジーベースアルゴリズム530の計算に拘わりなく加熱制御法510はゼロ動作サイクルを出力する。最後に、上部および下部プレートの温度はブロック546にフィードバックされ、上部および下部プレートの現在の温度が温度制限以下である場合のみ、ソフトウエアはヒーター動作サイクルを加熱システム548に加える。
【0258】
ある実施態様では、プレートの1枚が制限温度に達している場合、もう1枚のプレートヒーターが制限温度より低くても加熱制御法510は2枚のプレートヒーターにゼロ動作サイクルを提供する。さらに、プレートヒーターの実際の温度が制限温度に極めて近い場合、加熱制御法510は動作サイクルを所定の設定値またはそれ以下にする様にソフトウエアを適用し得る。この様にして、実際の温度が制限温度に非常に近い場合、加熱制御法510は故障タイプの条件となり、安全動作サイクルを使用する。
【0259】
実際のプレート温度が安全温度限界以下であると仮定すると、加熱制御法510は合計ポイント544における平行する制御アルゴリズムからの組み合わせ動作サイクルを適用する。ヒーター動作サイクルは所定の時間のある割合で全電力を印加する。所定の時間はファジー論理制御ループの更新された速度である。ある実施態様では、ファジー制御アルゴリズム530を含む加熱制御法510はファジー論理制御ループは1秒間に約9回更新される。加熱制御法510の更新速度は重要なパラメーターであり、単に更新速度をある値に増加させることはシステムの精度を悪くすることを理解する必要がある。良い結果を与える更新速度の範囲は秒当たり約8.5回〜約9.5回である。
【0260】
更新速度を入力電力の周波数へ均等に分割可能ではない。例えば、秒当たり9回の更新速度は周波数が50または60Hzに安定して保たれている場合に作動する。しかしながら、ある国の場合は周波数は63ヘルツである。この様な場合、9回の更新速度では不正確になる。従って、好ましい実施態様では、9.1ヘルツ等の1ヘルツの何分の一かの周波数が好ましい。更新速度が1秒当たり9回であるとすると、1回の更新当たりの時間は110ミリ秒である。従って、動作サイクルが0.5、即ちオンオフ時間の半分であると、全電力が印可される時間は55ミリ秒である。次の55ミリ秒の間に電力が印可される。動作サイクルが90%である場合、全電力は110ミリ秒の90%が印加される。
【0261】
知識ベース制御アルゴリズム520の更新速度はファジー論理制御ループの更新速度ほど重要ではない。ある理由で、アルゴリズム520への信号入力は経時的に徐々に変化するので、それを所望の流体温度と実際の流体温度間の比較ほど頻繁にチェックする必要はない。更新速度約2秒が信号入力に充分である。制御アルゴリズム520の入力を1/2秒〜4秒毎に1回の割合で更新し得る。知識ベース制御アルゴリズム520をシステム10、100の主プロセッサー、例えばインテル(Intel)StrongARM(商標)プロセッサー上で実行することができる。ファジー論理制御ループの更新速度を上げるため、モトローラー(Motorola)デジタル信号プロセッサーが使用される。ある実施態様では、ファジー論理ベース制御アルゴリズム530を例えばモトローラーデジタルプロセッサー等の代表的なプロセッサー上で実行する。
【0262】
図26には知識ベース制御アルゴリズム520がより詳細に示されている。上記で議論した様に、第1段階で知識ベース制御アルゴリズムはブロック522で示される様ないくつかの信号入力を受ける。これらの入力のあるものは毎秒2回の主プロセッサーレベルで更新される。他の入力は定数としてソフトウエアに設定される。経時的に変化する入力信号の一つはミリ秒当たりのストローク間隔数(N)である。ポンプピストンがある一定時間動き、停止し滞留し、次に一定時間運動する。ポンプはミリ秒当たりN回のストロークを行い、それが知識ベース制御アルゴリズムに入力される。
【0263】
経時的に変化する他の入力は入力電圧(Vac)である。入力電圧Vacは一軒の家または異なった場所で経時変化する。また別個の経時変化する入力信号は測定された流体の入口温度(Tin)である。流体温度Tinは上記の方法510の様々なセンサーの一つで測定される。経時変化し難い入力はプレートヒーター効率(E)である。ヒーター効率Eは経験的に決定される。ヒーター効率Eは加熱中の使い捨てユニットの内部の圧力、使い捨てユニットの材料および上部および下部プレートのギャップ許容度に応じて変化し得る。特定の透析デバイスに対するヒーター効率Eは実質的に一定である。上記の様に、所望の流体温度(Tdesired)は医師の注文に応じて変化し得る。しかしながら、任意の与えられた治療セッションでTdesiredは一定である。
【0264】
知識ベース制御アルゴリズム520は拍動流速(Q)を、ブロック524の式に従って分当たりミリメーターで計算する。Qに対する式は流速用の所望のユニットに基づいて変化する。図示された実施態様では、ミリリッターで表したチャンバー容積に60、000を掛け、その積をミリ秒で表したTで割って得られる。再度言えば、チャンバー体積はポンプチャンバー壁の幾何学的形状の関数である。
【0265】
知識ベース制御アルゴリズム520はブロック526で示される様にワットで表した全ヒーター電力を計算する。図示された実施態様では、ブロック528に示される様に加熱制御法510は上記計算を用いて知識ベース動作サイクルを計算する。ある実施態様では、知識ベース動作サイクルはTdesired−Tinに等しい温度を掛けた因子、例えば0.07に等しい。次にこの積に拍動流速Qを掛ける。次に後者の積を(全ヒーター電力W×ヒーター効率E)で割る。図26に示す様に、次に知識ベース動作周期をファジー論理ベース動作周期出力と組み合わせて合計ポイント544に供給する。
【0266】
図27はファジー論理制御アルゴリズム530の実施態様を示す。ファジー論理はシステムエンジニアおよびシステムおよびプロセス制御の分野で一般に知られてることを理解しなければならない。本発明に記載のファジー論理アルゴリズムは、所望の流体温度と実際の流体温度の差であるエラー入力を受ける仕事を行い、この数を際しうにしよとするためのファジー論理を実行する一つの方法にすぎない。ファジー論理を用いる方法に拘わらず、その方法は温度を入力し、動作周期等の電力リミッターを出力する。従って、ファジー論理制御アルゴリズムの第一段階は、ブロック532に示される様にTdesired−Tinの差を計算することである。
【0267】
次にブロック534で示される様にいくつかのメンバーシップ関数を実行する。この実施態様では、アルゴリズム530が5個の測定関数を実行する。測定関数のうちの2個、即ちn大とp大は台形メンバーシップ関数である。ファージロジックの技術で公知の様に、台形メンバーシップ関数は4個のノードで構成される。その他のメンバーシップ関数、すなわちn小、中およびp小は三角形メンバーシップ関数として設定され、3個のノードで構成される。ブロック534で示される様にメンバーシップ関数を設定後、ファジー論理制御アルゴリズム530はブロック536で示される様にファジー化インターフェースを行う。ファジー化インターフェースでは、制御アルゴリズム530はTdesiredとTinの間の温度差ΔTをブロック534に示される様に設定されたメンバーシップ関数に基づきいくつかのファジー集合に変換する。
【0268】
次に、ブロック538で示される様に、制御アルゴリズム530はいくつかのファジー論理加熱規則を当てはめる。ある実施態様では、制御アルゴリズム530は5個のファジー論理規則を採用する。一つの規則は、ΔTが大きい場合、出力を大きな速度で減少させなければならないことを知らせる。別個の規則はΔTが小さい場合、出力を小さい速度で減少させなければならないことを知らせる。第3の規則はΔTが中間の場合、出力がゼロでなければならないことを知らせる。その他の規則は、ΔTがp小の場合、出力を小さな速度で増加させなければならないことを知らせる。最後の規則はΔTがp大の場合、出力を大きな速度で増加させなければならないことを知らせる。
【0269】
ファジー論理制御アルゴリズム530の次の段階は、ブロック540で示される様に脱ファジー化インターフェースを行うことである。脱ファジー化インターフェースでは、規則の出力を実際の、または“クリスプ”出力に変換し、次いで動作周期に転換される。ブロック590で示された脱ファジー化段階では、ファジー論理規則の出力を“クリスプ”または正確な数に変換する。この数を次にヒーターに対する適切な出力に変換するが、これは個の実施態様ではファジーヒーター動作周期である。
【0270】
ブロック542で示される様に、次の段階は知識ベース動作周期に対してファジー論理動作周期にどれだけの加重を置くかということである。加重因子はファジー論理規則と、知識ベースおよびファジー論理ベース制御アルゴリズムの双方でで決定される。次に知識ベース制御アルゴリズム520で生成した知識ベース動作周期を用いて、加重ファジー論理動作周期を合計ポイント544で合計する。
【0271】
(IX.システムの電気絶縁)
医療機器、特に患者の必要部分と密接に接触する医療機器は漏れ電流に対して適切に絶縁されなければならない。クラスI型デバイスは基本的な絶縁と、デバイスが入る建物中の接地導体への接続手段が備えられ、デバイスの絶縁が破れた場合に危険な電圧を逃がす。しかしながら、本発明のシステム10、100の主な使用は患者の家である。このことはクラスIデバイス、特に透析デバイスに二つの問題を提示する。まず、多くの国や古い家では、接地には欠陥があり信頼できないか、全く接地ができない。第2に、既存の接地システムを迂回する人が多い。本発明は接地を必要としない自動化透析システム10、100を提供することにより、この問題を克服する。システム10、100はクラスI機器に備えられた基本的接地に依存せず、二重絶縁または強化絶縁を提供する。
【0272】
二重絶縁には二層の絶縁が含まれる。絶縁の一つの層は基本絶縁である。240VACで、基本絶縁は具体的には4ミリメーターの“クリーページ”または2.5ミリメーターの“空気クリアランス”を必要とする。クリーページとは二つの伝導性部分が絶縁表面に沿って配置されている場合、両者の間の最短距離である。クリーページはまた、伝導性部分とデバイス本体の囲む表面との間の最短距離であり、伝導性部分とデバイスは絶縁体と接触している。空気クリアランスは空気を通して測定された二つの伝導性部分間、または伝導性部分とデバイス本体との間の最短距離である。
【0273】
絶縁の追加層は補充絶縁と呼ばれる。補充絶縁は基本絶縁に加えて行われる独立の絶縁であり、基本絶縁が破れた場合の感電に対する保護を補償する。補充絶縁はクリーページおよびクリアランスの形式でも良い。
【0274】
一方、強化絶縁は二重絶縁と同じ程度の保護を提供する一層の絶縁である。強化絶縁は、二重に絶縁に対する定格電圧に対する二重絶縁と等しい電気絶縁を提供する。システム10、100の電源電圧として用いられる240VACでは、基本絶縁は1500VACに耐え、補充絶縁は2500VACに耐えることができる。したがって、強化絶縁の単層は少なくとも4000VACに堪えなければならない。
【0275】
図28は本発明の電気絶縁システム550の実施態様を示す。システム550が図示されているが、システム550の部品は、上記で議論したハードウエアで図示された部品として指定し得る。例えば、システム550にはハードウエアユニット110のベース114と蓋116を含む上記図3A〜4Bに図示されたハウジングまたは容器112が含まれる。システム550には、ある実施態様で図3Aに示され、図25〜27に関連して議論される上部および下部加熱プレートを含むヒーター16も含まれる。さらに、システム550には図1および2と関連して示され議論されるディスプレイデバイス40と温度センサー62も含まれる。
【0276】
図28で、括弧内の数は格部品の作動または操作電圧を示す。図示する様に、配線552および中立線554は世界中の多くの国で住居用に使用される標準電圧である実施態様の単相主電圧240VACを供給する。または、配線552および中立線554は米国の家庭用標準電圧である単相120VACも供給することが可能で、実際は90〜260VACの任意の電圧を供給し得る。配線552と中立線554は主電源部556に240VACを供給する。システム550が保護接地導体を含まない、または提供しないことは注目に値する。
【0277】
主電源部556は電源プリント回路基板(PCB)558に240VACを供給する。電源PCB558には主要部分562とライブ(活)部分564が含まれる。本発明の目的では、“主要部分”は主電源電圧と電気的に接続すべき部品の全ての部分全体である。“ライブ部分”とは、接続されると、その部分から接地へ、またはその部分から同じデバイスの触れることができる部分へ電流が流れる等、許容漏れ電流を越える電流を生じ得る任意の部分である。
【0278】
図示する様に、ライブ部分560および564は主電源部556および562それぞれから24VDCへ電圧を段階的に下降させる。明らかに、電圧を他の所望のレベルへ段階的に下降させることも可能である。ライブ部分560はライブ部分566に電流を流す。ライブ部分566は1200Vpeakの電圧を出力する設定変圧器を有するインバーターである。インバーター566はいくつかの陰極線蛍光燈に電力を供給し、ディスプレイデバイス40のバックライトとなる。
【0279】
ライブ部分560はゼロ電位に保たれている応用部分568から電気的に絶縁されている。本発明の目的では、“応用部分”とは(i)透析治療を行っている患者または操作者と物理的に接触している、(ii)患者または操作者と接触し得る、または(iii)患者が触れる必要があるシステム550の任意の部分である。例えば、患者はプレートヒーター16の上部または下部、温度センサー62および容器またはハウジング112に触れることができる。応用部分568は温度センサー62の回りのケーシングまたは絶縁を図で表現している。
【0280】
ディスプレイデバイス40のみを含みタッチスクリーン42(図1および2で議論)を含まないある実施態様では、ハウジング112にはガラスまたはプラスチック窓等の窓570が含まれる。ガラスまたはプラスチック窓はその他の部分、例えばプラスチックハウジングまたは外装112と同じレベルで絶縁されている。タッチスクリーン42を含む実施態様では、タッチスクリーンはその製造業者により適切に絶縁されていることが好ましい。または、以下に議論される少なくとも1層がシステムに加えられ、タッチスクリーンが適切に絶縁される。
【0281】
システム550は入出力ポート572を有し、それはシステム550を外部コンピューター、特定領域内ネットワーク、広域ネットワーク、インターネット等へ接続するための直列ポートまたはイーサーネット(Ethernet(登録商標))ポートであってもよい。入出力ポート572を電気的に絶縁するために、システムには保護カバーまたはケーシングが備えられる。
【0282】
主電源部556はプレートヒーター16の上部および下部プレートを加熱する様に位置し配列されるヒーター要素576に電力を与える。別個の実施態様(図示しない)では、主電源部556は上記の赤外線ヒーターに電力を与える。図示する様に、ヒーター要素576ヒータープレート16の間は二重絶縁される。二重絶縁には定格250VACに対する基本絶縁B(240)と定格240VACに対する補充絶縁S(240)が含まれる。
【0283】
少なくともヒータープレート16とヒーター要素576では、基本および補充絶縁は電気的には絶縁されるが熱的には絶縁されない必要がある。カプトン(Kapton(登録商標))等のポリイミドがその目的で優れている。従ってある実施態様では、B(240)およびC(240)層それぞれに厚さ約0.3mmのカプトンテープまたはシートが使用される。更に図示する様に、定格240V用のきほん絶縁B(240)の他の層が温度センサー62とヒータープレート16の間に配置される。この様にしてヒータープレート16はシステム550の残りの部分から完全に二重絶縁される。または、絶縁の二重層の何れかが強化絶縁の単層に置き換えることもできる。
【0284】
配線552と中立線554は、それぞれの配線の周囲を包む、または突出する電気絶縁である定格240VAC用の基本作動絶縁BOP(240)で絶縁される。定格240VAC用の基本作動絶縁BOP(240)は主電源部556と外装112の間、および電源PCB558と外装の間に施される。基本絶縁B(240)は適切に分離された空気層であってもよい。外装122それ自体は240VAC用の補充絶縁S(240)となる。従って主電源部556は外装112の外と二重に絶縁されている。
【0285】
応用部分568はゼロ作動電圧に保たれているので、応用部分568とハウジング112の間に置かれた別個の絶縁が必要である。従って、応用部分568とハウジング112の間には図にOPで表される作動絶縁のみが存在する。しかしながら、24VDC用の二重絶縁または強化絶縁D/R(24)がライブ部分560と応用部分568の間に設けられ、」応用部分568はそのゼロ電位を維持する。24VDC用の基本絶縁B(24)がライブ部分560と応用部分112の間に設けられる。基本絶縁B(24)は的汗津に分離された空気層であってもよい。上記の様に、外装112それ自体は240VAC用の補充絶縁S(240)となる。従ってライブ部分560は外装112の外側から二重に絶縁されている。
【0286】
ライブ部分560とライブ部分566の間にさらに別個の絶縁は必要でなく、作動絶縁OPが設けられるのみである。ライブ部分566は1200Vpeakまで段階的に増加するので、外装112の定格240VAC専用の補充絶縁S(240)に依存すべきではない。従って、ライブ部分566とハウジング112の間に1200Vpeak用の二重絶縁または強化絶縁D/R(1200)が設けられる。
【0287】
240VAC用の二重絶縁または強化絶縁D/R(240)が主電源部556とライブ部分560の間に設けられる。240VAC用の二重絶縁または強化絶縁D/R(240)は配線および中立線554とプレートヒーター16の上部および下部プレートの間にも設けられる。さらに、240VAC用の二重絶縁または強化絶縁D/R(240)は主電源部562と電源PCB558のライブ部分564の間にも設けられる。二重絶縁の場合は、基本または補充絶縁の何れかは適切に離れたPCB558上の表面漏れ距離である。
【0288】
24VDC用の二重絶縁または強化絶縁D/R(240)がハウジング112とディスプレイデバイス40の間に設けられる。24VDCに保たれたディスプレイデバイス40と1200Vpeakに保たれたインバーターの間の絶縁は操作可能であることのみが要求される。ライブ部分566はハウジング112の外側とD/R(1200)で絶縁しなければならないが、LP(24)とはその必要がない。その理由は、LP(1200)はライブ部分566の第二の側にあり、操作絶縁の不良のためにLP(24)と短絡してもLP(1200)はせいぜい24VDCであり、安全上の問題にはならないからである。
【0289】
(X.グラフィックユーザーインターフェース)
図29にはグラフィックユーザーインターフェース(GUI)システム600の実施態様が示される。実施態様のGUIシステム600はウエブ形ソフトウエアまたは他他の型のソフトウエアである。図28の関連で先に議論した様に、本発明のシステム10、100には入出力(例えばイーサーネットのシリアル)ポート572が備えられ、通常は患者とカバー574で絶縁される。ポート572によりシステム10、100のコントローラー30がインターネットおよび様々な他のネットワークと接続することができる。コントローラー30がインターネットまたは他のネットワーク上のソフトウエアと接続することにより、本発明のGUIシステム600はこの能力を利用する。
【0290】
GUIシステム600では、患者がその家庭でインターネットまたは他のネットワークに接続する必要がないことを理解する必要がある。その代わりに、ポート572はメインテナンス技師または設置する技師がハードウエア110内のコントローラー30にアクセスするためのものである。この様にして、患者はそのユニットをインターネットまたは他のネットワークに接続し、患者のソフトウエアを更新することができる。次に患者はユニットを家に持ち帰り、インターネットまたは他のネットワークに接続せず操作することができる。
【0291】
ウエブ形ソフトウエア確立された標準に基づき、インターフェース画面が手作りのソフトウエアでなく既存のソフトウエアで構成されるので、ウエブ系ソフトウエアを使用することは有利である。ウエブ系ソフトウエアにより外部との通信と複数の接続ポイントが可能になる。ソフトウエアは持ち運び可能である。この様な理由のため、既存のソフトウエア部品を用いて構築されたソフトウエアは開発時間と費用を低減する。
【0292】
本発明には埋め込み式ウエブブラウザ602を用いるGUIの構築が含まれる。ある実施態様では、埋め込み式ウエブブラウザ602は第3者のソフトウエアである。埋め込み式ウエブブラウザ602には目的とするプラットフォームで作動する任意の第3者ブラウザが含まれ、HTML4.0、ECMAScriptおよび動画GIF等のソフトウエア支援の最新版が含まれる。ウエブブラウザ602はビデオモニター40に様々なGUI画面を提供する。ウエブブラウザ602はまた、患者の入力を処理する。操作者がシステムを操作する(例えば図3Bに示されるボタン43、124、125および127を押す、またはノブ122を回す)場合、ウエブブラウザ602は埋め込み式ウエブサーバー604との関係に関する情報を提供する。
【0293】
一方、ウエブサーバー604は関係を処理するためにウエブサーバー拡張ソフトウエア606を使用する。埋め込み式ウエブサーバー604はまた、目的とするプラットフォームで作動する任意の第3者ウエブサーバーであり、ウエブサーバー拡張ソフトウエア606に対する支援を含み、情報の動的定義を埋め込み式ウエブサーバー604に送ることができる。
【0294】
拡張ウエブサーバーはウエブサーバー拡張ソフトウエア606を用いて開発され、選択した埋め込み式ウエブサーバー604と関連して作動するセルブレット(Servlet)等の機構の仕様に合致する。ウエブサーバー拡張ソフトウエア606により、ウエブサーバー604が元へ戻って検索してデバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608からリアルタイム情報を検索することができる。CGI、ASP、サーブレット(Servlets)またはジャバ(Java(登録商標))サーバーページ(JSP)等、埋め込み式ウエブブラウザ602、埋め込み式ウエブサーバー604およびサーバー拡張ソフトウエア606に使用し得る既存の異なったウエブサーバー拡張技術が多数ある。
【0295】
ウエブサーバー拡張ソフトウエア606はデバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608と相互作用する。デバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608はバルブモーター/アクチュエーター、ポンプモーター/アクチュエーターおよびヒーター等、様々な低レベル部品を制御するために操作環境である。
【0296】
操作者の入力と自動化透析システム10、100の状態により、ウエブサーバー拡張ソフトウエア606はデバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608と相互作用してそこから情報を得、システム190、100の機器の一つを作動させる。次いでウエブサーバー拡張ソフトウエア606は埋め込まれたウエブブラウザ602に情報を送り、その情報がディスプレイデバイスに表示される。ある実施態様ではウエブサーバー拡張ソフトウエア606はCORBA標準を用いてデバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608と交信する。しかしながら、この交信は当業者に公知の様々なプロトコールを用いて行われる。
【0297】
システム10、100の作動中、例えば警報およびそれに関連するメッセージ等、高優先の度い情報をディスプレイデバイス40上、または独立の専用警報ディスプレイデバイス上に操作者に表示することを要求することがあり得る。優先度の高い出来事があると、デバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608は社内で開発される非常事態処理ソフトウエア610で処理される事態を発生する。一方、非常事態処理ソフトウエア610は埋め込まれたウエブブラウザ602に、現在ディスプレイデバイス40上に表示されているどのような表示でも更新する様に、ウエブサーバー604からのプラグインまたは更新請求シミュレーションを使用して通知する。
【0298】
非常事態処理ソフトウエア610により、ウエブブラウザ602による請求がなくても情報をデバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608から生め込みウエブブラウザ602に流すことが可能で、その後ウエブブラウザは更新を請求する。次にウエブサーバー604は請求をウエブサーバー拡張ソフトウエア606に送る。ウエブサーバー拡張ソフトウエア606はどの様な情報をディスプレイデバイス40上に表示すべきかを、システム10、100の状態に応じて決定する。次にウエブサーバー拡張ソフトウエア606はその情報を、例えば警報条件を示すためにディスプレイデバイスを最新にする生め込みウエブサーバー602に差し戻す。
【0299】
GUIシステム600の実施態様では、ウエブユーザーはシステム10、100のハードウエアユニット110の内部にある。図1との関連で上記に議論した様に、コントローラー10には複数のプロセッサーが含まれる(本明細書では一括してプロセッサー34と呼ばれる)。主マイクロプロセッサーはいくつかの委託プロセッサーに優先して存在する。埋め込み式ウエブブラウザ602、ウエブサーバー604、ウエブサーバー拡張ソフトウエア606および非常事態処理ソフトウエア610のそれぞれは主マイクロプロセッサー上で作動する。デバイスアクセスおよび制御ソフトウエア608は主マイクロプロセッサーと、少なくとも1個の委託プロセッサー上で作動する。
【0300】
また、いくつかの異なったウエブユーザーもシステム10、100内に含まれる情報にアクセスする必要があることも可能である。従って、HTTPが埋め込み式ウエブサーバー604に所定のパスワードの必要を指令せず、その代わりにより強く柔軟な安全システムを使用することが好ましい。
【0301】
図30A〜30Mには、操作者または患者が観るシステム10、100の全体的な外観および感覚を示すGUI600のいくつかのスクリーンの場面が示されている。さらに、これらの図面はGUIシステム100が提供する様々な特徴を図示する。本発明の自動化システムの目的は、単純で操作しやすいシステムである。デバイスには10kg以下の重量の2個の供給バッグ飲みが必要で、患者の感電の危険性がなく実質的に世界中どこでも運転することができる。同様に、GUIシステム600は簡単で直感的、有効かつ信頼性がある様に設計されている。
【0302】
図3Bで図示される様に、システム10、100にはディスプレイデバイス40、ユーザーがGUIシステム600を操作できるノブ122、および患者を3つの異なった画面、すなわちパラメーター変更画面、記録画面および治療画面へ誘導するいくつかの専用押しボタン43が含まれる。ある実施態様では、ディスプレイデバイス40が備えられ、入力機器43、122、124、125および127はそれぞれ電気機械式である。別個の実施態様では、少なくとも1個の入力機器がディスプレイデバイスおよびビデオコントローラー38で操作されるタッチスクリーン42として備えられる。
【0303】
シミュレートされた、または電気機械式“停止”入力124、“OK”ボタン125および“バック”ボタン127も備えられる。OKボタンにより、セットアップ手順の特定の部分を終了し、GUI600にセットアップ段階または治療段階の次のステップにに移行する様に操作者が促すことができる。停止ボタンにより、操作者または患者がセットアップまたは治療段階を停止することができる。システム600には“セットアップを停止したいと思っていますか”等の握手タイプの応答も含まれる。患者充填またはドレインサイクルの等の全手順の他の部分も、操作者からからそれ以上の入力がなくても即時停止する。手順のある時点で、システムにより、操作者または患者がバックボタン127を用いて少なくとも一つの画面へ戻ることができる。
【0304】
図30Aでは、ディスプレイデバイス40およびビデオコントローラー38を、患者に見やすいフォーマットで情報および指示612を提供する動画表示にも散ることができる。スクリーン画面で示される様に、患者がディスプレイデバイス40に表示されている内容を全て読んで理解することを待ってから、GUIシステム600は次のステップまたは段階に移動する。図3Aは、GUIシステム600が治療を開始する前に患者の準備ができていることを待っていることを示している。システム600はユーザーに治療を始める前に“OK”ボタンを押すことを促す。図30Aはまた、参照番号614の“治療”を明るくして治療画面を表示中であることを示している。
【0305】
図30Bでは、GUIシステム600のディスプレイデバイス40が患者に供給バッグ14等の治療に必要な供給液を集める様に促す。図3Bおよび3Cは、システム600が静止画像616等の静止画像および動画618等の動画を用いることを示しているが、これらの画像は実際の対応する供給液および部品に類似し、患者が容易に、効果的かつ安全にシステム10、100を連結し易くする。例えば、図30Cの動画618はシステム10、100の実際のホース止め具に類似し、それにより患者はデバイスの正しい部品を見つけて治療を行い易くする。動画618の矢印は患者が行うことが想定される行動を示し、患者が止め具を不適切に取り扱ったり、万一止め具を壊したりする危険性を減少させる。
【0306】
図30Dおよび30Eは、患者に(i)適切な時点で患者の口と鼻を覆うステップを行う、(ii)患者流体コネクターおよび供給バッグコネクター等の重要な流体コネクターと接触する前に患者の手を洗う様に促して、GUIシステム600がシステム10、100の無菌運転を促進することを示す。GUIシステム600は各ステップで操作を終えてOKボタンを入力するのを待ってから次のステップに移行する。図30Dおよび30Eに示す様に、ディスプレイデバイス40の上端にあるソフトウエアLDE620はセットアップ手順のどこに患者がいるかを示す。
【0307】
スクリーン場面の図30A〜30Eおよび30H〜30Mはそれぞれ、治療のセットアップ手順を示す。従って、図30A〜30Eおよび30H〜30Mのスクリーン場面の色は、日中または点灯した場合もより見易い様に選ばれる。ある実施態様では、画面は青色の異なった影が付けられ、静止画像および動画、および内部の文字は白、外部の文字および境界線は黒である。しかしながら、図30Fおよび30Gに示す様に、治療の活動段階を示すスクリーン場面は夜間、または消灯してもより見易い様に選ばれる。ある実施態様では、図30A〜30Fのスクリーン場面はルビー色の文字、図表および描画等の付いた黒である。赤色の文字は眠っている患者には指示しないが、10〜25フィート(3〜7.6メーター)の距離でも見える様になっている。
【0308】
図30Fおよび30Gは、治療の活動段階中に治療状況の情報がグラフ622および数値データ624双方の形式でスクリーン場面上に表示されることを示す。 治療状況の情報はリアルタイム、または若干の時間遅れで実質的にリアルタイムで表示される。図30Fは治療の充満部分中のスクリーン場面を示す。特に、図30Fは全充満家庭の最初の充満段階を示す。グラフ上の時計622は、充満サイクル時間が約1/8時間経過したことを示している。グラフの矢印622は、治療が充満サイクルにあることを示す。また、体622のグラフ表示は透析物の割合が非常に少ないことを示す。数字データ624はシステム10、100が150mlの透析物を患者にポンプ送りしたことを示す。
【0309】
図3Gは、患者が3回のドレインサイクルの最初のドレインサイクルを現在実行中であることを示す。時計のグラフ表示は、ドレインサイクルが約1/8時間経過したことを示す。矢印のグラフ表示は下を指し、ドレインサイクルを示す。体は実質的に透析物で満たされていることを示す。数値データ624は50mlの透析物が患者から除かれたことを示す。
【0310】
図30Hおよび30Iは、朝に治療が終了し、画面が日中の色または照明された部屋でより観易い色に戻ったことを示す。図30Hには、患者にシステム10、100への連結を外すことを促す情報および指示が含まれる。システムは先へ進む前に患者がOKボタン125(図3B)を選部ことを待っている。図30Iには動画618が含まれ、患者がシステムから外れる動作とデバイスを示す。外す手順における各動作では、システム600は患者がOKボタン125(図3B)を選ぶのを待ってから先へ進む。
【0311】
図30J〜30Mは、ある実施態様で図3Bに示される専用入力43を選んで、ユーザーが治療、パラメーター変更および記録情報間を誘導することを示す。図30Jは、患者がパラメーター変更情報に関連する入力43を選んだことを示す。図30Jの画面40が“治療”の用語に変わって“変更”の用語を明るくすることを示す。
【0312】
パラメーター画面はパラメーター情報を患者に階層フォーマットで示す。まず、図30Jにある様に、システム600は患者の好み、日常の患者データ、治療パラメーター、看護パラメーターおよびサービスパラメーター等のパラメーターの分類を示す。患者は図3Bの調節ノブ122を使用して様々な分類625をスクロールし、所望の分類を明るくした表示領域626に表示することができる。図30Hは、患者の好みの分類625が明るくした表示領域626に現在表示されていることを示す。
【0313】
ユーザーがOKボタン125(図3B)を押して一度明るくした分類625を選ぶと、第1のドア628がスライドして開き、図30Kの画面40で示す様にユーザーに選択した分類625(例えば患者嗜好分類)のパラメーター627リストを示す。図30Kは、患者嗜好分類625がドア628の上に表示され、患者がパラメーター627のどの分類が表示されているかを知ることができる。同時に、明るくなった表示領域626が患者嗜好分類625に属するパラメーター627の選択群の一つを表示している。
【0314】
患者嗜好分類625に属する、図30Kに示されるパラメーター627には表示輝度の割合、スピーカーボリュームの割合および摂氏で表した透析物の温度が含まれる。明らかに、患者嗜好分類625には他のパラメーターも含まれ得る。図30Jに示されたその他の分類625には図30Kに示されるものとは異なったパラメーター627も含まれる。
【0315】
患者はノブ122を回してスクロールして患者嗜好分類625につきパラメーターの一つを選択する。この様にして信号ノブを繰り返し使用することを理解する必要がある。この方法は単純なシステムを提供する目的に従っており、複数のノブのどのノブが特定の方法に当てはまるかを覚えている代わりに患者は1個のノブを回すだけで良い。ドア628が最初に開いた時に憑依されない文字をさらに選択する場合、患者はノブをスクロールすれば良いので、ノブ122により文字を大きくすることができる。すなわち、ノブの機能はGUI600に全ての可能なパラメーターを同時に表示しなくても良いという自由度を与える。各分類625を同時に表示する必要がないので、この利点は、図30Jの分類選択画面にも当てはまることを理解する必要がある。
【0316】
患者が一度患者嗜好分類のパラメーターの一つを例えばOKボタン125を押して選択すると、第2のドアがスライドして開き、ディスプレイデバイス40は患者が患者嗜好分類625の明るい表示のパラメーター627を選んだことを示すが、この分類は図30L中の第1ドア628でまだ表示されている。明るい領域626は今度は分類の選択されたパラメーター627に対する可能な値632の範囲の一つを表示する。
【0317】
図30Lのディスプレイデバイス40では、明るい表示領域626が患者嗜好分類の表示輝度パラメーター627に対し現在80の値632を示していることを図示している。再度言えば、患者が選択されたパラメーター627の値632をノブ122を回して変更する。患者が選択された分類のパラメーターに対してある値632を(所望の値が表示されてる間に図3Bで示されるOKボタン125を押すことにより)選ぶ場合、GUIシステム600は図30Mにディスプレイデバイス40で示される様にその値を記憶する。図30Mは、システム600がフィードバックメッセージを、選択された値が記憶されている患者に提供することを示している。
【0318】
ある実施態様のシステム600は、操作者に上記で議論した様々な視覚機器により操作者に情報と指令を示す。別個の実施態様では、視覚情報および指示612に加えて、静止映像616、動画618、パラメーター情報等、少なくとも1個または全ての上記の通信方法が、システム10、100のコントローラー30と共同してスピーカー129(図3B)または音声カード(図示せず)により音声で患者または操作者に示される。
【0319】
主マイクロプロセッサー上で作動する様々なプログラムには、治療中のある時期に、またはシステム600で始まる警報等のある種の事象、または患者または操作者による入力で音声ファイルを作動させる少なくとも一つのプログラムが含まれる。音声ファイルには人の声の音声やその他任意の型の音声が含まれる。ある実施態様では、音声ファイルは患者をセットアップ部分へ導く。音声ファイルはGUI600等に不適切な入力を行った患者に警告することができる。好ましい実施態様ではシステムは例えば患者が眠っている時間等のサイクル中は音声を作動しない。
【0320】
操作者が記録情報(図示せず)に対応する専用入力43を選んだ場合、GUI600は治療データを示す単数または複数のスクリーンを表示し、治療データはいくつかの操作者が選択できる記録で表示される。記録の一つは最初に表示されるデフォルト記録であり、ノブ122により操作者が別個の記録に切り替えることができる。記録は最新の治療に関係する、および/または数日間の数回の治療にわたりデーターを記憶できる。記録はサイクル時間、サイクル数、配送流体体積、流体温度情報、流体圧力情報、透析物せいぶんの濃度、および任意の警告型の事象等、任意の型の操作パラメーター情報を記憶することができる。
【0321】
本明細書に記載された現在好ましい実施態様に対する様々な変化と変更は、当業者に自明であることを理解する必要がある。本発明の主旨と範囲から逸脱せず、その意図する利点を減少させずにこの様な変化と変更を行うことができる。従って、本発明はこの様な変化と変更も、添付の特許請求の範囲で網羅し得ることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図30−3】
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【図30−4】
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【図30−5】
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【図30−6】
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【公開番号】特開2012−11260(P2012−11260A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231549(P2011−231549)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【分割の表示】特願2009−165169(P2009−165169)の分割
【原出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】