説明

自動取引装置及び診断方法

【課題】偶発的にデバイスに発生した異常については、自動取引装置において対処をし、上位装置に通知する必要のない異常については通知を行わず、自動復旧することを可能とする自動取引装置を提供する。
【解決手段】1以上の周辺デバイス20が接続されているATM1において、ATM1を起動する旨の指示に応じて、周辺デバイス20の起動状態を診断する起動診断プログラムを読み出して起動させる。起動診断プログラムを実行した結果得られる周辺デバイス20の起動状態が異常であるか否かを示す情報を設定し、メモリ12に記憶する。メモリ12に記憶した情報を参照して、起動診断プログラムにより異常と診断されたデバイスが含まれる場合には、ATM1を再起動し、全ての周辺デバイス20が正常と診断された場合には、取引を制御する取引制御プログラムを起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣を取り扱う自動取引装置に関し、周辺デバイスと接続される自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automated Teller Machine)等の自動取引装置は、一般的には、紙幣処理ユニットや硬貨処理ユニットをはじめとして、通帳処理ユニットやカード/レシート処理ユニット、タッチパネル、カメラ及びテンキー等の周辺デバイスが複数接続されている。これらの周辺デバイスが、自動取引装置の主制御部等の上位コンポーネントからの制御を受けて動作することにより、各デバイスの機能が実現される。
【0003】
周辺デバイスを制御する際の基本機能としては、生死監視機能が知られている。生死監視機能によれば、周辺デバイスが正常に動作しているか否かを通信エラーやコマンドレスポンス等から判断する。デバイスドライバは、主制御部等の上位コンポーネントと周辺デバイスとの間を中継するインタフェースとして機能し、周辺デバイスの異常と判断すると、通信の再接続やコマンドリトライ等により、一時的なデバイスの異常から復帰させる。
【0004】
生死監視機能によって自動取引装置に接続されている周辺デバイスの状態を検出する方法によれば、周辺デバイスの異常レベルによっては、異常から復旧させることができないことがある。例えば、USB(Universal Serial Bus)デバイスにおいて異常が発生した場合、上述のソフトウェア的なリセット方法では効果がなく、ハードウェア的なリセットを要することがある。ここで、ソフトウェア的なリセットとは、自動取引装置のメモリ等に記憶されているプログラムを実行することによるリセットをいい、ハードウェア的なリセットとは、周辺デバイスへの供給電圧操作等によるリセットをいう。
【0005】
更には、ハードウェア的なリセットでも復旧に効果がなく自動取引装置全体の電源のオフ/オンが必要な場合もある。このようなケースは、装置の起動時に多く見られる傾向にある。
【0006】
自動取引装置を含む取引システムにおいては、自動取引装置に異常が検出された場合には、システムの状態を監視する監視装置等にその旨が通知されるのが一般的である。この場合、周辺デバイスが異常なままに自動取引装置を起動すると、自動取引装置の状態が異常であるとして、その旨が監視装置に通知されることとなる。また、装置を利用可能な状態とする為に、直接または監視ネットワークを介して係員等による復旧操作が必要となる。
【0007】
自動取引装置において周辺デバイスの異常を検知した場合の公知の制御方法としては、例えば、自動取引装置の電源が投入された場合やイニシャライズが行われた場合には、周辺デバイスが正常に動作しているか否かを検出する。周辺デバイスの異常を検出した場合には、リトライを行う技術が提供されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−290200号公報
【特許文献2】特開平03−009494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
システム運用上は、検出された周辺デバイスの異常のうち、自動取引装置において対処が可能か否かを切り分けて、上位装置に通知する必要のない異常については、通知を行わずに自動復旧することが望ましい。
【0010】
本発明は、偶発的にデバイスに発生した異常については、自動取引装置において対処をし、上位装置に通知する必要のない異常については通知を行わずに自動復旧することを可能とする自動取引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示の発明によれば、1以上のデバイスが接続されている自動取引装置であって、取引を行う自動取引装置を起動する旨の指示に応じて、前記デバイスの起動状態を診断する起動診断プログラムを読み出して起動させる診断プログラム起動部と、前記起動診断プログラムを実行した結果得られる前記デバイスの起動状態が異常であるか否かを示す情報を設定し、記憶手段に記憶する設定部と、前記記憶手段に記憶した情報を参照して、前記起動診断プログラムにより異常と診断されたデバイスが含まれる場合には、前記自動取引装置を再起動し、全てのデバイスが正常と診断された場合には、取引を制御する取引制御プログラムを起動する判断部とを備える構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、偶発的に発生したデバイスの異常については、自動取引装置において対処をすることができ、これにより、上位装置に通知する必要のない異常については通知を行わずに自動復旧することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るATMの外観図である。
【図2】実施形態に係るATMの構成図である。
【図3】実施形態に係る周辺デバイスの起動診断プログラムの構成図である。
【図4】実施形態に係るATMの起動処理手順を説明する図である。
【図5】実施形態に係るATMによる周辺デバイスの診断方法を示したフローチャートである。
【図6】プロセス監視処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、貨幣を取り扱う自動取引装置の一例として、ATMを例に説明する。
図1は、本実施形態に係るATMの外観図である。図1に示すように、ATM1の表側には、紙幣出入口31、硬貨出入口32、通帳出入口33、カード出入口34、表示部36等を有する。図1に符号を付して示す紙幣出入口31等の各部は、ATM1と接続されている各種周辺デバイスのインタフェースを構成している。
【0015】
図2は、本実施形態に係るATM1の構成図である。図2及び以下の説明においては、本実施形態に係るATM1による周辺デバイス20の診断方法に係わる構成のみを記載している。
【0016】
図2に示すATM1は、ATM制御部10と周辺デバイス20とを有し、ATM1を監視する監視装置やホストコンピュータ等の上位装置2とネットワークを介して接続されている。
【0017】
ATM1の制御を行うATM制御部10は、ATM10の制御を行い、主制御部11、メモリ12、ハードディスク13、ホスト通信制御部14、画面表示部15及び入出力制御部(図2においてはIO制御部)16を有する。
【0018】
メモリ12は、ATM制御部10において実行する各種処理に用いられるプログラムやデータを格納する。主制御部11は、メモリ12を利用してプログラムを実行することにより、金融取引等の制御を行う。また、主制御部11は、本実施形態に係る周辺デバイス20の起動診断プログラムを起動して、周辺デバイス20の起動状態の診断を行う。
【0019】
ハードディスク13は、本実施形態に係る周辺デバイス20の診断方法に係わるプログラムや必要なデータを格納する。主制御部11は、必要に応じてハードディスク13からプログラムや必要なデータをメモリ12にロードして使用する。
【0020】
ホスト通信制御部14は、上位装置2であるホストコンピュータや監視装置等との通信を制御し、ATM1の異常等の通知に利用される。
画面表示部15は、図1のATM1の表示部36に各種画面を表示させる。
【0021】
入出力制御部16は、主制御部11からの指示にしたがって、接続されている1以上の周辺デバイス20の制御を行う。例えば、主制御部11から周辺デバイス20の診断を行う旨の指示を受けた場合には、入出力制御部16は、周辺デバイス20の起動状態をチェックするためのプログラムにしたがって、周辺デバイス20に所定の動作を実行させ、その結果を主制御部11に返す等の処理を行う。
【0022】
入出力制御部16により制御される周辺デバイス20には、紙幣処理ユニット21、硬貨処理ユニット22、通帳処理ユニット23、カード/レシート処理ユニット24、カメラデバイス25、タッチパネル26、テンキー入力部27及び生体認証ユニット28等を含む。なお、図2においては、周辺デバイス20の一例を示しており、本実施形態に係るATM1が起動診断の対象とする周辺デバイス20は、これに限定されるものではない。
【0023】
紙幣処理ユニット21は、ATM1内に紙幣を収納し、紙幣処理ユニット21に収納されている紙幣は、図1の紙幣出入口31を介して出し入れされる。硬貨処理ユニット22は、ATM1内に硬貨を収納し、硬貨処理ユニット22に収納されている硬貨は、図1の硬貨出入口32を介して出し入れされる。
【0024】
通帳処理ユニット23は、図1の通帳出入口33を介して出し入れされる通帳に印字を行う。カード/レシート処理ユニット24は、図1のカード出入口34を介して出し入れされるキャッシュカード等から、利用者の認証に必要な情報の読み取りを行う。また、カード/レシート処理ユニット24は、カード出入口34から放出される取引内容等を記載したレシートの印字を行う。
【0025】
カメラデバイス25は、利用者の画像等を取得する。タッチパネル26は、図1の表示部36の画面を覆うように配置され、利用者からの入力した情報を受け付ける。テンキー入力部27は、暗証番号や金額等の利用者が入力した数を受け付ける。生体認証ユニット28は、指紋や静脈、手のひら等による利用者の認証を行う。
【0026】
本実施形態に係るATM1は、ハードディスク13に格納する起動診断プログラムを利用して、ATM1の起動時に、周辺デバイス20が正常に起動しているか否かの診断を行う。異常な周辺デバイス20が含まれる場合には、ATM1を再起動することで、偶発的に発生した周辺デバイス20の異常を解消する。
【0027】
図3は、本実施形態に係る周辺デバイス20の起動診断プログラムの構成図である。実施例では、起動診断プログラムを、起動診断メインプログラム60と周辺デバイス20ごとのチェックプログラム61〜64とに分離している。
【0028】
図2の主制御部11は、ATM1のOS(Operating System)起動後であって、金融取引を制御する主システムの起動前に、起動診断メインプログラム60を実行する。
起動診断メインプログラム60は、外部ファイルに保存されているプログラムリスト52を読み込み、各チェックプログラム61〜64のパスを取得する。取得したパスを指定して、各チェックプログラム61〜64を読み出して実行する。図3においては、図1や図2に示すATM1の構成に対応させて、チェックプログラムの一部であるチェックプログラム61〜64のみを示す。
【0029】
チェックプログラム61〜64の実行結果等の情報は、動作状況格納部51に格納する。動作状況格納部51は、図2メモリ12等の記憶手段に設けられ、ATM1の主システムの起動が完了するまで、本実施形態に係る起動診断に係わる情報を保持する。動作状況格納部51に格納される情報は、周辺デバイス20が正常に起動しているか否かを示す情報のほか、周辺デバイス20の異常によりATM1を再起動した回数等の情報を含む。
【0030】
なお、各チェックプログラムにおける周辺デバイス20の正常/異常の判定方法については、例えば通信リンク確立の確認や、実際にメカユニットの操作を実行する等、周辺デバイス20ごとに異なり、例えば、公知の周辺デバイス20の異常を検出する方法を実行するためのチェックプログラムを作成する。
【0031】
図3に示すように、実施例においては、周辺デバイス20ごとのチェックプログラム61〜64を起動診断メインプログラム60と分離することにより、周辺デバイス20の増減に対する柔軟な対応を可能としている。すなわち、ATM1に接続する周辺デバイス20を追加または削除した場合であっても、プログラムリスト52に、追加または削除した周辺デバイス20のチェックプログラムへのパスを追加または削除をし、追加または削除した周辺デバイス20についてのチェックプログラムを追加または削除することで足りる。このように、プログラムリスト52とチェックプログラムの更新のみで対応ができ、起動診断メインプログラム60の更新は不要とすることで、ATM1に搭載する周辺デバイス20をカスタマイズするときの利便性が向上する。
【0032】
図4〜図6を参照して、本実施形態に係るATM1が周辺デバイス20を診断する方法を具体的に説明する。
図4(a)は、従来のATMの起動処理手順を示し、図4(b)は、本実施形態に係る周辺デバイス20の診断方法を適用した場合のATM1の起動処理を示したフローチャートである。
【0033】
図4(a)に示すとおり、従来においては、ATM1の電源が投入されると、BIOS(Basic Input/Output System)、OSの起動に続いて、主システムの起動プログラムを実行して、主システムを起動する。ある周辺デバイス20について起動時に偶発的に異常が生じた場合であっても、周辺デバイス20の異常は、主システムの起動後に検出されることとなる。従来は、周辺デバイス20をソフトウェア的あるいはハードウェア的にリセットする。これらのリセットによっても異常が解消されない場合は、ATM1は、監視装置等に通知を行う。
【0034】
これに対し、本実施形態においては、図4(b)に示すとおり、まず、ステップS1でATM1の電源が投入されると、ステップS2でBIOSを起動し、ステップS3でOSを起動する。OSの起動後、ステップS4で、起動診断プログラムを実行し、プログラムが終了すると、診断結果をメモリ12等の記憶手段に記憶して、ステップS5に進む。
【0035】
ステップS5で、起動診断結果を参照して、再起動するか否かの判断を行う。ATM1に備えられている周辺デバイス20の中に、診断の結果が「異常」であるデバイスが含まれる場合には、ステップS6に進み、ATM1の再起動を実行する。再起動の実行後は、上記のステップS2以降の処理を繰り返す。
【0036】
ステップS5の判定において、全ての周辺デバイス20についての診断結果が「正常」である場合には、ステップS7に進み、主システムの起動プログラムを実行する。ステップS8で、主システムの起動が完了すると、処理を終了する。
【0037】
このように、周辺デバイス20の起動診断結果に基づき、主システムの起動プログラムを実行する前にATM1を再起動し、周辺デバイス20についても起動し直すことで、周辺デバイス20の起動時に発生する偶発的な異常については、主システムの起動前に解消することができる。
【0038】
図5は、本実施形態に係るATM1による周辺デバイス20の診断方法を示したフローチャートであり、図3の起動診断メインプログラム60により実行される。ATM1の主制御部11は、図4のステップS4の起動診断プログラム実行の指示を受けて、図5に示す処理を開始する。
【0039】
ステップS11で、プログラムリスト52を読み込み、ステップS12で、プログラムリスト52から取得したパスを利用して、チェックプログラム61〜64をそれぞれ起動し、ステップS13に進む。ステップS13で、プロセス監視を行い、全てのチェックプログラム61〜64について処理が終了すると、ステップS14に進む。起動診断メインプログラム60は、各チェックプログラム61〜64をパラレルに起動し、それぞれのプロセス監視を開始する。プロセス監視の具体的な方法については、図6を参照して説明する。
【0040】
ステップS14で、異常デバイスフラグがオンであるか否かを判定する。異常デバイスフラグは、周辺デバイス20の起動状態が異常であるか否かを示し、例えば、正常である場合には、値「0」を格納してフラグをオフとし、異常が検出された場合には、値「1」を格納してフラグをオンに設定する。異常デバイスフラグは、チェックプログラムにより起動状態を判断する周辺デバイス20ごとに設定する。
【0041】
ステップS14の判定において、異常デバイスフラグに「オン」と設定されている周辺デバイス20が存在する場合には、すなわち、例えば異常であることを示す「1」が設定されている異常デバイスフラグが存在する場合には、ステップS15に進む。そして、再起動回数が所定のしきい値以上であるか否かを更に判定する。異常デバイスフラグに「オン」と設定されている周辺デバイス20が存在しない場合には、ステップS17に進む。
【0042】
ステップS15の判定において使用する再起動回数とは、起動診断プログラムを実行した結果、周辺デバイス20の異常が検出されて、ATM1を再起動した回数である。再起動回数は、図3の動作状況格納部51に保持されている。
【0043】
ステップS15の判定において、再起動回数が所定のしきい値未満である場合は、ステップS16に進み、再起動回数を1加算し、図5に示す処理を終了する。この場合は、ATM1の再起動を行う。再起動回数が所定のしきい値以上である場合は、ステップS17に進み、保持している再起動回数を初期化し、図5に示す処理を終了する。この場合は、ATM1の再起動は行わず、主システムの起動処理を実行する。
【0044】
再起動回数についてのしきい値を設定することで、ATM1の再起動によっても解消することのできない周辺デバイス20のエラーが生じている場合に、無限にATM1の再起動が繰り返されることを防ぐ。
【0045】
図6は、図5のステップS13の処理の詳細を示すフローチャートであり、図3のチェックプログラム61〜64をそれぞれ実行する場合のプロセス監視シーケンスを示す。
プロセス監視を開始すると、まず、ステップS21で、チェックプログラムを計数するために用いる変数iを初期化して「0」を設定すると、ステップS22で、実行すべきチェックプログラムの数Nと変数iとを比較して、各プロセスの監視を一巡したか否かを判定する。各プロセスの監視を一巡していると判定した場合は、ステップS31に進む。ステップS31の処理については後述する。全てのプロセスの監視を一巡し終えていないと判定した場合は、ステップS23に進む。
【0046】
ステップS23で、チェック終了フラグがオンであるか否かを判定する。チェック終了フラグは、チェックプログラムの実行が終了したか否かを示す。チェック終了フラグには、例えば、チェックプログラムの実行が終了していない場合には、値「0」を格納してフラグをオフとしておき、チェックプログラムの実行が終了すると、値「1」を格納してフラグをオンとする。ステップS23の判定においては、チェック終了フラグがオンである場合には、特に処理を行わずにステップS30に進み、チェック終了フラグがオフである場合には、ステップS24に進む。
【0047】
ステップS24で、i番目のチェックプログラムを実行した結果得られる終了コードを入出力制御部16から取得すると、ステップS25に進む。終了コードは、各周辺デバイス20のチェックプログラムを実行した入出力制御部16が返す値であり、周辺デバイス20の起動状態が正常と判断されたか、あるいは異常と判断されたかを示す情報が格納される。
【0048】
ステップS25で、終了コードに「正常」を示す値が格納されているか否かを判定する。終了コードが「正常」である場合は、ステップS28に進む。ステップS28については後述する。一方、終了コードに「正常」以外の値が設定されている場合には、ステップS26に進み、終了コードに「異常」を示す値が格納されているか否かを更に判定する。終了コードが「異常」である場合は、ステップS27に進み、上述の異常デバイスフラグをオンに設定し、ステップS28に進む。ステップS26において、終了コードに「異常」以外の値が設定されている場合は、特に処理を行わず、ステップS30に進む。ステップS30については後述する。
【0049】
ステップS28で、チェック終了フラグをオンに設定する。ここで、チェックプログラムを実行した結果、終了コードが「正常」であった場合には、異常デバイスフラグにはオフが設定されており、終了コードが「異常」であった場合には、異常デバイスフラグにはオンが設定されている。例えば、図3の紙幣処理ユニットチェックプログラム61により、紙幣ユニット21の通信を正常に実行できた場合は、紙幣処理ユニット21の起動は正常と判断する。この場合は、紙幣処理ユニットチェックプログラム61は、終了コード「正常」を返し、起動診断メインプログラム60は、このプロセスについてはチェック終了フラグをオンにする。
【0050】
ステップS29で、終了プログラム数をカウントアップし、ステップS30で、変数iを1加算して、ステップS22に戻る。上述の紙幣処理ユニットチェックプログラム61の例のように、チェック終了フラグの設定されているプロセスについては、ステップS23からステップS30へと進み、ステップS24以降の処理はスキップすることとなる。
【0051】
チェックリスト52の全てのチェックプログラムについて実行が完了すると、ステップS22からステップS31に進み、全てのチェックプログラムについて終了コードを取得したか否かを判定する。まだ終了コードを取得していないチェックプログラムがある場合には、ステップS21に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0052】
上記のとおり、図6に示すプロセス監視を開始すると、所定の時間間隔で各プロセスの終了コード発行を順次取得する。チェックプログラムは、それぞれの周辺デバイス20の正常/異常を判定して終了コードを取得するよう設計されている。起動診断メインプログラム60は、図5のプロセス監視において設定した異常デバイスフラグを参照して、周辺デバイス20の起動診断を行う。図4を参照して説明したように、異常の検出された周辺デバイス20が含まれる場合は、ATM1の再起動を行う。
【0053】
図2に示す周辺デバイス20のうち、カメラデバイス25が起動時に偶発的にハード異常を起こした場合を例にとる。この場合、カメラデバイス25のチェックプログラム(図3においては不図示)の終了コードには「異常」が設定され、起動診断メインプログラム60は、終了コードに基づき、図6のステップS26からステップS27に進み、異常デバイスフラグにオンを設定する。異常デバイスフラグにオンが設定されている場合には、メモリ12等に保持している再起動回数を参照する。再起動回数がしきい値以上となっていないことを条件に、図4(b)のステップS5からステップS6の再起動処理を実行し、再起動回数がしきい値異常となっている場合には、上記のとおり、そのまま主システムの起動を行う。
【0054】
周辺デバイス20の起動に異常が認められた場合のATM1の一連の動作については、動作ログとして保存し、障害解析に利用することとしてもよい。
異常デバイスフラグの全てがオフである場合には、全ての周辺デバイス20が正常に起動していると判断し、図4(b)のステップS5からステップS7へと進み、主システムを起動する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るATM1によれば、電源を投入してATM1を立ち上げるときに、ATM1の主システムを起動する前に周辺デバイス20が正常に起動しているか否かを判定する。正常に起動していない周辺デバイス20が含まれる場合には、ATM1の再起動を行い、全ての周辺デバイス20が正常に起動していることを認識すると、取引を制御する主システムを起動する。このように、正常に起動していない周辺デバイス20がある場合にはATM1を再起動することにより、既存のシステムには影響を与えることなく、周辺デバイス20がその起動時に起こす偶発的な異常を解消することができる。偶発的な周辺デバイス20の異常をATM1の主システムの起動前に解消しておくことで、監視装置等の上位装置2には、ATM1を再起動することで解消可能な異常については通知がなされず、通知する必要のある異常のみが伝えられることとなる。
【0056】
なお、上記においては、ATM1の電源を投入したときの処理の流れを示しているが、これに限定されるものではなく、電源の投入以外の事由によりATM1を起動する場合も同様である。
【符号の説明】
【0057】
1 ATM
2 上位装置
10 ATM制御部
11 主制御部
12 メモリ
13 ハードディスク
14 ホスト通信制御部
15 画面表示部
16 入出力制御部(IO制御部)
21 紙幣処理ユニット
22 硬貨処理ユニット
23 通帳処理ユニット
24 カード/レシート処理ユニット
25 カメラデバイス
26 タッチパネル
27 テンキー入力部
28 生体認証ユニット
31 紙幣出入口
32 硬貨出入口
33 通帳出入口
34 カード出入口
36 表示部
51 動作状況格納部
52 プログラムリスト
60 起動診断メインプログラム
61〜64 チェックプログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のデバイスが接続されている自動取引装置であって、
取引を行う自動取引装置を起動する旨の指示に応じて、前記デバイスの起動状態を診断する起動診断プログラムを読み出して起動させる診断プログラム起動部と、
前記起動診断プログラムを実行した結果得られる前記デバイスの起動状態が異常であるか否かを示す情報を設定し、記憶手段に記憶する設定部と、
前記記憶手段に記憶した情報を参照して、前記起動診断プログラムにより異常と診断されたデバイスが含まれる場合には、前記自動取引装置を再起動し、全てのデバイスが正常と診断された場合には、取引を制御する取引制御プログラムを起動する判断部と
を備えることを特徴とする自動取引装置。
【請求項2】
前記判断部は、前記起動診断プログラムにより異常と診断されたデバイスが含まれる場合には、前記自動取引装置を再起動した回数を更新して他の記憶手段に記憶し、
前記他の記憶手段を参照して、前記再起動の回数が所定のしきい値以上となっている場合には、前記自動取引装置の再起動を行わずに前記取引制御プログラムの起動を行う
ことを特徴とする請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記1以上のデバイスを制御する入出力制御部と、
を更に備え、
前記入出力制御部は、前記起動診断プログラムにしたがって、該デバイスに所定の動作を実行させ、
前記設定部は、前記入出力制御部が返す値から、前記デバイスの起動状態が異常であるか否かを示す情報を設定する
ことを特徴とする請求項2記載の自動取引装置。
【請求項4】
取引を行う自動取引装置に接続されている1以上のデバイスの起動診断を行う方法であって、
前記自動取引装置を起動する旨の指示に応じて、前記デバイスの起動状態を診断する起動診断プログラムを読み出して起動させ、
前記起動診断プログラムを実行した結果得られる前記デバイスの起動状態が異常であるか否かを示す情報を設定し、記憶手段に記憶し、
前記記憶手段に記憶した情報を参照して、前記起動診断プログラムにより異常と診断されたデバイスが含まれる場合には、前記自動取引装置を再起動し、全てのデバイスが正常と診断された場合には、取引を制御する取引制御プログラムを起動する
ことを特徴とする診断方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−94039(P2012−94039A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242125(P2010−242125)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】