説明

自動取引装置

【課題】カードを用いて取引を行う取引装置において、取り忘れカードの返却を可能とする。
【解決手段】カードを用いて取引を行う自動取引装置において、事後の取引におけるカードの搬送を妨げない位置に設けられた退避部に取り忘れカードを退避する。取り忘れカードが存在する場合には、返却メニューを提示する。取り忘れカードの所有者が、その返却メニューに応じて暗証番号の入力などの操作を行うことにより、所有者と操作者の照合を行って、取り忘れカードを返却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードを用いて取引を行う自動取引装置に関し、詳しくは取引時にカードの取り忘れがあった場合における処理に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関等では、顧客の所有するキャッシュカード等を用いて取引を行う自動取引装置(以下、ATMという)が使用されている。ATMでは、複数枚のカードが使用される場合がある。例えば、振り込みを行う場合には、顧客の口座に対応したキャッシュカードと、振り込み先の情報を記録した振り込みカードの2枚が使用される。2枚のカードを使用可能なATMでは、カード情報の読み取り機構を2枚で兼用するため、装置内で一時的にカードを退避しておく退避部が設けられている。
【0003】
ATMでは、取引完了時に顧客がカードを取り忘れることがあった。従来、取り忘れカードは、ATM内に再度引き込まれ、リジェクトボックスなどに保管されていた。リジェクトボックスに保管されたカードは、係員によって回収され、後日、金融機関の窓口で顧客に返却されていた。
【0004】
複数枚のカードを使用するATMでは、特に後で排出されるカードの取り忘れが多いことから、これを回避するための技術が提案されている(例えば、特開平8−44830記載の技術)。この技術は、カードの退避部を活用して、カードの排出順序を制御することで、カードの取り忘れを抑制する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開平8−44830記載のATMでは、カードを挿入、排出方向と交差する横方向にカードを搬送する横搬送部を用いることにより、カードの排出順序を制御していた。従って、装置の横幅増大を招いていた。また、交差方向の搬送を伴うため、カードの退避、排出に時間を要するという課題もあった。さらに、このATMでは、取り忘れカードを顧客に返却することができなかった。例えば、カードを取り忘れた直後に顧客がそのことに気付いた場合でも、ATMの操作によってカードの返却を受けることはできず、不便を強いられていた。これらの課題は、金融機関に設置されたATMに限らず、カードを用いて取引を行う取引装置に共通の課題であった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであり、カードを用いて取引を行う取引装置において、装置の小型化を図りつつカードの退避を実現すること、および取り忘れカードの返却を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では、カードを用いて取引を行う自動取引装置において、取引時の読み取り対象となっていないカードを退避するための退避部を設けた。例えば、複数のカードを併用した取引で、先行して挿入されたカード、取引後に利用者が取り忘れたカードなどが退避対象となる。本発明の退避部は、カードを挿入、排出方向に搬送する搬送路上に設けられ、カードの記録内容を読み取る読取部よりも装置奥側、即ち搬送路上でカードを挿入するための挿入口と反対側(以下、下流側と呼ぶ)に設けられている。また、退避部は、搬送路の延長上、上側、下側の少なくとも一部で、取引において併用されるカード枚数と同数以上の箇所に並列的に設けられる。退避部には、カードの搬送先を切り換えるための切換部が設けられる。
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、カードの退避を実現することができる。搬送方向と交差する方向に移動する搬送ステージが不要であるため、装置の小型化を図ることができる。また、退避部を並列的に設けることにより、必要数の退避部を確保するための設計上の負担が比較的少なくなる利点もある。
【0009】
本発明の自動取引装置において、搬送路の延長上には、新規なカードを発行するための新規カード発行部を設け、退避部はこれを避けるように設ける構成も好ましい。こうすることにより、退避部にカードが退避されている状況下でも阻害されることなく、新規カードを発行することができる。
【0010】
本発明において、退避部には、取り忘れられたカードを退避することができる。取り忘れカードが存在する場合には、返却メニューを提示し、その返却メニューに応じた操作に基づいて取り忘れカードを返却するものとしてもよい。
【0011】
こうすることにより、顧客の操作によって取り忘れカードを返却することができるため、自動取引装置の利便性を向上することができる。取り忘れカードの退避部は、事後の取引におけるカードの搬送を妨げない位置に設けられているため、取り忘れカードが存在する場合でも、自動取引装置自体は、継続的に稼働させることができ、装置の稼働率を向上させることができる。
【0012】
退避部の一部には、例えば、リジェクトボックスを利用してもよい。リジェクトボックスを用いることにより、多数の取り忘れカードに対応できる利点がある。但し、この場合には、リジェクトボックスからカードを再度搬出する機構を備えておくことが望ましい。
【0013】
本発明の自動取引装置は、単一のカードを用いた取引にのみ対応可能に構成してもよいし、複数のカードを用いた取引に対応可能に構成してもよい。後者の場合には、退避部は、複数枚のカードを併用した取引において、カードを一時的に退避させる用途と、取り忘れカードを退避させる用途とを、兼用することが構成上、好ましい。このように兼用した場合、退避部に前記取り忘れカードが存在すると、一時退避不能となるため、取り忘れカードの有無によって取引時のカードの取り扱い方法を切り換えることが好ましい。例えば、取り忘れカードが存在する場合には、取引で使用可能なカードの枚数を減らしてもよい。こうすることにより取引内容は、制限されるものの、装置の稼働率は向上させることができる。また、取引時に退避部を利用してカードの排出順序の入れ替え等を行っている場合には、この入れ替えを停止してもよい。こうすることにより、見かけ上、支障なく取引を継続することができる。
【0014】
本発明においては、取り忘れカードを所有者以外に返却することを回避するため、所有者と返却メニューの操作者の照合を行った上で返却を行うことが好ましい。
【0015】
照合は、例えば、取り忘れカードに対応した所定の識別情報と、操作者による入力情報とに基づいて行うことができる。例えば、金融機関で使用される取引カードの場合、識別情報としてはカードに対応した口座番号を用いることができ、入力情報としては口座に対応した暗証番号を用いることができる。照合は、自動取引装置自体が行うものとしてもよいし、識別情報と入力情報とを通信でホストコンピュータに送信することにより、ホストコンピュータ側で行うものとしてもよい。
【0016】
いわゆる振り込みカードのようにカード自体に識別情報が記録されていない場合の照合は、例えば、次の方法により実現してもよい。複数枚のカードを用いて取引を遂行する際に、取引において使用されたいずれかのカードに記録された識別情報を記憶しておき、これを取り忘れカードに対応した識別情報として用いて照合を行うことができる。例えば、振り込みカードが取り忘れされた場合に、それと併用されたキャッシュカードの口座番号を、振り込みカードの識別情報として照合する態様が相当する。
【0017】
なお、取り忘れカードを返却するための種々の構成は、退避部自体の構成に関わらず適用可能である。例えば、従来技術で提示されたように搬送方向と交差する方向にカードの搬送ステージを有する取引装置、退避部が読み取り部よりも上流側に設けられている取引装置、退避部が1カ所にのみ設けられている取引装置などにも適用可能である。
【0018】
本発明は、上述した自動取引装置に限らず種々の態様で構成することが可能である。例えば、自動取引装置の制御方法として構成してもよい。コンピュータによりこの制御を実現するためのコンピュータプログラムおよびこれを記録した記憶媒体として構成してもよい。ここで、記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、以下の項目に分けて説明する。
A.装置構成:
B.カード取扱機構:
C.取引制御処理:
C1.振込処理A.:
C2.振込処理B.:
C3.返却処理.:
D.変形例:
【0020】
A.システム構成:
図1は実施例としての自動取引装置の概略構成を示す説明図である。自動取引装置は、銀行などの金融機関に設置され、利用者の操作に応じて入出金処理を無人で行うための装置である。入出金処理としては、例えば、利用者の口座への預金、口座からの出金、振り込みなどが挙げられる。以下の実施例では、入出金処理を行う場合を例にとって、自動取引装置を説明するが、実施例としての自動取引装置は、公共機関での証明書発行など入出金以外の取引を行う装置として構成することも可能である。
【0021】
実施例の自動取引装置(以下、ATMという)100は、磁気ストライプ11を有する取引カード10を用いて取引を行う。磁気ストライプ11には、カード所有者の口座について口座番号、暗証番号などの口座指定情報が記録されている。振り込みを行う場合には、取引カード10の他、振込カード20が併用される。振込カード20には、振り込み先の口座番号、名義などが記録されており、カード所有者の口座指定情報は記録されていない。
【0022】
ATM100には、次のユニットが図示する配置で備えられている。カード取扱機構150は、取引カード10および振込カード20の挿入、排出を行うとともに、記録された情報を読みとる。通帳取扱機構106は、通帳に付された磁気ストライプから情報を読み取る機能、取引結果を記入する機能を奏する。
【0023】
操作部103は、入出金取引のための情報表示および入出金のための操作入力を行うためのインタフェースである。本実施例では、タッチパネルを用いるものとしたが、ディスプレイと押しボタンスイッチなどの組み合わせで構成してもよい。
【0024】
利用者との紙幣の授受は、紙幣入出金口107を通じて行われる。入金時には、利用者が紙幣入出金口107に入れた紙幣は、内蔵された紙幣取扱装置110によって、鑑別され、金種ごとに分類されて保管される。出金時には、紙幣取扱装置110は、利用者の指示した金額分の紙幣を用意し、紙幣入出金口107から利用者に受け渡す。
【0025】
ATM100には、ここで例示した構成に限らず種々のユニットを設けることが可能である。例えば、上記ユニットに加えて明細書を取り扱うユニット、音声案内を行うユニットなどを設けても良い。
【0026】
以上で説明したATM100の各ユニットの動作は、制御ユニット120によって制御される。制御ユニット120は、内部にCPU、メモリを備えたマイクロコンピュータとして構成されている。制御ユニット120は、図中に矢印で示す通り、各ユニットと情報の授受を行い、ATM100全体の動作を制御する。ATM100は、金融機関のホストコンピュータ200と通信回線を介して接続されている。ホストコンピュータ200には、取引カード10を用いた取引の操作者の認証を行うために、口座番号と暗証番号とを対応づけて記録した顧客データベース202が用意されている。制御ユニット120は、適宜、ホストコンピュータ200と通信を行いつつ、顧客の認証および入出金に関する処理を実行する。
【0027】
図中に制御ユニット120において入出金処理に関連する機能ブロックを併せて示した。本実施例では、各機能ブロックは、制御ユニット120内にソフトウェア的に構成され、主制御部125によって制御される。各機能ブロックはハードウェア的に構成しても構わない。
【0028】
カード情報入力部123は、カード取扱機構150を制御して、取引カード10および振込カード20の情報を入力する。カード等から入力された情報は、主制御部125を介して入出金処理全体を制御する入出金処理部122に受け渡される。取り忘れ処理部124は、同じくカード取扱機構150を制御して、取引後に取引カード10または振込カード20の取り忘れがあった場合の処理を行う。なお、以下の説明では、取引カード10および振込カード20の種別を問わず、取引後に顧客が取り忘れたカードを「取り忘れカード」と総称する。
【0029】
指示入出力部121は操作部103を制御し、利用者が操作するためのメニューその他の画面表示、およびその操作結果の入力を行う。指示入出力部121は、取引時の指示入力のみならず、後述する取り忘れカードを返却するための画面表示および指示入力も行う。
【0030】
入出金処理部122は、カード情報入力部123、指示入出力部121からの情報を、適宜、通信部126を介してホストコンピュータ200に送信し、入出金処理を行う。また、現金の授受を伴う取引の場合には、入出金処理部122は、紙幣取扱装置110を制御して現金の授受を行う。
【0031】
本明細書における入出金処理は、必ずしも現金の授受を伴うとは限らない。例えば、利用者の口座から他の口座への振り込みなど、金額情報の移動も入出金処理に含まれる。
【0032】
B.カード取扱機構:
図2はカード取扱機構150の構成を示す説明図である。カード取扱機構150の側断面図に相当する。カード取扱機構150は、大きくは、カード読取装置160と、振り込みカード発行装置170から構成される。以下では、取引カード10を例にとって各部位の動作を説明するが、各部位の動作は、振込カード20に対しても同様である。
【0033】
取引カード10は、カード挿入口162から挿入および排出される。挿入口162には、取引カード10の有無を検知するための光学的な挿入センサ167が設けられている。挿入センサ167は、取引後にカードが取り忘れられて放置されていることを検出するためのセンサとしても機能する。
【0034】
挿入された取引カード10は、搬送路164上を装置内に搬送される。搬送は、ローラ163、174、177、179によって行われる。磁気読取部165は、搬送路164上に設けられており、取引カード10に磁気的に記録された情報の読み取りを行う。エンボス読取部166は、同じく搬送路164上に設けられ、取引カード10にエンボス加工で記録された情報の読み取りを行う。
【0035】
振込カード発行装置170は、搬送路164の最も奥に、新規の振込カードを蓄えておくストッカ180が設けられている。顧客が振込処理を行った際に、振込カードの作成を指示すると、ストッカ180から新規の振込カードが搬出される。新規のカードは、印字部173で振込先に関する情報などが印刷され、振込カードとして挿入口162から排出される。
【0036】
振込カード発行装置170には、カード読取装置160の側から搬送されてきたカードを退避しておくために2カ所の退避部176、178が設けられている。退避部176は、印字部173とストッカ180との間でカードの退避に必要な分だけ搬送路164の長さを確保することによって構成されている。退避部178は、搬送路164の上方に別途設けられている。挿入されたカードの搬送先は、電磁的に切り換え可能なゲート175によって退避部176、178に切り換えられる。退避部176、178は、後述する通り、2枚のカードを用いた取引中に一方のカードを退避するために使われる他、取り忘れカードを退避しておくためにも使われる。
【0037】
振込カード発行装置170には、回収部171が設けられており、使用不能と判断されたカードは、搬送路172を通じて回収部171に回収される。搬送路172および回収部171は省略しても差し支えない。
【0038】
C.取引制御処理:
図3は取引制御処理のフローチャートである。制御ユニット120が取引時に実行する処理である。本実施例では、取引後に取り忘れカードが存在する場合には、そのカードは退避部178に格納しておくものとして説明する。退避部176に格納しておくものとしても構わない。
【0039】
処理が開始されると、制御ユニット120は、取り忘れカードの有無を判断する(ステップS10)。この判断は、退避部178にカードが格納されているか否かに基づいて行われる。
【0040】
退避部178に取り忘れカードがない場合には、通常の取引メニューAを操作部103に提示する(ステップS12)。図中にメニュー例を示した。操作部103には、「お預け入れ」、「お引き出し」、「お振り込み」などのメニューが提示される。ここでは、3種類の取引のみを例示したが、メニュー数の多少は問わない。
【0041】
制御ユニット120は、これらのメニューからユーザが選択した内容に応じて処理を切り換える(ステップS14)。「お預け入れ」、「お引き出し」のように取引カード10のみで取引が完了する場合には、取引カード10を読み込むとともに、その情報および操作部103から入力された情報に基づいて入出金処理を実行する(ステップS120)。操作部103から入力される情報としては、暗証番号、入出金金額などが含まれる。制御ユニット120は、これらの情報を適宜、ホストコンピュータ200に送信して、ユーザの照合を行うとともに、紙幣取扱装置110を制御して現金の入出金を実行する。
【0042】
入出金処理が完了し、取引カード10を排出した後、取引カード10の取り忘れがある場合には、制御ユニット120は、取り忘れカードを、再度、装置内に引き込み、退避部178に格納する(ステップS121)。カードの取り忘れの有無は、例えば、取引完了後に、一定時間を超えて取引カード10が挿入口162に残存しているか否かを挿入センサ167によって検出することで判断することができる。
【0043】
取引内容として、「お振り込み」のように取引カード10と振込カード20とを併用する処理が選択された場合には、振込処理Aを実行する(ステップS110)。処理の詳細は、後述するが、取引カード10、振込カード20の順に読み込んで振込処理を実行するとともに、排出順序を入れ替え、取引カード10、振込カード20の順に排出する処理である。
【0044】
ステップS10において、取り忘れカードが存在すると判断された場合には、制御ユニット120は、取引メニューBを操作部103に提示する(ステップS22)。図中にメニュー例を示した。操作部103には、取引メニューAに加えて、「取り忘れカードご返却」というメニューが提示される。
【0045】
制御ユニット120は、これらのメニューからユーザが選択した内容に応じて処理を切り換える(ステップS24)。「お預け入れ」、「お引き出し」のように取引カード10のみで取引が完了する場合には、取引カード10を読み込むとともに、その情報および操作部103から入力された情報に基づいて入出金処理を実行する(ステップS126)。但し、この場合、退避部178には、既に取り忘れカードが格納されているため、更に取り忘れカードを格納する余裕が存在しない。従って、制御ユニット120は、取り忘れカードが存在する場合でも、その格納を行わずに処理を終了する。なお、取引カード10の盗難を回避するため、取り忘れカードがある場合には、それを回収部171に回収するものとしてもよい。
【0046】
取引内容として「お振り込み」のように取引カード10と振込カード20とを併用する処理が選択された場合には、振込処理Bを実行する(ステップS130)。処理の詳細は、後述するが、取引カード10、振込カード20の順に読み込んで振込処理を実行するとともに、排出順序を入れ替えることなく、振込カード20、取引カード10の順に排出する処理である。
【0047】
取引内容として「取り忘れカードご返却」が選択された場合には、返却処理を実行する(ステップS150)。これは、取り忘れカードの所有者と、操作部103の操作者との照合を行った上で、取り忘れカードを挿入口162から返却する処理である。
【0048】
C1.振込処理A.:
図4は振込処理Aのフローチャートである。図3のステップS110の処理内容に相当する。退避部178には取り忘れカードが存在しない状態で、取引カード10と振込カード20とを併用して振込を行う場合に実行される処理である。
【0049】
処理が開始されると、制御ユニット120は、取引カード10を入力し、その情報を読み取った後、退避部178に退避させる(ステップS111)。
【0050】
次に、振込カードの使用有無によって処理を切り換える(ステップS112)。例えば、振込カードの使用有無を選択するためのメニューを操作部103に表示し、その操作結果に基づいて処理を切り換える態様を採ることができる。取引カード10の挿入後、所定時間を超えても振込カード20の挿入が行われない場合に、振込カード無しと判断するものとしてもよい。
【0051】
振込カードを使用する場合には、振込カード20の入力、情報の読み取りを行った後、退避部176に振込カード20を退避させる(ステップS113)。その後、振込金額などの入力を受けて、振込処理を実行する(ステップS114)。
【0052】
一方、振込カードを使用しない場合には、操作部103からの情報に基づいて振込処理を実行する(ステップS115)。この場合には、振込先の口座番号、名義などの情報も操作部103から入力されることになる。制御ユニット120は、ここで入力された振込先に関する情報に基づいて、新規の振込カードを発行する(ステップS116)。振込カードの発行は、ユーザの指示があった場合にのみ行うものとしてもよい。
【0053】
以上の処理で振込が完了すると、制御ユニット120は、まず、退避部178から取引カード10を返却する(ステップS117)。次に、退避部176から振込カード20を返却する(ステップS118)。退避部178、176を使用することにより、取引カード10、振込カード20の順で挿入された2枚のカードにつき、先に挿入された取引カード10から順に返却することができる。複数のカードを利用した取引では、後で排出されるカードを取り忘れることが多いため、取引カード10を先に返却することにより、ユーザにとって重要性の高いカードの取り忘れを抑制することができる。
【0054】
振込カード20の取り忘れがある場合には、そのカードを退避部178に格納するとともに、振込処理で用いられた口座番号を記憶する(ステップS119)。口座番号は、後述する通り、カード返却時の認証に使用される。振込カード20には、口座番号が記録されていないため、併用された取引カード10に記録されている口座番号を認証に使用するのである。
【0055】
C2.振込処理B.:
図5は振込処理Bのフローチャートである。図3のステップS130の処理内容に相当する。退避部178に取り忘れカードが存在する状態で、取引カード10と振込カード20とを併用して振込を行う場合に実行される処理である。
【0056】
処理が開始されると、制御ユニット120は、取引カード10を入力し、その情報を読み取った後、退避部176に退避させる(ステップS131)。図中に、装置内でのカードの位置関係を示した。退避部178には、既に取り忘れカード130が存在するため、取引カード10を退避させることができない。従って、この処理では、退避部176を利用して、取引カード10の退避を行う。
【0057】
次に、振込カードの使用有無によって処理を切り換える(ステップS132)。この点は、振込処理Aと同様である。
【0058】
振込カードを使用する場合には、振込カード20の入力、情報の読み取りを行った後、印字部173に振込カード20を退避させる(ステップS113)。退避部176、178に退避させる余裕がないからである。その後、振込金額などの入力を受けて、振込処理を実行する(ステップS134)。
【0059】
振込が完了すると、制御ユニット120は、まず、印字部173退避部176から振込カード20を返却し(ステップS135)、次に、退避部176から取引カード10を返却する(ステップS136)。取引カード10、振込カード20の順で挿入された2枚のカードにつき、後に挿入された振込カード20から順に返却される。この処理では、挿入されたカードの排出順序の入れ替えは制限されるものの、振込処理は、支障なく実行することができる。
【0060】
一方、振込カードを使用しない場合には、操作部103からの情報に基づいて振込処理を実行する(ステップS135)。その後、退避部176から取引カード10を返却した後(ステップS138)、新規の振込カードを発行する(ステップS139)。新規の振込カード発行処理は、振込処理Aと同じである。
【0061】
C3.返却処理.:
図6は返却処理のフローチャートである。図3のステップS150に相当する処理である。この処理は、退避部178に取り忘れカードが格納されている状態で、「取り忘れカードご返却」のメニューが選択された場合に実行される。
【0062】
処理が開始されると、制御ユニット120は、暗証番号の入力を行い(ステップS151)、口座番号と暗証番号に基づき、操作者が取り忘れカードの所有者であるか否かの認証を行う(ステップS152)。本実施例では、取引時と同様、これらの情報をホストコンピュータ200に送信し、ホストコンピュータ200側で認証を行うものとした。取り忘れカードに口座番号および暗証番号が記録されている場合には、制御ユニット120が認証を行うものとしてもよい。振込カードが取り忘れられた場合など、カード自体に口座番号が記録されていない場合には、先に図4のステップS119で説明した通り、併用された取引カードの口座番号が認証に使用される。
【0063】
かかる認証の結果、操作者がカードの所有者本人であると判断される場合には(ステップS153)、制御ユニット120は、取り忘れカードの返却を行う(ステップS154)。本人でないと判断される場合には(ステップS153)、制御ユニット120は、返却不可である旨の表示を操作部103に行う(ステップS155)。
【0064】
取り忘れカードの所有者と操作者との認証は、種々の態様で行うことができる。図7は認証方法の一覧を示す説明図である。取り忘れカードに記録されているカード情報、操作部103から入力される入力情報等に応じて、ケースA〜Dの4通りを示した。
【0065】
ケースAは、カード情報と入力情報との照合により、オフラインで認証を行う場合である。例えば、カードに暗証番号が記録されており、操作部103から暗証番号を入力する場合が相当する。かかる場合には、これらの情報の一致、不一致により、オフラインで照合を行うことができる。
【0066】
ケースBは、オンラインで認証を行う場合である。例えば、カードに口座番号が記録されており、操作部103から暗証番号を入力する場合が相当する。ホストコンピュータは、口座番号と暗証番号との対応関係を管理しているものとする。かかる場合には、これらの情報をホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータ側で両者の対応関係に基づき認証を行うことができる。
【0067】
ケースCおよびケースDは、認証に使用できる情報がカード自体には記録されていない場合である。例えば、振込カード20が取り忘れられた場合に相当する。かかる場合には、取り忘れカードと組み合わせて使用された併用カードの情報を関連情報として付随的に利用することにより認証を行うことができる。
【0068】
このうち、ケースCはオフラインで認証を行う場合である。例えば、関連情報が暗証番号であり、操作部103から暗証番号を入力する場合が相当する。かかる場合には、これらの情報の一致、不一致により、オフラインで照合を行うことができる。
【0069】
このうち、ケースDはオンラインで認証を行う場合である。例えば、関連情報が口座番号であり、操作部103から暗証番号を入力する場合が相当する。かかる場合には、これらの情報をホストコンピュータに送信し、ホストコンピュータ側で両者の対応関係に基づき認証を行うことができる。
【0070】
取り忘れカードの所有者と操作者との認証は、ここで例示した他にも種々の方法を適用できることは言うまでもない。
【0071】
D.変形例:
実施例の自動取引装置において、退避部については、種々の構成が適用可能である。以下、カード取扱機構150の変形例として、種々の退避部の構成を例示する。
【0072】
図8は第1変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。実施例(図2参照)に対し、退避部176を省略し、カード回収部171への搬送路を退避部176Aとして利用する点で相違する。退避部176Aには、退避されたカードを排出するためのローラ177Aが設けられている。こうすることによって、カード取扱機構の奥行きを短縮することができる。
【0073】
図9は第2変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。実施例(図2参照)に対し、ストッカ180Bを退避部の一部として利用する点で相違する。図中では、ストッカ180Bに取り忘れカードを退避するための搬送路の一部も退避部176Bとして示した。ストッカ180Bは、新規なカードを排出するだけでなく、退避部176Bからのカードを収納可能に構成されている。かかる構成では、取り忘れカードが存在する場合には、新規の振込カードを発行できないという制限が生じるものの、第1変形例と同様、カード取扱機構の奥行きを短縮することができる。また、ストッカ180に取り忘れカードを収納するため、2枚以上の取り忘れに対しても対応可能となる利点がある。
【0074】
図10は第3変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。実施例(図2参照)に対し、退避部176Cを搬送路164の下側に別途配置する点で相違する。図示を省略したが、退避部176Cには、カードを排出するためのローラを設け、退避部176Cと搬送路164の接続部分には、カードの搬送先を切り換えるためのゲートが設けられている。かかる構成では、退避部176Cを斜めに設けることにより、第1変形例と同様、カード取扱機構の奥行きを短縮することができる。また、いずれの退避部も、新規に振込カードの発行を妨げない位置に設けられているため、例えば、取引カードと振込カードとを用いた取引でも、更に新規に振込カードを発行することができる利点もある。
【0075】
第3変形例においては、印字部173とストッカ180との間を、実施例(図2)の退避部176と同じ構成としてもよい。こうすることにより、退避部178C、176Cに加え、実施例の退避部176に相当する第3の退避部を構成することができ、2枚の取り忘れカードにも対応可能となる利点がある。
【0076】
以上の実施例および変形例では、カードの挿入、排出方向に沿ってカードを搬送する場合を例示したが、挿入、排出方向に交差する方向にカードを搬送、退避させるものとしてもよい。
【0077】
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができることはいうまでもない。例えば、以上の制御処理はソフトウェアで実現する他、ハードウェア的に実現するものとしてもよい。
【0078】
本発明によれば、顧客の操作によって取り忘れカードを返却することができるため、自動取引装置の利便性を向上することができる。また、取り忘れカードの退避部は、事後の取引におけるカードの搬送を妨げない位置に設けられているため、取り忘れカードが存在する場合でも、自動取引装置自体は、継続的に稼働させることができ、装置の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施例としての自動取引装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】カード取扱機構150の構成を示す説明図である。
【図3】取引制御処理のフローチャートである。
【図4】振込処理Aのフローチャートである。
【図5】振込処理Bのフローチャートである。
【図6】返却処理のフローチャートである。
【図7】認証方法の一覧を示す説明図である。
【図8】第1変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。
【図9】第2変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。
【図10】第3変形例としてのカード取扱機構の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
10…取引カード
11…磁気ストライプ
20…振込カード
100…自動取引装置
103…操作部
106…通帳取扱機構
107…紙幣入出金口
110…紙幣取扱装置
120…制御ユニット
121…指示入出力部
122…入出金処理部
123…カード情報入力部
124…処理部
125…主制御部
126…通信部
130…カード
150…カード取扱機構
160…カード読取装置
162…挿入口
163…ローラ
164…搬送路
165…磁気読取部
166…エンボス読取部
167…挿入センサ
170…振込カード発行装置
170…カード発行装置
171…回収部
171…カード回収部
172…搬送路
173…印字部
175…ゲート
176、176A、176B、176C…退避部
174、177、177A、179…ローラ
178、178C…退避部
180、180B…ストッカ
200…ホストコンピュータ
202…顧客データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを用いて取引を行う自動取引装置であって、
前記カードを挿入、排出方向に搬送する搬送路と、
前記搬送路上に設けられ、前記カードの記録内容を読み取る読取部と、
該読取部よりも装置奥側において、前記搬送路の延長上、上側、下側の少なくとも一部に設けられ、取引時の読み取り対象となっていないカードを退避するための退避部と、
前記カードの搬送先をカードが未退避の退避部に切り換えるための切換部とを備え、
前記退避部は、前記取引において併用されるカード枚数と同数以上の箇所に並列的に設けられている自動取引装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動取引装置であって、
前記搬送路の延長上には、新規なカードを発行するための新規カード発行部を備え、
前記退避部は、前記搬送路の延長上を避けて設けられている自動取引装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動取引装置であって、
挿入されたカードを用いた取引後に、排出したカードが抜き取られずに放置されている場合に、取り忘れカードとして前記退避部に取り込む取込部と、
前記取り忘れカードが存在する場合には、該取り忘れカードの返却を指示するための返却メニューを提示するメニュー提示部と、
該返却メニューに応じた操作に基づいて前記取り忘れカードを返却する返却部とを備える自動取引装置。
【請求項4】
請求項3記載の自動取引装置であって、
該退避部における前記取り忘れカードの有無によって、前記取引時のカードの取り扱い方法を切り換えるカード取扱制御部を備える自動取引装置。
【請求項5】
請求項3記載の自動取引装置であって、
前記返却部は、前記取り忘れカードの所有者と前記返却メニューの操作者の照合を行った上で前記返却を行う自動取引装置。
【請求項6】
請求項5記載の自動取引装置であって、
前記返却部は、前記取り忘れカードに対応した所定の識別情報と、前記操作者による入力情報とに基づいて前記照合を行う自動取引装置。
【請求項7】
請求項6記載の自動取引装置であって、
複数枚のカードを用いて取引を遂行する際に、識別情報が記録されていないカードが含まれる場合には、該取引において使用されたいずれかのカードに記録された識別情報を記憶する識別情報記憶部を備え、
前記返却部は、前記識別情報記憶部の記憶内容を、前記取り忘れカードに対応した所定の識別情報として用いて前記照合を行う自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−299412(P2007−299412A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151074(P2007−151074)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【分割の表示】特願2002−7690(P2002−7690)の分割
【原出願日】平成14年1月16日(2002.1.16)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】