説明

自動固相抽出装置

【課題】フィルタ付き容器の吐出口に付着した液滴を確実に落下させることができる自動固相抽出装置を提供すること。
【解決手段】液体の吸引及び吐出が可能な分注ヘッド6と、該分注ヘッド6を移動させるためのロボット(移送手段)と、前記分注ヘッド6が移動可能な範囲の鉛直下方向位置に配置されたフィルタ付き容器11と、該フィルタ付き容器11から液体を吸引する真空吸引手段と、該真空吸引手段によって真空吸引された液体を回収する回収容器13aを備えた自動固相抽出装置において、前記フィルタ付き容器11に振動を与える加振手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、農薬、水等に含まれる有機化学成分の分析の前処理操作としての固相抽出操作を自動的に行うための自動固相抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品や農薬等の試料溶液に含有された化学物質の分析を行う手法として、例えば液体クロマトグラフィー分析が知られている。この分析には前処理操作としての固相抽出操作が必要であるが、この固相抽出操作は、固定相となる吸着剤を詰めた長形円筒の固相抽出管(カラム)に、その上方から試料溶液を滴下させて溶質を固定相に吸着させた後、溶剤を流して固定相に吸着されている溶質を分離して目的成分を溶かし出す操作である。そして、この前処理操作としての固相抽出操作を行った後、目的成分が含まれた溶液を検出器(例えば、示差屈折検出器、紫外吸収検出器、紫外分光光度計、蛍光光度計等)に掛けて成分を分析する。
【0003】
ところが、液体クロマトグラフィー分析には、特に目的成分を溶かし出すまでの前処理操作に長時間を要し、マニュアル操作では非効率的であるため、近年、処理の効率化を図るためにこれらの前処理操作を自動的に行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−299912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において提案されている技術では、固相抽出管(以下、「フィルタ付き容器」と称する)の下部の密閉空間を真空状態にすることによって、フィルタ付き容器内の液体を真空吸引(濾過)する方法が採用されている。この方法では、フィルタ付き容器内の液体は、真空吸引されることによって、フィルタ付き容器の下部に設けられたフィルタ部を通過し、吐出口から液滴となって回収容器に落下して回収される。
【0005】
ここで、フィルタ付き容器は複数(例えば96個)のウェルから成り、全てのウェルから液体が完全に回収容器に回収されることが理想であるが、現実には落下しないで吐出口の先端に液滴となって残ってしまう場合がある。これは、フィルタの精度や液体に含まれる不純物の僅かな濃度差等に起因して全てのウェルが完全に同じ速度で吸引されないため、幾つかのウェルに入った液体が他のウェルの液体に比べて早く真空吸引されると、既に空になったウェルを通じて回収容器内の真空度が低下し、他のウェルの真空吸引が十分に行えないためである。
【0006】
又、液体の表面張力によって液滴が吐出口の外側に回り込んで付着してしまい、真空吸引だけでは完全に液滴を回収できない場合もある。
【0007】
このように液滴が吐出口の先端に残ってしまうと、固相抽出(又は濾過)の精度に影響を及ぼし兼ねない。又、フィルタ付き容器は、回収容器を交換する必要があるために例えばロボットハンド等を用いて移動させる必要があるが、吐出口に付着した液滴が移動中に落下してコンタミネーションを引き起こす可能性もある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、フィルタ付き容器の吐出口に付着した液滴を確実に落下させることができる自動固相抽出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、液体の吸引及び吐出が可能な分注ヘッドと、該分注ヘッドを移動させるための移送手段と、前記分注ヘッドが移動可能な範囲の鉛直下方向位置に配置されたフィルタ付き容器と、該フィルタ付き容器から液体を吸引する真空吸引手段と、該真空吸引手段によって真空吸引された液体を回収する回収容器を備えた自動固相抽出装置において、前記フィルタ付き容器に振動を与える加振手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記移送手段が前記加振手段を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、加振手段によってフィルタ付き容器に振動を与えることができるため、フィルタ付き容器の吐出口先端に付着した液滴を回収容器に落下させて回収することができ、コンタミネーション等の問題を解消することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、移送手段が前記加振手段を兼ねるため、加振手段として特別な機構を追加する必要がなく、自動固相抽出装置のコストダウンと省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明に係る自動固相抽出装置の斜視図、図2は同自動固相抽出装置内の構成の詳細を示す斜視図である。
【0015】
図1に示す自動固相抽出装置1は、装置本体2と、不図示の真空ポンプが内蔵された真空コントローラ15と、これらを制御する制御装置3とで構成されている。ここで、制御装置3は、例えば汎用のパーソナル・コンピュータで構成され、LAN(Local Area Network)等の通信ケーブル4を介して装置本体2と真空コントローラ15に電気的に接続されている。
【0016】
又、装置本体2には、3次元空間を移動して位置決めが可能な移送手段であるロボット5と、このロボット5の先端に設けられた分注ヘッド6と、制御装置3に入力された条件に基づいて装置本体2を駆動する不図示の回路部が設けられている。ここで、ロボット5は、直交座標軸であるX軸・Y軸・Z軸に沿って3次元空間を移動可能であって、不図示のステッピングモータによって駆動され、所定の位置に位置決めされる。尚、ロボット5の駆動源としては、サーボモータ等、他の任意の手段を用いることができる。
【0017】
前記分注ヘッド6は、一列に並んで配置された複数の分注チップ8を着脱可能であって、これに分注チップ8を装着することによって液体の吸引及び吐出を可能となる。即ち、分注ヘッド6に例えば12本の分注チップ8を装着し、12連の不図示のシリンジを1つのステッピングモータで駆動することによって、分注チップ8への液体の吸引動作及び分注チップ8からの液体の吐出動作が実行される。尚、シリンジ個々の間隔はフィルタ付き容器11のウェル間隔と同じ9mmピッチに設定されいる。
【0018】
又、ロボット5に取り付けられた分注ヘッド6の可動範囲の下方には、2組の分注チップ容器9と、4つのプレート容器群10と、フィルタ付き容器11とこれを保持するキャリア12と、回収容器13及び試薬の分注に使用されて不要となった分注チップ8を廃棄するための廃棄容器14が配置されている。
【0019】
上記各分注チップ容器9には、縦12本×横8本の計96本の分注チップ8がフィルタ付き容器11のウェル間隔と同じ9mmピッチで配置されている。又、4つのプレート容器群10には、試薬が入った試薬容器10a,10bと、標準溶液が入った標準溶液容器10c及び固相抽出を行うために前処理として予めサンプルを調製するために使用されるサンプル容器10dが含まれている。尚、試薬容器10a,10b内は複数の槽に区画されており、これらの槽には複数の試薬が収容されている。又、標準溶液容器10c及びサンプル容器10d内は縦12個×横8この計96このウェルに区画されており、標準溶液容器10c内には複数の標準溶液が収容されており、サンプル容器10dには、固相抽出したい検体(サンプル)が予め収容されている。
【0020】
更に、フィルタ付き容器11は、回収容器13の上部に配置されたキャリア12内に載置されており、キャリア12の上部左右には上向きに突出する凸部12a,12bが形成されている。
【0021】
又、分注ヘッド6の左右には、キャリア12に形成された前記凸部12a,12bに当接できるような幅で下向きにフック6a,6bが取り付けられており、ロボット5を移動させてフック6a,6bをキャリア12の凸部12a,12bに引っ掛けることによって、キャリア12を回収容器13の手前側13aと奥側13bに移動させることができる。
【0022】
ここで、キャリア12を回収容器13に対して前後方向に移動させるが、固相抽出においては、フィルタ付き容器11から真空吸引される液が必要な場合と不要な場合とがある。そのため、本実施の形態では、回収容器13の手前側13aを不要な液を受ける側(「Load側」と称する)、奥側13bを必要な液を受ける側(「Collect側」と称する)としている。
【0023】
ところで、フィルタ付き容器11には複数個のウェルが縦n個×横m個格子状に配置されるよう形成されており、例えば縦8個×横12個の計96個のウェルが形成されている。又、Load側回収容器13aに回収される液体は前述のように不要となる液体であるため、Load側回収容器13aには仕切りの無い容器を使用している。一方、必要な液体を受けるCollect側回収容器13bは、フィルタ付き容器11のそれぞれのウェルから回収される液体を個別に回収する必要があるため、フィルタ付き容器11と同じピッチに区分けされたマイクロプレートが使用されている。
【0024】
而して、ロボット5を移動させてフック6a,6bでキャリア12の凸部12a,12bを押し付けることによって、キャリア12内に載置されたフィルタ付き容器11の下面と回収容器13のLoad側13a又はCollect側13bとで形成される空間を密閉し、前記真空コントローラ15を駆動制御して前記空間内を選択的に真空状態とすることによって、フィルタ付き容器11内の液体を回収容器13のLoad側13a又はCollect側13bに真空吸引する。
【0025】
ところで、本実施の形態に係る自動固相抽出装置1においては、運転中に装置本体2の内部に手等を入れることができないように装置本体2が安全カバー16で覆われており、万一、運転中に安全カバー16を開けた場合には、ロボット5に供給する電源を遮断して該ロボット5の移動を停止するよう構成されている。
【0026】
次に、本発明に係る自動固相抽出装置1を用いた具体的な運転例を図3に基づいて説明する。
【0027】
図3は本発明に係る自動固相抽出装置1を用いた具体的な運転工程例を示す図であり、先ず、自動固相抽出装置1を使用する実験者は、運転を開始する前に制御装置3を用いて予め運転工程を決定し、決定した運転工程から必要とする分注チップ8や試薬類を制御装置3の画面に表示される配置画面に従って配置しておく。
【0028】
図3に示す運転工程例30のStep1では、標準溶液容器10cに予め入れられたMeOH(メタノール)溶媒を50μl吸引し、これをサンプル容器10dに吐出する処理がなされるが、その処理は下記の要領に従ってなされる。
【0029】
即ち、先ず、ロボット5を移動させ、分注チップ容器9に入れられた分注チップ8の上側開口部に、分注ヘッド6の下側先端のノズル部を圧入することによって、分注ヘッド6に分注チップ8を装着する。その後、分注ヘッド6を上方へ移動させて分注チップ8の装着を完了する。
【0030】
次に、MeOH溶媒が収容されている標準溶液容器10cの所定の列に分注ヘッド6を移動させ、これに装着された分注チップ8の先端がMeOH溶媒に漬かる位置まで該分注ヘッド6を下降させる。そして、不図示のシリンジを吸引方向にコントロールして分注ヘッド6に装着された分注チップ8の内部にMeOH溶媒を50μl吸引した後、分注ヘッド6を上方へ移動させてMeOH溶媒の吸引動作を完了する。
【0031】
次に、サンプル容器10dの指定されたエリアに分注ヘッド6を移動させ、シリンジを吐出方向にコントロールして分注チップ8内のMeOH溶媒をサンプル容器10dに吐出する。
【0032】
上記MeOH溶媒の吸引及び吐出動作を指定された回数だけ繰り返した後、分注ヘッド6を廃棄容器14の上方へと移動させ、不図示の分注チップ取り外し機構を駆動して不要となった分注チップ8を分注ヘッド6から取り外して廃棄容器14内に廃棄すことによってStep1の工程を終了する。
【0033】
Step2からStep6までの工程は、試薬が異なることによる吸引する位置の違いや、分注する量に違いがあるものの、分注チップ8の装着から試薬の吸引、試薬の吐出、分注チップ8の廃棄に至るまでの流れは上記したStep1の場合と同様である。
【0034】
Step2〜Step6の工程は、試薬が異なることによる吸引位置の違いや、分注量に違いがあるものの、分注チップ8の装着から試薬の吸引と吐出を経て分注チップ8の廃棄に至るまでの流れは前記Step1の流れと同様である。
【0035】
次に、Step7における「試薬→Loadに分注→真空吸引」の自動固相抽出装置1の動作について説明する。
【0036】
先ず、キャリア12が回収容器13のLoad側13aに移動していなければならない。ここで、キャリア12がLoad側13aに無い場合、分注ヘッド6のフック6a,6bをキャリア12の凸部12a,12bに引っ掛けてキャリア12をLoad側13aに移動する。この場合、分注ヘッド6に分注チップ8を装着した状態では、分注ヘッド6のフック6a,6bがキャリア12の凸部12a,12bに接触する前に分注チップ8がフィルタ付き容器11に衝突してしまうため、分注チップ8を装着する前にキャリア12の移動を行うようにしている。
【0037】
Step1の場合と同様に、ロボット5を移動させ、分注チップ容器9に収容された分注チップ8の上側開口部に、分注ヘッド6の下側先端のノズル部を圧入することによって、分注ヘッド6に分注チップ8を装着する。その後、分注ヘッド6を上方へ移動させて分注チップ8の装着を完了する。
【0038】
次に、分注する試薬であるMeOHが収容されている試薬容器10a又は10bの列に分注ヘッド6を移動させ、分注チップ8の先端がMeOHに漬かる位置まで分注ヘッド6を下降させる。そして、不図示のシリンジを吸引方向にコントロールして分注ヘッド6に装着された分注チップ8の内部にMeOHを500μl吸引した後、分注ヘッド6を上方へ移動させてMeOHの吸引動作を完了する。
【0039】
次に、Load側13aに移動しているキャリア12に載置されたフィルタ付き容器11の指定されたエリアに分注ヘッド6を移動させ、シリンジを吐出方向にコントロールして分注チップ8内のMeOHをフィルタ付き容器11に吐出する。
【0040】
上記MeOHの吸引及び吐出動作を指定された回数だけ繰り返した後、分注ヘッド6を廃棄容器14の上方へと移動させ、不図示の分注チップ取り外し機構を駆動して不要となった分注チップ8を分注チップ6から取り外して廃棄容器14内に廃棄する。
【0041】
次に、ロボット5を移動させて分注ヘッド6のフック6a,6bでキャリア12の凸部12a,12bを下方へ押し付けることによって、Load側13aにあるキャリア12内に載置されたフィルタ付き容器11の下面と回収容器13のLoad側13aとで形成される空間を密閉する。そして、この状態から、真空コントローラ15内の真空ポンプを駆動し、密閉された前記空間内を真空状態(減圧状態)にしてフィルタ付き容器11内の液体を回収容器13のLoad側13aに真空吸引する。この状態を1分間保持した後、真空コントローラ15は真空ポンプの運転を停止し、分注ヘッド6を上方へ移動させてStep7の工程を終了する。
【0042】
Step8〜Step12までの工程は、吸引する位置(試薬薬容器10a又は10b、サンプル容器10d)や分注量、フィルタ付き容器11の位置(即ち、キャリア12の位置)が異なるものの、キャリア12の移動、分注チップ8の装着、試薬の吸引と吐出、分注チップ8の廃棄、キャリア12の凸部12a,12bの押し付け、真空コントローラ15の制御に至るまでの流れは前記Step7の流れと同様である。
【0043】
そして最終的に、Step12で回収容器13のCollect側13bに真空吸引された液が固相抽出した結果として残り、この液を検出器(例えば、示差屈折検出器、紫外吸収検出器、紫外分光光度計、蛍光光度計等)に掛けて成分を分析する。
【0044】
以上が本発明に係る自動固相抽出装置1の運転の流れである。
【0045】
図4はフィルタ付き容器11内の液体が真空コントローラ15の制御によってLoad側回収容器13aに回収された状態を示す側断面図であり、例として、フィルタ付き容器11の一番左端の吐出口17aと左から6番目の吐出口17bの先端に液滴が付着している様子を示している。
【0046】
フィルタ付き容器11の吐出口17に液滴が付着する要因は、フィルタの精度や液体に含まれる不純物の僅かな濃度差等に起因して全てのウェルが完全に同じ速度で吸引されないため、幾つかのウェルに入った液体が他のウェルの液体に比べて早く真空吸引されると、既に空になったウェルを通じて回収容器13a内の真空度が低下し、他のウェルの真空吸引が十分に行えないためである。
【0047】
又、液体の表面張力によって、液滴が吐出口17の外側に回り込んで付着してしまい、真空吸引だけでは完全に液滴を回収できない場合もある。
【0048】
ところで、フィルタ付き容器11の位置は常に同じ位置にあれば良い訳ではない。図3に示す運転例においては、Step11まではフィルタ付き容器11はLoad側13aの位置にあるが、Step12においては、フィルタ付き容器11はCollect側13bに移動させる必要がある。
【0049】
フィルタ付き容器11の移動方法については前述の通りであるが、図4に示すようにフィルタ付き容器11の吐出口17に液滴が付着した状態でフィルタ付き容器11を移動させると、移動中に液滴がLoad側回収容器13bに落下する可能性がある。
【0050】
Collect側回収容器13bは、フィルタ付き容器11から真空吸引される液体をウェル毎に個別に回収する必要があり、他のウェルの液体と混ざる(コンタミネーション)は絶対に回避しなければならない。つまり、フィルタ付き容器11の吐出口17に付着した液滴を取り除くことが重要となる。
【0051】
そこで、本実施の形態では、真空コントローラ15の制御によって、フィルタ付き容器11から液体を回収容器13に真空吸引した後、分注ヘッド6を一旦上方(矢印A方向)に移動させ、次にフィルタ付き容器11の下面と回収容器13の上面とが突き当たる位置(真空吸引するときと同じ位置)まで分注ヘッド6を下方(矢印B方向)へ移動させ、これらの動作を数回繰り返すことによってフィルタ付き容器11に振動を与えるようにした。
【0052】
即ち、本実施の形態では、分注ヘッド6を移動させる移送手段であるロボット5が加振手段を兼ね、分注ヘッド6を図4の矢印A,B方向に上下動させる動作を複数回繰り返すことによって、該分注ヘッド6でキャリア12の凸部12a,12bを叩いて該キャリア12を介してフィルタ付き容器11に振動を与えるようにした。すると、フィルタ付き容器11の吐出口17に振動が加わり、吐出口17に付着した液滴が振動によって回収容器13に確実に矢印C方向に落下して回収される。尚、液滴を確実に落下させるためには、本実施の形態のように分注ヘッド6でキャリア12の凸部12a,12bを叩く動作を複数回行うことが好ましい。
【0053】
以上のように、本発明に係る自動固相抽出装置1によれば、加振手段としてのロボット5によってフィルタ付き容器11に振動を与えることができるため、フィルタ付き容器11の吐出口17の先端に付着した液滴を回収容器13に落下させて回収することができ、コンタミネーション等の問題を解消することができる。
【0054】
又、本実施の形態では、移送手段であるロボット5が加振手段を兼ねるため、加振手段として特別な機構を追加する必要がなく、自動固相抽出装置1のコストダウンと省スペース化を図ることができる。
【0055】
尚、本実施の形態では、移送手段であるロボット5が加振手段を兼ねる構成を採用したが、フィルタ付き容器11に振動を与える加振手段としては、ソレノイド、電動モータ等の他の任意の手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、創薬スクリーニング、バイオテクノロジー、医学分野等における化学成分分析に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る自動固相抽出装置の斜視図である。
【図2】本発明に係る自動固相抽出装置の構成の詳細を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動固相抽出装置1を用いた具体的な運転例を示す図である。
【図4】本発明に係る自動固相抽出装置においてフィルタ付き容器内の液体がLoad側回収容器に回収された状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 自動固相抽出装置
2 自動固相抽出装置本体
3 制御装置
4 通信ケーブル
5 ロボット(移送手段)
6 分注ヘッド
8 分注チップ
9 分注チップ容器
10 容器群
11 フィルタ付き容器
12 キャリア
13 回収容器
14 廃棄容器
15 真空コントローラ(真空吸引手段)
16 安全カバー
17 吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の吸引及び吐出が可能な分注ヘッドと、該分注ヘッドを移動させるための移送手段と、前記分注ヘッドが移動可能な範囲の鉛直下方向位置に配置されたフィルタ付き容器と、該フィルタ付き容器から液体を吸引する真空吸引手段と、該真空吸引手段によって真空吸引された液体を回収する回収容器を備えた自動固相抽出装置において、
前記フィルタ付き容器に振動を与える加振手段を設けたことを特徴とする自動固相抽出装置。
【請求項2】
前記移送手段が前記加振手段を兼ねることを特徴とする請求項1記載の自動固相抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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