説明

自動変速機のロックアップ制御装置

【課題】複数の変速段を跨ぐキックダウン制御においてエンジンの停滞や変速ショックの発生を効果的に防止する。
【解決手段】第2ロックアップ制御量変更手段532は、中間段判定手段52によりキックダウン変速指令が中間段変速指令を含むと判定された場合には、ロックアップクラッチ35のロックアップ制御量を最初のキックダウン制御において第1ロックアップ制御量変更手段531により変更されたものよりもさらに低下させる。第3ロックアップ制御量変更手段533は、目標段変速指令検出手段54により目標段変速指令が検出されたとき、第2ロックアップ制御量変更手段532により設定されたロックアップ制御量から目標変速段で設定される目標ロックアップ制御量となるように、目標段変速指令の検出時から目標変速段になるまでの予め定められた時間でロックアップ制御量を徐々に通常締結時の値に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータのロックアップクラッチを所定の運転領域で締結させる有段の自動変速機のロックアップ制御装置に関し、特に、複数の変速段を飛び越えて(跨いで)変速するキックダウン変速時においてロックアップクラッチへの供給油圧を制御する自動変速機のロックアップ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクコンバータを備える車両では、その走行時において、所定の運転領域ではトルクコンバータ内のロックアップクラッチ(以下、「LC」ともいう)を締結させることにより、エンジンの回転数を低く抑えて、車両の燃料経済性(燃費)の改善が図られている。また、近年、実用的な燃料経済性の向上に加え、ユーザである運転者にアクセルペダルの踏み込みに対してダイレクトな走行感を提供することを目的として、ロックアップクラッチの締結領域の拡大が図られている。
【0003】
しかしながら、ロックアップクラッチの締結領域を拡大することにより、ロックアップクラッチの締結状態において自動変速機の変速頻度が増加するため、変速ショックによる車両の商品性の悪化が問題となる。特に、アクセルペダルを強く踏み込んだときのダウンシフト(キックダウン変速、以下、「KD変速」ともいう)の場合には、エンジントルクが急増しかつより低いギヤへの変速であるため、変速ショックの悪化がさらに生じ易い。
【0004】
このような問題を解決するために、キックダウン時の変速指令を検出し、その検出後にトルク層からイナーシャ層への移行を検出して、この移行の検出後に徐々にロッククラッチのクラッチ容量(ロックアップ制御量:例えばロックアップクラッチに対応するソレノイドバルブへのデューティ比)を徐々に低下させることにより変速ショックの改善を図っている自動変速機のロックアップ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−321014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述のようなロックアップクラッチの締結領域の拡大にともなって、ロックアップクラッチを締結したまま2段以上の複数の変速段を跨いで変速する場合も生じてきた。しかしながら、このような2段以上の変速段を跨ぐKD変速に対して、通常のKD変速と同様のロックアップクラッチ容量制御を行うだけで特別な制御は試みられてこなかった。
【0007】
2段以上の変速段を跨ぐKD変速が発生した場合、その変速制御が1段ずつのKD変速であるか(以下、「連続KD変速」という:例えば、5−4段変速と4−3段変速の連続変速制御)、または、中間変速段(この例では4速段)を飛ばして変速するKD変速であるか(以下、「飛びKD変速」という:例えば5−3段変速制御)により、必要となるロックアップクラッチ容量は異なってくる。
【0008】
具体的には、連続KD変速時には、1つ目のKD変速制御が終了してから次のKD変速制御が開始されるため、通常のKD変速と同様のロックアップクラッチ容量制御であってもよい。しかしながら、飛びKD変速時においては、ロックアップクラッチ容量を連続KD変速時よりさらに下げておかなければならない。すなわち、従来のKD変速制御において、変速クラッチの伝達トルクが小さく、ニュートラルに近い状態となる中間変速段を通過するときには、1つ目のKD変速制御の終了に伴って通常のロックアップクラッチ容量に向けて徐々に制御油圧を上昇させる制御を一端開始し、その後再度ロックアップクラッチ容量を低下させていた。そのため、中間変速段の通過時にはロックアップクラッチ容量が過多となってしまい、エンジンが停滞したり、変速ショックが発生したりするという問題があった。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、2段以上の変速段を跨ぐキックダウン変速が発生し、中間変速段を飛ばして変速する場合に、中間変速段の通過時に制御油圧をさらに下げることにより、エンジンの停滞や変速ショックの発生を効果的に防止することができる自動変速機のロックアップ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の自動変速機のロックアップ制御装置は、トルクコンバータ(3)の入力側(21)と出力側(22)とをロックアップ制御量に応じて機械的に直結可能なロックアップクラッチ(35)を備え、所定の運転領域でロックアップ制御量を増大してロックアップクラッチ(35)を締結させるようにした自動変速機(2)のロックアップ制御装置(50)において、ロックアップクラッチ(35)の締結中におけるキックダウン変速指令を検出するキックダウン指令検出手段(51)と、キックダウン指令検出手段(51)によりキックダウン変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量を変更する第1ロックアップ制御量変更手段(531)と、キックダウン指令検出手段(51)により検出されるキックダウン変速指令が中間変速段への中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定する中間段判定手段(52)と、中間段判定手段(52)によりキックダウン変速指令が中間段変速指令を含むと判定された場合には、ロックアップ制御量をさらに変更する第2ロックアップ制御量変更手段(532)と、中間段判定手段(52)で判定された中間変速段からキックダウン変速指令の目標変速段への目標段変速指令を検出する目標段変速指令検出手段(54)と、目標段変速指令検出手段(54)により目標段変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量をさらに変更する第3ロックアップ制御量変更手段(533)とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の自動変速機のロックアップ制御装置によれば、複数の変速段を跨いでキックダウン制御を行う飛びキックダウン制御において、ギヤレシオが中間変速段を通過する際にトルク相用に減じていた制御油圧をイナーシャ相用に戻してしまうという従来制御の問題を未然に防ぐことができる。これにより、ギヤレシオの中間変速段通過時において制御油圧をさらに下げることにより、エンジンの停滞やキックダウン制御中の変速ショックの発生を効果的に防止することができる。また、キックダウン制御時のエンジン回転数の上昇がスムーズとなり、エンジンや自動変速機のレスポンスを向上させることができる。
【0012】
本発明の自動変速機のロックアップ制御装置では、中間段判定手段(52)は、予め定められた変速特性において、キックダウン変速指令が中間変速段を含むダウンシフト線を跨ぐ変速指令であるか否かに基づいて、キックダウン変速指令が中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定すればよい。
【0013】
本発明の自動変速機のロックアップ制御装置では、目標段変速指令検出手段(54)は、自動変速機(2)のギヤレシオを監視し、該ギヤレシオが中間変速段以下となったことに基づいて、目標段変速指令を検出すればよい。
【0014】
本発明の自動変速機のロックアップ制御装置では、第3ロックアップ制御量変更手段(533)は、第2ロックアップ制御量変更手段(532)により設定されたロックアップ制御量から目標変速段で設定される目標ロックアップ制御量となるように、目標段変速指令検出手段(54)が目標段変速指令を検出したときから目標変速段になるまでの時間で徐々に変更させればよい。
【0015】
なお、上記で括弧内に記した図面参照符号は、後述する実施形態における対応する構成要素を参考のために例示するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ギヤレシオの中間変速段通過時において制御油圧をさらに下げることにより、エンジンの停滞やキックダウン制御中の変速ショックの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における自動変速機のロックアップ制御装置が適用される車両の駆動系の概略図である。
【図2】図1に示すAT−ECUの機能ブロック図である。
【図3】図1に示す油圧制御装置の概略的な油圧回路図の一部である。
【図4】従来の飛びキックダウン制御のタイミングチャートである。
【図5】本発明の飛びキックダウン制御のタイミングチャートである。
【図6】ダウンシフトの変速シフトマップの一例を示す図である。
【図7】変速シフトマップの各時点における変速段、変速率および中間段判定フラグの関係を示すタイミングチャートである。
【図8】本発明の一実施形態におけるAT−ECUの変速段決定シーケンスの全体フローを示すフローチャートである。
【図9】図8の全体フローのステップS3において実行される中間段判定処理を示すフローチャートである。
【図10】図8の全体フローのステップS8において実行されるLC圧制御処理を示すフローチャートである。
【図11】図10のLC圧制御処理のステップS207において実行されるDOWNシフトLC制御圧算出処理を示すフローチャートである。
【図12】図11のDOWNシフトLC制御圧算出処理のステップS303におけるKD中間段判定時における油圧補正係数KDNW算出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の自動変速機のロックアップ制御装置の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施形態における自動変速機のロックアップ制御装置が適用される車両の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態における自動変速機のロックアップ制御装置が適用される車両の駆動系の概略図である。図1に示すように、本実施形態の車両は、エンジン1と、流体式のトルクコンバータ3を介してエンジン1と連結される自動変速機2と、エンジン1を制御するFI−ECU4と、トルクコンバータ3を含む自動変速機2を制御するAT−ECU5と、トルクコンバータ3の回転駆動やロックアップ制御および自動変速機2の複数の摩擦係合要素の締結(係合)・解放を制御する油圧制御装置6とを備えている。なお、本発明の自動変速機のロックアップ制御装置は、図2において後述するようにAT−ECU5により実現される。
【0020】
エンジン1の回転出力は、クランクシャフト(エンジン1の出力軸)21に出力される。このクランクシャフト21の回転は、トルクコンバータ3を介して自動変速機2のメインシャフト22に伝達される。
【0021】
トルクコンバータ3は流体(作動油)を介してトルクの伝達を行うものである。トルクコンバータ3は、図1に示すように、フロントカバー31と、このフロントカバー31と一体に形成されたポンプ翼車(ポンプインペラ)32と、フロントカバー31とポンプ翼車32との間でポンプ翼車32に対向配置されたタービン翼車(タービンランナ)33と、ポンプ翼車32とタービン翼車33との間に介設され、かつ一方向クラッチ36を介してステータ軸(固定軸)38上に回転自在に支持されたステータ翼車34とを有する。図1に示すように、クランクシャフト21は、フロントカバー31を介して、トルクコンバータ3のポンプ翼車32に接続され、タービン翼車33はメインシャフト(自動変速機2の入力軸)21に接続される。
【0022】
また、タービン翼車33とフロントカバー31との間には、ロックアップクラッチ35が設けられている。ロックアップクラッチ35は、AT−ECU5の指令に基づく油圧制御装置6による制御により、フロントカバー31の内面に向かって押圧されることによりフロントカバー31に係合(締結)し、押圧が解除されることによりフロントカバー31との係合が解除されるロックアップ制御を行う。フロントカバー31およびポンプ翼車32により形成される容器内には作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)が封入されている。
【0023】
ロックアップ制御がなされていない場合には、ポンプ翼車32とタービン翼車33の相対回転が許容される。この状態において、クランクシャフト21の回転トルクがフロントカバー31を介してポンプ翼車32に伝達されると、トルクコンバータ3の容器を満たしている作動油は、ポンプ翼車32の回転により、ポンプ翼車32からタービン翼車33に、次いでステータ翼車34へと循環する。これにより、ポンプ翼車32の回転トルクが、流体力学的にタービン翼車33に伝達され、この間にトルクの増幅作用が行われ、メインシャフト22を駆動する。このとき、ステータ翼車34はそのトルクの反力(以下、「ステータ反力」という)を負担する。
【0024】
一方、ロックアップ制御中には、ロックアップクラッチ35が係合されている状態となり、フロントカバー31からタービン翼車33へと作動油を介して回転させるのではなく、フロントカバー31とタービン翼車33とが一体的に回転し、クランクシャフト21の回転トルクがメインシャフト22に直接伝達される。すなわち、クランクシャフト21は、ロックアップ制御量に応じて、ロックアップクラッチ35を介してメインシャフト22に機械的に連結(直結)される。
【0025】
図1において、ポンプ翼車32の右端には、図3に示す油圧ポンプ60を駆動するポンプ駆動歯車37が設けられる。ステータ軸38の右端には、作動油圧(ライン圧PL)が高ライン圧になっているとき、図3に示すメインレギュレータバルブ61を制御するステータアーム39が設けられる。
【0026】
自動変速機2は、本実施形態では、例えば、前進6速段、後進1速段の車両用の自動変速機である。自動変速機2には、ギヤ段に対応して複数の歯車列と、複数のクラッチ(摩擦係合要素)とが設けられ、各歯車列は、一対の駆動歯車と従動歯車とから構成される。自動変速機2の構成は、本発明の特徴部分ではないため、スケルトン図等を用いた詳細な説明を省略するが、当業者は公知の自動変速機の構成を適宜採用することができる。
【0027】
メインシャフト22の回転トルクは、図1では図示しないクラッチおよび歯車列、セカンダリシャフトやアイドルシャフトの歯車列等を介してカウンタシャフト23に伝達される。また、カウンタシャフト23の回転トルクは、図1では図示しない歯車列およびディファレンシャル機構を介して駆動輪に伝達される。
【0028】
油圧制御装置6は、自動変速機2およびトルクコンバータ3に対応して自動変速機2内に設けられる。この油圧制御装置6は、対象となる摩擦係合要素(クラッチ)にライン圧PL(作動油圧)の作動油を供給することにより、自動変速機2内の図示しない複数の摩擦係合要素(クラッチ)の締結・解放(係合作動)を選択的に行わせて、複数の変速段のいずれかの変速段に設定するものである。
【0029】
また、油圧制御装置6は、トルクコンバータ3のポンプ翼車32に作動油圧の作動油を供給することにより、クランクシャフト21の回転駆動をメインシャフト22にどの程度伝達させるかを示すトルコンスリップ率ETRを制御するとともに、ロックアップクラッチ35の図示しない油室に作動油圧の作動油を供給することにより、車両の巡航走行時などの所定の条件下、ロックアップクラッチ35を係合(締結)させるように制御するものである。
【0030】
さらに、油圧制御装置6は、メインシャフト22やカウンタシャフト23、図示しないセカンダリシャフトやアイドルシャフトを潤滑させるために潤滑圧の潤滑油をメインシャフト22およびカウンタシャフト23等に供給する。なお、セカンダリシャフトやアイドルシャフトは、自動変速機2の変速段数や形状に応じて設けられるものである。
【0031】
クランクシャフト21の近傍には、クランクシャフト21(エンジン1)の回転数Neを検出するクランクシャフト回転数センサ201が設けられる。メインシャフト22の近傍には、メインシャフト22の回転数(自動変速機2の入力軸回転数)Niを検出するメインシャフト回転数センサ202が設けられる。カウンタシャフト23の近傍には、カウンタシャフト23の回転数(自動変速機2の出力軸回転数)Noを検出するカウンタシャフト回転数センサ203が設けられる。各回転数センサ201〜203により検出された回転数データはAT−ECU5に出力される。また、クランクシャフト回転数センサ201により検出された回転数データはFI−ECU4にも出力される。
【0032】
また、車両の所定の位置には、車両の車速Nvを検出する車速センサ204が設けられる。車速センサ204により検出された車速データはAT−ECU5に出力される。なお、車速Nvを専用に検出する車速センサ204を設けることなく、メインシャフト22の回転数Niまたはカウンタシャフト23の回転数Noから車速Nvを算出するようにしてもよい。例えば、「Nv=Ni×変速レシオ×タイヤ周長」あるいは「Nv=No×タイヤ周長」のような関係式に基づいて車速Nvを検出(算出)することができる。
【0033】
エンジン1の近傍には、エンジン1を冷却するためのエンジン冷却水の温度Twを検出する冷却水温センサ205と、エンジン1の図示しないスロットルの開度THを検出するスロットル開度センサ206とが設けられる。冷却水温センサ205により検出されたエンジン冷却水の温度データおよびスロットル開度センサ206により検出されたスロットル開度データはFI−ECU4に出力される。
【0034】
アクセルペダル8の近傍には、アクセルペダル8に図示しないワイヤ等で連結され、アクセルペダル8の開度(アクセルペダル開度)APATを検出するアクセルペダル開度センサ207が設けられる。アクセルペダル開度センサ207により検出されたアクセルペダル開度データはFI−ECU4に出力される。
【0035】
また、油圧制御装置6内の図示しないオイルタンクの近傍には、油圧制御装置6の作動油(および潤滑油)の温度TATFを検出する油温センサ208が設けられる。油温センサ208により検出された作動油の温度(油温)データはAT−ECU5に出力される。
【0036】
FI−ECU4は、各センサ201、205〜207から入力された検出データやAT−ECU5から入力される各種データに基づいて、エンジン1の出力、すなわちエンジン1の回転数Neを制御するものである。また、AT−ECU5は、各センサ201〜204、208から入力された検出データやFI−ECU4から入力された各種データに基づいて、後述する油圧制御装置6内のバルブ群を制御して、複数の摩擦係合要素(クラッチ)のいずれかの係合を行うものである。さらに、AT−ECU5は、所定の運転領域で油圧制御装置6を介してロックアップ制御量を増大させ、ロックアップクラッチ35の係合を行うものである。
【0037】
次に、本実施形態におけるAT−ECU5の構成(機能)を説明する。図2は、図1に示すAT−ECU5の機能ブロック図である。本実施形態のAT−ECU5は、図2に示すように、ロックアップ制御装置50と、変速制御装置を構成する変速制御手段55と、メモリ56とを備える。
【0038】
本実施形態のロックアップ制御装置50は、キックダウン指令検出手段51と、中間段判定手段52と、ロックアップ制御量設定手段53と、目標段変速指令検出手段54とを備える。また、ロックアップ制御量設定手段53は、第1ロックアップ制御量変更手段531と、第2ロックアップ制御量変更手段532と、第1ロックアップ制御量変更手段531とを備えている。
【0039】
変速制御手段55は、各センサ201〜204、208から入力された検出データやFI−ECU4から入力された各種データに基づいて、メモリ56に格納されている変速シフトマップの切替を行う。また、変速制御手段55は、車両の走行状態に応じて、車速センサ204により検出された車速データおよびアクセルペダル開度センサ207により検出されたアクセルペダル8の開度データを取得する。そして、変速制御手段55は、設定されている変速シフトマップと、取得した車速Nvおよびアクセルペダル開度APATとに基づいて、変速段を決定し、あるいは変速制御を実行して、油圧制御装置6を介してクラッチ群7を制御する。
【0040】
本実施形態では、変速制御手段55は、変速シフトマップ、車速Nvおよびアクセルペダル開度APATに基づいて、運転者によるキックダウン操作が行われたか否かを判断し、キックダウン操作が行われた場合には、後述するように、メモリ56に格納されているキックダウンフラグを1に設定するとともに、キックダウン変速を行うように自動変速機2の油圧制御装置6にキックダウン変速指令を出力する。
【0041】
キックダウン指令検出手段51は、クランクシャフト回転数センサ201およびメインシャフト回転数センサ202から取得したクランクシャフト21の回転数Neとメインシャフト22の回転数Niとに基づいて、トルコンスリップ率ETRを算出し、現在ロックアップクラッチ35が締結されているか否かを判断する。そして、キックダウン指令検出手段51は、ロックアップクラッチ35が締結中である場合には、メモリ56に格納されているキックダウンフラグの値に基づいて、変速制御手段55がキックダウン変速指令を出力したことを検出する。
【0042】
第1ロックアップ制御量変更手段531は、キックダウン指令検出手段51によりキックダウン変速指令が検出されたとき、ロックアップクラッチ35のロックアップ制御量を変更する。具体的には、第1ロックアップ制御量変更手段531は、変速制御手段55によるキックダウン制御の開始に伴い、ロックアップクラッチ35のロックアップ制御量を低下させる。ここで、本実施形態では、ロックアップクラッチ35のロックアップ制御を行うためのロックアップ制御量として、ロックアップクラッチ35の通常締結時に対して制御油圧をどれだけ下げるかを示す補正係数KDNを用いている。
【0043】
中間段判定手段52は、キックダウン指令検出手段51により検出されるキックダウン変速指令が中間変速段への中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定する。具体的には、中間段判定手段52は、自動変速機2のギヤレシオ(変速率)GRATIOが所定の閾値以下になったことに基づいて、キックダウン変速指令が中間段変速指令を含むものと判定する。なお、中間段判定手段52により中間段変速指令を含むものと判定されると、メモリ56に格納されている中間段判定フラグが1に設定される。
【0044】
ここで、中間段判定手段52は、予め定められた変速特性(変速シフトマップ)において、キックダウン変速指令が中間変速段を含むダウンシフト線を跨ぐ変速指令であるか否かに基づいて、キックダウン変速指令が中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定する。例えば、図6に示す変速シフトマップにおいて、点Aに示す車速およびアクセルペダル開度から点Cに示す車速およびアクセルペダル開度へのキックダウン変速指令である場合には、5−4ダウンシフト線および4−3ダウンシフト線の2本のダウンシフト線を跨ぐことになる。この場合、中間段判定手段52は、中間段変速指令を含むものと判定する。
【0045】
第2ロックアップ制御量変更手段532は、中間段判定手段52によりキックダウン変速指令が中間段変速指令を含むと判定された場合には、ロックアップ制御量をさらに変更する。具体的には、第2ロックアップ制御量変更手段532は、中間段判定手段52の中間段変速指令の判定に伴い、ロックアップクラッチ35のロックアップ制御量を第1ロックアップ制御量変更手段531の場合に比べてさらに低下させる。
【0046】
目標段変速指令検出手段54は、中間段判定手段52で判定された中間変速段からキックダウン変速指令の目標変速段への目標段変速指令を検出する。具体的には、目標段変速指令検出手段54は、変速制御手段55から油圧制御装置6に出力される中間変速段から目標変速段への変速指令、すなわち目標段変速指令を監視・検出する。
【0047】
なお、目標段変速指令検出手段54は、自動変速機2の変速率GRATIO(ギヤレシオ)を監視し、このギヤレシオが中間変速段のギヤレシオ以下となったことに基づいて、目標段変速指令を検出するものである。
【0048】
第3ロックアップ制御量変更手段533は、目標段変速指令検出手段54により目標段変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量をさらに変更する。具体的には、第3ロックアップ制御量変更手段533は、メモリ56に格納されている中間段判定フラグが0になったことに基づいて、第2ロックアップ制御量変更手段532により設定されたロックアップ制御量から目標変速段で設定される目標ロックアップ制御量となるように、目標段変速指令検出手段54が目標段変速指令を検出したときから目標変速段になるまでの予め定められた時間でロックアップ制御量を徐々に通常締結時の値に戻すものである。
【0049】
次に、図3を参照して、自動変速機2およびトルクコンバータ3の作動油を制御する油圧制御装置6の構成を説明する。図3は、本実施形態のトルクコンバータ3の油圧制御装置6の一部を示すブロック図である。
【0050】
図3に示すように、油圧制御装置6は、油圧制御装置6全体に作動油を供給するための油圧ポンプ60を含む。油圧ポンプ60は、エンジン1により駆動され、図示しないオイルタンクに貯留された作動油を汲み上げて、油路71を介して汲み上げた作動油をメインレギュレータバルブ61に圧送する。
【0051】
メインレギュレータバルブ61は、油圧ポンプ60から圧送された作動油を調圧してライン圧PLを生成するものである。メインレギュレータバルブ61により調圧されたライン圧PLの作動油は、トルクコンバータ(TC)レギュレータバルブ62に供給されるとともに、図示しない自動変速機2用リニアソレノイドバルブやロックアップクラッチ35用のリニアソレノイドバルブ65に供給される。
【0052】
また、メインレギュレータバルブ61により調圧されたライン圧PLの作動油は、図示しないCRバルブに供給される。CRバルブは、作動油のライン圧PLを減圧して、CR圧(制御油圧)を生成し、各リニアソレノイドバルブ(電磁バルブ)65等にCR圧の作動油を供給する。
【0053】
TCレギュレータバルブ62は、トルクコンバータ3への作動油の供給を制御するものであり、メインレギュレータバルブ61から供給されたライン圧PLの作動油を、油路73を介してロックアップ(LC)制御バルブ63に供給する。また、TCレギュレータバルブ62は、油路74を介してライン圧PLの作動油をトルクコンバータ3の内部に背面側から供給する。
【0054】
LC制御バルブ63は、TCレギュレータバルブ62の制御油圧に応じて、油路72を介して供給されるライン圧PLの作動油を、油路75を介してLCシフトバルブ64に供給する。このように供給されるライン圧PLの作動油は、LCシフトバルブ64を介してトルクコンバータ3のロックアップ制御に用いられる。
【0055】
LCシフトバルブ64は、図示しない(電磁)オン・オフソレノイドバルブによりロックアップクラッチ35の締結(オン)・開放(オフ)を制御するものである。オン・オフソレノイドバルブをONすることによりLCシフトバルブ64が開放されると、LCシフトバルブ64および油路76を介して作動油がロックアップクラッチ35の前面側から供給され、この作動油はロックアップクラッチ35の背面側からオイルタンクに排出される。これにより、ロックアップクラッチ35が係合(締結)される。
【0056】
一方、オン・オフソレノイドバルブをOFFすることによりLCシフトバルブ64が閉止され、作動油が前面側からオイルタンクに排出されると、ロックアップクラッチ35が解放(非締結)される。ロックアップクラッチ35のスリップ量(トルクコンバータ3のスリップ率ETR)、すなわち、係合(ロックアップ時)と解放の間でトルクコンバータ3がスリップさせられるときの係合容量は、前面側と背面側に供給される作動油の圧力(油圧)によって決定される。
【0057】
LC用のリニアソレノイドバルブ65は、図示しないソレノイドコイルの励磁制御に応じて決定される出力圧を発生させ、LC制御バルブ63に作用させる。これにより、メインレギュレータバルブ61から供給されるライン圧PLの作動油は、LC制御バルブ63においてロックアップ制御に必要な圧に調圧される。これにより、ロックアップクラッチ35の係合容量(滑り量)は、リニアソレノイドバルブ65のソレノイドコイルの励磁・非励磁によって調整(制御)される。
【0058】
なお、ロックアップクラッチ35の係合状態を解除するときは(すなわち、ロックアップ制御をOFFするときには)、リニアソレノイドバルブ65の指令値を0にして、LC制御バルブ63を閉止するとともに、LCシフトバルブ64の開閉を切り替えるためのオン・オフソレノイドバルブをOFFにしている。
【0059】
次に、本発明の自動変速機2のロックアップ制御装置50における中間変速段を含むキックダウン変速制御(以下、「飛びキックダウン(KD)制御」ともいう)の動作を説明する。なお、本発明における制御と従来の制御とを比較するために、従来の制御についても説明する。図4は、従来の飛びキックダウン制御のタイミングチャートである。図5は、本発明の飛びキックダウン制御のタイミングチャートである。図6は、本実施形態におけるダウンシフトの変速シフトマップの一例を示す図である。
【0060】
まず、図4のタイミングチャートを用いて、従来の飛びキックダウン制御について説明する。車両が5速段で走行中に、図6に示すように、運転者により点Aに示す車速およびアクセルペダル開度から点Cに示す車速およびアクセルペダル開度へのキックダウン動作がなされると、2本のダウンシフト線、すなわち5−4ダウンシフト線および4−3ダウンシフト線を跨ぐキックダウン制御が実行される。このキックダウン制御の開始に応じて、変速指令値が現在の5速段から4速段に変更され、補正係数KDNが1(通常締結時)から5−4キックダウントルク相用補正係数KDN54トルクに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が下げられ、エンジン1の回転数Neが上昇する。
【0061】
次いで、点aの時点で、ギヤレシオ(変速率)が54KDイナーシャ相閾値を下回ると、ロックアップクラッチ35を再締結させるために、補正係数KDNがKDN54トルクから5−4キックダウンイナーシャ相用補正係数KDN54イナーシャに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が上昇する。
【0062】
次いで、変速指令値が4速段から3速段に変更され、4−3変速制御が開始する。そして、補正係数KDNがKDN54イナーシャから4−3キックダウントルク相用補正係数KDN43トルクに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が再び下げられ、エンジン1の回転数Neが上昇する。
【0063】
次いで、点bの時点で、ギヤレシオが43KDイナーシャ相閾値を下回ると、ロックアップクラッチ35を再締結させるために、補正係数KDNがKDN43トルクから4−3キックダウンイナーシャ相用補正係数KDN43イナーシャに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が上昇する。
【0064】
最後に、点cの時点で、ギヤレシオが43KD終了判定閾値に到達すると、キックダウン制御を終了させて、補正係数KDNがKDN43イナーシャから、ロックアップクラッチ35を締結させるのに必要な油圧であるロックアップ制御油圧に戻され(すなわち、補正係数KDNが1に戻され)、この飛びKD制御を終了する。
【0065】
このように、従来の制御では、飛びKD制御であったとしても、中間変速段の判定をすることなく、常に通常のキックダウン制御、すなわち、1段のキックダウン制御であるものとしてロックアップクラッチ35の締結・非締結の制御を行っていた。そして、点aの時点では、KD制御の終了に向けてロックアップ制御油圧を上昇させるような制御を実施していた。そのため、変速指令値が4速から3速に変更された時点でロックアップ制御油圧を下げようとしても油圧の応答が間に合わず、エンジン1が停滞したり、ロックアップクラッチ35の容量過多による変速ショックを発生したりしてしまうという問題があった。
【0066】
次に、図5のタイミングチャートを用いて、本発明の飛びキックダウン制御について説明する。従来の飛びキックダウン制御の場合と同様に、車両が5速段で走行中に、図6に示すように、運転者により点Aに示す車速およびアクセルペダル開度から点Cに示す車速およびアクセルペダル開度へのキックダウン動作がなされると、2本のダウンシフト線を跨ぐキックダウン制御を実行する。このキックダウン制御の開始に応じて、変速指令値が現在の5速段から4速段に変更され、補正係数KDNが1(通常締結時)から5−4キックダウントルク相用補正係数KDN54トルクに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が下げられ、エンジン1の回転数Neが上昇する。
【0067】
次いで、点a'の時点で、ギヤレシオ(変速率)が54KDイナーシャ相閾値を下回ると、ロックアップクラッチ35を再締結させるために、補正係数KDNがKDN54トルクから5−4キックダウンイナーシャ相用補正係数KDN54イナーシャに変更される。これにより、ロックアップ制御油圧が上昇する。
【0068】
次いで、点d'の時点で、ギヤレシオ(変速率)が中間変速段判定用閾値を下回ると、中間段判定フラグが立ち、補正係数KDNがKDN54イナーシャから中間段用補正係数KDN中間段に変更される。従来の制御であれば、補正係数KDNとしてKDN54イナーシャが継続していたが、本発明では、中間変速段判定がなされると、キックダウン制御が継続するものと判断して、補正係数KDNがKDN54イナーシャからKDN中間段までさらに下げられることとなる。これにより、従来問題となっていたエンジン1の停滞やKD制御における変速ショックの発生を効果的に防止することができる。
【0069】
次いで、点b'の時点で、ギヤレシオが中間段判定フラグリセット閾値を下回ると、中間段判定フラグがリセットされるとともに、変速指令値が4速段から3速段に変更される。そして、KDN中間段から予め設定されているKDN43イナーシャに移行するまでの補正戻し設定時間を決定した後、補正係数KDNについては、この補正戻し設定時間に対応させてKDN中間段からKDN43イナーシャまで徐々に(リニアに)戻していく(増加させていく)ような制御がなされる。そして、補正戻し設定時間の経過後、補正係数KDNがKDN43イナーシャに保持される。
【0070】
最後に、点c'の時点で、ギヤレシオが43KD終了判定閾値に到達すると、キックダウン制御を終了させて、補正係数KDNがKDN43イナーシャから、ロックアップクラッチ35を締結させるのに必要な油圧であるロックアップ制御油圧に戻され(すなわち、補正係数KDNが1に戻され)、この飛びKD制御を終了する。
【0071】
このように、本発明の飛びKD制御では、中間変速段の判定がなされ、KD制御が継続するものと判定された場合には、補正係数KDNがKDN43イナーシャからKDN中間段まで下げるように制御される。これにより、ギヤレシオが中間変速段付近にある(中間変速段を通過する)ときにも、エンジン1の停滞やKD変速ショックの発生を効果的に防止することができる。
【0072】
なお、図6の変速シフトマップのA、B、Cの時点における変速段、変速率および中間段判定フラグF_SFTWAITの関係を図7のタイミングチャートに示す。図7のタイミングチャートでは、フラグリセット閾値とギヤレシオ(変速率)との関係も示される。
【0073】
次に、図8のフローチャートを参照して、本実施形態の自動変速機2のAT−ECU5の全体フローを説明する。図8は、本実施形態のAT−ECU5の変速段決定シーケンスの全体フローを示すフローチャートである。この全体フローは車両の走行中に所定の時間毎に行われる。
【0074】
まず、AT−ECU5は、登降坂判定を実行する(ステップS1)。すなわち、AT−ECU5は、車速Nvとエンジン負荷(スロットル開度センサ206により検出されたスロットル開度TH)とに基づいてAT−ECU5のメモリ56内に記憶されたマップ上の規範加速度を特定し、特定した規範加速度と実加速度との差に応じて、登降坂度合い(勾配)を推定する。ここで、AT−ECU5は、実加速度と規範加速度が概略一致するときは車両が平坦路を走行していると判定し、実加速度が規範加速度を超えるときには車両が降坂路を走行していると判定し、実加速度が規範加速度よりも小さいときには車両が登坂路を走行していると判定する。このように規範加速度と実加速度とを比較することにより、傾斜センサを用いることなく車両走行路の登降坂判定を行うことができる。
【0075】
次いで、AT−ECU5は、路面μ判定処理を実行する(ステップS2)。すなわち、AT−ECU5は、車速センサ204により検出された車速Nv、図示しない車輪速センサにより検出された各車輪の車輪速度Nw、アクセルペダル開度センサ207により検出されたアクセルペダル開度APAT、図示しないシフトレバーポジションセンサにより検出されたシフトレバーのポジション(レバー操作)、ステップS1において推定された登降坂度合い(推定勾配)等に基づいて、路面のμ状態を判断する。
【0076】
次いで、AT−ECU5は、シフトマップ選択処理を実行する(ステップS3)。すなわち、AT−ECU5は、自動変速機2において現在設定されている変速段、上記登降坂度合い、アクセル操作、図示しないブレーキセンサにより検出されたブレーキ操作等に基づいて、メモリ56内に記憶されている複数種類の変速シフトマップから走行路に適した1の変速シフトマップを選択する。本実施形態では、AT−ECU5は、中間変速段の判定における中間段判定フラグのセットおよびクリアについてもこのシフトマップ選択処理において実行する(図9のフローチャート参照)。
【0077】
次いで、AT−ECU5は、変速段決定処理を実行する(ステップS4)。すなわち、AT−ECU5は、ステップS3において選択された変速シフトマップを基準にして、シフトレバーの操作や変速禁止条件などを加味して、最終の変速段を決定する。
【0078】
次いで、AT−ECU5は、クラッチ圧制御処理を実行する(ステップS5)。すなわち、AT−ECU5は、油圧制御装置6を制御することにより、ステップS4において決定された変速段に基づいて、この変速段のクラッチ圧を制御して、最終の変速段を締結させるように油圧制御装置6を制御する。
【0079】
次いで、AT−ECU5は、Fi協調制御処理を実行する(ステップS6)。すなわち、AT−ECU5は、最終の変速段の設定時に、エンジン1の制御と協調して、入力トルクを制御する。
【0080】
次いで、AT−ECU5は、LC領域判断処理を実行する(ステップS7)。すなわち、AT−ECU5は、ステップS1において推定された登降坂度合い、ステップS4において決定された最終変速段、アクセル操作、ブレーキ操作等に基づいて、トルクコンバータ3のLC(ロックアップ)制御を決定する。このLC制御の決定としては、スロットル開度センサ206により検出されたスロットル開度THと車速センサ204により検出された車速Nvとに基づいて、ロックアップ可能領域であるかを判断し、その判断結果に応じて、LCをOFFにするか、スリップ制御(加速または減速)にするか、タイト制御(LCのON制御)にするかなどが決定される。
【0081】
最後に、AT−ECU5は、LC圧制御処理を実行する(ステップS8)。すなわち、AT−ECU5は、ステップS7において判断されたLC制御に基づいて、油圧制御装置6において設定されるロックアップクラッチ(LC)35への供給油圧を制御する。このLC圧制御処理を終えると、AT−ECU5は、変速段決定シーケンスの全体フローを終了し、次の処理を実行するタイミングまで待機する。なお、本発明の特徴的なLC圧制御処理については図10に基づいて後述する。
【0082】
次に、図8の全体フローのステップS3におけるシフトマップ選択処理において実行される中間段判定処理について説明する。図9は、全体フローのステップS3において実行される中間段判定処理を示すフローチャートである。全体フローのステップS3において、変速シフトマップが選択されると、その変速シフトマップの各ダウンシフト線に基づいて、中間段判定処理が実行される。
【0083】
中間段判定処理では、AT−ECU5の変速制御手段55は、車速センサ204により検出された車速Nvおよびアクセルペダル開度センサ207により検出されたアクセルペダル開度APATに基づいて、キックダウン動作が発生したか否かを判断する(ステップS101)。キックダウン動作が発生していないと判断した場合には、変速制御手段55は、メモリ56内の中間段判定フラグF_SFTWAITに0を設定して(ステップS104)、この中間段判定処理を終了する。
【0084】
一方、キックダウン動作が発生したと判断した場合には、変速制御手段55は、図6に示すような変速シフトマップにおいて、キックダウン動作直前のポイントとステップS101において検出された車速Nvおよびアクセルペダル開度APATに基づくポイントとを比較して、現在の変速段(現変速段)が予定されている変速シフトマップ上の変速段(マップ上変速段)よりも大きいか否かを判断する(ステップS102)。現変速段がマップ上変速段より大きくない、すなわち、現変速段とマップ上変速段とが同じかあるいは現変速段の方がマップ上変速段よりも小さいと判断した場合には、変速制御手段55は、メモリ56内の中間段判定フラグF_SFTWAITに0を設定して(ステップS104)、この中間段判定処理を終了する。
【0085】
現変速段がマップ上変速段よりも大きいと判断した場合には、変速制御手段55は、さらに、KD変速動作を行っているときの変速率(ギヤレシオ)が所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS103)。変速率が所定の閾値よりも大きいと判断した場合には、変速制御手段55は、メモリ56内の中間段判定フラグF_SFTWAITに0を設定して(ステップS104)、この中間段判定処理を終了する。
【0086】
一方、変速率が所定の閾値以下であると判断した場合には、変速制御手段55は、メモリ56内の中間段判定フラグF_SFTWAITに1を設定して(ステップS105)、この中間段判定処理を終了する。
【0087】
次に、図8の全体フローのステップS8におけるLC圧制御処理について説明する。図10は、全体フローのステップS8において実行されるLC圧制御処理を示すフローチャートである。このLC圧制御処理は、全体フローのステップS7において判断されたLC領域に基づいて、ロックアップクラッチ35の全体的な供給油圧を制御するものであり、AT−ECU5により実行される。
【0088】
LC圧制御処理では、AT−ECU5は、トルクコンバータ3の目標スリップ率ETRTを検索する(ステップS201)。トルクコンバータ3の目標スリップ率ETRTは、自動変速機2のメインシャフト22の回転数Niとスロットル開度THとを検索軸として公知のマップで検索される値であり、このマップは変速段毎に持ち替えられる。また、エアコン等、外部負荷の作動状態により、このマップは複数設定されている。
【0089】
次いで、AT−ECU5は、エンジン1の出力トルク、ステップS201において検索された目標スリップ率ETRT、トルクコンバータ3のトルコン特性、ロックアップクラッチ35の容量特性に基づいて、ベース圧QLCBASEを算出する(ステップS202)。
【0090】
そして、AT−ECU5は、ギヤレシオに基づいて、現在自動変速機2が変速中であるか否かを判断する(ステップS203)。自動変速機2が変速中ではないと判断した場合には、AT−ECU5は、別途定められた定常LC制御圧算出処理を実行し、定常時のLC制御油圧を決定して(ステップS205)、このLC圧制御処理を終了する。
【0091】
一方、現在自動変速機2が変速中であると判断した場合には、AT−ECU5は、続いて、その変速がDOWNシフトであるか否かを判断する(ステップS204)。DOWNシフトの変速ではないと判断した場合には、AT−ECU5は、別途定められたUPシフトLC制御圧算出処理を実行し、UPシフト時のLC制御油圧を決定して(ステップS206)、このLC圧制御処理を終了する。また、DOWNシフトの変速であると判断した場合には、AT−ECU5は、別途定められたDOWNシフトLC制御圧算出処理を実行し、DOWNシフト時のLC制御油圧を決定して(ステップS207)、このLC圧制御処理を終了する。
【0092】
ステップS207のDOWNシフトLC制御圧算出処理が本発明の特徴部分であるので、図11のフローチャートおよび図2のブロック図を用いて、その内容を詳述する。図11は、LC圧制御処理のステップS207において実行されるDOWNシフトLC制御圧算出処理を示すフローチャートである。本実施形態では、特に、キックダウン制御時において中間段判定処理を行っている間、必要なロックアップ制御油圧に対して係数掛けをしてその制御油圧を減じるような制御を行い、中間段判定処理の終了後には、飛びKD制御の変速段などの条件に応じて予め規定された時間で元の必要ロックアップ制御油圧まで徐々に戻すような処理を行うものである。
【0093】
DOWNシフトLC制御圧算出処理では、AT−ECU5は、まず初期化処理を実行する(ステップS301)。この初期化処理は自動変速機2の変速制御の開始後に一度のみ行われるものである。初期化処理では、AT−ECU5は、まず、通常キックダウン制御中におけるLC油圧補正係数KDNBASEを1に設定し、KD中間段判定処理中のLC油圧補正係数KDNWを1に設定し、図5の徐々戻し、すなわち、KD中間段判定処理後に補正係数を戻す際の1処理(1サイクル)当たりの戻し量DKDNWをその下限戻し量DKDNWLIMに設定する。
【0094】
次いで、AT−ECU5は、通常キックダウン制御時の油圧補正係数KDNBASEを検索し、通常キックダウン制御中のLC油圧補正係数目標値KDNTGTに設定する(ステップS302)。このLC油圧補正係数目標値KDNTGTは、スロットル開度THと車速Nvの二次元マップデータである。本実施形態のキックダウン制御では、その変速モード毎にこれらのマップデータが持ち替えられ、さらに、対応するキックダウン制御においてトルク相とイナーシャ相でその係数が切り替えられるものである。
【0095】
そして、AT−ECU5は、予め定められた処理(図12のフローチャート参照)に基づいて、KD中間段判定処理時における油圧補正係数KDNWを算出する(ステップS303)。図12のフローチャートについては後述する。
【0096】
次いで、AT−ECU5は、キックダウン制御中の油圧補正係数最終値KDNを算出する(ステップS304)。具体的には、AT−ECU5は、ステップS302において検索された通常キックダウン制御中のLC油圧補正係数KDNBASEと、ステップS303において算出されたKD中間段判定処理中のLC油圧補正係数KDNWとを乗算することにより、この油圧補正係数最終値KDNを算出する。
【0097】
最後に、AT−ECU5は、キックダウン制御中のLC制御油圧QLCを算出し、LC制御油圧を決定する(ステップS305)。具体的には、AT−ECU5は、LC制御基準油圧QLCBASEと、ステップS304において算出されたキックダウン制御中のLC制御油圧補正係数最終値KDNとを乗算することにより、このキックダウン制御中のLC制御油圧QLCを算出する。そして、AT−ECU5はこのDOWNシフトLC制御圧算出処理を終了する。
【0098】
ここで、AT−ECU5により最終的に算出されたLC制御油圧QLCが決定されたLC制御油圧となる。本実施形態では、ステップS303の補正係数算出処理により決定されるLC制御油圧が切り替わる。例えば、キックダウン制御の開始時には、第1ロックアップ制御量変更手段531は、決定されたLC制御油圧QLC(KDN54トルク×LC制御基準油圧)を油圧制御装置6に出力する。また、中間段判定手段52により中間段変速指令を含むと判定されると、第2ロックアップ制御量変更手段532は、決定されたLC制御油圧QLC(KDN中間段×LC制御基準油圧)を油圧制御装置6に出力する。さらに、目標段変速指令検出手段54により目標変速段への変速指令が検出されると、第3ロックアップ制御量変更手段533は、後述する図12のフローチャートのサブルーチンで補正係数KDNが徐々に1に近づけられるような制御に応じて決定されたLC制御油圧QLC(徐々戻し中の補正係数である(KDNW+DKDNW)×LC制御基準油圧)を油圧制御装置6に出力する(図12参照)。
【0099】
次に、図11のDOWNシフトLC制御圧算出処理のステップS303におけるKD中間段判定時における油圧補正係数KDNW算出処理について説明する。図12は、図11のDOWNシフトLC制御圧算出処理のステップS303におけるKD中間段判定時における油圧補正係数KDNW算出処理を示すフローチャートである。
【0100】
本処理において、キックダウン指令検出手段51は、メモリ56に格納されている中間段判定フラグF_SFTWAITを確認(参照)し、この中間段判定フラグF_SFTWAITが1、すなわち本フラグが立っているか否かを判断する(ステップS401)。F_SFTWAITが1ではないと判断した場合には、AT−ECU5は、KD中間段判定時における油圧補正は不要であるため、油圧補正係数目標値KDNWTGTを1に設定する(ステップS402)。
【0101】
一方、F_SFTWAITが1であると判断した場合には、AT−ECU5は、KD中間段判定時における油圧補正係数目標値KDNWTGTを検索し(ステップS403)、このKDNWTGTの上限リミットMAXを1に設定し(ステップS404)、KD中間段補正における戻し量設定時間TMDKDNWを検索する(ステップS405)。そして、AT−ECU5は、KD中間段判定処理中のLC油圧補正係数KDNWと、ステップS405において検索した戻し量設定時間TMDKDNWとに基づいて、以下の式に示すように、KD中間段補正戻し量DKDNWを算出する(ステップS406)。
DKDNW=(1−KDNW)/TMDKDNW
【0102】
次いで、AT−ECU5は、KD中間段補正戻し量DKDNWの下限リミットとして、KD中間段判定処理後に補正係数を戻す際の1処理(1サイクル)当たりの戻し量DKDNWを下限戻し量DKDNWLIMに設定する(ステップS407)。
【0103】
次いで、AT−ECU5は、KD中間段判定処理中のLC油圧補正係数KDNWと1処理当たりの戻し量DKDNWとの和(KDNW+DKDNW)がKD中間判定処理中のLC油圧補正係数目標値KDNWTGTよりも小さいか否かを判断する(ステップS408)。この和が油圧補正係数目標値KDNWTGT以上であると判断した場合には、AT−ECU5はKD中間段判定処理中のLC油圧補正係数KDNWをLC油圧補正係数目標値KDNWTGTに設定し(ステップS409)、本処理を終了する。
【0104】
一方、この和が油圧補正係数目標値KDNWTGTよりも小さいと判断した場合には、AT−ECU5は、KD中間段判定中のLC油圧補正係数KDNWをそのLC油圧補正係数KDNWに1処理当たりの戻し量DKDNWを加えた値に設定して(ステップS410)、本処理を終了する。
【0105】
このような処理を行うことにより、補正係数KDNは、KDN中間段から戻し量設定時間とKDN43イナーシャとの関係で決まる戻し量で一連の処理の実行タイミング毎に徐々に戻されることとなる。これにより、ギヤレシオが中間段を通過する際には十分に制御油圧を下げることができるので、従来問題となっていたエンジン1の停滞やキックダウン制御中の変速ショックの発生を効果的に防止することができる。
【0106】
以上説明したように、本発明の自動変速機2のロックアップ制御装置(AT−ECU5)によれば、トルクコンバータ3の入力側であるクランクシャフト21と出力側であるメインシャフト22とをロックアップ制御量に応じて機械的に直結可能なロックアップクラッチ35を備え、所定の運転領域でロックアップ制御量を増大してロックアップクラッチ35を締結させるようにした自動変速機2のロックアップ制御装置50において、ロックアップクラッチ35の締結中におけるキックダウン変速指令を検出するキックダウン指令検出手段51と、キックダウン指令検出手段51によりキックダウン変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量を変更する第1ロックアップ制御量変更手段531と、キックダウン指令検出手段51によりキックダウン変速指令が中間変速段への中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定する中間段判定手段52と、中間段判定手段52によりキックダウン変速指令が中間段変速指令を含むと判定された場合には、ロックアップ制御量をさらに変更する第2ロックアップ制御量変更手段532と、中間段判定手段52で判定された中間変速段からキックダウン変速指令の目標変速段への目標段変速指令を検出する目標段変速指令検出手段54と、目標段変速指令検出手段54により目標段変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量をさらに変更する第3ロックアップ制御量変更手段533とを備えることとした。これにより、キックダウン指令が中間段変速指令を含むような複数変速段の飛びキックダウン制御である場合に、1段の変速毎に制御油圧を通常の値に戻すような処理を行うことがない。したがって、従来の飛びキックダウン制御において問題となっていたエンジン1の停滞やキックダウン制御中の変速ショックの発生を効果的に防止することができる。また、キックダウン制御時のエンジン1の回転数Neの上昇がスムーズとなり、エンジン1や自動変速機2のレスポンスを向上させることができる。
【0107】
本発明の自動変速機2のロックアップ制御装置では、中間段判定手段52は、予め定められた変速特性において、キックダウン変速指令が中間変速段を含むダウンシフト線を跨ぐ変速指令であるか否かに基づいて、キックダウン変速指令が中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定すればよい。
【0108】
本発明の自動変速機2のロックアップ制御装置では、目標段変速指令検出手段54は、自動変速機2のギヤレシオを監視し、該ギヤレシオが中間変速段以下となったことに基づいて、目標段変速指令を検出すればよい。
【0109】
本発明の自動変速機2のロックアップ制御装置では、第3ロックアップ制御量変更手段533は、第2ロックアップ制御量変更手段532により設定されたロックアップ制御量から目標変速段で設定される目標ロックアップ制御量となるように、目標段変速指令検出手段54が目標段変速指令を検出したときから目標変速段になるまでの時間で徐々に変更させればよい。
【0110】
以上、本発明の自動変速機のロックアップ制御装置の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は、これらの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書および図面に記載のない形状・構造・機能を有するものであっても、本発明の作用・効果を奏する以上、本発明の技術的思想の範囲内である。すなわち、上記実施形態の自動変速機2のロックアップ制御装置50、AT−ECU5あるいは油圧制御装置6を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
5 ロックアップ制御装置
6 油圧制御装置
8 アクセルペダル
21 クランクシャフト
22 メインシャフト
35 ロックアップクラッチ
50 ロックアップ制御装置
51 キックダウン指令検出手段
52 中間段判定手段
53 ロックアップ制御量設定手段
54 目標段変速指令検出手段
55 変速制御手段
56 メモリ
201 クランクシャフト回転数センサ
202 メインシャフト回転数センサ
203 カウンタシャフト回転数センサ
204 車速センサ
206 スロットル開度センサ
207 アクセルペダル開度センサ
531 第1ロックアップ制御量変更手段
532 第2ロックアップ制御量変更手段
533 第3ロックアップ制御量変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータの入力側と出力側とをロックアップ制御量に応じて機械的に直結可能なロックアップクラッチを備え、所定の運転領域でロックアップ制御量を増大して前記ロックアップクラッチを締結させるようにした自動変速機のロックアップ制御装置において、
前記ロックアップクラッチの締結中におけるキックダウン変速指令を検出するキックダウン指令検出手段と、
前記キックダウン指令検出手段によりキックダウン変速指令が検出されたとき、ロックアップ制御量を変更する第1ロックアップ制御量変更手段と、
前記キックダウン指令検出手段により検出される前記キックダウン変速指令が中間変速段への中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定する中間段判定手段と、
前記中間段判定手段により前記キックダウン変速指令が前記中間段変速指令を含むと判定された場合には、前記ロックアップ制御量をさらに変更する第2ロックアップ制御量変更手段と、
前記中間段判定手段で判定された前記中間変速段から前記キックダウン変速指令の目標変速段への目標段変速指令を検出する目標段変速指令検出手段と、
前記目標段変速指令検出手段により前記目標段変速指令が検出されたとき、前記ロックアップ制御量をさらに変更する第3ロックアップ制御量変更手段と
を備えることを特徴とする自動変速機のロックアップ制御装置。
【請求項2】
前記中間段判定手段は、予め定められた変速特性において、前記キックダウン変速指令が前記中間変速段を含むダウンシフト線を跨ぐ変速指令であるか否かに基づいて、前記キックダウン変速指令が前記中間段変速指令を含む変速指令であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の自動変速機のロックアップ制御装置。
【請求項3】
前記目標段変速指令検出手段は、前記自動変速機のギヤレシオを監視し、該ギヤレシオが前記中間変速段以下となったことに基づいて、前記目標段変速指令を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の自動変速機のロックアップ制御装置。
【請求項4】
前記第3ロックアップ制御量変更手段は、前記第2ロックアップ制御量変更手段により設定された前記ロックアップ制御量から前記目標変速段で設定される目標ロックアップ制御量となるように、前記目標段変速指令検出手段が前記目標段変速指令を検出したときから前記目標変速段になるまでの時間で徐々に変更させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の自動変速機のロックアップ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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