説明

自動変速機用流体フィルタ

【課題】ケースの剛性及びケースの成形性を向上させ得るとともに、フィルタ使用時の圧力損失を低減できる外観の見栄えに優れた自動変速機用流体フィルタを提供する。
【解決手段】流出口2aを有する樹脂製の上側ケース2と、流入口3aを有する樹脂製の下側ケース3と、濾材4及び濾材の周縁部を保持し且つ上側ケース及び下側ケースの間に挟持される樹脂製の保持枠5を有するフィルタエレメント6と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、上側ケース及び下側ケースのうちの少なくとも一方のケースは、保持枠の対向する壁部5aのそれぞれに接合される一対の接合部8,10と、一対の接合部を連絡し且つ一方のケースの外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁7,17と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用流体フィルタに関し、さらに詳しくは、ケースの剛性及びケースの成形性を向上させ得るとともに、フィルタ使用時の圧力損失を低減できる外観の見栄えに優れた自動変速機用流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動変速機用流体フィルタとして、例えば、図10に示しように、流出口102aを有する上側ケース102と、流入口103aを有する下側ケース103と、濾材104及び濾材104の周縁部を保持し且つ両ケース102、103の間に挟持される保持枠105を有するフィルタエレメント106と、を備えてなるものが一般に知られている。そして、両ケース102、103の内表面側には、ケースの剛性を高めるためにケースの幅方向に延びる複数のリブ107が形成されている。これらリブ107によって、吸引負圧でケースがエレメント側に変形して圧力損失が高くなり性能低下を招くことを防止している。なお、特許文献1には、上側ケース及び下側ケースのそれぞれの内表面側に、濾材の変形を防止するためのリブを形成してなる流体フィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−24532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の自動変速機用流体フィルタでは、ケース102、103の内表面側に複数のリブ107が形成されているので、ケースの成形時にひけが発生し易く外観の見栄えが低下してしまう。特に、透明又は半透明のケースと保持枠とをレーザ溶着により接合する場合には、ケースの外観の見栄えが著しく低下してしまう。また、樹脂使用量が多くなり製造コストが高くなってしまう。さらに、使用時に濾過室内を流れる流体の流れ性への影響が大きく圧力損失が高くなってしまう等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ケースの剛性及びケースの成形性を向上させ得るとともに、フィルタ使用時の圧力損失を低減できる外観の見栄えに優れた自動変速機用流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.流出口を有する樹脂製の上側ケースと、
流入口を有する樹脂製の下側ケースと、
濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース及び前記下側ケースの間に挟持される樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備える自動変速機用流体フィルタであって、
前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの少なくとも一方のケースは、前記保持枠の対向する壁部のそれぞれに接合される一対の接合部と、該一対の接合部を連絡し且つ該一方のケースの外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁と、を備えることを特徴とする自動変速機用流体フィルタ。
2.前記一対の接合部のそれぞれは、その外端側が前記保持枠の前記壁部に接合され且つ前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁と、該第1横壁の内端側から立ち上がる立壁と、該立壁の立上がり端側から前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第2横壁と、を有し、該第2横壁の内端側に前記連絡壁の外端側が接続されている上記1.記載の自動変速機用流体フィルタ。
3.前記一対の接合部のそれぞれは、その外端側が前記保持枠の前記壁部に接合され且つ前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁と、該第1横壁の内端側から立ち上がる立壁と、を有し、該立壁の立上がり端側に前記連絡壁の外端側が接続されている上記1.記載の自動変速機用流体フィルタ。
4.前記一方のケースはレーザ透過性樹脂からなり、前記保持枠はレーザ吸収性樹脂からなり、前記接合部は、前記保持枠の前記壁部にレーザ溶着により接合されている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動変速機用流体フィルタによると、少なくとも一方のケースは、保持枠の対向する壁部のそれぞれに接合される一対の接合部と、一対の接合部を連絡し且つ一方のケースの外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁と、を備えるので、ケースの内表面側にリブを設けることなく、縦断面円弧状の連絡壁によりケースの剛性を向上させることができる。また、ケースの肉厚は略一様となるため、ケース成形時の樹脂流動性が高められ且つ樹脂使用量を低減でき、ケースの成形性を向上させることができる。また、フィルタ使用時にケース内での流体の流れ性が高められ圧力損失を低減できる。さらに、ケースの外観の見栄えに優れる。
また、前記一対の接合部のそれぞれが、第1横壁と、立壁と、第2横壁と、を有し、該第2横壁の内端側に前記連絡壁の外端側が接続されている場合は、立壁によりケースにかかる応力集中箇所を分散させつつ第1横壁から遠ざけることができ、ケースの剛性(特に接合強度)を更に向上させることができる。また、第1横壁及び第2横壁を治具で押圧した状態で第1横壁と保持枠の壁部とを接合することができ、ケースの成形性を更に向上させることができる。さらに、第1横壁及び第2横壁を治具で押圧した際に、立壁のたわみにより第1横壁が保持枠の壁部に容易に追従されるため、ケースの成形性を更に向上させることができる。
また、前記一対の接合部のそれぞれが、第1横壁と、立壁と、を有し、該立壁の立上がり端側に前記連絡壁の外端側が接続されている場合は、立壁によりケースにかかる応力集中箇所を分散させつつ第1横壁から遠ざけることができ、ケースの剛性(特に接合強度)を更に向上させることができる。
さらに、前記一方のケースがレーザ透過性樹脂からなり、前記保持枠がレーザ吸収性樹脂からなり、前記接合部が、前記保持枠の前記壁部にレーザ溶着により接合されている場合は、ケースと保持枠とを容易に接合できるとともに、透明又は半透明のケースを採用してもケースの外観の見栄えに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係るオイルフィルタの平面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面拡大図である。
【図4】実施例に係る上側ケースの斜視図である。
【図5】上記オイルフィルタの製造方法を説明するための説明図である。
【図6】その他の形態の上側ケースを説明するための要部断面図である。
【図7】更にその他の形態の上側ケースを説明するための要部断面図である。
【図8】更にその他の形態の上側ケースを説明するための要部断面図である。
【図9】更にその他の形態の上側ケースを説明するための要部断面図である。
【図10】従来のオイルフィルタの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
1.自動変速機用流体フィルタ
本実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタは、流出口を有する樹脂製の上側ケース(2)と、流入口を有する樹脂製の下側ケース(3)と、濾材(4)及び濾材の周縁部を保持し且つ上側ケース及び下側ケースの間に挟持される樹脂製の保持枠(5)を有するフィルタエレメント(6)と、を備える自動変速機用流体フィルタであって、上側ケース及び下側ケースのうちの少なくとも一方のケースは、保持枠の対向する壁部(5a)のそれぞれに接合される一対の接合部(8,10)と、一対の接合部を連絡し且つ一方のケースの外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁(7,17)と、を備えることを特徴とする(例えば、図3等参照)。
【0011】
上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタとしては、例えば、〔1〕一対の接合部のそれぞれは、その外端側が保持枠の壁部に接合され且つ一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁(8a,10a)と、第1横壁の内端側から立ち上がる立壁(8b,10b)と、立壁の立上がり端側から一方のケースの内側に向かって横方に延びる第2横壁(8c,10c)と、を有し、第2横壁の内端側に連絡壁の外端側が接続されている形態(例えば、図3等参照)、〔2〕一対の接合部のそれぞれは、その外端側が保持枠の壁部に接合され且つ一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁(8a’)と、第1横壁の内端側から立ち上がる立壁(8b’)と、を有し、立壁の立上がり端側に連絡壁の外端側が接続されている形態(例えば、図6等参照)、〔3〕一対の接合部のそれぞれは、その外端側が保持枠の壁部に接合され且つ一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁(8a")を有し、第1横壁の内端側に連絡壁の外端側が接続されている形態(例えば、図7等参照)等を挙げることができる。
【0012】
上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタとしては、例えば、一方のケースはレーザ透過性樹脂からなり、保持枠はレーザ吸収性樹脂からなり、接合部は、保持枠の壁部にレーザ溶着により接合されている形態を挙げることができる。この場合、特に上記〔1〕形態であることが好ましい。第1横壁及び第2横壁を押圧する治具(15a,15b)の隙間を介して一方のケースから保持枠の壁部に向かってレーザ(L)を照射すれば、一方のケースの第1横壁と保持枠とを容易且つ確実に接合できるためである(例えば、図5等参照)。
【0013】
上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタとしては、例えば、上記連絡壁の曲率半径(R)は50〜300mm(好ましくは100〜200mm、特に130〜180mm)である形態を挙げることができる(例えば、図5等参照)。これにより、ケースの剛性を向上させ得るとともに、ケース内の空間を必要最小限として流体の流れ性の低下を抑制できる。
【0014】
上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタとしては、例えば、上記一方のケースは平面略矩形状に形成され、上記連絡壁は、一方のケースの長尺方向を軸心とする円弧面状に形成されていることができる(例えば、図4等参照)。これにより、ケースの剛性を向上させ得るとともに、ケース内を長尺方向に流れる流体の流れ性の低下を抑制できる。
【0015】
上記実施形態1.に係る自動変速機用流体フィルタとしては、例えば、上記濾材は、ひだ折り状に形成され、上記保持枠は、濾材のひだ折り側の縁端(4a)を保持し且つ一方のケースの接合部が接合される一対の第1壁部(5a)と、これら第1壁部に連なり且つ濾材の非ひだ折り側の縁端(4b)を保持する一対の第2壁部(5b)と、を有し、これら第1壁部及び第2壁部は、濾材のひだ折高さ(h1)より大きな高さ(h2)を有する形態を挙げることができる(例えば、図2等参照)。これにより、濾材の濾過面積を大きくして濾過効率を向上させることができる。
【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「自動変速機用流体フィルタ」としてオイルフィルタを例示する。
【0017】
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1〜図4に示すように、流出口2aを有するレーザ透過性樹脂からなる上側ケース2と、流入口3aを有するレーザ透過性樹脂からなる下側ケース3と、濾材4及び濾材4の周縁部を保持し且つ上側ケース2及び下側ケース3の間に挟持されるレーザ吸収性樹脂からなる保持枠5を有するフィルタエレメント6と、を備えている。これら上側ケース2及び下側ケース3のそれぞれは、平面略矩形状に形成されている。
【0018】
上記フィルタエレメント6は、濾材4及び保持枠5をインサート成形により一体成形してなされている。この濾材4は、平面略矩形状で且つひだ折り状に形成されている。また、この保持枠5は、濾材4のひだ折り側の縁端4aを保持する一対の第1壁部5aと、これら第1壁部5aに連なり且つ濾材4の非ひだ折り側の縁端4bを保持する一対の第2壁部5bと、を有している。これら第1壁部5a及び第2壁部5bは、濾材4のひだ折高さh1より大きな高さh2を有している。そして、この保持枠5、上側ケース2及び下側ケース3によって、オイルフィルタ1の濾過室Sが形成されるとともに、オイルフィルタ1の外側面(意匠側面)が形成される。
【0019】
上記上側ケース2は、図2及び図3に示すように、一対の第1壁部5aのそれぞれに接合される一対の接合部8と、一対の第2壁部5bのそれぞれに接合される一対の接合部9と、これら接合部8,9を連絡し且つ上側ケース2の外方(上方)に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁7と、を備えている。これら接合部8,9は連続しており、全体として段付きフランジ状とされている(図4参照)。また、この連絡壁7は、上側ケース2の長尺方向を軸心とする円弧面状に形成され、その曲率半径R(図5参照)は約150mmとされている。
【0020】
上記各接合部8は、図3に示すように、その外端側が保持枠5の第1壁部5aの上端面にレーザ溶着により接合され且つ上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁8aと、この第1横壁8aの内端側から立ち上がる立壁8bと、この立壁8bの立上がり端側から上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第2横壁8cと、を有している。この第2横壁8cの内端側には連絡壁7の外端側が接続されている。
【0021】
上記各接合部9は、図2に示すように、その外端側が保持枠5の第2壁部5bの上端面にレーザ溶着により接合され且つ上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁9aと、この第1横壁9aの内端側から立ち上がる立壁9bと、この立壁9bの立上がり端側から上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第2横壁9cと、を有している。この第2横壁9cの内端側には連絡壁7の外端側が接続されている。
【0022】
上記下側ケース3は、図2及び図3に示すように、一対の第1壁部5aのそれぞれに接合される一対の接合部10と、一対の第2壁部5bのそれぞれに接合される一対の接合部11と、これら一対の接合部10,11を連絡し且つ下側ケース3の外方(下方)に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁17と、を備えている。これら接合部10,11は連続しており、全体として段付きフランジ状とされている。また、この連絡壁17は、下側ケース3の長尺方向を軸心とする円弧面状に形成され、その曲率半径は約150mmとされている。
【0023】
上記各接合部10は、図3に示すように、その外端側が保持枠5の第1壁部5aの下端面にレーザ溶着により接合され且つ下側ケース3の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁10aと、この第1横壁10aの内端側から立ち上がる立壁10bと、この立壁10bの立上がり端側から上側ケース3の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第2横壁10cと、を有している。この第2横壁10cの内端側には連絡壁17の外端側が接続されている。
【0024】
上記各接合部11は、図2に示すように、その外端側が保持枠5の第2壁部5bの下端面にレーザ溶着により接合され且つ下側ケース3の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁11aと、この第1横壁11aの内端側から立ち上がる立壁11bと、この立壁11bの立上がり端側から下側ケース3の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第2横壁11cと、を有している。この第2横壁11cの内端側には連絡壁17の外端側が接続されている。
【0025】
(2)オイルフィルタの製造方法
次に、上記構成のオイルフィルタ1の製造方法について説明する。図5に示すように、上側ケース2の接合部8(9)を保持枠5の壁部5a(5b)の上端面に当接し、その当接状態で上側ケース2の第1横壁8a(9a)及び第2横壁8c(9c)を治具15a,15bで下方に向かって押圧する。その押圧状態で治具15a、15bの隙間を介して上方からレーザLを上側ケース2の全周にわたって照射する。すると、レーザLは、上側ケース2の第1横壁8a(9a)を透過して保持枠5の上端面に形成された凸部18に至り、この凸部18が溶融されるとともに上側ケース2の第1横壁8a(9a)が溶融され、上側ケース2の第1横壁8a(9a)と保持枠5とがレーザ溶着により接合される。なお、下側ケース3は、上述の上側ケース2と略同様の方法にて保持枠5にレーザ溶着にて接合されるものとする。
【0026】
ここで、上記オイルフィルタ1は、オイルパン13(図2参照)内でオイルに浸漬された状態で使用される。そして、図2及び図3に破線矢印で示すように、自動変速機側で使用されたオイルはオイルパン13内に貯留され、その貯留オイルは流入口3aから濾過室S内に流入されて濾材4により濾過される。その濾過後のオイルは流出口2aから流出されて自動変速機側に戻される。
【0027】
(3)実施例の効果
本実施例のオイルフィルタ1によると、ケース2,3は、保持枠5の対向する壁部5aのそれぞれに接合される一対の接合部8,10と、一対の接合部8,10を連絡し且つケース2,3の外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁7,17と、を備えるので、ケース2,3の内表面側にリブを設けることなく、縦断面円弧状の連絡壁7,17によりケース2,3の剛性を向上させることができる。また、ケース2,3の肉厚は略一様となるため、ケース成形時の樹脂流動性が高められ且つ樹脂使用量を低減でき、ケース2,3の成形性を向上させることができる。また、フィルタ使用時にケース2,3内での流体の流れ性が高められ圧力損失を低減できる。さらに、ケース2,3の外観の見栄えに優れる。
【0028】
また、本実施例では、一対の接合部8,10のそれぞれを、第1横壁8a,10aと、立壁8b,10bと、第2横壁8c,10cと、を有して構成し、第2横壁8c,10cの内端側に連絡壁7,17の外端側を接続するようにしたので、立壁8b,10bによりケース2,3にかかる応力集中箇所を分散させつつ第1横壁8a,10aから遠ざけることができ、ケース2,3の剛性(特に接合強度)を更に向上させることができる。また、第1横壁8a,10a及び第2横壁8c,10cを治具15a,15bで押圧した状態で第1横壁8a、10aと保持枠5の壁部5aとをレーザ溶着により接合することができ、ケース2,3の成形性を更に向上させることができる。さらに、第1横壁8a,10a及び第2横壁8c,10cを治具15a,15bで押圧した際に、立壁8b,10bのたわみにより第1横壁8a,10aが保持枠5の壁部5aに追従されるため、ケース2,3の成形性を更に向上させることができる。
【0029】
また、本実施例では、ケース2,3をレーザ透過性樹脂からなし、保持枠5をレーザ吸収性樹脂からなし、接合部8,10を、保持枠5の壁部5aにレーザ溶着により接合するようにしたので、ケース2,3と保持枠5とを容易に接合できるとともに、透明又は半透明のケース2,3を採用してもケース2,3の外観の見栄えに優れる。
【0030】
また、本実施例では、ケース2,3を平面略矩形状に形成し、連絡壁7,17を、ケース2,3の長尺方向を軸心とする円弧面状に形成したので、ケース2,3の剛性を向上させ得るとともに、ケース2,3内を長尺方向に流れる流体の流れ性の低下を抑制できる。
【0031】
さらに、本実施例では、濾材4をひだ折り状に形成し、保持枠5を、濾材4のひだ折り側の縁端4aを保持し且つケース2,3の第1横壁8a,10aが接合される一対の第1壁部5aと、これら第1壁部5aに連なり且つ濾材4の非ひだ折り側の縁端4bを保持する一対の第2壁部5bと、を有して構成し、これら第1壁部5a及び第2壁部5bを、濾材4のひだ折高さh1より大きな高さh2を有して構成したので、濾材4の濾過面積を大きくして濾過効率を向上させることができる。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、ケース2,3の接合部8,10として、第1横壁8a,10a、立壁8b,10b及び第2横壁8c,10cを備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、ケース2(又はケース3)の接合部8’として、その外端側が保持枠5の第1壁部5aの上端面にレーザ溶着により接合され且つ上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁8a’と、この第1横壁8a’の内端側から立ち上がる立壁8b’と、を備えるものを採用し、立壁8b’の立上がり端側に連絡壁7の外端側を接続するようにしてもよい。また、例えば、図7に示すように、ケース2(又はケース3)の接合部8"として、その外端側が保持枠5の第1壁部5aの上端面にレーザ溶着により接合され且つ上側ケース2の内側(中央側)に向かって略水平方向に延びる第1横壁8a"を備えるものを採用し、この第1横壁8a"の内端側に連絡壁7の外端側を接続するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例において、例えば、図8に示すように、ケース2(又はケース3)の連絡壁7に複数の略U字状の凹凸部21を形成したり、例えば、図9に示すように、ケース2(又はケース3)の連絡壁7に複数の波状リブ22を形成したり、ケース2(又はケース3)の連絡壁7に複数の略V字状の凹凸部を形成したりしてもよい。なお、複数のV字状の凹凸部を形成する場合には、濾材4とケース2,3とのオイル通過面積が略一様となるように、濾材4のひだ折形状に対応して複数の凹凸部を設けることが好ましい。
【0034】
また、上記実施例では、両ケース2,3が円弧面状の連絡壁7,17を備える形態を例示したが、これに限定されず、例えば、両ケース2,3のうちの一方のケースが円弧面状の連絡壁を備え、他方のケースが平面状の連絡壁を備えるようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施例では、1つの円弧状部を有する連絡壁7,17を例示したが、これに限定されず、例えば、曲率半径の異なる複数の円弧状部を有する連絡壁7,17としたり、円弧状部と直線状部とを有する連絡壁7,17としたりしてもよい。
【0036】
また、上記実施例では、ケース2,3の長尺方向を軸心とする円弧面状の連絡壁7,17を例示したが、これに限定されず、例えば、ケース2,3の短尺方向を軸心とする円弧面状の連絡壁としてもよい。また、ケース2,3の中央側に向かって膨らむドーム状の連絡壁としてもよい。
【0037】
また、上記実施例では、筒状の流入口3aを例示したが、これに限定されず、例えば、下側ケース2に形成された孔部により流入口を形成してもよい。なお、オイルパン13内のエア吸込みを抑制できるといった観点から、筒状の流入口3aであることが好ましい。
【0038】
また、上記実施例では、ひだ折状の濾材4を例示したが、これに限定されず、例えば、シート状、波状、袋状等の濾材としてもよい。なお、濾材の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。
【0039】
さらに、上記実施例では、ケース2,3と保持枠5との接合形態としてレーザ溶着を例示したが、これに限定されず、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、接着剤等による接着等にて両者を接合するようにしてもよい。
【0040】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0041】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
トルコン式、CVT式等の自動変速機で使用される流体を濾過する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両の自動変速機用流体フィルタとして好適に利用される。
【符号の説明】
【0043】
1;オイルフィルタ、2;上側ケース、2a;流入口、3;下側ケース、3a;流入口、4;濾材、5;保持枠、5a;第1壁部、6;フィルタエレメント、7,17;連絡壁、8,10;接合部、8a,10a;第1横壁、8b,10b;立壁、8c,10c;第2横壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流出口を有する樹脂製の上側ケースと、
流入口を有する樹脂製の下側ケースと、
濾材及び該濾材の周縁部を保持し且つ前記上側ケース及び前記下側ケースの間に挟持される樹脂製の保持枠を有するフィルタエレメントと、を備える自動変速機用流体フィルタであって、
前記上側ケース及び前記下側ケースのうちの少なくとも一方のケースは、前記保持枠の対向する壁部のそれぞれに接合される一対の接合部と、該一対の接合部を連絡し且つ該一方のケースの外方に膨らむ縦断面円弧状の連絡壁と、を備えることを特徴とする自動変速機用流体フィルタ。
【請求項2】
前記一対の接合部のそれぞれは、その外端側が前記保持枠の前記壁部に接合され且つ前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁と、該第1横壁の内端側から立ち上がる立壁と、該立壁の立上がり端側から前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第2横壁と、を有し、該第2横壁の内端側に前記連絡壁の外端側が接続されている請求項1記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項3】
前記一対の接合部のそれぞれは、その外端側が前記保持枠の前記壁部に接合され且つ前記一方のケースの内側に向かって横方に延びる第1横壁と、該第1横壁の内端側から立ち上がる立壁と、を有し、該立壁の立上がり端側に前記連絡壁の外端側が接続されている請求項1記載の自動変速機用流体フィルタ。
【請求項4】
前記一方のケースはレーザ透過性樹脂からなり、前記保持枠はレーザ吸収性樹脂からなり、前記接合部は、前記保持枠の前記壁部にレーザ溶着により接合されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機用流体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230039(P2011−230039A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101471(P2010−101471)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】