自動掘削推進装置
【課題】大径の掘削部と小径の土砂搬送部とからなるアースオーガが発生させる掘削反力を安定して支持しつつ効率的な掘進を実施できる推進機構を備えた自動掘削推進装置を提供する。
【解決手段】軸方向に貫通する中空部11を備えた蠕動運動による推進機構10と、中空部内に配置されて推進機構と相対回転するアースオーガ50と、を備え、推進機構は、一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニット12を備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、先端部の大径の掘削スクリュ53と、中空部内に配置され且つ掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュ60と、を備える。
【解決手段】軸方向に貫通する中空部11を備えた蠕動運動による推進機構10と、中空部内に配置されて推進機構と相対回転するアースオーガ50と、を備え、推進機構は、一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニット12を備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、先端部の大径の掘削スクリュ53と、中空部内に配置され且つ掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュ60と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば月面等の特殊な環境において無人で地盤を掘削する掘削ロボット等の自動掘削推進装置に関し、特に大径の掘削部と小径の土砂搬送部とからなるアースオーガを用いた掘削装置に好適な推進機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)によって月探査ミッションが計画されており、このミッションの目的は月の内部構造を解明することにある。
月探査ミッションには、月震(月の地震)観測のための地震計の設置と、月面表面を覆うレゴリス層のサンプル採取が含まれており、これらの作業においては共にレゴリス層を掘削する必要がある。
月面自動車により月面を運搬できる掘削用機材には、重量やサイズに制限があるため、小型、軽量であることが必須であり、そのためには無人による作業が可能なポータブルロボットが好ましい。また、地球上で使用される掘削用のアースオーガのように、掘削の進行に応じて継ぎ足して長尺化して使用するタイプの機材は月面での掘削作業には不向きであるため、そのような欠点を有しない埋没型の掘削ロボットが適している。
そのため、サイズ、及び重量についての厳しい条件下で、レゴリス層を0.1mから数mの深さで掘削する埋没型のロボットが求められる。しかし現在のところ、これらの条件を満たし、しかも1m以上の深さを掘削可能な技術は開発されていない。
【0003】
地中埋没型の掘削ロボットとして、非特許文献1に開示されたもぐら型ロボット、非特許文献2に開示されたスクリュ式埋没型掘進ロボットがある。しかし、これらのロボットは何れも掘削深度の増大に応じて増大する土圧の影響によって掘進可能な深度に限界があった。
即ち、掘削が進行して穴の深度が深くなればなる程、土圧が高まる。また、掘削手段によって押しのけた土が掘削穴底部に溜まって更に土圧が高まり、掘進できる深さに更に限界ができる。このため、掘削手段を駆動するモータのトルクが土の抵抗に負けてしまい、非特許文献1、2に開示された掘進ロボットでは十数cmしか掘削できず、掘削径を大きくすることにも限界が生じる。非特許文献1のモグラ型ロボットは、掘削手段の自重のみに依存して推進力を得ているため、掘削穴内で増大してゆく抵抗に推進力が負けた時点で掘進が停止する。また、非特許文献2のスクリュ式埋没型掘進ロボットはスクリュだけの推進力に依存しているが、掘削穴が深くなると土圧が強くなり、土圧がスクリュの推進力を上回った時点で掘進が停止する。
このように掘削手段によって土壌に掘削穴を形成する場合には、深度の増大に応じて高まる土圧を低減しつつ、掘削手段を前進させるための格別の推進手段が必要とされるが、これまで適当な推進手段は提案されていない。
【0004】
特許文献1(特開2009−240713公報)には、蠕動運動を利用した推進手段によって内視鏡のケーブルを人間の腸内で進退させるようにした技術が開示されている。
しかし、土壌を掘削しながら地中を移動するための掘削ロボットの推進手段にこのような構成をそのまま採用し得ないことは明かである。即ち、土壌を掘削するためには掘削手段によって生成された土砂を排出しながら、掘削手段の姿勢を掘削穴内で維持しつつ安定して掘進させることが求められるが、中空の管体内を移動することを前提としている特許文献1に係る技術をそのまま掘削用ロボットの推進手段として転用することは困難である。
なお、上記の如く従来技術を掘削用ロボットに適用した場合に発生する不具合は、月面のみならず、地球における地盤の掘削においても同様に起こる不具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240713公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Robotic screw explorer for lunar subsurface investigation: Dynamics modeling and experimental validation、 Proc. Of IEEE International Conference on robotics and Automation (2009) pp.1-6
【非特許文献2】もぐら型月・惑星掘削探査ロボットの開発と掘削実験、日本ロボット学会創立20周年記念学術講演会(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、例えば月面等の特殊な環境においてアースオーガを用いて無人で地盤を掘削する自動掘削推進装置において、アースオーガが発生させる掘削反力を安定して支持し、また掘削中に生成される掘削土砂を効果的に掘削穴外へ排出することにより土圧を低減させながら、効率的な掘進を実施することを可能とする推進機構を備えた自動掘削推進装置を提供することを目的としている。
即ち、本発明では、先端の掘削部と後方の土砂搬送部との径寸法等を異ならせたアースオーガと、蠕動運動を利用した推進機構とを組み合わせて、自律で鉛直方向の土掘削を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る自動掘削推進装置は、軸方向に貫通する中空部を備えた蠕動運動による推進機構と、該推進機構の中空部内に軸方向に沿って配置されて該推進機構と相対回転するアースオーガと、該アースオーガによって掘削され前記中空部内を後方へ搬送される土砂の進入をガイドするスカート部と、該アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータと、該オーガ駆動用モータを前記推進機構の一部に固定するモータ支持部材と、制御手段と、を備え、前記推進機構は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニットを備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、前記アースオーガは、前記中空部を貫通し少なくとも先端部を該中空部先端開口から突出させ且つ前記オーガ駆動用モータによって回転駆動されるシャフトと、前記中空部先端開口から突出した該シャフト部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュと、前記推進機構の中空部内に配置され且つ前記掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュと、を備え、前記スカート部は、前記掘削スクリュの外周縁と対向し且つ該外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁を有し且つ前記推進機構の先部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
埋没型の自動掘削推進機構を構築するために、本発明では、蠕動運動する推進機構の内部に掘削・運搬・排出を単一の機構で行えるアースオーガを搭載している。推進機構とアースオーガとの協働により、前方にある土を掘削し、内部に取り込んでから後方へ排出することにより、掘削穴の前方に空間を作り前進する。
アースオーガを回転させて地盤内を掘進する際には、深度の増大に伴って上昇する土圧と、掘削された土砂が、アースオーガを駆動するモータに対する大きな抵抗となる。
本発明では、生成された掘削土砂は、スカート部内壁により外径方向への拡散を防止されつつ、搬送スクリュによって中空部内を後方へ搬送され、中空部の後部開口から掘削穴外部へ排出されるため、掘削穴の前方に新たな空間を形成することができ、深度の増大に伴う土圧の上昇を抑えることができる。
推進機構は、軸方向に配列された3個以上の伸縮ユニットを備え、これらを所定の順序で個別に縮径(軸方向伸長)、拡径(軸方向収縮)させることによって、推進機構を掘削穴内壁へ固定してアースオーガによる掘削効率を高め、且つアースオーガを前進方向へ押し付ける力を生成することができる。
【0010】
請求項2の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1において、掘削対象地盤に形成された掘削穴の内部に前記推進機構が埋没した状態において、前記制御手段は、後部の伸縮ユニットを拡径させて前記掘削穴内壁に固定すると共に、少なくとも先頭の前記伸縮ユニットを縮径させて軸方向へ伸長させることにより、前記推進機構により支持された前記アースオーガを軸方向へ伸長した長さ分だけ前進させる蠕動運動を実施することを特徴とする。
請求項3の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1又は2において、前記伸縮ユニットは、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材と、各一対の軸方向可動部材間に配置されて放射状に内外径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材と、前記軸方向可動部材と前記径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構と、該伸縮ユニットを駆動する伸縮ユニット用モータと、を備えていることを特徴とする。
伸縮ユニットとしては、種々の構成を考えることができるが、例えば軸方向可動部材と、径方向可動部材を伸縮リンク機構により連動させた構成も可能である。
【0011】
請求項4の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3において、前記各伸縮ユニットは、軸方向前部と後部に夫々配置された環状の前記軸方向可動部材と、一方の前記軸方向可動部材に搭載された少なくとも一つの伸縮ユニット用モータと、該伸縮ユニット用モータから延び、他方の前記軸方向可動部材に貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより前記他方の軸方向可動部材を前記一方の軸方向可動部材に対して接近・離間させるボールスクリューと、前記各軸方向可動部材の間に配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構によって夫々支持された前記径方向可動部材と、を備え、前記伸縮ユニット用モータの駆動によって前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材に最も接近した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が収縮状態にあることによって前記各径方向可動部材は内径側に退避した非加圧位置にあり、前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材から最も離間した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が伸長状態にあることによって前記各径方向可動部材は外径側に突出した加圧位置にあることを特徴とする。
請求項5の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3又は4において、前記オーガ駆動用モータは、最後部の前記伸縮ユニットの後部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至5の何れか一項において、前記スカート部は、最前部の前記伸縮ユニットの前部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする。
請求項7の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至6の何れか一項において、前記スカート部の内壁が前記シャフトの軸方向と直交する方向となすスカート角度θを、30度<θ<60度の範囲としたことを特徴とする。
請求項8の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの後部に前記オーガ駆動用モータを支持したことを特徴とする。
請求項9の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの先部を前記スカート部に固定したことを特徴とする。
請求項10の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3乃至9の何れか一項において、前記伸縮リンク機構は、四節平行リンク機構であることを特徴とする。
請求項11の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至10の何れか一項において、全ての前記伸縮ユニットの外面を防塵シートにて覆うと共に、該防塵シートを介して前記径方向可動部材に対して加圧部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の自動掘削推進装置によれば、アースオーガを用いて無人で地盤を掘削する埋没型の自動掘削推進装置において、アースオーガが発生させる掘削反力を安定して支持し、また掘削中に生成される掘削土砂を効果的に掘削穴外へ排出することにより土圧を低減させながら、効率的な掘進を自律で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動掘削装置としての掘削ロボットの構成を説明するための一部断面による概略図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る伸縮ユニットの拡径状態(軸方向収縮状態)、及び縮径状態(軸方向伸長状態)を示す斜視図である。
【図3】伸縮リンク機構の一例としての四節平行リンク機構の構成及び動作説明図である。
【図4】伸縮ユニットの仕様の一例を示す図である。
【図5】推進機構とその中空部内に装着されるケーシングパイプ及びアースオーガを示す斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は2つの伸縮ユニットの連結状態を示す斜視図、及び連結部の具体的な構成を示す斜視図である。
【図7】推進機構の外側の開口部を防塵シートによって気密的に閉止する場合の構成例を示す各構成要素の説明図である。
【図8】(a)及び(b)は推進機構に防塵シートを被せた場合の構成を示す径方向断面図、及び各構成部品の構成説明図である。
【図9】加圧部材の他の構成例を示す斜視図である。
【図10】(a)はアースオーガの全体構成を示す正面図であり、(b)は掘削スクリュとスカート部を示す拡大断面図である。
【図11】掘削スクリュが掘削対象地盤を掘削している状態を示す平面図である。
【図12】(a)乃至(f)はミミズが蠕動運動により前進する様子を示す図である。
【図13】(a)乃至(e)に基づいて掘削ロボットの動作原理を説明する図である。
【図14】(a)及び(b)は、オーガ駆動用モータを支持する他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動掘削装置としての掘削ロボットの構成を説明するための一部断面による概略図であり、図2(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る伸縮ユニットの拡径状態(軸方向収縮状態)、及び縮径状態(軸方向伸長状態)を示す斜視図であり、図3は伸縮リンク機構の一例としての四節平行リンク機構の構成及び動作説明図であり、図4は伸縮ユニットの仕様の一例を示す図であり、図5は推進機構とその中空部内に装着されるケーシングパイプ及びアースオーガを示す斜視図であり、図6(a)及び(b)は2つの伸縮ユニットの連結状態を示す斜視図、及び連結部の具体的な構成を示す斜視図である。
掘削ロボット1(自動掘削装置)は、軸方向に貫通する土砂搬送、排出用の中空部11を備えた蠕動運動を利用した推進機構10と、推進機構10の中空部11内に軸方向に沿って配置され且つ推進機構と相対回転可能に支持された掘削、土砂搬送、排出用のアースオーガ50と、アースオーガ50によって掘削された土砂を中空部へ案内するスカート部70と、推進機構の中空部11内壁に沿って各伸縮ユニット12と相対動可能に配置され且つ先端部適所をスカート部70に固定された防塵用のケーシングパイプ75と、アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータ80と、オーガ駆動用モータを推進機構の一部に固定するモータ支持部材85と、伸縮ユニット12及びオーガ駆動用モータ80を制御する制御手段90と、を概略備えている。
【0016】
推進機構10は、ミミズの移動方式と同様な蠕動運動によってアースオーガ50を掘進させるための推進力を生成する。
推進機構10は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる複数の(本例では4個の)伸縮ユニット12(12A乃至12D)を備え、各伸縮ユニット12は全体形状が環状をなし、縮径時には軸方向長が伸長すると共に、拡径時には軸方向長が短縮する構成を備えている。
即ち、各伸縮ユニット12は図2に示すように、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材13(13a、13b)と、各一対の軸方向可動部材13a、13b間に配置されて放射状に径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材20と、軸方向可動部材と径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構25と、伸縮ユニット12を駆動する伸縮ユニット用モータ30と、を備えている。
一対の軸方向可動部材13a、13bは軸方向間隔が変化するように構成されており、一対の軸方向可動部材間の軸方向間隔が接近している時には径方向可動部材20が拡径位置にあり、一対の軸方向可動部材13a、13b間の軸方向間隔が拡大している時には径方向可動部材20が縮径位置にあるように連動する。
後述するように複数の伸縮ユニット12A〜12Dを連結する場合には、隣接する各伸縮ユニットの隣接する軸方向可動部材13a、13b同士を固定することにより、推進機構10全体としての軸方向長を伸縮することが可能となる一方で、個々の伸縮ユニットを構成する径方向可動部材20による縮径・拡径動作を個別に実現できる。
【0017】
伸縮ユニットの具体的な構成例を更に説明する。
各伸縮ユニット12(12A〜12D)は、軸方向前部と後部に夫々配置された略同じ形状の環状円盤状の軸方向可動部材13(13a、13b)と、各伸縮ユニット12の一方の軸方向可動部材13aに搭載された少なくとも一個の(本例では2個の)伸縮ユニット用モータ(ステッピングモータ)30と、伸縮ユニット用モータ30の出力部から延び、他方の軸方向可動部材13bに貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより他方の軸方向可動部材13bを一方の軸方向可動部材13aに対して接近・離間させるボールスクリュー31と、各軸方向可動部材13a、13bの間に跨って配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構25によって夫々支持された径方向可動部材(加圧部材)20と、を備える。
伸縮ユニット用モータ30の駆動によるボールスクリュー31の収縮方向への回転によって他方の軸方向可動部材13bが一方の軸方向可動部材13aに最も接近した軸方向位置にある時には(図2(a))、この伸縮リンク機構25が収縮状態にあることによって各径方向可動部材20は外径側に放射状に突出した加圧位置にあり、ボールスクリュー31の逆方向への回転によって他方の軸方向可動部材13bが一方の軸方向可動部材13aから最も離間した軸方向位置にある時には(図2(b))、この伸縮リンク機構が拡張状態にあることによって径方向可動部材20は内径側に退避した非加圧位置にある。
【0018】
伸縮リンク機構25は、軸方向可動部材13a、13bの周方向に所定の配置で複数個(本例では6個)配置されており、各伸縮リンク機構25により支持される各径方向可動部材20は同時に放射状に内外径方向へ出没する。
各伸縮ユニット12は制御手段90による制御によって個別に所定のタイミングで縮径、拡径を繰り返す。
なお、本例に係る伸縮リンク機構25は、四節平行リンク機構である。
四節平行リンク機構としての伸縮リンク機構25は、各軸方向可動部材13a、13bの対向面に夫々突設された支持部材26と、各支持部材26に夫々設けられた2個の軸部26aと、各軸部26aにより夫々一端を回動自在に軸支された二本ずつの平行なアーム27と、を備え、各アーム27の他端部は径方向可動部材(加圧部材)20に対して軸部27aによって回動自在に軸支されている。
【0019】
図3は、四節平行リンク機構の作動原理を示す図であり、四節平行リンク機構25は径方向可動部材20の外面が掘削穴内壁面と平行に押し付けられ、内壁面へ接地する面積が多いといった利点がある。押し付け力Fは、四節平行リンクの式(F=W/tanθ)より、収縮力Wに比例するため、伸縮ユニット用モータ30をボールスクリューで直動に変換することにより、収縮力を増加させる。
なお、本例では伸縮リンク機構25として四節平行リンク機構を示したが、これは一例に過ぎず、軸方向可動部材13と径方向可動部材20とを連動させ、且つ径方向可動部材の外側面を掘削穴内壁と略直交する方向へ進退させることができるリンク機構であればどのような構成であってもよい。
図2(b)のように軸方向可動部材13aに対して軸方向可動部材13bが最も離間した状態にある時に伸縮ユニット用モータ30を駆動してボールスクリュー31を収縮方向へ回転させると、ボールスクリューが螺合する螺子穴を介して軸方向可動部材13bが駆動されて軸方向可動部材13aへ接近する方向へ移動する。この過程で、当初内径側(非加圧位置)に位置していた径方向可動部材20は外径方向へ移動して掘削穴内壁を加圧する加圧位置へ変位する。
【0020】
推進機構10の中空部11は、軸方向に連結された複数の伸縮ユニットの中心部に夫々形成される貫通穴12aが軸方向に連続することにより形成されている。
本例では、2個の伸縮ユニット用モータ30をこの貫通穴12aを中心として対称位置関係にて配置している。
伸縮ユニット用モータ30としては、位置決め精度の高い2つのステッピングモータ(ケーエスエス株式会社製MB0401)を用い、伸縮ユニットを動作させる。
伸縮ユニット12の個数は、3個以上であれば蠕動運動が可能となるため、3個以上であればその個数はいくつであっても良い。また、各伸縮ユニット12の構造、軸方向寸法が同一であれば構成がシンプル化し有利であるが、必要に応じて構造、寸法を異ならせても良い。
また、掘進中において掘削穴内壁との間に十分な摩擦抵抗を発生させることができるように掘削穴内壁との接触面(後述する加圧部材21)の材質、構成を選定する。
伸縮ユニット12は、後述するように、その内部の駆動機構に掘削した土砂が入り込まないように気密保持する必要がある。
本例に係るオーガ駆動用モータ80は、最後部の伸縮ユニット12Dの後部の軸方向可動部材13bにモータ支持部材85を介して固定されており、モータ支持部材85によって推進機構10の中空部11とオーガ駆動用モータ80との間に掘削土砂排出用の空隙Sを形成して土砂排出を円滑化している。
【0021】
図4は伸縮ユニットの仕様の一例を示しており、周面土圧と伸縮ユニットの押付け力との関係についての実験によれば、深さ2.5mにおける1つの径方向可動部材(加圧部材)にかかる土圧は31.4Nとなり、伸縮ユニットの最小膨張力50Nはこの条件を満たしている。
次に、回転反力支持の観点から考察すると、本実験によればアースオーガ50の最大掘削反力は約13Nmであり、1つの伸縮ユニット12で支持できる回転反力は10Nmであった。しかし本掘削ロボット1は4つの伸縮ユニット12A乃至12Dで構成され、少なくとも2つの伸縮ユニットが収縮している(孔壁と接地している)パターンで掘削を行うので、この条件を満たしている。以上のように、本推進機構は十分な掘削反力支持・押付け力を備えている。
【0022】
図5に示すように、4個の伸縮ユニット12A〜12Dを直列に連結した推進機構10は、その中空部11内に金属製のケーシングパイプ75を装着し、ケーシングパイプ75の内部にはアースオーガ50を配置する。先端に位置する伸縮ユニット12Aにはスカート部70が固定され、ケーシングパイプ75の先端部はスカート部、或いは先端の伸縮ユニット12Aの軸方向可動部材13aに固定される。
ケーシングパイプ75の後端に設けたフランジ部76と中空部11の後端開口縁との間は図示しないOリング等のパッキングによって封止することにより、推進機構10の内側から掘削土砂が各伸縮ユニット12の内部に浸入することを防止する。
ケーシングパイプ75の後端部に位置するフランジ部76は後述する図14に示すようにオーガ駆動用モータ80から延びるモータ支持部材85を固定する手段であると同時に、フランジ部76に設けた貫通穴76aは、最後尾の伸縮ユニット12D内の各伸縮ユニット用モータ30から後方へ延びるボールスクリュー31を収容してボールスクリューが土砂と接触することを防止する役割を果たす。
隣接し合う2個の伸縮ユニットは、図6(b)に示すように対向する軸方向可動部材13aと13bの対向面に夫々環状の凹所13a’と、環状の凸所13b’とを有し、凹所13a’内に凸所13b’が嵌合するように各軸方向可動部材13a、13bを密着して接合させた状態でボルトにより固定する。
【0023】
次に、図7は推進機構の外側の開口部を防塵シートによって気密的に閉止する場合の構成例を示す各構成要素の説明図であり、図8(a)及び(b)は推進機構に防塵シートを被せた場合の構成を示す径方向断面図、及び各構成部品の構成説明図である。
図1の例ではエーシングパイプ75の後端縁と中空部11の後端開口縁との間を図示しないOリング等のパッキングにより封止し、図5の例ではケーシングパイプ75の後端に設けたフランジ部76と中空部11の後端開口縁との間を図示しないOリング等のパッキングによって封止することにより、夫々推進機構10の内周面側の防塵を図っている。
一方、推進機構の外面の開口から掘削土砂が進入することを防止する手法としては、両端が開口した円筒状の防塵シート95を推進機構を構成する各推進ユニット12A〜12Dの外面に跨るように添設して固定することにより実現する。
防塵シート95としては、例えば可撓性を有し且つ弾性を有しないビニルシートを基材とし、その表面にアルミ蒸着を施して摩擦抵抗を低減させたものを使用する。推進機構が掘削穴内を前進する過程では、防塵シート表面の摩擦抵抗が低いことにより前進がよりスムーズとなる。
各推進ユニット12A〜12Dを構成する軸方向可動部材13a、13bの外周面に形成される環状の係止溝14内にOリング96を嵌着することによって各推進ユニット外面の開口を防塵シート95によって封止し、掘削土砂が推進ユニット内部に浸入することを防止する。
【0024】
係止溝14は、図6の例では、推進機構10の先端側及び後端側に位置する伸縮ユニット12A、12Dの軸方向可動部材13a、13bの外周面に夫々形成する。また、隣接する伸縮ユニットの接合部を構成する軸方向可動部材13a、13bについては、例えば図6(b)に示すように一方の伸縮ユニットの軸方向可動部材13aの外周面に設けた凹所14a(小径部)が隣接する他方の伸縮ユニットの軸方向可動部材13bの大径部14bとの間で係止溝14を形成するように構成する。
4個の伸縮ユニット12A〜12Dを一列に連結した場合には、軸方向先端部と後端部の軸方向可動部材、及び中間部に位置する軸方向可動部材に夫々設けた係止溝14内に各Oリング96を嵌着することにより、防塵シート95を推進機構10の全長に渡って気密性よく固定することができ、各伸縮ユニット外面の開口部を閉止することができる。
Oリング等による推進機構内側の気密部と、防塵シート95による外面の封止構造との協働により、各伸縮ユニット内に土砂が浸入することが防止される。
なお、掘削穴の内壁と接触する加圧部材21の外面には防塵シート95を被せることができないため、図8に示すように径方向可動部材20の外面に添設される防塵シート95を介して径方向可動部材20の外面に対して加圧部材21を固定するように構成する必要がある。
即ち、径方向可動部材20の外面に、図8(a)に示した如く平面形状が略台形の突片(アリガタ)20aを固定すると共に、防塵シートを介して、この突片20aと整合する形状のアリ溝21aを有した加圧部材21をスライド式に装着し、更に固定片21bを加圧部材21の一端面に螺子止め固定する。
防塵シート95の一部は、突片20aと加圧部材21との間に挟まれて固定されるため、加圧部材21の外面だけが掘削穴内壁と接触してこれを加圧することができる。
【0025】
次に、図9は加圧部材21の他の構成例を示す斜視図であり、この加圧部材21の外面には縦リブ22aと、横リブ22bからなるスパイク22が突設されており、スパイク22によって掘削穴内壁との間の摩擦を高めて回転反力・鉛直方向支持力を高めている。
縦リブ22aは掘削穴の内壁に食い込むことにより推進機構10に対して加わる周方向への力に対する抵抗となり、横リブ22bは推進機構に対して加わる軸方向への力に対する抵抗となり、何れもアンカー効果を高めるために寄与する。加圧部材表面にスパイクを形成すると同時に、加圧部材21の材質として土との間の摩擦の高い材質を選定することが好ましい。
【0026】
次に、アースオーガ50は、掘削機構、土砂搬送機構、及び土砂排出機構を構成しており、単純な構造、動作で効率よく地盤の掘削や運搬を行うことができる。
本発明では、蠕動運動する推進機構10の内部に掘削・運搬・排出を単一の機構で行えるアースオーガ50を搭載している。推進機構とアースオーガとの協働により、前方にある土を掘削し、内部に取り込んでから後方へ排出することにより、掘削穴の前方に空間を作り前進する。この時、推進機構は掘削スクリュ53の半径と同径、或いはそれ以上の径を有することが必要である。従って、先端部と後方部で径が変化するアースオーガが必要となる。
図1、図10等に示すように、アースオーガ50は、中空部11を貫通し少なくとも先端部を中空部先端開口11aから突出させ且つモータによって回転駆動されるシャフト51と、中空部先端開口から突出したシャフト51部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュ53と、推進機構の中空部11内に配置され且つ掘削スクリュ53の後端部に連続一体化された掘削土砂搬送、排出用の小径の搬送スクリュ60と、を備えている。
【0027】
スカート部70は、掘削スクリュ53の外周縁との間に僅かなギャップを隔てて対向し、且つ外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁70aを有している。
スカート部70は先端に位置する伸縮ユニット12Aの先端側の軸方向可動部材13aに固定されており、アースオーガ50と相対回転する。また、ケーシングパイプ75の先端部はスカート部70と固定されている。つまり、スカート部70とケーシングパイプ75は、伸縮ユニット12Aの先端側の軸方向可動部材13a対して共に固定されており、軸方向可動部材13aと一体的に軸方向移動する。
ケーシングパイプ75の軸方向長さは推進機構10の最大伸長時の長さと同等程度とし、ケーシングパイプ75の後端外周縁と後部伸縮ユニット12Dとの隙間はOリング、シートなどで密封することにより、ケーシングパイプ75と中空部11の内壁との間に土砂が浸入しないように配慮する。
なお、ケーシングパイプ75は、推進機構10を構成している。
掘削スクリュ53とスカート部70の最大径は、形成される掘削穴の径を規定することとなるため、掘進時に後続して移動してくる推進機構10の最大径と同等か、それよりも大きいことが必要である。
【0028】
次に、図10に基づいてアースオーガの掘削スクリュの構成例について説明する。図10(a)はアースオーガの全体構成を示す正面図であり、(b)は掘削スクリュとスカート部を示す拡大断面図である。
掘削スクリュ53により掘削された土砂を詰まりを生じさせることなく搬送スクリュ60によって後方へ搬送、排出するためには、掘削スクリュが掘り進む土砂の体積を常に一定に維持する必要がある。掘削スクリュ53のピッチが先端が大きく、後部へ向かうほど同ピッチで狭くなってゆくとすれば、掘削土砂を後方へ搬送する過程で詰まりが発生する。このため、詰まりを防止するためには掘削スクリュの後方部分のピッチを漸増させる必要がある。しかし、掘削スクリュのピッチを大きくし過ぎると、傾斜が急角度になって土砂が後方に登り難くなる。このような掘削スクリュのピッチを適切に設定することによる土砂詰まりの防止と、土砂の搬送効率との間にはトレードオフの関係がある。
アースオーガ先端の掘削スクリュ53が回転することにより推進しながら穴を掘削する。この掘削穴径がDである。掘削した土砂は推進機構の中空部内を通る直径dの搬送スクリュ60によって後方へ搬送、排出される。したがって掘削スクリュ53の直径Dは、搬送スクリュ60の直径dより大きく設計する必要がある(図10(b))。
なお、本例では、掘削スクリュ53の直径Dを130mm、搬送スクリュ60の直径dを65mm、シャフト51の軸方向長を425mm、シャフト51の直径を20mmとしたアースオーガを用いた。
【0029】
掘削スクリュ53は、先端部から後方(上部)へ向かうに従って外径がテーパー状に漸減する構成であり、掘削スクリュ53の外周縁間を結ぶ直線Lとシャフト51と直交する水平方向の線Hとが形成する角度θは、30度〜60の範囲、特に45度±5度が好ましい。角度θが30度を下回る過小である場合にはアースオーガの回転によって急激に掘削後の土砂が集まり過ぎるのでトルクが一気に上がる。一方、角度θが60度を超える過大である場合には、土砂が運ばれる距離が長すぎてトルクが上がる。これに対して、角度θが45±5度の範囲である場合には、最適のトルクにて掘削、土砂搬送を実現することができた。
なお、スカート部の内壁70aの傾斜角度を、掘削スクリュ53の外周縁間を結ぶ直線Lと並行に設定することにより、掘削後の土砂を無駄なく搬送スクリュ60側に移送することが可能となる。従って、掘削スクリュの外周縁間を結ぶ直線Lの角度θが変更される場合には、スカート部の内壁の傾斜角度もそれに応じて変更する。
また掘削後の土砂が土塊状となって詰まりを起こすことを防止するために、後方ピッチPrを先端ピッチPfより大きく設計した。
【0030】
次に、図11は掘削スクリュが掘削対象地盤を掘削している状態を示す平面図であり、アースオーガの先端部を構成する掘削スクリュ53の回転により鉛直下方向へ掘進深度z2は次のように算出される。
即ち、掘削スクリュ53の先端とスカート部70の先端との隙間gpの広狭により取り込まれる土量が変化する。掘進深度z2は、ωをアースオーガの回転数、gpをアースオーガとスカートとの隙間、tを経過時間とすると、次式で与えられる。
【0031】
ところで、ミミズの移動方式は、(1)移動に必要な空間径が小さくて済む。(2)周辺環境(穴)との接触面積が大きいため、安定して移動できる。(3)頭部で取り入れた土類を内部の食道器官の運動により後方へ排出する。
図12はミミズが蠕動運動により前進する様子を示す図である。
ミミズの体は約110〜200の節に分かれている。この節1つを体節と呼ぶ。ミミズはこの体節を伸縮運動させることにより移動することができる。
ミミズは始めに頭部の体節を収縮させる(図12(a))。この収縮を順に後方の体節へと伝播させながら頭部の体節を伸張させてゆく((b)(c)(d))。このとき収縮した体節周りの剛毛により地面と摩擦が発生し、伸張した体節が前方に伸びるための反力を得ることができる。この収縮と伸張を繰り返すことにより縦波後進波が発生しミミズは前進することができる((e)(f))。
【0032】
これらのミミズの特徴をアースオーガを掘削手段として用いた掘削ロボットに生かすことで、推進機構の小型・軽量化、月面の重力を考慮した孔壁との反力支持、土中での掘進の効率化を期待できる。
また、ミミズの移動方式を掘削ロボットの推進機構に応用することで、推進機構10を掘削穴内壁に固定し、回転しながら掘削を行うアースオーガの回転反力に対する支持を強化し、土圧の影響を低減することができ、安定した掘進が可能となる。更に、ロボット内部の中空部11内に掘削した土砂を取り込む機構を持たせ、掘削した土砂を後方に運搬・排出しながら掘進することで土圧を減殺し、所望の掘進経路を安定して維持しつつ地中の深い場所に到達することが可能となる。
【0033】
本実施形態に係る推進機構10は4つの伸縮ユニット12A〜12Dから構成され、制御手段90が、所定の順序によって各伸縮ユニットを縮径、拡径させることによって、ミミズの蠕動運動による推進制御を行う。
本発明者らは、軸方向先端部の掘削機構部分とそれよりも後方の搬送・排出機構部分の径が異なるアースオーガ50を、ミミズの蠕動運動による推進機構10に搭載した本掘削ロボットを構築するために、周面摩擦の影響による推進深度のシミュレーションとアースオーガの土掘削実験を行った。これらの結果より掘削反力・周面摩擦といった観点から推進機構に必要な仕様を検討し、新規な推進機構を作製・検証した。
【0034】
次に、図13(a)乃至(e)に基づいて掘削ロボットの動作原理を説明する。
まず、オーガ駆動用モータ80を駆動してアースオーガ50を掘進方向に回転させることにより、先端部の掘削スクリュ53によって地盤(月面ではレゴリス層)100を掘削する。この際、制御手段90は、アースオーガ50の回転による掘削過程において、推進機構10を構成する4つの伸縮ユニット12A〜12Dを所定の順序によって縮径、拡径させる。
図13(a)の段階では、先端部に位置する伸縮ユニット12Aを除いた後方の伸縮ユニット12B、12C、12Dを周方向全体に渡って拡径させることにより、その外周面にて掘削穴の内壁と面接触による圧接状態となり、推進機構10を掘削穴内壁に固定する。これにより推進機構10がアースオーガ50と連れ回りすることを阻止し、アースオーガを安定して効率よく回転させることができる。また掘削穴内壁を拡径状態にある3つの伸縮ユニット12B〜12Dによって広い面積に渡って抑えることにより、内壁の崩れを防ぎ、伸縮ユニット以外の部位と内壁との間の周面摩擦を軽減することができる。拡径状態にある伸縮ユニットの軸方向長は最短長となっている。
【0035】
次に、図13(b)に示すように、一番目の伸縮ユニット12Aを拡径させると同時に二番目の伸縮ユニット12Bを縮径させて軸方向長を伸長させることにより、3つの伸縮ユニット12A、12C、12Dによって掘削穴内壁との固定状態を維持する。
次いで、図13(c)のように二番目の伸縮ユニット12Bの拡径と三番目の伸縮ユニット12Cの縮径を同時に実施し、更に引き続き図13(d)のように三番目の伸縮ユニット12Cの拡径と四番目の伸縮ユニット12Dの縮径を同時に実施する。
次いで、図13(e)では、四番目の伸縮ユニット12Dを拡径させると同時に先頭の伸縮ユニット12Aを縮径させ且つ軸方向長を伸長させる。すると、後方の3個の伸縮ユニット12B〜12Dが掘削穴内壁に固定された状態で、先頭の伸縮ユニット12Aが軸方向長を伸長させることによりアースオーガ50とスカート部70を図示のように伸縮ユニット12Aの軸方向伸長分だけ前進させることができる。
その後、(a)乃至(e)の掘削、推進動作を順次繰り返すことにより、推進機構10によってアースオーガ50の推進力を補助しながら掘進することができる。
【0036】
このように図13(a)乃至(e)に示したアースオーガによる全ての掘削過程において、常に3個の伸縮ユニットが拡幅して掘削穴内壁と圧接しており、アンカー効果により推進機構がアースオーガと連れ回りすることを阻止し、アースオーガの姿勢を適切に維持している。掘削穴内壁に圧接している伸縮ユニットの数が多いほど掘削穴内壁との摩擦力が高まるため、アースオーガによる軸方向への押し付け力を高めることができる。
掘削スクリュ53によって掘削された土砂は、掘削スクリュの回転力によってスカート部70の内壁に沿って後方へ移動し、搬送スクリュ60により中空部11内を後方へ搬送され、中空部の後部開口から外部へ排出される。前進の障害となる掘削後の土砂が中空部を経由して後方へ排出されることにより、掘削スクリュ53による新たな掘削と推進機構10による前方への移動が円滑化する。
【0037】
このように各伸縮ユニットの径方向への伸縮量をコントロールすることで、土への掘削スクリュ53の押し付け力、及び、掘削ロボット内部に取り込まれる掘削土砂の量を調整することができる。また、アースオーガにより掘削した直後の掘削穴の内壁を各収縮ユニットにより抑えるため、内壁の崩れを確実に防止することができる。
特に、推進機構10においては、径方向可動部材20による外径方向への押し付けと、軸方向への推進とが夫々別個に各伸縮ユニットにより行われるため、外径方向への押し付け力により摩擦、推進をコントロールすることができる。つまり、推進機構による軸方向への推進力は、伸縮ユニットと掘削穴内壁との摩擦力に依存するところが大きく、摩擦力の反力として推進力が生じる。このため、深度に応じた土圧の増大による影響をうけにくい掘進を実現できる。
【0038】
次に、図14(a)及び(b)は、オーガ駆動用モータ80を支持する他の構成例を示している。この実施形態では、ケーシングパイプ75の後端部に設けたフランジ部76に対してモータ支持部材85を介してオーガ駆動用モータ80を固定している。また、符号77は防塵用のOリング等のパッキングである。
ケーシングパイプ75は、その先端部をスカート部70及び先頭の伸縮ユニット12Aを構成する軸方向可動部材13aと一体化されており、その他の推進機構10の構成要素とは相対的に動作する。
なお、図13の例では、4個の推進ユニットのうちの3個の推進ユニットを常に拡径させて掘削穴内壁との間の固定圧を確保する例を示したが、図14の例では、(a)において後方の3個の伸縮ユニット12B、12C、12Dを拡径させた状態で掘削を進行し、次の(b)では二番目の伸縮ユニット12Bを縮径させて軸方向長を伸長させることにより、アースオーガ50全体を二番目の伸縮ユニット12Bの軸方向伸長分だけ前方へ突出させて前進する。
【0039】
このように常に3個の推進ユニットを拡径させる必要はなく、2個の伸縮ユニットを拡径させて掘削穴内壁との固定状態を維持しつつ、他の伸縮ユニットを用いて前方への推進力を確保するようにしてもよい。
なお、本発明の掘削ロボット1を用いた掘削開始前の段階では、推進機構が入り込む掘削穴が地盤面に存在していないため、何らかの手法で所要深さの掘削穴を予め形成しておき、その掘削穴に掘削ロボット1を差し込んでから、図13に示した手順による掘削を実施する必要がある。例えば、掘削初期段階では、地盤表面に掘削ロボット1を収容するに足る軸方向長を有した中空の円筒管を立設しておき、この円筒管の上端開口から掘削ロボット1を内部に差込んで掘削スクリュ53を地盤面に接触させてから掘削ロボットを駆動開始することにより、掘削穴を形成開始することができる。円筒管内部では、推進機構10を構成する各伸縮ユニット12は図13に示した如き順序で拡径による円筒管内壁との圧接、縮径による圧接解除及び軸方向への伸長を繰り返すことにより、地盤の掘削を進行させることができる。
掘削穴の深さが掘削ロボット全体を収容するに足る程度に達した時点で、円筒管を除去しても図13の手順での掘削を進行することが可能となる。
掘削を完了して掘削ロボット1を掘削穴から抜き取る際には、全ての伸縮ユニットを縮径状態にして掘削穴との接触を解消してから抜き取ればよい。
【0040】
以上のように本発明の掘削ロボット(自動掘削推進装置)1では、月面の地中探査蠕動運動型ロボットに搭載する地盤の掘削部・運搬部・排出部として径変化するアースオーガを採用し、掘削深度の増大に応じて高まる土圧の増大に打ち勝ってアースオーガを推進させることができる強力な推進手段として蠕動運動を利用した推進機構を採用した。このため、自律で鉛直方向の土掘削を行うことができる。
従って、月面に地震計を埋設するための掘削作業や、地盤のサンプルを採取するための掘削作業に適用した場合に好適な結果を得ることができる。
なお、本発明の掘削用ロボットは、月面のみならず、地球における地盤の掘削においても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…掘削ロボット(自動掘削推進装置)、10…推進機構、11…中空部、11a…中空部先端開口、12…伸縮ユニット、12A、12B、12C、12D…伸縮ユニット、12a…貫通穴、13…軸方向可動部材、13a…軸方向可動部材、13a’…凹所、13b…軸方向可動部材、13b’…凸所、14…係止溝、14a…凹所、14b…大径部、20…径方向可動部材、20a…突片、21…加圧部材、21a…アリ溝、21b…固定片、22a…縦リブ、22b…横リブ、25…伸縮リンク機構、26…支持部材、26a…軸部、27…アーム、27a…軸部、30…伸縮ユニット用モータ、31…ボールスクリュー、50…アースオーガ、51…シャフト、53…掘削スクリュ、60…搬送スクリュ、70…スカート部、70a…内壁、75…ケーシングパイプ、76…フランジ部、76a…貫通穴、80…オーガ駆動用モータ、85…モータ支持部材、90…制御手段、95…防塵シート、96…Oリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば月面等の特殊な環境において無人で地盤を掘削する掘削ロボット等の自動掘削推進装置に関し、特に大径の掘削部と小径の土砂搬送部とからなるアースオーガを用いた掘削装置に好適な推進機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)によって月探査ミッションが計画されており、このミッションの目的は月の内部構造を解明することにある。
月探査ミッションには、月震(月の地震)観測のための地震計の設置と、月面表面を覆うレゴリス層のサンプル採取が含まれており、これらの作業においては共にレゴリス層を掘削する必要がある。
月面自動車により月面を運搬できる掘削用機材には、重量やサイズに制限があるため、小型、軽量であることが必須であり、そのためには無人による作業が可能なポータブルロボットが好ましい。また、地球上で使用される掘削用のアースオーガのように、掘削の進行に応じて継ぎ足して長尺化して使用するタイプの機材は月面での掘削作業には不向きであるため、そのような欠点を有しない埋没型の掘削ロボットが適している。
そのため、サイズ、及び重量についての厳しい条件下で、レゴリス層を0.1mから数mの深さで掘削する埋没型のロボットが求められる。しかし現在のところ、これらの条件を満たし、しかも1m以上の深さを掘削可能な技術は開発されていない。
【0003】
地中埋没型の掘削ロボットとして、非特許文献1に開示されたもぐら型ロボット、非特許文献2に開示されたスクリュ式埋没型掘進ロボットがある。しかし、これらのロボットは何れも掘削深度の増大に応じて増大する土圧の影響によって掘進可能な深度に限界があった。
即ち、掘削が進行して穴の深度が深くなればなる程、土圧が高まる。また、掘削手段によって押しのけた土が掘削穴底部に溜まって更に土圧が高まり、掘進できる深さに更に限界ができる。このため、掘削手段を駆動するモータのトルクが土の抵抗に負けてしまい、非特許文献1、2に開示された掘進ロボットでは十数cmしか掘削できず、掘削径を大きくすることにも限界が生じる。非特許文献1のモグラ型ロボットは、掘削手段の自重のみに依存して推進力を得ているため、掘削穴内で増大してゆく抵抗に推進力が負けた時点で掘進が停止する。また、非特許文献2のスクリュ式埋没型掘進ロボットはスクリュだけの推進力に依存しているが、掘削穴が深くなると土圧が強くなり、土圧がスクリュの推進力を上回った時点で掘進が停止する。
このように掘削手段によって土壌に掘削穴を形成する場合には、深度の増大に応じて高まる土圧を低減しつつ、掘削手段を前進させるための格別の推進手段が必要とされるが、これまで適当な推進手段は提案されていない。
【0004】
特許文献1(特開2009−240713公報)には、蠕動運動を利用した推進手段によって内視鏡のケーブルを人間の腸内で進退させるようにした技術が開示されている。
しかし、土壌を掘削しながら地中を移動するための掘削ロボットの推進手段にこのような構成をそのまま採用し得ないことは明かである。即ち、土壌を掘削するためには掘削手段によって生成された土砂を排出しながら、掘削手段の姿勢を掘削穴内で維持しつつ安定して掘進させることが求められるが、中空の管体内を移動することを前提としている特許文献1に係る技術をそのまま掘削用ロボットの推進手段として転用することは困難である。
なお、上記の如く従来技術を掘削用ロボットに適用した場合に発生する不具合は、月面のみならず、地球における地盤の掘削においても同様に起こる不具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240713公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Robotic screw explorer for lunar subsurface investigation: Dynamics modeling and experimental validation、 Proc. Of IEEE International Conference on robotics and Automation (2009) pp.1-6
【非特許文献2】もぐら型月・惑星掘削探査ロボットの開発と掘削実験、日本ロボット学会創立20周年記念学術講演会(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、例えば月面等の特殊な環境においてアースオーガを用いて無人で地盤を掘削する自動掘削推進装置において、アースオーガが発生させる掘削反力を安定して支持し、また掘削中に生成される掘削土砂を効果的に掘削穴外へ排出することにより土圧を低減させながら、効率的な掘進を実施することを可能とする推進機構を備えた自動掘削推進装置を提供することを目的としている。
即ち、本発明では、先端の掘削部と後方の土砂搬送部との径寸法等を異ならせたアースオーガと、蠕動運動を利用した推進機構とを組み合わせて、自律で鉛直方向の土掘削を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る自動掘削推進装置は、軸方向に貫通する中空部を備えた蠕動運動による推進機構と、該推進機構の中空部内に軸方向に沿って配置されて該推進機構と相対回転するアースオーガと、該アースオーガによって掘削され前記中空部内を後方へ搬送される土砂の進入をガイドするスカート部と、該アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータと、該オーガ駆動用モータを前記推進機構の一部に固定するモータ支持部材と、制御手段と、を備え、前記推進機構は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニットを備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、前記アースオーガは、前記中空部を貫通し少なくとも先端部を該中空部先端開口から突出させ且つ前記オーガ駆動用モータによって回転駆動されるシャフトと、前記中空部先端開口から突出した該シャフト部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュと、前記推進機構の中空部内に配置され且つ前記掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュと、を備え、前記スカート部は、前記掘削スクリュの外周縁と対向し且つ該外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁を有し且つ前記推進機構の先部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
埋没型の自動掘削推進機構を構築するために、本発明では、蠕動運動する推進機構の内部に掘削・運搬・排出を単一の機構で行えるアースオーガを搭載している。推進機構とアースオーガとの協働により、前方にある土を掘削し、内部に取り込んでから後方へ排出することにより、掘削穴の前方に空間を作り前進する。
アースオーガを回転させて地盤内を掘進する際には、深度の増大に伴って上昇する土圧と、掘削された土砂が、アースオーガを駆動するモータに対する大きな抵抗となる。
本発明では、生成された掘削土砂は、スカート部内壁により外径方向への拡散を防止されつつ、搬送スクリュによって中空部内を後方へ搬送され、中空部の後部開口から掘削穴外部へ排出されるため、掘削穴の前方に新たな空間を形成することができ、深度の増大に伴う土圧の上昇を抑えることができる。
推進機構は、軸方向に配列された3個以上の伸縮ユニットを備え、これらを所定の順序で個別に縮径(軸方向伸長)、拡径(軸方向収縮)させることによって、推進機構を掘削穴内壁へ固定してアースオーガによる掘削効率を高め、且つアースオーガを前進方向へ押し付ける力を生成することができる。
【0010】
請求項2の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1において、掘削対象地盤に形成された掘削穴の内部に前記推進機構が埋没した状態において、前記制御手段は、後部の伸縮ユニットを拡径させて前記掘削穴内壁に固定すると共に、少なくとも先頭の前記伸縮ユニットを縮径させて軸方向へ伸長させることにより、前記推進機構により支持された前記アースオーガを軸方向へ伸長した長さ分だけ前進させる蠕動運動を実施することを特徴とする。
請求項3の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1又は2において、前記伸縮ユニットは、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材と、各一対の軸方向可動部材間に配置されて放射状に内外径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材と、前記軸方向可動部材と前記径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構と、該伸縮ユニットを駆動する伸縮ユニット用モータと、を備えていることを特徴とする。
伸縮ユニットとしては、種々の構成を考えることができるが、例えば軸方向可動部材と、径方向可動部材を伸縮リンク機構により連動させた構成も可能である。
【0011】
請求項4の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3において、前記各伸縮ユニットは、軸方向前部と後部に夫々配置された環状の前記軸方向可動部材と、一方の前記軸方向可動部材に搭載された少なくとも一つの伸縮ユニット用モータと、該伸縮ユニット用モータから延び、他方の前記軸方向可動部材に貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより前記他方の軸方向可動部材を前記一方の軸方向可動部材に対して接近・離間させるボールスクリューと、前記各軸方向可動部材の間に配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構によって夫々支持された前記径方向可動部材と、を備え、前記伸縮ユニット用モータの駆動によって前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材に最も接近した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が収縮状態にあることによって前記各径方向可動部材は内径側に退避した非加圧位置にあり、前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材から最も離間した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が伸長状態にあることによって前記各径方向可動部材は外径側に突出した加圧位置にあることを特徴とする。
請求項5の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3又は4において、前記オーガ駆動用モータは、最後部の前記伸縮ユニットの後部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至5の何れか一項において、前記スカート部は、最前部の前記伸縮ユニットの前部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする。
請求項7の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至6の何れか一項において、前記スカート部の内壁が前記シャフトの軸方向と直交する方向となすスカート角度θを、30度<θ<60度の範囲としたことを特徴とする。
請求項8の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの後部に前記オーガ駆動用モータを支持したことを特徴とする。
請求項9の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至7の何れか一項において、前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの先部を前記スカート部に固定したことを特徴とする。
請求項10の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項3乃至9の何れか一項において、前記伸縮リンク機構は、四節平行リンク機構であることを特徴とする。
請求項11の発明に係る自動掘削推進装置は、請求項1乃至10の何れか一項において、全ての前記伸縮ユニットの外面を防塵シートにて覆うと共に、該防塵シートを介して前記径方向可動部材に対して加圧部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の自動掘削推進装置によれば、アースオーガを用いて無人で地盤を掘削する埋没型の自動掘削推進装置において、アースオーガが発生させる掘削反力を安定して支持し、また掘削中に生成される掘削土砂を効果的に掘削穴外へ排出することにより土圧を低減させながら、効率的な掘進を自律で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動掘削装置としての掘削ロボットの構成を説明するための一部断面による概略図である。
【図2】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る伸縮ユニットの拡径状態(軸方向収縮状態)、及び縮径状態(軸方向伸長状態)を示す斜視図である。
【図3】伸縮リンク機構の一例としての四節平行リンク機構の構成及び動作説明図である。
【図4】伸縮ユニットの仕様の一例を示す図である。
【図5】推進機構とその中空部内に装着されるケーシングパイプ及びアースオーガを示す斜視図である。
【図6】(a)及び(b)は2つの伸縮ユニットの連結状態を示す斜視図、及び連結部の具体的な構成を示す斜視図である。
【図7】推進機構の外側の開口部を防塵シートによって気密的に閉止する場合の構成例を示す各構成要素の説明図である。
【図8】(a)及び(b)は推進機構に防塵シートを被せた場合の構成を示す径方向断面図、及び各構成部品の構成説明図である。
【図9】加圧部材の他の構成例を示す斜視図である。
【図10】(a)はアースオーガの全体構成を示す正面図であり、(b)は掘削スクリュとスカート部を示す拡大断面図である。
【図11】掘削スクリュが掘削対象地盤を掘削している状態を示す平面図である。
【図12】(a)乃至(f)はミミズが蠕動運動により前進する様子を示す図である。
【図13】(a)乃至(e)に基づいて掘削ロボットの動作原理を説明する図である。
【図14】(a)及び(b)は、オーガ駆動用モータを支持する他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る自動掘削装置としての掘削ロボットの構成を説明するための一部断面による概略図であり、図2(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る伸縮ユニットの拡径状態(軸方向収縮状態)、及び縮径状態(軸方向伸長状態)を示す斜視図であり、図3は伸縮リンク機構の一例としての四節平行リンク機構の構成及び動作説明図であり、図4は伸縮ユニットの仕様の一例を示す図であり、図5は推進機構とその中空部内に装着されるケーシングパイプ及びアースオーガを示す斜視図であり、図6(a)及び(b)は2つの伸縮ユニットの連結状態を示す斜視図、及び連結部の具体的な構成を示す斜視図である。
掘削ロボット1(自動掘削装置)は、軸方向に貫通する土砂搬送、排出用の中空部11を備えた蠕動運動を利用した推進機構10と、推進機構10の中空部11内に軸方向に沿って配置され且つ推進機構と相対回転可能に支持された掘削、土砂搬送、排出用のアースオーガ50と、アースオーガ50によって掘削された土砂を中空部へ案内するスカート部70と、推進機構の中空部11内壁に沿って各伸縮ユニット12と相対動可能に配置され且つ先端部適所をスカート部70に固定された防塵用のケーシングパイプ75と、アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータ80と、オーガ駆動用モータを推進機構の一部に固定するモータ支持部材85と、伸縮ユニット12及びオーガ駆動用モータ80を制御する制御手段90と、を概略備えている。
【0016】
推進機構10は、ミミズの移動方式と同様な蠕動運動によってアースオーガ50を掘進させるための推進力を生成する。
推進機構10は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる複数の(本例では4個の)伸縮ユニット12(12A乃至12D)を備え、各伸縮ユニット12は全体形状が環状をなし、縮径時には軸方向長が伸長すると共に、拡径時には軸方向長が短縮する構成を備えている。
即ち、各伸縮ユニット12は図2に示すように、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材13(13a、13b)と、各一対の軸方向可動部材13a、13b間に配置されて放射状に径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材20と、軸方向可動部材と径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構25と、伸縮ユニット12を駆動する伸縮ユニット用モータ30と、を備えている。
一対の軸方向可動部材13a、13bは軸方向間隔が変化するように構成されており、一対の軸方向可動部材間の軸方向間隔が接近している時には径方向可動部材20が拡径位置にあり、一対の軸方向可動部材13a、13b間の軸方向間隔が拡大している時には径方向可動部材20が縮径位置にあるように連動する。
後述するように複数の伸縮ユニット12A〜12Dを連結する場合には、隣接する各伸縮ユニットの隣接する軸方向可動部材13a、13b同士を固定することにより、推進機構10全体としての軸方向長を伸縮することが可能となる一方で、個々の伸縮ユニットを構成する径方向可動部材20による縮径・拡径動作を個別に実現できる。
【0017】
伸縮ユニットの具体的な構成例を更に説明する。
各伸縮ユニット12(12A〜12D)は、軸方向前部と後部に夫々配置された略同じ形状の環状円盤状の軸方向可動部材13(13a、13b)と、各伸縮ユニット12の一方の軸方向可動部材13aに搭載された少なくとも一個の(本例では2個の)伸縮ユニット用モータ(ステッピングモータ)30と、伸縮ユニット用モータ30の出力部から延び、他方の軸方向可動部材13bに貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより他方の軸方向可動部材13bを一方の軸方向可動部材13aに対して接近・離間させるボールスクリュー31と、各軸方向可動部材13a、13bの間に跨って配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構25によって夫々支持された径方向可動部材(加圧部材)20と、を備える。
伸縮ユニット用モータ30の駆動によるボールスクリュー31の収縮方向への回転によって他方の軸方向可動部材13bが一方の軸方向可動部材13aに最も接近した軸方向位置にある時には(図2(a))、この伸縮リンク機構25が収縮状態にあることによって各径方向可動部材20は外径側に放射状に突出した加圧位置にあり、ボールスクリュー31の逆方向への回転によって他方の軸方向可動部材13bが一方の軸方向可動部材13aから最も離間した軸方向位置にある時には(図2(b))、この伸縮リンク機構が拡張状態にあることによって径方向可動部材20は内径側に退避した非加圧位置にある。
【0018】
伸縮リンク機構25は、軸方向可動部材13a、13bの周方向に所定の配置で複数個(本例では6個)配置されており、各伸縮リンク機構25により支持される各径方向可動部材20は同時に放射状に内外径方向へ出没する。
各伸縮ユニット12は制御手段90による制御によって個別に所定のタイミングで縮径、拡径を繰り返す。
なお、本例に係る伸縮リンク機構25は、四節平行リンク機構である。
四節平行リンク機構としての伸縮リンク機構25は、各軸方向可動部材13a、13bの対向面に夫々突設された支持部材26と、各支持部材26に夫々設けられた2個の軸部26aと、各軸部26aにより夫々一端を回動自在に軸支された二本ずつの平行なアーム27と、を備え、各アーム27の他端部は径方向可動部材(加圧部材)20に対して軸部27aによって回動自在に軸支されている。
【0019】
図3は、四節平行リンク機構の作動原理を示す図であり、四節平行リンク機構25は径方向可動部材20の外面が掘削穴内壁面と平行に押し付けられ、内壁面へ接地する面積が多いといった利点がある。押し付け力Fは、四節平行リンクの式(F=W/tanθ)より、収縮力Wに比例するため、伸縮ユニット用モータ30をボールスクリューで直動に変換することにより、収縮力を増加させる。
なお、本例では伸縮リンク機構25として四節平行リンク機構を示したが、これは一例に過ぎず、軸方向可動部材13と径方向可動部材20とを連動させ、且つ径方向可動部材の外側面を掘削穴内壁と略直交する方向へ進退させることができるリンク機構であればどのような構成であってもよい。
図2(b)のように軸方向可動部材13aに対して軸方向可動部材13bが最も離間した状態にある時に伸縮ユニット用モータ30を駆動してボールスクリュー31を収縮方向へ回転させると、ボールスクリューが螺合する螺子穴を介して軸方向可動部材13bが駆動されて軸方向可動部材13aへ接近する方向へ移動する。この過程で、当初内径側(非加圧位置)に位置していた径方向可動部材20は外径方向へ移動して掘削穴内壁を加圧する加圧位置へ変位する。
【0020】
推進機構10の中空部11は、軸方向に連結された複数の伸縮ユニットの中心部に夫々形成される貫通穴12aが軸方向に連続することにより形成されている。
本例では、2個の伸縮ユニット用モータ30をこの貫通穴12aを中心として対称位置関係にて配置している。
伸縮ユニット用モータ30としては、位置決め精度の高い2つのステッピングモータ(ケーエスエス株式会社製MB0401)を用い、伸縮ユニットを動作させる。
伸縮ユニット12の個数は、3個以上であれば蠕動運動が可能となるため、3個以上であればその個数はいくつであっても良い。また、各伸縮ユニット12の構造、軸方向寸法が同一であれば構成がシンプル化し有利であるが、必要に応じて構造、寸法を異ならせても良い。
また、掘進中において掘削穴内壁との間に十分な摩擦抵抗を発生させることができるように掘削穴内壁との接触面(後述する加圧部材21)の材質、構成を選定する。
伸縮ユニット12は、後述するように、その内部の駆動機構に掘削した土砂が入り込まないように気密保持する必要がある。
本例に係るオーガ駆動用モータ80は、最後部の伸縮ユニット12Dの後部の軸方向可動部材13bにモータ支持部材85を介して固定されており、モータ支持部材85によって推進機構10の中空部11とオーガ駆動用モータ80との間に掘削土砂排出用の空隙Sを形成して土砂排出を円滑化している。
【0021】
図4は伸縮ユニットの仕様の一例を示しており、周面土圧と伸縮ユニットの押付け力との関係についての実験によれば、深さ2.5mにおける1つの径方向可動部材(加圧部材)にかかる土圧は31.4Nとなり、伸縮ユニットの最小膨張力50Nはこの条件を満たしている。
次に、回転反力支持の観点から考察すると、本実験によればアースオーガ50の最大掘削反力は約13Nmであり、1つの伸縮ユニット12で支持できる回転反力は10Nmであった。しかし本掘削ロボット1は4つの伸縮ユニット12A乃至12Dで構成され、少なくとも2つの伸縮ユニットが収縮している(孔壁と接地している)パターンで掘削を行うので、この条件を満たしている。以上のように、本推進機構は十分な掘削反力支持・押付け力を備えている。
【0022】
図5に示すように、4個の伸縮ユニット12A〜12Dを直列に連結した推進機構10は、その中空部11内に金属製のケーシングパイプ75を装着し、ケーシングパイプ75の内部にはアースオーガ50を配置する。先端に位置する伸縮ユニット12Aにはスカート部70が固定され、ケーシングパイプ75の先端部はスカート部、或いは先端の伸縮ユニット12Aの軸方向可動部材13aに固定される。
ケーシングパイプ75の後端に設けたフランジ部76と中空部11の後端開口縁との間は図示しないOリング等のパッキングによって封止することにより、推進機構10の内側から掘削土砂が各伸縮ユニット12の内部に浸入することを防止する。
ケーシングパイプ75の後端部に位置するフランジ部76は後述する図14に示すようにオーガ駆動用モータ80から延びるモータ支持部材85を固定する手段であると同時に、フランジ部76に設けた貫通穴76aは、最後尾の伸縮ユニット12D内の各伸縮ユニット用モータ30から後方へ延びるボールスクリュー31を収容してボールスクリューが土砂と接触することを防止する役割を果たす。
隣接し合う2個の伸縮ユニットは、図6(b)に示すように対向する軸方向可動部材13aと13bの対向面に夫々環状の凹所13a’と、環状の凸所13b’とを有し、凹所13a’内に凸所13b’が嵌合するように各軸方向可動部材13a、13bを密着して接合させた状態でボルトにより固定する。
【0023】
次に、図7は推進機構の外側の開口部を防塵シートによって気密的に閉止する場合の構成例を示す各構成要素の説明図であり、図8(a)及び(b)は推進機構に防塵シートを被せた場合の構成を示す径方向断面図、及び各構成部品の構成説明図である。
図1の例ではエーシングパイプ75の後端縁と中空部11の後端開口縁との間を図示しないOリング等のパッキングにより封止し、図5の例ではケーシングパイプ75の後端に設けたフランジ部76と中空部11の後端開口縁との間を図示しないOリング等のパッキングによって封止することにより、夫々推進機構10の内周面側の防塵を図っている。
一方、推進機構の外面の開口から掘削土砂が進入することを防止する手法としては、両端が開口した円筒状の防塵シート95を推進機構を構成する各推進ユニット12A〜12Dの外面に跨るように添設して固定することにより実現する。
防塵シート95としては、例えば可撓性を有し且つ弾性を有しないビニルシートを基材とし、その表面にアルミ蒸着を施して摩擦抵抗を低減させたものを使用する。推進機構が掘削穴内を前進する過程では、防塵シート表面の摩擦抵抗が低いことにより前進がよりスムーズとなる。
各推進ユニット12A〜12Dを構成する軸方向可動部材13a、13bの外周面に形成される環状の係止溝14内にOリング96を嵌着することによって各推進ユニット外面の開口を防塵シート95によって封止し、掘削土砂が推進ユニット内部に浸入することを防止する。
【0024】
係止溝14は、図6の例では、推進機構10の先端側及び後端側に位置する伸縮ユニット12A、12Dの軸方向可動部材13a、13bの外周面に夫々形成する。また、隣接する伸縮ユニットの接合部を構成する軸方向可動部材13a、13bについては、例えば図6(b)に示すように一方の伸縮ユニットの軸方向可動部材13aの外周面に設けた凹所14a(小径部)が隣接する他方の伸縮ユニットの軸方向可動部材13bの大径部14bとの間で係止溝14を形成するように構成する。
4個の伸縮ユニット12A〜12Dを一列に連結した場合には、軸方向先端部と後端部の軸方向可動部材、及び中間部に位置する軸方向可動部材に夫々設けた係止溝14内に各Oリング96を嵌着することにより、防塵シート95を推進機構10の全長に渡って気密性よく固定することができ、各伸縮ユニット外面の開口部を閉止することができる。
Oリング等による推進機構内側の気密部と、防塵シート95による外面の封止構造との協働により、各伸縮ユニット内に土砂が浸入することが防止される。
なお、掘削穴の内壁と接触する加圧部材21の外面には防塵シート95を被せることができないため、図8に示すように径方向可動部材20の外面に添設される防塵シート95を介して径方向可動部材20の外面に対して加圧部材21を固定するように構成する必要がある。
即ち、径方向可動部材20の外面に、図8(a)に示した如く平面形状が略台形の突片(アリガタ)20aを固定すると共に、防塵シートを介して、この突片20aと整合する形状のアリ溝21aを有した加圧部材21をスライド式に装着し、更に固定片21bを加圧部材21の一端面に螺子止め固定する。
防塵シート95の一部は、突片20aと加圧部材21との間に挟まれて固定されるため、加圧部材21の外面だけが掘削穴内壁と接触してこれを加圧することができる。
【0025】
次に、図9は加圧部材21の他の構成例を示す斜視図であり、この加圧部材21の外面には縦リブ22aと、横リブ22bからなるスパイク22が突設されており、スパイク22によって掘削穴内壁との間の摩擦を高めて回転反力・鉛直方向支持力を高めている。
縦リブ22aは掘削穴の内壁に食い込むことにより推進機構10に対して加わる周方向への力に対する抵抗となり、横リブ22bは推進機構に対して加わる軸方向への力に対する抵抗となり、何れもアンカー効果を高めるために寄与する。加圧部材表面にスパイクを形成すると同時に、加圧部材21の材質として土との間の摩擦の高い材質を選定することが好ましい。
【0026】
次に、アースオーガ50は、掘削機構、土砂搬送機構、及び土砂排出機構を構成しており、単純な構造、動作で効率よく地盤の掘削や運搬を行うことができる。
本発明では、蠕動運動する推進機構10の内部に掘削・運搬・排出を単一の機構で行えるアースオーガ50を搭載している。推進機構とアースオーガとの協働により、前方にある土を掘削し、内部に取り込んでから後方へ排出することにより、掘削穴の前方に空間を作り前進する。この時、推進機構は掘削スクリュ53の半径と同径、或いはそれ以上の径を有することが必要である。従って、先端部と後方部で径が変化するアースオーガが必要となる。
図1、図10等に示すように、アースオーガ50は、中空部11を貫通し少なくとも先端部を中空部先端開口11aから突出させ且つモータによって回転駆動されるシャフト51と、中空部先端開口から突出したシャフト51部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュ53と、推進機構の中空部11内に配置され且つ掘削スクリュ53の後端部に連続一体化された掘削土砂搬送、排出用の小径の搬送スクリュ60と、を備えている。
【0027】
スカート部70は、掘削スクリュ53の外周縁との間に僅かなギャップを隔てて対向し、且つ外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁70aを有している。
スカート部70は先端に位置する伸縮ユニット12Aの先端側の軸方向可動部材13aに固定されており、アースオーガ50と相対回転する。また、ケーシングパイプ75の先端部はスカート部70と固定されている。つまり、スカート部70とケーシングパイプ75は、伸縮ユニット12Aの先端側の軸方向可動部材13a対して共に固定されており、軸方向可動部材13aと一体的に軸方向移動する。
ケーシングパイプ75の軸方向長さは推進機構10の最大伸長時の長さと同等程度とし、ケーシングパイプ75の後端外周縁と後部伸縮ユニット12Dとの隙間はOリング、シートなどで密封することにより、ケーシングパイプ75と中空部11の内壁との間に土砂が浸入しないように配慮する。
なお、ケーシングパイプ75は、推進機構10を構成している。
掘削スクリュ53とスカート部70の最大径は、形成される掘削穴の径を規定することとなるため、掘進時に後続して移動してくる推進機構10の最大径と同等か、それよりも大きいことが必要である。
【0028】
次に、図10に基づいてアースオーガの掘削スクリュの構成例について説明する。図10(a)はアースオーガの全体構成を示す正面図であり、(b)は掘削スクリュとスカート部を示す拡大断面図である。
掘削スクリュ53により掘削された土砂を詰まりを生じさせることなく搬送スクリュ60によって後方へ搬送、排出するためには、掘削スクリュが掘り進む土砂の体積を常に一定に維持する必要がある。掘削スクリュ53のピッチが先端が大きく、後部へ向かうほど同ピッチで狭くなってゆくとすれば、掘削土砂を後方へ搬送する過程で詰まりが発生する。このため、詰まりを防止するためには掘削スクリュの後方部分のピッチを漸増させる必要がある。しかし、掘削スクリュのピッチを大きくし過ぎると、傾斜が急角度になって土砂が後方に登り難くなる。このような掘削スクリュのピッチを適切に設定することによる土砂詰まりの防止と、土砂の搬送効率との間にはトレードオフの関係がある。
アースオーガ先端の掘削スクリュ53が回転することにより推進しながら穴を掘削する。この掘削穴径がDである。掘削した土砂は推進機構の中空部内を通る直径dの搬送スクリュ60によって後方へ搬送、排出される。したがって掘削スクリュ53の直径Dは、搬送スクリュ60の直径dより大きく設計する必要がある(図10(b))。
なお、本例では、掘削スクリュ53の直径Dを130mm、搬送スクリュ60の直径dを65mm、シャフト51の軸方向長を425mm、シャフト51の直径を20mmとしたアースオーガを用いた。
【0029】
掘削スクリュ53は、先端部から後方(上部)へ向かうに従って外径がテーパー状に漸減する構成であり、掘削スクリュ53の外周縁間を結ぶ直線Lとシャフト51と直交する水平方向の線Hとが形成する角度θは、30度〜60の範囲、特に45度±5度が好ましい。角度θが30度を下回る過小である場合にはアースオーガの回転によって急激に掘削後の土砂が集まり過ぎるのでトルクが一気に上がる。一方、角度θが60度を超える過大である場合には、土砂が運ばれる距離が長すぎてトルクが上がる。これに対して、角度θが45±5度の範囲である場合には、最適のトルクにて掘削、土砂搬送を実現することができた。
なお、スカート部の内壁70aの傾斜角度を、掘削スクリュ53の外周縁間を結ぶ直線Lと並行に設定することにより、掘削後の土砂を無駄なく搬送スクリュ60側に移送することが可能となる。従って、掘削スクリュの外周縁間を結ぶ直線Lの角度θが変更される場合には、スカート部の内壁の傾斜角度もそれに応じて変更する。
また掘削後の土砂が土塊状となって詰まりを起こすことを防止するために、後方ピッチPrを先端ピッチPfより大きく設計した。
【0030】
次に、図11は掘削スクリュが掘削対象地盤を掘削している状態を示す平面図であり、アースオーガの先端部を構成する掘削スクリュ53の回転により鉛直下方向へ掘進深度z2は次のように算出される。
即ち、掘削スクリュ53の先端とスカート部70の先端との隙間gpの広狭により取り込まれる土量が変化する。掘進深度z2は、ωをアースオーガの回転数、gpをアースオーガとスカートとの隙間、tを経過時間とすると、次式で与えられる。
【0031】
ところで、ミミズの移動方式は、(1)移動に必要な空間径が小さくて済む。(2)周辺環境(穴)との接触面積が大きいため、安定して移動できる。(3)頭部で取り入れた土類を内部の食道器官の運動により後方へ排出する。
図12はミミズが蠕動運動により前進する様子を示す図である。
ミミズの体は約110〜200の節に分かれている。この節1つを体節と呼ぶ。ミミズはこの体節を伸縮運動させることにより移動することができる。
ミミズは始めに頭部の体節を収縮させる(図12(a))。この収縮を順に後方の体節へと伝播させながら頭部の体節を伸張させてゆく((b)(c)(d))。このとき収縮した体節周りの剛毛により地面と摩擦が発生し、伸張した体節が前方に伸びるための反力を得ることができる。この収縮と伸張を繰り返すことにより縦波後進波が発生しミミズは前進することができる((e)(f))。
【0032】
これらのミミズの特徴をアースオーガを掘削手段として用いた掘削ロボットに生かすことで、推進機構の小型・軽量化、月面の重力を考慮した孔壁との反力支持、土中での掘進の効率化を期待できる。
また、ミミズの移動方式を掘削ロボットの推進機構に応用することで、推進機構10を掘削穴内壁に固定し、回転しながら掘削を行うアースオーガの回転反力に対する支持を強化し、土圧の影響を低減することができ、安定した掘進が可能となる。更に、ロボット内部の中空部11内に掘削した土砂を取り込む機構を持たせ、掘削した土砂を後方に運搬・排出しながら掘進することで土圧を減殺し、所望の掘進経路を安定して維持しつつ地中の深い場所に到達することが可能となる。
【0033】
本実施形態に係る推進機構10は4つの伸縮ユニット12A〜12Dから構成され、制御手段90が、所定の順序によって各伸縮ユニットを縮径、拡径させることによって、ミミズの蠕動運動による推進制御を行う。
本発明者らは、軸方向先端部の掘削機構部分とそれよりも後方の搬送・排出機構部分の径が異なるアースオーガ50を、ミミズの蠕動運動による推進機構10に搭載した本掘削ロボットを構築するために、周面摩擦の影響による推進深度のシミュレーションとアースオーガの土掘削実験を行った。これらの結果より掘削反力・周面摩擦といった観点から推進機構に必要な仕様を検討し、新規な推進機構を作製・検証した。
【0034】
次に、図13(a)乃至(e)に基づいて掘削ロボットの動作原理を説明する。
まず、オーガ駆動用モータ80を駆動してアースオーガ50を掘進方向に回転させることにより、先端部の掘削スクリュ53によって地盤(月面ではレゴリス層)100を掘削する。この際、制御手段90は、アースオーガ50の回転による掘削過程において、推進機構10を構成する4つの伸縮ユニット12A〜12Dを所定の順序によって縮径、拡径させる。
図13(a)の段階では、先端部に位置する伸縮ユニット12Aを除いた後方の伸縮ユニット12B、12C、12Dを周方向全体に渡って拡径させることにより、その外周面にて掘削穴の内壁と面接触による圧接状態となり、推進機構10を掘削穴内壁に固定する。これにより推進機構10がアースオーガ50と連れ回りすることを阻止し、アースオーガを安定して効率よく回転させることができる。また掘削穴内壁を拡径状態にある3つの伸縮ユニット12B〜12Dによって広い面積に渡って抑えることにより、内壁の崩れを防ぎ、伸縮ユニット以外の部位と内壁との間の周面摩擦を軽減することができる。拡径状態にある伸縮ユニットの軸方向長は最短長となっている。
【0035】
次に、図13(b)に示すように、一番目の伸縮ユニット12Aを拡径させると同時に二番目の伸縮ユニット12Bを縮径させて軸方向長を伸長させることにより、3つの伸縮ユニット12A、12C、12Dによって掘削穴内壁との固定状態を維持する。
次いで、図13(c)のように二番目の伸縮ユニット12Bの拡径と三番目の伸縮ユニット12Cの縮径を同時に実施し、更に引き続き図13(d)のように三番目の伸縮ユニット12Cの拡径と四番目の伸縮ユニット12Dの縮径を同時に実施する。
次いで、図13(e)では、四番目の伸縮ユニット12Dを拡径させると同時に先頭の伸縮ユニット12Aを縮径させ且つ軸方向長を伸長させる。すると、後方の3個の伸縮ユニット12B〜12Dが掘削穴内壁に固定された状態で、先頭の伸縮ユニット12Aが軸方向長を伸長させることによりアースオーガ50とスカート部70を図示のように伸縮ユニット12Aの軸方向伸長分だけ前進させることができる。
その後、(a)乃至(e)の掘削、推進動作を順次繰り返すことにより、推進機構10によってアースオーガ50の推進力を補助しながら掘進することができる。
【0036】
このように図13(a)乃至(e)に示したアースオーガによる全ての掘削過程において、常に3個の伸縮ユニットが拡幅して掘削穴内壁と圧接しており、アンカー効果により推進機構がアースオーガと連れ回りすることを阻止し、アースオーガの姿勢を適切に維持している。掘削穴内壁に圧接している伸縮ユニットの数が多いほど掘削穴内壁との摩擦力が高まるため、アースオーガによる軸方向への押し付け力を高めることができる。
掘削スクリュ53によって掘削された土砂は、掘削スクリュの回転力によってスカート部70の内壁に沿って後方へ移動し、搬送スクリュ60により中空部11内を後方へ搬送され、中空部の後部開口から外部へ排出される。前進の障害となる掘削後の土砂が中空部を経由して後方へ排出されることにより、掘削スクリュ53による新たな掘削と推進機構10による前方への移動が円滑化する。
【0037】
このように各伸縮ユニットの径方向への伸縮量をコントロールすることで、土への掘削スクリュ53の押し付け力、及び、掘削ロボット内部に取り込まれる掘削土砂の量を調整することができる。また、アースオーガにより掘削した直後の掘削穴の内壁を各収縮ユニットにより抑えるため、内壁の崩れを確実に防止することができる。
特に、推進機構10においては、径方向可動部材20による外径方向への押し付けと、軸方向への推進とが夫々別個に各伸縮ユニットにより行われるため、外径方向への押し付け力により摩擦、推進をコントロールすることができる。つまり、推進機構による軸方向への推進力は、伸縮ユニットと掘削穴内壁との摩擦力に依存するところが大きく、摩擦力の反力として推進力が生じる。このため、深度に応じた土圧の増大による影響をうけにくい掘進を実現できる。
【0038】
次に、図14(a)及び(b)は、オーガ駆動用モータ80を支持する他の構成例を示している。この実施形態では、ケーシングパイプ75の後端部に設けたフランジ部76に対してモータ支持部材85を介してオーガ駆動用モータ80を固定している。また、符号77は防塵用のOリング等のパッキングである。
ケーシングパイプ75は、その先端部をスカート部70及び先頭の伸縮ユニット12Aを構成する軸方向可動部材13aと一体化されており、その他の推進機構10の構成要素とは相対的に動作する。
なお、図13の例では、4個の推進ユニットのうちの3個の推進ユニットを常に拡径させて掘削穴内壁との間の固定圧を確保する例を示したが、図14の例では、(a)において後方の3個の伸縮ユニット12B、12C、12Dを拡径させた状態で掘削を進行し、次の(b)では二番目の伸縮ユニット12Bを縮径させて軸方向長を伸長させることにより、アースオーガ50全体を二番目の伸縮ユニット12Bの軸方向伸長分だけ前方へ突出させて前進する。
【0039】
このように常に3個の推進ユニットを拡径させる必要はなく、2個の伸縮ユニットを拡径させて掘削穴内壁との固定状態を維持しつつ、他の伸縮ユニットを用いて前方への推進力を確保するようにしてもよい。
なお、本発明の掘削ロボット1を用いた掘削開始前の段階では、推進機構が入り込む掘削穴が地盤面に存在していないため、何らかの手法で所要深さの掘削穴を予め形成しておき、その掘削穴に掘削ロボット1を差し込んでから、図13に示した手順による掘削を実施する必要がある。例えば、掘削初期段階では、地盤表面に掘削ロボット1を収容するに足る軸方向長を有した中空の円筒管を立設しておき、この円筒管の上端開口から掘削ロボット1を内部に差込んで掘削スクリュ53を地盤面に接触させてから掘削ロボットを駆動開始することにより、掘削穴を形成開始することができる。円筒管内部では、推進機構10を構成する各伸縮ユニット12は図13に示した如き順序で拡径による円筒管内壁との圧接、縮径による圧接解除及び軸方向への伸長を繰り返すことにより、地盤の掘削を進行させることができる。
掘削穴の深さが掘削ロボット全体を収容するに足る程度に達した時点で、円筒管を除去しても図13の手順での掘削を進行することが可能となる。
掘削を完了して掘削ロボット1を掘削穴から抜き取る際には、全ての伸縮ユニットを縮径状態にして掘削穴との接触を解消してから抜き取ればよい。
【0040】
以上のように本発明の掘削ロボット(自動掘削推進装置)1では、月面の地中探査蠕動運動型ロボットに搭載する地盤の掘削部・運搬部・排出部として径変化するアースオーガを採用し、掘削深度の増大に応じて高まる土圧の増大に打ち勝ってアースオーガを推進させることができる強力な推進手段として蠕動運動を利用した推進機構を採用した。このため、自律で鉛直方向の土掘削を行うことができる。
従って、月面に地震計を埋設するための掘削作業や、地盤のサンプルを採取するための掘削作業に適用した場合に好適な結果を得ることができる。
なお、本発明の掘削用ロボットは、月面のみならず、地球における地盤の掘削においても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…掘削ロボット(自動掘削推進装置)、10…推進機構、11…中空部、11a…中空部先端開口、12…伸縮ユニット、12A、12B、12C、12D…伸縮ユニット、12a…貫通穴、13…軸方向可動部材、13a…軸方向可動部材、13a’…凹所、13b…軸方向可動部材、13b’…凸所、14…係止溝、14a…凹所、14b…大径部、20…径方向可動部材、20a…突片、21…加圧部材、21a…アリ溝、21b…固定片、22a…縦リブ、22b…横リブ、25…伸縮リンク機構、26…支持部材、26a…軸部、27…アーム、27a…軸部、30…伸縮ユニット用モータ、31…ボールスクリュー、50…アースオーガ、51…シャフト、53…掘削スクリュ、60…搬送スクリュ、70…スカート部、70a…内壁、75…ケーシングパイプ、76…フランジ部、76a…貫通穴、80…オーガ駆動用モータ、85…モータ支持部材、90…制御手段、95…防塵シート、96…Oリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に貫通する中空部を備えた蠕動運動による推進機構と、該推進機構の中空部内に軸方向に沿って配置されて該推進機構と相対回転するアースオーガと、該アースオーガによって掘削され前記中空部内を後方へ搬送される土砂の進入をガイドするスカート部と、該アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータと、該オーガ駆動用モータを前記推進機構の一部に固定するモータ支持部材と、制御手段と、を備え、
前記推進機構は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニットを備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、
前記アースオーガは、前記中空部を貫通し少なくとも先端部を該中空部先端開口から突出させ且つ前記オーガ駆動用モータによって回転駆動されるシャフトと、前記中空部先端開口から突出した該シャフト部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュと、前記推進機構の中空部内に配置され且つ前記掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュと、を備え、
前記スカート部は、前記掘削スクリュの外周縁と対向し且つ該外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁を有し且つ前記推進機構の先部に固定されていることを特徴とする自動掘削推進装置。
【請求項2】
掘削対象地盤に形成された掘削穴の内部に前記推進機構が埋没した状態において、前記制御手段は、後部の伸縮ユニットを拡径させて前記掘削穴内壁に固定すると共に、少なくとも先頭の前記伸縮ユニットを縮径させて軸方向へ伸長させることにより、前記推進機構により支持された前記アースオーガを軸方向へ伸長した長さ分だけ前進させる蠕動運動を実施することを特徴とする請求項1に記載の自動掘削推進装置。
【請求項3】
前記伸縮ユニットは、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材と、各一対の軸方向可動部材間に配置されて放射状に内外径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材と、前記軸方向可動部材と前記径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構と、該伸縮ユニットを駆動する伸縮ユニット用モータと、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動掘削推進装置。
【請求項4】
前記各伸縮ユニットは、軸方向前部と後部に夫々配置された環状の前記軸方向可動部材と、一方の前記軸方向可動部材に搭載された少なくとも一つの伸縮ユニット用モータと、該伸縮ユニット用モータから延び、他方の前記軸方向可動部材に貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより前記他方の軸方向可動部材を前記一方の軸方向可動部材に対して接近・離間させるボールスクリューと、前記各軸方向可動部材の間に配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構によって夫々支持された前記径方向可動部材と、を備え、
前記伸縮ユニット用モータの駆動によって前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材に最も接近した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が収縮状態にあることによって前記各径方向可動部材は内径側に退避した非加圧位置にあり、前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材から最も離間した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が伸長状態にあることによって前記各径方向可動部材は外径側に突出した加圧位置にあることを特徴とする請求項3に記載の自動掘削推進装置。
【請求項5】
前記オーガ駆動用モータは、最後部の前記伸縮ユニットの後部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の自動掘削推進装置。
【請求項6】
前記スカート部は、最前部の前記伸縮ユニットの前部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項7】
前記スカート部の内壁が前記シャフトの軸方向と直交する方向となすスカート角度θを、30度<θ<60度の範囲としたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項8】
前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの後部に前記オーガ駆動用モータを支持したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項9】
前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの先部を前記スカート部に固定したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項10】
前記伸縮リンク機構は、四節平行リンク機構であることを特徴とする請求項3乃至9の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項11】
全ての前記伸縮ユニットの外面を防塵シートにて覆うと共に、該防塵シートを介して前記径方向可動部材に対して加圧部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項1】
軸方向に貫通する中空部を備えた蠕動運動による推進機構と、該推進機構の中空部内に軸方向に沿って配置されて該推進機構と相対回転するアースオーガと、該アースオーガによって掘削され前記中空部内を後方へ搬送される土砂の進入をガイドするスカート部と、該アースオーガの軸方向後部を支持して回転駆動するオーガ駆動用モータと、該オーガ駆動用モータを前記推進機構の一部に固定するモータ支持部材と、制御手段と、を備え、
前記推進機構は、軸方向へ一列に配列されて個別にその外径を縮径・拡径させる3個以上の伸縮ユニットを備えると共に、各伸縮ユニットは縮径時に軸方向長が伸長すると共に拡径時に軸方向長が短縮する構成を備え、
前記アースオーガは、前記中空部を貫通し少なくとも先端部を該中空部先端開口から突出させ且つ前記オーガ駆動用モータによって回転駆動されるシャフトと、前記中空部先端開口から突出した該シャフト部分の周囲に固定され後方へ向かうほど外径が漸減する大径の掘削スクリュと、前記推進機構の中空部内に配置され且つ前記掘削スクリュ後端部に連続一体化された掘削土砂搬送用の小径の搬送スクリュと、を備え、
前記スカート部は、前記掘削スクリュの外周縁と対向し且つ該外周縁の輪郭線と並行な円錐状の内壁を有し且つ前記推進機構の先部に固定されていることを特徴とする自動掘削推進装置。
【請求項2】
掘削対象地盤に形成された掘削穴の内部に前記推進機構が埋没した状態において、前記制御手段は、後部の伸縮ユニットを拡径させて前記掘削穴内壁に固定すると共に、少なくとも先頭の前記伸縮ユニットを縮径させて軸方向へ伸長させることにより、前記推進機構により支持された前記アースオーガを軸方向へ伸長した長さ分だけ前進させる蠕動運動を実施することを特徴とする請求項1に記載の自動掘削推進装置。
【請求項3】
前記伸縮ユニットは、軸方向間隔が変化する一方で径方向位置が変化しない一対の略環状の軸方向可動部材と、各一対の軸方向可動部材間に配置されて放射状に内外径方向へ進退可能に支持された複数の径方向可動部材と、前記軸方向可動部材と前記径方向可動部材を連動して作動させるための伸縮リンク機構と、該伸縮ユニットを駆動する伸縮ユニット用モータと、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動掘削推進装置。
【請求項4】
前記各伸縮ユニットは、軸方向前部と後部に夫々配置された環状の前記軸方向可動部材と、一方の前記軸方向可動部材に搭載された少なくとも一つの伸縮ユニット用モータと、該伸縮ユニット用モータから延び、他方の前記軸方向可動部材に貫通形成した螺子穴と螺合しつつ貫通し正逆回転することにより前記他方の軸方向可動部材を前記一方の軸方向可動部材に対して接近・離間させるボールスクリューと、前記各軸方向可動部材の間に配置され且つ周方向に複数個配置された伸縮リンク機構によって夫々支持された前記径方向可動部材と、を備え、
前記伸縮ユニット用モータの駆動によって前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材に最も接近した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が収縮状態にあることによって前記各径方向可動部材は内径側に退避した非加圧位置にあり、前記他方の軸方向可動部材が前記一方の軸方向可動部材から最も離間した軸方向位置にある時には前記各伸縮リンク機構が伸長状態にあることによって前記各径方向可動部材は外径側に突出した加圧位置にあることを特徴とする請求項3に記載の自動掘削推進装置。
【請求項5】
前記オーガ駆動用モータは、最後部の前記伸縮ユニットの後部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の自動掘削推進装置。
【請求項6】
前記スカート部は、最前部の前記伸縮ユニットの前部の前記軸方向可動部材により支持されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項7】
前記スカート部の内壁が前記シャフトの軸方向と直交する方向となすスカート角度θを、30度<θ<60度の範囲としたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項8】
前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの後部に前記オーガ駆動用モータを支持したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項9】
前記推進機構の中空部内壁に沿って前記各伸縮ユニットと相対動可能に防塵用のケーシングパイプを配置し、該ケーシングパイプの先部を前記スカート部に固定したことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項10】
前記伸縮リンク機構は、四節平行リンク機構であることを特徴とする請求項3乃至9の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【請求項11】
全ての前記伸縮ユニットの外面を防塵シートにて覆うと共に、該防塵シートを介して前記径方向可動部材に対して加圧部材を着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の自動掘削推進装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−169056(P2011−169056A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35286(P2010−35286)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(599011687)学校法人 中央大学 (110)
【Fターム(参考)】
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