説明

自動搬送車

【課題】小型、低コストであって、連結時の位置制御が容易な優れた特性の自動搬送車を提供すること。
【解決手段】牽引車2を連結するための1箇所の係合孔150と、牽引車2の側面202に対面するガイドレール13と、を有する搬送台車10と、係合孔150に連結される連結ピン41と、牽引車2の向きと搬送台車10の向きとのずれを規制できるよう、ガイドレール13と対面するように側面202に配設されたローラ210と、を有する牽引車2と、の組み合わせによる自動搬送車1は、前後方向に移動する際には、連結ピン41から係合孔150に作用する前後方向の力に応じて搬送台車10が前後方向に牽引される一方、左右方向に移動する際には、ローラ210からガイドレール13に作用する左右方向の力に応じて搬送台車10が左右方向に牽引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自在車輪を備え自立可能な搬送台車と、この搬送台車に連結される牽引車と、を組み合わせた自動搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、工場内に予め設定された所定ルートに沿って自走可能な牽引車に、自在車輪を備えた搬送台車を組み合わせた自動搬送車が知られている。牽引車は、駆動用のモータやバッテリ等を備えているほか、走行床面に敷設された磁気テープ等のガイドラインを検知するための検知センサ等を備えている。このような牽引車に搬送台車を連結すれば、ワークを積載した搬送台車を所定のルートに沿って移動させることができる。さらに、このような自動搬送車としては、搬送台車の下側に潜り込み、連結ピン等を介して搬送台車に連結可能な低床式の牽引車を含む自動搬送車が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、鉛直方向上方へ突出可能な連結ピンを備えた牽引車と、連結ピンを受け入れるために鉛直方向下方に開口する係合孔を備えた搬送台車と、の組み合わせによる自動搬送車が記載されている。この自動搬送車では、連結ピンを係合孔に挿入することにより、搬送台車に牽引車を連結できる。搬送台車に連結された状態で牽引車を自走させれば、連結ピンを介して搬送台車を牽引することができる。牽引車を搬送台車から切り離す際は、連結ピンを係合孔から引き抜くように後退させた後、搬送台車の下側から抜け出るように牽引車を自走させれば良い。
【0004】
一般的に、自動搬送車が利用される工場内のスペースは、設置された生産機械の間を縫うように確保された通路等、非常に狭いスペースであることが多い。そこで、牽引車の小回り性を十分に確保できるように、個別に駆動される左右一対の駆動輪を備えると共に左右の駆動輪の回転差に応じて操舵される駆動ユニットを前後方向の2箇所に配置した牽引車が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このような牽引車であれば、前進や後退はもちろん、左右方向への横移動等が可能となり、狭小なスペースの中で非常に小回り良く搬送台車を牽引できる。
【0005】
しかしながら、前記従来の自動搬送車では、次のような問題がある。すなわち、前進や後退に加えて横移動を実現しようとすると、1箇所の連結ピンのみによっては牽引車の力を搬送台車に効率良く伝達できず、不安定な牽引状態に陥るおそれがある。このような不安定な牽引状態を未然に回避するには、2箇所に連結ピンを設ければ良いが、連結ピンの進退機構等が2組必要となって、牽引車の大型化、コストアップ等を生じるおそれがある。さらに、連結ピンを2箇所設けると、搬送台車に対して牽引車を連結する際に2箇所同時の位置合わせが必要となり、連結時の位置制御の難易度が高くなってしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−113650号公報
【特許文献2】特開2009−230238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、自在車輪を備え自立可能な搬送台車と、搬送台車の下側に潜り込んで連結される牽引車と、を組み合わせた自動搬送車において、小型、低コストであって、連結時の位置制御が容易な優れた特性の自動搬送車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自在車輪を備え自立可能な搬送台車と、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置され、前後方向から前記搬送台車の下側に潜り込んで連結される牽引車と、を組み合わた自動搬送車であって、
前記搬送台車は、前記牽引車を連結するための1箇所の係合部と、連結された前記牽引車の左右方向両側の側面にそれぞれ対面するように配設されたガイド部と、を有し、
前記牽引車は、2箇所の前記駆動ユニットに対して前後方向の中間に位置して前記係合部に連結される連結部と、当該牽引車の向きと前記搬送台車の向きとのずれを生じさせる相対的な姿勢変化を規制できるよう、前記ガイド部と対面するように左右方向に面する各側面にそれぞれ配設された当接部と、を有し、
前記搬送台車に前記牽引車が連結されたとき、前記ガイド部と前記当接部とが対面する箇所が、前記牽引車の各側面側において前記連結部を挟んで前後方向の両側にそれぞれ配置されており、
連結状態の前記牽引車が前後方向に移動する際には、前記ガイド部と前記当接部との組み合わせにより前記相対的な姿勢変化が規制された状態で、前記連結部から前記係合部に作用する前後方向の力に応じて前記搬送台車が前後方向に牽引される一方、
連結状態の前記牽引車が左右方向に移動する際には、前記牽引車の移動方向に面する側面において前記連結部を挟んで前後方向の両側に位置する前記当接部から前記ガイド部に作用する左右方向の力に応じて前記搬送台車が左右方向に牽引される自動搬送車にある(請求項1)。
【0009】
本発明は、前後方向のほか、左右方向にも移動できる自動搬送車を対象としている。ここで、「前後方向」とは、2箇所の前記駆動ユニットが配置された方向を意味し、「左右方向」とは、前後方向に直交する横方向を意味している。
【0010】
本発明の自動搬送車においては、連結状態の前記牽引車が前後方向に移動する際には、前記連結部から前記係合部に作用する前後方向の力に応じて、前記搬送台車が前後方向に牽引される。前記係合部が1箇所のみの前記自動搬送車の場合、牽引方向を前後方向両側に設定すると、前記係合部をどのように配置しても前記搬送台車の自在車輪が移動方向前側に位置する場合が生じることになる。このように移動方向前側に位置する自在車輪は、前記搬送台車が牽引されるときに押し出されて前進するため、例えば、床面の状態等に応じて容易に車輪方向が変動してしまうおそれがある。自在車輪の車輪方向が変動すると、搬送台車の向きが変動する等、前記牽引車に対する前記相対的な姿勢変化が発生し、不安定な牽引状態に陥るおそれがある。
【0011】
本発明の自動搬送車における連結状態の前記牽引車は、前記ガイド部と前記当接部との組み合わせにより、前記搬送台車に対する相対的な姿勢変化が規制された状態にある。そのため、1箇所のみの前記係合部を介して前記搬送台車を牽引するに当たって、前記係合部よりも移動方向前側に前記搬送台車の自在車輪が位置する場合であっても、前記牽引車に対する前記搬送台車の前記相対的な姿勢変化を所定の範囲内に規制しながら、安定した姿勢で前記搬送台車を牽引できる。
【0012】
また、連結状態の前記牽引車が左右方向に移動する際には、前記牽引車の移動方向に当たる側面の前記当接部から前記ガイド部に作用する力により、前記搬送台車が左右方向に牽引される。ここで、前記当接部と前記ガイド部とが対面する箇所は、前記連結部を挟んで前後方向の両側に配置されている。前後方向において前記連結部の両側に配置された少なくとも2箇所の前記当接部によって前記牽引車を押し出すように牽引すれば、前記搬送台車を安定した姿勢で左右方向に移動させることができる。
【0013】
本発明の自動搬送車において、前記牽引車の各側面に対面する前記ガイド部が、それぞれ、前後方向に切れ目なく連続するように延設され、
前記牽引車を挟んで相互に対面する一対の前記ガイド部は、前記相対的な姿勢変化を規制しながら前記牽引車を進退させ得る程度の一定間隔のガイド通路と、該ガイド通路に対して前後方向のうちの少なくともいずれか一方に隣接するように延設され、当該ガイド通路から離れた位置ほど間隔が広くなる末広がり形状の進入路と、を形成していることが好ましい(請求項2)。
【0014】
この場合には、前記搬送台車の下側に前記牽引車を潜り込ませるに当たって、末広がり形状の前記進入路から前記牽引車を進入させることができる。末広がり形状の前記進入路であれば、前記牽引車の進入経路に多少の位置的な誤差があっても、前記ガイド部と前記牽引車との接触に応じて前記搬送台車の相対位置を自動的に調整可能である。
【0015】
このように進入時の位置的な誤差を吸収できれば、前記牽引車を前記ガイド通路に直接、進入させる場合と比較して、前記搬送台車の下側に前記牽引車を潜り込ませる場合に要求される位置精度を格段に抑制できる。要求される位置精度が低くなれば、前記搬送台車に対して前記牽引車を連結する際の制御が容易となる。なお、前記進入路を前後方向の両側に配設することも良い。この場合には、前後方向両側から前記牽引車を比較的容易に進入させることができるようになる。
【0016】
また、前記当接部が、前記ガイド部との当接に応じて転動可能なローラを備えていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、前記進入路から前記牽引車が進入する際に前記ガイド部と接触して発生する接触抵抗を低減でき、前記進入路を介して前記牽引車を滑らかに進入させることができるようになる。
【0017】
また、前記牽引車が備える前記連結部が、鉛直方向に昇降可能な軸状の連結ピンを有し、
前記搬送台車が備える前記係合部が、前記連結ピンを鉛直方向に挿入可能であって、左右方向に長く形成された長孔状の係合孔を備えていることが好ましい(請求項4)。
【0018】
前記係合孔に対して鉛直方向に前記連結ピンを挿入する場合には、前記搬送台車を床面に沿って牽引する際、牽引のための力が前記連結ピンを引き抜く方向に作用するおそれが極めて少なくなる。また、前記係合孔を左右方向に幅広の長孔状に形成すれば、左右方向に牽引する際、前記係合孔の内周側面に対する前記連結ピンの当接を回避しながら、前記当接部を確実性高く前記ガイド部に当接させることができるようになる。
【0019】
また、前記ガイド部と前記当接部とが対面する箇所が、前記駆動ユニットにおける前記2本1組の駆動輪の旋回中心に対して前後方向の位置が略一致するように配置されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、前記搬送台車を左右方向に牽引する際、各駆動ユニットの駆動輪の操舵方向の真正面に前記当接部が位置するようになり、前記駆動ユニットの駆動力を一層、効率良く前記ガイド部に伝達できるようになる。
【0020】
また、前記連結部が、2箇所の前記駆動ユニットに対して前後方向の中央に当たる位置に配置されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、前後方向両側において、前記駆動ユニットと前記連結部との位置関係を同様に設定できるようになる。前後方向前側に牽引する場合と、前後方向後ろ側に牽引する場合と、で制御条件の違いを抑制できるので、制御仕様を効率良く決定できるようになり作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動搬送車は、自在車輪を備え自立可能な搬送台車と、搬送台車の下側に潜り込んで連結される牽引車と、を組み合わせた自動搬送車であって、連結箇所が1箇所のみであるため、小型、低コストであって、連結時の位置制御が容易な優れた特性の自動搬送車である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1における、自動搬送車を示す斜視図。
【図2】実施例1における、牽引車を斜め上方から見込む斜視図。
【図3】実施例1における、牽引車を斜め下方から見上げた斜視図。
【図4】実施例1における、駆動ユニットを示す斜視図。
【図5】実施例1における、駆動ユニットを示す上面図。
【図6】実施例1における、連結ピンが突出状態にある連結ユニットを示す側面図。
【図7】実施例1における、連結ピンが後退状態にある連結ユニットを示す側面図。
【図8】実施例1における、搬送台車を示す斜視図。
【図9】実施例1における、搬送台車を示す正面図。
【図10】実施例1における、搬送台車の一部を示す上面図(図8中の破断線Aで切断された下部の上面図。)。
【図11】実施例1における、搬送台車の一部を示す斜視図(図10に対応する斜視図。)。
【図12】実施例1における、搬送台車と牽引車の連結状態を表す模式図。
【図13】実施例1における、自動搬送車のシステム構成を示すブロック図。
【図14】実施例1における、自動搬送車が前後方向に移動する様子を説明するための説明図。
【図15】実施例1における、自動搬送車が左右方向に移動する様子を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、図1に示すように、自在車輪18を備え自立可能な搬送台車10と、この搬送台車10に連結される牽引車2と、を組み合わせた自動搬送車1に関する。
【0024】
牽引車2は、図1〜図3に示すように、幅広で高さ方向に薄く前後方向に長い低床式の車体20を備えている。車体20の前側の先頭部分には制御ユニット50(図13を参照して後述する。)が格納され、後端部分には電力を貯えるためのバッテリ280が搭載されている。車体20の中間部分には、同軸上に並列配置された2本1組の駆動輪331を備えた駆動ユニット3が前後方向の2箇所に配置されていると共に、搬送台車10を連結するための連結ユニット4が2基の駆動ユニット3の中央に配置されている。
【0025】
車体20前後の下部には、前後方向に突出すると共に内部にバンパースイッチ220(図13参照。)が収容されたバンパー22が設けられている。2箇所の駆動ユニット3の前後方向の中間に当たる底面には、自在車輪よりなる補助輪208が左右両側に取り付けられている。
【0026】
前側の正面201には、操作表示パネル23のほか、通信ユニット25や障害物センサ26等が配設されている。操作表示パネル23には、非常停止スイッチ231、操作スイッチ232、表示ランプ233、LED表示器234(図13参照。)等が配置されている。通信ユニット25は、赤外線通信によりデータを送受信するためのユニットであり、受発光部が前方に突出するように配置されている。障害物センサ26は、周辺の障害物を検知するための赤外線センサ等の検知センサであり、正面201の略中央に配置されている。
【0027】
側面202の下部には、帯状のテープスイッチがゴムチューブ内に挿通配置されたエッジスイッチ27がほぼ全長に渡って配設されている。側面202の後端部には、内部のバッテリ280を充電するための充電端子28が配設されている。また、側面202の略中央には、周辺の障害物を検知する障害物センサ26が配設されている。
【0028】
牽引車2の側面202には、さらに、円盤状のローラ(当接部)210の外周面の一部を外側に向けて突出させるためのローラ窓21が穿孔されている。ローラ窓21は、前後方向の2箇所の位置に、同じ高さで配置されている。ローラ210は、鉛直方向の回転軸(図示略)に軸支された円盤状の回転ローラであり、搬送台車10側のガイドレール13に当接して転動するよう、側面202から外側に一部突出した状態で配設されている。
【0029】
牽引車2では、ローラ窓21等の配置を含めて両側の側面202が同じ仕様で構成されている。車体幅が全長に渡って略一定であると共に、各ローラ210の突出量が全て同じに設定されているので、左右のローラ210の外周面により規定される幅は、前側後ろ側共に共通のガイド幅Wa(図12参照。)となっている。
【0030】
低床式の車体20の上面203の中央付近、前後2箇所の駆動ユニット3の中央に当たる位置には、連結ユニット4の連結ピン41を突出させるための貫通孔241が穿孔されている。また、貫通孔241の横(左右方向)には、連結ユニット4が備えるビームセンサ44(図6を参照して後述する。)の検知窓242が隣り合わせで開口している。
【0031】
駆動ユニット3は、図4及び図5に示すごとく、ブッシュ等を介して車体20側にボルト固定される取付プレート32と、2本1組の駆動輪331を含む旋回部33と、を組み合わせたユニットである。旋回部33は、取付プレート32に貫通保持された回転シャフト330を中心として旋回可能な状態で取付プレート32に固定されている。取付プレート32の上面側に突出する回転シャフト330の端部には、回転シャフト330の旋回角、すなわち駆動輪331の操舵角を検知するための操舵角検知部350が配設されている。
【0032】
旋回部33は、同軸に並列して回転支持された2本の駆動輪331と、これらの駆動輪331に個別に対応し、それぞれ独立に回転制御可能な2基の駆動モータ332と、を備えている。旋回部33の前面には、ガイドラインを検知するためのラインセンサ351が配設されていると共に、ラインセンサ351からオフセットする位置に、ガイドマーカからアドレス情報等を読み取るためのマーカセンサ352が配設されている。
【0033】
駆動ユニット3の各駆動輪331を個別に駆動すると、その回転差に応じて回転シャフト330を中心として旋回部33が旋回し、これにより駆動ユニット3が操舵される。本例の駆動ユニット3では、回転シャフト330が駆動輪331の操舵中心となっており、360度全周をカバーできるように操舵範囲が設定されている。本例の駆動ユニット3では、旋回部33の前面に配設されたラインセンサ351及びマーカセンサ352が常に前進側の正面に位置するように各駆動輪331が制御される。
【0034】
連結ユニット(連結部)4は、側壁が一部省略された図6及び図7に示すごとく、ボックス形状の筐体40を含むユニットである。図6は、連結ピン41が突出した状態を示し、図7は、連結ピン41が後退した状態を示している。連結ユニット4は、円柱状の連結ピン41と、連結ピン41を昇降させる昇降機構45と、連結ピン41の突出タイミングを検知するために筐体40の上面に取り付けられたビームセンサ44と、を備えている。
【0035】
連結ピン41は、筐体40の天板401に固定された円筒状の進退ガイド411に内挿配置され、軸方向に進退可能な状態で保持されている。連結ピン41の後端面には、軸方向に沿うように穿孔されたバネ孔(図示略)が開口していると共に、外周側に張り出すように平板状のプレート458が固定されている。
【0036】
連結ユニット4が牽引車2(図2)に取り付けられた状態では、車体20の上面203に穿孔された貫通孔241を介して連結ピン41が上方に突出可能となっている。ビームセンサ44は、貫通孔241の横に隣り合わせで開口する検知窓242を介して、連結ピン41の挿入対象である後述の係合プレート15(図11、図12等。)を検知可能となっている。
【0037】
昇降機構45は、連結ピン41を昇降させるための昇降モータ452、昇降モータ452の回転を連結ピン41の直線的な動きに変換するためのカム454、連結ピン41を突出方向に付勢する弦巻バネ456、及び連結ピン41の後端面に固定されたプレート458等により構成されている。弦巻バネ456は、上端部が基部411のバネ孔に内挿されると共に、筐体40の底面から立設された支持軸431に下端部が外挿された状態で、圧縮状態で配設されている。
【0038】
カム454は、昇降モータ452の回転軸453から偏芯して、その軸方向に突出するように配設されている。このように配設されたカム454は、回転軸453の回転に応じて回転軸453回りの周回運動を行うことになる。一方、プレート458は、周回運動に応じて水平方向(図6及び図7の紙面を貫通する方向)に進退するカム454に常時、係合できるよう、昇降モータ452側に張り出す部分が水平方向に幅広く形成されている。昇降機構45では、プレート458に係合するカム454により、連結ピン41の突出位置が規制されている。
【0039】
連結ユニット4では、弦巻バネ456の付勢力により連結ピン41が上方に向けて付勢された状態にある。連結ピン41の先端側に障害物がなければ、カム454に対してプレート458が当接するか、プレート458が進退ガイド411の端面に当接する位置まで、連結ピン41が突出することになる。この状態で、昇降モータ452を回転させると、カム454の周回運動のうち、水平方向の動きの成分がプレート458の表面に沿うカム454の進退動作によって吸収され、残りの鉛直方向(軸方向)の動きにより連結ピン41が軸方向に進退することになる。
【0040】
搬送台車10は、図8及び図9に示すごとく、前後方向に長い直方体の外形状を呈するフレーム構造の台車である。このフレーム構造は、前後方向に沿う一対の側壁部11を相互に対面させ、対面方向に渡された連結パイプ115、116により相互に固定した構造を呈している。側壁部11は、鉛直方向に立設された両側2本のメインシャフト110と、この2本のメインシャフト110に対して水平方向に渡された数本の連結パイプ111、112と、により形成されている。
【0041】
前後方向の前側に位置する2本のメインシャフト110に対して、上段及び下段の2本の連結パイプ115、116が固定され、後ろ側に位置する2本のメインシャフト110に対しても、同様に、上段及び下段の2本の連結パイプ115、116が固定されている。また、4本のメインシャフト110の下端には、それぞれ、牽引される方向に応じて自在に旋回可能な自在車輪18が取り付けられている。搬送台車10は、4個の自在車輪18によって自立できると共に、床面に沿って全方向に移動できるようになっている。
【0042】
前側の上段の連結パイプ115と、後ろ側の上段の連結パイプ115と、の間には、2列のローラコンベア117が渡されている。下段の連結パイプ116についても同様に2列のローラコンベア117が渡されている。ここで、ローラコンベア117に傾斜を与えるため、前側の上段の連結パイプ115と後ろ側の上段の連結パイプ115とは、その取り付け高さが僅かに異なっている。下段の連結パイプ116についても同様に、前側と後ろ側とで取り付け高さが僅かに異なっている。ローラコンベア117に載置されたワーク(図示略)は、その傾斜方向下側に向けて移動し、隙間無く積載されることになる。なお、下段の連結パイプ116は、牽引車2を潜り込ませるだけの高さを確保できるよう、床面から高い位置に取り付けられている。
【0043】
側壁部11を構成する前後方向の連結パイプのうち、最下段に位置する各連結パイプ112には、細長い平板状のガイドレール(ガイド部)13と、細長いパイプよりなるタッチバー12と、が取り付けられている。さらに、最下段の2本の連結パイプ112の間には、係合プレート(係合部)15を固定するためのステー119が対面方向に渡されている。
【0044】
タッチバー12は、連結パイプ112の全長とほぼ同じ長さの筒状のパイプであり、連結パイプ112と平行をなすように取付アーム120を介して側壁部11の外側に取り付けられている。取付アーム120を介して取り付けられたタッチバー12は、外力が作用した際、内側に押し込まれるようになっている。外力が作用しない状態では、所定位置に位置するように常時、外側に向けて付勢されている。
【0045】
タッチバー12の両端部には、牽引車2のエッジスイッチ27に対応するよう、下方に向けて延設されたヒットアーム121が取り付けられている。搬送台車10が牽引車2に連結された状態(図1参照。)で、何らかの障害物がタッチバー12に接触すると、タッチバー12の押し込みに応じてヒットアーム121がエッジスイッチ27を叩くことになる。これにより、本例の自動搬送車1は、側方からタッチバー12に接触した障害物を検知可能である。
【0046】
ガイドレール13は、図8〜図12に示すごとく、搬送台車10の全長をわずかに超える細長い平板状の部材であり、搬送台車10の前後方向に沿って側壁部11の内側に取り付けられている。なお、図10は、メインシャフト110を図8中のAの位置で切断して搬送台車10の下部を示す上面図であり、図11は、この部分の斜視図である。図12は、搬送台車10と牽引車2との連結状態を表す模式図である。
【0047】
ガイドレール13は、牽引車2のローラ210の設置高さと同じ高さの取付位置に、取付ステー138を介して固定されている。ガイドレール13は、側壁部11との隙間が一定の中間部130と、側壁部11との隙間が先端に近づくにつれて次第に小さくなる両端部132と、を備えている。ガイドレール13は、一対の側壁部11にそれぞれ取り付けられ、他方のガイドレール13と対面するように取り付けられている。
【0048】
中間部130は、牽引車2の側面202に配設された2箇所のローラ210の配設範囲をカバーできるように形成されている。相互に対面する中間部130は、牽引車のガイド幅Wa(図12参照。)を僅かに超える程度の間隔を空けて対面している。相互に対面する中間部130は、牽引車2の相対的な向きのずれを生じさせる相対的な姿勢変化を規制しつつ、牽引車2を前後方向に進退させ得る通路幅Wbのガイド通路131(図10中の範囲A)を形成している。一方、相互に対面する両端部132は、前後方向に向けて末広がりの形状を呈している。この末広がり形状は、搬送台車10の下側に牽引車2を潜り込ませる際、牽引車2との接触に応じて搬送台車10の相対位置を自動調整するための進入路133(図10中の範囲B)を形成している。
【0049】
係合プレート15は、中央付近に係合孔150が貫通する略矩形平板状の部材である。この係合プレート15は、一対の側壁部11の連結パイプ112間に渡されたステー119により、搬送台車10の下面における中央付近に吊り下げられ、床面と対面する状態で固定されている。なお、図10では、ステー119を省略してある。
【0050】
係合孔150は、牽引車2の連結ピン41を挿入するための孔である。係合孔150は、左右方向に長い長孔形状を呈している。係合孔150の前後方向の幅は、連結ピン41を挿入可能な程度に狭く設定されている。一方、係合孔150の左右方向の幅は、いずれのガイドレール13に対して牽引車2が押し付けられても、長孔形状の端部が連結ピン41の外周側面に当接しないように十分に長く形成されている。
【0051】
次に、牽引車2の内部システムは、図13に示すごとく構成されている。システムを制御する制御ユニット50に対しては、2基の駆動ユニット3及び連結ユニット4のほか、バンパースイッチ220、障害物センサ26、非常停止スイッチ231、操作スイッチ232、表示ランプ233、LED表示器234、スピーカ235、通信ユニット25等が電気的に接続されている。
【0052】
制御ユニット50は、各種のスイッチ等と信号のやり取りをするためのインターフェースであるI/F回路55と、駆動ユニット3及び連結ユニット4に向けて各種の制御信号を出力する主制御回路51と、を備えている。
【0053】
駆動ユニット3の内部的な構成は、大まかに、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動輪331(図4参照。)を駆動する駆動部31と、各種センサの検知信号を取り込んで制御ユニットに送信する検知部35と、に区分けされる。駆動部31は、駆動モータ332を含む車輪ユニット310と、駆動モータ332を制御するモータドライバ315と、を含んで構成されている。モータドライバ315は、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて駆動モータ332の回転を制御する。
【0054】
検知部35は、床面に敷設されたガイドラインを検知するラインセンサ351、ガイドマーカからデータを読み取るマーカセンサ352、及び駆動輪331の操舵角を検知する操舵角検知部350等の検知手段のほか、制御ユニット50に対して検知信号等を送信する際のインターフェースとなるI/F回路38を備えている。
【0055】
連結ユニット4は、内部的な構成として、制御ユニット50から受信した制御信号に基づいて昇降モータ452を回転駆動するモータドライバ451と、ビームセンサ44の検知信号を取り込んで制御ユニット50に送信するI/F回路48と、を備えている。
【0056】
以上のように構成された本例の自動搬送車1において、牽引車2により搬送台車10が牽引される様子について説明する。
前後方向への牽引時には、図14に示すごとく、連結ピン41の外周側面と係合孔150の内周側面との接触箇所を介して、牽引車2の前進方向の力が搬送台車10に伝達される。搬送台車10は、このようにして牽引車2から伝達された力が推進力となって前後方向に移動できる。このとき、搬送台車10の4箇所の自在車輪18のうち、移動方向前側に当たる2箇所の自在車輪18が、連結ピン41よりも移動方向前側に位置することになる。
【0057】
連結ピン41よりも移動方向前側に位置する2箇所の自在車輪18に抵抗が生じると、左右方向に逃げようとする力が発生して搬送台車10が回転して向きが変動し、牽引車2との間で相対的な姿勢変化が生じるおそれがある。本例の自動搬送車1では、牽引車2における左右のローラ210の全幅であるガイド幅Waに対して、一対のガイドレール13が対面するガイド通路131の通路幅Wbが十分に狭く設定されている。
【0058】
それ故、図14において姿勢変化を強調して示す通り、搬送台車10と牽引車2との間の相対的な姿勢変化は、牽引車2の対角に位置する2箇所のローラ210が異なるガイドレール13に当接する回転位置を限度に規制されることになる。したがって、本例の自動搬送車1によれば、牽引車2の中央に配置された1本の連結ピン41のみにより、前後方向両側の牽引を安定的に行うことが可能である。
【0059】
一方、図15に示すごとく左右方向への牽引時には、左右方向の長孔状の係合孔150の内周側面に連結ピン41が接触せずに、牽引車2の進行方向に当たる側面に配置された2箇所のローラ210がガイドレール13に当接することになる。これにより、左右方向への牽引時には、ローラ210がガイドレール13を押し出すようにして、左右方向の力が搬送台車10に伝達されることになる。
【0060】
特に、本例の自動搬送車1では、駆動ユニット3の操舵中心である回転シャフト330に対して、前後方向の位置が一致するようにローラ210が配置されている。それ故、左右方向への牽引時には、各駆動ユニット3の操舵方向の真正面にそれぞれローラ210が配置されることになる。各駆動ユニット3の駆動力は、真正面に配置されたローラ210から効率良くガイドレール13に伝達される。
【0061】
以上の通り、本例の自動搬送車1では、牽引車2が備える1箇所のみの連結ピン41により搬送台車10を前後左右に安定して牽引可能である。連結ピン41が1箇所のみであれば、連結ユニット4を1基のみ配設すれば良くなり、牽引車2の小型化・低コスト化を実現できるようになる。このような小型・低コストの牽引車2を含む本例の自動搬送車1は、狭いスペースで小回りが利く上に、低価格の優れた製品となる。さらに、連結ピン41が1箇所のみであれば、搬送台車10に対して牽引車2を連結する際に位置合わせを要する箇所が1箇所のみとなるため、位置制御が容易となり制御負担を低減できるようになる。
【0062】
なお、長孔状の係合孔150の長手方向の長さとしては、牽引車2をいずれのガイドレール13に押し付けても、係合孔150の長手方向の端部の手前に連結ピン41が位置するように設定するのが良い。このように設定すれば、左右方向に牽引する際、牽引に要する力の100%近くをローラ210を介して搬送台車10側に伝達できるようになる。
【0063】
さらに、本例の係合孔150については左右方向の端部が必須ではないので、左右方向のスリット状の係合孔を挟んで前後方向に2分割された係合プレートを採用することもできる。このような2分割構造の係合プレートでは、左右方向の端部がなく係合プレートの左右方向両側に開口する係合孔が形成される。本例と同様、スリット状の係合孔に対する連結ピン41の挿入により、搬送台車10に牽引車2を連結可能である。本発明における係合孔は、必ずしも外周を全て囲まれた孔でなくても良く、一部が外周側に開口する不完全な孔であっても良い。
【0064】
なお、本例では、牽引車2を進入させる前後方向に沿って長い直方体の外形状を呈する搬送台車10を採用している。これに代えて、搬送台車を上方から見た長方形の短辺方向に、牽引車2を進入させる前後方向を設定することもできる。この場合には、ガイド通路131の幅に対して、ワークを積載するエリアの幅を広く確保できるようになる。
【0065】
以上、実施例1のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形あるいは変更した技術を包含している。
【符号の説明】
【0066】
1 自動搬送車
10 搬送台車
11 側壁部
13 ガイドレール(ガイド部)
131 ガイド通路
133 進入路
15 係合プレート
150 係合孔
18 自在車輪
2 牽引車
20 車体
210 ローラ(当接部)
3 駆動ユニット
33 旋回部
331 駆動輪
351 ラインセンサ
352 マーカセンサ
4 連結ユニット
41 連結ピン
44 ビームセンサ
45 昇降機構
50 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自在車輪を備え自立可能な搬送台車と、個別に駆動される2本1組の駆動輪が同軸に配置されていると共に当該2本1組の駆動輪の回転差に応じて旋回して操舵される駆動ユニットが前後方向の2箇所に配置され、前後方向から前記搬送台車の下側に潜り込んで連結される牽引車と、を組み合わた自動搬送車であって、
前記搬送台車は、前記牽引車を連結するための1箇所の係合部と、連結された前記牽引車の左右方向両側の側面にそれぞれ対面するように配設されたガイド部と、を有し、
前記牽引車は、2箇所の前記駆動ユニットに対して前後方向の中間に位置して前記係合部に連結される連結部と、当該牽引車の向きと前記搬送台車の向きとのずれを生じさせる相対的な姿勢変化を規制できるよう、前記ガイド部と対面するように左右方向に面する各側面にそれぞれ配設された当接部と、を有し、
前記搬送台車に前記牽引車が連結されたとき、前記ガイド部と前記当接部とが対面する箇所が、前記牽引車の各側面側において前記連結部を挟んで前後方向の両側にそれぞれ配置されており、
連結状態の前記牽引車が前後方向に移動する際には、前記ガイド部と前記当接部との組み合わせにより前記相対的な姿勢変化が規制された状態で、前記連結部から前記係合部に作用する前後方向の力に応じて前記搬送台車が前後方向に牽引される一方、
連結状態の前記牽引車が左右方向に移動する際には、前記牽引車の移動方向に面する側面において前記連結部を挟んで前後方向の両側に位置する前記当接部から前記ガイド部に作用する左右方向の力に応じて前記搬送台車が左右方向に牽引される自動搬送車。
【請求項2】
前記牽引車の各側面に対面する前記ガイド部が、それぞれ、前後方向に切れ目なく連続するように延設され、
前記牽引車を挟んで相互に対面する一対の前記ガイド部は、前記相対的な姿勢変化を規制しながら前記牽引車を進退させ得る程度の一定間隔のガイド通路と、該ガイド通路に対して前後方向のうちの少なくともいずれか一方に隣接するように延設され、当該ガイド通路から離れた位置ほど間隔が広くなる末広がり形状の進入路と、を形成している請求項1に記載の自動搬送車。
【請求項3】
前記当接部が、前記ガイド部との当接に応じて転動可能なローラを備えている請求項2に記載の自動搬送車。
【請求項4】
前記牽引車が備える前記連結部が、鉛直方向に昇降可能な軸状の連結ピンを有し、
前記搬送台車が備える前記係合部が、前記連結ピンを鉛直方向に挿入可能であって、左右方向に長く形成された長孔状の係合孔を備えている請求項1〜3のいずれか1項に記載の自動搬送車。
【請求項5】
前記ガイド部と前記当接部とが対面する箇所が、前記駆動ユニットにおける前記2本1組の駆動輪の旋回中心に対して前後方向の位置が略一致するように配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動搬送車。
【請求項6】
前記連結部が、2箇所の前記駆動ユニットに対して前後方向の中央に当たる位置に配置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動搬送車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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