説明

自動料金支払いシステムに用いる車載器

【課題】
本発明は、有料道路の通行料金やパーキングエリア内の店舗等での料金の支払いの双方をICチップ部を用いて自動的に行う自動料金支払いシステムに用いる車載器を提供することを目的とする。
【解決手段】
路側アンテナとの間で近距離無線通信により情報の送受信を行うアンテナ部と、電源部と、近距離無線通信で送受信する情報を変復調する変復調部と、ETC情報とカード情報の双方を記録したICチップ部と、車載器の制御を行う制御処理部と、各情報をICチップ部から抽出し変復調部に送信するETC処理部とを有しており、変復調部は、ETC情報をASK変復調方式により変復調し、カード情報をQPSK変復調方式により変復調し、制御処理部は、ETC情報をASK変復調方式で変復調を行う命令を変復調部に送信し、カード情報をQPSK変復調方式で変復調を行う命令を変復調部に送信する、車載器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路の通行料金やパーキングエリア内の店舗等での料金の支払いを自動的に行う自動料金支払いシステムに用いる車載器に関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路の通行料金決済をスムースに行う為に、料金所で一時停車し料金の支払いを行うのではなく、車両に設置した車載器と料金所に設けられた路側アンテナとの間で情報の送受信を行うことでノンストップで料金決済を行う、ETC(Electronic Toll Collection System。ETCは財団法人道路システム高度化推進機構の登録商標である)と呼ばれる自動料金支払いシステムが存在している。ETCは、下記の非特許文献1に詳しく説明されているように、料金所等の決済場所に設けられた路側アンテナと、車両に設置された車載器との間で近距離無線通信(近距離無線通信には、DSRC(Dedicated Short Range Communications。狭域データ通信)、無線LAN、赤外線通信、ブルートゥース等が該当する)を用いて情報の送受信を行うことによって、通行料金の決済を行うシステムである。尚、本明細書に於いて自動料金支払いシステムとは、近距離無線通信を用いて車載器と路側アンテナとの間の情報の送受信を行うことによって決済を行うシステムをさす。
【0003】
かかる自動料金支払いシステムに於いて、車両に設置した車載器に専用のクレジットカード(通称、ETCカード)を挿入することで、車両が路側アンテナに接近すると自動的に近距離無線通信による通信を開始し、通行料金等の決済を行うことができる。そして、利用者が車両から降車する際には、ETCカードの盗難を防ぐ為に、車載器からETCカードを抜き取り保管することとなる。
【0004】
又、近年では、自動料金支払いシステムの利用促進を図る為に、有料道路の通行料金決済のみならず、路側アンテナを設けたインターチェンジやパーキングエリア内の店舗等の各種の施設での料金決済をも行えるようにすることが考えられている。
【0005】
【特許文献1】特願2002−313705号公報
【特許文献2】特願2002−313709号公報
【特許文献3】特願2002−313880号公報
【特許文献4】特願2002−313883号公報
【非特許文献1】財団法人道路システム高度化推進機構著「ETC(イーテック)便覧」道路システム高度化推進機構発行、平成14年4月、p.10−42
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のように自動料金支払いシステムを利用する度に車載器にETCカードを挿入しなければならない現状のシステムでは、車載器にETCカードを挿入し忘れて路側アンテナに接近する事態が考えられるが、このような場合、自動料金支払いシステムによる決済は当然行えないので、料金所等に設けられたゲートがあがらず、そのままゲートに衝突する等の事故を誘発する危険性がある。
【0007】
更にETCカードは有料道路の通行料金決済専用カードであるので、上述したインターチェンジやパーキングエリア内の店舗等の各種の施設での決済には用いることができず、利用者が別のクレジットカードを車載器に挿入する必要がある。
【0008】
即ち、有料道路の通行料金決済を行う場合には車載器にETCカードを挿入し、それ以外の各種施設での料金決済を行う場合にはETCカードを抜き取り、新たに別のクレジットカードを挿入し、再度有料道路の通行料金決済を行う場合には車載器にETCカードを再び挿入する、といった動作を繰り返さなければならない。このような煩雑な動作を行うことは運転者の注意力を散漫とする危険性がある。
【0009】
又、従来のETCカードによる車載器の利用開始の際には、車載器をセットアップする作業を専用の店舗等で行わなければならないという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者等は、従来のようにETCカードやクレジットカードを用いるのではなく、それらの情報を記録したICチップを車載器に搭載することで、カードの交換等の作業を行うことなく、有料道路等での料金決済と各種施設での決済の双方が実現できる車載器を発明した。
【0011】
更に当該車載器に外部と接続可能なインターフェイスを設けることによって、そのセットアップ作業を任意のコンピュータ端末から実行可能とし、作業負担も軽減することができる車載器とした。
【0012】
請求項1の発明は、自動料金支払いシステムで用いる車載器であって、前記自動料金支払いシステムで用いる路側アンテナとの間で近距離無線通信により情報の送受信を行うアンテナ部と、前記車載器に電力を供給する電源部と、前記路側アンテナとの間で近距離無線通信で送受信する情報を変復調する変復調部と、有料道路の通行料金決済に用いるETC情報とそれ以外の料金決済に用いるカード情報との双方を記録したICチップ部と、前記車載器の制御を行う制御処理部と、前記ETC情報又は前記カード情報を前記ICチップ部から抽出し、それを変復調部に送信するETC処理部と、を有する車載器であって、前記変復調部は、前記ETC情報をASK変復調方式により変復調する手段と、前記カード情報をQPSK変復調方式により変復調する手段とからなり、前記制御処理部は、有料道路の通行料金決済を行う場合には、前記ETC処理部が前記ICチップ部から抽出した前記ETC情報を前記ASK変復調方式で変復調を行う命令を前記変復調部に送信し、それ以外の料金決済を行う場合には、前記ETC処理部が前記ICチップ部から抽出した前記カード情報を前記QPSK変復調方式で変復調を行う命令を前記変復調部に送信する、自動料金支払いシステムで用いる車載器である。
【0013】
このようにICチップ部に、ETC情報とカード情報の双方を記録しておけば、従来のように、ETCカードとクレジットカードの双方の交換作業を行う必要がなくなり、運転者の注意力を散漫とする危険性を回避することが出来る。又、ETCカードの挿入し忘れといった問題も解決することが出来る。
【0014】
更に、有料道路の通行料金決済ではASK変復調方式が用いられており、それ以外の料金決済では、QPSK変復調方式が用いられている。そこで本発明のように、変復調部で2つの変復調方式に対応可能にしておけば、正常に情報の送受信が行える。
【0015】
請求項2の発明は、前記車載器は、更に、前記ICチップ部に記録したETC情報を暗号化するセキュリティモジュール部と、有料道路の通行料金決済を行う場合には前記ICチップ部に記録したETC情報を前記セキュリティモジュール部を介して抽出するように切り替え、それ以外の料金決済を行う場合には前記ICチップ部に記録したカード情報を前記セキュリティモジュール部を介さずに抽出するように切り替えるスイッチ部と、を有しており、前記制御処理部は、有料道路の通行料金決済を行う場合には、前記ICチップ部に記録している前記ETC情報を前記セキュリティモジュール部を介して抽出するように前記スイッチ部を切り替える命令を送信し、それ以外の料金決済を行う場合には、前記ICチップ部に記録している前記カード情報を前記セキュリティモジュール部を介さずに抽出するように前記スイッチ部を切り替える命令を送信する、自動料金支払いシステムで用いる車載器である。
【0016】
有料道路の通行料金決済にはセキュリティを確保する為に、ETC情報を暗号化した後に路側アンテナに対して送信している。しかしこの暗号方式は、他の用途に用いることが出来ない。そこで、有料道路の通行料金決済にはセキュリティモジュール部でETC情報の暗号化を行い、それ以外の料金決済にはセキュリティモジュール部を介さずカードの情報の抽出を行うスイッチ部を設けることによって、既存の有料道路の通行料金決済の利用を図ることが可能となる。
【0017】
請求項3の発明は、前記車載器は、更に、カーナビゲーション装置と接続可能な外部インターフェイス部を有しており、前記制御処理部は、前記有料道路の通行料金決済又はそれ以外の料金決済の処理結果を、前記外部インターフェイス部を介して前記カーナビゲーション装置に送信し、前記カーナビゲーション装置のディスプレイ又はスピーカーに於いてその処理結果を表示、音声再生する、自動料金支払いシステムで用いる車載器である。
【0018】
本発明のように車載器とカーナビゲーション装置とを連動させても良い。
【0019】
請求項4の発明は、前記外部インターフェイス部は、USB接続端子である、自動料金支払いシステムで用いる車載器である。
【0020】
上述の外部インターフェイス部には、その汎用性、取り扱い容易性等からUSB接続端子を用いることが良い。
【発明の効果】
【0021】
上述のような発明を用いることによって、カードの交換作業を行うことなく、有料道路での通行料金決済と各種施設での決済の双方が実現できる車載器が可能となる。
【0022】
更に当該車載器に外部と接続可能なインターフェイスを設けることによって、そのセットアップ作業を任意のコンピュータ端末から実行可能とし、セットアップ作業負担も軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の車載器1のシステム構成の一例を図1のシステム構成図に示す。車載器1は、アンテナ部2、電源部10、変復調部3、制御処理部4、ETC処理部5、スイッチ部6、セキュリティモジュール部7、ICチップ部8、外部インターフェイス部9、リセット部11とを有している。
【0024】
アンテナ部2は、路側アンテナ12との間で近距離無線通信により情報の送受信を行う手段であり、ETCカードの情報(以下、ETC情報。ETCカード番号、車載器番号、車両登録番号等)やクレジットカードの情報(以下、カード情報。クレジットカード番号、有効期限等)を送受信する。
【0025】
電源部10は、車載器1に対して電力を供給する公知の手段であり、車両のバッテリーから供給されても良いし、太陽電池等により蓄電した電力を車載器1に対して供給しても良い。
【0026】
変復調部3は、路側アンテナ12との間で近距離無線通信により送受信する情報(ETC情報、カード情報)を変復調する手段である。変復調部3は、有料道路の通行料金決済を行うASK(Amplitude Shift Keying)変復調を行う手段と、クレジットカードによる各種施設での料金決済を行うQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変復調を行う手段とを有している。このように変復調部3で2つの変復調方式を具備するのは、有料道路の通行料金決済ではASK変復調が用いられており、それ以外ではQPSK変復調が用いられるからである。尚、本発明ではクレジットカードによる各種施設での料金決済を行う場合の変復調方式として、QPSK変復調方式である場合を説明したが、それ以外の変復調方式であっても良い。
【0027】
ICチップ部8は、ETCカードに記録されているETC情報、例えばETCカード番号、車載器番号、車両登録番号等と、クレジットカードのカード情報、例えばクレジットカード番号、有効期限等の情報を各々の記録領域に記録しているICチップである。
【0028】
セキュリティモジュール部7は、有料道路の通行料金決済を行う際に、自動料金支払いシステムで用いられているセキュリティフォーマット(暗号形式)に従って、ICチップ部8に記録されているETC情報(ETCカード番号、車載器番号、車両登録番号等)を暗号化する手段である。暗号化したETC情報は、変復調部3のASK変復調方式によって変復調後、アンテナ部2から路側アンテナ12に送信される。
【0029】
又、アンテナ部2で受信した、有料道路の通行料金決済に関する処理結果やETC情報は、変復調部3でASK変復調方式によって変復調後、セキュリティモジュール部7に於いて上述のセキュリティフォーマットに従って復号化し、それがICチップ部8に記録される。
【0030】
スイッチ部6は、クレジットカードによる各種施設での料金決済を行う際に、ICチップ部8に記録されているカード情報(クレジットカード番号、有効期限等)を、セキュリティモジュール部7を介さずに抽出するように切り替える手段である。従って、スイッチ部6は、有料道路の通行料金決済を行う場合には、ICチップ部8に記録しているETC情報をセキュリティモジュール部7を介して抽出するように切り替え、それ以外の場合には、ICチップ部8に記録しているカード情報をセキュリティモジュール部7を介さずに抽出するように切り替えるスイッチの役割を果たしている。
【0031】
制御処理部4は、車載器1の制御を行っている手段であって、有料道路の通行料金決済を行う場合には、制御処理部4は、ICチップ部8に記録しているETC情報をセキュリティモジュール部7を介して抽出するように、スイッチ部6を切り替える命令を送信し、又、変復調部3に対してはASK変復調方式による変復調を行う命令を送信する。一方、クレジットカードによる各種施設での料金決済を行う場合には、制御処理部4は、ICチップ部8に記録しているカード情報をセキュリティモジュール部7を介さずに抽出するように、スイッチ部6を切り替える命令を送信し、又、変復調部3に対してはQPSK変復調方式による変復調を行う命令を送信する。
【0032】
又、制御処理部4は、車載器1の表示制御、音声制御等も行っており、ETC処理部5に於ける処理結果を車載器1のディスプレイに表示したり、車載器1のスピーカーを介して音声を再生したりする。
【0033】
ETC処理部5は、有料道路の通行料金決済、各種施設での料金決済を行う為のETC情報、カード情報を抽出する手段であって、それらを変復調部3にて変復調した後、アンテナ部2から路側アンテナ12に対して送信する。更に、アンテナ部2に於いて受信し、変復調部3に於いて変復調後の情報を、制御処理部4に対して送信することで、例えば車載器1のディスプレイやスピーカーからその処理結果を表示、再生する。
【0034】
有料道路の通行料金決済を行う場合には、ETC処理部5は、スイッチ部6が制御処理部4によってセキュリティモジュール部7を介するようにセットされているので、ICカードチップ部に記録しているETC情報を抽出し、それをセキュリティモジュール部7にて暗号化したETC情報を取得し、それを変復調部3に送信する。
【0035】
クレジットカードによる各種施設での料金決済を行う場合には、ETC処理部5は、スイッチ部6が制御処理部4によってセキュリティモジュール部7を介さないようにセットされているので、ICカードチップ部に記録しているカード情報をそのまま抽出し、それを変復調部3に送信する。尚、カード情報は、ETC処理部5に於いて、独自の暗号化処理を施した後に、変復調部3に送信しても良い。
【0036】
外部インターフェイス部9は、車載器1のセットアップを行うコンピュータ端末13や、車両に設置されたカーナビゲーション装置との間を接続する端子部であって、好適にはUSB接続端子であると良い。
【0037】
リセット部11は、ICカードチップ部に記録している情報をリセットする手段である。例えばETC情報の車両登録番号に変更があった場合等にリセット部11を押下する等により、ICチップ部8の情報がリセットされる。
【0038】
次に、本発明の自動料金支払いシステムに用いる車載器1での処理の流れを、図2及び図3のフローチャート図、図1のシステム構成図とを用いて説明する。
【0039】
車載器1を搭載した車両が自動料金支払いシステムで用いる路側アンテナ12に接近をする(S100)。この路側アンテナ12は、有料道路の通行料金決済を行う為に、インターチェンジや料金所等に設置されていても良いし、クレジットカードによる決済を行う為に、店舗等の近傍に設置されていても良い。
【0040】
車載器1が路側アンテナ12の通信圏内に到達すると、車載器1と路側アンテナ12との間で近距離無線通信による通信が開始される(S110)。近距離無線通信にDSRCを用いている場合には、この通信は自動的に開始され、それ以外を用いている場合には、例えば車載器1に設けられた「通信開始」を示すボタンを押下する等の操作により、通信が開始されても良い。
【0041】
この近距離無線通信が有料道路の通行料金決済の場合には(S120)、制御処理部4はスイッチ部6に対してセキュリティモジュール部7を介してETC情報を抽出する為に、スイッチを切り替える(S130)。
【0042】
ETC処理部5は、スイッチ部6でセキュリティモジュール部7を介するようにセットされているので、ICチップ部8からETC情報を抽出し(S140)、それをセキュリティモジュール部7に於いて、自動料金支払いシステムで用いられているセキュリティフォーマット(暗号形式)に従ってETC情報を暗号化する(S150)。
【0043】
そしてETC処理部5は、暗号化したETC情報を変復調部3に送信する。又、制御処理部4は、有料道路の通行料金決済であるので、ASK変復調方式による変復調を行う命令を変復調部3に対して送信する。
【0044】
変復調部3では、制御処理部4からの命令に従った変復調方式(ASK変復調方式)によって、ETC処理部5から受信した、暗号化したETC情報を変復調する(S160)。
【0045】
一方、近距離無線通信が有料道路の通行料金決済以外の場合、例えば各種施設でのクレジットカードによる料金決済の場合には、制御処理部4はスイッチ部6に対してセキュリティモジュール部7を介さないようにスイッチを切り替える(S170)。
【0046】
ETC処理部5は、スイッチ部6でセキュリティモジュール部7を介さないようにセットされているので、ICチップ部8からカード情報を抽出し(S180)、それを変復調部3に送信する。尚、この際に、ETC処理部5ではカード情報に対して独自の暗号処理を施しても良い。又、制御処理部4は、有料道路の通行料金決済以外であるので、QPSK変復調方式による変復調を行う命令を変復調部3に対して送信する。
【0047】
変復調部3では、制御処理部4からの命令に従って変復調方式(QPSK変復調方式)によって、ETC処理部5から受信したカード情報を変復調する(S190)。
【0048】
変復調部3で変復調した暗号化したETC情報、カード情報は、アンテナ部2から路側アンテナ12に対して送信する(S200)。
【0049】
このように、車載器1から路側アンテナ12に対してETC情報、カード情報を送信することで、路側アンテナ12でETC情報、カード情報が受信され、それが有料道路の通行料金決済を行う決済サーバ、それ以外の料金決済を行う決済サーバに対して送信される。これによって、各々の決済が行われる。
【0050】
その後、処理結果の情報が、有料道路の通行料金決済を行う決済サーバ、それ以外の料金決済を行う決済サーバから路側アンテナ12に対して送信され、路側アンテナ12から車載器1に対して近距離無線通信により、情報が送信される。この情報を車載器1が近距離無線通信により受信する(S210)。
【0051】
有料道路の通行料金決済である場合(S220)、制御処理部4は変復調部3に対してASK変復調方式による変復調を行う命令を送信しているので、アンテナ部2から情報を受信した変復調部3は、ASK変復調方式により、受信した情報を変復調する(S230)。
【0052】
そして、スイッチ部6では制御処理部4がセキュリティモジュール部7を介するようにセットしているので、変復調した情報をETC処理部5がセキュリティモジュール部7に送信し、自動料金支払いシステムで用いられているセキュリティフォーマット(暗号形式)に従って、受信した情報を復号化する(S240)。そして復号化した情報を、場合によってはICチップ部8の有料道路の通行料金決済を行う場合の情報を記録する領域に記録する(S260)。
【0053】
一方、有料道路の通行料金決済以外の場合(S220)、例えば各種施設での料金決済の場合、制御処理部4は変復調部3に対してQPSK変復調方式による変復調を行う命令を送信しているので、アンテナ部2から情報を受信した変復調部3は、QPSK変復調方式により、受信した情報を変復調する(S250)。
【0054】
そして、スイッチ部6では制御処理部4がセキュリティモジュール部7を介さないようにセットしているので、変復調した情報をETC処理部5がICチップ部8の有料道路の通行料金決済以外を行う場合の情報を記録する領域に記録する(S260)。尚、ETC処理部5は、変復調した情報をICチップ部8に記録する前に、その情報に所定の暗号処理が施されている場合には、その復号処理後にICチップ部8に記録する。
【0055】
その後、ETC処理部5は、制御処理部4を介して処理結果の情報を、車載器1のディスプレイで表示、スピーカーで音声再生を行い、そのことを運転者に対して知らせる。
【0056】
本発明の車載器1は、外部インターフェイス部9を介してカーナビゲーション装置と接続可能にしてあっても良い。即ち、車載器1のディスプレイやスピーカーでその表示、音声再生を行うほか、車載器1の外部インターフェイス部9を介してカーナビゲーション装置のディスプレイやスピーカーでその表示、音声再生を行っても良い。この場合には、ETC処理部5は制御処理部4に処理結果の情報を送信し、制御処理部4は、外部インターフェイス部9を介してカーナビゲーション装置に対して、処理結果の情報を送信し、カーナビゲーション装置のディスプレイ、スピーカーでその表示、音声再生を行うこととなる。
【0057】
次に、本発明の車載器1を車両に搭載し、セットアップ作業を行う場合を説明する。セットアップ作業とは、車載器1を車両に搭載し、その車載器1を利用可能にする処理を言う。図4にこの場合のシステム構成の一例を示す。
【0058】
セットアップ作業を行う際には、有料道路の通行料金決済に用いるETC情報をICチップ部8に記録する。この際に、車載器1の外部インターフェイス部9と直接接続可能なインターフェイスを有するコンピュータ端末13を車載器1と接続し、ETCカード番号、車載器番号、車両登録番号等のETC情報をコンピュータ端末13から入力する。
【0059】
この入力を外部インターフェイス部9を介して受信した制御処理部4は、それをETC処理部5に送信し、ETC処理部5では、ICチップ部8のETC情報を記録する記録領域に、前記受信した情報(ETCカード番号、車載器番号、車両登録番号等)を記録する。
【0060】
又、車載器1と接続したコンピュータ端末13は、ETC管理会社システム14(ETCを運営する管理会社のコンピュータシステム)に対しても、インターネット等のネットワークを介して、ICチップ部8に記録したETC情報を送信する。これを受信したETC管理会社システム14では、それを記録する。このETC管理会社システム14に対する登録作業によって、有料道路等の料金をユーザに請求することが可能となる。
【0061】
従来は、車載器1に挿入するETCカードにETC情報の登録を行っていたが、このような場合では、ETCカードに記録する為の専用の装置(ICカード書込装置)が必要となり、セットアップ作業が行える場所が限定されていた。それを、上述のように、外部インターフェイス部9を介してコンピュータ端末13からICチップ部8、ETC管理会社システム14に対して、ETC情報を登録することによって、コンピュータ端末13にインターフェイスさえあればどのような場所であっても容易にセットアップ作業が行える。特に、この車載器1の外部インターフェイス部9にUSB(Universal Serial Bus)を用いることによって、どのようなコンピュータ端末13であっても、USB接続端子さえあれば容易に接続することが可能となる。
【0062】
次に、本発明の車載器1へのカード情報のセットアップ作業を行う場合を説明する。図5にこの場合のシステム構成の一例を示す。
【0063】
カード情報のセットアップ作業を行う際には、クレジットカードの料金決済に用いるカード情報をICチップ部8に記録する。この際に、車載器1の外部インターフェイス部9と直接接続可能なインターフェイスを有するコンピュータ端末13を車載器1と接続し、クレジットカード番号、有効期限等のカード情報をコンピュータ端末13から入力する。
【0064】
この入力を外部インターフェイス部9を介して受信した制御処理部4は、それをICチップ部8のカード情報を記録する記録領域に記録する。
【0065】
又、車載器1と接続したコンピュータ端末13は、クレジットカード会社システム15(クレジットカード会社の決済システム)に対しても、インターネット等のネットワークを介して、ICチップ部8に記録したカード情報を送信する。これを受信したクレジットカード会社システム15では、それによって、ICチップ部8にカード情報が記録されたことを把握できる。
【0066】
本発明に於ける各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していても良い。
【0067】
尚、本発明を実施するにあたり本実施態様の機能を実現するソフトウェアのプログラムを記録した記憶媒体をシステムに供給し、そのシステムのコンピュータが記憶媒体に格納されたプログラムを読み出し実行することによって実現されることは当然である。
【0068】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラム自体が前記した実施態様の機能を実現することとなり、そのプログラムを記憶した記憶媒体は本発明を当然のことながら構成することになる。
【0069】
プログラムを供給する為の記憶媒体としては、例えば磁気ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を使用することができる。
【0070】
又、コンピュータが読み出したプログラムを実行することにより、上述した実施態様の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステムなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前記した実施態様の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0071】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わる不揮発性あるいは揮発性の記憶手段に書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、機能拡張ボードあるいは機能拡張ユニットに備わる演算処理装置などが実際の処理の一部あるいは全部を行い、その処理により前記した実施態様の機能が実現される場合も含まれることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
このような発明を用いることによって、カードの交換等の作業を行うことなく、有料道路等での料金決済と各種施設での決済の双方が実現できる車載器1が可能となる。
【0073】
更に当該車載器1に外部と接続可能なインターフェイスを設けることによって、そのセットアップ作業を任意のコンピュータ端末から実行可能とし、作業負担も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の車載器のシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の車載器での処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の車載器での処理の流れの一例を示すフローチャート図である。
【図4】本発明の車載器のETC情報のセットアップ作業を行う場合のシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【図5】本発明の車載器のカード情報のセットアップ作業を行う場合のシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1:車載器
2:アンテナ部
3:変復調部
4:制御処理部
5:ETC処理部
6:スイッチ部
7:セキュリティモジュール部
8:ICチップ部
9:外部インターフェイス部
10:電源部
11:リセット部
12:路側アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動料金支払いシステムで用いる車載器であって、
前記自動料金支払いシステムで用いる路側アンテナとの間で近距離無線通信により情報の送受信を行うアンテナ部と、
前記車載器に電力を供給する電源部と、
前記路側アンテナとの間で近距離無線通信で送受信する情報を変復調する変復調部と、
有料道路の通行料金決済に用いるETC情報とそれ以外の料金決済に用いるカード情報との双方を記録したICチップ部と、
前記車載器の制御を行う制御処理部と、
前記ETC情報又は前記カード情報を前記ICチップ部から抽出し、それを変復調部に送信するETC処理部と、を有する車載器であって、
前記変復調部は、
前記ETC情報をASK変復調方式により変復調する手段と、前記カード情報をQPSK変復調方式により変復調する手段とからなり、
前記制御処理部は、
有料道路の通行料金決済を行う場合には、前記ETC処理部が前記ICチップ部から抽出した前記ETC情報を前記ASK変復調方式で変復調を行う命令を前記変復調部に送信し、それ以外の料金決済を行う場合には、前記ETC処理部が前記ICチップ部から抽出した前記カード情報を前記QPSK変復調方式で変復調を行う命令を前記変復調部に送信する、
ことを特徴とする自動料金支払いシステムで用いる車載器。
【請求項2】
前記車載器は、更に、
前記ICチップ部に記録したETC情報を暗号化するセキュリティモジュール部と、
有料道路の通行料金決済を行う場合には前記ICチップ部に記録したETC情報を前記セキュリティモジュール部を介して抽出するように切り替え、それ以外の料金決済を行う場合には前記ICチップ部に記録したカード情報を前記セキュリティモジュール部を介さずに抽出するように切り替えるスイッチ部と、を有しており、
前記制御処理部は、
有料道路の通行料金決済を行う場合には、前記ICチップ部に記録している前記ETC情報を前記セキュリティモジュール部を介して抽出するように前記スイッチ部を切り替える命令を送信し、それ以外の料金決済を行う場合には、前記ICチップ部に記録している前記カード情報を前記セキュリティモジュール部を介さずに抽出するように前記スイッチ部を切り替える命令を送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動料金支払いシステムで用いる車載器。
【請求項3】
前記車載器は、更に、
カーナビゲーション装置と接続可能な外部インターフェイス部を有しており、
前記制御処理部は、
前記有料道路の通行料金決済又はそれ以外の料金決済の処理結果を、前記外部インターフェイス部を介して前記カーナビゲーション装置に送信し、前記カーナビゲーション装置のディスプレイ又はスピーカーに於いてその処理結果を表示、音声再生する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動料金支払いシステムで用いる車載器。
【請求項4】
前記外部インターフェイス部は、USB接続端子である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の自動料金支払いシステムで用いる車載器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−59387(P2009−59387A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310526(P2008−310526)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2004−46815(P2004−46815)の分割
【原出願日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】